IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用収納ボックス 図1
  • 特許-車両用収納ボックス 図2
  • 特許-車両用収納ボックス 図3
  • 特許-車両用収納ボックス 図4
  • 特許-車両用収納ボックス 図5
  • 特許-車両用収納ボックス 図6
  • 特許-車両用収納ボックス 図7
  • 特許-車両用収納ボックス 図8
  • 特許-車両用収納ボックス 図9
  • 特許-車両用収納ボックス 図10
  • 特許-車両用収納ボックス 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両用収納ボックス
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B60R7/04 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021076856
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022170602
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 高雄
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0225148(US,A1)
【文献】特開2009-029369(JP,A)
【文献】特開2009-107480(JP,A)
【文献】特開2010-036671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納空間を形成して開口を有する収納部材と、
前記開口を開閉するドア部材と、
前記収納部材と前記ドア部材との間に介在し、前記ドア部材を前記収納部材に対して前記開口を閉じる閉方向又は前記開口を開放する開方向に向けて付勢する付勢力を発生するバネ部材と、
を備え、
前記収納部材は、前記バネ部材の一端部を支持するバネ支持部を有し、
前記ドア部材は、前記ドア部材の本体部から前記付勢力が作用する方向とは反対方向へ突出するガイド部と、前記ガイド部の表面に設けられて前記バネ部材の他端部を係止する係止溝と、を有し、
前記ガイド部は、前記表面とは背向する裏面に設けられて、前記バネ部材の前記他端部を前記係止溝に係止させる組み付け作業が行われる過程で前記バネ部材の所定部位を引っ掛けて前記バネ部材を位置決めする段差部を有する、車両用収納ボックス。
【請求項2】
前記段差部は、前記裏面の一部としての第一背面部と、前記裏面の一部として前記第一背面部よりも前記ガイド部の先端側に位置する第二背面部と、前記第一背面部と前記第二背面部とを接続する壁部と、を有し、
前記第一背面部と前記壁部とがなす角度は、100°未満である、請求項1に記載された車両用収納ボックス。
【請求項3】
前記バネ部材は、前記バネ部材の一端部に設けられて前記バネ支持部に支持される軸状部と、前記所定部位が設けられ、前記軸状部に巻き付けられる長尺に形成された帯状部と、を有し、
前記段差部は、前記組み付け作業の過程で前記バネ部材の他端部側にある前記帯状部の先端部が前記付勢力に抗して前記軸状部側から引き出される際に、前記所定部位を引っ掛けて前記所定部位を軸中心線にして前記帯状部の前記所定部位よりも先端側を回転させる支点となる部位である、請求項1又は2に記載された車両用収納ボックス。
【請求項4】
前記バネ部材は、前記帯状部の先端よりも前記バネ部材の一端部側に設けられて前記帯状部の幅方向に向けて開口する凹溝部を有し、前記凹溝部の周縁のうち前記バネ部材の一端部側に向いた第一縁部が前記係止溝の溝底面に当接した状態で前記係止溝に係止され、
前記所定部位は、前記凹溝部の周縁のうち前記バネ部材の他端部側に向いた第二縁部である、請求項3に記載された車両用収納ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用収納ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のコンソールボックスなどの車両用収納ボックスが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の車両用収納ボックスは、収納空間を形成する収納部材と、その収納部材の開口を開閉するドア部材と、ドア部材を収納部材に対して開閉動作させる開閉機構と、を備えている。開閉機構は、収納部材とドア部材との間に介在するバネ部材を有している。バネ部材は、ドア部材を収納部材の開口を開放する開位置からその開口を閉じる閉位置へ向けて付勢するバネである。
【0003】
バネ部材は、軸状部と、その軸状部に巻き付けられた金属製の帯状部と、を有する定荷重バネである。軸状部は、収納部材に回転可能に支持されている。帯状部は、一端部で軸状部に取り付けられ、他端部(先端部)でドア部材に係止されている。バネ部材は、帯状部の先端部が軸状部側から径方向外方へ引き出された際にその帯状部を軸状部側へ巻き戻す付勢力を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-118653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したバネ部材の帯状部は、ドア部材に係止される凹溝部を有している。この凹溝部は、帯状部の幅方向に向けて開口する溝であって、帯状部の先端よりも後側の箇所に設けられている。凹溝部は、帯状部の幅方向両側それぞれに設けられている。また、ドア部材は、バネ部材の帯状部を係止する係止溝を有している。係止溝は、バネ部材の帯状部の先端部(具体的には、凹溝部よりも先端側)が嵌るように、上下に二股状に分かれたガイド部の間に形成された溝である。
【0006】
ここで、収納部材とドア部材とを連結させる組み付けを行ううえでは、バネ部材の軸状部を収納部材に支持させた状態でそのバネ部材の帯状部の先端部を引き出してドア部材の係止溝に係止させる作業が必要である。しかしながら、この組付作業時にはバネ部材に帯状部の先端部を軸状部側へ巻き戻す付勢力が作用するため、その組付作業をドア部材の二股のガイド部の間を狙って位置ずれなく行うことは容易ではない。
【0007】
そこで、バネ部材の帯状部の先端部をドア部材の係止溝に位置ずれなく係止させるうえで、ドア部材の係止溝を形成する二股のガイド部を、係止溝の開口が大きくなるように外方へ張り出させる構造が考えられる。この構造によれば、上記の組付作業を位置ずれなく行うことは容易になる。しかしながら、この構造では、ドア部材のガイド部のサイズが大きくなることで、そのサイズアップの分だけより一層に組付時においてバネ部材の帯状部を軸状部側から径方向外方へ引き出す作業が必要となるが、バネ部材を引き出してその帯状部の先端部をドア部材の係止溝に係止するまでにバネ部材を支える支点が無いため、上記の組み付け作業の安定性が行われ、作業者の指などがガイド部に当たるなどの作業性低下が招来するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、ドア部材のガイド部のサイズアップを伴うことなくバネ部材をドア部材の係止溝に係止させる組み付けの作業性を向上させることが可能な車両用収納ボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、収納空間を形成して開口を有する収納部材と、前記開口を開閉するドア部材と、前記収納部材と前記ドア部材との間に介在し、前記ドア部材を前記収納部材に対して前記開口を閉じる閉方向又は前記開口を開放する開方向に向けて付勢する付勢力を発生するバネ部材と、を備え、前記収納部材は、前記バネ部材の一端部を支持するバネ支持部を有し、前記ドア部材は、前記ドア部材の本体部から前記付勢力が作用する方向とは反対方向へ突出するガイド部と、前記ガイド部の表面に設けられて前記バネ部材の他端部を係止する係止溝と、を有し、前記ガイド部は、前記表面とは背向する裏面に設けられて、前記バネ部材の前記他端部を前記係止溝に係止させる組み付け作業が行われる過程で前記バネ部材の所定部位を引っ掛けて前記バネ部材を位置決めする段差部を有する、車両用収納ボックスである。
【0010】
この構成によれば、バネ部材の他端部をドア部材の係止溝に係止させる組み付け作業の過程でそのバネ部材を位置決めすることができるので、その過程でバネ部材が位置決めされない構成と比較して、ガイド部のサイズアップを伴うことなくバネ部材をドア部材の係止溝に係止させる組み付けの作業性を向上させることできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る車両用収納ボックスのドア閉状態での斜視図である。
図2】実施形態の車両用収納ボックスの分解斜視図である。
図3】実施形態の車両用収納ボックスが備える収納部材の斜視図である。
図4】実施形態の車両用収納ボックスが備える収納部材の要部の拡大斜視図である。
図5】実施形態の車両用収納ボックスが備えるドア部材のガイド部を側方から見た図である。
図6】実施形態の車両用収納ボックスが備えるバネ部材の帯状部の先端部の構成図である。
図7】実施形態の車両用収納ボックスにおけるバネ部材の帯状部が軸状部側から引き出されて収納部材の段差部に引っ掛けられた状態を表した斜視図である。
図8】実施形態の車両用収納ボックスにおける収納部材にドア部材がセットされてスライドされた状態を表した斜視図である。
図9】実施形態の車両用収納ボックスにおけるバネ部材をドア部材の係止溝に係止させる組み付け作業の中途状態を表した斜視図である。
図10図9に示す中途状態を斜め下側から見た斜視図である。
図11】実施形態の車両用収納ボックスにおけるバネ部材をドア部材の係止溝に係止させる組み付け作業の完了状態を表した要部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図11を用いて、本発明に係る車両用収納ボックスの具体的な実施形態について説明する。
【0013】
一実施形態の車両用収納ボックス1は、車両の車室内の例えばセンターコンソールやドア把手などに設置されるコンソールボックスなどである。尚、この実施形態において、方向を示す内容は、特段の事情が無い限り、車両用収納ボックス1が設置される車両を基準にしたものとする。例えば、「右側」とは車両進行方向に対する車両右側を指し、「左側」とは車両進行方向に対する車両左側を指すものとする。
【0014】
車両用収納ボックス1は、図1及び図2に示す如く、収納部材10と、ドア部材20と、開閉機構30と、を備えている。車両用収納ボックス1は、開閉機構30によりドア部材20が収納部材10に対して開閉動作されるように構成されている。
【0015】
収納部材10は、収納空間11を形成する箱状の部材である。収納部材10は、車両内装品として車両側に固定されている。収納部材10は、図2に示す如く、収納空間11の上部を開放する開口12を有している。尚、開口12は、四角形状に形成されていてもよいし、円形に形成されていてもよい。収納部材10は、収納空間11を取り囲む側壁及び底壁からなる。開口12の周縁部は、側壁の上端により形成される。尚、収納部材10は、例えばカップホルダーなどを収めるための枠体などからなるものであってもよい。
【0016】
ドア部材20は、収納部材10の開口12を開閉する蓋体である。ドア部材20は、板状に形成されている。尚、ドア部材20は、開口12の形状に合わせた形状(例えば長方形状など)に形成されていてよい。ドア部材20は、収納部材10に対してスライド移動することにより開口12を開閉する。ドア部材20は、開口12を閉じる閉位置と開口12を開放する開位置との間でスライド移動して開閉動作することが可能である。
【0017】
開閉機構30は、ドア部材20を収納部材10に対してスライド移動させて開閉動作させる機構である。開閉機構30は、ドア部材20を収納部材10に設けられた一対のガイドレールに沿ってスライド移動させる。
【0018】
開閉機構30は、図3及び図4に示す如く、板バネ部材31を有している。板バネ部材31は、ドア部材20を収納部材10に対して所定方向に向けて付勢する付勢力を発生する付勢部材である。板バネ部材31は、収納部材10とドア部材20との間に介在している。尚、板バネ部材31が付勢する上記の所定方向は、ドア部材20を開位置から閉位置へスライドさせて開口12を閉じる閉方向であって、例えば車両前後方向のうち後方向である。
【0019】
板バネ部材31は、上記の所定方向に一定の付勢力を発生する定荷重バネ部材である。板バネ部材31は、長尺に形成されると共に一定の曲率で曲げられた板バネである。板バネ部材31は、軸状部32と、帯状部33と、を有している。軸状部32は、円筒状に形成されたドラム部材である。帯状部33は、軸状部32に巻き付けられる長尺に形成された帯状部材である。帯状部33は、金属により形成されており、主に帯状部33の長手方向及び幅方向の双方に直交する方向に変形(すなわち、撓み変形)可能に形成されている。帯状部33の一端部は、軸状部32の外周面に接し又は取り付けられている。帯状部33は、他端部(すなわち先端部)が外方へ引っ張られることにより軸状部32側から引き出される。
【0020】
収納部材10は、図4に示す如く、バネ支持部13を有している。バネ支持部13は、板バネ部材31の一端部(具体的には、軸状部32)を支持する部位である。板バネ部材31の軸状部32は、バネ支持部13に支持されている。尚、軸状部32は、バネ支持部13に回転可能に支持されていてよい。
【0021】
ドア部材20は、図5に示す如く、アウタパネル21と、インナパネル22と、を有している。アウタパネル21は、上面に上方に表出する表皮部材が覆うように取り付けられるパネル部材である。インナパネル22は、アウタパネル21の下面側(裏側)に配置される基部となるパネル部材である。アウタパネル21は、インナパネル22を覆うように配置形成されている。
【0022】
ドア部材20は、また、ガイド部23と、係止溝24と、を有している。ガイド部23は、作業者により板バネ部材31の他端部を係止溝24に係止させる組み付け作業が行われる際に板バネ部材31を係止溝24に向けてガイドする部位である。ガイド部23は、ドア部材20の本体部(具体的には、インナパネル22の側壁(例えば前面))から外方(例えば車両前後方向のうち前方向)へ突出している。
【0023】
ガイド部23は、ガイド本体部23aと、ガイド足部23bと、を有している。ガイド本体部23aは、ドア部材20の本体部側に設けられたブロック状の部位である。ガイド足部23bは、ガイド本体部23aに一体化されて、ガイド本体部23aから外方へアーム状に延びる部位である。尚、ガイド足部23bの突出量は、板バネ部材31を係止溝24に係止させるうえで必要な長さであればよく、できるだけ小さいことがガイド部23のサイズを小さく抑えるうえで好ましい。
【0024】
ガイド足部23bは、ガイド部23に二つ設けられている。二つのガイド足部23bは、互いに同じ形状に形成されており、水平方向(例えば車両左右方向)に所定距離離れた状態で並ぶように配置されている。板バネ部材31の帯状部33の先端部は、二つのガイド足部23bの間に嵌った状態でガイド部23の係止溝24に係止される。
【0025】
尚、上記の二つのガイド足部23bが離れる所定距離は、帯状部33の後述する一対の凹溝部34の底縁部34a同士が離れた距離よりも長く、かつ、その帯状部33の凹溝部34よりも先端部が有する幅よりも小さくなるように設定されている。帯状部33の先端部は、二つのガイド足部23bに亘った状態で係止溝24に係止されることによりドア部材20に支持される。
【0026】
係止溝24は、板バネ部材31の他端部(具体的には、帯状部33の先端部)を係止する溝である。係止溝24は、板バネ部材31の付勢力に抗してその板バネ部材31の他端部を保持することが可能である。係止溝24は、ガイド部23の表面(上面)に設けられており、二つのガイド足部23bに亘って形成されている。尚、係止溝24は、板バネ部材31の他端部を付勢力に抗して係止可能な構造であればよく、図5に示す如く、ガイド部23におけるガイド足部23bの突出先端側から根元側にかけてクランク状の凹みが形成されるものであってよい。板バネ部材31の帯状部33の先端部は、略水平な状態或いはその先端部が相対的に僅かに上方に位置する状態で係止溝24により係止される。
【0027】
板バネ部材31は、図6に示す如く、凹溝部34を有している。凹溝部34は、帯状部33の幅方向に向けて開口する溝である。凹溝部34は、板バネ部材31の帯状部33を係止溝24に嵌め込むための機能を有している。凹溝部34は、板バネ部材31の軸状部32側の一端とその一端とは反対の他端(すなわち、帯状部33の先端;図6における左端)との間に設けられ、より詳細には、帯状部33の先端に近い箇所に設けられている。凹溝部34は、帯状部33の幅方向両側すなわち車両左右方向両側それぞれに設けられている。一対の凹溝部34は、帯状部33の幅方向中心を挟んで互いに背向している。
【0028】
各凹溝部34は、底縁部34aと、先端側縁部34bと、後端側縁部34cと、により囲まれている。底縁部34aは、帯状部33の幅方向に向いた周縁部である。先端側縁部34bは、板バネ部材31の一端部側に向いた周縁部である。後端側縁部34cは、板バネ部材31の他端部側に向いた、凹溝部34を挟んで先端側縁部34bに対面する周縁部である。底縁部34aの長さ、すなわち、先端側縁部34bと後端側縁部34cとが離れている距離は、後述の段差部25の壁部25cとガイド部23のガイド足部23bの先端との直線距離よりも大きくなるように設定されている。
【0029】
板バネ部材31の帯状部33の先端部(凹溝部34よりも先端側)は、一対の凹溝部34それぞれの先端側縁部34bがドア部材20のガイド部23における係止溝24を形成する溝底面に当接した状態でその係止溝24に係止される。
【0030】
ドア部材20は、図5に示す如く、段差部25を有している。段差部25は、板バネ部材31の帯状部33の先端部を係止溝24に係止させる組み付け作業が行われる過程で、板バネ部材31の帯状部33の後端側縁部34cが引っ掛かることで板バネ部材31を位置決めする位置決め部である。段差部25は、上記の組み付け作業の過程で上記の後端側縁部34cを引っ掛けてその後端側縁部34cを軸中心線にしてその帯状部33の後端側縁部34cよりも先端側を回転させて変形させる支点となる。段差部25は、係止溝24が設けられるガイド部23の表面とは背向する裏面(下面)に設けられている。
【0031】
段差部25は、第一背面部25aと、第二背面部25bと、壁部25cと、を有している。第一背面部25a及び第二背面部25bは、それぞれガイド部23の裏面の一部として平面状に形成された略水平な部位であって、高さ位置が互いに異なるように形成配置されている。第一背面部25aは、ガイド部23の根元側に位置している。第二背面部25bは、第一背面部25aよりもガイド部23の先端側に位置している。第一背面部25aは、第二背面部25bよりも高い位置に形成されている。
【0032】
壁部25cは、第一背面部25aと第二背面部25bとを接続する立設部である。壁部25cは、鉛直方向に立設するように形成されている。壁部25cは、板バネ部材31の帯状部33の後端側縁部34cが引っ掛かることが可能な高さを有している。第一背面部25aと壁部25cとは、角部を形成している。この角部がなす角度は、車両用収納ボックス1の組み付け時に上記の後端側縁部34cが引っ掛かってから板バネ部材31の帯状部33の先端部が係止溝24側に進入して先端側縁部34bが係止溝24に係止されるまでの間においてその後端側縁部34cの引っ掛かりが維持されるのに必要な角度であればよい。この角部がなす角度は、例えば100°未満であって、好ましくは90°である。
【0033】
尚、収納部材10は、図4に示す如く、板バネ部材31の帯状部33を軸状部32から引き出してその帯状部33の先端部を仮止めする仮止め部15を有することとしてもよい。仮止め部15は、収納部材10の周壁のうち軸状部32から引き出された帯状部33が交差する側壁などに設けられていればよく、帯状部33の先端側縁部34bが引っ掛かることができるようにその側壁などから水平方向斜め下方へ向けてアーム状に延びていてよい。
【0034】
上記の車両用収納ボックス1の組み付け作業が行われる際、まず、板バネ部材31の軸状部32が収納部材10のバネ支持部13に支持される。次に、作業者の手により、板バネ部材31の帯状部33の先端部(具体的には、帯状部33の凹溝部34よりも先端側)が板バネ部材31の付勢力に抗して軸状部32を起点として外方へ引っ張られてガイド部23のガイド足部23bがガイド本体部23aから延びる方向と同じ方向に引き出される。そして、帯状部33の先端部が図7に示す如く収納部材10の仮止め部15に引っ掛けられて仮止めされる。その後、図8に示す如く、ドア部材20が収納部材10に開口12を閉じるようにセットされ開位置へ向けてガイドレールに沿ってスライド移動される。
【0035】
次に、板バネ部材31の帯状部33の先端部が、仮止め部15に仮止めされた状態からガイド部23のガイド足部23bがガイド本体部23aから延びる方向(例えば車両前方)と同じ方向に向けて引き出される。かかる引き出しは、板バネ部材31の凹溝部34の後端側縁部34cがドア部材20の段差部25の壁部25cに引っ掛かるように行われる。板バネ部材31の後端側縁部34cがドア部材20の段差部25の壁部25cに引っ掛かった状態では、その板バネ部材31におけるその後端側縁部34cよりも一端側が固定されつつ、その後端側縁部34cよりも他端側がその段差部25を支点にしてその後端側縁部34cを軸中心線にして回転変形可能になる。
【0036】
そして、作業者の操作により板バネ部材31の後端側縁部34cよりも先端側が段差部25を支点にして引き上げられると、板バネ部材31における後端側縁部34cよりも先端側がその後端側縁部34cを軸中心線にして回転されて変形する。この変形途中では、図9及び図10に示す如く、帯状部33における一対の凹溝部34の底縁部34a間の部位が二つのガイド足部23bの間を通過して、帯状部33の凹溝部34よりも先端側の部位がドア部材20の係止溝24側に進入する。
【0037】
帯状部33の凹溝部34よりも先端側の部位がドア部材20の係止溝24側に進入した状態で板バネ部材31に付与されていた力が解除されると、板バネ部材31の帯状部33が、その先端部が係止溝24に嵌め込まれた状態で付勢力により軸状部32側に巻き戻される。かかる巻き戻しが行われると、板バネ部材31の帯状部33の先端部が、その凹溝部34の先端側縁部34bがドア部材20の係止溝24の溝底面に当接した状態でその係止溝24に係止される。これにより、図11に示す如く、板バネ部材31の帯状部33の先端部をドア部材20の係止溝24に係止させる組み付けが完了する。
【0038】
このように、車両用収納ボックス1の組み付け時、具体的には、板バネ部材31の軸状部32が収納部材10に支持された状態で板バネ部材31の帯状部33の先端部をドア部材20の係止溝24に係止させる組み付け作業が行われる過程で、帯状部33の凹溝部34の後端側縁部34cをドア部材20の段差部25に引っ掛けることでその板バネ部材31(具体的には、後端側縁部34cよりも板バネ部材31の一端部側)をドア部材20に対して位置決めすることができる。そして、後端側縁部34cを段差部25に引っ掛けた状態で後端側縁部34cを軸中心線にして帯状部33の先端部を回転させて変形させドア部材20の係止溝24に係止させることができる。
【0039】
従って、板バネ部材31の帯状部33の先端部をドア部材20の係止溝24に係止させる組み付け作業の過程でドア部材20の段差部25により板バネ部材31を位置決めすることができるので、その組み付け作業のミスを発生させ難くして、その組み付け作業を容易にかつ位置ずれなく行うことができる。
【0040】
かかる車両用収納ボックス1においては、板バネ部材31をドア部材20の係止溝24に係止させるのに、その係止溝24の開口を大きくすること、すなわち、ドア部材20のガイド部23を外方へ張り出させてそのガイド部23のサイズアップを図ることは不要である。このため、板バネ部材31をドア部材20の係止溝24に係止させるうえで、板バネ部材31の帯状部33の先端部の引き出し量を抑えることができる。また、ガイド部23の段差部25は、板バネ部材31の帯状部33が引き出されてその帯状部33の先端部がドア部材20の係止溝24に係止されるまでの間、板バネ部材31の一端側を支える支点となる。このため、板バネ部材31をドア部材20の係止溝24に係止させる組み付け作業を安定化させることができ、その結果として、その組み付け作業中に作業者の指などがガイド部23に当たるのを抑えることができる。
【0041】
従って、ドア部材20のガイド部23のサイズアップを伴うことなく板バネ部材31をドア部材20の係止溝24に係止させる組み付けの作業性を向上させることができる。
【0042】
また、板バネ部材31をドア部材20の係止溝24に係止させ易くするのに、ガイド部23(特に、ガイド足部23b)の形状としてその係止溝24を挟んで上下一対設けることは不要である。すなわち、係止溝24よりも上側に、係止溝24よりも下側のガイド足部23bと同等のガイド足部を設けることは不要である。このため、多数のガイド足部が存在することに起因して作業者の指などがガイド部23に当たり易くなるのを回避して、上記の組み付け作業の困難性を解消させることができ、これにより、上記の組み付けの作業性を向上させることができる。
【0043】
尚、上記の実施形態においては、板バネ部材31が特許請求の範囲に記載した「バネ部材」に、板バネ部材31の凹溝部34の後端側縁部34cが特許請求の範囲に記載した「所定部位」に、先端側縁部34bが特許請求の範囲に記載した「第一縁部」に、後端側縁部34cが特許請求の範囲に記載した「第二縁部」に、それぞれ相当している。
【0044】
ところで、上記の実施形態においては、板バネ部材31が、ドア部材20を収納部材10に対して開口12を閉じる閉方向に向けて付勢する付勢力を発生する付勢部材である。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、逆に、板バネ部材31が、ドア部材20を収納部材10に対して開口12を開く開方向に向けて付勢する付勢力を発生する付勢部材であってよい。
【0045】
また、上記の実施形態においては、ガイド部23が、所定距離離れた状態で並んだ二つのガイド足部23bを有し、板バネ部材31が、帯状部33の幅方向両側それぞれに設けられて帯状部の幅方向の中心を挟んで互いに背向する一対の凹溝部34を有し、帯状部33が一対の凹溝部34にて二つのガイド足部23bの係止溝24に嵌め込まれて係止されるものとしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ガイド部23が一つのガイド足部を有し、板バネ部材31が帯状部33の幅方向何れか一方にのみ設けられた凹溝部を有するものとし、帯状部33が一つの凹溝部にて一つのガイド足部の係止溝24に嵌め込まれて係止されるものとしてもよい。
【0046】
また、上記の実施形態においては、板バネ部材31が帯状部33の幅方向に向けて開口する凹溝部34を有し、その凹溝部34を形成する後端側縁部34cが、ガイド部23の段差部25に引っ掛かる部位であるものとしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、板バネ部材31の帯状部33が帯状部33の表面に突出する凸部を有し、その凸部がガイド部23の段差部25に引っ掛かる部位であるものとしてもよい。
【0047】
更に、上記の実施形態においては、収納部材10とドア部材20との間に介在するバネ部材が、円筒状の軸状部32と、その軸状部32に巻き付けられる長尺の帯状部33と、からなる板バネ部材31である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、収納部材10とドア部材20との間に介在するバネ部材が、軸上に配置したコイルスプリングである軸状部と、その軸状部に一端が連結されるワイヤと、からなるものとしてもよい。
【0048】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:車両用収納ボックス、10:収納部材、11:収納空間、12:開口、20:ドア部材、22:インナパネル、23:ガイド部、24:係止溝、25:段差部、25a:第一背面部、25b:第二背面部、25c:壁部、30:開閉機構、31:板バネ部材、32:軸状部、33:帯状部、34:凹溝部、34a:底縁部、34b:先端側縁部、34c:後端側縁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11