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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20231205BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20231205BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20231205BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20231205BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20231205BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231205BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/445 ZHV
B60W20/17
B60W10/08 900
B60W20/10
B60W60/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021015483
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118775
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深井 章慶
(72)【発明者】
【氏名】安藤 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲郎
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/030938(WO,A1)
【文献】特開2007-203825(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと第1モータと第2モータと、
前記第2モータと前記エンジンと駆動輪に連結された駆動軸とに3つの回転要素が共線図においてこの順に並ぶように接続されたプラネタリギヤと、
運転者の操作によって走行する通常運転モードと運転者の操作によらずに走行する自動運転モードとを切り替えて走行するように前記エンジン前記第1モータと前記第2モータとを制御する制御装置と、
を備え、前記第1モータは前記駆動軸に連結されているハイブリッド車両であって、
前記制御装置は、少なくとも、前記自動運転モードで車両が減速して車速が所定車速未満で且つ前記第2モータの回生駆動を伴って前記エンジンを負荷運転するときには、複数の候補回転数のうちの最大回転数を前記エンジンの制御用下限回転数に設定し、前記制御用下限回転数以上の範囲内で前記エンジンが負荷運転されるように前記エンジンを制御する、
ハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車両であって、
前記第1モータは、前記駆動軸に機械的連結部を介して連結されており、
前記複数の候補回転数は、前記エンジンのこもり音を抑制するための第1回転数と、前記機械的連結部での歯打ち音を抑制するための前記第1回転数よりも大きい第2回転数とを含む、
ハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1記載のハイブリッド車両であって、
前記制御装置は、前記通常運転モードで前記車両が減速して前記車速が前記所定車速未満で且つ前記第2モータの回生駆動を伴って前記エンジンを負荷運転するときには、ブレーキ操作量に基づいて前記複数の候補回転数から選択した回転数を前記制御用下限回転数に設定し、前記制御用下限回転数以上の範囲内で前記エンジンが負荷運転されるように前記エンジンを制御する、
ハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項3記載のハイブリッド車両であって、
前記第1モータは、前記駆動軸に機械的連結部を介して連結されており、
前記複数の候補回転数は、前記エンジンのこもり音を抑制するための第1回転数、および、前記機械的連結部での歯打ち音を抑制するための前記第1回転数よりも大きい第2回転数であり、
前記制御装置は、
前記通常運転モードで前記車両が減速して前記車速が前記所定車速未満で且つ前記第2モータの回生駆動を伴って前記エンジンを負荷運転するときに、前記ブレーキ操作量に基づいて前記機械的連結部での歯打ち音に関する歯打ち音条件が成立していないと判定したときには、前記第1回転数を前記制御用下限回転数に設定し、前記歯打ち音条件が成立していると判定したときには、前記第2回転数を前記制御用下限回転数に設定し、
前記自動運転モードで前記車両が減速して前記車速が前記所定車速未満で且つ前記第2モータの回生駆動を伴って前記エンジンを負荷運転するときには、前記第2回転数を前記制御用下限回転数に設定する、
ハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車両としては、エンジンと、エンジンにギヤ機構を介して連結された発電機と、走行用のモータと、発電機やモータに電力ラインを介して接続された蓄電装置とを備え、車両情報に基づいて発電機の目標発電量を設定し、発電機の目標発電量に基づいてエンジンの回転数および発電機の負荷トルクを設定してエンジンおよび発電機を制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車両では、ギヤ機構の歯打ち音抑制制御条件を満たすときには、この条件を満たさないときに比してエンジンの回転数を引き上げることにより、エンジン音により歯打ち音を紛れさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-214309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたハイブリッド車両において、運転者の操作によらずに走行する自動運転モードで車両が減速して停車する際にエンジンを負荷運転するときに、エンジンの制御用下限回転数が何度も変化すると、エンジンの回転数が何度も変化して運転者に違和感を与える可能性がある。
【0005】
本発明のハイブリッド車両は、自動運転モードで車両が減速して停車する際に、運転者に違和感を与えるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車両は、
エンジンおよびモータと、
前記エンジンおよび前記モータを制御する制御装置と、
を備えるハイブリッド車両であって、
前記制御装置は、運転者の操作によらずに走行する自動運転モードで車両が減速して停車する際に、前記エンジンを負荷運転するときには、複数の候補回転数のうちの最大回転数を前記エンジンの制御用下限回転数に設定し、前記制御用下限回転数以上の範囲内で前記エンジンが負荷運転されるように前記エンジンを制御する、
ことを要旨とする。
【0008】
本発明のハイブリッド車両では、運転者の操作によらずに走行する自動運転モードで車両が減速して停車する際に、エンジンを負荷運転するときには、複数の候補回転数のうちの最大回転数をエンジンの制御用下限回転数に設定し、制御用下限回転数以上の範囲内でエンジンが負荷運転されるようにエンジンを制御する。これにより、自動運転モードで車両が減速して停車する際にエンジンを負荷運転するときに、エンジンの制御用下限回転数が切り替わるのを抑制し、エンジンの回転数が変化するのを抑制することができる。この結果、運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。
【0009】
本発明のハイブリッド車両において、前記モータは、駆動輪に機械的連結部を介して連結されており、前記複数の候補回転数は、前記エンジンのこもり音を抑制するための第1回転数と、前記機械的連結部での歯打ち音を抑制するための前記第1回転数よりも大きい第2回転数とを含むものとしてもよい。
【0010】
本発明のハイブリッド車両において、前記制御装置は、運転者の操作によって走行する通常運転モードで前記車両が減速して停車する際に、前記エンジンを負荷運転するときには、ブレーキ操作量に基づいて前記複数の候補回転数から選択した回転数を前記制御用下限回転数に設定し、前記制御用下限回転数以上の範囲内で前記エンジンが負荷運転されるように前記エンジンを制御するものとしてもよい。こうすれば、通常運転モードで車両が減速して停車する際にエンジンを負荷運転するときには、制御用下限回転数を適宜変更することができる。
【0011】
この場合、第2モータと、前記第2モータと前記エンジンと駆動輪に連結された駆動軸とに3つの回転要素が共線図においてこの順に並ぶように接続されたプラネタリギヤとを更に備え、前記モータは、前記駆動輪に機械的連結部を介して連結されており、前記複数の候補回転数は、前記エンジンのこもり音を抑制するための第1回転数、および、前記機械的連結部での歯打ち音を抑制するための前記第1回転数よりも大きい第2回転数であり、前記制御装置は、前記通常運転モードで前記車両が減速して停車する際に前記エンジンを負荷運転するときに、前記ブレーキ操作量に基づいて前記機械的連結部での歯打ち音に関する歯打ち音条件が成立していないと判定したときには、前記第1回転数を前記制御用下限回転数に設定し、前記歯打ち音条件が成立していると判定したときには、前記第2回転数を前記制御用下限回転数に設定し、前記自動運転モードで前記車両が減速して停車する際に前記エンジンを負荷運転するときには、前記第2回転数を前記制御用下限回転数に設定するものとしてもよい。このハード構成の場合、エンジンの回転数が第2回転数のときには、第1回転数のときに比して、エンジンの負荷運転および第2モータの駆動に起因してプラネタリギヤを介して駆動軸に出力される前進走行用のトルクが小さくなり、モータから駆動軸に出力される前進走行用のトルクが大きくなる。したがって、通常運転モードで車両が減速して停車する際にエンジンを負荷運転するときには、歯打ち音条件の成立の有無に基づいてエンジンの制御用下限回転数を設定することにより、機械的連結部での歯打ち音を抑制することができる。自動運転モードで車両が減速して停車する際にエンジンを負荷運転するときには、歯打ち音条件の成立の有無によってエンジンの制御用下限回転数が切り替わるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3】仮要求トルク用マップの一例を示す説明図である。
図4】エンジン22の動作ラインの一例と仮回転数Netmpを設定する様子とを示す説明図である。
図5】プラネタリギヤ30の回転要素の回転数およびトルクの関係の一例を示す共線図である。
図6】制御用下限回転数設定処理の一例を示すフローチャートである。
図7】自動運転モードで車両が減速して停車する際の車速VやブレーキポジションBP、要求トルクTd*、要求パワーPe*、エンジン22の制御用下限回転数Neminの様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0014】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、蓄電装置としてのバッテリ50と、制動力付与装置としての油圧ブレーキ装置60と、操舵装置68と、ナビゲーション装置69と、周辺検知装置90と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを備える。
【0015】
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関として構成されており、エンジン22のクランクシャフト23は、ダンパ28を介してプラネタリギヤ30に接続されている。このエンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24により運転制御されている。
【0016】
エンジンECU24は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサ23aからのクランク角θcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ23aからのクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算している。
【0017】
プラネタリギヤ30は、シングルピニオンタイプの遊星歯車機構として構成されており、外歯歯車のサンギヤ31と、内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31およびリングギヤ32にそれぞれ噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に支持するキャリヤ34とを備える。サンギヤ31には、モータMG1の回転子が接続されている。リングギヤ32には、駆動輪39にデファレンシャルギヤ38およびギヤ機構37を介して連結された駆動軸36が接続されている。駆動軸36には、減速ギヤ35を介してモータMG2が接続されている。キャリヤ34には、ダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト23が接続されている。
【0018】
モータMG1は、同期発電電動機として構成されており、上述したように、モータMG1の回転子は、プラネタリギヤ30のサンギヤ31に接続されている。モータMG2は、モータMG1と同様に同期発電電動機として構成されており、上述したように、モータMG2の回転子は、減速ギヤ35を介して駆動軸36に接続されている。インバータ41,42は、モータMG1,MG2の駆動に用いられると共に電力ライン54を介してバッテリ50に接続されている。電力ライン54には、平滑用のコンデンサ57が取り付けられている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によってインバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
【0019】
モータECU40は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。モータECU40に入力される信号としては、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2や、モータMG1,MG2の各相に流れる相電流を検出する図示しない電流センサからの相電流Iu1,Iv1,Iu2,Iv2を挙げることができる。モータECU40からは、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算している。
【0020】
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、上述したように、電力ライン54を介してインバータ41,42に接続されている。このバッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52により管理されている。
【0021】
バッテリECU52は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。バッテリECU52に入力される信号としては、例えば、バッテリ50の端子間に取り付けられた電圧センサ51aからのバッテリ50の電圧Vbや、バッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサ51bからのバッテリ50の電流Ibを挙げることができる。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU52は、電流センサ51bからのバッテリ50の電流Ibの積算値に基づいて蓄電割合SOCを演算している。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。
【0022】
油圧ブレーキ装置60は、駆動輪39や図示しない従動輪にそれぞれ取り付けられた複数のブレーキパッド62と、ブレーキアクチュエータ64とを備える。ブレーキアクチュエータ64は、複数のブレーキパッド62をそれぞれ駆動する図示しない複数のブレーキホイールシリンダの油圧を調節して駆動輪39や従動輪に制動力を付与するためのアクチュエータとして構成されている。このブレーキアクチュエータ64は、HVECU70により制御されている。
【0023】
操舵装置68は、通常運転モードでは、運転者によるステアリングの操作に基づいて駆動輪39および従動輪のうちの前輪を操舵し、自動運転モードでは、HVECU70からの制御信号に基づいて前輪を操舵する。ここで、通常運転モードは、運転者の操作によって走行するモードであり、自動運転モードは、運転者の操作によらずに走行するモードである。
【0024】
ナビゲーション装置69は、図示しないが、装置本体と、GPSアンテナと、ディスプレイとを備える。装置本体は、図示しないが、CPUやROM、RAM、記憶媒体(例えば、HDDやSSDなど)、入出力ポート、通信ポートを有する。装置本体の記憶媒体には、地図情報などが記憶されている。地図情報には、サービス情報(例えば、観光情報や駐車場など)や、各走行区間(例えば、信号機間や交差点間など)の道路情報などが含まれる。道路情報には、距離情報や幅員情報、車線数情報、地域情報(市街地や郊外)、種別情報(一般道路や高速道路)、勾配情報、法定速度情報、信号機情報などが含まれる。GPSアンテナは、自車の現在地に関する情報を受信する。ディスプレイは、各種情報を表示すると共に運転者が各種指示を入力可能なタッチパネルタイプのディスプレイとして構成されている。各種指示には、自車の現在地に関する情報や、自車の現在地から目的地までの走行予定ルートに関する情報などが含まれる。ナビゲーション装置69の装置本体は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。
【0025】
このナビゲーション装置69では、装置本体は、運転者によるディスプレイの操作により目的地が設定されると、設定された目的地と装置本体の記憶媒体に記憶された地図情報とGPSアンテナからの自車の現在地とに基づいて自車の現在地から目的地までの走行予定ルートを設定し、設定した走行予定ルートをディスプレイに表示してルート案内を行なう。
【0026】
周辺検知装置90は、自車周辺情報を検知するための装置として構成されており、カメラやミリ波レーダー、準ミリ波レーダー、赤外線レーザーレーダ、ソナーなどを有する。自車周辺情報としては、例えば、自車の前方や後方、側方の他車との距離などを挙げることができる。
【0027】
HVECU70は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。また、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセルポジションAPや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキポジションBP、車速センサ88からの車速Vも挙げることができる。周辺検知装置90からの自車周辺情報や、通常運転モードと自動運転モードとの切替を指示する自動運転スイッチ91からのスイッチ信号も挙げることができる。HVECU70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。HVECU70から出力される信号としては、例えば、自動運転モードのときの操舵装置68への制御信号や、油圧ブレーキ装置60のブレーキアクチュエータ64への制御信号を挙げることができる。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52、ブレーキECU66、ナビゲーション装置69と通信ポートを介して接続されている。
【0028】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40との協調制御により、通常運転モード(自動運転スイッチ91がオフ)や自動運転モード(自動運転スイッチ91がオン)で、アクセルポジションAPやブレーキポジションBPに基づいてハイブリッド走行(HV走行)や電動走行(EV走行)を行なうようにエンジン22とモータMG1,MG2と油圧ブレーキ装置60とを制御する。ここで、HV走行は、エンジン22の運転を伴う走行であり、EV走行は、エンジン22の運転を伴わない走行である。アクセルポジションAPやブレーキポジションBPは、通常運転モードでは、アクセルペダルポジションセンサ84やブレーキペダルポジションセンサ86により検出された値が用いられ、自動運転モードでは、ナビゲーション装置69からの情報(例えば、地図情報や自車の現在地、走行予定ルートなど)や車速センサ88からの車速V、周辺検知装置90からの自車周辺情報などに基づいて設定(模擬)された値が用いられる。また、自動運転モードでは、HVECU70は、ナビゲーション装置69からの情報や車速センサ88からの車速V、周辺検知装置90からの自車周辺情報などに基づいて車線維持や車線変更などが行なわれるように操舵装置68を制御する。
【0029】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。特に、通常運転モードや自動運転モードで車両が減速して停車する際のエンジン22とモータMG1,MG2との制御について説明する。なお、この際に、油圧ブレーキ装置60は、HVECU70により、ブレーキポジションBPに基づく制動力が駆動輪39や従動輪に作用するように制御される。
【0030】
図2は、HVECU70により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、通常運転モードや自動運転モードでアクセルオフのときに繰り返し実行される。このルーチンが実行されると、HVECU70は、最初に、運転モードMdや車速V、ブレーキポジションBP、エンジン22の回転数Neや要求パワーPe*などのデータを入力する(ステップS100)。
【0031】
ここで、運転モードMdは、自動運転スイッチ91からのスイッチ信号に基づいて設定された運転モード(通常運転モードまたは自動運転モード)が入力される。車速Vは、車速センサ88により検出された値が入力される。ブレーキポジションBPは、通常運転モードでは、ブレーキペダルポジションセンサ86により検出された値が入力され、自動運転モードでは、ナビゲーション装置69からの情報や車速センサ88からの車速V、周辺検知装置90からの自車周辺情報などに基づいて設定された値が入力される。
【0032】
エンジン22の回転数Neは、エンジンECU24により演算された値が通信により入力される。エンジン22の要求パワーPe*は、HVECU70により実行される図示しない要求パワー設定ルーチンにより設定された値が入力される。要求パワー設定ルーチンでは、HVECU70は、エンジン22の負荷運転が要求されていないときには、要求パワーPe*に値0を設定し、エンジン22の負荷運転が要求されているときには、要求パワーPe*に正の値を設定する。エンジン22の負荷運転が要求されているときとしては、例えば、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Sref以下である(バッテリ50の強制充電が必要である)ときや、エンジン22の冷却水温Twが閾値Twref以下である(エンジン22の暖機が必要である)ときなどを挙げることができる。エンジン22の負荷運転が要求されているときの要求パワーPe*には、一定値を設定するものとしてもよいし、バッテリ50の蓄電割合SOCやエンジン22の冷却水温Twなどに基づく値を設定するものとしてもよい。
【0033】
こうしてデータを入力すると、車速VおよびブレーキポジションBPに基づいて駆動軸36に要求される要求トルクTd*を設定する(ステップS110)。この処理は、例えば、車速Vを仮要求トルク用マップに適用して要求トルクTd*の仮値としての仮トルクTdtmpを設定し、車速Vが閾値Vref1以上であるときには仮トルクTdtmpを要求トルクTd*に設定し、車速Vが閾値Vref1未満であるときには仮トルクTdtmpにブレーキポジションBPに基づく補正係数kbpを乗じた値を要求トルクTd*に設定することにより行なわれる。仮要求トルク用マップは、車速Vと仮トルクTdtmpとの関係として予め設定され、HVECU70のROMやフラッシュメモリに記憶されている。図3は、仮要求トルク用マップの一例を示す説明図である。図示するように、仮トルクTdtmpは、車速Vが閾値Vref1以上の領域では値0以下の値が設定され、車速Vが閾値Vref1未満の領域では正の値(いわゆるクリープトルク)が設定される。閾値Vref1は、駆動軸36にクリープトルクを出力するように要求するか否かの境界値として設定され、例えば、7km/h~10km/h程度が用いられる。補正係数kbpは、ブレーキポジションBPが閾値BPref未満であるときには値1が設定され、ブレーキポジションBPが閾値BPref以上であるときには、値0以上で且つ値1未満の値、例えば、ブレーキポジションBPが大きくなるにつれて値1から値0に向かって徐々に小さくなる値が設定される。したがって、車速Vが閾値Vref1未満のときにおいて、ブレーキポジションBPが閾値BPref以上であるときには、ブレーキポジションBPが閾値BPref未満であるときに比して、駆動軸36に要求される要求トルクTd*(クリープトルク)を小さくすることになる。
【0034】
続いて、エンジン22の要求パワーPe*が値0および正の値のうちの何れであるかを調べる(ステップS120)。エンジン22の要求パワーPe*が値0であるときには、エンジン22の負荷運転が要求されていないと判断し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定し(ステップS140)、要求トルクTd*と減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて式(1)によりモータMG2のトルク指令Tm2*を演算する(ステップS150)。ここで、式(1)は、要求トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定するための式である。
【0035】
Tm2*=Td*/Gr (1)
【0036】
そして、エンジン22の無負荷運転指令をエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。エンジンECU24は、エンジン22の無負荷運転指令を受信すると、エンジン22が所定回転数Ne0で無負荷運転(アイドル運転)されるようにエンジン22の運転制御(吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御など)を行なう。所定回転数Ne0としては、例えば、1000rpm~1100rpm程度が用いられる。モータECU40は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*でそれぞれ駆動されるようにモータMG1,MG2の駆動制御(インバータ41,42の複数のスイッチング素子のスイッチング制御)を行なう。
【0037】
ステップS120でエンジン22の要求パワーPe*が正の値であるときには、エンジン22の負荷運転が要求されていると判断し、車速Vを上述の閾値Vref1よりも低い閾値Vref2と比較する(ステップS130)。ここで、閾値Vref2は、エンジン22の負荷運転の許否を判定するのに用いられる閾値であり、例えば、2km/h~4km/h程度が用いられる。車速Vが閾値Vref2以上であるときには、エンジン22の負荷運転を禁止すると判断し、ステップS140以降の処理を実行する。詳細は後述するが、エンジン22を負荷運転すると共にモータMG1を回生駆動する場合、これらに起因してプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に前進走行用のトルクが作用する。このため、車両が減速する際の挙動を安定させるために、車速Vが閾値Vref2以上であるときには、エンジン22の負荷運転を禁止するものとした。
【0038】
ステップS140で車速Vが閾値Vref2未満であるときには、エンジン22の負荷運転を許可すると判断し、後述の制御用下限回転数設定処理によりエンジン22の制御用下限回転数Neminを設定する(ステップS170)。続いて、エンジン22の要求パワーPe*とエンジン22を効率よく運転するための動作ラインとに基づいて、エンジン22の目標回転数Ne*の仮値としての仮回転数Netmpを設定する(ステップS180)。図4は、エンジン22の動作ラインの一例と仮回転数Netmpを設定する様子とを示す説明図である。ステップS170の処理は、エンジン22の要求パワーPe*が一定の曲線とエンジン22の動作ラインとの交点の回転数を仮回転数Netmpに設定することにより行なわれる。
【0039】
そして、エンジン22の仮回転数Netmpを制御用下限回転数Neminで下限ガードしてエンジン22の目標回転数Ne*を設定すると共に(ステップS190)、エンジン22の要求パワーPe*を目標回転数Ne*で除した値をエンジン22の目標トルクTe*に設定する(ステップS200)。
【0040】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定すると、エンジン22の回転数Neと目標回転数Ne*と目標トルクTe*とプラネタリギヤ30のギヤ比ρとを用いて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を演算する(ステップS210)。続いて、要求トルクTd*とモータMG1のトルク指令Tm1*とプラネタリギヤ30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて式(3)によりモータMG2のトルク指令Tm2*を演算する(ステップS220)。
【0041】
Tm1*=-Te*/(1+ρ)+kp・(Ne*-Ne)+ki・∫(Ne*-Ne)dt (2)
Tm2*=(Td*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
【0042】
図5は、プラネタリギヤ30の回転要素の回転数およびトルクの関係の一例を示す共線図である。図中、S軸は、サンギヤ31の回転数(モータMG1の回転数Nm1)を示し、C軸は、キャリヤ34の回転数(エンジン22の回転数Ne)を示し、R軸は、リングギヤ32の回転数(駆動軸36の回転数Nd、且つ、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除した回転数)を示す。また、図中、R軸の2つの太線矢印は、エンジン22の負荷運転およびモータMG1の回生駆動に起因してプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に出力されるトルク(-Tm1*/ρ)と、モータMG2をトルク指令Tm2*で駆動したときにモータMG2から減速ギヤ35を介して駆動軸36に出力されるトルク(Tm2*・Gr)とを示す。
【0043】
式(2)は、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、右辺の第1項は、フィードフォワード項であり、右辺の第2項および第3項は、フィードバック項における比例項および積分項である。式(2)中、右辺第1項は、図5の共線図から容易に導くことができる。式(2)中、右辺第2項の「kp」は、比例項のゲインであり、右辺第3項の「ki」は、積分項のゲインである。式(3)は、式(1)と同様に、要求トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定するための式であり、図5の共線図から容易に導くことができる。
【0044】
そして、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。エンジンECU24は、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を受信すると、エンジン22が目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいて負荷運転されるようにエンジン22の運転制御を行なう。モータECU40によるモータMG1,MG2の駆動制御については上述した。
【0045】
次に、図2の制御ルーチンのステップS170の処理、即ち、エンジン22の制御用下限回転数Neminを設定する処理について、図6の制御用下限回転数設定処理を用いて説明する。この制御用下限回転数設定処理では、HVECU70は、最初に、運転モードMdが通常運転モードおよび自動運転モードのうちの何れであるかを調べる(ステップS300)。
【0046】
ステップS300で運転モードMdが通常運転モードであるときには、歯打ち音条件が成立しているか否かを判定する(ステップS310)。歯打ち音条件が成立していないと判定したときには、エンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne1を設定して(ステップS320)、制御用下限回転数設定処理を終了する。
【0047】
ここで、所定回転数Ne1は、エンジン22のこもり音を抑制可能な回転数範囲の下限値として設定され、例えば、1200rpm~1300rpm程度が用いられる。以下、エンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne1を設定し、図2のステップS190~S220の処理によりエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジン22やモータMG1,MG2を制御する制御を「第1制御」という。
【0048】
歯打ち音条件は、第1制御を実行するとモータMG2の実トルクが値0付近で継続してモータMG2に接続された減速ギヤ35などで歯打ち音がある程度の頻度で発生する可能性がある条件である。ステップS310の処理は、例えば、要求トルクTd*と要求パワーPe*とを歯打ち音関係に適用して行なうことができる。歯打ち音関係は、要求トルクTd*と要求パワーPe*と歯打ち音条件の成立の有無との関係として予め定められ、HVECU70のROMやフラッシュメモリに記憶されている。この歯打ち音関係は、モータMG2のトルク指令Tm2*が要求トルクTd*と要求パワーPe*と制御用下限回転数Neminとに基づいて設定される(図2のステップS180~S220参照)ことを踏まえて設定される。
【0049】
ステップS310で歯打ち音条件が成立していると判定したときには、エンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne1よりも大きい所定回転数Ne2を設定して(ステップS330)、制御用下限回転数設定処理を終了する。ここで、所定回転数Ne2は、減速ギヤ35などで歯打ち音がある程度の頻度で発生するのを抑制可能な回転数範囲の下限値として設定され、例えば、1400rpm~1500rpm程度が用いられる。以下、エンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne2を設定し、図2のステップS190~S220の処理によりエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジン22やモータMG1,MG2を制御する制御を「第2制御」という。第2制御では、第1制御に比してエンジン22の目標回転数Ne*が大きくなると共に目標トルクTe*が小さくなるから、モータMG1のトルク指令Tm1*が大きくなり即ち値0に近くなり(式(2)参照)、要求トルクTd*が正の値(クリープトルク)である場合にモータMG2のトルク指令Tm2*が大きくなる(式(3)参照)。これにより、モータMG2の実トルクが値0付近で継続するのを抑制し、減速ギヤ35などで歯打ち音がある程度の頻度で発生するのを抑制することができる。
【0050】
ステップS300で運転モードMdが自動運転モードであるときには、歯打ち音条件の成立の有無を判定することなく、エンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne2を設定して(ステップS340)、制御用下限回転数設定処理を終了する。この場合、歯打ち音条件の成立の有無に拘わらずに、第2制御を実行することになる。これにより、自動運転モードで車両が減速して停車する際において、エンジン22を負荷運転している最中に、エンジン22の制御用下限回転数Neminが切り替わるのを抑制し、エンジン22の回転数Neが急変するのを抑制することができる。この結果、運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。
【0051】
図7は、自動運転モードで車両が減速して停車する際の車速VやブレーキポジションBP、要求トルクTd*、要求パワーPe*、エンジン22の制御用下限回転数Neminの様子の一例を示す説明図である。図中、エンジン22の目標回転数Ne*について、実線は実施例の様子を示し、一点鎖線は比較例の様子を示す。比較例では、自動運転モードのときに、通常運転モードのときと同様に、歯打ち音条件の成立の有無に基づいてエンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne1または所定回転数Ne2を設定するものとした。なお、上述したように、要求トルクTd*は、車速VおよびブレーキポジションBPに基づいて設定され、歯打ち音条件の成立の有無は、要求トルクTd*および要求パワーPe*に基づいて設定される。
【0052】
図示するように、実施例および比較例において、車速Vが低下して閾値Vref1未満に至ると(時刻t11)、要求トルクTd*が正の値になってクリープトルクの出力を開始し、車速Vが閾値Vref2未満に至ると(時刻t12)、エンジン22の負荷運転を開始する。比較例では、エンジン22を負荷運転するときに(時刻t12~)、歯打ち音条件が成立していないときには(時刻t12~t13)、エンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne1を設定し、歯打ち音条件が成立しているときには(時刻t13~)、エンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne2を設定する。このため、自動運転モードで車両が減速して停車する際において、エンジン22を負荷運転している最中に、エンジン22の制御用下限回転数Neminが切り替わってエンジン22の回転数Neが急変し、運転者に違和感を与える可能性がある。これに対して、実施例では、エンジン22を負荷運転するときには(時刻t12~)、歯打ち音条件の成立の有無に拘わらずに、エンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne2を設定する。これにより、自動運転モードで車両が減速して停車する際において、エンジン22を負荷運転している最中に、エンジン22の制御用下限回転数Neminが切り替わるのを抑制し、エンジン22の回転数Neが急変するのを抑制することができる。この結果、運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。
【0053】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20では、自動運転モードで車両が減速して停車する際にエンジン22を負荷運転するときには、歯打ち音条件の成立の有無に拘わらずにエンジン22の目標回転数Ne*に所定回転数Ne2(所定回転数Ne1,Ne2のうち大きい方の回転数)を設定し、制御用下限回転数Nemin以上の範囲内でエンジン22が負荷運転されるようにエンジン22を制御する。これにより、自動運転モードで車両が減速して停車する際において、エンジン22を負荷運転している最中に、エンジン22の制御用下限回転数Neminが切り替わるのを抑制し、エンジン22の回転数Neが急変するのを抑制することができる。この結果、運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。
【0054】
実施例のハイブリッド自動車20では、所定回転数Ne1として、エンジン22のこもり音を抑制可能な回転数範囲の下限値を用いると共に、所定回転数Ne2として、減速ギヤ35などで歯打ち音がある程度の頻度で発生するのを抑制可能な回転数範囲の下限値を用いるものとした。しかし、所定回転数Ne1,Ne2は、それぞれこれに限定されるものではない。例えば、所定回転数Ne1,Ne2のうちの何れかとして、エンジン22の排気異音を抑制可能な回転数範囲の下限値などを用いるものとしてもよい。
【0055】
実施例のハイブリッド自動車20では、通常運転モードで車両が減速して停車する際にエンジン22を負荷運転するときには、エンジン22の制御用下限回転数Neminに所定回転数Ne1または所定回転数Ne2を設定し、自動運転モードで車両が減速して停車する際にエンジン22を負荷運転するときには、エンジン22の目標回転数Ne*に所定回転数Ne2(所定回転数Ne1,Ne2のうち大きい方の回転数)を設定するものとした。しかし、通常運転モードで車両が減速して停車する際にエンジン22を負荷運転するときには、3つ以上の候補回転数から選択した回転数をエンジン22の制御用下限回転数Neminに設定し、自動運転モードで車両が減速して停車する際にエンジン22を負荷運転するときには、その3つ以上の候補回転数のうちの最大回転数をエンジン22の制御用下限回転数Neminに設定するものとしてもよい。
【0056】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2を減速ギヤ35を介して駆動輪39に連結された駆動軸36に接続するものとした。しかし、モータMG2を変速機を介して駆動軸36に接続するものとしてもよい。また、モータMG2を、減速ギヤ35や変速機以外の機械的連結部、例えば、互いに噛合する2つのギヤなどを介して駆動軸36に接続するものとしてもよい。
【0057】
実施例のハイブリッド自動車20では、蓄電装置としてバッテリ50を用いるものとした。しかし、蓄電装置して、バッテリ50に代えてまたは加えて、キャパシタを用いるものとしてもよい。
【0058】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52とHVECU70とを備えるものとした。しかし、これらのうちの少なくとも2つを単一の電子制御ユニットとして構成するものとしてもよい。
【0059】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG2が「モータ」に相当し、バッテリ50が「蓄電装置」に相当し、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40とが「制御装置」に相当する。
【0060】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0061】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ハイブリッド車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 クランクシャフト、23a クランクポジションセンサ、24 エンジンECU、28 ダンパ、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 ピニオンギヤ、34 キャリヤ、35 減速ギヤ、36 駆動軸、37 ギヤ機構、38 デファレンシャルギヤ、39 駆動輪、40 モータECU、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51b 電流センサ、52 バッテリECU、54 電力ライン、57 コンデンサ、60 油圧ブレーキ装置、62 ブレーキパッド、64 ブレーキアクチュエータ、66 ブレーキECU、68 操舵装置、69 ナビゲーション装置、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 周辺検知装置、91 自動運転スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7