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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H05K1/02 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019053254
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020155605
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】三好 徹
(72)【発明者】
【氏名】小川 健一
(72)【発明者】
【氏名】坂田 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】沖本 直子
(72)【発明者】
【氏名】永江 充孝
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-080522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0344055(US,A1)
【文献】国際公開第2017/204048(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/138979(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0299362(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0094701(US,A1)
【文献】特開平06-038938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含み、伸縮性を有する基材と、
前記基材の前記第1面側に位置する配線と、
前記基材の前記第1面側または前記第2面側に位置し、前記配線基板対象物との対向面を部分的に接着する接着層と、を備え、
前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記第1面に部分的に重なる、配線基板。
【請求項2】
前記接着層は、前記第1面の面内方向に離間して位置された複数の接着部を有する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記第1面側に搭載される電子部品に少なくとも部分的に重なる、請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記基材の弾性係数よりも大きい弾性係数を有する補強部材を更に備え、
前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記補強部材に少なくとも部分的に重なる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記補強部材は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記第1面側に搭載される電子部品に少なくとも部分的に重なり、
前記接着層は、前記第1面の面内方向に離間して位置された複数の接着部を有し、
前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記複数の接着部のうちの少なくとも1つの接着部および前記電子部品は、前記補強部材の内側に位置する、請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記配線に少なくとも部分的に重ならない、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記基材側から前記接着層まで突出する突起部を更に備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記接着層に対して前記基材側と反対側に位置する剥離層を更に備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項9】
前記複数の接着部は、ドット状のパターンを有する、請求項2又は5に記載の配線基板。
【請求項10】
前記複数の接着部は、縞状のパターンを有する、請求項2又は5に記載の配線基板。
【請求項11】
前記配線は、前記基材の前記第1面の面内方向に沿って並ぶ複数の山部及び谷部を含む蛇腹形状部を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項12】
前記対象物は、可撓性を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項13】
前記対象物は、多孔質物質、ゴム、伸縮性を有する布類、ゲルまたは人体である、請求項12に記載の配線基板。
【請求項14】
前記対象物に、前記接着層に向かって突出する突起部が設けられている、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項15】
配線基板の製造方法であって、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含み、伸縮性を有する基材の前記第1面側に配線を設ける配線工程と、
前記基材の前記第1面側または前記第2面側に、前記配線基板対象物との対向面を部分的に接着する接着層を設ける接着層設置工程と、備え、
前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記第1面に部分的に重なるように設ける、配線基板の製造方法。
【請求項16】
前記基材に引張応力を加えて、前記基材を伸長させる伸長工程と、
伸長した状態の前記基材の前記第1面側に前記配線が設けられた後に、前記基材から前記引張応力を取り除く収縮工程と、を更に備え、
前記基材から前記引張応力が取り除かれた後、前記配線は、前記基材の前記第1面の面内方向に沿って並ぶ複数の山部及び谷部を含む蛇腹形状部を有する、請求項15に記載の配線基板の製造方法。
【請求項17】
前記接着層設置工程は、前記対象物の表面に前記接着層を形成し、前記接着層に前記基材を接着することを含む、請求項15又は16に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、基材と、基材の第1面側に位置する配線と、基材の第2面側に位置する接着層とを備える配線基板に関する。また、本開示の実施形態は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、伸縮性などの変形性を有する電子デバイスの研究がおこなわれている。例えば特許文献1は、基材と、基材に設けられた配線と、を備え、伸縮性を有する配線基板を開示している。特許文献1においては、予め伸長させた状態の基材に回路を設け、回路を形成した後に基材を弛緩させる、という製造方法を採用している。特許文献1は、基材の伸長状態及び弛緩状態のいずれにおいても基材上の薄膜トランジスタを良好に動作させることを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-281406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線基板は、用途に応じてスポンジや人体などの柔軟な対象物の表面に接着されて使用される場合がある。この場合に、配線基板が対象物の表面に全面的に接着されていると、対象物に向かう方向の力が配線基板に作用したときに、力が作用した箇所の周辺で、配線基板に局所的に大きな伸びが生じてしまう。配線基板に局所的に大きな伸びが生じることで、断線などの配線の破損が生じてしまうおそれがある。
【0005】
本開示の実施形態は、このような課題を効果的に解決し得る配線基板及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、配線基板であって、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含み、伸縮性を有する基材と、前記基材の前記第1面側に位置する配線と、前記基材の前記第1面側または前記第2面側に位置し、前記配線基板を対象物の表面に接着する接着層と、を備え、前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記第1面に部分的に重なる、配線基板である。
【0007】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記接着層は、前記第1面の面内方向に離間して位置された複数の接着部を有していてもよい。
【0008】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記第1面側に搭載される電子部品に少なくとも部分的に重なっていてもよい。
【0009】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記基材の弾性係数よりも大きい弾性係数を有する補強部材を更に備え、前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記補強部材に少なくとも部分的に重なっていてもよい。
【0010】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記補強部材は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記第1面側に搭載される電子部品に少なくとも部分的に重なり、前記接着層は、前記第1面の面内方向に離間して位置された複数の接着部を有し、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記複数の接着部のうちの少なくとも1つの接着部および前記電子部品は、前記補強部材の内側に位置していてもよい。
【0011】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記配線に少なくとも部分的に重ならなくてもよい。
【0012】
本開示の一実施形態による配線基板は、前記基材側から前記接着層まで突出する突起部を更に備えていてもよい。
【0013】
本開示の一実施形態による配線基板は、前記接着層に対して前記基材側と反対側に位置する剥離層を更に備えていてもよい。
【0014】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記複数の接着部は、ドット状のパターンを有していてもよい。
【0015】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記複数の接着部は、縞状のパターンを有していてもよい。
【0016】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記配線から1mm以上離れていてもよい。
【0017】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記配線は、前記基材の前記第1面の面内方向に沿って並ぶ複数の山部及び谷部を含む蛇腹形状部を有していてもよい。
【0018】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記第1面の面内方向に離間して位置された複数の接着部を有し、前記複数の接着部は、縞状のパターンを有していてもよい。
【0019】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記対象物は、可撓性を有していてもよい。
【0020】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記対象物は、多孔質物質、ゴム、伸縮性を有する布類、ゲルまたは人体であってもよい。
【0021】
本開示の一実施形態による配線基板において、前記対象物に、前記接着層に向かって突出する突起部が設けられていてもよい。
【0022】
本開示の一実施形態は、配線基板の製造方法であって、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含み、伸縮性を有する基材の前記第1面側に配線を設ける配線工程と、前記基材の前記第1面側または前記第2面側に、前記配線基板を対象物の表面に接着する接着層を設ける接着層設置工程と、備え、前記接着層は、前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記第1面に部分的に重なるように設ける、配線基板の製造方法である。
【0023】
本開示の一実施形態による配線基板の製造方法は、前記基材に引張応力を加えて、前記基材を伸長させる伸長工程と、伸長した状態の前記基材の前記第1面側に前記配線が設けられた後に、前記基材から前記引張応力を取り除く収縮工程と、を更に備え、前記基材から前記引張応力が取り除かれた後、前記配線は、前記基材の前記第1面の面内方向に沿って並ぶ複数の山部及び谷部を含む蛇腹形状部を有していてもよい。
【0024】
本開示の一実施形態による配線基板の製造において、前記接着層設置工程は、前記対象物の表面に前記接着層を形成し、前記接着層に前記基材を接着することを含んでもよい。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、配線基板に局所的に大きな伸びが生じることによる配線の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施の形態に係る配線基板を示す平面図である。
図2図1の配線基板の下面図である。
図3図1の配線基板を線III-IIIに沿って切断した場合を示す断面図である。
図4図1の配線基板の使用状態を示す断面図である。
図5図1の配線基板の伸び率を模式的に示す図である。
図6】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図7】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図8図6に示す配線基板の製造方法を説明するための図である。
図9】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図10】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図11】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図12】一変形例に係る配線基板を示す平面図である。
図13】一変形例に係る配線基板を示す下面図である。
図14】一変形例に係る配線基板を示す下面図である。
図15】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図16】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図17】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図18図17の配線基板の平面図である。
図19】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図20】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図21】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図22】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図23】一変形例に係る配線基板を示す平面図である。
図24】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図25】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
図26】一変形例に係る配線基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態に係る配線基板の構成及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書において、「基板」、「基材」、「シート」や「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基材」は、基板、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。更に、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0028】
以下、図1乃至図5を参照して、本開示の一実施の形態について説明する。
【0029】
(配線基板)
まず、本実施の形態に係る配線基板10について説明する。図1及び図2はそれぞれ、配線基板10を示す平面図及び下面図である。図3は、図1の配線基板10を線III-IIIに沿って切断した場合の図である。図4は、図1の配線基板10の使用状態を示す断面図である。図5は、図1の配線基板10の伸び率を模式的に示す図である。
【0030】
図1に示す配線基板10は、基材20、電子部品51、配線52および接着層70を備える。以下、配線基板10の各構成要素について説明する。
【0031】
〔基材〕
基材20は、伸縮性を有するよう構成された部材である。基材20は、電子部品51及び配線52側に位置する第1面21と、第1面21の反対側に位置する第2面22と、を含む。基材20の厚みは、例えば10mm以下であり、より好ましくは1mm以下である。基材20の厚みを小さくすることにより、基材20の伸縮に要する力を低減することができる。また、基材20の厚みを小さくすることにより、配線基板10を用いた製品全体の厚みを小さくすることができる。これにより、例えば、配線基板10を用いた製品が、人の腕などの身体の一部に取り付けるセンサである場合に、装着感を低減することができる。基材20の厚みは、10μm以上であってもよい。
【0032】
基材20の伸縮性を表すパラメータの例として、基材20の弾性係数を挙げることができる。基材20の弾性係数は、例えば10MPa以下であり、より好ましくは1MPa以下である。このような弾性係数を有する基材20を用いることにより、配線基板10全体に伸縮性を持たせることができる。基材20の弾性係数は、1kPa以上であってもよい。
【0033】
基材20の弾性係数を算出する方法としては、基材20のサンプルを用いて、JIS K6251に準拠して引張試験を実施するという方法を採用することができる。また、基材20のサンプルの弾性係数を、ISO14577に準拠してナノインデンテーション法によって測定するという方法を採用することもできる。ナノインデンテーション法において用いる測定器としては、ナノインデンターを用いることができる。基材20のサンプルを準備する方法としては、配線基板10から基材20の一部をサンプルとして取り出す方法や、配線基板10を構成する前の基材20の一部をサンプルとして取り出す方法が考えられる。その他にも、基材20の弾性係数を算出する方法として、基材20を構成する材料を分析し、材料の既存のデータベースに基づいて基材20の弾性係数を算出するという方法を採用することもできる。なお、本願における弾性係数は、25℃の環境下における弾性係数である。
【0034】
基材20の伸縮性を表すパラメータのその他の例として、基材20の曲げ剛性を挙げることができる。曲げ剛性は、対象となる部材の断面二次モーメントと、対象となる部材を構成する材料の弾性係数との積であり、単位はN・m又はPa・mである。基材20の断面二次モーメントは、配線基板10の伸縮方向に直交する平面によって、基材20のうち配線52と重なっている部分を切断した場合の断面に基づいて算出される。
【0035】
基材20を構成する材料の例としては、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゲル、シリコンゲル等を挙げることができる。また、基材20の材料として、例えば、織物、編物、不織布などの布を用いることもできる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、1,2-BR系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。機械的強度や耐磨耗性を考慮すると、ウレタン系エラストマーを用いることが好ましい。さらに、シリコーンゴムは、耐熱性・耐薬品性・難燃性に優れており、基材20の材料として好ましい。
【0036】
〔配線〕
配線52は、基材20の第1面21側に位置する、導電性を有する部材である。図1および図2に示す例において、配線52は、第1面21に設けられている。
【0037】
配線52の材料は、例えば、それ自体が伸縮性を有する材料である。このような材料としては、例えば、導電性粒子およびエラストマーを含有する導電性組成物が挙げられる。導電性粒子としては、配線に使用できるものであればよく、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、カーボン等の粒子が挙げられる。中でも、銀粒子が好ましく用いられる。
【0038】
また、基材20が伸縮するときに、基材20の伸縮にあわせて配線52は変形する。この点を考慮し、好ましくは、配線52は、変形に対する耐性を有する構造を備える。例えば、配線52は、ベース材と、ベース材の中に分散された複数の導電性粒子とを有する。この場合、ベース材として、樹脂などの変形可能な材料を用いることにより、基材20の伸縮に応じて配線52も変形することができる。また、変形が生じた場合であっても複数の導電性粒子の間の接触が維持されるように導電性粒子の分布や形状を設定することにより、配線52の導電性を維持することができる。
【0039】
配線52のベース材を構成する材料としては、例えば、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等を用いることができる。中でも、ウレタン系、シリコーン系構造を含む樹脂やゴムが、その伸縮性や耐久性などの面から好ましく用いられる。また、配線52の導電性粒子を構成する材料としては、例えば銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、白金、カーボン等の粒子を用いることができる。中でも、銀粒子が、価格と導電性の観点から好ましく用いられる。
【0040】
配線52の厚みは、電子部品51の厚みよりも小さく、例えば50μm以下である。配線52の幅は、例えば50μm以上且つ10mm以下である。
【0041】
配線52の形成方法は、材料等に応じて適宜選択される。例えば、基材20上または後述する支持基板40上に蒸着法やスパッタリング法等により金属膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により金属膜をパターニングする方法が挙げられる。また、配線52の材料自体が伸縮性を有する場合、例えば、基材20上または支持基板40上に一般的な印刷法により上記の導電性粒子およびエラストマーを含有する導電性組成物をパターン状に印刷する方法が挙げられる。これらの方法のうち、材料効率がよく安価に製作できる印刷法が好ましく用いられ得る。
【0042】
〔電子部品〕
電子部品51は、第1面21側に搭載され、配線52に電気的に接続されている。電子部品51は、能動部品であってもよく、受動部品であってもよく、機構部品であってもよい。
【0043】
電子部品51の例としては、トランジスタ、LSI(Large-Scale Integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、リレー、LED、OLED、LCDなどの発光素子、センサ、ブザー等の発音部品、振動を発する振動部品、冷却発熱をコントロールするペルチェ素子や電熱線などの冷発熱部品、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、スイッチ、コネクタなどを挙げることができる。電子部品51の上述の例のうち、センサが好ましく用いられる。センサとしては、例えば、温度センサ、圧力センサ、光センサ、光電センサ、近接センサ、せん断力センサ、生体センサ、レーザーセンサ、マイクロ波センサ、湿度センサ、歪みセンサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、変位センサ、磁気センサ、ガスセンサ、GPSセンサ、超音波センサ、臭いセンサ、脳波センサ、電流センサ、振動センサ、脈波センサ、心電センサ、光度センサ等を挙げることができる。これらのセンサのうち、生体センサが特に好ましい。生体センサは、心拍や脈拍、心電、血圧、体温、血中酸素濃度等の生体情報を測定することができる。
【0044】
〔接着層〕
接着層70は、基材20の第1面21側または第2面22側に位置する、接着剤を含む層である。接着層70は、配線基板10を対象物の表面に接着するために用いられる。図2に示す例において、接着層70は、第2面22に設けられている。なお、第1面21側に接着層70を設ける例については、図16図18において後述する。
【0045】
図1に示すように、接着層70は、第1面21の法線方向に沿って見た場合に、第1面21に部分的に重なる。言い換えれば、接着層70は、第2面22上に全面的に設けられているのではなく、第2面22上に部分的に設けられている。さらに言い換えれば、第2面22は、接着層70が設けられていない領域を有する。
【0046】
また、図2に示すように、接着層70は、第2面22の面内方向に離間して位置された複数の接着部71を有する。
【0047】
また、接着層70は、第1面21の法線方向に沿って見た場合に、第1面21側に搭載される電子部品51に少なくとも部分的に重なっている。図2に示す例において、複数の接着層71のうちの一部の接着層71が、電子部品51に全体的に重なっている。
【0048】
また、接着層70は、第1面21の法線方向に沿って見た場合に、配線52に少なくとも部分的に重ならない。図1に示す例において、接着層70は、第1面21の法線方向に沿って見た場合に、配線52に全体的に重ならない。接着層70は、第1面21の法線方向に沿って見た場合に、配線52から1mm以上離れていてもよい。
【0049】
図4に示すように、配線基板10は、接着層70を介して対象物80の表面81に接着されて使用される。対象物80は、可撓性を有する場合がある。可撓性を有する対象物80としては、多孔質物質の一例であるスポンジや、ゴム、伸縮性を有する布類、ゲル、人体などを挙げることができる。
【0050】
接着層70を構成する材料としては、対象物80に応じた好適な材料が選択される。具体的には、対象物80がゴムや人体すなわち皮膚の場合、接着層70の材料として、例えば、アクリル系、シリコーン系、ゴム系またはウレタン系の粘着剤を好適に用いることができる。また、対象物80が布の場合、接着層70の材料として、熱可塑性接着剤を好適に用いることができる。また、対象物80がスポンジの場合、接着層70の材料として、例えば、熱硬化性のシリコーンゴムを好適に用いることができる。
【0051】
接着層70の厚みは、例えば0.1μm以上且つ1000μm以下である。また、第2面22に対する接着層70の面積比は、配線基板10の接着性を実用上損なわない限度において可能な限り低いことが望ましく、例えば、10%以上90%以下であることが好ましく、20%以上50%以下であることがより好ましい。
【0052】
接着層70の態様は図1図3に限定されず種々変更できるが、可能な限り配線52以外の部分と電子部品51に重なる位置に形成されていることが望ましい。一例として、図16に示すように、接着層70は、電子部品51および配線52を覆う伸縮性の被覆層100の上面101に、第1面21に部分的に重なるように設けられていてもよい。図16に示される例において、接着層70は、第1面21の法線方向に沿って見た場合に、電子部品51に重なり、かつ、配線52に重ならない。なお、被覆層100は、例えば、ゴム材料で構成することができる。被覆層100の材質は、基材20の材質と同一であっても異なっていてもよい。また、図17および図18に示すように、被覆層100を介することなく第1面21上または電子部品51上に接着層70を直接設けてもよい。図17および図18に示される例においても、接着層70は、第1面21の法線方向に沿って見た場合に、電子部品51に重なり、かつ、配線52に重ならない。
【0053】
ただし、接着層70は、電子部品51に重ならないことが好ましい場合もある。例えば、図23および図24に示すように、基材20の第2面22に設けられた電子部品51が、表面にセンサを有し、センサによって皮膚等の対象物80から図24の矢印に示されるバイタル情報をセンシングする場合がある。バイタル情報は、例えば、皮膚の温度や、電子部品51から皮膚に向けて照射された光の反射光であってもよい。このように、電子部品51がセンサを有する場合には、センサのセンシングを妨げないように、接着層70を電子部品51に重ならないように設けることが好ましい。
【0054】
また、接着層70が設けられる基材20の表面は、平滑面であってもよいし、または、図25の第2面22に示されるような粗面であってもよい。
【0055】
ここで、図5に示すように、配線基板10の使用時において、対象物80に向かう方向の力fが配線基板10に作用する場合がある。この場合、もし、接着層70が配線52の第2面22に全面的に設けられていると、図5の破線グラフG1に示されるように、力fが作用した箇所の周辺、例えば力fが作用した箇所から1mm~2mmの範囲で、伸び許容値を超える大きな伸び率の伸びが配線基板10に生じてしまうことが確認されている。このように配線基板10に局所的に大きな伸びが生じることで、断線などの配線52の破損が生じてしまうおそれがある。
【0056】
これに対して、本実施形態においては、既述したように接着層70が基材20の第2面22側に部分的に設けられている。具体的には、接着層70が、第2面22の面内方向に離間して位置された複数の接着部71を有する。これにより、対象物80に向かう方向の力fが配線基板10に作用した場合に、図5の実線グラフG2に示すように、力fが作用した箇所の周辺だけでなく比較的広い範囲にわたって、伸び許容値を下回る伸び率で配線基板10を伸ばすことができる。図5に示される例において、G2は、隣り合う接着部71で区分けされたエリアごとのG1の平均値に相当する。すなわち、本実施形態の配線基板10によれば、接着層70を全面的に設ける場合と比較して、配線基板10の伸び率を低減および均一化することができる。これにより、配線基板10に局所的に大きな伸びが生じることを抑制することができるので、配線52の破損を抑制することができる。同様の効果は、図16図18に例示したように、接着層70を基材20の第1面21側に部分的に設けることでも得ることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、既述したように、接着層70が第1面21の法線方向に沿って見た場合に電子部品51に少なくとも部分的に重なっていることで、対象物80に向かう方向の力fに応じて配線基板10の局所的な伸びが生じ易い接着層70の配置位置の上方に、固い電子部品51を配置することができる。固い電子部品51に力fを加えても電子部品51は変形しないので、電子部品51の下方の接着層70の変形およびこの変形にともなう配線基板10の局所的な伸びを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、既述したように、接着層70が第1面21の法線方向に沿って見た場合に配線52に少なくとも部分的に重ならないことで、対象物80に向かう方向の力fに応じて配線基板10の局所的な伸びが生じ易い接着層70の配置位置の上方に配線52を設けることを避けることができる。これにより、配線52の破損をより効果的に抑制することができる。また、接着層70を配線52から1mm以上離すことで、配線52の破損をさらに効果的に抑制できることがある。
【0059】
配線基板10の用途としては、ヘルスケア分野、医療分野、介護分野、エレクトロニクス分野、スポーツ・フィットネス分野、美容分野、モビリティ分野、畜産・ペット分野、アミューズメント分野、ファッション・アパレル分野、セキュリティ分野、ミリタリー分野、流通分野、教育分野、建材・家具・装飾分野、環境エネルギー分野、農林水産分野、ロボット分野などを挙げることができる。例えば、人の腕などの身体の一部に取り付ける製品を、本実施の形態による配線基板10を用いて構成する。配線基板10は伸長することができるので、例えば配線基板10を伸長させた状態で身体に取り付けることにより、配線基板10を身体の一部により密着させることができる。このため、良好な着用感を実現することができる。また、配線基板10が伸長した場合に配線52の電気抵抗値が低下することを抑制することができるので、配線基板10の良好な電気特性を実現することができる。他にも配線基板10は伸長することができるので、人などの生体に限らず曲面や立体形状に沿わせて設置や組込むことが可能である。それらの製品の一例としては、バイタルセンサ、マスク、補聴器、歯ブラシ、絆創膏、湿布、コンタクトレンズ、義手、義足、義眼、カテーテル、ガーゼ、薬液パック、包帯、ディスポーザブル生体電極、おむつ、リハビリ用機器、家電製品、ディスプレイ、サイネージ、パーソナルコンピューター、携帯電話、マウス、スピーカー、スポーツウェア、リストバンド、はちまき、手袋、水着、サポーター、ボール、グローブ、ラケット、クラブ、バット、釣竿、リレーのバトンや器械体操用具、またそのグリップ、身体トレーニング用機器、浮き輪、テント、水着、ゼッケン、ゴールネット、ゴールテープ、薬液浸透美容マスク、電気刺激ダイエット用品、懐炉、付け爪、タトゥー、自動車、飛行機、列車、船舶、自転車、ベビーカー、ドローン、車椅子、などのシート、インパネ、タイヤ、内装、外装、サドル、ハンドル、道路、レール、橋、トンネル、ガスや水道の管、電線、テトラポッド、ロープ首輪、リード、ハーネス、動物用のタグ、ブレスレット、ベルトなど、ゲーム機器、コントローラーなどのハプティクスデバイス、ランチョンマット、チケット、人形、ぬいぐるみ、応援グッズ、帽子、服、メガネ、靴、インソール、靴下、ストッキング、スリッパ、インナーウェア、マフラー、耳あて、鞄、アクセサリー、指輪、時計、ネクタイ、個人ID認識デバイス、ヘルメット、パッケージ、ICタグ、ペットボトル、文具、書籍、ペン、カーペット、ソファ、寝具、照明、ドアノブ、手すり、花瓶、ベッド、マットレス、座布団、カーテン、ドア、窓、天井、壁、床、ワイヤレス給電アンテナ、電池、ビニールハウス、ネット(網)、ロボットハンド、ロボット外装を挙げることができる。
【0060】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0061】
(第1の変形例)
まず、図6及び図7を参照して、配線52が蛇腹形状部57を有する第1の変形例について説明する。図6及び図7は、第1の変形例に係る配線基板10を示す断面図である。
【0062】
図6に示すように、配線52は、第1面21の面内方向に沿って並ぶ複数の山部53及び谷部55を含む蛇腹形状部57を有する。
【0063】
配線基板10の製造工程において、配線52は、引張応力によって伸長した状態の基材20に、伸長方向に沿って設けられる。そして、基材20から引張応力が取り除かれて基材20が収縮するとき、配線52は、図6に示すように、蛇腹状に変形して蛇腹形状部57を有するようになる。
【0064】
蛇腹形状部57は、基材20の第1面21の法線方向における山部及び谷部を含む。図6において、符号53は、配線52の表面に現れる山部を表し、符号54は、配線52の裏面に現れる山部を表す。また、符号55は、配線52の表面に現れる谷部を表し、符号56は、配線52の裏面に現れる谷部を表す。表面とは、配線52の面のうち基材20から遠い側に位置する面であり、裏面とは、配線52の面のうち基材20に近い側に位置する面である。また、図6において、符号26及び27は、基材20の第1面21に現れる山部及び谷部を表す。第1面21に山部26及び谷部27が現れるように基材20が変形することにより、配線52が蛇腹状に変形して蛇腹形状部57を有するようになる。基材20の第1面21の山部26が、配線52の蛇腹形状部57の山部53,54に対応し、基材20の第1面21の谷部27が、配線52の蛇腹形状部57の谷部55,56に対応している。
【0065】
図6においては、蛇腹形状部57の複数の山部及び谷部が一定の周期Fで並ぶ例が示されているが、これに限られることはない。図示はしないが、蛇腹形状部57の複数の山部及び谷部は、不規則に並んでいてもよい。例えば、隣り合う2つの山部の間の間隔が一定でなくてもよい。
【0066】
図6において、符号S1は、配線52の表面における蛇腹形状部57の、基材20の法線方向における振幅を表す。振幅S1は、例えば1μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。振幅S1を10μm以上とすることにより、基材20の伸張に追従して配線52が変形し易くなる。また、振幅S1は、例えば500μm以下であってもよい。
【0067】
振幅S1は、例えば、配線52の長さ方向における一定の範囲にわたって、隣り合う山部53と谷部55との間の、第1面21の法線方向における距離を測定し、それらの平均を求めることにより算出される。「配線52の長さ方向における一定の範囲」は、例えば10mmである。隣り合う山部53と谷部55との間の距離を測定する測定器としては、レーザー顕微鏡などを用いた非接触式の測定器を用いてもよく、接触式の測定器を用いてもよい。また、断面写真などの画像に基づいて、隣り合う山部53と谷部55との間の距離を測定してもよい。後述する振幅S2、S3、S4の算出方法も同様である。
【0068】
図6において、符号S2は、配線52の裏面における蛇腹形状部57の振幅を表す。振幅S2は、振幅S1と同様に、例えば1μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。また、振幅S2は、例えば500μm以下であってもよい。また、図6において、符号S3は、蛇腹形状部57に重なる部分において基材20の第1面21に現れる山部26及び谷部27の振幅を表す。図6に示すように配線52の裏面が基材20の第1面21上に位置している場合、基材20の第1面21の山部26及び谷部27の振幅S3は、配線52の裏面における蛇腹形状部57の振幅S2に等しい。
【0069】
なお、図6においては、基材20の第2面22には蛇腹形状部が現れない例を示したが、これに限られることはない。図7に示すように、基材20の第2面22にも蛇腹形状部が現れていてもよい。図7において、符号28及び29は、基材20の第2面22に現れる山部及び谷部を表す。図7に示す例において、第2面22の山部28は、第1面21の谷部27に重なる位置に現れ、第2面22の谷部29は、第1面21の山部26に重なる位置に現れている。なお、図示はしないが、基材20の第2面22の山部28及び谷部29の位置は、第1面21の谷部27及び山部26に重なっていなくてもよい。また、基材20の第2面22の山部28及び谷部29の数又は周期は、第1面21の山部26及び谷部27の数又は周期Fと同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、基材20の第2面22の山部28及び谷部29の周期が、第1面21の山部26及び谷部27の周期よりも大きくてもよい。この場合、基材20の第2面22の山部28及び谷部29の周期は、第1面21の山部26及び谷部27の周期の1.1倍以上であってもよく、1.2倍以上であってもよく、1.5倍以上であってもよく、2.0倍以上であってもよい。なお、「基材20の第2面22の山部28及び谷部29の周期が、第1面21の山部26及び谷部27の周期よりも大きい」とは、基材20の第2面22に山部及び谷部が現れない場合を含む概念である。
【0070】
図7において、符号S4は、蛇腹形状部57に重なる部分において基材20の第2面22に現れる山部28及び谷部29の振幅を表す。第2面22の振幅S4は、第1面21の振幅S3と同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、第2面22の振幅S4が、第1面21の振幅S3よりも小さくてもよい。例えば、第2面22の振幅S4が、第1面21の振幅S3の0.9倍以下であってもよく、0.8倍以下であってもよく、0.6倍以下であってもよい。また、第2面22の振幅S4は、第1面21の振幅S3の0.1倍以上であってもよく、0.2倍以上であってもよい。基材20の厚みが小さい場合、第1面21の振幅S3に対する第2面22の振幅S4の比率が大きくなり易い。なお、「基材20の第2面22の山部28及び谷部29の振幅が、第1面21の山部26及び谷部27の振幅よりも小さい」とは、基材20の第2面22に山部及び谷部が現れない場合を含む概念である。
【0071】
また、図7においては、第2面22の山部28及び谷部29の位置が、第1面21の谷部27及び山部26の位置に一致する例を示したが、これに限られることはない。例えば、第2面22の山部28及び谷部29の位置は、第1面21の谷部27及び山部26の位置から蛇腹形状部57の周期方向にずれていてもよい。この場合、ずれ量は、例えば周期Fの0.1倍以上であり、周期Fの0.2倍以上であってもよい。
【0072】
配線52の材料としては、蛇腹形状部57の解消及び生成を利用して基材20の伸張及び収縮に追従することができる材料であればよい。配線52の材料は、それ自体が伸縮性を有していてもよく、伸縮性を有していなくてもよい。配線52に用いられ得る、それ自体は伸縮性を有さない材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。配線52の材料自体が伸縮性を有さない場合、配線52としては、金属膜を用いることができる。配線52に用いられる材料自体が伸縮性を有する場合、材料の伸縮性は、例えば、基材20の伸縮性と同様である。配線52に用いられ得る、それ自体が伸縮性を有する材料としては、既述したように、導電性粒子およびエラストマーを含有する導電性組成物が挙げられる。
【0073】
配線52の厚みは、基材20の伸縮に耐え得る厚みであればよく、配線52の材料等に応じて適宜選択される。例えば、配線52の材料が伸縮性を有さない場合、配線52の厚みは、25nm以上50μm以下の範囲内とすることができ、50nm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、100nm以上5μm以下の範囲内であることがより好ましい。また、配線52の材料が伸縮性を有する場合、配線52の厚みは、5μm以上60μm以下の範囲内とすることができ、10μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましく、20μm以上40μm以下の範囲内であることがより好ましい。配線52の幅は、例えば50μm以上且つ10mm以下である。
【0074】
(配線基板の製造方法)
以下、図8(a)~図8(d)を参照して、配線基板10の製造方法について説明する。図8(a)~図8(d)は、図6に示す配線基板10の製造方法を説明するための図である。
【0075】
まず、図8(a)に示すように、伸縮性を有する基材20を準備する基材準備工程を実施する。続いて、図8(b)に示すように、基材20に引張応力Tを加えて基材20を伸長させる伸長工程を実施する。
【0076】
伸長工程を実施した後、図8(b)に示すように、引張応力Tによって伸長した状態の基材20の第1面21に、配線52を設ける配線工程を実施する。配線工程を実施した後、図8(b)に示すように、配線52に電子部品51を電気的に接続する部品接続工程を実施する。
【0077】
部品接続工程を実施した後、図8(c)に示すように、基材20から引張応力を取り除く収縮工程を実施する。これにより、図8(c)において矢印Cで示すように、基材20が収縮し、基材20に設けられている配線52にも変形が生じる。これにより、配線52に蛇腹形状部57が形成される。
【0078】
収縮工程を実施した後、図8(d)に示すように、基材20の第2面22に、接着層70を設ける接着層設置工程を実施する。このようにして、第1の変形例による配線基板10が得られる。
【0079】
なお、予め対象物80の表面81に接着層70を形成しておき、接着層70に基材20を接着してもよい。すなわち、第2面22に設けられる接着層70は、予め対象物80の表面81上に形成されたものであってもよい。この場合、配線基板10の製造と同時に対象物80への配線基板10の接着が完了する。
【0080】
対象物80の表面81に形成された接着層70に基材20を接着する例としては、以下の第1の例および第2の例を挙げることができる。
【0081】
第1の例においては、先ず、対象物80としてのスポンジの表面に、接着層70として硬化前のゴムを塗布し、塗布されたゴムの上に基材20をかぶせる。そして、ゴムを硬化させることで、スポンジの表面に配線基板10を接着する。ゴムの硬化は、例えば、2液混合によって行う。また、ゴムの硬化は、常温下で行ってもよく、または、熱硬化によって行ってもよい。また、ゴムの材質は、基材の材質と同じであってもよい。
【0082】
第2の例においては、先ず、対象物80としてのスポンジの表面に硬化前のゴムを含浸させて固める。そして、含浸されたゴムの上に、接着層70として、硬化前のゴムを塗布する。そして、塗布されたゴムの上に基材20をかぶせたうえで、ゴムを硬化させることで、スポンジの表面に配線基板10を接着する。ゴムの硬化方法は、第1の例と同様でよい。第2の例においては、スポンジ内のゴムとスポンジ上のゴムとが一体的に硬化するため、配線基板10をスポンジ上に安定的に接着することができる。
【0083】
蛇腹形状部57が配線52に形成されていることの利点について説明する。上述のように、基材20は、10MPa以下の弾性係数を有する。このため、配線基板10に引張応力を加えた場合、基材20は、弾性変形によって伸長することができる。ここで、仮に配線52も同様に弾性変形によって伸長すると、配線52の全長が増加し、配線52の断面積が減少するので、配線52の抵抗値が増加してしまう。また、配線52の弾性変形に起因して配線52にクラックなどの破損が生じてしまうことも考えられる。
【0084】
これに対して、本実施の形態においては、配線52が蛇腹形状部57を有している。このため、基材20が伸張する際、配線52は、蛇腹形状部57の起伏を低減するように変形することによって、すなわち蛇腹形状を解消することによって、基材20の伸張に追従することができる。このため、基材20の伸張に伴って配線52の全長が増加することや、配線52の断面積が減少することを抑制することができる。このことにより、配線基板10の伸張に起因して配線52の抵抗値が増加することを抑制することができる。また、配線52にクラックなどの破損が生じてしまうことを抑制することができる。
【0085】
(第2の変形例)
次に、図9を参照して、突起部23を有する第2の変形例について説明する。図9は、第2の変形例に係る配線基板10を示す断面図である。
【0086】
図9に示すように、第2の変形例による配線基板10は、図1乃至図3の配線基板10の構成に加えて、更に、基材20側から接着層70まで突出する突起部23を備える。図9に示す例において、突起部23は、第2面22から接着層70まで突出している。また、突起部23は、複数の接着部71のそれぞれに対応するように複数設けられている。
【0087】
突起部23の形成方法は特に限定されない。突起部23は、例えば、基材20と同じ材料で基材20と同一工程で形成してもよく、または、基材20と異なる材料で基材20と別工程で形成してもよい。突起部23を基材20と別工程で形成する場合、突起部23は、適切な手法で基材20と接着してもよい。この場合、突起部23と基材20との接着は、接着剤を用いて行ってもよいし、または、突起部23または基材20の粘着性を用いて行ってもよい。
【0088】
また、図19に示すように、突起部23は、図16で説明した被覆層100の上面101から接着層70まで突出していてもよい。また、図20に示すように、突起部23は、第1面21または電子部品51の上面から接着層70まで突出していてもよい。
【0089】
また、図26に示すように、突起部23は、対象物80の表面81から接着部71に向かって突出するように対象物80に設けられていてもよい。
【0090】
第2の変形例によれば、突起部23が設けられていない基材20の表面と対象物80の表面81との間の空隙部の厚みを厚くすることができる。これにより、配線基板10の使用時において、基材20の表面と対象物80の表面81との間の摩擦を低減することができる。摩擦を低減することで、例えば、配線基板10を人体に装着して使用する場合の快適性を向上させることができる。同様の効果は、対象物80が突起部23を有する場合においても得ることができる。例えば、対象物80がスポンジである場合、スポンジの表面の凸部が突起部23として機能してもよい。
【0091】
(第3の変形例)
次に、図10を参照して、支持基板40を備える第3の変形例について説明する。図10は、第3の変形例に係る配線基板10を示す断面図である。
【0092】
図10に示すように、第5の変形例における配線基板10は、図1乃至図3に示した配線基板10の構成に加えて、更に、支持基板40を備える。支持基板40は、基材20よりも低い伸縮性を有するよう構成された板状の部材である。支持基板40は、第1面21と配線52との間に位置し、配線52を支持する。支持基板40は、基材20側に位置する第2面42と、第2面42の反対側に位置する第1面41と、を含む。図10に示す例において、支持基板40は、その第1面41側において配線52を支持している。また、支持基板40は、その第2面42側において基材20の第1面21に接合されている。例えば、図10に示すように、基材20と支持基板40との間に、接着剤を含む接着層60が設けられていてもよい。接着層60を構成する材料としては、例えばアクリル系接着剤、シリコーン系接着剤等を用いることができる。接着層60の厚みは、例えば5μm以上且つ200μm以下である。また、図示はしないが、非接着表面を分子修飾させて、分子接着結合させる方法によって支持基板40の第2面42が基材20の第1面21に接合されていてもよい。この場合、基材20と支持基板40との間に接着層が設けられていなくてもよい。
【0093】
支持基板40の厚みは、例えば500nm以上10μm以下であり、より好ましくは1μm以上5μm以下である。支持基板40の厚みが小さすぎると、支持基板40の製造工程や、支持基板40上の部材を形成する工程における、支持基板40のハンドリングが難しくなる。支持基板40の厚みが大きすぎると、弛緩時の基材20の復元が難しくなり、目標の基材20の伸縮が得られなくなる。
【0094】
支持基板40を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂等を用いることができる。その中でも、耐久性や耐熱性がよいポリエチレンナフタレートかポリイミドが好ましく用いられ得る。
【0095】
図8(a)~図8(d)に示す例においては、引張応力Tによって伸長した状態の基材20上に、配線52および電子部品51を設ける。これに対して、第3の変形例によれば、非伸長状態の支持基板40上に配線52および電子部品51を設けた後に、引張応力Tによって伸長した状態の基材20上に、配線52および電子部品51が設けられた支持基板40を接合し、その後、引張応力Tを取り除くことで、蛇腹形状部57を有する配線基板10を得ることができる。
【0096】
第3の変形例によれば、非伸長状態の支持基板40上に配線52および電子部品51を安定的に搭載することができるので、蛇腹形状部57を有する配線基板10の製造の容易性を向上させることができる。
【0097】
(第4の変形例)
次に、図11及び図12を参照して、補強部材30を備える第4の変形例について説明する。図11及び図12は、それぞれ、第4の変形例に係る配線基板10を示す断面図及び下面図である。
【0098】
図11に示すように、第4の変形例における配線基板10は、図10に示した配線基板10の構成に加えて、更に、補強部材30を備える。
【0099】
補強部材30は、基材20の伸縮を制御するために配線基板10に設けられた部材である。補強部材30は、基材20の第1面21側に位置し、基材20の弾性係数よりも大きい弾性係数を有する。図11に示す例において、補強部材30は、支持基板40の第2面42に位置する。
【0100】
補強部材30の弾性係数は、例えば1GPa以上であり、より好ましくは10GPa以上である。補強部材30の弾性係数は、基材20の弾性係数の100倍以上であってもよく、1000倍以上であってもよい。補強部材30の弾性係数は、500GPa以下であってもよく、また、基材20の弾性係数の500000倍以下であってもよい。このような補強部材30を設けることにより、基材20のうち補強部材30と重なる部分が伸縮することを抑制することができる。
【0101】
補強部材30の弾性係数を算出する方法は、補強部材30の形態に応じて適宜定められる。例えば、補強部材30の弾性係数を算出する方法は、上述の基材20の弾性係数を算出する方法と同様であってもよく、異なっていてもよい。例えば、補強部材30の弾性係数を算出する方法として、補強部材30のサンプルを用いて、ASTM D882に準拠して引張試験を実施するという方法を採用することができる。
【0102】
また、補強部材30は、基材20の曲げ剛性よりも大きい曲げ剛性を有する。補強部材30の曲げ剛性は、基材20の曲げ剛性の100倍以上であってもよく、1000倍以上であってもよい。
【0103】
補強部材30を構成する材料の例としては、金属材料を含む金属層や、一般的な熱可塑性エラストマー、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系、エポキシ系、ビニルエーテル系、ポリエン・チオール系、シリコーン系等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。金属材料の例としては、銅、アルミニウム、ステンレス鋼等を挙げることができる。補強部材30の厚みは、例えば10μm以上である。上述の材料のうち、金属層は、弾性率が大きくエッチング加工などにより微細加工可能であり、より好ましい。
【0104】
補強部材30を構成する材料として、オリゴマー又はポリマーを用いる場合、補強部材30は、透明性を有していてもよい。また、補強部材30は、遮光性、例えば紫外線を遮蔽する特性を有していてもよい。例えば、補強部材30は黒色であってもよい。また、補強部材30の色と基材20の色とが同一であってもよい。
【0105】
補強部材30は、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合、すなわち第1面21の法線方向に沿って見た場合に、電子部品51に少なくとも部分的に重なるように配置されている。好ましくは、補強部材30は、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に電子部品51の全域にわたって電子部品51に重なっている。このため、基材20のうち電子部品51と重なる部分、すなわち補強部材30と重なる部分は、基材20のうち補強部材30と重ならない部分に比べて変形しにくい。これにより、基材20に引張応力などの力を加えたときや、基材20から引張応力などの力を取り除いたときなどに、基材20のうち電子部品51と重なる部分に変形が生じることを抑制することができる。このことにより、基材20の変形に起因する応力が電子部品51に加わることを抑制することができ、電子部品51が変形したり破損したりしてしまうことを抑制することができる。また、電子部品51と配線52との間の電気接合部が破損してしまうことを抑制することができる。
【0106】
図12に示すように、第4の変形例における接着層70は、第1面21の法線方向に沿って見た場合に、補強部材30に少なくとも部分的に重なっている。図12に示す例において、複数の接着部71のうちの電子部品51に重なる接着部71は、補強部材30にも重なっている。補強部材30による基材20の変形抑制効果を妨げないようにするため、図12に示すように、電子部品51に重なる接着部71は、補強部材30の内側に位置し、また、電子部品51も、補強部材30の内側に位置することが望ましい。なお、補強部材30を設けない場合、電子部品51に重なる接着部71は、電子部品51の内側に位置することが望ましい。
【0107】
なお、補強部材30の位置は、基材20の第1面21側に限定されない。例えば、補強部材30は、図21に示すように、基材20の第2面22側に位置していてもよく、または、図22に示すように、基材20の内部に位置していてもよい。
【0108】
第4の変形例によれば、対象物80に向かう方向の力fに応じて配線基板10の局所的な伸びが生じ易い接着層70の配置位置の上方に、電子部品51に加えて補強部材30を配置することができる。電子部品51および補強部材30に対象物80に向かう方向の力fを加えても電子部品51は変形せず、補強部材30は変形しにくいので、電子部品51および補強部材30の下方の接着層70の変形およびこの変形にともなう基材20の局所的な伸びを抑制することができる。したがって、配線基板10に局所的に大きな伸びが生じることをより効果的に抑制することができる。
【0109】
(第5の変形例)
次に、図13(a)及び図13(b)を参照して、複数の接着部71がドット状のパターンを有する第5の変形例について説明する。図13(a)及び図13(b)は、第5の変形例に係る配線基板10を示す下面図である。
【0110】
図13(a)に示すように、複数の接着部71は、第2面22の面内方向における互いに直交するX方向およびY方向に一定の間隔を空けた規則的なドット状のパターンを有していてもよい。図13(a)の例においては、1つの電子部品51に1つの接着部71が重なっている。また、配線52は、接着部71に重ならないように接着部71間に設けられている。
【0111】
また、図13(b)に示すように、複数の接着部71は、図13(a)よりも細かい規則的なドット状のパターンを有していてもよい。図13(b)の例においては、1つの電子部品51に4つの接着部71が重なっている。
【0112】
(第6の変形例)
次に、図14を参照して、複数の接着部71が縞状のパターンを有する第6の変形例について説明する。図14は、第6の変形例に係る配線基板10を示す下面図である。
【0113】
図14に示すように、第6の変形例における複数の接着部71は、第2面22の面内方向における基材20が伸縮性を有する方向Dに間隔を空けた縞状のパターンを有する。方向Dは、例えば、既述した蛇腹形状部57の周期方向である。
【0114】
第6の変形例によれば、基材20が伸縮性を有する方向に間隔を空けた縞状のパターンを有するように複数の接着部71を配置することで、接着層70が使用時において配線基板10の伸縮性を阻害しないようにすることができる。
【0115】
(第7の変形例)
次に、図15を参照して、剥離層9を備える第7の変形例について説明する。図15は、第7の変形例に係る配線基板10を示す断面図である。
【0116】
図15に示すように、第7の変形例における配線基板10は、図1乃至図3に示した配線基板10の構成に加えて、更に、剥離層15を備える。剥離層15は、接着層70に対して基材20の第2面22と反対側に位置する層である。剥離層15は、配線基板10の未使用時には、接着層70を保護し、配線基板10の使用時には、接着層70から剥離される。剥離層15としては、例えば、紙などの基材上に接着層70に接するシリコーン樹脂などの剥離層が設けられた部材を用いることができる。
【符号の説明】
【0117】
10 配線基板
20 基材
21 第1面
22 第2面
23 突起部
30 補強部材
51 電子部品
52 配線
57 蛇腹形状部
70 接着層
71 接着部
80 対象物
81 表面
9 剥離層
図1
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