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特許7404320線維症の治療において使用するためのエンドスタチン断片およびバリアント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-15
(45)【発行日】2023-12-25
(54)【発明の名称】線維症の治療において使用するためのエンドスタチン断片およびバリアント
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20231218BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20231218BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20231218BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20231218BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/47 ZNA
C12N15/62 Z
A61K38/17
A61P11/00
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021158128
(22)【出願日】2021-09-28
(62)【分割の表示】P 2018515195の分割
【原出願日】2016-06-03
(65)【公開番号】P2022002527
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】62/171,889
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/257,607
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517423774
【氏名又は名称】アイバイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IBIO, INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】517423785
【氏名又は名称】ノビシ・バイオテック・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】NOVICI BIOTECH LLC
(73)【特許権者】
【識別番号】517423796
【氏名又は名称】エム・ユー・エス・シィ・ファウンデーション・フォー・リサーチ・ディベロップメント
【氏名又は名称原語表記】MUSC FOUNDATION FOR RESEARCH DEVELOPMENT
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェガリ-ボストウィック,キャロル
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,テレンス・イー
(72)【発明者】
【氏名】パジェット,ハル・エス
(72)【発明者】
【氏名】マギー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ホルツ,アール・バリー
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-517186(JP,A)
【文献】国際公開第2011/050311(WO,A1)
【文献】特許第6952685(JP,B2)
【文献】ZHOU, H. et al.,Contributions of disulfide bonds in a nested pattern to the structure, stability, and biological functions of endostatin,J. Biol. Chem.,2005年,Vol. 280(12),pp. 11303-11312
【文献】山口由衣 ほか,線維化疾患におけるエンドスタチンの役割と機能,日本臨床免疫学会会誌,2013年,Vol. 36(6),pp. 452-458
【文献】Yamaguchi Y. et al.,A Peptide Derived from Endostatin Ameliorates Organ Fibrosis,Sci Transl Med,2012年,Vol. 4:136ra71
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
A61K31/00-31/80
A61K38/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維症の対象を治療するための医薬品を製造するための単離されたポリペプチドの使用であって、ここにおいて単離されたポリペプチドは、
a)配列番号16を含み、
b)それを必要とする対象に投与された場合に抗線維化活性を有する、
単離されたポリペプチドであって、単離されたポリペプチドが緩衝液中で可溶性であり、1.2MDaの分子量を有する多量体を形成し、
ここにおいて線維症が肺線維症である、使用
【請求項2】
単離されたポリペプチドが、分泌型配列、ペプチドタグ、KDELポリペプチド、配列番号16のC末端にAla-Ser-Lys配列、IgG Fcドメイン、または配列番号17のアミノ酸27~43をさらに含む、請求項1に記載の使用
【請求項3】
コルチコステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステイン、D-ペニシラミン、コルヒチン、レラキシン、ステロイド、シクロスポリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノレート、グリタゾン、エンドセリン受容体アンタゴニスト、およびフルベストラントからなる群から選択される別の治療剤が、前記線維症の対象にさらに投与されるものである、請求項に記載の使用。
【請求項4】
前記別の治療剤が経口投与または静脈内投与により投与されるものである、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月5日出願の米国仮出願第62/171,889号および2015年11月19日出願の米国仮出願第62/257,607号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
技術分野
本文献は、線維症を治療するための材料および方法、特に、線維症を治療するための、エンドスタチンの断片およびバリアントを含有するポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
エンドスタチンは、コラーゲン18のC末端に対応する183アミノ酸のタンパク質分解切断断片であり、抗腫瘍活性を有し、毒性の副作用は伴わない(O’Reillyら(1997)Cell、88:277-285(非特許文献1);Kiskerら(2001)Cancer Res、61:7669-7674(非特許文献2);Dhanabalら(1999)Cancer Res、59:189-197(非特許文献3);Yoonら(1999)Cancer Res、59:6251-6256(非特許文献4);FolkmanおよびKalluri、(2003)Cancer Medicine、第6版、161~194頁、Hamilton:B.C.Decker Inc.(非特許文献5))。このタンパク質に関しては、内皮細胞の増殖、遊走、および管形成の阻害などの、いくつもの抗血管新生活性が報告されている。この活性は、エンドスタチンのN末端領域に局在している。エンドスタチンはまた、血管内皮増殖因子(VEGF)によって誘導される血管透過性を抑制する(Takahashiら(2003)Faseb
J、17:896-898(非特許文献6))。エンドスタチンは、α5β1インテグリンとの結合を介して接着斑キナーゼのリン酸化を阻害することによって内皮細胞の遊走を阻害する(Wickstromら(2002)Cancer Res、62:5580-5589(非特許文献7))。細胞表面グリピカンが低親和性エンドスタチン受容体であることも示されている(Karumanchiら(2001)Mol Cell、7:811-822(非特許文献8))。エンドスタチンは、c-myc活性の下方制御(ShichiriおよびHirata(2001)Faseb J、15:1044-1053(非特許文献9))、サイクリン-D1活性の下方制御(Hanaiら(2002)J Biol Chem、277.16464-16469(非特許文献10))およびRhoA活性の下方制御(Wickstromら(2003)J Biol Chem、278:37895-37901(非特許文献11))、VEGFシグナル伝達の遮断(Hajitouら(2002)Faseb J、16:1802-1804(非特許文献12);Kimら(2002)J Biol Chem、277:27872-27879(非特許文献13))、ならびにwnt-シグナル伝達経路の阻害(Hanaiら(2002)J Cell Biol、158:529-539(非特許文献14))などの、いくつかのシグナル伝達経路に関係づけられている。さらに、エンドスタチンは、メタロプロテイナーゼに結合し、それを不活化すること(Kimら(2000)Cancer
Res、60:5410-5413(非特許文献15);Nybergら(2003)J Biol Chem、278:22404-22411(非特許文献16);Leeら(2002)FEBS Lett、519:147-152(非特許文献17))、および血管新生を抑制する一連の遺伝子を調節すること(Abdollahiら(2004)Mol Cell、13:649-663(非特許文献18))が示されている。
【0004】
マウスエンドスタチンおよびヒトエンドスタチンの両方の結晶構造が解明されており(Hohenesterら(1998)Embo J、17:1656-1664(非特許文献19);Dingら(1998)Proc Natl Acad Sci USA、95:10443-10448(非特許文献20))、結晶化に必要な高濃度において非共有結合により保持された二量体が示されている(Dingら(1998)Proc Natl Acad Sci USA、95:10443-10448(非特許文献20))。2つのジスルフィド結合が存在することにより、高度にフォールディングされた構造がもたらされる。エンドスタチンは、分子のN末端の3つのヒスチジン(ヒスチジン1、3、および11)ならびにアスパラギン酸76を介して、単量体当たり1つの亜鉛原子に結合する。エンドスタチンのヘパリン結合性は、分子の三次元球状表面にわたって密集した連続していないアルギニンによって媒介される(Sasakiら(1999)Embo
J、18:6240-6248(非特許文献21))。
【0005】
臓器線維芽細胞によるフィブロネクチン(FN)およびI型コラーゲン(Collα1)などの細胞外マトリックス(ECM)構成成分の過剰な沈着は、線維症と定義される。臓器線維症は、末期臓器不全症をもたらす多くの疾患の最終的な共通経路である。しかし、臓器線維症に対する有効な療法は依然として得られていない(例えば、Bjorakerら、Am.J.Respir.Crit.Care.Med 2000;157:199-203(非特許文献22)を参照されたい)。急性炎症および慢性炎症、血管新生、常在細胞の活性化、およびECMリモデリングを含めた制御できない創傷治癒応答が線維症の病理発生に関与すると考えられている(Wynn、J Clin Invest 2007;117:524-29(非特許文献23);Kalluriら、Curr Opin Nephrol Hypertension 2000;9:413-8(非特許文献24)。TGF-βは、線維化臓器において増加するプロトタイプ線維化サイトカインであり、ECM分子の合成を刺激すること、線維芽細胞を活性化してα-平滑筋アクチン(α-SMA)を発現する筋線維芽細胞にすること、およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を下方制御することによって線維症の発生に寄与する(例えば、Brantonら、Microbes Infect 1999;1:1349-65(非特許文献25)を参照されたい)。期待が大きいにもかかわらず、初期全身性硬化症(SSc)の患者におけるモノクローナル抗TGF-β抗体の臨床試験ではいかなる有効性も示すことができなかった(Vargaら、Nature Reviews Rheumatology 2009;5:200-6(非特許文献26))。したがって、線維症の他の治療が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】O’Reillyら(1997)Cell、88:277-285
【文献】Kiskerら(2001)Cancer Res、61:7669-7674
【文献】Dhanabalら(1999)Cancer Res、59:189-197
【文献】Yoonら(1999)Cancer Res、59:6251-6256
【文献】FolkmanおよびKalluri、(2003)Cancer Medicine、第6版、161~194頁、Hamilton:B.C.Decker Inc.
【文献】Takahashiら(2003)Faseb J、17:896-898
【文献】Wickstromら(2002)Cancer Res、62:5580-5589
【文献】Karumanchiら(2001)Mol Cell、7:811-822
【文献】ShichiriおよびHirata(2001)Faseb J、15:1044-1053
【文献】Hanaiら(2002)J Biol Chem、277.16464-16469
【文献】Wickstromら(2003)J Biol Chem、278:37895-37901
【文献】Hajitouら(2002)Faseb J、16:1802-1804
【文献】Kimら(2002)J Biol Chem、277:27872-27879
【文献】Hanaiら(2002)J Cell Biol、158:529-539
【文献】Kimら(2000)Cancer Res、60:5410-5413
【文献】Nybergら(2003)J Biol Chem、278:22404-22411
【文献】Leeら(2002)FEBS Lett、519:147-152
【文献】Abdollahiら(2004)Mol Cell、13:649-663
【文献】Hohenesterら(1998)Embo J、17:1656-1664
【文献】Dingら(1998)Proc Natl Acad Sci USA、95:10443-10448
【文献】Sasakiら(1999)Embo J、18:6240-6248
【文献】Bjorakerら、Am.J.Respir.Crit.Care.Med 2000;157:199-203
【文献】Wynn、J Clin Invest 2007;117:524-29
【文献】Kalluriら、Curr Opin Nephrol Hypertension 2000;9:413-8
【文献】Brantonら、Microbes Infect 1999;1:1349-65
【文献】Vargaら、Nature Reviews Rheumatology 2009;5:200-6
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本文献は、少なくとも一部において、抗線維症活性を有するC末端エンドスタチン断片およびそのバリアントの開発、ならびにそのような断片およびバリアントを植物において産生させるための方法、およびそれを必要とする対象において線維症を治療するための断片およびバリアントの使用の方法の開発に基づく。
【0008】
本文献はまた、少なくとも一部において、Ig-Fcポリペプチドと連結したエンドスタチンのE3領域(例えば配列番号2および配列番号13のアミノ酸133~180)を
含有する、エンドスタチンに基づくポリペプチドが、典型的なペプチド-Fc融合タンパク質とは異なり、高分子量(HMW)多量体を形成し得るという発見にも基づく。HMW形態は、精製(例えば、限外濾過または接線流濾過(TFF)によるもの)に利点をもたらす可能性があり、線維症の治療にも使用することができる。
【0009】
一態様では、本文献は、配列番号14を含み、それを必要とする対象に投与された場合に抗線維症活性を有する、単離されたポリペプチドを特徴とする。単離されたポリペプチドは、分泌型配列、ペプチドタグ(例えば、6Hisタグ、KDELポリペプチドを含有するタグ、もしくはその両方)、配列番号14のC末端におけるAla-Ser-Lys配列、および/または、IgG Fcドメイン(例えば、ヒトIgG1 FcドメインなどのIgG1 Fcドメイン)、配列番号17のアミノ酸27~43をさらに含み得る。ポリペプチドは、配列番号16または配列番号17を含み得る。ポリペプチドは、高分子量多量体であり得る。
【0010】
別の態様では、本文献は、(a)配列番号2のアミノ酸133~180、ならびに分泌型配列、ペプチドタグ、KDEL配列、配列番号2のアミノ酸133~180のC末端におけるAla-Ser-Lys配列、IgG Fcドメイン、および/または配列番号17のアミノ酸27~43のうちの1つまたは複数を含み、(b)それを必要とする対象に投与された場合に抗線維症活性を有する、単離されたポリペプチドを特徴とする。ポリペプチドは、配列番号15を含み得る。
【0011】
別の態様では、本文献は、(a)配列番号13のアミノ酸133~180、ならびに分泌型配列、ペプチドタグ、KDEL配列、配列番号2のアミノ酸133~180のC末端におけるAla-Ser-Lys配列、IgG Fcドメイン、および/または配列番号17のアミノ酸27~43のうちの1つまたは複数を含み、(b)それを必要とする対象に投与された場合に抗線維症活性を有する、単離されたポリペプチドを特徴とする。
【0012】
別の態様では、本文献は、異種プロモーターと作動可能に連結した、本明細書に開示されているポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを特徴とする。本文献はまた、単離されたポリヌクレオチドを含有する発現ベクターも特徴とする。発現ベクターは、launchベクター(例えば、ウイルスlaunchベクター)であり得る。さらに、本文献は、発現ベクターを含むAgrobacterium tumefaciens細胞を特徴とする。
【0013】
別の態様では、本文献は、配列番号14を含み、それを必要とする対象に投与された場合に抗線維症活性を有する、高分子量多量体を特徴とする。
【0014】
さらに別の態様では、本文献は、(a)本明細書に記載のポリペプチドおよび/または多量体、ならびに(b)医薬的に許容される担体を含有する医薬組成物を特徴とする。
【0015】
本文献はまた、本明細書に開示されている抗線維症活性を有するポリペプチドを作出するための方法も特徴とする。方法は、(a)植物に、請求項1、請求項12、請求項13、または請求項15に記載の抗線維化活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む植物ウイルスベクターを導入するステップ、および(b)植物を、少なくとも一部の植物細胞においてポリヌクレオチドが発現されるのに十分な条件下でそれに十分な時間にわたって維持するステップを含み得る。一部の実施形態では、方法は、(a)植物に、(i)第1の植物ウイルスに由来する機能的コートタンパク質をコードする構成成分を含む担体ベクター、ならびに(ii)抗線維化活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび少なくとも1つの第2の植物ウイルスに由来する構成成分を含むが、機能的コートタンパク質遺伝子を欠く産生体ベクター、または(i)第1の植物ウ
イルスに由来する機能的移動タンパク質をコードする構成成分を含む担体ベクター、ならびに(ii)抗線維化活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび少なくとも1つの第2の植物ウイルスに由来する構成成分を含むが、機能的移動タンパク質遺伝子を欠く産生体ベクター、または(i)第1の植物ウイルスに由来する機能的コートタンパク質をコードする構成成分を含む担体ベクター、ならびに(ii)抗線維化活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび少なくとも1つの第2の植物ウイルスに由来する構成成分を含むが、第2の植物ウイルスにおいて通常見いだされる1つまたは複数の機能的複製タンパク質遺伝子を欠く産生体ベクターを導入するステップ、(b)植物を、担体ベクターが産生体ベクターを補完し、したがって、産生体ベクターが植物全体にわたって移動することを可能にするのに十分な条件下でそれに十分な時間にわたって維持するステップ、ならびに(c)植物を、少なくとも一部の植物細胞においてポリヌクレオチドが発現されるのに十分な条件下でそれに十分な時間にわたって維持するステップを含み得る。
【0016】
導入するステップは、真空浸潤を含み得る。方法は、抗線維症活性を有するポリペプチドを含む植物を採取するステップ、植物から抗線維症活性を有するポリペプチドを抽出するステップ、および/または、抗線維症活性を有するポリペプチドを精製するステップをさらに含み得る。
【0017】
別の態様では、本文献は、線維症の対象を治療する方法を特徴とする。方法は、線維症の対象を選択するステップ、および治療有効量の本明細書に記載のポリペプチドを対象に投与するステップを含み、それにより線維症の対象を治療し得る。対象は、肺線維症を有する対象であり得る。方法は、治療有効量の別の治療剤(例えば、コルチコステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステイン、D-ペニシラミン、コルヒチン、レラキシン、ステロイド、シクロスポリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノレート、グリタゾン、エンドセリン受容体アンタゴニスト、およびフルベストラントからなる群から選択される治療剤)を対象に投与するステップをさらに含み得る。コルチコステロイドは、プレドニゾンであり得る。免疫抑制剤は、メトトレキサートまたはシクロスポリンであり得る。投与するステップは、経口投与または静脈内投与を含み得る。
【0018】
さらに別の態様では、本文献は、医薬的に許容される担体および本明細書に記載のポリペプチドを含有する組成物であって、対象への経口投与または静脈内投与用に製剤化されている組成物を特徴とする。ポリペプチドは、配列番号15、配列番号16、または配列番号17を含み得る。
【0019】
特に定義されていなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が関係する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明を実施するために、本明細書に記載のものと同様または同等である方法および材料を使用することができるが、適切な方法および材料が下に記載されている。本明細書において言及されている全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含めた本明細書に支配される。さらに、材料、方法および実施例は単に例示的なものであり、それに限定されるものではない。
【0020】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、付属図および以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】TGF-β刺激と組み合わせた、組換えエンドスタチン(rE)で処理した線維芽細胞およびエンドスタチン由来ペプチドで処理した線維芽細胞におけるECM産生の図である。図1A:ビヒクル(V)、rEを単独で用いて、または事前のTGF-β刺激と共にビヒクル(V)、rEを用いて処理したヒト正常肺線維芽細胞(NL)におけるFN発現およびCol1α1発現。ウエスタンブロットを用いてタンパク質を検出した。グリセルアルデヒドe-リン酸脱水素酵素(GAPDH)を溶解物についてのローディング対照として使用した。
図1B】TGF-β刺激と組み合わせた、組換えエンドスタチン(rE)で処理した線維芽細胞およびエンドスタチン由来ペプチドで処理した線維芽細胞におけるECM産生の図である。図1B:健康な対照、SScの患者、およびIPFの患者からの初代肺線維芽細胞における、TGF刺激後にエンドスタチンポリペプチドで処置した肺線維芽細胞のFN発現およびCol1α1発現。
図1C】TGF-β刺激と組み合わせた、組換えエンドスタチン(rE)で処理した線維芽細胞およびエンドスタチン由来ペプチドで処理した線維芽細胞におけるECM産生の図である。図1C:健康な対照(NL)4名、SScの患者3名、およびIPFの患者3名からの線維芽細胞を使用して得られた、肺線維芽細胞におけるFN発現およびCol1α1発現のグラフによる要約。バンドの強度をGAPDHの強度に対して正規化し、ビヒクル(V)に対する比として表した。対応のあるt検定を統計解析に使用した。P<0.04、**P<0.01。
図1D】TGF-β刺激と組み合わせた、組換えエンドスタチン(rE)で処理した線維芽細胞およびエンドスタチン由来ペプチドで処理した線維芽細胞におけるECM産生の図である。図1D:斑状強皮症の患者およびSScの患者から得たヒト皮膚線維芽細胞におけるFNレベルおよびCol1α1レベルの代表的な結果。
図1E】TGF-β刺激と組み合わせた、組換えエンドスタチン(rE)で処理した線維芽細胞およびエンドスタチン由来ペプチドで処理した線維芽細胞におけるECM産生の図である。図1E:V、5μg/mlのrE、またはエンドスタチンポリペプチドを単独で用いて処置した、IPFの患者から得た線維化線維芽細胞におけるFN発現およびCol1α1発現の代表的な結果(左側)。IPF線維芽細胞を、種々の濃度(5μg/ml、10μg/ml、および20μg/ml)のE4を用いて処理した。ジメチルスルホキシド(DMSO)(V)を、20μg/mlのE4に対応するレーンにおけるものと同等の体積で添加した(右側)。
図1F】TGF-β刺激と組み合わせた、組換えエンドスタチン(rE)で処理した線維芽細胞およびエンドスタチン由来ペプチドで処理した線維芽細胞におけるECM産生の図である。図1F:TGF-β刺激後にエンドスタチンポリペプチドを用いて処理した正常肺線維芽細胞におけるα-SMAレベル。
図2A】ex vivoヒト皮膚線維症器官培養モデルの図である。図2A:組換えTGF-βまたは1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(ビヒクル)をヒト皮膚外植片に1ng/ml、10ng/ml、50ng/mlの濃度で皮内注射した。注入の1週間後に皮膚を採取した。代表的なH&E(ヘマトキシリン・エオシン染色)画像が上の行に示されており、マッソン・トリクローム染色切片の画像が下の行に示されている。倍率、20×。
図2B】ex vivoヒト皮膚線維症器官培養モデルの図である。図2B:組換えエンドスタチン(rE)をヒト皮膚に1μg/ml、5μg/ml、10μg/mlの濃度で注射した。1×PBSをビヒクル対照(V)として使用した。代表的なH&E画像が示されている。倍率、20×。
図2C】ex vivoヒト皮膚線維症器官培養モデルの図である。図2C:エンドスタチンポリペプチド(E-1、E-2、E-3、およびE-4;全て10μg/ml)をヒト皮膚に皮内注射した。DMSOをビヒクル対照(V)として使用した。代表的なH&E画像が示されている。倍率、20×。
図3A】ヒト皮膚におけるTGF-βによって誘導される線維症および皮膚の厚さに対する組換えエンドスタチンの影響を示す図である。図3A:ビヒクル、10ng/mlのTGF-βを単独で、またはrE(1μg/ml、5μg/ml、および10μg/ml)とTGF-β(10ng/ml)の組合せを注射したヒト皮膚の代表的なH&E画像。注入の1週間後に組織を採取した。倍率、20×。
図3B】ヒト皮膚におけるTGF-βによって誘導される線維症および皮膚の厚さに対する組換えエンドスタチンの影響を示す図である。図3B:皮膚の厚さのグラフ表示。データは、4つの異なるドナー由来のヒト皮膚外植片を使用した4つの独立した3連での実験を表す。マン・ホイットニーのU検定を統計解析に使用した。P<0.04。
図4A】ヒト皮膚におけるTGF-βによって誘導される線維症および皮膚の厚さに対するエンドスタチンポリペプチドの影響を示す図である。図4A:ビヒクル、10ng/mlのTGF-βを単独で、またはE-1、E-2、E-3、もしくはE-4(10μg/ml)とTGF-β(10ng/ml)の組合せを注射したヒト皮膚の代表的なH&E画像。倍率、20×。
図4B】ヒト皮膚におけるTGF-βによって誘導される線維症および皮膚の厚さに対するエンドスタチンポリペプチドの影響を示す図である。図4B図4Aに示されている皮膚の厚さのデータのグラフ表示。データは、2つのドナー由来のヒト皮膚外植片を使用した2つの独立した実験を表し、各実験は3連で行った。マン・ホイットニーのU検定を統計解析に使用した。P<0.05、**P<0.02。
図5A】TGF-βによって誘導される線維症におけるE-1およびE-4の用量反応を示す図である。図5A:E-1(上の行)またはE-4(下の行)を1μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、および20μg/mlの濃度で、TGF-β(10ng/ml)の存在下で注射したヒト皮膚の代表的なH&E画像。倍率、20×。
図5B】TGF-βによって誘導される線維症におけるE-1およびE-4の用量反応を示す図である。図5B図5Aに示されている皮膚の厚さのデータのグラフ解析。DMSOをビヒクル対照として使用した。実験を2連で行い、各切片から6視野で皮膚の厚さを測定した。マン・ホイットニーのU検定を統計解析に使用した。P<0.02、**P<0.01。
図6A】マウス皮膚におけるin vivoでの線維症の発生に対するエンドスタチンポリペプチドの影響を示す図である。図6A:マウスに、ビヒクル、10ng/mlのTGF-βを単独で、またはE-1、E-2、E-3、およびE-4(10μg/ml)とTGF-β(10ng/ml)の組合せを皮内注射した。注入の1週間後に皮膚を採取した。切片をH&Eで染色した。倍率、20×。
図6B】マウス皮膚におけるin vivoでの線維症の発生に対するエンドスタチンポリペプチドの影響を示す図である。図6B図6Aに示されている皮膚の厚さのデータのグラフによる要約。データは、それぞれ2連で行った4つの独立した実験を表す。マン・ホイットニーのU検定を統計解析に使用した。P<0.04、**P<0.01。
図7A】MATRIGEL(登録商標)における尿細管形成を阻害するエンドスタチンポリペプチドの能力。図7A:ビヒクル、rE(50nM)、またはE4(50nM)を用いて処理したHUVECのMATRIGEL(登録商標)培養物の代表的な画像。等価量のDMSOをビヒクルとして使用した。倍率40×。
図7B】MATRIGEL(登録商標)における尿細管形成を阻害するエンドスタチンポリペプチドの能力。図7B図7Aに示されているコード形成の画像数量化。示されているデータは、3つの独立した実験の結果の要約である。P<0.05、一元配置ANOVA、その後、ボンフェローニ検定。
図8A】in vivoにおける、ブレオマイシンによって誘導される皮膚線維症に対するエンドスタチンE-4の影響を示す図である。図8A:マウスに、1×PBSをビヒクル(V)として、またはブレオマイシン(Bleo;20μg/マウス)を毎日皮下注射した。1日目にE-4(10μg/ml)をブレオマイシンと混合し、その後E4の注射は伴わずに毎日のブレオマイシン投与を継続した(Bleo+E-4)。10日後に皮膚を採取した。切片をH&Eで染色した。倍率、100×。
図8B】in vivoにおける、ブレオマイシンによって誘導される皮膚線維症に対するエンドスタチンE-4の影響を示す図である。図8B図8Aに示されている皮膚の厚さのデータのグラフによる要約。データは、3つの独立した実験を表す。マン・ホイットニーのU検定を統計解析に使用した。P<0.001、**P<0.00001。E4の単回投与であっても、E4投与により、ブレオマイシンによって誘導される皮膚線維症の有意な減弱が引き起こされた。
図9】E4により、TGF-βの3日後の投与であっても、TGFβによって誘導される皮膚線維症が逆転することを示す図である。マウス皮膚を、1日目にTGF-βを用いて処理し、E-4LまたはE-1L(これは線維化トリガーの投与とペプチドの投与の間の3日間のラグの後に投与されたE-4およびE-1である)。E-1またはE-4を3日目に腹腔内(IP)投与し、7日目に採取した。7日目に、E4により、TGF-βによって誘導される皮膚線維症の有意な低減が引き起こされた。したがって、E4は、TGF-βによって誘発される皮膚線維症を予防し(図4-6)、また、逆転させる(図9)。
図10A】E4により、in vivoにおいてブレオマイシンによって誘導される肺線維症が減弱することを示す図である。図10A:ブレオマイシン60μgを、ビヒクルとしてDMSO(Bleo)と、またはE-4(Bleo+E-4;10μg/ml)と組み合わせて気管内投与した。一部のマウスでは、ブレオマイシンによる処置の3日後にE-4(10μg/ml)を気管内(IT)投与した(Bleo+E-4L)。PBSをブレオマイシン(V)のビヒクルとして使用した。処置の10日後に肺を採取した。H&E(左側のパネル)およびマッソン・トリクローム(右側のパネル)を用いて染色した代表的な画像は、3つの独立した実験を表す。倍率、100×。ブレオマイシンと同時にまたはブレオマイシンの3日後に投与したE4により、線維症およびマッソン・トリクローム染色の顕著な低減が引き起こされた。
図10B】E4により、in vivoにおいてブレオマイシンによって誘導される肺線維症が減弱することを示す図である。図10B:V、Bleo、Bleo+E-4、およびBleo+E-4Lを用いて処置したマウス肺から得た酸可溶性コラーゲンの数量化。3つの独立した実験からのコラーゲンのレベルがμg/mg(肺)として示されている。対応のないt検定を統計解析に使用した。P<0.05。ブレオマイシンの3日後にもたらしたE4ポリペプチドにより、マウス肺におけるコラーゲンレベルが有意に低下した。
図10C】E4により、in vivoにおいてブレオマイシンによって誘導される肺線維症が減弱することを示す図である。図10C:低倍率(2×)の、図9に示されているマウス肺(BLM+E4/E4L IT 10日目)。Bleo+E4Lについては、まずBleoを投与し、その後、Bleo投与とE4投与の間に3日間のラグを設けた)。
図11】E4により、腹腔内投与(IP)か気管内投与(IT)かにかかわらず、in vivoにおいてブレオマイシンによって誘導される肺線維症が減弱することを示す図である。1日目にブレオマイシンをIT投与し、3日目にE4をIP投与またはIT投与した。21日目に肺を採取した。21日目に、E4により、IP投与かIT投与かにかかわらず、ブレオマイシンによって誘導される肺線維症の有意な減弱が引き起こされた。したがって、E4は、投与経路に関係なく、線維症の低減に有効である。ビヒクル単独(V)、ブレオマイシン単独(Bleo)、ブレオマイシンおよびE4のIP投与、ならびにブレオマイシンおよびE4のIT投与について結果が示されている。
図12】E4により、in vivoにおいて、リシルオキシダーゼ(LOX)のレベルが低下し、したがって、コラーゲンの架橋結合が低減し、コラーゲンの安定性が低下してタンパク質分解をより受けやすくなることにより、線維症が低減することを示す図である。E4を伴ってまたは伴わずにBLMを用いて処置したマウスの肺切片を免疫組織化学的検査に使用して、LOXを検出した。示されている切片は、対照IgG、リン酸緩衝生理食塩水、ブレオマイシンおよびブレオマイシンとその後にE4を用いた処置である。
図13】E4により、in vitroにおいて、初代ヒト肺線維芽細胞におけるTGF-βによって誘導されるLOX産生が遮断されることによって線維症が低減することを示す図である。第4継代の正常肺線維芽細胞を、ビヒクル、E4、TGF-β、またはTGF-βとその30分後にE4を用いて処理した。48時間後に、線維芽細胞によって馴化させた培地を、ウエスタンブロット分析を使用して分析した。レーン1:ビヒクル(DMSO);レーン2:E-4;レーン3:TGF-β;レーン4:TGF-β、その後にE4。LOX mRNAレベルをリアルタイムPCRによって調査したところ、同様の結果が得られた。
図14A】E4により、in vitroにおいて、初代ヒト肺線維芽細胞におけるMMP-2活性が誘導され、したがって、コラーゲンおよび他の基質タンパク質の分解の増加がもたらされることによって線維症が低減することを示す図である。初代ヒト肺線維芽細胞を、E-4、その後にTGF-βを用いて処理した場合(レーン4)のMMP-2活性の上昇を示すゼラチンザイモ電気泳動ゲルのデジタル画像。レーン1:ビヒクル(DMSO);レーン2:E-4;レーン3:TGF-β;レーン4:TGF-β、その後にE4。
図14B】TGF-βおよびE-4を用いて処理した細胞では総MMP-2レベルおよび活性MMP-2レベルの両方が上昇することを示すデジタル画像である。これにより、E-4により、MMP-2プロ酵素のレベルが上昇するが、活性マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP-2、メタロプロテアーゼ-2とも称される)のレベルも上昇することが示唆される。
図15】E4により、in vitroにおいて、初代ヒト肺線維芽細胞における、TGFβの阻害剤であるID1の発現が誘導されることによって線維症が低減することを示すグラフである。リアルタイムPCR分析を実施して、示されている条件下でのID1 mRNAレベルを決定した。
図16】E-4により、in vitroにおいて、初代ヒト肺線維芽細胞におけるマスター転写因子Egr-1のレベルが低下することによって線維症が低減することを示す図である。Egr-1レベルの低下は、コラーゲン、SMA、およびフィブロネクチンの低下と対応する。レーン1:ビヒクル(DMSO);レーン2:E4;レーン3:TGFβ、レーン4:TGFβ、その60分後にE4。24時間後に試料を採取した。
図17A】ヒト皮膚における、TGF-βによって誘発される確立された線維症に対するエンドスタチンペプチドの影響を示す図である。図17A:10ng/mlのTGF-βを投与した2日後に、ビヒクル(DMSO)、E-1、またはE-4(10mg/ml)をヒト皮膚にさらに注射した(それぞれV、E-1LおよびE-4L)。ヒト皮膚の代表的なH&E画像を示した。倍率、20×。
図17B】ヒト皮膚における、TGF-βによって誘発される確立された線維症に対するエンドスタチンペプチドの影響を示す図である。図17B:Aに示されている皮膚の厚さのデータのグラフ表示。データは、2つのドナー由来のヒト皮膚外植片を使用した2つの独立した実験を表し、各実験を2連で行った。マン・ホイットニーのU検定を統計解析に使用した。P<0.01。
図18】示差的な溶解性に基づく、タグ付けされていないE3の精製スキームを示す図である。
図19】植物において産生されたE3バリアントを示す図である。
図20】経口Plant-Made Pharmaceutical(PMP)E3バリアントにより、ブレオマイシンによって誘導される肺線維症が予防されることを示す図である。
図21】E3-Fcの静脈内投薬が経口投与と同等であることを示すグラフである。
図22】静脈内E3-Fcには、肺線維症を逆転させる潜在性があることを示すグラフである。
図23】ヒトIgG FcとE3の融合物の発現の概略図(左側のパネル)およびウエスタンブロット(右側のパネル)である。
図24】ヒトIgG FcとE3の融合物の精製を示す図である。
図25】ヒトIgA1、IgA2、およびIgM FcとE3の融合物が不溶性であるまたは発現が乏しいことを示す図である。
図26】E3-Fc(配列番号16)、E3(配列番号20)、およびE4(配列番号21)のアミノ酸配列を示す図である。
図27】iBio-CFB03原薬製造プロセスのブロック図である。
図28】iBio-CFB03の発現のためのpGR-D4ベクターの概略図である。
図29】プロテインAおよびTFFによって精製されたiBio-CFB03のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を示す図である。
図30】TFFによって精製されたiBio-CFB03のサイズ排除クロマトグラムである。
図31】iBio-CFB03の陽イオン交換(CEX)クロマトグラムである。
図32】iBio-CFB03 CEX画分のSDS-PAGEゲル画像である。
図33】CEX画分1A4(上)および1B2(下)のサイズ排除クロマトグラムである。
図34】220nmにおける非還元iBio-CFB03のサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)クロマトグラムである。
図35】還元iBio-CFB03のマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)スペクトルを示すグラフである。
図36】還元(R)条件および非還元(NR)条件下でのiBio-CFB03のSDS-PAGEゲル画像である。
図37図38との相関についてトリプシンペプチド断片が強調表示されたiBio-CFB03配列を示す図である。
図38】ゲル内トリプシン消化されたiBio-CFB03バンド1(還元)のMALDI-TOF MSスペクトルを示す図である。
図39】ブレオマイシンモデルにおける経口投与およびIV投与の概略図である。
図40】iBio-CFB03の経口投与およびIV投与で処置したマウス肺のヘマトキシリン・エオシン染色を示す図である。
図41】経口およびIVによるiBio-CFB03を用いて処置したブレオマイシンモデルにおけるマウス肺のヒドロキシプロリンアッセイを示すグラフである。
図42】経口およびIVによるiBio-CFB03を用いて処置したブレオマイシンモデルの反復実験におけるマウス肺のヒドロキシプロリンアッセイを示すグラフである。
図43】iBio-CFB03の浸透圧ポンプによる皮下(s.c.)投与で処置したマウス皮膚のヘマトキシリン・エオシン染色を示す図である。
図44】iBio-CFB03の浸透圧ポンプによるs.c.投与で処置したマウスの皮膚の厚さを示すグラフである。
図45】iBio-CFB03を用いて処置したTGF-βモデルにおけるヒト皮膚のヒドロキシプロリンアッセイを示すグラフである。
図46】E4エンドスタチンペプチドの作用機構の概略図である。
図47】E3 Fc融合物E3-Fc(END-25)、E3-リンカー-Fc(END-26)、およびC67A E3-Fc(END-55)溶解物のSDS-PAGEゲルを総タンパク質量について画像処理した図(左側のパネル)、およびウエスタンブロットによって抗Fc抗体を用いてウエスタンブロットした図(右側のパネル)である。
図48】END-55シミュレート胃液(simulated gastric fluid)(ペプシン)消化を示す図である。総タンパク質量のSDS-PAGEゲル(左側のパネル)、およびニワトリ抗E3抗体(中央のパネル)または抗ヒトFc抗体(右側のパネル)のいずれかを用いたウエスタンブロット。
【発明を実施するための形態】
【0022】
配列表
添付の配列表に列挙されている核酸配列およびアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822において定義されている通り、ヌクレオチド塩基については標準の文字略語、アミノ酸については3文字コードを使用して示されている。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、示されている鎖への言及のいずれにも相補鎖が含まれると理解されたい。配列表は、ASCIIテキストファイル[8123-84102-03 Sequence_Listing.txt, Apr.4, 2012, 12.5 kilobytes]として提出され、参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表において:
配列番号1は、ヒトエンドスタチンをコードする例示的な核酸配列である。
【0023】
配列番号2は、ヒトエンドスタチンのアミノ酸配列である。
配列番号3は、マウスエンドスタチンをコードする例示的な核酸配列である。
【0024】
配列番号4は、マウスエンドスタチンのアミノ酸配列である。
配列番号5は、ヒト免疫グロブリン(Ig)G1タンパク質をコードする例示的な核酸配列である。
【0025】
配列番号6は、ヒトIgG1タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号7は、リンカーをコードする例示的な核酸配列である。
【0026】
配列番号8は、リンカーのアミノ酸配列である。
配列番号9は、ラットエンドスタチンポリペプチドの一部である。
【0027】
配列番号10は、ウシエンドスタチンポリペプチドの一部である。
配列番号11は、ヒトXV型コラーゲンポリペプチドの一部である。
【0028】
配列番号12は、エンドスタチンをコードする例示的な核酸配列である。
配列番号13は、配列番号2と3カ所のアミノ酸置換によって異なる例示的なエンドスタチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0029】
配列番号14(SYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHAY IVLAIENSFMT)は、下線が引かれている位置にC→A突然変異を有するヒトエンドスタチンの一部である。
【0030】
配列番号15は、分泌型配列、ヒトエンドスタチンの一部、およびペプチドタグを含む例示的なアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号16は、分泌型配列、C67A突然変異を有するヒトエンドスタチンの一部、およびIgG Fcドメインを含む例示的なアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号17は、分泌型配列、XVIII型コラーゲンの一部、C67A突然変異を有するヒトエンドスタチンの一部、およびペプチドタグを含む例示的なアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号18(QKSVWHGSDPNGRRLTE)は、XVIII型コラーゲンの17アミノ酸部分である。
【0034】
配列番号19は、4アミノ酸小胞体標的化配列である。
配列番号20は、ヒトエンドスタチンのE3部分のアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号21は、ヒトエンドスタチンのE4部分のアミノ酸配列である。
配列番号22は、E3_C67A-Fc_IgG2融合物のアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号23は、E3_C67A-Fc_IgG3融合物のアミノ酸配列である。
配列番号24は、E3_C67A-Fc_IgG4融合物のアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号25は、E3_C67A-Fc_IgA1融合物のアミノ酸配列である。
配列番号26は、E3_C67A-Fc_IgA2融合物のアミノ酸配列である。
【0038】
配列番号27は、E3_C67A-Fc_IgM融合物のアミノ酸配列である。
配列番号28は、J鎖_PVX_sgp36のアミノ酸配列である。
【0039】
配列番号29は、IgG1_Fc-E3_C67A C末端融合物のアミノ酸配列である。
【0040】
詳細な説明
C末端エンドスタチンポリペプチドが本明細書に提示される。一部の実施形態では、これらのポリペプチドは、(1)配列番号13もしくは配列番号2のアミノ酸133~180として記載されているアミノ酸配列の少なくとも40個の連続したアミノ酸;(2)最大で5カ所のアミノ酸置換を伴う、配列番号13もしくは配列番号2のアミノ酸133~180として記載されているアミノ酸配列の少なくとも40個の連続したアミノ酸;(3)配列番号13もしくは配列番号2のアミノ酸133~180として記載されているアミノ酸配列;(4)最大で5カ所のアミノ酸置換を伴う、配列番号13もしくは配列番号2のアミノ酸133~180として記載されているアミノ酸配列;または(5)配列番号14として記載されているアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、ポリペプチドは、抗線維症活性を有し、ポリペプチドは、配列番号13もしくは配列番号2のアミノ酸1~92を含まない。一部の実施形態では、ポリペプチドは、C末端においてアミド化されている。これらのポリペプチドを作出する方法も提供される。一部の実施形態では、ポリペプチドを植物において産生させることができる。さらに、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを用いて形質転換された宿主細胞、ならびにポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用方法が提供される。方法は、対象における線維症の治療を含み得る。例えば、肺および皮膚の線維化状態、ならびに他の臓器の線維化状態(例えば、肝硬変、角膜線維症、および腎線維症)を治療するための方法が提供される。一部の実施形態では、本明細書に開示されている抗線維症C末端エンドスタチンポリペプチドにより、線維症を選択的に阻害することができる。一部の例では、血管新生の阻害を伴わずに線維症が阻害される。したがって、所望の治療転帰を実現するために、C末端エンドスタチンポリペプチドを使用して、血管新生に干渉せずに望ましくない線維症をより特異的かつ選択的に標的とすることができる。
【0041】
用語
特に断りのない限り、技術用語は、従来の使用に従って使用されている。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes V、published by Oxford University Press、1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、published by Blackwell Science Ltd.、1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A.Meyers(編)、Molecular
Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference、published by VCH Publishers,Inc.、1995(ISBN 1-56081-569-8)において見いだすことができる。
【0042】
本開示の種々の実施形態についての精査を容易にするために、以下の特定の用語の説明が提供される:
動物:例えば、哺乳動物および鳥類を含むカテゴリーである、生きている多細胞の脊椎動物生物体。哺乳動物という用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を包含する。同様に、「対象」という用語は、ヒトおよび動物対象の両方を包含する。
【0043】
アミド化またはアミド誘導体:ポリペプチドの生物活性を増強することができるアミドを形成する翻訳後修飾。アミド化では、C末端アミノ酸(ポリペプチド-COOH)が修飾されてアミド(ポリペプチド-CONH)が形成される。アミドは、翻訳後C末端アミド化によって形成することができる。修飾されるアミノ酸の後ろは、アミド基をもたらすグリシンであり得る。前駆プロタンパク質に由来するポリペプチドの翻訳後アミド化のプロセスはよく特徴付けられており、3つの酵素的ステップを伴う(Cuttitta、The Anatomical Record、236:87-93、1993)。ステップ1は、タンパク質のカルボキシ末端付近の塩基性アミノ酸の対の末端タンパク質分解による切断を伴う。ステップ2は、塩基性残基のカルボキシペプチダーゼ媒介性除去を伴う。ステップ3は、アミド化反応であり、隣接するカルボキシ末端のアミノ酸のアミドを形成する末端グリシンの酸化を伴う。グリシンは、隣接するアミノ酸へのアミドドナーとして機能することが分かっている唯一のアミノ酸である。ポリペプチドの遊離酸の形態とアミド化された形態を構造的に区別することは難しいが、アミドは、ポリペプチドの遊離酸の形態の100~1000倍の生物活性を有する(Cuttitta、The Anatomical Record、236:87-93、1993)。C末端アミド化は、多くのポリペプチドの生物活性に必須である。
【0044】
cDNA(相補DNA):内部の非コードセグメント(イントロン)および転写を決定する調節配列を欠くDNAの一片。cDNAは、実験室において、細胞から抽出されたメッセンジャーRNAからの逆転写によって合成される。
【0045】
コラーゲン:哺乳動物において細長い原線維の形態で見いだされるタンパク質であり、大部分が腱、靭帯および皮膚などの線維組織において見いだされ、角膜、軟骨、骨、血管、消化管、および椎間板においても豊富である。トロポコラーゲンまたは「コラーゲン分子」は、原線維などのより大きなコラーゲン凝集体のサブユニットである。これは長さおよそ300nm、直径1.5nmであり、それぞれが左巻きへリックスのコンフォメーションを有する3つのポリペプチド鎖(アルファ鎖と称される)で構成される。I型コラーゲンでは、各三重らせんが会合してコラーゲンミクロフィブリルと称される右巻きスーパースーパーコイルになる。エンドスタチンはコラーゲンの最初の183アミノ酸である。
【0046】
保存的バリアント:「保存的」アミノ酸置換は、C末端エンドスタチンポリペプチドの活性、例えばポリペプチドの線維症を阻害する能力などに実質的に影響を及ぼさないまたはそれを低下させない置換である。保存的置換の具体的な非限定的な例としては、以下が挙げられる:
【0047】
【表1】
【0048】
保存的変化という用語は、置換ポリペプチドに対して生じる抗体が非置換ポリペプチドに対しても免疫反応するのであれば、非置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を使用することも包含する。非保存的置換は、タンパク質の線維症を阻害する能力などの活性を低下させる置換である。
【0049】
から本質的になる/からなる:ポリペプチドに関しては、特定のアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドは、いかなる追加的なアミノ酸残基も含まない。しかし、ポリペプチドは、ポリペプチドの基本的特性および新規特性に実質的に影響を及ぼさない、標識(例えば、蛍光標識、放射性標識、もしくは固体粒子標識)、糖または脂質などの追加的な非ペプチド構成成分を含んでよい。特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、いかなる追加的なアミノ酸残基も含まず、核酸、脂質、糖などの追加的な生物学的構成成分も含まず、標識も含まない。特定のアミノ酸配列からなるまたはそれから本質的になるポリペプチドは、グリコシル化されていてよいまたはアミド修飾を有してよい。ポリヌクレオチドに関しては、指定の核酸配列から本質的になるポリヌクレオチドは、いかなる追加的な核酸残基も含まない。しかし、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの基本的特性および新規特性(1つまたは複数)に実質的に影響を及ぼさない、標識(例えば、蛍光標識、放射性標識、または固体粒子標識)またはポリペプチドなどの追加的な非核酸構成成分を含んでよい。指定の核酸配列からなるポリヌクレオチドは、いかなる追加的な核酸残基も
含まず、追加的な生物学的構成成分または標識も含まない。
【0050】
縮重バリアント:遺伝暗号の結果として縮重した配列を含むC末端エンドスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。天然アミノ酸には20種があり、その大部分が1つ超のコドンによって指定される。したがって、縮重ヌクレオチド配列は、そのヌクレオチド配列によりコードされるC末端エンドスタチンポリペプチドのアミノ酸配列が変化しない限りは、全てが本開示に含まれる。
【0051】
発現制御配列:作動可能に連結した異種核酸配列の発現を調節する核酸配列。発現制御配列は、核酸配列の転写、および必要に応じて翻訳が制御および調節される場合、その核酸配列と作動可能に連結している。したがって、発現制御配列は、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードする遺伝子の前の開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、その遺伝子の、mRNAの適切な翻訳を可能にする正確なリーディングフレームの維持、および終止コドンを含み得る。「制御配列」という用語は、最低でも、その存在が発現に影響を及ぼし得る構成成分を含むものとし、その存在が有利である追加的な構成成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含み得る。発現制御配列は、プロモーターを含み得る。
【0052】
プロモーターは、転写を導くために十分な最小の配列である。プロモーター依存性遺伝子発現を細胞型特異的、組織特異的に制御可能なものにする、または外部のシグナルまたは薬剤による誘導性のものにするために十分なプロモーターエレメントも含まれる。そのようなエレメントは、遺伝子の5’領域または3’領域に位置し得る。構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターのどちらも含まれる(例えば、Bitterら、Meth Enzymol 153:516-544、1987を参照されたい)。例えば、細菌系においてクローニングする場合、例えば、バクテリオファージラムダのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)などの誘導性プロモーターを使用することができる。一部の実施形態では、哺乳動物細胞系においてクローニングする場合、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーターなど)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、レトロウイルス長い末端反復;アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターなど)を使用することができる。組換えDNAまたは合成技法によって作製されたプロモーターを使用して核酸配列の転写をもたらすこともできる。
【0053】
エンドスタチン:XVIII型コラーゲンのC末端に対応する183アミノ酸タンパク質分解切断断片。エンドスタチンのC末端ポリペプチドは、C末端領域からの連続したアミノ酸、アミノ酸93からアミノ酸183までを含む。例示的なヒトエンドスタチンポリペプチドは、配列番号2および配列番号13に記載されている。
【0054】
線維症:修復または反応プロセスとしての、臓器または組織の正常な構成物としての線維組織の形成とは対照的な、臓器または組織における過剰な線維状結合組織の形成または発生。皮膚および肺は、線維症にかかりやすい。例示的な線維化状態は、強皮症、特発性肺線維症、斑状強皮症、移植片対宿主病(GVHD)の結果としての線維症、ケロイドおよび肥厚性瘢痕、および上皮下線維症、心内膜心筋線維症、子宮線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、腎性全身性線維症、外科手術後の瘢痕、喘息、硬変症/肝線維症、異常な創傷治癒、糸球体腎炎、および多巣性線維化硬化症である。
【0055】
異種:別々の遺伝源または種に由来すること。エンドスタチンに対して異種であるポリペプチドは、エンドスタチンをコードしない核酸を起源とする。特定の非限定的な例では、C末端エンドスタチンポリペプチドおよび異種アミノ酸配列を含有するポリペプチドは、Ig(例えば、IgG1など)、β-ガラクトシダーゼ、マルトース結合性タンパク質
、およびアルブミン、B型肝炎表面抗原、または免疫グロブリンアミノ酸配列を含む。一般に、エンドスタチンなどの目的のタンパク質に特異的に結合する抗体は、異種タンパク質には特異的に結合しない。
【0056】
宿主細胞:ベクターを繁殖させ、そのDNAを発現させることができる細胞。細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。細胞は、ヒト細胞などの哺乳動物細胞であり得る。この用語は、対象とする宿主細胞の任意の後代も包含する。複製の間に突然変異が起こり得るので、全ての後代が親細胞と同一ではない可能性があることが理解される。しかし、「宿主細胞」という用語が使用される場合、そのような後代が含まれる。
【0057】
特発性肺線維症:肺を支える骨組(間質)の線維症を特徴とする慢性の進行型肺疾患である、原因不明の線維化肺胞炎(CFA)としても公知の状態。定義によれば、この用語は、肺線維症の原因が不明(「特発性」)である場合にのみ使用される。IPFの患者由来の肺組織が病理医により顕微鏡の下で検査されると、通常型間質性肺炎(UIP)として公知の特有の一連の組織学的/病理的特徴が示される。UIPは、肺を支える骨組(間質)を伴う両肺の進行性の瘢痕化を特徴とする。
【0058】
疾患の阻害または治療:線維症などの疾患の阻害とは、疾患の完全な発生を阻害することを指す。いくつかの例では、疾患の阻害とは、瘢痕組織の形成または可動域の増大または疼痛の減少などの、線維症の症状の緩和を指す。「治療」とは、線維症などの疾患に関連する疾患または病的状態の徴候または症状を好転させる治療介入を指す。
【0059】
単離された:「単離された」生物学的構成成分(例えば、核酸またはタンパク質または細胞小臓器など)は、その構成成分が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的構成成分、例えば、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質ならびに細胞小臓器から実質的に分離または精製されたものである。「単離された」核酸およびタンパク質とは、標準の精製方法によって精製された核酸およびタンパク質を含む。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸も包含する。
【0060】
ケロイドまたはケロチド瘢痕:瘢痕の一種であり、その成熟度に応じて、主にIII型コラーゲン(初期)またはI型コラーゲン(後期)のいずれかで構成される。これは、治癒した皮膚傷害の部位において肉芽組織(3型コラーゲン)が過成長し、その後、1型コラーゲンでゆっくりと置き換えられた結果である。ケロイドは、堅くゴムのような病変または光沢のある線維状の小結節であり、淡紅色から肌色までまたは赤色から暗褐色まで変動し得る。ケロイド瘢痕は良性、非伝染性であり、通常は重度のそう痒、鋭痛、および肌のきめの変化を伴う。重症の場合には、皮膚の動きに影響を及ぼし得る。ケロイドは、元の創傷の境界を越えて成長することはない隆起した瘢痕である肥厚性瘢痕とは異なる。
【0061】
標識:別の分子の検出を容易にするために、その分子に直接または間接的にコンジュゲートされる検出可能な化合物または組成物。標識の具体的な非限定的な例としては、蛍光タグ、酵素的連結、および放射性同位元素が挙げられる。
【0062】
リンカー配列:リンカー配列は、2つのポリペプチドドメインを共有結合により連結するアミノ酸配列である。リンカー配列は、連結するポリペプチドドメインに回転性の自由をもたらすため、および、それにより、適切なドメインフォールディングおよびMHCへの提示を促進するために、本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチド間に含めることができる。例として、C末端エンドスタチンポリペプチドを2つ含有する組換えポリペプチドにおいて、2つのC末端エンドスタチンポリペプチドの間にリンカー配列をもたらすことができ、例えば、C末端エンドスタチンポリペプチド-リンカー-C
末端エンドスタチンポリペプチドを含有するポリペプチドなどである。一般に、長さが2アミノ酸から25アミノ酸の間であるリンカー配列が当技術分野で周知であり、それらとして、これだけに限定されないが、Chaudharyら、Nature 339:394-397、1989に記載されているグリシン(4)-セリンスペーサー(×3)が挙げられる。
【0063】
リシルオキシダーゼ(LOX):リシルオキシダーゼは、コラーゲンおよびエラスチン前駆体におけるリシン残基からのアルデヒドの形成を触媒する細胞外銅酵素である。これらのアルデヒドは、高度に反応性であり、他のリシルオキシダーゼ由来アルデヒド残基と、または修飾されていないリシン残基と自然に化学反応する。これにより、コラーゲン原線維の安定化のため、ならびに成熟エラスチンの完全性および弾性のために必須である架橋結合したコラーゲンおよびエラスチンがもたらされる。
【0064】
哺乳動物:この用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を包含する。同様に、「対象」という用語は、ヒトおよび動物対象の両方を包含する。
【0065】
マトリックスメタロプロテイナーゼ-2:ゼラチナーゼAとしても公知の、72kDaのIV型コラゲナーゼ。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーのタンパク質は、胚発生、生殖、および組織リモデリングなどの正常な生理的プロセスにおいて、ならびに関節炎および転移などの疾患過程において、細胞外マトリックスの分解に関与する。大多数のMMPは、細胞外プロテイナーゼによって切断されると活性化される不活性プロタンパク質として分泌される。MMP-2は、基底膜の主要な構造的構成成分であるIV型コラーゲンを分解する。MMP-2はまた、ネイティブおよび変性したI型コラーゲンおよびフィブロネクチンなどの追加的な基質も分解する(clip.ubc.ca/archive/mmp_timp_folder/mmp_substrates.shtm websiteを参照されたい)。
【0066】
オリゴヌクレオチド:約100ヌクレオチド塩基までの長さの直鎖状ポリヌクレオチド配列。
【0067】
オープンリーディングフレーム(ORF):いかなる内部終結コドンも伴わない、アミノ酸をコードする一連のヌクレオチドトリプレット(コドン)。これらの配列は通常、ポリペプチドに翻訳可能である。
【0068】
作動可能に連結した:第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に関係して配置されている場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に連結している。例えば、プロモーターがC末端エンドスタチンポリペプチドをコードする配列などのコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは、コード配列と作動可能に連結している。一般に、作動可能に連結したDNA配列は連続したものであり、2つのタンパク質コード領域を接合する必要があれば、同じリーディングフレーム内にある。
【0069】
ペプチド修飾:C末端エンドスタチンポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドの合成実施形態を含む。さらに、これらのタンパク質の類似体(非ペプチド有機分子)、誘導体(開示されているポリペプチド配列から出発して得られる、化学的に官能性をもたせたポリペプチド分子)およびバリアント(ホモログ)を本明細書に記載の方法において利用することができる。本開示の各ポリペプチドは、天然に存在するおよび他のL-アミノ酸および/またはD-アミノ酸のいずれかであり得るアミノ酸の配列で構成される。
【0070】
ペプチドは、修飾されていないポリペプチドと基本的に同じ活性を有し、場合によって他の望ましい特性を有する誘導体を作製するために、種々の化学的技法によって修飾する
ことができる。例えば、タンパク質のカルボン酸基は、カルボキシル末端であるか側鎖であるかにかかわらず、医薬的に許容される陽イオンの塩の形態でもたらすこともでき、エステル化してC~C16エステルを形成することもでき、式NR(RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC~C16アルキルである)のアミドに変換することもでき、組み合わせて5員環または6員環などの複素環式環を形成することもできる。ポリペプチドのアミノ基は、アミノ末端であるか側鎖であるかにかかわらず、HCl、HBr、酢酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸、酒石酸および他の有機塩などの医薬的に許容される酸付加塩の形態にすることもでき、修飾してC~C1アルキルまたはジアルキルアミノにすることもでき、アミドにさらに変換することもできる。
【0071】
ポリペプチド側鎖のヒドロキシル基は、よく理解されている技法を使用してC~C16アルコキシまたはC~C16エステルに変換することができる。ポリペプチド側鎖のフェニル環およびフェノール環は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素などの1つまたは複数のハロゲン原子で、またはC~C16アルキル、C~C16アルコキシ、カルボン酸およびそのエステル、またはそのようなカルボン酸のアミドで置換することができる。ポリペプチド側鎖のメチレン基は、伸長させて相同なC~Cアルキレンにすることができる。チオールは、アセトアミド基などの、いくつものよく理解されている保護基のいずれか1つを用いて保護することができる。安定性の増強をもたらす構造に対してコンフォメーションの制約を選択し、もたらすために、本発明のポリペプチドに環状構造を導入するための方法も当業者には理解されよう。
【0072】
ペプチド模倣物および有機模倣物(organomimetic)の化学的構成物の三次元配置が、ポリペプチドの主鎖および構成成分アミノ酸の側鎖の三次元配置を模倣するようなペプチド模倣物および有機模倣物実施形態が構想され、その結果、測定可能なまたは増強された、線維症を治療する能力を有するC末端エンドスタチンポリペプチドのそのようなペプチド模倣物および有機模倣物がもたらされる。コンピュータモデリング適用に関して、ファーマコフォアは、生物活性の構造的な要件のための理想的な三次元の定義である。ペプチド模倣物および有機模倣物は、各ファーマコフォアが現行のコンピュータモデリングソフトウェア(コンピュータ支援薬物設計またはCADDを使用するもの)にフィットするようにデザインすることができる。CADDにおいて使用される技法の説明については、Walters、「Computer-Assisted Modeling
of Drugs」、Klegerman & Groves編、1993、Pharmaceutical Biotechnology、Interpharm Press:Buffalo Grove、Ill.、165~174頁およびPrinciples of Pharmacology、Munson(編)1995、Ch.102を参照されたい。そのような技法を使用して調製された模倣物も含まれる。
【0073】
医薬的に許容される担体:使用される医薬的に許容される担体は、従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences、E.W.Martin、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、第15版(1975)には、本明細書において開示されている融合タンパク質の薬学的送達に適した組成物および製剤が記載されている。
【0074】
一般に、担体の性質は、使用される特定の投与形式に左右される。例えば、非経口用製剤は、通常、ビヒクルとして、例えば水、生理的食塩水、平衡させた塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの医薬的かつ生理的に許容される流体を含む注射用流体を含む。固体組成物(例えば、散剤、ピル、錠剤、またはカプセル剤の形態など)に関しては、従来の無毒性固体担体として、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが挙げられる。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、微量の、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝
剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートなどの無毒性補助物質を含有し得る。
【0075】
「治療有効量」とは、治療される対象において所望の効果を実現するための組成物の分量である。例えば、治療有効量は、免疫応答を誘導する、線維症を阻害する、瘢痕体積を低下させる、または線維化状態の外的症状を測定可能な程度に変化させるために必要な量であり得る。対象に投与する場合、一般に、in vitroにおける効果が実現されることが示されている標的組織中濃度(例えば、皮膚細胞または肺組織における)が実現される投薬量を使用する。
【0076】
ポリヌクレオチド:ポリヌクレオチドまたは核酸配列という用語は、少なくとも10塩基の長さのポリマーの形態のヌクレオチドを指す。組換えポリヌクレオチドは、それが由来する生物体の天然に存在するゲノム中ではすぐ隣にあるコード配列(一方は5’末端、一方は3’末端)の両方のすぐ隣にはないポリヌクレオチドを含む。したがって、この用語は、例えば、ベクターに組み込まれた組換えDNA;自律複製性プラスミドもしくはウイルスに組み込まれた組換えDNA;または原核生物もしくは真核生物ゲノムDNAに組み込まれた組換えDNA、または他の配列とは独立した別の分子(例えば、cDNA)として存在するものを包含する。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、または、いずれかのヌクレオチドの修飾された形態であり得る。この用語は、DNAの一本鎖形態および二本鎖形態を包含する。
【0077】
ペプチドまたはポリペプチド:長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)を問わず、任意のアミノ酸の鎖。一部の実施形態では、ポリペプチドは、C末端エンドスタチンポリペプチドである。ポリペプチドは、5アミノ酸から60アミノ酸の間の長さであり得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、約10アミノ酸から約55アミノ酸までの長さである。さらに別の実施形態では、ポリペプチドは、約20アミノ酸から約50アミノ酸までの長さである。さらに別の実施形態では、ポリペプチドは、約50アミノ酸の長さである。ポリペプチドに関しては、「約」という単語は、整数の量を示す。したがって、一例では、「約」50アミノ酸の長さのポリペプチドは、49アミノ酸から51アミノ酸までの長さである。一部の実施形態では、ポリペプチドは、多量体の形態であり得る。例えば、ポリペプチドは、本明細書に記載のエンドスタチン断片および/または融合物を複数含む高分子量多量体であり得る。高分子量多量体は、例えば、500kDa超(例えば、500~750kDa、750kDa~1メガダルトン(MDa)、1~1.5MDa、1.5~2MDa、2~2.5MDa、または2.5~3MDa)の分子量を有し得る。
【0078】
翻訳後修飾:新しく形成されたタンパク質の修飾;これは、ある特定のアミノ酸に対する、アミノ酸の欠失、ある特定のアミノ酸の化学修飾(例えば、アミド化、アセチル化、リン酸化、グリコシル化、ピログルタミン酸の形成、メチオニン上のサルファ基の酸化/還元、または同様の小分子の添加)を含み得る。
【0079】
プローブおよびプライマー:プローブとは、検出可能な標識またはレポーター分子に付着した単離された核酸を含む。プライマーとは、約15ヌクレオチド以上の長さの短い核酸、好ましくはDNAオリゴヌクレオチドである。プライマーは、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的な標的DNA鎖にアニーリングして、プライマーと標的DNA鎖との間のハイブリッドを形成し、次いで、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って伸長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または当技術分野で公知の他の核酸の増幅方法によって核酸配列を増幅するために使用することができる。特定のプローブまたはプライマーの特異性はその長さに伴って増大することが当業者には理解されよう。したがって、例えば、20個の連続したヌクレオチドを含有するプ
ライマーは、標的に、15ヌクレオチドのみの対応するプライマーよりも高い特異性でアニーリングする。したがって、より高い特異性を得るために、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約50個以上の連続したヌクレオチドを含有するプローブおよびプライマーを選択することができる。
【0080】
精製された:本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドは、当技術分野で公知の手段のいずれかによって精製すること(および/または合成すること)ができる(例えば、Guide to Protein Purification編、Deutscher、Meth.Enzymol.185、Academic Press、San Diego、1990;およびScopes、Protein Purification:Principles and Practice、Springer Verlag、New York、1982を参照されたい)。実質的な精製とは、他のタンパク質または細胞構成成分からの精製を示す。実質的に精製されたタンパク質は、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%純粋である。したがって、特定の非限定的な一例では、実質的に精製されたタンパク質は、他のタンパク質または細胞構成成分を90%含まない。
【0081】
したがって、精製されたという用語は、絶対的な純度を必要とするものではなく、相対的な用語として意図されている。例えば、精製された核酸とは、核酸が、細胞内のその天然の環境にある核酸よりも富化されているものである。追加的な実施形態では、核酸調製物または細胞調製物は、核酸または細胞が、それぞれ調製物の総核酸含有量または総細胞含有量の少なくとも約60%(例えば、これだけに限定されないが、70%、80%、90%、95%、98%または99%など)になるように精製される。
【0082】
組換え:組換え核酸とは、天然に存在しない配列を有する、または、そうでなければ分離されている2つの配列のセグメントの人工的な組合せによって作出された配列を有する核酸である。この人工的な組合せは、多くの場合、化学合成によって、または、より一般には、単離された核酸のセグメントの人工的操作によって、例えば、遺伝子工学の技法によって実現される。
【0083】
強皮症:線維症(または硬化)、血管の変質、および自己抗体を特徴とする慢性自己免疫疾患。2つの主要な形態があり、1つは、全身性のものであり、手、腕および顔に主に影響を及ぼす限局性の皮膚強皮症を含むが、肺高血圧症の頻度が高い。びまん性皮膚強皮症(または全身性硬化症)は、急速に進行し、皮膚および1つまたは複数の内臓、頻繁には腎臓、食道、心臓および肺の大きな領域に影響を及ぼす。全身性強皮症はそのどちらの形態でも致死的であり得る。強皮症の他の形態は、2つの亜型:斑状強皮症および線状強皮症を有する局在性のものである。本開示のエンドスタチンペプチドは、あらゆる形態の強皮症を治療するために使用することができる。
【0084】
選択的にハイブリダイズする:関連しないヌクレオチド配列が排除される中程度または高度にストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション。
【0085】
核酸ハイブリダイゼーション反応において、特定のレベルのストリンジェンシーを実現するために使用される条件は、ハイブリダイズさせる核酸の性質に応じて変動する。例えば、核酸のハイブリダイズする領域の長さ、相補性の程度、ヌクレオチド配列組成(例えば、GC対AT含量)、および核酸型(例えば、RNAであるかDNAであるか)がハイブリダイゼーション条件の選択において考慮され得る。追加的な考察は、核酸の一方が、例えばフィルター上に固定化されているかどうかである。
【0086】
漸進的に高くなるストリンジェンシー条件の具体的な例は以下の通りである:2×SS
C/0.1%SDS、ほぼ室温(ハイブリダイゼーション条件);0.2×SSC/0.1%SDS、ほぼ室温(低ストリンジェンシー条件);0.2×SSC/0.1%SDS、約42℃(中程度のストリンジェンシー条件);および0.1×SSC、約68℃(高ストリンジェンシー条件)。当業者は、これらの条件の変動を容易に決定することができる(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、1~3巻、Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989)。洗浄は、これらの条件のうちの1つのみ、例えば高ストリンジェンシー条件を使用して行うこともでき、条件のそれぞれを、例えば、それぞれ10~15分にわたって、上に列挙されている順序で、列挙されている任意のまたは全てのステップを反復して、使用することもできる。しかし、上記の通り、最適な条件は、関与する特定のハイブリダイゼーション反応に応じて変動し、経験的に決定することができる。
【0087】
配列同一性:アミノ酸配列間の類似性は、他の点では配列同一性と称される配列間の類似性に関して表される。配列同一性は、百分率同一性(または類似性または相同性)に関して測定される頻度が高く、百分率が高いほど、2つの配列の類似性が高い。C末端エンドスタチンポリペプチドのホモログまたはバリアントは、標準の方法を使用してアラインメントした際に、比較的高い程度の配列同一性を有する。
【0088】
比較のために配列をアラインメントする方法は当技術分野で周知である。種々のプログラムおよびアラインメントアルゴリズムは、SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.2:482、1981;NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.48:443、1970;HigginsおよびSharp、Gene 73:237、1988;HigginsおよびSharp、CABIOS 5:151、1989;Corpetら、Nucleic Acids Research 16:10881、1988;およびPearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444、1988に記載されている。Altschulら、Nature Genet.6:119、1994には、配列アラインメント方法および相同性算出の詳細な考察が示されている。
【0089】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403、1990)は、National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、Md.)を含めたいくつかの供給源から、および、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと関連した使用に関して、インターネット上で入手可能である。このプログラムを使用して配列同一性をどのように決定するかについての記載は、インターネット上のNCBIウェブサイトで入手可能である。
【0090】
C末端エンドスタチンポリペプチドのホモログおよびバリアントは、一般には、NCBI Blast 2.0、初期パラメーターに設定したギャップ挿入blastpを使用して、エンドスタチンのアミノ酸配列との全長アラインメントにわたって計数して、少なくとも75%、例えば、少なくとも80%の配列同一性を有することを特徴とする。約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較のためには、BLAST2Sequences機能を使用し、初期パラメーター(ギャップ存在コスト(gap existence cost)11、および1残基当たりのギャップコスト(per residue gap
cost)1)に設定したデフォルトBLOSUM62行列を使用する。短いペプチド(およそ30アミノ酸未満)をアラインメントする場合、アラインメントは、BLAST2Sequences機能を使用し、初期パラメーター(オープンギャップ(open gap)9、エクステンションギャップ(extension gap)1のペナルティ
)に設定したPAM30行列を使用して実施されるべきである。参照配列に対してさらに高い類似性を有するタンパク質では、この方法によって評価した場合、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性など、百分率同一性の上昇が示される。配列全体未満を配列同一性について比較する場合、ホモログおよびバリアントは、一般には、10~20アミノ酸の短いウィンドウにわたって少なくとも80%の配列同一性を有し、参照配列に対するそれらの類似性に応じて少なくとも85%または少なくとも90%または95%の配列同一性を有し得る。そのような短いウィンドウにわたって配列同一性を決定するための方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトで入手可能である。これらの配列同一性の範囲は単に手引きとして提示されていることが当業者には理解されよう。全面的に、提示されている範囲外の強力に意味のあるホモログが得られ得る可能性がある。
【0091】
治療有効量:治療される対象において所望の効果を実現するために十分な、C末端エンドスタチンポリペプチドなどの化合物の分量。例えば、治療有効量は、対象における皮膚線維症または肺線維症などの線維症を治療するまたは好転させるために必要な量であり得る。一部の実施形態では、治療有効量は、対象をある期間にわたって測定可能な量で治療するため、または対象における疾患の進行を測定可能な程度に阻害するために必要な量である。他の実施形態では、治療有効量は、疾患を予防的に阻害するために必要な量である。
【0092】
有効量のC末端エンドスタチンポリペプチドは、単回投薬で、または、複数回投薬で、例えば治療の経過中毎日、投与することができる。しかし、有効量は、適用される化合物、治療される対象、苦痛の重症度および型、ならびに化合物の投与様式に左右される。
【0093】
形質導入された:形質導入された細胞とは、分子生物学技法によって核酸分子が導入された細胞である。本明細書で使用される場合、形質導入という用語は、ウイルスベクターを用いたトランスフェクション、プラスミドベクターを用いた形質転換、ならびにエレクトロポレーション、リポフェクション、およびパーティクルガン加速による裸のDNAの導入を含めた、核酸分子をそのような細胞に導入することができる全ての技法を包含する。
【0094】
ベクター:宿主細胞に導入されると、それにより、形質転換された宿主細胞を生じさせる核酸分子。ベクターは、複製開始点などの、宿主細胞における複製を可能にする核酸配列を含み得る。ベクターは、1種または複数種の選択マーカー遺伝子および当技術分野で公知の他の遺伝子エレメントも含み得る。ベクターとしては、グラム陰性菌細胞およびグラム陽性菌細胞における発現のためのプラスミドを含むプラスミドベクターが挙げられる。例示的なベクターとして、E.coliおよびSalmonellaにおける発現のためのベクターが挙げられる。ベクターとして、例えば、これだけに限定されないが、レトロウイルスベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、アデノウイルスのベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスおよびポリオウイルスベクターなどのウイルスベクターも挙げられる。ベクターとして、酵母細胞および昆虫細胞における発現のためのベクターも挙げられる。
【0095】
特に説明がなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。単数の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈によりそうでないことが明らかでない限り、複数の指示対象を包含する。同様に、「または(or)」という単語は、文脈によりそうでないことが明白に示されない限り、「および(and)」を含
むものとする。核酸またはペプチドに関してもたらされる全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値は、概算値であり、説明のために提示されるものであることがさらに理解されるべきである。本明細書に記載のものと同様または同等である方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料が下に記載されている。「含む(comprises)」という用語は、「含む(includes)」を意味する。本明細書において言及されている全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合は、用語の説明を含めた本明細書により支配される。さらに、材料、方法および実施例は単に例示的なものであり、それに限定されるものではない。
【0096】
C末端エンドスタチンポリペプチド
C末端エンドスタチンポリペプチドおよびそのバリアントが本明細書に開示されている。ポリペプチドは、これだけに限定することなく、強皮症などの線維化状態において存在する線維症を阻害し得る。ポリペプチドは、C末端エンドスタチンタンパク質のアミノ酸配列を含有するが、全長エンドスタチンは含まない。エンドスタチンタンパク質は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ウマ科の動物、ウシ科の動物、ヒツジのような動物、ヒツジ、または齧歯類(例えば、マウスまたはラット)に由来するものなどの哺乳動物タンパク質であり得る。ヒトエンドスタチン(配列番号2として記載されているアミノ酸配列)をコードする例示的なヌクレオチド配列は、
ATGCACAGCC ACCGCGACTT CCAGCCGGTG CTCCACCTGG TTGCGCTCAA CAGCCCCCTG
TCAGGCGGCA TGCGGGGCAT CCGCGGGGCC GACTTCCAGT GCTTCCAGCA GGCGCGGGCC
GTGGGGCTGG CGGGCACCTT CCGCGCCTTC CTGTCCTCGC GCCTGCAGGA CCTGTACAGC
ATCGTGCGCC GTGCCGACCG CGCAGCCGTG CCCATCGTCA ACCTCAAGGA CGAGCTGCTG
TTTCCCAGCT GGGAGGCTCT GTTCTCAGGC TCTGAGGGTC CGCTGAAGCC CGGGGCACGC
ATCTTCTCCT TTAACGGCAA GGACGTCCTG ACCCACCCCA CCTGGCCCCA GAAGAGCGTG
TGGCATGGCT CGGACCCCAA CGGGCGCAGG CTGACCGAGA GCTACTGTGA GACGTGGCGG
ACGGAGGCTC CCTCGGCCAC GGGCCAGGCC TACTCGCTGC TGGGGGGCAG GCTCCTGGGG
CAGAGTGCCG CGAGCTGCCA TCACGCCTAC ATCGTGCTAT GCATTGAGAA CAGCTTCATG
ACTGCCTCCA AGTAG(配列番号1)である。
【0097】
全て参照により本明細書に組み込まれる、GENBANK(登録商標)受託番号NM030582.3;NM130444.2;NM130445.2も参照されたい。
【0098】
ヒトエンドスタチン(配列番号13として記載されているアミノ酸配列)をコードする別の例示的なヌクレオチド配列は、
CACAGCCACCGC GACTTCCAGC CGGTGCTCCACCTGGTTGCG CTCAACAGCC CCCTGTCAGG
CGGCATGCGG GGCATCCGCG GGGCCGACTTCCAGTGCTTC CAGCAGGCGC GGGCCGTGGG
GCTGGCGGGC ACCTTCCGCG CCTTCCTGTCCTCGCGCCTG CAGGACCTGT ACAGCATCGT
GCGCCGTGCC GACCGCGCAG CCGTGCCCATCGTCAACCTC AAGGACGAGC TGCTGTTTCC
CAGCTGGGAG GCTCTGTTCT CAGGCTCTGAGGGTCCGCTG AAGCCCGGGG CACGCATCTT
CTCCTTTGAC GGCAAGGACG TCCTGAGGCACCCCACCTGG CCCCAGAAGA GCGTGTGGCA
TGGCTCGGAC CCCAACGGGC GCAGGCTGACCGAGAGCTAC TGTGAGACGT GGCGGACGGA
GGCTCCCTCG GCCACGGGCC AGGCCTCCTCGCTGCTGGGG GGCAGGCTCC TGGGGCAGAG
TGCCGCGAGC TGCCATCACG CCTACATCGTGCTCTGCATT GAGAACAGCT TCATGACTGC
CTCCAAGTAG(配列番号12)である。
【0099】
配列番号1によりコードされる、例示的なヒトエンドスタチンポリペプチド配列は、
HSHRDFQPVL HLVALNSPLS GGMRGIRGAD FQCFQQARAV GLAGTFRAFL SSRLQDLYSI
VRRADRAAVP IVNLKDELLF PSWEALFSGS EGPLKPGARI FSFNGKDVLTHPTWPQKSVW
HGSDPNGRRL TESYCETWRT EAPSATGQAY SLLGGRLLGQ SAASCHHAYI VLCIENSFMTASK(配列番号2
)である。
【0100】
このタンパク質は、183アミノ酸の長さであり、GENBANK(登録商標)受託番号AAF01310と、AAF01310の開始メチオニンを欠く以外は同一である)。
【0101】
配列番号12によりコードされる例示的なヒトエンドスタチンポリペプチド配列は、
HSHRDFQPVL HLVALHSPLS GGMRGIRGAD FQCFQQARAV GLAGTFRAFL SSRLQDLYSI
VRRADRAAVP IVNLKDELLF PSWEALFSGS EGPLKPGARI FSFDGKDVLRHPTWPQKSVW
HGSDPNGRRL TESYCETWRT EAPSATGQAS SLLGGRLLGQ SAASCHHAYI VLCIENSFMTASK(配列番号13)である。
【0102】
参照により本明細書に組み込まれる、GENBANK(登録商標)受託番号CAB90482も参照されたい。
【0103】
配列番号2は、配列番号13と、上記の配列番号2および13において下線によって示されている3カ所のアミノ酸置換を除いて、同一である。
【0104】
マウスエンドスタチンをコードする例示的なヌクレオチド配列は、
CATACTCATC AGGACTTTCA GCCAGTGCTC CACCTGGTGG CACTGAACAC CCCCCTGTCT
GGAGGCATGC GTGGTATCCG TGGAGCAGAT TTCCAGTGCT TCCAGCAAGC CCGAGCCGTG
GGGCTGTCGG GCACCTTCCG GGCTTTCCTG TCCTCTAGGC TGCAGGATCT CTATAGCATC
GTGCGCCGTG CTGACCGGGG GTCTGTGCCC ATCGTCAACC TGAAGGACGA GGTGCTATCT
CCCAGCTGGG ACTCCCTGTT TTCTGGCTCC CAGGGTCAAC TGCAACCCGG GGCCCGCATC
TTTTCTTTTG ACGGCAGAGA TGTCCTGAGA CACCCAGCCT GGCCGCAGAA GAGCGTATGG
CACGGCTCGG ACCCCAGTGG GCGGAGGCTG ATGGAGAGTT ACTGTGAGAC ATGGCGAACT
GAAACTACTG GGGCTACAGG TCAGGCCTCC TCCCTGCTGT CAGGCAGGCT CCTGGAACAG
AAAGCTGCGA GCTGCCACAA CAGCTACATC GTCCTGTGCA TTGAGAATAG CTTCATGACC
TCTTTCTCCA AA(配列番号3)である。
【0105】
配列番号3によりコードされる例示的なマウスエンドスタチンポリペプチド配列は、
HTHQDFQPVL HLVALNTPLS GGMRGIRGAD FQCFQQARAV GLSGTFRAFL SSRLQDLYSI
VRRADRGSVP IVNLKDEVLS PSWDSLFSGS QGQLQPGARI FSFDGRDVLR HPAWPQKSVW
HGSDPSGRRL MESYCETWRT ETTGATGQAS SLLSGRLLEQ KAASCHNSYI VLCIENSFMT
SFSK(配列番号4)である。
【0106】
このタンパク質は、GENBANK(登録商標)受託番号AAF69009と同一である。他の種に由来するエンドスタチンヌクレオチドおよびアミノ酸配列も公的に入手可能である。
【0107】
一部の実施形態では、C末端エンドスタチンポリペプチドは、エンドスタチンタンパク質のC末端領域の約10個~約60個の連続したアミノ酸を含有するが、全長エンドスタチンタンパク質、またはエンドスタチンタンパク質のN末端領域は含まない。ペプチドは、エンドスタチンタンパク質のC末端領域の約10個から約55個までの連続したアミノ酸または約20個から約54個までの連続したアミノ酸、例えば、エンドスタチンタンパク質(例えば、配列番号2など)のC末端領域の約53個の連続したアミノ酸などを含み得る。例えば、ペプチドは、エンドスタチンタンパク質のC末端領域の約40個、約45個、約個、46個、約47個、約48個、約49個、約50個、約51個、約52または約53個の連続したアミノ酸、例えば、配列番号2、配列番号13、または配列番号4などのエンドスタチン配列のアミノ酸93~183などを含み得る。アミノ酸配列または核酸配列に関しては、「約」とは、1残基(指定の数よりも1つ多いまたは1つ少ない)範
囲内を意味する。
【0108】
エンドスタチンペプチドは、エンドスタチンタンパク質のC末端領域の40個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、40~45個、45~50個、または50~55個の連続したアミノ酸を含み得る。一部の例では、ペプチドは、これだけに限定することなく、配列番号2、配列番号4、または配列番号13などのエンドスタチンポリペプチドのC末端領域の40個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個の連続したアミノ酸からなる。一部の実施形態では、ペプチドは、エンドスタチンのアミノ酸133~180の少なくとも30アミノ酸、または抗線維症活性を有するそのバリアントを含むまたはそれからなる。
【0109】
エンドスタチンペプチドは、配列番号2、配列番号4、または配列番号13などのエンドスタチンタンパク質の約アミノ酸120、125、130、131、132、133、134、または135~約アミノ酸175、180、181、182または183を含み得る、それからなり得る、またはそれから本質的になり得る。一部の例では、ペプチドは、配列番号2、配列番号4、または配列番号13のアミノ酸120~183、125~183、130~183、131~183、132~183、134~183、135~183、120~180、125~180、130~180、131~180、132~180、133~180、134~180、または135~180を含む、それからなる、またはそれから本質的になる。特定の例では、ペプチドは、配列番号2のアミノ酸133~180、配列番号4のアミノ酸133~180、配列番号13のアミノ酸133~180を含む、それからなる、またはそれから本質的になる。これに関連して、「から本質的になる(consists essentially of)」とは、ペプチドが、追加的なアミノ酸残基は含まないが、標識などの追加的な構成成分は含み得ることを意味する。
【0110】
本明細書に開示されている他のエンドスタチンペプチドバリアントは、C末端エンドスタチンポリペプチドに対して少なくとも約70%、80%、90%、95%、98%または99%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を含み得る、それからなり得る、またはそれから本質的になり得る。C末端エンドスタチンポリペプチドは、全長エンドスタチンタンパク質またはエンドスタチンタンパク質のN末端領域(例えば、配列番号2などのアミノ酸1~92)を含まない。
【0111】
一部の非限定的な例では、C末端エンドスタチンポリペプチドは、保存的アミノ酸置換などの置換を含み得、天然に存在するC末端エンドスタチンポリペプチド(配列番号2、4、または13参照)において、最大で約1カ所、2カ所、3カ所、4カ所、5カ所の置換で、抗線維症活性が保持されることが予測される。C末端エンドスタチンポリペプチドは、最大で1カ所、最大で2カ所、最大で3カ所または最大で4カ所の、保存的アミノ酸置換などのアミノ酸置換を含み得る。
【0112】
上記の配列と類似したポリペプチドは、置換、欠失または付加を含有し得る。差異は、例えば、ポリペプチドの、異なる種の間で有意に保存されていない領域におけるものであり得る。そのような領域は、種々の動物種に由来するエンドスタチンタンパク質のアミノ酸配列をアラインメントすることによって同定することができる。したがって、エンドスタチンペプチドは、配列番号2、配列番号4、または配列番号13のアミノ酸133~180として記載されているアミノ酸のうちの少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも50個、少なくとも51個、少なくとも52個、または全てを含み得る、それから本質的になり得る、またはそれからなり得る。あるいは、エンドスタチンペプチドは、これらの配列のうちの1つにおける最大で1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸置換を含み得、もたらされる
ペプチドは抗線維症活性を有する。ペプチドは、40アミノ酸、45アミノ酸、46アミノ酸、47アミノ酸、48アミノ酸、49アミノ酸、50アミノ酸、51アミノ酸、52アミノ酸、53アミノ酸、40~45アミノ酸、45~50アミノ酸、または50~55アミノ酸の長さであり得る。ペプチドは、配列番号2、配列番号4、または配列番号13などのエンドスタチンの配列全体またはN末端領域を含まない。追加的な実施形態では、ペプチドは、最大で40アミノ酸、45アミノ酸、46アミノ酸、47アミノ酸、48アミノ酸、49アミノ酸、50アミノ酸、51アミノ酸、52アミノ酸、または53アミノ酸の長さ、例えば、40アミノ酸、45アミノ酸、46アミノ酸、47アミノ酸、48アミノ酸、49アミノ酸、50アミノ酸、51アミノ酸、52アミノ酸、または53アミノ酸の長さのペプチドなどである。
【0113】
一部の実施形態では、ペプチドは、例えば、C末端アミドを含むように修飾される。本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドのいずれも、C末端アミドを含み得る。
【0114】
C末端エンドスタチンポリペプチドは、エンドスタチンのアミノ酸133~180に3つのシステイン残基を含む。理論に束縛されることなく、3つのシステイン残基のうちの2つが、ペプチドの三次構造に重要な分子内ジスルフィド架橋の形成に関与すると考えられる。第3のシステイン残基は分子間相互作用に関与する可能性がある。一部の実施形態では、C末端エンドスタチンポリペプチドは、システイン修飾を含み得る。システイン修飾は、任意のアミノ酸で置換することができる。一部の実施形態では、システイン修飾は、システインからアラニンへの置換であり得る。理論に束縛されることなく、システインのアラニンでの置換(例えば、C67A)により、本明細書に記載のC末端エンドスタチンポリペプチドの溶解性が増強され得ると考えられる。システインからアラニンへの置換を有する例示的なC末端エンドスタチンポリペプチドは配列番号14に記載されている。
【0115】
以下は、ヒト(アミノ酸133~180)、マウス、ラット、およびウシのXVIII型コラーゲンエンドスタチンのアミノ酸配列、およびヒトXV型コラーゲンのアラインメントである:配列番号:
【0116】
【表2】
【0117】
アミノ酸133~141、145~153、155~158、162~166、および169~180は、エンドスタチン配列の間で保存されている(上記の2列目)。完全なヒトエンドスタチン配列については、配列番号2を参照されたい;完全なマウスエンドスタチン配列については、配列番号4を参照されたい;完全なラットエンドスタチン配列については、配列番号9を参照されたい;完全なウシエンドスタチン配列については、配列番号10を参照されたい。完全なヒトXV型コラーゲンは配列番号11として提示されている。
【0118】
一部の実施形態では、上記のアラインメントの2列目のアミノ酸は、配列番号2、配列番号4、または配列番号13の、ポリペプチドの抗線維症活性を保存するために保存され
得る領域を示す。さらなる実施形態では、ポリペプチドの抗線維症活性を保存するために、下線が引かれているアミノ酸が保持されるべきである。したがって、一部の実施形態では、C末端エンドスタチンポリペプチドは、配列番号2、配列番号4または配列番号13のアミノ酸133~141、145~153、155~158、162~166および169~180を含む。一部の実施形態では、145位のAが保存される。
【0119】
本明細書においてE4と称されるポリペプチドは、C末端アミドを伴うヒトエンドスタチンのアミノ酸133~180である(配列番号2のアミノ酸133~180を参照されたい)。一部の実施形態では、抗線維症活性を保持するためにペプチド内に保持することができる領域は、保存されているE4の最初の7アミノ酸内の潜在的なリン酸化部位:SYCEおよびTWR(それぞれE4のアミノ酸1~4および5~7、配列番号2または配列番号13のアミノ酸133~136および137~139も参照されたい)の一方または両方を含む。一部の実施形態では、抗線維症活性を保持するためにペプチド内に保持することができる領域は、潜在的なミリストイル化部位:GQaySLおよびGQsaAS(それぞれE4のアミノ酸15~20および27~32、配列番号2または配列番号13のアミノ酸147~152およびアミノ酸159~164)の一方または両方を含む。したがって、一部の実施形態では、C末端エンドスタチンポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、または配列番号13のアミノ酸133~180における0カ所、または最大で1カ所、最大で2カ所、最大で3カ所、最大で4カ所、または最大で5カ所の置換であって、配列番号2、配列番号4、または配列番号13のアミノ酸133~141、145~153、155~158、162~166、および169~180内のものではない置換を含み、C末端アミドを含む。
【0120】
他の実施形態では、ヒト配列とマウス配列の間で異なるアミノ酸を、抗線維症活性に影響を及ぼすことなく置換することができる。他の実施形態では、ヒト配列における上記の太字およびイタリック体で示されているアミノ酸は、抗線維症活性を保護しながら置換することができるアミノ酸である。例えば、C末端エンドスタチンポリペプチドにおいて、アミノ酸配列のアミノ酸142~144、154、159~161、および181~183を変更することができる。これらのアミノ酸は、例えば、上記(配列番号9~10)の別の種において見いだされるアミノ酸で置換することができる。例えば、C末端エンドスタチンポリペプチドは、配列番号2または配列番号13のアミノ酸133~180を含んでよく、ここで、アミノ酸142~144、154、およびアミノ酸159~161が置換されている。このポリペプチドはC末端アミドを含んでよい。
【0121】
これらまたは他の位置において置換すること、挿入することまたは欠失させることができる他のアミノ酸は、突然変異誘発試験とバイオアッセイの組合せによって同定することができる。上記のアラインメントは単にガイドラインとして提示されている。
【0122】
下記の融合ポリペプチドを含めた、C末端エンドスタチンポリペプチドを含有するポリペプチド(例えば、E3)の多量体も本発明に包含される。一部の実施形態では、多量体は、それぞれがC末端エンドスタチン断片を含む二量体、三量体、または四量体であり得る。
【0123】
エンドスタチンポリペプチドを検出、精製、安定化、または可溶化するために使用することができるペプチドなどの異種ペプチドと融合したC末端エンドスタチンポリペプチドも本発明に包含される。これらのポリペプチドは、全長エンドスタチンタンパク質またはエンドスタチンタンパク質のN末端領域を含まない。一部の実施形態では、C末端ポリペプチドのN末端に免疫グロブリン(Ig)定常重鎖または軽鎖ドメインまたはその一部を連結することができる。例えば、これだけに限定することなく、配列番号2、配列番号4、配列番号13(例えば、E4)、または配列番号14のアミノ酸133~180などの
ポリペプチドを重鎖のCH1ドメイン、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメインに連結することができる。定常領域が軽鎖に由来するものである場合、カッパ軽鎖に由来するものであってもラムダ軽鎖に由来するものであってもよい。定常領域が重鎖に由来するものである場合、以下の抗体のクラス:IgG、IgA、IgE、IgD、およびIgMの任意の1つの抗体に由来するものであってよい。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4であってよい。定常ドメインは、Fc断片であってよい。定常ドメインは、ヒト抗体などの哺乳動物の抗体に由来するものであってよい。可溶性受容体-IgG融合タンパク質は、一般的な免疫学的試薬であり、それらを構築するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,225,538号、同第5,726,044号;同第5,707,632号;同第750,375号、同第5,925,351号、同第6,406,697号およびBergersら Science 1999 284:808-12を参照されたい)。一例では、免疫グロブリンは、ヒトIgG、特にIgG1の重鎖の定常部分であり、ヒンジ領域において2つの重鎖間の二量体化が起こる。Fc領域のCH2ドメインおよびCH3ドメインを融合ポリペプチドの一部として含めることにより、Fc領域を含むポリペプチドのin vivo循環半減期、および当該ポリペプチドを含むオリゴマーまたは二量体のin vivo循環半減期が増大することが理解される。
【0124】
ヒンジ領域、ならびにドメインCH2およびCH3を含むヒトIgG1のFc部分は、ヌクレオチド配列:
GAG CCC AAA TCT TGT GAC AAA ACT CAC ACA TGC CCA CCG TGC CCA GCA CCT GAA CTC CTG GGG GGA CCG TCA GTC TTC CTC TTC CCC CCA AAA CCC AAG GAC ACC CTC ATG ATC TCC CGG ACC CCT GAG GTC ACA TGC GTG GTG GTG GAC GTG AGC CAC GAA GAC CCT GAG GTC AAG TTC AAC TGG TAC GTG GAC GGC GTG GAG GTG CAT AAT GCC AAG ACA AAG CCG CGG GAG GAG CAG TAC AAC AGC ACG TAC CGT GTG GTC AGC GTC CTC ACC GTC CTG CAC CAG GAC TGG CTG AAT GGC AAG GAG TAC AAG TGC AAG GTC TCC AAC AAA GCC CTC CCA GCC CCC ATC GAG AAA ACC ATC TCC AAA GCC AAA GGG CAG CCC CGA GAA CCA CAG GTG TAC ACC CTG CCC CCA TCC CGG GAT GAG CTG ACC AAG AAC CAG GTC AGC CTG ACC TGC CTG GTC AAA GGC TTC TAT CCC AGC GAC ATC GCC GTG GAG TGG GAG AGC AAT GGG CAG CCG GAG AAC AAC TAC AAG ACC ACG CCT CCC GTG CTG GAC TCC GAC GGC TCC TTC TTC CTC TAC AGC AAG CTC ACC GTG GAC AAG AGC AGG TGG CAG CAG GGG AAC GTC TTC TCA TGC TCC GTG ATG CAT GAG GCT CTG CAC AAC CAC TAC ACG CAG AAG AGC CTC TCC CTG TCT CCG GGT AAA TGA(配列番号5)を有し、これは
、アミノ酸配列:
Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val His Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gin Tyr Asn Ser Thr Tyr Arg Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gin Asp Trp Leu Asn Gly Lys Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gin Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr Thr Leu Pro Pro Ser Arg Asp Glu Leu Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Thr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp Glu Ser Asn Gly Gin Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp Lys Ser Arg Trp Gln Gin Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gin Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly Lys(配列番号6)を有するポリペプチ
ドをコードする。
【0125】
定常Igドメインは、1つまたは複数のエフェクター機能、例えば、Fc受容体への結合および補体活性化を低下させるまたは排除する1つまたは複数の突然変異も含有し得る(例えば、Morrison、Annu.Rev.Immunol.、10、239~6
5頁(1992);DuncanおよびWinter(1988)Nature 332:738-740;およびXuら(1994)J Biol.Chem.269:3469-3474)を参照されたい。例えば、ヒトIgG1のLeu235およびPro331に対応するアミノ酸の、それぞれGluおよびSerへの突然変異がもたらされ、そのような構築物は、米国特許第6,656,728号にさらに記載されている。
【0126】
C末端エンドスタチンポリペプチドは、例えばC末端エンドスタチンポリペプチドと異種ポリペプチドの間など、トロンビン切断部位を有するリンカー配列と連結することもできる。そのような部位をコードする例示的なヌクレオチド配列は、アミノ酸配列:Ser
Arg Gly Gly Leu Val Pro Arg Gly Ser Gly
Ser Pro Gly Leu Gln(配列番号8)を有するポリペプチドをコードする以下のヌクレオチド配列:5’TCT AGA GGT GGT CTA GTG
CCG CGC GGC AGC GGT TCC CCC GGG TTG CAG3’(配列番号7)を有する。C末端エンドスタチンポリペプチドはまた、シグナル配列と融合することもできる。例えば、組換えによって調製する場合、ペプチドをコードする核酸の5’末端にシグナル配列を連結し、その結果、ペプチドを細胞から分泌させることができる。
【0127】
ペプチドは、例えば、調製物中のペプチドの少なくとも約90%が所望のペプチドである場合など、実質的に純粋な調製物として使用することができる。少なくとも約50%、60%、70%、または80%の所望のペプチドを含む組成物も使用することができる。ペプチドは、変性したものであっても変性していないものであってもよく、その結果として、凝集したものであっても凝集していないものであってもよい。
【0128】
本発明に包含される他のC末端エンドスタチンポリペプチドは、修飾されたアミノ酸を含むものである。例示的なペプチドは、それが由来するペプチドの少なくとも1つの生物学的機能が保持される、グリコシル化、ペグ化、リン酸化または任意の同様のプロセスによって修飾されたものであってよい誘導体ペプチドである。ペプチドは、1つまたは複数の天然に存在しないアミノ酸も含んでよい。例えば、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体を置換または付加としてペプチドに導入することができる。非古典的なアミノ酸としては、これだけに限定されないが、一般に、一般的なアミノ酸のD異性体、2,4-ジアミノ酪酸、アルファ-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、ガンマ-Abu、イプシロン-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ベータアラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えばベータ-メチルアミノ酸、Cアルファ-メチルアミノ酸、Nアルファ-メチルアミノ酸など、およびアミノ酸類似体が挙げられる。一部の実施形態では、セレノメチオニンによる置換が有用であり得る(例えば、X線回析分析のために)。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)であってもL(左旋性)であってもよい。他の特定の実施形態では、配列内の1つまたは複数のアミノ酸を、1つまたは複数のアミノ酸とペプチド結合を形成することが可能な(したがって、「枝」を形成することが可能な)遊離の側鎖を有するアミノ酸またはアミノ酸類似体で置換することによってなどで、本明細書において列挙されているペプチドの分枝型がもたらされる。環式のペプチドも意図されている。
【0129】
例えばベンジル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、ペグ化、公知の保護/ブロック基(protecting/blocking group)による誘導体化、タンパク質分解による切断、抗体分子または他の細胞性リガンドなどとの連結によってなどで、合成中または合成後に示差的に修飾されるペプチド誘導体も包含される。特
定の実施形態では、ペプチドのN末端をアセチル化し、かつ/またはC末端をアミド化する。
【0130】
一例では、ペプチドは、カルボキシ末端アミドを含む。この型のC末端エンドスタチンポリペプチドの特定の非限定的な一例は、E4であり(例えば、配列番号13のアミノ酸133~180を参照されたい)、これは、下の実施例の節に詳細に記載されている。このペプチド、または本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドのいずれも、C末端をアミド化することができる。
【0131】
化学修飾されたペプチドおよびペプチド模倣薬などのC末端エンドスタチンポリペプチドの誘導体も提供される。ペプチド模倣薬は、ペプチドおよびタンパク質に基づくまたはそれに由来する化合物である。ペプチド模倣薬は、非天然アミノ酸、コンフォメーション抑止、等配電子交換などを使用して公知のペプチド配列を構造的に修飾することによって得ることができる。対象ペプチド模倣薬は、ペプチドと非ペプチド合成構造の間の構造的空間の連続体を構成し、したがって、ペプチド模倣薬は、ファーマコフォアの描写において、およびペプチドを親ペプチドの活性を有する非ペプチド化合物に翻訳することの補助において有用であり得る。
【0132】
C末端エンドスタチンポリペプチドのミモトープが本開示に含まれる。そのようなペプチド模倣薬は、非加水分解性(例えば、プロテアーゼまたは対応するペプチドを分解する他の生理的条件に対する安定性の増大)、細胞分化を刺激する特異性および/または効力の増大などの特質を有し得る。例として、ペプチド類似体は、例えば、ベンゾジアゼピン系薬(例えば、Freidingerら、Peptides:ChemistryおよびBiology、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher:Leiden、Netherlands、1988を参照されたい)、置換ガンマラクタム環(Garveyら、Peptides:ChemistryおよびBiology、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher:Leiden、Netherlands、1988、123頁)、C-7模倣物(Huffmanら、Peptides:ChemistryおよびBiology、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher:Leiden、Netherlands、1988、105頁)、ケト-メチレン偽ペプチド(Ewensonら(1986)J Med Chem
29:295;およびEwensonら、Peptides:StructureおよびFunction(Proceedings of the 9th American Peptide Symposium)Pierce Chemical Co.Rockland、Ill.、1985)、β-ターンジペプチドコア(Nagaiら(1985)Tetrahedron Lett 26:647;およびSatoら(1986)J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、β-アミノアルコール(Gordonら(1985)Biochem Biophys Res Commun 126:419;およびDannら(1986)Biochem Biophys Res Commun 134:71)、ジアミノケトン(Nataraj anら(1984)Biochem Biophys Res Commun 124:141)、ならびにメチレンアミノ修飾(Roarkら、Peptides:Chemistry and Biology、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher:Leiden、Netherlands、1988、134頁)を使用して生成することができる。また、一般に、Session III:Analytic and synthetic methods、Peptides:Chemistry and Biology、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher:Leiden、Netherlands、1988を参照されたい。
【0133】
ペプチド模倣薬を生成するために行うことができる種々の側鎖の置き換えに加えて、本
開示では、コンフォメーションが抑止されたペプチド二次構造の模倣物の使用が具体的に意図されている。ペプチドのアミド結合に対する多数の代替が開発されてきた。アミド結合に対する頻繁に活用される代替としては、以下の群(i)トランス-オレフィン、(ii)フルオロアルケン、(iii)メチレンアミノ、(iv)ホスホンアミド、および(v)スルホンアミドが挙げられる。さらに、ペプチドの骨格のより実質的な修飾に基づくペプチド模倣薬を使用することができる。このカテゴリーに入るペプチド模倣薬としては、(i)レトロインベルソ類似体、および(ii)N-アルキルグリシン類似体(いわゆるペプトイド)が挙げられる。さらに、コンビナトリアルケミストリーの方法を使用して、ペプチド模倣薬を作製することができる。例えば、いわゆる「ペプチドモーフィング」戦略の一部の実施形態では、広範囲のペプチド結合置換を含むペプチド類似体のライブラリーのランダムな生成に焦点が当てられる。例示的な実施形態では、ペプチド模倣物は、ペプチドのレトロインベルソ類似体として得ることができる。そのようなレトロインベルソ類似体は、Sistoら、米国特許第4,522,752号に記載されているものなどの、当技術分野で公知の方法に従って作出することができる。レトロインベルソ類似体は、例えば、PCT公開第WO 00/01720号に記載されている通り生成することができる。一部通常のペプチド連結を含むものなどの混合ペプチドを生成することができる。一般的な指針として、一般には、タンパク質分解を最も受けやすい部位を変更し、より受けにくいアミド結合を模倣切り換えの選択肢とする。最終生成物、またはその中間体は、HPLCによって精製することができる。
【0134】
一部の実施形態では、ペプチドは、D立体異性体である少なくとも1つのアミノ酸またはあらゆるアミノ酸を含んでよい。他のペプチドは、少なくとも1つの逆転したアミノ酸を含んでよく、逆転したアミノ酸は、D立体異性体であってよい。ペプチドのあらゆるアミノ酸が逆転したものであってよく、かつ/またはあらゆるアミノ酸がD立体異性体であってよい。別の例示的な実施形態では、ペプチド模倣物は、ペプチドのレトロエナンチオ類似体として得ることができる。このようなレトロエナンチオ類似体は、例えば、PCT公開第WO00/01720号に記載されている通り、市販のD-アミノ酸(またはその類似体)および標準の固相または液相ペプチド合成技法を用いて合成することができる。最終生成物をHPLCによって精製して、純粋なレトロエナンチオ類似体を得ることができる。さらに別の例示的な実施形態では、対象ペプチドに対するトランス-オレフィン誘導体を作出することができる。トランス-オレフィン類似体は、Shueら(1987)Tetrahedron Letters 28:3225の方法に従って、および、PCT公開WO00/01720に記載されている通り合成することができる。上記の方法によって合成された偽ジペプチドを他の偽ジペプチドとカップリングして、アミド官能性の代わりにいくつかのオレフィン系官能性を有するペプチド類似体を作出することがさらに可能である。さらに別のクラスのペプチド模倣物誘導体として、ホスホン酸誘導体が挙げられる。そのようなホスホン酸誘導体の合成は、公知の合成スキームから適応させることができる(例えば、Lootsら、Peptides:Chemistry and Biology、(Escom Science Publishers、Leiden、1988、118頁));Petrilloら、Peptides:Structure and Function(Proceedings of the 9th American Peptide Symposium、Pierce Chemical
Co.Rockland、Ill.、1985)を参照されたい。
【0135】
多くの他のペプチド模倣構造が当技術分野で公知であり、対象ペプチド模倣薬への使用に容易に適応させることができる。例えば、ペプチド模倣物に1-アザビシクロ[4.3.0]ノナン代替物(Kimら(1997)J.Org.Chem.62:2847を参照されたい)、またはN-アシルピペラズ酸(Xiら(1998)J.Am.Chem.Soc.120:80を参照されたい)、または制約されたアミノ酸類似体として2置換ピペラジン部分(Williamsら(1996)J.Med.、Chem.39:13
45-1348を参照されたい)を組み入れることができる。さらに他の実施形態では、ある特定のアミノ酸残基を単環式または二環式芳香族または複素芳香族核、または二芳香族、芳香族-複素芳香族、または二複素芳香族核などのアリールおよびビアリール部分で置き換えることができる。対象ペプチド模倣薬は、例えば、コンビナトリアル合成技法とハイスループットなスクリーニングの組合せによってなどで最適化することができる。さらに、ミモトープの他の例としては、これだけに限定されないが、タンパク質に基づく化合物、炭水化物に基づく化合物、脂質に基づく化合物、核酸に基づく化合物、天然の有機化合物、合成により得られる有機化合物、抗イディオタイプ抗体および/または触媒抗体、またはその断片が挙げられる。ミモトープは、例えば、天然化合物および合成化合物のライブラリーを、線維症を阻害することが可能な化合物についてスクリーニングすることによって得ることができる。ミモトープは、例えば、天然化合物および合成化合物のライブラリー、特に、化学的またはコンビナトリアルライブラリー(例えば、配列またはサイズが異なるが同じ構成要素を有する化合物のライブラリー)から得ることもできる。ミモトープは、例えば、合理的薬物設計によって得ることもできる。合理的薬物設計の手順では、本発明の化合物の三次元構造を、例えば、核磁気共鳴(NMR)またはX線結晶構造解析によって解析することができる。次いで、三次元構造を使用して、潜在的なミモトープの構造を、例えばコンピュータモデリングによって予測することができる。次いで、予測されたミモトープ構造を、例えば、化学合成、組換えDNA技術によって、または天然の供給源(例えば、植物、動物、細菌および真菌)からミモトープを単離することによって作製することができる。
【0136】
開示されている方法において使用されるC末端エンドスタチンポリペプチドは全て抗線維化活性を有する。例えば、C末端エンドスタチンポリペプチドにより、線維症を少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、または本明細書に記載されているアッセイにおけるものなどの対照と比較して2倍、5倍、10倍、30倍もしくは100倍、低減または阻害することができる。
【0137】
C末端エンドスタチンポリペプチド(アミド化された形態のペプチドを含む)は、当技術分野で周知の自動固相手順によって容易に合成することができる。固相合成のための技法および手順は、Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach、E.AthertonおよびR.C.Sheppard、RL、Oxford University Pressより出版、1989に記載されている。あるいは、これらのペプチドは、例えば、Liuら、Tetrahedron Lett.37:933-936、1996;Bacaら、J.Am.Chem.Soc.117:1881-1887、1995;Tamら、Int.J.Peptide Protein Res.45:209-216、1995;SchnolzerおよびKent、Science 256:221-225、1992;LiuおよびTam、J.Am.Chem.Soc.116:4149-4153、1994;LiuおよびTam、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:6584-6588、1994;およびYamashiroおよびLi、Int.J.Peptide Protein Res.31:322-334、1988)に記載されている通り、セグメント縮合によって調製することができる。本開示のペプチドの合成に有用な他の方法は、Nakagawaら、J.Am.Chem.Soc.107:7087-7092、1985に記載されている。本開示のペプチドは、合成ペプチドの商業的供給者から容易に購入することもできる。そのような供給者としては、例えば、Advanced ChemTech(Louisville、Ky.)、Applied Biosystems(Foster City、Calif.)、Anaspec(San Jose、Calif.)、およびCell Essentials(Boston、Mass.)が挙げられる。
【0138】
C末端エンドスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび宿主細胞
本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供される。これらのポリヌクレオチドとしては、目的のペプチドをコードするDNA、cDNAおよびRNA配列が挙げられる。コード配列のサイレント突然変異は、1つ超のコドンが同じアミノ酸残基をコードし得る遺伝暗号の縮重(すなわち、重複性)に起因する。したがって、例えば、ロイシンは、CTT、CTC、CTA、CTG、TTA、またはTTGによってコードされる可能性があり、セリンは、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、またはAGCによってコードされる可能性があり、アスパラギンは、AATまたはAACによってコードされる可能性があり、アスパラギン酸は、GATまたはGACによってコードされる可能性があり、システインは、TGTまたはTGCによってコードされる可能性があり、アラニンは、GCT、GCC、GCA、またはGCGによってコードされる可能性があり、グルタミンは、CAAまたはCAGによってコードされる可能性があり、チロシンは、TATまたはTACによってコードされる可能性があり、イソロイシンは、ATT、ATC、またはATAによってコードされる可能性がある。標準の遺伝暗号を示す表は、種々の供給源において見いだすことができる(例えば、Stryer、1988、Biochemistry、第3版、W.H.5 Freeman
and Co.、NY)を参照されたい。
【0139】
C末端エンドスタチンポリペプチドをコードする核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅系(TAS)、自家持続配列複製系(3SR)およびQβレプリカーゼ増幅系(QB)などのin vitroにおける方法によってクローニングまたは増幅することができる。例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、分子のDNA配列に基づくプライマーを使用して、cDNAのポリメラーゼ連鎖反応によって単離することができる。多種多様なクローニングおよびin vitro増幅方法体系は当業者に周知である。PCR方法は、例えば、米国特許第4,683,195号;Mullisら、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263、1987;およびErlich編、PCR Technology、(Stockton Press、NY、1989)に記載されている。ポリヌクレオチドはまた、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーを、所望のポリヌクレオチドの配列から選択されるプローブを用いてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でスクリーニングすることによって単離することもできる。
【0140】
C末端エンドスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、自律複製性プラスミドもしくはウイルス内のベクターに組み込まれた、または原核生物もしくは真核生物ゲノムDNA内に組み込まれた、または他の配列とは独立して別の分子(例えば、cDNAなど)として存在する組換えDNAを含む。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの修飾された形態であってよい。この用語は、一本鎖形態および二本鎖形態のDNAを包含する。
【0141】
一部の実施形態では、S.cerevisiaeまたはKluyveromyces lactisなどの酵母における発現のためにベクターを使用する。構成的プロモーターである原形質膜H-ATPアーゼ(PMA1)、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GPD)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK1)、アルコールデヒドロゲナーゼ-1(ADH1)、および多面発現性薬物耐性ポンプ(PDR5)などのいくつかのプロモーターが、酵母発現系において使用されることが公知である。さらに、GAL1-10(ガラクトースによって誘導される)、PHO5(低細胞外無機リン酸によって誘導される)、およびタンデム熱ショックHSEエレメント(37℃までの温度上昇によって誘導される)などの多くの誘導性プロモーターが使用される。力価測定可能な誘導因子に応答して変動する発現を導くプロモーターとしては、メチオニン応答性MET3およびMET25プロモーターならびに銅依存性CUP1プロモーターが挙げられる。これら
のプロモーターはいずれも、多コピー(2μ)または単一コピー(CEN)プラスミドにクローニングして、発現レベルの調節においてさらなるレベルをもたらすことができる。プラスミドは、酵母における選択のための栄養マーカー(例えば、URA3、ADE3、HIS1、およびその他など)ならびに細菌における繁殖のための抗生物質耐性(AMP)を含んでよい。K.lactisにおける発現のためのプラスミド、例えばpKLAC1などが公知である。したがって、一例では、細菌における増幅後、プラスミドを、細菌形質転換と同様の方法により、対応する酵母栄養要求株に導入することができる。ポリヌクレオチドはまた、昆虫細胞における発現用にデザインすることもできる。
【0142】
C末端エンドスタチンポリペプチドは、種々の酵母株において発現させることができる。例えば、7種の多面的薬物耐性輸送体、YOR1、SNQ2、PDR5、YCF1、PDR10、PDR11、およびPDR15を、それらの活性化転写因子であるPDR1およびPDR3と共に、酵母宿主細胞において同時に欠失させ、それにより、得られる株を薬物に対して感受性にする。原形質膜の脂質組成が変化した酵母株、例えば、エルゴステロール生合成に欠陥のあるerg6突然変異体なども利用することができる。タンパク質分解に対する感受性が高いタンパク質は、他の液胞型ヒドロラーゼの活性化を制御する主要液胞型エンドペプチダーゼ(master vacuolar endopeptidase)Pep4を欠く酵母において発現させることができる。対応するヌル突然変異体が生存不能である場合、遺伝子の温度感受性(ts)対立遺伝子を有する株における異種発現を使用することができる。
【0143】
本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドをコードするウイルスベクターを調製することもできる。ポリオーマ、SV40(Madzakら、1992、J.Gen.Virol.、73:15331536)、アデノウイルス(Berkner、1992、Cur.Top.Microbiol.Immunol.、158:39-6;Berlinerら、1988、Bio Techniques、6:616-629;Gorzigliaら、1992、J.Virol.、66:4407-4412;Quantinら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:2581-2584;Rosenfeldら、1992、Cell、68:143-155;Wilkinsonら、1992、Nucl.Acids Res.、20:2233-2239;Stratford-Perricaudetら、1990、Hum.Gene Ther.、1:241-256)、ワクシニアウイルス(Mackettら、1992、Biotechnology、24:495-499)、アデノ随伴ウイルス(Muzyczka、1992、Curr.Top.Microbiol.Immunol.158:91-123;Onら、1990、Gene、89:279-282)、HSVおよびEBVを含めたヘルペスウイルス(Margolskee、1992、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、158:67-90;Johnsonら、1992、J.Virol.、66:29522965;Finkら、1992、Hum.Gene Ther.3:11-19;Breakfieldら、1987、Mol.Neurobiol.、1:337-371;Fresseら、1990、Biochem.Pharmacol.40:2189-2199)、シンドビスウイルス(Herweijerら、1995、Human Gene Therapy 6:1161-1167;米国特許第5,091,309号および同第5,217,879号)、アルファウイルス(Schlesinger、1993、Trends Biotechnol.11:18-22;Frolovら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11371-11377)ならびにトリ起源のレトロウイルス(Brandyopadhyayら、1984、Mol.Cell Biol.、4:749-754;Petropouplosら、1992、J.Virol.、66:3391-3397)マウス起源のレトロウイルス(Miller、1992、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、158:1-24;Millerら、19
85、Mol.Cell Biol.、5:431-437;Sorgeら、1984、Mol.Cell Biol.、4:1730-1737;Mannら、1985、J.Virol.、54:401-407)、およびヒト起源のレトロウイルス(Pageら、1990、J.Virol.、64:5370-5276;Buchschalcherら、1992、J.Virol.、66:2731-2739)を含めたいくつものウイルスベクターが構築されている。バキュロウイルス(Autographa californica多核多核体病ウイルス;AcMNPV)ベクターも当技術分野で公知であり、商業的な供給源(例えば、PharMingen、San Diego、Calif.;Protein Sciences Corp.、Meriden、Conn.;Stratagene、La Jolla、Calif.)などから入手することができる。
【0144】
したがって、一部の実施形態では、C末端エンドスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをウイルスベクターに含める。適切なベクターとしては、レトロウイルスベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびポリオウイルスベクターが挙げられる。具体的な例示的ベクターは、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルスおよび高度に減弱したワクシニアウイルス(MVA)などのポックスウイルスベクター、アデノウイルス、バキュロウイルスなどである。
【0145】
使用されるポックスウイルスとしては、オルソポックスウイルス、スイポックスウイルス、アビポックスウイルス、およびカプリポックスウイルスが挙げられる。オルソポックスとしては、ワクシニア、エクトロメリア、およびアライグマポックスが挙げられる。使用されるオルソポックスの1つの例は、ワクシニアである。アビポックスとしては、鶏痘、カナリアポックスおよび鳩痘が挙げられる。カプリポックスとしては、山羊痘および羊痘が挙げられる。一例では、スイポックスは、豚痘である。発現用のポックスウイルスベクターの例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,165,460号に記載されている。使用することができる他のウイルスベクターとしては、ヘルペスウイルスおよびアデノウイルスなどの他のDNAウイルス、ならびにレトロウイルスおよびポリオなどのRNAウイルスが挙げられる。
【0146】
適切なベクターは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,998,252号において開示されている。一例では、組換えワクシニアウイルスなどの組換えポックスウイルスを、C末端エンドスタチンポリペプチドをコードする、天然では隣接ワクシニア調節DNA配列と連続していないDNA配列と隣接したワクシニア調節配列またはそれと機能的に等価のDNA配列を含有するキメラ遺伝子を挿入することによって合成的に改変する。そのようなキメラ遺伝子を含有する組換えウイルスは、C末端エンドスタチンポリペプチドを発現させるのに有効である。一例では、ワクチンウイルスベクターは、(A)(i)C末端エンドスタチンポリペプチドをコードする第1のDNA配列および(ii)C末端エンドスタチンポリペプチドをコードするDNA配列に近接し、それに対して転写制御を及ぼすものであり、前記セグメントに隣接するポックスウイルスプロモーターで構成されるセグメント、(B)ポックスウイルスゲノムの必須でない領域に由来するDNAを含む。ウイルスベクターは、選択マーカーをコードし得る。一例では、ポックスウイルスは、例えば、チミジンキナーゼ遺伝子を含む(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,998,252号を参照されたい)。
【0147】
C末端エンドスタチンポリペプチドをコードするポックスウイルスベクターは、C末端エンドスタチンポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結した少なくとも1つ
の発現制御エレメントを含む。発現制御エレメントは、核酸配列の発現を制御および調節するためにポックスウイルスベクターに挿入される。これらのベクターにおいて使用される発現制御エレメントの例としては、これだけに限定されないが、lac系、ファージラムダのオペレーター領域およびプロモーター領域、酵母プロモーターおよびポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルスまたはSV40が挙げられる。追加的な作動可能なエレメントとしては、これだけに限定されないが、宿主系におけるC末端エンドスタチンポリペプチドをコードする核酸配列の適切な転写およびその後の翻訳に必要なリーダー配列、終結コドン、ポリアデニル化シグナルおよび任意の他の配列が挙げられる。発現ベクターは、核酸配列を含有する発現ベクターの宿主系への移入およびその後の複製に必要な追加的なエレメントを含有し得る。そのようなエレメントの例としては、これだけに限定されないが、複製開始点および選択マーカーが挙げられる。そのようなベクターは従来の方法(Ausubelら、(1987)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、New York、N.Y.)を使用して容易に構築され、また、市販されていることも当業者には理解されよう。
【0148】
C末端エンドスタチンポリペプチドをコードする異種DNA配列を含有する組換えDNAウイルスを調製するための基本的な技法は、当技術分野で公知である。そのような技法は、例えば、ドナープラスミド内のDNA配列に隣接するウイルスDNA配列と親ウイルス内に存在する相同な配列の間の相同組換えを伴う(Mackettら、1982、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:7415-7419)。特に、ポックスウイルスベクターなどの組換えウイルスベクターを遺伝子の送達に使用することができる。ベクターは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,093,258号に記載されている鶏痘ウイルスの合成組換え体を創出するための方法と類似したステップなどの当技術分野で公知のステップによって構築することができる。他の技法は、親ウイルスベクター内に天然に存在するまたは人工的に挿入された独特の制限エンドヌクレアーゼ部位を使用して異種DNAを挿入することを含む。
【0149】
C末端エンドスタチンポリペプチドをコードするDNA配列は、適切な宿主細胞にDNAを移入することによってin vitroで発現させることができる。細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。この用語は、対象とする宿主細胞の任意の後代も包含する。複製の間に突然変異が起こり得るので、全ての後代が親細胞と同一ではない可能性があることが理解される。安定に移入する、つまり、外来DNAを宿主内で連続的に維持する方法は、当技術分野で公知である。
【0150】
上記の通り、C末端エンドスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、発現制御配列に作動可能に連結することができる。コード配列に作動可能に連結される発現制御配列は、発現制御配列に適合する条件下でコード配列の発現が実現されるようにライゲーションされる。発現制御配列としては、これだけに限定されないが、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードする遺伝子の前の開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、その遺伝子の、mRNAの適切な翻訳を可能にする正確な読み枠の維持、および終止コドンが挙げられる。
【0151】
宿主細胞としては、微生物宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞および哺乳動物宿主細胞を挙げることができる。
【0152】
真核生物配列またはウイルス配列を有するDNA配列を原核生物において発現させる方法は当技術分野で周知である。適切な宿主細胞の非限定的な例としては、細菌、古細菌、昆虫、真菌(例えば、酵母)、植物、および動物細胞(例えば、ヒトなどの哺乳動物細胞
)が挙げられる。使用される例示的な細胞としては、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Saccharomyces cerevisiae、Salmonella typhimurium、Sf9細胞、C129細胞、293細胞、Neurospora、および不死化哺乳動物骨髄系細胞株およびリンパ系細胞株が挙げられる。哺乳動物細胞を培養物中で繁殖させるための技法は周知である(JakobyおよびPastan(編)、1979、Cell Culture.Methods in Enzymology、volume 58、Academic Press,Inc.、Harcourt Brace Jovanovich、N.Y.を参照されたい)。一般に使用される哺乳動物宿主細胞株の例としては、VEROおよびHeLa細胞、CHO細胞、ならびにWI38、BHK、およびCOS細胞株があるが、より高い発現、望ましいグリコシル化パターン、または他の特徴がもたらされるようにデザインされた細胞などの細胞株を使用することができる。上記の通り、ポリエチレングリコール形質転換、プロトプラスト形質転換および遺伝子銃などの、酵母細胞を形質転換するための技法も当技術分野で公知である(GietzおよびWoods、Meth Enzymol 350:87-96、2002を参照されたい)。
【0153】
組換えDNAを用いた宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来の技法によって行うことができる。宿主が、例えば、これだけに限定されないが、E.coliなどの原核生物である場合、DNAを取り込むことが可能なコンピテント細胞は、当技術分野で周知の手順を使用して指数関数的成長相後に採取し、その後、CaCl方法によって処理した細胞から調製することができる。あるいは、MgClまたはRbClを使用することができる。形質転換は、所望であれば、宿主細胞のプロトプラストを形成した後に、またはエレクトロポレーションによって実施することもできる。
【0154】
宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈、リポソームに入れたプラスミドの微量注射、エレクトロポレーション、挿入などの従来の機械的手順、またはウイルスベクターのなどのDNAのトランスフェクション方法を使用することができる。真核細胞は、C末端エンドスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列および単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子などの選択可能な表現型をコードする第2の外来DNA分子を用いて同時形質転換することもできる。別の方法は、シミアンウイルス40(SV40)またはウシパピローマウイルスなどの真核生物ウイルスベクターを使用して真核細胞を一過性に感染させるまたは形質転換し、タンパク質を発現させることである(例えば、Eukaryotic Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、Gluzman編、1982)を参照されたい。
【0155】
エンドスタチン断片およびバリアントは、植物において産生させることもできる。例えば、ポリペプチドを、例えば、米国特許第7,491,509号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている通り、IBIOLAUNCH(商標)遺伝子発現プラットフォーム(iBio,Inc.、Newark、DE)を使用して植物において発現させることができる。IBIOLAUNCH(商標)プラットフォームを使用して、非トランスジェニック植物体において高レベルの標的タンパク質を産生させることができる。このプラットフォームには、動物細胞または微生物を利用する利用する方法と比較して、また、トランスジェニック植物を必要とする系と比較して、利点があり得る。
【0156】
この系を使用するために、所望の遺伝子をIBIOLAUNCH(商標)ベクターにクローニングし、これを、植物の葉に導入する(例えば、自動真空浸潤によって)。次の4~7日間にわたってベクターを幹および葉の細胞に拡散させ、そこで所望のタンパク質を非常に高レベルで発現させる。次いで、緑色植物性材料を採取し、タンパク質産物を精製する。同じ設備で新しい植物作物を用いて異なるタンパク質についてIBIOLAUNCH(商標)遺伝子発現プロセス全体を繰り返すことができ、これにより、この技術がタン
パク質薬物およびワクチンを作製するための最も柔軟かつ高速なやり方になっている。
【0157】
植物における発現ベクター系は、1つまたは複数のウイルスベクター構成成分を含み得る。種々の植物種に感染し、ポリヌクレオチドの発現に使用することができる多種多様なウイルスが公知である。植物に感染するウイルスの科としては、限定することなく、Tobamoviridae、Caulimoviridae(dsDNA)、Geminiviridae(ssDNA)、ReoviridaeおよびPartitiviridae(dsRNA)、およびRhabdoviridae、Bunyaviridae、Bromoviridae、およびComoviridae(ssRNA)が挙げられる。さらなる情報は、例えば、1995その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる「The Classification and Nomenclature of Viruses,Sixth Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses」(Murphyら編)、Springer Verlag:New York(Griersonら、Plant Molecular Biology、Blackie、London、126~146頁、1984;Gluzmanら、Communications in
Molecular Biology:Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、NY、172~189頁、1988;およびMathew、Plant Viruses Onlineも参照されたい)において見いだすことができる。
【0158】
局所(葉内)感染または全身感染のいずれかを首尾よく確立するために、ウイルスは、複製可能でなければならない。多くのウイルスは、複製プロセスに関与する1種または複数種のタンパク質(本明細書では、複製タンパク質またはレプリカーゼタンパク質と称される)をコードする遺伝子を含有する。例えば、多くのRNA植物ウイルスは、RNAポリメラーゼをコードする。ヘリカーゼまたはメチルトランスフェラーゼタンパク質(1つまたは複数)などの追加的なタンパク質も必要になり得る。ウイルスゲノムは、複製タンパク質をコードする機能的遺伝子に加えて、同様に複製のために必要であるまたは複製を容易にする種々の配列構成成分を含有し得る。
【0159】
植物に感染する任意のウイルスを使用して、本明細書に記載の方法に従ってウイルスベクターまたはベクター系を調製することができる。ssRNAウイルス、特に(+)鎖ゲノムを有するものが特に有用であり得る。そのようなウイルス内に存在する遺伝子材料を操作するための技法および試薬としては、当技術分野で周知のものが挙げられる。一般には、例えば、ウイルスゲノムのDNAコピーを調製し、微生物ベクター(例えば、細菌ベクター)にクローニングする。ジェミニウイルスを含めたある特定のssDNAウイルスが特に有用である。一般に、ベクターおよびウイルスゲノムはRNAまたはDNAの形態で存在し得ることが理解されよう。さらに、DNAベクター内に存在するRNAウイルスのゲノムまたはその一部などの特徴を参照する場合、特徴はRNA形態のDNAコピーとして存在することが理解されるべきである。
【0160】
いくつもの異なる型のウイルスを使用することができる。適切なウイルスとしては、例えば、Bromoviridaeのメンバー(例えば、ブロモウイルス、アルファモウイルス、イラルウイルス)およびTobamoviridaeのメンバーが挙げられる。有用なウイルス種としては、例えば、アルファルファモザイクウイルス(AlMV)、リンゴクロロティックリーフスポットウイルス、リンゴステムグルービングウイルス、ムギ斑葉モザイクウイルス、オオムギ黄化萎縮ウイルス、ビート萎黄ウイルス、ソラマメモットルウイルス、ソラマメウイルトウイルス、ブロムモザイクウイルス(BMV)、カーネーション潜在ウイルス、カーネーションモザイクウイルス、カーネーションリングスポットウイルス、ニンジンモットルウイルス、キャッサバ潜在ウイルス(CLV)、ササゲクロ
ロティックモットルウイルス、ササゲモザイクウイルス(CPMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、レタス伝染性黄斑ウイルス、トウモロコシクロロティックモットルウイルス、トウモロコシラヤドフィノウイルス、トウモロコシ縞葉枯病ウイルス(MSV)、パースニップ黄斑ウイルス、エンドウひだ葉モザイクウイルス、ジャガイモXウイルス、ジャガイモウイルスY、ラズベリー黄化ウイルス、イネ壊死ウイルス(RNV)、イネ縞葉枯ウイルス、イネツングロ球状ウイルス、ドクムギモザイクウイルス、土壌感染性ムギ類萎縮ウイルス、インゲンマメ南部モザイクウイルス、タバコエッチ病ウイルス(TEV)、タバコモザイクウイルス(TMV)、タバコ壊死ウイルス、タバコ茎壊疽ウイルス、タバコリングスポットウイルス、トマトブッシースタントウイルス、トマトゴールデンモザイクウイルス(TGMV)、およびカブ黄斑モザイクウイルス(TYMV)が挙げられる。
【0161】
これらの植物ウイルスのエレメントを公知の技法(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning、第2版、Cold Spring Harbor Press、NY、1989;Cloverら、Molecular Cloning、IRL Press、Oxford、1985;Dasonら、Virology、172:285-292、1989;Takamatsuら、EMBO J.6:307-311、1987;Frenchら、Science 231:1294-1297、1986;Takamatsuら、FEBS Lett.269:73-76、1990;YusibovおよびLoesch-Fries、Virology、208(1):405-7、1995;およびSpitsinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96(5):2549-53、1999を参照されたい)に従って遺伝子操作して、本明細書で提示されるエンドスタチンポリペプチドを含めた目的のポリペプチドの植物による産生に使用するためのウイルスベクターを生成する。少なくとも2種のベクターを使用し、その一方または両方が全身感染することができないものであるが、一緒になって、ベクターの少なくとも一方の全身感染を支持するために必要な全ての機能がもたらされ、植物体全体での目的のポリヌクレオチドの発現が可能になる。したがって、ウイルス構成成分はトランスで互いに補完しあって全身感染能をもたらすことができる。
【0162】
具体的には、産生体ベクターを調製する。このベクターは、関連する植物宿主における発現を導く調節配列の制御下で目的のポリヌクレオチド(例えば、エンドスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドをウイルスプロモーター、例えばCPプロモーターの制御下に配置する。例えば、天然ウイルスCP遺伝子を目的のポリヌクレオチドで置き換えることが望ましい場合がある。産生体ベクターは、全身移動に必要な1つまたは複数の構成成分を欠く。例えば、産生体ベクターは、機能的CP(例えば、CP遺伝子)の発現に十分な配列を含有しなくてもよいが、細胞間移動タンパク質をコードする遺伝子を含み得る。産生体ベクターは、シスで存在する場合にウイルスの拡散を容易にするためにシスで必要になり得る1種または複数種の配列エレメント(例えば、集合開始点(origin of assembly))を含有し得る。例えば、産生体ベクターは、産生ウイルスと同じ型のウイルスまたは別のウイルスのいずれかに由来する、CPの活性に必要であるまたはそれを容易にする集合開始点を含有し得る。そのような配列エレメントは、CPの認識部位を含み得る。他の実施形態では、産生体ベクターは、機能的MPおよび/またはレプリカーゼタンパク質の発現に十分な配列を欠き得る。これらの実施形態では、産生体ベクターは、機能的CPの発現に十分な配列を欠いてもよく欠いていなくてもよい。
【0163】
担体ベクターも調製する。このベクターは、産生体ベクターを補完し、その結果、産生体ベクターには欠けている、全身感染に必要な構成成分をもたらすものである。例えば、ある特定の担体ベクターは、機能的コートタンパク質をコードする構成成分を含む。これらの担体ベクターは、機能的コートタンパク質をコードする構成成分を欠く産生体ベクタ
ーを補完するのに適している。担体ベクターは、植物への全身感染を成功させるのに必要な少なくとも1つのウイルス構成成分(例えば、レプリカーゼまたは移動タンパク質をコードする遺伝子)が産生体ベクターには存在するのであれば、そのような構成成分を欠いてよい。担体ベクターは、目的のポリヌクレオチド(産生体ベクター内の目的のポリヌクレオチドと同じものであっても異なるものであってもよい)を含み得る。そのような場合では、組換え担体ベクターが非標的植物に拡散するのを最小限にするために、例えば、1つまたは複数の必要なシス作用性配列を欠くことが原因で全身感染に欠陥のある担体ベクターを使用することが望ましい。
【0164】
担体ベクターは、細胞間移動構成成分(例えば、細胞間移動タンパク質をコードする遺伝子または細胞間移動に必要な非コード構成成分)を含み得(しかし必要ではない)、かつ/または1つまたは複数のレプリカーゼタンパク質をコードする構成成分を欠き得る。担体ベクターが細胞間移動構成成分(例えば、機能的MPをコードする部分)を含まない実施形態では、そのような構成成分を産生体ベクターに含めるべきである。
【0165】
完全なベクターセットは、全身ウイルス感染および目的のポリヌクレオチドの発現を成功させるのに必要な全ての構成成分を含む。「構成成分」という用語は、タンパク質コード配列およびシス作用性配列(例えば、プロモーター、集合開始点、mRNAの非翻訳領域に対応する部分)などの非コード配列のどちらも含むものとする。異なるベクター、またはベクターエレメントは、異なる植物ウイルスに由来するものであってよい。実際、異なるウイルス特性(例えば、宿主域、プロモーター活性レベル、ビリオンの寸法など)を活用するために、異なるウイルスのエレメントからベクターを調製することが望ましい場合がある。
【0166】
一部の実施形態では、目的のポリヌクレオチド、レプリカーゼ遺伝子、および移動タンパク質遺伝子を含むが、機能的コートタンパク質をコードする構成成分を欠く産生体ベクターがもたらされ、コートタンパク質遺伝子を発現する担体ベクターがもたらされる。例えば、産生体ベクターは、TMV CPプロモーターの制御下でTMV CPコード配列が目的のポリヌクレオチドで置き換えられた、TMVに基づくベクターを含み得る。この産生体ベクターは、全身的に移動することができない。野生型AlMVベクターが担体ベクターとしての機能を果し得る。AlMVベクターは、機能的コートタンパク質をコードする構成成分を含有する。産生体ベクターおよび担体ベクターの両方を同時感染させることにより、AlMVベクターCPコード配列からCPが産生されてTMVに基づくベクターが補完され、その結果、TMVに基づくベクターの全身移動、および最初に感染させたところではない葉におけるポリヌクレオチドの発現がもたらされる。あるいは、機能的CPコード配列および作動可能に連結したプロモーターが存在するのであれば、AlMV CPの発現に必要なもの以外の1つまたは複数のウイルス構成成分が除去されたAlMVに基づくベクター(例えば、機能的MPまたは複製タンパク質をコードする構成成分を欠く、AlMVに基づくベクター)を使用することができる。CPは、AlMVに由来するものであっても別のウイルスに由来するものであってもよい。
【0167】
一部の実施形態では、CPにより、担体ベクターの全身移動が可能になり、他の実施形態では、担体ベクターの全身移動を可能にするものではないが、産生体ベクターの全身移動を可能にするCPが選択される。担体ベクターがAlMV CPの発現に必要なもの以外のウイルス構成成分のうちの1つまたは複数を欠くこれらの実施形態では、産生体ベクターにより担体ベクターを補完することができる。例えば、産生体ベクターにより、それぞれ担体ベクター(および、一部の場合では産生体ベクターも)の細胞間移動または複製を可能にする機能的MPまたはレプリカーゼタンパク質コード配列などの構成成分を供給することができる。産生体または担体のいずれかが複製タンパク質をコードする構成成分(例えば、機能的RNAポリメラーゼをコードする構成成分)を欠き、他のベクター(そ
れぞれ担体または産生体)により、欠けている構成成分が供給される場合、多くの場合、複製機能の有効なトランス補完を実現するために、機能的複製構成成分を供給するベクターに由来するプロモーター(例えば、ゲノムプロモーター)を、機能的複製タンパク質をコードする構成成分を欠くベクターに挿入することが望ましいことが理解されよう。
【0168】
有用なウイルスベクター系の別の例は、目的のポリヌクレオチドがAlMVベクターに挿入され、ネイティブなAlMV CPをコードする構成成分が置き換えられた産生体ベクターを含む。目的のポリヌクレオチドはAlMV CPプロモーターの制御下に配置される。この産生体ベクターは、CPを欠くので、全身感染することができないが、複製することができ、感染した葉の細胞間を移動することができる。この系は、AlMV CP
3’UTRを有するまたは有さない、AlMV CPをコードする部分がCMVベクターに挿入され、天然に存在するCMVのゲノムにおいて見いだされるCMV CPをコードする構成成分が置き換えられた、カリフラワーモザイクウイルス(CMV)に基づく担体ベクターも包含する。AlMV CPをコードする構成成分は、CMV CPプロモーターの制御下に配置される。このベクターは、AlMV CPを発現する。産生体ベクターと担体ベクターの同時感染により、CPを担体ベクターから発現させて、産生体ベクターが機能的CPをコードする構成成分を欠くことをトランス補完することが可能になり、それにより、産生体ベクターの全身移動が可能になる。AlMV CPにより、担体ベクターの全身移動も可能になる。
【0169】
一部の実施形態では、担体ベクターに由来するコード配列または非コード配列の一部を産生体ベクターに挿入することが望ましい場合があり、逆もまた同じである。例えば、ある特定の配列により、複製を増強するまたは細胞間または長距離の移動を容易にすることができる。特に、ある特定の配列は、ウイルス転写物とCP(例えば、集合開始点)の複合体の形成の認識部位としての機能を果たし得る。そのような場合では、第2のウイルスベクターからトランスにもたらされたCPを使用して第1のウイルスベクターの全身移動を実現する場合、CPの活性を容易にする第2のウイルスベクターを第1のウイルスベクターに挿入することが望ましい場合がある。そのような配列としては、例えば、ウイルス転写物3’UTRの一部または全部を挙げることができる。一部の場合では、AlMVのRNA3 3’UTRの一部または全部を、異なるウイルスベクター、例えば、TMVに基づくベクターに挿入する。この構成成分をTMVに基づくベクターに含めることにより、AlMV CPの、機能的TMV CPをコードする部分を欠くTMVに基づくベクターをトランス補完する能力が助長される。この一般的な原理を、トランス補完ベクター、例えば、トランス補完産生体ベクターおよび担体ベクター系を含む任意のウイルスベクター系に適用できることが理解されよう。
【0170】
当業者には理解される通り、ベクターセットが、全身ウイルス感染することができない(例えば、1種または複数種の機能的複製タンパク質、移動タンパク質、またはコートタンパク質をコードする構成成分を欠く)産生体ベクターと、産生体ベクターでは欠如している機能(1つまたは複数)をもたらす担体ベクターとを含む限りは、そのセットは、本明細書に記載の方法に従って使用するのに適する。一部の実施形態では、個々のベクターのいずれも全身ウイルス感染することができないが、セットとしては、ベクターの一方または両方がそのような感染および目的のポリヌクレオチドの発現にコンピテントになる。そのような系により、いくつもの利点がもたらされ得る。例えば、産生体ベクターが担体ベクターの不在下で植物に感染する場合、全身感染はもたらされないことが理解されよう。これにより、目的のポリヌクレオチドが、標的植物と同じ種であってさえ、意図されたものではない(非標的)植物において発現するリスクが減少する。特に、担体ベクターが複製または細胞間移動にコンピテントでない場合(複製または細胞間移動に必要な構成成分を欠くことが原因で)、または担体ベクターが全身感染にインコンピテントである場合(例えば、長距離の移動に必要である集合開始点などのシス作用性配列を欠くことが原因
で)、産生体ベクターと担体ベクターの両方が意図されたものではない植物宿主に同時感染する可能性が著しく減少する。
【0171】
一般に、ウイルスの機能を保存するため、および単に遺伝子操作のしやすさでも、ベクターは、既存の植物ウイルスゲノムを変化させることによって(例えば、特定の遺伝子を除去することによって、および/または特定の配列を破壊もしくは置換してそれらを不活化するもしくは置き換えることによって)調製される。そのような状況では、ベクターは、天然ウイルスゲノムに対して非常に高い配列同一性を示す。当然、例えば、個々の所望の遺伝子エレメントを別々に単離し、それらを、場合によって追加的なエレメントを含めて連結し合わせることにより、完全に新規のベクターを調製することもできる。また、特定のベクターが、所与の遺伝子、タンパク質、または活性を欠く(例えば、産生体ベクターがコートタンパク質遺伝子を欠く)と言う場合には、ベクターが関連するコード配列を有してもよいが、それにもかかわらずそのようなタンパク質または活性のいずれも感染の条件下でベクターにより発現されなければ十分であることに留意するべきである。しかし、一般に、関連するコード配列をベクターから除去することが望ましい。
【0172】
類似して、ベクターが特定のタンパク質または活性を断定的に発現すると言う場合、関連する遺伝子が天然に見いだされる対応する遺伝子と同一である必要はない。例えば、時にはコートタンパク質に小さな欠失が許容され得ることが見いだされている(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO00/46350を参照されたい)。タンパク質が機能的である限りは、それを本明細書に記載の方法に従って使用することができる。しかし、一般に、天然のタンパク質に対して非常に高い配列同一性があることが最も有用であるとみなされる。例えば、大きな欠失(例えば、約25アミノ酸超)は、一般に、回避されるべきである。一般には、ウイルスタンパク質は、対応する天然ウイルスタンパク質に対して少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)の配列同一性を示す。より詳細には、ウイルスタンパク質は、一般には、関連する天然ウイルスタンパク質の重大な機能性部分(一般には、少なくともいくつかのアミノ酸、多くの場合、少なくとも10アミノ酸、20アミノ酸、30アミノ酸、40アミノ酸、50アミノ酸または以上)に対して100%の同一性を有するべきである。
【0173】
多くのタンパク質の場合に、機能活性、および/または、安定性などのタンパク質の種々の他の性質などに有意に影響を及ぼさない、いくつものアミノ酸の変化をなすことができることに留意する。特に、多くのタンパク質で、活性の有意な低下を伴わない保存的アミノ酸の変化-アミノ酸の、同様の性質を有する異なるアミノ酸での置換が許容される。保存的アミノ酸置換は、当技術分野で周知であり、アミノ酸配列を変更しながら、所与のポリペプチドと類似したまたは実質的に類似した性質を有するポリペプチドを得るための1つの手法である。一般に、アミノ酸は、(1)電荷(正、負、または非荷電);(2)体積および極性;(3)グランサムの物理化学的距離;ならびにこれらの組合せに応じた群に分類され、分けられている。例えば、Zhang、J.Mol.Evol.、50:56-68、2000;Grantham、Science、85:862-864、1974;Daganら、Mol.Biol.Evol.、19(7)、1022-1025、2002;Biochemistry、第4版、Stryerら、W.Freeman and Co.、1995;および米国特許第6,015,692号を参照されたい。例えば、アミノ酸は、体積および極性に基づいて以下のカテゴリーに分けることができる:特別(C);中性であり、小さい(A、G、P、S、T);極性であり、比較的小さい(N、D、Q、E)、極性であり、比較的大きい(R、H、K)、非極性であり、比較的小さい(I、L、M、V)、および非極性であり、比較的大きい(F、W、Y)。保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を同じ群のアミノ酸で置き換える置換と定義することができる。したがって、所与のウイルスタンパク質において1つまたは複数の保存的アミ
ノ酸置換を行うことにより、種々の機能的に等価のタンパク質を得ることができる。
【0174】
ウイルスに感染しやすい任意の植物を本明細書に記載の方法に従って利用することができる。一般に、多くの場合、定義済みの条件下、例えば、温室および/または水性系における成長に適した植物を利用することが望ましい。発現したポリヌクレオチドが望ましくなく経口摂取される可能性があるという懸念を伴わずに成長させることができるように、一般にはヒトまたは家畜動物により消費されず、かつ/または一般にはヒト食物鎖の一部ではない植物を選択することも望ましい。しかし、他の実施形態では、食用植物を使用することが望ましい。
【0175】
多くの場合、ある特定の望ましい植物特性は、発現させる特定のポリヌクレオチドによって決定される。いくつか例を挙げると、ポリヌクレオチドが、高収率で産生させるタンパク質をコードする場合(多くの場合、例えば、治療用タンパク質を発現させる場合)、多くの場合、比較的高いバイオマスを有する植物(例えば、ウイルスに高度に感染しやすく、成長期間が短く、また、ヒト食物鎖の中に入っていない、さらなる利点を有するタバコ)を選択することが望ましい。ポリヌクレオチドが、完全な活性に特定の翻訳後修飾が必要である(またはそれによって阻害される)タンパク質をコードする場合、ある特定の植物種に、関連する修飾(例えば、特定のグリコシル化)を実現することができること(またはできないこと)により、選択が導かれ得る。
【0176】
一部の実施形態では、作物植物、または作物関連植物を利用する。一部の実施形態では、食用植物を利用する。
【0177】
本明細書に記載の方法に従って使用するのに適した植物としては、限定することなく、被子植物、コケ植物(例えば、Hepaticae、Musciなど)、シダ植物(例えば、シダ類、トクサ類、ヒカゲノカズラ類)、裸子植物(例えば、針葉樹、cycas、Ginko、Gnetales)、および藻類(例えば、Chlorophyceae、Phaeophyceae、Rhodophyceae、Myxophyceae、Xanthophyceae、およびEuglenophyceae)が挙げられる。一部の実施形態では、Leguminosae科(Fabaceae科のメンバー;例えば、エンドウマメ、アルファルファ、ダイズ);Gramineae科(Poaceae科のメンバー;例えば、トウモロコシ、コムギ、イネ);Solanaceae科、特にLycopersicon属のメンバー(例えば、トマト)、Solanum属のメンバー(例えば、ジャガイモ、ナス)、Capsium属のメンバー(例えば、コショウ)、またはNicotiana属のメンバー(例えば、タバコ);Umbelliferae科、特にDaucus属のメンバー(例えば、ニンジン)、Apium属のメンバー(例えば、セロリ)、またはRutaceae属のメンバー(例えば、オレンジ);Compositae科のメンバー、特にLactuca属のメンバー(例えば、レタス);およびBrassicaceae(Cruciferae)科、特にBrassicaまたはSinapis属のメンバーが特に有用であり得る。例えば、有用なBrassicaceae科のメンバーとしては、Brassica campestris、B.carinata、B.juncea、B.napus、B.nigra、B.oleraceae、B.tournifortii、Sinapis alba、およびRaphanus sativusが挙げられる。
【0178】
例えば、成熟植物、実生、芽、および種子を含めた任意の発生段階にある植物において、発現系を使用してポリヌクレオチドを感染させることおよび/または発現させることができる。発現系を使用して植物の任意の一部分(例えば、根、葉、幹など)を感染させることができる。一部の実施形態では、発現系を使用して芽を感染させる。一般に、植物は、正常な発芽温度を実現するのに必要なものを超える、光または熱の形態での外部の栄養
分またはエネルギーを必要としない実生であれば、芽であるとみなされる。多くの場合、2週齢未満、および一般には10日齢未満の実生が芽とみなされる。
【0179】
一般に、ウイルスベクターは、公知の技法に従って植物に送達することができる。例えば、ベクター自体を植物に直接適用することができる(例えば、擦傷接種(abrasive inoculation)、機械化噴霧接種、真空浸潤、粒子衝撃、またはエレクトロポレーションによって)。あるいは、ビリオンを調製し(例えば、すでに感染した植物から)、公知の技法に従って他の植物に適用することができる。
【0180】
上記の通り、一部の実施形態では、ウイルスベクターを芽に適用する(例えば、浸潤または機械的接種[噴霧]によって)。
【0181】
ウイルスゲノムを植物に直接適用することによって感染を実現させる場合、任意の利用可能な技法を使用してゲノムを調製することができる。例えば、本明細書に記載の方法に従って有用に使用される多くのウイルスは、ssRNAゲノムを有する。ssRNAは、ゲノムのDNAコピーの転写によって、またはin vivoもしくはin vitroのいずれかにおけるRNAコピーの複製によって調製することができる。使いやすいin
vitro転写系(例えば、SP6、T7、網状赤血球溶解物など)の容易な利用可能性、および同じくRNAベクターのDNAコピーを維持することの利便性を考慮すると、ssRNAベクターは、多くの場合、特にT7またはSP6ポリメラーゼを用いたin vitro転写によって調製されることが予想される。
【0182】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチド発現産物を、それらを発現する植物組織から単離することが望ましい。そのような単離された産物を、それらの意図された使用(例えば、医薬品または診断剤として、試薬としてなど)のために製剤化することが望ましい場合もある。他の実施形態では、産物を、それらを発現する植物組織の一部または全部と共に製剤化することが望ましい。
【0183】
発現産物を、それを発現する植物組織の一部または全部から単離するために、任意の利用可能な精製技法を使用することができる。当業者は、広範囲の分画および分離手順に詳しい(例えば、Scopesら、Protein Purification:Principles and Practice、第3版、Jansonら、「Protein
Purification:Principles、High Resolution
Methods、and Applications」、Wiley-VCH、1998;Springer-Verlag、NY、1993;およびRoe、Protein
Purification Techniques、Oxford University Press、2001、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。多くの場合、産物を約50%、好ましくは約60%超、約70%超、約80%超、約85%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、または約99%超純粋なものにすることが望ましい。
【0184】
産物を植物性材料と共に製剤化するためには、多くの場合、関連するレシピエント(例えば、ヒトまたは他の動物)に対して毒性ではない植物が利用されていることが望ましい。関連する植物組織(例えば、葉)を単に採取し、発現産物の活性の維持を考慮した上で、当技術分野で公知の技法に従って処理することができる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドを、食用植物(特に植物の食用部分)において発現させることができ、その結果、その材料をその後食することができる。例えば、ポリヌクレオチドが、経口送達後に活性になる(適正に製剤化されている場合)栄養的に関連するタンパク質または治療用タンパク質をコードする場合、食用植物部分でタンパク質を産生させること、および、発現
したポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチドが発現された植物性材料の一部または全部と共に経口送達するために製剤化することが有用であり得る。
【0185】
ポリヌクレオチドが治療剤をコードするまたは産生するものである場合、公知の技法に従って製剤化することができる。例えば、有効量の医薬的に活性な産物を、1種または複数種の有機または無機の液体または固体の医薬的に適切な担体材料と共に製剤化することができる。医薬的に活性な産物は、タンパク質の生物活性が破壊されない限りは、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、溶液、カプセル剤、クリーム剤、軟膏剤、エアロゾル、分包散剤、溶液、溶媒、希釈剤、表面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、および固体結合などの剤形で使用することができる。
【0186】
医薬的に許容される担体としての機能を果し得る材料としては、これだけに限定されないが、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末化トラガント;モルト;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび坐薬ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張性の生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の無毒性適合する滑沢剤、ならびに着色料、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および香料、防腐剤が挙げられ、また、配合者の判断に従って、抗酸化剤も組成物中に存在してよい(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、E.W.Martin、Mack Publishing Co.、Easton PA、1975も参照されたい)。例えば、ポリヌクレオチド発現産物は、従来の混合造粒糖剤形成、溶解、凍結乾燥、または同様のプロセスにより、医薬組成物としてもたらすことができる。
【0187】
一部の実施形態では、皮下注射または筋肉内注射された医薬的に活性な産物(例えば、タンパク質)の吸収を遅らせることによって医薬調製物の効果を延長することが有用であり得る。これは、難水溶性の結晶性材料または非結晶性材料の液体懸濁液を使用することによって実現することができる。そのとき、産物の吸収速度はその溶解速度に左右され、それが今度はサイズおよび形態に左右され得る。あるいは、非経口的に投与された産物の遅延吸収は、産物を油状ビヒクル中に溶解または懸濁させることによって実現される。注射可能なデポ剤の形態は、ポリ乳酸-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中にタンパク質の微小封入マトリックス(microencapsule matrices)を形成することによって作製される。産物とポリマーの比および使用する特定のポリマーの性質に応じて放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポ剤注射製剤は、産物を体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルション中に閉じ込めることによって調製することができる。
【0188】
腸溶性投与される、医薬的に活性な産物の調製物は、固体、半固体、懸濁液またはエマルションの形態で導入することができ、また、水、懸濁化剤、および乳化剤などの任意の医薬的に許容される担体と配合することができる。発現産物は、特に、対象における疾患の発生を予防するためまたはすでに確立された疾患を好転もしくは遅延させるために予防措置として投与する場合には、ポンプによってまたは持続放出の形態で投与することもできる。
【0189】
医薬的に活性な産物は、場合によって植物組織と共に、医薬組成物として経口投与するのに特によく適し得る。採取された植物性材料を所望の治療用産物の性質およびその所望の形態に応じて種々のやり方(例えば、風乾、フリーズドライ、抽出など)のいずれかで処理することができる。好ましい実施形態では、上記のそのような組成物は、単独で経口摂取されるまたは食物もしくは飼料もしくは飲料と共に経口摂取される。経口投与用の組成物は、感染植物;感染植物の抽出物、および、乾燥粉末、食糧、水性または非水性溶媒、懸濁液、またはエマルションとして提供される、感染植物から精製されたタンパク質を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、および注射可能な有機エステルである。水性担体としては、生理食塩水を含めた水、水-アルコール溶液、エマルションまたは懸濁液、および塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖溶液、デキストロースプラス塩化ナトリウム溶液、ラクトースまたは不揮発性油を含有するリンゲル液を含めた緩衝医療用非経口ビヒクルが挙げられる。乾燥粉末の例としては、乾燥させた、例えば、フリーズドライ、風乾、または噴霧乾燥した任意の感染植物バイオマスが挙げられる。例えば、植物を、市販の空気乾燥機に約120華氏温度で入れてバイオマスの水分含量が5重量%未満になるまで置くことによって風乾することができる。乾燥させた植物は、さらに処理するためにバルク固体として保管することもでき、粉砕して所望のメッシュサイズの粉末にすることによってさらに処理することもできる。あるいは、風乾に感受性である産物に対してはフリーズドライを使用することができる。産物を真空乾燥機に入れ、真空下でバイオマスの水分含量が約5重量%未満になるまで乾燥凍結させることによってフリーズドライすることができる。乾燥させた材料は、さらに処理することができる。
【0190】
感染植物は、1つまたは複数の薬草調製物として、またはそれと共に投与することができる。有用な薬草調製物としては液体薬草調製物および固体薬草調製物が挙げられる。薬草調製物の一部の例としては、チンキ、抽出物(例えば、水性抽出物、アルコール抽出物)、浸出液、乾燥調製物(例えば、風乾、噴霧乾燥、凍結、またはフリーズドライしたもの)、粉末(例えば、凍結乾燥粉末)、および液体が挙げられる。薬草調製物は、例えば、カプセル剤、錠剤、坐薬、液剤など、任意の標準の送達ビヒクルに入れた状態で提供することができる。適用することができる薬草調製物の種々の製剤および送達のモダリティは当業者には理解されよう。
【0191】
所望の医薬的に活性な産物を抽出によって得るための特に有用な方法も当業者には理解されよう。感染植物を抽出して、残留するバイオマスから所望の産物を取り出し、それにより、産物の濃度および純度を増大させることができる。植物を緩衝溶液中で抽出することもできる。
【0192】
例えば、新しく採取した植物を、ある量の、例えばリン酸緩衝液を用いて緩衝させた氷冷水中に1:1の重量比で入れることができる。必要に応じてプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。植物を、緩衝溶液中に懸濁させながら活発に混合することまたは粉砕することによって破壊し、抽出されたバイオマスを濾過または遠心分離によって除去することができる。溶液中に保持される導入遺伝子産物を、追加的なステップによってさらに精製することもでき、フリーズドライまたは沈殿によって乾燥粉末に変換することもできる。抽出は、圧搾によって行うこともできる。生植物を圧搾器で圧搾することによってまたは密接な間隔のローラーを通過させて押しつぶすことによって抽出することもできる。押しつぶされた植物から搾り出された流体を収集し、当技術分野で周知の方法に従って処理する。圧搾による抽出により、産物をより濃縮された形態で放出させることが可能になる。しかし、産物の全体的な収率は、産物を溶液中で抽出する場合よりも低い可能性がある。
【0193】
感染植物、抽出物、粉末、乾燥調製物および精製タンパク質産物などは、上記の1つま
たは複数の賦形剤を伴うまたは伴わない、カプセル封入された形態であってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング、制御放出コーティングおよび製剤の技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。そのような固体剤形では、活性な産物をショ糖、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1種の不活性な希釈剤と混和することができる。そのような剤形は、通常の慣例の通り、不活性な希釈剤以外の追加的な物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースなどの錠剤化滑沢剤および他の錠剤化補助剤も含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合では、剤形は、緩衝剤も含み得る。剤形は、場合によって乳白剤を含有し得、また、腸管のある特定の一部分に、場合によって遅延様式で、活性成分(1つまたは複数)のみが放出されるまたは優先的に放出される組成のものであり得る。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0194】
一部の実施形態では、医薬的に活性な産物を発現する感染植物、または感染植物のバイオマスを医薬食品として経口投与する。そのような食用組成物は、固体形態の場合には未加工で食べることによって、または液体の形態の場合には飲むことによって消費される。一部の実施形態では、トランスジェニック植物材料は、事前処理ステップを伴わずに、または最低限の調理調製後に直接摂取される。例えば、医薬的に活性なタンパク質を、直接食べることができる芽(例えば、アルファルファ芽、リョクトウ芽、またはホウレンソウまたはレタス葉芽)において発現させる。一部の実施形態では、植物バイオマスを処理し、処理ステップ後に回収された材料を摂取する。
【0195】
治療方法および医薬組成物
本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチド、またはC末端エンドスタチンポリペプチドをコードする核酸は、線維症を治療するために使用することができる。いくつかの例では、C末端エンドスタチンポリペプチド、またはこれらのポリペプチドをコードする核酸は、例えば対象における線維症を低減させるために使用される。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、線維症を低減させるために、治療有効量の本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドまたはこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのうちの1つまたは複数を対象に投与するステップを含む。一部の例では、C末端エンドスタチンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸133~180、配列番号4、配列番号13、または配列番号14を含む、またはそれからなる。しかし、本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドのいずれも、線維症を低減させるために使用することもできる。一部の実施形態では、ペプチドを単位用量として投与することができる。一部の実施形態では、ポリペプチドを多量体として投与する。
【0196】
適切な対象としては、皮膚または肺の線維症を有する対象が挙げられるが、任意の組織の線維症を、本明細書に開示されている方法を使用して治療することができる。一例では、対象は強皮症を有する。他の例では、対象は、特発性肺線維症、斑状強皮症、移植片対宿主病(GVHD)の結果としての線維症、ケロイドまたは肥厚性瘢痕、上皮下線維症、心内膜心筋線維症、子宮線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、腎性全身性線維症、外科手術後の瘢痕、喘息、硬変症/肝線維症、異常な創傷治癒、糸球体腎炎、および多巣性線維化硬化症を有する。
【0197】
さらなる例では、方法を使用して、限局性皮膚強皮症またはびまん性皮膚強皮症(または全身性硬化症)などの全身型の強皮症を治療する。方法を使用して、斑状強皮症および線状強皮症を含めた局在型の強皮症を治療することができる。
【0198】
方法は、治療を必要とする対象、例えば、強皮症、特発性肺線維症、斑状強皮症、ケロ
イド瘢痕、肥厚性瘢痕、または上皮下線維症などの線維化疾患を有する対象などを選択するステップを含み得る。例示的な適用では、組成物を、強皮症、特発性肺線維症、斑状強皮症、ケロイド瘢痕、肥厚性瘢痕、もしくは上皮下線維症などの線維化疾患、または上に列挙されている障害にいずれかを有する対象に、線維症を低減させるために十分な量で投与する。この使用に関する有効量は、疾患の重症度、患者の健康の一般状態、および患者の免疫系の頑強性に左右される。一例では、化合物の治療有効量は、症状(1つもしくは複数)の主観的な軽減または臨床医もしくは他の必要条件を満たした観察者により認められた客観的に同定可能な改善をもたらす量である。
【0199】
皮膚の厚さを減少させるための方法が本発明で提供される。方法は、治療有効量のC末端エンドスタチンポリペプチドを投与するステップを含み、それにより、皮膚の厚さを減少させる。別の実施形態では、肺線維症を低減させるための方法が提供される。方法は、治療有効量のC末端エンドスタチンポリペプチドを投与するステップを含み、それにより、皮膚の厚さを減少させる。本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドのいずれも、これらの方法において使用することができる。一部の実施形態では、C末端エンドスタチンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸133~180、配列番号4、配列番号13、または配列番号14を含む、またはそれからなる。
【0200】
形質転換増殖因子(TGF)-βによって誘導されるLOXなどのリシルオキシダーゼ(LOX)を減少させるための方法が本発明で提供される。方法は、細胞を有効量のC末端エンドスタチンポリペプチドに接触させるステップを含み、それにより、LOXを減少させる。方法は、in vivoまたはin vitroで実施することができる。一部の実施形態では、方法は、C末端エンドスタチンポリペプチドと接触させた細胞によって産生されるLOXの量を対照と比較するステップを含む。対照は、標準の値、または、担体と接触させた細胞などの、C末端エンドスタチンポリペプチドと接触させていない細胞によって産生されるLOXの量であってよい。
【0201】
マトリックスメタロプロテイナーゼ-2(MMP-2)を増加させるための方法が本発明で提供される。方法は、細胞を有効量のC末端エンドスタチンポリペプチドに接触させることを含み、それにより、MMP-2産生を増加させる。方法は、in vivoまたはin vitroで実施することができる。一部の実施形態では、方法は、C末端エンドスタチンポリペプチドと接触させた細胞によって産生されるMMP-2の量を対照と比較するステップを含む。対照は、標準の値、または、担体と接触させた細胞などの、C末端エンドスタチンポリペプチドと接触させていない細胞によって産生されるMMP-2の量であってよい。
【0202】
C末端エンドスタチンポリペプチドは、当業者に公知の任意の手段(Banga、「Parenteral Controlled Delivery of Therapeutic Peptides and Proteins」、Therapeutic Peptides and Proteins、Technomic Publishing Co.,Inc.、Lancaster、Pa.、1995を参照されたい)により、局所的にまたは全身的に、例えば、皮内注射、くも膜下腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射または静脈内注射によって投与することができるが、さらに経口投与、経鼻投与、経皮投与または肛門の投与が意図されている。一部の実施形態では、投与は、皮下注射、皮内注射、または筋肉内注射によるものである。別の実施形態では、投与は、腹腔内投与またはくも膜下腔内投与によるものである。応答を刺激するためにペプチドまたはタンパク質が利用可能な時間を延長するために、ペプチドまたはタンパク質を、埋め込み物、油性注射、または粒子系として提供することができる。粒子系は、微小粒子、マイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子、ナノカプセル、または同様の粒子であってよい(例えば、Banga、上記を参照されたい)。
【0203】
皮膚の治療に関しては、治療有効量の少なくとも1つのC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードする核酸を、例えば軟膏剤の形態などで、皮膚の患部に局所的に投与することができる。一部の実施形態では、軟膏剤は、皮膚への容易な適用に適した硬度を有する完全に均一な半固体の外用剤である。そのような軟膏剤は、脂肪、脂肪油、ラノリン、VASELINE(登録商標)、パラフィン、ワックス、硬軟膏剤、樹脂、プラスチック、グリコール、高級アルコール、グリセロール、水または乳化剤および懸濁化剤を有し得る。これらの成分を基剤として使用して、囮化合物を一様に混合することができる。基剤に応じて、混合物は、油性軟膏剤、乳化軟膏剤、または水溶性軟膏剤の形態であり得る。油性軟膏剤には、植物油および動物油および脂肪、ワックス、VASELINE(登録商標)および流動パラフィンなどの基剤が使用される。乳化軟膏剤は、油性物質および水で構成され、乳化剤を用いて乳化されたものである。乳化軟膏剤は、水中油の形態(O/W)または油中水の形態(W/O)のいずれかをとり得る。水中油の形態(O/W)は、親水性軟膏剤であり得る。油中水の形態(W/O)は、水相を最初に欠き、親水性VASELINE(登録商標)および精製ラノリンを含み得る、または、水吸収軟膏剤(水相を含む)および水和ラノリンを含有し得る。水溶性軟膏剤は、完全に水溶性のMacrogol基剤を主要な成分として含有し得る。
【0204】
医薬的に許容される担体としては、VASELINE(登録商標)などのペトロラタムが挙げられ、ここで、ペトロラタムは、5%ステアリルアルコールを含有するか、ペトロラタム単独であるか、または流動パラフィンを含有するペトロラタムである。そのような担体により、医薬組成物を、錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル剤、液体調製物、ゲル剤、軟膏剤、シロップ剤、スラリー剤、および懸濁液などの、消費に適した形態で処方することが可能になる。患部または目的の組織内の細胞に局所的に投与する場合、少なくとも1つのC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドを、合成または天然の親水性ポリマーを担体として含有する組成物として投与することができる。そのようなポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリエチレングリコールが挙げられる。1つまたは複数のC末端エンドスタチンポリペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、適切な溶媒中で親水性ポリマーと混合することができる。次いで、溶媒を風乾などの方法によって除去し、次いで、残りを所望の形態(例えば、シート)に形づくり、標的部位に適用する。そのような親水性ポリマーを含有する製剤は、水分含量が低いので長持ちする。使用時に、水を吸収させ、同じく長持ちするゲルにする。シートの場合では、多価アルコールを、セルロース、デンプンおよびその誘導体、または合成ポリマー化合物などの、上記のものと同様の親水性ポリマーと混合することによって硬度を調整することができる。したがって形成された親水性シートを使用することができる。治療有効量の1つまたは複数のC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドを絆創膏および包帯に組み入れることもできる。
【0205】
吸入による投与に関しては、C末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドを、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスなどの適切な噴射剤を使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾル噴霧剤提示の形態で都合よく送達することができる。加圧エアロゾルの場合では、定量を送達するための弁をもたらすことによって投薬単位を決定することができる。吸入器または吹き入れ器に使用するためのカプセルおよびカートリッジを、化合物の粉末混合物およびラクトースまたはデンプンなどの適切な散剤塩基を含有させて製剤化することができる。
【0206】
一部の実施形態では、例えば、これだけに限定されないが、E4などのC末端エンドスタチンポリペプチドを吸入によって投与することができる。例えば、C末端エンドスタチ
ンポリペプチドを、例えばネブライザーまたは定量噴霧式吸入器を使用して、エアロゾル化した形態で投与することができる。使用される技術としては、マイクロポンプネブライザー(例えば、AEROGEN GO(登録商標)システムなど)、大きな細かい粒子画分が生じるようにデザインされたジェットネブライザー(例えば、PARI LC STAR(登録商標)など)、微粒化の間に発生するせん断が少ないジェットネブライザー(例えば、HUDSON MICROMIST(登録商標)など)、および超音波ネブライザー(例えば、DeVilbiss ULTRA-NEB(登録商標)など)が挙げられる。
【0207】
エンドスタチンポリペプチドを生理食塩水などの担体に溶解させ、上記のデバイスを使用して微粒化することができる。付随するエアロゾルを、一連の空気力学的段階を使用してエアロゾルを液滴サイズに基づいて別々の画分に分離および収集するNEXT GENERATION IMPACTOR(登録商標)(NGI)(MSP Corp.、Shoreview、Minn.)を使用して収集することができる。液滴サイズは肺内の沈着位置の主要な決定因子であるので、このデバイスにより、小気道および肺胞に沈着する液体エアロゾルの部分を特異的に単離することが可能になる。
【0208】
エアロゾル粒子サイズは、多くの場合、粒子サイズ、形状、および密度に基づくパラメーターである空気動力学的中央粒子径(MMAD)を単位として表される。球状粒子に関しては、MMADはMMD(p1/2)と同等であり、ここで、MMDは質量中央径であり、rは容積密度である。非球状粒子に関しては、MMADはMMD(p/x)1/2と同等であり、ここで、Xは形状係数である。したがって、単位密度よりも大きな粒子の実際の直径はそれらのMMADよりも小さくなる。
【0209】
気道内の粒子沈着の部位は、粒子サイズに基づいて区分される。一例では、約1~約500ミクロンの粒子を利用し、例えば、約25~約250ミクロン、または約10~約25ミクロンを利用する。他の実施形態では、約1~50ミクロンの粒子を利用する。肺に投与するための定量噴霧式吸入器における使用に関しては、約10ミクロン未満の粒子、例えば約2~約8ミクロンなど、例えば約1~約5ミクロンなどの粒子、例えば2~3ミクロン粒子などを利用することができる。
【0210】
治療有効量のC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドを薬学的に許容される担体に入れた状態で投与することができる。医薬的に許容される担体(例えば、生理的または薬学的に許容される担体)は当技術分野で周知であり、それらとして、これだけに限定されないが、生理的pH(例えば、約7.0から約8.0までのpH、または約7.4のpH)の緩衝溶液が挙げられる。生理的に適合する緩衝溶液の具体的な非限定的な一例は、リン酸緩衝生理食塩水である。他の薬理学的に許容される担体としては、局部的に適用されること(例えば、治癒を促進するための手術創への適用)が意図されている医薬製剤に特に適する浸透剤が挙げられる。
【0211】
本明細書に開示されている薬理学的組成物により、線維症を低減するための、少なくとも1つのC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドのin vivoまたはex vivoのいずれかにおける使用が容易になる。そのような組成物は、任意の適切な対象への活性成分の送達に適するものであってよく、それ自体公知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、乳化、カプセル封入、閉じ込めまたは凍結乾燥プロセスによって製造することができる。薬理学的組成物は、1種または複数種の薬理学的に(例えば、生理的または医薬に)許容される担体、ならびに医薬的に使用することができる、活性化合物の調製物への加工を容易にする任意選択の助剤を使用して、従来の様式で製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与経路に左右される。したがって、注射用には、活性成分を水溶液に製剤化することができる。経粘膜投与
用には、関門を透過させるのに適した浸透剤を製剤に使用する。そのような浸透剤は、一般に、当技術分野で公知である。
【0212】
経口投与用には、治療有効量の少なくとも1つのC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードする核酸を、錠剤、ピル、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに組み入れるのに適した担体と組み合わせることができる。
【0213】
タンパク質薬は、消化管において、トリプシン、キモトリプシン、および刷子縁ペプチダーゼなどの酵素の作用によるプロテアーゼ媒介性分解を受け、したがって、大きなタンパク質分子の経口投与では、多くの場合、意図された治療効果がもたらされない(SolteroおよびEkwruibe、2001 Innovations in Pharmaceutical Technology、1:106-110)。驚いたことに、本明細書に記載のC末端エンドスタチンポリペプチドは、経口経路によって投与された場合であっても、その活性および治療効果を維持することができる。理論に束縛されることなく、本明細書に記載のC末端エンドスタチンポリペプチドは、プロテアーゼ活性から免れ、小腸に吸着し、循環中に進入して治療的利益をもたらすことを可能にするさらなる性質を含むと考えられる。
【0214】
一部の実施形態では、非経口投与に関して、治療有効量の少なくとも1つのC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードする核酸を注射によって、例えばボーラス注射または持続注入によって投与することができる。そのような組成物は、懸濁液、溶液または油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中のエマルションなどの形態をとってよく、また、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化用薬剤(formulatory agent)を含有してよい。他の薬理学的賦形剤は、当技術分野で公知である。
【0215】
場合によって、in vitro投与用であるかin vivo投与用であるかにかかわらず、少なくとも1つのC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドを、異種タンパク質、炭化水素または脂質中に含有させることまたはそれとコンジュゲートすることができる。同時投与は、少なくとも1つのC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドを、タンパク質、炭化水素、または脂質の前に、それと実質的に同時に、またはその後に投与するようなものであってよい。一部の実施形態では、少なくとも1つのC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドをタンパク質、炭化水素、または脂質と実質的に同時に投与する。
【0216】
他の送達系としては、持効放出、遅延放出または持続放出の送達系が挙げられる。そのような系により、上記の本発明の組成物の反復投与を回避することができ、それにより、対象および医師にとっての利便性が増す。多くの型の放出送達系が利用可能であり、当業者に公知である。それらとして、ポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリシュウ酸、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ酸無水物などのポリマーに基づく系が挙げられる。薬物を含有する前述のポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系としては、コレステロール、コレステロールエステルなどのステロールならびに脂肪酸またはモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドなどの中性脂肪を含む脂質などの非ポリマー系;ハイドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を使用した圧縮錠剤;部分的に融合した埋め込み物なども挙げられる。特定の例として、これだけに限定されないが、(a)少なくとも1つのC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドが、米国特許第4,452,775号;同第4,667,014号;同第4,748,034号;同第5,239,660号;および同第6,218,371号に記載さ
れているものなどのマトリックス中に入った形態で含有される浸食系、ならびに(b)活性構成成分が米国特許第3,832,253号および同第3,854,480号に記載されているものなどのポリマーから制御された速度で浸透する拡散系が挙げられる。さらに、ポンプに基づくハードウェア送達系を使用することができ、その一部は埋め込みに適している。
【0217】
強皮症などの慢性の状態を治療するためには長期間持続放出の埋め込み物の使用が特に適切であり得る。長期間放出とは、本明細書で使用される場合、埋め込み物を構築し、治療レベルの活性成分が少なくとも30日間、好ましくは60日間にわたって送達されるように配置することを意味する。長期間持続放出の埋め込み物は、当業者に周知であり、それらとして、上記の放出系のいくつかが挙げられる。これらの系は、オリゴデオキシヌクレオチドとの使用に関して記載されている(米国特許第6,218,371号を参照されたい)。in vivoでの使用に関しては、核酸およびペプチドは、分解(例えば、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼなどによるもの)に対して比較的抵抗性であることが好ましい。したがって、C末端アミドを含めることなどの修飾を使用することができる。
【0218】
C末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドの治療有効量は、利用されるC末端エンドスタチンポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチド、治療される対象、苦痛の重症度および型、ならびに投与様式に左右される。例えば、ペプチドをコードするポリヌクレオチドの治療有効量は、体重1キログラム(kg)当たり約0.01μgから体重1kg当たり約1gまで、例えば、体重1kg当たり約1μg~約5mg、または体重1kg当たり約5μg~約1mgなど、変動し得る。正確な用量は、当業者により、特定の化合物の効力、対象の年齢、重量、性別および生理的状態に基づいて容易に決定される。
【0219】
核酸の投与に関しては、核酸の投与の1つの手法は、例えば哺乳動物発現プラスミドを用いてなど、プラスミドDNAを用いて直接処理するものである。上記の通り、分子の発現を増大させるために、N末端エンドスタチンペプチドをコードするヌクレオチド配列をプロモーターの制御下に置くことができる。
【0220】
in vivoにおける投与のためにウイルスベクターを利用する場合、レシピエントに、哺乳動物1mg当たり約10~約1010プラーク形成単位の範囲の、組成物中の各組換えウイルスの投薬量もたらすことが望ましいが、より低い用量またはより高い用量を投与することができる。組換えウイルスベクターの組成物は、哺乳動物に、癌のいかなる証拠よりも前に、または、癌を患っている哺乳動物における疾患の退縮を媒介するために、導入することができる。組成物を哺乳動物に投与するための方法の例としては、これだけに限定されないが、細胞をex vivoで組換えウイルスに曝露させること、または組成物を患部組織に注射すること、またはウイルスを静脈内投与、皮下投与、皮内投与もしくは筋肉内投与することが挙げられる。あるいは、組換えウイルスベクターまたは組換えウイルスベクターの組合せを、医薬的に許容される担体に入れた状態で、癌性病変に直接注射することによって局所的に投与することができる。一般に、投与される1つまたは複数のC末端エンドスタチンポリペプチドの核酸配列を有する組換えウイルスベクターの分量は、ウイルス粒子の力価に基づく。投与される免疫原の例示的な範囲は、ヒトなどの哺乳動物当たりウイルス粒子10~1010個である。
【0221】
具体的な非限定的な一例では、静脈内投与用の医薬組成物は、1日当たり患者当たり約0.1μg~10mgのC末端エンドスタチンポリペプチドを含む。特に、薬剤を離れた部位に投与し、体腔中または臓器の内腔中などの循環系またはリンパ液系には投与しない場合、1日当たり患者当たり0.1mgから約100mgまでの投薬量を使用することが
できる。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は当業者には公知または明らかであり、また、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1995などの刊行物においてより詳細に記載されている。
【0222】
対象により必要性および耐容性が示される投薬量および頻度に応じて組成物の単回投与または複数回投与を行う。一部の実施形態では、投薬量を、ボーラスとして1回投与するが、別の実施形態では、治療結果が実現されるまで定期的に適用することができる。一般に、用量は、対象に対して許容されない毒性を生じさせることなく疾患の症状または徴候を治療するまたは好転させるために十分なものである。全身投与または局所投与を利用することができる。
【0223】
別の方法では、追加的な薬剤を投与する。一例では、この投与は逐次的なものである。他の例では、追加的な薬剤をC末端エンドスタチンポリペプチドと同時に投与する。
【0224】
強皮症の治療に関しては、C末端エンドスタチンポリペプチドと共に使用することができる追加的な薬剤の例としては、ニフェジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、フェロジピン、またはニカルジピンが挙げられる。治験薬GLEEVEC(登録商標)も強皮症の治療に使用される。GLEEVEC(登録商標)または他のチロシンキナーゼ阻害剤を本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドと共に使用することができる。肺が関与する強皮症の患者には、酸素療法が有益であり、本明細書に開示されているC末端エンドスタチンポリペプチドをこの療法と共に投与することができる。
【0225】
皮膚の線維症および強皮症の治療に関しては、使用される追加的な薬剤は、D-ペニシラミン、コルヒチン、レラキシン、ステロイド、およびシクロスポリンである。C末端エンドスタチンポリペプチドも免疫抑制剤と組み合わせて使用することができる。さらに、C末端エンドスタチンポリペプチドをメトトレキサート、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノレート、グリタゾン、エンドセリン受容体アンタゴニスト、またはフルベストラント(ICI-182,780)と共に使用することができる。
【0226】
以下の実施例において本発明がさらに説明され、これにより特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲は限定されない。
【実施例
【0227】
臓器線維芽細胞によるフィブロネクチン(FN)およびI型コラーゲン(Col1α1)などの細胞外マトリックス(ECM)構成成分の過剰な沈着は、線維症と定義される。臓器線維症は、末期臓器不全症をもたらす多くの疾患の最終的な共通経路である。しかし、臓器線維症に対する有効な療法は依然として得られていない(例えば、Bjorakerら、Am.J.Respir.Crit.Care.Med.、2000;157:199-20;VargaおよびAbraham、J Clin Invest 2007;117:557-67;Wynn、J Clin Invest 2007;117:524-29を参照されたい)。急性炎症および慢性炎症、血管新生、常在細胞の活性化、およびECMリモデリングを含めた制御できない創傷治癒応答が線維症の病理発生に関与すると考えられている(Wynn、J Clin Invest 2007;117:524-29;KalluriおよびSukhatme.Curr Opin Nephrol Hypertens 2000;9:413-8)。TGF-βは、線維化臓器において増加するプロトタイプ線維化サイトカインであり、ECM分子の合成を刺激すること、線維芽細胞を活性化してα-平滑筋アクチン(α-SMA)を発現する筋線維芽細胞にすること、およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を下方制御することによって線維症の発生に寄与する(Branton、Microbes Infect
1999;1:1349-65;VargaおよびPasche Nature Reviews Rheumatology 2009;5:200-6)。期待が大きいにもかかわらず、初期SScの患者におけるモノクローナル抗TGF-β抗体の臨床試験ではいかなる有効性も示すことができなかった(VargaおよびPasche、Nature Reviews Rheumatology 2009;5:200-6)。
【0228】
エンドスタチンは、XVIII型コラーゲンのカルボキシ末端の20kDaの内部断片である。エンドスタチンは、強力な抗血管新生活性を有する培養したマウス血管内皮腫細胞株の上清中で最初に同定された(O’Reillyら、Cell 1997;88:277-85)。エンドスタチンは、in vitroにおいて内皮の増殖および管形成を阻害し、in vivoにおいて腫瘍成長を阻害する(Dhanabalら、Biochem Biophys Res Commun 1999;258:345-52)。臨床試験を含め、エンドスタチンの抗腫瘍性を評価するための試験が行われてきた(Folkman、Exp Cell Res 2006;312:594-607)。エンドスタチンのNH末端ドメインは血管新生の阻害に関与する機能的ドメインとして報告されている(Tjin Than Sjinら、Cancer Res 2005;65:3656-63)。この効果の正確な分子機構は不明のままであるが、エンドスタチン受容体としてインテグリン、グリピカン、flk-1、およびヌクレオリンが報告されている(Sudhakarら、Proc Natl Acad Sci USA 2003;100:4766-71;Karumanchiら、Mol Cell 2001;7:811-22)。最近の試験から、肺線維症のIPF患者およびSSc患者から得た血清および/またはBALFにおいてエンドスタチンが増加していることが示された(例えば、Sumi、J Clin Lab Anal 2005;19:146-9)。
【0229】
本明細書で考察されている試験では、エンドスタチンの線維症に対する効果を評価した。エンドスタチンおよびエンドスタチン由来ペプチドの線維症に対する効果を、初代ヒト線維芽細胞を使用してin vitroで、ヒト皮膚を使用してex vivo、およびTGF-βを用いて処置したマウス皮膚を使用してin vivoで評価した。驚いたことに、所見から、エンドスタチンのカルボキシ末端ペプチドが、抗線維化活性を有し、線維化障害に対する新規療法をもたらすものであることが実証される。
【0230】
<実施例1>
材料および方法
試薬および抗体。全長組換えヒトエンドスタチン(rE)をSigma-Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。組換えヒトTGF-βをR&D Systems Inc.(Minneapolis、MN)から購入した。マウスモノクローナル抗ヒトフィブロネクチン(FN)抗体、ヤギポリクローナル抗ヒトI型コラーゲンαI鎖(Col1α1)抗体、およびマウスモノクローナル抗ヒトGAPDH抗体をSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz、Calif.)から購入した。マウスモノクローナル抗ヒトα-平滑筋アクチン(α-SMA)抗体をSigma-Aldrichから購入した。
【0231】
ヒトエンドスタチンペプチドの合成。ペプチドを、Liberty Microwave Synthesizer(CEM Corporation、Mathews、NC)において、FMOC合成プロトコールを使用して固相により合成した。簡単に述べると、活性化させたアミノ酸を固体支持体(Wang ResinおよびPEG-PS)にカルボキシ末端から開始してアミノ末端まで段階的に付加することによって合成を実施した。アミノ酸の活性化をDIPEA/HOBT/TBTU化学によって実施した。合成の最後に、試薬R(90%TFA、5%チオアニソール、3%エタンジチオール、および2%アニソール)を用いてペプチドを樹脂から切断し、多数のエーテル抽出に供した。粗製ペ
プチドを分析し、特徴付け、ゲル濾過(G-25カラム)、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC、486および600E、Waters Corporation)によって精製した。正確な質量をMALDI-TOF質量分析(The Voyager-DE STR Biospectrometry Workstation)によって確認した。ペプチドの配列は表1に示されており、これは、アミノ酸1~45(E1);71~115(E2);133~180(E3)、133~180A(E4)に対応し、E3とはカルボキシ末端アミドの存在により異なる。全てのペプチドの純度が>98%であった。全てのペプチドをDMSOに5mg/mlの濃度で溶解させ、1×PBS中1~20μg/mlまで希釈した。
【0232】
初代線維芽細胞培養、ヒト初代肺線維芽細胞および皮膚線維芽細胞を培養した。正常な臓器ドナー、SScの患者またはIPFの患者の肺外植片、およびSSc患者、斑状強皮症患者および健康なドナーの臨床的に関与する皮膚を初代線維芽細胞培養に使用した。肺末梢部および皮膚をおよそ2cmの小片に細かく切り、線維芽細胞を、以前に記載されている通り(Feghaliら、Arthritis Rheum 1999;42:1451-7)、10%FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン、および抗真菌剤を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Mediatech、Herndon、Va.)で培養した。全ての細胞を3~6回継代して使用した。
【0233】
ウエスタンブロット分析。培養した線維芽細胞から細胞溶解物を以前に記載されている通り(Pilewskiら、Am J Pathol 2005;166:399-407)得た。簡単に述べると、初代線維芽細胞2.0×10個を35mmのウェル中、10ng/mlのヒト組換えTGF-βまたはビヒクル対照としてPBSを補充した0.5%FBS含有培地で24時間培養し、その後、5μg/mlのヒトrE、エンドスタチンペプチド(E1~E4)、またはDMSO(ビヒクル)を添加して48時間置いた。一部の実験では、TGF-β刺激を伴わずにエンドスタチンペプチドを使用した。細胞溶解物をウエスタンブロットによって分析した。西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートした二次抗体および化学発光(Perkin Elmer Life Sciences,Inc.、Boston、Mass.)と共にインキュベートした後、シグナルを検出した。予測された分子サイズを有する個々のバンドの強度を、インターネット(/rsb.info.nih.gov/ij/index.html)上で利用可能なimage/J(登録商標)ソフトウェアを使用して半定量的に解析し、個々のGAPDH強度に対して正規化した。
【0234】
ex vivoにおけるヒト皮膚アッセイ。ヒト腹部皮膚を矯正形成手術から得た。以前に記載されている通り(Yasuokaら、The open Rheumatol J 2008;2:17-22)、皮下脂肪組織を均一に除去し、皮膚組織を1.5cm×1.5cmの切片に切った。以下を1×PBS中総体積100μlで皮内注射した:rE単独(1-10μg/ml)、エンドスタチンペプチド単独(10μg/ml)、rEまたはエンドスタチンペプチド(1-20μg/ml)とTGF-β(10ng/ml)の組合せ、およびTGF-β単独(10ng/ml)。一部の実験では、ヒト皮膚に、まずTGF-βを注射して48時間置き、その後、組換えエンドスタチン(rE)をTGF-βと同じ注射部位に投与した。図の説明文に示されている通り、独立した実験を2連または3連で行った。完全な表皮層および皮膚層を含有する外植片を、気相液相界面で表皮層およびケラチン層を上にして空気に曝露させて培養した。培養培地を2日に1回交換した。1週間または2週間後、注射部位付近を中心として直径8mmの領域に対応する皮膚組織を使い捨ての8mm ACUPUNCH(登録商標)(Acuderm,Inc.、Lauderdale、FL)を使用して採取した。皮膚組織を10%ホルマリン中に固定した後、パラフィンに包埋した。
【0235】
in vivoマウス実験。CB57BL6/J雄マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から購入した。ヒトrE(10μg/ml)またはエンドスタチンペプチド(10μg/ml)とTGF-β(10ng/ml)の組合せ、またはTGF-β単独を1×PBS中総体積100μlとしてマウスの背中に皮内注射した。マウスの2つの異なる皮膚部位に注射し、注入の1週間後に屠殺した。注射部位の周囲の皮膚を採取し、10%ホルマリン中に固定した後、パラフィンに包埋した。
【0236】
皮膚の厚さの測定。パラフィン包埋したヒト皮膚組織およびマウス皮膚組織の6μmの切片をヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した。一部の実験では、切片を、コラーゲンを同定するマッソン・トリクロームで染色した。Nikon Eclipse 800顕微鏡で画像を取得した。真皮の厚さを各切片の6つのランダムな視野でimage/J(登録商標)ソフトウェアを使用して測定した。データを任意単位で示す。
【0237】
尿細管形成アッセイ。エンドスタチンペプチドの血管新生を阻害する能力を、尿細管形成アッセイにおいてMATRIGEL(登録商標)培養物を使用して調査した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、EBM-2 MV SINGLEQUOTS(登録商標)を補充した内皮細胞基本培地-2(EBM-2;Clonetics、San Diego、CA)中で維持した。HUVEC(5×10個)を、2連で、24ウェルのMATRIGEL(登録商標)プレート(BD Biosciences、San Diego、CA)において、単独で、またはEBM-2中rEもしくはE4ペプチド(50nM)の存在下、37℃で培養した。DMSOをビヒクル対照として使用した。24時間後に、倒立顕微鏡を使用して画像を捕捉した。コード形成の程度を、ウェル当たり6つのランダムな視野において管が占める面積を測定することによって数量化した。3つの独立した実験を実施した。
【0238】
統計解析。全ての連続変数を、平均±標準偏差として表した。2群間の比較は、必要に応じて対応のあるt検定またはマン・ホイットニーのU検定を使用して統計的有意性について検定した。3群間の比較は、ANOVA、その後、ボンフェローニの検定を使用して実施した。
【0239】
<実施例2>
ヒトエンドスタチンにより、in vitroにおいて、TGF-βで処理したヒト初代肺線維芽細胞および皮膚線維芽細胞におけるFN産生およびCol1α1産生が阻害される
エンドスタチンにより線維芽細胞におけるECM構成成分の産生が調節されるかどうかを評価するために、正常なヒト肺線維芽細胞においてFN発現およびCol1α1発現をウエスタンブロット分析によって調査した。細胞を、24時間にわたるヒトTGF-βを用いた予備刺激を伴って、または伴わずに、5μg/mlのrEを用いて48時間にわたって処理した。図1Aに示されている通り、rEにより、TGF-βで前処理した線維芽細胞におけるFNレベルおよびCol1α1レベルが劇的に低下した。阻害効果を媒介するエンドスタチンの機能的ドメインを定義するために、エンドスタチンの異なる領域に対応する4つの異なるペプチドを合成した(表1)。
【0240】
【表3】
【0241】
図1Bおよび1Cに示されている通り、エンドスタチン(E4)のカルボキシ末端に由来する断片により、TGF-βで処理した細胞におけるFN産生およびCol1α1産生が、TGF-β単独で処理した正常肺線維芽細胞と比較して有意に抑制された(どちらの比較においてもP=0.03)。他方では、エンドスタチンのアミノ末端領域に位置するE1ペプチドは効果を有さなかった。健康な線維芽細胞に加えて、臨床的な肺線維症を有するSSc患者およびIPF患者から得た肺線維芽細胞を並行アッセイにおいて使用し、結果は同様であった(図1Bおよび1C)。肺線維芽細胞におけるrEおよびE4の抗線維化効果が実証されたので、皮膚がSScにおける線維症の影響を受ける主要臓器であることから、皮膚線維芽細胞に対するこれらのペプチドの効果を調査した。健康な対照、全身性硬化症(SSc)の患者または局在型強皮症(斑状強皮症)の皮膚から得た初代線維芽細胞をrEまたはE4で処理した。肺線維芽細胞と同様に、rEおよびE4により、皮膚線維芽細胞におけるTGF-βによって誘導されるECM産生が減少した。代表的な結果を図1Dに示す。
【0242】
<実施例3>
エンドスタチンペプチドにより、SScの患者およびIPFの患者に由来する初代肺線維芽細胞の線維化表現型が逆転する
線維化組織ではTGF-βが上方制御されることが示されているので、線維化の肺線維芽細胞におけるマトリックス産生が、TGF-β刺激の不在下でエンドスタチンペプチドを用いた処理によって変化するかどうかを調査した。図1Eの左側のパネルに示されている通り、E4で処理した線維芽細胞ではFNレベルおよびCol1α1レベルの両方が低下した。さらに、同じ線維芽細胞を、種々の濃度のE4を用いて処理して、最適な抗線維化用量を同定した。E4では、Col1α1レベルがビヒクル対照と比較して用量依存的に低下したが(図1E、右側のパネル)、FNレベルに対する効果は大きくなかった。ECMの減少は、TGF-β刺激後に観察されたものよりも大きくなかった。総合すると、結果から、E4により、線維化の環境からの線維芽細胞におけるECM構成成分のベースラインの産生を減少させ、したがって、線維化表現型を逆転させることができることが示される。
【0243】
α-SMAを発現する活性化線維芽細胞である筋線維芽細胞は、TGF-β刺激によって誘導され、線維症において中心的な役割を果たす。したがって、エンドスタチンペプチドの、正常肺線維芽細胞におけるα-SMA発現に対する効果を調査した。図1Fに示されている通り、TGF-β刺激により、α-SMA発現が著しく増加した。興味深いことに、E4、およびより少ない程度にE3により、TGF-βによって誘導されるα-SMAレベルが低下し、これにより、エンドスタチンのカルボキシ末端領域により、線維芽細胞の活性化およびそれらの筋線維芽細胞表現型への転移を予防することができることが示唆される。
【0244】
<実施例4>
ヒト皮膚において、エンドスタチンにより、皮膚の厚さが減少し、TGF-βによって誘導される線維症が予防される
培養したヒト皮膚外植片を、線維形成因子の作用を評価するため、線維症の進行を停止させ、潜在的に逆転させるための阻害剤/療法の有効性を評価するための臓器モデルとして使用することができる(Yasuoka、The Open Rheumatol J
2008;2:17-22)。線維症に対する潜在的な治療剤としてのエンドスタチンの有効性を評価するために、このex vivoヒト皮膚モデルを使用した。TGF-βは線維症において中心的な役割を果たす周知の線維化促進因子であるので、ヒト組換えTGF-βをまず皮内注射して線維症のレベルを評価した。図2Aに示されている通り、TGF-β注射により、注入の1週間後、皮膚の厚さが用量依存的に劇的に増大した。TGF-β(10ng/ml)の線維化作用は2週間で消失した。rE(1μg/ml、5μg/ml、および10μg/ml)またはエンドスタチンペプチド(10μg/ml)のベースラインの効果も個別に調査した。rEおよびE1~4により皮膚の厚さは有意には変化しなかったが、rE、E3、およびE4では、ヒト皮膚の厚さが減少する傾向が示された(図2Bおよび2C)。rEにより、TGF-βで処理したヒト皮膚における線維症を阻害することができるかどうかを決定した。TGF-βおよびrEを同時に注射した。投与の1週間後、rEとTGF-βの組合せにより、皮膚の厚さが用量依存的に有意に減少した(図3)。線維症の逆転に対するrEの効果を評価するために、TGF-β投与の2日後にペプチドを注射した。同時処置と同様に、遅れてのrEによっても、GF-βによって誘導される皮膚線維症が有意に好転した。所見から、ヒトエンドスタチンにより、ヒト皮膚において、線維症の発生および進行を予防することができ、またTGF-βによって誘導される線維症を逆転することもできることが示される。
【0245】
<実施例5>
エンドスタチンペプチドにより、ヒト皮膚におけるTGF-βによって誘導される線維症がex vivoで低減し、既存の線維症が逆転する
エンドスタチンのどの部分が、ヒト皮膚外植片におけるTGF-βによって誘導される線維症の阻害に関与するかを決定するために、エンドスタチンペプチド(10μg/ml)を、10ng/mlのTGF-βの存在下で投与した。代表的な画像を図4Aに示す。E3およびE4により、皮膚の厚さによって測定される線維症の発生が、TGF-β単独と比較して有意に消失した(それぞれP=0.04、0.01;図4)。種々の濃度のE1またはE4をTGF-βと組み合わせて注射した皮膚外植片の皮膚の厚さを調査した。図5に示されている通り、E1とは異なり、5~20μg/mlの濃度のE4ではTGF-βによって誘導される皮膚線維症が明白に好転し、それにより、エンドスタチンのC末端により線維症を抑制することができることが示される(図17を参照されたい)。
【0246】
<実施例6>
エンドスタチンペプチドにより、マウス皮膚におけるTGF-βによって誘導される線維症がin vivoで低減する
エンドスタチンペプチドの抗線維化効果をin vivoでさらに評価した。rEとT
GF-βの組合せおよびエンドスタチンペプチドとTGF-βの組合せをマウスの皮膚に注射した。注入の1週間後、マウスは健康に見え、窮迫の徴候は示されなかった。図6に示されている通り、マウス皮膚において、ヒトTGF-βにより、皮膚の厚さが強力に増大した(P=0.004)。ヒトエンドスタチンペプチドのカルボキシ末端に由来するペプチドE3およびE4により、TGF-βによって誘導される皮膚線維症が予防された(それぞれP=0.01、0.007)。さらに、E2により、皮膚の厚さが有意に減少した(P=0.03)。エンドスタチンのアミノ末端に対応するペプチドであるE1では、TGF-βによって誘導される皮膚線維症は変化しなかった。これらの結果から、我々のヒト皮膚モデルから得られた結果が確認され、また、in vivoおよびex vivoにおける、TGF-βによって誘導される線維症の予防におけるエンドスタチンのC末端ドメイン重要性が強調される。
【0247】
<実施例7>
エンドスタチンのC末端ペプチドの抗血管新生活性は大きくない
エンドスタチンの抗血管新生効果は、アミノ末端ドメインに帰するものとされていた(Tjin Tham Sjinら、Cancer Res 2005;65:3656-63)。エンドスタチンのカルボキシ末端領域の抗血管新生能を評価するために、E4のin vitroにおける尿細管形成に対する効果をマトリゲルを使用して調査した。図7に示されている通り、rEの、HUVECによる管状構造形成を阻害する能力は有意であり、それにより、以前の報告が確認された。他方では、E4の血管新生を抑制する能力は大きくなく、それにより、エンドスタチンのE4に対応する領域はエンドスタチンの抗血管新生活性に有意に寄与しないことが示唆される。
【0248】
したがって、エンドスタチンのカルボキシ末端領域に対応するペプチドであるE4により、TGF-βによって誘導される線維症が好転し、さらには逆転する。E4により、初代肺線維芽細胞および皮膚線維芽細胞におけるTGF-βによって誘導されるECM産生が抑制され、α-SMAレベルが下方制御された。in vivo分析およびex vivo分析から、E4により、TGF-βによって誘発される皮膚の厚さの増加が妨害されることが明らかになった。さらに、E4の抗血管新生能はrEと比較して低かった。総合すると、所見から、エンドスタチンの、抗線維化能および抗血管新生能に関与するドメインが別個であることが示唆される。他のエンドスタチンペプチド(例えば、E2およびE3)も抗線維化活性を有することが示されている。
【0249】
エンドスタチンの抗血管新生活性には、抗腫瘍療法の開発を対象とする多数の調査の焦点が当てられてきた。最近、特発性肺線維症(IPF)および全身性硬化症(SSc)などの線維化障害におけるエンドスタチンの血清中レベルおよびBALF中レベルの上昇が報告された。重症呼吸器機能障害を有するIPF患者、ならびに肺線維症、重症皮膚線維症、および皮膚瘢痕を有するSSc患者では、それらの臨床症状を有さない患者と比較して、エンドスタチンレベルが比較的上昇していた(Sumi J Clin Lab Anal 2005;19:146-9;Richterら、Thorax 2009;64:156-61)。さらに、SSc患者の培養した皮膚線維芽細胞(Tanら、Arthritis Rheum 2005;52:865-76)およびIPFの患者の肺抽出物全体(Yangら、Am J Respir Crit Care Med 2007;175:45-54)ではXVIII型コラーゲン発現が増加していた。この点について、エンドスタチンはMMPおよびカテプシンLを含めたいくつかのプロテアーゼによって切断されたXVIII型コラーゲンのタンパク質分解産物であるので(Wenら、Cancer Res 1999;59:6052-6;Felbor、EMBO J 2000;19:1187-94)、また、MMPもSScおよびIPFにおいて上方制御されるので(Richterら、Thorax 2009;64:156-61、Toubiら、Clin Exp Rheumatol 2002;20:221-4)、これ
らの患者において切断されたエンドスタチンレベルが上昇するという所見は妥当であると思われる。しかし、エンドスタチンが線維症の病理発生にどのように関与し得るかは不明である。
【0250】
理論に束縛されることなく、線維化組織におけるエンドスタチンの増加は、不首尾ではあるが、線維症の進行の停止を対象とする負のフィードバック調節ループを構成し得る。エンドスタチンは異常な「血管新生性」内皮癌細胞においてその「血管新生」能を制御/阻害する可能性がある産物として最初に同定されたので(O’Reillyら、Cell
1997;88:277-85)、線維症におけるエンドスタチンが同様の調節機能を果たすことは妥当であると思われる。
【0251】
創傷治癒モデルを使用した、組換えエンドスタチンで処置したマウス皮膚では、結合組織は減少するが血管密度は正常であることが報告されている(Blochら、FASEB
J 2000;14:2373-6)。さらに、エンドスタチンのN末端領域に由来するペプチドにより、マウスモデルにおける腹膜硬化症の進行が予防された(Tanabeら、Kidney Int 2007;71:227-38);調査されたペプチドは、アミノ酸1~27を包含するエンドスタチンのN末端に対応するものであった。
【0252】
対照的に、本明細書では、エンドスタチンのN末端ではなく、C末端領域が、エンドスタチンの抗線維化効果に関与することが示されている。実際、N末端エンドスタチンのドメインに対応するペプチドは、アッセイのいくつかでは線維化表現型に寄与した。エンドスタチンの抗血管新生能に関与する特定のアミノ酸配列を定義することを対象とする試験(Richterら、Thorax 2009;64:156-61;Cattaneoら、Exp Cell Res 2003;283:230-6;Xuら、Curr Protein Pept Sci 2008;9:275-83)により、エンドスタチンの全体的な血管新生抑制活性がN末端ドメインの27アミノ酸ペプチドに位置することが示されている(Richterら、Thorax 2009;64:156-61)。したがって、エンドスタチンの、その抗線維化活性を媒介する機能的ドメインは、その抗血管新生能に関与する機能的ドメインとは異なり、これは、血管新生の阻害の機構と線維症の阻害の機構が異なることを意味する。したがって、本明細書に開示されている抗線維化C末端エンドスタチンポリペプチドは、血管新生を阻害せずに、線維症を選択的に阻害することができるものである。C末端エンドスタチンポリペプチドを使用して、所望の治療転帰に影響を及ぼし得る血管新生への干渉を伴わずに望ましくない線維症をより特異的かつ選択的に標的とすることができる。
【0253】
C末端エンドスタチンポリペプチドにより、TGF-βで処理した線維芽細胞におけるα-SMA発現も減少する。さらに、正常な線維芽細胞に対するE4のマトリックス減少効果は、線維化線維芽細胞におけるものよりも大きくなかった。これにより、線維症におけるエンドスタチンC末端ペプチドの治療効果が、一部において、TGF-βおよび他の線維症促進性増殖因子による線維芽細胞活性化の妨害に起因する可能性があることが示唆される。
【0254】
2005年に、Hisタグ付きタンパク質として追加的な9アミノ酸配列を含有する、E.coliから精製された組換えヒトエンドスタチンであるENDSTAR(登録商標)が、中国において非小細胞肺癌の治療に関して承認された(Sunら、J Clin Oncol 2005(ASCO Annual meeting proceedings);23:7138)。その効果にもかかわらず、治療には、高用量を必要とすること、タンパク質の半減期が短いこと、安定性が乏しいこと、および容易に不活化することを含めた、いくつかの不都合があった(例えば、Crystal、Nat Biotechnol 1999;17:336-7;Huら、Acta Pharmacol Si
n 2008;29:1357-69を参照されたい)。本明細書に開示されている低分子合成ペプチドでは、これらの障害を克服することができる。in vitro、in vivo、およびex vivoにおいて、E4により、rEと比較して、さらにはE3と比較しても、線維症が有意に阻害された。さらに、E4の抗血管新生活性は、rEと比較して最小のものであり、これにより、エンドスタチンの抗血管新生活性がそのN末端ドメインに存在することが確認される。E3とE4の唯一の差異は、E4のC末端にアミド結合が存在することである。理論に束縛されることなく、このアミドにより、ペプチドがカルボキシペプチダーゼまたは他の分解性分子によるカルボキシ分解に対してより抵抗性になり、したがって、ペプチドが安定化し、おそらくその生物活性が維持される(Yangら Am J Respir Crit Care Med 2007;175:45-54)。
【0255】
残念ながら、臓器線維症に対する有効な療法は存在しない。アミド結合の形成を伴うアミノ酸配列133-180に対応するエンドスタチンのC末端ドメインにより、in vivoおよびex vivoで、ヒト皮膚において、初代皮膚線維芽細胞および肺線維芽細胞によるECM産生が抑制され、TGF-βによって誘導される皮膚線維症が好転した。本明細書で提示されている所見から、E4を、IPF、SSc、斑状強皮症、ならびに移植片対宿主病、ケロイドおよび肥厚性瘢痕、ならびに喘息における上皮下線維症などの他の臓器線維症を含めた線維化障害の治療に使用することができることが実証される。
【0256】
<実施例8>
E4の有効性の確認
ヒトエンドスタチンのカルボキシ末端であるペプチド、E4により、多数の線維形成因子によって誘発される線維症を減弱させることができる。E4の抗線維化効果は、線維形成トリガーと同時に投与されるかその後に投与されるかにかかわらず検出することができる。線維症の前臨床モデル4種:a)in vivo、マウス皮膚における、ブレオマイシンによって誘導される皮膚線維症、b)マウス皮膚における、TGF-βによって誘導される皮膚線維症、およびc)ブレオマイシンによって誘導される肺線維症においてE4の有効性を確認した。E4ペプチドまたは対照ペプチド(E1;エンドスタチンのアミノ末端領域)をTGF-βもしくはブレオマイシンと同時に、またはTGF-βもしくはブレオマイシンの3~4日後に投与した。マウスを皮膚線維症のTGF-βによる開始の1週間後および2週間後、ならびにブレオマイシンにより誘導された肺線維症の2週間後および3週間後に屠殺した。E4ペプチドの2つの異なる投与形式についても試験した。腹腔内投与および気管内投与が有効であることが確認された。投与したE4の量は、10μg/mlであり、皮膚およびIP注射については総体積100μlであり、IT投与については50μlであった。
【0257】
これらの試験について、線維症を、H&E皮膚切片(皮膚)での皮膚の厚さの測定、マッソン・トリクローム染色によるコラーゲンレベルの評価(皮膚および肺)、ならびにSircolアッセイによるコラーゲンレベルの測定(肺)によって評価した。さらに、E4がその抗線維化効果を発揮する機構を確認するために、細胞外マトリックス(ECM)構成成分の産生、マトリックス安定化を促進する酵素のレベル、したがって、ECM構成成分を分解する酵素の蓄積およびレベル、ならびに線維化促進トリガーの下流の転写因子のレベルを評価した。対応のないt検定および三元配置ANOVA(ID1データについて)を使用して結果を評価した。
【0258】
結果
E4により、E4の単回投与であっても、ブレオマイシンによって誘導される皮膚線維症の有意な減弱が引き起こされた(図8)。E4により、7日目に、TGF-βによって誘導される皮膚線維症の有意な低減が引き起こされた。したがって、E4により、TGF
-βによって誘発される皮膚線維症が予防され(図8)、また、それが逆転する(図9)。
【0259】
ブレオマイシンと同時にまたはブレオマイシンの3日後に投与されたE4により、線維症およびマッソン・トリクローム染色の顕著な低減が引き起こされた(図9および図10)。ブレオマイシンの3日後にもたらされたE4ペプチドにより、マウス肺におけるコラーゲンレベルが有意に低下した(図10Bを参照されたい)。
【0260】
E4により、投与形式にかかわらず、TGF-βおよびブレオマイシンによって誘導される皮膚線維症(図8)および肺線維症(図10)の両方の統計的に有意な低減が引き起こされた。E4の腹腔内投与および気管内投与のどちらも、皮膚線維症および肺線維症を遮断するのに有効であった。例えば、E4により、腹腔内投与であったか気管内投与であったかにかかわらず、21日目に、ブレオマイシンによって誘導される肺線維症の有意な減弱が引き起こされた(図11)。したがって、E4は、投与形式に関係なく、線維症を低減させるのに有効である。
【0261】
結果から、E4の抗線維化効果が多数の経路を介して発揮されることも証明される。E4により、コラーゲン、エラスチン、および他の細胞外マトリックス(ECM)分子の架橋結合に関与する酵素であるリシルオキシダーゼ(LOX)のレベルが低下し、したがって、ECMが安定化する。E4により、コラーゲンの安定性が低下し、タンパク質分解をより受けやすくなり得る。図12は、E4を用いたまたは用いなかった、ブレオマイシンを用いて処理したマウスの肺切片を示す。
【0262】
E4に媒介されるLOXの低下はin vitroにおいても検出された。第4継代の正常肺線維芽細胞を、ビヒクル、E4、TGF-β、またはTGF-βを用いて処理し、続いて、30分後にE4によって処理した(図13)。48時間後に、線維芽細胞によって馴化させた培地を、ウエスタンブロット分析を使用して分析した。E4を用いた処理により、LOXのレベルが有意に低下した。LOX mRNAレベルをリアルタイムPCRによって調査したところ、同様の結果が得られた。
【0263】
E4により、フィブロネクチンならびにネイティブなコラーゲンおよび変性コラーゲンを含めたいくつかのECM分子を分解する酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-2)の誘導および活性化によるECM構成成分の分解も促進される(図14)。さらに、E4により、TGF-βの作用を阻害する転写因子である分化(ID)-1の阻害剤のレベルが上昇する(図15)。ウエスタンブロット分析において、E4により、処理し、24時間後に採取した初代ヒト肺線維芽細胞におけるマスタースイッチ転写因子(master switch transcription factor)であるEgr-1(図16を参照されたい)のレベルが低下することが決定された。Egr-1レベルの低下は、コラーゲン、SMAおよびフィブロネクチンの低下と対応する。Egr-1は、いくつかの線維化剤(TGF-βおよびブレオマイシンを含む)の作用を媒介することが公知である。
【0264】
したがって、E4は有意な抗線維化効果を発揮した。このペプチドにより、これらの線維化トリガーと同時に投与されるか線維症の開始から数日後に投与されるかにかかわらず、TGF-βおよびブレオマイシンの線維形成作用が有意に減弱し、これにより、E4、および他のC末端エンドスタチンポリペプチドが確立された線維症を逆転させるのにも有効であることが示唆される。E4の抗線維化効果は、ブレオマイシンによって肺線維症を誘導し、TGF-βによって皮膚線維症を誘導したマウスに気管内投与したか腹腔内投与したかにかかわらず認められた。さらに、E4の抗線維化効果は、LOXの減少を通じたECMの不安定化、したがって、ECM架橋結合の減少、MMP-2の活性化によるEC
M分解の誘導、Egr-1レベルの抑制、および転写因子ID-1の増加を含む多数の経路を介して発揮された。
【0265】
したがって、いくつかのin vitroアッセイおよび4種のin vivoおよびex vivoにおける線維症の前臨床モデルにより、E4によって例示されるC末端エンドスタチンポリペプチドが、2つの臓器、肺および皮膚における線維症を遮断し、逆転させることができる有効な抗線維化ペプチドであることが示唆される。これらの抗線維化効果ならびにエンドスタチンに特有の抗血管新生効果の欠如により、E4は、臓器線維症に対する治療用ペプチドとして魅力的なものになっている。
【0266】
<実施例9>
植物における経口的に活性な抗線維化タンパク質の産生
表2に示されているE3-6His-KDEL、E3-Fc(C67A)、および増大させたE3-6His-KDELペプチドの発現、精製、および経口送達を評価するために試験を行った。
【0267】
方法
ペプチドを、IBIOLAUNCH(商標)遺伝子発現プラットフォームを使用して植物において発現させた。C57BL/6マウスに、ブレオマイシンを気管内に与え、併せてEND-55(本明細書ではE3-Fc(C67A)およびCFB03とも称される)を静脈内(IV)投与したか、または、ブレオマイシンの8日後にEND-55をIV投与した。12日目にマウスを屠殺し、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色およびヒドロキシプロリンアッセイの両方のために肺試料を取得した。
【0268】
結果
E3ペプチドを、IBIOLAUNCH(商標)プラットフォームを使用して植物において発現させた。タグ付けされていないE3ペプチドを示差的な溶解性に基づいて精製した。図18を参照されたい。E3バリアントペプチド(E3-6His-KDEL、増大させたE3-6His-KDEL(C67A)、およびE3-Fc(C67A))のそれぞれが首尾よく産生され、精製された。図19を参照されたい。
【0269】
マウスにおいて、ブレオマイシンを使用して肺線維症を誘導した。動物を、E3バリアントまたはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を経口的に用いて処置した。肺組織像を検査し、経口送達されたE3バリアント(E3-6His-KDELおよび増大させたE3-6His-KDEL)により、ブレオマイシンによって誘導される肺線維症が低減したことが示された。図20を参照されたい。
【0270】
図21および22に示されている実験に関しては、またマウスにおいてブレオマイシンを使用して肺線維症を誘導した。対照にはPBSを投与し、実験試料にはEND55(E3-Fc(C67A)とも称される)も経口投与または静脈内投与した。肺におけるヒドロキシプロリン含有量を測定した。
【0271】
ブレオマイシンのみを用いて処置したマウスと比較して、END-55を100μgまたは200μgで用いた処置したマウスでは、ヒドロキシプロリンアッセイを使用して評価された通り、肺線維症が低減した(図21)。いずれの用量で静脈内投与されたEND-55も、50μgで経口投与されたEND-55と同様の有効性を有すると思われた。ブレオマイシン処置の8日後に投与されたEND-55(経口および静脈内の両方)によっても、これらの群のそれぞれで処置したマウスは3匹のみであったが、線維症が低減すると思われた。したがって、これらの試験から、END55の経口送達およびIV送達により、ブレオマイシンによって誘導される肺線維症が予防されること、および、ポリペプ
チドのIV投薬が経口投与と同等であることが示された。図21および22を参照されたい。さらに、END-55により、同時に投与したか線維化トリガーの後に投与したかにかかわらず、in vivoにおいて、ブレオマイシンによって誘導される肺線維症が好転した(d8として示されている;図21)。したがって、END55のIV投与には、肺線維症を逆転させる潜在性がある。
【0272】
【表4】
【0273】
<実施例10>
E3と融合したIg分子
種々のFcドメインとE3の融合物を発現させた(E3-Fc(IgG1)に加えて)。配列は以下の通りであった:
E3_C67A-Fc_IgG2:
MGKMASLFATFLVVLVSLSLASESSASYCETWRTEAPSATG QASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLAIENSFMTERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESN
GQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号22)
E3_C67A-Fc_IgG3:
MGKMASLFATFLVVLVSLSLASESSASYCETWRTEAPSATG QASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLAIENSFMTELKTPLGDTTHTCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFKWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTFRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESSGQPENNYNTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNIFSCSVMHEALHNRFTQKSLSLSPGK(配列番号23)
E3_C67A-Fc_IgG4:
MGKMASLFATFLVVLVSLSLASESSASYCETWRTEAPSATG QASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLAIENSFMTESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号24)
E3_C67A-Fc_IgA1:
MGKMASLFATFLVVLVSLSLASESSASYCETWRTEAPSATG QASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLAIENSFMTVPCPVPSTPPTPSPSTPPTPSPSCCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGVTFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAEPWNHGKTFTCTAAYPESKTPLTATLSKSGNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRLAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY(配列番号25)
E3_C67A-Fc_IgA2:
MGKMASLFATFLVVLVSLSLASESSASYCETWRTEAPSATG QASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLAIENSFMTVPCPVPPPPPCCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGATFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAQPWNHGETFTCTAAHPELKTPLTANITKSGNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRMAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY(
配列番号26)
E3_C67A-Fc_IgM:
MGKMASLFATFLVVLVSLSLASESSASYCETWRTEAPSATG QASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLAIENSFMTVIAELPPKVSVFVPPRDGFFGNPRKSKLICQATGFSPRQIQVSWLREGKQVGSGVTTDQVQAEAKESGPTTYKVTSTLTIKESDWLGQSMFTCRVDHRGLTFQQNASSMCVPDQDTAIRVFAIPPSFASIFLTKSTKLTCLVTDLTTYDSVTISWTRQNGEAVKTHTNISESHPNATFSAVGEASICEDDWNSGERFTCTVTHTDLPSPLKQTISRPKGVALHRPDVYLLPPAREQLNLRESATITCLVTGFSPADVFVQWMQRGQPLSPEKYVTSAPMPEPQAPGRYFAHSILTVSEEEWNTGETYTCVAHEALPNRVTERTVDKSTGKPTLYNVSLVMSDTAGTCY(配列番号27)
J-鎖_PVX_sgp36:
MGKMASLFATFLVVLVSLSLASESSAQEDERIVLVDNKCK CARITSRIIRSSEDPNEDIVERNIRIIVPLNNRENISDPTSPLRTRFVYHLSDLCKKCDPTEVELDNQIVTATQSNICDEDSATETCYTYDRNKCYTAVVPLVYGGETKMVETALTPDACYPD(配列番号28)
IgG1_Fc-E3_C67A(C末端融合物):
MGKMASLFATFLVVLVSLSLASESSAEPKS CDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKSYCETWRTEAPSATGQASSLLGGRLLGQSAASCHHAYIVLAIENSFMT(配列番号
29)
図23に示されている通り、E3とIgG2のFc領域の融合物では不十分な発現が示され、精製には不十分であり、IgG3との融合物は、可溶性であり、精製され、IgG4との融合物は、可溶性であり、精製され、IgA1との融合物(±J鎖)は不溶性であり、IgA2との融合物(±J鎖)は不溶性であり、IgMとの融合物(±J鎖)では、不十分な発現が示され、精製には不十分であったが、Fc-E3は、可溶性であり、精製された。
【0274】
IgG Fc発現のために、清澄化した植物溶解物をウエスタンブロット(GenwayニワトリE3抗体)にかけた。融合物は、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のヒ
ンジ+FcドメインのN末端、またはIgG1のヒンジ+FcドメインのC末端のいずれかと連結したE3(C67A)を含むものであった。IgG2融合物では低発現が示されたが、IgG3融合物およびIgG4融合物では中程度の発現が示された。E3-IgG1融合物は十分に発現した。非還元試料は全て大きな構造を形成すると思われたが、おそらく、END-55(iBioCFB03)HMW多量体ほどは大きくなかった(図24)。
【0275】
IgA/M発現のために、清澄化した植物溶解物を変性緩衝液(全部)または非変性緩衝液(可溶性)中で粉砕し、ウエスタンブロット(GenwayニワトリE3抗体)にかけた。融合物は、IgA1、IgA2、またはIgMのヒンジ+FcドメインのN末端と連結したE3(C67A)を含有するものであった。IgA1融合物およびIgA2融合物は通常の粉砕緩衝液には不溶性であった。IgM融合物の発現は非常に低かった。J鎖の同時発現には明白な影響はなかった。図25を参照されたい。
【0276】
<実施例11>
iBio-CFB03:高分子量多量体
iBio-CFB03(本明細書ではEND55またはE3-Fc(C67A)とも称される)は、図26に示されている通り、306アミノ酸長の融合タンパク質の多数のサブユニットで構成される高分子量多量体であり、XVIII型コラーゲンのC末端に由来する48アミノ酸の断片(E3の配列)を有し、分泌リーダーペプチド[太字;26アミノ酸;分子の小胞体(ER)への分泌中にER局在シグナルペプチダーゼによって切断される]が付加されており、ヒト免疫グロブリンIgG1 Fcドメイン(イタリック体;232)と融合したものである。この融合タンパク質は、67位におけるシステインからアラニンへの突然変異(下線が引かれているおよび太字)および1つのグリコシル化部位(イタリック体および下線が引かれている)も含有する。グリコシル化されていないE3-Fcの予測される分子量は、31,153Daである。
【0277】
化学、製造および制御
iBio-CFB03は、31kDaから33kDaの間の2つの主要なグリコフォームを有する単量体が繰り返されるおよそ1.2メガダルトン(MDa)の多量体タンパク質である。多量体は可溶性であり、4℃、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で保管した場合、安定である。
【0278】
製造の方法
iBio-CFB03原薬を、Caliber Biotherapeutics,LLC(8800 HSC Pkwy、Bryan、TX 77807)において、上流の産生の農業規模化、その後の従来の下流の精製および配合プロセスを可能にする、一過性の植物に基づく発現系を利用するIBIOLAUNCH(商標)プラットフォームを使用して製造した。製造プロセスの概要を図27に示す。
【0279】
原薬製造プロセスの要約
マスターセルバンク(MCB)およびワーキングセルバンク(WCB)の生成
コドン最適化配列
エンドスタチンE3ペプチド(ヒトコラーゲンアルファ-1(XVIII)鎖プレプロタンパク質のアミノ酸1,466~1,513、GenBank NP_085059.02)の遺伝子配列を、突然変異オリゴを用いた鎖重複伸長(Strand Overlap Extension)(SOE)を使用してE3ペプチドの最後のシステインをアラニンに突然変異させることによって改変した。得られたE3ペプチド突然変異体C67A配列をNicotiana plumbaginifoliaエクステンシン遺伝子(GenBank AAA34073.1)のシグナルペプチドと、およびヒト免疫グロブ
リンG1 Fc領域(アミノ酸216~447、GenBank:CAC20454)と、SOEによって融合して、候補遺伝子iBio-CFB03を形成した(表3;図26)。iBio-CFB03遺伝子を、植物における発現のために、Nicotiana tabacumコドン使用表を使用してコドン最適化し、IBIOLAUNCHTM(商標)タバコモザイクウイルスに基づくベクターpGR-D4に、制限部位PacIとXhoIの間にクローニングしてベクターpSM042を生成した(図28)。
【0280】
【表5】
【0281】
アグロバクテリウムベクター株GV3101へのクローニング
次いで、発現ベクターpSM042をAgrobacterium tumefaciens株GV3101にヘルパープラスミドpSOUPと共にエレクトロポレーションによって動員した(GenBank:EU048870.1)(Hellensら、Plant Mol Biol.2000;42(6):819-832)。pSoupは、pGreenに含有されるpSa Ori配列に対して、それがアグロバクテリウムにおいて複製することが可能になるようにトランスで作用するRepAをコードする。アグロバクテリウムクローンを、Luria-Bertani(LB)寒天プレート上で50mg/Lのカナマイシン、25mg/Lのリファンピシンおよび10mg/Lのテトラサイクリンに対して選択した。カナマイシン耐性はpGR-D4発現ベクターによりもたらし、リファンピシン耐性はGV3101アグロバクテリウム株によりもたらし、テトラサイクリン耐性はヘルパーベクターpSOUPによりもたらした。28℃で3日間インキュベートした後、各細菌培養物を振とうインキュベーター中、28℃、225rpmで増幅するために、単一のコロニーを採集して、液体LB培地(上記の抗生物質を補充したもの)に接種した。各クローンをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって同定し、特異的な挿入断片を、pGR-D4発現ベクターにおいて挿入断片の上流に結合する特異的なプライマーを使用した配列決定によって確認した。確認されたら、最初のアグロバクテリアMCBおよびWCBを生成し、2つの別々の冷凍装置中、-70℃で保管した。
【0282】
iBio-CFB03発現
ステップ1-トレーの組立て、播種トレー
公称サイズ4フィート×3フィートのアルミニウム植物生長トレーを使用した。240個のロックウールのプラグを含有するStyrofoamプラグトレーに自動真空針播種機で播種した。4つのプラグトレー(960の植物体)をアルミニウム発芽トレーのそれぞれに置き、発芽室に運んだ。
【0283】
ステップ2-植物の発芽生長
植物を、光合成および最適な植物の生長が最適化されるように強度を調節したスペクト
ル的に適正な光によるLED照明を備えた縦型ラック中、27℃で3週間にわたって発芽させた。滴下潅水を使用して、水耕生長に必要な無機質の改変ホーグランド溶液を送達した。植物の生長を支持するために土壌または他の材料は使用しなかった。
【0284】
ステップ3-低密度トレーへの移植
3週間生長させた時点で、発芽した植物を含有するプラグを、葉の増大を可能にするために、トレー当たり320の植物体のみが配置された4フィート×4フィートの生長トレーに機械的に移植した。植物を25℃でさらに2週間生長させた。この段階で各植物の葉バイオマスはおよそ8~10グラムであった。
【0285】
ステップ4-アグロバクテリウムの成長
選択されたアグロバクテリウムクローンを、50mg/Lのカナマイシン、25mg/Lのリファンピシンおよび10mg/Lのテトラサイクリンを補充したLB培地を含有する培養フラスコ中のワーキングセルバンクから、28℃、225rpmで撹拌しながら成長させた。OD600nmが約1.5に達した培養物を収集し、2mMのMES緩衝液、pH5.6を含有する逆浸透精製水中50倍に希釈した。
【0286】
ステップ5-植物へのベクターの真空アグロインフィルトレーション(agroinfiltration)
アグロバクテリアを1時間にわたって誘導した後、5週齢の植物に、ゲージで23インチHgのところに真空浸潤を行った。真空浸潤の前に、Nicotiana benthamiana植物体を、私有の赤色/青色LED光の下、約27℃、相対湿度約50%で5週間にわたって水耕法で生長させた。アグロインフィルトレーション処理した植物を一定のLED光の下、約25℃、相対湿度約50%でインキュベートした。
【0287】
ステップ6-浸潤後生長
浸潤後の室内水耕生長条件により、植物を調節光レジメンの下、25℃で維持した。浸潤の6日後、抽出のために植物を採取場に自動的に運んだ。
【0288】
iBio-CFB03-精製プロセス
ステップ7-植物採取-ホモジナイズおよび遠心清澄化
iBio-CFB03(E3-Fc)を発現するNicotiana benthamianaバイオマスを、ワーリング強力実験グレードステンレス鋼ブレンダーを用い、水性酸性化(pH4.8-5.2)抽出緩衝液(50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、5mMのEDTA、60mMのアスコルビン酸、および1mMのPMSF)中で1分にわたって機械的にホモジナイズした。バイオマスを遠心分離によって部分的に清澄化し、その後、1NのNaOHを用いてpHを6.2に調整した。
【0289】
ステップ8-深層濾過
抽出物を深層濾過(公称保持評価1.2/0.2μm)によってさらに清澄化した。
【0290】
ステップ9-限外濾過
清澄化された抽出物を、750kDa分画分子量(MWCO)孔径の線維1mmを含有する中空繊維接線流濾過(TFF)モジュールに適用した。抽出物を、せん断速度6,000~8,000sec-1および膜間差圧5~7psiで、750kDa MWCOを通して濾過した。
【0291】
iBio-CFB03の精製をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって最初に評価した。図29において見ることができるように、上記の手順によって精製されたiBio-CFB03は、変性していない状態(加熱
処理およびβ-メルカプトエタノールを伴わない;レーン6)ではゲルに進入することができなかった。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製されたiBio-CFB03の試料(レーン4)は、E3とアミノ酸組成が同じであるが一次配列がスクランブルされ、IgG1-Fcと融合したペプチドである、対照試薬(END-81)(レーン5)と同様に挙動した。これらの結果により、iBio-CFB03が、天然には植物において産生された際に高分子量アレイとして存在すること、この挙動は精製方法に起因するものではなく、実際には、同様の非極性N末端配列を有するFc融合タンパク質に内因性のものであることが示唆される。一般的なSDS-PAGE変性条件下(熱プラスβ-メルカプトエタノール)で電気泳動した場合、大多数の精製されたiBio-CFB03(レーン3)は見かけの分子量が約35kDaおよび約32kDaである2つのバンドに分離された。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製されたiBio-CFB03(レーン1)およびEND-81対照試薬(レーン2)についても同様の結果が得られる。これらの結果は、二重のバンドパターンが、精製方法または融合タンパク質のE3関連部分の一次配列に起因するものではなく、Fc融合パートナーのグリコシル化パターンの差異に起因する可能性があることを示すものである。さらに、見かけの分子量がiBio-CFB03二量体(約70kDa)、三量体(約110kDa)、および四量体(>150kDa)と一致するバンドも変性試料において観察され、これは精製方法に関係なく見られ、また、対照試薬においても観察された。これらの追加的なバンドから、高分子量アレイが、異常に安定であり、一般的な電気泳動変性条件に抵抗するものであり、また、疎水性ペプチドとヒトFcの融合物の追加的な特質であり得ることが示される。これらの挙動に起因して、SDS-PAGEはiBio-CFB03を特徴付けるために好ましい方法ではない。
【0292】
TFF保持液の純度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で評価し、非浸潤保持液と比較した(図30)。ネイティブな非還元条件下では、SECクロマトグラムから、保持時間6分(分子量1.2MDaに対応することが推定)において単一のiBio-CFB03ピークが明らかになり、これは、非浸潤バイオマスでは完全に存在しない。保持液は、主にiBio-CFB03産物で構成され、残りには植物宿主細胞タンパク質が寄与する。産物はPBSおよび生理食塩水に50mg/mLのレベルで可溶性である。
【0293】
ステップ10-陽イオン交換クロマトグラフィー
次いで、TFF保持液を、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーのために、濾過(公称保持評価1.2/0.2μm)、1Mの酢酸を用いてpHを5.3~5.7に調整すること、および超純水を添加することによって伝導率を4~6mS/cmに調整することによって調製した。CEXクロマトグラフィーの間に、最大250mMの塩化ナトリウムを用いて洗浄することによって残りの不純物を除去し(図31のCEX洗浄;図32のレーン3~5および9、図33の上部)、550mMの塩化ナトリウムを95%以上の純度で用いてiBio-CFB03を溶出した(図31のCEX溶出;図32のレーン6および10;図33の底部)。
【0294】
SDS-PAGEを使用してCEX画分の含有量を評価した(図32)。レーン2~7の試料を、266mMのβ-メルカプトエタノールの存在下、70℃で10分間加熱した後、ローディングした。レーン9および10の試料は、β-メルカプトエタノールを含有せず、電気泳動前の加熱も行わなかった。レーン3~5は、それぞれ100mM、150mMおよび250mMのNaClを含有する洗浄画分1A1、1A4および1A9に対応する(図29)。レーン6は、溶出画分1B2(550mMのNaCl)を示し、これは、iBio-CFB03産物を還元剤(例えば、熱およびβ-メルカプトエタノール)に曝露させた場合に観察可能な単量体種(約35kDa)、二量体種(約70kDa)、三量体種(約110kDa)および四量体種(約150kDa)を示すものである。溶出画分1B2をβ-メルカプトエタノールの不在下で、電気泳動前の加熱も行わずにローディ
ングした場合(レーン10)、HMW iBio-CFB-03多量体は、ゲルの起点で可視化することができる。
【0295】
ステップ11-ダイアフィルタレーション緩衝液の交換および滅菌濾過
次いで、iBio-CFB03 CEX溶出プール材料を12.5mg/mLまで濃縮し、緩衝液を、100kDaのMWCO TFF(安定化されたセルロース)を膜間差圧2~4psiで使用してTFFによってリン酸緩衝生理食塩水と交換した。
【0296】
ステップ12-バルク原薬の包装
バルク原薬を滅菌濾過し、バイオセーフティキャビネット内で、滅菌袋で包装した。バルク産物を最終的な充填のために選択された充填設備に移す。
【0297】
iBio-CFB03の特徴付け
iBio-CFB03のSE-HPLC分析
iBio-CFB03試料をSE-HPLCによって分析して、HMW多量体の純度を評価した。SE-HPLC分析はTSKgel G3000SW xL、7.8mm×30cm、5μmのカラムでUV検出を伴う1100シリーズHPLCシステムを使用して実施した。SE-HPLCの移動相は、50mMのリン酸ナトリウム(一塩基、一水和物)、リン酸ナトリウム(二塩基、無水物)および0.3Mの塩化ナトリウム、pH7.0からなるものであった。試料分析の前に、タンパク質混合物標準物質を調製し、20μLをカラムに注射した。サイログロブリン(0.5mg/mL)、BSA(1mg/mL)、オボアルブミン(1mg/mL)、α-ラクトアルブミン(1mg/mL)およびアプロチニン(0.4mg/mL)からなるSE-HPLCタンパク質混合物標準物質を使用して、試料クロマトグラフィーピークの分子量を決定した。移動相緩衝液をブランク注射として使用した。試料分析の前に、カラムを、移動相を用いて平衡化した。試料をカラムにおいて毎分1.0mLの流速で15分の総実行時間にわたって分離した。
【0298】
ChemStation Data Analysisソフトウェア(Agilent
Technologies、A.01.04 025)を用いてデータ解析を実施した。吸光度を220nmおよび280nmにおいて記録した。各試料のUVシグナルを統合し、検出された各ピークの相対的なパーセント存在量を決定した。パーセント相対的な存在量が0.1%以上の全てのピークを数量化の考慮に入れた。
【0299】
非還元条件下でのiBio-CFB03のSE-HPLC分析では6分の時点で主要なピークが示され、これは、図34に示されている通り、タンパク質混合物標準物質からのサイログロブリン二量体のピーク(1.2MDa)に明白に重ね合わされ、これにより、iBio-CFB03が高次タンパク質構造として存在することが示される。10.2分の時点でも別の小さなピークが観察され、これは、タンパク質混合物標準物質に重ね合わせるとおよそ50kDaのピークに対応する。12.6分および12.9分の時点の2つの小さなピークは280nmでは検出されず、非タンパク質不純物であるとみなされた。保持時間6分および10.2分におけるピークを別々に分画収集し、MALDI-TOF
MSを使用してそれらの同一性を決定するためにトリプシン消化に供した。
【0300】
iBio-CFB03のMALDI-TOF MS分析
iBio-CFB03試料を、HMW多量体の分子量を得るために非還元条件下および還元条件下でMALDI-TOF-MSによって分析し、その後、配列確認のためにトリプシン消化した。還元分析に関しては、試料を0.5MのBMEで処理し、70℃で10分間加熱した。シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(α-CHCA)(Sigma)およびシナピン酸マトリックスをトリプシンペプチドおよびそれぞれMALDI-TOF MSを使用した分子量決定のために使用した。シナピン酸マトリックス溶液を30:70アセ
トニトリル(ACN):0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中10mg/mLに調製し、α-CHCAマトリックスを1:1:1エタノール:ACN:0.1%TFA中10mg/mLに調製した。次いで、試料を0.5mLのエッペンドルフチューブ中に1:9の比で混合し、混合物1.5μLを分析のためにMALDIプレート上にスポットした。
【0301】
試料を完全に風乾させた後に分析し、およそ2~3分にわたってマトリックスと共結晶化させた。次いで、プレートをMALDI-TOF質量分析計にローディングした。ペプチド分析のための取得は手動で行い、計器のモードは「Reflector」、「Delayed」、および「Positive」に設定し、加速電圧およびグリッドはそれぞれ20kVおよび66~74%に設定し、遅延時間は約125nsecとした。ショット/スペクトルを150に設定し、500~4,000Daの質量範囲および400Daの低質量ゲーティングを用いた。較正およびデータファイルスペクトルを取得するためにα-CHCAマトリックスを選択した。取得を開始する前、イオン供給源およびミラー圧は常にそれぞれ5.0×10-7torr未満および1.2×10-7torr未満にした。最初のレーザーパワーは較正のために1250に設定し、スペクトル取得中に必要に応じて調整した。2点質量較正曲線を、標準の試験混合物におけるACTH(2,093.0867Daにおける1~17断片)分離の質量ピークおよびブラジキニン(904.4681Daにおける2~9断片)質量ピークを用いて作成し、標準操作手順(SOP)に詳述されている通りタンパク質試料分析に適用した。試験混合物スペクトルを再度取得することによって較正ファイルを試験し、いずれかのペプチドのモノアイソトピック質量が>±0.2Daである場合にはファイルを棄却し、再度取得した。各ペプチドのモノアイソトピック質量を較正に使用した。
【0302】
同様に、分子量分析に関しては、計器モードを「Linear」、「Delayed」および「Positive」に設定し、加速電圧を25kVとし、グリッドを66~74%に設定し、遅延時間を200nsecとした。ショット/スペクトルを200に設定し、4,500~200,000Daの質量範囲および4,000Daの低質量ゲーティングを用いた。較正およびデータファイルスペクトルを取得するためにシナピン酸マトリックスを選択した。最初のレーザーパワーは較正のために1800に設定し、ペクトル取得中に必要に応じて調整した。1点較正曲線を、ミオグロビン(11,652.52Da)平均質量ピークを用いて作成した。
【0303】
還元条件下でのiBio-CFB03のMALDIスペクトルでは、m/z31,166.94[M+H]およびm/z33,068.88[M+H]が示され、これは、それぞれグリコシル化されていない(E3-Fc Non-gly)iBio-CFB03およびグリコシル化された(E3-Fc Gly)iBio-CFB03を表す(図35)。スペクトルは、安定な多量体の単量体サブユニットを示す。
【0304】
iBio-CFB03の還元バンドおよび非還元バンドのゲル内トリプシン消化を実施して、バンドの同一性を確認した(図36)。還元条件については、分子量マーカーに従って、バンド1は約35kDaに対応し、バンド2は約70kDaに対応し、バンド3は約100kDaに対応する。次いで、各バンドからのトリプシンペプチドを使用してiBio-CFB03の配列カバレッジを得た。非還元条件については、バンド1は、決してウェルから離れないHMW多量体である。
【0305】
iBio-CFB03還元バンド1のゲル内トリプシン消化により、E3およびHMW多量体のFc領域に由来するいくつかのペプチドがもたらされた(図37)。以下に示されているiBio-CFB03配列では、E3ペプチドが黄色で強調表示されている。MALDIスペクトルにおいて、同定されたペプチドの全ての配列が色分けされ、それらのそれぞれの質量が強調表示されている(図38)。
【0306】
iBio-CFB03のさらなる特徴付け
さらなる分析を使用してiBio-CFB03を特徴付ける。iBio-CFB03の均一性を評価し、また、分子量の推定値を導き出すことができる分子の直径を決定するために、ネガティブ染色電子顕微鏡を使用する。iBio-CFB03のグリコシル化パターンの特徴付けも実施する。
【0307】
RP HPLCカラムでの分離によって調製されたiBio-CFB03の正確な分子量を決定するために、HPLCとインターフェース接続した四重極飛行時間(Q-TOF)を使用してさらなる質量分析分析を実施する。
【0308】
効力アッセイ
iBio-CFB03の効力の提案された評価では、線維症に関与する2つのメディエーターである、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)の活性およびマトリックスメタロプロテアーゼ-1(MMP-1)のタンパク質含有量を評価するために、二峰性の手法をとる。uPAおよびMMP-1アッセイを使用して、iBio-CFB03バッチの効力を、以前の機構的試験におけるそれらの頑強性に基づいて推定する。
【0309】
iBio-CFB03の概念実証および特定の作用機構を決定するために、いくつもの実験を実施した。これらの試験および結果は、本明細書に詳細に記載されている。大多数の概念実証アッセイおよび作用機構実験は、E3ペプチドのアミド化した形態であるE4を用いて実施した。組換えiBio-CFB03を使用して以下に提案されている効力アッセイを実施し、条件づける。
【0310】
uPA活性アッセイ
ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子は、その受容体uPARと共に、プラスミノーゲンのプラスミンへの変換をもたらすタンパク質分解カスケードを開始する(Choongら、Clin Orthop Relat Res.2003;415:S46-58)。uPAは、細胞外のタンパク質分解において、下流の酵素を活性化し、細胞外マトリックス(ECM)と相互作用するプラスミノーゲン系におけるその役割を介して重要な機能を有する。さらに、臓器の選択では、uPAは、抗線維化因子である潜在的なHGFの化学量論的活性化において重要である(Naldiniら、J.Biol.Chemistry 1995;270:603-611)。uPAは、細胞外環境においてまたはuPARと結合している間にタンパク質分解により活性化される不活性タンパク質として産生される。IPF患者ではuPAのレベルが有意に低下し(Guntherら、ThrombosisおよびHaemostasis 2000;83:853-860)、また、肺線維症の患者の気管支肺胞洗浄液ではプラスミノーゲン活性化が損なわれることが報告されている。多数のグループにより、uPAには種々の臓器および動物モデルにおける抗線維化効果があることが実証されている。例えば、喘息のマウスモデルでは、吸入されたuPAにより気道リモデリングが低減し(Kuramotoら、Am.J Physiol.-Lung Cell.Mol.Physiol.2009;296:L337-346)、マウス肺におけるuPAのトランスジェニック発現により、線維症からの保護がなされた(Sissonら、Human Gene Yherapy 1999;10:2315-2323;Sissonら、Am.J Physiol.-Lung Cell.Mol.Physiol.2002;283:L1023-1032;Idell、Am J Respir Crit Care Med 2003;168:1268-1269)。Hsuらにより、SScの患者およびIPFの患者の線維化肺組織ではuPAのレベルが低下することが示されている(Arthritis Rheum 2011;63:783-794)。試験から、E4によりuPAのレベルおよび活性が低下することも実証されている。
【0311】
初代ヒト線維芽細胞を、ヒト組換えTGF-β(10ng/ml)またはビヒクル対照としてPBSと共に、iBio-CFB03(10μg/ml)またはDMSO(陰性対照)と共にインキュベートすることによってアッセイを実施する。Molecular InnovationsからのuPA活性アッセイ(Human uPA Activity ELISA Kit、カタログ番号HUPAKT)を使用して初代ヒト線維芽細胞におけるuPAの活性を測定する。アッセイは、ヒトPA-1と共有結合することができるuPAを検出するELISAである。アッセイの原理は、試料中の機能的に活性なuPAが、アビジンをコーティングしたプレートに結合したビオチン化ヒトPA-1と共有結合による複合体を形成するというものである。次いで、結合したuPAを、西洋ワサビペルオキシダーゼ二次Abと反応する抗uPA一次抗体(Ab)を用いて検出し、その後、テトラメチルベンジジン(TMB)基質を用いて450nmにおいて検出する。不活性のuPAまたは複合体を形成しているuPAは結合せず、検出されない。呈色の量は、試料中の活性なuPAの濃度に正比例する。試料中の活性なuPAの濃度は、uP検量線から決定される。
【0312】
MMP-1タンパク質および活性アッセイ
MMPは、ECMおよび他のタンパク質を切断する亜鉛依存性プロテアーゼである(Amalineiら、2007)(Parksら、Nature Reviews Immunology 2004;4:617-629)。MMP-1は、プロトタイプ間質性コラゲナーゼ1であり、ヒト組織における線維化コラーゲンの分解に重要な酵素である(Amalineiら、Rom J Morphol Embryol 2007;48:323-334)。MMPの活性が増大することにより線維症が消散し得るという証拠は、種々の癌を治療するために、広範に作用するメタロプロテアーゼ阻害剤を使用し、MMP阻害剤で、患者に、どちらもSScにおいて生じる皮膚の肥厚および関節拘縮が発生した臨床試験の報告によってもたらされる(Parksら、Nature Reviews
Immunology 2004;4:617-629に概説されている)。MMP-1の治療的潜在性を支持する科学的証拠が存在し、例えば、MMP-1の一過性発現が肝線維症を減弱するのに十分であり(Iimuroら、Gastroenterology
2003;124:445-458;transgenic mice expressing MMP-1 in mouse macrophages have decreased collagen deposition George、Clin Sci(Lond)2012;122:83-92;Foronjy、Hypertension Res.2008;31:725-735);ヒトMMP-1の発現により心筋線維症が予防され(Foronjyら、Hypertension Res.2008;31:725-735)、また、組換えMMP-1により筋肉線維症が消散する(Kaarら、Acta Biomaterialia 2008;4:1411-1420)。Yamaguchiらは、E4により、コラーゲンの架橋結合および安定化に関与する酵素であるリシルオキシダーゼ(LOX)のレベルが低下することを以前報告している(Sci Transl Med.、2012;4:136ra171)。これらの所見から、E4により、LOXが減少し、したがって、MMP-1およびMMP-3のレベルが上昇することによりECMの分解が容易になることによってECMが弱まることが示唆される。これにより、E4の、進行中の線維症をMMP媒介性マトリックス分解によって低減する能力も説明される。プラスミノーゲン系を介したMMP-1およびMMP-3の活性化は文献で十分に裏付けられている(Gharaee-Kermaniら、Exp.Op.Invest.Drugs 2008;17:905-916に概説されている)。MMP-1およびMMP-3はまた、HGFによっても誘導され得る(Jinninら、Nucleic Acids Research 2005;33:3540-3549;Kanemuraら、Hepatology Res.2008;38:930-939;Monvoisinら、Int.J.Cancer 2002;97:157-162
;Dunsmoreら、J.Biol.Chem.1996;271:24576-24582;Huetら、Biochem.Pharmacol.2004;67:643-654)。
【0313】
他の試験から、E4により、ヒト初代線維芽細胞におけるMMP-1発現が誘導されることが明らかになった。データから、E4を用いて処理した線維芽細胞の上清においてMMP-1活性が上昇することも示される。MMP-1レベルを、iBio-CFB03についての効力試験の一部として、初代線維芽細胞におけるMMP-1タンパク質レベルの定量的測定として市販のELISAキット(Sigma-Aldrich、カタログ番号RAB0362-1KT)を使用してアッセイする。簡単に述べると、試料を、固定化されたMMP-1抗体でコーティングされた96ウェルプレートにピペットで入れ、続いて洗浄した後、ビオチン化ヒトMMP-1抗体と共有結合による複合体を形成させる。結合したMMP-1を西洋ワサビペルオキシダーゼと反応させ、次いで、TMB基質溶液を用いて検出する。不活性なMMP-1または複合体を形成しているMMP-1は結合せず、検出されない。呈色の量は、試料中のMMP-1の濃度に正比例し、色の全体的な強度を450nmにおける吸光度によって決定する。
【0314】
初代線維芽細胞におけるMMP-1活性レベルを、市販の抗体アレイキット(RayBiotech カタログ番号AAH-MMP-1)を使用してもアッセイする。簡単に述べると、試料を、抗体でコーティングした膜を含有する8ウェルインキュベーショントレーにピペットで入れ、インキュベートする。続いて洗浄した後、試料をビオチン化抗体と共にインキュベートする。結合したMMP-1を、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたストレプトアビジンと反応させ、その後、検出緩衝液を用いて検出する。FluorChemRイメージングシステム(ProteinSimple)を用いて測定される通り、シグナル強度は試料中の活性なMMP-1の濃度に正比例する。
【0315】
安定性評価
iBio-CFB03を、リアルタイムの実際の状態での安定性について、標識された保管の状態、凍結した状態、および加速された状態で、植物により産生されたポリペプチドの少なくとも3つのバッチ(DS)について、および投与のために製剤化されたポリペプチドの各ロット(DP)について評価する。DSについての安定性試験の持続時間は、リアルタイムの実際の状態および凍結した状態については12カ月であり、加速された状態については6カ月である。DPについての安定性試験の持続時間は、リアルタイムの実際の状態および凍結した状態については36カ月であり、加速された状態については6カ月である。DSについては、全ての状態についての試験頻度を、放出時および3カ月毎とする。DPについては、リアルタイムの実際の状態および凍結した状態についての試験頻度は、放出時および3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、18カ月、24カ月および36カ月とし、加速された状態については放出時および3カ月毎とする。DPの保管方向、直立、倒立および水平の位置について、安定性を評価する。
【0316】
非臨床
非臨床有効性試験の要約
エンドスタチンならびに化学的に合成されたペプチドであるE3およびE4を用いて実施した試験により、抗線維化効果の別の証拠がもたらされた。これらの化学的に合成されたペプチドは、iBio-CFB03で見られるような高分子量多量体を形成しない。ヒト皮膚ex vivoモデルにおいてTGF-βの皮内注射によって線維症が誘導された、またはC57BL/6マウスにおいてTGF-βもしくはブレオマイシンの皮下(s.c.)投与によって線維症誘導された、SScモデルにおいて、有効性が観察された。化学合成によって作製されたE3ペプチドおよびE4ペプチドを皮内投与またはs.c.投与した場合、皮膚の厚さ、コラーゲン含有量、およびヒドロキシプロリン含有量の低減に
よって実証された通り、これらのモデルにおける線維症が減弱した。ブレオマイシンによって誘導されるSScマウスモデルでは、予防的投薬レジメンおよび介入的投薬レジメンのどちらでも線維症の低減が実現された。これらのペプチドは、ヒト肺線維芽細胞の初代培養物においてTGF-β処理によって誘導されるIPFモデル、またはC57BL/6マウスの肺にブレオマイシンを滴下注入することによって誘導されるIPFモデルにおいても有効であった。ペプチドを、線維芽細胞培養物に投与した、または、マウスに、経口的に、静脈内にもしくは気管内にもたらした。
【0317】
エンドスタチンは、抗線維化薬として有用であり得る。エンドスタチンにより、機械的創傷によって誘導されるウサギ耳瘢痕モデルにおいて(Zhiyongら、Int J Low Extrem Wounds 2012;11(4):271-276;Renら、J.Zhejiang Univ.Sci.B.2013;14(3):224-230)、ラットへの気管内(i.t.)ブレオマイシン投与によって誘導されるIPFモデルにおいて(Wanら、Respir Res.2013;14(1):56)、マウスへの四塩化炭素の投与によって誘導される肝線維症モデルにおいて(Chenら、Exp Biol Med.2014;239(8):998-1006)、およびラットへのストレプトゾトシン投与によって誘導される糖尿病/腎線維症モデルにおいて(Baiら、Plos One.2014;9(4):1-12)、傷害パラメーターが逆転した。
【0318】
ペプチドE3およびE4を用いて以前に確立されたモデルに基づいて、iBio-CFB03を様々な用量および投薬スケジュールで用いたin vivo試験を行う。組換えiBio-CFB03も効力アッセイにおいて使用する。
【0319】

【表6】
【0320】
in vivoマウスSScモデル
ブレオマイシンの気管内投与によって12日の時間枠内に肺線維症を誘導することができる、マウスSScモデルが確立されている(図39を参照されたい)。このモデルは、線維症の発生を減弱するためにエンドスタチンペプチドE3およびE4を使用する経験に基づいて構築されたiBio-CFB03の有効性を実証するために使用されている(Yamaguchiら、Sci Transl Med.、2012;4:136ra171)。このモデルにおいて、ブレオマイシンを用いた処置の10日後および21日後にSircolアッセイを用いて肺組織像およびコラーゲン含有量を測定した(Yamaguchiら、Sci Transl Med.、2012;4:136ra171)。
【0321】
ヒドロキシプロリンは、コラーゲンに特有のアミノ酸であり、このタンパク質を数量化するために伝統的に使用されている。当該方法により、湿組織1mg当たりのヒドロキシプロリンの総量の定量的決定がもたらされる。当該技法により、ヒドロキシプロリンを測定するためのハイスループットかつ正確な方法がもたらされ、それにより、コラーゲンを
様々な形式で数量化することが可能になる。一部の例では、線維化組織の割合および分布を評価するために、ヒドロキシプロリン含有量アッセイを、トリクローム染色技法(または適切な代替)を使用する独立した線維症の組織学的決定によって補完するべきである。
【0322】
組織線維症/コラーゲン沈着を評価するために、ヒドロキシプロリン数量化アッセイを実施した。肺試料を取り出し、6NのHCl 1mL中、110℃で一晩、消化した。6NのNaOHを用いて中和した後、pHを6.0~9.0の範囲内に調整し、試料をクロラミンT溶液(1.4%クロラミンT、10%イソプロパノール、0.5Mの酢酸ナトリウム、pH6.0)1mLと混合し、室温で20分置いた。クロラミンT溶液を用いた処理後、試料を、エーリッヒ溶液(14.9%pジメチルアミノベンズアルデヒド、70%イソプロパノール、20%過塩素酸;Sigma-Aldrich)1mLと混合し、65℃で15分インキュベートした。一定分量を96ウェルプレートに移し、570nmにおける吸光度を測定した。コラーゲン含有量を、ヒドロキシプロリン1μgが6.94μgに対応する換算係数を使用して、シス-4ヒドロキシ-L-プロリン(Sigma-Aldrich)を用いて作成した検量線と比較することによって算出した。このアッセイは、下記のiBio-CFB03を使用する試験において使用されており、また、このマウスモデルにおける非臨床試験において使用される。
【0323】
ブレオマイシンマウスモデルにおけるiBio-CFB03の静脈内投与および経口投与
C57BL/6マウスに、ブレオマイシンi.t.を、iBio-CFB03の静脈内(IV)投与と併せてもたらした、または、ブレオマイシンの8日後にiBio-CFB03をIV投与した。マウスを12日目に屠殺し、H&E染色(図40)およびヒドロキシプロリンアッセイ(図41)の両方のために肺試料を取得した。実験計画図を図39において見ることができる。ブレオマイシンのみを用いて処置したマウスと比較して、iBio-CFB03、IV、マウス当たり100μgまたは200μgで繰り返し処置したマウスでは、ヒドロキシプロリンアッセイを使用して評価された通り、肺線維症が低減した。いずれの用量で静脈内投与されたiBio-CFB03も、50μgで経口投与されたiBio-CFB03と同様の有効性を有すると思われた。ブレオマイシン処置の8日後に投与されたiBio-CFB03(経口的および静脈内のどちらも)でも線維症が低減すると思われた。しかし、これらの群のそれぞれで処置されたマウスは3匹のみであった。したがって、これらの実験を、iBio-CFB03をマウス当たり200μgでIV投与すること(n=9)またはマウス当たり50μgで経口投与すること(n=9)を用いて繰り返した(図42)。マウス当たり100μgのiBio-CFB03を用いてIV処置したマウスでは、ブレオマイシンのみを用いて処置したマウスと比較して肺線維症が低減した。IVまたは経口経路のいずれによる投与でも有効性は同様であると思われた。
【0324】
iBio-CFB03により、同時投与か線維化トリガー後の投与か(d8と表される)にかかわらず、in vivoにおいて、ブレオマイシンによって誘導される肺線維症が好転した。1×PBSをビヒクルとして使用した。平均コラーゲン値は、肺当たりのマイクログラム数として示される。iBio-CFB03を経口投与(経口)または静脈内投与(IV)した。図41のエラーバーは、平均の標準偏差を表す。P値を、クラスカル・ワリス検定、その後、マン・ホイットニーのU検定を使用して算出した。
【0325】
マウス皮膚SScモデルにおけるiBio-CFB03の浸透圧ポンプ投与
C57BL/6マウスに、33mUのブレオマイシンを7日間、ブレオマイシンを皮下送達するためにマウスの背中に外科的に埋め込んだミニ浸透圧ポンプを使用してもたらした。7日目に、ポンプを取り出し、iBio-CFB03460μgを含有するポンプと交換し、さらに7日間にわたってs.c.投与した。35日目にマウスを屠殺し、ポンプ
部位と逆側の背中から皮膚を切り取り、ホルマリン固定し、パラフィンに包埋した。皮膚切片をH&Eで染色し(図43)、皮膚の厚さ(図44)を測定した。iBio-CFB03を用いて処置したマウスでは、ヒドロキシプロリンアッセイを使用して評価された通り、皮膚の厚さが減少した。
【0326】
ex vivoヒト皮膚SScモデル
TGF-βの注射によって誘導されるヒト皮膚SScモデルにおいてiBio-CFB03の有効性を評価した。TGF-βにより、SScの皮膚特性の病理学的変化が誘導される。iBio-CFB03をTGF-βと同時に投与した場合、ヒト皮膚におけるTGF-βによって誘導された線維症が減弱した。TGF-β10ngと同時に投与した場合、iBio-CFB03の100μgの単回皮内投薬により、投薬の1週間後にヒドロキシプロリンアッセイによって評価したところ、コラーゲンの増加が予防された(図45)。
【0327】
ヒト皮膚を腹部外科手術から得、不要な部分を切り取り、脂肪を取り除き、約1×1インチの小片に切断した。小片を気相液相界面において器官培養物中で維持した。小片にビヒクル(V)、TGF-β(T)またはTGF-β+iBio-CFB03(T+iBio-CFB03)を100μlの体積で注射した。用量:ビヒクル=1×PBS100μl;T=TGF-β10ng;T+iBio-CFB03=TGF-β10ng+iBio-CFB03 100μg。1週間(7日)後、皮膚の3mmの穿孔を得、皮膚穿孔におけるヒドロキシプロリンを測定した。データは、n=3/群を表す。は、p<0.05を示す。
【0328】
iBIO-CFB03を支持するE4データの正当化
前臨床的線維症モデルにおけるC末端エンドスタチンペプチドの有効性および作用機構の評価を、化学的に合成されたE3、および密接に関連するペプチドであるE4を使用して実施した。E4は、E3とは、E3ペプチドを安定化するためにC末端アミドが付加されていることにより異なる。組換えiBio-CFB03を使用した有効性および機構的試験を行って、化学的に合成されたE3およびE4を用いて以前に実証された抗線維化活性を確認する。iBio-CFB03により、E3/E4の溶解性、安定性および精製が改善され、また、別の前臨床試験において有望な結果が示されている。
【0329】
E4ペプチドを用いた作用機構試験
E4が抗線維化活性を発揮する機構を同定するために、いくつかの実験を実施した。種々の線維化トリガーを用いて刺激した初代ヒト肺線維芽細胞またはマウス肺組織から抽出されたRNAに対して、エンドスタチンペプチドによる影響を受ける遺伝子を同定するために、E4による処理の不在下および存在下で、リアルタイム定量的PCR(qPCR)に基づくアレイを実施した。
【0330】
アレイにより、以前に線維症に関係づけられたいくつかの遺伝子がE4による処理の影響を受けることが同定された。これらの遺伝子には、結合組織増殖因子(CTGF)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)-3、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-1およびMMP-3、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子(PAI)-1、および肝細胞増殖因子(HGF)が含まれ、表5に示されている通り、E4の存在下でレベルが低下または上昇した。
【0331】
【表7】
【0332】
作用機構の概要およびモデル
要約すると、エンドスタチンに由来するペプチドであるE4は、2種の異なる線維化トリガー、ブレオマイシンおよびTGF-βの適用後に、in vitro、in vivoおよびex vivoにおいて抗線維化効果を発揮する(Yamaguchiら、Sci Transl Med.、2012;4:136ra171)。E4により、線維化促進因子CTGFおよびIGFBP-3のレベルが低下し、また、MMP-1およびMMP-3のレベルおよび活性の上昇が誘導される。さらに、E4により、プラスミノーゲン系が活性化し、uPAのレベルおよび活性が上昇し、uPA阻害剤であるPAI-1のレ
ベルが低下し、また、プロHGFのその活性な鎖への変換が誘導される。E4は、PAI-1の下方調節およびuPA活性の上昇によって抗線維化効果を発揮し、それにより、HGF活性化、線維化中間体であるCTGFおよびIGFBP-3の減少、ならびに活性なMMP-1およびMMP-3産生の誘導によるECM分解の増加が導かれる。標的特異性は、図46に示されている概略図に要約されている。
【0333】
PKおよび毒性学的試験
薬物動態試験
血清および皮膚を含めた生物検体中のiBio-CFB03を検出する方法(1つまたは複数)を確立する。iBio-CFB03の薬物動態学および代謝を動物において評価する。最初の探索的試験をマウスにおいて行って、iBio-CFB03の血清中濃度を決定し、効果的なIV用量と循環薬物レベルの関係の確立を開始する。iBio-CFB03吸収の潜在的な種差を調査するため、および急性および慢性毒性学的試験について提案された2つの種におけるiBio-CFB03の血清中濃度を決定するために、ラットおよびウサギにおける探索的PK試験も行う。ラットおよびウサギにおけるiBio-CFB03のより包括的なPK/ADME評価を行って、PKプロファイルおよび用量直線性を特徴付ける。PK/ADME評価の一部は、提案された毒性学的試験の毒物動態学部分において行う。
【0334】
エンドスタチンPKの評価に使用した(Thomasら、J Clin Oncol.2003;21(2):223-231)市販のポリクローナル酵素イムノアッセイ(EIA)96ウェルプレートアッセイ(Accucyte,Cytimmune Sciences Inc.,College Park、MD)を、iBio-CFB03を検出するその能力について試験する。Thomasらにより公開された方法に加えて、免疫グロブリンY(IgY)抗体を免疫学的試験に使用することの実現性を調査する。IgY抗体は、哺乳動物抗原に対して、抗体/抗原複合体がどちらも哺乳動物供給源に由来する系よりも低い交差反応性およびバックグラウンドを生じる。さらに、組織または生体液におけるPK解析および他の数量化の必要性のためのサンドイッチELISAを構築する目的でiBio-CFB03に対するマウスモノクローナル抗体を発生させる。iBio-CFB03に特異的な免疫試薬を生成するための追加的な技術として、工学的に操作して結合および検出試薬を生成することができる単鎖可変結合性断片(scFv)または組換えモノクローナルIgY抗体を生成するための出発材料としてポリクローナルIgY抗iBio-CFB03抗体を生成するために、ニワトリ脾臓細胞を使用する。
【0335】
組織および生体液におけるiBio-CFB03を検出するための高感度かつ高特異度のサンドイッチELISAが不可能である場合には、選択的に検出するために、特異的なペプチド断片に対して高レベルの感度をもたらす多重反応モニタリングを使用して、エンドスタチン関連ペプチドのMS/MSに基づくアッセイを展開する。理想的には、そのようなアッセイは、iBio-CFB03を天然のレベルのエンドスタチンまたはその前駆コラーゲン分子と区別するために、iBio-CFB03に独特のペプチド断片に焦点を合わせる。この手法の成功は、複雑な生体試料中のそのような断片を検出できることにも依存し、また、試料を「脱複雑化」して検出および再現性を最大にするための特定の組織/生体液調製および分離プロトコールを必要とする。
【0336】
一部の場合では、生物分析評価のために、iBio-CFB03を特徴付けるための方法が採用される。これらの方法としては、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)、イムノアッセイ、およびLC/MS-MSが挙げられる。
【0337】
iBio-CFB03についての適切な生物分析方法の確立後、マウスにおいて、iBio-CFB03のIV投与を評価するため、ならびに概念実証マウス試験から同定され
た効果的な用量レベルと血清および標的組織中の薬物のレベルの間の可能性のある関係の確立を開始するための最初の予備試験を行う。iBio-CFB03が急性および慢性毒性学的試験に使用した2つの種において効果的であることを確立するために、ラットおよびウサギにおける予備PK試験も使用する。さらに、iBio-CFB03吸収およびPKプロファイルの潜在的な種差を同定する。
【0338】
探索的試験後、PKプロファイルおよび用量直線性を特徴付けるため、および第1相試験における用量選択を支持するために、ラットおよびウサギにおけるiBio-CFB03のより包括的なPK/ADME評価を行う。これらの試験のデザインは、投薬前、投薬直後、および最大で投薬の120時間後の血液収集を含む。動物の群を、試料採取の間に、種および試料採取の頻度に応じて交互交替的にするまたは終末収集を予定する(ラットのみ)。終末収集を予定したラットからは皮膚も収集する。iBio-CFB03の血清中レベルおよび皮膚中レベルを評価する。
【0339】
毒性学的試験の毒物動態学部分でさらなるPK/ADME評価を行い、単回および複数回(毎日/週に1回)用量投与後にiBio-CFB03のPKを評価する。
【0340】
単回投薬毒性学
GLP動物毒性学的試験のための用量選択を容易にするため、および第1相試験での健康な志願者における試験の開始を支持するために、スプラーグドーリーラットおよびニュージーランドホワイトウサギにおける非GLP単回投薬毒性学的試験を行う。
【0341】
非GLP急性ラット毒性学的試験
iBio-CFB03の毒性を、雄および雌成体スプラーグドーリーラットにおいて、単回静脈内投与後に評価する。3つの用量レベルで静脈内投与したiBio-CFB03を評価し、対照としてビヒクルの単回静脈内投与をもたらしたラットの1つの群と比較する。潜在的な毒性および試験群間の統計学的差異の適切な決定をもたらすために、この型の試験の標準作業方法に基づいて、群当たりおよび性別当たり3匹のラットを使用する。
【0342】
評価は、死亡率、罹患率、臨床的知見、および体重変化の評価を含む。血液試料を、血液学的検査、臨床化学的検査、および凝固パラメーター評価のために収集する。臓器を秤量し、あらゆる肉眼での病理学的変化について検査する。肉眼での剖検所見が未決定の臓器に対して病理組織検査を実施する。
【0343】
皮膚検体および血清におけるiBio-CFB03の決定を使用して全身および標的臓器の曝露を評価する。皮膚検体および血清におけるMMP-1およびuPAレベルをこれらのSScバイオマーカーのベースライン評価のために決定する。
【0344】
ラットは、毒性を評価するためのモデル種のうちの1つであり、この目的に関して全ての規制当局の毒性試験ガイドラインにより推奨される種のうちの1つであるので、これらの試験に使用する。
【0345】
非GLP急性ウサギ毒性学的試験
iBio-CFB03の毒性をニュージーランドホワイト雄および雌成体ウサギにおいても、単回静脈内投与後に評価する。3つの用量レベルで静脈内投与したiBio-CFB03を評価し、対照としてビヒクルの単回静脈内投与をもたらしたウサギの1つの群と比較する。潜在的な毒性および試験群間の統計学的差異の適切な決定をもたらすために、この型の試験の標準作業方法に基づいて、群当たりおよび性別当たり2匹のウサギを使用する。
【0346】
評価は、死亡率、罹患率、臨床的知見、および体重変化の評価を含む。血液試料を、血液学的検査、臨床化学的検査、および凝固パラメーター評価のために収集する。臓器を秤量し、あらゆる肉眼での病理学的変化について検査する。肉眼での剖検所見が未決定の臓器に対して病理組織検査を実施する。
【0347】
皮膚検体および血清におけるiBio-CFB03の決定を使用して全身および標的臓器の曝露を評価する。皮膚検体および血清におけるMMP-1およびuPAレベルをこれらのSScバイオマーカーのベースライン評価のために決定する。
【0348】
ウサギは、毒性を評価するための別のモデル種であり、この目的に関して全ての規制当局の毒性試験ガイドラインにより推奨される種のうちの1つであるので、これらの試験に使用する。
【0349】
反復投薬毒性学的試験
第1相試験での健康な志願者における試験の開始を支持するために、スプラーグドーリーラットおよびニュージーランドホワイトウサギにおいて28日間反復投薬GLP毒性学的試験を行う。
【0350】
28日間反復投薬GLPラット毒性学的試験
iBio-CFB03の毒性を、雄および雌成体スプラーグドーリーラットにおいて、連続して28日間、2日に1回(3回/週)の静脈内投与を評価する。3つの用量レベルで静脈内投与したiBio-CFB03を評価し、対照としてビヒクルの単回静脈内投与をもたらしたラットの1つの群と比較する。用量選択は、PKラット試験からの所見、ならびに予備および単回投薬ラット毒性学的試験において同定された最大の耐容性が示される/実行可能かつNOAEL用量に基づく。
【0351】
主要な試験部分に加えて、28日間回復期間および毒物動態学分析には動物のサテライト群を含める。
【0352】
試験デザインを表6に要約する。
【0353】
【表8】
【0354】
群当たりおよび性別当たりのラットの数は、潜在的な毒性および試験群間の統計学的差異の適切な決定をもたらすために、この型の試験の標準作業方法に基づく。
【0355】
評価は、死亡率、罹患率、臨床的知見、および体重変化の評価を含む。血液試料を、血液学的検査、臨床化学的検査、および凝固パラメーター評価のために収集する。臓器を秤量し、あらゆる肉眼での病理学的変化について検査する。肉眼での剖検所見が未決定の臓器に対して病理組織検査を実施する。
【0356】
皮膚検体および血清におけるiBio-CFB03レベルの決定を使用して全身および標的臓器の曝露を評価する。皮膚検体および血清におけるMMP-1およびuPAレベルをこれらのSScバイオマーカーのベースライン評価のために決定する。
【0357】
ラットは、毒性を評価するためのモデル種のうちの1つであり、この目的に関して全ての規制当局の毒性試験ガイドラインにより推奨される種のうちの1つであるので、これらの試験に使用する。
【0358】
28日間反復投薬GLPウサギ毒性学的試験
iBio-CFB03の毒性を、ニュージーランドホワイト雄および雌成体ウサギにおいて、連続して28日間、1日1回の静脈内投与した後に評価する。3つの用量レベルで静脈内投与したiBio-CFB03を評価し、対照としてビヒクルの単回静脈内投与をもたらしたウサギの1つの群と比較する。用量選択は、PKウサギ試験からの所見、ならびに予備および単回投薬ウサギ毒性学的試験において同定された最大の耐容性が示される/実行可能かつNOAEL用量に基づく。
【0359】
主要な試験部分に加えて、28日間回復期間および毒物動態学の分析には動物のサテライト群を含める。
【0360】
試験デザインを表7に要約する。
【0361】
【表9】
【0362】
群当たりおよび性別当たりのウサギの数は、潜在的な毒性および試験群間の統計学的差異の適切な決定をもたらすために、この型の試験の標準作業方法に基づく。
【0363】
評価は、死亡率、罹患率、臨床的知見、および体重変化の評価を含む。血液試料を、血液学的検査、臨床化学的検査、および凝固パラメーター評価のために収集する。臓器を秤量し、あらゆる肉眼での病理学的変化について検査する。肉眼での剖検所見が未決定の臓器に対して病理組織検査を実施する。
【0364】
皮膚検体および血清におけるiBio-CFB03の決定を使用して全身および標的臓器の曝露を評価する。皮膚検体および血清におけるMMP-1およびuPAレベルをこれらのSScバイオマーカーのベースライン評価のために決定する。
【0365】
ウサギは、毒性を評価するためのモデル種であり、この目的に関して全ての規制当局の毒性試験ガイドラインにより推奨される種のうちの1つであるので、これらの試験に使用する。
【0366】
非臨床開発計画
iBio-CFB03の非臨床開発は、構造的に関連するエンドスタチンペプチドを用いて実証された、以前に実証された抗線維化活性を確認するために、線維症モデルにおいて有効性を評価することを含む。iBio-CFB03の抗線維化活性をさらに特徴付けるために、その作用機構を探索する試験も使用する。さらに、iBio-CFB03の薬物動態を評価する。
【0367】
iBio-CFB03の免疫原性をラットおよびウサギにおいて抗薬物抗体に対して評価する。最初のスクリーニングアッセイを行い、スクリーニングアッセイで陽性と試験された試料を、確証的アッセイを使用して再試験する。あらゆる中和抗体活性を測定するために中和アッセイも実施する。
【0368】
潜在的なiBio-CFB03の毒性をラットおよびウサギにおいて評価する。最初の予備試験を使用して、急性のiBio-CFB03の単回投薬後の動物の耐容性および化合物利用可能性に基づいて、最大の耐容性が示される用量を実現する、または他の点では、最大の実行可能な用量を確立する能力を探究する。GLPコンプライアンスの下で28日間の反復投薬投与(2日に1回;3回/週)後の潜在的なiBio-CFB03の毒性を探究するために、ラットおよびウサギにおける反復投薬試験も行う。単回投薬および28日間GLP反復投薬試験の未決定の転帰について、慢性使用を支持するために、6カ月間反復投薬GLP試験で齧歯類および非齧歯類種の両方における慢性毒性学的試験を行う。
【0369】
臨床
進行固形腫瘍を有する患者における組換えヒトエンドスタチンの第1相PK試験およびPD試験において、最大300mg/mの用量の1時間にわたる静脈内注入で毎日もたらしたところ、エンドスタチンが、有意な薬物関連毒性を基本的に有さず、耐容性がよいことが実証された(Thomasら、J Clin Oncol.2003;21(2):223-231)。
【0370】
オープンラベル、2セグメント第1相試験を正常な健康な志願者(NHV)およびSSc患者において行って、静脈内投与されたiBio-CFB03の安全性、免疫原性、および薬物動態学を評価する。セグメントAは、単回投薬、用量漸増デザインである。このセグメントの完了後、データ安全性監視委員会(DSMB)により、PKおよび安全性データの精査が行われて、最大耐量(MTD)が決定される。SSc患者は、第1のセグメントからのMTDでの反復投薬曝露に関する試験のセグメントBに登録される。セグメントBでは、第1の投薬と第2の投薬の間の待ち期間(1週間)および/または投薬スケジュール(投薬2の後の他の日)を必要に応じて調整した。
【0371】
試験のセグメントAにおける評価のための最大用量5mgを、マウス-ブレオマイシンモデルにおける概念実証試験からの結果に基づいて、可能な治療用量として選択した。これらの試験では、iBio-CFB-3の有意な効果が認められる最小用量は動物当たり20μgであった。これを、FDA Guidance to Industryにおいて提供される換算係数を使用してヒト相当用量(HED)のスケールにする:Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics
in Adult Healthy Volunteers(2005年7月)には、
[マウス20g当たり20μg]0.08160kgのヒト=用量当たり4.8mg
と示されている。
【0372】
この第1相臨床試験についての最大ヒト用量を10倍超過する安全係数がもたらされるように毒性学的試験をデザインする。
【0373】
免疫原性試料採取
iBio-CFB03は治療用タンパク質であるので、臨床研究に登録された志願者を抗薬物抗体(ADA)の発生率についてモニタリングする。ADAスクリーニングのための血清試料は、第1の投薬の前、最終的な投薬の前(セグメントB参加者のみ)、最終的な投薬の14日後、および28日後に収集する。
【0374】
薬物動態学試料採取
試験のセグメントAでは、iBio-CFB03の薬物動態(Cmax、AUC0∞、血清中濃度、消失定数、クリアランス)を評価するための血清試料を以下の時点で収集する:
・0分(投薬前ベースライン)
・5分間
・15分間
・30分間
・1時間
・2時間
・6時間
・12時間
試験のセグメントBでは、用量1 PK血清試料を参加SSc患者から上記と同じ試料採取計画に従って収集する。その後の試験用量のために、セグメントAにおいて観察されたTmaxに最も近い時点で単一の血清PK試料を収集する。
【0375】
薬理的活性
セグメントBに登録されたSSc患者を、iBio-CFB03の可能性のある薬理活性について、段階的な皮膚生検によって評価する。皮膚生検をベースライン、4週目および12週目に実施する。ベースライン時点では、各群(arm)から1つ、2つの生検材料を取得する。4週目の生検材料は一方の群(arm)から取得し、12週目の生検材料は他方の群(arm)から取得する。個々の群(arm)から2つの皮膚生検材料を8の字パターンで取得する。一方は、皮膚の厚さまたはコラーゲン組織化の任意の変化を評価するための適切な染色(例えば、H&E、マッソン・トリクローム、Verhoeff-Van Gieson)を用いた組織学的検査のために使用し、他方は、ヒドロキシプロリンアッセイのために使用する。
【0376】
臨床開発計画
びまん性SSc患者における、静脈内投与によるiBio-CFB03の安全性、PKおよび予備的有効性評価するために、オープンラベル第2a相試験を行う。この試験は、用量効果と用量耐容性の関係を評価するため、ならびに適切な投薬レジメンを決定するためにデザインされた反復投薬オープンラベル試験である。この第2a相試験のために選択される用量レベルは、同じ投与経路で実施された第1相試験および非臨床的毒性学的試験からのデータに基づいて選択する。第2a相試験の後に、安全性および有効性を評価するために、iBio-CFB03の静脈内投与を使用して3~6カ月間行う第2b相試験を行い、その後、びまん性SSc患者におけるiBio-CFB03のプラセボ対照第3相試験を行う。臨床開発計画(CDP)の要約を表8に示す。
【0377】
【表10】
【0378】
経口投与経路の開発
予備的データから、iBio-CFB03の経口投薬が、静脈内経路による投与と少なくとも同程度に効果的であることが示唆される。これらのデータおよび慢性使用される可能性が高いことに関する経口投与経路のベネフィットに基づいて、iBio-CFB03の経口用製剤を開発した。経口用製剤がこのプログラムに有益であることが決定されれば、経口用製剤を臨床試験に導入する前に、表9に概説されている試験を実施する。
【0379】
【表11】
【0380】
<実施例12>
経口送達Fc融合タンパク質
E3-Fc(END-25)、E3-リンカー-Fc(END-26)、およびC67A E3-Fc(END-55)溶解物をSDS-PAGEゲルにかけ、総タンパク質量について画像処理し(図47、左側のパネル)、抗Fc抗体を用いてウエスタンブロットによってプローブした(図47、右側のパネル)。
【0381】
等量の、Novici(PEGによる精製)またはCaliber(プロテインAによる精製)からの精製END-55をシミュレート胃液(SGF)中で0秒間、5秒間、30秒間、45秒間、60秒間、または300秒間消化した。反応を、160mMの炭酸ナトリウムを用いて停止させた。次いで、試料を4~20%SDS-PAGEゲルにかけ、無染色ゲル画像処理機で総タンパク質量について画像処理した(図48、左側のパネル)。次いで、ゲルをニトロセルロースに移し、ニワトリ抗E3抗体(図48、中央のパネル)または抗ヒトFc抗体(図48、右側のパネル)のいずれかを用いてウエスタンブロットのためにプローブした。E3プラスFcの推定ヒンジ領域はFc分子から遊離すると思われるが、300秒の時点ではほとんど分解される。Caliber試料とNovici試料の差異は、Caliber材料では初期時点でより顕著であり、Caliber試料では低グリコシル化E3-Fcである、約14kDのバンドであると思われる。約10kDのE3陽性バンドは、Caliber試料のほうがわずかに弱い。全ての画像を、互いと尺度を合わせ、アラインメントした。
【0382】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明と併せて記載されているが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義される本発明の範囲を例示するものであり、限定するものではないことが理解されるべきである。他の態様、利点、および修飾は、以下の特許請求の範囲に入る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
【配列表】
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