(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20231129BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231129BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20231129BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20231129BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231129BHJP
C08L 45/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C1/00 A
B60C11/00 F
B60C11/13 B
C08L9/06
C08L9/00
C08L45/02
(21)【出願番号】P 2021504001
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007791
(87)【国際公開番号】W WO2020179582
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019037706
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀一朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史也
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/039175(WO,A1)
【文献】特開2014-088544(JP,A)
【文献】特開2015-054915(JP,A)
【文献】特開2017-047865(JP,A)
【文献】特開2016-088284(JP,A)
【文献】特開2014-061602(JP,A)
【文献】特開2005-178478(JP,A)
【文献】特開2018-178103(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106079128(CN,A)
【文献】国際公開第2018/158418(WO,A1)
【文献】特開平03-220003(JP,A)
【文献】特開昭62-143948(JP,A)
【文献】特開2016-089051(JP,A)
【文献】特開2016-003308(JP,A)
【文献】特開昭52-135350(JP,A)
【文献】国際公開第2018/122688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 11/00
B60C 11/13
C08L 9/00
C08L 9/06
C08L 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が25質量%以上、スチレンブタジエンゴムの含有量が35質量%以上であり、
シリカを含み、
tanδの温度分布曲線におけるピーク位置のtanδ及び半値幅が下記式(1)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
0.025≦ピーク位置のtanδ/半値幅
≦0.080 (1)
【請求項2】
下記式を満たす請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
0.025≦ピーク位置のtanδ/半値幅≦
0.060
【請求項3】
下記式を満たす請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
0.027≦ピーク位置のtanδ/半値幅≦
0.060
【請求項4】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が60質量部以上である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
ファルネセン系ポリマーを含む請求項1~
4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
クマロンインデン樹脂を含む請求項1~
5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
ファルネセン系ポリマー及びクマロンインデン樹脂を含む請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が10~30質量部である請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリマー成分1、及びポリマー成分2を含み、
前記イソプレン系ゴムと前記ポリマー成分1との溶解度パラメーターの差が1.5以下であり、
前記スチレンブタジエンゴムと前記ポリマー成分2との溶解度パラメーターの差が1.5以下である請求項1~8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【請求項11】
トレッドの総厚みの最大値が5mm以上である請求項
10記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
トレッドの主溝深さが8.0~13.0mmである請求項
10又は11記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
トレッドの主溝幅が6~16mmである請求項
10~12のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
主溝底部におけるサブトレッド総厚みの最大値が0.5~2.0mmである請求項
10~13のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤに要求される重要な性能として、ウェットグリップ性能、低燃費性等があり、これらを両立することが望まれている。例えば、ウェットグリップ性能を向上する場合、フィラーの増量等の手法が従来から提案されているが、増量により低燃費性が悪くなる傾向があり、一般にウェットグリップ性能、低燃費性の両立は難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記課題を解決し、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が顕著に改善されたタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、tanδの温度分布曲線におけるピーク位置のtanδ及び半値幅が下記式(1)を満たすタイヤ用ゴム組成物に関する。
ピーク位置のtanδ/半値幅≧0.025 (1)
【0005】
前記ゴム組成物は、下記式を満たすことが好ましい。
0.025≦ピーク位置のtanδ/半値幅≦0.100
【0006】
前記ゴム組成物は、下記式を満たすことが好ましい。
0.027≦ピーク位置のtanδ/半値幅≦0.080
【0007】
イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むことが好ましい。
ファルネセン系ポリマーを含むことが好ましい。
クマロンインデン樹脂を含むことが好ましい。
【0008】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
前記タイヤは、トレッドの総厚みの最大値が5mm以上であることが好ましい。
前記タイヤは、トレッドの主溝深さが8.0~13.0mmであることが好ましい。
【0009】
前記タイヤは、トレッドの主溝幅が6~16mmであることが好ましい。
前記タイヤは、主溝底部におけるサブトレッド総厚みの最大値が0.5~2.0mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、tanδの温度分布曲線におけるピーク位置のtanδ及び半値幅が前記式(1)を満たすタイヤ用ゴム組成物であるので、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が顕著に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】タイヤ2のトレッド4の近辺が示された拡大断面図である。
【
図3】ゴム組成物のtanδの温度分布曲線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)は、tanδの温度分布曲線におけるピーク位置のtanδ及び半値幅が下記式(1)を満たす。
ピーク位置のtanδ/半値幅≧0.025 (1)
「ピーク位置のtanδ(tanδの温度分布曲線における最大tanδ値)」/「半値幅(該最大tanδ値の1/2のtanδ値になる高温側の温度-該最大tanδ値の1/2のtanδ値になる低温側の温度(FWHM))」(単位:1/℃)が下限以上であると、良好なウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が得られる傾向がある。ピーク位置のtanδ/半値幅≧0.027が好ましく、tanδ/半値幅≧0.029がより好ましく、tanδ/半値幅≧0.030が更に好ましい。上限は特に限定されないが、ピーク位置のtanδ/半値幅≦0.100が好ましく、ピーク位置のtanδ/半値幅≦0.080がより好ましく、ピーク位置のtanδ/半値幅≦0.060が更に好ましい。
【0013】
該ゴム組成物で前述の効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下の作用効果により奏するものと推察される。
tanδの温度分布曲線のピーク位置のtanδ/tanδの温度分布曲線の半値幅が式(1)を満たす場合、ピーク位置のtanδが比較的高い、tanδの温度分布曲線の波形が比較的シャープになる、等の物性を有しているため、高いtanピークによりウェットグリップ性能が向上する、シャープな波形によりウェットグリップ性能、低燃費性が改善される、等の作用効果が得られると推察される。従って、前記ゴム組成物では、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が顕著に改善されるものと推察される。
【0014】
このように、本発明は、式(1)「ピーク位置のtanδ/半値幅≧0.025」を満たすタイヤ用ゴム組成物の構成にすることにより、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能の改善という課題(目的)を解決するものである。すなわち、前記式(1)は課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能の改善であり、そのための解決手段として前記式(1)を満たすような構成にしたものである。
【0015】
式(1)を満たすゴム組成物の作製には、tanδを変化させることができる種々の手法が使用できる。例えば、前記式(1)を満足させる手法として、(a)ポリマー成分としてファルネセン系ポリマー等の液状ポリマーを適量配合する方法、(b)ポリマー成分としてクマロンインデン樹脂等の固体ポリマーを適量配合する方法、(c)イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム等の異種のゴム成分をそれぞれ適量配合する方法、(d)ゴム成分とポリマーとの混合物を予め製造する方法、(e)SP値が同一又は近い材料同士を混合した混合物を予め製造する方法、等を単独又は適宜組み合わせる手法が挙げられる。
【0016】
なかでも、複数のゴム成分、複数のポリマー成分を使用し、互いにSP値が同一又は近似するゴム成分とポリマー成分とを予め混合して複数の混合物を製造した後、複数の混合物を必要に応じて他の材料と混合する方法が好適に使用できる。この場合、各混合物中の材料の馴染みがそれぞれ良好になり、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が顕著に改善されるものと推察される。
【0017】
前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)は、tanδの温度分布曲線における前記ピーク位置のtanδが下記式(2)を満たすことが好ましい。
ピーク位置のtanδ≧0.80 (2)
ピーク位置のtanδが下限以上であると、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。ピーク位置のtanδ≧1.00がより好ましく、ピーク位置のtanδ≧1.05が更に好ましく、ピーク位置のtanδ≧1.10が特に好ましい。上限は特に限定されず、tanδは大きいほど望ましい。
【0018】
前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)は、tanδの温度分布曲線における前記半値幅(℃)が下記式(3)を満たすことが好ましい。
半値幅≦50℃ (3)
半値幅が上限以下であると、良好な低燃費性が得られる傾向がある。半値幅≦48℃がより好ましく、半値幅≦46℃が更に好ましく、半値幅≦44℃が特に好ましい。下限は特に限定されず、半値幅は小さいほど望ましい。
【0019】
前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)は、温度分布曲線におけるtanδのピーク温度(℃)が下記式(4)を満たすことが好ましい。
-30℃≦tanδのピーク温度≦10℃ (4)
上記範囲内であると、良好なウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が得られる傾向がある。-25℃≦tanδのピーク温度≦5℃がより好ましく、-20℃≦tanδのピーク温度≦0℃が更に好ましい。
【0020】
前記式(2)、(3)、(4)を満たすゴム組成物は、例えば、式(1)を満たすための手法と同様の手法等を用いることで作製可能である。
【0021】
なお、tanδの温度分布曲線は、複数のピークトップが存在してもよく、その場合、少なくとも1つのピーク(曲線)について、該ピーク位置のtanδ/該ピークを含む曲線の半値幅が上記範囲内となればよい。また、少なくとも1つのピーク(曲線)について、該ピーク位置のtanδ、該ピークを含む曲線の半値幅、tanδのピーク温度が上記範囲内であることが好適である。
【0022】
ここで、tanδの温度分散カーブは、後述の実施例の方法で測定可能であり、得られた曲線を用いて、前記ピーク位置のtanδ、半値幅、tanδのピーク温度を測定できる。
【0023】
ゴム成分としては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ウェットグリップ性能、低燃費性の観点から、イソプレン系ゴム、BR、SBRが好ましく、イソプレン系ゴム、SBRがより好ましい。
【0024】
前記ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量(合計含有量)は、好ましく5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは25質量%以上である。下限以上にすることで、良好な低燃費性が得られる傾向がある。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。上限以下にすることで、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が顕著に改善される傾向がある。
【0025】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上である。下限以上にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。上限以下にすることで、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が顕著に改善される傾向がある。
【0027】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。
【0028】
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0029】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
【0030】
変性SBRとして、例えば、下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたSBRを好適に使用できる。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)又はこれらの誘導体を表す。R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R
4及びR
5は結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
【0031】
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性SBRとしては、なかでも、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR(特開2010-111753号公報に記載の変性SBR等)が好適に用いられる。
【0032】
R1、R2及びR3としてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R4及びR5としてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R4及びR5が結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0033】
上記変性剤の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性SBRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
【0035】
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
【0036】
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
【0037】
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、
【0038】
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。なかでも、アルコキシシランにより変性された変性SBRが好ましい。
なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
【0039】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。なお、SBRは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
前記ゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。該含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好なウェットグリップ性能、低燃費性が得られる傾向がある。
【0041】
カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FT及びMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPC及びCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイトなどをあげることができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
良好なウェットグリップ性能、低燃費性が得られるという理由から、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上であり、また、好ましくは200m2/g以下、より好ましくは150m2/g以下である。同様の理由から、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは80ml/100g以上であり、また、好ましくは200ml/100g以下、より好ましくは150ml/100g以下である。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、ASTM D4820-93に従って測定され、DBP吸収量は、ASTM D2414-93に従って測定される。
【0043】
カーボンブラックとしては特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記ゴム組成物は、シリカを含むことが好ましい。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0045】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。下限以上にすることで、良好なウェットグリップ性能、低燃費性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
【0046】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは40m2/g以上、より好ましくは70m2/g以上、更に好ましくは110m2/g以上である。下限以上にすることで、良好なウェットグリップ性能、低燃費性が得られる傾向がある。また、シリカのN2SAは、好ましくは220m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0047】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0048】
前記ゴム組成物は、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0049】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0050】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。3質量部以上であると、添加による効果が得られる傾向がある。また、上記含有量は、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。25質量部以下であると、配合量に見合った効果が得られ、良好な混練時の加工性が得られる傾向がある。
【0051】
フィラー(カーボンブラック、シリカ等)の合計含有量は、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が顕著に改善されるという点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30~120質量部、より好ましくは40~100質量部、更に好ましくは50~80質量部、特に好ましくは50~70質量部である。
【0052】
前記ゴム組成物は、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能の観点から、液状ポリマー、固体ポリマー等のポリマー成分(樹脂成分)を含むことが好ましい。
【0053】
液状ポリマーとは、常温(25℃)で液体状態の重合体であり、固体ポリマーとは、常温(25℃)で固体状態の重合体である。液状ポリマー、固体ポリマーとしては、ファルネセン系ポリマー、液状ジエン系重合体、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。なかでも、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能の観点から、ファルネセン系ポリマー、クマロンインデン樹脂等を好適に使用できる。
【0054】
ファルネセン系ポリマーとは、ファルネセンを重合することで得られる重合体であり、ファルネセンに基づく構成単位を有する。ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などの異性体が存在するが、以下の構造を有する(E)-β-ファルネセンが好ましい。
【化2】
【0055】
ファルネセン系ポリマーは、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)でも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)でもよい。
【0056】
ビニルモノマーとしては、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレンなどの芳香族ビニル化合物や、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ブタジエンが好ましい。すなわち、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体としては、ファルネセンとブタジエンとの共重合体(ファルネセン-ブタジエン共重合体)が好ましい。
【0057】
ファルネセン系ポリマーとして、液状ファルネセン系ポリマーを好適に使用できる。液状ファルネセン系ポリマーとは、常温(25℃)で液体のファルネセン系ポリマーであり、重量平均分子量(Mw)が3000~30万のものを好適に使用できる。液状ファルネセン系ポリマーのMwは、好ましくは8000以上、より好ましくは10000以上であり、また、好ましくは10万以下、より好ましくは6万以下、更に好ましくは5万以下である。
【0058】
ファルネセン系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-100℃以上、より好ましくは-78℃以上であり、また、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-30℃以下、更に好ましくは-54℃以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、Tgは、JIS-K7121:1987に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
【0059】
ファルネセン系ポリマーの溶融粘度は、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.7Pa・s以上であり、また好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以下、更に好ましくは13Pa・s以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、溶融粘度は、ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABS.INC.製)を用いて、38℃で測定した値である。
【0060】
ファルネセン-ビニルモノマー共重合体において、ファルネセンとビニルモノマーとの質量基準の共重合比(ファルネセン/ビニルモノマー)は、40/60~90/10が好ましい。
【0061】
ファルネセン系ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、更に好ましくは7.0質量部以上、特に好ましくは7.5質量部、最も好ましくは8.5質量部以上であり、また、好ましくは50.0質量部以下、より好ましくは30.0質量部以下、更に好ましくは20.0質量部以下、特に好ましくは14.0質量部以下、最も好ましくは12.0質量部以下、より最も好ましくは10.0質量部以下である。上記範囲内であると、良好なウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が得られる傾向がある。
【0062】
ファルネセン系ポリマーとしては、例えば、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0063】
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×103~2.0×105であることが好ましく、3.0×103~1.5×104であることがより好ましい。
なお、本明細書において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0064】
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。
【0065】
液状ポリマーの含有量(液状ファルネセン系ポリマー、液状ジエン系重合体等の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上、特に好ましくは7.5質量部、最も好ましくは8.5質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは14.0質量部以下、最も好ましくは12.0質量部以下、より最も好ましくは10.0質量部以下である。上記範囲内であると、良好なウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が得られる傾向がある。
【0066】
クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0067】
クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上、特に好ましくは5.0質量部以上、最も好ましくは5.5質量部以下であり、また、好ましくは50.0質量部以下、より好ましくは30.0質量部以下、更に好ましくは20.0質量部以下、特に好ましくは10.0質量部以下、最も好ましくは9.0質量部以下、より最も好ましくは7.5質量部以下である。上記範囲内であると、良好なウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が得られる傾向がある。
【0068】
クマロンインデン樹脂の水酸基価(OH価)は、好ましくは15mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上である。また、該OH価は、好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下である。
なお、OH価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0069】
クマロンインデン樹脂の軟化点は、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。30℃以上であると、所望のウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記軟化点は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下がより好ましい。160℃以下であると、樹脂の分散性が良好となり、ウェットグリップ性能、低燃費性が改善する傾向がある。
なお、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0070】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
【0071】
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
【0072】
なかでも、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましい。
【0073】
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。
ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂及びそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0074】
ポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。
テルペンフェノールとしては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びホルマリンを縮合させた樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
【0075】
p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂としては、p-t-ブチルフェノールとアセチレンとを縮合反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0076】
アクリル系樹脂としては特に限定されないが、不純物が少なく、分子量分布がシャープな樹脂が得られるという点から、無溶剤型アクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0077】
無溶剤型アクリル系樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0078】
上記アクリル系樹脂は、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないことが好ましい。また、上記アクリル系樹脂は、連続重合により得られる組成分布や分子量分布が比較的狭いものが好ましい。
【0079】
上述のように、上記アクリル系樹脂としては、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないもの、すなわち、純度が高いものが好ましい。上記アクリル系樹脂の純度(該樹脂中に含まれる樹脂の割合)は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。
【0080】
上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
【0081】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
【0082】
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良い。
また、上記アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよい。
【0083】
固体ポリマーの含有量(固体クマロンインデン樹脂等の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上、特に好ましくは5.0質量部以上、最も好ましくは5.5質量部以下であり、また、好ましくは50.0質量部以下、より好ましくは30.0質量部以下、更に好ましくは20.0質量部以下、特に好ましくは10.0質量部以下、最も好ましくは9.0質量部以下、より最も好ましくは7.5質量部以下である。上記範囲内であると、良好なウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が得られる傾向がある。
【0084】
液状ポリマー、固体ポリマー等のポリマー成分としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0085】
前記ゴム組成物は、オイルを含むことが好ましい。
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、ウェットグリップ性能等の観点から、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。低燃費性の観点から、上限は、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。
なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0086】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、ナフテン系プロセスオイルが好ましい。
【0087】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0088】
前記ゴム組成物は、アミド化合物を含有することが好ましい。
ゴム成分100質量部に対するアミド化合物の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が顕著に改善される傾向がある。なお、本明細書において、アミド化合物として、アミド化合物以外に脂肪酸金属塩を含む混合物を用いる場合、アミド化合物の含有量は、該脂肪酸金属塩も含む量を意味する。
【0089】
アミド化合物としては、特に限定されないが、脂肪酸アミド、脂肪酸アミドエステルが挙げられる。アミド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、脂肪酸アミドが好ましく、脂肪酸アミドと脂肪酸アミドエステルの混合物がより好ましい。
【0090】
脂肪酸アミドは、飽和脂肪酸アミドでも不飽和脂肪酸アミドでもよい。飽和脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドなどが挙げられ、不飽和脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。なかでも、不飽和脂肪酸アミドが好ましく、オレイン酸アミドがより好ましい。
【0091】
脂肪酸アミドエステルは、飽和脂肪酸アミドエステルでも不飽和脂肪酸アミドエステルでもよい。飽和脂肪酸アミドエステルとしては、ステアリン酸アミドエステル、ベヘニン酸アミドエステルなどが挙げられ、不飽和脂肪酸アミドエステルとしては、オレイン酸アミドエステル、エルカ酸アミドエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、不飽和脂肪酸アミドエステルが好ましく、オレイン酸アミドエステルがより好ましい。
【0092】
アミド化合物として、アミド化合物及び脂肪酸金属塩の混合物も好適に使用できる。
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ニッケル、モリブデンなどが挙げられる。なかでも、カルシウム、亜鉛などのアルカリ土類金属が好ましく、カルシウムがより好ましい。
【0093】
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。飽和脂肪酸としては、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などが挙げられ、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、エライジン酸などが挙げられる。なかでも、飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。また、不飽和脂肪酸としてはオレイン酸が好ましい。
【0094】
アミド化合物としては、例えば、日油(株)、ストラクトール社、ランクセス社等の製品を使用できる。
【0095】
前記ゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。
ワックスの含有量は、氷上制動性能、破壊強度の総合性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~20質量部、より好ましくは1.0~10質量部である。
【0096】
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0097】
なお、ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0098】
前記ゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤の含有量は、氷上制動性能、破壊強度の総合性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1~10質量部以上、より好ましくは2~7質量部以上である。
【0099】
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。
【0100】
なお、老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0101】
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、氷上制動性能、破壊強度の総合性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10.0質量部、より好ましくは1.0~5.0質量部である。
【0102】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0103】
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0104】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0105】
前記ゴム組成物は、硫黄等の加硫剤を含むことが好ましい。
硫黄の含有量は、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10.0質量部、より好ましくは0.5~5.0質量部、更に好ましく0.7~3.0質量部である。
【0106】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
なお、硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0108】
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤の含有量は、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3~7.0質量部、より好ましくは1.0~5.0、更に好ましくは1.5~4.5質量部である。
【0109】
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、氷上制動性能、破壊強度の総合性能の観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0110】
前記ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0111】
なかでも、前記ゴム組成物は、ゴム成分とポリマー成分1とを含む混合物、及びフィラーを混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られた混練物、及び加硫剤を混練する仕上げ練り工程と、を含む製造方法により作製することが好ましい。
【0112】
ベース練り工程に使用される混合物は、少なくともゴム成分とポリマー成分とを混練する工程により作製できる。混練方法としては特に限定されず、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどの公知の(密閉式)混練機を用いて混合すればよい。なお、以下に述べる練り工程でも同様の混練方法を使用できる。
【0113】
混合物を作製する混練工程における混練条件は、混練機の種類、回転数等に応じて適宜選択すればよいが、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1~30分である。
【0114】
複数のゴム成分、複数のポリマー成分を用いる場合、溶解度パラメーター(SP値)の差が無い又は小さいゴム成分とポリマー成分と選択し、これらを含む混合物を複数作製することが好ましい(SP値の差が無い又は小さいゴム成分1とポリマー成分1とを含む混合物1、SP値の差が無い又は小さいゴム成分2とポリマー成分2とを含む混合物2等)。例えば、各混合物におけるゴム成分とポリマー成分との溶解度パラメーター(SP値)の差は小さいほど好適であり、1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.8以下であることが更に好ましく、0.4以下であることが特に好ましく、0.0(ゼロ)であることが最も好ましい。この場合、ゴム成分とポリマー成分の馴染みが良好になり、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が改善される傾向がある。一方、該SP値の差の下限値としては、特に限定されず、小さければ小さいほど好ましい。
【0115】
なお、ゴム成分、ポリマー成分のSP値は、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味する。Hoy法とは、例えば、K.L.Hoy “Table of Solubility Parameters”,Solvent and Coatings Materials Reserch and Development Department,Union Carbites Corp.(1985)に記載された計算方法である。
【0116】
例えば、ゴム成分1がNR(SP値8.1)、ポリマー成分1がファルネセン系ポリマー(SP値8.1)の混合物1、ゴム成分2がSBR(SP値8.5)、ポリマー成分2がクマロンインデン樹脂(SP値9.1)の混合物2を予め作製し、次いで、混合物1、混合物2、フィラー、必要に応じて他の成分をベース練り工程で混練すると、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能に優れたゴム組成物を提供できる。
【0117】
ベース練り工程では、得られた各混合物、及びフィラーを混練する。
ベース練り工程の混練条件は、混練機の種類、回転数等に応じて適宜選択すればよいが、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1~30分である。
【0118】
ベース練り工程では、上記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、オイル等の軟化剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、各種老化防止剤、ワックスなどを必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
【0119】
仕上げ練り工程では、前記ベース練り工程で得られた混練物、及び加硫剤が混練される。仕上げ練り工程の混練条件は、混練機の種類、回転数等に応じて適宜選択すればよく、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。混練時間は、適宜設定すれば良い。
【0120】
仕上げ練り工程では、上記成分以外にも、加硫促進剤、酸化亜鉛等を必要に応じて適宜添加、混練してもよい。
【0121】
仕上げ練り工程で未加硫ゴム組成物を作製した後、仕上げ練り工程で得られた未加硫ゴム組成物を加硫する加硫工程が通常実施される。加硫工程は、公知の加硫手段を適用することで実施できる。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。加硫時間は、適宜設定すれば良い。
【0122】
前記ゴム組成物は、トレッド(キャップトレッド)に好適に使用できるが、他の部材、例えば、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層に用いてもよい。
【0123】
前記空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0124】
前記空気入りタイヤは、例えば、乗用車用タイヤ、トラック・バスなどの重荷重用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等、種々のタイヤに好適に使用できる。
【0125】
前記空気入りタイヤは、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能の観点から、トレッドの総厚みの最大値(以下、「トレッドの最大総厚み」とも称する)が5.0mm以上であることが好ましい。トレッドの最大総厚みは、8.0mm以上がより好ましく、9.0mm以上が更に好ましく、10.0mm以上が特に好ましい。上限は、17.0mm以下が好ましく、14.5mm以下がより好ましく、13.0mm以下が更に好ましい。
【0126】
図1は、タイヤ2のトレッド4の近辺が示された拡大断面図の一例である。タイヤ2において、トレッド4の最大総厚みは、タイヤの半径方向の最外側に配されたコード層(バンド層、ベルト層等)よりもタイヤの半径方向の外側に配されたすべてのゴム層の合計厚みであり、
図1のトレッド4(ベース層28、キャップ層30)、バンド18、ベルト16、カーカス14、インナーライナー20を備えたタイヤ2では、バンド18のタイヤの半径方向の外側に配されたベース層28及びキャップ層30からなるトレッド4の総厚みの最大値である。
【0127】
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、符号Pは、トレッド面24上の点である。両矢印Tは、点Pにおけるトレッド4の総厚みである。総厚みTは、点Pにおけるキャップ層30及びベース層28の厚みの合計である。この総厚みTは、点Pにおけるトレッド面24の法線に沿って計測される。なお、
図1では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド4の例が示されているが、単層構造トレッド4の場合、トレッドの総厚みTはその点Pにおける単層構造トレッドの厚み、3層以上の構造を有するトレッドの場合、トレッドの総厚みTはその点Pにおける3層以上の層の厚みの合計であり、その場合の点Pにおける総厚みTもその点Pにおけるトレッド面24の法線に沿って計測される。
【0128】
そして、
図1において、トレッド4の最大総厚みは、トレッド面24上の各点における各トレッドの総厚み(
図1では、キャップ層30及びベース層28の厚みの合計)のうち、最大寸法であり、これが5.0mm以下であることが好ましい。
【0129】
図1のタイヤ2は、複数の溝26を有し、そのうちの溝42が主溝である。本明細書において、主溝とは、タイヤの周方向に沿って設けられた溝のうち、最も幅(タイヤ幅方向の幅)が大きい溝である。最も幅が大きい溝が2本以上ある場合は、そのうちの、タイヤ幅方向中央により近い溝を意味する。該当する主溝が2本ある場合、すなわち、主溝がタイヤ幅方向中央から同じ間隔で2本ある場合は、深い方の溝を主溝とする。タイヤ2において、主溝42の深さ(主溝深さ)は、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能の観点から、好ましくは13.0mm以下、より好ましくは12.0mm以下、更に好ましくは11.5mm以下であり、また、好ましくは3.5mm以上、より好ましくは6.0mm以上、更に好ましくは8.0mm以上である。
【0130】
なお、本明細書において、主溝深さとは、トレッドの幅方向で水平になる面(接地面)を基準として、接地面(接地面を延長した面)上の主溝の幅の1/2の位置から、タイヤ径方向に垂線を下したとき、接地面(接地面を延長した面)から最深の溝底までの距離を意味する。
図2では、主溝深さは、Dの長さを意味する。
【0131】
タイヤ2は、主溝42の幅(主溝幅:タイヤ幅方向の主溝の幅)が、ウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能の観点から、好ましくは16mm以下、より好ましくは14mm以下、更に好ましくは12mm以下であり、好ましくは6mm以上、より好ましくは7mm以上、更に好ましくは8mm以上である。主溝の幅は、主溝の最大幅を意味し、例えば、
図2で示される主溝幅の幅である。
【0132】
タイヤ2は、主溝42の底部(主溝底部)におけるサブトレッド総厚みの最大値(以下「サブトレッドの最大総厚み」とも称する)が0.5~2.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.6~1.8mm、更に好ましくは0.7~1.6mmである。なお、本明細書において、主溝底部のサブトレッド総厚みとは、主溝42の底部の溝底面42aからタイヤの半径方向の最外側に配されたコード層(バンド層、ベルト層等)までのトレッドの総厚みであり、
図1のタイヤ2では、溝底面42aからバンド18までのベース層28及びキャップ層30からなるトレッド4の総厚みの最大値である。
【0133】
図1において、符号Psは、溝底面42a上の点である。両矢印Tsは、点Psにおける主溝底部のトレッド4の総厚み(主溝底部におけるサブトレッド総厚み)である。総厚みTs(主溝底部におけるサブトレッド総厚み)は、点Psにおけるキャップ層30及びベース層28の厚みの合計である。この総厚みTsは、点Psにおける溝底面42aの法線に沿って計測される。なお、
図1では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド4の例が示されているが、単層構造トレッド4の場合、主溝底部におけるサブトレッド総厚みTsはその点Psにおける単層構造トレッドの厚み、3層以上の構造を有するトレッドの場合、主溝底部のサブトレッド総厚みTsはその点Psにおける3層以上の層の厚みの合計であり、その場合の点Psにおける主溝底部のサブトレッド総厚みTsもその点Psにおける溝底面42aの法線に沿って計測される。
【実施例】
【0134】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0135】
<合成例1(共役ジエン系重合体の合成)>
予め、0.18ミリモルのバーサチック酸ネオジムを含有するシクロヘキサン溶液、3.6ミリモルのメチルアルモキサンを含有するトルエン溶液、6.7ミリモルの水素化ジイソブチルアルミニウムを含有するトルエン溶液、及び、0.36ミリモルのトリメチルシリルアイオダイドを含有するトルエン溶液と1,3-ブタジエン0.90ミリモルを30℃で60分間反応熟成させて得られる触媒組成物(ヨウ素原子/ランタノイド含有化合物(モル比)=2.0)を得た。続いて、シクロヘキサン2.4kg、1,3-ブタジエン300gを窒素置換された5Lオートクレーブに投入した。そして、上記触媒組成物を上記オートクレーブに投入し、30℃で2時間、重合反応させて、重合体溶液を得た。なお、投入した1,3-ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
【0136】
<製造例1(変性共役ジエン系重合体の合成)>
変性共役ジエン系重合体(以下、「変性重合体」とも称する。)を得るために、合成例1の共役ジエン系重合体の重合体溶液に次の処理を行った。温度30℃に保持した重合体溶液に、1.71ミリモルの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含有するトルエン溶液を添加し、30分間反応させて反応溶液を得た。それから、この反応溶液に1.71ミリモルの3-アミノプロピルトリエトキシシランを含有するトルエン溶液を添加し、30分間撹拌した。続いて、この反応溶液に1.28ミリモルのテトライソプロピルチタネートを含有するトルエン溶液を添加し、30分間撹拌した。その後、重合反応を停止させるため、2,4-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを1.5g含むメタノール溶液を添加して、この溶液を変性重合体溶液とした。収量は2.5kgであった。続いて、この変性重合体溶液に、水酸化ナトリウムによりpH10に調整した水溶液20Lを添加し、110℃で2時間、脱溶媒とともに縮合反応させた。その後、110℃のロールで乾燥して、得られた乾燥物を変性重合体(変性BR)とした。
【0137】
得られた変性重合体(変性BR)について、シス-1,4-結合量が99.2質量%、1,2-ビニル結合量が0.21質量%、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)が46、分子量分布(Mw/Mn)が2.4、コールドフロー値が0.3mg/分、経時安定性が2、ガラス転移温度が-106℃であった。
【0138】
なお、ポリマーの各種物性値は、以下に示す測定方法によって測定した。
[シス-1,4-結合量、1,2-ビニル結合量]
シス-1,4-結合の含量、及び1,2-ビニル結合の含量は、1H-NMR分析及び13C-NMR分析により測定を行った。NMR分析には、日本電子社製の商品名「EX-270」を使用した。具体的には、1H-NMR分析としては、5.30~5.50ppm(1,4-結合)、及び4.80-5.01ppm(1,2-結合)におけるシグナル強度から、重合体中の1,4-結合と1,2-結合の比を算出した。更に、13C-NMR分析としては、27.5ppm(シス-1,4-結合)、及び32.8ppm(トランス-1,4-結合)におけるシグナル強度から、重合体中のシス-1,4-結合とトランス-1,4-結合の比を算出した。これらの算出した値の比率を算出し、シス-1,4-結合量(質量%)及び1,2-ビニル結合量(質量%)とした。
【0139】
[ムーニー粘度(ML1+4,125℃)]
JIS K 6300に準じて、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度125℃の条件で測定した。
【0140】
[分子量分布(Mw/Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(商品名;HLC-8120GPC、東ソー社製)を使用し、検知器として、示差屈折計を用いて、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した。
カラム ;商品名「GMHHXL」、(東ソー社製)2本
カラム温度 ;40℃
移動相 ;テトラヒドロフラン、流速 ;1.0ml/分
サンプル濃度;10mg/20ml
【0141】
[コールドフロー値]
圧力3.5lb/in2、温度50℃で重合体を1/4インチオリフィスに通して押し出すことにより測定した。定常状態にするため、10分間放置後、押し出し速度を測定し、その測定値を毎分のミリグラム数(mg/分)で表示した。
【0142】
[経時安定性]
90℃の恒温槽で2日間保存した後のムーニー粘度(ML1+4,125℃)を測定し、下記式により算出した値である。なお、値が小さいほど経時安定性が良好である。
式:[90℃の恒温槽で2日間保存した後のムーニー粘度(ML1+4,125℃)]-[合成直後に測定したムーニー粘度(ML1+4,125℃)]
【0143】
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度は、JIS K 7121に準じて、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、ガラス転移開始温度として求めた。
【0144】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:TSR20(SP値8.1)
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol NS612(S-SBR、SP値8.5)
変性BR:製造例1で合成したNd系変性BR
カーボンブラック:三菱化学(株)製のシーストN220(N2SA:111m2/g、DBP吸収量:115ml/100g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウラトシルVN3(N2SA172m2/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(アロマ系プロセスオイル)
クマロンインデン樹脂:日塗化学(株)製のニットレジン クマロン V-120(軟化点120℃、水酸基価30mgKOH/g、SP値9.1)
ファルネセン系ポリマー:クラレ製のL-FBR-742(液状ファルネセンブタジエン共重合体、SP値8.1)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤6C:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)(6PPD)
老化防止剤RD:川口化学工業(株)製のアンテージRD(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
アミド化合物:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミド及び脂肪酸アミドエステルの混合物、灰分割合4.5%)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:細井化学工業(株)製のHK200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
【0145】
〔実施例及び比較例〕
(混合物の製造)
各表の混合物に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、ゴム成分(NR、SBR)、ポリマー成分(クマロンインデン樹脂、ファルネセン系ポリマー)を約150℃の条件下で5分間混練りし、各混合物を得た。
【0146】
各表に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を約150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、約80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、160℃の条件下で20分間加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:215/45R17サマー、乗用車用タイヤ(トレッドの最大総厚み11.5mm、主溝深さ10.5mm、主溝幅9.0mm、主溝底部のサブトレッド総厚み1.0mm)を得た。
【0147】
得られた試験用タイヤについて下記の評価を行い、併せてウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能を示した。結果を各表に示す。なお、表1~2の基準は、それぞれ比較例1-1、2-1である。
【0148】
〔tanδの温度分布曲線〕
各試験用タイヤから切り出したトレッドゴム(加硫後)について、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用い、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.25%及び昇温速度2℃/minの条件下で、-120℃から70℃までの温度範囲で、tanδの温度分布曲線を測定した。そして、得られたtanδの温度分布曲線を基に、ピーク位置のtanδ、半値幅、ピーク位置のtanδ/半値幅を測定した。なお、
図3に、代表例として、実施例1-1、比較例1-1~1-4のtanδの温度分布曲線を示し、実施例1-1のピーク位置のtanδ、半値幅を記載した。
【0149】
〔ウェットグリップ性能〕
試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求め、基準比較例を100としたときの指数で表示した(ウェットグリップ性能指数)。指数が大きいほど、制動距離が短く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0150】
〔低燃費性(転がり抵抗)〕
転がり抵抗試験機を用い、試験タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、基準比較例を100とした時の指数で表示した。指数は大きい方が良好(低燃費性)である。
【0151】
【0152】
【0153】
表1~2から、tanδの温度分布曲線におけるピーク位置のtanδ及び半値幅が式(1)を満たし、ピーク位置のtanδが比較的大きく、かつ半値幅が比較的小さいシャープな温度分布曲線を有する実施例は、式(1)を満たさない比較例に比べ、優れたウェットグリップ性能、低燃費性の総合性能が得られた。また、表1の実施例1-1、比較例1-1、1-3、1-4から、クマロンインデン樹脂、ファルネセン系ポリマーを併用することで、前記総合性能が顕著に改善され、相乗的に改善されることも明らかとなった。
【符号の説明】
【0154】
2 空気入りタイヤ
4 トレッド
14 カーカス
16 ベルト
18 バンド
20 インナーライナー
24 トレッド面
26 溝
28 ベース層
30 キャップ層
42 主溝
42a 溝底面
P トレッド面24上の点
T トレッド4の厚み
Ps 溝底面42a上の点
Ts 主溝底部におけるサブトレッド総厚み
D 主溝深さ