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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-14
(45)【発行日】2023-12-22
(54)【発明の名称】把持装置、及びロボット装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20231215BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20231215BHJP
   B25B 11/00 20060101ALI20231215BHJP
【FI】
B25J15/06 S
B25J15/08 S
B25B11/00 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020535867
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2019031304
(87)【国際公開番号】W WO2020032158
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018149737
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000178804
【氏名又は名称】ユニプレス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000178664
【氏名又は名称】山信金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】川村 風人
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-223681(JP,A)
【文献】特開昭49-064154(JP,A)
【文献】特開2018-027578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052147(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0054903(US,A1)
【文献】特開平02-218580(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152062(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 - 15/12
B25B 11/00
B23Q 3/06
B66C 1/04 - 1/08
B66C 1/62 - 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を収容する変形可能な第1袋部と、
磁性体を収容する変形可能な第2袋部と、
前記第1袋部及び前記第2袋部内から気体を排気、または前記第1袋部及び前記第2袋部内に気体を給気することで、前記第1袋部及び前記第2袋部の形状を制御する気体制御部と、
前記第1袋部に収容された前記磁性体を一方の極性に磁化させ、前記第2袋部に収容された前記磁性体を他方の極性に磁化させる磁界制御部と、
本体と、前記本体の一端から一方向に延びる第1腕部と、前記本体の他端から前記一方向に延びる第2腕部とを有し、前記第1腕部の端部に設けられる前記第1袋部と、前記第2腕部の端部に設けられる前記第2袋部とを並べて保持する保持部と、
前記第1腕部の周囲を囲む第1コイルと、
前記第2腕部の周囲を囲む第2コイルと
を備え、
前記保持部は、第1継鉄であり、
前記磁界制御部は、前記第1コイルに電流を流すことで、前記第1袋部に収容された前記磁性体を一方の極性に磁化させ、前記第2コイルに電流を流すことで、前記第2袋部に収容された前記磁性体を他方の極性に磁化させ、
前記第1袋部及び前記第2袋部で物体を把持する、把持装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記第1袋部と前記第2袋部とを予め定められた間隔を空けて保持する、請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記本体、前記第1腕部、及び前記第2腕部は、一体的に構成され、U字形状を成す、請求項1または2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第1腕部の前記第1コイルの外側を取り囲み、前記第1袋部を露出する開口を有する第2継鉄と、
前記第2腕部の前記第2コイルの外側を取り囲み、前記第2袋部を露出する開口を有する第3継鉄と
をさらに備える、請求項1から3の何れか1つに記載の把持装置。
【請求項5】
前記第2継鉄は、第1円筒と、前記第1円筒から延びる第1先端部分とを有し、
前記第3継鉄は、第2円筒と、前記第2円筒から延びる第2先端部分とを有し、
前記第1先端部分及び前記第2先端部分は先細形状であり、
前記第2継鉄は、前記第1先端部分に前記第1袋部を露出する前記開口を有し、
前記第3継鉄は、前記第2先端部分に前記第2袋部を露出する前記開口を有する、請求項4に記載の把持装置。
【請求項6】
前記第1袋部は、前記第1腕部の他端を露出するように前記第1腕部を取り囲むリング形状であり、
前記第2袋部は、前記第2腕部の他端を露出するように前記第2腕部を取り囲むリング形状である、請求項1から5の何れか1つに記載の把持装置。
【請求項7】
磁性体を収容する変形可能な第1袋部と、
磁性体を収容する変形可能な第2袋部と、
磁性体を収容する変形可能な第3袋部と、
前記第1袋部、前記第2袋部、及び前記第3袋部内から気体を排気、または前記第1袋部、前記第2袋部、及び前記第3袋部内に気体を給気することで、前記第1袋部、前記第2袋部、及び前記第3袋部の形状を制御する気体制御部と、
前記第1袋部に収容された前記磁性体を一方の極性に磁化させ、前記第2袋部に収容された前記磁性体を他方の極性に磁化させ、前記第3袋部に収容された前記磁性体を前記一方の磁性に磁化させる磁界制御部と、
前記第1袋部と前記第3袋部との間に前記第2袋部を挟んで、前記第1袋部、前記第2袋部、及び前記第3袋部を並べて保持する保持部とを備え、
前記第1袋部、前記第2袋部、及び前記第3袋部で物体を把持する、把持装置。
【請求項8】
磁性体を収容する変形可能な第1袋部と、
磁性体を収容する変形可能な第2袋部と、
前記第1袋部及び前記第2袋部内から気体を排気、または前記第1袋部及び前記第2袋部内に気体を給気することで、前記第1袋部及び前記第2袋部の形状を制御する気体制御部と、
前記第1袋部に収容された前記磁性体を一方の極性に磁化させ、前記第2袋部に収容された前記磁性体を他方の極性に磁化させる磁界制御部と、
前記第1袋部と前記第2袋部とを並べて保持する保持部と
を備え、
前記保持部は、前記第1袋部に収容された前記磁性体を前記一方の磁性に磁化させる第1磁石と、前記第2袋部に収容された前記磁性体を前記他方の磁性に磁化させる第2磁石と、前記第1磁石が前記第1袋部に対して近づく方向、及び遠ざかる方向に移動可能に前記第1磁石を支持し、かつ前記第2磁石が前記第2袋部に対して近づく方向、及び遠ざかる方向に移動可能に支持する移動機構をさらに有し、
前記磁界制御部は、前記移動機構を制御して、前記第1磁石を前記第1袋部に近づけ、前記第2磁石を前記第2袋部に近づけることで、前記第1袋部に収容された前記磁性体を一方の極性に磁化させ、前記第2袋部に収容された前記磁性体を他方の極性に磁化させ、
前記第1袋部及び前記第2袋部で物体を把持する、把持装置。
【請求項9】
前記磁性体は、鉄球を含む、請求項1から8の何れか1つに記載の把持装置。
【請求項10】
前記鉄球は、多面体である、請求項9に記載の把持装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1つに記載の把持装置を有するロボットアームを備えるロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置、及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、ワークを把持する把持装置が開示されている。特許文献3には、ジャミング転移を利用したロボットの接地部構造が開示されている。特許文献4及び特許文献5には、いわゆるジャミング転移を利用した把持装置が開示されている。
特許文献1 特許第6010408号公報
特許文献2 特許第5822110号公報
特許文献3 特許第5900838号公報
特許文献4 特表2013-523478号公報
特許文献5 特開2018-27578号公報
【解決しようとする課題】
【0003】
ジャミング転移を利用した把持装置の把持力を向上させることが望まれている。
【一般的開示】
【0004】
本発明の一態様に係る把持装置は、磁性体を収容し、物体を把持する変形可能な第1袋部を備えてよい。把持装置は、磁性体を収容し、物体を把持する変形可能な第2袋部を備えてよい。把持装置は、第1袋部及び第2袋部内から気体を排気、または第1袋部及び第2袋部内に気体を給気することで、第1袋部及び第2袋部の形状を制御する気体制御部を備えてよい。把持装置は、第1袋部に収容された磁性体を一方の極性に磁化させ、第2袋部に収容された磁性体を他方の極性に磁化させる磁界制御部を備えてよい。第1袋部及び第2袋部で物体を保持してよい。第1袋部及び第2袋部は、ジャミング転移により物体を把持してよい。第1袋部及び第2袋部は、可撓性材料で構成されてよい。
【0005】
把持装置は、第1袋部と第2袋部とを並べて保持する保持部を備えてよい。保持部は、第1袋部と第2袋部とを予め定められた間隔を空けて保持してよい。
【0006】
保持部は、本体と、本体の一端から一方向に延びる第1腕部と、本体の他端から一方向に延びる第2腕部とを有してよい。第1袋部は、第1腕部の端部に設けられてよい。第2袋部は、第2腕部の端部に設けられてよい。本体、第1腕部、及び第2腕部は、一体的に構成され、U字形状を成してよい。
【0007】
保持部は、継鉄でよい。把持装置は、本体の周囲を囲むコイルを備えてよい。磁界制御部は、コイルに電流を流すことで、第1袋部に収容された磁性体を一方の極性に磁化させ、第2袋部に収容された磁性体を他方の極性に磁化させてよい。
【0008】
保持部は、第1継鉄でよい。把持装置は、第1腕部の周囲を囲む第1コイルを備えてよい。把持装置は、第2腕部の周囲を囲む第2コイルを備えてよい。磁界制御部は、第1コイルに電流を流すことで、第1袋部に収容された磁性体を一方の極性に磁化させてよい。磁界制御部は、第2コイルに電流を流すことで、第2袋部に収容された磁性体を他方の極性に磁化させてよい。第1コイル及び第2コイルは、第1腕部及び第2腕部のそれぞれに対して同一方向に巻かれてよい。磁界制御部は、第1コイルに第1方向に電流を流し、第2コイルに第1方向とは反対の第2方向に電流を流してよい。
【0009】
把持装置は、第1腕部の第1コイルの外側を取り囲み、第1袋部を露出する開口を有する第2継鉄を備えてよい。把持装置は、第2腕部の第2コイルの外側を取り囲み、第2袋部を露出する開口を有する第3継鉄を備えてよい。第2継鉄は、第1円筒と、第1円筒から延びる第1先端部分とを有してよい。第3継鉄は、第2円筒と、第2円筒から延びる第2先端部分とを有してよい。第1先端部分及び第2先端部分は先細形状でよい。第2継鉄は、第1先端部分に第1袋部を露出する開口を有してよい。第3継鉄は、第2先端部分に第2袋部を露出する開口を有してよい。
【0010】
第1袋部は、第1腕部の他端を露出するように第1腕部を取り囲むリング形状でよい。第2袋部は、第2腕部の他端を露出するように第2腕部を取り囲むリング形状でよい。
【0011】
把持装置は、磁性体を収容し、物体を把持する変形可能な第3袋部を備えてよい。保持部は、第1袋部と第3袋部との間に第2袋部を挟んで、第1袋部、第2袋部、及び第3袋部を並べて保持してよい。気体制御部は、第3袋部内から気体を吸引、または第3袋部内に気体を注入することで、第3袋部の形状を制御してよい。磁界制御部は、第3袋部に収容された磁性体を一方の磁性に磁化させてよい。
【0012】
保持部は、第1袋部に収容された磁性体を一方の磁性に磁化させる第1磁石を有してよい。保持部は、第2袋部に収容された磁性体を他方の磁性に磁化させる第2磁石を有してよい。保持部は、第1磁石が第1袋部に対して近づく方向、及び遠ざかる方向に移動可能に第1磁石を支持し、かつ第2磁石が第2袋部に対して近づく方向、及び遠ざかる方向に移動可能に支持する移動機構を有してよい。第1磁石及び第2磁石は永久磁石でよい。移動機構は、エアリンダでよい。
【0013】
磁界制御部は、移動機構を制御して、第1磁石を第1袋部に近づけ、第2磁石を第2袋部に近づけることで、第1袋部に収容された磁性体を一方の極性に磁化させ、第2袋部に収容された磁性体を他方の極性に磁化させてよい。
【0014】
磁性体は、鉄球を含んでよい。
【0015】
鉄球は、多面体でよい。鉄球は、12面体、20面体、32面体、または64面体でよい。鉄球の直径は、3.0mm、4.0mm、または4.5mm以上でよい。第1袋部、第2袋部、及び第3袋部の少なくとも1つは、鉄球に加えて粉末状の磁性体を収容してもよい。
【0016】
本発明の一態様に係るロボット装置は、上記把持装置を有するロボットアームを備えてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る把持装置の全体構成を模式的に示す図である。
図2】第1変形例に係る把持装置の全体構成を模式的に示す図である。
図3】第2変形例に係る把持装置の全体構成を模式的に示す図である。
図4】第3変形例に係る把持装置の全体構成を模式的に示す図である。
図5A】第4変形例に係る把持装置の模式図を示す図である。
図5B図5Aに示す把持部を先端側から見た模式図である。
図6】第5変形例に係る把持部の模式図を示す図である。
図7】他の実施形態に係る把持装置雄の全体構成を模式的に示す図である。
図8】把持装置を備えるロボット装置の模式図である。
図9図1に示す把持装置で鉄板を把持した場合の様子を示す図である。
図10】比較対象の2つの物体把持装置で鉄板を把持した場合の様子を示す図である。
図11図9に示すように把持装置で鉄板を把持した場合の磁束密度分布の一例を示す図である。
図12図10に示すように2つの物体把持装置で鉄板を把持した場合の磁束密度分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、実施形態に係る把持装置10の全体構成を模式的に示す図である。把持装置10は、いわゆるジャミング転移を利用して、物体を把持する。把持装置10は、物体として、鋼板などの軟磁性材料からなるワークを把持してよい。
【0021】
把持装置10は、把持部100、把持部110、保持部200、コイル211、コイル212、気体制御部300、及び電源供給部400を備える。把持部100、把持部110、保持部200、コイル211、及びコイル212は、模式的に断面図で示されている。
【0022】
把持部100は、袋部101及び鉄球102を有する。袋部101は、鉄球102を収容する袋状の変形可能な材料で構成される。把持部110は、袋部111及び鉄球112を有する。袋部111は、鉄球112を収容する袋状の変形可能な材料で構成される。袋部101及び袋部111は、シリコンゴム、エラストマーなどの可撓性材料で構成されてよい。袋部101は、多数の鉄球102を収容する。袋部111は、多数の鉄球112を収容する。鉄球102及び鉄球112は、磁性体の一例である。鉄球102及び鉄球112は、球体、または多面体でよい。鉄球102及び鉄球112は、12面体、20面体、32面体、または64面体などでよい。鉄球102及び鉄球112の直径は、3.0mm、4.0mm、または4.5mm以上でよい。袋部101は、第1袋部の一例である。袋部111は、第2袋部の一例である。袋部101及び袋部111は、鉄球102及び鉄球112以外に鉄粉などの粉末状の磁性体をさらに収容してもよい。
【0023】
保持部200は、袋部101と袋部111とを並べて保持する。保持部200は、袋部101と袋部111とを予め定められた間隔を空けて保持してよい。保持部200は、本体202と、本体202の一端から一方向に延びる腕部204と、本体202の他端から一方向に延びる腕部205とを有する。腕部204は、第1腕部の一例である。腕部205は、第2腕部の一例である。保持部200は、継鉄である。本体202、腕部204、及び腕部205は、一体的に構成され、U字形状を成してよい。袋部101は、腕部204の端部に設けられてよい。袋部101は、腕部204の端部を覆うように設けられてよい。袋部111は、腕部205の端部に設けられてよい。袋部111は、腕部205の端部を覆うように設けられてよい。
【0024】
気体制御部300は、袋部101及び袋部111内から気体を排気、または袋部101及び袋部111内に気体を給気することで、袋部101及び袋部111の形状を制御する。気体制御部300は、真空発生器320、エア供給部322、エア排気部324、配管310を有する。配管310は、主配管311、枝配管312、及び枝配管313を含む。主配管311の一端に真空発生器320が接続される。主配管311が分岐して、枝配管312及び枝配管313に接続される。主配管311は、ジョイント304を介して枝配管312に接続されてよい。主配管311は、ジョイント305を介して枝配管313に接続されてよい。ジョイント304及びジョイント305は、保持部200の外面に固定されてよい。
【0025】
枝配管312及び枝配管313は、保持部200の内部に配置されてよい。枝配管312は、腕部204を構成する継鉄を貫通する貫通孔内に配置されてよい。枝配管313は、腕部205を構成する継鉄を貫通する貫通孔内に配置されてよい。枝配管312の端部は、腕部204の端部から露出する。枝配管312の端部には、鉄球102の直径より小さい網目状のフィルタ314が配置されている。枝配管313の端部は、腕部205の端部から露出する。枝配管313の端部は、鉄球112が枝配管313内に侵入するのを防ぐ構造を有するフィルタ315が配置されている。フィルタ315は、例えば、鉄球112の直径より小さい網目状のフィルタでよい。フィルタ315は、1つ以上の棒状部材で構成されてもよい。
【0026】
真空発生器320は、配管310を介して、袋部101及び袋部111内の気体を吸引して、エア排気部324から気体(エア)を排気する。真空発生器320は、袋部101及び袋部111内を真空状態にしてよい。袋部101及び袋部111内の気体が吸引されることで、袋部101及び袋部111内の鉄球102及び鉄球112同士が密着する。いわゆるジャミング転移により、鉄球102間及び鉄球112間の隙間が少なくなり、鉄球102及び鉄球112が移動できなくなる。これにより、多数の鉄球102及び鉄球112が一塊の固体として振る舞う。
【0027】
例えば、袋部101及び袋部111をワークに押し付け、袋部101及び袋部111の形状をワークの形状に合わせた形状にした後、気体制御部300は、袋部101及び袋部111内の気体を排気することで、袋部101及び袋部111の形状をワークの形状に対応する形状に固定化させることができる。一方、真空発生器320は、エア供給部322を介して袋部101及び袋部111内に気体(エア)を給気する。これにより、鉄球102間及び鉄球112間に隙間が生じ、袋部101及び袋部111内の鉄球102及び鉄球112が移動しやすくなる。袋部101及び袋部111の形状が変化しやすくなる。真空発生器320が、袋部101及び袋部111内の気体の排気及び給気を制御することで、袋部101及び袋部111を硬化させたり、軟化させたりできる。
【0028】
ジャミング転移を利用して、袋部101及び袋部111の形状を把持対象の物体の形状に合わせて固定化させることで、袋部101及び袋部111により物体を把持しやすくなる。しかし、例えば、物体の重量が大きい場合、袋部101及び袋部111の形状を把持対象の物体の形状に合わせて固定化させるだけでは、把持力が弱く、袋部101及び袋部111で確実に物体を把持することができない場合がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、袋部101及び袋部111内の鉄球102及び鉄球112を磁化させ、磁力により袋部101及び袋部111の把持力を増加させる。
【0030】
コイル211は、腕部204の周囲に設けられる。コイル212は、腕部205の周囲に設けられる。コイル211及びコイル212は、腕部204及び腕部205のそれぞれに対して同一方向に巻かれてよい。電源供給部400は、コイル211及びコイル212に電力を供給する。コイル211及びコイル212に電流が流れることで、磁界が発生する。電源供給部400は、コイル211に第1方向に電流を流し、コイル212に第1方向とは逆の第2方向に電流を流す。コイル211及びコイル212は、腕部204及び腕部205のそれぞれに対して異なる方向に巻かれてよい。この場合、電源供給部400は、コイル211及びコイル212に同一方向に電流を流してよい。これにより、電源供給部400は、袋部111に収容された鉄球102を一方の極性(例えば、N極)に磁化させ、袋部111に収容された鉄球112を他方の極性(例えば、S極)に磁化させる。電源供給部400は、磁界制御部の一例である。
【0031】
このように、袋部101内の鉄球102と、袋部111内の鉄球112とを異なる極性に磁化させることで、袋部101及び袋部111で発生する磁力を、袋部101及び袋部111で把持される物体に集中させることができる。よって、袋部101及び袋部111の把持力を向上させることができる。
【0032】
図2は、第1変形例に係る把持装置10の全体構成を模式的に示す図である。第1変形例に係る把持装置10は、袋部101及び袋部111のそれぞれに別箇の継鉄206、及び継鉄207を備える点で、図1に示す把持装置10と異なる。図2に示す把持装置10が備える各部のうち、図1に示す把持装置10が備える各部と共通の機能を有する各部は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
コイル211は、継鉄206の周囲に設けられる。コイル212は、継鉄207の周囲に設けられる。枝配管312は、継鉄206を貫通する貫通孔内に配置されてよい。枝配管313は、継鉄207を貫通する貫通孔内に配置されてよい。継鉄206及び継鉄207は、それぞれ別個のアームなどの保持機構で保持されてよい。保持機構が、継鉄206及び継鉄207の相対位置を任意の位置に変更してよい。例えば、袋部101の先端部分と、袋部111の先端部分とが対向するように配置して、袋部101及び袋部111が物体を挟み込むように物体を把持してもよい。また、保持機構が、物体の形状などに応じて、継鉄206及び継鉄207の間隔を調整してもよい。
【0034】
このように構成された把持装置10において、電源供給部400が、コイル211及びコイル212に電流を流すことで、袋部111に収容された鉄球102を一方の極性(例えば、N極)に磁化させ、袋部111に収容された鉄球112を他方の極性(例えば、S極)に磁化させてよい。これにより、袋部101及び袋部111で発生する磁力を、袋部101及び袋部111で把持される物体に集中させることができる。よって、袋部101及び袋部111の把持力を向上させることができる。
【0035】
図3は、第2変形例に係る把持装置10の全体構成を模式的に示す図である。第2変形例に係る把持装置10は、袋部101内の鉄球102を磁化させるコイルと、袋部111内の鉄球112を磁化させるコイルとを兼用させている点で、図1に示す把持装置10と異なる。図3に示す把持装置10が備える各部のうち、図1に示す把持装置10が備える各部と共通の機能を有する各部は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
把持装置10は、保持部200の本体202の周囲を囲むコイル210を備える。電源供給部400がコイル210に電流を流すことで、磁界が発生し、袋部111に収容された鉄球102を一方の極性(例えば、N極)に磁化させ、袋部111に収容された袋部111を他方の極性(例えば、S極)に磁化させることができる。
【0037】
袋部101内の鉄球102を磁化させるコイルと、袋部111内の鉄球112を磁化させるコイルとを兼用することで、兼用しない場合に比べて把持装置10を軽量化及び小型化することができる。
【0038】
図4は、第3変形例に係る把持装置10の全体構成を模式的に示す図である。第3変形例に係る把持装置10は、3つの腕部、及び3つの袋部を備える点で、上記の把持装置10と異なる。図1に示す把持装置10が備える各部と共通の機能を有する各部は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
把持装置10は、把持部100、把持部110に加えて、把持部120をさらに備える。保持部200は、把持部100、把持部110、及び把持部120を並べて保持する。把持部120は、袋部121及び鉄球122を有する。袋部121は、鉄球122を収容する袋状の変形可能な材料で構成される。袋部121は、シリコンゴム、エラストマーなどの可撓性材料で構成されてよい。袋部121は、袋部101、及び袋部111と同様に、鉄球122以外に鉄粉などの粉末状の磁性体をさらに収容してよい。
【0040】
保持部200は、本体202、腕部221、腕部222、及び腕部223を備える。腕部221は、本体202の一方の端部から伸びる。腕部223は、本体202の他方の端部から延びる。腕部222は、本体202の一方の端部と他方の端部との間から延びる。本体202、腕部221、腕部222、及び腕部223は、一体的に構成された継鉄でよい。腕部222は、腕部221及び腕部223より太くてよい。腕部221の端部に袋部101が取りつけられ、腕部222の端部に袋部111が取り付けられ、腕部223の端部に袋部121が取り付けられてよい。腕部222に取り付けられる袋部111の鉄球の収容量は、袋部101及び袋部121の収容量より大きくてよい。
【0041】
配管310は、主配管311、枝配管312、枝配管313に加えて枝配管316を有する。腕部221を構成する継鉄を貫通する貫通孔内に枝配管312が設けられる。腕部222を構成する継鉄を貫通する貫通孔内に枝配管313が設けられる。腕部223を構成する継鉄を貫通する貫通孔内に枝配管316が設けられる。真空発生器320は、配管310を介して、袋部101、袋部111、及び袋部121内の気体を吸引して、エア排気部324から気体(エア)を排気する。真空発生器320は、袋部101、袋部111、及び袋部121内を真空状態にしてよい。
【0042】
コイル210は、腕部222の周囲に配置される。電源供給部400は、袋部101に収容された鉄球102を一方の極性(例えば、S極)に磁化させ、袋部111に収容された鉄球112を他方の極性(例えば、N極)に磁化させ、さらに、袋部121に収容された鉄球122を一方の磁性(例えば、S極)に磁化させる。
【0043】
把持装置10が、磁化された3つの袋部を備えることで、把持対象の物体の形状によっては、より安定して物体を把持することができる。
【0044】
図5Aは、第4変形例に係る把持装置10の模式図である。図5Bは、図5Aに示す把持部100を先端側から見た模式図である。第4変形例に係る把持装置10は、袋部101及び袋部111の形状が、図1に示す把持装置10の袋部101及び袋部111の形状と異なる。また、第4変形例に係る把持装置10は、枝配管312及び枝配管313が、保持部200の外部に設けられている点で、図1に示す把持装置10と異なる。
【0045】
図5Aに示す把持装置10が備える各部のうち、図1に示す把持装置10が備える各部と共通の機能を有する各部は、同一の符号を付して説明を省略する。なお、コイル211及びコイル212は、図3に示す把持装置10と同様に、1つのコイルで構成してもよい。
【0046】
袋部101は、継鉄である腕部204の先端を露出するように腕部204を取り囲むリング形状でよい。袋部111は、継鉄である腕部205の先端を露出するように腕部205を取り囲むリング形状でよい。すなわち、袋部101及び袋部111は、ドーナツ形状でよい。袋部101及び袋部111の形状をこのような形状にすることで、継鉄の先端を直接、把持対象の物体に接触させることができる。継鉄を直接、物体に接触させることで、物体への磁力が増加され、把持部100の把持力を増加させることができる。
【0047】
図6は、把持装置10が備える把持部100の第5変形例を示す模式図である。把持装置10は、袋部101を保持する継鉄である保持部200の周囲にコイル211を備える。さらに、把持装置10は、コイル211の外側を取り囲み、袋部101を露出する開口602を有する他の継鉄600を備える。継鉄600は、開口602の周囲が、袋部101の磁性と反対の磁性に磁化される。継鉄600は、円筒形状に形成されてよい。継鉄600の内部に、保持部200及び袋部101が配置されてよい。継鉄600は、円筒と、円筒から延びる先端部分とを有してよい。先端部分は先細形状でよい。継鉄600は、先端部分に開口602を有してよい。把持装置10が、コイル211の外側にさらに継鉄600を備えることで、把持部100の磁力を増加させることができ、把持部100の把持力をさらに増加させることができる。なお、把持装置10は、コイル212の外側を取り囲み、袋部111を露出する開口を有する他の継鉄をさらに備えてよい。
【0048】
図7は、他の実施形態に係る把持装置10の全体構成を模式的に示す図である。他の実施形態に係る把持装置10は、電磁石の代わりに永久磁石251及び永久磁石252を備える点で、上記の把持装置10と異なる。永久磁石251を把持部100に近づけることで、袋部101内の鉄球102を一方の磁性(例えば、N極)に磁化させ、永久磁石252を把持部110に近づけることで、袋部111内の鉄球112を他方の磁性(例えば、S極)に磁化させる。
【0049】
把持装置10は、エアシリンダ500を備える。エアシリンダ500は、本体502と、ピストンロッド504と、取付部506とを備える。取付部506に永久磁石251及び永久磁石252が取り付けられる。永久磁石251の一方の磁極(例えば、N極)が把持部100側に向くように永久磁石251は、取付部506に取り付けられる。永久磁石252の他方の磁極(例えば、S極)が把持部110側に向くように永久磁石252は、取付部506に取り付けられる。
【0050】
本体502は、内部にシリンダ及びピストンを有する。ピストンロッド504は、ピストンに連結され、取付部506を介して永久磁石251及び永久磁石252を、袋部101及び袋部111に対して近づく方向、及び遠ざかるように移動させる。エアシリンダ500は、移動機構の一例である。
【0051】
エアシリンダ500が、永久磁石251及び永久磁石252を、袋部101及び袋部111に近づけることで、袋部101内の鉄球102を一方の磁性に磁化させ、袋部111内の鉄球112を他方の磁性に磁化させる。エアシリンダ500が、永久磁石251及び永久磁石252を、袋部101及び袋部111から遠ざけることで、袋部101内の鉄球102、袋部111内の鉄球112の磁化を弱める。すなわち、エアシリンダ500が、永久磁石251及び永久磁石252を袋部101及び袋部111に近づけることで、袋部101及び袋部111の把持力を増加させる。エアシリンダ500が、永久磁石251及び永久磁石252を袋部101及び袋部111から遠ざけることで、袋部101及び袋部111の把持力を減少させる。
【0052】
他の実施形態に係る把持装置10によれば、電磁石の代わりに永久磁石を用いることで、コイルに電力を供給する電源が不要になる。
【0053】
図8は、把持装置10を備えるロボット装置800の一例を示す模式図である。ロボット装置800は、多関節のロボットであるロボットアーム810と、ロボットアーム810の先端に取り付けられた把持装置10とを備える。ロボットアーム810は、複数のリンク部材が関節で連結されたものであり、基端が基台820に固定されている。
【0054】
ロボット装置800が備える把持装置10は、重量の比較的大きい、様々な形状の物体を確実に把持することができる。
【0055】
上記のようなロボット装置800のロボットアーム810に取り付けられる把持装置が、爪式のハンドである場合、把持対象の物体の形状に応じて、ハンドを付け替える必要がある。しかし、上記の実施形態及び変形例に係る把持装置10によれば、把持対象の物体の形状に応じて、ハンドを付け替える必要がない。
【0056】
また、把持装置が、磁力を利用せずに、ジャミング機能のみで物体を把持する場合、把持装置が重量の大きい物体を把持できない可能性がある。そこで、把持装置の把持力を増加させるために、ジャミング機能に加えて、エア式吸着機能を把持装置に搭載することも考えられる。しかし、このような把持装置によれば、ジャミング用の減圧、及びエア式吸着用の減圧をそれぞれ別個に行う必要があり、把持装置が把持対象の物体を把持するのに時間を要する。よって、このような把持装置の場合、生産性が低下する可能性がある。
【0057】
これらに対して、上記の実施形態及び変形例に係る把持装置10によれば、把持装置10が複数の袋部を備え、それぞれの袋部内の鉄球などの磁性体を交互に異なる磁性に磁化させる。これにより、把持対象の物体に対する磁力を増加させることができ、把持力を増加させることができる。しかも、ジャミング用の減圧のみで済むため、把持装置10が把持対象の物体を把持するのに要する時間を短縮することができる。
【0058】
図9は、図1に示す把持装置10で鉄板900(寸法:300mm×300mm、厚さ2.3mm、材料:SS400鋼材)を把持した場合の様子を示す。図10は、2つの物体把持装置700で鉄板900(寸法:300mm×300mm、厚さ2.3mm、材料:SS400鋼材)を把持した場合の様子を示す。物体把持装置700は、可撓性の袋部701と、袋部701に収容された鉄球702と、袋部701を保持する円板状のプレート703と、袋部701内を吸引する吸引手段と、プレート703の袋部701と反対側に配置された電磁石部710とを備える。電磁石部710は、鉄心部711と、鉄心部711の周囲に配置されたコイル部712と、コイル部712部の周囲を囲むヨーク部713とを有する。そして、2つの物体把持装置700のそれぞれのコイル部712は一方の磁性(例えば、N極)に磁化され、2つの物体把持装置700のそれぞれのヨーク部713が他方の磁性(例えば、S極)に磁化されている。
【0059】
図11は、図9に示すように鉄板が把持された場合における株式会社JSOLのJMAG(登録商標)などの電磁界解析ソフトによるシミュレーションの結果として、磁束密度分布を示す。この場合の吸着力は、10.6kgであった。図12は、図10に示すように鉄板が把持された場合における上記の電磁界解析ソフトによるシミュレーションの結果として、磁束密度分布を示す。この場合の吸着力は、3.8kgであった。すなわち、図9に示す把持装置10による吸着力は、図10に示す物体把持装置700による吸着力の約2.8倍であった。
【0060】
図10に示す物体把持装置700によれば、袋部701内の鉄球702がS極、N極、及びS極の磁気回路を短絡させてしまうので、対象物に十分な吸着力を与えられない。また、図10に示す物体把持装置700によれば、鉄心部711と袋部701との間にプレート703が配置されているため、電磁石部710からの磁力を対象物に伝達しにくい。一方、図9に示す把持装置10によれば、N極及びS極の磁極が分離しているので、対象物を介して磁気回路が構成され、吸着力を増加させることができる。また、図9に示す把持装置10によれば、継鉄と袋部とが直接接触しているので、継鉄からの磁力を効率的に対象物に伝達することができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0062】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0063】
10 把持装置
100,110,120 把持部
101,111 袋部
102,112,122 鉄球
200 保持部
202 本体
204,205,221,222,223 腕部
206,207 継鉄
210,211,212 コイル
251,252 永久磁石
300 気体制御部
304,305 ジョイント
310 配管
311 主配管
312,313,316 枝配管
314,315 フィルタ
320 真空発生器
322 エア供給部
324 エア排気部
400 電源供給部
500 エアシリンダ
502 本体
504 ピストンロッド
506 取付部
600 継鉄
602 開口
800 ロボット装置
810 ロボットアーム
820 基台
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12