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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】油圧緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/38 20060101AFI20231122BHJP
   F16F 9/58 20060101ALI20231122BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F16F9/38
F16F9/58 B
F16F9/32 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019091725
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2020186771
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591104000
【氏名又は名称】株式会社エッチ・ケー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】松平 真彦
(72)【発明者】
【氏名】矢部 健司
(72)【発明者】
【氏名】平野 伸
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-231881(JP,A)
【文献】実開昭63-051948(JP,U)
【文献】実開平03-127843(JP,U)
【文献】特開昭50-116875(JP,A)
【文献】特開2007-211949(JP,A)
【文献】登録実用新案第3060695(JP,U)
【文献】国際公開第2014/102861(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0137266(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側と車軸側の一方に取付けられるダンパシリンダと、
車体側と車軸側の他方に取付けられ、ダンパシリンダ内の油室を摺動して該ダンパシリンダに対して伸縮するピストンロッドと、
ピストンロッドのダンパシリンダから突き出ている突出端の側と、ダンパシリンダの外周との間に介装される懸架スプリングと、
ダンパシリンダの一端部に配置され、ピストンロッドの上記の突出端の側に設けられたバンプラバーが該ピストンロッドの収縮時に当接するバンプストッパと、
ピストンロッドと懸架スプリングの間の環状空間内で、ピストンロッドの上記の突出端の側からダンパシリンダの周囲に渡って延在されるダストブーツとを有してなる油圧緩衝器であって、
ダンパシリンダの外周に被着され、ダンパシリンダの軸方向で該ダンパシリンダに設けた係合部に支承される筒状支持体と、
筒状支持体の外周に設けたねじ部に螺着されて懸架スプリングを担持し、車高を調整可能にする車高調整シートとを有し、
前記バンプストッパは、外周に上記ねじ部を設けた筒状支持体におけるダンパシリンダの一端部寄りに位置することとなる端面に溶接され、ダンパシリンダの軸方向で該ダンパシリンダの一端部との間に間隙を介するとともに、該筒状支持体の該端面に溶接された該バンプストッパの外周に備えた取付部にダストブーツの端部が取付けられてなる油圧緩衝器。
【請求項2】
前記筒状支持体が、ダンパシリンダの一端部の側の小径外周部、及び該ダンパシリンダの軸方向で該小径外周部に肩状係合部を介してつながる大径外周部に被着され、ダンパシリンダの軸方向で該肩状係合部に支承される請求項1に記載の油圧緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧緩衝器として、特許文献1、2に記載の如く、車体側と車軸側の一方に取付けられるダンパシリンダと、車体側と車軸側の他方に取付けられ、ダンパシリンダ内の油室を摺動して該ダンパシリンダに対して伸縮するピストンロッドと、ピストンロッドのダンパシリンダから突き出ている突出端の側と、ダンパシリンダの外周との間に介装される懸架スプリングと、ダンパシリンダの一端部に配置され、ピストンロッドの上記の突出端の側に設けられたバンプラバーが該ピストンロッドの収縮時に当接するバンプストッパと、ピストンロッドと懸架スプリングの間の環状空間内で、ピストンロッドの上記の突出端の側からダンパシリンダの周囲に渡って延在されるダストブーツとを有してなるものがある。
【0003】
特許文献1に記載の油圧緩衝器にあっては、ダンパシリンダの周囲に延在させたダストブーツの端部を、ピストンロッドが最大限に突出するときにもバンプストッパの最下端部に当接させ、周辺の塵埃や雨水がダンパシリンダから突き出ているピストンロッドにまで及ぶことの確実な回避を図っている。
【0004】
特許文献2に記載の油圧緩衝器にあっては、ダンパシリンダの外周に被着され、ダンパシリンダの軸方向で該ダンパシリンダに設けた係合部に支承される筒状支持体と、筒状支持体の外周に設けたねじ部に螺着されて懸架スプリングを担持し、車高を調整可能にする車高調整シートとを有し、筒状支持体のねじ部に対する車高調整シートの螺着位置を調整し、車高調整可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-211949号公報
【文献】実登3060695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の油圧緩衝器にあっては、筒状支持体の外周に設けたねじ部に螺着されて懸架スプリングを担持し、車高を調整可能にする車高調整シートを備えず、車高を調整できない。
【0007】
また、特許文献2に記載の油圧緩衝器にあっては、バンプストッパの外周にダストブーツの端部が取付けられる取付部を備えず、塵埃や雨水がダンパシリンダから突き出ているピストンロッドに及ぶことの確実な回避を図ることができない。
【0008】
本発明の課題は、油圧緩衝器において、簡素な構成により、塵埃や雨水がダンパシリンダから突き出ているピストンロッドに及ぶことの確実な回避を図るとともに、車高調整可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体側と車軸側の一方に取付けられるダンパシリンダと、車体側と車軸側の他方に取付けられ、ダンパシリンダ内の油室を摺動して該ダンパシリンダに対して伸縮するピストンロッドと、ピストンロッドのダンパシリンダから突き出ている突出端の側と、ダンパシリンダの外周との間に介装される懸架スプリングと、ダンパシリンダの一端部に配置され、ピストンロッドの上記の突出端の側に設けられたバンプラバーが該ピストンロッドの収縮時に当接するバンプストッパと、ピストンロッドと懸架スプリングの間の環状空間内で、ピストンロッドの上記の突出端の側からダンパシリンダの周囲に渡って延在されるダストブーツとを有してなる油圧緩衝器であって、ダンパシリンダの外周に被着され、ダンパシリンダの軸方向で該ダンパシリンダに設けた係合部に支承される筒状支持体と、筒状支持体の外周に設けたねじ部に螺着されて懸架スプリングを担持し、車高を調整可能にする車高調整シートとを有し、前記バンプストッパは、外周に上記ねじ部を設けた筒状支持体におけるダンパシリンダの一端部寄りに位置することとなる端面に溶接され、ダンパシリンダの軸方向で該ダンパシリンダの一端部との間に間隙を介するとともに、該筒状支持体の該端面に溶接された該バンプストッパの外周に備えた取付部にダストブーツの端部が取付けられてなるようにしたものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記筒状支持体が、ダンパシリンダの一端部の側の小径外周部、及び該ダンパシリンダの軸方向で該小径外周部に肩状係合部を介してつながる大径外周部に被着され、ダンパシリンダの軸方向で該肩状係合部に支承されるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1)
(a)油圧緩衝器が、筒状支持体の外周に設けたねじ部に螺着されて懸架スプリングを担持し、車高を調整可能にする車高調整シートを備えるとともに、該筒状支持体の端面に取着されたバンプストッパの外周にダストブーツの端部が取付けられる取付部を備えるものとされた。従って、バンプストッパを筒状支持体の端面に取着するという簡素な構成によってバンプストッパ及び筒状支持体の加工及び組立性を向上しながら、バンプストッパの外周の取付部に取付けられたダストブーツの存在により、塵埃や雨水がダンパシリンダから突き出ているピストンロッドに及ぶことの確実な回避を図るとともに、筒状支持体の外周に螺着された車高調整シートの存在により、車高調整できる。
【0013】
(b)上記(a)において、バンプストッパが、ダンパシリンダの軸方向で該ダンパシリンダに設けた係合部に支持される筒状支持体の端面に取着され、ダンパシリンダの軸方向で該ダンパシリンダの一端部との間に間隙を介するものとされた。従って、懸架スプリングが車高調整シートに及ぼす荷重も、バンプラバーがバンプストッパに及ぼす荷重も、筒状支持体を経てダンパシリンダに設けた係合部に及んで支承される。このことは、バンプストッパと筒状支持体との結合部に圧縮応力のみが作用するものになり、それらの両者の結合に強固を要さずその簡素を図ることができることを意味する(バンプストッパがダンパシリンダの軸方向で該ダンパシリンダの一端部との間に間隙を介さずに当接されているときには、バンプストッパと筒状支持体との結合部に引張応力が作用し、それらの両者間に強固な結合が必要になる)。
【0014】
(c)前述(a)において、ダンパシリンダの外周に被着された筒状支持体の外周に車高調整シートが螺着するねじ部を設けながら、該ダンパシリンダの周囲に延在されるダストブーツの端部がバンプストッパの外周に備えた取付部に取付けられる。従って、ダストブーツの端部が筒状支持体の外周のねじ部に触れて損傷するおそれもない。
【0015】
(請求項2)
(d)筒状支持体は、ダンパシリンダの一端部の側の小径外周部、及び該ダンパシリンダの軸方向で該小径外周部に肩状係合部を介してつながる大径外周部に被着され、ダンパシリンダの軸方向で該肩状係合部に支承される。従って、バンプストッパが取着された筒状支持体を、ダンパシリンダの外周に形成した簡素な肩状係合部によって簡易かつ確実に支承できる。
【0016】
(請求項
(e)バンプストッパは筒状支持体の端面に溶接される。この溶接は、前述(b)によって強固を要さず、例えばロー付等の簡素な溶接構造で足りるものになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の一実施形態に係る油圧緩衝器を示す斜視図である。
図2図2は油圧緩衝器を示す断面図である。
図3図3は油圧緩衝器を示す分解斜視図である。
図4図4は油圧緩衝器の要部拡大断面図である。
図5図5は車高調整組立体を示す斜視図である。
図6図6は車高調整組立体を示す断面図である。
図7図7は車高調整組立体を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る油圧緩衝器(ショックアブソーバ)100は、図1乃至図4に示す如く、車体側と車軸側の一方、本実施形態では車軸側に不図示のナックルを介して取付けられるダンパシリンダ10を有する。本実施形態では、円筒状インナチューブ11と円筒状アウタチューブ12によってダブルチューブ形式のダンパシリンダ10を構成している。ダンパシリンダ10の上端部にはロッドガイド装置13が固定され、ロッドガイド装置13はインナチューブ11の上端部とアウタチューブ12の上端加締部12Aとの間に挟持されている。ダンパシリンダ10の下端部はアウタチューブ12の下端内径部に挿着されて固定されたボトムキャップ12Bによって封着されている。インナチューブ11の内部には油室14が形成され、インナチューブ11とアウタチューブ12の間の環状空間にはリザーバ室15が形成される。油室14とリザーバ室15には作動油が充填され、リザーバ室15におけるロッドガイド装置13の側には加圧ガスが封入されている。
【0019】
油圧緩衝器100は、車体側と車軸側の他方、本実施形態では車体側に固定される車体側取付ブラケット20に取付けられ、ダンパシリンダ10を構成しているインナチューブ11内の油室14を摺動して該ダンパシリンダ10に対して伸縮するピストンロッド30を有する。本実施形態において、ピストンロッド30はダンパシリンダ10に設けたロッドガイド装置13を貫通して外方へ突き出る突出端に固定されたピローブロック21を介して車体側取付ブラケット20に取付けられる。ピローブロック21はナット22によってピストンロッド30の上記の突出端に固定される。ピストンロッド30におけるダンパシリンダ10への挿入端にはピストン31が固定され、このピストン31がインナチューブ11の油室14内で該インナチューブ11に摺動自在に収容される。
【0020】
油圧緩衝器100は、ピストン31にピストンバルブ装置32を備えるとともに、インナチューブ11の下端部にベースバルブ装置33を備える。ピストンバルブ装置32はピストン31を挟む油室14の上室と下室とを連通する圧側油路と伸側油路に、圧側減衰バルブと伸側減衰バルブを設置して構成される。ベースバルブ装置33は油室14の下部とリザーバ室15とを連通する圧側油路と伸側油路に、圧側減衰バルブと伸側減衰バルブを設置して構成される。ピストンバルブ装置32とベースバルブ装置33は、油圧緩衝器100の圧縮行程で圧側減衰力を発生するとともに、油圧緩衝器100の伸長行程で伸側減衰力を発生し、後述する懸架スプリング40の衝撃力吸収に伴うダンパシリンダ10とピストンロッド30との伸縮振動を抑制する。
【0021】
油圧緩衝器100は、ピストンロッド30のダンパシリンダ10から突き出ている上記の突出端の側と、ダンパシリンダ10の外周との間に介装される懸架スプリング40を有する。懸架スプリング40は、車体側取付ブラケット20の下面に設けられるばね受41と、ダンパシリンダ10の外周に後述する如くに設けられる車高調整シート83との間に介装される。車両が路面から受ける衝撃力が懸架スプリング40のばね力によって吸収される。
【0022】
油圧緩衝器100は、ダンパシリンダ10の一端部(上端部)に配置されるバンプストッパ50を有する。バンプストッパ50は、ピストンロッド30の上記の突出端の側に設けられたバンプラバー60が該ピストンロッド30の収縮時に当接する。本実施形態において、バンプストッパ50は、ダンパシリンダ10におけるアウタチューブ12の上端側の周囲に配置され、ピストンロッド30の収縮とともに下降してくるバンプラバー60を受け止め、ダンパシリンダ10に対して最大限まで収縮したピストンロッド30が他の部品に接触して生ずる底付きを回避する。
【0023】
油圧緩衝器100は、ピストンロッド30と懸架スプリング40の間の環状空間内で、ピストンロッド30の上記の突出端の側からダンパシリンダ10の周囲に渡って延在されるダストブーツ70を有する。ダストブーツ70の上端部は、車体側取付ブラケット20の下面に設けたばね受41と、懸架スプリング40の上端部との間に介装されて挟持される。ダストブーツ70の下端部の取付構造については後述する。ダストブーツ70は、ゴム等の弾性体からなる蛇腹状をなし、ダンパシリンダ10に対するピストンロッド30の伸縮に応じて伸縮し、ダンパシリンダ10から突き出ているピストンロッド30の全範囲を被覆する。ダストブーツ70は、周辺の塵埃や雨水がダンパシリンダ10から突き出ているピストンロッド30にまで及ぶことを回避する。
【0024】
しかるに、本実施形態の油圧緩衝器100にあっては、図5乃至図7に示す如くの車高調整組立体100Aを有し、車高調整組立体100Aはダンパシリンダ10の軸方向で該ダンパシリンダ10に設けた係合部12Tに支承される筒状支持体80を有する。本実施形態の筒状支持体80は、ダンパシリンダ10におけるアウタシリンダ12の外周に被着される長尺円筒状をなし、上端部の側の小径内周部80S、及び該小径内周部80Sに下向きに拡径するテーパ状の係止部80Tを介してつながる下端部の側の大径内周部80Lを備える。これにより、筒状支持体80は、小径内周部80Sと大径内周部80Lのそれぞれをアウタチューブ12の一端部(上端部)の側の小径外周部12Sと、該アウタチューブ12の軸方向で該小径外周部12Sに下向きに拡径するテーパ状の肩状係合部12Tを介してつながる大径外周部12Lのそれぞれに被着され、その係止部80Tをアウタチューブ12の軸方向で上記肩状係合部12Tに支承される。肩状係合部12Tに支承された筒状支持体80は、その下端部に螺合された止ねじ81によってアウタチューブ12の大径外周部12Lに固定される。
【0025】
また、車高調整組立体100Aは、筒状支持体80の外周に設けたねじ部82に螺着されて懸架スプリング40の下端部を担持し、車高調整可能にする車高調整シート83を有する。筒状支持体80のねじ部82にはロックナット84も螺着され、ロックナット84は車高調整シート83の下端面に当接して該車高調整シート83を当該ねじ部82への螺着位置に固定可能にする。車高調整シート83とロックナット84は、レンチ等の回転操作工具が係合し得る係合部83A、84Aをそれらの外周の複数位置に備える。車高調整シート83を筒状支持体80のねじ部82に対して螺動し、ダンパシリンダ10の軸方向における車高調整シート83の螺着位置を変更することで車高を調整可能にする。
【0026】
また、車高調整組立体100Aにおいて、バンプストッパ50は、アウタチューブ12の肩状係合部12Tに支承された筒状支持体80におけるダンパシリンダ10の一端部(アウタチューブ12の上端加締部12A)寄りに位置することとなる端面(上端面)80Aに取着され、ダンパシリンダ10の軸方向で該ダンパシリンダ10の一端部(アウタチューブ12の上端加締部12A)の上端面との間に間隙G(図4)を介するとともに、ダストブーツ70の下端部が取付けられる取付部51を該バンプストッパ50の外周に備える。本実施形態のバンプストッパ50は、筒状支持体80の端面80Aにロー付等によって溶接される。W(図4)は溶接部を示す。
【0027】
尚、本実施形態の取付部51は、バンプストッパ50の外周に凹設された環状溝51からなり、ダストブーツ70に下端部が係止されて取付けられる。但し、取付部51は、バンプストッパ50の外周に凸設された環状凸部等からなるものでも良い。
【0028】
従って、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)油圧緩衝器100が、筒状支持体80の外周に設けたねじ部82に螺着されて懸架スプリング40を担持し、車高を調整可能にする車高調整シート83を備えるとともに、該筒状支持体80の端面80Aに取着されたバンプストッパ50の外周にダストブーツ70の下端部が係止できる環状溝51を備えるものとされた。従って、溝付きバンプストッパ50を筒状支持体80の端面80Aに取着するという簡素な構成によってバンプストッパ50及び筒状支持体80の加工及び組立性を向上しながら、バンプストッパ50の外周の環状溝51に係止できるダストブーツ70の存在により、塵埃や雨水がダンパシリンダ10から突き出ているピストンロッド30に及ぶことの確実な回避を図るとともに、筒状支持体80の外周に螺着された車高調整シート83の存在により、車高調整できる。
【0029】
(b)上記(a)において、バンプストッパ50が、ダンパシリンダ10の軸方向で該ダンパシリンダ10に設けた係合部12Tに支持される筒状支持体80の端面80Aに取着され、ダンパシリンダ10の軸方向で該ダンパシリンダ10の一端部との間に間隙Gを介するものとされた。従って、懸架スプリング40が車高調整シート83に及ぼす荷重も、バンプラバー60がバンプストッパ50に及ぼす荷重も、筒状支持体80を経てダンパシリンダ10に設けた係合部12Tに及んで支承される。このことは、バンプストッパ50と筒状支持体80との結合部に圧縮応力のみが作用するものになり、それらの両者の結合に強固を要さずその簡素を図ることができることを意味する(バンプストッパ50がダンパシリンダ10の軸方向で該ダンパシリンダ10の一端部との間に間隙Gを介さずに当接されているときには、バンプストッパ50と筒状支持体80との結合部に引張応力が作用し、それらの両者間に強固な結合が必要になる)。
【0030】
(c)前述(a)において、ダンパシリンダ10の外周に被着された筒状支持体80の外周に車高調整シート83が螺着するねじ部82を設けながら、該ダンパシリンダ10の周囲に延在されるダストブーツ70の下端部がバンプストッパ50の外周に備えた環状溝51に係止される。従って、ダストブーツ70の下端部が筒状支持体80の外周のねじ部82に触れて損傷するおそれもない。
【0031】
(d)筒状支持体80は、ダンパシリンダ10の一端部の側の小径外周部12S、及び該ダンパシリンダ10の軸方向で該小径外周部12Sに肩状係合部12Tを介してつながる大径外周部12Lに被着され、ダンパシリンダ10の軸方向で該肩状係合部12Tに支承される。従って、バンプストッパ50が取着された筒状支持体80を、ダンパシリンダ10の外周に形成した簡素な肩状係合部12Tによって簡易かつ確実に支承できる。
【0032】
(e)バンプストッパ50は筒状支持体80の端面80Aに溶接される。この溶接は、前述(b)によって強固を要さず、例えばロー付等の簡素な溶接構造で足りるものになる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、バンプストッパ50と筒状支持体80は必ずしも溶接部W等によって結合されず、バンプストッパ50が筒状支持体80の端面80Aの上に乗せ置かれるものでも良い。
【0034】
また、バンプストッパ50と筒状支持体80は単一素材の削り出し、又は鋳造等によって一体成形されるものでも良い。
【0035】
また、係合部12T及び係止部80Tは必ずしもテーパ状であることを要しない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、油圧緩衝器において、簡素な構成により、塵埃や雨水がダンパシリンダから突き出ているピストンロッドに及ぶことの確実な回避を図るとともに、車高調整可能にする。
【符号の説明】
【0037】
100 油圧緩衝器
10 ダンパシリンダ
12S 小径外周部
12L 大径外周部
12T 肩状係合部(係合部)
30 ピストンロッド
40 懸架スプリング
50 バンプストッパ
51 取付部(環状溝)
60 バンプラバー
70 ダストブーツ
80 筒状支持体
80A 端面
82 ねじ部
83 車高調整シート
G 間隙
W 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7