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特許7397499タンディッシュに衝撃パッドを利用する溶融金属の鋳造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】タンディッシュに衝撃パッドを利用する溶融金属の鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20231206BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20231206BHJP
   B22D 41/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B22D11/10 310G
B22D11/16 104F
B22D41/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021116195
(22)【出願日】2021-07-14
(62)【分割の表示】P 2019540714の分割
【原出願日】2016-10-17
(65)【公開番号】P2021169123
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】519126516
【氏名又は名称】アイ. ピー. シー. リフラクトリーズ エー. エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】プリーゾル,イヴァン
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-136923(JP,A)
【文献】特表2002-500956(JP,A)
【文献】特開昭53-037529(JP,A)
【文献】特開平05-169209(JP,A)
【文献】特開平05-104213(JP,A)
【文献】実開昭57-165350(JP,U)
【文献】特開昭51-013327(JP,A)
【文献】特開昭53-017525(JP,A)
【文献】特開昭58-009756(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0135298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10
B22D 11/16
B22D 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)タンディッシュの底に球面の上部を有する衝撃パッドが配置されるステップと、
2)次いで、溶融金属が前記タンディッシュの中に運ばれるステップと、
3)前記球面の上部を有する衝撃パッドが、前記溶融金属の流れの最初の衝撃を捕捉するステップと、
4)前記溶融金属の流入時において、前記球面の上部を有する衝撃パッドが溶融金属の流れを加速させて最適化するステップであって、前記タンディッシュ内の前記溶融金属の総体積の流れの方向を制御してスラグと金属の接触領域での保持時間を最大限に引き延ばす、ステップと、
5)さらに、高い鋳造速度または低い鋳造速度での前記溶融金属の流入時において前記タンディッシュ内の前記溶融金属の保持時間を引き延ばすステップと、
6)最後に、タンディッシュノズルが前記タンディッシュにおいて所望の高さの溶融金属に達した後に開放されるステップであって、前記タンディッシュ内の前記溶融金属の上部は一定であり、前記タンディッシュに流入する金属の量は、前記タンディッシュを離れて前記タンディッシュノズルを通して次の連続鋳造設備に向かう金属の量に等しい、ステップと
を特徴とする、タンディッシュに衝撃パッドを利用する溶融金属の連続鋳造方法。
【請求項2】
上側タンディッシュノズルおよび次の連続鋳造設備への浸漬入口ノズルを通して、前記タンディッシュ内の前記溶融金属の総体積が、前記タンディッシュを離れるように導かれることを特徴とする、請求項1に記載のタンディッシュに衝撃パッドを利用する溶融金属の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンディッシュに球状の上部を有する衝撃パッドを利用する溶融金属の鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンディッシュは通常、補強リブを有する鋼板の溶接物であり、耐火性の内張りが設けられている。タンディッシュノズルはタンディッシュの底において壁で覆われている。事実として、タンディッシュ操作は鋳造直前の溶融金属の品質に影響を与える可能性があるため、タンディッシュ冶金技術の開発は非常に重要である。
【0003】
タンディッシュは鋳造前の液体溶融金属の貯蔵所として様々な冶金機能に対応し、取鍋の交換時の個々の鋳造流のための溶融金属すなわち鋼の輸送体であり、鋳造流のスプラッシュを最小限に抑え、溶融金属の溶鋼静圧を下げ、溶融金属を化学的および熱的に均質化し、液体金属をスラグから分離し、鋳造速度を評価し、溶融金属の温度を監視し、鋳造速度を一定にし、溶融金属の安定した一定流量を維持し、晶析装置において一定の液体金属レベルを維持し、そこでは非金属介在物を浮上分離除去し、そこでは例えばドーピングのような最新の冶金操作を適用することができる。タンディッシュには、流量の制御による保持時間の調節やデッドボリュームの調節なども存在する。現在のところ、移行面積およびデッドボリュームを最小限に抑えるための道具としてのタンディッシュの使用という主要目的が存在する。
【0004】
鋼の最終品質は、スラグの引き込みを少なくし、かつ非金属介在物の枯渇を最大にすることが可能であるかによって決まり、従って、タンディッシュにおいて最適な流量を達成することが必要である。タンディッシュを通る溶融金属流は流体力学的特性を有し、単相乱流および混相流を含み、保持時間が分離されている場合、介在物の量がそれらの移動に従って増加し、熱エネルギーが移動し、鋳造プロセスの開始および終了時に渦巻きが生じる。最適な鋳造流量を達成し、こうしてより高純度の金属を達成するために、より高い平均保持時間、強力な乱流およびデッドエリアの減少、活性カバースラグによる可能な乱流領域および流れる介在物の凝固加速、および空気の吸収を引き起こす溶融金属の表面におけるスプルーカップによって生成されるオープン「レッド」アイの除去を確実にすることが重要である。タンディッシュ内に残っている残留する金属およびスラグは次の鋳造前に機械的に除去しなければならず、そうしなければこのスラグは再循環することになるが、その除去は骨が折れる作業であり、それにより連続鋳造の時間が長引いてしまう。別の問題はデッドボリュームであり、それは熱損失を引き起こし、かつタンディッシュノズルの隣に合流点を形成し、次いでノズルを封じる。従って、タンディッシュ内の流量は、流れの方向の最適な制御および温度勾配によって維持しなければならない。
【0005】
これまで、特別なタンディッシュ設備、必要に応じて、ダンパー、ダム、堰、衝撃パッド、不活性ガスによって吹き飛ばすためのブロックが使用されてきた。
【0006】
これまで、スロバキア特許第288043号に係る機械的バッフルである「Crashタンディッシュパッド」が使用されており、これは有縁トンネルを有する側壁で取り囲まれた上側衝撃面を有する基礎デスクを含む。Crashタンディッシュパッドは、それ自体の上にシャワーを浴びせ、溶融金属の供給流を偏向させ、かつ偏向された流れを管および開放した上側パッド表面から流出させることができるように作られている。管および/または堰のような壁を取り囲んでいる円弧状段差部分により流出の制御を助ける。流出の分離および分配により、衝撃パッドとタンディッシュ出口開口部との間での溶融金属における栓流の発生を容易にする。実際には、液体金属流はタンディッシュの底の後にタンディッシュノズルへと拡散し、タンディッシュの上方角にデッドゾーンが形成される。
【発明の概要】
【0007】
タンディッシュに衝撃パッドを利用する溶融金属の鋳造方法は、上記欠点をなくすか大いに制限するものである。本発明の性質は、溶融金属をその底に球状の上部を有する衝撃パッドが位置しているタンディッシュの中まで運ぶと、衝撃パッドは最初の衝撃流量を捕捉し、溶融金属の流れを総体積の点で加速させて最適化させる。タンディッシュノズルはタンディッシュにおいて所望の高さの溶融金属に達した後に開放されるが、溶融金属の上部は一定であり、流入する金属の量は、タンディッシュを離れてタンディッシュノズルを通して次の連続鋳造設備に向かう金属の量に等しい。
【0008】
衝撃パッドを利用する溶融金属の鋳造方法は、変更された特性を有する溶融金属鋳造形態のいずれかのために提案されており、故に、前の取鍋にあったために次の取鍋に別の品質を有する溶融金属が存在する場合、最初の取鍋と次の取鍋との混合によって作り出される鋼は売り物にならないので、タンディッシュを可能な限り空にしなければならない。取鍋を交換する場合などに鋳造速度が変わるため、本革新的な鋳造方法は鋳造速度がより低くてもより高くても、保持時間を引き延ばす。溶融金属をその底に球状の上部を有する衝撃パッドが位置しているタンディッシュの中まで運ぶと、衝撃パッドは最初の鋳造流量を捕捉し、衝撃エネルギーを除去し、上側タンディッシュノズルおよび次の連続鋳造設備への浸漬入口ノズルを通して、液体金属を総可能タンディッシュ体積で、タンディッシュを離れるように導く。
【0009】
前記衝撃パッドを利用する溶融金属鋳造の方法の利点は、低い鋳造速度でも短絡流が除去され、タンディッシュにおけるデッドゾーンの形成、溶融金属の表面におけるレッドアイ効果が回避され、金属体積へのタンディッシュスラグの引き込みが生じることがなく、その実施において介在物の点で金属純度というプラスの影響が示されるという点にある。空でないタンディッシュから生じる未確定品質の鋼を販売することができないという理由により生じる経済的損失は、前記鋳造方法によってなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
溶融金属をその底に球状の上部を有する衝撃パッドが位置しているタンディッシュの中に注ぎ入れると、衝撃パッドは最初の衝撃流量を捕捉し、溶融金属スプラッシュを防止し、溶融金属の流れを加速させて総体積の点で最適化させ、衝撃エネルギーを除去する。タンディッシュノズルはタンディッシュにおいて所望の高さの溶融金属に達した後に開放されるが、溶融金属の上部は一定であり、流入する金属の量はタンディッシュを離れてタンディッシュノズルを通して次の連続鋳造設備に向かう金属の量に等しい。
【0011】
衝撃パッドを利用する溶融金属の鋳造方法は、変更された特性を有する溶融金属鋳造形態のいずれかのために提案されており、故に、前の取鍋にあったために次の取鍋に別の品質を有する溶融金属が存在する場合、最初の取鍋と次の取鍋との混合によって作り出される鋼は売り物にならないので、タンディッシュを可能な限り空にしなければならない。取鍋を交換する場合などに鋳造速度が変わるので、本革新的な鋳造方法は鋳造速度がより低くてもより高くても、保持時間を引き延ばす。溶融金属をその底に球状の上部を有する衝撃パッドが位置しているタンディッシュの中まで運ぶと、衝撃パッドは最初の鋳造流量を捕捉し、衝撃エネルギーを除去し、上側タンディッシュノズルおよび次の連続鋳造設備への浸漬入口ノズルを通して、液体金属を総可能タンディッシュ体積で、タンディッシュを離れるように導く。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、特に鋼合金の製造のために冶金分野で産業上利用可能であり、大きな製鋼所に少量の合金鋼の要求や既存の施設の経済的に効率的な使用を応じさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】スロバキア国特許第288043号明細書