IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社oneAの特許一覧

<>
  • 特許-呼吸音計測装置 図1
  • 特許-呼吸音計測装置 図2
  • 特許-呼吸音計測装置 図3
  • 特許-呼吸音計測装置 図4
  • 特許-呼吸音計測装置 図5
  • 特許-呼吸音計測装置 図6
  • 特許-呼吸音計測装置 図7
  • 特許-呼吸音計測装置 図8
  • 特許-呼吸音計測装置 図9
  • 特許-呼吸音計測装置 図10
  • 特許-呼吸音計測装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-29
(45)【発行日】2023-12-07
(54)【発明の名称】呼吸音計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20231130BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20231130BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20231130BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20231130BHJP
   H04R 1/14 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A61B7/04 A
A61B5/16 130
H04R1/00 328Z
A61B5/08
H04R1/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020018074
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021122509
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000101204
【氏名又は名称】株式会社oneA
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 文男
(72)【発明者】
【氏名】賀村 晃弥
(72)【発明者】
【氏名】大辻 拓夫
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-201946(JP,A)
【文献】特開2007-202939(JP,A)
【文献】特開2019-217233(JP,A)
【文献】特開2019-051129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
7/00-7/04
H04R 1/00
H04R 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の前頸部の皮膚に当接部を当接させて被験者の呼吸音を取得する計測部と、
被験者頸部の外周に沿って被験者の前頸部と対向する後頸部まで円弧状に延びる装着部と
前記計測部の基端部と前記装着部の基端部とを連結するヒンジ部とを備え、
前記ヒンジ部は、前記計測部と前記装着部とを周方向に回動自在に支持する回動軸部と、被験者頸部に装着された際に被験者頸部を外側から挟むように前記計測部と前記装着部を閉じる方向に向かって付勢する付勢部とを備える、呼吸音計測装置。
【請求項2】
前記当接部は、前記計測部の内表面に対して出没自在でかつ突出方向に付勢され、被験者頸部に装着された際に被験者の前頸部の形状に応じて変位しつつ前頸部に対して面で当接する、請求項1に記載の呼吸音計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の睡眠状態を計測するネックバンド式の呼吸音計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠中の鼾により周囲の人に迷惑がかかったり、鼾から無呼吸状態となり閉塞性無呼吸症候群を併発するおそれがある。そこで、被験者の睡眠状態を計測し、鼾や睡眠時無呼吸が発生している場合に、被験者の姿勢を変化させるために被験者に刺激を与えるような呼吸音計測装置が望まれている。
【0003】
特許文献1には、マイクロフォンを各患者の首の周りに取り付けて、患者の睡眠中にマイクロフォンが受信した音を記録する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-202939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ネックバンド式の呼吸音計測装置では、呼吸音の計測精度を高める観点から、被験者頸部において直接気道の呼吸音を取得するのが望ましい。また、ネックバンド式の呼吸音計測装置では、被験者の直接気道の呼吸音を取得する場合、適度な接触圧となるようにすることが望まれる。そこで、従来は、特許文献1のように、ネックバンドとして両端を被験者の両前側方まで延ばしたC字状のものが用いられている。しかしながら、このような構成のネックバンド型の呼吸音計測装置は、被験者によっては、装着時の違和感が大きい場合がある。
【0006】
例えば、一般的な男性の場合、首周りのサイズは36~47cm程度であり、一般的なサイズ外の男性もいる。そこで、ネックバンドとして数種類のサイズラインナップ(例えば、S,M,L等)を設けることが行われている。しかしながら、同じサイズ帯のネックバンドを使用する被験者の中でも首の形状や首周りの寸法は様々であり、汎用品では、被験者毎の正確なサイズ調整が難しいという問題がある。特に、睡眠時においては、被験者が違和感を覚えて快適な睡眠に支障が出る場合がある。また、被験者が就寝時に横を向いて寝る場合があり、被験者頸部の一方の側面が寝具に押さえつけられると、他方の側面が浮き上がって、正確な計測に支障が出る場合がある。
【0007】
すなわち、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被験者の装着時の違和感を緩和しつつ、被験者頸部から呼吸音を好適に取得することができるネックバンド式の呼吸音計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る睡眠状態計測装置は、被験者の前頸部の皮膚に当接部を当接させて被験者の呼吸音を取得する計測部と、被験者頸部の外周に沿って被験者の前頸部と対向する後頸部まで円弧状に延びる装着部と、前記計測部の基端部と前記装着部の基端部とを連結するヒンジ部とを備え、前記ヒンジ部は、前記計測部と前記装着部とを周方向に回動自在に支持する回動軸部と、被験者頸部に装着された際に被験者頸部を外側から挟むように前記計測部と前記装着部を閉じる方向に向かって付勢する付勢部とを備える
【0009】
本態様によると、被験者の前頸部の皮膚に当接部を当接させて呼吸音を取得するようにしているので、被験者頸部から呼吸音を好適に取得することができる。一方で、装着部の他方の端部は、前側方部と反対側の後側方部に当接させる。すなわち、装着部を被験者の前側方まで延ばさないようにしている。これにより、被験者の首の締め付け感を緩和することができる。また、当接部側が上になるように被験者が横向きに寝た場合に、寝具と被験者との間に、装着部が挟まれない状態にすることができる。これにより、装着部が寝具に押されることで当接部が被験者頸部から浮き上がるのを防ぐことができる。また、就寝中に装着部が寝具等と擦れにくくすることができる。
【0010】
さらに、計測部と装着部がヒンジ部で連結されている。これにより、一体型のネックバンドを使用する場合と比較して、頸部(首)のサイズが異なる被験者に対して好適な接触圧となるように調整することができ、装着時の違和感をできるだけ少なくすることができる。
【0011】
本発明の第2態様では、上記の第1態様において、前記当接部は、前記計測部の内表面に対して出没自在でかつ突出方向に付勢され、被験者頸部に装着された際に被験者の前頸部の形状に応じて変位しつつ前頸部に対して面で当接する、ようにしてもよい。
【0012】
これにより、被験者前頸部の皮膚への当接部の密着性が高まるとともに、被験者の装着感が向上し、被験者の肌への食い込みの痕が残りにくい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、被験者の装着時の違和感を緩和しつつ、被験者頸部から呼吸音を好適に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】呼吸音計測装置の装着状態を示す模式図
図2】呼吸音計測装置を右斜め上側から見た斜視図
図3】呼吸音計測装置を上から見た平面図
図4】呼吸音計測装置を右斜め前から見た側面図
図5図4のV-V線断面図
図6図5の計測部周辺の拡大図
図7図4のVII-VII線断面図
図8】呼吸音計測装置の装着状態を撮影した図
図9】呼吸音計測装置の外ケースを外して右斜め下側から見た側面図
図10】首の細い被験者が呼吸音計測装置を装着した例を示す模式図
図11】首の太い被験者が呼吸音計測装置を装着した例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0016】
<呼吸音計測装置の構成>
図1及び図8に示すように、呼吸音計測装置1は、被験者Pが、就寝前に、被験者頸部Pn(以下、単に頸部Pnという)に装着し、睡眠時における吸気・呼気の気流音(以下、単に呼吸音という)を計測するためのものである。具体的に、呼吸音計測装置1は、ネックバンド型の装置であり、被験者頸部の周方向に沿って装着可能に構成されている。呼吸音計測装置1は、被験者Pの睡眠状態を計測する睡眠状態計測装置の一例である。
【0017】
具体的には、図3に示すように、呼吸音計測装置1は、円弧状(例えば、略半円形状)に形成されたネックバンド型の装着部30と、呼吸音を計測するための計測部40とが、周知構造のヒンジ部60で連結された構成を有する。呼吸音計測装置1は、その中心から見て、展開状態における開放両端間の開放角度θが90度を超えるように構成される。換言すると、呼吸音計測装置1の展開状態(図5参照)における外形形状は、その外形に沿って周方向に延びる仮想円に対して270度未満となるように構成される。図3において、AXは、回動軸を示す。
【0018】
以下の説明では、被験者Pの呼吸音計測装置1の装着状態を基準として、上下方向及び左右方向を定義する。また、被験者Pの正面(胸)側を前、背中側を後と定義する。また、呼吸音計測装置1の装着状態を基準として、「被験者側」を定義するものとし、装着部30や計測部40等の説明に際して、被験者側を「内側」その反対側を「外側」として説明する場合がある。また、呼吸音計測装置1の被験者頸部Pn側の面を「呼吸音計測装置1の内面10a」または単に「内面10a」と呼ぶ。すなわち、「呼吸音計測装置1の内面10a」とは、装着部30の内面に加えて、計測部40の内面42cを含む概念とする。
【0019】
《装着部》
図3に示すように、装着部30は、頸部Pnの外周に沿うように円弧状に延びている。装着部30の一方の端部31(以下、基端部31という)は、ヒンジ部60を介して計測部40に接続される。計測部40の先端部は、呼吸音計測装置1の一方の開放端部を構成する。装着部30の他方の端部32(以下、押付部32という)は、呼吸音計測装置1の他方の開放端部を構成する。すなわち、押付部32は、装着部30と一体的に構成され、呼吸音計測装置1が頸部Pnに装着された際に被験者に押しつけられる。
【0020】
装着部30は、図3に示す被験者Pの装着状態において、後述する当接部70が被験者Pの右前頸部Pf1の皮膚に当接される場合、押付部32が被験者Pの左後頸部Pr1に押しつけられるようになっている。一方で、図8に示すように、装着部30は、被験者Pの装着状態において、当接部70が被験者Pの左前頸部Pf2の皮膚に当接される場合、押付部32が被験者Pの右後頸部Pr2に当接するようになっている。換言すると、計測部40と押付部32aとは、頸部Pnの左右中央に対して非対称に配置される。左右中央は、例えば、被験者Pの正面から見た場合におけるのどぼとけの中央位置で定義される。
【0021】
ここで、前頸部Pfは、被験者の頸部Pnの周囲において、被験者Pの両耳それぞれの中央を通る仮想平面よりも前側の面、または、頸部Pnの前後中央よりも前側の面を指すものとする。特に、当接部70の当接位置は、前頸部Pfにおける気管近傍(例えば、喉元)の皮膚であることが好ましく、当接部70の当接位置は、前頸部Pf中でも前寄りの位置に設定される。また、後頸部Prは、被験者の頸部Pnの周囲において、被験者Pの両耳それぞれの中央を通る仮想平面よりも後側の面、または、頸部Pnの前後中央よりも後側の面を指すものとする。押付部32は、後頸部Prの皮膚に押しつけられる。すなわち、押付部32は、被験者Pの耳よりも後ろの皮膚に押しつけられる。これにより、本実施形態の呼吸音計測装置1は、特許文献1に示されるような従来構成(呼吸音計測装置が、被験者Pの両耳のそれぞれより前側に開放端がくるようにC字状に構成され、その両開放端部が両耳の前側で被験者Pの皮膚に押しつけられる構成)と比較して、被験者Pの違和感(例えば、締め付け感)を緩和することができる。また、頸部の耳の内側には、上下方向に大きな血管が通っているので、耳の両側から押さえつける場合と比較して、通過する血流を阻害しにくくすることができる。このような観点からも、被験者Pの違和感(例えば、締め付け感)は、緩和される。
【0022】
装着部30は、(1)被験者Pが両手で呼吸音計測装置1の両開放端部を両側に広げて頸部Pnの後ろ側から頸部Pnに向かって装着することができ、(2)被験者Pが手を離した際に呼吸音計測装置1の内面10aの少なくとも一部が頸部Pnに密着するように頸部Pnを周方向の外側から挟むための弾性力を有し、(3)継続的な使用に耐えうる強度を有するのが好ましい。上記(1)~(3)の条件を満たしていれば、装着部30の具体的な構造及び構成材料は、特に限定されない。例えば、装着部30として板バネの周囲をエラストマー樹脂で取り巻いた弾性構造を採用したり、弾性があるポリプロピレンの樹脂を採用することができる。ただし、本開示の技術は、装着部30に板バネの構造を採用することや、エラストマー樹脂、ポリプロピレンの樹脂を用いることに限定されるものではない。
【0023】
《ヒンジ部》
ヒンジ部60は、装着部30と計測部40とを、図3の実線で示す展開位置と図3の仮想線で示す折曲位置との間で回動自在となるように支持する。
【0024】
展開位置とは、計測部40が外側に向かって最大に開かれた位置であり、両者間の接合部分では内面10aが実質的にフラットになる。すなわち、計測部40が展開位置にある場合、呼吸音計測装置1全体として円弧状体となるように構成される。展開位置では、例えば、装着部30の先端部と計測部40の基端部とが互いに当接され、装着部30と計測部40との間の角度がそれ以上外側に広がらないように係止される。
【0025】
折曲位置とは、計測部40が装着部30に対して内側に向かって折り曲げられた位置である(図2参照)。折曲位置では、例えば、計測部40の基端部が装着部30の外側の内壁に当接され、それ以上内側に曲がらないように係止される。
【0026】
展開位置と折曲位置との間の可動範囲R11は、特に限定されないが、例えば、40度程度である。40度程度の回動範囲があれば、幅広い体型の被験者Pに対応することができる。ただし、可動範囲(回動範囲)は、40度程度に限定されることはなく、例えば、可動範囲が40度未満でも40度を超えていてもよい。上記の展開位置と折曲位置との間の回動により、呼吸音計測装置1の開き具合が変わる。
【0027】
図6に示すように、ヒンジ部60は、上記回動動作の中心軸である回動軸AXを構成する回動軸部61と、計測部40を折曲位置に向かって付勢する付勢手段62とを備える。
【0028】
回動軸部61の構成は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり、内ケース42の両側壁の基端側に軸受けを設け、その軸受けに回動軸部61を回動可能に支持することで実現できる。
【0029】
付勢手段62の構成は、特に限定されないが、ここでは、ねじりコイルばねを用いた例を示している。付勢手段62は、一方の端部が収容ケース41に固定され、他方の端部が装着部30に固定される。なお、図示はしないが、ヒンジ部60として、蝶番とばねとが一体的に構成された、いわゆる蝶番ばねを用いてもよい。この場合においても、蝶番ばねは、収容ケース41及び装着部30のそれぞれに固定される。
【0030】
ここで、付勢手段62の付勢力は、圧縮コイルばね78の付勢力よりも大きくなるように構成される。このような構成にすることで、(1)被験者の体型(特に、首の大きさ)に応じた大枠の位置合わせを付勢手段62の作用により行い、(2)圧縮コイルばね78の作用により、被験者頸部Pnの呼吸音の計測場所(皮膚表面)に沿うように当接部70の当接面70bの角度を調節する、という動作をより好適に実現することができる。ここで、計測部40の基端側における収容空間Qに、ヒンジ部60周りからの異物の侵入を防ぐため隔壁44bを設けるようにしてもよい。このように、収容空間Q側に隔壁44bを設けることで、ヒンジ部60の可動性を高めつつ、防塵効果を得ることができる。なお、図5に示すように、後述する隔壁44a及び隔壁44bが一体的に構成された隔壁44を設けてもよい。このような構成にすることにより、構成部材を削減することができ、かつ、組み立て作業の作業性を高めることができる。図9では、隔壁44に右上がりのハッチングを付している。
【0031】
《計測部》
-収容ケース-
図5及び図6に示すように、計測部40は、内ケース42と外ケース43とを嵌め合わせることで内側に収容空間Qが形成された収容ケース41を有する。
【0032】
内ケース42は、外側に凸となるように丸みを帯びて形成された底板と、収容空間Qを取り囲むように底板の上下端及び先端から外側に向かって立ちあがる側板とを備える。内ケース42の底板には、先端側における上下の略中央位置に円形状の第1開口部42aが形成され、周方向及び上下の略中央位置に矩形状の第2開口部42bが形成される。
【0033】
第1開口部42aには、当接部70が収容ケース41の内側から挿通される。そして、当接部70は、基端部に形成されたフランジ部70c(図6参照)により収容ケース41に抜け止めされる。第2開口部42bは、例えば、呼吸音計測装置1が頸部Pnに装着されたか否かを検出するために光学式の人検知センサ59を用いる場合に、測定光を通過させるための測定窓として用いられる。なお、第2開口部42bは、必ずしも必要ではなく、例えば、人検知センサ59を光学式以外の方式にする場合や人検知センサ59自体を設けない場合には不要である。
【0034】
図9に示すように、内ケース42の両側壁の基端部(装着部30側の端部)には、それぞれ、後述するヒンジ部60の回動軸部61を回動可能に支持するための軸受け42eが設けられる。軸受け42eの構成は、特に限定されないが、例えば、内ケース42の両側壁の基端部に、回動軸部61の外形よりも若干大きい軸挿通孔が形成される。
【0035】
図2図4に示すように、収容ケース41の外ケース43は、内ケース42の底板と対向するように配置された上板と、前述の収容空間Qを取り囲むように上板の上下端及び先端から内側に向かって立ちあがる側板とを備える。外ケース43の上板の基端側は、ヒンジ部の一部を覆うように形成されている。収容ケース41は、内ケース42と外ケース43の位置合わせをした後に、内ケース42の底板に形成されたねじ穴45(図6参照)に挿入されたねじ46(図6参照)によりねじ止め固定される。
【0036】
図6に示すように、収容ケース41の収容空間Qには、マイクロフォン74が取り付けられた第1基板73と、マイクロフォン74で取得された呼吸音を処理する電子部品等が実装された第2基板50と、呼吸音計測装置1の各構成要素に電源を供給するためのバッテリ51とが収容される。第1基板73と第2基板50との間は、フレキシブルケーブル76で接続される。なお、収容ケース41の形成材料は、装着部30と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0037】
なお、図示はしないが、計測部40の側板には、外側に向かって開口する挿入口が設けられており、挿入口を介して、コネクタ55に通信用/充電用のケーブルが差し込めるようになっている。
【0038】
-当接部-
図2及び図6に示すように、呼吸音計測装置1は、内ケース42の内面42cから内側(被験者Pの頸部Pn側)に向かって突出するように設けられた当接部70を備える。当接部70の先端には、被験者の呼吸音を導入するための導音口70aが形成され、その導音口70aを囲むようにリング状の当接面70bが形成されている。当接面70bは、呼吸音計測装置1が装着された際に、頸部Pnに当接する。このように、突出部70に当接面71aを設けることで頸部Pnとの接触面積を広くすることができ、呼吸音が外に漏れるのを防ぎ、集音効果を高めることができる。なお、当接部70の内側に中空空間70d(図7参照)を設けて、強度を維持しつつ、軽量化を図るようにしてもよい。
【0039】
図6に示すように、当接部70の基端面は、中央部分が略矩形状に凹んでいて、矩形状の第1基板73が嵌め込まれている。そして、第1基板73の内表面の略中央には、マイクロフォン74が取り付けられている。
【0040】
なお、本開示において、マイクロフォンとは、音波を電気信号に変換する機器や装置や回路、及び、そのような機器等に用いるMEMSマイクロフォンのような音センサ等を広く含む概念で使用するものとし、その具体的な構成は特に限定されない。一方で、本実施形態では、説明の便宜上、「マイクロフォン」との用語を、MEMSマイクロフォンのような呼吸音を取得するための音センサについて用いるものとする。ただし、説明の便宜上そのようにしているのであって、「マイクロフォン」との用語の意味を限定することを意図するものではない。
【0041】
当接部70を構成する材料は、後述する第2導音空間RS2の円筒形状を維持するのに十分な硬度(所定の硬度)があればよく、特に限定されない。例えば、当接部70を構成する材料として、プラスティック樹脂(例えば、ポリオキシメチレン)を用いることができる。また、例えば、硬度50以上のポリプロピレンやシリコン樹脂を用いてもよい。
【0042】
図6に示すように、当接部70には、導音口70aから導入された呼吸音をマイクロフォン74に導くための導音空間RSが設けられている。導音空間RSは、第1導音空間RS1、第2導音空間RS2及び第3導音空間RS3で構成される。第1導音空間RS1は、第1基板73のマイクロフォン74と対応する位置に表裏方向に貫通形成された導音孔73aで形成される空間である。導音口70aには、マイクロフォン74に向かって内径が次第に狭まるテーパー状の集音部70e(図2参照)が形成され、この集音部70eの内側の空間を第3導音空間RS3(図6参照)と呼ぶ。そして、第1導音空間RS1と第3導音空間RS3との間が、円筒状の第2導音空間RS2で接続されている。第2導音空間RS2の内壁面に当接するように円筒状の遮音材77を設けてもよい。このような遮音材77を設けることで、呼吸音計測装置1に外部から与えられた衝撃等により生じた振動が伝搬し、導音空間RS内に固体伝搬音が発生するのを抑えることができる。呼吸音計測装置1の振動は、例えば、被験者Pが就寝中に体位変動をした場合等に呼吸音計測装置1が寝具や被験者の手などでこすれることにより生じる。
【0043】
遮音材77を形成する材料は、特に限定されないが、装着部30からの固体振動を吸収しつつ、頸部Pnから取得されて第2導音空間RS2を通過する呼吸音の音波は吸収しにくいような素材で形成されるのが好ましい。遮音材77には、例えば、シリコンゴムのような弾性材を好適に使用できる。
【0044】
当接部70の基端部には、第1基板73を覆うカバー75が取り付けられる。また、カバー75と外ケース43の天板との間には、圧縮コイルばね78が設けられる。呼吸音計測装置1が頸部Pnに装着されて当接部70が頸部Pnに押し当てられると、当接部70が収容ケース41の収容空間Q内に押し込まれ、装着部30の内端面からの当接部70の突出量が変わる。さらに、圧縮コイルばね78の作用により、当接面70bが頸部Pnの皮膚に密着する。これにより、被験者頸部Pnの皮膚への密着性が高まるとともに、被験者Pの装着感が向上し、被験者Pの肌への食い込みの痕が残りにくい。
【0045】
図10では、図3よりも首の細い被験者の例を示している。図10の例では、呼吸音計測装置1の装着時に、計測部40が展開位置のままだと、当接部70の当接面70bが頸部Pnに当たらない(図10の仮想線参照)。本実施形態では、ヒンジ部60が折曲位置に向かって付勢されているので、計測部40が被験者頸部Pn側(内側)に向かって回動する。図10では、回動角度R12(R11>R12)回動している例を示している。また、計測部40が頸部Pn側に入り込むことで、頸部Pn近傍での計測部40の内面42cも内側に向かって傾く。本実施形態では、頸部Pnから当接面70b受ける力に応じて当接部70の当接面70bの角度が変わる(図10のR22参照)。すなわち、当接部70の当接面70bの角度が頸部Pnに沿うように変化する。また、当接部70には、圧縮コイルばね78の付勢力が作用しているので、被験者頸部Pnへの当接面70bの密着性を高めることができる。
【0046】
図11では、図3よりも首の太い被験者の例を示している。図11の例では、頸部Pnが装着部30の内側におさまりきらないが、前述のとおり呼吸音計測装置1は展開位置以上に開かないので、呼吸音計測装置1の装着時に、装着部30の外形サイズが広がる。そして、当接部70の大部分が収容空間Q内に入りこみ、当接部70の計測部40からの突出量が非常に小さくなっている。このような動作をすることにより、当接部70が被験者頸部Pnに食い込むのを抑えている。また、この場合においても、圧縮コイルばね78の付勢力がはたらき、被験者頸部Pnへの当接面70bの密着性を高めている。
【0047】
なお、図10及び図11では、図3よりも装着部30の長さが長い例を示しているが、このように装着部30の長さが異なってもよく、同様の効果が得られる。
【0048】
-第2基板-
図6に戻り、第2基板50は、内ケース42の底板(被験者側の板)上に、計測部40の長手方向(装着部30の周方向)に沿って延びるように配置されている。第2基板50は、収容ケース41に固定されている。具体的には、第2基板50が隔壁44に嵌合固定され、隔壁44が内ケース42に嵌合固定される。
【0049】
第2基板50には、制御部(図示省略)、計測結果を記憶するための記憶部(図示省略)、計測結果を外部機器(例えば、端末装置80)に送信するための通信モジュール53、体位/体動を検出するための加速度センサ(図示省略)、外部機器との通信及びバッテリへの充電をするためのコネクタ55、被験者に刺激を与えるためのバイブレータ56、電源ボタン57(図2参照)、被験者用のモニタランプ58(図2参照)、並びに、人検知センサ59等が実装されている。制御部は、呼吸音計測装置1の全体としての動作を制御する。制御部は、例えばマイクロプロセッサであって、CPUやメモリ等を有している。制御部は、バッテリ51からの電源供給を受け、記憶部(図示省略)に記憶されたプログラム等に基づいて動作する。
【0050】
-バイブレータ-
バイブレータ56は、制御部からの制御を受けて振動する。バイブレータ56は、例えば、被験者Pの所定音量以上のいびきをかいている状態(以下、いびき状態という)または、被験者Pが無呼吸状態の少なくとも一方において、振動するように制御される。
【0051】
バイブレータ56は、収容空間Q内において、ヒンジ部60の近傍に設けられる。本実施形態では、バイブレータ56が、第2基板50のヒンジ部60側の端部に実装された例を示している。第2基板50は、隔壁44に嵌合固定される。隔壁44は、内ケース42に嵌合固定される。そして、内ケース42の底板から隔壁44を貫通するようにねじ孔45(図6参照)が形成されている。内ケース42、隔壁44及び外ケース43は、ねじ孔45に挿入されたねじ46(図6参照)によりねじ止め固定される。すなわち、バイブレータ56は、振動が第2基板50及び隔壁44を通じて収容ケース41に伝達されるように構成されている。当接部70は、その少なくとも一部が収容ケース41に当接するので、収容ケース41に伝達された振動は、当接部70にも伝達される。
【0052】
また、バイブレータ56の振動は、ヒンジ部60を通って装着部30に伝わる伝達ルートでも伝達される。これにより、バイブレータ56の振動は、計測部40(当接部70を含む)と、装着部30との両方から頸部Pnに伝わるようになっている。ここで、図6に示すように、バイブレータ56をヒンジ部60の近傍に配置することで、バイブレータ56の振動が、装着部30に伝達されやすくすることができる。これにより、単一のバイブレータ56により、頸部Pnの周方向の複数の点から好適に被験者に振動を与えることができる。
【0053】
-その他の構成-
当接部70と内ケース42の第1開口部42aとの間には、被験者の汗(湿気を含む)、塵、埃等の異物(以下、単に異物という)の侵入を防ぐための防塵壁を設けていない。これにより、当接部70の可動性を高めることができる。一方で、当接部70が収容空間Qに押し込まれた際に、当接部70と内ケース42の第1開口部42aとの隙間から侵入した異物が第2基板50やバッテリ51に侵入しないように、収容空間Qには、第1開口部42aと、第2基板50やバッテリ51のような電子部品等との間を仕切る隔壁44aが設けられる。
【0054】
図9に示すように、隔壁44は、収容空間Qにおいて、内ケース42と外ケース43の中間位置に、両ケース間を区切るように設けられている。隔壁44は、左上のコーナー部44cと右下のコーナー部44dにおいて、内ケース42に固定されている。また、隔壁44は、第2基板と嵌合部44eで嵌合するように構成されている。嵌合部44eは、例えば、第2基板50に実装されている発光ダイオードの光を、計測部40の側板に表示させるため、透光性部材で構成されている。このように、バイブレータ56が動作中に隔壁44が内ケース42の嵌合部44eで動かなくする働きをすることで、バイブレータ56から内ケース42に振動を減衰させることなく伝搬している。
【0055】
電源ボタン57は、例えば、計測部40の側板の外側に押しボタンが突出する構成であって、被験者Pが呼吸音計測装置1の電源のオン/オフ操作ができるようになっている。
【0056】
モニタランプ58は、例えば、発光ダイオードで構成されている。被験者Pは、嵌合部44eを介してモニタランプ58の発光状態を見ることで、呼吸音計測装置1の電源のオン/オフ状態や通信状態、充電状態等を確認できるようになっている。
【0057】
なお、上記実施形態では、装着部30と計測部40は、ヒンジ部60で連結されているものとしたが、これに限定されない。図示しないが、例えば、上記実施形態の呼吸音計測装置1からヒンジ部60を省いて、装着部30と計測部40とを一体的に連結してもよい。その場合、呼吸音計測装置1は、上記実施形態の展開状態に相当する形状となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、主に在宅等で被験者の呼吸音を計測する装置として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 呼吸音計測装置
30 装着部
40 計測部
60 ヒンジ部
62 付勢手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11