(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
H01R13/42 B
(21)【出願番号】P 2020087123
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 将寿
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 哲広
(72)【発明者】
【氏名】片桐 竜
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-120561(JP,A)
【文献】実開昭58-013678(JP,U)
【文献】実開昭63-075967(JP,U)
【文献】特開2011-181451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌端子と、該雌端子を収容する雌端子収容空間が形成された雌ハウジングと、前記雌端子と嵌合する雄端子と、該雄端子を収容し、前記雌ハウジングと嵌合可能な雄ハウジングと、を備え、
前記雌ハウジングに、前記雌端子に係合して該雌端子の抜け止めを行うランス
と、前記雌端子収容空間に隣接し、前記雄端子が通される挿通口が形成された区画壁と、が形成されており、
前記雄ハウジングに、前記雌ハウジングと本嵌合している状態で、前記ランスの撓み空間に位置して当該ランスの撓みを規制する規制部が形成されており、
前記雌端子が前記雌端子収容空間に完全に挿入されていない半挿入状態では、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングを本嵌合させる際に前記規制部の先端が前記ランスの先端に当たることで該規制部が前記撓み空間に進入不可となり、
前記規制部の先端が前記ランスの先端に当たっている状態で、前記雄端子が前記雌端子収容空間に進入して
おらず、該雄端子の先端が前記区画壁を越えずに前記挿通口内に位置している
ことを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、端子の半挿入検知機能を備えたコネクタが知られている。
図7は、従来の端子半挿入検知機能を備えたコネクタの断面図である(特許文献1を参照)。
図7に示すコネクタ510は、複数の雌側端子金具540を収容する雌側コネクタハウジング520と、各雌側端子金具540に連結されるジョイント端子532を備えたジョイントハウジング530とを備えている。なお、
図7は、両ハウジング520,530が本嵌合する前の、仮嵌合状態を示している。
【0003】
雌側コネクタハウジング520は、前後に開口する箱形に形成されており、その内部は区画壁524により前後に区画されている。この区画壁524の後側には、雌側端子金具540を個別に収容可能なキャビティ521が複数並設されている。区画壁524の前側には、ジョイントハウジング530が嵌入可能な嵌合部526が設けられている。
【0004】
各キャビティ521の前側には、区画壁524を貫通したタブ挿入口524Aが設けられており、ジョイント端子532の複数のタブ534がそれぞれ各タブ挿入口524Aを通ってキャビティ521内に挿入されるようになっている。各キャビティ521の底面には、雌形端子金具540に係合して雌側端子金具540を抜止保持するランス522が一体に成形されている。このランス522は下方に形成された撓み空間523へ弾性変形可能とされている。
【0005】
ジョイントハウジング530は、雌側コネクタハウジング520との本嵌合状態において、撓み空間523内に位置してランス522の撓み変形を規制する撓み規制部536を有している。この撓み規制部536は、雌側端子金具540の半挿入検知部としても機能する。即ち、両ハウジング520,530を本嵌合させる際、雌側端子金具540が正規位置に達していない半挿入状態にあった場合には、ランス522が撓み空間523に弾性変形した状態にあるため、撓み規制部536の先端がランス522の先端に当接し、それ以上の挿入ができない。これにより雌形端子金具540の半挿入状態が検知される。この場合にはその雌側端子金具540を正規位置まで押し込んでから、再びジョイントハウジング530を嵌合部526に押し込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のコネクタ510は、雌形端子金具540の半挿入状態が検知された状態(撓み規制部536の先端がランス522の先端に当接した状態)でタブ534の先端がキャビティ521内に位置している。このため、タブ534の先端が半挿入状態の雌形端子金具540内に挿入されていることがあり、手直し時の挿抜でタブ534や雌形端子金具540を傷付ける恐れがあった。
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、雌端子及び雄端子に影響を与えることなく雌端子の半挿入検知が可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコネクタは、雌端子と、該雌端子を収容する雌端子収容空間が形成された雌ハウジングと、前記雌端子と嵌合する雄端子と、該雄端子を収容し、前記雌ハウジングと嵌合可能な雄ハウジングと、を備え、前記雌ハウジングに、前記雌端子に係合して該雌端子の抜け止めを行うランスと、前記雌端子収容空間に隣接し、前記雄端子が通される挿通口が形成された区画壁と、が形成されており、前記雄ハウジングに、前記雌ハウジングと本嵌合している状態で、前記ランスの撓み空間に位置して当該ランスの撓みを規制する規制部が形成されており、前記雌端子が前記雌端子収容空間に完全に挿入されていない半挿入状態では、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングを本嵌合させる際に前記規制部の先端が前記ランスの先端に当たることで該規制部が前記撓み空間に進入不可となり、前記規制部の先端が前記ランスの先端に当たっている状態で、前記雄端子が前記雌端子収容空間に進入しておらず、該雄端子の先端が前記区画壁を越えずに前記挿通口内に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、雌端子及び雄端子に影響を与えることなく、雌端子の半挿入を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコネクタの分解図である。
【
図4】
図1の雌ハウジングと雄ハウジングの仮嵌合状態を示す断面図である。
【
図5】
図1の雌ハウジングと雄ハウジングの本嵌合状態を示す断面図である。
【
図6】
図1の雌ハウジングにおける雌端子の半挿入状態を雄ハウジングが検知している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態にかかる「コネクタ」について、
図1~6を参照して説明する。
【0013】
図1に示すコネクタ1は、雌端子4と、該雌端子4を収容する雌端子収容空間21が形成された雌ハウジング2と、雌端子4と嵌合する雄端子52を備えたバスバ5と、該バスバ5を収容し、雌ハウジング2と嵌合可能な雄ハウジング3と、を備えている。
【0014】
本例では、コネクタ1が複数の雌端子4を備えており、これら複数の雌端子4同士がバスバ5によって電気的に接続される。このようなコネクタ1は、「ジョイントコネクタ」とも呼ばれている。
【0015】
雌端子4は、導電性金属板にプレス加工等が施されて得られるものであり、電線9をかしめて電線9と電気的に接続するバレル41と、雄端子52と接触して雄端子52と電気的に接続する接続部42と、を備えている。接続部42は、雄端子52を内側に受け入れる四角筒状の筒部43と、筒部43の内側に設けられ、雄端子52に弾性接触するバネ部44と、を備えている。
【0016】
雌ハウジング2は、絶縁性の合成樹脂により四角筒状に形成されており、
図2に示すように、その内部は区画壁27により前後に区画されている。この区画壁27の後側には、雌端子4を個別に収容可能な雌端子収容空間21が左右方向(両ハウジング2,3の嵌合方向と直交する方向であり、
図2の紙面垂直方向)に4個並設されている。区画壁27の前側には、雄ハウジング3が嵌入可能な嵌合部26が設けられている。なお、本明細書において、雌ハウジング2については、両ハウジング2,3の嵌合方向の雄ハウジング3側を前とし、雄ハウジング3については、両ハウジング2,3の嵌合方向の雌ハウジング2側を前とする。
【0017】
また、嵌合部26を構成する外壁の一部によって仮係止部24と、アーム部25が形成されている。仮係止部24は、雄ハウジング3の後述する仮係止突起34に係止する。アーム部25は、雄ハウジング3の後述する係止突起35に係止する。
【0018】
各雌端子収容空間21の前側には、区画壁27を貫通した挿通口28が設けられており、バスバ5の複数の雄端子52がそれぞれ各挿通口28を通って雌端子収容空間21内に挿入されるようになっている。
【0019】
各雌端子収容空間21には、雌端子4に係合して該雌端子4の抜け止めを行うランス22が設けられている。ランス22は、雌端子収容空間21の後方から前方に向かって片持ち板状に延びており、その先端が筒部43の後端縁部(バレル41側の縁部)に係合するようになっている。このランス22は、雌端子4と反対側に形成された撓み空間23へ弾性変形可能とされている。
【0020】
バスバ5は、導電性金属板から打ち抜かれて得られるものであり、帯板状の基部51と、基部51の長辺から互いに平行に棒状に延びた4つの雄端子52と、を備えている。
【0021】
雄ハウジング3は、絶縁性の合成樹脂で構成されており、
図1,3に示すように、基部51を保持する保持部31と、保持部31に連なり複数の雄端子52と平行に延びた板部32と、板部32の先端から連続した板状の規制部33と、板部32の外面から突出した仮係止突起34及び係止突起35を備えている。
【0022】
図5に示すように、規制部33は、両ハウジング2,3が本嵌合している状態(最も深く嵌合している状態)で、ランス22の撓み空間23に位置して当該ランス22の撓みを規制する。この規制部33は、雌端子4の半挿入検知部としても機能する。
【0023】
即ち、
図6に示すように、雌端子4が雌端子収容空間21に完全に挿入されていない半挿入状態では、ランス22が筒部43上に乗り上げて撓み空間23に位置しているので、両ハウジング2,3の本嵌合動作時、規制部33の先端がランス22の先端に当接して撓み空間23に進入できず、両ハウジング2,3を本嵌合させることができない。また、この状態では、保持部31が雌ハウジング2外に位置付けられているので、目視で雌端子4の半挿入状態の確認が可能となる。
【0024】
上記コネクタ1は、
図4に示すように、仮係止部24の開口部に仮係止突起34が収まり、仮係止部24が仮係止突起34に係止することで雌ハウジング2と雄ハウジング3が仮嵌合状態となる。この時、アーム部25と係止突起35は、非係止状態である。
図4に示す仮嵌合状態では、板部32の前半部、規制部33、雄端子52が雌ハウジング2内に位置付けられ、板部32の後半部、保持部31、基部51が雌ハウジング2外に位置付けられる。また、雄端子52は、先端が挿通口28内に位置しており、雌端子4とは非導通である。
【0025】
また、上記コネクタ1は、上述した仮嵌合状態から雄ハウジング3がより深く雌ハウジング2内に押し込まれ、
図5に示すように、アーム部25の開口部に係止突起35が収まり、アーム部25が係止突起35に係止することで雌ハウジング2と雄ハウジング3が本嵌合状態となる。
図5に示す本嵌合状態では、雄ハウジング3全体が雌ハウジング2内に位置付けられ、保持部31が嵌合部26に嵌入し、規制部33が撓み空間23に位置付けられる。また、雄端子52は筒部43内に挿入されており、筒部43及びバネ部44と接触導通している。
【0026】
さらに、上記コネクタ1は、
図6に示すように、規制部33の先端がランス22の先端に当たって雌端子4の半挿入状態を雄ハウジング3が検知している状態では、雄端子52の先端が挿通口28内に位置して区画壁27を越えておらず、即ち雄端子52が雌端子収容空間21に進入しておらず、雌端子4とは非導通である。
【0027】
このように、本例のコネクタ1は、雌端子4の半挿入状態を検知した際に雌端子4と雄端子52が接触導通していることがなく、雌端子4が正規位置まで挿入されている状態の時のみ両端子4,52が接触導通する構造のため、雌端子4及び雄端子52に影響を与える(変形・傷付ける等)ことを防止できる。また、この構造のため、組み立て作業性に優れている。
【0028】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 コネクタ
2 雌ハウジング
3 雄ハウジング
4 雌端子
5 バスバ
21 雌端子収容空間
22 ランス
23 撓み空間
27 区画壁
28 挿通口
33 規制部
52 雄端子