(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】層転写装置および層転写用フィルムカートリッジ
(51)【国際特許分類】
B65C 9/10 20060101AFI20231121BHJP
B41F 16/00 20060101ALI20231121BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231121BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20231121BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B65C9/10
B41F16/00 A
G03G21/00 370
G03G15/20 505
G03G21/16 185
(21)【出願番号】P 2019178792
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】板橋 奈緒
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222493(JP,A)
【文献】特表2008-540197(JP,A)
【文献】特開2019-045653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65C 1/00-11/06
B41F16/00-16/02
G03G21/00-21/20
G03G15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに、箔を含む転写層を転写する層転写装置であって、
開口を有する筐体と、
前記開口を通して前記筐体に着脱可能であり、前記転写層と、前記転写層を支持する支持層と、を有する多層フィルムを支持する層転写用フィルムカートリッジと、を備え、
前記層転写用フィルムカートリッジは、
前記多層フィルムが巻回される供給リールと、
前記多層フィルムを巻き取るための巻取リールと、を備え、
前記筐体は、
第1の向きの前記層転写用フィルムカートリッジを装着位置までガイドする第1ガイドであって、前記供給リールの回転軸に沿った軸方向において前記筐体の一端に位置する第1ガイドと、
前記第1の向きの前記層転写用フィルムカートリッジを前記装着位置までガイドする
、前記第1ガイドの数よりも多い複数の第2ガイドであって、前記軸方向において前記筐体の他端に位置し、かつ、前記層転写用フィルムカートリッジの着脱方向および前記軸方向に直交する直交方向において前記第1ガイドとは異なる位置に位置する第2ガイドと、を備え、
前記第1ガイドおよび前記第2ガイドは、前記着脱方向に延び、
前記層転写用フィルムカートリッジは、
前記層転写用フィルムカートリッジを前記第1の向きで前記筐体へ装着するときに前記第1ガイドで案内される第1被ガイド部と、
前記層転写用フィルムカートリッジを前記第1の向きで前記筐体へ装着するときに前記第2ガイドで案内される第2被ガイド部であって、前記直交方向において前記第1被ガイド部とは異なる位置に配置される複数の第2被ガイド部と、をさらに備え
、
前記第1ガイドの数と前記第1被ガイド部の数は、同じであり、
前記第2ガイドの数と前記第2被ガイド部の数は、同じであり、
前記第1ガイドおよび前記第1被ガイド部の一方は、第1溝であり、他方は、前記第1溝に入る第1突起であり、
前記第2ガイドおよび前記第2被ガイド部の一方は、第2溝であり、他方は、前記第2溝に入る第2突起であり、
前記第2ガイドは、前記第1ガイドとは異なる幅であり、
前記第1被ガイド部の幅は、前記第1ガイドの幅に対応した大きさであり、
前記第2被ガイド部の幅は、前記第2ガイドの幅に対応した大きさであることを特徴とする層転写装置。
【請求項2】
前記筐体は、
多層フィルムを案内する案内軸を備え、
前記層転写用フィルムカートリッジは、
前記案内軸で案内された多層フィルムと接触するシャフトであって、前記層転写用フィルムカートリッジが前記筐体に装着されているときに、前記案内軸よりも、前記層転写用フィルムカートリッジの装着方向の下流側に配置されるシャフトを備え、
前記第1被ガイド部および前記第2被ガイド部は、前記シャフトよりも前記装着方向の下流側に位置することを特徴とする請求項1に記載の層転写装置。
【請求項3】
前記層転写用フィルムカートリッジは、
第1ハンドルと、
前記第1ハンドルから前記直交方向に離れて配置される第2ハンドルと、を有し、
前記第1被ガイド部および前記第2被ガイド部は、前記直交方向において、前記第1ハンドルと前記第2ハンドルとの間に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の層転写装置。
【請求項4】
前記層転写用フィルムカートリッジの装着方向において、前記第1被ガイド部および前記第2被ガイド部は、前記第1ハンドルよりも下流側に位置することを特徴とする請求項3に記載の層転写装置。
【請求項5】
前記第1被ガイド部および前記第2被ガイド部は、前記軸方向の外側に突出するリブであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項6】
前記第1の向きに対して前記層転写用フィルムカートリッジの着脱方向に沿った軸回りに反転した第2の向きの前記層転写用フィルムカートリッジが、前記装着位置から離れた位置で前記筐体と干渉して、前記装着位置への移動が前記筐体で規制された状態において、前記層転写用フィルムカートリッジの少なくとも一部が前記開口から前記筐体の外に突出していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項7】
前記層転写用フィルムカートリッジは、
前記供給リールの軸方向における一端と、前記巻取リールの軸方向における一端とを連結する第1連結部と、
前記供給リールの軸方向における他端と、前記巻取リールの軸方向における他端とを連結する第2連結部と、をさらに備え、
前記第1連結部は、前記第1被ガイド部を有し、
前記第2連結部は、前記第2被ガイド部を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の層転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに転写層を転写する層転写装置および層転写装置の筐体に着脱可能な層転写用フィルムカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、層転写装置として、筐体と、筐体に着脱可能な層転写用フィルムカートリッジとを備えるものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、層転写用フィルムカートリッジは、転写層を有する多層フィルムが巻回された供給リールと、多層フィルムを巻き取るための巻取リールとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、層転写用フィルムカートリッジを正規の向きとは逆向き(正規の向きに対して層転写用フィルムカートリッジの着脱方向に沿った軸回りに反転した向き)に筐体に装着しようとした場合、筐体内に層転写用フィルムカートリッジが入ってしまい、層転写用フィルムカートリッジが誤った姿勢で組み付けられてしまうことがある。特に、多層フィルムとして例えば金属層を含むものを採用した場合などには、層転写用フィルムカートリッジの重量が大きくなってしまうため、誤って組み付けられた層転写用フィルムカートリッジを筐体から取り出す作業が煩雑になるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、層転写用フィルムカートリッジが筐体に誤って組み付けられてしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る層転写装置は、シートに転写層を転写する層転写装置であって、開口を有する筐体と、前記開口を通して前記筐体に着脱可能であり、前記転写層と、前記転写層を支持する支持層と、を有する多層フィルムを支持する層転写用フィルムカートリッジと、を備える。
前記筐体は、第1の向きの前記層転写用フィルムカートリッジを装着位置までガイドする第1ガイドと、所定方向において前記第1ガイドとは非対称に構成される第2ガイドであって、前記第1の向きの前記層転写用フィルムカートリッジを前記装着位置までガイドする第2ガイドと、を備える。
【0007】
この構成によれば、第1ガイドおよび第2ガイドが所定方向において非対称に構成されるので、第1の向きに対して層転写用フィルムカートリッジの着脱方向に沿った軸回りに反転した第2の向きで層転写用フィルムカートリッジをユーザが筐体に誤って組み付けようとすると、層転写用フィルムカートリッジが装着位置まで到達する前に筐体と干渉するので、層転写用フィルムカートリッジの誤組付を防止できる。
【0008】
また、前記層転写用フィルムカートリッジは、前記多層フィルムが巻回される供給リールと、前記多層フィルムを巻き取るための巻取リールと、を備え、前記第1ガイドおよび前記第2ガイドは、前記供給リールの回転軸に沿った軸方向に直交する方向に延びていてもよい。
【0009】
また、前記第1の向きに対して前記層転写用フィルムカートリッジの着脱方向に沿った軸回りに反転した第2の向きの前記層転写用フィルムカートリッジが、前記装着位置から離れた位置で前記筐体と干渉して、前記装着位置への移動が前記筐体で規制された状態において、前記層転写用フィルムカートリッジの少なくとも一部が前記開口から前記筐体の外に突出していてもよい。
【0010】
これによれば、第2の向きの層転写用フィルムカートリッジが装着位置から離れた位置で筐体と干渉して、装着位置への移動が筐体で規制された状態において、層転写用フィルムカートリッジの少なくとも一部が開口から外に突出するので、ユーザが誤組付を即座に知ることができる。
【0011】
また、前記第2ガイドは、前記層転写用フィルムカートリッジの着脱方向および前記所定方向に直交する直交方向において前記第1ガイドとは異なる位置に配置され、前記層転写用フィルムカートリッジは、前記層転写用フィルムカートリッジを前記第1の向きで前記筐体へ装着するときに前記第1ガイドで案内される第1被ガイド部と、前記層転写用フィルムカートリッジを前記第1の向きで前記筐体へ装着するときに前記第2ガイドで案内される第2被ガイド部であって、前記直交方向において前記第1被ガイド部とは異なる位置に配置される第2被ガイド部と、をさらに備えていてもよい。
【0012】
また、前記層転写装置は、前記第2被ガイド部および前記第2ガイドを複数有していてもよい。
【0013】
また、前記層転写用フィルムカートリッジは、前記供給リールの軸方向における一端と、前記巻取リールの軸方向における一端とを連結する第1連結部と、前記供給リールの軸方向における他端と、前記巻取リールの軸方向における他端とを連結する第2連結部と、をさらに備え、前記第1連結部は、前記第1被ガイド部を有し、前記第2連結部は、前記第2被ガイド部を有していてもよい。
【0014】
また、前記第2ガイドは、前記第1ガイドとは異なる幅であり、前記層転写用フィルムカートリッジは、前記層転写用フィルムカートリッジを前記第1の向きで前記筐体へ装着するときに前記第1ガイドで案内される第1被ガイド部であって、前記第1ガイドの幅に対応した大きさの第1被ガイド部と、前記層転写用フィルムカートリッジを前記第1の向きで前記筐体へ装着するときに前記第2ガイドで案内される第2被ガイド部であって、前記第2ガイドの幅に対応した大きさの第2被ガイド部と、をさらに備えていてもよい。
【0015】
また、前記第1被ガイド部は、前記巻取リールの軸方向における一端部と、前記供給リールの軸方向における一端部であり、前記第2被ガイド部は、前記巻取リールの軸方向における他端部と、前記供給リールの軸方向における他端部であってもよい。
【0016】
また、前記層転写用フィルムカートリッジは、前記供給リールを収容する供給ケースと、前記巻取リールを収容する巻取ケースであって、前記供給ケースの外径とは異なる外径となる巻取ケースと、をさらに備え、前記筐体は、前記供給リールから引き出される前記多層フィルムに接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第1案内軸と、前記第1案内軸で案内された前記多層フィルムに接触して、前記多層フィルムの進行方向を変更する第2案内軸と、を備え、前記第1案内軸と前記第2案内軸は、前記層転写用フィルムカートリッジの着脱方向および前記所定方向に直交する直交方向に間隔を空けて並んでおり、前記開口は、前記第1案内軸に対して前記第2案内軸とは反対側に位置する第1端と、前記第2案内軸に対して前記第1案内軸とは反対側に位置する第2端と、を有し、前記層転写用フィルムカートリッジの着脱方向から見たときにおける、前記第1端と前記第1案内軸との間隔は、前記供給ケースの外径に対応した大きさであり、前記第2端と前記第2案内軸との間隔は、前記巻取ケースの外径に対応した大きさであってもよい。
【0017】
また、本発明に係る層転写用フィルムカートリッジは、シートに転写層を転写する層転写装置の筐体に着脱可能な層転写用フィルムカートリッジであって、前記転写層と、前記転写層を支持する支持層と、を有する多層フィルムが巻回される供給リールと、前記多層フィルムを巻き取るための巻取リールと、前記供給リールを収容する供給ケースと、前記巻取リールを収容する巻取ケースであって、前記供給ケースの外径とは異なる外径となる巻取ケースと、を備える。
第1の向きで前記筐体へ装着するときには、前記筐体に装着可能であり、前記第1の向きに対して前記層転写用フィルムカートリッジの着脱方向に沿った軸回りに反転した第2の向きで前記筐体へ装着するときには、前記供給ケースおよび前記巻取ケースのうち外径が大きい方のケースが前記筐体と干渉して、前記筐体に装着できない。
【0018】
この構成によれば、ユーザが層転写用フィルムカートリッジを第2の向きで筐体に誤って組み付けようとすると、層転写用フィルムカートリッジが装着位置まで到達する前に外径が大きい方のケースが筐体と干渉するので、層転写用フィルムカートリッジの誤組付を防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、層転写用フィルムカートリッジが筐体に誤って組み付けられてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る層転写装置を示す図(a)と、多層フィルムの構成を示す断面図(b)である。
【
図2】層転写装置のカバーを開けた状態を示す図である。
【
図3】層転写用フィルムカートリッジを示す斜視図である。
【
図4】層転写用フィルムカートリッジと筐体本体を示す斜視図である。
【
図5】層転写用フィルムカートリッジの各部位と筐体本体の各部位の関係を示す図である。
【
図6】第1変形例に係る層転写装置を示す図である。
【
図7】第1変形例に係る層転写用フィルムカートリッジの各部位と筐体本体の各部位の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、層転写装置の全体構成を簡単に説明した後、本願発明の特徴部分の構成について説明する。
【0022】
図1(a)に示すように、層転写装置1は、例えばレーザプリンタ等の画像形成装置でシートSにトナー像を形成した後、シートSのトナー像の上にアルミニウム等の箔を有する転写層を転写するための装置である。つまり、層転写装置1は、シートSのトナー像の上に箔を転写することで、シートSに箔の画像を形成している。層転写装置1は、筐体2と、シート搬送部10と、フィルム供給部30と、転写部50とを備えている。
【0023】
筐体2は、樹脂などからなり、筐体本体21と、カバー22とを備えている。筐体本体21は、上部に開口21A(
図2参照)を有している。開口21Aは、筐体本体21に後述する層転写用フィルムカートリッジFCを着脱するための開口である。カバー22は、開口21Aを開閉するための部材である。カバー22は、筐体本体21に回動可能に支持されている。カバー22は、開口21Aを閉じる閉位置(
図1(a)の位置)と、開口21Aを開放する開位置(
図2の位置)との間で回動可能となっている。
【0024】
シート搬送部10は、シート供給機構11と、シート排出機構12とを備えている。シート搬送部10は、後述するメインモータMによって回転駆動される。シート供給機構11は、図示せぬシートトレイ上のシートSを一枚ずつ転写部50に向けて搬送する機構である。
【0025】
シート排出機構12は、転写部50を通過したシートSを筐体2の外部に排出する機構である。
【0026】
フィルム供給部30は、シート供給機構11から搬送されたシートSに重ねるように多層フィルムFを供給する部分である。フィルム供給部30は、層転写用フィルムカートリッジFCと、第1案内軸41と、第2案内軸42と、駆動源としてのメインモータMを備えている。第1案内軸41および第2案内軸42は、筐体本体21に設けられている(
図2参照)。
【0027】
層転写用フィルムカートリッジFCは、
図2に示すように、開口21Aを通して筐体本体21に着脱可能となっている。層転写用フィルムカートリッジFCは、多層フィルムFを支持するカートリッジであって、供給部310と、巻取部350と、シャフト43とを主に備えている。供給部310は、供給リール31を主に有する。巻取部350は、巻取リール35を主に有する。供給リール31には、多層フィルムFが巻回されている。
【0028】
図1(b)に示すように、多層フィルムFは、複数の層からなるフィルムである。詳しくは、多層フィルムFは、支持層F1と、被支持層F2とを有する。支持層F1は、高分子材料からなるテープ状の透明な基材であり、被支持層F2を支持している。被支持層F2は、例えば、剥離層F21と、転写層F22と、接着層F23とを有する。剥離層F21は、支持層F1から転写層F22を剥離しやすくするための層であり、支持層F1と転写層F22との間に配置されている。剥離層F21は、支持層F1から剥離しやすい透明な材料、例えばワックス系樹脂を含んでいる。
【0029】
転写層F22は、トナー像に転写される層であり、箔を含んでいる。箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の金属であって薄く延された金属である。また、転写層F22は、金色、銀色、赤色などの着色材料と、熱可塑性樹脂とを含む。転写層F22は、剥離層F21と接着層F23との間に配置されている。
【0030】
接着層F23は、転写層F22をトナー像に接着しやすくするための層である。接着層F23は、後述する転写部50によって加熱されたトナー像に付着しやすい材料、例えば塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂を含んでいる。
【0031】
供給リール31は、樹脂などからなり、多層フィルムFが巻回される供給軸部31Aを有している。供給軸部31Aには、多層フィルムFの一端が固定されている。
【0032】
巻取リール35は、樹脂などからなり、多層フィルムFを巻き取るための巻取軸部35Aを有している。巻取軸部35Aには、多層フィルムFの他端が固定されている。巻取軸部35Aは、メインモータMによって回転駆動される。
【0033】
なお、層転写用フィルムカートリッジFCが新品の状態においては、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となっており、巻取リール35には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となっている。また、層転写用フィルムカートリッジFCの寿命時(多層フィルムFを使い切ったとき)においては、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となり、供給リール31には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となる。
【0034】
第1案内軸41は、供給リール31から引き出される多層フィルムFに接触して、多層フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第1案内軸41は、SUS(ステンレス鋼)からなっている。第2案内軸42は、第1案内軸41で案内された多層フィルムFに接触して、多層フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第2案内軸42は、SUSからなっている。
【0035】
層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に装着された状態において、第1案内軸41および第2案内軸42は、多層フィルムFの面のうち支持層F1によって形成される第1面FA(
図1(b)参照)に接触している。また、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に装着された状態において、第1案内軸41と第2案内軸42の間に張架される多層フィルムFの面のうち第1面FAと反対側の面であって、転写層F22を含む被支持層F2によって形成される第2面FB(
図1(b)参照)が、シート搬送部10によって搬送されるシートSや、加圧ローラ51と、接触する。
【0036】
シャフト43は、シートSから多層フィルムFを剥離させるときの多層フィルムFの角度を調整するためのSUSなどからなる部材であり、多層フィルムFの第2面FBに接触している。シャフト43は、供給リール31と巻取リール35とに架け渡された多層フィルムFに対して非接触となる状態から接触可能となっている。シャフト43は、第2軸方向に延びている。シャフト43が第2案内軸42と巻取リール35の間で張架される多層フィルムFの第2面FBに押し当てられることで、第2案内軸42で案内された多層フィルムFの進行方向が変更され、第2案内軸42を起点に折り曲げられた多層フィルムFの角度(以下、「剥離角度」ともいう。)がより鋭角となるように調整されている。詳しくは、剥離角度は、多層フィルムFのうち、第1案内軸41と第2案内軸42の間で張架される部分と、第2案内軸42とシャフト43の間で張架される部分とのなす角である。剥離角度が鋭角であるほど、すなわち、剥離角度が小さいほど、第2案内軸42を通過したシートSが多層フィルムFから剥離しやすくなる。なお、第1案内軸41および第2案内軸42は、筐体本体21に回転可能に支持されてもよいし、回転不能に支持されてもよい。また、シャフト43は、後述する支持部材90に、回転可能に支持されてもよいし、回転不能に支持されてもよい。
【0037】
第1案内軸41は、トナー像が形成された面を下にした状態で搬送されるシートSに対して、供給リール31から引き出された多層フィルムFを下から重ねるように案内している。第1案内軸41は、供給リール31から引き出された多層フィルムFの搬送方向を変えて、シートSの搬送方向と略平行に多層フィルムFを案内する。
【0038】
第2案内軸42は、転写部50を通過した多層フィルムFと接触し、転写部50を通過した多層フィルムFの搬送方向をシートSの搬送方向とは異なる方向に変更することで、多層フィルムFをシートSから離れる方向に案内する剥離ローラである。転写部50を通過してシートSと重なった状態で搬送された多層フィルムFは、第2案内軸42を通過する際にシートSとは異なる方向に案内され、シートSから剥離される。
【0039】
転写部50は、シートSと多層フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧することで、シートSに形成されたトナー像の上に転写層F22を転写するための部分である。転写部50は、加圧ローラ51と、加熱ローラ61とを備えている。転写部50は、加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部において、シートSと多層フィルムFを重ねて加熱および加圧する。
【0040】
加圧ローラ51は、円筒状の芯金の周囲をシリコンゴムからなるゴム層で被覆したローラである。加圧ローラ51は、多層フィルムFの上側に配置され、シートSの裏面(トナー像が形成された面と反対側の面)と接触可能となっている。
【0041】
加圧ローラ51は、両端部がカバー22に回転可能に支持されている。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間でシートSおよび多層フィルムFを挟み、メインモータMによって回転駆動されることで加熱ローラ61を従動回転させる。このように加圧ローラ51と加熱ローラ61との間でシートSおよび多層フィルムFを挟んだ状態で、加圧ローラ51および加熱ローラ61が回転することで、シートSおよび多層フィルムFが搬送される。
【0042】
加熱ローラ61は、円筒状に形成された金属管の内部にヒータを配置したローラであり、多層フィルムFおよびシートSを加熱している。加熱ローラ61は、多層フィルムFの下側に配置され、多層フィルムFの第1面FAと接触している。
【0043】
このように構成された層転写装置1では、シートSの表面を下向きにして図示せぬシートトレイに載置されたシートSが、シート供給機構11により一枚ずつ転写部50に向けて搬送される。シートSは、転写部50のシート搬送方向における上流側で、供給リール31から供給された多層フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と多層フィルムFが接触した状態で転写部50に搬送される。
【0044】
転写部50においては、シートSと多層フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部を通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に転写層F22が転写される。なお、以下の説明では、トナー像への転写層F22の転写を、単に「層転写」とも称する。
【0045】
層転写が行われた後、シートSと多層フィルムFは密着した状態で第2案内軸42まで搬送される。シートSと多層フィルムFが第2案内軸42を通過すると、多層フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから多層フィルムFが剥離される。
【0046】
シートSから剥離された多層フィルムFは、巻取リール35に巻き取られていく。一方、多層フィルムFが剥離されたシートSは、シート排出機構12によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、筐体2の外部に排出される。
【0047】
図3に示すように、層転写用フィルムカートリッジFCは、前述した供給部310、巻取部350およびシャフト43の他、連結部70と、ハンドル80と、支持部材90とを備えている。供給部310は、前述した供給リール31の他、供給ケース32を有している。また、巻取部350は、前述した巻取リール35の他、巻取ケース36を備えている。なお、以下の説明では、供給リール31の回転軸X1に沿った第1軸方向または巻取リール35の回転軸X2に沿った第2軸方向を、単に「軸方向」とも称する。また、以下の説明では、回転軸X1,X2を結ぶ直線に沿った軸間方向を、単に「軸間方向」とも称する。
【0048】
供給ケース32は、供給リール31を収容するケースであり、中空の略円柱状に形成されている。詳しくは、供給ケース32は、供給リール31の供給軸部31Aに巻回された多層フィルムFを内部に収容している。供給リール31の供給軸部31Aは、供給ケース32の軸方向の各端面から外側に突出している。
【0049】
供給ケース32は、連結部70に対して回転軸X1回りに回転しないように、連結部70に係合または固定されている。供給ケース32は、外周面の一部に平面32Bを有している。平面32Bは、軸方向と軸間方向に延びている。平面32Bが筐体本体21の平面部分に接触することで、層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に支持される(
図1参照)。供給リール31は、供給ケース32および連結部70に回転可能に支持されている。
【0050】
巻取ケース36は、巻取リール35を収容するケースであり、中空の円柱状に形成されている。詳しくは、巻取ケース36は、巻取リール35の巻取軸部35Aに巻回された多層フィルムFを内部に収容している。巻取リール35の巻取軸部35Aは、巻取ケース36の軸方向の各端面から外側に突出している。
【0051】
巻取ケース36は、連結部70に対して回転軸X2回りに回転しないように、連結部70に係合または固定されている。巻取リール35は、巻取ケース36および連結部70に回転可能に支持されている。巻取リール35は、前述した巻取軸部35Aと、巻取ギヤ35Cとを有している。巻取ギヤ35Cは、メインモータMからの駆動力を受けるギヤである。巻取ギヤ35Cは、巻取軸部35Aの軸方向における一端に設けられている。詳しくは、巻取軸部35Aの一部がD形状に成形されていて、巻取ギヤ35Cに開けられたD形状の穴と篏合することにより、巻取ギヤ35Cが巻取軸部35Aに対して回転不能に固定されている。巻取ケース36の外径は、供給ケース32の外径よりも小さい。
【0052】
連結部70は、供給部310と巻取部350とを連結する部材である。連結部70は、第1連結部71と、第2連結部72とを有している。第1連結部71および第2連結部72は、第1軸方向と直交する方向に延びている。詳しくは、第1連結部71および第2連結部72は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2とを結ぶ直線に沿った軸間方向に長い長尺な板状に形成されている。第1連結部71および第2連結部72は、多層フィルムFから離れた位置に位置する。
【0053】
第1連結部71は、軸方向における供給部310の一端と、軸方向における巻取部350の一端とを連結している。具体的に、第1連結部71は、供給軸部31Aの一端と、巻取軸部35Aの一端とを連結している。詳しくは、第1連結部71は、軸間方向の両端に、供給軸部31Aや巻取軸部35Aが貫通する穴を有する。第1連結部71は、軸方向において、巻取ギヤ35Cと巻取ケース36との間に配置されている。
【0054】
第1連結部71は、外面71Aと、第1被ガイド部71Bとを有する。外面71Aは、軸方向において第2連結部72とは反対側を向いている。第1被ガイド部71Bは、層転写用フィルムカートリッジFCを後述する第1の向きで筐体本体21へ装着するときに、後述する第1ガイドGD1(
図4参照)で案内される部位である。第1被ガイド部71Bは、外面71Aから突出している突起である。第1被ガイド部71Bは、第1連結部71の軸間方向における中心から突出している。
【0055】
第2連結部72は、軸方向における供給部310の他端と、軸方向における巻取部350の他端とを連結している。具体的に、第2連結部72は、供給軸部31Aの他端と、巻取軸部35Aの他端とを連結している。詳しくは、第2連結部72は、軸間方向の両端に、供給軸部31Aや巻取軸部35Aが貫通する穴を有する。
【0056】
供給ケース32および巻取ケース36は、軸方向において、第1連結部71と第2連結部72との間に配置されている。
【0057】
第2連結部72は、外面72Aと、2つの第2被ガイド部72Bとを有する。外面72Aは、軸方向において第1連結部71とは反対側を向いている。第2被ガイド部72Bは、層転写用フィルムカートリッジFCを後述する第1の向きで筐体本体21へ装着するときに、後述する第2ガイドGD2(
図4参照)で案内される部位である。第2被ガイド部72Bは、外面72Aから突出している突起である。各第2被ガイド部72Bは、軸間方向において、第1被ガイド部71Bとは異なる位置に配置されている。言い換えると、各第2被ガイド部72Bは、第1被ガイド部71Bの軸間方向における中心を通る直線であって且つ軸方向に延びる直線上から、外れた位置に配置されている。各第2被ガイド部72Bは、第2連結部72の軸間方向における中心からずれた位置から突出している。詳しくは、一方の第2被ガイド部72Bから他方の第2被ガイド部72Bまでの中間位置に、第2連結部72の軸間方向における中心が位置する。また、各第2被ガイド部72Bは、軸間方向の寸法が、第1被ガイド部71Bの軸間方向の寸法よりも小さい。
【0058】
ハンドル80は、ユーザの指がフックされることを許容する部位である。ハンドル80は、第1ハンドル81と、第1ハンドル81から軸間方向に離れて配置される第2ハンドル82とを有している。
【0059】
第1ハンドル81は、樹脂などからなり、軸方向に延びるように供給部310に配置されている。詳しくは、第1ハンドル81は、供給ケース32に支持されている。第1ハンドル81は、供給ケース32の外周面から、回転軸X1に交差する方向、詳しくは直交する方向に突出している。第1ハンドル81は、供給ケース32に接続されている。
【0060】
第2ハンドル82は、樹脂などからなり、軸方向に延びるように巻取部350に配置されている。詳しくは、第2ハンドル82は、巻取ケース36に支持されている。第2ハンドル82は、巻取ケース36の外周面から、回転軸X1に交差する方向、詳しくは直交する方向に突出している。第2ハンドル82は、巻取ケース36に接続されている。
【0061】
シャフト43は、巻取部350に配置されている。シャフト43は、軸方向に沿って延びる円形の軸形状を有している。シャフト43は、巻取リール35、詳しくは巻取ケース36から離れて配置されている。
【0062】
支持部材90は、シャフト43を支持する部材である。支持部材90は、第1側板91と、第2側板92とを有している。第1側板91および第2側板92は、巻取リール35の回転軸X2から巻取リール35の径方向外側に向けて延びる板状の部材であり、径方向外側に向かうにつれて先細となる略扇状に形成されている。第1側板91および第2側板92は、巻取リール35の巻取軸部35Aに回動可能に連結されている。詳しくは、第1側板91および第2側板92は、巻取軸部35Aが貫通する穴を有する。第1側板91および第2側板92は、巻取ケース36を軸方向に挟むように巻取軸部35Aに連結されている。
【0063】
第1側板91は、シャフト43の軸方向の一端を支持している。第1側板91は、軸方向において、巻取ケース36と第1連結部71との間に配置されている。第1側板91は、第1連結部71に対面する外面91Aと、外面91Aから突出する突出部91Bとを有している。
【0064】
突出部91Bは、巻取リール35の径方向において、第1連結部71とシャフト43との間に配置されている。突出部91Bには、板バネSPが設けられている。板バネSPは、軸間方向において、突出部91Bに対して供給リール31とは反対側に配置されている。
【0065】
第2側板92は、シャフト43の軸方向の他端を支持している。第2側板92は、軸方向において、巻取ケース36と第2連結部72との間に配置されている。第2側板92は、第2連結部72に対面する外面92Aと、外面92Aから突出する突出部92Bとを有している。突出部92Bには、前述した板バネSPと同様の板バネSPが設けられている。
【0066】
支持部材90で支持されたシャフト43は、連結部70に対して移動可能となっている。詳しくは、シャフト43は、連結部70に対して軸方向と略直交する方向に移動可能となっている。ここで、軸方向と略直交するとは、軸方向とシャフト43の移動する方向とのなす角度が80°~100°の範囲であることを指す。より詳しくは、シャフト43は、第1位置と、第1位置よりも供給リール31に近い第2位置との間で移動可能となっている。なお、巻取ケース36または連結部70には、シャフト43の移動範囲を第1位置から第2位置までの範囲に規制する図示せぬ規制部が設けられている。具体的に、規制部は、シャフト43が第1位置と第2位置の間でのみ移動できるように、支持部材90の回動範囲を規制している。
【0067】
層転写用フィルムカートリッジFCは、軸方向および軸間方向に直交する方向において、筐体本体21に着脱可能となっている。なお、以下の説明では、軸方向および軸間方向に直交する方向を、「着脱方向」とも称する。
【0068】
図4に示すように、筐体本体21は、第1ガイドGD1と、2つの第2ガイドGD2とを備えている。第1ガイドGD1および各第2ガイドGD2は、第1の向きの層転写用フィルムカートリッジFCを装着位置までガイドするガイドである。ここで、「第1の向き」とは、筐体本体21に層転写用フィルムカートリッジFCが正常に取り付けられるときの向きをいう。詳しくは、「第1の向き」とは、層転写用フィルムカートリッジFCが装着位置に位置しているときの向きをいう。本実施形態では、「第1の向き」とは、当該第1の向きのままフィルムカートリッジFCが筐体本体21に対して装着位置までガイドされた状態において、加熱ローラ61に対して供給リール31がシートSの搬送方向上流側に配置され、かつ、シャフト43が巻取リール35の回転軸X2(
図3参照)よりも装着方向上流側に配置される向きをいう。
【0069】
なお、以下の筐体本体21の説明では、前述した軸方向および軸間方向を、筐体本体21に層転写用フィルムカートリッジFCが装着された状態での方向として説明する。
【0070】
第1ガイドGD1は、層転写用フィルムカートリッジFCの第1被ガイド部71Bが入る溝であり、所定方向の一例としての軸方向において、筐体本体21の一端に設けられている。第1ガイドGD1は、筐体本体21の内面に位置する。第1ガイドGD1は、軸方向に直交する方向に延びている。第1ガイドGD1は、軸間方向に直交する方向に延びている。
【0071】
詳しくは、第1ガイドGD1は、軸方向に直交する方向に延びる第1部分GD11と、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向において第1部分GD11の上流側に位置する第2部分GD12とを有する。第1部分GD11の軸方向および軸間方向に直交する方向に延びる2つの縁は、フィルムカートリッジFCの装着方向に平行に延びている。第1部分GD11の幅、つまり軸間方向の寸法、詳しくは2つの縁の間隔は、第1の幅B1(
図5参照)となっている。第2部分GD12は、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向上流側に向かうにつれて、徐々に幅広となるように形成されている。
【0072】
第2ガイドGD2は、層転写用フィルムカートリッジFCの第2被ガイド部72Bが入る溝であり、軸方向において、筐体本体21の他端に2つ設けられている。各第2ガイドGD2は、筐体本体21の内面に位置し、第1ガイドGD1が形成された筐体本体21の内面と向き合っている。各第2ガイドGD2は、軸方向に直交する方向に延びている。各第2ガイドGD2は、軸間方向に直交する方向に延びている。
【0073】
詳しくは、各第2ガイドGD2は、軸方向に直交する方向に延びる第1部分GD21と、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向において第1部分GD21の上流側に位置する第2部分GD22とを有する。第1部分GD21の軸方向および軸間方向に直交する方向に延びる2つの縁は、フィルムカートリッジFCの装着方向に平行に延びている。第1部分GD21の幅、つまり軸間方向の寸法、詳しくは2つの縁の間隔は、第1の幅B1よりも小さな第2の幅B2(
図5参照)となっている。第2部分GD22は、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向上流側に向かうにつれて、徐々に幅広となるように形成されている。
【0074】
各第2ガイドGD2は、軸方向において第1ガイドGD1とは非対称に構成されている。詳しくは、各第2ガイドGD2は、軸間方向、つまり層転写用フィルムカートリッジFCの着脱方向および所定方向に直交する直交方向において、第1ガイドGD1とは異なる位置に配置されている。
【0075】
図5に示すように、層転写用フィルムカートリッジFCの第1被ガイド部71Bの軸間方向の寸法は、第1ガイドGD1の幅B1に対応した大きさ、詳しくは略同じ大きさとなっている。層転写用フィルムカートリッジFCの各第2被ガイド部72Bのそれぞれの軸間方向の寸法は、第2ガイドGD2の幅B2に対応した大きさ、詳しくは略同じ大きさとなっている。詳しくは、第1被ガイド部71Bの軸間方向の寸法は、第1ガイドGD1の幅B1よりも若干小さい。第1被ガイド部71Bの軸間方向の寸法は、第2ガイドGD2の幅B2よりも大きい。
【0076】
第1案内軸41と第2案内軸42は、軸間方向、つまり層転写用フィルムカートリッジFCの着脱方向および所定方向に直交する直交方向において、間隔を空けて並んでいる。筐体本体21の開口21Aは、第1端E1と、第2端E2とを有している。
【0077】
第1端E1は、軸間方向において、第1案内軸41に対して第2案内軸42とは反対側に位置している。第2端E2は、軸間方向において、第2案内軸42に対して第1案内軸41とは反対側に位置している。
【0078】
層転写用フィルムカートリッジFCの着脱方向から見たときにおける、第1端E1と第1案内軸41との間隔L1は、供給ケース32の外径D1に対応した大きさとなっている。詳しくは、間隔L1は、外径D1よりも若干大きい。
【0079】
層転写用フィルムカートリッジFCの着脱方向から見たときにおける、第2端E2と第2案内軸42との間隔L2は、巻取ケース36の外径D2に対応した大きさとなっている。詳しくは、間隔L2は、巻取ケース36の外径D2よりも若干大きく、供給リール31の外径D1よりも小さい。
【0080】
次に、本実施形態に係る層転写装置1の作用効果について説明する。
図4に示すように、層転写用フィルムカートリッジFCを第1の向きで筐体本体21に装着する場合には、層転写用フィルムカートリッジFCの第1被ガイド部71Bが筐体本体21の第1ガイドGD1に入ることができるとともに、2つの第2被ガイド部72Bが筐体本体21の2つの第2ガイドGD2に入ることができる。また、供給ケース32が、第1案内軸41と開口21Aの第1端E1の間を通ることができるとともに、巻取ケース36が、第2案内軸42と開口21Aの第2端E2の間を通ることができる。そのため、層転写用フィルムカートリッジFCを筐体本体21に対して第1の向きとしている場合には、層転写用フィルムカートリッジFCを筐体本体21に良好に装着することができる。
【0081】
一方、層転写用フィルムカートリッジFCの向きを、第1の向きに対して層転写用フィルムカートリッジFCの着脱方向に沿った軸X3回りに反転した第2の向きとした場合には、層転写用フィルムカートリッジFCの第1被ガイド部71Bが、装着位置から離れた位置で開口21Aの第2ガイドGD2側の縁と干渉するとともに、各第2被ガイド部72Bが、装着位置から離れた位置で開口21Aの第1ガイドGD1側の縁と干渉する。この際、幅広の第1被ガイド部71Bを幅狭の第2ガイドGD2に合わせても、幅の違いにより、第1被ガイド部71Bが第2ガイドGD2内に入ることはない。
【0082】
また、この際、外径の大きな供給ケース32は、装着位置から離れた位置で第2案内軸42または開口21Aの第2端E2と干渉する。そして、このように層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21と干渉した状態において、層転写用フィルムカートリッジFCは、装着位置への移動が筐体本体21で規制される。そのため、層転写用フィルムカートリッジFCの向きを第2の向きとした場合には、層転写用フィルムカートリッジFCを、筐体本体21に装着することはできない。
【0083】
また、第2の向きの層転写用フィルムカートリッジFCが装着位置から離れた位置で筐体本体21に干渉して装着位置への移動が筐体本体21で規制された状態において、層転写用フィルムカートリッジFCの少なくとも一部は、開口21Aから筐体本体21の外に突出している。本実施形態では、着脱方向において、層転写用フィルムカートリッジFCの半分以上の部分が、開口21Aから外に突出する。
【0084】
そのため、第2の向きの層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に支持された状態においては、層転写用フィルムカートリッジFCの少なくとも一部が開口21Aから突出することにより、カバー22を閉じることはできず、層転写を行うことができない。また、第1の向きの層転写用フィルムカートリッジFCが筐体本体21に支持された状態においては、層転写用フィルムカートリッジFCが装着位置に位置して開口21Aから突出しないので、カバー22を閉じることができ、層転写を行うことができる。
【0085】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
第1ガイドGD1および第2ガイドGD2が軸方向において非対称に構成されるので、ユーザが層転写用フィルムカートリッジFCを第2の向きで筐体本体21に誤って組み付けようとすると、層転写用フィルムカートリッジFCが装着位置まで到達する前に筐体本体21と干渉するので、層転写用フィルムカートリッジFCの誤組付を防止できる。
【0086】
第2の向きの層転写用フィルムカートリッジFCが装着位置から離れた位置で筐体本体21と干渉して、装着位置への移動が筐体本体21で規制された状態において、層転写用フィルムカートリッジFCの少なくとも一部が開口21Aから外に突出するので、ユーザが誤組付を即座に知ることができる。
【0087】
巻取ケース36の外径を供給ケース32の外径よりも小さくしたので、層転写後の層厚が小さくなった多層フィルムFを収容する巻取ケース36をコンパクトにして、層転写用フィルムカートリッジFCの小型化を図ることができる。
【0088】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0089】
第1ガイド、第2ガイド、第1被ガイド部および第2被ガイド部は、前記実施形態に限らず、どのような形状・位置・数であってもよく、例えば、
図6に示すように構成してもよい。
図6に示す形態では、筐体本体21は、2つの第1ガイドG11,G12と、2つの第2ガイドG21とを有している。2つの第1ガイドG11,G12と、2つの第2ガイドG21は、軸方向において非対称に構成されている。
【0090】
詳しくは、第1ガイドG11は、軸方向に直交する方向に延びる第1部分G111と、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向において第1部分G111の上流側に位置する第2部分G112とを有する。第1部分G111の軸方向および軸間方向に直交する方向に延びる2つの縁は、フィルムカートリッジFCの装着方向に平行に延びている。第1部分G111の幅、つまり軸間方向の寸法、詳しくは2つの縁の間隔は、第1の幅B3(
図7参照)となっている。第2部分G112は、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向上流側に向かうにつれて、徐々に幅広となるように形成されている。
【0091】
第1ガイドG12は、軸方向に直交する方向に延びる第1部分G121と、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向において第1部分G121の上流側に位置する第2部分G122とを有する。第1部分G121の軸方向および軸間方向に直交する方向に延びる2つの縁は、フィルムカートリッジFCの装着方向に平行に延びている。第1部分G121の幅、つまり軸間方向の寸法、詳しくは2つの縁の間隔は、第1の幅B3よりも大きな第2の幅B4(
図7参照)となっている。第2部分G122は、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向上流側に向かうにつれて、徐々に幅広となるように形成されている。
【0092】
各第2ガイドG21は、軸方向に直交する方向に延びる第1部分G211と、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向において第1部分G211の上流側に位置する第2部分G212とを有する。第1部分G211の軸方向および軸間方向に直交する方向に延びる2つの縁は、フィルムカートリッジFCの装着方向に平行に延びている。第1部分G211の幅、つまり軸間方向の寸法、詳しくは2つの縁の間隔は、第1ガイドG12の第1部分G121と同じ幅、つまり第1の幅B3よりも大きな第2の幅B4(
図7参照)となっている。第2部分G212は、層転写用フィルムカートリッジFCの装着方向上流側に向かうにつれて、徐々に幅広となるように形成されている。
【0093】
層転写用フィルムカートリッジFCは、第1被ガイド部として、巻取軸部35Aの一端部A11および供給軸部31Aの一端部A21を有している。また、層転写用フィルムカートリッジFCは、第2被ガイド部として、巻取軸部35Aの他端部A12および供給軸部31Aの他端部A22を有している。
【0094】
巻取軸部35Aの一端部A11は、層転写用フィルムカートリッジFCの軸方向の一端側の面、詳しくは巻取ギヤ35Cの第1連結部71とは反対側の面から突出している。供給軸部31Aの一端部A21は、層転写用フィルムカートリッジFCの軸方向の一端側の面、詳しくは第1連結部71の供給ケース32とは反対側の面から突出している。
【0095】
巻取軸部35Aの他端部A12および供給軸部31Aの他端部A22は、層転写用フィルムカートリッジFCの軸方向の他端側の面、詳しくは第2連結部72の巻取ケース36とは反対側の面から突出している。
【0096】
巻取軸部35Aの一端部A11は、層転写用フィルムカートリッジFCを第1の向きで筐体本体21へ装着するときに幅狭の第1ガイドG11で案内される部位であり、幅狭の第1ガイドG11の第1部分G111の幅B3に対応した大きさで形成されている。詳しくは、巻取軸部35Aの一端部A11の外径は、第1ガイドG11の第1部分G111の幅B3よりも若干小さい。供給軸部31Aの一端部A21は、層転写用フィルムカートリッジFCを第1の向きで筐体本体21へ装着するときに幅広の第1ガイドG12で案内される部位であり、幅広の第1ガイドG12の第1部分G121の幅B4に対応した大きさで形成されている。詳しくは、供給軸部31Aの一端部A21の外径は、第1ガイドG12の第1部分G121の幅B4よりも若干小さい。供給軸部31Aの一端部A21の外径は、第1ガイドG11の第1部分G111の幅B3よりも大きい。
【0097】
巻取軸部35Aの他端部A12は、層転写用フィルムカートリッジFCを第1の向きで筐体本体21へ装着するときに第2ガイドG21で案内される部位であり、第2ガイドG21の第1部分G211の幅B4に対応した大きさで形成されている。詳しくは、巻取軸部35Aの他端部A12の外径は、第2ガイドG21の第1部分G211の幅B4よりも若干小さい。供給軸部31Aの他端部A22は、層転写用フィルムカートリッジFCを第1の向きで筐体本体21へ装着するときに第2ガイドG21で案内される部位であり、第2ガイドG21の第1部分G211の幅B4に対応した大きさで形成されている。詳しくは、供給軸部31Aの他端部A22の外径は、第2ガイドG21の第1部分G211の幅B4よりも若干小さい。
【0098】
つまり、巻取軸部35Aの他端部A12の外径、供給軸部31Aの一端部A21の外径、および、供給軸部31Aの他端部A22の外径は、それぞれ同じ大きさ、詳しくは幅B3よりも大きな幅B4と略同じ大きさとなっている。また、巻取軸部35Aの一端部A11の外径は、巻取軸部35Aの他端部A12、供給軸部31Aの一端部A21、および、供給軸部31Aの他端部A22の外径よりも小さい。
【0099】
筐体本体21の開口21Aは、供給ケース32の軸方向の各端面に沿った2つの第3端E3と、第1ハンドル81の軸方向の各端面に沿った2つの第4端E4とを有している。2つの第3端E3は、軸方向に離れている。2つの第4端E4は、軸方向に離れている。
【0100】
図7に示すように、2つの第3端E3の軸方向における間隔D3は、供給ケース32の軸方向の寸法、すなわち供給ケース32の軸方向の各端面間の距離と略同じ大きさとなっている。詳しくは、間隔D3は、供給ケース32の軸方向の寸法よりも若干大きい。なお、この形態では、巻取ケース36の軸方向の寸法が、供給ケース32の軸方向の寸法と異なっている。詳しくは、巻取ケース36の軸方向の寸法、すなわち巻取ケース36の軸方向の各端面間の距離が、供給ケース32の軸方向の寸法よりも大きい。そのため、2つの第3端E3の軸方向における間隔D3は、巻取ケース36の軸方向の寸法よりも小さくなっている。
【0101】
2つの第4端E4の軸方向における間隔D4は、間隔D3よりも小さく、かつ、第1ハンドル81の軸方向の寸法よりも若干大きい。また、間隔D4は、供給ケース32の軸方向の寸法よりも小さい。
【0102】
この形態では、層転写用フィルムカートリッジFCを第2の向きで筐体本体21に装着しようとすると、供給軸部31Aの他端部A22が、幅狭の第1ガイドG11と干渉するので、層転写用フィルムカートリッジFCの装着位置への移動が第1ガイドG11で規制される。また、層転写用フィルムカートリッジFCを第2の向きで筐体本体21に装着しようとすると、軸方向の寸法が大きい巻取ケース36が、第3端E3または第4端E4と干渉するので、層転写用フィルムカートリッジFCの装着位置への移動が第3端E3または第4端E4で規制される。そのため、この形態でも、層転写用フィルムカートリッジFCの誤組付を防止することができる。
【0103】
なお、この形態では、巻取軸部35Aの一端部A11および供給軸部31Aの一端部A21を第1被ガイド部とし、巻取軸部35Aの他端部A12および供給軸部31Aの他端部A22を第2被ガイド部としたが、本発明はこれに限定されない。第1被ガイド部は、巻取リールの軸方向における巻取部の一端部と、供給リールの軸方向における供給部の一端部であればよく、例えば巻取ケースおよび供給ケースの軸方向の一端に設けた突起であってもよい。また、第2被ガイド部は、巻取リールの軸方向における巻取部の他端部と、供給リールの軸方向における供給部の他端部であればよく、例えば巻取ケースおよび供給ケースの軸方向の他端に設けた突起であってもよい。
【0104】
また、この形態では、巻取ケース36の軸方向の寸法を、供給ケース32の軸方向の寸法よりも大きくしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、巻取ケースの軸方向の寸法を、供給ケースの軸方向の寸法よりも小さくしてもよい。
【0105】
前記実施形態では、巻取ケース36の外径を供給ケース32の外径よりも小さくしたが、本発明はこれに限定されず、巻取ケースの外径を供給ケースの外径よりも大きくしてもよい。なお、この場合には、例えば巻取ケースの外径を供給ケースよりも小さくするものに比べ、巻取リールに付与する巻取トルクを小さくすることができる。ここで、巻取ケースが小さいと、巻取ケース内の多層フィルムの収容空間が小さくなるため、巻取トルクを大きくして多層フィルムの張力を強くしながら巻き取り、巻取ケース内の多層フィルムの径を小さくすることで、小さな収容空間内に使用済みの多層フィルムを収容する必要がある。これに対し、巻取ケースが大きいと、その制約が緩くなるため、巻取トルクを小さくできる。
【0106】
供給ケースおよび巻取ケースは、リールのすべてを収容していなくてもよく、リールの少なくとも一部を収容していればよい。例えば、供給ケースおよび巻取ケースは、リールのうち、リールの回転軸よりも装着方向下流側の半分を収容していればよい。また、供給ケースおよび巻取ケースは、複数の孔やスリットを有していてもよく、例えばメッシュ状に構成されていてもよい。
【0107】
前述した
図4の形態では、第2ガイドGD2の幅を第1ガイドGD1の幅よりも小さくしたが、本発明はこれに限定されず、例えば第2ガイドの幅を第1ガイドの幅よりも大きくしてもよいし、第2ガイドの幅と第1ガイドの幅を同じにしてもよい。
【0108】
前述した
図4の形態では、第2被ガイド部および第2ガイドの数をそれぞれ2つとしたが、本発明はこれに限定されず、第2被ガイド部および第2ガイドの数は、それぞれ1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。同様に、第1被ガイド部および第1ガイドの数は、いくつであってもよい。
【0109】
前記実施形態では、所定方向として軸方向を例示したが、本発明はこれに限定されず、所定方向は、例えば軸間方向であってもよい。
【0110】
前記実施形態では、連結部70を2つの連結部71,72で構成したが、本発明はこれに限定されず、連結部は1つ(例えば第1連結部のみ)であってもよいし、連結部はなくてもよい。また、連結部は、供給部と巻取部を連結していればよく、例えば、供給ケースと巻取ケースを連結していてもよい。
【0111】
前記実施形態では、層転写装置として、シートSのトナー像の上に転写層を転写するための装置を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シートに形成されたインク像の上に転写層を転写する装置や、転写層をサーマルヘッドでシートに転写する装置などであってもよい。
【0112】
前記実施形態では、箔を含む転写層F22を例示したが、本発明はこれに限定されず、転写層は、例えば、箔や着色材料を含まず、熱可塑性樹脂から形成されていてもよい。
【0113】
前記実施形態では、多層フィルムFを4層で構成したが、本発明はこれに限定されず、多層フィルムは、転写層と支持層を有していれば、層の数はいくつであってもよい。
【0114】
連結部は、供給ケースや巻取ケースに一体に形成されることで、供給ケースや巻取ケースを介して間接的に供給リールや巻取リールに連結されてもよい。連結部は、板状ではなく、供給ケースと巻取ケースとに固定される棒状でもよい。連結部は、樹脂製でもよいし金属製でもよい。支持部材は、連結部に回動可能に連結されていてもよい。
【0115】
巻取ケースや供給ケースを連結部に固定する構造は、どのような構造であってもよい。例えば、巻取ケースと供給ケースとを連結部に直接固定してもよい。また、例えば、
図3における、連結部71,72と巻取ケース36との間を中空の部材でつなぎ、巻取ケース36が連結部71,72に対して回動しないようにし、中空の部材の中に巻取リール35の巻取軸部35Aの端部を通して巻取ギヤ35C等を付けてもよい。この場合、中空の部材によって、巻取リール35は回転可能に支持される。
【0116】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 層転写装置
21 筐体本体
21A 開口
F 多層フィルム
F1 支持層
F22 転写層
FC 層転写用フィルムカートリッジ
GD1 第1ガイド
GD2 第2ガイド
S シート