(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】クランプチャック
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/00 20060101AFI20231221BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B23Q3/00 A
B23Q3/06 304K
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021099690
(22)【出願日】2021-06-15
【審査請求日】2022-03-09
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502454802
【氏名又は名称】エロワ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】EROWA AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヘディガー
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-266260(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214465(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00,3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプスピゴット(47)が設けられたパレット(46)をクランプするためのクランプチャック(1)であって、前記クランプチャック(1)に、前記クランプスピゴット(47)用の収容開口(5)と、前記クランプスピゴット(47)を前記収容開口(5)内でクランプするためのクランプ部材(12)を含むクランプ手段(10)とが設けられているクランプチャックにおいて、
前記クランプチャック(1)に、空圧で負荷可能であると共に、入口(82)から出口(83)に通じる監視ライン(40)が設けられ、前記収容開口(5)が、前記監視ライン(40)に接続された少なくとも1つの制御孔(7)が通じる円錐状挿入領域(6)を有し、前記制御孔が、前記クランプスピゴット(47)によって閉鎖可能であ
り、
前記クランプ手段(10)が、前記クランプ部材(12)を作動させるために、初期位置とロック位置との間で変位可能な作動ピストン(11)を含んでいるクランプチャックにおいて、
前記クランプチャック(1)が、前記監視ライン(40)の前記入口(82)と前記出口(83)との間に配置されたバルブ装置(16)を備え、
前記作動ピストン(11)が前記初期位置に位置する場合、前記監視ライン(40)は前記バルブ装置(16)によって前記監視ライン(40)の前記入口(82)と前記出口(83)との間で遮断され、前記作動ピストン(11)が前記ロック位置に位置する場合、前記監視ライン(40)の前記入口(82)は前記バルブ装置(16)によって前記監視ライン(40)の前記出口(83)に空気接続されることを特徴とするクランプチャック。
【請求項2】
請求項
1に記載のクランプチャック(1)であって、前記バルブ装置(16)が、バルブハウジング(17)及び前記バルブハウジング(17)内に少なくとも部分的に収容されたバルブ本体(21)を有し、流体の流れを変化させるために、前記バルブハウジング(17)が、前記バルブ本体(21)に対して、又は前記バルブ本体(21)が、前記バルブハウジング(17)に対して、遮断位置と開放位置との間で変位可能であることを特徴とするクランプチャック。
【請求項3】
請求項
2に記載のクランプチャック(1)であって、前記バルブ本体(21)又は前記バルブハウジング(17)が、前記作動ピストン(11)と結合されていることにより、前記作動ピストン(11)が前記ロック位置に正しく変位した場合、前記バルブ装置(16)が前記開放位置にあり、前記作動ピストン(11)が前記ロック位置に正しく変位していない場合、前記バルブ装置(16)が前記遮断位置にあることを特徴とするクランプチャック。
【請求項4】
請求項
2又は
3に記載のクランプチャック(1)であって、前記バルブ本体(21)が、固定配置され、前記バルブハウジング(17)が、前記作動ピストン(11)と強固に接合されていることを特徴とするクランプチャック。
【請求項5】
請求項
4に記載のクランプチャック(1)であって、前記バルブハウジング(17)が、第1外側部分(18)及び第2内側部分(19)を有し、前記外側部分(18)が、前記作動ピストン(11)と強固に接合され、前記内側部分(19)が、軸線方向において前記外側部分(18)に形状密着的に接続され、前記内側部分(19)が、半径方向に遊びを有する状態で前記外側部分(18)に収容されていることを特徴とするクランプチャック。
【請求項6】
請求項
2~
5の何れか一項に記載のクランプチャック(1)であって、軸線方向入口孔(22)が、上側から前記バルブ本体(21)内に通じ、軸線方向出口孔(25)が、下側から前記バルブ本体(21)内に通じ、前記軸線方向入口孔(22)が、第1半径方向貫通孔(23)に通じ、前記軸線方向出口孔(25)が、第2半径方向貫通孔(24)に通じ、前記第1半径方向貫通孔(23)が、前記第2半径方向貫通孔(24)の上方で延在し、前記バルブハウジング(17)の内側部分(19)に、環状空間(30)が設けられ、該環状空間(30)の軸線方向長さが、少なくとも前記2つの半径方向貫通孔(23,24)の間の距離に対応し、前記環状空間(30)が、前記作動ピストン(11)がロック位置にある場合、前記2つの半径方向貫通孔(23,24)上で延在していることを特徴とするクランプチャック。
【請求項7】
請求項
1~
6の何れか一項に記載のクランプチャック(1)であって、前記監視ライン(40)は、クランプスピゴット(47)が前記クランプチャック(1)の前記収容開口(5)に収容されると共に前記クランプ手段(10)によって正しくロックされた場合、前記入口(82)と前記出口(83)との間で連続的に開いているが、大気に対して閉鎖されていることを特徴とするクランプチャック。
【請求項8】
パレット(74)をクランプするための、請求項1~
7の何れか一項に従って構成された少なくとも2個のクランプチャック(59,60,61,62)を備えるクランプ装置(53)であって、前記パレット(74)が、前記クランプチャック(59,60,61,62)の個数に対応する個数のクランプスピゴット(75,76,77,78)を有するクランプ装置において、
前記クランプチャック(59,60,61,62)が、共通のクランプベース(54)に収容され、前記クランプベース(54)に、空圧で負荷可能であると共に、入口(82)から出口(83)に通じる監視ライン(40)が設けられ、該監視ラインが、前記各クランプチャック(59,60,61,62)の挿入領域に配置された全ての制御孔(7)と接続されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項9】
パレット(74)をクランプするための、請求項
1~
7の何れか一項に従って構成された少なくとも2個のクランプチャック(59,60,61,62)を備えるクランプ装置(53)であって、前記パレット(74)が、前記クランプチャック(59,60,61,62)の個数に対応する個数のクランプスピゴット(75,76,77,78)を有するクランプ装置において、
前記クランプチャック(59,60,61,62)が、共通のクランプベース(54)に収容され、前記クランプベース(54)に、空圧で負荷可能であると共に、入口(82)から出口(83)に通じる監視ライン(40)が設けられ、該監視ラインが、前記各クランプチャック(59,60,61,62)の挿入領域に配置された全ての制御孔(7)と接続され、
各クランプチャック(59,60,61,62)が、バルブ装置(69,70,71,72)を備え、該バルブ装置(69,70,71,72)により、前記各作動ピストン(11)の位置に応じて、前記監視ライン(40)を通る流体の流れが変化可能であり、
前記バルブ装置(69,70,71,72)が、前記監視ライン(40)の前記入口(82)と前記出口(83)との間に配置されると共に互いに直列接続されることにより、前記作動ピストン(11)の全てが正しくロックされた場合にのみ、前記監視ライン(40)の前記入口(82)と前記出口(83)との間に通路が存在していることを特徴とするクランプ装置。
【請求項10】
パレット(74)をクランプするための、請求項
1~
7の何れか一項に従って構成された少なくとも2個のクランプチャック(59,60,61,62)を備えるクランプ装置(53)であって、前記パレット(74)が、前記クランプチャック(59,60,61,62)の個数に対応する個数のクランプスピゴット(75,76,77,78)を有するクランプ装置において、
前記クランプチャック(59,60,61,62)が、共通のクランプベース(54)に収容され、前記クランプベース(54)に、空圧で負荷可能であると共に、入口(82)から出口(83)に通じる監視ライン(40)が設けられ、該監視ラインが、前記各クランプチャック(59,60,61,62)の挿入領域に配置された全ての制御孔(7)と接続され、
前記各クランプチャック(59,60,61,62)領域において、空圧式の増し締めラインが、前記各作動ピストン(11)の上方に配置された増し締め空間に通じ、各増し締めラインが、前記監視ライン(40)に直接的又は間接的に接続されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項11】
請求項
8~
10の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記監視ライン(40)は、クランプスピゴット(75,76,77,78)が各クランプチャック(59,60,61,62)の収容開口に収容されると共に各クランプ手段によって正しくロックされた場合、前記入口(82)と前記出口(83)との間で連続的に開いているが、大気に対して閉鎖されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項12】
請求項1~
7の何れか一項に従って構成されたクランプチャック(1)、又は請求項
8~
11の何れか一項に従って構成されたクランプ装置(53)を備えるクランプチャック・アセンブリ(80,81)であって、前記クランプチャック・アセンブリ(80,81)が、空気源に接続可能な入口ライン(84)を備え、該入口ライン(84)が、クランプベースを通って延在する監視ライン(40)の入口(82)に接続されているクランプチャック・アセンブリにおいて、
前記監視ライン(40)が、出口側において出口ライン(85)に接続され、該出口ライン(85)が、圧力を検出するための少なくとも1個の圧力センサ(89,90)に接続されていることを特徴とするクランプチャック・アセンブリ。
【請求項13】
請求項
12に記載のクランプチャック・アセンブリ(80,81)であって、空気の流入量を制限するスロットル(91)が、前記入口ライン(84)に配置され、該入口ライン(84)が、第1圧力センサ(88)に接続され、前記出口ライン(85)が、前記監視ライン(40)内の出口側における圧力を検出するための第2及び第3圧力センサ(89,90)に接続され、前記クランプチャック・アセンブリが、前記3個の圧力センサ(88,89,90)によって判定された圧力を記録及び評価するための評価電子機器を備えることを特徴とするクランプチャック・アセンブリ。
【請求項14】
請求項
12又は
13に記載のクランプチャック・アセンブリ(80,81)上にクランプされたパレット(74)のクランプ状態を検出するための方法であって、監視ライン(40)を、入口ライン(84)を介して空気源に接続し、圧力を検出するための少なくとも1個の圧力センサ(89,90)を、前記監視ライン(40)に出口側で接続した出口ライン(85)内に配置する方法において、
前記入口ライン(84)を、圧力で負荷し、所定時間の経過後に、前記出口ライン(85)における圧力を、測定すると共に前記入口ライン(84)で測定又は設定した圧力と比較し、前記入口ライン(84)と前記出口ライン(85)との間の圧力差が25%未満の場合、前記パレット(74)の正しいクランプを検出し、及び/又は、前記入口ライン(84)と前記出口ライン(84)との間の圧力差が25%を超える場合、前記パレット(74)のクランプ不良を検出することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項
14に記載の方法であって、前記監視ライン(40)に出口側で接続した前記出口ライン(85)を、第2及び第3圧力センサ(89,90)に接続する方法において、
前記入口ライン(84)を、圧力で負荷し、所定時間の経過後に、前記入口ライン(84)内における圧力を、出口側に配置した前記2個の圧力センサ(89,90)で測定した圧力と比較し、出口側に配置した前記2個の圧力センサ(89,90)間で測定圧力差が10%を超える場合、エラーメッセージを出力し、及び/又は、前記パレット(74)のクランプ不良を検出することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部分に従って構成されたクランプチャック、請求項9の上位概念部分に従って構成されたクランプ装置、請求項13の上位概念部分に従って構成されたクランプチャック・アセンブリ、及び請求項15の上位概念部分に係る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載の形式のクランプチャックは、パレット及び/又はワークピースキャリアを位置規定してクランプするのに使用される。1個のクランプスピゴットが設けられたパレット又はワークピースホルダをクランプするためのシングル・クランプチャックの他に、対応する個数のクランプスピゴットが設けられたパレットをクランプするための少なくとも2個のクランプチャックを備えるマルチ・クランプチャックも既知である。このようなマルチ・クランプチャックは、以下において特にクランプ装置とも称され、そのクランプ装置のクランプチャックは、クランプベース上に配置されている。クランプチャック・アセンブリという用語は、シングル・クランプチャック又はマルチ・クランプチャックのみならず、その接続部又は圧力ライン、センサ、圧力レギュレータ、スロットルなどの周辺部分を含むものと理解される。
【0003】
クランプチャック又は各クランプベースは通常、加工機の作業台上に固定的に取り付けられるのに対して、パレットは、クランプチャック上又はクランプ装置上に正確かつ反復的にクランプすることができる。各クランプチャックには、収容開口及びクランプスピゴットを収容開口内でクランプするためのクランプ手段が設けられている。パレットには通常、加工対象のワークピース又は工具が保持されている。
【0004】
このようなクランプチャック又はクランプベースが半自動又は全自動で行われる作業工程で使用される場合、パレットは通常、ハンドリングロボットによってクランプチャック又はクランプ装置に搬送されると共に、そのクランプチャック又はクランプ装置から再び取り出される。この場合、パレットが確実にクランプされると共に、保持されることが重要である。例えばパレットがクランプチャック上又はクランプ装置上に正しく固定されていなければ、パレットにクランプされたワークピースの機械加工、例えばフライス加工時にパレットが緩む恐れがあり、大きな損傷がもたらされたり人に危険が及んだりする可能性がある。
【0005】
特許文献1(欧州特許出願公開第1344599号明細書)には、クランプチャックと、そのクランプチャックにクランプ可能なクランプスピゴットを備えるクランプ装置が開示されている。クランプチャックには、クランプスピゴットを収容するための中央開口が設けられている。クランプチャックは更に、空気を吹き出すための複数の開口を備える。これら吹き出し開口の幾つかは、収容開口の円錐状挿入部に配置され、クランプスピゴット又はその中央表面部によって閉鎖することができる。吹き出し開口は、上述した中央表面部を清掃するためにのみ使用される。
【0006】
特許文献2(欧州特許出願公開第2052808号明細書)には、ワークピースキャリアを取り外し可能に固定するためのクランプチャックを備えるクランプ装置が既知である。この場合にクランプチャックには、ロック機構が設けられ、そのロック機構は、ロック位置において、ワークピースキャリアに接続されたクランプスピゴットに係合する複数のクランプ要素を含む。各クランプ要素には、貫通孔が設けられ、その貫通孔は、各クランプ要素が正しくロックされたときに一方の側が閉鎖されている。付加的又は代替的に、各クランプ要素には、貫通孔が設けられた作動要素が割り当てられ、その貫通孔は、各クランプ要素が正しくロック及び/又はロック解除されたときに一方の側が閉鎖されている。クランプ要素又は作動要素の貫通孔は、共通の接続ラインによって空気源に接続されている。接続ライン内には、空気流を検出するための少なくとも1個のセンサが設けられている。このセンサにより、クランプ要素が正しくクランプ解除又はクランプされた否かを検出することができる。センサは、電子的な制御・評価装置に接続されている。
【0007】
特許文献3(欧州特許出願公開第2177309号明細書)には、格納可能ニップルをクランプするための高速作動クランプシリンダが既知である。高速作動クランプシリンダは、クランプ時に、格納可能ニップルの機能を制御するよう使用される。高速作動クランプシリンダは、パレット上に配置された格納可能ニップルを収容するための中央切り欠きを有するハウジングを備える。ハウジング内には、圧力媒体で作動するピストン及び複数のロック体を有するロック機構が配置されている。ピストンは、一連のばねによってロック位置に移動され、圧力媒体で作動させてロック解除される。一連のばねの変位経路には、第1作動要素が配置され、その作動信号が監視される。第1作動要素の制御フローの上流側には、第2作動要素が配置され、その第2作動要素により、格納可能ニップルの変位状態が検出される。両方の作動要素は、経路に応じて作動可能な流体制御バルブの形態のスイッチとして構成され、これら流体制御バルブは、制御ライン内に配置されると共に、状態に応じて制御ラインを開閉する。
【0008】
特許文献4(欧州特許出願公開第2218541号明細書)には、格納可能ニップルをクランプするための更なる高速作動クランプシリンダが既知である。この高速作動クランプシリンダは、高速作動クランプシリンダのハウジング内において、格納可能ニップルを正しくロックするための制御手段を提供することを目的としている。そのために、高速作動クランプシリンダのハウジング内には、ばね負荷された作動要素が配置され、その作動要素は、格納可能ニップルがばね力に抗することによって作動可能であり、作動用の変位経路によって制御媒体用の通路が制御される。
【0009】
最後に、特許文献5(米国特許出願公開第4,504,824号明細書)には、加工機(例えばフライス盤)用の工具検出システムが開示されている。加工機には、固定部分が設けられ、その固定部分内には通常、スピンドルが回転可能に取り付けられている。工具ホルダには、加工工具の円錐状シャフトを収容するための円錐状切り欠きが設けられている。固定部分には、スピンドルを包囲する環状チャンバが設けられ、その環状チャンバから半径方向孔がスピンドルを通って円錐状切り欠きにつながっている。環状チャンバは、ラインによって圧力源に接続され、そのライン内には、圧力レギュレータが配置されている。ラインは更に、圧力スイッチに接続されている。加工工具がホルダに収容されてクランプされた直後、加工工具における円錐状シャフトの半径方向孔が閉鎖される。これは、圧力スイッチによって監視することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第1344599号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2052808号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2177309号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2218541号明細書
【文献】米国特許出願公開第4,504,824号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、クランプスピゴットが設けられたパレットをクランプするための請求項1の上位概念部分に従って構成されたクランプチャックを改良することにより、クランプチャック内におけるパレットの存在を監視可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題の解決策は、請求項1の特徴部分によって規定されている。本発明によれば、クランプチャックには、空圧で負荷可能であると共に、入口から出口に通じる監視ラインが設けられ、収容開口は、監視ラインに接続された少なくとも1つの制御孔が通じる円錐状挿入領域を有し、制御孔は、クランプスピゴットによって閉鎖可能である。
【0013】
クランプチャックに、空圧で負荷可能であると共に、入口から出口に通じる監視ラインが設けられ、収容開口が、監視ラインに接続された少なくとも1つの制御孔が通じる円錐状挿入領域を有し、その制御孔がクランプスピゴットによって閉鎖可能であることにより、収容開口内にクランプスピゴットが存在することを確認するための基本的な可能性が提供される。この実施形態の特に有利な点は、クランプチャックを、通常は既に存在する加工機のインフラストラクチャ/周辺部分に、比較的小さな手間で組み込むことができることである。そのような加工機は通常、クランプチャックを開放及び/又は閉鎖するための少なくとも1つの空圧ラインを備えるため、圧縮空気で監視ラインを負荷し、所定の時間に監視ラインの圧力を測定するのに使用することもできる。クランプスピゴットがクランプチャックの収容開口に収容されていない場合、圧力は制御孔を介して逃げる。その圧力は、監視ラインに接続された圧力センサによって測定し、評価電子機器によって記録及び評価することができる。評価電子機器も通常は既に存在するため、少なくとも1個の圧力センサの他には、評価電子機器のソフトウェアを適合するだけで十分である。
【0014】
クランプチャックの好適な実施形態及び構成は、従属請求項2~8に記載したとおりである。
【0015】
好適な構成においては、クランプチャックのクランプ手段が、クランプ部材を作動させるために、初期位置とロック位置との間で変位可能な作動ピストンを含み、クランプチャックが、監視ラインの入口と出口との間に配置されたバルブ装置を備え、そのバルブ装置により、作動ピストンの位置に応じて、監視ラインを通る流体の流れが変化可能であることが想定されている。作動ピストンの位置は、そのようなバルブ装置によって判定することができる。この実施形態により、請求項1の特徴部分と一緒に、クランプスピゴットが存在するかのみならず、クランプチャック内に正しくクランプされているかを確認することができる。
【0016】
バルブ装置は、好適には、バルブハウジング及びそのバルブハウジング内に少なくとも部分的に収容されたバルブ本体を有し、監視ラインを通過する流体の流れを変化させるために、そのバルブ本体は、バルブハウジングに対して、遮断位置と開放位置との間で変位させることができる。そのようなバルブ装置は、作動ピストンと機械的に結合するのに特に適しているため、作動ピストンがバルブ装置を開放又は閉鎖することができる。
【0017】
特に好適には、作動ピストンが正しくロック位置に変位した場合にはバルブ本体が開放位置にあるのに対して、作動ピストンが正しくロック位置に変位していない場合には遮断位置にある。これにより、高い信頼性のための基本的な前提条件が得られる。即ち、バルブ本体は、作動ピストンがクランプスピゴットの確実なクランプに必要なロック位置を占めたときにのみ、開放位置を占めるよう構成されている。監視ラインが入口側で過圧に晒されている場合、バルブ本体の位置、従って作動ピストンの位置は、バルブ本体の前後の圧力を比較することによって容易に判定することができる。
【0018】
クランプチャックの好適な更なる実施形態において、バルブ本体は、固定配置されているのに対して、バルブハウジングは、作動ピストンと強固に接合されている。これにより、一方では、可動部品を小さく保つことができるためスペースを有効利用することができる。他方では、内側ハウジング部分の半径方向及び軸線方向における遊びも小さく保つことができる。なぜなら、運動学的に反対であれば、即ちバルブ本体が可動配置され、ハウジングが固定配置されていれば、レバー作用に起因して上述した遊びを大きくしなければならないからである。更に、この実施形態は、バルブ装置を直列接続するのにも特に適している。
【0019】
特に好適な構成において、バルブハウジングは、第1外側部分及び第2内側部分を有し、外側部分は、作動ピストンと強固に接合されるのに対して、内側部分は、軸線方向において外側部分に形状密着的に接続され、内側部分は、半径方向に遊びを有する状態で外側部分に収容されている。この実施形態においては、バルブ装置に関して半径方向の遊びが幾らか補償可能であり、従って確実に機能することができる。作動ピストンは、長期間にわたって確実に機能すると共に、初期位置とロック位置との間を確実に移動するために、半径方向における遊びを常にある程度有する必要があるため、この実施形態は有利である。
【0020】
クランプチャックの好適な構成においては、軸線方向入口孔が、上側からバルブ本体内に通じ、軸線方向出口孔が、下側からバルブ本体内に通じ、軸線方向入口孔が、第1半径方向貫通孔に通じ、軸線方向出口孔が、第2半径方向貫通孔に通じ、第1半径方向貫通孔が、第2半径方向貫通孔の上方で延在し、バルブハウジングの内側部分に、環状空間が設けられ、その環状空間の軸線方向長さが、少なくとも2つの半径方向貫通孔の間の距離に対応し、環状空間が、作動ピストンがロック位置にある場合、2つの半径方向孔上で延在していることが想定されている。このようなバルブ装置は、信頼性が高いだけでなく、構成が簡単である。更に、これにより、上述した外側ハウジング部分内における内側ハウジング部分の「浮遊状態」の収容が特に良好に実現可能である。
【0021】
特に好適には、監視ラインは、クランプスピゴットがクランプチャックの収容開口に収容されると共にクランプ手段によって正しくロックされた場合、入口と出口との間で連続的に開いているが、大気に対して閉鎖されている。この実施形態においても、クランプスピゴットが各クランプチャックに収容されると共に、正しくロックされた場合にのみ、十分かつ所定の圧力が出口側に構築可能であるため高い信頼性が実現される。
【0022】
本発明の更なる課題は、クランプチャックの個数に対応する個数のクランプスピゴットが設けられたパレットをクランプするための、請求項1~8の何れか一項に従って構成された少なくとも2個のクランプチャックを備えるクランプ装置を、クランプスピゴットが全てのクランプチャックに収容されたか否かを容易に確認できるよう改善することである。
【0023】
この更なる課題の解決策は、請求項9の特徴部分に規定されている。即ち、クランプ装置のクランプチャックが、共通のクランプベースに収容され、そのクランプベースに、空圧で負荷可能であると共に、入口から出口に通じる監視ラインが設けられ、その監視ラインが、各クランプチャックの挿入領域に配置された全ての制御孔と接続されている。
【0024】
この実施形態により、監視ラインによって全てのクランプチャックにクランプスピゴットが収容されているか否かを確認するための基本的な可能性が提供される。なぜなら、全ての制御孔がクランプスピゴットによって閉鎖されている場合にのみ、監視ライン内に十分な圧力を構築することができるからである。
【0025】
特に好適には、クランプ装置の各クランプチャックが、バルブ装置を備え、そのバルブ装置により、各作動ピストンの位置に応じて、監視ラインを通る流体の流れが変化可能であり、バルブ装置が、監視ラインの入口と出口との間に配置されると共に互いに直列接続されることにより、作動ピストンの全てが正しくロックされた場合にのみ、監視ラインの入口と出口との間に通路が存在している。この実施形態においては、全てのクランプスピゴットが正しくロックされた場合にのみ、監視ラインの出口に十分な圧力を構築することができる。
【0026】
特に好適な更なる構成では、各クランプチャック領域において、空圧式の増し締めラインが、各作動ピストンの上方に配置された増し締め空間に通じ、各増し締めラインが、監視ラインに直接的又は間接的に接続されている。この実施形態により、監視ラインに圧縮空気を導入することにより、全ての作動ピストンを増し締めすることが可能である。一般的なクランプ装置においては、「増し締めライン」が既に設けられていることが多いため、既存の増し締めラインを同時に監視ラインとしても使用することができる。この場合、既存のクランプ装置に加えなければならない変更は比較的少ない。これは特に、結合部が設けられた入口及び出口も既に存在しているからである。
【0027】
本発明の更なる課題は、請求項1~8の何れか一項に従って構成されたクランプチャック、又は請求項9~12の何れか一項に従って構成されたクランプ装置を備えるクランプチャック・アセンブリであって、クランプスピゴットが設けられたパレットがクランプチャック内で存在すると共に、正しくクランプされているか否かを監視するための手段が設けられているか、又は複数のクランプスピゴットが設けられたパレットがクランプチャック内で存在すると共に、正しくクランプされているか否か監視するための手段が設けられているクランプチャック・アセンブリを提供することである。
【0028】
この課題は、請求項13に係るクランプチャック・アセンブリによって解決される。
【0029】
クランプチャック・アセンブリが、空気源に接続可能な入口ラインを備え、その入口ラインが、クランプベースを通って延在する監視ラインの入口に接続され、監視ラインが、出口側において出口ラインに接続され、その出口ラインが、出口側の圧力を検出するための少なくとも1個の圧力センサに接続されていれば、出口側の圧力センサにより、クランプチャック又はクランプ装置内におけるパレットの存在及び正しいクランプを監視することができる。
【0030】
クランプチャック・アセンブリの好適な構成においては、空気の流入量を制限するスロットルが、入口ラインに配置され、その入口ラインが、第1圧力センサに接続され、出口ラインが、監視ライン内の出口側における圧力を検出するための第2及び第3圧力センサに接続され、クランプチャック・アセンブリが、3個の圧力センサによって判定された圧力を記録及び評価するための評価電子機器を備えることが想定されている。
【0031】
空気の流入量を制限するスロットルが入口ラインに配置され、一方で入口圧力が検出され、他方で出口ラインにおける圧力が2個の圧力センサによって検出されることにより、各パレットがクランプチャック又はクランプ装置内で正しくクランプされているか否かに関して信頼性の高い情報を得ることができる。なぜなら、特に、入口側と出口側との間の圧力を比較することができるからである。また、出口側に2個の圧力センサが配置されることにより、監視が冗長化される。
【0032】
最後に、本発明の更なる課題は、請求項13又は14に係るクランプチャック・アセンブリにクランプされたパレットのクランプ状態を検出するための方法を提供することである。この方法により、クランプ状態に関して信頼性が高く確実な監視が可能である。この課題は、請求項15に記載した方法ステップによって解決される。
【0033】
空圧システム内、即ち関連する構成要素を有する監視ライン内で圧力を構築するために、入口ラインを、圧力で負荷し、所定時間の経過後に、入口ラインにおける圧力を、測定すると共に出口で測定した圧力と比較する。入口と出口との間の圧力差が25%未満の場合、パレットの正しいクランプが検出される。逆に、入口と出口との間の圧力差が25%を超える場合、パレットのクランプ不良が検出される。上述した上方は、過去の経験値に基づいている。これら値は、クランプチャック又はクランプ装置の大きさ及び構成に応じて、上述したのとは異なる場合がある。特に重要なことは、正しくクランプされたパレットと正しくクランプされていないパレットとの間に明確で確実に測定可能な差が存在することである。
【0034】
本発明の方法の好適な構成においては、圧力を検出するための2個の圧力センサを、監視ラインに出口側で接続したクランプチャック・アセンブリの出口ライン内に配置し、
入口ラインを、圧力で負荷し、所定時間の経過後に、入口ライン内における圧力を、出口側に配置した2個の圧力センサで測定した圧力と比較し、出口側に配置した2個の圧力センサ間で測定圧力差が10%を超える場合、エラーメッセージを出力し、及び/又は、パレットのクランプ不良を検出することが想定されている。
【0035】
本発明の更なる有利な実施形態及び特徴の組み合わせは、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】クランプチャックをパレットと一緒に示す斜視図である。
【
図2】
図1におけるクランプチャックを示す部分断面斜視図である。
【
図3】
図1におけるクランプチャックを示す代替的な断面図である。
【
図4】クランプチャックを、その上にパレットがクランプされた状態で一緒に示す部分斜視断面図である。
【
図5】
図4に関して、クランプチャックを、その上にパレットがクランプされた状態で一緒に示す代替的な断面図である。
【
図6】
図4における実施形態を示す拡大詳細図である。
【
図7】クランプチャックが設けられたクランプチャック・アセンブリを示す略図である。
【
図8】4個のクランプチャックが設けられたクランプ装置を示す説明図である。
【
図9】クランプ装置が設けられたクランプチャック・アセンブリを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、クランプチャック1をパレット46と一緒に斜視図で示す。パレット46には、その下側に配置されたクランプスピゴット47が設けられている。本明細書における「パレット」という表現は、例えば工具又はワークピースが固定可能な全ての種類のキャリアを表している。クランプベース20に収容されたクランプチャック1は、円形のクランププレート2を備え、そのクランププレート2には、クランプベース20の切り欠きに向けて垂直方向下方に延在する中空円筒状の延長部が設けられている。中空円筒状延長部の内部空間は、クランプスピゴット47を収容するための収容開口5を形成している。
【0038】
クランププレート2の上側には、パレット46用の外側及び内側のZ支持部3a,3bが設けられ、外側Z支持部3a及び内側Z支持部3bの両方は、円に沿って均一に分布するよう配置されている。収容開口5の挿入領域6は、円錐状に形成されている。この挿入領域6内には、互いに正反対に対向する2つの制御孔(その機能については以下においてより詳細に説明する)が通じている。
図1には、2つの制御孔7の1つだけが表されている。制御孔7は、好適には、約2~3 mmの直径を有する。収容開口5の挿入領域6内には、複数の清掃孔8も通じており、クランプスピゴット47における円錐状のセンタリング領域48を清掃するよう機能する。クランプチャック1には、クランプ手段(
図1には図示せず)が設けられ、そのクランプ手段は、クランプスピゴット47を収容開口5にクランプするための球状のクランプ部材を含む。クランプ手段は、クランプ部材を作動させるために、開放位置とロック位置との間で変位可能な作動ピストンを含む。クランプベース20には、複数のチャネル及びラインが設けられ、これらチャネル及びラインは、結合部/接続部9a,9bにより、クランプベース20の内外に通じている。これらのうち1つの接続部9aは、監視ラインの入口を形成し、他の接続部9bは、
図7に基づいて以下においてより詳細に説明するように、監視ラインの出口を形成している。
【0039】
クランプスピゴット47には、パレット46を指向する後側に円錐状センタリング領域48が設けられ、そのセンタリング領域48は、クランプチャック1の円錐状挿入領域6に適合されている。クランプスピゴット47には、前端に向けて円錐状の前部49が設けられ、その前部49の後側は、クランプチャック1内にクランプスピゴット47を引きこんで固定するためにクランプ手段のクランプ部材が係合可能な肩部50を形成している。
【0040】
図2は、開放位置におけるクランプチャック1をクランプベース20と一緒に部分斜視断面図で示す。このようなクランプチャックの基本構造は、例えば欧州特許出願公開第1321221号明細書に既知であるため、以下においてはクランプチャックの全ての要素について説明することはせず、特に本発明に関連して本質的な幾つかの要素について説明する。
図2においては、特に、中空円筒状延長部4、円筒状挿入領域6を有する収容開口5、2つの制御孔7、2つの清掃孔8、クランプ手段10、作動ピストン11、クランプ手段10の球状クランプ部材12、及び監視ライン10の一部が表されている。作動ピストン11は、クランププレート2に支持された圧縮ばね(図示せず)により、クランプベース20の底部方向に負荷されている。作動ピストン11は、クランプ部材20と一緒に初期位置で示されており、その初期位置では、クランプスピゴットが収容開口5に導入可能であると共に、収容開口5から取り出し可能である。作動ピストン11の下側とクランプベース20の底部との間には、圧力空間27が形成されている。作動ピストン11を圧縮ばねの力に抗して図示の初期位置に移動させるために、空間27には圧縮空気が供給されて所定の過圧が発生する。これにより、作動ピストン11は、圧縮ばねの力に抗して空圧で上部ストッパに押圧され、図示の初期位置に変位する。クランプスピゴットを使用してパレットをクランプチャック1にクランプするためには、圧力空間27内の過圧を低減する必要がある。この目的のために、圧力空間27は、大気に向けて開放されるのが好適である。圧力空間27内の過圧が特定の値を下回るとすぐに、作動ピストン11が圧縮ばねによって下方に向けてロック位置に移動する。この場合、クランプ部材12は、収容開口5内に半径方向内方に向けて変位し、これにより収容開口5内に挿入されたクランプスピゴットが収容開口内に更に引っ張られ、即ちクランプベース20の底部方向に下方に向けて更に引っ張られ、クランプチャック1内に固定又はクランプされる。クランプ手段10は、作動ピストン11がクランプ部材12と一緒に、クランプスピゴットをセルフロックによってクランプチャック1内に保持及びロックするよう構成されている。このような既知のクランプ手段10は、パレットがクランプチャック1の非加圧状態で確実にクランプされると共に、そのクランプ状態が維持されることを意図している。
【0041】
クランプチャック1には、監視ライン40内で遮断可能な通路を形成するバルブ装置16も設けられている。バルブ装置16は、バルブハウジング17、並びにバルブハウジング17内に部分的に収容されると共に、実質的に円筒状のバルブ本体21を有する。バルブハウジング17は、第1外側部分18及び第2内側部分19を含み、外側部分18は、作動ピストン11と強固に接合されている。ハウジングの内側部分19は、軸線方向において外側部分18に形状密着的に接続されている。この場合、内側部分19は、半径方向に遊びを有する状態で外側部分18に収容されている。バルブハウジングの両部分18,19は、ソケット状に形成されている。バルブ本体21は、遮断位置と開放位置との間で流体の流れを変えるために、バルブハウジング17に対して変位可能に取り付けられている。流体としては、空気又は圧縮空気が使用されるのが好適である。バルブ本体21は、ねじ固定部によってクランププレートに固定的に接続されるのに対して、バルブハウジング17の外側部分18は、作動ピストン11の孔31に固定的に収容されている。バルブ本体21には、軸線方向入口孔22が設けられ、その入口孔22は、上側からバルブ本体21内に通じると共に、バルブ本体21のほぼ中央部で第1半径方向孔23を介して再び外部に通じている。第1半径方向孔23は、バルブ本体21を横方向に正反対に貫通し、バルブ本体21から両側に通じている。バルブ本体21には、第1孔23の下方に配置された第2半径方向孔24が設けられ、バルブ本体21をやはり半径方向に横切っている。この第2半径方向孔24は、バルブ本体21から下側に向けて導出された軸線方向出口孔25に接続されている。バルブ本体21の側面における2つの半径方向孔23,24領域においては、溝状又はスロット状の凹部が設けられている。内側において、バルブハウジング17の内側部分19には、バルブ本体21を包囲する環状空間を形成する凹部が設けられ、その環状空間の軸線方向長さは、少なくとも2つの半径方向貫通孔23,24の間の距離に対応している。バルブハウジング17の内側部分19は、バルブハウジング17における外側部分18の半径方向に浮遊状態で、即ち数10分の1ミリメートル程度の半径方向遊びを有する状態でガイド及び収容されるのに対して、軸線方向においてはバルブハウジング17の外側部分18に対してある程度の遊びを有する状態で形状密着的に接続されている。バルブハウジング17の内側部分19が浮遊状態で取り付けられていることにより、システムに起因して半径方向にある程度の遊びを有する状態でクランプベース20に収容された、特に作動ピストン11の半径方向遊びを補償することができる。なぜなら、特に、バルブ本体21に関連するバルブハウジング17の内側部分19だけが監視ライン40の開閉にとって機能的に重要だからである。
【0042】
バルブハウジング17の内側部分19内に配置された環状空間は、内側部分19に対するバルブ本体21の所定の第1軸線方向位置において、2つの半径方向孔23,24が環状空間を介して互いに接続されているのに対して、所定の第2軸線方向位置において、2つの半径方向孔23,24が互いに接続されないようバルブ本体21に適合されている。所定の第2軸線方向位置において、2つの半径方向孔23,24が互いに接続されないのは、少なくとも一方の孔、好適には2つの孔23,24が、軸線方向における環状空間の下方において、環状空間を下方に向けて区切る内側部分19内の環状突起領域に位置しているからである。この後者の状態は、作動ピストン11が図示の初期位置にあるときに生じる。一方、ロック位置においては、
図3に基づいて以下により詳細に説明するように、2つの半径方向孔23,24が環状空間を介して互いに接続されている。2つの半径方向孔23,24が環状空間を介して互いに接続されている場合、バルブ装置16は開放位置にある。即ち、監視ライン40の入口は、バルブ装置16によってその出口に空気接続されている。なぜなら、環状空間は、2つの半径方向孔23,24を超えて軸線方向に延在しているからである。簡単に言えば、監視ライン40は、作動ピストン11がロック位置になければ、バルブ装置によって入口と出口との間で遮断されるのに対して、作動ピストン11がロック位置にあれば、入口と出口との間で連続的に開放されている。
【0043】
監視ライン40は、少なくとも1つの制御ライン15にも接続され、その制御ライン15は、収容開口の円錐状挿入領域6に配置された2つの制御孔7を監視ライン40に接続している。クランプスピゴットが収容開口に収容されていなければ、2つの制御孔は開放されているのに対して、クランプスピゴットが収容開口に正しく収容されていれば、クランプスピゴットの円錐状センタリング領域によって2つの制御孔7が閉鎖されている。クランプチャックのこの実施形態により、監視ライン40の出口において測定された圧力により、クランプスピゴットが収容開口5に正しく収容されているか否か、また作動ピストン11がロック位置にあるか否かを検出することができる。
【0044】
図3は、
図2におけるクランプチャックの代替的な断面図を示す。
図3において、複数の圧縮ばね14の1個が表されており、その圧縮ばねは、作動ピストン11を下方に向けてそのロック位置方向に押圧する。更に、上方から軸線方向においてバルブ本体21内に通じる入口孔22、第1半径方向孔23、第2半径方向孔24、並びにバルブ本体21から軸線方向において下方に向けて通じる出口孔25が表されている。更に、バルブ本体21を包囲する環状空間30も表されている。作動ピストン11が上方に向けて変位した初期位置にある図示の状態においては、入口孔22と出口孔25との間に通路は存在しない。なぜなら、環状空間30が2つの半径方向孔23,24の上方に位置しているからである。環状空間30を下方に向けて区切る内側ハウジング部分の隆起部は、2つの半径方向孔23,24の上方においてバルブ本体21の側面を包囲している。このように、既存のギャップを介した僅かな漏れは別として、2つの半径方向孔23,24の間に空気接続は存在しない。
【0045】
図4は、クランプチャック1を、その上にパレット46がクランプされた状態で一緒に斜視断面図で示す。パレット46に接続されたクランプスピゴット47が収容開口5に挿入されると共に、パレット46がクランプチャック1上に配置されると、パレット46がクランプチャック1にクランプされる。この目的のために、圧力空間27内の過圧が低減され、好適には、圧力空間が大気に開放されることによって内部圧力が周囲圧力まで低下する。これにより、作動ピストン11は、圧縮ばねの作用で下方の作動位置に向けて移動する。作動ピストン11が下方に向けて移動すると、クランプ部材12が内方に向けて押圧され、そのクランプ部材12は、クランプスピゴット47の肩部50に当接してクランプスピゴット47をクランプベース20の底部に向けて下方に押圧する。この場合にパレット46は、その下側がクランプチャック1における隆起したZ支持部3a上に配置されている。作動ピストン11が下方に向けて移動すると、バルブハウジング、即ちバルブハウジングの外側部分18及び内側部分19も、クランププレート2に固定されて移動することがないバルブ本体21に対して移動する。バルブハウジングの内側部分19とバルブ本体21との間におけるこの相対移動により、
図6に基づいて以下においてより詳細に説明するように、バルブ装置が開放位置に移動する。
【0046】
図5は、
図4におけるクランプチャックを、その上にパレット46がクランプされた状態で一緒に断面図で示す。
図5には、特に、作動ピストン11を下方の最終位置又はロック位置に向けて押圧する2個の圧縮ばね14が表されている。
【0047】
図6は、
図4における実施形態の拡大詳細図を示す。
図6においては、バルブハウジングの内側部分19内に配置された環状空間30が表されている。作動ピストン11が完全に下方に向けて押圧されると、環状空間30はバルブ本体21における2つの半径方向孔23,24上に位置する。環状空間30が2つの半径方向孔23,24の上に位置すると共に、バルブ本体21の半径方向孔23,24領域に溝状のスロット34,35が設けられていることにより、第1半径方向孔23と第2半径方向孔24との間に、従ってバルブ本体21の軸線方向入口孔21と軸線方向出口孔との間に空気接続が存在する。更に、矢印付き破線44で表されているように、監視ライン40からバルブ本体21内に上方から流入した空気は、環状空間30を介して第1半径方向孔23から第2半径方向孔24内に、従って軸線方向入口孔22から軸線方向出口孔25内に流れることができる(
図3参照)。空気は、軸線方向出口孔から監視ライン40内に向けて出口方向に流れることができる。バルブハウジングにおける外側部分18の下部領域には、安全リング32が設けられ、その安全リング32は、外側部分18が上方に向けて移動する際に、バルブハウジングにおける内側部分19用の軸線方向駆動ディスクとして機能する。更に、バルブハウジングにおける外側部分18の内側には、シールリング33が設けられ、そのシールリング33は、バルブ本体21の側面に対してシールするよう当接している。
【0048】
図7は、上述したクランプチャック1を、クランプベース20、並びにクランプチャック1が設けられたクランプチャック・アセンブリ80の更なる要素と一緒に略図で示す。これら更なる要素は通常、クランプチャックが使用される加工機の構成要素であるか又は加工機の周辺に属する。クランプチャック・アセンブリ80は、クランプチャック1の他に、入口側で監視ライン40に接続された第1圧力センサ88と、出口側で監視ライン40に接続された2個の更なる圧力センサ89,90を備える。監視ライン40は、入口82からクランプベース20内に通じており、制御ライン15は、入口82の後で監視ライン40から分岐している(その制御ラインも、監視ライン40の構成要素と見なされる)。
図7には更に、クランプ手段の作動ピストン11、圧縮ばね14の1個、監視ライン40を遮断するためのバルブ装置16、及び収容開口に配置された好適には2つの制御孔7の1つが概略的に表されている。更に、制御ライン15から分岐すると共に、作動ピストン11の上方に配置された増し締め(リタイトニング)空間内に通じる増し締め(リタイトニング)ライン26が表されている。制御孔7がクランプスピゴットによって閉鎖されている場合、入口側に接続された圧力源により、監視ライン40内に十分な圧力が構築可能であり、その圧力は、ロック位置における作動ピストン11の増し締めに使用することもできる。作動ピストン11の増し締め及び出口側における圧力の検出はほぼ同時に行うことができるため、この目的のために、クランプチャック・アセンブリには、監視ライン40用の入口及び出口を設けるだけでよい(監視ライン40は空圧による締め付けラインとしても機能する)。
【0049】
クランプチャック・アセンブリ80は、圧力制御装置86、制御要素87、スロットル91、空圧ライン92など、多数の他の要素も備える。作動ピストン11の下方における空間27は、圧力ライン92によって加圧可能であるため、圧縮ばね14の力に抗して作動ピストン11をその初期位置に変位させることができる。入口側の圧力レギュレータ86は、ライン84を介して入口82に接続され、ライン85は、出口83から、出口側に並列配置された2個の圧力センサ89,90に通じている。ライン84に接続された空気源又は評価電子機器などの更なる要素は、明瞭性を高める見地から図示されていない。入口側に配置された第1圧力センサ88及び出口側で監視ライン40に接続された2個の更なる圧力センサ89,90の両方は、評価電子機器に接続されている。2個の圧力センサ89,90が出口側に設けられていることにより、各圧力センサ89,90における圧力を相互比較することが可能であり、特定の限界値を超える偏差が生じた場合にエラーメッセージを出力することができる。何れにせよ、出口側に配置された2個のセンサ89,90によって信頼性を高め、圧力センサの不良を検出することができる。
【0050】
以下、様々な変形例に基づいて、パレットの存在及び正しいクランプを監視するクランプチャック・アセンブリ80の機能をより詳細に説明する。なお、全ての変形例においては、各作動ピストン11の下方に配置された圧力空間27内が過圧に晒されていないことを想定している。
【0051】
変形例1:パレットが存在しない場合
【0052】
この変形例においては、パレットが収容されず、従ってクランプスピゴットがクランプチャック1上又は収容開口に収容されていないことを想定している。パレットがクランプスピゴットによってクランプチャック1内に正しくクランプされているか否かを確認するために、監視ライン40は、入口側のライン84を介して空圧で過圧に晒される。所定の時間Xの後、例えば3~5秒後に、入口側の接続ライン84における圧力及び出口側の接続ライン85における圧力の両方は、それぞれの圧力センサ88,89,90で測定される。収容開口にクランプスピゴットが収容されていない場合、監視ライン40内に流入した空気は、制御孔7を介して大気中に逃げる。監視ライン40内に流入する空気量は、入口側のスロットル91によって制限されるため、クランプスピゴットが存在しない場合、監視ライン40内には僅かな過圧しか構築されず、これはいかなる場合においても、正しいクランプを規定する約4.5バールの制限値を大幅に下回る。
【0053】
スロットルの寸法は、入口圧力を維持するための空気供給能力、並びに制御要素87と入口82との間のライン長さ及びライン断面に基づく。従って、スロットルは、短くて大きなライン及び極めて安定的な空気供給がある場合においても、クランプスピゴットの不在によって圧力の大幅な低下がもたらされると共に出口83における低圧により、クランプスピゴットが不在であることが確実に検出できる程度に閉鎖されなければならない。即ち、スロットルは、クランプスピゴットが存在せず、かつクランプチャックが正しくロックされた場合、出口83における圧力が2バール以下になるよう設定される。
【0054】
従って、クランプスピゴットがない場合、出口側に配置された2個の圧力センサ89,90における圧力は、圧力レギュレータ86によって入口側に予め設定された例えば6バールの圧力よりも大幅に小さい。作動ピストン11がロック位置にある場合、バルブ装置16のバルブ本体は確かに開放位置にあるが、監視ライン40内に流入する空気が制御孔7を介して逃げるため、出口側における圧力センサ89,90は、6バールの設定圧力を大幅に下回る圧力を測定する。測定で判明したところによれば、クランプスピゴットがない場合、出口側における圧力は約1.5~2.5バールのオーダーにある。言うまでもなく、出口側で測定される圧力は、入口側で設定された過圧の他に、様々な他のパラメータ、例えば、制御孔7の数及び直径、供給される空気量、システム内の漏れ、監視ライン40の直径、入口と出口との間の狭小部又はスロットル箇所に依存する。何れにせよ、クランプチャックの挿入領域に配置された制御孔7の直径は、一方では制御孔7を介して十分な量の空気を逃がすことにより、クランプスピゴットがない場合に大幅な圧力低下が生じるよう選択され、他方では制御孔7がクランプスピゴットによって確実にシールできるよう選択される。特に重要なことは、出口側で測定された圧力により、正しくクランプされたパレットと正しくクランプされていないパレット又はパレットの不在とが明確に区別可能であることである。異なる各状態は、好適には、試験によって検出され、圧力範囲が各状態に割り当てられる。入口側にスロットル91が配置されていなければ、クランプスピゴットがない場合、入口と出口との間に十分に大きな圧力差が生じない恐れがある。なぜなら、ラインが短く、かつ供給される空気が大量の場合、測定される出口圧力は、クランプスピゴットが存在する場合とクランプスピゴットが存在しない場合とを確実に区別できない程度に大きくなる可能性があるからである。
【0055】
収容開口にクランプスピゴットが収容されておらず、上述したように入口側のスロットルによって流入する空気量が制限されている場合、圧力は制御孔7を介して逃げる。この場合、バルブ装置16又はそのバルブ本体が遮断位置にあるか又は開放位置にあるか否かは無関係である。なぜなら、何れの場合も、出口側に配置された圧力センサ89,90における圧力は、公称圧力の6バールを大幅に下回るからである。何れにせよ、評価電子機器(詳細に図示せず)により、2個の圧力センサ89,90における圧力が、信頼性の高いクランプにとって必要な例えば4.5バール又は450 kPaの過圧に対応しないことが識別される。
【0056】
変形例2:クランプスピゴットを含むパレットは存在するが、正しくクランプされていない場合
【0057】
この変形例においては、パレットがクランプチャック1上に配置されており、そのクランプスピゴットが収容開口に収容されていることを想定している。クランプスピゴットがクランプチャックの収容開口に収容されていれば、制御孔7は、クランプスピゴットの円錐状センタリング領域によって閉鎖される。ただし、作動ピストン11が例えば引っ掛かりによってロック位置にない限り、バルブ装置16はロック位置を占めるため、出口側で監視ライン40に接続された2個の圧力センサ89,90における圧力は、圧力レギュレータ86によって入口側に設定された6バールの公称圧力よりもやはり大幅に小さい。即ち、バルブ装置16のバルブ本体がロック位置を占めている場合、2個の圧力センサ89,90における圧力は、実質的に周囲圧力に対応している。ただし、バルブ装置16における特定の漏れに起因し、測定された出口圧力は、周囲圧力よりも幾らか大きい可能性がある。何れにしても、出口側における接続ライン85内の圧力は、2バール未満であり得る。
【0058】
パレットがクランプチャック1上に配置されると共に、そのクランプスピゴットが収容開口に挿入される前に、作動ピストン11が既にロック位置にある場合、クランプスピゴットは、クランプ部材が前進ロック位置にあるため(
図6参照)、収容開口内に完全に挿入することができない。即ち、クランプスピゴット47の前部49(
図1参照)がクランプ部材に接触して完全な挿入が不可能であるため、クランプスピゴットの完全な挿入が妨げられる。この場合、制御孔7もクランプスピゴットによって閉鎖されず、入口側で生じた圧力が制御孔7を介して逃げることができる。この場合も、出口側の2個の圧力センサ89,90における圧力は、2バール未満である。従ってこの場合も、評価電子機器により、パレットの正しいクランプ及びロックが行われていないことが検出される。
【0059】
変形例3:パレットがクランプチャック内に正しくクランプされている場合
【0060】
この変形例においては、パレットがクランプチャック1上に配置されており、そのクランプスピゴットがクランプ手段によってクランプされると共に、正しくロックされていることを想定している。作動ピストン11は、下方のロック位置にあり、そのロック位置でクランプ部材が収容開口の内方に向けて押圧される。この場合、クランプ部材は、クランプスピゴットの肩部に当接すると共に、クランプスピゴットをパレットと一緒に大きな力で下方に向けて引っ張ることにより、パレットの下側がクランプチャック1における隆起したZ支持部上に固定される。これにより、収容開口の挿入領域に配置された全ての制御孔7も、クランプスピゴットの円錐状センタリング領域によってしっかりとシールされる。作動ピストン11のロック位置において、バルブ装置におけるバルブ本体21の2つの半径方向孔23,24は、バルブハウジングにおける内側部分19の環状空間30を介して、互いに接続されている(
図6参照)。これにより、監視ライン40の入口82は、その出口83に接続されている。
【0061】
システムにおける漏れを考慮すると、クランプスピゴットが正しくロックされると共に、圧力レギュレータ86によって入口側に6バールの公称圧力が設定されている場合、出口側で監視ライン40に接続された2個の圧力センサ89,90における圧力は、約4.5~5.5バールのオーダーにある。パレットが正しくクランプされていることを識別するためには、一方では出口側における2個の圧力センサ89,90により、入口側で設定されると共に、場合によって入口側で測定された圧力の少なくとも75%に相当する圧力を測定することが必要である。更に、監視ライン40の出口側に接続された2個の圧力センサに存在すると共に、測定される圧力差は最大で10%であってもよい。そうでなければ、エラーメッセージが出力され及び/又はパレットのクランプ不良が検出される。
【0062】
監視ライン40に漏れがなく完全にシールされていれば、理論的には、監視ラインの出口側に配置された圧力センサ89,90における圧力は、一定時間の後、即ち監視ライン40内に圧力が完全に構築されたときに、設定された6バールの公称圧力に対応している。ただし、このような空圧システムにおいてはある程度の漏れが生じるため、出口側における圧力は、設定された公称圧力よりも最大で約25%小さい。入口84と出口85との間の圧力差が25%未満であれば、パレットのクランプが正しいと識別されるのに対して、入口84と出口84との間の圧力差が25%を超えれば、パレットのクランプが不良と識別される。ただし、本発明に係るシステムは、クランプスピゴットがない場合、入口84と出口85との間の圧力差が約50%になるよう構成されている。
【0063】
従って、クランプスピゴットが設けられたパレットが正しくクランプ及びロックされると共に、入口圧力が6バールの場合、監視ライン内の出口側に配置された2個の圧力センサ89,90における圧力は約4.5~5.5バールのオーダーにあるのに対して、クランプスピゴットがない場合又は正しくロックされていない場合、その圧力は3バール未満であると判断することができる。何れにせよ、この圧力差は、評価電子機器によってパレットが正しくクランプされているか否かを判断するのに十分に大きい。上述した圧力差、特に出口で測定された圧力差は、新しいクランプチャックの場合には最大範囲にあるのが好適であるが、クランプチャックを長期間使用した場合には幾らか小さくなる可能性がある。ただし、測定で判明したところによれば、50,000回を超えるクランプ手順の後であっても、その圧力差は、パレットが正しくクランプされているか否かを確実に区別できるのに依然として十分に大きい。
【0064】
図8は、本発明の更なる実施形態、即ちワークピースキャリア74をクランプするための4個のクランプチャック59,60,61,62を有するクランプベース54を備えるクランプ装置53を示す。各クランプチャック59~62は、上述した実施形態に従って構成されているため、以下においては詳細に説明しない。ワークピースキャリア74の下側には、クランプチャック59~62に対応するよう配置された4個のクランプスピゴット75,76,77,78が設けられている。クランプ装置53上におけるクランプに際しては、ワークピースキャリア74の下側が各クランプチャック59~62のZ支持部上に当接する。クランプベース54においては、入口側に配置された結合部57から出口側に配置された結合部56まで、やはり監視ラインが延在している。
【0065】
4個のクランプチャック59~62における4個のバルブ装置は、互いに直列接続されている。即ち、第1バルブ装置の出口は、第2バルブ装置の入口に接続され、その第2バルブ装置の出口は、第3バルブ装置の入口に接続され、その第3バルブ装置の出口は、第4バルブ装置の入口に接続されている。第1バルブ装置の入口は、監視ラインの入口に接続されているのに対して、第4バルブ装置の出口は、監視ラインの出口に接続されている。従って、監視ラインの入口は、互いに直列接続された4個のバルブ装置を介して、監視ラインの出口に接続されている。監視ラインの入口と第1バルブ装置との間からは更なるラインが分岐し、その更なるラインから4つの制御ラインがやはり分岐して各クランプチャック59~62の挿入領域に配置された制御孔に通じている。従って、全ての制御孔は、互いに並列接続されている。
【0066】
図9は、上述したクランプ装置53が設けられた第2クランプチャック・アセンブリ81の更なる要素を略図で示す。これら更なる要素は、やはりクランプ装置53が使用される加工機の構成要素であるか又は加工機の周辺に属する。図示の例においては、
図7に基づいて説明したような加工機が使用されることを想定している。従って、機械側に設けられた要素及びラインには、第1クランプチャック・アセンブリ80と同じ参照符号が付されている。クランプ装置53は、クランプベース54上に配置された4個のクランプチャック59~62を備える。
【0067】
クランプ装置53を通って入口82から出口83に至る監視ラインには、入口側に参照符号40が付されている。監視ラインにおける個々の部分セクションには、参照符号40a~40eが付されている。
【0068】
第2クランプチャック・アセンブリ81は、クランプ装置53の他に、やはり入口側で監視ライン40に接続された第1圧力センサ88と、出口側で監視ライン40eに接続された2個の更なる圧力センサ89,90を備える。4個のクランプチャック59~62のそれぞれには、圧縮ばねによって負荷された作動ピストン及びバルブ装置69,70,71,72が設けられている。各クランプチャック59~62の収容開口には、やはり少なくとも1つの制御孔7が通じているが、好適には、クランプチャック59~62毎に2つの制御孔7が設けられている。この場合も、クランプチャック・アセンブリ81の更なる要素としては、圧力レギュレータ86、制御要素87、スロットル91、並びに各作動ピストン11の下方における空間を加圧するための圧力ライン92が表されている。入口側の圧力レギュレータ86は、ライン84を介して入口82に接続されているのに対して、ライン85は、出口83から、出口側に並列配置された2個の圧力センサ89,90に通じている。評価電子機器などの更なる要素は、明瞭性を高める見地から図示されていない。入口側の圧力センサ88及び出口側で監視ラインに接続された2個の圧力センサ89,90の両方は、評価電子機器に接続されている。
【0069】
監視ライン40は、全てのクランプチャック59~62の制御孔7に接続されている。この目的のために、入口の後で接続ライン40aが監視ライン40から分岐しており、その接続ライン40aも監視ライン40の一部と見なされる。この接続ライン40aからは、各クランプチャック59~62領域において制御ライン64,65,66,67が再び分岐し、その制御ラインが制御孔7又は対応するクランプチャック59~62の制御孔7に通じている。第1クランプチャック59に表されているように、各制御ライン64からは、ラインがクランプチャック59の作動ピストン11上方の空間内に通じている。これにより、監視ライン40は、作動ピストン11をそのロック位置方向に下方に向けるのにも使用可能であり、特に、クランプスピゴットが各ロックピストン11を増し締めするのに使用可能である。ただし、クランプチャックが開放されるべき間は、圧縮空気が増し締め空間内に供給されないことが重要である。クランプスピゴットが各クランプチャック59~62に収容されていれば、監視ライン40内に十分な圧力を構築し、同時に、圧縮空気を導入することによって全ての作動ピストン11を増し締めすることができる。逆の場合、一般的なクランプ装置に既に設けられている「増し締めライン」は、クランプスピゴットの存在を確認するのに使用することもできる。この目的のためには、クランプチャック59~62を、本発明に従って構成すると共に、対応するラインを増し締めラインに接続しなければならない。
【0070】
図9においては更に、4個のバルブ装置69~72が互いに直列接続されると共に、監視ライン40の入口82が4個のバルブ装置69~72を介して監視ラインの出口83に接続されていることが表されている。この目的のために、接続ライン40aは、第1クランプチャック59領域において第1バルブ装置69の入口に接続されている。第1バルブ装置69の出口は、ライン40bを介して第2バルブ装置70の入口に接続され、その第2バルブ装置の出口は、ライン40cを介して第3バルブ装置71の入口に接続されている。第3バルブ装置71の出口は、ライン40dを介して第4バルブ装置72の入口に接続されている。やはり監視ライン40の一部とも見なされるライン40eは、第4バルブ装置72の出口から、出口83に通じている。
【0071】
パレットの存在及び正しいクランプを監視するクランプチャック・アセンブリ81の機能は、上述した例と基本的に同じではあるが、全てのクランプチャック59~62が監視されるという点で異なる。以下、様々な変形例に関して再度説明するが、4個のクランプチャックの構成は同じであるため、一部については第1クランプチャック59の参照符号だけを参照する。なお、全ての変形例においては、各作動ピストン11の下方に配置された圧力空間27内が過圧に晒されていないことを想定している。
【0072】
変形例1:パレットが存在しない場合
【0073】
この変形例においては、クランプ装置53上にパレットが配置されていないことを想定している。パレットがなければ、クランプスピゴットもクランプチャック59~62の何れにも収容されていない。パレットが4個のクランプスピゴットによってクランプチャック53上に正しくクランプされているか否かを確認するために、監視ライン40は、入口側のライン84を介して空圧で過圧に晒される。クランプチャック59~62の何れにもクランプスピゴットが収容されていない場合、監視ライン40内に流入した空気は、各クランプチャック59の制御孔7を介して大気中に逃げる。監視ライン40内に流入する空気量は、入口側のスロットル91によって制限されるため、クランプスピゴットのうち少なくとも1個が存在しない場合、監視ライン40内には僅かな過圧しか構築されず、これはいかなる場合においても、正しいクランプを規定する約4.5バールの制限値を大幅に下回る。従って、出口側で監視ライン40eに接続された2個の圧力センサ89,90における圧力は、圧力レギュレータ86によって入口側に設定された6バールの圧力よりも大幅に小さい。各クランプチャック59の作動ピストン11がロック位置にある場合、各バルブ装置69~72のバルブ本体は開放位置にあるが、監視ライン40内に流入する空気が制御孔7を介して逃げるため、出口側における圧力センサ89,90は、6バールの設定圧力を大幅に下回る圧力を測定する。出口側で測定される圧力は、上述したように、他の様々なパラメータに依存する。ここでも重要なことは、出口側で測定された圧力により、正しくクランプされたパレットと正しくクランプされていないパレット又はパレットの不在とが明確に区別可能であることである。図示のクランプ装置53においても、異なる各状態は、好適には、試験によって識別され、圧力範囲が各状態に割り当てられる。何れにせよ、変形例1においては、評価電子機器(詳細に図示せず)により、2個の圧力センサ89,90における圧力が、確実なクランプにとって必要な少なくとも4.5バール又は450 kPaの過圧に対応しないことを検出することができる。
【0074】
変形例2:パレットは存在するが、少なくとも1個のクランプスピゴットが存在しない場合
【0075】
この変形例においては、パレットがクランプ装置上に配置されているが、少なくとも1個のクランプスピゴットが存在せず、これによりクランプチャック59~62の少なくとも1個にクランプスピゴットが収容されていないことを想定している。この場合も、導入された圧縮空気は、クランプスピゴットが収容されていないクランプチャックの制御孔を通って逃げる。監視ライン40内に流入する空気量は、入口側のスロットル91によって制限されるため、クランプスピゴットが存在しない場合、監視ライン40内にはやはり僅かな過圧しか構築されない。
【0076】
スロットルは、クランプスピゴットが1個だけ存在せず、かつクランプチャックが正しくロックされた場合、出口83における圧力が2バール以下になるよう構成されている。
【0077】
従ってこの変形例においても、作動ピストン11及び関連する各バルブ装置69~72の位置にかかわらず、出口側における2個のセンサ89,90によって測定される圧力は、約2バール未満である。従って、評価電子機器により、2個の圧力センサ89,90における圧力が、確実なクランプにとって必要な過圧に対応しないことが検出される。
【0078】
変形例3:全てのクランプスピゴットを含むパレットは存在するが、正しくクランプされていない場合
【0079】
この変形例においては、4個のクランプスピゴットが設けられたパレットが4個のクランプチャック59~62上に配置され、4個のクランプスピゴットの全てが各クランプチャック59~62の収容開口に収容されていることを想定している。各クランプチャックの制御孔は、各クランプスピゴットによって閉鎖される。ただし、少なくとも1個の作動ピストン11がロック位置にない限り、例えば第1クランプチャック59の作動ピストン11が引っ掛かっている場合、関連するバルブ装置69は遮断位置を占めるため、監視ラインの通路が対応箇所で遮断される。4個のバルブ装置69~72は互いに直列接続されているため、出口側で監視ライン40に接続された2個の圧力センサ89,90における圧力は、圧力レギュレータ86によって入口側に設定された6バールの圧力よりもやはり大幅に小さい。4個のバルブ装置69~72のうち少なくとも1個が遮断位置を占めている場合、2個の圧力センサ89,90における圧力は、実質的に周囲圧力に対応するが、何れにしても2バール未満である。従って、評価電子機器により、ワークピースキャリアの確実なクランプが行われていないことが識別される。
【0080】
パレットがクランプ装置53上に配置され、そのパレットのクランプスピゴットが各クランプチャック59~62の収容開口に挿入される前に、4個のクランプチャック59~62における作動ピストンの少なくとも1個が既にロック位置にある場合、
図7(変形例2)に基づいて上述したように、ロック位置にあるクランプチャックのクランプスピゴットは収容開口に完全に挿入することができない。この場合も、評価電子機器により、ワークピースキャリアの確実なクランプが行われていないことが識別される。
【0081】
変形例4:パレットが全てのクランプスピゴットによってクランプチャック内に正しくクランプされている場合
【0082】
この変形例においては、パレットがクランプ装置53上に配置されており、その4個のクランプスピゴットが4個のクランプチャック59~62によってクランプされると共に、正しくロックされていることを想定している。各クランプチャックの作動ピストン11は、下方のロック位置にあり、そのロック位置でクランプ部材が収容開口の内方に向けて押圧される。この場合、クランプ部材は、各クランプスピゴットの肩部に当接すると共に、クランプスピゴットをパレットと一緒に大きな力で下方に向けて引っ張ることにより、パレットの下側がクランプ装置53における4個のクランプチャック59~62の隆起したZ支持部上に固定される。これにより、各収容開口の挿入領域に配置された全ての制御孔7は、クランプスピゴットにおける対応の円錐状センタリング領域によってしっかりと閉鎖される。4個のクランプチャック59~62の作動ピストン11がロック位置にあるため、各バルブ本体における2つの半径方向孔も内部インサートの環状空間を介して互いに接続され(
図6参照)、4個のバルブ装置69~72は全て開放位置にある。これにより、監視ライン40の入口側82は、4個のバルブ装置69~72を介して、出口側83に接続されている。
【0083】
システムにおける漏れを考慮すると、4個のクランプスピゴットが正しくロックされた場合、出口側で監視ライン40内に配置された2個の圧力センサ89,90における圧力は、約4.5~5.5バールのオーダーにあり、評価電子機器によってパレットの正しいクランプが識別される。
【0084】
要約すると、4個のクランプスピゴットが設けられたパレットが正しくクランプ及びロックされると共に、入口圧力が6バールの場合、監視ライン内の出口側に配置された2個の圧力センサ89,90における圧力は約4.5~5.5バールのオーダーにあるのに対して、少なくとも1個のクランプスピゴットが存在しないか又は少なくとも1個のクランプスピゴットが正しくロックされていない場合、2個の圧力センサ89,90における圧力は2バール未満である。この違いに基づけば、パレットが正しくクランプされた否かを評価電子機器によって確実に識別することができる。ここでも、正しくクランプされたパレットであれば、新しいクランプチャックの出口における圧力は、より大きな範囲、即ち約5~5.5バールの間にあるのが好適であるのに対して、数千又は数万回のクランプ手順の後では、幾らか小さくなる可能性があり、約4.5~5バールの間にあり得る。何れにせよ、パレットが正しくプランプされている場合の出口側の圧力は、パレットが正しくクランプされたと確実に判断できるほど依然として十分に大きい。
【0085】
更に、監視ライン40内に供給された圧縮空気は、吹き飛ばしにより、パレットの下側及び/又はクランプスピゴットにおける接触面を清掃するために使用することができる。この目的のためには、監視ライン40に導入された圧縮空気を清掃孔8(
図1参照)に導く少なくとも1個のバルブを設ける必要がある。従来技術に基づいて構成されたクランプシステムにおいては通常、接触面の吹き飛ばし/清掃用の圧縮空気を導入するための空圧結合部又は空圧接続部が既に設けられているため、既存の加工機も比較的容易に後付け(レトロフィット)することができる。従来技術に基づいて構成されたクランプシステムにおいては通常、一方及び/又は他方のラインの出口に接続された空圧結合部又は空圧接続部が出口側にも設けられている。
【0086】
上述した実施形態は限定的なものではなく、本発明の範囲内で異なる実施形態を実現できることは言うまでもない。従って、例えば、2つの制御孔の代わりに、異なる数の制御孔をクランプチャック毎に設けることも可能である。クランプチャック毎に少なくとも2つの制御孔を設けることの利点は、クランプスピゴットがない場合に体積流量が増加し、従って測定可能なΔPがより大きいことである。
【0087】
本明細書には、1個又は4個のクランプチャックを備えるクランプシステムについてのみ説明したが、本発明によれば、2個、3個、5個、又はそれを超えるクランプチャックを備えるクランプシステムを構成することも勿論可能であり、パレットの正しいクランプを監視することができる。
【0088】
クランプスピゴットが1個だけ存在せず、かつクランプチャックが正しくロックされた場合、出口83における圧力が2バール以下になるようスロットルが構成されているため、クランプスピゴットが少なくとも1個存在しない場合、出口側で測定される圧力は2バール以下である。従って、クランプチャックの個数にかかわらず、クランプスピゴットが少なくとも1個存在しない場合、出口側で測定される圧力は常に2バール以下である。
【0089】
以下、本発明に従って構成されたクランプチャックの幾つかの利点を簡単に要約する。
・本発明に従って構成されたクランプチャックにおいては、クランプチャック内におけるパレットの正しいクランプを確実に監視することができる。
・クランプスピゴットの不在、従ってパレットの不在も確実に検出することができる。
・複数のクランプスピゴットが設けられたパレットをクランプするための複数のクランプチャックを備えるクランプ装置の場合、全てのクランプスピゴットの存在及びそれらの正しいクランプの両方を確実に監視することができる。
・本発明に従って構成されたクランプチャック又は本発明に従って構成されたクランプ装置は、長期使用に適しており、長期にわたって安定的に機能する。
・設けるべき機械部品数が比較的少ない。
・本発明に従って構成されたクランプチャック又は本発明に従って構成されたクランプ装置を、既存の加工機に、比較的容易にかつコスト効率よく後付け又は装備することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 クランプチャック
2 クランププレート
3 3a内側Z支持部/3b外側Z支持部
4 中空円筒状延長部
5 収容開口
6 (円錐状)挿入領域
7 制御孔
8 清掃孔
9 結合部
10 クランプ手段
11 作動ピストン
12 クランプ部材(球)
14 圧縮ばね
15 制御ライン
16 バルブ装置
17 バルブハウジング
18 (バルブハウジング)外側部分
19 (バルブハウジング)内側部分
20 クランプベース
21 バルブ本体
22 軸線方向入口孔
23 第1半径方向孔
24 第2半径方向孔
25 軸線方向出口孔
26 増し締め(リタイトニング)ライン
27 作動ピストン下方の空間
28 作動ピストン上方の空間(増し締め(リタイトニング)用)
30 環状空間
31 作動ピストンの孔
32 スナップリング
33 シール
34 スロット状切り欠き
35 スロット状切り欠き
36 基体のステップ孔
37 バルブ本体の上側シール
38 バルブ本体の下側シール
39 外側外ケットのシール
40 監視ライン
41 監視ラインの入口
42 監視ラインの出口
43 監視ラインからの分岐部
44 破線
46 パレット
47 クランプスピゴット
48 後部のセンタリング領域
49 前部
50 肩部
53 クランプ装置
54 クランプベース
55 ハウジングのクランプベース
56 結合部入口
57 結合部出口
59 第1クランプチャック
60 第2クランプチャック
61 第3クランプチャック
62 第4クランプチャック
64 第1制御ライン
65 第2制御ライン
66 第3制御ライン
67 第4制御ライン
69 第1バルブ装置
70 第2バルブ装置
71 第3バルブ装置
72 第4バルブ装置
74 ワークピースキャリア
75 第1クランプスピゴット
76 第2クランプスピゴット
77 第3クランプスピゴット
78 第4クランプスピゴット
80 第1クランプチャック・アセンブリ
81 第2クランプチャック・アセンブリ
82 入口
83 出口
84 入口側の接続ライン
85 出口側の接続ライン
86 圧力レギュレータ
87 制御要素
88 入口側の圧力センサ
89 出口側の第1圧力センサ
90 出口側の第2圧力センサ
91 スロットル
92 圧力ライン
93 出口