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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】窓パネル
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/67 20060101AFI20231124BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20231124BHJP
   C03C 27/06 20060101ALI20231124BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20231124BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
E06B3/67 A
E06B3/66 E
C03C27/06 101H
E06B5/00 B
E06B9/24 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019209938
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021011808
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018218501
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019134764
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 千顕
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-041341(JP,A)
【文献】特開2016-132934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54-3/88
E06B 5/00
E06B 9/24
C03C 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に配置される窓パネルであって、
所定の間隔で配置された、透光性を有する複数枚のパネルと、
複数枚の前記パネルの少なくとも2つの主面に、所定の方向において交互に形成された複数の帯状の反射型Low-E膜と、
を備え
複数枚の前記パネルは、室内側パネルおよび室外側パネルを含み、
複数の前記反射型Low-E膜は、前記室内側パネルの室外側面と前記室外側パネルの室内側面に前記所定の方向において交互に形成され、
前記室外側パネルの室外側面に、前記所定の方向に所定の間隔で形成された複数の帯状の反射型Low-E膜または反射膜をさらに備えることを特徴とする窓パネル。
【請求項2】
建物の開口部に配置される窓パネルであって、
所定の間隔で配置された、透光性を有する複数枚のパネルと、
複数枚の前記パネルの少なくとも2つの主面に、所定の方向において交互に形成された複数の帯状の反射型Low-E膜と、
を備え、
複数枚の前記パネルは、室内側パネルおよび室外側パネルを含み、
複数の前記反射型Low-E膜は、前記室内側パネルの室外側面と前記室外側パネルの室内側面に前記所定の方向において交互に形成され、
前記室内側パネルの室外側面における前記反射型Low-E膜に隣接して形成された、複数の帯状の吸収型または透過型Low-E膜をさらに備えることを特徴とする窓パネル。
【請求項3】
複数の前記反射型Low-E膜は、前記所定の方向において同じ幅Aを有し、
複数枚の前記パネルにN層(Nは2以上の整数)の前記反射型Low-E膜が形成され、反射型Low-E膜の間隔をBとしたとき、前記反射型Low-E膜は、B=(N-1)×Aを満たすように配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の窓パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部に配置される窓パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部に配置される窓パネルとして、ガラス表面を特殊金属膜(Low-E膜)でコーティングしたLow-E(Low Emissivity:低放射)複層ガラスが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
Low-E複層ガラスには、室外側ガラスの室内側(空気層側)の面にLow-E膜をコーティングした遮熱型のものと、室内側ガラスの室外側(空気層側)の面にLow-E膜をコーティングした断熱型のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-199438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の遮熱型のLow-Eガラスは、夏期においては日射熱を遮ることができるが、冬期においては室内に取り込みたい日射熱を遮ってしまうという課題がある。また、従来の断熱型のLow-Eガラスは、冬期においては日射熱を室内に取り込むことができるが、夏期においては遮りたい日射熱を室内に取り込んでしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、夏期の不要な日射熱を遮りつつ、冬期の必要な日射熱を室内に取り込むことのできる窓パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の窓パネルは、建物の開口部に配置される窓パネルであって、所定の間隔で配置された、透光性を有する複数枚のパネルと、複数枚のパネルの少なくとも2つの主面に、所定の方向において交互に形成された複数の帯状の反射型Low-E膜とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、夏期の不要な日射熱を遮りつつ、冬期の必要な日射熱を室内に取り込むことのできる窓パネルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る窓ガラスを説明するための概略断面図である。
図2図2(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る窓ガラスの作用を説明するための図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る窓ガラスを説明するための概略断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る窓ガラスを説明するための概略断面図である。
図5図5(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る窓ガラスを鉛直方向に対して傾斜して配置した状態を示す図である。
図6図6(a)~(d)は、第1実施形態に係る窓ガラスの実施例を説明するための図である。
図7図7(a)~(d)は、第3実施形態に係る窓ガラスの実施例を説明するための図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る窓ガラスを説明するための概略断面図である。
図9】第4実施形態に係る窓ガラスにおける反射型Low-E膜の配置を説明するための図である。
図10】端部間距離を説明するための図である。
図11】第4実施形態に係る窓ガラスにおける太陽高度と開口度との関係を示す図である。
図12】第4実施形態に係る窓ガラスにおける反射型Low-E膜の幅と開口度との関係を示す図である。
図13】本発明の第5実施形態に係る窓ガラスを説明するための概略断面図である。
図14】第5実施形態に係る窓ガラスにおける太陽高度と開口度との関係を示す図である。
図15】第5実施形態に係る窓ガラスにおける反射型Low-E膜の幅と開口度との関係を示す図である。
図16】本発明の第6実施形態に係る窓ガラスを説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、本明細書において「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「内」、「外」等の方向を表す用語が用いられる場合、それらは窓パネルが建物に設けられたときの姿勢における方向を意味する。以下の実施形態では、窓パネルとして、ガラスパネルを用いた窓ガラスを例示する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る窓ガラス10を説明するための概略断面図である。窓ガラス10は、建物の開口部に配置される。
【0012】
図1に示すように、窓ガラス10は、所定の間隔で配置された、透光性を有する一対の室内側ガラスパネル11および室外側ガラスパネル12と、スペーサ15とを備える。窓ガラス10は、一対の室内側ガラスパネル11および室外側ガラスパネル12の間にスペーサ15によって空間16を設け、該空間16に乾燥空気を封入した複層ガラスとして構成されている。
【0013】
窓ガラス10においては、室内側ガラスパネル11の室外側面11bと室外側ガラスパネル12の室内側面12aとが対向している。また、室内側ガラスパネル11の室内側面11aが建物の室内空間に面しており、室外側ガラスパネル12の室外側面12bが建物の外部空間に面している。
【0014】
本実施形態に係る窓ガラス10においては、室内側ガラスパネル11の室外側面11bに、高さ方向に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている。また、室外側ガラスパネル12の室内側面12aにも、高さ方向に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている。換言すると、室内側ガラスパネル11の室外側面11bと室外側ガラスパネル12の室内側面12aのそれぞれに、スリット状に反射型Low-E膜17が形成されている。各反射型Low-E膜17は、水平方向に延在するように形成されてもよいし、水平方向に対して傾斜した方向に延在するように形成されてもよい。
【0015】
反射型Low-E膜17は、例えば銀等の特殊金属膜によって形成される。
【0016】
本実施形態に係る窓ガラス10においては、図1に示すように、反射型Low-E膜17は、室内側ガラスパネル11の室外側面11bと室外側ガラスパネル12の室内側面12aに高さ方向において交互に配置されている。すなわち、室内側面12aに配置された1つの反射型Low-E膜17aに着目すると、該反射型Low-E膜17aよりも下方にずれた高さの室外側面11bに反射型Low-E膜17bが形成され、該反射型Low-E膜17bよりも下方にずれた高さの室内側面12aに反射型Low-E膜17cが形成され、該反射型Low-E膜17cよりも下方にずれた高さの室外側面12bに反射型Low-E膜17dが形成される、といった具合に複数の反射型Low-E膜17が形成されている。
【0017】
室内側ガラスパネル11の室外側面11bおよび室外側ガラスパネル12の室内側面12aにおける反射型Low-E膜17の配置位置は、窓ガラス10が設置される各地域の太陽高度、方位、窓ガラス10の総厚さ、ガラスパネルの屈折率などから最適な位置を算出することができる。
【0018】
図2(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る窓ガラス10の作用を説明するための図である。図2(a)は夏期の使用状態を示し、図2(b)は冬期の使用状態を示す。図2(a)および(b)には、太陽からの日射熱が図示されている。
【0019】
図2(a)に示すように、太陽高度が比較的高い夏期においては、日射熱の一部は反射型Low-E膜17によって反射され、室外に放出される(反射熱)。また、日射熱の一部は室外側ガラスパネル12に吸収される(吸収熱)。この吸収熱は、反射型Low-E膜17の存在によって室内側には伝熱されにくく、室外側に放射される(放射熱)。このように、本実施形態に係る窓ガラス10によれば、夏期においては、不要な日射熱を遮ることができ、日射熱取得率を比較的低くすることができる。
【0020】
一方、図2(b)に示すように、太陽高度が比較的低い冬期においては、日射熱の一部を反射型Low-E膜17の間を介して建物の室内側に取り込むことができる(入射熱)。また、日射熱の一部は室内側ガラスパネル11に吸収される(吸収熱)。この吸収熱は、反射型Low-E膜17の存在によって室外側には伝熱されにくく、室内側に放射される(放射熱)。このように、本実施形態に係る窓ガラス10によれば、冬期においては、必要な日射熱を室内に取り込むことができ、日射熱取得率を比較的高くすることができる。
【0021】
このように、本実施形態に係る窓ガラス10によれば、夏期の不要な日射熱を遮りつつ、冬期の必要な日射熱を室内に取り込むことができる。本実施形態に係る窓ガラス10は、機械的操作や電気的操作を一切行うことなく、夏期と冬期の日射熱取得率を変化させることができる。また、夏期においては、遮りたい日射熱を遮り、冬期においては、室内に取り込みたい日射熱を変換することなく効率よく取り込むことができるので、太陽光エネルギーを効率的に活用できる。
【0022】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る窓ガラス30を説明するための概略断面図である。図3に示す窓ガラス30は、室内側ガラスパネル11の室外側面11bに、反射型Low-E膜17に隣接して複数の帯状の吸収型または透過型Low-E膜18が形成された点が上述の窓ガラス10と異なる。換言すると、窓ガラス30においては、室内側ガラスパネル11の室外側面11bに、反射型Low-E膜17と吸収型または透過型Low-E膜18が高さ方向において交互に形成されている。
【0023】
吸収型または透過型Low-E膜18は、例えば銀等の特殊金属膜によって形成される。
【0024】
本実施形態に係る窓ガラス30によれば、反射型Low-E膜17に隣接して吸収型または透過型Low-E膜18を形成したことにより、反射型Low-E膜17間でガラス表面が露出している上述の窓ガラス10と比較して、室内側ガラスパネル11の熱貫流率を低下させることができる。これにより、冬期においては、必要な日射熱をより好適に室内に取り込むことができる。また、夏期においては、反射型Low-E膜17間でガラス表面が露出している上述の窓ガラス10と比較して、室内側に入り込む熱を遮ることができる。
【0025】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る窓ガラス40を説明するための概略断面図である。図4に示す窓ガラス40は、室外側ガラスパネル12の室外側面12bにも所定の間隔を置いて複数の帯状の反射型Low-E膜19が形成されている点が上述の窓ガラス10と異なる。室外側ガラスパネル12の室外側面12bに配置される反射型Low-E膜19は、室外側ガラスパネル12の室内側面12aに配置される反射型Low-E膜17と高さ方向において交互に配置されている。
【0026】
反射型Low-E膜17および反射型Low-E膜19の配置位置は、窓ガラス40が設置される各地域の太陽高度、方位、窓ガラス10の総厚さ、ガラスパネルの屈折率などから最適な位置を算出することができる。
【0027】
本実施形態に係る窓ガラス40によれば、室外側ガラスパネル12の室外側面12bに追加で反射型Low-E膜19を形成したことにより、特に夏期における日射熱をより効果的に遮断することができる。
【0028】
窓ガラス40においては、反射型Low-E膜19に代えて、単なる(すなわちLow-Eではない)反射膜が形成されてもよい。また、図3に示す窓ガラス30と同様に、室内側ガラスパネル11の室外側面11bに、反射型Low-E膜17に隣接して複数の帯状の吸収型または透過型Low-E膜(図示せず)が形成されてもよい。
【0029】
図5(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る窓ガラス10を鉛直方向に対して傾斜して配置した状態を示す図である。図5(a)は夏期の使用状態を示し、図5(b)は冬期の使用状態を示す。図5(a)および(b)には、太陽からの日射熱が図示されている。
【0030】
窓ガラス10は、図2(a)および(b)に示すようにガラスパネルの主面が鉛直方向と平行になるように配置される場合が多いが、図5(a)および(b)に示すように鉛直方向に対して傾斜して配置することも可能である。傾斜配置の例としては、建物のトップライトやサンルームの屋根を挙げることができる。図5(a)および(b)では、ガラスパネルの主面を鉛直方向に対して45°傾斜した場合を示すが、傾斜角度は任意である。図5(a)および(b)に示すように、室内側ガラスパネル11の室外側面11bと室外側ガラスパネル12の室内側面12aのそれぞれに、所定の方向(45°方向)に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている。
【0031】
図5(a)に示すように、太陽高度が比較的高い夏期においては、日射熱の一部は反射型Low-E膜17によって反射され、室外に放出される(反射熱)。また、日射熱の一部は室外側ガラスパネル12に吸収される(吸収熱)。この吸収熱は、反射型Low-E膜17の存在によって室内側には伝熱されにくく、室外側に放射される(放射熱)。このように、窓ガラス10を傾斜配置した場合も、夏期において不要な日射熱を遮ることができ、日射熱取得率を比較的低くすることができる。
【0032】
一方、図5(b)に示すように、太陽高度が比較的低い冬期においては、日射熱の一部を反射型Low-E膜17の間を介して建物の室内側に取り込むことができる(入射熱)。また、日射熱の一部は室内側ガラスパネル11に吸収される(吸収熱)。この吸収熱は、反射型Low-E膜17の存在によって室外側には伝熱されにくく、室内側に放射される(放射熱)。このように、窓ガラス10を傾斜配置した場合も、冬期において必要な日射熱を室内に取り込むことができ、日射熱取得率を比較的高くすることができる。
【0033】
第2実施形態に係る窓ガラス30や第3実施形態に係る窓ガラス40を鉛直方向に対して傾斜して配置することも可能である。
【0034】
図6(a)~(d)は、第1実施形態に係る窓ガラス10の実施例を説明するための図である。図6(a)は、窓ガラス10の概略図を示す。図6(b)は、窓ガラス10を正面から見た概略図である。図6(c)は、窓ガラス10をA-A方向から見た概略図である。図6(d)は、窓ガラス10をB-B方向から見た概略図である。A-A方向は、夏至の南中高度(78.4度)の方向である。B-B方向は、冬至の南中高度(31.6度)の方向である。
【0035】
本実施例では、室内側ガラスパネル11および室外側ガラスパネル12の厚さを3mm、室内側ガラスパネル11と室外側ガラスパネル12の間隔を16mm、反射型Low-E膜17の高さを7.5mmとした。
【0036】
図6(c)に示すように、夏至の南中高度方向から窓ガラス10を見たとき、窓ガラス10の開口度は、ゼロ%となっている。したがって、夏期においては、殆どの日射熱が反射型Low-E膜17によって遮られ、建物の室内側へは日射熱は直接入らない。
【0037】
一方、図6(d)に示すように、冬至の南中高度方向から窓ガラス10を見たとき、窓ガラス10の開口度は、42%となっている。したがって、冬期においては、一部の日射熱は反射型Low-E膜17によって遮られるが、残りの日射熱は建物の室内側へ直接取り込むことができる。
【0038】
図7(a)~(d)は、第3実施形態に係る窓ガラス40の実施例を説明するための図である。図7(a)は、窓ガラス40の概略図を示す。図7(b)は、窓ガラス40を正面から見た概略図である。図7(c)は、窓ガラス40をA-A方向から見た概略図である。図7(d)は、窓ガラス40をB-B方向から見た概略図である。A-A方向は、夏至の南中高度(78.4度)の方向である。B-B方向は、冬至の南中高度(31.6度)の方向である。
【0039】
本実施例では、室内側ガラスパネル11および室外側ガラスパネル12の厚さを3mm、室内側ガラスパネル11と室外側ガラスパネル12の間隔を16mm、反射型Low-E膜17の高さを6.2mmとした。
【0040】
図7(c)に示すように、夏至の南中高度方向から窓ガラス40を見たとき、窓ガラス40の開口度は、ゼロ%となっている。したがって、夏期においては、殆どの日射熱が反射型Low-E膜17によって遮られ、建物の室内側へは日射熱は直接入らない。
【0041】
一方、図7(d)に示すように、冬至の南中高度方向から窓ガラス40を見たとき、窓ガラス40の開口度は、61%となっている。したがって、冬期においては、一部の日射熱は反射型Low-E膜17によって遮られるが、残りの日射熱は建物の室内側へ直接取り込むことができる。
【0042】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態に係る窓ガラス50を説明するための概略断面図である。この窓ガラス50も、一対の室内側ガラスパネル11および室外側ガラスパネル12を備える複層ガラスである。
【0043】
本実施形態に係る窓ガラス50は、4層の反射型Low-E膜を備える。室外側ガラスパネル12の室外側面12bに、高さ方向に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている(第1層51)。また、室外側ガラスパネル12の室内側面12aにも、高さ方向に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている(第2層52)。また、室内側ガラスパネル11の室外側面11bにも、高さ方向に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている(第3層53)。また、室内側ガラスパネル11の室内側面11aにも、高さ方向に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている(第4層54)。各反射型Low-E膜17は、水平方向に延在するように形成されてもよいし、水平方向に対して傾斜した方向に延在するように形成されてもよい。
【0044】
本実施形態に係る窓ガラス50においては、図8に示すように、反射型Low-E膜17は、室外側ガラスパネル12の室外側面12bおよび室内側面12aと室内側ガラスパネル11の室外側面11bおよび室内側面11aに、高さ方向において交互に配置されている。すなわち、第1層51における1つの反射型Low-E膜17aに着目すると、該反射型Low-E膜17aよりも下方にずれた高さに第2層52の反射型Low-E膜17bが形成され、該反射型Low-E膜17bよりも下方にずれた高さに第3層53の反射型Low-E膜17cが形成され、該反射型Low-E膜17cよりも下方にずれた高さに第4層54の反射型Low-E膜17dが形成され、該反射型Low-E膜17dよりも下方にずれた高さに第1層51の反射型Low-E膜17eが形成される(以下繰り返し)、といった具合に複数の反射型Low-E膜17が形成されている。
【0045】
図8には、夏期におよび冬期の太陽からの日射熱が図示されている。夏期における太陽高度がθsで表され、冬期における太陽高度がθwで表されている。図8に示すように、太陽高度が比較的高い夏期においては、日射熱の一部は反射型Low-E膜17によって反射され、室外に放出される。一方、太陽高度が比較的低い冬期においては、日射熱の一部を反射型Low-E膜17の間を介して建物の室内側に取り込むことができる。
【0046】
図9は、第4実施形態に係る窓ガラス50における反射型Low-E膜17の配置を説明するための図である。ここでは、反射型Low-E膜17の幅(高さ方向の幅)が全て同じとする。第4実施形態に係る窓ガラス50においては、反射型Low-E膜17の幅(高さ方向の幅)をAとし、隣り合う反射型Low-E膜17の間隔をBとしたとき、反射型Low-E膜17は、B=3×Aを満たすように配置される。
【0047】
ここでは反射型Low-E膜17が4層の場合を説明したが、一般化すると、反射型Low-E膜17がN層(Nは2以上の整数)の場合、反射型Low-E膜17は、B=(N-1)×Aを満たすように配置される。例えば反射型Low-E膜17が3層の場合、反射型Low-E膜17は、B=2×Aを満たすように配置される。
【0048】
図9に示すように、第4実施形態に係る窓ガラス50において、第1層51の反射型Low-E膜17の下端と第2層52の反射型Low-E膜17の上端は、端部間距離αだけ離れている。同様に、第3層53の反射型Low-E膜17の下端と第4層55の反射型Low-E膜17の上端は、端部間距離αだけ離れている。これは、ガラスパネルでの光の屈折を考慮したものである。
【0049】
図10は、端部間距離αを説明するための図である。各層の端部間距離αは、ガラスパネルの厚さtと、ガラスパネルの屈折率η(=sin(i)/sin(r))を用いて定めることができる。
【0050】
図11は、第4実施形態に係る窓ガラス50における太陽高度と開口度との関係を示す。図11において、縦軸は窓ガラス50の開口度(%)を表し、横軸は太陽高度(度)を表す。ここでは、室外側ガラスパネル12の厚さ=5mm、空間16の厚さ=5mm、室内側ガラスパネル11の厚さ=5mm、反射型Low-E膜17の幅=7mmとした。このような条件の下、窓ガラス50の開口度と太陽高度の関係を求めた。
【0051】
図11から分かるように、窓ガラス50の開口度は、太陽高度によって大きく変化する。夏期(5月中旬~9月の10時~14時)には太陽高度θsが約65度よりも大きくなる。したがって図11から、夏期において窓ガラス50の開口度を約31%以下とすることができ、日射熱が建物の室内に入り難くすることができることが分かる。また、日中の太陽の角度は常に変化するため、実質的には積算値として考える必要があり、日射熱取得量は相対的に少なくなるといえる。
【0052】
一方、冬期(10月中旬~3月の10時~14時)には太陽高度θwが約40度よりも小さくなる。したがって図11から、冬期において窓ガラス50の開口度を約66%以上に維持することができ、日射熱を効果的に建物の室内側に取り込むことができることが分かる。
【0053】
図12は、第4実施形態に係る窓ガラス50における反射型Low-E膜17の幅と開口度との関係を示す。図12において、縦軸は窓ガラス50の開口度(%)を表し、横軸は反射型Low-E膜17の幅(mm)を表す。
【0054】
図12において、実線は、第4実施形態に係る窓ガラス50の第1実施例(室外側ガラスパネル12の厚さ=5mm、空間16の厚さ=5mm、室内側ガラスパネル11の厚さ=5mm)における膜幅と開口度の関係を示す。また、破線は、第4実施形態に係る窓ガラス50の第2実施例(室外側ガラスパネル12の厚さ=5mm、空間16の厚さ=10mm、室内側ガラスパネル11の厚さ=5mm)における膜幅と開口度の関係を示す。また、一点鎖線は、第4実施形態に係る窓ガラス50の第3実施例(室外側ガラスパネル12の厚さ=3mm、空間16の厚さ=12mm、室内側ガラスパネル11の厚さ=3mm)における膜幅と開口度の関係を示す。
【0055】
図12から、第4実施形態に係る窓ガラス50の第1実施例においては、反射型Low-E膜17の幅を7mmとしたときに最も開口度を高くできることが分かる。また、第4実施形態に係る窓ガラス50の第2実施例においては、反射型Low-E膜17の幅を6.5mmとしたときに最も開口度を高くできることが分かる。また、第4実施形態に係る窓ガラス50の第3実施例においては、反射型Low-E膜17の幅を4.5mmとしたときに最も開口度を高くできることが分かる。
【0056】
(第5実施形態)
図13は、本発明の第5実施形態に係る窓ガラス60を説明するための概略断面図である。この窓ガラス60も、一対の室内側ガラスパネル11および室外側ガラスパネル12を備える複層ガラスである。
【0057】
本実施形態に係る窓ガラス60は、3層の反射型Low-E膜を備える。室外側ガラスパネル12の室外側面12bに、高さ方向に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている(第1層51)。また、室外側ガラスパネル12の室内側面12aにも、高さ方向に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている(第2層52)。また、室内側ガラスパネル11の室外側面11bにも、高さ方向に所定の間隔をおいて複数の帯状の反射型Low-E膜17が形成されている(第3層53)。各反射型Low-E膜17は、水平方向に延在するように形成されてもよいし、水平方向に対して傾斜した方向に延在するように形成されてもよい。
【0058】
本実施形態に係る窓ガラス60において、反射型Low-E膜17は、室外側ガラスパネル12の室外側面12bおよび室内側面12aと室内側ガラスパネル11の室外側面11bに、高さ方向において交互に配置されている。ここでは、反射型Low-E膜17の幅(高さ方向の幅)が全て同じとする。第5実施形態に係る窓ガラス60においては、反射型Low-E膜17の幅(高さ方向の幅)をAとし、隣り合う反射型Low-E膜17の間隔をBとしたとき、反射型Low-E膜17は、B=2×Aを満たすように配置される。
【0059】
第5実施形態に係る窓ガラス60において、第1層51の反射型Low-E膜17の下端と第2層52の反射型Low-E膜17の上端は、端部間距離αだけ離れている。端部間距離αは、ガラスパネルの厚さtと、ガラスパネルの屈折率ηを用いて定めることができる。
【0060】
図14は、第5実施形態に係る窓ガラス60における太陽高度と開口度との関係を示す。図14において、縦軸は窓ガラス50の開口度(%)を表し、横軸は太陽高度(度)を表す。ここでは、室外側ガラスパネル12の厚さ=3mm、空間16の厚さ=3mm、室内側ガラスパネル11の厚さ=3mm、反射型Low-E膜17の幅=6.5mmとした。このような条件の下、窓ガラス60の開口度と太陽高度の関係を求めた。
【0061】
図14から分かるように、窓ガラス60の開口度は、太陽高度によって大きく変化する。夏期(5月中旬~9月の10時~14時)には太陽高度θsが約65度よりも大きくなる。したがって図14から、夏期において窓ガラス60の開口度を約32%以下とすることができ、日射熱が建物の室内に入り難くすることができることが分かる。また、日中の太陽の角度は常に変化するため、実質的には積算値として考える必要があり、日射熱取得量は相対的に少なくなるといえる。
【0062】
一方、冬期(10月中旬~3月の10時~14時)には太陽高度θwが約40度よりも小さくなる。したがって図14から、冬期において窓ガラス60の開口度を約58%以上に維持することができ、日射熱を効果的に建物の室内側に取り込むことができることが分かる。
【0063】
図15は、第5実施形態に係る窓ガラス60における反射型Low-E膜17の幅と開口度との関係を示す。図15において、縦軸は窓ガラス60の開口度(%)を表し、横軸は反射型Low-E膜17の幅(mm)を表す。
【0064】
図15において、実線は、第5実施形態に係る窓ガラス60の第1実施例(室外側ガラスパネル12の厚さ=3mm、空間16の厚さ=3mm、室内側ガラスパネル11の厚さ=3mm)における膜幅と開口度の関係を示す。また、破線は、第5実施形態に係る窓ガラス60の第2実施例(室外側ガラスパネル12の厚さ=3mm、空間16の厚さ=5mm、室内側ガラスパネル11の厚さ=3mm)における膜幅と開口度の関係を示す。
【0065】
図15から、第5実施形態に係る窓ガラス60の第1実施例においては、反射型Low-E膜17の幅を6.5mmとしたときに最も開口度を高くできることが分かる。また、第5実施形態に係る窓ガラス60の第2実施例においては、反射型Low-E膜17の幅を8.5mmとしたときに最も開口度を高くできることが分かる。
【0066】
(第6実施形態)
図16は、本発明の第6実施形態に係る窓ガラス70を説明するための概略断面図である。この窓ガラス70も、一対の室内側ガラスパネル11および室外側ガラスパネル12を備える複層ガラスである。本実施形態に係る窓ガラス60は、3層の反射型Low-E膜を備える。第6実施形態に係る窓ガラス70は、反射型Low-E膜17の幅(高さ方向の幅)が異なる点が、第5実施形態に係る窓ガラス60(図13参照)と異なる。
【0067】
図16に示すように、第1層51における1つの反射型Low-E膜17の幅をA1、それに隣接する反射型Low-E膜17の幅をA1’、それら2つの反射型Low-E膜17の間隔をB1とする。また、第2層52における1つの反射型Low-E膜17の幅をA2、それに隣接する反射型Low-E膜17の幅をA2’、それら2つの反射型Low-E膜17の間隔をB2とする。また、第3層53における1つの反射型Low-E膜17の幅をA3、それに隣接する反射型Low-E膜17の幅をA3’、それら2つの反射型Low-E膜17の間隔をB3とする。このとき、反射型Low-E膜17は、B1=A2+A3、B2=A3+A1’、B3=A1’+A2’を満たすように配置される。
【0068】
ここでは反射型Low-E膜17が3層の場合を説明したが、一般化すると、反射型Low-E膜17がN層(Nは2以上の整数)の場合、反射型Low-E膜17は、以下の式:
【数1】
を満たすように配置される。ここで、Bxは、第x層(xは2以上の整数)における反射型Low-E膜17の間隔を表す。BNは、第N層における反射型Low-E膜17の間隔である。
【0069】
例えば反射型Low-E膜17が4層の場合、B1=A2+A3+A4、B2=A3+A4+A1’、B3=A4+A1’+A2’、B4=A1’+A2’+A3’を満たすように配置される。例えば反射型Low-E膜17が5層の場合、反射型Low-E膜17は、B1=A2+A3+A4+A5、B2=A3+A4+A5+A1’、B3=A4+A5+A1’+A2’、B4=A5+A1’+A2’+A3’、B5=A1’+A2’+A3’+A4’を満たすように配置される。
【0070】
本実施形態においても、第1層51の反射型Low-E膜17の下端と第2層52の反射型Low-E膜17の上端は、端部間距離αだけ離れている。端部間距離αは、ガラスパネルの厚さtと、ガラスパネルの屈折率ηを用いて定めることができる。
【0071】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0072】
例えば、上述の実施形態では、Low-E膜をパネルの主面に高さ方向あるいは45°方向に形成することを説明したが、Low-E膜は、パネルの主面の所定方向に交互に形成されていればよい。
【0073】
例えば、上述の実施形態では、二枚のガラスパネルから成る複層ガラスを例示したが、複数枚(すなわち二枚以上)であればガラスパネルの枚数は特に限定されない。そして、該複数枚のガラスパネルの有する複数の主面のうち少なくとも2つの主面に、所定の方向(例えば高さ方向)において交互に複数の帯状の反射型Low-E膜が形成される。
【0074】
帯状の反射型Low-E膜は、途切れた部分のない直線状に形成されてもよいし、途中に途切れた部分がある直線状に形成されてもよい。
【0075】
上述の実施形態では、窓パネルとして、ガラスパネルを用いた窓ガラスを例示したが、窓パネルは窓ガラスに限定されず、例えば樹脂製の透明パネルを用いたものであってもよい。樹脂製の透明パネルは、例えばポリカーボネート製やアクリル製であってよい。
【0076】
以上の実施形態により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。
【0077】
本発明のある態様は、建物の開口部に配置される窓パネルである。この窓パネルは、所定の間隔で配置された、透光性を有する複数枚のパネルと、複数枚のパネルの少なくとも2つの主面に、所定の方向において交互に形成された複数の帯状の反射型Low-E膜とを備える。
【0078】
複数枚のパネルは、室内側パネルおよび室外側パネルを含んでもよい。複数の反射型Low-E膜は、室内側パネルの室外側面と室外側パネルの室内側面に所定の方向において交互に形成されてもよい。
【0079】
室外側パネルの室外側面に、所定の方向に所定の間隔で形成された複数の帯状の反射型Low-E膜または反射膜をさらに備えてもよい。
【0080】
室内側パネルの室外側面における反射型Low-E膜に隣接して形成された、複数の帯状の吸収型または透過型Low-E膜をさらに備えてもよい。
【0081】
複数の反射型Low-E膜は、所定の方向において同じ幅Aを有してもよい。複数枚のパネルにN層(Nは2以上の整数)の反射型Low-E膜が形成され、反射型Low-E膜の間隔をBとしたとき、反射型Low-E膜は、B=(N-1)×Aを満たすように配置されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10,30,40,50,60,70 窓ガラス、 11 室内側ガラスパネル、 12 室外側ガラスパネル、 15 スペーサ、 17,19 反射型Low-E膜、 18 吸収型または透過型Low-E膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16