(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電源システム、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20231212BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20231212BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231212BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02M3/28 X
H02M3/28 K
H02M7/12 Y
G03G21/00 398
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2020066319
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】森 崇人
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-193018(JP,A)
【文献】特開2014-158388(JP,A)
【文献】特開2015-230451(JP,A)
【文献】特開2019-179661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
H02M 7/00-7/40
G03G 21/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1モードと第2モードとを有する電源システムであって、
交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換するスイッチング電源と、
前記第1モードにおいて前記スイッチング電源から電力を供給され、前記第2モードにおいて前記スイッチング電源から電力を供給されない制御部であって、前記第1モードおよび前記第2モードのうちいずれかのモードに切り換える制御部と、
前記制御部に接続される供給ラインと、前記交流電源により充電されるコンデンサと、を有する補助電源であって、前記第2モードにおいて、前記供給ラインを介して前記制御部へ前記コンデンサの電力を供給する補助電源と、を備え、
前記制御部は、
前記コンデンサを放電させるための放電信号を出力し、
前記放電信号を出力した後の前記コンデンサの充電電圧を検出し、
検出した前記充電電圧に基づいて、前記交流電圧の大きさを判断する電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記供給ラインを介して前記充電電圧を検出する請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記補助電源は、前記スイッチング電源により生成された直流電圧を前記コンデンサに供給する充電ラインを有し、
前記充電ライン上に設けられており、前記スイッチング電源から前記コンデンサへの前記直流電圧の供給を許容する導通状態と、前記スイッチング電源から前記コンデンサへの前記直流電圧の供給を遮断する遮断状態とに切り換わるスイッチを備え、
前記制御部は、前記スイッチを前記遮断状態にした上で、前記交流電圧の大きさを判断する請求項1又は2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記スイッチを前記遮断状態にした上で、前記放電信号を出力する請求項3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記コンデンサと前記制御部とに接続される発光素子と、前記スイッチング電源に接続される受光素子であって、前記発光素子の発光に伴う信号を前記スイッチング電源に出力する受光素子と、を有するフォトカプラを備え、
前記第1モードは、前記スイッチング電源が動作した状態であり、
前記第2モードは、前記スイッチング電源の動作が停止した状態であり、
前記第1モードおよび前記第2モードのうち一方のモードにおいて、前記スイッチング電源がモード切換信号に応じた前記発光素子の発光に伴う信号を受光素子から受けると、他方のモードに切り換わり、
前記制御部は、
前記一方のモードから前記他方のモードに切り換える場合に、前記発光素子へ前記モード切換信号を出力し、
前記交流電圧の大きさを判断する場合に、前記発光素子へ前記放電信号を出力する請求項1~4のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項6】
前記放電信号は、前記モード切換信号と異なる請求項5に記載の電源システム。
【請求項7】
前記放電信号は、前記モード切換信号の1周期において、デューティ比が100%となる信号である請求項6に記載の電源システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記交流電圧の大きさを判断する請求項1~7のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項9】
前記制御部は、
前記充電電圧が第1電圧まで低下した後に、前記放電信号の出力を停止し、
前記放電信号の出力を停止した後に前記コンデンサが前記交流電源により充電されるときに、前記充電電圧を検出し、
検出した前記充電電圧の上昇度合いが大きい場合、前記交流電圧が大きいと判断し、前記上昇度合いが小さい場合、前記交流電圧が小さいと判断する請求項1~8のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記コンデンサの前記充電電圧が前記第1電圧まで低下したことを検出する請求項9に記載の電源システム。
【請求項11】
前記上昇度合いは、単位時間における前記充電電圧の上昇量を含む請求項9又は10に記載の電源システム。
【請求項12】
前記上昇度合いは、前記放電信号の出力を停止してから前記充電電圧が前記第1電圧よりも大きい第2電圧に上昇するまでの速度を含む請求項9又は10に記載の電源システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記放電信号の出力を停止してから前記充電電圧が飽和する前の期間内で、前記充電電圧を検出する請求項9~12のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項14】
前記制御部は、
前記放電信号の出力を継続しながら前記充電電圧を検出し、
検出した前記充電電圧の上下変動が収束するように、前記放電信号の出力を調整し、
前記上下変動が収束しているときの前記充電電圧が大きい場合、前記交流電圧が大きいと判断し、前記上下変動が収束しているときの前記充電電圧が小さい場合、前記交流電圧が小さいと判断する請求項1~8のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項15】
前記制御部は、前記交流電圧の半周期に応じたタイミング毎に前記充電電圧を検出する請求項8~13のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の電源システムと、
シートにトナー像を転写する画像形成部と、
前記交流電源から供給される電力に基づいて発熱するヒータを有し、シートにトナー像を定着させる定着部と、
前記交流電源から前記ヒータに供給される電力を制御するヒータ駆動回路と、
を備え、
前記制御部は、
前記ヒータ駆動回路に対して、
前記交流電源からの前記交流電圧の半周期における前記ヒータへの給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングから所定時間経過したタイミングであって前記交流電圧の位相角に応じたタイミングから、半周期の終了のゼロクロスタイミングまで行う第1制御を実行した後、
前記交流電圧の半周期における前記ヒータへの給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングから半周期の終了のゼロクロスタイミングまで行う第2制御を実行し、
前記交流電圧が小さいと判断した場合、前記第1制御から前記第2制御に切り換えるタイミングを、前記交流電圧の大きさが大きいと判断した場合よりも早くする画像形成装置。
【請求項17】
前記制御部は、印刷を行っていないタイミングで、前記交流電圧の大きさを判断する請求項16に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スイッチング電源と、補助電源とを備える電源システムが記載されている。この電源システムでは、スイッチング電源により交流電源の交流電圧を直流電圧に変換して負荷に出力する。また、補助電源は、コンデンサを有しており、交流電源の交流電圧に基づいてコンデンサが充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
交流電圧が変動する環境下において、交流電圧の大きさを判断する必要が生じる場合がある。このような場合、交流電圧を判断するための回路構成が別途必要となり、電源システムの大型化の要因となる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、既存の回路構成に変更を極力加えることなく、交流電圧の大きさを判断することができる電源システム、及びこのような電源システムを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明では、第1モードと第2モードとを有する電源システムであって、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換するスイッチング電源と、第1モードにおいてスイッチング電源から電力を供給され、第2モードにおいてスイッチング電源から電力を供給されない制御部であって、第1モードおよび第2モードのうちいずれかのモードに切り換える制御部と、制御部に接続される供給ラインと、交流電源により充電されるコンデンサと、を有する補助電源であって、第2モードにおいて、供給ラインを介して制御部へコンデンサの電力を供給する補助電源と、を備えている。制御部は、コンデンサを放電させるための放電信号を出力し、放電信号を出力した後のコンデンサの充電電圧を検出し、検出した充電電圧に基づいて、交流電圧の大きさを判断する。
【0007】
上記構成では、補助電源が有するコンデンサを放電させるための放電信号が出力される。放電信号が出力された後、交流電圧により充電されるコンデンサの充電電圧が検出され、検出された充電電圧に基づいて、交流電圧の大きさが判断される。これにより、第2モードにおいて制御部に電力を供給するための補助電源のコンデンサを流用して、既存の電源システムの回路構成に変更を極力加えることなく、交流電源からの交流電圧の大きさを判断することができる。
【0008】
制御部は、供給ラインを介して充電電圧を検出してもよい。上記構成では、補助電源の電力を制御部へ供給するための供給ラインを流用して、コンデンサの充電電圧を検出するので、既存の電源システムの回路構成に変更を極力加えることなく、交流電源からの交流電圧の大きさを判断することができる。
【0009】
補助電源は、スイッチング電源により生成された直流電圧をコンデンサに供給する充電ラインを有し、充電ライン上に設けられており、スイッチング電源からコンデンサへの直流電圧の供給を許容する導通状態と、スイッチング電源からコンデンサへの直流電圧の供給を遮断する遮断状態とに切り換わるスイッチを備え、制御部は、スイッチを遮断状態にした上で、交流電圧の大きさを判断する。上記構成では、スイッチング電源により生成された直流電圧を、充電ラインを介してコンデンサに供給することにより、交流電源からの電力と、スイッチング電源からの電力との2系統でコンデンサを充電することができる。また、交流電圧の大きさを判断する場合は、充電ラインとコンデンサとの間が遮断状態にされることにより、コンデンサは、交流電源からの交流電圧のみで充電されるため、交流電圧の大きさを適正に判断することができる。
【0010】
制御部は、スイッチを遮断状態にした上で、放電信号を出力してもよい。上記構成では、スイッチング電源からコンデンサへの直流電圧の供給経路となる充電ラインが遮断された状態で、放電信号が出力される。これにより、コンデンサを迅速に放電させることができ、ひいては交流電圧の大きさを迅速に判断することができる。
【0011】
コンデンサと制御部とに接続される発光素子と、スイッチング電源に接続される受光素子であって、発光素子の発光に伴う信号をスイッチング電源に出力する受光素子と、を有するフォトカプラを備え、第1モードは、スイッチング電源が動作した状態であり、第2モードは、スイッチング電源の動作が停止した状態であり、第1モードおよび第2モードのうち一方のモードにおいて、スイッチング電源がモード切換信号に応じた発光素子の発光に伴う信号を受光素子から受けると、他方のモードに切り換わり、制御部は、一方のモードから他方のモードに切り換える場合に、発光素子へモード切換信号を出力し、交流電圧の大きさを判断する場合に、発光素子へ放電信号を出力してもよい。上記構成では、制御部が発光素子へモード切換信号を出力し、フォトカプラの発光素子が補助電源のコンデンサに充電された電力を消費して発光することにより、電源システムのモードが切り換わる。そして、交流電圧の大きさを判断する場合に、制御部がフォトカプラの発光素子へ放電信号を出力することにより、発光素子がコンデンサに充電された電力を消費して発光し、コンデンサが放電される。このため、電源システムのモードを切り換えるための構成を流用してコンデンサを放電させることができる。
【0012】
放電信号は、モード切換信号と異なっていてもよい。上記構成では、交流電圧の大きさを判断する場合に、電源システムのモードを切り換えることを意図していないにもかかわらず、電源システムのモードが切り換わってしまうのを抑制することができる。
【0013】
放電信号は、モード切換信号の1周期において、デューティ比が100%となる信号であってもよい。上記構成では、交流電圧の大きさを判断する場合に、電源システムのモードを切り換えることを意図していないにもかかわらず、電源システムのモードが切換ってしまうのを抑制しつつ、コンデンサを速やかに放電させることができる。
【0014】
制御部は、第1モードにおいて、交流電圧の大きさを判断してもよい。
【0015】
制御部は、充電電圧が第1電圧まで低下した後に、放電信号の出力を停止し、放電信号の出力を停止した後にコンデンサが交流電源により充電されるときに、充電電圧を検出し、検出した充電電圧の上昇度合いが大きい場合、交流電圧が大きいと判断し、上昇度合いが小さい場合、交流電圧が小さいと判断してもよい。充電電圧が第1電圧に低下するまで放電させた後にコンデンサを充電するとき、交流電源からの交流電圧の大きさが大きいほど、充電電圧の上昇度合いが大きくなる。上記構成では、この特性を利用して、交流電圧の大きさを判断することができる。
【0016】
制御部は、コンデンサの充電電圧が第1電圧まで低下したことを検出する。上記構成では、コンデンサの充電電圧が第1電圧まで低下する時間を実験により求め、求めた時間が経過した後に、放電信号の出力を停止する構成に比べ、コンデンサの充電電圧が第1電圧まで低下するのを確実に待ちつつ、遅くなりすぎないタイミングで放電信号の出力を停止することができる。このため、検出した充電電圧から上昇度合いの大小を適切に把握し、交流電圧の大きさを判断することができる。また、迅速に交流電圧の大きさを判断することができる。
【0017】
上昇度合いは、単位時間における充電電圧の上昇量を含んでいてもよい。
【0018】
上昇度合いは、放電信号の出力を停止してから充電電圧が第1電圧よりも大きい第2電圧に上昇するまでの速度を含んでいてもよい。
【0019】
制御部は、放電信号の出力を停止してから充電電圧が飽和する前の期間内で、充電電圧を検出してもよい。上記構成では、放電信号の出力を停止してからコンデンサの充電電圧が上昇する過渡状態の期間内で、充電電圧を検出し、検出した充電電圧の上昇度合いを把握する。これにより、交流電圧が大きい場合の充電電圧の上昇度合いと、交流電圧が小さい場合の充電電圧の上昇度合いとの差が、充電電圧が飽和した状態を含んだ期間で充電電圧を検出し、検出した充電電圧の上昇度合いを把握する場合と比べて、大きくなる。これにより、交流電圧の大きさを適正に判断することができる。
【0020】
制御部は、放電信号の出力を継続しながら充電電圧を検出し、検出した充電電圧の上下変動が収束するように、放電信号の出力を調整し、上下変動が収束しているときの充電電圧が大きい場合、交流電圧が大きいと判断し、上下変動が収束しているときの充電電圧が小さい場合、交流電圧が小さいと判断してもよい。充電電圧の上下変動が収束しているとき、コンデンサが交流電源からの電力を充電する量と、コンデンサが放電信号によって放電する量とのバランスが取れている。このとき、交流電源からの交流電圧の大きさが大きいほど、充電電圧の上下変動が収束する値が大きくなる。上記構成では、この特性を利用して、交流電圧の大きさを判断することができる。
【0021】
制御部は、交流電圧の半周期に応じたタイミング毎に充電電圧を検出してもよい。コンデンサの充電電圧は、交流電圧の半周期における変化に応じたリップルが生じる。上記構成では、交流電圧の半周期に応じたタイミング毎に充電電圧が検出される。これにより、交流電圧を判断することに対する充電電圧のリップルの影響を低減することができ、交流電圧の大きさを適正に判断することができる。
【0022】
本発明は、電源システムを備える画像形成装置の発明としても捉えることができる。
電源システムと、シートにトナー像を転写する画像形成部と、交流電源から供給される電力に基づいて発熱するヒータを有し、シートにトナー像を定着させる定着部と、交流電源からヒータに供給される電力を制御するヒータ駆動回路と、を備えている。制御部は、ヒータ駆動回路に対して、交流電源からの交流電圧の半周期におけるヒータへの給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングから所定時間経過したタイミングであって交流電圧の位相角に応じたタイミングから、半周期の終了のゼロクロスタイミングまで行う第1制御を実行した後、交流電圧の半周期におけるヒータへの給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングから半周期の終了のゼロクロスタイミングまで行う第2制御を実行し、交流電圧が小さいと判断した場合、第1制御から第2制御に切り換えるタイミングを、交流電圧の大きさが大きいと判断した場合よりも早くする。
【0023】
上記構成では、制御部は、ヒータ駆動回路に対して、交流電源からの交流電圧の半周期におけるヒータへの給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングから所定時間経過したタイミングであって交流電圧の位相角に応じたタイミングから、半周期の終了のゼロクロスタイミングまで行う第1制御を実行する。これにより、ヒータに大電流が流れることに起因する悪影響を抑制する。第1制御の実行により、ヒータの温度を上昇させた後、交流電圧の半周期におけるヒータへの給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングから半周期の終了のゼロクロスタイミングまで行う第2制御を実行する。これにより、ヒータの温度を第1制御により上昇させる場合よりも早く上昇させることができる。ここで、交流電圧の大きさに応じて、通電開始時におけるヒータに流れる電流量も変化するため、交流電圧が大きいほど、第1制御を行う期間を長くすることが望ましい。しかし、交流電圧の大きさが分から場合、交流電圧の値に余裕を見越して第1制御を行う期間を固定値にすることも考えられる。しかし、第1制御を行う期間を固定値にすると、実際の交流電圧Vacが想定していた交流電圧よりも小さい場合に、不必要に第1制御を第2制御に切換えるタイミングが遅くなることが懸念される。上記構成では、制御部は、交流電圧が小さいと判断した場合、第1制御から第2制御に切り換えるタイミングを、交流電圧の大きさが大きいと判断した場合よりも早くする。これにより、交流電圧の大きさに応じて、ヒータに対する制御を第1制御から第2制御に切換えるタイミング変更することができ、ヒータに大電流が流れることによる悪影響の抑制と、ヒータの温度を上昇させるのに要する時間の短縮とを適正なバランスで実現することができる。
【0024】
制御部は、印刷を行っていないタイミングで、交流電圧の大きさを判断してもよい。上記構成では、交流電圧の大きさを判断する処理を、印刷を行っていないタイミングで行うことにより、画像形成装置が行う印刷に要する時間の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】ヒータ制御の手順を説明するフローチャート。
【
図8】
図4のステップS15での判断処理の詳細な手順を説明するフローチャート。
【
図10】第2実施形態に係る充電電圧の判断処理の詳細な手順を説明するフローチャート。
【
図11】第3実施形態に係るヒータ制御の手順を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
本実施形態に係る画像形成装置を、プリンタを例に説明する。プリンタは、記録用紙やOHPシート等のシートにトナー像を形成するレーザプリンタである。なお、本実施形態では、プリンタは、単色のトナー像をシートに形成するレーザプリンタである。以下の説明において、方向は、
図1に示す方向で説明する。すなわち、
図1の左側を「前」とし、右側を「後」とし、上側を「上」とし、下側を「下」とする。
【0027】
図1,
図2に示すように、プリンタ1は、本体筐体2と、シート供給部3と、画像形成部4と、定着部5と、排出ローラ7と、排出トレイ8と、電源システム9と、を備えている。本体筐体2は、上記各部3,4,5,7,10,20を収容する。本体筐体2の上面には、画像が形成されたシートSを支持する排出トレイ8が設けられている。
【0028】
シート供給部3は、シートSを収容するシートトレイ30と、シートトレイ30上のシートを給紙する給紙ローラ31と、分離ローラ32と、搬送ローラ33と、レジストレーションローラ34と、シート押圧板35とを備えている。シート供給部3では、シートトレイ30内のシートSが、シート押圧板35によって給紙ローラ31に寄せられ、給紙ローラ31によって分離ローラ32に送られる。シートSは、分離ローラ32によって1枚に分離された後、搬送ローラ33によって搬送される。レジストレーションローラ34は、シートSの先端の位置を揃えた後、画像形成部4に向けてシートSを搬送する。
【0029】
画像形成部4は、シートSにトナー像を形成する。画像形成部4は、感光ドラム41と、帯電器42と、転写ローラ43と、現像ローラ44と、供給ローラ45と、トナーを収容するトナー収容部46と、露光部47と、を備えている。
【0030】
帯電器42は、感光ドラム41の表面を帯電させる。帯電器42には、電源ユニット20により正極の電圧が印加される(
図2参照)。露光部47は、レーザ光源48、ポリゴンミラー49、及び符号を省略する反射鏡、及びレンズを備えている。
【0031】
露光部47は、画像データに基づくレーザ光をレーザ光源48から出射し、帯電した感光ドラム41の表面を露光する。露光部47は、ポリゴンミラー49の回転に応じて感光ドラム41の表面をレーザ光で走査することにより、感光ドラム41に静電潜像を形成する。
【0032】
供給ローラ45は、回転可能であり、トナー収容部46内のトナーを現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、回転可能であり、電源ユニット20により正極の電圧を印加される。現像ローラ44は、供給ローラ45から供給されたトナーを静電潜像が形成された感光ドラム41に供給する。これにより、静電潜像が可視像化され、感光ドラム41上に正極のトナー像が形成される。
【0033】
転写ローラ43は、回転可能であり、電源ユニット20により負極の電圧を印加される。正極のトナー像が形成された感光ドラム41と、負極の電圧が印加された転写ローラ43は、シート供給部3から供給されたシートSを挟持しながら回転する。これにより、転写ローラ43は、感光ドラム41上に形成された正極のトナー像をシートS上に転写する。すなわち、転写ローラ43は、感光ドラム41上のトナーをシートS上に転写する。
【0034】
トナー像が転写されたシートSは、感光ドラム41及び転写ローラ43によって、定着部5に搬送される。定着部5は、シートSに転写されたトナーを熱定着する。定着部5は、加熱ローラ51と、加圧ローラ52と、ヒータ53とを備えている。
【0035】
排出ローラ7は、シートSを排出トレイ8に排出するローラであり、シートSの搬送経路において定着部5よりも下流側に配置されている。定着部5によってトナー像が定着されたシートSは、排出ローラ7によって排出トレイ8に排出される。
【0036】
次に、プリンタ1の電気的構成を、
図2,
図3を用いて説明する。
電源システム9は、制御部10、電源ユニット20、及びスイッチSW1を備えている。
まずは、電源ユニット20の構成を説明する。電源ユニット20は、スイッチング電源21、補助電源22、ヒータ駆動回路23、ゼロクロス検出回路24、高圧電源25、DC-DCコンバータ26、DC-DCコンバータ27、及びモード切換回路28を備えている。
【0037】
スイッチング電源21及び補助電源22には、交流電源200から交流電力が供給される。スイッチング電源21は、交流電源200からの交流電圧を直流電圧に変換し、プリンタ1の各部へ直流電力を供給する電源である。
図3に示すように、スイッチング電源21は、整流平滑回路211、スイッチング素子Qt、トランス212、直流電圧発生回路213、電源制御IC214、平滑回路215、電圧検出回路216、及び導電ラインL1,L2,L3,L4を有している。
【0038】
整流平滑回路211は、交流電源200に接続されたダイオードブリッジと、コンデンサとを有している。ダイオードブリッジは、交流電源200からの交流電圧を、半波の直流電圧に整流して出力する。コンデンサは、ダイオードブリッジから出力された半波の直流電圧を平滑する。
【0039】
トランス212は、1次巻線に接続された1次側の回路と2次巻線に接続された2次側の回路とを絶縁した状態で、1次側の回路から2次側の回路に電力を供給する。トランス212の1次巻線の一端は、整流平滑回路211から高電位側の電圧が印加される導電ラインL1に接続されており、他端は、スイッチング素子Qtを介して整流平滑回路211と不図示のグランドVgdとに接続される導電ラインL2に接続されている。トランス212の2次巻線には、平滑回路215が接続されている。平滑回路215は、トランス212の2次巻線L2に生じる電圧を平滑する。平滑回路215は、ダイオードと、コンデンサとを有するフィルタ回路であり、2次巻線L2から導電ラインL3に生じる電圧のリップル成分を除去する。
【0040】
導電ラインL3と導電ラインL4とには、電圧検出回路216が接続されている。電圧検出回路216は、フォトカプラPC1を有している。フォトカプラPC1は、発光素子が導電ラインL3と導電ラインL4との間に、抵抗及びダイオードを介して接続されており、受光素子が制御部10の後述するモード制御IC12に接続されている。電圧検出回路216は、平滑回路215から出力される電圧をモニタし、フォトカプラPC1の出力としての電圧モニタ信号Svを送出する。
【0041】
トランス212の補助巻線には、直流電圧発生回路213が接続されている。直流電圧発生回路213は、電源制御IC214の電源である直流電圧を生成する回路であり、ダイオードと、コンデンサとにより構成されている。ダイオードは、アノードで、トランス212の補助巻線の一端に接続され、他端は、電源制御IC214の後述するポートVccに接続されている。コンデンサは、ダイオードのカソードと補助巻線の他端とを接続している。上記構成により、直流電圧発生回路213は、補助巻線に生じた直流電圧からリップル成分を除去した電圧を電源制御IC214に供給する。
【0042】
電源制御IC214は、スイッチング素子Qtをオン状態と、オフ状態とに制御する。電源制御IC214は、ポートVccで直流電圧発生回路213に接続されている。電源制御IC214は、ポートOUTでスイッチング素子Qtのゲートに接続されており、スイッチング素子Qtをオン状態とオフ状態とに切換えるゲート駆動信号を出力する。電源制御IC214は、ポートFBで電圧検出回路216が有するフォトカプラPC1の受光素子に接続されており、電圧検出回路216からの電圧モニタ信号Svを受信し、スイッチング電源21の出力電圧が所定値(具体例において24V)となるように調整されるゲート駆動信号をスイッチング素子Qtに出力する。
【0043】
電源制御IC214は、ポートENで、フォトカプラPC2を介して後述するモード制御IC12からのモード切換信号Smを受信する。電源制御IC214は、モード切換信号Smに応じて、スイッチング電源21によるスイッチング動作の開始と、スイッチング動作の終了とを制御する。モード切換信号Smについては詳細に後述する。電源制御IC214は、ポートVHで、ダイオード及び抵抗の直列接続体を介して導電ラインL1に接続されている。これにより、プリンタ1が交流電源200に接続された際に、導電ラインL1を通じて電源制御IC214を起動させるための電圧を受け取る。
【0044】
上記構成のスイッチング電源21では、電源制御IC214のポートOUTから出力されるゲート駆動信号に応じて、スイッチング素子Qtがオンオフ動作し、トランス212の2次巻線を介して出力電圧Vo1を出力する。導電ラインL3には、プリンタ1における電力を消費する負荷回路に接続されている。
図2,
図3では、負荷回路として、導電ラインL3には、高圧電源25と、DC-DCコンバータ26と、DC-DCコンバータ27とが接続されている。高圧電源25と、DC-DCコンバータ26と、DC-DCコンバータ27とは、導電ラインL3に対して並列接続されている。スイッチング電源21は、導電ラインL3を介して24Vの出力電圧Vo1を、高圧電源25、DC-DCコンバータ26,27、及び不図示の回路に出力する。
【0045】
高圧電源25は、スイッチング電源21からの直流電圧を昇圧して、出力電圧Vo2を生成する。高圧電源25は、例えば、スイッチング電源21からの24Vの直流電圧を、7kVの直流電圧に昇圧した出力電圧Vo2を生成し、帯電器42に供給する。DC-DCコンバータ26は、スイッチング電源21からの直流電圧を降圧して出力電圧Vo3を出力する。DC-DCコンバータ26は、例えば、スイッチング電源21からの24Vの直流電圧を、5.0Vの直流電圧に降圧した出力電圧Vo3を生成する。具体的には、DC-DCコンバータ26は、後述する充電ラインL12を介して、生成した出力電圧Vo3を、補助電源22に供給する。DC-DCコンバータ27は、例えば、スイッチング電源21からの24Vの直流電圧を、3.3Vの直流電圧に降圧した出力電圧Vo4を生成する。具体的には、DC-DCコンバータ27は、生成した出力電圧Vo4を制御部10に供給する。
【0046】
スイッチング電源21の電圧検出回路216は、出力電圧Vo1をモニタしており、フォトカプラPC1により電圧モニタ信号Svを送出する。電源制御IC214のポートOUTから出力されるゲート駆動信号のデューティが低下(例えば、0%)になると、スイッチング素子Qtによるスイッチング動作が停止され、スイッチング電源21は出力電圧Vo1の生成を停止する。なお、スイッチング電源21には、高圧電源25及びDC-DCコンバータ26,27以外のDC-DCコンバータが接続されていてもよい。DC-DCコンバータにより生成された電圧は、プリンタ1を構成する各部に適宜提供される。
【0047】
図3に示すように、補助電源22は、入力コンデンサC11,C12と、AC-DCコンバータ221と、平滑回路222と、電源コンデンサCeと、導電ラインL11,L13,L16と、充電ラインL12と、供給ラインL15とダイオードD1とを備えている。入力コンデンサC11の一端は、交流電源200の一端に接続されている。入力コンデンサC12の一端は、交流電源200の他端に接続されている。入力コンデンサC11,C12の他端は、それぞれAC-DCコンバータ221に接続されている。
【0048】
AC-DCコンバータ221は、入力コンデンサC11,C12から出力される交流電圧Vacを直流電圧に変換する。本実施形態では、AC-DCコンバータ221は、4つのダイオードにより構成されたダイオードブリッジにより構成されている。AC-DCコンバータ221には、導電ラインL11を介して平滑回路222が接続されている。平滑回路222は、ツェナーダイオードと、コンデンサとを有するフィルタ回路である。
【0049】
平滑回路222には、電源コンデンサCeが並列接続されている。具体的には、電源コンデンサCeの一端は、抵抗を介して平滑回路222からの電圧が印加される充電ラインL12に接続され、他端は、平滑回路222とグランドとを接続する導電ラインL13に接続されている。本実施形態では、電源コンデンサCeの電源容量は、スイッチング電源21の電源容量よりも小さい。
【0050】
充電ラインL12は、スイッチング電源21と補助電源22とを接続する。具体的には、充電ラインL12は、DC-DCコンバータ26と電源コンデンサCeとを接続する。充電ラインL12を介して、DC-DCコンバータ26から電源コンデンサCeへ出力電圧Vo3が供給される。供給ラインL15は、補助電源21と制御部10とを接続する。具体的には、供給ラインL15は、電源コンデンサCeとモード制御IC12とを接続する。ダイオードD1は、充電ラインL12上に配置される。ダイオードD1のアノードは、DC-DCコンバータ26の出力端子に接続されており、ダイオードD1のカソードは、スイッチSW1を介して平滑回路222及び電源コンデンサCeに接続されている。ダイオードD1は、DC-DCコンバータ26から補助電源22へ流れる電流が逆流するのを防止する機能を有する。
【0051】
上記構成の補助電源22では、電源コンデンサCeの端子間に生じる充電電圧Vcを出力電圧Vo5として出力する。補助電源22の電源コンデンサCeは、交流電源200からの交流電圧Vacにより充電される。具体的には、交流電圧Vacは、入力コンデンサC11,C12を通じて、補助電源22に入力される。入力された交流電圧は、AC-DCコンバータ221により直流電圧に変換された後、平滑回路222により平滑されて、電源コンデンサCeに供給される。これにより、電源コンデンサCeは、充電される。また、電源コンデンサCeは、電源システム9が後述する第1モードであれば、充電ラインL12を通じてDC-DCコンバータ26から供給される出力電圧Vo3により、充電される。
【0052】
ヒータ駆動回路23は、制御部10とヒータ53との間に接続される。ヒータ駆動回路23は、交流電源200からの交流電力をヒータ53に供給する通電状態と、交流電力をヒータ53に供給しない非通電状態とに切り換わる。ヒータ駆動回路23は、ASIC11から出力される制御信号により、通電状態と非通電状態とが切り換わるトライアックを有している。トライアックの通電状態が長くなるほど、ヒータ53の通電率が高くなることにより、ヒータ53の出力が増加する。一方、トライアックの非通電状態が短くなるほど、ヒータ53の通電率が低くなることにより、ヒータ53の出力が減少する。
【0053】
ゼロクロス検出回路24は、交流電源200と制御部10との間に接続される。ゼロクロス検出回路24は、交流電源200の交流電圧Vacが0Vとなるタイミングであるゼロクロスタイミングを検出する。ゼロクロス検出回路24は、交流電圧Vacが0Vに近い所定電圧値以上となるときは第1レベルとなり、交流電圧Vacが前述の所定電圧値未満となるときは第1レベルと異なる第2レベルとなる、パルス信号であるゼロクロス信号を、交流電圧Vacの半周期毎に制御部10へ出力する。本実施形態では、ゼロクロス検出回路24が出力するゼロクロス信号は、第1レベルがHiレベルであり、第2レベルがLowレベルとなるパルス信号である。制御部10は、入力されるゼロクロス信号に基づき、交流電源200から供給される交流電圧Vacのゼロクロスタイミングを特定することができ、特定したゼロクロスタイミングに基づいて、ヒータ駆動回路23を制御する。
【0054】
モード切換回路28は、トランジスタTrと、フォトカプラPC2とを備えている。トランジスタTrのゲートは、モード制御IC12のポートP3に接続されている。トランジスタTrのコレクタは、抵抗を介してフォトカプラPC2に接続される。トランジスタTrのエミッタは、グランドVgdに接続された導電ラインL16に接続されている。フォトカプラPC2は、発光素子LED2と、受光素子PT2とを備えている。発光素子LED2は、具体的には発光ダイオードである。発光素子LED2のアノードは、供給ライン15に接続されている。発光素子LED2のカソードは、抵抗を介してトランジスタTrのコレクタに接続されている。受光素子PT2は、具体的にはフォトトランジスタである。受光素子PT2は、電源制御IC214のENポートに接続されている。
【0055】
スイッチSW1は、例えばトランジスタである。スイッチSW1は、補助電源22の充電ラインL12上に配置されている。スイッチSW1のゲートは、後述するASIC11のポートP11に接続されており、操作信号Sswが入力される。スイッチSW1のコレクタは、ダイオードD1のカソードに接続されている。スイッチSW1のエミッタは、平滑回路222及び電源コンデンサCeの一端に接続されている。スイッチSW1は、スイッチング電源21のDC-DCコンバータ26から電源コンデンサCeへの直流電圧Vo3の供給を許容する導通状態と、スイッチング電源21のDC-DCコンバータ26から電源コンデンサCeへの直流電圧Vo3の供給を遮断する遮断状態とに切り換わる。
【0056】
次に、制御部10の構成を説明する。
制御部10は、ASIC11と、モード制御IC12とを有している。ASIC11は、プリンタ1の所要の動作を制御したり後述する交流電圧Vacの大きさを判断したりするための回路であり、DC-DCコンバータ27から供給される出力電圧Vo4により駆動する。ASIC11は、補助電源22の電源コンデンサCeを充電する場合に、ポートP11から操作信号Sswを出力する。
【0057】
モード制御IC12は、電源システム9を第1モードと第2モードとに切換えたり後述する交流電圧Vacの大きさを判断したりするための回路であり、DC-DCコンバータ27から供給される出力電圧Vo4及び補助電源22から供給される出力電圧Vo5によって動作する。具体的には、モード制御IC12は、ポートP1により、DC-DCコンバータ27に接続されており、DC-DCコンバータ27からの出力電圧Vo4が入力される。モード制御IC12は、ポートP2により、供給ラインL15を介して補助電源22に接続されており、補助電源22からの出力電圧Vo5が入力される。モード制御IC12のポート4と、ASIC11のポート12とは、通信線により接続されており、ポート4とポート12とを通じて通信を行うことができる。
【0058】
モード制御IC12は、プリンタ1の各部の状態をモニタしており、例えば、第1モードにおいて、印刷指令を長時間受けなかったりスイッチSW2がユーザに操作されたりした際には、プリンタ1を第2モードに移行させるモード切換信号SmをポートP3から出力する。また、モード制御IC12は、第2モードにおいて、印刷指令を受けたりスイッチSW2がユーザに操作されたりした際には、プリンタ1を第1モードに移行させるモード切換信号SmをポートP3から出力する。
【0059】
上記構成において、モード制御IC12のポートP3からモード切換信号Smが出力されると、モード切換信号Smのデューティ比に応じて、トランジスタTrのオンオフ動作が行われる。そのため、トランジスタTrがオンする期間において、フォトカプラPC2の発光素子LED2が発光し、モード切換信号Smは受光素子を介して光伝送され、電源制御IC214のENポートに入力される。なお上述のように本願においては、モード制御IC12のポートP3の出力と、フォトカプラPC2の出力とを、信号としては同一視して、いずれもモード切換信号Smと称す。
【0060】
図6に示すように、モード切換信号Smは、1スイッチング周期Tswにおける所定電圧であるHi状態と、この所定電圧よりも低い電圧であるLow状態との組み合わせにより、スイッチング電源21にスイッチング動作を開始させる指令(以下、開始指令と称す)と、スイッチング動作を停止させる指令(以下、停止指令)とに変化する。スイッチング動作の開始及び停止を示す際のモード切換信号Smは、1スイッチング周期Tswにおいて、100%以下のデューティ比であるパルス信号である。これらのパルス信号は互いに異なるパルス信号、例えばパルス幅が異なるパルス信号であってもよいが、同一の形態のパルス信号であってもよい。ここで、パルス信号とは、Low状態からHi状態に変化し、Hi状態から再びLow状態に変化する部分(「パルス」と称す)を1つ以上含む信号である。本実施形態では、スイッチング動作を開始させるモード切換信号Smと、スイッチング動作を停止させるモード切換信号Smとは、互いに同一のパルス信号であり、1スイッチング周期Tswにおいて、パルスを3つ含み、デューティ比が40%のパルス信号となっている。
【0061】
第2モードに移行する場合、モード制御IC12は、モード切換信号Smをモード切換回路28に出力することで、電源制御IC214からのゲート駆動信号の出力を停止させる。これにより、スイッチング電源21による出力電圧Vo1の生成が停止される。出力電圧Vo1の生成が停止されることにより、高圧電源25、DC-DCコンバータ26,27による出力電圧Vo2~Vo4の生成も停止され、ASIC11を含む各部の駆動が停止する。一方、第1モードに移行する場合、モード制御IC12は、モード切換信号Smをモード切換回路28に出力することで、電源制御IC214からのゲート信号の出力を再開させる。これにより、スイッチング電源21による出力電圧Vo1の生成が再開される。出力電圧Vo1の生成が再開されることにより、高圧電源25及びDC-DCコンバータ26,27による出力電圧Vo2~Vo4の生成も再開され、ASIC11を含む各部が駆動する。なお、モード制御IC12は、後述する交流電圧Vacの大きさを判断する処理を行う場合、モード切換信号Smを出力するポートP3を介して、後述する放電信号Sdを出力する。
【0062】
ASIC11は、ヒータ53の通電制御として、まず、第1制御を開始する。第1制御とは、ヒータ53への給電を、交流電圧Vacの位相角に応じて行う制御であり、具体的には、ヒータ53への給電を、交流電圧Vacの半周期の開始のゼロクロスタイミングから所定位相角だけ経過したタイミングから、半周期の終了のゼロクロスタイミングまで行う制御である。このとき、ヒータ53への給電期間には、交流電圧Vacのピークとなる位相角が含まれないようにする。ハロゲンヒータでは、温め当初は抵抗値が低く大電流が流れ易いため、ヒータ53に大電流が流れることによって電圧降下が起きてプリンタ1と交流電源200を共通にする蛍光灯がちらつく現象(フリッカ)が発生する場合がある。ASIC11は、ヒータ53への交流電圧Vacの供給開始当初は、フリッカの発生を抑えるため、ヒータ53が温まって大電流が流れにくくなるまで第1制御を行う。具体的には、ASIC11は、第1制御によりヒータ駆動回路23のトライアックを50%未満のデューティ比でオンオフ操作させるように、ヒータ駆動回路23に駆動信号を出力する。より詳細には、ASIC11は、ゼロクロス検出回路24により検出されたゼロクロス信号に基づいてゼロクロスタイミングを推定する。ASIC11は、推定したゼロクロスタイミングから交流電圧Vacの半周期の半分、すなわち交流電圧Vacの周期の1/4を経過してから、推定したゼロクロスタイミングから交流電圧Vacの半周期を経過しない期間において、トライアックに駆動信号を出力する。なお、ASIC11からの駆動信号により通電状態となったトライアックは、ゼロクロスタイミングにおいて非通電状態に切り替わる。
【0063】
ASIC11は、第1制御によりヒータ53が十分に温まることで、ピーク電流が低下した後は、ヒータ53の制御を、第1制御から第2制御に切換える。第2制御とは、交流電圧Vacの半周期である半波毎にヒータ53への通電と遮断とが繰り返される制御であり、具体的には、ヒータ53への給電を半周期の開始のゼロクロスタイミングから半周期の終了のゼロクロスタイミングまでヒータ駆動回路23のトライアックを通電状態にするか非通電状態にするかを切り換える制御である。なお、ASIC11は、加熱ローラ51が目標温度に到達するまで連続する交流電圧Vacの半波において、常時ヒータ駆動回路23のトライアックを通電状態してヒータ53へ常時通電する第2制御を行う。これにより、加熱ローラ51が目標温度に到達するまで第1制御を行う構成に比べ、ヒータ53を目標温度まで近づけるのに要する時間を短くすることができる。ASIC11は、上述の第2制御において、交流電圧Vacの半周期毎に、推定したゼロクロスタイミングでヒータ駆動回路23に駆動信号を出力する。
【0064】
上記構成のプリンタ1において、交流電源200から供給される交流電圧Vacが大きいほど、ヒータ53に流れる電流が大きくなり、ヒータ53に流れる電流のピークが小さくなるのが遅くなる。そのため、交流電圧Vacが大きいほど、第1制御を第2制御に切換えるタイミングを遅くして、フリッカを抑制する必要がある。このとき、交流電圧Vacの大きさが分からないと、フリッカの発生を抑えるために、交流電圧Vacの値に余裕を見越して第1制御を行う期間を固定値にすることも考えられる。しかし、第1制御を行う期間を固定値にすると、実際の交流電圧Vacが想定していた交流電圧Vacよりも小さい場合に、不必要に第1制御を第2制御に切換えるタイミングが遅くなることが懸念される。そこで、本実施形態では、制御部10は、交流電圧Vacの大きさを判断し、判断した交流電圧Vacの大きさを用いて、第1制御を適正なタイミングで第2制御に切換えている。
【0065】
本実施形態では、ヒータ53に対する第1制御を継続する期間CTを設定すべく、交流電圧Vacの大きさを判断するために、電源コンデンサCeを放電させた後、モード制御IC12のポートP2により検出される電源コンデンサCeの充電電圧Vcにより、充電電圧Vcの上昇度合いを判断する。そして、判断結果から交流電圧Vacの大きさを判断し、第1制御を継続する期間CTを設定する。
【0066】
次に、
図4を用いて、第1制御を継続する期間CTを設定する手順を説明する。
図4に示す処理は、プリンタ1を第1モードで動作させており、かつ印刷処理を実行していない場合に、制御部10により実行される処理である。
【0067】
ステップS11では、ASIC11は、ポートP11から出力する操作信号Sswにより、スイッチSW1をオフ操作する。これにより、充電ラインL12を介したスイッチング電源21から補助電源22への出力電圧Vo3の供給が停止され、電源コンデンサCeは、交流電圧Vacのみで充電される。
【0068】
ステップS12では、モード制御IC12は、ポートP3から、放電信号Sdを出力する。
図5は、1スイッチング周期Tswでの放電信号Sdの波形を示す。
図5に示すように、放電信号Sdは、1スイッチング周期Tswにおいて常にHi状態である信号であり、言い換えれば、1スイッチング周期Tswでのデューティ比が100%である信号である。一方、上述したように、モード切換信号Smは、1スイッチング周期Tswにおいて、パルスを1つ以上含むパルス信号であり(
図6参照)、言い換えれば、1スイッチング周期Tswでのデューティ比が100%よりも小さい信号である。即ち、放電信号Sdと、モード切換信号Smとは異なっている。放電信号Sdを1スイッチング周期Tswでのデューティ比が100%となる信号とすることにより、トランジスタTrをオン状態にする期間を長くすることができるため、電源コンデンサCeを速やかに放電させることができる。
【0069】
ステップS13では、モード制御IC12は、ポートP2により検出される電源コンデンサCeの充電電圧Vcが、第1電圧TH1よりも小さくなったか否かを判断する。第1電圧TH1は、電源コンデンサCeが十分に放電された場合の充電電圧Vcの値であり、本実施形態では0.2Vである。ステップS13を否定判定する場合、モード制御IC12は、充電電圧Vcが第1電圧TH1よりも小さくなるまで、放電信号Sdを出力したままにする。
【0070】
ステップS13を肯定判定すると、ステップS14に進み、モード制御IC12は、放電信号Sdを停止する。これにより、トランジスタTrがオフ状態からオン状態に変化する。
図7は、電源コンデンサCeの放電時と充電時における充電電圧Vcの推移を示している。
図7において、放電期間T1は、スイッチSW1をオフ状態にし、かつトランジスタTrをオン状態にした期間である。充電期間T2は、スイッチSW1をオフ状態にし、かつトランジスタTrをオフ状態にした期間である。放電期間T1では、トランジスタTrをオン状態としたことに伴う電源コンデンサCeの放電量が、交流電圧Vacによる充電量よりも高くなっており、充電電圧Vcは下降している。一方、充電期間T2では、トランジスタTrをオフ状態としたことに伴い、充電電圧Vcは上昇している。
【0071】
ステップS15では、ASIC11は、充電期間T2における充電電圧Vcの上昇度合いから、交流電圧Vacの大きさを判断する判断処理を行う。
図8は、ステップS15で実行される判断処理の手順を示すフローチャートである。
【0072】
ステップS21では、ASIC11は、充電期間T2中にモード制御IC12のポートP2を通じて検出される充電電圧Vcから、所定の位相での充電電圧Vcを取得する。本実施形態では、交流電圧Vacの半周期に応じたタイミングでの充電電圧Vcを取得する。
図9は、交流電圧Vacの変化と、充電電圧Vcとの関係を説明する図である。
図9(a)は、1周期Tでの交流電圧Vacの推移を示し、
図9(b)は、1周期Tでの充電電圧Vcの推移を示している。
【0073】
電源コンデンサCeの充電電圧Vcには、交流電圧Vacの半周期毎の変化に応じたリップルが生じる。具体的には、充電電圧Vcは、充電期間T2において、全体として上昇しているが、交流電圧Vacの半周期(T/2)毎に上側で凸状に変化したリップルが生じている。そのため、充電電圧Vcの取得タイミングを、半周期毎に合わせることにより、取得した充電電圧Vcに対するリップルの影響を少なくしている。
【0074】
具体的には、ASIC11は、交流電圧Vacの半周期の中間におけるピークタイミング(t2,t4)での充電電圧Vcを取得する。ASIC11は、ゼロクロス検出回路24により検出されたゼロクロスタイミングに基づいて推定した2つの半周期の各ゼロクロスタイミングから90度位相が遅れた位置を、交流電圧Vacのピークタイミングとし、それぞれのピークタイミングでの充電電圧Vcを取得すればよい。
【0075】
また、本実施形態では、ASIC11は、放電信号Sdの出力を停止してから充電電圧Vcの上昇が飽和する前の期間内で、充電電圧Vcを複数回取得する。
図7では、充電期間T2の後半の時刻tsにおいて、充電電圧Vcの上昇度合いが低下し、飽和に転じている。充電期間T2において、充電電圧Vcが飽和する時刻ts以後の期間では、交流電圧Vacの大きさに関わらず、充電電圧Vcの上昇度合いの差が小さくなる。ASIC11は、例えば、放電信号Sdの出力を停止してから充電電圧Vcの上昇が飽和すると想定される期間よりも短い検出期間Td内で、充電電圧Vcを複数回取得する。検出期間Tdは、ステップS14で放電信号Sdの出力を停止してから充電電圧Vcの上昇が飽和すると想定される期間よりも短い期間であり、例えば、電源コンデンサCeの容量に応じて実験的に定められた期間である。
【0076】
ステップS22では、ASIC11は、充電電圧Vcの上昇度合いとして、単位時間での充電電圧Vcの上昇量Aを算出する。具体的には、ステップS21で取得している交流電圧Vacの半周期毎の充電電圧Vcの差分から充電電圧Vcの上昇量Aを算出する。
図9の例では、時刻t4での充電電圧Vc2から時刻t2での充電電圧Vc1を引いた値を、上昇量Aとして算出している
【0077】
ステップS23では、ASIC11は、ステップS22で算出した上昇量Aが上昇度合い判定値TH2よりも大きいか否かを判断する。上昇度合い判定値TH2は、交流電源Vacが小さいと判断される場合の、充電電圧Vcの上昇量Aの上限値であり、実験に応じて定められる値である。
【0078】
ステップS23を肯定判定する場合、即ち、充電電圧Vcの上昇量Aが上昇度合い判定値TH2よりも大きい場合、ステップS24に進み、ASIC11は、交流電圧Vacが大きいと判断する。一方、ステップS23を否定判定する場合、即ち、充電電圧Vcの上昇量Aが上昇度合い判定値TH2以下である場合、ステップS25に進み、ASIC11は、交流電圧Vacが小さいと判断する。
【0079】
ステップS24又はステップS25の処理を終了すると、
図4のステップS16に進む。ステップS16では、ASIC11は、操作信号Sswにより、スイッチSW1をオフ状態からオン状態に変化させることにより、充電ラインL12を介した補助電源22への出力電圧Vo3の供給を再開させる。
【0080】
ステップS17で、ASIC11は、ステップS15の判断処理により交流電圧Vacを大きいと判断しており、ステップS17を否定判定した場合、ステップS19に進む。ステップS19では、ASIC11は、第1制御を継続する期間CTを第1期間CT1に設定する。第1制御を継続する期間CTは、ヒータ53に対して第1制御を開始してから、第1制御を終了して、第2制御に切換えるまでの期間である。一方、ステップS17において、ASIC11は、ステップS15での判断処理により、交流電圧Vacを小さいと判断しており、ステップS17を肯定判定する場合、ステップS18に進む。ステップS18では、ASIC11は、第1制御を継続する期間CTを第1期間CT1よりも短い第2期間CT2に設定する。即ち、交流電圧Vacが小さいと判断した場合、交流電圧Vacが大きいと判断した場合よりも、第1制御を第2制御に切換えるタイミングを早めている。
【0081】
ステップS18又はステップS19の処理が終了すると、
図4の処理を終了する。
【0082】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
制御部10は、電源コンデンサCeを放電させるための放電信号Sdを出力し、放電信号Sdを出力した後の電源コンデンサCeの充電電圧Vcを検出し、検出した充電電圧Vcに基づいて、交流電圧Vacの大きさを判断する。これにより、制御部10に電力を供給するための補助電源22の電源コンデンサCeを流用して、既存の電源システムの回路構成に変更を極力加えることなく、交流電圧Vacの大きさを判断することができる。
【0083】
制御部10は、モード制御IC12のポートP2に接続された供給ラインL15を介して充電電圧Vcを検出する。これにより、既存の供給ラインL15を流用して、電源コンデンサCeの充電電圧Vcを検出するので、既存の電源システムの回路構成に変更を極力加えることなく、交流電圧Vacの大きさを判断することができる。
【0084】
制御部は10、充電ラインL12上に設けられたスイッチSW1をオフ状態とした上で、交流電圧Vacの大きさを判断する。これにより、スイッチング電源21からの出力電圧Vo3を、充電ラインL12を介して電源コンデンサCeに供給することにより、交流電源200からの電力と、スイッチング電源21からの電力との2系統で電源コンデンサCeを充電することができる。また、交流電圧Vacの大きさを判断する場合は、充電ラインL12が遮断されることにより、電源コンデンサCeは、交流電圧Vacのみで充電されるため、交流電圧Vacの大きさを適正に判断することができる。
【0085】
制御部10は、充電ラインL12上のスイッチSW1をオフ状態とした上で、放電信号Sdを出力する。これにより、電源コンデンサCeを迅速に放電させることができ、ひいては交流電圧Vacの大きさを迅速に判断することができる。
【0086】
制御部10は、フォトカプラPC2の発光素子LED2へモード切換信号Smを出力し、フォトカプラPC2の発光素子LED2が補助電源22の電源コンデンサCeに充電された電力を消費して発光することにより、プリンタ1のモードが切り換わる。そして、交流電圧Vacの大きさを判断する場合に、制御部10がフォトカプラPC2の発光素子LED2へ放電信号Sdを出力することにより、発光素子LED2が電源コンデンサCeに充電された電力を消費して発光し、電源コンデンサCeが放電される。このため、電源システムのモードを切り換えるための構成を流用してコンデンサを放電させることができる。
【0087】
放電信号Sdは、モード切換信号Smと異なっている。これにより、交流電圧Vacの大きさを判断する場合に、プリンタ1のモードを切り換えることを意図していないにもかかわらず、プリンタ1のモードが切り換わってしまうのを、放電信号Sdがモード切換信号Smと同一である構成に比べて抑制することができる。
【0088】
放電信号Sdは、モード切換信号Smの1周期において、デューティ比が100%となる信号である。これにより、交流電圧Vacの大きさを判断する場合に、プリンタ1のモードを切り換えることを意図していないにもかかわらず、プリンタ1のモードが切換ってしまうのを抑制しつつ、電源コンデンサCeを速やかに放電させることができる。
【0089】
制御部10は、充電電圧Vcが第1電圧TH1まで低下した後に、放電信号Sdの出力を停止し、放電信号Sdの出力を停止した後に電源コンデンサCeが交流電源Vacにより充電されるときに、充電電圧Vcを検出する。そして、検出した充電電圧Vcの上昇度合いが大きい場合、交流電圧が大きいと判断し、上昇度合いが小さい場合、交流電圧Vacが小さいと判断する。充電電圧Vcが第1電圧TH1に低下するまで放電した電源コンデンサCeを充電するとき、交流電圧Vacの大きさが大きいほど、充電電圧Vcの上昇度合いが大きくなる。上記構成では、この特性を利用して、交流電圧Vacの大きさを判断することができる。
【0090】
制御部10は、電源コンデンサCeの充電電圧Vcが第1電圧TH1まで低下したことを検出する。上記構成では、電源コンデンサCeの充電電圧Vcが第1電圧TH1まで低下する時間を実験により求め、求めた時間が経過した後に、放電信号Sdの出力を停止する構成に比べ、電源コンデンサCeの充電電圧Vcが第1電圧TH1まで低下するのを確実に待ちつつ、遅くなりすぎないタイミングで放電信号Sdの出力を停止することができる。このため、検出した充電電圧Vcから上昇度合いの大小を適切に把握し、交流電圧Vacの大きさを判断することができる。また、迅速に交流電圧Vacの大きさを判断することができる。
【0091】
制御部10は、放電信号Sdの出力を停止してから充電電圧Vcが飽和する前の期間内で、充電電圧Vcを検出する。これにより、交流電圧Vacが大きい場合の充電電圧Vcの上昇度合いと、交流電圧Vacが小さい場合の充電電圧Vcの上昇度合いとの差が、充電電圧Vcが飽和した状態を含んだ期間で充電電圧Vcを検出し、検出した充電電圧Vcの上昇度合いを把握する場合と比べて、大きくなる。これにより、交流電圧Vacの大きさを適正に判断することができる。
【0092】
電源コンデンサCeの充電電圧Vcは、交流電圧Vacの半周期における変化に応じたリップルが生じる。この特性に鑑み、制御部10は、交流電圧Vacの半周期に応じたタイミング毎に充電電圧Vcを検出する。これにより、交流電圧Vacの半周期における所定のタイミングで検出した充電電圧Vcと、所定のタイミングから交流電圧Vacの半周期とならないタイミングで検出した充電電圧Vcとを用いて、交流電圧の大きさを判断する場合と比べて、交流電圧Vacを判断することに対する充電電圧Vcのリップルの影響を低減することができ、交流電圧の大きさを適正に判断することができる。
【0093】
制御部10は、交流電圧Vacが小さいと判断した場合、ヒータ53に対する第1制御から第2制御に切り換えるタイミングを、交流電圧Vacが大きいと判断した場合よりも早くする。これにより、交流電圧Vacの大きさに応じて、制御を第1制御から第2制御に切換えるタイミングが変更されるため、ヒータ53に大電流が流れることによるフリッカの抑制と、ヒータ53の加熱に要する時間の短縮とを適正なバランスで実現することができる。
【0094】
制御部10は、印刷を行っていないタイミングで、交流電圧Vacの大きさを判断する。これにより、プリンタ1が印刷を行うのに要する時間の増加を抑制することができる。
【0095】
(第1実施形態の変形例)
・第1実施形態では、モード制御IC12は、ポートP2に接続された供給ラインL15を介して、電源コンデンサCeの充電電圧Vcを検出した。これに代えて、供給ラインL15とは別の検出ラインを介して、モード制御IC12と電源コンデンサCeとを接続し、モード制御IC12は検出ラインを介して充電電圧Vcを検出してもよい。
【0096】
・第1実施形態では、電源システム9の第1モードでは、スイッチング電源21及びDC-DCコンバータ27を動作させることにより、DC-DCコンバータ27から制御部10に電力を供給した。そして、第2モードでは、スイッチング電源21の動作を停止させることで、DC-DCコンバータ27からの制御部10への電力の供給を停止した。これに代えて、第2モードでは、スイッチング電源21を動作させつつ、DC-DCコンバータ27の動作のみを停止させることで、DC-DCコンバータ27からの制御部10への電力の供給を停止してもよい。
【0097】
・第1実施形態では、制御部10は、第1モードにおいて、電源コンデンサCeの充電電圧Vcから交流電圧Vacの大きさを判断した。これに代えて、制御部10は、第2モードにおいて、電源コンデンサCeの充電電圧Vcから交流電圧Vacの大きさを判断してもよい。この場合、第2モードにおいて補助電源22から電力を供給されるモード制御IC12により、交流電圧Vacの大きさの判断と、第1制御から第2制御へ切り替えるタイミングの変更とを実行する構成とすればよい。具体的には、第2モードにおいて、モード制御IC12は、
図4で示すステップS11~S19の処理を実行する。このような構成においては、モード制御IC12が「制御部」の一例である。
【0098】
・第1実施形態では、制御部10は、ステップS13で、充電電圧Vcが第1電圧TH1よりも小さくなった場合に、ステップS14で、放電信号Sdを停止した。これに代えて、制御部10は、充電電圧Vcが第1電圧TH1まで確実に低下する時間を予め実験等により割り出して設定しておき、ステップS13で、設定した時間が経過した場合に、充電電圧Vcが第1電圧まで低下したと判断してもよい。
【0099】
・第1実施形態では、補助電源22は、充電ラインL12を通じて、スイッチング電源21から供給される電力により充電された。これに代えて、補助電源22は、充電ラインL12を備えておらず、電源コンデンサCeは交流電源200のみから電力を供給されて充電される構成であってもよい。この場合において、
図4のステップS11,S16の処理を抹消すればよい。また、この場合において、DC-DCコンバータ26、ダイオードD1、及びスイッチSW1も抹消すればよい。
【0100】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第2実施形態において、第1実施形態と同一の箇所には、同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0101】
第1実施形態では、交流電圧Vacの大きさを判断する判断処理において、単位時間での充電電圧Vcの上昇量Aを算出した。これに代えて、本実施形態では、交流電圧Vacの大きさを判断する判断処理において、放電信号Sdの出力を停止してから充電電圧Vcが第1電圧TH1よりも大きい第2電圧に上昇するまでの上昇速度により充電電圧Vcの上昇度合いを判断する。
【0102】
図10は、本実施形態において、
図4のステップS15で実行される判断処理である。
ステップS31では、ASIC11は、充電電圧Vcが第1電圧TH1よりも大きい第2電圧に上昇するまでの経過時間T3を計時する。言い換えると、ステップS31では、経過時間T3により、放電信号Sdの出力を停止してから充電電圧Vcが第1電圧TH1よりも大きい第2電圧TH2に上昇するまでの速度を判断している。第2電圧は、第1電圧TH1よりも大きく、かつ充電電圧Vcが飽和する際の電圧よりも低い値であればよい。
【0103】
ステップS32では、ASIC11は、ステップS31で算出した経過時間T3が、所定の時間判定値TH3よりも短いか否かを判断する。経過時間T3が時間判定値TH3よりも短い場合、放電信号Sdの出力を停止してから充電電圧Vcが第2電圧TH2に上昇するまでの速度が速いと判断できる。そのため、ASIC11は、ステップS32を肯定判断する場合、ステップS24に進み、交流電圧Vacが大きいと判断する。一方、経過時間T3が時間判定値TH3よりも長い場合、放電信号Sdの出力を停止してから充電電圧Vcが第2電圧TH2に上昇するまでの速度が遅いと判断できる。ASIC11は、ステップS32を否定判断する場合、ステップS25に進み、交流電圧Vacが小さいと判断する。そして、
図4のステップS16に進む。
【0104】
以上説明した本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0105】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明を行う。第3実施形態において第1実施形態と同一の箇所については同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0106】
第1実施形態では、制御部10は放電信号Sdの出力を停止した後に、電源コンデンサCeの充電電圧Vcを検出し、検出した充電電圧Vcの上昇度合いを用いて交流電圧Vacの大きさを判断した。これに代えて、本実施形態では、制御部10は、放電信号Sdの出力を継続しながら充電電圧Vcを検出し、検出した充電電圧Vcの上下変動が収束するように、放電信号の出力を調整する。そして、上下変動が収束しているときの充電電圧Vcを用いて、交流電圧Vacの大きさを判断する。
【0107】
図11を用いて、ヒータ制御の手順を説明する。
図11に示す処理は、プリンタ1を第1モードで動作させており、かつ印刷処理を実行していない場合に、制御部10により実行される処理である。
【0108】
ステップS11では、ASIC11は、スイッチSW1をオン状態からオフ状態に変化させる。ステップS12では、モード制御IC12は、ポートP3から、放電信号Sdを出力する。
【0109】
ステップS40では、ASIC11は、ステップS12でモード制御IC12が出力を開始した放電信号Sdを調整しつつ、モード制御IC12のポートP2により検出される電源コンデンサCeの充電電圧Vcを取得する。本実施形態では、放電信号Sdの1スイッチング周期Tswでのデューティ比を100%から所定値だけ減少させる。これにより、フォトカプラPC2の発光素子LED2の発光量に応じて、電源コンデンサCeの放電量が減少する。
【0110】
ステップS41では、ASIC11は、充電電圧Vcの上下変動が収束しているか否かを判断する。例えば、充電電圧Vcの上下変動が所定の電圧範囲内に収まる場合に、充電電圧Vcの上下変動が収束したと判断する。ステップS41を否定判定する場合、ステップS40に戻る。ステップS40に戻ると、ASIC11は、電源コンデンサCeの放電量を減少させるように、放電信号Sdの1スイッチング周期Tswにおけるデューティ比を減少させる。即ち、充電電圧Vcの上下変動が収束するまで(ステップS41でYES)、ステップS40の処理を繰り返すことにより、電源コンデンサCeの放電量を徐々に減少させていく。
【0111】
ステップS41を肯定判定すると、ステップS42に進む。ステップS42では、ASIC11は、上下変動が収束した充電電圧Vcが、電圧判定値TH4よりも大きいいか否かを判断する。電圧判定値TH4は、交流電圧Vacが小さいと判断される場合の充電電圧Vcの上限値である。ステップS42を肯定判断すると、ステップS43に進み、ASIC11は、Vacが大きいと判断する。一方、ステップS42を否定判断すると、ステップS44に進み。ASIC11は、Vacが小さいと判断する。
【0112】
ステップS16~S19は第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0113】
以上説明した本実施形態では、制御部10は、放電信号Sdの出力を継続しながら充電電圧Vcを検出し、検出した充電電圧Vcの上下変動が収束するように、放電信号Sdの出力を調整し、上下変動が収束しているときの充電電圧Vcが大きい場合、交流電圧Vacが大きいと判断し、上下変動が収束しているときの充電電圧Vcが小さい場合、交流電圧Vacが小さいと判断する。これにより、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0114】
(その他の実施形態)
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
制御部10は、交流電圧Vacの大きさを判断することができればよく、判断した交流電圧Vacの大きさを、ヒータ53に対する第1制御を継続する期間CTを設定するために用いなくともよい。
【0115】
制御部10は、ASIC11とモード制御IC12とを別々に備える構成に限定されず、ASIC11の機能とモード制御IC12の機能とを1つのハードウェアとして備えるものであってもよい。
【0116】
・制御部10は、充電ラインL12から単位時間当たりに電源コンデンサCeが充電される電荷量よりも、放電信号Sdにより単位時間当たりに電源コンデンサCeを放電できる電荷量のほうが大きい構成であれば、スイッチSW1をオフ状態にすることなく、交流電圧Vacの大きさを判断してもよい。この場合、ステップS11,S16の処理を抹消すればよい。また、この場合において、スイッチSW1も抹消すればよい。
【0117】
・放電信号Sdは、100%のデューティ比である必要はなく、例えば、60%のデューティ比であってもよい。
【0118】
・制御部10は、交流電圧Vacの大きさの判断を、プリンタ1が交流電源Vacに接続されたタイミングで行ってもよい。
・制御部10は、交流電圧Vacの大きさの判断を、プリンタ1が印刷を行うタイミングで行ってもよい。
【0119】
・画像形成装置は、プリンタに限らず、プリンタとしての機能と、スキャナ又はファクシミリの機能とを備える複合機であってもよい。プリンタは、複数の色の現像剤をシートに形成するプリンタであってもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…プリンタ、4…画像形成部、5…定着部、10…制御部、20…電源ユニット、高電圧生成回路、21…スイッチング電源、22…補助電源、Ce…電源コンデンサ、200…交流電源