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特許7401899中性子発生用リチウムターゲット及びその製造方法
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  • 特許-中性子発生用リチウムターゲット及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】中性子発生用リチウムターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/08 20060101AFI20231213BHJP
   H05H 6/00 20060101ALI20231213BHJP
   H05H 3/06 20060101ALI20231213BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20231213BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20231213BHJP
   C23C 16/06 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G21K5/08 N
H05H6/00
H05H3/06
C23C14/06 N
C23C14/14 D
C23C16/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019233959
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103104
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504026247
【氏名又は名称】三樹工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】東又 厚
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-109561(JP,A)
【文献】特開2011-246778(JP,A)
【文献】特開2003-328894(JP,A)
【文献】特開2002-338267(JP,A)
【文献】特開2014-099342(JP,A)
【文献】特開2019-160418(JP,A)
【文献】特開2014-044098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0067640(US,A1)
【文献】山河 享平,加速器BNCT用リチウムターゲットの開発 (Li(p,n)Be 中性子発生装置とLi拡散防止技術の開発),放射線医学総合研究所共用施設(PASTA&SPICE、NASBEE)共同成果報告会・報告集,日本,平成26年度放射線医学総合研究所 第5回共用施設,2015年10月,p.57-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/08
H05H 6/00
H05H 3/06
C23C 14/06
C23C 14/14
C23C 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、
前記基板上に形成されるリチウム層、
前記リチウム層の上に形成される金属クロム層と、
前記金属クロム層上に形成され、窒素の割合が前記金属クロム層から離れるに従い徐々に高くなる傾斜窒化クロム層と、を有する中性子発生用リチウムターゲット。
【請求項2】
前記リチウム層と、前記金属クロム層の間に、酸素を含む中間層を備える請求項1記載の中性子発生用リチウムターゲット。
【請求項3】
前記基板は、によって構成される請求項1記載の中性子発生用リチウムターゲット。
【請求項4】
金属基板上にリチウム層を形成する工程、
前記リチウム層上に金属クロム層を形成する工程、
前記金属クロム層上に、窒素の割合が前記金属クロム層から離れるに従い徐々に高くなるよう傾斜窒化クロム層を形成する工程、を備える中性子発生用リチウムターゲットの製造方法。
【請求項5】
前記リチウム層を形成する工程と前記リチウム層上に金属クロム層を形成する工程の間に、酸素濃度を2×10 -5 toll以上2×10-4toll以下の範囲とする請求項4記載の中性子発生用リチウムターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子発生用リチウムターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子核を構成する粒子の一つである中性子には、様々な利用方法が検討及び実施化されてきている。中性子活用の一つに、ホウ素中性子補足療法(BNCT)がある。BNCTとは、ホウ素を含むホウ素製剤を癌患者に投与し、ホウ素を当該癌患者の癌細胞に選択的に蓄積させ、この癌細胞に対して中性子を照射することで当該癌細胞におけるDNAを損傷させ、結果癌細胞を死滅させようとする治療法である。
【0003】
そして、この中性子を発生させるためには、いわゆる中性子発生用ターゲットが用いられる。具体的には、加速器によって荷電粒子線を加速して中性子発生用ターゲット中の原子に衝突させることによって中性子を発生させることができる。なおこの中性子を発生させることのできる原子にはベリリウムやリチウムが用いられている場合が多い。
【0004】
リチウムを用いた中性子発生用リチウムターゲットに関する技術としては、例えば下記特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-44098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、リチウム層の直上に窒化クロム層が形成されており、リチウム層と窒化クロム層の間の接着が弱くなってしまうといった課題がある。具体的には、窒化クロムはいわゆるセラミックスであり、金属のリチウムとは熱膨張係数が大きく異なる。これは、中性子を発生させる際の発熱による膨張や、これを冷却する際に発生する収縮によってこれらの間で剥離が生ずるおそれが強くなることを意味する。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、層間の剥離のおそれを抑え、より信頼性の高い中性子発生用リチウムターゲット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る中性子発生用リチウムターゲットは、基板と、基板上に形成されるリチウム層、リチウム層の上に形成される金属クロム層と、金属クロム層上に形成される傾斜窒化クロム層と、を有するものである。
【0009】
また、本発明の他の一観点に係る中性子発生用リチウムターゲットの製造方法は、基板上にリチウム層を形成する工程、リチウム層上に金属クロム層を形成する工程、金属クロム層上に傾斜窒化クロム層を形成する工程、を備える。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によって、層間の剥離のおそれを抑え、より信頼性の高い中性子発生用リチウムターゲット及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る中性子発生用リチウムターゲットの層構造の概略図である。
図2】実施形態に係る中性子発生用リチウムターゲットの層構造におけるクロムの濃度変化を示す図である。
図3】実施形態に係る中性子発生用リチウムターゲットの層構造の他の一例の概略図である。
図4】実施例1で作成したターゲットの写真図である。
図5】比較例1で作成したターゲットの写真図である。
図6】実施例2で作成したターゲットの写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る中性子発生用リチウムターゲット(以下、「本ターゲット」という。)1の概略図である。本図で示すように、本ターゲット1は、基板2と、基板2上に形成されるリチウム層3、リチウム層3の上に形成される金属クロム層4と、金属クロム層4上に形成される傾斜窒化クロム層5と、を有するものである。なお、図2は、そのうちの金属クロム層4及び傾斜窒化クロム層5におけるクロムの濃度変化を示す図である。
【0014】
本ターゲット1は、上述の通り、加速器等によって加速した荷電粒子がリチウム層3に照射されることにより、中性子を放出させることができるものである。
【0015】
本ターゲット1において、基板2は、限定されるわけではないが、上記のリチウム層3等の各層を支持することができるとともに、上記リチウム層3等が発熱した場合でも熱を外部に放出させるための部材である。基板2としては、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、銅、金、銀、アルミニウム等の熱伝導性の高い金属を例示することができるが、中性子によって放射性物質となりにくい銅であることが好ましく、特に酸素が除去された無酸素銅等高純度銅であることが好ましい。高純度銅の場合99.9モル%以上のものであることが好ましい。
【0016】
また、本ターゲット1において、基板2の厚さとしては、中性子を発生させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、2mm以上20mm以下の厚さであることが好ましく、より好ましくは3mm以上15mm以下の範囲である。2mm以上とすることで強度を確保することができ3mm以上とすることでこの効果が顕著となる。一方20mm以下とすることで荷電粒子の照射による中性子の放出を効率的に行うことが可能となり15mm以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0017】
また、本ターゲット1では、上記の通り、基板2上にリチウム層3が形成される。リチウム層3は、上記の記載から明らかであるが、荷電粒子の照射を受けることで中性子を発生させるために用いられるものであって、ターゲット層とも呼ばれる。
【0018】
リチウム層3の厚さとしては、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、50μm以上1mm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上500μm以下である。50μm以上とすることで所望量の中性子の放出が可能となり100μm以上とすることでこの効果がより顕著となる。一方、1mm以下とすることでプロトンのブラッグピークを基板中及びその表面に存在させることが可能となり500μm以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0019】
なお、リチウム層3の形状(基板を垂直方向から見た場合の形状)は、限定されるわけではないが円形状であることが好ましい。円形状とすることで膨張等が生じた場合でもその応力が均等に分散されるため、より信頼性を高くすることができる。
【0020】
また、本ターゲット1において金属クロム層4は、上記の通り、リチウム層3上に形成される。金属クロム層4を設けることにより、リチウム層3との接着を強くし、層間の剥離のおそれを抑えることが可能となる。なお金属クロム層4は、金属で純粋な金属クロムであることが好ましいが、チタンを含ませてもよい。チタンを含ませることで酸素及び水素などを補足することができるため好ましい。
【0021】
また、本ターゲット1において金属クロム層4としては、上記機能を有するものである限りにおいて限定されるわけではないが、0.01μm以上3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上2μm以下の範囲である。0.01μm以上とすることで上記リチウム層3と金属クロム層4の接着を高くすることが可能となり、0.05μm以上とすることでこの効果が顕著となる。一方、3μm以下とすることで不必要に金属クロム層を形成する必要がなく、全体のコストを下げることができ、2μm以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0022】
また、本ターゲット1において、傾斜窒化クロム層5は、上記の通り、金属クロム層4上に形成されるものである。本ターゲット1では、リチウム層4の直上ではなく金属クロム層4を介することで格子欠陥を緩和してこの間の層間剥離を抑えることが可能となるとともに、窒化クロムによる被膜としての保護効果を得ることができる。なおここで「傾斜窒化クロム層」とは、クロムと窒素を含む層であって、その濃度が厚さ方向に沿って徐々に変化している層をいう。この変化としては、その濃度が連続的に減少しているものであってもよく、また、段階的に減少しているものであってもよい。図2の例では連続的に減少している場合の例を示す。
【0023】
より具体的に傾斜窒化クロム層5は、金属クロム層に近い側においてはその窒素の割合が低く、金属クロム層から離れるに従いその窒素の割合が高くなる層である。このようにすることで、金属クロム層に近い側において金属クロムに近い金属的な結晶状態を形成することができ、層間の剥離を抑えることができる一方、金属クロム層から離れる側においてはセラミック的な結晶構造とすることが可能となる。
【0024】
なお、本ターゲット1において、傾斜窒化クロム層5のクロムの濃度割合としては、限定されるわけではないが、金属クロム層に近い側においては、100原子%以下、好ましくは100原子%未満であることが必須であって、好ましくは90原子%以下である。また、金属クロム層から遠い側においては近い側よりもクロムが減少している一方、クロムが0原子%より多く含まれていることが必須であるが、5原子%以上であることが好ましく、より好ましくは10原子%以上であり、更に好ましくは20原子%である。この範囲とすることで上記金属クロム層との接合及び窒化クロム層による効果を得ることができるようになる。
【0025】
また、本ターゲット1において、傾斜窒化クロム層5の厚さとしては、限定されるわけではないが、上記金属クロム層4と合わせて0.5μm以上10μm以下の範囲となっていることが好ましく、より好ましくは0.8μm以上7μm以下の範囲である。0.5μm以上とすることで現実的な窒化率の傾斜を実現できるといった効果があり、0.8μm以上とすることでこの効果が顕著となる。一方、10μm以下とすることで、剥離を生じにくくするとともに、荷電粒子のビームの減衰を防止することができるといった利点がある。
【0026】
(製造方法)
次に、本ターゲットの製造方法(以下「本製造方法」という。)について説明する。本方法は、(S1)基板上にリチウム層を形成する工程、(S2)リチウム層上に金属クロム層を形成する工程、(S3)金属クロム層上に傾斜窒化クロム層を形成する工程、を備える。
【0027】
まず、本製造方法では、(S1)基板上にリチウム層を形成する工程を有する。リチウム層を形成する方法としては、所望の厚さを形成することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば溶融圧延、圧延、貼り付け、蒸着等を例示することができる。
【0028】
次に、本製造方法では、(S2)リチウム層上に金属クロム層を形成する工程を有する。金属クロム層を形成する方法としては、所望の厚さを形成することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えばスパッタリング、CVD等の蒸着等を例示することができる。
【0029】
また、本製造方法では、(S3)金属クロム層上に傾斜窒化クロム層を形成する工程、を備える。傾斜窒化クロム層を形成する方法としては、所望の厚さを形成することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えばスパッタリング、CVD等の蒸着等を例示することができる。
【0030】
また、この工程において、窒化クロム層の窒素の量は上記の通り、金属クロム層に近い側から徐々に高くして形成することが好ましい。この窒素量の変化は限定されるわけではないが、連続的であってもよく、段階的(階段的)に増加していくこととしてもよい。
【0031】
以上、本実施形態によって、より信頼性の高い中性子発生用リチウムターゲット及びその製造方法を提供することができる。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態は、上記実施形態1と同様であるが、リチウム層と金属クロム層の間に、酸素を含む中間層を備えることが異なる以外は上記実施形態1と同様である。以下主として差異点について説明する。図3は、本実施形態に係るターゲットの断面構造のイメージを示す図である。
【0033】
本図で示すように、本ターゲット1は、基板2と、基板2上に形成されるリチウム層3と、リチウム層3の上に形成される酸素を含む中間層6と、中間層6の上に形成される金属クロム層4と、金属クロム層4上に形成される傾斜窒化クロム層5と、を有する中性子発生用リチウムターゲットである。
【0034】
上記実施形態では、リチウム層3と金属クロム層4とを接触させることで、傾斜クロムのようなセラミックではなく金属層同士を接触させることになるため、その結合強度を増すことが可能となる。しかしながら、これら金属同士とする場合でもそれらの間の結合が十分ではなく剥離の可能性が生じる余地は残る。そのため、本実施形態では、更にこの間に酸素を含む中間層を形成することで、リチウム及びクロムのそれぞれと酸素を結合させることによりその結合強度を増すことが可能となる。すなわち、この酸素を含む中間層は、リチウムとクロム、酸素を含む層となっている。これにより、十分な強度を確保することができる。
【0035】
なお、本ターゲット1において、中間層の厚さは適宜調整可能であり限定されるわけではないが、当然に、リチウム層2及び金属クロム層4の厚さ未満となっていることが好ましく、具体的には、0.001μm以上0.2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上0.1μm以下である。この範囲とすることで、十分な結合強度を得ることが可能となる。
【0036】
(製造方法)
本実施形態においても、上記実施形態1と同様である。ただし、酸素を含む中間層を形成する工程が上記実施形態1と異なる。
【0037】
すなわち、本実施形態に係る中性子発生用リチウムターゲットの製造方法は、(S1)基板上にリチウム層を形成する工程、(S2)リチウム層上に金属クロム層を形成する工程、(S3)金属クロム層上に傾斜窒化クロム層を形成する工程、を備える中性子発生用リチウムターゲットの製造方法において、上記(S1)のリチウム層を形成する工程と、上記(S2)の金属クロム層を形成する工程の間に、(S4)酸素濃度を10-3toll以上10-5tollの範囲とする工程を含む。この工程によると、リチウム層上に酸素が供給されることによりまずリチウムと酸素の合金構造が形成される。そして、この上に金属クロム層が形成されることにより、これまた酸素とクロムの結合が形成される。すなわち、酸素原子を介してリチウムとクロムが強固に結合されることで、リチウム層と金属クロム層の間に強固な結合を備えさせることが可能となる。なお、酸素の供給は、酸素濃度を高めることで容易に可能である。
【0038】
以上、本実施形態によって、より信頼性の高い中性子発生用リチウムターゲット及びその製造方法を提供することができる。
【実施例
【0039】
ここで、上記実施形態に係る中性子発生用リチウムターゲットについて実際に作製し、その効果を確認した。以下説明する。
【0040】
(実施例1)
まず、厚さ5mm(φ180mm)の無酸素銅基板上に、スパッタリングによってリチウム層100μm(φ30mm)を積層させた。
【0041】
次に、上記リチウム層上に、スパッタリングにより上記リチウム層と同様の形状で金属クロム層を0.1μm積層させた。
【0042】
さらに、金属クロム層上に傾斜窒化クロム層を0.9μm積層させることで、ターゲットを作成した。この結果作製したターゲットの写真図を図4に示す。
【0043】
この作製したターゲットを用い、荷電粒子の衝突による中性子放出動作を5回繰り返したところ、破損もなく、十分に機能していることを確認した。
【0044】
(比較例1)
上記ターゲットと同様の構成とするが、金属クロム層を設けなかった以外は上記実施例と各層の厚さを同様にして比較例のターゲットを作成した。この結果作製したターゲットの写真図を図5に示す。
【0045】
この作製したターゲットを用い、仮試験としてYAGレーザー(1kW)のレーザーを照射したところ、その照射によってターゲットが破損してしまった。調べたところリチウム層と金属クロム層との間の剥離が原因であることが確認された。
【0046】
(実施例2)
まず、厚さ5mm(φ180mm)の無酸素銅基板上に、スパッタリングによってリチウム層100μm(φ30mm)を積層させた。
【0047】
次に、上記リチウム層を形成した後、酸素濃度2×10-5tollとなるように空気を導入してこの状態を60分維持した。
【0048】
次に、上記リチウム層上に、スパッタリングにより金属クロム層を0.1μm積層させた。
【0049】
さらに、金属クロム層上に傾斜窒化クロム層を0.9μm積層させることで、ターゲットを作成した。この結果作製したターゲットの写真図を図6に示す。
【0050】
この作製したターゲットを用い、荷電粒子の衝突による中性子放出動作を上記と同様に7回繰り返したが、破損もなく、十分に機能していることを確認した。特に、上記実施例1の場合よりも繰り返し回数が多く、より信頼性が高いものとなっていることを確認した。
【0051】
なお、上記中間層の確認については、二次イオン質量分析(SIMS)により行ったところ、酸素を含む中間層が確認できた。
【0052】
以上、本実施例により、本発明の効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、中性子発生用リチウムターゲット及びその製造方法として産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6