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特許7390493半導体デバイスの製造方法、半導体製造装置の洗浄方法、及び洗浄液の清浄度の測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半導体デバイスの製造方法、半導体製造装置の洗浄方法、及び洗浄液の清浄度の測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231124BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 647Z
H01L21/304 647A
H01L21/30 564C
H01L21/30 569C
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2022545581
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2021028460
(87)【国際公開番号】W WO2022044703
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2020145412
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】大津 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】河田 幸寿
(72)【発明者】
【氏名】室 祐継
(72)【発明者】
【氏名】吉留 正洋
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西塔 亮
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104433(WO,A1)
【文献】特開2012-137483(JP,A)
【文献】国際公開第2018/128159(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
G01N 5/02
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、有機溶媒を主成分とする薬液とを接触させ、前記薬液の接触による前記振動子の共振周波数の変化量を得る工程1と、
前記薬液の共振周波数の変化量が、予め設定された前記薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるかを確認する工程2と、
前記工程2で確認された薬液を、半導体デバイスの製造に使用する工程3とを有する、半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記工程3の前記半導体デバイスの製造は、前記薬液を使用するリソグラフィ工程を有する、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記工程1の前に、前記薬液を濃縮する濃縮工程を有する、請求項1又は2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記工程1の前に、前記振動子を洗浄する工程を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記工程1は、前記薬液を前記振動子に循環して供給し、前記振動子と前記薬液とを接触させて、前記薬液の接触による前記振動子の共振周波数の変化量を得る、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記工程1は、前記薬液の温度を一定に保持して実施される、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記工程1の前記薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、前記金属元素の合計含有量が0.01質量ppq~10質量ppbである、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記振動子は、前記薬液中の不純物を吸着する吸着層及び水晶振動子を含む水晶振動子センサで構成されており、
前記振動子を共振周波数で振動させる発振部と、
前記水晶振動子センサに接続され、前記薬液の接触による前記水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する検出部とを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記薬液を前記水晶振動子センサに供給して、前記薬液を前記水晶振動子センサに接触させる供給部を有しており、
前記工程1は、前記薬液を前記水晶振動子センサに送液して、前記薬液と前記水晶振動子センサとを接触させる工程を有する、請求項8に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記薬液を前記水晶振動子センサに一方向に流して、前記薬液と前記水晶振動子センサとを接触させる、請求項8又は9に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記工程1において、前記薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項12】
振動子と、有機溶媒を主成分とする薬液とを接触させ、前記薬液の接触による前記振動子の共振周波数の変化量を得る工程1と、
前記薬液の共振周波数の変化量が、予め設定された前記薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるかを確認する工程2と、
前記工程2で確認された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用する工程3とを有する、
半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項13】
前記工程3の前記半導体製造装置の前記洗浄は、前記薬液を前記半導体製造装置の送液部に送液する工程を有する、請求項12に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項14】
前記工程1の前に、前記薬液を濃縮する濃縮工程を有する、請求項12又は13に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項15】
前記工程1の前に、前記振動子を洗浄する工程を有する、請求項12~14のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項16】
前記工程1は、前記薬液を前記振動子に循環して供給し、前記振動子と前記薬液とを接触させて、前記薬液の接触による前記振動子の共振周波数の変化量を得る、請求項12~15のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項17】
前記工程1は、前記薬液の温度を一定に保持して実施される、請求項12~16のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項18】
前記工程1の前記薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、前記金属元素の合計含有量が0.01質量ppq~10質量ppbである、請求項12~17のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項19】
前記振動子は、前記薬液中の不純物を吸着する吸着層及び水晶振動子を含む水晶振動子センサで構成されており、
前記振動子を共振周波数で振動させる発振部と、
前記水晶振動子センサに接続され、前記薬液の接触による前記水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する検出部とを有する、請求項12~18のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項20】
前記薬液を前記水晶振動子センサに供給して、前記薬液を前記水晶振動子センサに接触させる供給部を有しており、
前記工程1は、前記薬液を前記水晶振動子センサに送液して、前記薬液と前記水晶振動子センサとを接触させる工程を有する、請求項19に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項21】
前記薬液を前記水晶振動子センサに一方向に流して、前記薬液と前記水晶振動子センサとを接触させる、請求項19又は20に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項22】
前記工程1において、前記薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される、請求項12~21のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄方法。
【請求項23】
振動子と、有機溶媒を主成分とする薬液とを接触させ、前記薬液の接触による前記振動子の共振周波数の変化量を得る工程1と、
前記薬液の共振周波数の変化量が、予め設定された前記薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるかを確認する工程2と、
前記工程2で確認された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用する工程3と、
前記工程3の洗浄に使用された薬液の一部を取り出す工程4と、
前記工程4で取り出された前記薬液の共振周波数の変化量が、前記許容範囲に含まれるかを確認する工程5とを有する、洗浄液の清浄度の測定方法。
【請求項24】
前記工程1の前に、前記薬液を濃縮する濃縮工程を有する、請求項23に記載の洗浄液の清浄度の測定方法。
【請求項25】
前記工程1の前に、前記振動子を洗浄する工程を有する、請求項23又は24に記載の洗浄液の清浄度の測定方法。
【請求項26】
前記工程1は、前記薬液を前記振動子に循環して供給し、前記振動子と前記薬液とを接触させて、前記薬液の接触による前記振動子の共振周波数の変化量を得る、請求項23~25のいずれか1項に記載の洗浄液の清浄度の測定方法。
【請求項27】
前記工程1は、前記薬液の温度を一定に保持して実施される、請求項23~26のいずれか1項に記載の洗浄液の清浄度の測定方法。
【請求項28】
前記工程1の前記薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、前記金属元素の合計含有量が0.01質量ppq~10質量ppbである、請求項23~27のいずれか1項に記載の洗浄液の清浄度の測定方法。
【請求項29】
前記振動子は、前記薬液中の不純物を吸着する吸着層及び水晶振動子を含む水晶振動子センサで構成されており、
前記振動子を共振周波数で振動させる発振部と、
前記水晶振動子センサに接続され、前記薬液の接触による前記水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する検出部とを有する、請求項23~28のいずれか1項に記載の洗浄液の清浄度の測定方法。
【請求項30】
前記薬液を前記水晶振動子センサに供給して、前記薬液を前記水晶振動子センサに接触させる供給部を有しており、
前記工程1は、前記薬液を前記水晶振動子センサに送液して、前記薬液と前記水晶振動子センサとを接触させる工程を有する、請求項29に記載の洗浄液の清浄度の測定方法。
【請求項31】
前記薬液を前記水晶振動子センサに一方向に流して、前記薬液と前記水晶振動子センサとを接触させる、請求項29又は30に記載の洗浄液の清浄度の測定方法。
【請求項32】
前記工程1において、前記薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される、請求項23~31のいずれか1項に記載の洗浄液の清浄度の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造方法、半導体製造装置の洗浄方法、及び洗浄液の清浄度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程、及び、剥離工程等の様々な工程が含まれている。このような半導体デバイスの製造工程において使用される現像液、リンス液、プリウェット液、及び、剥離液等の各種薬液は、高純度であることが求められる。
【0003】
高純度の薬液の特性を評価する方法の一つとして、高純度の薬液を基板上に塗布して、基板上の欠陥数を測定することにより、その薬液の特性を評価する方法がある。
例えば、特許文献1においては、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いて、上述の評価を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/169834号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、特許文献1に記載される表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いた測定は、測定手順自体が煩雑であり、かつ、作業時間も長く、汎用性に欠ける。
そのため、薬液を製造するたびに、上述の測定を行い、薬液の純度を測定することが、工業的な点から好ましくなく、より簡便に製造される薬液の純度を管理する方法が求められていた。
【0006】
本発明は、上述の実情に鑑みて、より簡便に有機溶媒を含む薬液の純度を管理する半導体デバイスの製造方法、及び半導体製造装置の洗浄方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、より簡便な洗浄液の清浄度の測定方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様は、振動子と、有機溶媒を主成分とする薬液とを接触させ、薬液の接触による振動子の共振周波数の変化量を得る工程1と、薬液の共振周波数の変化量が、予め設定された薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるかを確認する工程2と、工程2で確認された薬液を、半導体デバイスの製造に使用する工程3とを有する、半導体デバイスの製造方法を提供するものである。
工程3の半導体デバイスの製造は、薬液を使用するリソグラフィ工程を有することが好ましい。
工程1の前に、薬液を濃縮する濃縮工程を有することが好ましい。
工程1の前に、振動子を洗浄する工程を有することが好ましい。
工程1は、薬液を振動子に循環して供給し、振動子と薬液とを接触させて、薬液の接触による振動子の共振周波数の変化量を得ることが好ましい。
工程1は、薬液の温度を一定に保持して実施されることが好ましい。
【0008】
工程1の薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量が0.01質量ppq~10質量ppbであることが好ましい。
振動子は、薬液中の不純物を吸着する吸着層及び水晶振動子を含む水晶振動子センサで構成されており、振動子を共振周波数で振動させる発振部と、水晶振動子センサに接続され、薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する検出部とを有することが好ましい。
【0009】
薬液を水晶振動子センサに供給して、薬液を水晶振動子センサに接触させる供給部を有しており、工程1は、薬液を水晶振動子センサに送液して、薬液と水晶振動子センサとを接触させる工程を有することが好ましい。
薬液を水晶振動子センサに一方向に流して、薬液と水晶振動子センサとを接触させることが好ましい。
工程1において、薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成されることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様は、振動子と、有機溶媒を主成分とする薬液とを接触させ、薬液の接触による振動子の共振周波数の変化量を得る工程1と、薬液の共振周波数の変化量が、予め設定された薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるかを確認する工程2と、工程2で確認された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用する工程3とを有する、半導体製造装置の洗浄方法を提供するものである。
工程3の半導体製造装置の洗浄は、薬液を半導体製造装置の送液部に送液する工程を有することが好ましい。
工程1の前に、薬液を濃縮する濃縮工程を有することが好ましい。
工程1の前に、振動子を洗浄する工程を有することが好ましい。
工程1は、薬液を振動子に循環して供給し、振動子と薬液とを接触させて、薬液の接触による振動子の共振周波数の変化量を得ることが好ましい。
工程1は、薬液の温度を一定に保持して実施されることが好ましい。
【0011】
工程1の薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量が0.01質量ppq~10質量ppbであることが好ましい。
振動子は、薬液中の不純物を吸着する吸着層及び水晶振動子を含む水晶振動子センサで構成されており、振動子を共振周波数で振動させる発振部と、水晶振動子センサに接続され、薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する検出部とを有することが好ましい。
薬液を水晶振動子センサに供給して、薬液を水晶振動子センサに接触させる供給部を有しており、工程1は、薬液を水晶振動子センサに送液して、薬液と水晶振動子センサとを接触させる工程を有することが好ましい。
薬液を水晶振動子センサに一方向に流して、薬液と水晶振動子センサとを接触させることが好ましい。
工程1において、薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成されることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様は、振動子と、有機溶媒を主成分とする薬液とを接触させ、薬液の接触による振動子の共振周波数の変化量を得る工程1と、薬液の共振周波数の変化量が、予め設定された薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるかを確認する工程2と、工程2で確認された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用する工程3と、工程3の洗浄に使用された薬液の一部を取り出す工程4と、工程4で取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれるかを確認する工程5とを有する、洗浄液の清浄度の測定方法を提供するものである。
工程1の前に、薬液を濃縮する濃縮工程を有することが好ましい。
工程1の前に、振動子を洗浄する工程を有することが好ましい。
工程1は、薬液を振動子に循環して供給し、振動子と薬液とを接触させて、薬液の接触による振動子の共振周波数の変化量を得ることが好ましい。
【0013】
工程1は、薬液の温度を一定に保持して実施されることが好ましい。
工程1の薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量が0.01質量ppq~10質量ppbであることが好ましい。
振動子は、薬液中の不純物を吸着する吸着層及び水晶振動子を含む水晶振動子センサで構成されており、振動子を共振周波数で振動させる発振部と、水晶振動子センサに接続され、薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する検出部とを有することが好ましい。
【0014】
薬液を水晶振動子センサに供給して、薬液を水晶振動子センサに接触させる供給部を有しており、工程1は、薬液を水晶振動子センサに送液して、薬液と水晶振動子センサとを接触させる工程を有することが好ましい。
薬液を水晶振動子センサに一方向に流して、薬液と水晶振動子センサとを接触させることが好ましい。
工程1において、薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より簡便に有機溶媒を含む薬液の純度を管理する半導体デバイスの製造方法、及び半導体製造装置の洗浄方法を提供できる。
また、本発明は、より簡便な洗浄液の清浄度の測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の半導体製造装置の第1の例を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態の半導体製造装置の第2の例を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態の半導体製造装置の第2の例の半導体ウエハの洗浄部を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態の測定装置の一例を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第1の例を示す模式的断面図である。
図6】不純物量と水晶振動子の共振周波数との関係を示す検量線の一例を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態の測定装置のフローセルユニットの一例を示す模式図である。
図8】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第2の例を示す模式図である。
図9】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第2の例を示す模式的断面図である。
図10】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第3の例を示す模式図である。
図11】本発明の実施形態の水晶振動子センサの第3の例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の半導体デバイスの製造方法、半導体製造装置の洗浄方法、及び洗浄液の清浄度の測定方法を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α~数値βとは、εの範囲は数値αと数値βを含む範囲であり、数学記号で示せばα≦ε≦βである。
「準備」というときには、特定の材料を合成ないし調合等して備えることのほか、購入等により所定の物を調達することを含む意味である。
また、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味し、「ppt」は「parts-per-trillion(10-12)」を意味し、「ppq」は「parts-per-quadrillion(10-15)」を意味する。
「具体的な数値で表された角度」、「平行」、及び「直交」等の角度は、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0018】
本発明は、不純物量等の純度が管理された薬液を、半導体デバイスの製造、又は半導体製造装置の洗浄に使用する。
また、本発明は、薬液の不純物量等の純度の管理を、洗浄液の清浄度の測定に利用する。以下、半導体製造装置等について説明する。半導体製造装置としては、例えば、コーターデベロッパー、スピンコーター、半導体ウエハの洗浄装置及び現像装置等がある。以下、具体的な半導体製造装置について説明するが、本発明は、以下に示す半導体製造装置に限定されるものではない。
【0019】
[半導体製造装置の第1の例]
図1は本発明の実施形態の半導体製造装置の第1の例を示す模式図である。
図1に示す半導体製造装置60は、半導体ウエハ86の表面86aに、レジスト液を塗布する装置である。
半導体製造装置60は、レジスト液を、塗布部80に設置された半導体ウエハ86の表面86aに供給するレジスト液供給部61aと、リンス液を半導体ウエハ86の表面86aに供給するリンス液供給部61bと、リンス液を半導体ウエハ86の裏面86bに供給するバックリンス部61cとを有する。
【0020】
レジスト液供給部61aは、例えば、タンク62aと、ポンプ64aと、温度調整器66aと、フィルタ68aと、ノズル70とを有する。タンク62aと、ポンプ64aと、温度調整器66aと、フィルタ68aとは配管69aにより接続されており、配管69aの端部にノズル70が接続されている。
タンク62aは、レジスト液を貯留するものある。ポンプ64aは、タンク62a内のレジスト液を、温度調整器66aと、フィルタ68aとを通して、ノズル70から半導体ウエハ86の表面86aにレジスト液を供給するものである。
温度調整器66aは、レジスト液の温度を調整するものである。フィルタ68aはレジスト液内の不純物を取り除くものである。レジスト液供給部61aは、レジスト液のポタ落ちを防ぐためにサックバックを有してもよい。
【0021】
リンス液供給部61bは、例えば、タンク62bと、ポンプ64bと、温度調整器66bと、フィルタ68bと、ノズル71とを有する。タンク62bと、ポンプ64bと、温度調整器66bと、フィルタ68bとは配管69bにより接続されており、配管69bの端部にノズル71が接続されている。
リンス液供給部61bは、レジスト液供給部61aに比して、レジスト液に変えてリンス液を半導体ウエハ86の表面86aの端部に供給する点、ノズル71の配置位置が異なる点以外は、レジスト液供給部61aと同じ構成である。
タンク62bにリンス液が貯留される。ポンプ64bは、タンク62b内のリンス液を、温度調整器66bと、フィルタ68bとを通して、ノズル71から半導体ウエハ86の表面86aにリンス液を供給するものである。温度調整器66bは、リンス液の温度を調整するものである。
リンス液供給部61bは、リンス液のポタ落ちを防ぐためにサックバックを有してもよい。
【0022】
バックリンス部61cは、ノズル72の配置位置以外は、リンス液供給部61bと同じ構成である。
バックリンス部61cのタンク62c、ポンプ64c、温度調整器66c、フィルタ68c、配管69c及びノズル72は、リンス液供給部61bのタンク62b、ポンプ64b、温度調整器66b、フィルタ68b、配管69b及びノズル71と同じ構成である。
タンク62cには、リンス液が貯留されるが、バックリンス部61cにおけるリンス液のことをバックリンス液ともいう。
【0023】
タンク62a、62b、62cの形態としては特に制限されず、薬液を収容するための容器として使用される形態から、収容すべき薬液の量等に応じて、任意に選択できる。容器としては、例えば、容量が数百mL~約20Lのボトル状のもの(例:「ピュアボトル(コダマ樹脂工業株式会社製)」;容量が約20~約200Lのドラム、又は、ペール(例:「ピュアドラム」「ピュアペール」いずれもコダマ樹脂工業株式会社製);容量が1000L程度のトート(例:「パワートート」コダマ樹脂工業株式会社製);容量が約15000~25000Lのタンクコンテナ(国際標準規格ISOで大きさ等の定めがある「ISOコンテナ」等が挙げられる。)等が挙げられる。タンクは、上述のものに制限されず、タンクの容量、及び形状等は任意で変更可能である。
ポンプ64a、64b、64cにおいて、ポンプの種類は特に制限されず、例えば、容積式ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプ、及び遠心ポンプが挙げられる。
温度調整器66a、66b、66cは、特に限定されるものではなく、配管の外側に設けてもよく、配管の内側に設ける、いわゆるインラインタイプのヒータでもよい。
【0024】
塗布部80は、収納容器82を有する。収納容器82内に、半導体ウエハ86が載置される支持台83が設けられている。支持台83は、半導体ウエハ86を、例えば、真空吸着等により固定する。また、支持台83に駆動軸84が設けられている。駆動軸84はモータ85に接続されている。モータ85により、駆動軸84が回転され、支持台83が回転されて半導体ウエハ86が回転する。
レジスト液を供給するノズル70は、支持台83上に配置されている。リンス液を供給するノズル71は、半導体ウエハ86の周縁部の位置に配置されている。ノズル72は、ノズル71に対向して配置されている。
【0025】
半導体製造装置60では、固定された半導体ウエハ86の表面86aに、ノズル70からレジスト液を滴下する。そして、半導体ウエハ86をモータ85により、定められた回転数で回転させる。遠心力を利用して半導体ウエハ86の表面86aにレジスト膜を形成する。次に、回転している半導体ウエハ86の周縁部のレジスト膜が除去されるまで、ノズル71からリンス液を供給し続けて、半導体ウエハ86の周縁部のレジスト膜を除去する。
また、レジスト膜を形成する際に、レジスト液が、半導体ウエハ86の裏面86bに回り込むことがある。この場合、ノズル72からリンス液を、半導体ウエハ86の裏面86bに供給して、レジスト液を除去する。
半導体ウエハ86の表面86aにレジスト膜を形成した後、支持台83から半導体ウエハ86を外し、自動搬送機構(図示せず)により、半導体ウエハ86を、例えば、フォトレジストのプレベーク部に搬送し、次工程を実施する。
【0026】
半導体製造装置60では、レジスト液及びリンス液を使用する。リンス液は、後述のように共振周波数の変化量が測定されて管理されたものである。共振周波数の変化量は、リンス液の不純物量と相関がある。このように、不純物量等の純度が管理されたリンス液を、より簡便に用いることができる。
また、半導体製造装置60では、後述のように共振周波数の変化量が管理された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用する。このように、不純物量等の純度が管理された薬液を、より簡便に洗浄に用いることができる。
更には、後述のように共振周波数の変化量が管理された薬液を用いて洗浄した後に、洗浄に使用された薬液の一部を取り出し、取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれるかを確認する。なお、取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれる場合には、洗浄を終了する。
取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれない場合には、再度薬液を用いて洗浄する。取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれるまで繰り返し洗浄を行う。これにより、不純物量を管理した洗浄を行うことができる。
【0027】
[半導体製造装置の第2の例]
図2は本発明の実施形態の半導体製造装置の第2の例を示す模式図であり、図3は本発明の実施形態の半導体製造装置の第2の例の半導体ウエハの洗浄部を示す模式図である。
図2に示す半導体製造装置90は、半導体ウエハ86の洗浄装置である。
半導体製造装置90は、タンク92と、ポンプ94と、温度調整器96と、フィルタ98と、ノズル100と、洗浄部110とを有する。
タンク92と、ポンプ94と、温度調整器96と、フィルタ98とは配管99により接続されており、配管99の端部にノズル100が接続されている。
タンク92は、洗浄液を貯留するものある。ポンプ94は、タンク92内の洗浄液を、温度調整器96と、フィルタ98とを通して、ノズル100から半導体ウエハ86の表面86aに洗浄液を供給するものである。
温度調整器96は、洗浄液の温度を調整するものである。フィルタ98は洗浄液内の不純物を取り除くものである。
【0028】
図3に示すように洗浄部110は、収納容器112を有する。収納容器112内に、半導体ウエハ86が載置される支持台114が設けられている。支持台114は、半導体ウエハ86を真空吸着等により固定する。また、支持台114に駆動軸115が設けられている。駆動軸115はモータ116に接続されている。モータ116により、駆動軸115が回転され、支持台114が回転されて半導体ウエハ86が回転する。
洗浄液を供給するノズル100は、支持台114上に配置されている。
半導体製造装置90は、半導体ウエハ86をモータ116により、定められた回転数で回転させる。半導体ウエハ86を回転させながら、ポンプ94により、温度調整器96及びフィルタ98を通して、ノズル100から洗浄液を、半導体ウエハ86の表面86aに供給することにより半導体ウエハ86を洗浄する。
【0029】
半導体製造装置90では、洗浄液を使用する。洗浄液は、後述のように共振周波数の変化量が測定されて管理されたものである。共振周波数の変化量は、洗浄液の不純物量と相関がある。このように、純度が管理された洗浄液を、より簡便に用いることができる。
また、半導体製造装置90では、後述のように共振周波数の変化量が管理された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用する。このように、不純物量等の純度が管理された洗浄液を、より簡便に用いることができる。
更には、後述のように共振周波数の変化量が管理された薬液を用いて洗浄した後に、洗浄に使用された薬液の一部を取り出し、取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれるかを確認する。なお、取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれる場合には、洗浄を終了する。
取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれない場合には、再度薬液を用いて洗浄する。取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれるまで繰り返し洗浄を行う。これにより、不純物量を管理した洗浄を行うことができる。
【0030】
なお、半導体製造装置は、上述のものに限定されるものではなく、レジスト膜をパターン露光した後、未露光部を除去する現像装置でもよい。現像装置は、図2に示す半導体製造装置90において、タンク92内に現像液を貯留する。次に、表面86a上にレジスト膜が形成された半導体ウエハ86を回転させることなく、半導体ウエハ86の表面86a上のレジスト膜に現像液を供給する。次に、半導体ウエハ86を回転させて現像液をレジスト膜全面に広げる。レジスト膜全面に現像液が広がった後、半導体ウエハ86の回転を停止する。現像液により未露光部を溶解させて除去する。
次に、半導体ウエハ86を、現像液をレジスト膜全面に広げるよりも高速に回転させて現像液を取り除く。これにより、レジスト膜に露光パターン状のパターンを形成する。なお、半導体ウエハ86の回転を維持したまま、例えば、純水を用いて半導体ウエハ86上に残った現像液を取り除いてもよい。
更に、半導体製造装置は、現像に続いて行うリンス工程が行えるものであってもよい。リンス工程は、現像工程後に、レジスト膜に続けてリンス液を塗布する工程である。
【0031】
また、半導体製造装置において、タンク内の液体の搬送にポンプを用いることなく、例えば、ガス圧送を利用する構成でもよい。また、温度調整器、又はフィルタがない構成もある。ポンプ、温度調整器、フィルタの配置順も特に、限定されるものではない。更には、フィルタ等が複数ある構成でもよい。
半導体製造装置を洗浄する場合、タンクから、薬液を流してフラッシング洗浄を行う。洗浄する部位は、タンクからノズルに至る全ての部分である。すなわち、送液配管、ポンプ内部の接液面、温度調整器内部の接液面、フィルタのハウジング内壁及びフィルタそのもの、ノズルの接液部、及びタンクの接液部である。
【0032】
[薬液の用途]
有機溶媒を主成分とする薬液が、半導体デバイスの製造方法、半導体製造装置の洗浄方法、及び洗浄液の清浄度の測定方法に用いられる。具体的には、薬液は、例えば、現像液、リンス液、プリウェット液に用いられる。これ以外に、薬液は、エッジリンス液、バックリンス液、レジスト剥離液及び希釈用シンナーに用いられる。
プリウェット液は、レジスト膜を形成する前に、半導体ウエハ上に供給するものであり、レジスト液を半導体ウエハ86上に広げやすくし、より少量のレジスト液の供給で均一なレジスト膜を形成するために使用されるものである。
上述のエッジリンス液とは、リンス液において、半導体ウエハの周縁部に供給して、半導体ウエハの周縁部のレジスト膜の除去に利用されるリンス液のことをいう。
例えば、現像液には、酢酸ブチル(nBA)が用いられる。酢酸ブチル(nBA)は、現像液以外に、配管の洗浄、又は半導体ウエハの洗浄液等の用途に用いることもできる。
また、リンス液には、4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)が用いられる。洗浄液には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロパノール(IPA)が用いられる。プリウェット液には、シクロヘキサノン(CHN)が用いられる。
【0033】
以下、薬液の測定装置について説明する。
[測定装置]
図4は本発明の実施形態の測定装置の一例を示す模式図であり、図5は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第1の例を示す模式的断面図である。
図4に示す測定装置10は、有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知する装置である。測定装置10は、対象薬液の純度の管理に利用できる。
測定装置10は、フローセルユニット12と、発振部14と、検出部15と、算出部16と、メモリ18と、供給部20と、制御部22とを有する。測定装置10は、更に、表示部23と、出力部24と、入力部25とを有する。
制御部22は、フローセルユニット12、発振部14、検出部15、算出部16、メモリ18、及び、供給部20の動作を制御するものである。また、制御部22は、表示部23及び出力部24の動作の制御、ならびに、入力部25からの入力情報に基づき、測定装置10の各構成部を制御する。
【0034】
フローセルユニット12は、不純物を吸着する吸着層34(図5参照)及び水晶振動子27(図5参照)を含む水晶振動子センサ26と、フローセルユニット12に供給された対象薬液の液温を維持するための温度調整部28とを有する。フローセルユニット12については、後に詳細に説明する。
【0035】
水晶振動子センサ26に発振部14が電気的に接続されている。発振部14は、水晶振動子27を共振周波数で振動させるものである。発振部14は、水晶振動子センサ26に、正弦波の高周波信号を周波数信号として印加するものであり、発振回路(図示せず)を有する。
また、発振部14に検出部15が電気的に接続されている。検出部15は、水晶振動子27の共振周波数を測定し、かつ対象薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を検出するものである。なお、検出部15は、後述する、複数の吸着層を用いることによって得られる複数の共振周波数の変化量の差分を検出してもよい。
【0036】
検出部15は、発振部14の周波数信号を取り込み、周波数信号を、例えば、1秒毎にサンプリングして、時系列データとしてメモリ18に記憶させる。なお、メモリ18には、測定時間及び周波数許容値が記憶される。検出部15は、測定時間及び周波数許容値に基づき、水晶振動子27の共振周波数を測定し、かつ対象薬液の接触による水晶振動子の共振周波数の変化量を検出する。
測定時間とは、吸着層34に不純物が接触したことによる共振周波数の変化量を得るために必要な時間である。測定時間は、特に限定されるものではなく、対象薬液の供給流量等に応じて適宜決定されるものであり、例えば、10分以上が好ましく、30分以上が好ましい。上限は特に制限されないが、生産性の点から、3時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。
周波数許容値は、周波数が安定したかどうかを判断する時に、周波数の安定化の指標となる値が安定化に相当する十分小さな値になったか否かを判定するためのしきい値である。周波数許容値は、例えば、設定された測定感度に応じて適宜設定されるものであり、例えば、共振周波数が30MHzの場合、測定感度が5Hzの時に測定時間において許容される誤差範囲は、例えば、0.5Hzに設定される。これは、0.0167ppmに相当する。この誤差範囲に対応する許容値は1.67×10-8(0.0167ppm)以下となる。
【0037】
検出部15では、例えば、公知の回路である周波数カウンターにより周波数を検出する。これ以外に、例えば、特開2006-258787号に記載されているように、周波数信号をアナログデジタル変換し、キャリアムーブにより処理して周波数信号の周波数で回転する回転ベクトルを生成し、この回転ベクトルの速度を求めるといった手法を利用した周波数を検出してもよい。検出部15においては、このようなディジタル処理を利用した方が周波数の検出精度が高いため好ましい。
【0038】
算出部16は、メモリ18に記憶された予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲を読み出し、メモリ18に記憶された共振周波数の変化量の許容範囲と、検出部15で得られた共振周波数の変化量とを比較して、薬液の純度を管理する。例えば、上述の比較により、許容範囲内であれば、薬液の純度が許容範囲内であることを表示部23に表示する。一方、許容範囲を超えていれば、薬液の純度が許容範囲を超えていることを表示部23に表示する。これ以外に、許容範囲内であれば、薬液の純度が許容範囲内であることを出力部24に出力してもよい。一方、許容範囲を超えていれば、薬液の純度が許容範囲を超えていることを出力部24に出力してもよい。
【0039】
メモリ18は、上述の、予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量及びその許容範囲が記憶されるものである。メモリ18は、これ以外に、水晶振動子の共振周波数等が記憶されていてもよい。後述のように、水晶振動子に複数の電極を設けた構成において、電極毎の共振周波数、及び電極間の共振周波数の差分が記憶されていてもよい。
なお、メモリ18に記憶された共振周波数の変化量は、例えば、図6に示すように、特定の対象薬液の不純物量と、水晶振動子27の共振周波数との関係を示す検量線Lを求めておき、この検量線Lに基づいて、特定の対象薬液の不純物量と、共振周波数の変化量との関係を得ることができる。また、検量線Lに対して許容範囲を設定することにより、共振周波数の変化量の許容範囲を設定することができる。図6に示す検量線Lの不純物量は、例えば、表面検査装置を用いて測定された不純物量である。より具体的には、所定量の対象薬液と所定の基板(例えば、シリコンウエハ)上に塗布した後、対象薬液が塗布された基板上にある欠陥の数を表面検査装置を用いて計測して、得られる欠陥数を不純物量とすることができる。
なお、表面検査装置としては、対象薬液が塗布された基板上にレーザー光線を照射し、基板上に存在する欠陥によって散乱されたレーザー光線を検出して、基板上に存在する不純物を検知する装置が挙げられる。レーザー光線の照射の際に、基板を回転させながら測定することにより、基板の回転角度と、レーザー光線の半径位置から、欠陥の座標位置を割り出すことができる。このような装置としては、KLA Tencor製の「SP-5」が挙げられるが、それ以外にも「SP-5」の分解能以上の分解能を有する表面検査装置(典型的には「SP-5」の後継機等)であってもよい。
【0040】
表示部23は、算出部16で得られた共振周波数の変化量を表示するものであり、例えば、ディスプレイで構成される。ディスプレイは、文字、及び画像を表示することができれば、特に限定されるものではなく、液晶表示装置等が用いられる。また、表示部23に表示されるものは、得られた共振周波数の変化量に限定されるものではなく、共振周波数でもよく、後述するように複数の吸着層を用いることによって得られる複数の共振周波数の変化量の差分でもよく、測定装置10で設定される各種の設定項目及び入力情報等を表示してもよい。
出力部24は、得られた共振周波数の変化量又は共振周波数等を媒体に表示するものである。より具体的には、例えば、文字、記号及びバーコードのうち、少なくとも1つを用いて表示するものである。出力部24は、プリンタ等で構成される。出力部24により、後述のセットの薬液の共振周波数情報が表示された情報表示部を得ることができる。
入力部25は、マウス及びキーボード等の各種情報をオペレータの指示により入力するための各種の入力デバイスである。入力部25を介して、例えば、測定装置10の設定、メモリ18からデータの呼び出し等がなされる。
なお、入力部25には、メモリ18に記憶させる情報を入力するためのインターフェースも含まれ、外部記憶媒体等を通してメモリ18に情報が記憶される。
なお、測定装置10は、得られた共振周波数の変化量を得ることができればよく、共振周波数の変化量を得ること以外の構成は必ずしも必要ではない。このことから、例えば、算出部16は管理方法では必要であるが、共振周波数の変化量を得る測定装置10では必ずしも必要ではない。
【0041】
フローセルユニット12は、有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知する感知部である。フローセルユニット12は、供給部20に第1のチューブ29aと、第2のチューブ29bとを用いて接続されている。供給部20により、第1のチューブ29a内を対象薬液が通過して、水晶振動子に対象薬液が供給され、対象薬液を第2のチューブ29b内を通過させて、対象薬液を回収する。供給部20は対象薬液に接触することなく、対象薬液を第1のチューブ29a内及び第2のチューブ29b内を通過させるものであり、例えば、ペリスタルティック方式のポンプが用いられる。供給部20は対象薬液に接触することなく送液できれば、特に限定されるものではなく、例えば、シリンジポンプを用いることができる。
温度調整部28は、例えば、ペルチェ素子を有する。ペルチェ素子により対象薬液の液温が維持される。これにより、対象薬液の温度を一定に保持することができ、対象薬液の粘度を一定の範囲とすることができる。純度の測定条件の変動を小さくすることができる。このため、対象薬液の温度を一定に保持して、共振周波数の変化量を測定することが好ましい。なお、対象薬液の液温を維持することができれば、温度調整部28の構成は特に限定されない。
対象薬液の温度を一定に保持する場合、設定温度に対して±0.5℃の温度にすることが好ましく、±0.3℃がより好ましく、±0.1℃が更に好ましい。
【0042】
[水晶振動子センサ]
上述のように水晶振動子センサ26は水晶振動子27を有するが、水晶振動子27は、例えば、円盤状であり、水晶振動子27の表面27aに電極30が設けられ、裏面27bに電極31が設けられている。
水晶振動子27の表面27aに電極30の表面30aに、不純物を吸着する吸着層34が設けられている。吸着層34に有機溶媒を主成分とする対象薬液が接触される。
水晶振動子27には、例えば、ATカット型の水晶振動子が用いられる。ATカット型の水晶振動子とは、人工水晶のZ軸から35°15′の角度で切り出した振動子のことである。水晶振動子センサ26は、図5に示す構成に限定されるものではない。
【0043】
発振部14は電極30と電極31とに電気的に接続されている。発振部14は、電極30と電極31とに、正弦波の高周波信号を周波数信号として印加するものであり、例えば、発振回路を有する。発振部14により水晶振動子27が共振周波数で振動する。水晶振動子27の共振周波数としては、例えば、27MHz又は30MHzである。
吸着層34は、例えば、Si、Au、SiO、SiOC、Cu、Co、W、Ti、TiN、Ta、TaN及び感光性樹脂組成物のうち、少なくとも1つの材料で構成される。吸着層を構成する材料によって、吸着しやすい不純物の種類が異なる。よって、例えば、対象薬液中の不純物量を上述した表面検査装置で求めて、その欠陥数と共振周波数の変化量とを関連づける場合には、表面検査装置で欠陥数を測定するために使用される薬液が塗布される基板と吸着層とは、同じ材料で構成されることが好ましい。つまり、吸着層としてSi層を用いた際には、基板としてはSi基板(シリコンウエハ)を使用することが好ましい。
吸着層34は、スパッタ法、CVD(chemical vapor deposition)法等の気相法、又は塗布法等により形成することができる。
なお、感光性樹脂組成物の種類は特に制限されず、公知の感光性樹脂組成物が挙げられる。感光性樹脂組成物に含まれる成分としては、例えば、酸の作用により極性基を生じる基を有する樹脂、及び、光酸発生剤が挙げられる。上述の感光性樹脂組成物は、更に、塩基性化合物、疎水性樹脂等を含んでいてもよい。
【0044】
水晶振動子センサ26では、吸着層34に吸着した不純物の量により、水晶振動子27の共振周波数が変化する。対象薬液と接触する前後の共振周波数を測定することにより、共振周波数の変化量を得ることができる。なお、水晶振動子27の共振周波数の変化量ΔFは、Sauerbrey式と呼ばれる下記式により表すことができる。下記式において、Fは共振周波数、Δmは質量変化量、ρは水晶の密度、μは水晶のせん断応力、Aは電極の面積である。下記式から、水晶振動子の共振周波数Fを大きくすることにより、質量検出感度を大きくすること、すなわち、不純物の測定精度を高くすることができる。
【0045】
【数1】
【0046】
[フローセルユニット]
図7は本発明の実施形態の測定装置のフローセルユニットの一例を示す模式図である。
フローセルユニット12は、例えば、温度調整部28上にシール部43を介して水晶振動子センサ26が配置されている。水晶振動子センサ26上に、水晶振動子27の周囲に沿ってシール部42が設けられている。シール部42上にブロック40が配置される。ブロック40には、対象薬液を水晶振動子センサ26に供給する供給路40aが設けられている。供給路40aは第1のチューブ29aに接続されている。また、ブロック40には、対象薬液を水晶振動子センサ26から排出する排出路40bが設けられている。排出路40bは第2のチューブ29bに接続されている。つまり、フローセルユニット12は、水晶振動子センサ26上に配置されたシール部42と、シール部42を介して水晶振動子センサ26上に配置され、対象薬液を水晶振動子センサ26に供給する供給路40a、及び、対象薬液を水晶振動子センサ26から排出する排出路40bが設けられたブロック40と、供給路40aに接続した第1のチューブ29a及び排出路40bに接続した第2のチューブ29bからなる送液部と、を更に有する。
水晶振動子センサ26とシール部42とブロック40とにより囲まれて形成された領域44に、第1のチューブ29aと供給路40aとを通過した対象薬液が供給される。つまり、領域44の外側にシール部42が配置されている。これにより、対象薬液が水晶振動子センサ26の水晶振動子27の電極30の表面30a上の吸着層34に接触する。また、対象薬液は、排出路40bと第2のチューブ29bとを通過して、領域44から排出される。第1のチューブ29a及び排出路40b、ならびに第2のチューブ29b及び排出路40bにより循環ラインが構成される。
【0047】
第1のチューブ29a及び供給路40aと第2のチューブ29b及び排出路40bとにおける対象薬液の移動は、上述のように供給部20(図4参照)によりなされる。
例えば、シール部42と、シール部43とは同じ大きさであり、例えば、Oリングで構成される。なお、水晶振動子センサ26とシール部43と温度調整部28とにより囲まれて形成された領域45には対象薬液が供給されない。
また、フローセルユニット12において、対象薬液と接する接液部の少なくとも一部をフッ素系樹脂で構成することにより、対象薬液への溶出が抑制され、純度の測定精度の低下を抑制できるため好ましい。
測定装置10において、上述の水晶振動子センサ26とシール部42とブロック40とにより囲まれて形成され、対象薬液を水晶振動子センサ26上に保持するための領域44を構成する面は、対象薬液と接する接液部の一部に該当する。領域44以外に、対象薬液を水晶振動子センサ26に接触させる供給部において、対象薬液を水晶振動子センサに送液する送液部中の対象薬液と接する部分も接液部である。これら接液部の少なくとも一部をフッ素系樹脂で構成することが好ましい。送液部としては、一方向に送液する供給ライン、対象薬液を水晶振動子センサに循環して供給する循環ラインが挙げられる。
より具体的には、接液部は、フローセルユニット12のブロック40の領域44に接する面40c、水晶振動子センサ26上に配置される対象薬液を領域44に留めるシール部42の領域44に接する部分である面42a、ブロック40の供給路40a、及びブロック40の排出路40bである。また、第1のチューブ29a内、及び第2のチューブ29b内も対象薬液と接する接液部であり、第1のチューブ29a及び第2のチューブ29bにおいて対象薬液と接する部分はフッ素系樹脂で構成することが好ましい。
なかでも、シール部42の対象薬液と接する接液部、ブロック40の対象薬液と接する接液部、及び、送液部の対象薬液と接する接液部の少なくとも一部がフッ素系樹脂で構成されることが好ましい。
【0048】
フッ素系樹脂は、フッ素原子を含む樹脂であればよい。
フッ素系樹脂としては、フッ素原子を含有する樹脂(ポリマー)であれば特に制限されず、公知のフッ素系樹脂を用いることができる。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、引張強度:20~35MPa、ショアD硬度:50~55)、パーフルオロアルコキシアルカン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、及び、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)の環化重合体(サイトップ(登録商標))等が挙げられる。
【0049】
なかでも、フローセルユニット12のブロック40の対象薬液を接する接液部(対象薬液と接する部分)がフッ素系樹脂で構成される場合、上述のフッ素系樹脂の引張強度は、20~60MPaであることが好ましい。また、上述のフッ素系樹脂のショアD硬度は、60~80であることが好ましい。
ブロック40の対象薬液と接する接液部を構成するフッ素系樹脂としては、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA、引張強度:25~35MPa、ショアD硬度:62~66)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE、引張強度:38~42MPa、ショアD硬度:67~78)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP、引張強度:20~30MPa、ショアD硬度:60~65)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、引張強度:31~41MPa、ショアD硬度:75~80)、又は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、引張強度:30~70MPa、ショアD硬度:64~79)が好ましい。
なお、引張強度の測定方法は、JIS(Japanese Industrial Standards) K 7161に準じて行う。
ショアD硬度の測定方法は、JIS K 7215に準じて行う。
【0050】
また、領域44に対象薬液を送液する送液部の対象薬液を接する接液部(対象薬液を接する部分)を構成するフッ素系樹脂は、フッ素原子、炭素原子、並びに、フッ素原子及び炭素原子以外の他の原子を含む繰り返し単位(以下、単に「特定繰り返し単位」ともいう。)を有することが好ましい。上述の他の原子としては、例えば、水素原子、及び、塩素原子が挙げられる。つまり、特定繰り返し単位は、フッ素原子、炭素原子、並びに、水素原子及び塩素原子からなる群から選択される少なくとも1つの他の原子を含むことが好ましい。
上述の送液部の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとの三元共重合体(THV軟質フッ素樹脂)、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、又は、ポリクロロトリフルオロエチレンが好ましい。
引張強度及びショアD硬度の測定方法は、上述した通りである。
【0051】
水晶振動子センサ26上に配置される対象薬液を領域44に留めるシール部42の対象薬液と接する部分(領域44に接する部分である面42a)は、フッ素系樹脂で構成されることが好ましい。
上述のシール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂の引張強度は、20~40MPaであることが好ましい。また、上述のシール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂のショアD硬度は、56~70であることが好ましい。また、上述のシール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂の曲げ弾性率は、0.5~3GPaであることが好ましい。
上述のシール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂が上述の引張強度、ショアD硬度、及び、曲げ弾性率を満たす場合、水晶振動子センサ26の振動を阻害せず、より安定した測定を実施することができる。
引張強度及びショアD硬度の測定方法は、上述した通りである。
曲げ弾性率の測定方法は、JIS K 7171に準じて行う。
上述のシール部42の対象薬液を接する部分を構成するフッ素系樹脂としては、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、又は、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0052】
供給部20は、第1のチューブ29aと、第2のチューブ29bとを用いて、対象薬液を循環させているが、これに限定されるものではなく、対象薬液を一方向に流す方式でもよい。この場合、例えば、シリンジポンプを用いることができる。
水晶振動子27に対して、対象薬液を循環させて供給する場合、対象薬液の循環流量が0.01~1000ml/sであることが好ましい。循環流量が0.01~1000ml/sであれば、検出するのに十分な量の不純物を吸着層34の表面に付着させることができる。
対象薬液を1時間循環させた際の不純物の上昇量が1000質量ppt以下であれば、純度の測定精度が低下しないため好ましい。
フローセルユニット12における水晶振動子センサ26の配置は、特に限定されるものではない。
【0053】
[半導体デバイスの製造方法]
有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知して、純度が管理された薬液を、半導体デバイスの製造に利用する。
半導体デバイスの製造方法は、振動子と、有機溶媒を主成分とする薬液とを接触させ、薬液の接触による振動子の共振周波数の変化量を得る工程1と、薬液の共振周波数の変化量が、予め設定された薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるかを確認する工程2と、工程2で確認された薬液を、半導体デバイスの製造に使用する工程3とを有する。工程1の前に、有機溶媒を主成分とする薬液を用意する工程を有してもよい。
上述の測定装置10に示すように、工程1において、対象薬液と接する接液部の少なくとも一部は、フッ素系樹脂で構成される。
なお、半導体デバイスの製造方法においては、上述の測定装置と同様に、対象薬液は、対象薬液を水晶振動子センサに送液して接触させる。対象薬液は、対象薬液を水晶振動子センサに一方向に流して付着させてもよい。また、対象薬液を水晶振動子に循環して供給し、対象薬液の循環流量を0.01~1000ml/sとしてもよい。
【0054】
以下、半導体デバイスの製造方法について、上述の図4に示す測定装置10を例にして、より具体的に説明する。半導体デバイスの製造方法では、例えば、薬液を循環して供給する。
上述のように、純度を管理する有機溶媒を含む薬液を用意し、測定装置10の供給部20に対象薬液を貯留する。対象薬液には、不純物が含まれる。
次に、供給部20からフローセルユニット12に対象薬液を第1のチューブ29a及びブロック40の供給路40aを通過させて領域44に供給し、ブロック40の排出路40b及び第2のチューブ29bを通過させて供給部20に戻し、再度第1のチューブ29a及びブロック40の供給路40aを通過させて、領域44に供給することを繰り返し実施する。これにより、水晶振動子27に対象薬液を循環供給して、水晶振動子27の吸着層34に接触させる。このとき、対象薬液の温度を一定に保持することが好ましい。
【0055】
発振部14から、水晶振動子センサ26に正弦波の高周波信号を周波数信号として印加し、対象薬液の供給前に、水晶振動子27を共振周波数で振動させておき、対象薬液の供給前の共振周波数を検出部15で得る。その後、例えば、水晶振動子27に対象薬液を所定時間供給した後、検出部15で、共振周波数を得た後、共振周波数の変化量を得る(工程1)。つまり、工程1を有する薬液の測定方法を実施することにより、共振周波数の変化量を得ることができる。検出部15で得られた共振周波数の変化量を、算出部16に出力し、算出部16で記憶する。工程1は、対象薬液を水晶振動子センサ26に送液して、対象薬液と水晶振動子センサ26とを接触させる工程を有することが好ましい。
算出部16は、メモリ18に記憶された予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲を読み出し、メモリ18に記憶された共振周波数の変化量の許容範囲と、検出部15で得られた共振周波数の変化量とを比較して、許容範囲に含まれるかを確認する(工程2)。これにより、薬液の純度が管理される。例えば、上述の比較により、許容範囲内であれば、薬液の純度が許容範囲内であることを表示部23に表示する。一方、許容範囲を超えていれば、薬液の純度が許容範囲を超えていることを表示部23に表示する。
このようにして、薬液の純度を容易に得ることができ、この得られた純度に基づき、対象薬液の純度を管理することができる。これにより、薬液の品質を管理することができる。
なお、メモリ18に記憶された共振周波数の変化量、及びその許容範囲は、例えば、上述のように図6に示す検量線Lに基づいて得ることができる。
【0056】
次に、共振周波数の変化量の許容範囲に含まれることが確認された薬液を、半導体デバイスの製造に使用する(工程3)。例えば、図3に示す半導体製造装置60において、タンク92に、現像液として、例えば、酢酸ブチル(nBA)を貯留する。
半導体ウエハ86上に形成された、露光済のレジスト膜(図示せず)に、酢酸ブチル(nBA)を現像液として供給し、次に、半導体ウエハ86を回転させて現像液をレジスト膜全面に広げる。レジスト膜がネガ型レジスト膜である場合には、現像液により未露光部を溶解させて除去する。なお、レジスト膜がポジ型レジスト膜である場合には、現像液により露光部を溶解させて除去する。
次に、半導体ウエハ86を、現像液をレジスト膜全面に広げるよりも高速に回転させて現像液を取り除く。これにより、レジスト膜に露光パターン状のパターンを形成する。半導体ウエハ86の回転を維持したまま、例えば、純水を用いて半導体ウエハ86上に残った現像液を取り除いてもよい。
現像後、次の処理工程に半導体ウエハ86を搬送する。このようにして、半導体デバイスの製造に利用する。例えば、レジスト膜の現像に利用することにより、レジスト膜に不純物等がない状態で現像できる。なお、レジスト膜の現像は、リソグラフィ工程の一工程である。
また、レジスト膜の形成の際に、共振周波数の変化量が許容範囲に含まれるリンス液を利用することもできる。このレジスト膜の形成も、リソグラフィ工程の一工程である。
【0057】
なお、工程1の前に、薬液を濃縮する濃縮工程があってもよい。薬液を濃縮することにより、共振周波数の変化の信号強度を高めることができ、より高い感度で共振周波数の変化量の測定を行うことができる。濃縮は、3倍以上であることが好ましく、100倍以上がより好ましい。なお、濃縮の上限は10000倍である。
薬液の濃縮は、例えば、薬液を加熱し、気化させることにより行われる。
上述のように共振周波数の変化量を測定する場合、共振周波数の変化量の測定前に、例えば、工程1の前に、振動子を洗浄する工程を有することが好ましい。共振周波数の変化量の測定前に、振動子を洗浄することにより、共振周波数の変化量の測定精度を更に高めることができ、薬液の不純物量と共振周波数の変化量とのより高い相関関係を得ることができる。
振動子の洗浄工程において、振動子の洗浄には、測定する薬液種と同種のものを用いることが好ましい。更に、洗浄に用いる薬液は、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いた測定により欠陥数が3個以下であることが好ましい。
【0058】
なお、半導体デバイスとしては、以下のものが例示される。
〔半導体デバイス〕
半導体デバイスは、特に限定されるものではなく、例えば、ロジックLSI(Large Scale Integration)(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASSP(Application Specific Standard Product)等)、マイクロプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等)、メモリ(例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HMC(Hybrid Memory Cube)、MRAM(Magnetic RAM:磁気メモリ)とPCM(Phase-Change Memory:相変化メモリ)、ReRAM(Resistive RAM:抵抗変化型メモリ)、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリ)、フラッシュメモリ(NAND(Not AND)フラッシュ)等)、LED(Light Emitting Diode)、(例えば、携帯端末のマイクロフラッシュ、車載用、プロジェクタ光源、LCDバックライト、一般照明等)、パワー・デバイス、アナログIC(Integrated Circuit)、(例えば、DC(Direct Current)-DC(Direct Current)コンバータ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、(例えば、加速度センサー、圧力センサー、振動子、ジャイロセンサ等)、ワイヤレス(例えば、GPS(Global Positioning System)、FM(Frequency Modulation)、NFC(Nearfield communication)、RFEM(RF Expansion Module)、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)、WLAN(Wireless Local Area Network)等)、ディスクリート素子、BSI(Back Side Illumination)、CIS(Contact Image Sensor)、カメラモジュール、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、Passiveデバイス、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、RF(Radio Frequency)フィルタ、RFIPD(Radio Frequency Integrated Passive Devices)、BB(Broadband)等が挙げられる。
【0059】
[半導体製造装置の洗浄方法]
有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知して、純度が管理された薬液を、半導体製造装置の洗浄に利用する。
半導体製造装置の洗浄方法は、振動子と、有機溶媒を主成分とする薬液とを接触させ、薬液の接触による振動子の共振周波数の変化量を得る工程1と、薬液の共振周波数の変化量が、予め設定された薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるかを確認する工程2と、工程2で確認された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用する工程3とを有する。工程1の前に、有機溶媒を主成分とする薬液を用意する工程を有してもよい。
半導体製造装置の洗浄方法は、工程2で確認された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用している(工程3)点以外は、上述の半導体デバイスの製造方法と同じである。
半導体製造装置の洗浄方法では、例えば、図3に示す半導体製造装置90を洗浄する。
半導体製造装置90において、タンク92に、洗浄液として、例えば、イソプロパノール(IPA)を貯留する。半導体ウエハ86上に、イソプロパノール(IPA)を洗浄液として供給し、次に、半導体ウエハ86を回転させて洗浄液を、半導体ウエハ86の全面に広げて洗浄する。洗浄後、半導体ウエハ86を取り外し、次の工程に移送する。
半導体ウエハ86の洗浄後に、タンク92に、工程2で確認された、イソプロパノール(IPA)を貯留し、イソプロパノール(IPA)をポンプ94、温度調整器96、フィルタ98及びノズル100を通過させて、ノズル100からイソプロパノール(IPA)を排出させる。このようにして半導体製造装置90を洗浄する。
【0060】
[洗浄液の清浄度の測定方法]
有機溶媒を含む薬液中の不純物を感知して、薬液の純度の管理を、洗浄液の清浄度の測定方法に利用する。
洗浄液の清浄度の測定方法は、振動子と、有機溶媒を主成分とする薬液とを接触させ、薬液の接触による振動子の共振周波数の変化量を得る工程1と、薬液の共振周波数の変化量が、予め設定された薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるかを確認する工程2と、工程2で確認された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用する工程3と、工程3の洗浄に使用された薬液の一部を取り出す工程4と、工程4で取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれるかを確認する工程5とを有する。工程1の前に、有機溶媒を主成分とする薬液を用意する工程を有してもよい。
洗浄液の清浄度の測定方法は、工程2で確認された薬液を、半導体製造装置の洗浄に使用した(工程3)後に、工程3の洗浄に使用された薬液の一部を取り出す工程4と、工程4で取り出された薬液の共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれるかを確認する工程5とを有する点以外は、上述の半導体製造装置の洗浄方法と同じである。
【0061】
洗浄液の清浄度の測定方法は、半導体製造装置の洗浄方法における半導体製造装置の洗浄の程度を測定することができ、半導体製造装置の汚染度を把握することができる。
上述のように、例えば、図3に示す半導体製造装置90において、洗浄液として、例えば、工程2で確認されたイソプロパノール(IPA)を用いて洗浄する際、洗浄中のイソプロパノール(IPA)を取り出す(工程4)。工程4で取り出されたイソプロパノール(IPA)の共振周波数の変化量を測定する。この共振周波数の変化量が、許容範囲に含まれるかを確認する(工程5)。洗浄中のイソプロパノール(IPA)を取り出すが、取り出す頻度は、特に限定されるものではなく、例えば、洗浄に使用する総量の1/10ずつ取り出す。
工程4において、共振周波数の変化量を測定するために、洗浄液として用いたイソプロパノール(IPA)を取り出しているが、取り出す洗浄液の量は、特に限定されるものではなく、例えば、数十ミリリットル~数百ミリリットル程度である。
例えば、工程5において、共振周波数の変化量が許容範囲に含まれていれば、洗浄を終了する。一方。工程5において、共振周波数の変化量が許容範囲を超えていれば、洗浄が十分ではなく洗浄を継続する。工程5において、共振周波数の変化量が許容範囲に含まれるまで繰り返し洗浄を行う。このように、洗浄中の洗浄液の共振周波数の変化量を測定することにより、半導体製造装置の洗浄の程度、すなわち、半導体製造装置の汚染度を把握できる。
【0062】
[水晶振動子センサの他の例]
図8は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第2の例を示す模式図であり、図9は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第2の例を示す模式的断面図である。図10は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第3の例を示す模式図であり、図11は本発明の実施形態の水晶振動子センサの第3の例を示す模式的断面図である。図7図11に示す水晶振動子センサ26において、図5に示す水晶振動子センサ26と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図5に示す水晶振動子センサ26は、水晶振動子27の表面27aに電極30を1つ設ける構成であるが、これに限定されるものではない。図8及び図9に示すように、水晶振動子27の表面27aに、第1の電極50と第2の電極51とを設ける構成でもよい。第1の電極50と第2の電極51とは、例えば、長方形状の導電層で構成されており、間隔をあけて互いに平行に配置されている。第1の電極50と、第2の電極51とは、互いに電気的に絶縁された状態である。第1の電極50の表面50aに第1の吸着層35が設けられ、第2の電極51の表面51aに第2の吸着層36が設けられている。
【0063】
第1の電極50と電極31とが第1発振ユニット14aに電気的に接続されている。第2の電極51と電極31とが第2発振ユニット14bに電気的に接続されている。第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bとは発振部14に設けられたものであり、互いに独立して、第1の電極50及び電極31と、第2の電極51及び電極31とに、正弦波の高周波信号を周波数信号として印加することができ、これにより、水晶振動子27を共振周波数で振動させることができる。
また、第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bは、それぞれ検出部15に電気的に接続されている。検出部15は、第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bとの接続を切換えるスイッチ部(図示せず)を有する。スイッチ部により、第1発振ユニット14aの周波数信号と、第2発振ユニット14bの周波数信号とが交互に検出部15に取り込まれる。これにより、検出部15では、第1の電極50における共振周波数と、第2の電極51における共振周波数とを、互いに独立して得ることができる。
【0064】
第1の電極50の表面50a上の第1の吸着層35及び第2の電極51の表面51aに第2の吸着層36は、同じでもよく、互いに異なってもよい。第1の吸着層35と第2の吸着層36とが異なる場合、第1の電極50と第2の電極51との共振周波数の差分を利用し、差分が予め設定された対象薬液の純度に基づく共振周波数の変化量の許容範囲に含まれるか否かによって、純度を容易に推定することができる。これにより、より簡便に薬液の純度を容易に得ることができ、純度の管理が容易になり、薬液の品質を容易に管理することができる。第1の吸着層35及び第2の吸着層36のうち、少なくとも1つをAu層とすることが好ましい。Au層とすることにより、第1の電極50と第2の電極51とのうち、一方を参照電極として利用することができる。
【0065】
また、図10及び図11に示すように、水晶振動子27の表面27aに、電極52を設ける構成でもよい。電極52は、第1の電極部52aと、第2の電極部52bと、第1の電極部52aと第2の電極部52bとを一方の端で連結する連結部52cとを有する。第1の電極部52aと、第2の電極部52bとは、例えば、長方形状の導電層で構成されており、間隔をあけて互いに平行に配置されている。第1の電極部52aと、第2の電極部52bとは電気的に接続されている。電極52上に吸着層34が設けられている。
【0066】
第1の電極部52aと電極31とが第1発振ユニット14aに電気的に接続されている。第2の電極部52bと電極31とが第2発振ユニット14bに電気的に接続されている。第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bとは発振部14に設けられたものであり、互いに独立して、第1の電極50及び電極31と、第2の電極51及び電極31とに、正弦波の高周波信号を周波数信号として印加することができ、これにより、水晶振動子27を共振周波数で振動させることができる。
また、第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bは、それぞれ検出部15に電気的に接続されている。検出部15は、第1発振ユニット14aと第2発振ユニット14bとの接続を切換えるスイッチ部(図示せず)を有する。スイッチ部により、第1発振ユニット14aの周波数信号と、第2発振ユニット14bの周波数信号とが交互に検出部15に取り込まれる。これにより、検出部15では、第1の電極部52aにおける共振周波数と、第2の電極部52bにおける共振周波数とを、互いに独立して得ることができる。
【0067】
図11に示す水晶振動子センサ26においても、第1の電極部52a及び第2の電極部52b上に吸着層34が設けられているが、第1の電極部52aと第2の電極部52bとで互いに異なっていてもよい。異なる場合、第1の電極部52aと第2の電極部52bとの共振周波数の差分を利用することにより、純度を容易に推定することができる。これにより、より簡便に薬液の純度を容易に得ることができ、純度の管理が容易になり、薬液の品質を容易に管理することができる。第1の電極部52a及び第2の電極部52bのうち、少なくとも1つにAu層を形成することが好ましい。Au層を形成することにより、第1の電極部52aと第2の電極部52bとのうち、一方を参照電極として利用することができる。
【0068】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の半導体デバイスの製造方法、半導体製造装置の洗浄方法、及び洗浄液の清浄度の測定方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【0069】
[薬液]
本発明で使用される対象薬液(以下、単に「薬液」ともいう。)は、有機溶媒を主成分として含む。
本明細書において、有機溶媒とは、上述の薬液の全質量に対して、1成分あたり10000質量ppmを超えた含有量で含有される液状の有機化合物を意図する。つまり、本明細書においては、上述の薬液の全質量に対して10000質量ppmを超えて含有される液状の有機化合物は、有機溶媒に該当する。
また、本明細書において液状とは、25℃、大気圧下において、液体であることを意味する。
【0070】
薬液中において有機溶媒が主成分であるとは、薬液中における有機溶媒の含有量が、薬液の全質量に対して、98.0質量%以上であることを意味し、99.0質量%超が好ましく、99.90質量%以上がより好ましく、99.95質量%超が更に好ましい。上限は、100質量%未満である。
有機溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を使用してもよい。2種以上の有機溶媒を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0071】
有機溶媒の種類としては特に制限されず、公知の有機溶媒を使用できる。有機溶媒は、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル、ジアルキルスルホキシド、環状スルホン、ジアルキルエーテル、一価アルコール、グリコール、酢酸アルキルエステル、及び、N-アルキルピロリドン等が挙げられる。
【0072】
有機溶媒は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、乳酸エチル(EL)、炭酸プロピレン(PC)、イソプロパノール(IPA)、4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)、酢酸ブチル(nBA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、及び、2-ヘプタノンからなる群から選択される1種以上が好ましい。
有機溶媒を2種以上使用する例としては、PGMEAとPGMEの併用、及び、PGMEAとPCの併用が挙げられる。
なお、薬液中における有機溶媒の種類及び含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。
【0073】
薬液は、有機溶媒以外に不純物を含む場合がある。上述したように、不純物が吸着層に吸着されることにより共振周波数が変化する。
不純物としては、金属不純物及び有機不純物が挙げられる。
金属不純物とは、金属イオン、及び、固体(金属単体、粒子状の金属含有化合物等)として薬液中に含まれる金属不純物を意図する。
金属不純物に含まれる金属の種類は特に制限されず、例えば、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Li(リチウム)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、及び、Zn(ジルコニウム)が挙げられる。
金属不純物は、薬液に含まれる各成分(原料)に不可避的に含まれている成分でもよいし、薬液の製造、貯蔵、及び/又は、移送時に不可避的に含まれる成分でもよいし、意図的に添加してもよい。
薬液が金属不純物を含む場合、その含有量は特に制限されず、薬液の全質量に対して、0.01質量ppq~500質量ppbが挙げられる。
【0074】
本明細書において、有機不純物とは、薬液に含まれる主成分である有機溶媒とは異なる化合物であって、上述の薬液の全質量に対して、10000質量ppm以下の含有量で含まれる有機物を意図する。つまり、本明細書においては、上述の薬液の全質量に対して10000質量ppm以下の含有量で含まれる有機物は、有機不純物に該当し、有機溶媒には該当しないものとする。
なお、複数種の化合物からなる有機不純物が薬液に含まれる場合、各化合物が上述した10000質量ppm以下の含有量で含有される有機物に該当していれば、それぞれが有機不純物に該当する。
なお、水は、有機不純物には含まれない。
【0075】
有機不純物は、薬液中に添加されてもよいし、薬液の製造工程において不可避的に薬液中に混合されるものであってもよい。薬液の製造工程において不可避的に混合される場合としては、例えば、有機不純物が、薬液の製造に用いる原料(例えば、有機溶媒)に含まれる場合、及び、薬液の製造工程で混合する(例えば、コンタミネーション)等が挙げられるが、これらに制限されない。
上述の薬液中における有機不純物の合計含有量は特に制限されないが、薬液の全質量に対して、0.1~5000質量ppmが挙げられる。
有機不純物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の有機不純物を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0076】
有機不純物としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTP)、4,4’-ブチリデンビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、及び、特開2015-200775号公報に記載されている酸化防止剤等の酸化防止剤;未反応の原料;有機溶媒の製造時に生じる構造異性体及び副生成物;有機溶媒の製造装置を構成する部材等からの溶出物(例えば、Oリング等のゴム部材から溶出した可塑剤);等が挙げられる。
【0077】
薬液は、水を含んでいてもよい。水の種類は特に制限されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、及び、純水を用いることができる。
水は、薬液中に添加されてもよいし、薬液の製造工程において不可避的に薬液中に混合されるものであってもよい。薬液の製造工程において不可避的に混合される場合としては例えば、水が、薬液の製造に用いる原料(例えば、有機溶媒)に含まれる場合、及び、薬液の製造工程で混合する(例えば、コンタミネーション)等が挙げられる。
【0078】
薬液中における水の含有量は特に制限されないが、一般に、薬液の全質量に対して、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%未満が更に好ましい。
薬液中における水の含有量が1.0質量%以下であると、半導体チップの製造歩留まりがより優れる。
なお、下限は特に制限されないが、0.01質量%程度の場合が多い。製造上、水の含有量を上述の数値以下にするのが難しい。
【0079】
上述の薬液を準備する方法は特に制限されず、例えば、有機溶媒を購入等により調達する、及び、原料を反応させて有機溶媒を得る等の方法が挙げられる。なお、薬液としては、すでに説明した不純物の含有量が少ないもの(例えば、有機溶媒の含有量が99質量%以上のもの)を準備することが好ましい。そのような有機溶媒の市販品としては、例えば、「高純度グレード品」と呼ばれるものが挙げられる。
なお、必要に応じて、薬液に対しては、精製処理を施してもよい。
精製方法としては、例えば、蒸留、及び、ろ過が挙げられる。
【0080】
工程1の薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量が0.01質量ppq~10質量ppbであることが好ましい。
10質量ppbを超えると、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)、及びICP-MS等による質量ppbといった指標では、相関がとれず決定係数が小さくなる。一方、水晶振動子センサによる共振周波数の変化量は、上述の表面検査装置(SP-5)を用いて得られた欠陥数と相関関係があり、決定係数が大きい。
0.01質量ppq~10質量ppbであれば、金属濃度が低くなり過ぎず、薬液の体積抵抗値が大きくならず、その結果、流動帯電が大きくならない。これにより、測定装置又は半導体製造装置において、接液面であるフッ素材料に絶縁破壊が生じず、異物が発生せずに、薬液を管理できる。
薬液中のNa、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnの含有量は、NexION350(商品名、PerkinElmer社製)を用いて、ICP-MS(inductively coupled plasma mass spectrometry)法を用いて測定できる。ICP-MS法による具体的な測定条件は、次の通りである。なお、濃度既知の標準液に対するピーク強度にて検出量を測定して、金属成分の質量に換算し、測定に使用した処理液中の金属成分の含有量(総メタル含有量)を算出する。
金属成分の含有量は、通常のICP-MS法により測定した。具体的には、金属成分の分析に使用するソフトウェアとして、ICP-MS用のソフトウェアを用いる。
【0081】
上述の0.01質量ppqの測定について説明する。
まず、1mLの薬液を、直径約300mm(12インチ)のシリコンウエハ上に液滴として塗布する。その後、無回転で乾燥させる。SP7で当該シリコンウエハの欠陥位置を測定後、FIB-SEM(サーモフィッシャー社製 HELIOS G4-EXL)にて、SP7で取得した座標ファイルを基に欠陥部位近傍の断面を切り出す。
FIB-SEM又はTEMにて、断面エッチングを行いながらEDXにより3次元の形状情報と元素情報を取得する。これらを全ての欠陥について行う。
例えば、1mL(密度1g/cm)の薬液でFe13.5nm(SP7の限界)の球体状パーティクルが1つ発見された場合について考えると、原理的には質量比換算でおおよそ0.01質量ppqが原理的に測定できることになる。
【実施例
【0082】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0083】
<例A>
[薬液の製造]
まず、後述する例にて用いる薬液を準備した。具体的には、まず、純度99質量%以上の高純度グレードの有機溶媒試薬を購入した。その後、購入した試薬に対して、以下のフィルタを適宜組み合わせたろ過処理を施して、不純物量が異なる薬液1~44をそれぞれ調製した。
・IEX-PTFE(15nm):Entegris社製の15nm IEX PTFE
・PTEE(12nm):Entegris社製の12nm PTFE
・UPE(3nm):Entegris社製の3nm PEフィルタ
なお、後述する薬液中の不純物量を調整するために、適宜、有機溶媒試薬の購入元を変更したり、純度グレードを変更したり、上述のろ過処理の前に蒸留処理を実施したりした。
【0084】
[水晶振動子センサを用いた評価(その1)]
<例1>
振動子を以下の洗浄用薬液で洗浄した。洗浄用薬液は、測定する薬液種と同種のものを用い、事前に、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いた測定により欠陥数が3個以下であることを確認したものを使用した。
図5に示す吸着層がSi層である水晶振動子センサを用意して、上述の水晶振動子センサを有する図7に示すフローセルユニット12を有する測定装置(図4参照)を用いて、薬液1~44を水晶振動子センサと接触させて、水晶振動子の共振周波数の変化量の評価を実施した。具体的には、薬液温度は温度一定で23℃(±0.1℃)となるように温度調整部で調整して、フローセルユニット中にて各薬液を循環流量20ml/sで60分間にわたって循環させた際の水晶振動子の共振周波数の変化量(Hz)を得た。なお、薬液と接触させる前の水晶振動子の共振周波数は27MHzであった。
なお、使用した測定装置においては、接液部の少なくとも一部がフッ素系樹脂で構成されていた。
具体的には、フローセルユニットの図7に示すブロック40の接液部(対象薬液と接する部分)がパーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP、引張強度:20~30MPa、ショアD硬度:60~65、曲げ弾性率:0.55~0.67GPa)で構成されている。また、送液部の接液部(対象薬液と接する部分)がTHV軟質フッ素樹脂で構成されている。
また、図7に示す、対象薬液を領域に留めるシール部42の接液部(対象薬液と接する部分)がポリフッ化ビニリデン(PVDF、引張強度:30~70MPa、ショアD硬度:64~79)で構成されている。
更に、図7に示す、対象薬液を領域に留めるシール部42の接液部(対象薬液と接する部分)がパーフルオロアルコキシアルカン(PFA、引張強度:25~35MPa、ショアD硬度:62~66)で構成されている。
【0085】
また、上述の共振周波数の変化量を測定する際に、対象薬液中に測定装置から溶出する不純物量をLC/MS(Thermo LC/MSQE plus)を用いて測定した。
【0086】
<例2>
例2は、例1に比して、洗浄用薬液を用いた振動子の洗浄を実施していない点以外は、例1と同じとした。
<例3>
例3は、例1に比して、薬液を3倍に濃縮した点以外は、例1と同じとした。
例3では、薬液を加熱し、気化させて、3倍に濃縮した。
<例4>
例4は、例1に比して、温度調整を実施していない点以外は、例1と同じとした。
<例5>
例5は、例1に比して、薬液を循環せず(循環流量0mL/s)に、振動子を浸漬させた状態において、振動子の周波数変化の測定を行った点以外は、例1と同じとした。
【0087】
[表面検査装置を用いた評価(その1)]
まず、直径約300mm(12インチ)のシリコンウエハを準備した。
次に、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いて、上述のシリコンウエハ上に存在する欠陥の数を計測した(これを初期値とする。)。
次に、東京エレクトロン株式会社製「CLEAN TRACK LITHIUS(商品名)」を用いて、各薬液1~44をシリコンウエハ上に1500rpm(revolution per minute)で回転塗布し、その後、シリコンウエハをスピン乾燥した。
次に、上述の表面検査装置(SP-5)を用いて、薬液塗布後のシリコンウエハに存在する欠陥の数を計測した(これを計測値とする。)。次に、初期値と計測値の差を(計測値-初期値)を計算し、欠陥数とした。この欠陥数は、シリコンウエハ上に残った薬液の不純物の量を表しており、数値が小さいほど薬液中の不純物の量が少ないことを意味する。結果を表1及び表2にまとめて示す。
なお、上述の評価は、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス2以上の清浄度を満たすクリーンルームで行った。
【0088】
表1及び表2中、「薬液」欄は各例で使用した薬液を表す。例えば、nBA(酢酸ブチル)を含む薬液1~20では不純物の量が異なる。なお、表1及び表2中の薬液の記号は以下の薬液を表す。
nBA:酢酸ブチル
MIBC:4-メチル-2-ペンタノール
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
IPA:イソプロパノール
CHN:シクロヘキサノン
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
例1~5において、全ての薬液の共振周波数の変化量(振動子の共振周波数の変化量(Hz))及び欠陥数(表面検査装置評価(個数/ウエハ))に対する点をプロットして、プロットされた点を通る検量線を最小二乗法により作成して、決定係数(R)を算出したところ、表1に示すように例1は0.992、例2は0.985、例3は0.99、例4は0.980、例5は0.968と算出された。決定係数が1.000に近いほど、優れた結果に該当するが、表1及び表2の結果は共振周波数の変化量と欠陥数との間の相関関係が高いことを示していた。
このように、表1及び表2に示すように、共振周波数の変化量と欠陥数とは相関性があり、共振周波数の変化量が大きい場合、欠陥数が大きくなる傾向があった。
また、例1と例2とから、共振周波数の変化量の測定前に、振動子を洗浄することにより決定係数が大きくなり、測定前に振動子を洗浄することは有効であった。
また、例1と例3とから、薬液を3倍に濃縮することにより、共振周波数の変化の信号強度が約3倍程度になった。このことから、より高い感度で共振周波数の測定を行うことができた。例3は決定係数Rが0.99であり、欠陥数と高い相関関係があった。
例4は、温度調整を行わなかった結果、測定中の温度は23℃±3℃の範囲で振れていた。例1と例4とから、例1の方が決定係数が大きいことから、温度制御の有効性が示された。なお、温度によって、薬液中の不純物の振動子への付着係数が異なること、温度変化によって有機系不純物が生じたことが、共振周波数の変化量の値に影響を与えたものと推定される。
例1と例5とから、例1の方が決定係数が大きいことから、薬液を循環させることの有効性が示された。薬液を循環させた方が、より薬液中の異物が振動子と接する機会が増加し、吸着し易くなることから、共振周波数の変化をより捉えやすくなり管理し易くなることが分かった。
【0092】
上述の例1の薬液1~44をプリウェット液として用いて、以下に示すリソグラフィ工程を行ったところ、レジストパターンを有するレジスト膜を形成できた。
(リソグラフィ工程)
まず、直径約300mm(12インチ)のシリコンウエハに対して各薬液を用いてプリウェットを行った。次に、レジスト樹脂組成物をプリウェット済みシリコンウエハ上に回転塗布した。その後、ホットプレート上で温度150℃にて90秒間加熱乾燥を行い、90nmの厚みのレジスト膜を形成した。
このレジスト膜に対し、縮小投影露光及び現像後に形成されるパターンのライン幅が45nm、スペース幅が45nmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して、ArFエキシマレーザースキャナー(ASML製、XT:1700i、波長193nm)を用いて、NA=1.20、Dipole(oσ/iσ)=0.981/0.859、Y偏光の露光条件でパターン露光した。照射後に温度120℃にて60秒間ベークした。その後、現像、及びリンスし、温度110℃にて60秒ベークして、ライン幅が45nm、スペース幅が45nmのレジストパターンを形成できた。
レジスト樹脂組成物には、以下に示すものを用いた。
【0093】
(レジスト樹脂組成物)
レジスト樹脂組成物について説明する。レジスト樹脂組成物は、以下の各成分を混合して得た。
【0094】
酸分解性樹脂(下記式で表される樹脂(重量平均分子量(Mw)7500):各繰り返し単位に記載される数値はモル%を意味する。):100質量部
【0095】
【化1】
【0096】
下記に示す光酸発生剤:8質量部
【0097】
【化2】
【0098】
下記に示すクエンチャー:5質量部(質量比は、左から順に、0.1:0.3:0.3:0.2とした。)。なお、下記のクエンチャーのうち、ポリマータイプのものは、重量平均分子量(Mw)が5000である。また、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0099】
【化3】
【0100】
下記に示す疎水性樹脂:4質量部(質量比は、(1):(2)=0.5:0.5とした。)。
なお、下記の疎水性樹脂のうち、式(1)の疎水性樹脂は、重量平均分子量(Mw)は7000であり、式(2)の疎水性樹脂の重量平均分子量(Mw)は8000である。なお、各疎水性樹脂において、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0101】
【化4】
【0102】
溶剤:
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):3質量部
シクロヘキサノン:600質量部
γ-BL(γ-ブチロラクトン):100質量部
【0103】
<例B>
上述の例Aの薬液1を、塗布現像装置の洗浄液として用いた。洗浄後の洗浄液の共振周波数の変化量を測定した。振動子には、例1の振動子を用い、共振周波数の変化量は、上述の例1と同様にして測定した。以下、洗浄液の清浄度の測定方法について説明する。
【0104】
(洗浄液の清浄度の測定方法)
異物等により汚染された塗布現像装置を使用した。汚染された塗布現像装置の汚染の程度を、洗浄前に薬液1を送液して、排出されて薬液1を調べた。その結果、直径約300mm(12インチ)のシリコンウエハ上に欠陥数1000個以上発生することを確認した。
なお、欠陥数は、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いて、各基板上に存在する欠陥の数を計測して得られた値である。
薬液1を、合計2ガロンの薬液を塗布現像装置に送液して、塗布現像装置をフラッシング洗浄した。フラッシング洗浄に際し、塗布現像装置から、洗浄に使用されて排出された薬液を0.2ガロン毎に採取した。採取した薬液について、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いて、洗浄後表面検査装置欠陥評価を評価し、かつ共振周波数の変化量を測定した。
2ガロンの薬液1を用いたフラッシング洗浄について、洗浄後表面検査装置欠陥評価と共振周波数の変化量は、下記表3に示す結果が得られた。
【0105】
【表3】
【0106】
表3に示すように、送液量が増加することにより、シリコンウエハ上に残存する欠陥の量が減少することがわかった。また、洗浄後表面検査装置欠陥評価で表される洗浄後の欠陥数は、共振周波数の変化量とも相関があることから、表面検査装置を用いた評価を実施しなくても、共振周波数の変化量を測定することにより欠陥発生量、すなわち、半導体製造装置の汚染度を把握することができることがわかった。
【0107】
<例C>
[水晶振動子センサを用いた評価(その2)]
図5に示す吸着層34がSiO層、SiOC層、Cu層、Co層、Ti層、W層、TiN層、Ta層、TaN層の各層である水晶振動子センサを用意した以外は、上述の[水晶振動子センサを用いた評価(その1)]と同様の手順に従って、共振周波数の変化量を測定した。なお、薬液と接触させる前の各層の水晶振動子の共振周波数は、それぞれ27MHzであった。結果を表4~21にまとめて示す。
なお、上述の評価は、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス2以上の清浄度を満たすクリーンルームで行った。
【0108】
[表面検査装置を用いた評価(その2)]
まず、各種基板(SiO基板、SiOC基板、Cu基板、Co基板、Ti基板、W基板、TiN基板、Ta基板、TaN基板)を用意した。
次に、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いて、各基板上に存在する欠陥の数を計測した(これを初期値とする。)。
次に、東京エレクトロン株式会社製「CLEAN TRACK LITHIUS(商品名)」を用いて、各薬液1~44を基板上に1500rpmで回転塗布し、その後、基板をスピン乾燥した。
次に、上述の表面検査装置(SP-5)を用いて、薬液塗布後の基板に存在する欠陥の数を計測した(これを計測値とする。)。次に、初期値と計測値の差を(計測値-初期値)を計算し、欠陥数とした。結果を表4~21にまとめて示す。
なお、上述の評価は、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス2以上の清浄度を満たすクリーンルームで行った。
【0109】
表4~21においては、同種の金属種の吸着層及び基板を用いた結果を並べて示す。例えば、表3中の「SiO」欄においては、吸着層として「SiO層」を用いた[水晶振動子センサを用いた評価(その2)]の結果と、SiO基板を用いた[表面検査装置を用いた評価(その2)]の結果とを示す。
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
【表10】
【0117】
【表11】
【0118】
【表12】
【0119】
【表13】
【0120】
【表14】
【0121】
【表15】
【0122】
【表16】
【0123】
【表17】
【0124】
【表18】
【0125】
【表19】
【0126】
【表20】
【0127】
【表21】
【0128】
上述の表に示すように、同じ種類の金属種からなる吸着層と基板とを用いた場合には、共振周波数の変化量と欠陥数とは相関性が高く、共振周波数の変化量が大きい場合、欠陥数が大きくなる傾向があった。
更には、パターン欠陥数、又は洗浄後表面検査装置欠陥評価における欠陥数との相関について、決定係数が0.95以上であり、Si層以外の各種の層を使用した場合でも、共振周波数の変化量と、パターン欠陥数又は欠陥数とは相関性がより高いことが確認された。
【0129】
<例D>
Si層の代わりAu層を用いた以外は、上述の[水晶振動子センサを用いた評価(その1)]と同様の手順に従って、共振周波数の変化量を測定した。
次に、Si層を用いて得られた共振周波数の変化量からAu層を用いて得られた共振周波数の変化量を引き、差分を求めた。結果を表22に示す。
表22中、「振動子(Si-Au吸着層)の共振周波数の変化量(Hz)」欄は、Si層の共振周波数の変化量からAu層の共振周波数の変化量を引いた差分を表す。
また、Si層の代わりAu層を用いた以外は、上述の[表面検査装置を用いた評価(その1)]と同様の手順に従って、表面検査装置(SP-5;KLA Tencor製)を用いて、各基板上に存在する欠陥の数を計測した。結果を表23に示す。
なお、上述の評価は、国際標準化機構が定める国際標準ISO14644-1:2015で定めるクラス2以上の清浄度を満たすクリーンルームで行った。
【0130】
Si層とAu層とを有する水晶振動子センサを用い、上述の例Bの薬液1~44をプリウェット液として用いたリソグラフィ工程を行い、その後、パターン上欠陥を評価した。
また、Si層とAu層とを有する水晶振動子センサを用い、上述の例Cの薬液1~44を洗浄液として用いた。洗浄後の洗浄液の共振周波数の変化量を測定した。
以上の結果も合わせて表22及び表23に示す。
【0131】
【表22】
【0132】
【表23】
【0133】
表23に示すように、Si層とAu層とを有する水晶振動子センサにおいても、パターン欠陥数、又は洗浄後表面検査装置欠陥評価における欠陥数との相関について、決定係数が0.95以上であり、Au層を参照として使用した場合、共振周波数の変化量と、パターン欠陥数又は欠陥数とは相関性がより高いことが確認された。
【符号の説明】
【0134】
10 測定装置
12 フローセルユニット
14 発振部
14a 第1発振ユニット
14b 第2発振ユニット
15 検出部
16 算出部
20 供給部
18 メモリ
22 制御部
26 水晶振動子センサ
27 水晶振動子
27a 表面
27b 裏面
28 温度調整部
29a 第1のチューブ
29b 第2のチューブ
30 電極
30a 表面
31 電極
34 吸着層
40 ブロック
40a 供給路
40b 排出路
40c、42a 面
42、43 シール部
44 領域
45 領域
50 第1の電極
51 第2の電極
52 電極
52a 第1の電極部
52b 第2の電極部
52c 連結部
60、90 半導体製造装置
61a レジスト液供給部
61b リンス液供給部
61c バックリンス部
62a、62b、62c、92 タンク
64a、64b、64c、94 ポンプ
66a、66b、66c、96 温度調整器
69a、69b、69c、99 配管
68a、68b、68c、98 フィルタ
70、71、72、100 ノズル
80 塗布部
82、112 収納容器
83、114 支持台
84、115 駆動軸
85、116 モータ
86 半導体ウエハ
86a 表面
86b 裏面
110 洗浄部
L 検量線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11