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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1368 20060101AFI20231208BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20231208BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G02F1/1368
G02F1/133 550
G02F1/1335 505
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019192917
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021067808
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】518078142
【氏名又は名称】上海天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英毅
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159818(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0262061(US,A1)
【文献】特開2014-032398(JP,A)
【文献】特開2007-011259(JP,A)
【文献】特開2015-225300(JP,A)
【文献】特開2011-044697(JP,A)
【文献】特開2003-195828(JP,A)
【文献】特開2005-157391(JP,A)
【文献】特開2010-020099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1368
G02F 1/133
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置であって、
液晶パネルと、
駆動回路と、を含み、
前記液晶パネルは、
素子基板と、
対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間のネガ型液晶材料の液晶層と、を含み
前記素子基板は、
第1絶縁性基板と、
前記第1絶縁性基板上の配向膜と、
前記第1絶縁性基板上の共通電極と、
前記第1絶縁性基板上で、前記共通電極と前記配向膜との間の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極と前記共通電極との間の層間絶縁膜と、
を含み、
前記対向基板は、
第2絶縁性基板と、
前記第2絶縁性基板上の、前記複数の画素電極それぞれに対向するカラーフィルタと、
を含み、
前記駆動回路は、前記共通電極の電位を基準として、第1軸に沿って隣接する画素電極に対して逆極性の画素電位を与え、
前記複数の画素電極の各画素電極は、複数の直線状部を含み、
前記複数の直線状部それぞれと前記共通電極との間の電界が前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記隣接する画素電極の一方の画素電極の直線状部と、前記隣接する画素電極の他方の画素電極の直線状部との間の電界が、前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記対向基板は、前記隣接する画素電極の前記直線状部の間の第1領域と対向する第2領域を含み、
前記第1領域を通過する可視光域の少なくとも一部の波長域の光は、前記第2領域を通過し、
前記複数の画素電極の各画素電極の前記複数の直線状部の、前記配向膜による前記液晶層の初期配向方向と垂直な軸に対する角度の大きさは共通であり、
前記角度の大きさは、15°以上30°以下である、
液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示装置であって、
前記第2領域は、前記隣接する画素電極と対向し、互いに接触するカラーフィルタそれぞれの一部を含む、
液晶表示装置。
【請求項3】
液晶表示装置であって、
液晶パネルと、
駆動回路と、を含み、
前記液晶パネルは、
素子基板と、
対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間のネガ型液晶材料の液晶層と、を含み
前記素子基板は、
第1絶縁性基板と、
前記第1絶縁性基板上の配向膜と、
前記第1絶縁性基板上の共通電極と、
前記第1絶縁性基板上で、前記共通電極と前記配向膜との間の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極と前記共通電極との間の層間絶縁膜と、
を含み、
前記対向基板は、
第2絶縁性基板と、
前記第2絶縁性基板上の、前記複数の画素電極それぞれに対向するカラーフィルタと、
を含み、
前記駆動回路は、前記共通電極の電位を基準として、第1軸に沿って隣接する画素電極に対して逆極性の画素電位を与え、
前記複数の画素電極の各画素電極は、複数の直線状部を含み、
前記複数の直線状部それぞれと前記共通電極との間の電界が前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記隣接する画素電極の一方の画素電極の直線状部と、前記隣接する画素電極の他方の画素電極の直線状部との間の電界が、前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記対向基板は、前記隣接する画素電極の前記直線状部の間の第1領域と対向する第2領域を含み、
前記第1領域を通過する可視光域の少なくとも一部の波長域の光は、前記第2領域を通過し、
前記複数の画素電極の各画素電極の前記複数の直線状部の、前記配向膜による前記液晶層の初期配向方向と垂直な軸に対する角度の大きさは共通であり、
前記角度の大きさは、15°以上30°以下であり、
前記第2領域は無色透明領域を含む、
液晶表示装置。
【請求項4】
液晶表示装置であって、
液晶パネルと、
駆動回路と、を含み、
前記液晶パネルは、
素子基板と、
対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間のネガ型液晶材料の液晶層と、を含み
前記素子基板は、
第1絶縁性基板と、
前記第1絶縁性基板上の配向膜と、
前記第1絶縁性基板上の共通電極と、
前記第1絶縁性基板上で、前記共通電極と前記配向膜との間の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極と前記共通電極との間の層間絶縁膜と、
を含み、
前記対向基板は、
第2絶縁性基板と、
前記第2絶縁性基板上の、前記複数の画素電極それぞれに対向するカラーフィルタと、
を含み、
前記駆動回路は、前記共通電極の電位を基準として、第1軸に沿って隣接する画素電極に対して逆極性の画素電位を与え、
前記複数の画素電極の各画素電極は、複数の直線状部を含み、
前記複数の直線状部それぞれと前記共通電極との間の電界が前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記隣接する画素電極の一方の画素電極の直線状部と、前記隣接する画素電極の他方の画素電極の直線状部との間の電界が、前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記対向基板は、前記隣接する画素電極の前記直線状部の間の第1領域と対向する第2領域を含み、
前記第1領域を通過する可視光域の少なくとも一部の波長域の光は、前記第2領域を通過し、
前記複数の画素電極の各画素電極の前記複数の直線状部の、前記配向膜による前記液晶層の初期配向方向と垂直な軸に対する角度の大きさは共通であり、
前記角度の大きさは、15°以上30°以下であり、
前記第2領域は、前記隣接する画素電極と対向するカラーフィルタの間の無色透明領域と、前記対向するカラーフィルタそれぞれの一部と、を含む、
液晶表示装置。
【請求項5】
液晶表示装置であって、
液晶パネルと、
駆動回路と、を含み、
前記液晶パネルは、
素子基板と、
対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間のネガ型液晶材料の液晶層と、を含み
前記素子基板は、
第1絶縁性基板と、
前記第1絶縁性基板上の配向膜と、
前記第1絶縁性基板上の共通電極と、
前記第1絶縁性基板上で、前記共通電極と前記配向膜との間の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極と前記共通電極との間の層間絶縁膜と、
を含み、
前記対向基板は、
第2絶縁性基板と、
前記第2絶縁性基板上の、前記複数の画素電極それぞれに対向するカラーフィルタと、
を含み、
前記駆動回路は、前記共通電極の電位を基準として、第1軸に沿って隣接する画素電極に対して逆極性の画素電位を与え、
前記複数の画素電極の各画素電極は、複数の直線状部を含み、
前記複数の直線状部それぞれと前記共通電極との間の電界が前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記隣接する画素電極の一方の画素電極の直線状部と、前記隣接する画素電極の他方の画素電極の直線状部との間の電界が、前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記対向基板は、前記隣接する画素電極の前記直線状部の間の第1領域と対向する第2領域を含み、
前記第1領域を通過する可視光域の少なくとも一部の波長域の光は、前記第2領域を通過し、
前記複数の画素電極の各画素電極の前記複数の直線状部の、前記配向膜による前記液晶層の初期配向方向と垂直な軸に対する角度の大きさは共通であり、
前記角度の大きさは、15°以上30°以下であり、
前記液晶パネルは複数の画素を含み、
前記複数の画素の各画素は複数の副画素で構成され、
前記複数の画素電極の各画素電極は、各副画素に割り当てられ、
前記複数の画素の各画素に含まれる少なくとも一つの前記第2領域は無色透明領域を含み、
異なる画素に割り当てられ互いに隣接する画素電極の間の前記第2領域は、互いに接触するカラーフィルタそれぞれの一部を含む、
液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶表示装置であって、
無色透明のデータ線が、前記第1領域において延びている、
液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶表示装置であって、
さらに制御装置を含み、
前記制御装置は、
通常モードにおいて白表示の画素の画素電極それぞれに、通常画素電位を与え、
高輝度モードにおいて、白表示の画素の画素電極それぞれに、前記通常画素電位より大きさが大きい画素電位を与える、
液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低消費電力及び高精細化が可能という特徴を生かして、小型の携帯電話から大型のテレビモニタまで広い分野に適用されている。表示装置に対して広視野角が求められている場合、横方向電界型液晶表示装置が使用される。横方向電界型液晶表示装置の例は、米国特許出願公開第2016/0062197号、米国特許出願公開第2008/0186440号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0062197号
【文献】米国特許出願公開第2008/0186440号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶表示装置は、スタックされたバックライトユニットと液晶表示モジュールを含み、バックライトユニットからの光の液晶表示モジュールの透過光量を制御することによって画像を表示する。従って、液晶表示装置における透過率の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の液晶表示装置は、液晶パネルと駆動回路とを含む。前記液晶パネルは、素子基板と、対向基板と、前記素子基板と前記対向基板との間のネガ型液晶材料の液晶層と、を含む。前記素子基板は、第1絶縁性基板と、前記第1絶縁性基板上の配向膜と、前記第1絶縁性基板上の共通電極と、前記第1絶縁性基板上で、前記共通電極と前記配向膜との間の複数の画素電極と、前記複数の画素電極と前記共通電極との間の層間絶縁膜と、を含む。前記対向基板は、第2絶縁性基板と、前記第2絶縁性基板上の、前記複数の画素電極それぞれに対向するカラーフィルタと、を含む。前記駆動回路は、前記共通電極の電位を基準として、第1軸に沿って隣接する画素電極に対して逆極性の画素電位を与える。前記複数の画素電極の各画素電極は、複数の直線状部を含む。前記複数の直線状部それぞれと前記共通電極との間の電界が前記ネガ型液晶材料に与えられる。前記隣接する画素電極の一方の画素電極の直線状部と、前記隣接する画素電極の他方の画素電極の直線状部との間の電界が、前記ネガ型液晶材料に与えられる。前記対向基板は、前記隣接する画素電極の前記直線状部の間の第1領域と対向する第2領域を含む。前記第1領域を通過する可視光域の少なくとも一部の波長域の光は、前記第2領域を通過する。前記複数の画素電極の各画素電極の前記複数の直線状部の、前記配向膜による前記液晶層の初期配向方向と垂直な軸に対する角度の大きさは共通である。前記角度の大きさは、15°以上30°以下である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、液晶表示装置の透過率を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】液晶表示装置の構成を模式的に示している。
図2】液晶パネルの表示領域における断面構造の例を示す。
図3A】画素電極と液晶層の初期配向状態との間の関係を模式的に示す。
図3B図3AにおけるIIIB-IIIB切断線での断面構造を模式的に示す。
図4】屈曲角度θが異なる液晶パネルにおける、駆動電圧とFFS駆動領域を透過する光の輝度との関係のシミュレーション結果の例を示す。
図5】屈曲角度θが異なる液晶パネルにおける、駆動電圧とIPS駆動領域を透過する光の輝度との関係のシミュレーション結果の例を示す。
図6】シミュレーションに使用した液晶パネルを示す。
図7】屈曲角度θが異なる液晶パネルにおける、駆動電圧と副画素を透過する光の輝度との関係のシミュレーション結果の例を示す。
図8図7のシミュレーションと同一条件のシミュレーションにおける、屈曲角度θと白電圧との関係を示す
図9図7に示すグラフから抽出した、屈曲角度θと相対ピーク輝度との関係を示す。
図10】データ線と平面視において重なるように、5μmのブラックマトリックスを配置させた一般的なFFS型液晶パネルのシミュレーション結果を示す。
図11図6に示すようにデータ線と重なるブラックマトリックスを省略し、屈曲角度θを20°にした液晶パネルのシミュレーション結果を示す。
図12】実施形態2における、液晶パネルの他の構成例を示す。
図13】実施形態2における、カラーフィルタの間の間隔(無色透明領域の幅)が1μmである構成例と、0μmである構成例における、駆動電圧と副画素の輝度との関係のシミュレーション結果を示している。
図14】実施形態2における、カラーフィルタと無色透明領域のレイアウト例を示す。
図15】その他の実施形態における、層間絶縁膜の異なる厚みにおける、駆動電圧と、FFS駆動領域及びIPS駆動領域を通過する光の相対輝度と、の関係を示す。
図16】その他の実施形態における、ピーク輝度における駆動電圧(ピーク電圧)と層間絶縁膜の厚みとの関係を示す。
図17】その他の実施形態における、相対的なピーク輝度と層間絶縁膜の厚みとの関係を示す。
図18】その他の実施形態における、層間絶縁膜の異なる厚みにおける、駆動電圧とFFS駆動領域の相対輝度との関係を示す。
図19】その他の実施形態における、層間絶縁膜の異なる厚みにおける、駆動電圧とIPS駆動領域の相対輝度との関係を示す。
図20】その他の実施形態における、層間絶縁膜の異なる厚みにおける、駆動電圧と、FFS駆動領域及びIPS駆動領域全体の相対輝度との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。本実施形態は本開示を実現するための一例に過ぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【0009】
<実施形態1>
[液晶表示装置の構成]
図1は、本実施形態の液晶表示装置を模式的に示している。液晶表示装置10は、液晶表示モジュール130及び面状光源装置133を含む。液晶表示モジュール130は、液晶パネル131、液晶パネルを駆動する駆動回路137及び制御装置110を含む。図1の構成例において、液晶パネル131は、カラー表示を行うカラー液晶パネルである。液晶パネル131において、画素141は、隣接する赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の副画素で構成される。
【0010】
制御装置110は、外部から受信した画像信号の信号変換を行い、液晶表示モジュール130に画像を表示させるための信号を生成する。制御装置110は、生成した信号を、液晶パネル131の駆動回路137に送信する。駆動回路137は、制御装置110から受信した信号に基づいて、液晶パネル131を駆動する。
【0011】
面状光源装置133は、液晶パネル131に、その背面側から光を照射する。液晶パネル131は、入力される駆動信号に基づいて、面状光源装置133からの光の透過光量を副画素毎に制御することで、画像を表示する。観察者は、面状光源装置133から液晶パネル131を透過した光により形成される表示画像を観察する。
【0012】
図2は、液晶パネル131の表示領域における断面構造の例を示す。液晶パネル131は、TFT基板200と、TFT基板200に対向する対向基板250と、を含む。TFT基板200と対向基板250との間には、液晶層(液晶材料)231が挟まれている。液晶材料はネガ型である。図2において、TFT基板200、液晶層231、及び対向基板250は、Z軸に沿って重ねられている。
【0013】
TFT基板200は、素子基板の例であり、絶縁基板202を含む。絶縁基板202は第1絶縁性基板の例であり、ガラス又は樹脂からなる絶縁性の透明基板である。絶縁基板202は、例えば矩形であり、その一つの主面が対向基板250の一つの主面と対向している。絶縁基板202の液晶層231と反対側の主面上に、偏光板201が取り付けられている。
【0014】
図2において示されていないが、絶縁基板202の液晶層231に対する主面上には、制御する副画素を選択するための薄膜トランジスタ(TFT)アレイが形成されている。図2は、絶縁基板202上のゲート絶縁膜203を示している。ゲート絶縁膜203は、例えば、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜である。
【0015】
データ線204は、ゲート絶縁膜203上の形成されている。図2においては、一つのデータ線が、例として、符号204で指示されている。データ線204は、副画素に与えられる信号(電位)を伝送する。図2に示す構成例において、データ線204は、透明導体で形成されており、例えば、無色透明のIndium Tin Oxide(ITO)で形成されている。データ線204は、遮光性の導体で形成されていてもてよい。
【0016】
絶縁性の保護膜205が、データ線204(TFTアレイ)を覆うように形成されている。保護膜205は、例えば、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜である。保護膜205上に共通電極206が形成されている。図2の構成例において、共通電極206は、1枚のシート状の透明電極であり、例えば透明のITOで形成されている。
【0017】
共通電極206を覆うように、層間絶縁膜207が形成されている。層間絶縁膜207は、例えば、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜である。層間絶縁膜207上に画素電極が形成されている。図2は、例として、二つの画素電極208A及び208Bを示している。一つの画素電極は、割り当てられている一つの副画素の透過光量を制御するための電極である。画素電極208A、208Bは、それぞれ、櫛歯状電極であり、図2は、画素電極における歯の部分の断面を示す。図2の構成例において、画素電極208A、208Bは、それぞれ、3本の歯部を含む。
【0018】
画素電極を覆うように、配向膜209が積層されている。配向膜209は液晶層231と接触して、無電界時の液晶分子の配列状態(初期配向)を規定する。液晶分子の初期配向の詳細は後述する。
【0019】
図2の構成例において、対向基板250は、カラーフィルタ(CF)を含むCF基板である。対向基板250は、ガラス又は樹脂からなる絶縁基板252を含む。絶縁基板252は第2絶縁性基板の例であり、例えば矩形である。絶縁基板252の液晶層231と反対側の主面上に、偏光板251が取り付けられている。
【0020】
絶縁基板252の液晶層231の側の主面上に、赤、緑、青のカラーフィルタ253R、253G、253Bが形成されている。赤、緑、青のいずれかのカラーフィルタが、一つの副画素に含まれる。図2の例において、左側の画素電極208Aは、赤のカラーフィルタ253Rに対向し、右側の画素電極208Bは緑のカラーフィルタ253Gに対向している。カラーフィルタは、光透過性を有し、可視光域における特定の波長域(色)の光を透過させ、他の波長の光を吸収する。
【0021】
カラーフィルタ上に、配向膜254が積層されている。配向膜254は、液晶層231に接触し、無電界時の液晶分子の配列状態(初期配向)を規定する。以下に説明する例において、TFT基板200の配向膜209の配向方向と、対向基板250の配向膜254の配向方向は平行である。TFT基板200の偏光板201の偏光軸と、対向基板250の偏光板251の偏光軸とは垂直である。配向方向は、TFT基板200の偏光板201の偏光軸もしくは対向基板250の偏光板251の偏光軸と平行である。
【0022】
図2の構成例において、対向基板250が、観察者が存在する前側であり、TFT基板200が後側である。つまり、面状光源装置133は、図2が示す液晶パネル131のTFT基板200側に配置される。他の例において、TFT基板200が前側であり、対向基板250が後側であってもよい。
【0023】
図2に示す構成例において、液晶表示モジュール130は、ドット反転モード又はVライン反転モード(列反転モードとも呼ぶ)において動作する。ドット反転モードは、ゲート線(X軸/横線)に沿って隣接する副画素に共通電極206の電位を基準として、逆極性の画素電位を与え、さらに、データ線(Y軸/縦線)に沿って隣接する副画素に逆極性の画素電位を与える。X軸(第1軸の例)、Y軸及びZ軸は互いに直交している。
【0024】
Vライン反転モードは、ゲート線(X軸)に沿って隣接する副画素に、共通電極206の電位を基準として、逆極性の画素電位を与え、データ線(Y軸)に沿って隣接する副画素に同極性の画素電位を与える。
【0025】
つまり、液晶表示モジュール130は、同一のゲート線に接続され、隣接するデータ線に接続されている副画素に対して、共通電極206の電位を基準として、逆極性の画素電位を与える。図2に示す構成例において、液晶表示モジュール130は、画素電極208Aと画素電極208Bに、共通電極206の電位を基準として、逆極性の画素電位を与える。なお、フレーム毎に、画素電極に与えられる電位の極性は切り替えられる。
【0026】
図2に示すように、画素電極208A、208Bと共通電極206とは、異なる層に形成されており(異なる絶縁膜上に形成されており)、画素電極208A、208Bと共通電極206の間に、フリンジ電界が形成される。液晶層231において主にフリンジ電界により駆動される領域をFFS(Fringe-Field Switching)駆動領域233と呼ぶ。
【0027】
さらに、同一層に形成されている画素電極208A、208Bに対して逆極性の画素電位が与えられるため、画素電極208A、208Bの間において横方向の電界が形成される。電気力線は一方の画素電極から他方の画素電極に向かう。液晶層231において主に画素電極間の電界により駆動される領域をIPS(In-Plane Switching)駆動領域235と呼ぶ。TFT基板200において隣接する画素電極208A、208Bの間の第1領域と、その第1領域に対向する対向基板250の第2領域との間の液晶層231の領域は、IPS駆動領域235とその両側のFFS駆動領域233(の一部)を含む。
【0028】
液晶表示モジュール130は、各副画素を対応するTFTによって選択し、その画素電極の電位を制御する。液晶表示モジュール130は、画像データに応じて、各副画素の画素電極の電位を制御して、副画素の透過光量を制御する。液晶表示モジュール130は、副画素の透過光量(輝度)を、画素電極と共通電極206との間のフリンジ電界により制御する。
【0029】
副画素の輝度は、対応する画素電極によるFFS駆動領域233を透過する光、及び、対応する画素電極と両側の隣接する画素電極との間のIPS駆動領域235それぞれの一部を透過する光、の和により決定される。共通電極206の電位は、例えば一定である。共通電極206の電位は、フレーム毎に変化されてもよい。
【0030】
図2に示す構成例において、X軸に沿って隣接するカラーフィルタの端面は接触し、それらの間に遮光性のブラックマトリックス(BM)は存在しない。例えば、カラーフィルタ253Rとカラーフィルタ253Gは接触しており、カラーフィルタ253Rとカラーフィルタ253Gは界面を形成する。カラーフィルタ253Bとカラーフィルタ253R及びカラーフィルタ253Bとカラーフィルタ253Gに対しても同様である。
【0031】
IPS駆動領域235を透過した光は、ブラックマトリックスにより遮られることがなく、所定の一部の波長域の光が、カラーフィルタ253R及びカラーフィルタ253Gをそれぞれ透過する。図2に示す構成例において、データ線204は、画素電極208A及び208Bの間に存在し、平面視において(Z軸に沿って見て)、IPS駆動領域235を通過する。しかし、データ線204は透明であるため、IPS駆動領域235を透過する光の輝度の低下を小さくできる。ブラックマトリックスの省略する又は透明なデータ線は、液晶パネル内で吸収されるバックライトからの光量を減少させ、液晶パネル内部の温度上昇を抑制できる。
【0032】
上述のように、液晶パネル131は、X軸に沿って隣接する副画素(画素電極)の間にブラックマトリックスが存在しない。Y軸に沿って隣接する副画素の間にブラックマトリックスはなくともよいが、存在した方が好ましい。
【0033】
画素電極と共通電極206との間のフリンジ電界の隣接副画素への侵入を抑えるため、隣接画素電極の間に相応の距離が必要とされる。隣接画素電極の間の電界の強さは、隣接画素電極間の距離の増加と共に減少する。従って、隣接画素電極の間の電界によって、IPS駆動領域235の液晶分子を適切に駆動するためには、隣接画素電極のそれぞれに、絶対値の大きな画素電位を与えることが重要となる。
【0034】
一方、フリンジ電界が与えられるFFS駆動領域233において所望の透過率を得るための画素電位は、画素電極近傍の液晶分子の初期配向状態からの回転量に依存する。回転量が大きい程、液晶層231中央のバルク液晶が回転しやすく、絶対値の小さい画素電位が所望の透過率を与える。
【0035】
しかし、上述のように、画素電位の大きさ(絶対値)が小さい(副画素の駆動電圧が小さい)場合、IPS駆動領域235に対して十分な大ききの電界を与えることができないことがあり得る。従って、FFS駆動領域233とIPS駆動領域235の双方において適切な透過率を得るためには、液晶層231が、適切な初期配向状態にあることが重要である。
【0036】
図3Aは、画素電極と液晶層231の初期配向状態との間の関係を模式的に示す。全ての副画素の画素電極は共通の形状を有している。図3Aは、X軸に沿って隣接する画素電極208A及び208Bを示す。画素電極208A及び208Bは、それぞれ、TFT300に接続されている。図3Aは、画素電極208Aを選択するTFTが、例として、符号300で指示されている。TFT300は、データ線204と接続部304を介して接続されている。接続部304はデータ線204と同一金属層に含まれ、これらは連続している。
【0037】
図3Bは、図3AにおけるIIIB-IIIB切断線での断面構造を模式的に示す。絶縁基板202の主面上には、ゲート線301が形成されている。ゲート線301は、例えば、Al、Mo、Crなどを使用した金属若しくは合金の単層又は多層構造を有する。
【0038】
ゲート絶縁膜203が、ゲート線301を覆うように形成されている。TFT300に含まれる半導体膜302が、ゲート絶縁膜203上に、平面視において(Z軸に沿って見て)ゲート線301と重なるように形成されている。さらに、データ線204との接続部304が、半導体膜302と接触している。データ線204及び接続部304と同一金属層に含まれる相互接続部303が、半導体膜302上に接触して形成されている。
【0039】
保護膜205及び層間絶縁膜207が、データ線204を覆うように形成されている。共通電極206が、保護膜205上に形成されている。層間絶縁膜207が、共通電極206を覆うように形成されている。相互接続部303が露出するように、ビアホールが、保護膜205及び層間絶縁膜207に形成されている。ビアホールにおいて、画素電極208Aと連続するビアが、相互接続部303と接触している。
【0040】
図3Aに戻って、画素電極208Aは、櫛場形状を有しており、3本の歯部350を含む。図3Aにおいて、中央の歯部が、例として、符号350で指示されている。歯部350は、Y軸に沿って延びており、かつ、屈曲している。3本の歯部350は同一形状を有しており、X軸に沿って配列されている。
【0041】
各歯部350は、二つの直線状部351及び352で構成されている。直線状部351とY軸との間の角度の大きさθは、直線状部352とY軸との間の角度の大きさθと同一である。以下において角度の大きさθを屈曲角度とも呼ぶ。直線状部351及び352は、Y軸に対して逆側に傾いている。液晶層231の初期配向の方向はX軸に平行であり、液晶分子237の長軸はX軸に平行である。なお、歯部は3以上の直線状部で構成されてもよく、一つの直線状部で構成されてもよい。いずれの構成においても、各直線状部とY軸との間の角度の大きさは共通である。
【0042】
データ線204は、Y軸に沿って延びており、画素電極の歯部に沿うように屈曲しており、平面視において、歯部から離間している。データ線204は、屈曲することなくY軸に沿って直線状であってもよく、平面視において、歯部との距離が変化してもよい。
【0043】
液晶分子237はネガ型である。例えば、最も高い階調レベルに対応する画素電位が画素電極に与えられる場合、TFT基板200近傍の液晶分子237の長軸は、直線状部と略平行となる。TFT基板200近傍の液晶分子237の回転角の大きさαは、液晶分子237の初期配向方向(X軸に沿った方向)と、直線状部との間の角度の大きさと一致する。従って、回転角の大きさαは、屈曲角度θが小さい程大きい。具体的には、αとθとは、以下の関係を有する。
α=90-θ
【0044】
上述のように、液晶分子237の回転角の大きいαが大きい程、小さい駆動電圧(画素電位と共通電位との間の電位差)で、FFS駆動領域233における所望の透過率を得ることができる。つまり、屈曲角度θが大きい程、所望の透過率を得るために大きい駆動電圧が必要となる。
【0045】
図4は、屈曲角度θが異なる液晶パネルにおける、駆動電圧とFFS駆動領域233を透過する光の輝度との関係のシミュレーション結果の例を示す。上述のように、屈曲角度θが大きくなると、輝度がピークを示す駆動電圧(ピーク電圧)は増加する。
【0046】
副画素の駆動電圧が小さい場合、隣接する画素電極間の電圧も小さくなり、IPS駆動領域235における透過率が小さくなる。したがって、IPS駆動領域235における所望の透過率を得るためには、液晶層231の初期配向の状態を適切に設定することが重要である。
【0047】
図5は、屈曲角度θが異なる液晶パネルにおける、駆動電圧とIPS駆動領域235を透過する光の輝度との関係のシミュレーション結果の例を示す。図6は、シミュレーションに使用した液晶パネルを示す。歯部の幅は2μm、二つの画素電極208A及び208Bの間の間隔d(第1領域の幅)は10μmである。IPS駆動領域235の幅は、5μmと仮定されている。一般に、画素電極と共通電極との間のフリンジ電界の隣接副画素への影響を抑制するため、画素電極間の間隔dは、10μm程度が要求される。他のパラメータは、一般的な液晶パネルの条件を適用した。
【0048】
IPS駆動領域235の液晶の駆動は、隣接する副画素の画素電極208A、208Bの電位差を利用する。従って、IPS駆動領域235の実効電圧は、グラフに示す駆動電圧の2倍の値となる。図5が示すグラフから理解されるように、屈曲角度θの違いによる輝度の違いはあるが、いずれの屈曲角度θにおいても、輝度が、駆動電圧の上昇と共に増加する。
【0049】
図4及び図5のシミュレーション結果から理解されるように、屈曲角度θが小さ過ぎる場合、画素電極に与えられる画素電位の大きさが小さくなり、IPS駆動領域235に十分な大きさの電界を与えることができず、IPS駆動領域235の輝度(透過率)が小さくなる。一方、IPS駆動領域235の輝度を大きくするために副画素の駆動電圧を増大させ、ピーク電圧を越えた駆動電圧を与えると、FFS駆動領域233の輝度が低下する。
【0050】
発明者らは、様々なシミュレーションを行い、屈曲角度θの適切な範囲を検討した。その結果、屈曲角度θは、15°以上30°以下であることが好ましいことが分かった。以下において、シミュレーションの例を説明する。
【0051】
屈曲角度θを大きくすることで、階調レベルが最大の白電圧駆動時に、FFS駆動領域233における画素電極近傍の液晶分子の回転量αを抑制することができる。例えば、例えばθ=25゜の場合、α=90-θ=65゜である。画素電極近傍の液晶分子の回転量αが小さくなるため、バルク液晶を回転させるには、より大きな電界(駆動電圧)が必要となる。これにより、隣接する画素電極間の電圧の大きさが大きくなり、IPS駆動領域235の高い輝度を実現することができる。
【0052】
図7は、屈曲角度θが異なる液晶パネルにおける、駆動電圧と副画素を透過する光の輝度との関係のシミュレーション結果の例を示す。副画素を透過する光は、FFS駆動領域233を透過する光とIPS駆動領域を透過する光の和で表わすことができる。シミュレーションに使用された液晶パネルにおいて、二つの画素電極208A及び208Bの間の間隔dは10μmである。IPS駆動領域235の幅は5μm、FFS駆動領域233の幅は19μmと仮定されている。他のパラメータは、一般的な液晶パネルの条件を適用した。IPS駆動領域235の実効電圧は、グラフに示す駆動電圧の2倍の値となる。
【0053】
図8は、図7のシミュレーションと同一条件のシミュレーションにおける、屈曲角度θと白電圧との関係を示す。白電圧は、3色の副画素からなる画素が白を表示するための駆動電圧であり、最も高い階調レベルに対応する駆動電圧である。図8のグラフは、白表示の輝度が副画素のピーク輝度の95%であるときの屈曲角度θと白電圧との関係、を示す。
【0054】
図7のグラフから理解されるように、屈曲角度θが増加するにつれて、副画素のピーク輝度が増加する。一方、図8のグラフが示すように、屈曲角度θが増加すると、白電圧も増加する。白電圧は、駆動回路137の制約や消費電力の観点から7V以下にすることが好ましい。
【0055】
一般的に、液晶表示装置は、ピーク輝度を示す電圧を白電圧として設定することはない。その理由の一つは、プロセスのバラツキ等により、輝度-電圧特性曲線が低電圧側にシフトすると、白電圧は、ピーク輝度の電圧を越えたところに設定されることになることである。この状態は、いわゆる階調反転を引き起こし得る。
【0056】
したがって、通常、白電圧はピーク輝度から数%~5%程度低くなる電圧に設定し、輝度-電圧特性曲線が低電圧側にシフトしても階調反転を起こさないようにする。図8のグラフが示すように、屈曲角度が30゜の場合、白表示の輝度がピーク輝度の95%のとき、白電圧は6.5Vであり、7Vを下回る。したがって、屈曲角度θの上限を30゜とすることで、適切な白表示を行うことができる。階調反転回避のマージン確保として95%は十分許容できるレベルである。
【0057】
図9は、図7に示すグラフから抽出した、屈曲角度θと相対ピーク輝度との関係を示す。図9のグラフは、屈曲角度θが増加すると共に、ピーク輝度が上昇することを示している。一般的な屈曲角度θは5°~7°程度であり、そのピーク輝度と比較して、屈曲角度θが10°において1%程の輝度向上の改善が得られている。また、屈曲角度θが15°において、数%以上の輝度向上という大きな効果が得られている。さらに、屈曲角度θが22°において、5%以上の輝度向上というさらに大きな効果が得られている。
【0058】
図10は、データ線204と平面視において重なるように、5μmのブラックマトリックスを配置させた一般的なFFS型液晶パネルのシミュレーション結果を示す。シミュレーションにおける屈曲角度θは7°であり、白電圧は4Vである。駆動電圧4Vにおける輝度はSである。
【0059】
図11は、図6に示すようにデータ線204と重なるブラックマトリックスを省略し、屈曲角度θを20°にし、データ線204は透明にした液晶パネルのシミュレーション結果を示す。輝度Sを得るための駆動電圧は略4Vであり、駆動電圧を6Vまで増加させることで、輝度を1.2Sをまで増加させることができる。
【0060】
このように、適切な初期配向に設定された液晶表示モジュールは、従来の液晶表示パネルに対して、高いピーク輝度を実現できる。そのため、一例において、制御装置100は、設定に従って、白表示の駆動電圧(画素電位の大きさ)を変化させてもよい。制御装置100は、通常モードにおいて、最大階調から階調レベルを下げて所定の階調レベル(通常画素電位の例)で白表示を行う。例えば、ユーザ設定により又は周囲環境の明るさに応じて、制御装置100は高輝度モードに移行し、白表示の階調レベルを最大階調にして、より高い駆動電圧(通常画素電位より大きさの大きい画素電位)を与える。制御装置100は、モードに応じて、階調レベルと画素電位の大きさとの関係を変更してもよい。
【0061】
上述のように、本実施形態によれば、液晶表示モジュールの透過率を高めることができる。また、ブラックマトリックスを省略することにより、隣接する副画素からの光の混色の影響が懸念される。しかし、シミュレーションにおいて、隣接する副画素からの光の混色による色度変化は正面視で実質的に認識されなかった。
【0062】
<実施形態2>
図12は、液晶パネル131の他の構成例を示す。図2及び6を参照して説明した構成例において、X軸に沿って隣接するカラーフィルタの端面は接触している。図12に示す構成例は、隣接するカラーフィルタの間に無色透明な領域を含む。これにより、高駆動電圧におけるIPS駆動領域235を通過する光の輝度を高めることができる。
【0063】
図12の例において、赤カラーフィルタ253Rと緑カラーフィルタ253Gとの間に無色透明領域257が存在する。無色透明領域257は、例えば、無色透明なフォトレジストで形成することができる。図12の例においては、緑カラーフィルタ253Gと青カラーフィルタ253Bとの間にも無色透明領域が存在し、さらに、赤カラーフィルタ253Rと青カラーフィルタ253Bとの間にも無色透明領域が存在する。
【0064】
図12の構成例においては、無色透明領域257は、平面視において(Z軸に沿って見て)、画素電極208A及び208Bの間において、それらと重ならないように形成されている。また、無色透明領域257の幅はIPS駆動領域235の幅と一致している。無色透明領域257の幅及び位置は任意であって、図12の構成例に限定されない。無色透明領域257は、IPS駆動領域235の一部とのみ、平面視において重なっていてもよい。
【0065】
上述のように、図12の構成例において、TFT基板200において隣接する画素電極208A、208Bの間の第1領域と対向する対向基板250の第2領域は、無色透明領域と、その両側のカラーフィルタ(の一部)を含む。
【0066】
図13は、カラーフィルタの間の間隔(無色透明領域の幅)が1μmである構成例と、0μmである構成例における、駆動電圧と副画素の輝度との関係のシミュレーション結果を示している。図13のグラフが示すように、カラーフィルタ間に無色透明領域を有する構成例の白表示輝度は、カラーフィルタが接触している構成例の白表示輝度より、1割程増加している。
【0067】
図14は、カラーフィルタと無色透明領域のレイアウト例を示す。本レイアウト例は、同一画素のカラーフィルタ間に無色透明領域を配置し、隣接画素のカラーフィルタ間には無色透明領域を配置することなく、隣接画素のカラーフィルタを接触させる。本レイアウト例において、一つの画素に割り当てられ隣接する画素電極の間の第1領域に対向する対向基板250の第2領域は、無色透明領域を含む。一方、異なる画素に割り当てられ隣接する画素電極の間の第1領域に対向する対向基板250の第2領域は、互いに接触するカラーフィルタそれぞれの一部を含む。
【0068】
具体的には画素141Aの緑カラーフィル253Gと赤カラーフィル253Rとの間に無色透明領域257が配置され、緑カラーフィル253Gと青カラーフィル253Bとの間に無色透明領域257が配置されている。画素141Bについても同様である。
【0069】
一方、画素141Aの青カラーフィルタ253Bと画素141Bの赤カラーフィルタ253Rとの間に無色透明領域は存在せず、それらは接触している。なお、同一画素内の隣接カラーフィルタの一つのペアのみにおいて、無色透明領域が配置されていてもよい。
【0070】
例えば、制御装置100(駆動回路137)は、画素単位で通常より高い駆動電圧を与えて、通常より高い白表示の輝度を実現する。例えば、画素141Bは、従来の白表示の輝度より高い輝度を得るために、通常駆動電圧より大きい駆動電圧が印加されているとする。画素141Aにおいて、青カラーフィルタ253Bの副画素のみ駆動電圧が印加されているとする。
【0071】
上記状態において、画素141Aの青カラーフィルタ253Bの画素電極と、画素141Bの赤カラーフィルタ253Rの画素電極との間のIPS駆動領域235において、高い透過率が実現され得る。画素141Aの青カラーフィルタ253Bと画素141Bの赤カラーフィルタ253Rとの間に無色透明領域が存在する場合、画素141Aの青カラーフィルタ253Bを透過する光に無色透明領域を透過する光が混ざり、色純度を低下させ得る。
【0072】
上述のように、隣接画素のカラーフィルタの間に無色透明領域を配置することなく、それらのカラーフィルタを接触させることで、上記のような色純度の低下を抑制することができる。
【0073】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、直視型の液晶表示装置を説明しているが、本明細書の特徴は、投影型液晶表示装置に適用することができる。直視型液晶表示装置において、ブラックマトリックスを削除し、データ線を透明化することは、斜めから見た場合の混色の影響が強くなり得る。投影型液晶表示装置は、投影面において投影画像を表示するため、画像を斜めから見た場合の色度変化の影響を小さくすることができる。また、ブラックマトリックスを削除する又はデータ線を透明化することは、光源からの光の吸収を抑制し、投影型液晶パネルの温度上昇を効果的に抑制できる。
【0074】
上述のように、屈曲角度θを大きくすることで、液晶パネル131の透過率を効果的に高めることができる。しかし、屈曲角度θの増加に伴い、駆動電圧を増加することが必要となる。駆動電圧は、層間絶縁膜207の厚膜化で低下させることができる。これは、層間絶縁膜207が厚くなることで、FFS駆動領域233のフリンジ電界が弱められ、その分、液晶層231に印加される画素電極間の電界が強まり、低電圧でもIPS駆動領域235の透過率を大きくすることができるからである。
【0075】
このように、適切な範囲の厚みを有する層間絶縁膜207により、液晶表示モジュールの低電圧駆動と高透過率が実現される。なお、層間絶縁膜207の厚膜化によりFFS駆動領域233で形成される蓄積容量が減少するため、蓄積容量の減少量がパネル設計状の許容範囲内である条件で、層間絶縁膜207の厚みを決定することが重要である。
【0076】
以下において、図2に示す構成例におけるシミュレーション結果を説明する。シミュレーションにおける屈曲角度θは20°であり、2000オングストロームから8000オングストロームの層間絶縁膜207(PA)の異なる厚みでの結果を示す。図15は、層間絶縁膜207の異なる厚みにおける、駆動電圧と、FFS駆動領域233及びIPS駆動領域235を通過する光の相対輝度と、の関係を示す。図16は、ピーク輝度における駆動電圧(ピーク電圧)と層間絶縁膜207の厚みとの関係を示す。図17は、相対的なピーク輝度と層間絶縁膜207の厚みとの関係を示す。図15、16及び17が示すように、層間絶縁膜207が厚くなるにしたがって、ピーク輝度が増加し、ピーク輝度を得るための駆動電圧(ピーク電圧)が低下する。
【0077】
以下において、液晶層231がポジ型液晶材料からなる液晶表示モジュールについて説明する。液晶層231がポジ型液晶材料からなる液晶表示モジュールにおいて、FFS駆動領域233におけるフリンジ電界が強くなると、TFT基板200に対して垂直な方向の成分も強くなるため、液晶分子は横方向に加え縦方向にも大きく回転する。これにより、実効的なリタデーションが減少し、透過率が低下する。
【0078】
上述のように、液晶層231がネガ型液晶材料からなる場合、屈曲角度θを調整することで、液晶パネルの透過率を高めることができる。しかし、屈曲角度θを大きくしても、フリンジ電界を小さくすることはできない。フリンジ電界を抑制するためには、層間絶縁膜207の厚膜化が一つの方法である。
【0079】
図18、19及び20は、図2に示す構成例におけるシミュレーション結果を示す。屈曲角度θは7°であり、2000オングストロームから8000オングストロームの層間絶縁膜207の異なる厚みでの結果を示す。図18は、層間絶縁膜207(PA)の異なる厚みにおける、駆動電圧とFFS駆動領域233の相対輝度との関係を示す。図18のグラフが示すように、層間絶縁膜207の厚みが厚くなるに従って輝度が低下し、所望の輝度を得るための駆動電圧が増加する。これは、FFS駆動領域233のフリンジ電界が小さくなっていることを示す。
【0080】
図19は、層間絶縁膜207の異なる厚みにおける、駆動電圧とIPS駆動領域235の相対輝度との関係を示す。図19のグラフが示すように、層間絶縁膜207の厚みが厚くなるに従って輝度が増加し、所望の輝度を得るための駆動電圧が低下する。その効果は、5V以上の高い電圧で特に大きい。
【0081】
図20は、層間絶縁膜207の異なる厚みにおける、駆動電圧と、FFS駆動領域233及びIPS駆動領域235全体の相対輝度との関係を示す。図20のグラフが示すように、層間絶縁膜207の厚みが厚くなるに従って輝度が増加し、所望の輝度を得るための駆動電圧が低下する。これは、FFS駆動領域233の特性悪化の影響を上回る、IPS駆動領域235の特性改善効果があることを示す。
【0082】
以上のように、ポジ型液晶の液晶表示モジュールにおいて、層間絶縁膜207の厚みを適切な範囲に設定することで、液晶表示モジュールの透過率(輝度)を高めることができる。
【0083】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。特許請求範囲に記載されている構成に加え、本開示の特徴例を以下に記載する。
(1)
液晶表示装置であって、
液晶パネルと、
駆動回路と、を含み、
前記液晶パネルは、
素子基板と、
対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間のネガ型液晶材料の液晶層と、を含み
前記素子基板は、
第1絶縁性基板と、
前記第1絶縁性基板上の配向膜と、
前記第1絶縁性基板上の共通電極と、
前記第1絶縁性基板上で、前記共通電極と前記配向膜との間の複数の画素電極と、
前記複数の画素電極と前記共通電極との間の層間絶縁膜と、
を含み、
前記対向基板は、
第2絶縁性基板と、
前記第2絶縁性基板上の、前記複数の画素電極それぞれに対向するカラーフィルタと、
を含み、
前記駆動回路は、前記共通電極の電位を基準として、第1軸に沿って隣接する画素電極に対して逆極性の画素電位を与え、
前記複数の画素電極の各画素電極は、複数の直線状部を含み、
前記複数の直線状部それぞれと前記共通電極との間の電界が前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記隣接する画素電極の一方の画素電極の直線状部と、前記隣接する画素電極の他方の画素電極の直線状部との間の電界が、前記ネガ型液晶材料に与えられ、
前記対向基板は、前記隣接する画素電極の前記直線状部の間の第1領域と対向する第2領域を含み、
前記第1領域を通過する可視光域の少なくとも一部の波長域の光は、前記第2領域を通過し、
前記複数の画素電極の各画素電極の前記複数の直線状部の、前記配向膜による前記液晶層の初期配向方向と垂直な軸に対する角度の大きさは共通であり、
前記角度の大きさは、15°以上30°以下である、
液晶表示装置。
(2)
(1)に記載の液晶表示装置であって、
前記第2領域は、前記隣接する画素電極と対向し、互いに接触するカラーフィルタそれぞれの一部を含む、
液晶表示装置。
(3)
(1)に記載の液晶表示装置であって、
前記第2領域は無色透明領域を含む、
液晶表示装置。
(4)
(1)に記載の液晶表示装置であって、
前記第2領域は、前記隣接する画素電極と対向するカラーフィルタの間の無色透明領域と、前記対向するカラーフィルタそれぞれの一部と、を含む、
液晶表示装置。
(5)
(1)に記載の液晶表示装置であって、
前記液晶パネルは複数の画素を含み、
前記複数の画素の各画素は複数の副画素で構成され、
前記複数の画素電極の各画素電極は、各副画素に割り当てられ、
前記複数の画素の各画素に含まれる少なくとも一つの前記第2領域は無色透明領域を含み、
異なる画素に割り当てられ互いに隣接する画素電極の間の前記第2領域は、互いに接触するカラーフィルタそれぞれの一部を含む、
液晶表示装置。
(6)
(1)~(5)のいずれか一項に記載の液晶表示装置であって、
前記共通電極と前記複数の画素電極とは、無色透明である、
液晶表示装置。
(7)
(1)~(6)のいずれか一項に記載の液晶表示装置であって、
無色透明のデータ線が、前記第1領域において延びている、
液晶表示装置。
(8)
(1)~(7)のいずれか一項に記載の液晶表示装置であって、
さらに制御装置を含み、
前記制御装置は、
通常モードにおいて白表示の画素の画素電極それぞれに、通常画素電位を与え、
高輝度モードにおいて、白表示の画素の画素電極それぞれに、前記通常画素電位より大きさが大きい画素電位を与える、
液晶表示装置。
【符号の説明】
【0084】
100 制御装置、110 制御装置、130 液晶表示モジュール、131 液晶パネル、133 面状光源装置、137 駆動回路、141 画素、200 TFT基板、201 偏光板、202 絶縁基板、203 ゲート絶縁膜、204 データ線、205 保護膜、206 共通電極、207 層間絶縁膜、208 画素電極、209 配向膜、231 液晶層、233 FFS駆動領域、235 IPS駆動領域、237 液晶分子、250 対向基板、251 偏光板、252 絶縁基板、253 カラーフィルタ、254 配向膜、257 無色透明領域、300 薄膜トランジスタ、301 ゲート線、302 半導体膜、303 相互接続部、304 接続部、350 歯部、351、352 直線状部
図1
図2
図3A
図3B
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