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特許7405375熟成なま卵、および熟成なま卵の製造方法
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  • 特許-熟成なま卵、および熟成なま卵の製造方法 図1
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  • 特許-熟成なま卵、および熟成なま卵の製造方法 図3
  • 特許-熟成なま卵、および熟成なま卵の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-18
(45)【発行日】2023-12-26
(54)【発明の名称】熟成なま卵、および熟成なま卵の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20231219BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021107754
(22)【出願日】2021-06-29
(62)【分割の表示】P 2020155154の分割
【原出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049650
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2021-08-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513078642
【氏名又は名称】サテライツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591106358
【氏名又は名称】株式会社氷温
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】川原 隆信
(72)【発明者】
【氏名】田中 さち子
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】三上 晶子
【審判官】淺野 美奈
(56)【参考文献】
【文献】めちゃウマ!氷温熟成卵の口に広がる旨味。こんな卵は初めて食べた,2020.05.29(online),pp.1-5,retrieved on 2020.10.23,retrieved from the internet:<https://mall.373news.com/felia/?p=199053>
【文献】アルミホイルを“氷温熟成”に応用,2015(online),pp.1-2,retrieved on 2021.03.12,retrieved from Internet Archive: Wayback Machine:<https://web.archive.org/web/20150104143316/https://www.aluminum.or.jp/haku/handbook/katsuyou06.html>
【文献】アルミホイルで、ご飯を「氷温熟成」・・・旨味を引き出す。,2020.05.26(online),pp.1-2,retrieved on 2021.03.12,retrieved from the internet:<https://www.komekome.jp/page-242.html>
【文献】氷温熟成~肉も魚も家庭で美味しくする自家製氷温熟成の方法~,2015(online),pp.1-3,retrieved on 2021.03.12,retrieved from Internet Archive: Wayback Machine:<https://web.archive.org/web/20151031054444/http://lifeoreat.com/archives/421.html>
【文献】「日本海新聞」にて紹介されました!,2017.02.28(online),pp.1-2,retrieved on 2020.10.23,retrieved from the internet:<http://satellitesinc.jp/photoblog/media/newspaper/11>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L15/00-15/10
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材で殻付きのなま卵の全体を包装する工程と、
包装された前記なま卵を-2℃以上0℃未満で、10日以上60日以下の期間、保管する工程とを有する、アレルゲン物質を低減した殻付きの熟成なま卵の製造方法。
【請求項2】
前記金属材が、アルミ材である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記なま卵が、採卵から3日以内の鶏卵である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
アレルゲン物質量が、採卵日のアレルゲン物質量に対して、70%以上、85%以下である殻付きの熟成なま卵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熟成なま卵の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥類の卵は、多くの国や地域によって様々な卵が食用に用いられている。特に鶏の卵である鶏卵は世界の多くの国や地域で食用とされている。卵は栄養価が高く、動物性たんぱく質やビタミン、ミネラルなどを豊富に含んでいる。一方で、卵は、アレルゲンを含んでいる。卵のアレルゲンを低減する技術としては、割卵した卵を加熱したり、添加物を添加するものなどが知られている。
【0003】
特許文献1は、加熱水蒸気中および/または熱水中で、処理圧力を140~400kPaの範囲内、処理温度を110~150℃の範囲内に設定した加熱加圧処理により卵白におけるアレルゲンの含有量を低減する、アレルゲン低減化方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、グルコシダーゼを作用させることにより得られる低アレルゲン化卵白を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-259805号公報
【文献】特開平7-99936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2のように、従来の卵のアレルゲン低減方法は、割卵した卵を対象とするものであった。特に、割卵した生卵白か乾燥卵白または乾燥卵白を水等の溶媒で溶解した乾燥卵白溶液を処理するものであった。また、アレルゲンを低減した後は、粉末や液体などの形状で菓子などの加工品の原料として使用される。本発明は、アレルゲンを低減し、鮮度が高いなま卵の状態を保持した殻付きの熟成なま卵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0008】
<1> 金属材で殻付きのなま卵を包装する工程と、包装された前記なま卵を0℃以下で保管する工程とを有する、アレルゲン物質を低減した殻付きの熟成なま卵の製造方法。
<2> 前記金属材が、アルミ材である前記<1>記載の製造方法。
<3> 前記なま卵が、採卵から3日以内の鶏卵である前記<1>または<2>に記載の製造方法。
<4> 前記保管する工程が、-2℃以上0℃未満で、10日以上60日以下の期間行うものである前記<1>~<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5> アレルゲン物質量が、採卵日のアレルゲン物質量に対して、90%以下である殻付きの熟成なま卵。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アレルゲンが低減された熟成なま卵を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の製造方法を行うフローを示す図である。
図2】本発明の製造方法を行う工程を説明するための図である。
図3】本発明の製造方法を行うために用いる容器の概要を示す図である。
図4】実施例に係る測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0012】
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、金属材で殻付きのなま卵を包装する工程と、包装された前記なま卵を0℃以下で保管する工程とを有する、アレルゲン物質を低減した熟成なま卵の製造方法である。本発明の製造方法で製造された熟成なま卵はアレルゲン物質が低減されたものである。
【0013】
[本発明の熟成なま卵]
本発明の熟成なま卵は、アレルゲン物質量が、採卵日のアレルゲン物質量に対して、90%以下である殻付きの熟成なま卵である。本発明の熟成なま卵はアレルゲンが低減されており、卵アレルギーを発症するリスクを低減することができる。なお、本願において本発明の製造方法により本発明の熟成なま卵をえることができ、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0014】
従来のアレルゲンを低減した卵は、一般に割卵した卵を加熱したり、添加物を加えたりしたものである。また、卵に含まれるアレルゲンは強烈なアレルギーを引き起こすものや、そこまでの発症力を持たないものまで様々で、複数のアレルゲンが存在している。発症力の強い物質や、卵アレルギーを発症しやすい幼児などを対象に研究されている。しかし、幼児は、消化機能が未発達なうえ小食であることから、卵アレルギー問題だけでなく、心身の発達が生涯で最も著しい幼児期に必要な十分な栄養を獲得することも重要である。また、アレルゲンは複数存在することから、アレルゲン全体を低減化し、同時に難消化性の卵の消化負担を軽減し栄養の吸収効率もよい卵は有用と考えられる。本発明者らは、このような卵に関する需要に対して、なま卵をアルミ箔で被覆した状態で、氷温とも呼ばれる0℃以下の温度で保管することでなま卵のアレルゲン物質を低減することができることを見出した。
【0015】
卵アレルギーを発症している人は、医師など専門家の指導や観察下でなければどのようなアレルギー低減性卵も食することは原則できない。これまで食物アレルギー患者が食べられる範囲を少しでも広げようとアレルギー治療を専門とする機関において経口免疫療法や研究が実施されているが、アレルギーを発症する食品を一定量食べられるようになっても、その後食べられる量が減ったり運動後に症状を誘発するケースも少なくない。
食品以外でも化粧品やせっけんのように、これまで安全と考えられていた製品原料の一部が突然深刻なアレルゲンになるなど、アレルギーが発症する原因の多くは未解明の部分がある。
【0016】
乳幼児が初めて口にする食品に含まれる成分は、新たなアレルゲンとなる可能性はある。しかし、乳幼児の食物アレルギーの特色は、症状は加齢とともに改善される。「卵アレルギーは、成長すれば治る」ともいわれるように、消化機能の発達が治療の鍵となり、小学校就学ころには7~8割が卵を食べれるようになる。離乳食や幼児食を対象に低アレルゲン性卵白を使用した加工食品は便利である。しかし、食物アレルギー未発症の幼児が対象である場合の食品はアレルゲンそのものに対する対応策だけでは十分ではない可能性がある。
【0017】
このようなことから、その子の将来を左右する心身の基礎形成に最も重要な幼児期には、食事では不足する栄養は間食で与える菓子類で補うのみではなく、間食を食事に置き換えて充足するように指導されている。栄養面からみても非常に優良な卵は、日々食事を提供するものにとって、安価で使い勝手がよく、また食材としてあらゆる分野の料理に使用できる食品は他にはない。しかし、すべての幼児の消化機能が未発達であることは重要である。そのため、本発明者らは、本発明に係るような、無添加、非加熱で低アレルゲン性なま卵を開発した。
【0018】
図1は、本発明の製造方法を行うフローの概要を示す図である。本発明の製造方法は、なま卵を包装する工程(包装工程)S11と、包装したなま卵を所定の温度で保管する工程(保管工程)S21を有し、なま卵のアレルゲンを低減することができる。
【0019】
[なま卵]
本発明の製造方法は、なま卵(生卵)を用いて熟成なま卵を製造するものである。本発明の製造方法の対象となるなま卵は、食用に用いられる殻付きの鳥類の卵である。例えば、ニワトリ、カモ、ガチョウ、ダチョウ、カモメ、ホロホロチョウ、キジ、エミュー、アヒルなどの卵が食用とされている。本発明では特に鶏の卵である鶏卵を対象とすることが好ましい。卵は新鮮なものを用いることが好ましい。卵は、採卵から3日以内に保管工程を開始することが好ましく、より好ましくは2日以内、さらに好ましくは1日以内が好ましい。
【0020】
[包装する工程]
本発明の製造方法は、金属材で殻付きのなま卵を包装する工程を有する。図2はなま卵を包装する工程の一例を説明する図である。図2(a)は包装前のなま卵である。図2(b)は金属材であるアルミ箔で包装したなま卵である。図2(c)は包装した卵を保管庫に配置するにあたって、プラスチック製の容器に包装したなま卵を並べた状態である。
【0021】
包装する工程では殻付きのなま卵を金属材で包装する。包装は、卵の殻が見えないように包む。この包装は密閉性が高いものとなるように厚い金属材や2重や3重に包み、通気部が少ないようにすることが好ましい。卵を金属材で包むことで、金属材と接して伝熱性が向上する。また、保管時の保管庫内の他の食品からの臭い移りを防ぐことができ、なま卵の鮮度の保持に係わる卵白に溶解する二酸化炭素の流動性が阻害されることで卵殻からの二酸化炭素の放出も防ぐことができ、卵の鮮度を保持し、劣化も防止することができる。これらの原理を限定するものではないが、保管する工程を行ったときにアレルゲン物質を低減することができる。
【0022】
図3は、なま卵(卵)を包装する他の例を示すための図である。図3(a)は包装容器の断面の概要を示す図である。包装容器は下側容器21と、上側容器22とを有する。下側容器21は下に凸の凹状部211を有し、上側容器22は上に凸の凹状部221を有する。凹状部211、凹状部221の大きさは、包装する卵1の大きさに合わせて卵1よりもわずかに大きい。図3(b)、(c)は包装容器に卵1を包装する工程を説明する図である。図2(b)にしめすように下側容器21の凹状部211に卵を配置する。その後、上側容器22を被せることで卵1を覆う。この包装容器は、少なくとも卵と接触する部分となる凹状部211、221の内側の面は金属材である。包装容器は全体が金属材でもよいし、成形性等を考慮して一部樹脂部材などを併用して形成したものを用いてもよい。
【0023】
なま卵を包装するとき、少なくともなま卵と接する部分は金属材で構成される。金属材は、伝熱性、気密性に優れたものを採用することができる。金属材は、アルミや鉄など任意のものを採用することができる。伝熱性、気密性に加え、卵が接したときに割れないように柔軟性を有するアルミ材を用いることが特に好ましい。また、輸送するときにも破損を防止し、臭い移りを抑えることもできる。また、金属材の包装材は、耐久性にも優れ、繰り返し利用する際にも優れている。
【0024】
[保管する工程]
本発明の製造方法は、包装されたなま卵を0℃以下で保管する工程を有する。包装した状態のなま卵を0℃以下で保管することで、なま卵を腐敗させることなく熟成させることができる。これにより、なま卵のアレルゲン物質を低減することができる。また、タンパク質をアミノ酸に分解することで栄養を摂取しやすいものとなる。
【0025】
保管する工程の温度は0℃以下である。温度は、-2℃以上0℃未満であることがより好ましい。保管する工程の温度は、この温度域から長時間外れないように保管される。より好ましくは1日に30分以上上記温度から外れないものとすることが好ましい。また、保管する温度は、平均-1℃程度とする。-1℃程度で処理する技術としては、公益社団法人氷温協会(参考URL:www.hyo-on.or.jp)の氷温技術を参照することができる。氷温とは、氷点下の中で食品が凍結するか、しないかの温度である。氷温処理する装置としては、例えば、アルインコ(株)の玄米氷温貯蔵庫を利用することができる。氷温処理により、なま卵は凍結を防ぐために自己消化してタンパク質のアミノ酸への分解が促進され、タンパク質が成分であるアレルゲン物質の分解も同時に進行する。また、アミノ酸の増加に伴い旨みも増加することが期待される。
【0026】
保管する工程を行う期間は、アレルゲン物質が十分に低減され、アミノ酸が低減する程度の期間行う。この期間は、10日以上60日以下とすることが好ましい。この期間の下限は、14日以上が好ましく、18日以上や、20日以上、25日以上としてもよい。期間が短すぎると十分にアレルゲン物質を低減できない場合がある。この期間の上限は、50日以下が好ましく、40日以下としてもよい。本発明に係る保管する工程では、なま卵の鮮度を維持したまま長期間処理することができる。他方、過剰に保管すると生産性が低下し、品質が低下するおそれもあるため上記期間内とすることが好ましい。
【0027】
保管する工程を終えることで、卵は熟成され、アレルゲン物質が低減した熟成なま卵となる。この熟成なま卵は、食用に用いられる。熟成なま卵は、保管する工程後、そのまま食してもよい。また、適宜、卵料理に加工して食することができる。また、この熟成なま卵は、保管する工程を行った後、なま卵の取り扱いに準じて冷蔵等で保存して用いてもよい。
【0028】
[熟成なま卵]
本発明の熟成なま卵は、アレルゲン物質量が、採卵日のアレルゲン物質量に対して、90%以下である殻付きの熟成なま卵である。卵のアレルゲン物質は、卵白に存在するタンパク質等といわれている。卵白のタンパク質は、オボアルブミン、オボムコイド、リゾチーム、オボトランスフェリンなどが挙げられる。特に、オボアルブミンやオボムコイドが鶏卵アレルギーの重要物質といわれている。また、アレルギーのメカニズムは複雑で個体差もあるため他の成分が関与している可能性も考えられる。本発明によれば特定のアレルゲン物質に限らず、タンパク質を全体的に分解するため鶏卵に対するアレルギー症状全般に影響が少ないものとすることができることが期待される。
【0029】
本発明の熟成なま卵のアレルゲン物質量は、採卵日のアレルゲン物質量に対する比(熟成なま卵のアレルゲン物質量/採卵日のアレルゲン物質量×100%)として、90%以下である。この比は、88%以下が好ましく、85%以下、83%以下がより好ましい。この比は、下限を設けなくてもよい。一方、アレルゲン物質になるタンパク質は、大きな変化を伴う腐敗や発酵するものではなくアミノ酸に徐々に分解され無毒化される。よって、アレルゲン物質量の測定値の変化としては限定的なものとなる場合がある。このことから、この比の下限は60%以上や70%以上、72%以上、75%以上のような下限を設けてもよい。
【0030】
このような熟成なま卵はアレルゲン物質が低減されている。また、タンパク質をアミノ酸に分解した熟成が行われ、吸収しやすい優れた栄養価を有し、旨み成分も向上し得る。よって、通常の食用にも適しているし、アレルギー対策のための食餌療法などへの利用も期待される。
【実施例
【0031】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
[評価項目]
[特定原材料アレルギー物質]:日本ハム FASTKITエライザVer.III(測定範囲/感度0.16~1,000,000μg/g(ppm))を用いて、卵のアレルギー物質を検査した。
[一般生菌数(cfu/g)]:標準寒天培地を用いて検査した。
[大腸菌群]:BGLB培地を用いて検査した。
[E.coli]:EC培地を用いて検査した。
[サルモネラ]:(一般)BPW、RV、HTT、X-SAL培地を用いて検査した。
[黄色ブドウ球菌]:卵黄加マンニット食塩培地を用いて検査した。
【0033】
[実施例1(アルミあり)]
(1)採卵日の卵(鶏卵)を、アルミ箔(厚さ11μm)を用いて、図2(b)に示すように、全体を包むように被覆した。
(2)このアルミ箔で被覆した状態の卵を、アルインコ(株)の玄米氷温貯蔵庫を-1℃に設定した庫内に配置して、保管した。
(3)15日経過時および30日経過時に卵を回収し、アレルゲン物質量の測定等を行った。
【0034】
[参考例1(アルミなし)]
実施例1の試験条件に準じて、アルミ箔で被覆をせずに、そのまま-1℃の庫内で保管して、15日経過時、30日経過時にアレルゲン物質量の測定等を行った。
【0035】
[比較例1(冷蔵庫)]
実施例1と同日に採卵した卵を、市販の冷蔵庫(庫内温度約5℃)で保管して、15日経過時、30日経過時にアレルゲン物質量の測定等を行った。
【0036】
実施例1および、比較例1、参考例1のアレルゲン物質の測定結果を、表1に示す。表には、各条件で、40~50個を割卵してまとめ、50回測定した平均値を示す。なお、開始時(0日)のアレルゲン物質濃度は、代表サンプルとして測定した卵の平均値を用いた。
また、開始時を100%としたときの、各実施例、比較例、参考例について、15日経過時、30日経過時の比を、図4に示す。
【0037】
冷蔵庫(比較例1)で保管すると、アレルゲン物質濃度はほとんど変化しない。
氷温貯蔵庫(参考例1)で保管すると、鮮度を維持することができ、アレルゲン物質濃度は低減し、30日保管の方が低減効果を増す。
金属材であるアルミ箔で包装した状態で、氷温貯蔵庫(実施例1)で保管すると、鮮度を保持しつつ、アレルゲン物質の低減効果が顕著な熟成なま卵を製造できることが確認された。
【0038】
なお、実施例1のいずれも30日保管後まで一般生菌数は安全基準内であり、大腸菌群、E.coli、サルモネラ、黄色ブドウ球菌はいずれも陰性であった。
【0039】
【表1】
【0040】
サテライツ社で行った卵の処理条件と、遊離アミノ酸濃度の測定例を表2~7に示す。なお、遊離アミノ酸の測定は、氷温研究所で実施された。採卵日の測定結果を「試験開始時」とする。冷蔵は、冷蔵庫に保管したもので、その保管日数の条件を各表に示す。0℃は、0℃に設定した保管庫で保管したもので、その保管日数の条件を各表に示す。-1℃は、-1℃に設定した氷温保管庫で保管したもので、その保管日数の条件を各表に示す。表2~表4は、卵白の経時変化であり、表5~7は、卵黄の経時変化である。
【0041】
0℃や、-1℃で保管することで、保管日数が増すごとにタンパク質の分解が促進され卵白(表2~4)や卵黄(表5~7)の遊離アミノ酸量を上昇させることができ、卵を熟成することができることが確認された。特に重大なアレルギーを発症するアレルゲンが含まれる卵白の分解が顕著であることが確認された。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、食用等に用いられるアレルゲン物質を低減した卵を製造に利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 卵
21 下側容器
22 上側容器
211、222 凹状部
図1
図2
図3
図4