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特許7396906車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20231205BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231205BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60W30/10
G08G1/16 C
B60T7/12 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020007029
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021112997
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】余 開江
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148545(JP,A)
【文献】国際公開第2012/160590(WO,A1)
【文献】特開2019-117494(JP,A)
【文献】特開2015-016799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定する決定部と、
前記決定部により決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御する制御部と、を備え、
前記走行パターンは、前記自車両の進行方向の躍度の変化度合と、前記自車両の幅方向の変化度合とのうち一方または双方が規定された走行パターンである、
車両制御装置。
【請求項2】
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定する決定部と、
前記決定部により決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御する制御部と、を備え、
前記走行パターンは、前記自車両が減速、第1幅寄せ、加速、第2幅寄せの順で動作するパターンである、
車両制御装置。
【請求項3】
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定する決定部と、
前記決定部により決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御する制御部と、を備え、
前記走行パターンは、少なくとも第1走行パターン、第2走行パターン、および第3走行パターンを含む、
車両制御装置。
【請求項4】
前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、前記第3走行パターンの順で前記自車両の挙動の変化が大きく、
前記決定部は、
前記他車両の速度または相対速度が第1速度帯域である場合、前記走行パターンを前記第1走行パターンに決定し、
前記他車両の速度または前記相対速度が前記第1速度帯域よりも遅い第2速度帯域である場合、前記走行パターンを前記第2走行パターンに決定し、
前記他車両の速度または前記相対速度が前記第2速度帯域よりも遅い第3速度帯域である場合、前記走行パターンを前記第3走行パターンに決定する、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、および前記第3走行パターンのそれぞれは、減速を行う走行パターンを含み、
前記第1走行パターンの減速時の減速度または減速に係る躍度は、前記第2走行パターンまたは前記第3走行パターンの減速時の減速度または減速に係る躍度よりも大きい、 請求項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、および前記第3走行パターンのそれぞれは、前記減速の後に第1幅寄せを行う走行パターンを含み、
前記第1走行パターンの第1幅寄せ時の前記自車両の横方向の躍度または横方向の加速度は、前記第2走行パターンまたは前記第3走行パターンの前記第1幅寄せ時の前記自車両の横方向の躍度または横方向の加速度よりも小さい、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、および前記第3走行パターンは、前記第1幅寄せの後、加速を行う走行パターンを含み、
前記第1走行パターンの加速時の前記自車両の躍度または加速に係る加速度は、前記第2走行パターンまたは前記第3走行パターンの前記加速時の前記自車両の躍度または加速に係る加速度よりも大きい、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、および前記第3走行パターンは、加速後、第2幅寄せを行う走行パターンを含み、
前記第1走行パターンの第2幅寄せ時の前記自車両の横方向の躍度または加速に係る加速度は、前記第2走行パターンまたは前記第3走行パターンの前記第2幅寄せ時の前記自車両の横方向の躍度または加速に係る加速度よりも大きい、
請求項に記載の車両制御装置。
【請求項9】
コンピュータが、
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識し、
前記認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定し、
前記決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御し、
前記走行パターンは、前記自車両の進行方向の躍度の変化度合と、前記自車両の幅方向の変化度合とのうち一方または双方が規定された走行パターンである、
車両制御方法。
【請求項10】
コンピュータが、
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識し、
前記認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定し、
前記決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御し、
前記走行パターンは、前記自車両が減速、第1幅寄せ、加速、第2幅寄せの順で動作するパターンである、
車両制御方法。
【請求項11】
コンピュータが、
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識し、
前記認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定し、
前記決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御し、
前記走行パターンは、少なくとも第1走行パターン、第2走行パターン、および第3走行パターンを含む、
車両制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識させる処理と、
前記認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定させる処理と、
前記決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御させる処理と、を実行させるプログラムであって、
前記走行パターンは、前記自車両の進行方向の躍度の変化度合と、前記自車両の幅方向の変化度合とのうち一方または双方が規定された走行パターンである、
プログラム。
【請求項13】
コンピュータに、
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識させる処理と、
前記認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定させる処理と、
前記決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御させる処理と、を実行させるプログラムであって、
前記走行パターンは、前記自車両が減速、第1幅寄せ、加速、第2幅寄せの順で動作するパターンである、
プログラム。
【請求項14】
コンピュータに、
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識させる処理と、
前記認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定させる処理と、
前記決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御させる処理と、を実行させるプログラムであって、
前記走行パターンは、少なくとも第1走行パターン、第2走行パターン、および第3走行パターンを含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が合流先の車線に合流する際に加速または減速を行う車両制御システムや、車両が車線変更を行う際に幅寄せを行う運転支援装置が開示されている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-62300号公報
【文献】特開2019-117494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のシステムまたは装置は、車線変更時に適した挙動を行うことができない場合があった。例えば、車両が、滑らかに車線変更先の車線に合流できなかったり、車線変更先の車線を走行する車両の乗員に不快感を与えてしまったりする場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、より好適な車線変更を実現することができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識する認識部と、前記認識部により認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定する決定部と、前記決定部により決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御する制御部とを備える車両制御装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記走行パターンは、前記自車両の進行方向の躍度の変化度合と、前記自車両の幅方向の変化度合とのうち一方または双方が規定された走行パターンである。
【0008】
(3):上記(1)または(2)の態様において、前記走行パターンは、前記自車両が減速、第1幅寄せ、加速、第2幅寄せの順で動作するパターンである。
【0009】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記走行パターンは、少なくとも第1走行パターン、第2走行パターン、および第3走行パターンを含み、前記決定部は、前記他車両の速度または前記自車両の速度に対する他車両の相対速度に基づいて、第1走行パターン、第2走行パターン、および第3走行パターンの中からいずれかの走行パターンを決定し、前記制御部は、前記決定部により決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御する。
【0010】
(5):上記(4)の態様において、前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、前記第3走行パターンの順で前記自車両の挙動の変化が大きく、前記決定部は、前記他車両の速度または前記相対速度が第1速度帯域である場合、前記走行パターンを前記第1走行パターンに決定し、前記他車両の速度または前記相対速度が前記第1速度帯域よりも遅い第2速度帯域である場合、前記走行パターンを前記第2走行パターンに決定し、前記他車両の速度または前記相対速度が前記第2速度帯域よりも遅い第3速度帯域である場合、前記走行パターンを前記第3走行パターンに決定する。
【0011】
(6):上記(5)の態様において、前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、および前記第3走行パターンのそれぞれは、減速を行う走行パターンを含み、前記第1走行パターンの減速時の減速度または減速に係る躍度は、前記第2走行パターンまたは前記第3走行パターンの減速時の減速度または減速に係る躍度よりも大きい。
【0012】
(7):上記(6)の態様において、前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、および前記第3走行パターンのそれぞれは、前記減速の後に第1幅寄せを行う走行パターンを含み、前記第1走行パターンの第1幅寄せ時の前記自車両の横方向の躍度または横方向の加速度は、前記第2走行パターンまたは前記第3走行パターンの前記第1幅寄せ時の前記自車両の横方向の躍度または横方向の加速度よりも小さい。
【0013】
(8):上記(7)の態様において、前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、および前記第3走行パターンは、前記第1幅寄せの後、加速を行う走行パターンを含み、前記第1走行パターンの加速時の前記自車両の躍度または加速に係る加速度は、前記第2走行パターンまたは前記第3走行パターンの前記加速時の前記自車両の躍度または加速に係る加速度よりも大きい。
【0014】
(9):上記(8)の態様において、前記第1走行パターン、前記第2走行パターン、および前記第3走行パターンは、前記加速後、第2幅寄せを行う走行パターンを含み、前記第1走行パターンの第2幅寄せ時の前記自車両の横方向の躍度または加速に係る加速度は、前記第2走行パターンまたは前記第3走行パターンの前記第2幅寄せ時の前記自車両の横方向の躍度または加速に係る加速度よりも大きい。
【0015】
(10):この発明の一態様に係る車両制御方法は、自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識し、前記認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定し、前記決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御する車両制御方法である。
【0016】
(11):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識させる処理と、前記認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定させる処理と、前記決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御させる処理と、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
(1)~(11)によれば、車両制御装置が、走行パターンに基づいて自車両の加速、減速、および幅寄せを制御することにより、より好適な車線変更を実現することができる。例えば、車両制御装置は、自車両が車線変更する場合に車線変更先の車線を走行する後続車両に不快感を与えることを抑制することができる。
【0018】
(2)によれば、車両制御装置が、躍度の変化度合が規定された走行パターンに基づいて、自車両の加速、減速、および幅寄せを制御することにより、より緻密に車両を制御することができる。
【0019】
(3)によれば、車両制御装置は、自車両が減速、第1幅寄せ、加速、第2幅寄せの順で走行することにより、後続車両に不快感を与えないように車両の車線変更を行うことができる。
【0020】
(4)または(5)によれば、車両制御装置は、他車両の速度または自車両の速度に対する他車両の相対速度に基づいて、走行パターンを決定することにより、交通状況に適した制御を実現することができる。
【0021】
(6)によれば、第1走行パターンの減速時の減速度または減速に係る躍度は、第2走行パターンまたは第3走行パターンの減速時の減速度または減速に係る躍度よりも大きいため、比較的他車両の速度が速い場合であっても、後の加速に備えて十分に減速することができる。この結果、交通情報に適した制御が実現される。
【0022】
(7)によれば、第1走行パターンの第1幅寄せ時の自車両の横方向の躍度または加速度は、第2走行パターンまたは第3走行パターンの第1幅寄せ時の自車両の横方向の躍度または加速度よりも小さいため、自車両が他車両に近づかないように自車両が制御される。この結果、他車両の速度が速い場合であっても、交通状況に適した制御が実現される。
【0023】
(8)によれば、第1走行パターンの加速時の自車両の加速に係る躍度または加速度は、第2走行パターンまたは第3走行パターンの加速時の自車両の加速に係る躍度または加速度よりも大きいため、他車両の速度が速い交通状況であっても、この交通状況にとって適切な制御が実現される。
【0024】
(9)によれば、第1走行パターンの第2幅寄せ時の自車両の横方向の躍度または加速度は、第2走行パターンまたは第3走行パターンの第2幅寄せ時の自車両の横方向の躍度または加速度よりも大きいため、第1幅寄せを行った後であっても、この交通状況にとって適切な制御が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。
図2】第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。
図3】自動運転制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】走行パターン情報182に含まれる走行パターンの一例を示す図である。
図5】第1状況について説明するための図である。
図6】第1走行パターンの第1アクションについて説明するための図である。
図7】第1走行パターンの第2アクションについて説明するための図である。
図8】第1走行パターンの第3アクションについて説明するための図である。
図9】第1走行パターンの第4アクションについて説明するための図である。
図10】第1走行パターンの躍度の一例を示す図である。
図11】第3状況について説明するための図である。
図12】第3走行パターンの第1アクションについて説明するための図である。
図13】第3走行パターンの第2アクションについて説明するための図である。
図14】第3走行パターンの第3アクションについて説明するための図である。
図15】第3走行パターンの第4アクションについて説明するための図である。
図16】第3走行パターンの躍度の一例を示す図である。
図17】第2状況について説明するための図である。
図18】第2走行パターンの第1アクションについて説明するための図である。
図19】第2走行パターンの第2アクションについて説明するための図である。
図20】第2走行パターンの第3アクションについて説明するための図である。
図21】第2走行パターンの第4アクションについて説明するための図である。
図22】第3走行パターンの躍度の一例を示す図である。
図23】各走行パターンの躍度の大きさおよびアクションの期間を示す図である。
図24】実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0027】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0028】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0029】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0030】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0031】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0032】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0033】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0034】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0035】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0036】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0037】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0038】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0039】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0040】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、記憶部180とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。自動運転制御装置100は「車両制御装置」の一例である。
【0041】
記憶部180は、HDDやフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などにより実現される。記憶部180には、走行パターン情報182が記憶されている(詳細は後述)。
【0042】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0043】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0044】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0045】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0046】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0047】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0048】
行動計画生成部140は、例えば、処理部142と、決定部144とを備える。処理部142は、自車両が車線変更する計画を立てた場合に認識部130により認識された移動先の車線を走行する他車両の位置と速度に関する情報を取得する。処理部142は、上記の他車両の位置、他車両の速度、および自車両Mの速度に基づいて、所定位置において他車両が自車両Mの走行に影響を及ぼす可能性が存在する車両であるか否かを判定する。影響を及ぼす可能性が存在するとは、例えば、自車両Mの挙動によって減速したり、加速したり、他車両の横方向に移動したりする可能性が存在する他車両である。
【0049】
例えば、自車両Mが車線変更先の車線に車線変更する領域において車線変更先の車線の自車両Mの後方、所定距離以内に存在する他車両は、自車両Mの走行に影響を及ぼす可能性が存在する車両である。所定距離は、例えば、自車両Mの速度に対する他車両の相対速度に基づいて決定される。例えば、自車両Mの速度に対して他車両の速度が速いほど、所定距離は長くなる。
【0050】
決定部144は、認識部130により認識された他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、自車両Mが移動先の車線に進入する場合の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定する。例えば、決定部144は、走行パターン情報182を参照して、走行パターンを決定する。行動計画生成部140は、決定部144により決定された走行パターンに基づいて自車両Mを走行させる。決定部144との処理の詳細については後述する。上述した行動計画生成部140と、第2制御部160とを合わせたものは、「制御部」の一例である。
【0051】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0052】
図2に戻り、第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0053】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0054】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0055】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0056】
[フローチャート]
図3は、自動運転制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本処理は、自車両Mが、車線変更する際(車線変更の計画が生成された場合に)に実行される処理である。
【0057】
まず、処理部142が、車線変更先の車線において、自車両Mの後方、所定距離以内に対象の他車両が存在するか否かを判定する(ステップS100)。対象の他車両は、自車両Mが車線変更する場合に影響を及ぼす可能性が存在する車両である。
【0058】
自車両Mの後方、所定距離以内に対象の他車両が存在しない場合、行動計画生成部140は、後述する第1アクション-第4アクションを行わずに車線変更先の車線(対象車線)に車線変更する(ステップS102)。
【0059】
自車両Mの後方、所定距離以内に対象の他車両が存在する場合、決定部144は、走行パターンを決定する(ステップS104)。走行パターンについては、後述する図4を参照して説明する。
【0060】
行動計画生成部140は、ステップS104で決定された走行パターンに規定されたアクションに基づいて、第1アクションを実行し(ステップS106)、第2アクションを実行し(ステップS108)、第3アクションを実行し(ステップS110)、第4アクションを実行して(ステップS112)、車線変更する(ステップS114)。これにより本フローチャートの1ルーチンの処理が終了する。
【0061】
図4は、走行パターン情報182に含まれる走行パターンの一例を示す図である。走行パターン情報182は、自車両Mの進行方向の躍度の変化度合と自車両Mの幅方向の変化度合とが規定されたパターン(或いは自車両Mの進行方向の躍度の変化度合または自車両Mの幅方向の変化度合が規定されたパターン)である。走行パターンは、例えば、第1走行パターン、第2走行パターン、および第3走行パターンを含む。以下の説明では、躍度に基づいて自車両Mが制御される例について説明するが、加速度(減速度)に基づいて自車両Mが制御されてもよい。この場合、後述する図10や、図16図22図23等の躍度は、加速度に変更されてもよい。
【0062】
更に、本実施形態では、第1アクション-第4アクションの順でアクションが実行されるものとして説明するが、車線変更の一連のアクションの中で、第1アクション-第4アクションが実行されればよく、第1アクション-第4アクションの間に他のアクションが実行されてもよい。
【0063】
行動計画生成部140は、他車両の速度、または自車両の速度に対する他車両の相対速度、または自車両から他車両までの距離の一方または双方に基づいて、第1走行パターン、第2走行パターン、および第3走行パターンの中からいずれかの走行パターンを決定し、決定した走行パターンに基づいて自車両の加速、減速、および幅寄せを制御する。
【0064】
第1走行パターンは、車線変更先の車線を走行する他車両が高速(例えば80km/h-100km/h)で走行している第1状況である。例えば、自車両Mの速度は60km/hである。第1走行パターンは、道路における状況が第1状況である場合に、第1減速(第1アクション)、第1A幅寄せ(第2アクション)、第1加速(第3アクション)、第1B幅寄せ(第4アクション)を実行する走行パターンである。第1状況は、自車両Mの速度に対する他車両の相対速度が第1速度帯域であり、他車両が自車両Mの後方、第1所定距離帯に存在する状況である。
【0065】
第2走行パターンは、車線変更先の車線を走行する他車両が中速(例えば60km/h)で走行している第2状況である。第2走行パターンは、道路における状況が第2状況である場合に、第2減速(第1アクション)、第2A幅寄せ(第2アクション)、第2加速(第3アクション)、第2B幅寄せ(第4アクション)を実行する走行パターンである。第2状況は、自車両Mの速度に対する他車両の相対速度が第2速度帯域であり、他車両が自車両Mの後方、第2所定距離帯に存在する状況である。
【0066】
第3走行パターンは、車線変更先の車線を走行する他車両が低速(例えば30km/h-40km/h)で走行している第3状況である。第3走行パターンは、道路における状況が第3状況である場合に、第3減速(第1アクション)、第3A幅寄せ(第2アクション)、第3加速(第3アクション)、第3B幅寄せ(第4アクション)を実行する走行パターンである。第3状況は、自車両Mの速度に対する他車両の相対速度が第3速度帯域であり、他車両が自車両Mの後方、第3所定距離帯に存在する状況である。
【0067】
例えば、第1速度帯(例えば40km/h)、第2速度帯(例えばマイナス20km/h-30km/h)、第3速度帯(例えば、マイナス20km/h-30km/h)の順で速い速度帯である。例えば、第1所定距離帯、第2所定距離帯、第3所定距離帯の順で長い距離帯である。
【0068】
以下、第1走行パターン、第2走行パターン、第3走行パターンの各アクションの詳細について、第1走行パターン、第3走行パターン、第2走行パターンの順で説明する。走行パターン情報182のより具体的な内容については、後述する図10図16図22に示す。
【0069】
(第1状況)
図5は、第1状況について説明するための図である。以下、車両の進行方向を「プラスX方向」と称し、車両の横方向を「マイナスY方向」と称する場合がある。図5では、車線L1-L6を含む道路を示している。車線L3と車線L4との間には、合流領域ARが設けられている。車両は、合流領域ARにおいて、車線L3から車線L4に車線変更、または車線L4から車線L3に車線変更が可能である。合流領域ARのマイナスX方向側には、ゼブラゾーンS1、分岐帯OB1、分岐帯OB2が設けられている。分岐帯OB2は、分岐帯OB1よりも高さが高い。合流領域ARのプラスX方向側には、ゼブラゾーンS2、分岐帯OB3、分岐帯OB4が設けられている。分岐帯OB4は、分岐帯OB3よりも高さが高い。
【0070】
図5では、例えば、自車両Mの速度に対する他車両の速度が第1速度帯であり、自車両Mから他車両までの距離が第1所定距離D1である。この場合、自車両Mは、第1走行パターンで走行する。
【0071】
図6図9を参照して、第1走行パターンの第1アクション-第4アクションについて説明する。自車両Mは、図6に示すように合流領域ARにした直後に減速(第1アクション)を行う。第1アクションは、第3アクションで所定度合以上の加速度を超える加速または法定速度を超えた速度の走行を抑制するためのアクションである。
【0072】
次に、自車両Mは、図7に示すように減速後に、車線L4側に近づくような幅寄せ(第2アクション)を行う。第2アクションは、自車両Mが車線L4にはみ出さない程度の移動量の幅寄せであり、他車両に合流意思を示すアクションである。
【0073】
次に、自車両Mは、図8に示すように幅寄せ後に、加速(第3アクション)を行う。第3アクションは、第2アクションよりも強い合流意思を示すアクションである。
【0074】
次に、自車両Mは、図9に示すように加速後に、車線L4側に進入するように幅寄せ(第4アクション)を行って車線L4に進入する。第4アクションは、車線変更のためのアクションである。
【0075】
このように、自車両Mは、第1アクション-第4アクションを実行して合流意思を他車両に示し、他車両に不快感を与えないように他車両の前方に車線変更を行うことができる。
【0076】
図10は、第1走行パターンの躍度の一例を示す図である。例えば、第1アクション(1)、第2アクション(2)、第3アクション(3)、および第4アクション(4)の躍度は、図10に示すような分布となる。
【0077】
(第3状況)
図11は、第3状況について説明するための図である。図11では、例えば、自車両Mの速度に対する他車両の速度が第3速度帯であり、自車両Mから他車両までの距離が第3所定距離D3である。この場合、自車両Mは、第3走行パターンで走行する。
【0078】
図12図15を参照して、第3走行パターンの第1アクション-第4アクションについて説明する。自車両Mは、図12に示すように合流領域ARにした直後に減速(第1アクション)を行う。第1アクションは、第3アクションで所定度合以上の加速度を超える加速または法定速度を超える速度の走行を抑制するためのアクションである。
【0079】
次に、自車両Mは、図13に示すように減速後に、車線L4において自車両Mが合流するための領域を確保するために、自車両Mは車線L4方向に幅寄せを(第2アクション)を行う。例えば、Y方向に関して他車両と重ならないような位置に自車両Mが移動するように、自車両Mは幅寄せを行う。これにより、自車両Mは、車線変更の意思を他車両に伝えつつ、車線変更するための領域を確保することができ、更に仮に他車両が加速した場合にも他車両が自車両に接近することを抑制することができる。
【0080】
次に、自車両Mは、図14に示すように幅寄せ後に、加速(第3アクション)を行う。第3アクションは、第2アクションよりも強い合流意思を示すアクションである。
【0081】
次に、自車両Mは、図15に示すように加速後に、車線L4に車線変更するように幅寄せ(第4アクション)を行って車線L4に進入する。第4アクションは、車線変更のためのアクションである。
【0082】
このように、自車両Mは、第1アクション-第4アクションを実行して合流意思を他車両に示し、他車両に不快感を与えないように他車両の前方に車線変更を行うことができる。
【0083】
図16は、第3走行パターンの躍度の一例を示す図である。例えば、第1アクション(1)、第2アクション(2)、第3アクション(3)、および第4アクション(4)の躍度は、図16に示すような分布となる。
【0084】
(第2状況)
図17は、第2状況について説明するための図である。図17では、例えば、自車両Mの速度に対する他車両の速度が第2速度帯であり、自車両Mから他車両までの距離が第2所定距離D2である。この場合、自車両Mは、第2走行パターンで走行する。
【0085】
図18図21を参照して、第2走行パターンの第1アクション-第4アクションについて説明する。自車両Mは、図18に示すように合流領域ARにした直後に減速(第1アクション)を行う。第1アクションは、第3アクションで法定速度を超えた速度を超えることを抑制するためのアクションである。
【0086】
次に、自車両Mは、図19に示すように減速後に、車線L4において自車両Mが合流するための領域を確保するために、自車両Mは車線L4方向に幅寄せを(第2アクション)を行う。例えば、Y方向に関して他車両と重ならないような位置に自車両Mが移動するように、自車両Mは幅寄せを行う。第2走行パターンの幅寄せ量は、例えば、第3走行パターンの幅寄せ量よりも小さい。これにより、自車両Mは、車線変更の意思を他車両に伝えつつ、車線変更するための領域を確保することができ、更に仮に他車両が加速した場合にも他車両が自車両に接近することを抑制することができる。
【0087】
次に、自車両Mは、図20に示すように幅寄せ後に、加速(第3アクション)を行う。第3アクションは、第2アクションよりも強い合流意思を示すアクションである。
【0088】
次に、自車両Mは、図21に示すように加速後に、車線L4に車線変更するように幅寄せ(第4アクション)を行って車線L4に進入する。第4アクションは、車線変更のためのアクションである。
【0089】
このように、自車両Mは、第1アクション-第4アクションを実行して合流意思を他車両に示し、他車両に不快感を与えないように他車両の前方に車線変更を行うことができる。例えば、第2アクションの横方向の移動量と、第4アクションの横方向の移動量とは同等である。
【0090】
図22は、第3走行パターンの躍度の一例を示す図である。例えば、第1アクション(1)、第2アクション(2)、第3アクション(3)、および第4アクション(4)の躍度は、図22に示すような分布となる。
【0091】
[各走行パターンの躍度の大きさおよびアクションの期間の比較]
図23は、各走行パターンの躍度の大きさおよびアクションの期間を示す図である。例えば、各走行パターンにおいてアクションが行われる期間は、以下である。期間の長さは、期間T1<期間T2<期間T3・・・<期間T6である。
第1走行パターン:
第1アクション(1)の期間;期間T3
第2アクション(2)の期間;期間T4
第3アクション(3)の期間;期間T5
第4アクション(4)の期間;期間T6
【0092】
第2走行パターン:
第1アクション(1)の期間;期間T1
第2アクション(2)の期間;期間T4
第3アクション(3)の期間;期間T3
第4アクション(4)の期間;期間T4
【0093】
第3走行パターン:
第1アクション(1)の期間;期間T1
第2アクション(2)の期間;期間T4
第3アクション(3)の期間;期間T3
第4アクション(4)の期間;期間T2
【0094】
例えば、第1走行パターンの第1アクションの期間は、他の走行パターンの第1アクションの期間よりも長いため、比較的自車両Mの速度が速くても十分に減速することができる。例えば、第1走行パターンの第3アクションの期間は、他の走行パターンの第3アクションの期間よりも長いため、比較的他車両の速度が速くても十分に加速して、他車両と自車両との車間距離を大きくすることができる。
【0095】
例えば、各走行パターンにおいてアクションが実行された場合の躍度は、以下である。躍度の大きさは、躍度In1<躍度In2<躍度In3・・・<躍度In7である。
第1走行パターン:
第1アクション(1)の期間;躍度マイナスIn7
第2アクション(2)の期間;躍度プラスIn2
第3アクション(3)の期間;躍度プラスIn7
第4アクション(4)の期間;躍度プラスIn7
【0096】
第2走行パターン:
第1アクション(1)の期間;躍度マイナスIn6
第2アクション(2)の期間;躍度プラスIn3
第3アクション(3)の期間;躍度プラスIn5
第4アクション(4)の期間;躍度プラスIn4
【0097】
第3走行パターン:
第1アクション(1)の期間;躍度マイナスIn6
第2アクション(2)の期間;躍度プラスIn6
第3アクション(3)の期間;躍度プラスIn5
第4アクション(4)の期間;躍度プラスIn1
【0098】
第1走行パターンの減速時の減速度または躍度は、第2走行パターンまたは第3走行パターンの減速時の減速度または躍度よりも大きい。第1走行パターンの加速時の自車両の加速度または躍度は、第2走行パターンまたは第3走行パターンの加速時の自車両の加速度または躍度よりも大きい。第1走行パターンでは、比較的他車両の速度が速くても、第1アクションにおいて十分に減速し、第4アクションにおいて自車両は十分に加速を行うことができ、より好適な車線変更を実現することができる。
【0099】
例えば、第1走行パターンの第2アクションの移動量または躍度を他の走行パターンの第2アクションの移動量または躍度よりも小さい。他車両が走行する車線に自車両が進入する度合が小さいため、他車両が自車両に近づいてきた場合、自車両は迅速に他車両から離れた位置に移動することができる。
【0100】
例えば、第1走行パターンの第3アクションの幅方向の躍度または移動量は、他の走行パターンの第3アクションの躍度または移動量よりも大きいため、第2アクションで車両の幅方向の移動量が比較的小さくても、より確実に自車両Mは車線変更を行うことができる。更に、例えば、第3走行パターンの第2アクションの躍度は他の走行パターンの第2アクションの躍度よりも大きいため、自車両は他車両により確実に車線変更の位置を伝えることができる。
【0101】
上記のように走行パターンごとに、自車両が適切に車線変更を行うことができるように各アクションの期間と、各アクションが実行された場合の躍度とが規定され、自車両は、規定された期間と躍度とに基づいてアクションを実行することにより、より好適な車線変更を実現することができる。
【0102】
以上説明した実施形態によれば、自動運転制御装置100は、自車両が移動先の車線に進入する場合の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンに基づいて自車両の加速、減速、および幅寄せを制御することにより、より好適な車線変更を実現することができる。
【0103】
[ハードウェア構成]
図24は、実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、自動運転制御装置100は、通信コントローラ100-1、CPU100-2、ワーキングメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)100-3、ブートプログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)100-4、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置100-5、ドライブ装置100-6などが、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ100-1は、自動運転制御装置100以外の構成要素との通信を行う。記憶装置100-5には、CPU100-2が実行するプログラム100-5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)などによってRAM100-3に展開されて、CPU100-2によって実行される。これによって、第1制御部120、第2制御部、およびこれらに含まれる機能部のうち一部または全部が実現される。
【0104】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
自車両が車線変更する計画を立てた場合に、移動先の車線を走行する他車両の位置と速度を認識し、
前記認識された前記他車両の位置と速度に関する情報に基づいて、前記車線変更に係る自車両の加速と減速と幅寄せとを含む走行パターンを決定し、
前記決定された走行パターンに基づいて前記自車両の加速、減速、および幅寄せを制御する、ように構成されている、車両制御装置。
【0105】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0106】
1‥車両システム、100‥自動運転制御装置、120‥第1制御部、130‥認識部、140‥行動計画生成部、142‥処理部、144‥決定部、160‥第2制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24