(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
A61B5/08
(21)【出願番号】P 2019212228
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000101204
【氏名又は名称】株式会社oneA
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 優
(72)【発明者】
【氏名】大越 健史
(72)【発明者】
【氏名】葛原 弘安
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕史
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068436(JP,A)
【文献】特開2003-260033(JP,A)
【文献】特開2009-066356(JP,A)
【文献】特開2018-033604(JP,A)
【文献】実開昭59-111106(JP,U)
【文献】国際公開第2016/194308(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538、5/06-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者頸部の周方向に沿って装着可能に構成された生体情報測定装置であって、
被験者頸部の周方向に沿うように略円弧状に形成された
弾性を有する板状の装着部と、
被験者頸部に当接して被験者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記装着部と前記生体情報取得部の一端部同士を前記装着部と前記生体情報取得部との間の開度を調整できるように連結する回動軸部と、前記回動軸部を軸心として前記生体情報取得部を内側に向かって付勢する第1付勢手段とを有するヒンジ部とを備え
、
前記ヒンジ部は、前記生体情報取得部が外側に開かれて、前記装着部と前記生体情報取得部の内面同士がフラットになる展開位置において、当該展開位置より外側に広がらないように係止する係止部を備える
ことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体情報測定装置において、
前記生体情報取得部は、内面から内側に向かって突出し、前記装着部が被験者頸部に装着された際に被験者頸部に当接する当接面が形成された突出部を有し、
前記突出部は、前記当接面に受ける外力に応じて、前記装着部の内面に対する前記当接面の角度が変わるように構成されている
ことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生体情報測定装置において、
前記突出部は、前記当接面に受ける外力に応じて、前記装着部からの突出量が変わるように構成され、
前記突出部を突出方向に付勢する第2付勢手段を備える
ことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の生体情報測定装置において、
前記生体情報取得部で取得された生体情報を処理する回路が搭載された回路基板を備え、
前記生体情報取得部と前記回路基板との間に異物の侵入を防ぐための隔壁が設けられている
ことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の生体情報測定装置において、
前記ヒンジ部には、前記生体情報取得部と前記装着部とを着脱可能にする着脱機能が設けられている
ことを特徴とする生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の生体情報を取得するネックバンド式の生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報測定装置として、呼吸音を測定するための呼吸音測定装置、心拍を測定するための心拍測定装置、血中酸素濃度を測定する装置等が知られている。呼吸音測定装置としては、例えば、携帯端末等を用いて鼾を検出する方法が知られている。また、特許文献1に示されるように、マイクロフォンを各患者の首の周りに取り付けて、患者の睡眠中にマイクロフォンが受信した音を記録する方法が知られている。
【0003】
ところで、睡眠中の鼾により周囲の人に迷惑がかかったり、鼾から無呼吸状態となり閉塞性無呼吸症候群を併発するおそれがある。そこで、鼾や睡眠時無呼吸状態を計測する呼吸音測定装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、呼吸音測定装置を用いて睡眠時の呼吸を判定する場合、鼾音の判別だけでは十分ではなく、通常睡眠状態の呼吸音すなわち「鼾と比較して微弱な呼吸音がある状態」と、睡眠時無呼吸状態すなわち「実質的に呼吸音がない状態」とを判別する必要がある。通常睡眠時における呼吸音は、鼾と比較するとその音量は小さく、低呼吸状態の場合はさらに小さくなる。したがって、前述のような携帯端末等を用いて、呼吸音に基づいて通常睡眠状態(低呼吸状態も含む)と睡眠時無呼吸状態を判別するのは困難であり、被験者頸部等から直接気道の呼吸音を取得するのが望ましい。
【0006】
ところが、首回りのサイズは、被験者毎に異なるという問題がある。例えば、一般的な男性の場合、首周りのサイズは36~47cm程度であるが一般的なサイズ外の男性もいる。そうすると、首周りの細い被験者は首と測定装置との間に隙間ができやすくなる一方で、首周りの太い被験者は装着時の締め付けがきつくなるという問題がある。このような問題に対し、一般的には、ネック取付部について数種類のサイズラインナップ(例えば、S,M,L等)を設けることが行われている。しかしながら、同じサイズ帯のネックバンドを使用する被験者の中でも首の形状や首周りの寸法は様々なので、呼吸音の測定精度や装着性の面において、被験者によるばらつきが生じる恐れがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、首周りの異なる被験者に対して装着時の違和感をできるだけ少なくしつつ、被験者頸部への密着性を確保できるネックバンド式の生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る生体情報測定装置は、被験者頸部の周方向に沿って装着可能に構成された生体情報測定装置であって、被験者頸部の周方向に沿うように略円弧状に形成された板状の装着部と、被験者頸部に当接して被験者の生体情報を取得する生体情報取得部と、前記装着部と前記生体情報取得部の一端部同士を前記装着部と前記生体情報取得部との間の開度を調整できるように連結する回動軸部と、前記回動軸部を軸心として前記生体情報取得部を内側に向かって付勢する第1付勢手段とを有するヒンジ部とを備える、ことを特徴とする。
【0009】
本態様によると、装着部と生体情報取得部とをヒンジ部で連結し、装着部と生体情報取得部との開度を調整できるので、被験者の首周りのサイズによらず装着することができる。また、生体情報取得部を内側に向かって付勢するようにしているので、被験者頸部の皮膚への密着性を高めることができる。
【0010】
前記生体情報測定装置において、前記生体情報取得部は、内面から内側に向かって突出し、前記装着部が被験者頸部に装着された際に被験者頸部に当接する当接面が形成された突出部を有し、前記突出部は、前記当接面に受ける外力に応じて、前記装着部の内面に対する前記当接面の角度が変わるように構成されている、としてもよい。
【0011】
本態様によると、生体情報取得部は、被験者頸部にネックバンドが装着された際に、被験者頸部から受ける外力に応じてネックバンドの内面に対する当接面の角度が変わるように構成されている。すなわち、被験者頸部の表面の傾きに追従して生体情報取得部の当接面が傾くようになっている。生体情報取得部が内側に折れ曲がった場合、生体情報取得部の当接面の角度が変わるが、このような構成にすることにより、被験者頸部の皮膚への追従性を確保することができる。
【0012】
前記生体情報測定装置において、前記突出部は、前記当接面に受ける外力に応じて、前記装着部からの突出量が変わるように構成され、前記突出部を突出方向に付勢する第2付勢手段を備える、としてもよい。
【0013】
これにより、生体情報取得部の被験者頸部への密着性を高めることができる。
【0014】
前記生体情報測定装置において、前記第2付勢手段の付勢力は、前記第1付勢手段の付勢力よりも弱い、としてもよい。
【0015】
このような構成にすることで、被験者の体型(特に、首周りの大きさ)に応じた大枠の位置合わせを第1付勢手段の作用により行い、第2付勢手段の作用により、被験者頸部の皮膚に沿うように突出部の当接面の角度を調節する、という動作をより好適に実現することができる。また、第2付勢手段の作用により、被験者頸部への突出部の押圧力が緩和されるので、頸部(首)のサイズが異なる被験者に対して装着時の違和感をできるだけ少なくすることができる。
【0016】
前記生体情報測定装置において、前記生体情報取得部で取得された生体情報を処理する回路が搭載された回路基板を備え、前記生体情報取得部と前記回路基板との間に異物の侵入を防ぐための隔壁が設けられている、としてもよい。
【0017】
これにより、生体情報取得部の可動性を確保しつつ、外部からの異物が回路基板に侵入することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、被験者頸部から受ける外力に応じて被験者頸部と当接する当接面の角度が変わるので、生体情報測定装置の被験者頸部への密着性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図11】首周りが標準の被験者が呼吸音測定装置を装着した例を示す模式図
【
図12】首の細い被験者が呼吸音測定装置を装着した例を示す模式図
【
図13】首の太い被験者が呼吸音測定装置を装着した例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0021】
<呼吸音測定装置の構成>
図1に示すように、呼吸音測定装置1は、被験者Pが、就寝前に、頸部Pnに装着し、睡眠時における吸気・呼気の気流音(以下、単に呼吸音という)を測定するためのものである。具体的に、呼吸音測定装置1は、ネックバンド型の装置であり、被験者頸部の周方向に沿って装着可能に構成されている。
【0022】
呼吸音測定装置1は、ネックバンド10と、ネックバンド10の内面10aから内側(被験者Pの頸部Pn側)に向かって突出するように設けられた突出部70(
図2参照)とを備える。本実施形態の呼吸音測定装置1は、突出部70の先端の当接面71a(
図2参照)を被験者頸部Pnの皮膚に当接させることで、被験者Pの呼吸音を取得するものである。
【0023】
ネックバンド10は、例えば、被験者頸部Pnに沿うように円弧状(例えば、略C字状)に形成される。ネックバンド10は、被験者Pにより、開口部分を両側に広げられた後、頸部Pnの後ろ側から頸部Pnに向かって装着され、頸部Pnを周方向の外側から挟み込むように構成されている。
【0024】
以下の説明では、被験者Pの呼吸音測定装置1の装着状態を基準として、上下方向及び左右方向を定義する。また、被験者Pの正面(胸)側を前、背中側を後と定義する。また、呼吸音測定装置1の装着状態を基準として、「被験者側」を定義するものとし、後述する装着部30(
図2参照)や測定部40(
図2参照)等の説明に際して、それぞれの被験者側を「内」、その反対側を「外」と呼ぶ場合がある。
【0025】
図2に示すように、ネックバンド10は、頸部Pnの周方向に沿って装着可能に円弧状(例えば、略半円形状)に形成された装着部30と、頸部Pnに当接して被験者Pの呼吸音を測定するための測定部40とが、ヒンジ部60(
図6参照)で連結されている。そして、後述する測定部40が展開位置にある状態おいて、ネックバンド10全体として円弧状体となるように構成される。
【0026】
換言すると、装着部30の一方の端部はネックバンド10の一方の開放端部を構成する。装着部30の他方の端部には、測定部40の基端部がヒンジ部60を介して連結される。測定部40の先端部は、ネックバンド10の他方の開放端部を構成する。なお、以下の説明では、ネックバンド10の被験者頸部Pn側の面を「ネックバンド10の内面10a」または単に「内面10a」と呼ぶ。すなわち、「ネックバンド10の内面10a」は、装着部30の内側(頸部Pn側)の面と測定部40の内側(頸部Pn側)の面とを含む概念である(
図2参照)。
【0027】
装着部30は、(1)被験者Pが両手でネックバンド10の両開放端部を両側に広げて首に装着することができ、(2)被験者Pが手を離した際にネックバンド10の内面10aの少なくとも一部が被験者頸部Pnに密着し、(3)継続的な使用に耐えうる強度を有するのが好ましい。上記(1)~(3)を満たしていれば、ネックバンド10の具体的な構造及び構成材料は、特に限定されないが、例えば、装着部30として板バネの周囲をエラストマー樹脂で取り巻いた弾性構造を採用したり、弾性があるポリプロピレンの樹脂を採用することができる。ただし、本開示の技術は、装着部30に板バネの構造を採用することや、エラストマー樹脂、ポリプロピレンの樹脂を用いることに限定されるものではない。
【0028】
図5及び
図6に示すように、測定部40は、内ケース42と外ケース43とを嵌め合わせることで内側に収容空間Qが形成された収容ケース41を有する。収容ケース41の収容空間Qには、マイクロフォン74が取り付けられた第1基板73(
図6参照)と、マイクロフォン74で取得された呼吸音を処理する電子部品等が実装された第2基板50と、呼吸音測定装置1の各構成要素に電源を供給するためのバッテリ51とが収容される。第1基板73と第2基板50との間は、フレキシブルケーブル76で接続される。なお、収容ケース41の形成材料は、装着部30と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0029】
図2に戻り、収容ケース41の内ケース42は、外側に凸となるように丸みを帯びて形成された底板と、前述の収容空間Qを取り囲むように底板の上下端及び先端から外側に向かって立ちあがる側板とを備える。
【0030】
内ケース42の底板には、先端側における上下の略中央位置に円形状の第1開口部42aが形成され、周方向及び上下の略中央位置に矩形状の第2開口部42bが形成される。第1開口部42aには、突出部70が収容ケース41の内側から挿通されて抜け止めされる。第2開口部42bは、例えば、呼吸音測定装置1が被験者頸部Pnに装着されたか否かを検出するために光学式の人検知センサ59を用いる場合に、測定光を通過させるための測定窓として用いられる。なお、第2開口部42bは、必ずしも必要ではなく、例えば、人検知センサ59を光学式以外の方式にする場合や人検知センサ59自体を設けない場合には不要である。
【0031】
図示はしないが、内ケース42の両側壁の基端側(装着部30側)には、それぞれ、後述するヒンジ部60の回動軸部61(
図5参照)を回動可能に支持するための軸受けが設けられる。軸受けの構成は、特に限定されないが、例えば、内ケース42の両側壁の基端部に、回動軸部61の外形よりも若干大きい軸挿通孔が形成される。
【0032】
収容ケース41の外ケース43は、内ケース42の底板と対向するように配置された上板と、前述の収容空間Qを取り囲むように上板の上下端及び先端から内側に向かって立ちあがる側板とを備える。外ケース43の上板の基端側は、ヒンジ部の一部を覆うように形成されている。収容ケース41は、内ケース42と外ケース43の位置合わせをした後に、内ケース42の底板からに形成されたねじ穴45に挿入されたねじ46によりねじ止め固定される(
図6参照)。
【0033】
図2に示すように、突出部70は、先端(被験者側の端)に頸部Pnに当接させるための平面状の当接面71aを有し、基端側に突出部70を収容ケース41の第1開口部42aに抜け止めするための抜止部71b(
図10参照)が一体的に形成された突出部本体71を有する。このように、突出部70に当接面71aを設けることで頸部Pnとの接触面積を広くすることができる。これにより、呼吸音が外に漏れるのを防ぎ、集音効果を高めることができる。突出部本体71は、後述する第2導音空間RS2の円筒形状を維持するのに十分な強度があるのが好ましい。なお、
図10に示すように、突出部本体71の内側に中空空間71dを設けて、強度を維持しつつ、軽量化を図るようにしてもよい。
【0034】
突出部本体71を構成する材料は、第2導音空間RS2の円筒形状を維持するのに十分な硬度(所定の硬度)があればよく、特に限定されないが、例えば、突出部本体71を構成する材料として、プラスティック樹脂(例えば、ポリオキシメチレン)を用いることができる。また、例えば、硬度50以上のポリプロピレンやシリコン樹脂を用いてもよい。
【0035】
図2に示すように、突出部本体71(突出部70)の先端には、ネックバンド10が被験者Pに装着された際に、被験者頸部Pnから呼吸音を導入するための導音口71eが開口されている。
図10に示すように、突出部本体71の基端面は、中央部分が略矩形状に凹んでいて(71g参照)、矩形状の第1基板73(
図6参照)が嵌め込まれている。第1基板73の内表面の略中央には、マイクロフォン74(
図6参照)が取り付けられている。
【0036】
図6に示すように、突出部本体71には、導音口71eから導入された呼吸音をマイクロフォン74に導くための導音空間RSが設けられている。具体的には、第1基板73のマイクロフォン74と対応する位置に、表裏方向に貫通する導音孔73aが形成されている。この導音孔73aにより形成される空間は、導音空間RSの一部を構成するものであり、第1導音空間RS1と呼ぶものとする。また、突出部本体71の導音口71e(
図2参照)には、マイクロフォン74に向かって内径が次第に狭まるテーパー状の集音部71f(
図2参照)が設けられている。この集音部71fにより形成される空間は、導音空間RSの一部を構成するものであり、第3導音空間RS3と呼ぶものとする。第1導音空間RS1と第3導音空間RS3との間は、円筒状の第2導音空間RS2で接続されている。なお、第2導音空間RS2の内壁面に当接するように円筒状の遮音材77を設けてもよい。このような遮音材77を設けることで、ネックバンド10に外部から与えられた衝撃等により生じた振動が伝搬し、導音空間RS内に固体伝搬音が発生するのを抑えることができる。ネックバンド10の振動は、例えば、被験者Pが就寝中に体位変動をした場合等に呼吸音測定装置1が寝具や被験者の手などでこすれることにより生じる。
【0037】
なお、本開示において、マイクロフォンとは、音波を電気信号に変換する機器や装置や回路、及び、そのような機器等に用いるMEMSマイクロフォンのような音センサ等を広く含む概念で使用するものとし、その具体的な構成は特に限定されない。一方で、本実施形態では、説明の便宜上、「マイクロフォン」との用語を、MEMSマイクロフォンのような呼吸音を取得するための音センサについて用いるものとする。ただし、説明の便宜上そのようにしているのであって、「マイクロフォン」との用語の意味を限定することを意図するものではない。
【0038】
遮音材77を形成する材料は、特に限定されないが、ネックバンド10からの固体振動を吸収しつつ、頸部Pnから取得されて第2導音空間RS2を通過する呼吸音の音波は吸収しにくいような素材で形成されるのが好ましい。遮音材77には、例えば、シリコンゴムのような弾性材を好適に使用できる。
【0039】
突出部本体71の基端部には、鉤状の突起71c(
図10参照)が設けられている。突起71cには、第1基板73を覆うカバー75が取り付けられる。また、カバー75と外ケース43の天板との間における前述の収容空間Qには、圧縮コイルばね78が設けられている。そして、ネックバンド10が被験者頸部Pnに装着された際に、被験者頸部Pnからの力が突出部70の当接面71aに加わると、圧縮コイルばねの作用により、被験者頸部Pnの形状に沿うように当接面71aの角度が変わり、当接面71aが被験者頸部Pnの皮膚に密着し、圧縮コイルばね78の弾性力に応じた力で押し付けられる。さらに、頸部Pnからの力が圧縮コイルばね78の付勢力よりも強い場合には、突出部70が収容ケース41の収容空間Q内に押し込まれ、突出部70のネックバンドの内端面からの突出量が変わる。これにより、被験者頸部Pnの皮膚への密着性が高まるとともに、被験者Pの肌への食い込みの痕が残りにくい。突出部70の動きについては、後ほど具体例を示して説明する。
【0040】
ここで、突出部70と内ケース42の第1開口部42aとの間には、被験者の汗(湿気を含む)、塵、埃等の異物(以下、単に異物という)の侵入を防ぐための防塵壁を設けていない。これにより、突出部70の可動性を高めることができる。一方で、突出部70が収容空間Qに押し込まれた際に、突出部70と内ケース42の第1開口部42aとの隙間から侵入した異物が第2基板50やバッテリ51に侵入しないように、収容空間Qには、第1開口部42aと、第2基板50やバッテリ51のような電子部品等との間を仕切る隔壁44aが設けられる。
【0041】
第2基板50は、内ケース42の底板(被験者側の板)上に、測定部40の長手方向(ネックバンド10の周方向)に沿って延びるように配置されている。
【0042】
第2基板50には、前述の人検知センサ59の他に、呼吸音測定装置1の各構成要素に電源を供給するためのバッテリ51、測定結果を記憶するための記憶部(図示省略)、測定結果を外部機器(例えば、端末機器80)に送信するための通信モジュール53、体位/体動を検出するための加速度センサ(図示省略)、外部機器との通信及びバッテリへの充電をするためのコネクタ55、被験者に刺激を与えるためのバイブレータ56、電源ボタン57(
図2参照)、及び、被験者用のモニタランプ58(
図2参照)等が実装されている。
【0043】
図示はしないが、測定部40の側板には、外側に向かって開口する挿入口が設けられており、挿入口を介して、コネクタ55に通信用/充電用のケーブルが差し込めるようになっている。
【0044】
図5に示すように、バイブレータ56は、例えば、被験者Pが無呼吸状態のときや被験者Pの鼾が大きいときに、被験者頸部Pnに振動を伝えて姿勢を変化させやすくする観点から、収容ケース41と密着するように取り付けられている。
【0045】
図2に示すように、電源ボタン57は、例えば、測定部40の側板の外側に押しボタンが突出する構成であって、被験者Pが呼吸音測定装置1の電源のオン/オフ操作ができるようになっている。
【0046】
モニタランプ58は、例えば、発光ダイオードで構成されている。例えば、測定部40の側板に、透光性部材で構成された透光部が設けられ、被験者Pは、その透光部を介してモニタランプ58の発光状態を見ることで、呼吸音測定装置1の電源のオン/オフ状態や通信状態、充電状態等を確認できるようになっている。
【0047】
ヒンジ部60は、
図3の実線で示す展開位置と
図3に仮想線で示す折曲位置との間で、装着部30に対して測定部40を回動できるように支持している。展開位置とは、測定部40が外側に向かって最大に開かれた位置であり、両者間の接合部分では内面10aが実質的にフラットになる。展開位置では、例えば、装着部30の先端部と測定部40の基端部とが互いに当接され、それ以上外側に広がらないように係止される。折曲位置とは、測定部40が装着部30に対して内側に向かって折り曲げられた位置である。折曲位置では、例えば、測定部40の基端部が装着部30の外側の内壁に当接され、それ以上内側に曲がらないように係止される。展開位置と折曲位置との間の回動範囲R11は、特に限定されないが、例えば、40度程度である。40度程度の回動範囲があれば、幅広い体型の被験者Pに対応することができる。ただし、可動範囲(回動範囲)は、40度程度に限定されることはなく、例えば、可動範囲が40度を超えていてもよい。上記の展開位置と折曲位置との間の回動により、ネックバンド10の開き具合が変わる。上記の構成は、「装着部と測定部との間の開度を調整すること」の一例を示している。
【0048】
図6に示すように、ヒンジ部60は、上記回動動作の中心軸である回動軸AXを構成する回動軸部61と、測定部40を折曲位置に向かって付勢する付勢手段62とを備える。なお、回動軸部61の構成は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり、内ケース42の両側壁の基端側に軸受けを設け、その軸受けに回動軸部61を回動可能に支持することで実現できる。本実施形態では、付勢手段62として、ねじりコイルばねを用いた例を示しているが、他の付勢手段を用いてもよい。また、図示はしないが、ヒンジ部60として、蝶番とばねとが一体的に構成された、いわゆる蝶番ばねを用いてもよい。ねじりコイルばねの付勢力は特に限定されないが、例えば40g程度である。
【0049】
ここで、付勢手段62の付勢力は、圧縮コイルばね78の付勢力よりも大きくなるように構成される。このような構成にすることで、(1)被験者の体型(特に、首の大きさ)に応じた大枠の位置合わせを付勢手段62の作用により行い、(2)圧縮付勢手段62の作用により、被験者頸部Pnの呼吸音の測定場所(皮膚表面)に沿うように突出部70の当接面71aの角度を調節する、という動作をより好適に実現することができる。ここで、測定部40の基端側における収容空間Qに、ヒンジ部60周りからの異物の侵入を防ぐため隔壁44bを設けるようにしてもよい。このように、収容空間Q側に隔壁44bを設けることで、ヒンジ部60の可動性を高めつつ、防塵効果を得ることができる。なお、
図5に示すように、隔壁44a,44bが一体的に構成された隔壁44を設けてもよい。このような構成にすることにより、構成部材を削減することができ、かつ、組み立て作業の作業性を高めることができる。
【0050】
図11~
図13は、被験者の首の太さが互いに異なる場合における呼吸音測定装置1の装着状態を示した図である。
図12は首の細い被験者の装着状態の一例を示しており、
図13は首の太い被験者の装着状態の一例を示している。また、
図11は、
図12の被験者と
図13の被験者の中間くらい(以下、便宜上「普通体型」という)の被験者の装着状態の一例を示している。なお、
図3に示すように、被装着状態における装着部30の外形サイズは、外径サイズφ1であるものとする(
図3参照)。
【0051】
なお、装着部30の外径サイズは単一のサイズ(例えば、φ1)に限定されるものではない。図示はしないが、例えば、被験者の首周りの寸法や体型等に応じて外径サイズの異なる複数種類の装着部30を用意するとともに、被験者が測定部40から装着部30を取り外してサイズの異なる装着部30に交換できるように構成してもよい。測定部40と装着部30とを着脱可能にする具体的な構成(以下、着脱機構という)は特に限定されないが、例えば、着脱機構として、測定部40と装着部30との少なくとも一方に両者を係止するための係止爪を設けてもよい。また、着脱機構として、例えば、測定部40と装着部30との連結部分において、一方に雄ねじを設け、他方に雌ねじを設けることで、ねじ止め式にしてもよい。また、着脱機構にクリップを用いてもよいし、ヒンジ部60が着脱機構を兼ねるような構成にしてもよい。上記着脱機構は、本開示における着脱手段の一例である。
【0052】
図11では、被験者頸部Pnがちょうど装着部30の内側におさまり、呼吸音測定装置1の装着時において、装着部30の外径サイズφ1の状態で装着できたものとしている。また、
図11では、ヒンジ部60は略展開位置に位置している。一方で、突出部70のネックバンド10からの突出量が変化している。具体的には、突出部本体71の基端部が、収容空間Q内に入りこみ、突出部本体71が被験者頸部Pnに食い込むのを抑えている。また、圧縮コイルばね78の付勢力により、被験者頸部Pnへの当接面71aの密着性を高めている。
【0053】
図12では、
図11よりも首の細い被験者の例を示している。
図12の例では、呼吸音測定装置1の装着時に、測定部40が展開位置のままだと、突出部70の当接面71aが被験者頸部Pnに当たらない(
図12の仮想線参照)。本実施形態に係る呼吸音測定装置1は、ヒンジ部60が折曲位置に向かって付勢されているので、
図12に実線で示すように、装着部30の内径よりも頸部の径の方が小さい被験者Pの場合、測定部40が被験者頸部Pn側(内側)に向かって回動する。
図12の例では、測定部40が展開位置から内側に向かって回動角度R12(R11>R12)回動している。このように測定部40が被験者頸部Pn側に入り込むことにより、被験者頸部Pn近傍においてネックバンド10の内面10aが内側に向かって傾くことになる。本実施形態では、被験者頸部Pnから当接面71a受ける力に応じて突出部本体71の当接面71a角度が変わるように構成されている(
図3のR21及び
図12のR22参照)。すなわち、突出部本体71の当接面71aの角度が被験者頸部Pnの皮膚に沿うように変化し、当接面71aが全体的に被験者頸部Pnの皮膚に当接するようになっている。さらに、突出部本体71には、圧縮コイルばね78の付勢力が作用しているので、被験者頸部Pnへの当接面71aの密着性を高めることができる。なお、本開示において「ネックバンド10の内面」の場所は特に限定されない、例えば、
図3の実線で示すように測定部40の先端部分の内面を基準としてもよいし、
図3の破線で示すように測定部40の中間あたりの内面を基準として用いてもよい。換言すると、本開示の技術は、ネックバンド10の装着時において、突出部70が、被験者Pの皮膚に沿って傾きが変わるように構成されている点に特徴がある。
【0054】
図13では、
図11よりも大柄な首の太い被験者の例を示している。
図13の例では、被験者頸部Pnが装着部30の内側におさまりきらないが、前述のとおりネックバンド10は展開位置以上に開かないので、呼吸音測定装置1の装着時に、装着部30の外形サイズが外径サイズφ2(φ2>φ1)に広がっている。そして、突出部本体71の大部分が収容空間Q内に入りこみ、突出部本体71のネックバンド10からの突出量が非常に小さくなっている。このような動作をすることにより、突出部本体71が被験者頸部Pnに食い込むのを抑えている。また、この場合においても、圧縮コイルばね78の付勢力がはたらき、被験者頸部Pnへの当接面71aの密着性を高めている。
【0055】
以上のように、本実施形態によると、装着部30と測定部40とをヒンジ部60で連結し、装着部30と測定部40との開き具合(開度)を調整できるようにしている。これにより、首周りのサイズが異なる被験者Pに対して同じ呼吸音測定装置1を用いた場合でも、被験者Pの違和感(例えば、締め付け感や、ぶかぶか感)をなくなるようにすることができる。また、測定部40を内側に向かって付勢するようにしているので、被験者頸部Pnの皮膚への密着性を高めることができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、被験者頸部Pnに当接して呼吸音を取得するために測定部40から内側に突出する突出部70を設け、その突出部70の当接面71aの角度が、被験者頸部Pnから受ける外力に応じて変わるように構成されている。すなわち、被験者頸部Pnの皮膚表面の動きや傾きに追従して突出部本体71の当接面71aが傾くように構成されている。
【0057】
これにより、突出部本体71の当接面71aを、皮膚からの浮きがなくなるように被験者頸部Pnに当接させることができ、被験者Pの呼吸音をより精度高く取得することができる。これにより、呼吸音測定装置1による睡眠時無呼吸状態の判定精度が向上する。特に、測定部40が装着部30に対して折曲位置に向かって折れ曲がった場合に、被験者頸部Pnに対する測定部40の角度が変わることにより、被験者頸部Pnの皮膚に対する突出部70の当接面71aの角度が変化するが、このような構成にすることにより、当接面71aの被験者頸部の皮膚への密着性を確保することができる。
【0058】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態において、ネックバンド10の形状は、略C字形状に限定されるものではない。ネックバンド10は、被験者の頸部に装着されて被験者頸部の呼吸音がマイクロフォン2で測定できるように構成されていればよく、例えば、ビニールや繊維等の柔らかい素材で形成されたネックバンドを首に巻付け、面ファスナーやアジャスターバックルのような係止具で係止するような構成であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態において、突出部70は、圧縮コイルばね78により突出方向に付勢されるものとしたが、これに限定されない。例えば、突出部70が、装着された際に、その突出量は実質的に変わらずに、ネックバンド10の内面に対する当接面71aの角度が変わるように構成されていてもよい。
【0060】
また上記の実施形態では、呼吸音測定装置について説明したが、本開示の技術は、他の生体情報測定装置についても適用が可能である。例えば、呼吸音を測定するための呼吸音測定装置、心拍を測定するための心拍測定装置に適用することができる。また、本開示の技術を血中酸素濃度の測定や血流の測定に適用してもよい。この場合、図示しないが、マイクロフォン74に代えて光学式のセンサを設けるとよい。具体的な測定方法は、従来から知られている方法を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、主に在宅等で被験者の睡眠時の呼吸音を測定する装置のように、生体情報を測定する装置として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 呼吸音測定装置(生体情報測定装置)
30 装着部
40 測定部(生体情報取得部)
44a 隔壁
50 第2基板(回路基板)
60 ヒンジ部
62 付勢手段(第1付勢手段)
70 突出部
71a 当接面
78 圧縮コイルばね(第2付勢手段)