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  • 特許-ペットにおけるがんの検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ペットにおけるがんの検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/493 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
G01N33/493 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020537088
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2019031912
(87)【国際公開番号】W WO2020036187
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2018152607
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516266031
【氏名又は名称】株式会社HIROTSUバイオサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】広津 崇亮
(72)【発明者】
【氏名】海渕 覚
(72)【発明者】
【氏名】杉本 敏美
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀始
(72)【発明者】
【氏名】今野 雅允
(72)【発明者】
【氏名】植田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】小林 省吾
(72)【発明者】
【氏名】江口 英利
(72)【発明者】
【氏名】土岐 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 正樹
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047959(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/213246(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/088039(WO,A1)
【文献】松村幸一,肺がんの揮発性バイオマーカー,Aroma Res,日本,2011年05月28日,Vol.12,No.2,Page.129-135
【文献】HIROTSU, T. et al.,A Highly Accurate Inclusive Cancer Screening Test Using Caenorhabditis elegans Scent Detection,PLoS One,2015年03月11日,Vol.10, No.3,pp.1-15,p5,lines18-34,Fig1.C
【文献】飯野雄一, 広津崇亮,感覚受容の分子機構を探る 嗅・味・痛覚の受容体研究と医学応用への可能性 線虫における化学感覚と化学走性行動,実験医学,日本,2000年11月01日,Vol.18,No.17,Page.2314-2319
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/493,
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非霊長類である哺乳動物において、がんを検査または診断する方法であって、
哺乳動物の尿サンプルに対する線虫の走性行動を評価することを含み、該哺乳動物が、イヌ科の動物、ネコ科の動物、および齧歯類の動物から選択される哺乳動物である、方法。
【請求項2】
哺乳動物が、イヌである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
哺乳動物が、ネコである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
哺乳動物が、齧歯類の動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
尿サンプルは100倍~1,000倍に希釈された尿である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
尿サンプルは500倍~5,000倍に希釈された尿である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
尿サンプルは、100~1,000倍に希釈された尿である、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットにおけるがんの検査方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
がんを簡単に安価に検出できる方法の開発が様々になされている。ヒトのがん患者の尿に線虫が誘引行動を示し、健常者の尿には線虫が忌避行動を示す原理を利用して、線虫の走性行動を指標としてヒトでがんの診断を行うことができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2015/088039
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ペットにおけるがんの検査方法を提供する。
【0005】
本発明者らは、イヌ、ネコ、およびマウスなどのペットががんを有する場合には、線虫が当該ペットの尿に対して走性行動を示すことを明らかにした。本発明は、このような知見に基づくものである。
【0006】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)非霊長類である哺乳動物において、がんを検査または診断する方法であって、
該対象の尿サンプルに対する線虫の走性行動を評価することを含む、方法。
(2)哺乳動物が、イヌ科の動物、ネコ科の動物、および齧歯類の動物から選択される哺乳動物である、上記(1)に記載の方法。
(3)哺乳動物が、イヌである、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)哺乳動物が、ネコである、上記(1)または(2)記載の方法。
(5)哺乳動物が、齧歯類の動物である、上記(1)または(2)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、がんを有する齧歯類または有しない齧歯類(健常)の尿に対する線虫の走性行動を示す。棒グラフ1つが、それぞれの個体に対応する。
図2図2は、がんを有するイヌまたは有しないイヌ(健常)の尿に対する線虫の走性行動を示す。棒グラフ1つが、それぞれの個体に対応する。
図3図3は、がんを有するネコまたは有しないネコ(健常)の尿に対する線虫の走性行動を示す。棒グラフ1つが、それぞれの個体に対応する。
【発明の具体的な説明】
【0008】
本明細書では、「対象」とは、非ヒト哺乳動物を意味し、例えば、非霊長類哺乳動物である。また、本明細書では、「対象」には、健常な対象、がんであると疑われる対象およびがんに罹患している対象が含まれる意味で用いられる。本明細書では、「がんであると疑われる対象」は、がんであると明確に疑われる対象に加えて、がんであることが具体的に疑われたことがない対象を含む。
【0009】
本明細書では、「がん」は、悪性腫瘍を意味する。がんには、造血器腫瘍、上皮癌(カルシノーマ)、および非上皮性の肉腫(サルコーマ)に大きく分類され得る。造血器腫瘍としては、白血病、悪性リンパ腫、および骨髄腫などが挙げられる。上皮癌としては、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、肝がん、子宮がん、卵巣がん、頭頸部がん、および舌がんが挙げられる。肉腫としては、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、および血管肉腫が挙げられる。
【0010】
本明細書では、「がんを検出する」とは、「がん細胞を検出する」、「がんを同定する」、「がんを判定する」、「がんの診断を補助するための方法」、「がんの診断のための予備的情報を得る方法」等と読み替えることができる。本発明の方法は、産業上利用可能な方法である。
【0011】
本明細書では、「線虫」とは、カエノラブディチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)を意味する。線虫は、米国ミネソタ大学の生物科学部のCaenorhabditis Genetics Center (CGC)に様々な環境から単離された株が登録および公開され、分譲可能である。従って、当業者であれば、知られているほとんどの株をCGCから入手することができる。自家受精により繁殖できるという観点では、雌雄同体が好ましく用いられ得る。
【0012】
本明細書では、「走性行動」とは、誘引行動または忌避行動を意味する。誘引行動とは、ある物質からの物理的距離を縮める行動を意味し、忌避行動とは、ある物質からの物理的距離を広げる行動を意味する。誘引行動を誘発する物質を誘引物質といい、忌避行動を誘発する物質を忌避物質という。線虫は嗅覚により誘引物質に対して誘引し、忌避物質から忌避するという性質を有している。誘引物質に対して誘引する行動を誘引行動(本明細書では「陽性」ということがある)といい、忌避物質から忌避する行動を忌避行動(本明細書では「陰性」ということがある)という。また、誘引行動と忌避行動とを合わせて走性行動という。
【0013】
本明細書では、「野生株」とは、線虫の野生株であり、例えば、一般的な野生株であるN2 Bristol株が挙げられる。
【0014】
本発明によれば、がんを有するか、がんを有すると疑われる対象においてがんを検出する方法(または予測する方法、若しくは診断する方法、あるいは、治療効果の基礎的情報を得る方法)であって、前記対象の尿サンプルに対する線虫の走性行動を評価することとを含む方法が提供される。
【0015】
対象としては、好ましくは、非ヒト哺乳動物、または非ヒト霊長類であり、好ましくは、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、チンチラ、ウサギ、モルモット、ハツカネズミ、プレーリードッグ、モモンガ、およびリス)、イヌ科の動物(例えば、イヌ、キツネ、タヌキ、およびフェネック)、およびネコ科の動物(例えば、ネコ、イエネコ、およびヤマネコ)が挙げられ、本発明で対象として用いることができる。
【0016】
線虫としては、野生型の線虫(例えば、N2 Bristol株)を用いることができる。線虫株は、がん患者の尿に対して誘引行動を示すので、このようながん患者の尿に対して誘引行動を示す線虫は、本発明で線虫として用いることができる。
【0017】
尿サンプルは、対象から得ることができる。尿サンプルは、本発明の方法で評価する際には、水などの溶媒で希釈してもよい。希釈する場合には、例えば、5倍から20000倍の希釈倍率であってもよく、例えば、10倍から10000倍の希釈倍率であってもよく、例えば、10倍から5000倍の希釈倍率であってもよく、10倍から2000倍の希釈倍率であってもよく、例えば、100倍から1000倍の希釈倍率であってもよく、線虫は希釈された尿サンプルに対しても走性行動を示す。本発明のある態様では、尿の希釈倍率は、例えば、100倍若しくは1000倍とすることができ、または100倍と1000倍を含む2以上の希釈倍率とすることができる。例えば、イヌの尿サンプルの希釈倍率は、10倍から2000倍の希釈倍率、例えば、100倍から1000倍の希釈倍率であってもよい。例えば、ネコの尿サンプルの希釈倍率は、5倍から20000倍の希釈倍率であってもよく、10倍から10000倍の希釈倍率、例えば、500倍から5000倍の希釈倍率であってもよい。
【0018】
線虫の走性行動の評価は、尿サンプルと線虫とを一定距離(例えば、約1cm~約5cm程度の距離)離れた位置にそれぞれ配置し、線虫が尿サンプルに対して誘引行動を示すか、忌避行動を示すかを観察することによって実施することができる。走性行動の観察は、例えば、寒天培地などの固体培地上で行うことができる。
【0019】
線虫を用いた尿の分析方法
線虫を用いた尿の分析方法は、対象から得られた被検試料(例えば、尿)と線虫とを一定距離離して配置し、線虫が被検試料に対して誘引行動を示すか、忌避行動を示すかを観察することによって行うことができる。そして、誘引行動を示した場合には、対象は、がんに罹患している、またはその可能性があると評価することができる。また、忌避行動を示した場合には、対象はがんを有しない、またはその可能性があると評価することができる。ヒトの検体を用いた分析方法の例は、引用することでその全体が本明細書に取り込まれるWO2015/088039に開示される通りである。
【0020】
より詳細には、線虫を用いた尿の分析方法は例えば、
シャーレ(例えば、固形培地を導入したシャーレ)に対象から得られた被検試料(例えば、尿サンプル)を配置することと、
被検試料が配置されたシャーレに、被検試料と一定距離離れた位置に線虫を配置することと、
配置後、線虫に行動させることと、を含みうる。
線虫を用いた尿の分析方法は例えば、線虫が被検試料に対して走性行動を示した場合には、対象ががんに罹患している、またはがんに罹患している可能性があると決定することを含みうる。
【0021】
線虫の走性行動は、被検試料に近づいた線虫数と被検試料から遠のいた線虫数の差や比により評価することができる。線虫数の差に基づく評価の場合には、差が正の値である場合には、全体として被検試料は、誘引行動を誘発するものであり、がん患者に由来するものであると評価することができ、および/または、負の値である場合には、全体として被検試料は、忌避行動を誘発するものであり、がんを有しない対象に由来するものであると評価することができる。また、線虫数の比に基づく評価の場合には、比が1以上である場合には、被検試料は、誘引行動を誘発するものであり、がんの対象に由来するものであると評価することができ、および/または、比が1未満である場合には、被検試料は、忌避行動を誘発するものであり、がんを有しない対象に由来するものであると評価することができる。また、線虫の走性行動は、例えば、以下のように走性インデックスを指標として評価することができる。
【数1】
{式中、Aは、被検試料に対して誘引行動を示した線虫の数であり、Bは、被検試料に対して忌避行動を示した線虫の数である。}
【0022】
走性インデックスが正の値である場合には、全体として被検試料は、誘引行動を誘発するものであり、がんを有する対象に由来するものであると評価することができ、負の値である場合には、全体として被検試料は、忌避行動を誘発するものであり、がんを有しない対象に由来するものであると評価することができる。
【0023】
走性インデックスは、1に近いほど線虫が誘引行動を示す比率が大きいことを意味し、-1に近いほど線虫が忌避行動を示す比率が大きいことを意味し、0に近いほど線虫は誘引行動も忌避行動も示さないことを意味する。走性インデックスの絶対値が大きいほど、行動評価結果は明確になる。走性行動を示した線虫と忌避行動を示した線虫とが同程度である場合は、陽性としてもよいし(陽性とした場合にはさらなる精密な検査を実施してもよく)、評価対象から除外してもよい。本発明では、陽性となった尿サンプルが由来する個体を更なる精密検査に供して当該個体ががんを有するか否かを決定することができる。
異なる2以上の希釈倍率の尿を検査する場合には、感度向上の観点で、いずれか一方で陽性となった場合にがんと決定してもよいし、特異度向上の観点で、いずれもが陽性となった場合にがんと決定してもよい。
【0024】
本発明の方法によって、がんを有すると評価された対象は、その後、がんの治療(例えば、化学療法、放射線療法、および外科的切除、並びにこれらの組合せ等)を受けることができる。本発明の方法によって、がんを有すると評価された対象は、更に精密検査を受けてがんの確定診断を受けてもよい。
【実施例
【0025】
実施例1:齧歯類の尿を用いたがん検査
本実施例では、齧歯類の尿サンプルに対する線虫の走性行動を評価した。
【0026】
齧歯類としては、マウスを用いた。健常なマウスおよびがんを有するマウスから尿サンプルを回収した。健常なマウスとしては、c-Met欠損を有するがんを発症しないマウス(C57Bl/6系統)を用い、がんを有するマウスとしては、KrasG12D変異を有するマウス(Noguchi K. et al., Oncology Letters, 16: 1892-1898, 2018参照)を用いた。尿サンプルを100倍に希釈し、WO2015/088039に記載された方法によって、線虫の尿サンプルに対する走性行動を評価した。線虫としては、野生型線虫(Bristol N2株)を用いた。走性行動は、走性インデックスを用いて評価した。測定は12回(以下同様)繰り返して個体毎の走性インデックスの平均値を求めた。尿サンプルに対する走性行動の結果は、図1に示される通りであった。
【0027】
【数1】
{式中、Aは、被検試料に対して誘引行動を示した線虫の数であり、Bは、被検試料に対して忌避行動を示した線虫の数である。}
【0028】
図1に示されるように、健常マウスの尿サンプルに対しては、ほぼ全例に対して走性インデックスが負であるか0.05以下となったのに対して、がんを有するマウスの尿に対しては、3つの系統の尿に対して走性インデックスが0.05超となった。このことから、尿サンプルに対する線虫の走性行動を評価することによって、がんを有するマウスを評価し得ることが明らかとなった。なお、PK-60+98の尿サンプルは、1000倍希釈で用いた場合には線虫は尿サンプルに対して誘引行動を示した(このとき、走性インデックスは、約0.15であった)。なお、1000倍希釈の場合でも3つのがんを有するマウスの尿サンプルに対しては誘引行動を示した。このように、100倍希釈および1000倍希釈のいずれにおいても、がんモデルマウスの尿に対して線虫が誘引行動を示すことが明らかとなった。走性インデックスがプラスの場合を陽性とし、マイナスの場合を陰性として評価すると、100倍希釈では、感度は28.6%であり、特異度は100%、1000倍希釈では、感度は42.8%、特異度は83.3%であった。このように、齧歯類の尿に対する線虫の走性行動を評価することによって、がんの有無を評価することができることが明らかとなった。
【0029】
また、100倍希釈および1000倍希釈のいずれかにおいて、走性インデックスがプラスの場合を陽性とし、100倍希釈および1000倍希釈のいずれでもマイナスの場合を陰性として評価すると、感度は、71.4%(7匹中5匹)であり、特異度は83.3%(12匹中10匹)であった。この結果から、線虫の走性行動を指標としたがんの検査は、齧歯類であるマウスに対して有効であることが明らかとなった。
【0030】
次に、健常のイヌとがんを有するイヌから尿サンプルをそれぞれ回収し、実施例1と同様に1000倍希釈した尿を用いて線虫の走性行動を評価した。
【0031】
イヌとしては、健康なチワワ、健康なジャックラッセル、血管肉腫のゴールデンレトリバー、および肝腫瘍のスコティッシュテリアを用いた。結果は、図2に示される通りであった。図2に示されるように、健常のイヌの尿に対する走性インデックスはマイナスであったのに対して、がんを有するイヌの尿に対する走性インデックスはプラスであった。イヌにおいて、感度および特異度は共に100%であった。この結果から、線虫の走性行動を指標としたがんの検査は、イヌに対して有効であることが明らかとなった。
【0032】
さらに、健常のネコとがんを有するネコから尿サンプルをそれぞれ回収し、1000倍希釈した尿を用いて線虫の走性行動を評価した。
【0033】
ネコとしては、健康なエキゾチックショートヘア(2匹)、健康なMix、肺腫瘍のアメリカンショートヘア、乳腺腫瘍のMix、鼻腔内腺がんのMix、およびリンパ腫のペルシャを用いた。結果は、図3に示される通りであった。図3に示されるように、健常のネコの尿に対する走性インデックスは、がんを有するネコの尿に対する走性インデックスよりも明確に低かった。走性インデックスがプラスの場合を陽性とし、マイナスの場合を陰性として評価すると、感度は100%(4匹中4匹)であり、特異度は66.7%(3匹中2匹)であった。この結果から、線虫の走性行動を指標としたがんの検査は、ネコに対して有効であることが明らかとなった。
【0034】
上記の結果から、線虫の走性行動を指標としたがんの検査は、イヌおよびネコ、並びに齧歯類であるマウスにおいて有効であることが明らかとなった。このように、ペットにおいても、線虫の走性行動を指標とした尿検査でがんを安価かつ迅速に診断することができる。
【0035】
イヌおよびネコの上記尿サンプルについて、尿の希釈倍率を変えて同様に線虫の走性行動を検出した。イヌにおいては、少なくとも10倍希釈から1000倍希釈において肝腫瘍および血管肉腫を有するイヌ由来の尿サンプルはプラスの走性インデックスを示した。また、ネコにおいても、少なくとも10倍希釈から10000倍希釈において、腫瘍を有するネコ由来の尿サンプルはプラスの走性インデックスを示した。

図1
図2
図3