(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-22
(45)【発行日】2024-01-05
(54)【発明の名称】キメラアルカリホスファターゼ様タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 9/16 20060101AFI20231225BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231225BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231225BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20231225BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231225BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231225BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231225BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231225BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231225BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231225BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231225BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231225BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231225BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231225BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C12N9/16 B ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K38/46
A61K48/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P11/06
A61P13/12
A61P9/10 101
A61P31/00
A61P31/04
A61P17/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
(21)【出願番号】P 2022117484
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2019230887の分割
【原出願日】2015-01-26
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2014-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2014-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509296052
【氏名又は名称】アーエム-ファルマ ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】AM-Pharma B.V.
【住所又は居所原語表記】Stadsplateau 6 Utrecht The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】ラーベン,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ヨンク,ライヒ ヨハネス コルネリウス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ベルヒ,エリック ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ファン エルサス,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ミラン,ホセ ルイス
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-284885(JP,A)
【文献】特表2010-524496(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02662448(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
A61P 1/00-43/00
A61K 35/00-51/12
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスファターゼ活性を有する単離タンパク質であって、配列番号5に少なくとも98%の配列同一性を有する365個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列と、配列番号6に少なくとも98%の配列同一性を有する65個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列と、配列番号7に少なくとも98%の配列同一性を有する54個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列とを含み、
前記単離タンパク質は、配列番号1の全長アミノ酸配列に少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなり、
前記単離タンパク質の、
配列番号1の位置279
に対応するアミノ酸は、ロイシン(L)であり、
配列番号1の位置328
に対応するアミノ酸は、バリン(V)であり、
配列番号1の位置478
に対応するアミノ酸は、ロイシン(L)であり、
前記単離タンパク質は、金属キレート剤EDTAの存在下において、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも、より高い残存するホスファターゼ活性を示すことを特徴とする単離タンパク質。
【請求項2】
ホスファターゼ活性を有する単離タンパク質であって、配列番号5に少なくとも98%の配列同一性を有する365個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列と、配列番号6に少なくとも98%の配列同一性を有する65個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列と、配列番号7に少なくとも98%の配列同一性を有する54個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列とを含み、
前記単離タンパク質は、配列番号1の全長アミノ酸配列に少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなり、
前記単離タンパク質の、
配列番号1の位置279
に対応するアミノ酸は、ロイシン(L)であり、
配列番号1の位置328
に対応するアミノ酸は、バリン(V)であり、
配列番号1の位置478
に対応するアミノ酸は、ロイシン(L)であり、
前記単離タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質よりも熱不活性化に対する抵抗性が高いことを特徴とする単離タンパク質。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタンパク質をコードする核酸配列を含むことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項3に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター。
【請求項5】
医薬としての使用のための、請求項1または2に記載のタンパク質、請求項3に記載のポリヌクレオチド、または請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
炎症性疾患、腎臓病、または低ホスファターゼ症の、予防、または処置のための、請求項5に記載の使用のための、タンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター。
【請求項7】
前記炎症性疾患は、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、消化管の炎症性疾患、感染症、敗血症、神経皮膚炎、炎症性肝疾患、炎症性肺疾患、および炎症性腎臓病から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の使用のためのタンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター。
【請求項8】
前記腎臓病は、腎障害、急性腎障害、慢性腎臓病、腎不全、急性腎不全、虚血性腎臓病、および虚血/再灌流腎損傷から選択されることを特徴とする請求項6に記載の使用のためのタンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター。
【請求項9】
前記低ホスファターゼ症は、周産期型低ホスファターゼ症、幼児型低ホスファターゼ症、小児型低ホスファターゼ症、および成人型低ホスファターゼ症から選択されることを特徴とする請求項6に記載のタンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター。
【請求項10】
請求項1または2に記載のタンパク質、請求項3に記載のポリヌクレオチド、または請求項4に記載のベクターを含むことを特徴とする宿主細胞。
【請求項11】
CHO細胞であることを特徴とする請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
請求項10または11の宿主細胞を培養し、当該宿主細胞に前記タンパク質を産生させることを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のタンパク質を産生する方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載のタンパク
質を含むことを特徴とする組成物。
【請求項14】
医薬としての使用のための、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
炎症性疾患、腎臓病、または低ホスファターゼ症の、予防、または処置における使用のための、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された特性を有するアルカリホスファターゼ、改良された特性を有するアルカリホスファターゼを含む医薬組成物、および、疾患予防、処置、または治療のための改良された特性を有するアルカリホスファターゼの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスファターゼは、基質を脱リン酸化する酵素である。すなわち、それは、リン酸モノエステルをリン酸イオンと遊離のヒドロキシル基を有する分子とに加水分解する。この働きは、ホスホリラーゼおよびキナーゼの正反対であり、ホスホリラーゼおよびキナーゼは、ATPなどのエネルギー性分子を用いることによってリン酸基をそれらの基質に付加する。ホスファターゼは、システイン依存性ホスファターゼ(CDPs)、およびメタロホスファターゼの2つの主なカテゴリーに分類することができる。
【0003】
メタロホスファターゼは典型的には、それらの活性部位内に触媒的に必要な2つの金属イオンを協調して働かせている。現在、これらの金属イオンの同定に関していくらか混乱があるが、その理由は、それらを同定ための試みが継続して行われており、それらが異なる回答をもたらすからである。現在のところ、これらの金属は、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛、またはそれらの任意の組み合わせであればよいとの証拠が存在する。2つの金属イオンを結ぶヒドロキシルイオンは、リン酸基上における求核攻撃に参加すると考えられる。
【0004】
ホスファターゼは、リン酸基をタンパク質に付加するキナーゼ/ホスホリラーゼに対抗して働く。リン酸基の付加または除去は、酵素を活性化、もしくは不活性化(たとえば、キナーゼシグナル経路)するか、またはタンパク質-タンパク質相互作用の発生を可能にすることが可能である(たとえば、SH3ドメイン)。したがって、ホスファターゼは、多くのシグナル伝達経路に不可欠である。リン酸の付加および除去は、酵素の活性化、または抑制に必ず対応しないことと、数種の酵素は、機能制御を活性化、または抑制するための別個のリン酸化部位を有することとに留意すべきである。CDKは、たとえば、リン酸化される特定のアミノ酸残基に依存して活性化または不活性化され得る。リン酸は、シグナル伝達において重要である。なぜなら、それらは、それらが付加するタンパク質を制御するからである。調節効果を反転するために、リン酸は、除去される。このことは、加水分解によってそれら自身に起こるか、またはタンパク質ホスファターゼによって媒介される。
【0005】
ホスファターゼの1種である、アルカリホスファターゼ(ALPまたはAP)(EC3.1.3.1)は、ヌクレオチド、タンパク質、およびアルカロイドなどの多数の分子からリン酸基を除去する原因となる加水分解酵素である。最近まで、アルカリホスファターゼは、その名称が示唆するように、アルカリ性環境において最も効果的であると考えられていた。
【0006】
APの1つの可能な生理的役割は、炎症性分子と相互に作用するということであると考えられている。第1に、APはエンドトキシンを脱リン酸化し、そしてそのようなものとして、これらの高度炎症性分子に対する炎症反応を減少させると仮定されてきた。それ以後、他の作用機序が仮定され、研究されてきている。しかし、現在まで、多数の炎症性および他の疾患におけるその有益な役割にもかかわらず、作用機序は、未だ十分に解明されていない。これまでに、ウシ由来のアルカリホスファターゼは、動物モデルにおいて使用され、敗血症、急性腎障害、炎症性腸疾患、腸炎、虚血再灌流障害、または他の炎症性疾患の処置のための臨床試験において使用された(Riggle et al, J Surg Res. 2013 Mar;180(1):21-6; Peters et al, J Pharmacol Exp Ther. 2013 Jan;344(1):2-7; Martinez-Moya et al, Pharmacol Res. 2012 Aug;66(2):144-53; Pickkers et al, Crit Care. 2012 Jan 23;16(1); Ramasamy et al, Inflamm Bowel Dis. 2011 Feb;17(2):532-42; Lukas et al, Inflamm Bowel Dis. 2010 Jul;16(7):1180-6; Bol-Schoenmakers et al, Eur J Pharmacol. 2010 May 10;633(1-3):71-7; Heemskerk et al, Crit Care Med. 2009 Feb;37(2):417-23; Tuin et al, Gut. 2009 Mar;58(3):379-87; Su et al, Crit Care Med. 2006 Aug;34(8):2182-7; van Veen et al, Br J Surg. 2006 Apr;93(4):448-56; van Veen, Infect Immun. 2005 Jul;73(7):4309-14; Verweij et al, Shock. 2004 Aug;22(2):174-9)。
【0007】
現在、天然起源から単離された、および組換えて設計されたアルカリホスファターゼは、診断および疾患の処置の両方において有用であるが、たとえば、改変(たとえば、改良)された比活性、安定性(たとえば、in vivoT1/2、もしくは貯蔵安定性(有効期間))、または基質特異性を有する新規アルカリホスファターゼが求められている。
【0008】
本発明は、そのような修飾ホスファターゼであって、WO2008/133511に広く記載されているキメラ組換えアルカリホスファターゼに比べて改良された特性を有する修飾ホスファターゼを提供する。
【発明の概要】
【0009】
第1実施形態において、本発明は、ホスファターゼ活性を有する単離タンパク質であって、配列番号5に少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも200個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列、配列番号6に少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも50個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列、配列番号7に少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも40個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列を含み、
全長タンパク質が、配列番号1の全長アミノ酸配列に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
ただし、位置279のアミノ酸がロイシン(L)であり、位置328のアミノ酸がバリン(V)であり、位置478のアミノ酸がロイシン(L)である単離タンパク質を提供する。
【0010】
好ましい実施形態において、全長タンパク質は、配列番号1の全長アミノ酸配列に、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ただし、位置279に対応するアミノ酸がロイシン(L)であり、位置328に対応するアミノ酸がバリン(V)であり、位置478に対応するアミノ酸がロイシン(L)である。
【0011】
本明細書において「対応する」との用語は、「位置1」を示す成熟タンパク質のN末端アミノ酸に関連した特定の位置を意味している。用語「対応する」は、特定位置の特定のアミノ酸残基を明示的に表すものではない。
【0012】
用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって結合したアミノ酸を含む化合物を意味しており、これらは同じ意味で用いられる。
【0013】
本明細書において、「アミノ酸配列」と言及される場合は、タンパク質、またはペプチド分子のアミノ酸配列を表している。「アミノ酸配列」は、タンパク質をコードする核酸配列から推定することができる。しかし、「ポリペプチド」または「タンパク質」などの用語は、アミノ酸配列を、推定されるアミノ酸配列に限定することを意味するのではないが、アミノ酸欠失、付加、ならびに糖鎖形成および脂質部分の付加などの修飾のような、推定アミノ酸配列の翻訳後修飾を含んでもよい。安定性、または薬物動態挙動を向上するためのD-アミノ酸などの非天然アミノ酸の使用は、特に示されない限り、用語「アミノ酸配列」の範囲内である。
【0014】
好ましくは、前記タンパク質の一部は、50~65、好ましくは60~65、より好ましくは62~65、より好ましくは64~65、最も好ましくは65の連続するアミノ酸のアミノ酸配列であって、ヒトPLAPの全長クラウンドメインと、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明の目的のために、ヒトPLAP参照配列の全長クラウンドメインに対応するアミノ酸配列は、
図1に示される配列番号3において下線を付されており、その位置366~430に対応する。
【0015】
好ましくは、前記タンパク質の一部は、200~365、より好ましくは250~365、より好ましくは300~365、より好ましくは350~365、より好ましくは少なくとも360~365、最も好ましくは365の連続するアミノ酸のアミノ酸配列であって、ヒトALPIのクラウンドメインに隣接するN末端領域に、90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。クラウンドメインに隣接するこのN末端領域は、触媒ドメインの2つの部分のうちの1つであると考えられる。
【0016】
好ましくは、前記タンパク質の一部は、40~54、好ましくは45~54、より好ましくは50~54、より好ましくは52~54、最も好ましくは54の連続するアミノ酸のアミノ酸配列であって、ヒトALPIのクラウンドメインに隣接するC末端領域に、90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。クラウンドメインに隣接するこのC末端領域は、触媒ドメインの2つの部分のうちの2つ目であると考えられる。
【0017】
本発明の目的のために、ヒトALPI成熟タンパク質参照配列のアミノ酸配列は、
図1に記載されている(配列番号2)。触媒ドメインとして共に表わされるN末端およびC末端隣接領域を決定する目的のために、ヒトALPIのクラウンドメインは、
図1において下線を付されている。
【0018】
特に好ましい実施形態において、本発明は、本発明に従ったタンパク質を提供し、前記タンパク質は、50~65、好ましくは60~65、より好ましくは62~65、より好ましくは64~65、最も好ましくは65の連続するアミノ酸のアミノ酸配列であって、ヒトPLAPの全長クラウンドメインに、少なくとも90%の、好ましくは少なくとも95%の、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記タンパク質の一部は、200~365、より好ましくは250~365、より好ましくは300~365、より好ましくは350~365、より好ましくは360~365、最も好ましくは365の連続するアミノ酸のアミノ酸配列であって、ヒトALPIのクラウンドメインに隣接するN末端領域に、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記タンパク質の一部は、40~54、好ましくは45~54、より好ましくは50~54、より好ましくは52~54、最も好ましくは54の連続するアミノ酸のアミノ酸配列であって、ヒトALPIのクラウンドメインに隣接するC末端領域に、少なくとも90%の、好ましくは少なくとも95%の、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0019】
クラウンドメインのN末端隣接領域とは、(
図1において下線を付されたアミノ酸に対応する)クラウンドメインの配列に隣接するアミノ酸の区間(すなわち、好ましくは20アミノ酸未満、より好ましくは15未満、より好ましくは10未満、より好ましくは5未満、より好ましくは3未満、より好ましくは2未満、最も好ましくは離されたアミノ酸はなし)を意味し、クラウンドメインの右手側において、前記右手側は、第1アミノ酸のアミノ(NH2)基を保持するペプチド鎖の一部として定義される。クラウンドメインのC末端隣接領域は、クラウンドメインの配列(
図1において下線を付されたもののアミノ酸に対応する)に隣接する位置に対応するアミノ酸の区間(すなわち、20アミノ酸未満、好ましくは15未満、より好ましくは10未満、より好ましくは5未満、より好ましくは3未満、より好ましくは2未満、最も好ましくは離されたアミノ酸はなし)を意味し、クラウンドメインの右手側において、前記右手側は、最後のアミノ酸の遊離アルファカルボキシル基を保持するペプチド鎖の一部として定義される。
【0020】
ヒトにおいて、これまでに4種類のアルカリホスファターゼのアイソフォームが同定された。これらは、腸型(ALPI)、胎盤型(ALPP)、胎盤様型(GCAP)、および肝臓/骨/腎臓(または組織非特異型)アルカリホスファターゼ(TNAP)である。最初の3種類は、2番染色体上に共に位置するが、組織非特異型は、1番染色体に上に位置する。APの正確な生理的機能は知られていないが、APは、非常に多くの生理的過程に関与していると思われる。
【0021】
ヒトアルカリホスファターゼの配列は、当該分野において公知であり、関連するデータベースにおいて容易に見つけることができる。PLAPのクラウンドメインとALPIの触媒ドメインとに対する配列同一性(%)を測定するために、好ましくは各参照配列が使用される。ヒトALPIの参照配列は、配列番号2として記載される。ヒトALPPの参照配列は、配列番号3として記載される。
図1におけるこれらの参照配列のうち、クラウンドメインとして一般的に知られる配列は、下線を付されている。
【0022】
胎盤型アルカリホスファターゼは、本明細書において、ALPPまたはPLAPと省略して記載される。略語ALPIまたはIAPは、腸型アルカリホスファターゼを表す。胎盤様型2アルカリホスファターゼは、本明細書において、ALPP2、ALPG、またはGCAPと省略して記載され、略語ALPL、TNSALP、TNAP、またはBLKは、本明細書において、肝臓/組織非特異型アルカリホスファターゼを表すために使用される。全く同一のアルカリホスファターゼについての異なる略語は、本明細書において同じ意味で用いられてもよい。
【0023】
立体配座の観点から、アルカリホスファターゼは、概ね、クラウンドメインと活性部位ドメインとの2つのドメインからなる(Mammalian Alkaline Phosphatases: From Biology to Applications in Medicine and Biotechnology. JosLuis Millan; Wiley, 2006)。活性部位ドメインは、触媒残基と、3つの金属イオン部位(Zn1、Zn2、およびMg3)となどの別個の部分に分けることができる。一次構造の観点から、クラウンドメインは、活性部位ドメインを形成するアミノ酸に隣接していることが明らかである。したがって、好ましい実施形態において、触媒ドメインは、アミノ酸の連続配列からなっていないが、クラウンドメインに隣接している。本発明に従った1つのアルカリホスファターゼのアミノ酸配列を示す配列番号1について、本発明を限定するものではないが、クラウンドメインは、好ましくは、位置366~430におけるアミノ酸を含み、一方、触媒ドメインは、好ましくは、
図1に記載されているような成熟タンパク質配列における、位置366の前、および位置430の後の残りの配列を表す。アルカリホスファターゼのアミノ酸配列、ならびに触媒およびクラウンドメインの相対位置は、当業者に公知である(Mammalian Alkaline Phosphatases: From Biology to Applications in Medicine and Biotechnology. JosLuis Millan; Wiley, 2006)。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明に従ったタンパク質は、したがって、ヒトALPPのクラウンドメインに少なくとも90%の配列同一性を有する配列と、ヒト腸アルカリホスファターゼの触媒ドメインに少なくとも90%の配列同一性を有する配列とを含む。好ましくは、ALPPのクラウンドメインに対して前記配列同一性を有する前記配列は、天然ALPPタンパク質におけるALPPのクラウンドメインとほぼ同じ位置、つまり
図1に示される位置1に関しておおよそ366~430位置において、本発明に従ったタンパク質内に位置する(クラウンドメインを表す配列は下線を付されている)。
【0025】
ALPPのクラウンドメインに配列同一性を有する配列は、配列番号3における位置366~430の下線を付されたアミノ酸によって表わされる、ALPPのクラウンドメインの天然配列に、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0026】
アミノ酸もしくは核酸配列の同一性百分率、または用語「配列同一性(%)」とは、本明細書においては、最大パーセントの同一性を達成するために、2つの配列を整列させ、必要なら空隙を導入した後の参照配列における残基と同一である、候補アミノ酸または核酸配列における残基のパーセントとして定義されている。
好ましい実施形態において、前記最低配列同一性(%)の計算は、空隙を導入せずに実施される。整列についての方法およびコンピュータプログラムは、当該分野において周知であり、たとえば、「Align2」または米国国立生物工学情報センター(NCBI)のBLASTサービスなどである。
【0027】
好ましくは、ALPIのクラウンドメインに隣接するN末端部分に少なくとも90%同一である配列を有する前記配列は、天然ALPIタンパク質におけるALPIの部分、つまり
図1の配列番号1における位置1~365によって表わされるほぼ同一位置において本願に従ったタンパク質内に位置する。
【0028】
さらに、
図1における配列番号2の位置1~365によって表わされるALPIの触媒ドメインに同一の配列を有する配列は、ALPIのクラウンドメインに隣接するN末端部分に少なくとも95%の、より好ましくは少なくとも98%の同一性を有し、ただし位置279におけるアミノ酸は、Lであり、位置328に対応するアミノ酸は、Vである。最も好ましくは、ALPIの触媒ドメインのN末端部分が、ALPIの触媒ドメインの天然配列に同一であり、ただし、位置279におけるアミノ酸はLであり、位置328におけるアミノ酸は、Vである。
【0029】
好ましくは、ALPIのクラウンドメインに隣接するC末端部分に少なくとも90%同一である配列を有する前記配列は、天然ALPIタンパク質内のALPI部分とほぼ同一位置、つまり配列番号1における位置431~484によって表わされるものとほぼ同一位置において本発明に従ったタンパク質内に位置する。
【0030】
ALPIのクラウンドメインに隣接するC末端部分に同一である配列を有する配列は、好ましくは、ALPIのクラウンドメインに隣接するC末端配列であって、配列番号2の位置431~484によって表わされるC末端配列に、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有し、ただし、位置478におけるアミノ酸は、Lである。最も好ましくは、ALPIの触媒ドメインのC末端部分に同一である配列を有する配列は、ALPIの触媒ドメインの天然配列に同一であり、ただし、位置478のアミノ酸は、Lである。
【0031】
以前に、ALPPのクラウンドメインに同一な配列を有するクラウンドメイン配列を有し、ALPIの触媒ドメインに同一な配列を有する触媒ドメインを有するアルカリホスファターゼ(本願明細書においてcatALPI/crownALPPと称される)が、低Zn2+培地においてその初期比活性を保持していることが示された。これらの結果は、インビボ活性がZn2+に非依存的であることを示した。これに対して、ALPIは、同一の低Zn2+条件下においてその活性を迅速に失った。本発明者らは、活性がZn2+に非依存的な酵素は、Zn2+欠乏が病状の一部である疾患(たとえば、栄養欠乏、アルコール中毒、および腸統合性障害、敗血症などの慢性感染症、もしくは一般的な炎症性疾患)、またはZn2+の添加(製造における安定化剤として)が禁忌である疾患(たとえば、敗血症の急性期、自己免疫疾患)において有用であると結論付けた。製造および用途の利点の他に、catALPI/crouwnALPPは、貯蔵の間の安定性に関して利点を有する。catALPI/crownALPPの特性は、WO2008/133511に詳細に記載されている。
【0032】
本願は、驚くべきことに、本発明に従ったタンパク質が低Zn2+濃度においてさえより安定であることを示している。本願明細書において、以前に記載されたcatALPI/crownALPP配列に関する3つの位置に関与する特定の修飾は、Zn2+非依存性をさらに増加させることが示される。要するに、ALPIのような天然APは、低Zn2+濃度の環境においてその酵素活性を失い、catALPI/crownALPP(WO2008/133511に記載されたように)は、低Zn2+環境においてその活性を保っているが、たとえばZn2+キレート剤が添加されたとき、その活性を失い、一方、本発明に従ったタンパク質は、EDTAなどの亜鉛キレート剤の存在下においてさえその活性の大部分を保持することが示された。したがって、重度のZn2+欠乏が病状の一部である疾患において、前記天然APは、炎症部位などの最も有用であると考えられる部位においてその酵素活性を展開することができない。これに対して、組換えAPは、非常に低いZn2+濃度に感受性がなく、特に、本発明のタンパク質は、炎症部位などの非常に低いZn2+濃度の環境においてその活性を保持している。そのような酵素は、したがって、低Zn2+レベルによる、または付随する疾患の治療に非常に有用である。そのような減少したZn2+レベルは、本発明に従ったタンパク質に比べて、他のアルカリホスファターゼの活性を低下させる。
【0033】
人体内のいくつかの酵素は、それらの活性についてZn2+濃度に依存し、たとえば、十分なレベルのZn2+が存在する場合、免疫性応答はより効果的である。免疫系の先天的、および特定部分は、亜鉛によって影響されることが知られており、亜鉛含有タンパク質が炎症部位に蓄積することが立証された。健常者において、Zn2+血清参照値は、10~20μMである。たとえば、アルコール中毒、または栄養失調において、これらのレベルは、10μM未満、またはさらに1μM未満に減少し得る。さらに、リウマチ関節炎、敗血症、およびクローン病などの(亜)慢性炎症は、血清亜鉛欠乏を示す。そのようなZn2+欠乏環境においては、本発明に従ったタンパク質は、非常に活性が高いままであるが、他の既知のアルカリホスファターゼは、それらのホスファターゼ活性を多かれ少なかれすぐに失ってしまう。
【0034】
本発明は、したがって、本発明に従ったタンパク質が、局所的、または全身のZn2+欠乏に付随する疾患の処置において特に有用であるとの知見を提供する。他の公知のアルカリホスファターゼに比べて、本発明に従ったタンパク質は、低Zn2+条件下において活性がさらに高い。好ましい実施形態において、したがって、本発明は、Zn2+欠乏に付随する疾患の予防または処置における、本発明に従ったタンパク質の使用を提供する。好ましくは、前記疾患は、炎症性疾患を含み、より好ましくは、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、消化管の炎症性疾患、感染症、敗血症、神経皮膚炎、炎症性肝疾患、炎症性肺疾患、および炎症性腎臓病からなる群から選択される。
【0035】
用語「亜鉛欠乏」または「Zn2+欠乏」は、(局所的に)利用可能な亜鉛の量が、妨げられていない細胞性および/または酵素活性を可能にするために不十分であることを意味する。亜鉛欠乏は、絶対的または相対的であってもよく、絶対的な亜鉛欠乏は、当該分野で公知である健常者における参照値を参照することによって容易に決定することができる。相対的な亜鉛欠乏は、たとえば、亜鉛濃度が、健常者における基準値によって設定される限界値内に留まっているときに起こり得るが、必要な亜鉛濃度は、たとえば炎症時には、通常よりも高くなる。いくつかの実施形態において、亜鉛欠乏は、対象の(局所的)亜鉛濃度が、10μM未満、より好ましくは5μM未満、より好ましくは2μM未満、より好ましくは1μM未満、より好ましくは0.1μM未満、より好ましくは0.05μM未満、より好ましくは0.2μM未満、より好ましくは0.01μM未満、より好ましくは0.005μM未満、最も好ましくは0.002μM未満であることを意味する。いくつかの実施形態において、亜鉛欠乏は、(局所的)亜鉛濃度が、妨げられない細胞性および/または酵素活性に必要であるよりも低いことを意味する。
【0036】
用語「炎症性疾患」は、有害な試薬と損傷組織との双方を、破壊、希釈、または囲むように働く、組織の、損傷または破壊に対する保護的な組織の応答による、またはそれに付随する疾患を意味する。急性炎症の古典的徴候は、痛み(疼痛)、熱(発熱)、潮紅(発赤)、腫大(腫脹)、機能の損失(機能喪失)である。典型的には、炎症は、C反応性タンパク質、白血球、およびサイトカイン(IL-6,TNF-アルファなど)などの炎症性パラメータの上昇によって特徴付けられる。炎症とは、生来、当初は保護されているものをいうが、リウマチ性関節炎などの異常性炎症性疾患および(他の)自己免疫疾患なども、「炎症性疾患」の定義の中に含むものとする。好ましい実施形態において、本発明のタンパク質は、そのような混乱した、または有害な炎症性疾患の処置における使用のためのものである。
【0037】
さらに、標準的な薬物動態学的分析の間に、本発明者らは、本発明に従ったタンパク質が、いくつかの器官、特に、皮膚、腎臓、脾臓、肝臓、肺、脳、脂肪、骨、および大腸を標的とすることを予期せず観察した。本発明の放射性ヨウ素結合タンパク質を用いることによって、catALPI/crownALPPに比べて、本発明に従ったタンパク質の器官/血中比%が、特に、皮膚、腎臓、脾臓、肝臓、肺、脳、脂肪、骨、および大腸に特に良好であること、つまり、本発明に従ったタンパク質が、公知のcatALPI/crownALPPタンパク質よりもこれらの器官を相対的により多く標的とすることが観察された。特に、本発明に従ったタンパク質は、catALPI/crownALPPよりも血中において低濃度で存在し、言及された器官においてより高い濃度で存在する。肝臓神経皮膚炎、腎障害、肝臓線維化、低ホスファターゼ症などの、これらの器官に関する症状が、処置されるべきであるとき、費用を減少させ、および/または効果を増加させる処置のために必要とされるタンパク質が少ない。これらの器官に関する疾患に伴う実験は、既に行われたか(低ホスファターゼ症)、進行中であるか(腎臓病)、または計画中である。本発明は、したがって、当該技術分野において公知のアルカリホスファターゼに比べて向上した亜鉛非依存性および薬物動態学的挙動を示すタンパク質を提供する。
【0038】
本発明者らは、様々な使用実施形態において、本発明に従ったタンパク質が医薬として有用であることを示している。本発明に従ったタンパク質によって処置することができる疾患または症状は、腎機能低下、腎障害、腎不全、および低ホスファターゼ症を含む。さらに、使用された公知のアルカリホスファターゼタンパク質を超える改良を構成する、本発明に従ったアルカリホスファターゼタンパク質の特異的な特徴の故に、本発明に従ったタンパク質は、腎機能低下、腎障害、腎不全、および低ホスファターゼ症だけではなく、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、消化管の炎症性疾患、感染症、敗血症、神経皮膚炎、炎症性肝疾患、炎症性肺疾患、および炎症性腎臓病の予防または処置に有用である。これらは、本発明に従ったタンパク質によって標的とされる、および/または(相対的)亜鉛欠乏に付随する、器官に影響を与える疾患のすべてである。
【0039】
用語「予防」または「予防すること」は、本明細書においては、対象が特定の疾患を誘引することを妨げることを目的とした、対象に対する本発明に係るタンパク質を投与すること(行為)として定義される。処置の意図は、前記対象が前記疾患を誘引することを妨げることであるが、疾患の状態が、本発明に従ったタンパク質の1回または複数回の投与後に完全に妨げられる必要はない。なぜなら、対象は、たとえば、必ずしも特定の処置プロトコールに感受性があるとは限らないからである。全体的に、前記予防の効果は、特定の疾患を予防するために、本発明に従ったタンパク質を受けた対象の一群が、少なくとも疾患の重症度増加の減少、またはたとえば前記疾患の合併症の低減を示す点においてもたらされることが好ましい。たとえば、腎臓病の場合、腎臓病を誘引するリスクのある対象が、本発明に従ったタンパク質で処置された後、前記タンパク質で処置されていない対象に比べて腎機能の低下を低減することが好ましい。対象が、疾患であって、当該疾患を予防するためにタンパク質が投与された疾患を誘引する場合、さらなる投与が、前記疾患状態の悪化を妨げるため、または治療目的の処置として与えられてもよい。
【0040】
用語「処置」または「処置すること」は、本明細書において、(予期される)疾病の対象を治療すること、または対象の疾病の症状を改良、低減、もしくは除去することを目的として、本発明に従ったタンパク質を対象に投与(の行為)をすることとして定義される。処置の目的は前記対象を治療することであるが、前記対象は、本発明に従ったタンパク質の1回または複数回投与後に治癒する必要はない。なぜなら、対象は、たとえば、必ずしも特定の処置プロトコールに感受性があるとは限らないからである。全体的にみて、前記処置の有効性は、本発明に従ったタンパク質で処置された対象が、未処置(またはプラセボ処置)群に比べて、少なくとも、それらの疾患状態の改善、またはたとえば前記疾患の合併症の低減を示す点においてもたらされることが好ましい。たとえば腎臓病の場合、対象は、本発明に従ったタンパク質で処置された後、前記タンパク質で処置されなかった対象に比べて、腎機能の向上、または腎機能低下の低減を示すことが好ましい。
【0041】
本発明は、本発明に従ったタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドをさらに提供する。
【0042】
本明細書において使用されるように、「核酸配列」ならびに「ポリヌクレオチド」との用語は、たとえば、人工的に修飾された核酸配列、ペプチド核酸、ならびに少なくとも1つの修飾されたヌクレオチド、ならびに/またはイノシン、LNA、モルフォリノ、および2’-O-メチルRNAなどの非天然ヌクレオチドを含む核酸配列のような核酸配列に基づく、ならびに/または由来する非天然分子を含む。
【0043】
そのような本発明に従ったポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。そのようなベクターは、好ましくは、ホスファターゼをコードする核酸配列の翻訳/転写に必要な構成要素のような追加の核酸配列を含む(たとえば、プロモータおよび/またはターミネータ配列)。前記ベクターは、当該ベクターで形質転換された宿主細胞を選択または維持するために、選択マーカ(たとえば、抗生物質)をコードする核酸配列を含む。適したベクターの例は、クローニングまたは発現ベクターである。宿主細胞における発現を調節するために適切な任意のベクターを、本発明に従って使用し、宿主細胞に集積するか、またはエピゾーマリに複製することができる。ベクターは、プラスミド、ウイルス(たとえば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、および/もしくはそれらの誘導体)、コスミド、ファージ、またはファージミド、エピソーマルベクター、または人工染色体であってもよい。そのようなポリヌクレオチド、またはベクターは、本発明に従ったタンパク質の産生に非常に有用であるが、遺伝子治療に使用することができない。
【0044】
本発明は、したがって、本発明に従ったタンパク質の医薬として使用を提供する。本発明に従ったポリヌクレオチドによって、または本発明に従ったタンパク質をin vivoで発現するために本発明に従ったベクターによって処置される上述の疾患のいずれか1つに罹患している、または罹患するリスクを有する患者を処置することができる。本発明は、したがって、医薬としての使用のための、好ましくは、腎機能低下、腎障害、腎不全、低ホスファターゼ症、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、消化管の炎症性疾患、感染症、敗血症、神経皮膚炎、炎症性肝疾患、炎症性肺疾患、および炎症性腎臓病の予防または処置のための、本発明に従ったポリヌクレオチド、または本発明に従ったベクターを提供する。
【0045】
また、炎症性疾患、腎臓病、または低ホスファターゼ症の予防または処置のための方法における使用のための、本発明に従ったタンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクターが提供される。
【0046】
また、本発明に従ったタンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターの、医薬の製造のための使用であって、好ましくは、腎機能低下、腎障害、腎不全、低ホスファターゼ症、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、消化管の炎症性疾患、感染症、敗血症、神経皮膚炎、炎症性肝疾患、炎症性肺疾患、および炎症性腎臓病の予防または処置のための使用が提供される。
【0047】
他の実施形態において、本発明は、局所的、または全身のZn2+欠乏に付随する疾患の処置のための医薬の製造において、本発明に従ったアルカリホスファターゼタンパク質の、本発明に従ったポリヌクレオチドの、または本発明に従ったベクターの、使用を提供する。好ましくは、前記疾患は、炎症性疾患、腎臓病、または低ホスファターゼ症であり、好ましくは、前記疾患は、炎症性疾患、より好ましくは、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、消化管の炎症性疾患、感染症、敗血症、神経皮膚炎、炎症性肝疾患、炎症性肺疾患、および炎症性腎臓病からなる群から選択される疾患を含む。
【0048】
他の実施形態において、本発明は、好ましくはZn2+欠乏に付随する疾患を処置するために、対象(好ましくは、ヒト)を処置するための方法であって、本発明に従ったホスファターゼの有効量を投与することを含み、前記疾患が、好ましくは、炎症性疾患を含み、より好ましくは、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、消化管の炎症性疾患、感染症、敗血症、神経皮膚炎、炎症性肝疾患、炎症性肺疾患、および炎症性腎臓病からなる群から選択される方法を提供する。
【0049】
本発明は、したがって、様々な疾患における使用のための、本発明に従ったタンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターを提供する。本発明に従ったタンパク質は、その器官分布が原因で、消化管、腎臓、皮膚、肝臓、肺、脳、脂肪組織、または骨に関する疾患の処置における使用のために特に有用である。
【0050】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、腎臓病の処置における使用のための、本発明に従ったタンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターを提供する。
【0051】
腎障害の病態生理学における継続的な観察が存在し、腎機能を向上させる治療が存在する(Lameire NH, Acute kidney injury: an increasing global concern. Lancet. 2013 Jul 13;382(9887):170-9)が、腎障害を処置するため、および/または腎機能を向上させるための新規の処置が必要とされている。
【0052】
本発明は、本発明に従った使用のための、タンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターによってそのような新規の処置を提供する。
【0053】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明に従った使用のための、タンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターを提供し、前記腎臓病は、腎不全、急性腎障害、慢性腎臓病、虚血性腎臓病の群から選択される。
【0054】
用語急性腎障害(AKI)は、以前は急性腎不全と称され、腎機能が迅速に失われることを意味する。
【0055】
AKIは、増加した血中尿素窒素およびクレアチニン、または十分な量の尿を生じる腎臓の機能不全(inability)などの特有の臨床検査所見に基づいて診断される。AKIは、腎前性AKI、内因性AKI、および腎後性AKIに細分化することができる。
【0056】
腎前性AKIは、腎臓への有効血流量の減少によってもたらされる。腎前性AKIの典型的臨床検査所見は、Uosm: >500,UNa: <10,FeNa: <1%、およびBUN/Cr比率: >20である。
【0057】
内因性AKIとの用語は、腎臓そのものに対する損傷源が原因であるときに使用される。内因性AKIについての典型的臨床検査所見は、Uosm: <350,UNa: >20,FeNa: >2%、およびBUN/Cr比率: <15である。
【0058】
用語「腎後性AKI」とは、尿路閉塞がAKIの原因となる条件のために用意された用語である。腎後性AKIの典型的臨床検査所見は、Uosm: <350,UNa:>40,FeNa: >4%、およびBUN/Cr比率: >15である。
【0059】
世界的に、慢性腎臓病の分類のためのいくつかのガイドラインが存在する。
【0060】
1つの例として、米国腎臓財団(2002)の分類基準「慢性腎臓病のK/DOQI臨床ガイドライン」を以下に記載する。当業者は、他のガイドラインに基づいて異なる患者集団を選択してもよい。
【0061】
通常、腎障害の有無に関わらず、糸球体濾過率(GFR)<60mL/分/1.73m2を3ヶ月間有する全ての個体は、慢性腎臓病に分類される。これらの個体を含める根拠は、このレベル以下への腎機能の低下が典型的腎機能の成人レベルの半分以上の損失を表し、多くの合併症に付随し得る。一般的に、慢性的な腎障害を有する個体は、GFRのレベルに関わらず、慢性腎臓病を有すると分類される。GFR>60mL/分/1.73m2を有する個体を含める根拠は、GFRは、実質的な腎障害にもかかわらず、通常または高レベルで維持され得る点と、腎障害を有する患者は、慢性腎臓病の2つの主たる転帰である、腎機能の喪失および循環器疾患の進行というリスクが増大し、そしてこれらは、病的状態および死亡につながることもあるという点にある。
【0062】
尿中のタンパク質の損失は、腎機能の悪化、および循環器疾患の独立マーカとみなされる。したがって、イギリスのガイドラインは、タンパク質の有意な損失がある場合、慢性腎臓病のステージにアルファベット「P」を付加した。
【0063】
慢性腎臓病の5つのステージは、通常以下のように分類される。
ステージ1:わずかな機能低下;通常の、または比較的高いGFR(≧90mL/分/1.73m2)による腎障害腎障害とは、血液もしくは尿検査、または画像診断における異常などの、病理学的異常、または障害のマーカとして定義される。
ステージ2:腎障害によるGFRの軽度低下(60~89mL/分/1.73m2)腎障害は、血液もしくは尿検査、または画像診断における異常などの、病理学的異常、または障害のマーカとして定義される。
ステージ3:GFRの中程度低下(30~59mL/分/1.73m2)イギリスのガイドラインは、検診および診察の目的のために、ステージ3A(GFR45~59)とステージ3B(GFR30~44)とを区別している。
ステージ4:GFRの重度低下(15~29mL/分/1.73m2)。腎臓置換療法の準備。
ステージ5:確立した腎不全(GFR<15mL/分/1.73m2)、永続的な腎臓置換療法(RRT)、または末期腎不全(ESRD)。
【0064】
腎不全との用語は、現在のところ、腎臓が、血液に由来する老廃物を適切に濾過することができない医学的状況を示す。2つの主な種類は、多くの場合、適切な処置で回復可能である急性腎障害と、多くの場合、回復可能ではない慢性腎臓病とである。
【0065】
虚血性腎臓病は、糸球体濾過率の臨床的に重要な低下、または腎実質の損失が、血行力学的に重要な腎動脈狭窄症、または腎臓における血圧低下による他の原因、たとえば血行力学的衝撃、または血流の一時的阻害のための動脈性クランプの使用などによってもたらされる。
【0066】
本発明者らは、本発明に従ったタンパク質が低ホスファターゼ症(HPP)の処置において有用であることを示した。このことは、全く予想外のことであった。なぜなら、低ホスファターゼ症の処置のためにTNAPを用いる以前の実験は、酵素補充療法が有効であることを示さなかったからである。その結果、TNAP酵素と、骨ホーミングペプチドとの人工融合タンパク質が開発された(Whyte et al, N Engl J Med. 2012 Mar 8;366(10):904-13)。驚くべきことに、本発明に従ったタンパク質は、そのような骨ホーミングペプチドを必要とせず、マウスモデルにおいて低ホスファターゼ症の症状の徴候を効果的に低減することができる。別の好ましい実施形態において、本発明は、したがって、低ホスファターゼ症の処置における使用のための本発明に従った、タンパク質、ポリヌクレオチド、および/またベクターを提供する。
【0067】
低ホスファターゼ症の代謝基盤は、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)をコードする遺伝子における分子的異常に由来する。TNAPは、骨芽細胞および軟骨細胞の細胞膜の外表面に繋ぎ止められた外酵素である。TNAPは通常、無機ピロリン酸(PPi)、およびビタミンB6の主要形態であるピリドキサール5’-リン酸(PLP)などのいくつかの物質を加水分解する。
【0068】
TNAPが少ないとき、無機ピロリン酸(PPi)は、細胞外に蓄積し、ヒドロキシアパタイトの形成(石灰化)を強力に抑制し、幼児および小児ではくる病、ならびに成人では骨軟化症(柔らかい骨)をもたらす。PLPは、ビタミンB6の主な形態であり、細胞膜を通過するためには、TNAPによってピリドキサール(PL)に脱リン酸化されなければならない。脳におけるビタミンB6欠乏は、癲癇の原因となり得る神経伝達物質の合成を低下させる。いくつかの場合において、無水ピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶の関節における沈殿は、偽性痛風の原因となり得る。
【0069】
今日、HPPについて承認された治療法は、存在しない。現在の対応は、必要に応じて、症状の緩和、カルシウムバランスの維持、ならびに物理的、作業的、歯科的、および整形外科的介入からなる。ある幼児におけるビスホスホネート(ピロリン酸合成類似体)投与は、骨格に識別可能な効果をもたらさず、幼児の疾患は、14月齢において死亡するまで進行した。
【0070】
二人の重度に罹患した幼児における骨髄細胞移植は、X線検査における、および臨床的な改善効果をもたらすが、効果の機序は、完全には理解されておらず、重大な病的状態が残る。通常の血清による、またはパジェットの骨疾患を有する患者に由来するALP豊富な血清による酵素補充療法は、有用ではない(Whyte MP, Valdes R, Ryan LM, McAlister
WH (September 1982))。「幼児の低ホスファターゼ症:パジェットの骨疾患を有する患者に由来するアルカリホスファターゼ豊富な血漿の静脈内注入による酵素補充療法」(J. Pediatr. 101 (3): 379-86][ Whyte MP, McAlister WH, Patton LS, et al. (December 1984))。「アルカリホスファターゼ豊富なパジェット血漿の静脈内注入によって試みられる幼児性低ホスファターゼ症のための酵素補充療法」(J. Pediatr. 105 (6): 926-33]. J. Pediatr. 101 (3): 379-86][ Whyte MP, McAlister WH, Patton LS, et al. (December 1984))。これらの酵素補充療法は、効果がないと考えられた。なぜなら、アルカリホスファターゼの機能は、骨表面におけるものであり、血中におけるものではないと考えられるからである。さらに、酵素補充療法の効果を向上するための試みは、それゆえ、有望な結果を有する骨が標的とされるTNAP酵素の周囲に構築された(Whyte et al. N Engl J Med. 2012 Mar 8;366(10):904-13)。驚くべきことに、本発明は、人工的な骨標的部分を導入することなく、本発明に従ったタンパク質が、低ホスファターゼ症のマウスモデルにおいて有用であることを示す。本発明のタンパク質の1つの利点は、WhyteおよびMillan[J. Bone Miner. Res. 2008;23(6):777-787]に記載されており、人工的な骨標的
部分の欠如が原因で、本発明のタンパク質は、非常に低い免疫原性であると予想される。本発明のタンパク質は、天然に生じるヒトアルカリホスファターゼタンパク質に高い配列同一性を有するタンパク質からなる。さらに、本発明のタンパク質は、製造の容易性および費用に関して骨標的アルカリホスファターゼを超える利点を有する。
【0071】
好ましい実施形態において、低ホスファターゼ症の処置における使用のための、本発明に従った、タンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターが提供され、前記低ホスファターゼ症は、周産期型低ホスファターゼ症、幼児型低ホスファターゼ症、小児型低ホスファターゼ症、および成人型低ホスファターゼ症から選択される。
【0072】
周産期型低ホスファターゼ症は、低ホスファターゼ症の最も悪性の形態である。子宮内において、重度の石灰化不全は、妊娠期間および出生時に膜性頭、変性または短化した四肢をもたらし、呼吸不全による迅速な死亡をもたらす。
【0073】
小児型低ホスファターゼ症は、生存の最初の6月に生じる。生後発達は、多くの場合、不十分な摂食、および不適切な重量増加が現れ、くる病の臨床的所見が認められるまで正常に見える。高カルシウム血症および高カルシウム尿症も好発し、腎石灰症、腎機能障害、および反復性嘔吐の発症の原因の説明となり得る。死亡率は、生存の最初の1年で50%であると推定される。
【0074】
小児型低ホスファターゼ症は、不定の臨床的発現を示す。セメント質の無形成、形成不全、または形成異常の結果として、乳歯の早期損失(たとえば、5歳前)が生じる。多くの場合、切歯は第1に抜け落ち、時折ほぼ全部の乳歯列が早期に脱落する。歯科用X線写真は、時折、拡張した髄腔と、くる病の「殻状歯」の根管特徴とを示す。患者は、非進行性筋障害に一致する付属筋低下(特に、大腿において)、ならびに歩行遅延、特有の動揺性歩行、硬直および疼痛の症状を経験し得る。通常、X線写真は、くる病の奇形、および主要な長骨の骨端付近に特有の骨欠損を示す(すなわち、くる病の成長板から骨幹端に延びる放射線透過性の「舌(tongues)」)。成長遅延、高頻度の骨折、および骨減少症が
好発する。重度に発症した幼児および幼い小児において、X線検査における広く「開いた」泉門の出現にもかかわらず、頭蓋縫合の機能的な骨癒合が生じることは珍しいことではない。「開いた」泉門の像は、広い領域で石灰化不全の頭蓋冠をもたらす。続いて、頭蓋縫合の真性早発性骨融合が頭蓋内圧を上昇させ得る。
【0075】
成人型低ホスファターゼ症は、くる病、乳歯の早発性欠損、または成人歯列の早期欠損を伴い得、比較的に良好な健康状態であり得る。骨軟化症は、中足骨の疲労骨折の反復性の不十分な治癒から生じる足の痛みと、それらがX線検査において現れるとき、大腿骨近位部の外側皮質におけるそれらの局在によって大部分の他の種類の骨軟化症(内側に生じる)とは区別される大腿の偽骨折が原因である大腿または臀部における不快感として現れる。ある患者は、関節炎(偽性痛風)の副次的な顕性攻撃を伴うピロリン酸カルシウム二水和物結晶の沈着を患い、この副次的顕性攻撃は、内在性の無機ピロリン酸(PPi)レベルの増加の結果であると考えられる。これらの患者は、関節軟骨の変性、およびピロリン酸関節症を罹患し得る。X線写真は、近位大腿骨の外側皮質における偽骨折、疲労骨折を明らかにし、患者は、骨減少症、軟骨石灰化症、ピロリン酸関節症の特徴、および石灰沈着性関節周囲炎を経験し得る。
【0076】
好ましい実施形態において、本発明に従った低ホスファターゼ症の処置における、タンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターの使用であって、前記処置が、生存期間の延長、体重の増加、改善した骨格表現型(二次骨化中心の誘導、たとえば骨梁および/もしくは皮質骨における骨石灰化の改善、または類骨の誘導など)、顔面頭蓋欠損の減弱(形状異常、および冠状縫合癒合)、歯および歯槽の表現型(大臼歯の高さおよび形状、象牙質厚さ、ならびに骨石灰化の改善など)の改善、ならびに/または患者の血漿PPiレベルの低下をもたらす使用が提供される。
【0077】
低ホスファターゼ症の予防、または処置のための医薬の製造のための、本発明に従った、タンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターの使用であって、前記処置が、生存期間の延長、体重の増加、改善した骨格表現型(二次骨化中心の誘導、たとえば骨梁および/もしくは皮質骨における骨石灰化の改善、または類骨の誘導など)、顔面頭蓋欠損の減弱(形状異常、および冠状縫合癒合)、歯および歯槽の表現型(大臼歯の高さおよび形状、象牙質厚さ、ならびに骨石灰化の改善など)の改善、ならびに/または患者の血漿PPiレベルの減少をもたらす使用が提供される。
【0078】
また、低ホスファターゼ症に罹患している、または罹患するリスクを有する対象を処置する方法であって、前記処置が、生存期間の延長、体重の増加、改善した骨格表現型(二次骨化中心の誘導、たとえば骨梁および/もしくは皮質骨における骨石灰化の改善、類骨の誘導など)、顔面頭蓋欠損の減弱(形状異常、および冠状縫合癒合)、歯および歯槽の表現型(大臼歯の高さおよび形状、象牙質厚さ、ならびに骨石灰化の改善など)の改善、ならびに/または前記対象の血漿PPiレベルの減少をもたらす方法が提供される。
【0079】
より好ましい実施形態において、本発明に従った低ホスファターゼ症の処置における使用のための、タンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターであって、前記低ホスファターゼ症が、幼児型、小児型、または成人型低ホスファターゼ症から選択される、タンパク質、ポリヌクレオチド、および/またはベクターが提供される。より好ましくは、前記低ホスファターゼ症は、幼児型低ホスファターゼ症である。
【0080】
本明細書において、実施例、および当該技術分野における文献、他の命名法がアルカリホスファターゼの各アイソフォームを命名するために使用される。明確にするために、以下の表1において、一般的に使用される、または本願において使用される名称および略称が列挙される。
【表1】
【0081】
「分泌可能」との用語は、翻訳後のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーが成熟タンパク質に付加しておらず、タンパク質を分泌可能にし、膜結合しないことを意味する。GPIアンカーは、糖脂質であり、翻訳後修飾の間にタンパク質のC末端に付加され得る。それは、糖含有リンカ(グリコシド結合によるイノシトール残基に対するグルコサミンおよびマンノース)を介して、そして成熟タンパク質のC末端アミノ酸に対するエタノールアミンホスフェート(EtNP)架橋を介して結合されたホスファチジルイノシトール基からなる。疎水性のホスファチジルイノシトール基内の2つの脂肪酸は、タンパク質を細胞膜に固定する。このことは、産生および下流プロセシングに有利であるので、本発明に従ったタンパク質は、GPIアンカーを含まないことが好ましい。
【0082】
記載された分泌可能な任意の修飾ホスファターゼ(したがって、本発明に従った分泌可能なタンパク質)は、たとえば、調節配列を有する操作可能な結合内に前記分泌可能なホスファターゼをコードすることができる核酸を宿主細胞に導入し、前記宿主細胞に前記分泌可能なホスファターゼを発現させ、随意に、前記宿主細胞が増殖および/または維持される培地から産生されたホスファターゼを単離することによって産生することが可能である。しかし、上述のGPI付加配列における変異とは別に、GPIアンカーの無い分泌タンパク質を作製する他の方法が存在する。たとえば、
1)膜アンカータンパク質として発現させた後、ホスホリパーゼは、GPIアンカーを切断するために使用することができる。したがって、本発明は、膜アンカーホスファターゼを発現することができる宿主を培養することと、前記宿主細胞に前記ホスファターゼを産生させることと、得られた細胞をホスホリパーゼとともに培養することと、随意に、放出されたホスファターゼを単離することとを含む、分泌ホスファターゼを産生する方法を提供する。
2)GPIアンカーの産生の阻害、またはGPIアンカー産生を欠く細胞(種)の使用は、別のGPIアンカータンパク質の分泌可能な形態をもたらすために使用することができる。GPIアンカー生化学における、不完全にされた細胞株の例としては、Jurkat,AM-B,C84,BW,S49,CHO,およびRajiがある。また、さらなる別の実施形態において、本
発明は、したがって、分泌ホスファターゼを産生するための方法であって、分泌可能な(アルカリ)ホスファターゼを発現することができる宿主細胞(たとえば、任意の上述の修飾された分泌(アルカリ)ホスファターゼをコードする核酸配列を含む宿主細胞)を培養することと、前記分泌可能なホスファターゼを前記宿主に産生させることと、随意に、産生されたホスファターゼを単離することとを含み、前記宿主細胞が、機能的なGPIアンカータンパク質の生合成をすることができない方法を提供する。しかし、宿主細胞は、機能的GPIシグナル配列を有するホスファターゼを産生してもよい。
3)トランスアミダーゼを欠く細胞の使用、またはトランスアミダーゼの阻害は、タンパク質に対するGPIアンカーの付加を阻害するために使用され、タンパク質をアンカーなしで分泌可能にしてもよい。そのような欠損細胞は、CHOの突然変異誘発によって得られた。
【0083】
本発明に従ったベクターは、好ましくは、ホスファターゼをコードする核酸配列の転写/翻訳に必要な構成要素(たとえば、プロモータおよび/またはターミネータ配列)などの追加の核酸配列を含む。前記ベクターは、当該ベクターで形質転換された宿主細胞を選択または維持するための選択マーカ(たとえば、抗生物質)をコードする核酸配列を含むことができる。好ましくは、GPIアンカー配列をコードする核酸配列は、本発明に従った、ポリヌクレオチド、および/またはベクターには存在しない。好適なベクターの例は、クローニングまたは発現ベクターである。適切な宿主細胞における発現を調節するために適した任意のベクターは、本発明に従って使用されてもよく、宿主細胞において統合的に、またはエピソーマルに複製されてもよい。ベクターは、プラスミド、ウイルス(たとえば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、もしくはそれらの誘導体)、コスミド、ファージ、またはファージミド、エピソーマルベクター、または人工染色体であってもよい。
【0084】
さらに、本発明は、上述されたような、本発明に従った、タンパク質、核酸配列、またはベクターを含む宿主細胞を提供する。細胞は、組換えタンパク質の産生に適した、真核細胞、好ましくは哺乳類細胞、植物細胞、または酵母細胞であってもよい。適した酵母細胞は、たとえば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)を含む。好ましくは、宿主細胞は、BHK、HEK293、CHO、またはPerC6(商標)などの哺乳類(またはより好ましくはヒト)由来細胞である。特に好ましい実施形態において、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0085】
本発明に従ったタンパク質をコードする核酸配列、当該核酸配列を含むベクター、および/または前記核酸配列を含む宿主細胞は、本発明に従ったタンパク質の産生に非常に有用である。本発明に従ったタンパク質は、糖化部位を含むので、当該タンパク質は、好ましくは、細胞において産生され、所望の糖鎖修飾パターンを提供する。好ましい実施形態において、使用される産生システムは、哺乳類(たとえば、ヒト)in vitro産生プラットフォームであり、より好ましくは、前記産生は、大規模産生に関する。他の好ましい実施形態において、使用される産生システムは、人工的なヒト様糖鎖修飾パターンが導入された、植物、または酵母、または哺乳類(好ましくは、非ヒト)プラットフォームである。
【0086】
一実施形態において、本発明は、したがって、本発明に従ったタンパク質を産生する方法であって、本発明に従ったポリヌクレオチド、または本発明に従ったベクターを含む宿主細胞を培養することと、前記タンパク質を前記宿主細胞に産生させることとを含む方法を提供する。好ましい宿主細胞は、BHK、HEK293、CHO、またはPerC6(商標)などの哺乳
類(またはより好ましくはヒト)由来細胞である。好ましい実施形態において、宿主細胞は、CHO細胞である。好ましくは、本発明に従ったタンパク質を産生するための方法は、前記タンパク質を前記培養物から回収し、随意に、精製することをさらに含む。
【0087】
既に述べられたように、本明細書において記載される、本発明に従ったタンパク質は、治療に有用である。一実施形態において、本発明は、本発明に従ったタンパク質を含む組成物、好ましくは医薬組成物を提供する。前記医薬組成物は、随意に、医薬的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
【0088】
組成物は、任意の形態で、たとえば、錠剤として、注射可能な液体として、または注入液などとして存在してもよい。さらに、本発明に従った、組成物、タンパク質、ヌクレオチド、および/またはベクターは、たとえば、静脈内、直腸内、気管内、または経口などの異なる経路によって投与することができる。さらに別の適した投与経路は、十二指腸点滴の使用である。
【0089】
好ましい実施形態において、投与の使用経路は、静脈内経路である。好ましくは、本発明に従ったタンパク質の有効量が送達されることは、当業者にとって明らかである。開始点として、1~50,000U/kg/日が使用されてもよい。たとえば、HPPのための他の適した経路は、皮下経路である。投与の静脈内経路が使用される場合、本発明に従ったタンパク質は、(少なくとも特定の長さの時間にわたって)持続注入によって適用することができる。
【0090】
本発明に従った前記組成物は、随意に、医薬的に許容される、賦形剤、安定剤、活性化剤、担体、浸透剤、噴射剤、消毒剤、希釈剤、および保存剤を含んでもよい。適切な賦形剤は、医薬製剤の分野において一般的に公知であり、当業者によって容易に見出され、加えられてもよい。たとえば、Remmington’s Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia PA, 17th ed. 1985を参照。
【0091】
経口投与のために、タンパク質は、カプセル、錠剤(たとえば、腸溶コーティング)、および粉末などの固体投与形態、またはエリキシル剤、シロップ、および懸濁液などの液体投与形態で投与されてもよい。APは、不活性成分、およびグルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースもしくはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリン酸ナトリウム、滑石、炭酸マグネシウムなどの粉末化担体と共にゼラチン質カプセルに包まれてもよい。所望の色、味、安定性、緩衝能力、分散度、または他の公知の所望の特徴を提供するために添加される追加の不活性成分の例は、赤色酸化鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白色インクなどである。同様の希釈剤が、圧縮された錠剤を製造するために使用されてもよい。錠剤およびカプセルの双方は、1時間を超える薬剤の持続的放出を提供するために徐放製品として製造されてもよい。圧縮された錠剤は、不快な味覚を遮蔽し、錠剤を大気から保護するために、糖被覆、もしくは薄膜被覆され、または消化管における選択的分解のために腸溶コーティングされてもよい。経口投与のための液体投与形態は、患者の許容性を増加させるために色および香りを含んでもよい。
【0092】
好ましい実施形態において、本発明に従ったタンパク質を含む組成物は、経口投与に適しており、胃液、および低pHの有害作用からAPを保護する腸溶コーティングを含む。腸溶コーティング、および徐放製剤は、当該技術分野において周知である。当該技術分野における腸溶コーティング組成物は、水溶液中に分散された活性成分および他の賦形剤と混合された水溶性腸溶コーティングポリマーの溶液を含んでもよく、その後、乾燥され、および/またはペレット化されてもよい。腸溶コーティング形態は、大気中の水分、および保存の間の酸素による、ならびに摂取後の胃液および低pHによる本発明に従ったタンパク質の攻撃に対する抵抗性を提供するが、下部消化管に存在するアルカリ条件下において容易に破壊される。
【0093】
本発明は、好ましくは、局所的、もしくは全身の亜鉛欠乏、炎症性疾患、腎臓病、または低ホスファターゼ症に付随する疾患を処置するための本発明に従った組成物の、医薬としての使用を提供する。炎症性疾患は、好ましくは、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、消化管の炎症性疾患、感染症、敗血症、神経皮膚炎、炎症性肝疾患、炎症性肺疾患、および炎症性腎臓病からなる群から選択される。腎臓病は、好ましくは、腎不全、急性腎障害、慢性腎臓病、および虚血性腎臓病からなる群から選択される。低ホスファターゼ症は、好ましくは、周産期型低ホスファターゼ症、幼児型低ホスファターゼ症、小児型低ホスファターゼ症、および成人型低ホスファターゼ症からなる群から選択される。
【0094】
本発明に従ったタンパク質は、医薬組成物に組み込むことができるという事実に加えて、かかるホスファターゼは、栄養組成物、または機能性食品の一部であってもよい。
【0095】
本発明に従ったタンパク質は、栄養剤(牛乳など)に添加されてもよいが、前記栄養剤内において製造されてもよい(たとえば、分子工学によって)。さらに、錠剤、および/またはカプセルは、続いて栄養剤に添加され、ヒトによって直接に摂取されてもよい。
【0096】
さらに、炎症性疾患、腎臓病、または低ホスファターゼ症に罹患している対象を処置するための方法が提供され、この方法は、本願に従ったタンパク質、たとえば、ホスファターゼ活性を有する、単離、または組換えタンパク質の有効量を投与することを含み、
前記タンパク質の一部は、少なくとも50個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列であって、ヒトPLAPの全長クラウンドメインに、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記タンパク質の一部は、少なくとも200個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列であって、ヒトALPIのクラウンドメインに隣接するN末端領域に90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記タンパク質の一部は、少なくとも40個の連続したアミノ酸のアミノ酸配列であって、ヒトALPIのクラウンドメインに隣接するC末端領域に90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
全長のタンパク質は、配列番号1の全長アミノ酸配列に、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列含み、
ただし、位置279におけるアミノ酸は、ロイシン(L)であり、位置328におけるアミノ酸は、バリン(V)であり、位置478におけるアミノ酸は、ロイシン(L)であり、または
本願に従ったポリヌクレオチドの有効量、もしくは本願に従ったベクターの有効量を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0097】
本発明は、以下の非限定的な例においてより詳細に説明される。
【
図1】成熟タンパク質LVL-RecAP,hIAP,およびhPLAPのアミノ酸配列。異なるタンパク質の推定クラウンドメインは、下線を付されている。
【
図2】catALPI/crownALPPと比較したLVL-RecAPの器官分布。血液に対する器官分布catALPI/crownALPPで分けられた血液に対する器官分布LVL-RecAPが示されている(=y軸は比率)。高い値は、catALPI/crownALPPと比較した場合、各器官を標的とするLVL-RecAPの徴候である。
【
図3】ベヒクル、1mgLVL-RecAP/kg/日、8mgLVL-RecAP/kg/日、または16mgLVL-RecAP/kg/日のいずれかで処置されたAkp2
-/-マウスの生存率を示す。
【
図4】腎臓虚血/再灌流障害を罹患している子ブタにおける血清クレアチニン濃度である。シャム動物は、外科的処置を受け、その間に左腎が除去された。しかし、腎臓閉塞および再灌流は、行われなかった。0日目において、0.32mg/kg/日を受けた群では、投与量の半分が再灌流の前に投与され、投与量の残り半分が再灌流後8±2時間において投与された。生存期間の残りの間、総量が毎日投与された。
【
図5】腎臓虚血/再灌流障害を罹患している子ブタにおけるAP濃度である。シャム動物は、外科的処置を受け、その間に左腎が除去された。しかし、腎臓閉塞および再灌流は、行われなかった。0.32mg/kg/日(200U/kg/日)を受けた群では、0日目において、投与量の半分が再灌流の前に投与され、投与量の残り半分が再灌流後8±2時間において投与された。生存期間の残りの間、総量が毎日投与された。
【
図6】LVL-RecAP処置によるAlpl
-/-マウスの生存率および体重の改善。A)LVL-RecAP16は、実験の最後まで生存した。生存率の平均は、ベヒクル、LVL-RecAP1、およびLVL-RecAP8のそれぞれについて、p19、p22、およびp42.5であった。B)ベヒクル処置されたAlpl
-/-マウスは、WT同腹仔よりも軽量であった。LVL-RecAP1処置は、p18においてWT付近まで体重を改善する。ベヒクル処置されたマウスは、長く生存せず、LVL-RecAP8処置されたマウスは、p53においてWT同腹仔よりも軽量のままであった。一方、LVL-RecAP16処置されたマウスは、p53においてそれらのWT同腹仔とは有意に異ならない体重を示す。
【
図7】LVL-RecAP処置は、Alpl
-/-マウスの骨格表現型を改善する。ベヒクル、LVL-RecAP1、LVL-RecAP8、LVL-RecAP16で処置されたAkp2
-/-マウス、および未処置WTコントロールの、脊椎、前肢、胸郭、後肢、および足のX線写真である(拡大率5×)。A)Akp2
-/-マウスは、椎骨、長骨、および胸郭において重度の骨軟化症(矢印)を示す。二次骨化中心は、Akp2
-/-マウスにおいて欠けている(アスタリスク)。LVL-RecAP1を用いる処置は、p18において、未処置のWTと比較して表現型をわずかに治す(矢頭)。B)LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16を用いる処置は、椎骨、長骨、および胸郭において骨表現型を明らかに治す。特に、中足骨領域における二次骨化中心の推移が示しているように最遠位が改善される(矢頭)。
【
図8】LVL-RecAP処置されたAlpl
-/-マウスにおける改善された石灰化を示す。A)ベヒクル処置されたAlpl
-/-(p18)、LVL-RecAP8(p51)、LVL-RecAP16 p53、および未処置WTマウスp53の大腿骨の組織学的解析である。フォンコッサ染色は、LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16の増加した投与量よる良好な骨石灰化を明らかにした。二次骨化中心および皮質骨領域は、未処置に比較して石灰化の著しい改善を示す(黒色)。LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16において、WTに比較して海綿骨が少ないが、海綿骨領域における石灰化、および海綿骨になると予期される類骨が増加した。 B/C)LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16について、BV/TVおよびOV/BVの分析は、同齢のコントロールよりも低下した骨量および増加した類骨量を示した。
【
図9】LVL-RecAP処置されたAlpl
-/-マウスにおける骨軟化症および血漿PPiレベルの改善。A)ベヒクル処置されたAlpl
-/-(p18)、LVL-RecAP8(p51)、LVL-RecAP16 p53、および未処置WTマウス p53の大腿骨の組織学的解析。大腿骨切片のゴールドナートリクローム染色は、Alpl
-/-における重度の骨軟化症を示し、LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16の投与量増加による皮質領、および二次骨化中心における石灰化の改善を示す。類骨の拡張領域の存在は、骨の沈着を示唆するが、未だ石灰化されていない。B/C)LVL-RecAP1、LVL-RecAP16を受けたAkp2
-/-マウス、およびWTの血漿におけるPPi濃度。LVL-RecAP1処置は、p18において、Alpl
-/-マウスにおける高いPPiレベルの有意な減少をもたらす。p53において、LVL-RecAP16処置は、WTコントロールと同等な血漿PPiレベルの矯正をもたらした。
【
図10】LVL-RecAP処置されたAlpl
-/-マウスにおける顔面頭蓋欠損の欠如。p21およびp53における、WT(A,D)、ベヒクル処置Alpl
-/-(B,E)、およびLVL-RecAP16(C,F)マウス頭蓋骨のμCTイソ表面画像。処置されたAlpl
-/-マウスの前頭骨も頭頂骨も、WTマウスのものとは有意に異ならなかった。LVL-RecAP16処置されたAlpl
-/-マウスの成体頭蓋は、寸法および形状の点でWTとは異ならないようであった。
【
図11】LVL-RecAP処置は、Alpl
-/-マウスの歯槽表現型を部分的に回復する。p25~26における野生型コントロールの(A)X線検査、および(D)μCT分析に比べて、(B,F)未処置のAlpl
-/-マウス下顎骨は、石灰化不全、および減少した歯槽骨(AB)、薄い象牙質(DE)および広い髄腔を有する短い大臼歯(M1、M2、およびM3)、ならびに不完全な切歯(INC)の象牙質(白色アスタリスク)の特徴を示す。(E)コントロールの歯周組織の組織構造に比べて、(G)Alpl
-/-マウスは、無細胞セメント質(AC)を示さず、歯槽骨類骨は、PDL間隙に浸潤し、骨-歯強直を生じる(アスタリスク)。(C,H)LVL-RecAP8処置されたAlpl
-/-マウスは、大臼歯の高さ、象牙質の厚さ、および骨石灰化の改善されたX線検査の外観を示すが、切歯は不完全なままである。(I)組織学的に、LVL-RecAPは、無細胞セメント質を歯根表面まで回復しない。(J,L)p53におけるコントロールに比べて、(K,M)LVL-RecAP16処置されたAlpl
-/-マウスは、大臼歯周辺の歯槽骨石灰化の減少を示す。大臼歯の形状および石灰化は、処置されたAlpl
-/-マウスにおいて比較的正常であるようであるが、切歯は、歯根類似体に重度に影響されたままである(白色アスタリスク)。(N)WTコントロール大臼歯の組織構造に比べて、(P)LVL-RecAP16処置されたAlpl
-/-マウスは、石灰化された歯槽骨および類骨の混合物(アスタリスク)、ならびに減少したが維持されたPDL間隙の特徴を示す。不十分な歯周組織の付着は、セメント質の欠如、PDL組織崩壊および脱離、ならびに付着上皮の下方成長によって証明される。歯へのPDL付着の小領域(山形領域)が確認された。偏光下においてピクロシリウスによって示されるコントロール組織(O)におけるPDLコラーゲン線維の強固で平行な組織に比べて、(Q)LVL-RecAP16処置されたAlpl
-/-マウスは、あまり組織化されていないPDLを備えるが、組織および付着の領域は、歯根付着のブレイクスルー領域に隣接して存在する(白色山形領域)。
【
図12】RecAP処置は、ヒト近位尿細管上皮細胞(ciPTEC)におけるLPS誘導サイトカイン産生を減弱する。ciPTECは、recAPによって前処置(1-5-10 U/ml)され、続いて24時間にわたってLPS誘導(10μg/ml)され、続いて(A)qPCR(10U/ml recAP)によって細胞内の遺伝子レベル、および(B)ELISAによって上清のタンパク質レベルでTNF-α、IL-6、およびIL-8産生が測定された。(C)recAP(10U/ml)は、LPS曝露の2時間前、LPSと同時に、またはLPS曝露の2時間後に投与され、続いてTNF-α、IL-6、およびIL-8タンパク質含有量が測定された。(D)ciPTECは、加水分解特性を欠く不活性APを用いて2時間にわたって前処置され、続いて24時間にわたってLPS培養(10μg/ml)され、その後、TNF-α、IL-6、およびIL-8タンパク質含有量が測定された。コントロール細胞は、培養培地で培養された。データは、平均値±SEM(n=5)、♯ コントロールに比べてp<0.05、* LPSに比べてp<0.05として表わされる。
【
図13】recAPの効果は、LPS誘導炎症に制限されず、腎臓特異的である。ciPTECは、recAP(10U/ml)を用いて2時間にわたって前処理され、続いて(A)TNE-α(10ng/ml)、または(B)LPS刺激された末梢血単核球の上清(PBMCs、1ng/ml LPS)を用いて24時間にわたって培養され、その後ELISAによってIL-6およびIL-8産生が測定された。(C)PBMCsは、recAP(10U/ml)で2時間にわたって予め培養され、続いて24時間にわたってLPS曝露(1ng/ml)された。IL-6およびTNF-α産生は、ELISAによって測定された。コントロール細胞は、培養培地を用いて培養された。データは、平均値±SEM(n=5)、♯ コントロールに比べてp<0.05、* LPSに比べてp<0.05として表わされている。
【
図14】in vitroでLPS誘導されたATP放出におけるrecAPの効果。ciPTECは、recAP(10U/ml)を用いて前処置され、LPS誘導された(10μg/mlまたは100μg/ml)。30分後、上清は、バイオルミネッセンスによって細胞性ATP放出を測定するために集められた。コントロール細胞は、培養培地で培養された。データは、平均値±SEM(n=5)、♯ コントロールに比べてp<0.05として表わされる。
【
図15】RecAPは、in vivoにおいて腎機能のLPS誘導劣化を妨げる。腎機能は、FITC-シニストリン t
1/2の経皮測定によって評価された。AKIは、LPSによってラットにおいて誘導され(0.3mg/kg b.w.、t=0)、続いてt=2においてrecAP処置(1000U/kg b.w.)された。T
1/2測定は、t=2時間、およびt=21.5時間において測定された(A,B:2つそれぞれの時点における1匹のラットについて得られたFITC-シニストリン動態の例)。尿は、t=5とt=16との間で集められ、血漿は、t=1.5およびt=24時間において採取され、(C)分画尿素抽出物と、(D)t=1.5およびt=24の平均血漿値を有するクレアチニンクリアランスとが算出された。データは、平均値±SEM(プラセボ、LPS n=6;LPS+recAP n=5)、♯ プラセボに比べてp<0.05として表わされる。
【
図16】recAPは、in vivoにおいて、LPS誘導AKIの間における腎障害を妨げる。(A)尿中のKIM-1排出量、および(B)NGAL排出量、(C)血漿NGALレベル(t=24)、ならびに(D)腎臓KIM-1タンパク質含有量は、ELISAによって測定された。(E)パラフィン腎臓切片は、抗KIM-1で染色され、KIM-1タンパク質発現を可視化した。スケールバー:400μm(左パネル)、200μm(右パネル)データは、平均値±SEM(プラセボ、LPS n=6;LPS+recAP n=5;尿パラメータ:プラセボ n=5)、♯ プラセボに比べてp<0.05として表わされている。
【
図17】上清におけるLPS誘導サイトカインについてrecAPは、効果を示さない。24時間LPS培養(10μg/ml)された、または培地培養(コントロール)ciPTECの上清は、集められ、recAP(10U/ml)の有無でさらに24時間にわたって培養され、ELISAによって、TNF-α、IL-6、およびIL-8を測定された。データは、平均値±SEM、♯ コントロールに比べてp<0.05、* LPSに比べてp<0.05として表わされている。
【
図18】25℃および37℃におけるヒト血清中のRecAPの酵素活性の相関関係。
【
図19】25℃および37℃におけるヒト血清中のLVL-RecAPの酵素活性の相関関係。
【
図20】
図20は、RecAPおよびLVL-RecAPについて、25℃および37℃における活性/μgタンパク質を示す。値は、所定のタンパク質濃度について25℃と37℃との間の平均Δ活性を表す。
【発明を実施するための形態】
【0098】
[実施例]
実施例1
緩衝液におけるLVL-RecAPの安定性
材料:
ヒト組換えアルカリホスファターゼ:
1.sALPI-ALPP-CD (配列番号4) (DOM:04-Aug-2008)
2.LVL-recAP (配列番号1) (DOM:14-Oct-2011)
【0099】
方法
亜鉛欠乏
ヒト組換えアルカリホスファターゼバッチの酵素活性およびタンパク質含有量の双方が測定された。続いて、100μg/mLタンパク質溶液が各条件について作製され、表2に概説されるようにsALPI-ALPP-CD、およびLVL-recAPバッチについて亜鉛欠乏が測定された。作製された試料は、室温で保存され、T=0、T=2時間、およびT=24時間において酵素活性を分析した。
【表2】
酵素活性の測定は、SOP PC001に示されるような標準の手順に従った。
タンパク質濃度は、OD
280測定によって測定された(ε
recAP 1.01mL/mg/cm OD
280)。
【0100】
結果
【表3】
表3に明確に示されるように、LVL-RecAPは、金属キレート剤(EDTA)の存在下において、sALPI-ALPP CDよりも顕著に安定であり(すなわち、残存するより高い酵素活性;アスタリスクを付された値によって示される)、その活性に関するZn
2+の依存性は低いことを示唆している。
【0101】
実施例2
緩衝液中におけるLVL-RecAPの安定性
材料:
ヒト組換えアルカリホスファターゼ:
1.sALPI-ALPP-CD (DOM: 04-Aug-2008)
2.LVL-recAP (DOM:14-Oct-2011)
【0102】
方法
第2の独立実験において、sALPI-ALPP-CDおよびLVL-recAPの安定性は、表4に概説されたようないくつかの条件について試験された。
この実験における両方の組換えAPバッチについて、0.025Mグリシン緩衝液 pH9.6における100μg/mLタンパク質溶液、ヒト血清、およびヒトクエン酸血漿が、各緩衝条件について作製され、安定性を測定された。
全ての作製された組換えAP試料は、37℃で培養され、T=0、T=0.5時間、T=1時間、T=2時間、およびT=24時間において酵素活性を分析した。
【表4】
【0103】
結果
【表5】
酵素活性の測定は、SOP PC001に従って行われた。
タンパク質濃度は、OD280測定によって測定された(ε
recAP 1.01mL/mg/cm OD280)。
【0104】
表5に明確に示されるように、表3の結果と一致して、LVL-RecAPは、金属キレート剤(EDTA)の存在下においてsALPI-ALPP CDよりも顕著により安定であり(アスタリスクを有する値によって示されるように)、その活性に関するZn2+の依存性が低いことを示唆している。
【0105】
実施例3
LVL-RecAPの熱的安定性、およびPLP動態
方法
タンパク質発現
分泌された、FLAGエピトープタグ化sALPI-PLAP-CD、およびLVL-RecAPを含む発現プラスミドは、以前に記載されたように行われた(Kozlenkov et al. J Biol Chem 277, 22992-22999 (2002) and Kozlenkov et al. J. Bone Miner. Res. 19, 1862-1872 (2004))。FLAG-タグ化酵素は、COS-1細胞に一過的にトランスフェクトされ、以前に記載されたように(Narisawa et al. Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 293, G1068-1077 (2007))、培地が無血清Opti-MEM(Life Technologies社)で置換されたとき、続いてDMEM培地において24時間増殖された。分泌タンパク質を含むOpti-MEMは、トランスフェクションの60時間後に集められ、続いて2μmのセルロースアセテートフィルタを通して濾過され、1mM MgCl2および20μM ZnCl2を含むTBSに対して透析された。
【0106】
酵素反応速度
FLAGタグ化酵素の相対的酵素活性を測定するために、マイクロタイタープレートは、0.2~0.6μg mL-1において抗FLAG M2抗体で被覆された(Sigma-Aldrich社)。これらのプレートは、FLAGタグ化LVL-RecAP、またはsALPI-PLAPの飽和濃度で室温において3時間にわたってインキュベートされ、その後、プレートは、0.008% Tween-80を含むPBSを用いて洗浄され、PLPについての相対的活性は、M2飽和された酵素と比較された。物理的基質ピリドキサール-5’-リン酸塩(PLP)(Sigma-Aldrich社)の加水分解は、標準的アッセイ緩衝液(50mM Tris-HCl緩衝液、100mM NaCl、1mM MgCl2、および20μM ZnCl2)中で、pH7.4において測定された。放出されたホスファターゼの濃度は、Piカラーロックゴールド(Innova Bioscienses社)を用いて650nm(A650)における吸光度を測定することによって測定された。リン酸塩の濃度増加についての検量線は、0~50μMの間で直線であり、全ての実験は、加水分解されたリン酸塩濃度のこの範囲内に入るように計画された。[Pi]s-1として表わされるモル反応速度は、示された基質濃度範囲について計算され、1つの結合部位モデル(GraphPad Prism)対[基質]に合わされ、Kmが算出された(ラインウィーバーバークプロットは、非常に低い基質濃度における相反する転換の精度が欠如しているので適用されなかった)。
【0107】
400μMのPLPの基質濃度が使用された。溶解可能な酵素濃度は、約1nMであり、インキュベーション時間は、15~30分間であり、各酵素の触媒効率によって決定された。定常状態を確保し、Piカラーロックゴールド法における非特的基質シグナルを修正するために、早期の読み取り値(5分の時点)を、後の読み取り値から減算し、ΔA650を、対応するPi標準曲線上で測定して、各実験ごとに個別に構築した。全ての実験は、3~5回行われ、得られた定数は、平均±SDとして記載された。
【0108】
熱安定性を測定するために、FLAGタグ化酵素は、1mM MgCl2および20μM ZnCl2を含む1M DEA(pH9.8)中において65℃でインキュベートされた。試料は、異なる時点で除去され、氷上に静置され、続いて残効性が、pNPPを用い、以下の方法を用いて測定された。結合酵素の活性が、1mM MgCl2および20μM ZnCl2を含む50mM Tris-HCl緩衝液、100mM NaCl中でpNPP(10mM)を基質として用いて、pH7.4において25℃における時間の関数として405nm(A405)における吸光度として測定された。酵素は、この緩衝液中において高温(25~100℃)で10分間インキュベートされ、残効性が、同様に測定された。
【0109】
結果
FLAGタグ化酵素の作製
LVL-RecAPの動態特性をsALPI-PLAPと比較するために、PLAPおよびTNAPの比較研究について以前に行われたように、FLAGタグ化配列が双方のcDNAに付加された。cDNAが、COS-1細胞において発現され、分泌酵素を含む培養上清が回収された。連続的な発現、および回収は、抗FLAG抗体ウエスタンブロット解析によって確かめられた。
【0110】
生理学的基質を用いる動態パラメータ
LVL-RecAP、およびsALPI-PLAPのリン酸加水分解酵素特性は、炎症と癲癇とを関係付ける生理学的基質、特に、ビタミンB6ビタマーPLPについて調べられた。LVL-RecAPは、生理的pH(7.4)において、sALPI-PLAPよりも低いKmを示し(30.1μM 対 60.7μM)、改良されたLVL-RecAPは、生理的pHにおいてsALPI-PLAPよりもPLPについて高い親和性を有することを示す。
【0111】
酵素安定性
LVL-RecAPにおけるアミノ酸変異が酵素の全体的な安定性にもたらす影響は、熱失活試験によって調べられた。sALPI-PLAPは、既に高度に改良された耐熱性(77.8℃において50%不活性化)を有するが、LVL-RecAPは、さらに熱不活性化に対する抵抗性が高い(80.6℃において50%不活性化)。
【0112】
実施例4
ラットにおけるLVL-RecAPの薬物動態的分布
Aパート ヨウ素125を用いる放射標識
sALPI-PLAP-CDタンパク質、およびLVL-RecAPタンパク質は、Greenwoodら*によって記載されたクロラミンT法を用いてヨウ素125で放射標識された。標識化の原理は、ヨウ素を原子ヨウ素への「in situ」酸化、およびチロシン残基の水酸基のオルト位置におけるフェノール環へのその求核置換に基づく。sALPI-PLAPタンパク質は、~0.5mCi/mgの最終比活性と、~1mg/mL(NaCl 0.9%)最終濃度を得るために、クロラミンT法を用いて放射ヨウ素標識された。
* F.C Greenwood, V.M Hunter, H.G Glover, The preparation of 131Ilabelled growth hormone of high specific radioactivity, Biochem. J.89 (1963) 114-123
【0113】
A.1 材料
sALPI-PLAPアルカリホスファターゼ(496.7U/mg)、およびLVL-RecAP(624U/mg)は、25%グリセロールw/v,5mM Tris,2mM MgCl2,50μM ZnCl2,pH8.0中において、6.34mg/mL濃度でAM-Pharma社によって提供された。sALPI-PLAPタンパク質、およびLVL-RecAPタンパク質は、4℃で保存された。
ヨウ素125放射性核種は、10-5N水酸化ナトリウムにおけるヨウ化ナトリウムとしてPerkin Elmer社から購入された(比活性:643.8 GBq/mg 放射性核種純度:99.95%)。
クロラミンT(N-クロロ-p-トルエンスルホアミド、MW227.6g/mol)、トリクロロ酢酸、二亜硫酸ナトリウム(MW 190.1g/mol)、およびチロシンは、Sigma社から購入された。
Tris緩衝液5mM pH8は、Chelatec研究室において作製された。0.9%NaClは、Versol(登録商標)社によって提供された。
【0114】
A.2 方法
850μgのタンパク質、約600μCiのNa125I、50μLのTris緩衝液、および10μLのクロラミンT(404.8nmol、50当量/タンパク質)は、1.5mLのLo-結合エッペンドルフチューブに連続的に添加された。室温において1分間撹拌されて反応させた。2μLの放射標識化培地は、5%MBS溶液に混合され、放射線標識化効率は、10%TCAを溶出液として用いるインスタント薄層クロマトグラフィー(ITLC)によって評価された(ストリップの底部においてアルカリホスファターゼが、およびストリップの上部で遊離の125-ヨウ素が溶出する)。30μLのチロシン溶液(水中で10mg/mL)を未精製混合物に添加した後、ヨウ素化sALPI-PLAP、およびヨウ素化LVL-RecAPは、0.9%NaClを用いて溶出されるゲル濾過(G10、GE Healthcare社)によって精製された。0.2mLの画分は、試験管に集められた。各画分の放射活性は、ヨウ素125放射性核種に較正された自動ガンマカウンター(Wallace Wizard 2470 Perkin Elmer社)で測定された。所望の放射ヨウ素標識製品を含む画分が貯えられた。放射標識化化合物の放射化学的純度は、ITLCによって検証された。
【0115】
A.3 放射標識化sALPI-PLAPタンパク質の結果、および特性
ITLCによって測定された放射標識の効率は、双方のタンパク質について85%を超えるものであった。G10精製後、標識化反応の放射性純度は、双方のタンパク質について97%を超えるものであった。
【0116】
G10精製後の放射標識化sALPI-PLAP溶液の特性は、表6にまとめられている。
【表6】
【0117】
A.4 アルカリホスファターゼ活性
放射標識化sALPI-PLAPの酵素活性は、ELISAによって評価された。
【0118】
材料
アルカリホスファターゼ比色分析キット(参照 ab83369 バッチ番号:GR118166-3)
0.9%NaCl中において0.25mg/mLで希釈された未標識組換えヒトアルカリホスファターゼ
0.9%NaCl中において0.25mg/mLで希釈された放射標識化組換えヒトアルカリホスファターゼ
【0119】
プロトコール
Abcam社のキットは、APによって脱リン酸化されたときに黄色(ラムダマックス=405nm)に変わるホスファターゼ基質としてp-ニトロフェニルホスフェート(pNPP)を使用している。キットは、試料中の10~250μU APを検出することが可能である。アルカリホスファターゼ比色分析アッセイは、未標識、および放射標識化sALPI-PLAPにおいて実施された。アッセイは、Abcam社によって提供されるプロトコールに記載されたように実施された。
要約すると、標準曲線は、pNPP標準物質の0~20nmol/ウェルから作成された(最終体積:120μL)。10μLのAP酵素溶液は、各ウェルに添加された。平行して、sALPI-PLAP試験試料は、アッセイ緩衝液中で15000および8000倍に希釈された。10および20μLの各希釈液が添加され、最終体積は、アッセイ緩衝液によって80μLとされた。続いて、50μLのpNPP溶液が、試験試料を含む各ウェルに添加された。標準物質、および試料反応物は、暗所にて25℃で60分間インキュベートされた。全ての反応は、20μLの停止液を用いて停止された。405nmにおけるO.D.は、マイクロプレートリーダにおいて測定された。pNP標準曲線が、作成された。試料の読み取り値は、標準曲線に適用され、AP試料によって生じたpNP量を得た。試験試料のAP活性は、算出することが可能である。
sALPI-PLAP活性(U/mL)=A/V/T×試験試料の希釈係数
A:試料によって生じたpNP量(μmol)
V:アッセイウェルに添加される試料の体積(mL)
T:反応時間(分)
sALPI-PLAP活性(U/mg)=sALPI-PLAP活性(U/mL)/sALPI-PLAPの濃度(mg/mL)
【0120】
結果
表7は、結果をまとめたものである。
【表7】
未標識および放射標識化sALPI-PLAPの酵素活性は、同様であり、約475U/mgである。したがって、sALPI-PLAPの活性は、クロラミンTを酸化剤として使用する放射ヨウ素標識によって弱められない。
【0121】
Bパート:健常ラットにおける125I-sALPI-PLAPタンパク質の生体内分布試験
B.1 材料
本試験において使用されたラット系統の特徴を以下に示す。
種 :Sprague Dawleyラット
系統 :Crl CD(登録商標)(SD)IGS BR
供給源 :Charles RIver社 フランス
匹数、および性別 :雄15匹
体重範囲/週齢 :試験開始時点において約250g
環境順化期間 :処置前5日間
識別方法 :群によるケージ識別(屠殺時)
【0122】
動物の管理
管理 :ラットは、処置前に動物施設において飼育され、処置後に放射能室において飼育された。
飼料 :無料のラット飼料。処置前の絶食期間なし。
水 :水道水をポリウレタンボトルによって自由に与えた。
飼育 :処置前に、動物は、標準的な条件でポリカーボネートケージに3匹の群で飼育され、試験番号、動物番号、性別、試験開始、および終了の日付を示すカードによって識別された。排出バランスについて指定された動物は、処置後に代謝用ケージに移された(ケージ毎に1匹)。
環境 :気温は、毎日記録された。室温は、22~24℃であった。人為的な照射サイクルを、自動タイマーを用いて制御した(10時間照射、14時間闇)
人員 :関与する仲間を、適宜選抜し、訓練した。
選別 :動物は、試験管理者によって受領したときに試験された。健康な動物のみが選択された。動物における炎症反応の任意の徴候(たとえば、腫瘍、皮膚炎など)について特に注意を払った。
【0123】
B.2 125I-sALPI-PLAP、および125I-LVL-RecAPの投与溶液
ヨウ化sALPI-PLAP、およびLVL-RecAP溶液は、in vivo投与の直前に0.9%NaCl中において0.25mg/mLで希釈された。
【0124】
B.3 試験計画
試験計画は、表8および9に示される。
【表8】
【表9】
【0125】
B.4 投与
実験の時点において、Sprague Dawleyラットの平均体重は、約240gであった。無麻酔のラットは、ラット毎に96μgのタンパク質量と、ラット毎に約58μCiの活性とに対応する400μg/kgの投与量で外側尾静脈(左側)に静脈内注射された。注入量は、約380μLであった。個々の投与量は、処置の日における各ラットの個々の体重を用いて算出された。ラットは、競合装置に置かれた。尾部の血管を拡張するために、尾部は、温かい水(45℃)に浸され、続いてアルコールで殺菌された。投与溶液は、尾静脈にゆっくりと注入された。各ラットが受けた実際の投与量を算出するために、注射器は、処置の前後で計量され、投与溶液の一定分量がガンマカウンターで計測された。
【0126】
B.5 様々な器官における分布
屠殺時において、動物は、ケタミン塩酸塩(50mg/mL)とキシラジン塩酸塩(20mg/mL)との混合物の2.5mL/kg体重の腹腔内注射によって麻酔された。ラットは、続いて、心臓穿刺による失血によって迅速に屠殺された。標的の器官は、摘出され、肝臓、胃、小腸、および大腸などの、2gを超える小片に切断された。各片は、その後、柔らかいティシュペーパーで水分をふき取られる前に生理的血清で洗われ、別々に計量され、計数された。選択された器官は、肝臓、腎臓、心臓、肺、脾臓、骨格筋、大腿骨、脳、甲状腺、胃、内容物を含む小腸、内容物を含む大腸、皮膚、および腎臓周囲の脂肪である。
【0127】
組織の放射活性の計測は、ヨウ素-125放射線核種について較正された(効率:74% 計測時間:10秒)自動ガンマカウンター(Wallace Wizard 2470 Perkin Elmer社)において行われた。
【0128】
器官/組織における放射活性の濃度は、組織のグラム毎の注入された投与量の百分率として表わされる。データ分析は、注入された投与量の百分率(%ID)と、器官または組織毎のタンパク質の当量とを含む。詳細に明らかにされた器官について、これらは、器官全体において計側された放射活性を用いて算出された。血液については、このことは、血液が、全体重の6.4%を占めることを仮定して行った。また、組織に残った放射活性と、血液中の放射活性との間の割合が計算された(割合 器官/血液)。最後に、sALPI-PLAPの器官/血液比、LVL-RecAPの器官/血液の割合との間の割合が計算された(
図2)。
【0129】
B.6 ラット血液および血清における分布
血液および血清の放射活性レベル
屠殺の時点において、血液試料は、PBS中におけるケタミン塩酸塩とキシラジン塩酸塩との混合物の腹腔内注入によって麻酔されたラットの心臓内穿刺による全採血から得られた。
【0130】
試験計画において示される他の時点(表8および9)において、血液は、麻酔なしで23ゲージのバタフライニードルを用いて外側尾静脈(右側)から抜き取られた。各血液試料は、凝結活性化剤を有する予め計量されたMicrovetteチューブに集められた(Sarstedt社)。
血液試料は、30分間にわたって室温においてインキュベートされ、続いて、それらは、5分間にわたって10000gで遠心され、血清を作製した。血清は、予め計量されたチューブに集められ、ガンマカウンターにおいて計側された。
【0131】
血中および血清における放射活性濃度は、1mLあたりの、注入量とsALPI-PLAPの当量との割合として表わされる。データ分析は、全血液および血清について注入され計算された百分率を含む。
【0132】
表10および11は、sALPI-PLAPおよびLVL-RecAPの血清放射活性に関してそれぞれ異なる器官において測定された放射活性の割合を示す。
図2は、LVL-RecAPの器官/血液の割合と、sALPI-PLAPの器官/血液の割合との割合を示す。2の割合は、たとえば、LVL-RecAPが、sALPI-PLAPとして示される器官に2回標的とされている。さらにまた、同一の投与量が使用されるとき、より高い割合は、LVL-RecAPの相対的にさらに高い活性が、特定の器官に見出されることを示している。
【表10】
【表11】
【0133】
実施例5
幼児型低ホスファターゼ症のAkp2-/-マウスモデル
幼児型低ホスファターゼ症Akp2-/-マウスモデルは、当該技術分野において公知である(J Dent Res 90(4):470-476, 2011)。簡潔に述べると、Akp2-/-マウスは、検出可能なTNALPmRNAまたはタンパク質をもたらさない、機能的に不活性化されたAkp2遺伝子への相同組換えによって、マウスTNALP遺伝子(Akp2)のエクソン6にNeoカセットの挿入によって作製された。動物の使用、および組織の摘出方法は、サンフォード・バーナム医学研究所動物倫理委員会の承認された手順に従った。動物は、ベヒクル(N=10)、1mg LVL-RecAP/kg/日(N=10)、8mg LVL-RecAP/kg/日(N=8)、または16mg LVL-RecAP/kg/日(N=10)で処置された。生存期間が測定され、骨格の発達が評価された。腎臓の石灰化が評価された。PPi、血漿ピリドキサール、血漿カルシウム、およびリン酸塩レベルが測定され、異なる処置群について大腿骨および/または脛骨の長さが、測定された。マイクロCTデータは、各投与量で残余の過類骨症の分析について集められた。
【0134】
結果
向上した長期生存期間 16mg/kg/日において処置された(
図3)。
最も高い投与量でさえ、長骨において骨格異常の(不完全な)レスキューが存在した(データは示されていない)。
歯の表現型においていくらかの回復が認められた(データは示されていない)。
頭蓋縫合早期癒合症の回復があると思われる(データは示されていない。以後確認される)。
腎臓の働きは、継続している。未処置マウスの腎臓におけるミネラルの徴候、および処置マウスの腎臓におけるミネラルの低下が認められた(データは、示されていない)。
【0135】
実施例6
ブタ腎臓モデルにおける虚血再灌流
材料、および方法
ベヒクル、コントロール、および試験品情報
コントロール、および試験品の作製
新鮮なコントロール品、LVL-RecAP希釈液(プラセボ)は、各投与量の投与に先だって試験における使用のために作製され、使用されないときは2~8℃で冷蔵保存された。
【0136】
試験品、LVL-RecAPは、受理されたとおりのもので使用された。試験品製剤を製造する際に、純度の調製はなされなかった。試験品の製剤は、無菌の生理食塩水の適切な体積と混合することによって作製され、0、0.96、または4.8mg/mlの公称濃度を達成した。製剤は、無菌装置、および無菌技術を用いて層流ドラフト中で各投与量の投与に先立って作製された。製剤は、適切な数のアンバーガラス血清ボトルに分注され、使用前に氷上で保持され、作製の2時間以内に投与のために使用された。時折、追加の作製を試験期間中必要に応じてなされた。
【0137】
投与する製剤の分析
集められ、0日目(群 3~7)、および7日目(群7)における製造の各日の投薬に先立って、最終投与製剤0.5mL試料が2回集められた。試料は、中央の層から集められ、起こり得る将来の分析のために凍結して(-50~-90℃)保存された。
【0138】
試験システム情報
動物の取得および順化
雄の実験的に天然のDomestic Yorkshire交雑ブタ(農場ブタ)(約8~10週齢、受入時)は、Midwest Research Swine, Gibbon, Minnesotaから受け取った。10~28日間の順化期間において、動物は、一般的な健康状態、および任意の疾患の徴候について毎日観察された。便試料における卵白アルブミン、および寄生虫の評価が行われ、全ての結果が、試験に採用された動物について陰性であった。
【0139】
ランダム化、研究への割り当て、および維持
別個の単純なランダム化手順を用いて、動物(ランダム化において12.5~25.0kg)を、以下の表12で識別されるコントロール群、および処置群に割り当てた。
【表12】
【0140】
試験のために選択された動物は、できるだけ週齢、および体重において同一であった。獣医師が、動物の健康状態を、試験に用いられる前に評価した。試験について得られが、試験に用いられなかった余分の動物は、ストックコロニーに移された。
【0141】
各動物は、Provantis(商標)データ収集システムにおいて使用される動物番号を付与され、固有の識別番号に関連付けられたマイクロチップを埋め込まれた。各動物は、売り主の耳票によって識別された。個々の動物番号、埋込番号、耳票番号、および試験番号は、各動物について固有に識別された。各ケージは、動物番号、試験番号、群番号、および性別によって識別された。
【0142】
動物は、高床の囲った場所で、またはプラスチック被覆された床のステンレススチールの移動可能ケージにおいて個別に飼育された。この種類の収納場所は、これらの動物ための運動用の適切な空間を提供した。動物エンリッチメントは、MPIリサーチSOPに従って提供された。蛍光照明は、1日あたり約12時間提供された。暗サイクルは、活動に関する試験が原因で、断続的に中断された。温度、および湿度は、それぞれ、61~81°F、および30~70%の範囲に指摘されるプロトコール内で可能な最大まで、連続的に、観察、記録、および維持された。実際の温度、および湿度の知見は、報告されていないが、試験ファイルにおいて維持されている。飼料(Certified Lab Diet(登録商標)#5K99, PMI Nutrition International, Inc.)は、計画された期間を除いて、限定された知見を介して提供された。繊維ビット、または錠剤などの飼料濃縮物は、必要に応じて提供された。
【0143】
手術手順
薬物療法に関する手順
以下の表13は、薬物に関する手順、および試験の期間に使用される投与量レベルを示す。
【表13】
【0144】
手術前後の手順は、MPI Research社の標準作業手順書に従って行われた。動物は、手術の少なくとも8時間前に絶食させ、麻酔が導入され、表13に示されるように維持された。体温は、37±3℃に維持された。手術前に、超音波が行われ、腎嚢胞が存在するか否か測定された。嚢胞が観察されない場合、左腎が取り除かれ、右腎が以下に記載されるように処置された。嚢胞が1つの腎臓に存在する場合、その腎臓は除去され、反対側の腎臓が閉塞処置を受けた。嚢胞が両方の腎臓に存在する場合、動物は、手術を受けることなく、試験から取り除かれた。
【0145】
手術手順
腎臓虚血/再灌流傷害は、Leeらによって公開された手順を用いて誘導された(J. Vet. Med. Sci 72(1): 127-130)。一度麻酔され、全ての動物は、背側横臥位に配置され、手術場所は、クロルヘキシジンスクラブおよび溶液で交互に拭き取り準備された。正中線開腹手術が行われ、両方の腎臓が暴露された。超音波所見に基づいて、左腎、または右腎が除去された。
【0146】
第2群の動物(シャム)については、挿入されたラップスポンジは、続いて除去されて処分され、腹部は、温かい塩化ナトリウムで洗浄された。腹部は、通常の方法で閉じられ、皮膚は、皮膚ステープル、および組織接着剤を用いて閉じられた。動物は、続いて回復させた。
【0147】
全ての他の動物について、指定の腎臓を除去した後、残った腎臓血管は、分離され、ベッセルループを用いて収縮された。ベッセルループは、45(±1)分間にわたって血管を閉塞するために使用され、その後血管は、再灌流された。コントロールの静脈内大量投与、または試験物質は、再灌流の直前に0.333mL/kgの投与量で投与された(半分の投与量0.167mL/kgが、第7群動物に投与された)。全ての第1群、第5群、および第6群の動物について(コントロール、0.32、および1.6mg/kg)、埋め込まれたラップスポンジは、続いて除去されて処分され、腹部は、上述のように、洗浄されて閉じられ、動物は、回復させられた。全ての第7群動物について(0.32mg/kg/日)、切開が鼠径部になされ、左側、または右側大腿静脈が分離された。カテーテルを血管内に進入させ、皮膚の下を抜けて胸部に作られた切開部を通って露出させた。出入口は、付着され、非吸収性の縫合によって筋肉に固定された。埋め込まれたラップスポンジは、続いて除去されて処分され、腹部は、上述のように、洗浄されて閉じられ、動物は、回復させられた。
【0148】
試験、またはコントロール品投与
0日目において、コントロール、または試験品は、それぞれ0、0.32、および1.6mg/kgの全投与量において再灌流する直前に、第1群、第5群、および第6群の全ての動物に静脈内に投与された。全ての投与量は、0.333mL/kgの投与量で投与された。0日目において、試験品は、2つの別の半分の投与量0.16mg/kg、0.167mL/kgの組み合わせた0.32mg/kgの投与量で、第7群の動物全てに静脈内に投与された。第1投与量は、再灌流の直前に投与され、第2投与量は、再灌流後、約8(±2)時間において投与された。0.32mg/kg/日の全投与量(0.333mL/kg)を、1日目~7日目に、最初の0日目とおおよそ同じ時間に(±2時間)第7群の動物全てに投与した。
【0149】
統計
以下の表14は、このセクションに記載された統計的分析において使用される比較の組み合わせを定義する。
【表14】
【0150】
生データは、各時間間隔内で表にされ、平均値および標準偏差は、各評価項目および各群について計算された。血清クレアチニン濃度について、処置群は、反復測定分析共分散(RMACOVA)を用いて参照群に比較された。
【0151】
反復測定分析共分散(RMANCOVA)
3点またはそれより多くの、試験後の時間間隔で測定された評価項目について、反復測定分析(混合モデル)が行われた。各評価項目について、前記モデルは、処置、時間、ならびに処置および時間の相互作用の効果について試験された。試験前データ(投与前の最後の測定値)は、共変数としてモデルに含まれた。
【0152】
処置と時間との有意な(p>0.05)相互作用がないときには、処置の主要な効果を評価した。処置の効果が有意ではない(p>0.05)場合、結果は、有意でないと考えられ、変形例についてのさらなる分析は行わなかった。処置の効果が有意である(p<0.05)場合、線型対比が、各処置群と参照群との対比較のために構成された。相互作用が有意である(p<0.05)場合、各処置群は、各時点についての「処置」の単純な効果による適切な参照群との比較を行った。これらの単一効果の対比較は、「処置と時間との」相互作用から得られた。
【0153】
全ての対比較の結果は、0.05および0.01有意水準において報告されている。試験はすべて、両側試験であった。
【0154】
結果
血清クレアチニン
図4に示されるように、予備試験値と比較して、全ての期間において、軽度から中程度まで増加したクレアチニンがあった。クレアチニンは、再灌流後24時間で最大に増加し、続いて後の期間にわたって徐々に減少する。クレアチニンの変化は、処置に伴う腎障害に続く糸球体濾過の低下に一致していた(データは示されていない)。大部分の投与群、および大部分の間隔において、試験品の投与は、クレアチニンの手順関連上昇を減弱させる傾向を有し、LVL-RecAPの保護的効果を示す。
図5において示されるように、予備試験値と比較して、再灌流後24時間で試験品を受けるすべての処置群におけるアルカリホスファターゼ(ALP)活性の投与量に依存する上昇があった。ALP活性は、≦1.6mg/kgを受けている処置群において徐々に減少したが、0.32mg/kg/日を受けている動物において連続的に増加し続けた。
【0155】
実施例7
ヒトにおける安全性試験
材料、および方法
目的:
健常な対象の静脈内(i.v.)注入によって投与された組換え改良アルカリホスファターゼ(LVL-recAP)の単回、および複数回の投与の安全性、および認容性を評価すること。 LVL-recAPを健常な対象に、単回および複数回i.v.注入した
後の、LVL-recAPの薬物動態(PK)を測定すること。
【0156】
計画、および処置
これは、計画人数50人の健康な対象における2部構成、単一施設試験である。A部は、任意に抽出された、二重盲検の、プラセボ対照の、単回投与試験(SAD)、8人の健康な男性および女性(6人のLVL-recAP、および2人のプラセボ)を対象とするそれぞれ連続した4つまでの、群における研究である。試験は、各群ごとに最小で2人、最大で4人の女性とともに、等しい数の男性および女性の被験者を各処置群に含めるように行われる。LVL-recAP、またはプラセボの単一用量は、1時間の静脈内注入によって投与される。パートBは、9人の健康な男性および女性の各対象(6人は、LVL-recAP、および3人はプラセボである)の最大2つの群における、ランダム化、二重盲検、プラセボ制御、反復投与試験(MAD)である。等しい数の男性および女性の対象を各処置群に含めるように試みられる。対象は、1、3および5日目において、LVL-recAP、またはプラセボの1時間静脈内注入を受ける。以下の処置が行われる。
パートA
第1群:200U/kg LVL-recAPの1時間注入
第2群:500U/kg LVL-recAPの1時間注入
第3群:1000U/kg LVL-recAPの1時間注入
第4群:2000U/kg LVL-recAPの1時間注入
パートB
第5群:第1、第2、および第3日目における500U/kg LVL-recAPの1時間注入
第6群:第1、第2、および第3日目における1000U/kg LVL-recAPの1時間注入
Aパートの、第1群の第9日目、および第2群の第4日目の終了後、中間PK評価が行われる。
結果に依存して、注入およびPK採取計画は、残りのSADおよびMAD群に合わせて調整されてもよい。
【0157】
このファーストインヒューマン試験において、パートA(第1群)における最も少ない投与量レベルで参加している対象は、最小のリスクを保証するセンチネル投与デザインに従って投与される。このことは、最初に2人の対象が投与を受けることを意味する。これらの対象の1人は、LVL-recAP活性薬物療法を受け、他の対象は、プラセボを受ける。最初の24時間の安全性、および許容度の結果が主要研究者に受け入れ可能である場合、最も低い投与レベルの他の6人の対象は、プラセボ制御されたランダム化法(5人活性、および1人プラセボ)で投与される。
【0158】
観察期間
Aパート:-1日目から薬剤投与後48時間(第3日目)まで。第4日目、第6日目、第9日目、および第15日目に、短期外来患者が臨床試験センターを訪問。
Bパート:-1日目から最後の薬剤投与後48時間(第7日目)まで。第8日目、第10日目、第13日目、および第19日目に、短期外来患者が臨床研究センターを訪問。
対象は、試験の各群の(最初の)薬剤投与の3週間前までに適格性についてスクリーニングされる。
追跡試験は、第15日目(パートA)、および第19日目(パートB)において行われる。
対象
パートA:32人の健康な男性および女性の対象
パートB:18人の健康な男性および女性の対象
算入の主要判断基準
性別:男性または女性
年齢:18~55歳、
ボディマス指数(BMI):18.0~30.0kg/m2、
【0159】
薬剤試験
活性薬剤
活性物質:LVL-recAP、内在性ヒトアルカリホスファターゼ(AP)の改良された組換え型
活性:リン酸のモノエステルの脱リン酸化の原因となるヒドロラーゼ酵素
徴候:急性腎障害
強度:600、1500、3000、および6000U/mL
投与形態:静脈内注入
製造元:PRA製薬
【0160】
プラセボ
物質:20mM クエン酸塩、250mM ソルビトール、2mM MgCl2、50μM ZnCl2、pH7.0
活性:なし
徴候:該当なし
強度:該当なし
投与形態:静脈内注入
製造業者:Nova Laboratories社, Gloucester Crescent, Wigston, Leicester, LE18 4YL, UK
【0161】
評価の判断基準
安全性:有害事象(AEs)、バイタルサイン(仰臥位の収縮期、および拡張期血圧、脈拍、体温、呼吸数など)、12-リード心電図(ECG)、連続的心臓モニタリング(遠隔測定)、臨床検査室(臨床化学[APは、PKパラメータと考えられる]、血液、および尿など)試験、身体検査、および抗薬剤抗体(ADA)
薬物動態学:LVL-recAP、およびAP活性の血清濃度分析に基づくPKパラメータ
【0162】
結果
全ての投薬群への投与および観察時間は、終了し、重篤有害事象は、どの群にも観察されなかった。全てのパラメータの分析は、進行中である。
【0163】
実施例8
材料および方法
マウス
Alpl-/-マウスの作製および特徴は、以前に報告された(Narisawa et al., 1997)。Alpl-/-マウスは、TNAPの包括的な欠乏を含む幼児型HPP、PPi蓄積、および石灰化異常のフェノタイプを示す。ビタミンB6を伴う栄養素補充は、短時間で癲癇を抑制し、出生後18日~22日まで生存期間を延ばすが、石灰化不全および類骨の蓄積は、加齢とともに悪化し続ける(Narisawa et al., 1997; Fedde et al., 1999; Narisawa et al., 2001; Millet al., 2008)。したがって、本試験における全ての動物(ブリーダー、看護母親、仔、および離乳仔)は、高レベル(325ppm)のピリドキシンを含むlaboratory rodent diet 5001に自由にアクセスすることができた。遺伝子型判定は、以前に記載されたように(Yadav et al., 2011)、ゲノムDNAにおいてPCRによって行われた。動物実験委員会(IACUC)は、全ての動物実験を承認した。
【0164】
可溶性キメラヒトアルカリホスファターゼ(LVL-RecAP)
25%グリセロールw/v、5mM トリス/HCl、2mM MgCl2、50μM
ZnCl2において10.1mg/mlのLVL-RecAP溶液、pH 8.0が使用された。酵素は、高圧液体クロマトグラフィーによって測定された>99.99%の純度を有していた。
【0165】
LVL-RecAPを用いる用量反応試験
Alpl-/-マウスは、5つのコホートに分けられた。ベヒクル処置:Alpl-/-マウスは、ベヒクルのみで処置された(n=14)。LVL-RecAP1:Alpl-/-マウスは、1mg/kg/日でLVL-RecAPを用いて処置された(n=14)。LVL-RecAP8:Alpl-/-マウスは、8mg/kg/日でLVL-RecAPを用いて処置された(n=12)。LVL-RecAP16:Alpl-/-マウスは、16mg/kg/日でLVL-RecAPを用いて処置された(n=10)。Alpl-/-マウスの野生型同腹仔は、参照動物として用いられ、注入を受けなかった(n=14)。ベヒクル、またはLVL-RecAPコホートは、毎日肩甲部に皮下注入された。注入薬は、AM8:00~11:00に投与された。投与された量は、注入前に測定された体重に基づいて計算された。全ての処置は、出生後1日から始まり、53日目まで、または剖検時まで毎日繰り返された。
【0166】
試料採取
剖検は、出生後53日目(p53)、実験プロトコールを終了した動物についてLVL-RecAPの最後の注入後24時間、または病状末期と考えられる動物に直ちに行われた。アベルチンは、安楽死の前に腹腔内に投与された。血液は、心臓穿刺によってリチウムヘパリンチューブに集められた。剖検は、肉眼所見試験、およびX線から構成された。
【0167】
X線検査、およびマイクロトモグラフィー(μCT)
骨格のX線撮影画像は、20kVのエネルギーを用いて、Faxitron MX-20 DC4 (Chicago, IL, USA)で得られた。片側下顎骨は、30kVでスキャンされた。
p21マウスから遊離された全ての頭蓋骨は固定され、続いてeXplore Locus SP イメージングシステム(GE Healthcare Pre-Clinical Imaging, London, ON, Canada)を用いて18μm 等方性ボクセル分解能でスキャンされた。測定値は、試料を180度プラス20度の送風角度で回転させるパーカー法スキャン技術を用いて1600msの暴露時間を用いて、80kVの作動電圧、および80mAの電流で取得された。スキャンは、ヒドロキシアパタイトファントムに較正され、3D画像は、18μm3の有効ボクセルサイズで再構築された。1400ハンスフィールドユニットの固定閾値が、石灰化組織を識別するために使用された。頭頂骨および前頭骨の関心領域(ROI’s)は、長さ1mm、幅1mm、骨の厚さに等しい深さ、ならびに矢状、および冠状縫合から0.75mmで始まる位置において、以前に記載されたように設定された(Liu et al., 2014)。骨の、体積、密度、および構造のパラメータは、Microview version 2.2 ソフトウェア(GE Healthcare Pre-Clinical Imaging, London, ON)を用いて測定され、アルゴリズムを設定された(Meganck et al., 2009; Umoh et al., 2009)。スチューデントt検定は、遺伝型の間における統計学的に有意な相違を立証するために行われた。μCTの骨データは、分析され、Bouxseinら 2010 (Bouxsein et al., 2010)の推奨に従って報告されている。
【0168】
歯科用画像について、切り出された片側下顎骨は、10μmのボクセルサイズにおいてScanco Medical 50(Scanco Medical AG, Bruettisellen, Switzerland)でスキャンされた。下顎骨のzスタックは、DICOMファイルとしてエクスポートされ、比較のために選択された切片の、冠状、矢状、および横断平面と同等のImageJソフトウェア(1.48r)を用いて再配置された。定量分析のために、下顎骨は、0.36度回転段階(180度の角度範囲)と、ビュー毎に400ms曝露とで、6μmのボクセルサイズ、55KVp、145mAにおいてScanco Medical 35でスキャンされた。Scanco ソフトウェア(HP, DECwindows Motif 1.6)は、3D再構築、および画像観察のために使用された。3D再構築後、歯冠、エナメル質、歯根、および歯槽骨の体積は、世界的な閾値0.6g/ccを用いて分割された。全体積(TV)、骨(石灰化組織)体積(BV)、および組織石灰化密度(TMD)は、全歯冠について、ならびに分岐部領域におけるエナメル質、歯根象牙質、および歯槽骨について別個に測定された。エナメル質および歯根について、厚さも測定された。
【0169】
組織学的分析
骨試料は洗浄され、4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝液生理食塩水中において3日間にわたって4℃で固定され、続いて70%エタノールに移され4℃で保存された。プラスチック切片を以前に記載したように作製した(Yadav et al., 2012)。フォンコッサ、およびヴァンギーソンのトリクローム染色を、以前に記載されたように(Narisawa et al., 1997)プラスチック切片に行った。フォンコッサ、またはヴァンギーソン染色された切片は、ScanScopeXTシステム(Aperio社, Vista, CA, USA)によってスキャンされ、
画像は、Bioquant Osteoソフトウェア(Bioquant Osteoanalysis社, Nashville, TN, USA)を用いることによって分析された。組織学に用いられた右側下顎骨は、以前に記載されたように(Foster, 2012)、ブアン固定液中で24時間にわたって固定され、続いてAFS溶液(酢酸、ホルムアミド、塩化ナトリウム)中で鉱質除去され、連続切片作製のためにパラフィン中に包埋された。ピクロシリウスレッド染色のために、脱パラフィン化組織切片は、以前に記載されたように(Foster, 2012)、リンモリブデン酸水和物、0.4%ダイレクトレッド80、および1.3% 2,4,6-トリニトロフェノール(Polysciences社, Warrington, PA)の0.2%水溶液を用いて染色された。ピクロシリウスレッド染色された切片は、顕微鏡写真撮影のために偏光下で観察された。
【0170】
バイオメカニカル試験
筋組織の除去後、大腿骨、脛骨、上腕骨、および橈骨の長さは、カリパスを用いて測定された。骨は、凍結され、脱水を回避するために生理食塩水を含むガーゼで包まれた。分離された大腿骨および脛骨は、以前に記載されたように(Huesa et al., 2011)、Instron 1101 万能材料試験機を用いて、3点屈曲試験で評価された。骨は、試験の前にゆっくり解凍され、室温で維持された。未処置の大腿骨および脛骨は、15mmの距離で離れた2つの支持体上の試験装置に置かれ、骨幹の中央に負荷が加えられ、このようにして2mm・min-1の速度における3点屈曲試験を構築した。
【0171】
PPiアッセイ
血漿におけるPPi濃度は、記載された(Hessle et al., 2002; Yadav et al., 2014)ように、反応産物6-ホスホ[6-3H]グルコネートからUDP-D-[6-3H]グルコース(Amersham Pharmacia社)の活性炭上の示差吸収によって測定された。
【0172】
統計
異なる生存率をもたらすLVL-RecAPの異なる濃度を考慮して、年齢をマッチさせた方式で3つの処置コホートを比較することが可能である。この理由によって、スチューデントt不対パラメトリック、両側試験が行われ、処置されたAlpl-/-マウスとWTコホートとを比較した。p<0.05である場合、相違は、有意であると考えられる。処置コホート間の生存曲線における相違を比較するために、Gehan-Breslow-Wilcoxon検定が行われた。
【0173】
結果
LVL-RecAP処置されたAlpl
-/-マウスにおける生存期間および体重の増加
LVL-RecAPの、8mg/kg/日(LVL-RecAP8)、または16mg/kg/日(LVL-RecAP16)を受けたマウスにおける生存期間は、ベヒクル処置された、および1mg/kg/日(LVL-RecAP1)コホートに比べて有意に向上した(p=0.001)(
図6A)。処置されたコホートの生存曲線を互いと比較したとき、相違は統計学的に有意であった(全ての比較について、p<0.0001)。生存期間中央値は、LVL-RecAP8、LVL-RecAP1、およびベヒクル処置コホートにおいて、それぞれ44日、22日、および19日であった。LVL-RecAP16コホートについて生存期間中央値は、算出されなかった。なぜなら、動物は、53日目の実験終了まで生存したからである。Alpl
-/-動物の重量は、p7あたりから始まり、それらのWT同腹仔よりも軽量である。1mg/kg/日のLVL-RecAPを用いる処置は、ベヒクル処置マウスに比べて統計学的に有意な体重増加をもたらし、処置の18日目においてWT同腹仔に比べて有意でない相違をもたらした。Alpl
-/-マウスは、ビタミンB6食餌におけるp18~24で通常死亡し、したがって、より長く生存するLVL-RecAP8と、LVL-RecAP16コホートとの比較は不可能であり、これらは、代わりにWTマウスと比べられた。LVL-RecAP8コホートの動物は、p18からそれらのWT同腹仔よりも有意に軽量であった(
図6B)が、LVL-RecAP16コホートにおけるマウスは、体重における標準化を示し、p53におけるWTマウスから区別されなかった(
図6B)。
【0174】
LVL-RecAP処置は、Alpl
-/-マウスの骨格表現型を向上する。
未処置のAlpl
-/-マウスのX線写真(
図7A)は、以前に記載されたように(Yadav et al., 2011)、低下した組織ミネラル密度、および骨折などの重度の骨格異常を示した。我々は、18日間にわたって1mg/kg/日のLVL-RecAPを受けたAlpl
-/-マウスにおいて骨格表現型が改善しており(
図7A)、利益は、LVL-RecAP8、およびLVL-RecAP16コホートにおいてより顕著である(
図7B)ことを見出した。四肢遠位部は、投与量に関わらず正常の形態を示したが、全ての処置コホートについて、脊椎、前肢、後肢、および胸郭において部分的な補正が観察された。LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16マウスは、大腿骨および脛骨において、軽いクラックまたは骨折も示した。膝および肘の間接外形は、p44およびp53において、それぞれLVL-RecAP8およびLVL-RecAP16における不規則性を示した(
図7)。
骨軟化症の改善の程度を評価するために、我々は、LVL-RecAP-処置されたマウス、およびWTコントロールマウスの後肢のプラスチック包埋脱灰切片の組織形態計側的分析を行った(
図8Aおよび9A)。我々は、骨および類骨体積を測定し(
図8B、8C)、血清PP
iレベルを分析した(
図9B、9C)。初期の知見(Yadav et al., 2011)と一致して、フォンコッサ染色は、Alpl
-/-マウスが、石灰化、薄い皮質骨、減少した海綿骨、および損傷した骨化中心において重度の異常を示すことを明らかにした(
図8A)が、LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16処置された動物は、双方とも、顕著に、増加した皮質骨、および改善した二次骨化中心を示した。組織形態計側(
図8B、8C)は、BV/TV割合(
図8B)が、LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16コホートの双方において、同一齢のWTコントロールよりも顕著に低いままであることを明らかにした(0.0321、および0.0302、N=9)が、OV/BV百分率(
図8C)は、双方の処置コホートにおいて、WTコントロールに比べて顕著に高かった(0.0001および0.0175、N=9)。LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16処置コホートの間の相違は、統計学的に有意ではなかった。後肢のプラスチック切片の組織学的なトリクローム染色(
図9A)によって、これらの知見が裏付けられた。Alpl
-/-マウスは、類骨蓄積によって特徴付けられる皮質骨および海綿骨における欠損とともに、重度に減少した石灰化骨質量(緑染色領域)を有する。これに対して、53日齢のWTコントロールは、二次骨化中心、および骨表面における少ない類骨中に、頑強な皮質骨、海綿骨を有する。LVL-RecAP8およびRecAP16コホートにおけるAlpl
-/-マウスは、特にLVL-RecAP16コホートにおいて、皮質骨の有意な改善を示し、WTマウスに比べて主な相違を示さなかった。Alpl
-/-マウスにおける二次骨化中心における海綿骨形成は処置によって増加するが、LVL-RecAP8およびLVL-RecAP16マウスは、類骨の正常領域(赤色)よりも大きいままであった。骨格の知見と一致して、我々は、全ての処置コホートにおける血清PP
i濃度が補正されていることを見出した。LVL-RecAP1動物(
図9B)は、ベヒクル処置されたコントロール動物に比べて、有意に減少したPP
iレベルを有していると思われる。LVL-RecAP16処置動物は、WT同腹仔と統計学的に区別することができないPP
iレベルを有する。
【0175】
LVL-RecAP処置されたAlpl
-/-マウスにおける顔面頭蓋奇形の欠如
Alpl
-/-マウスは、顔面頭蓋形状異常、および冠状縫合融合の特徴を示す(Liu et al., 2014)。Alpl
-/-マウスにおける処置によって影響を受ける顔面頭蓋骨格の範囲を測定するために、我々は、前頭骨および頭頂骨のμCTに基づく分析を行った。p21における結果は、ベヒクル処置Alpl
-/-マウスの前頭骨および頭頂骨の双方において、WT、またはAlpl
-/-マウスに比べて、骨体積画分、骨塩量、骨密度、組織ミネラル含有量、および組織ミネラル密度が有意に減少したことを示す(表15)。これに対して、処置されたAlpl
-/-マウスの前頭骨も頭頂骨も、野生型のものと有意に異なるものではなかった。LVL-RecAP16処置されたAlpl
-/-マウスの成体頭蓋骨は、寸法および形状の点でWTと相違がないようであった。
【表15】
【0176】
LVL-RecAP処置は、Alpl
-/-の歯槽欠損を部分的に回復する。
マウスにおけるAlpl遺伝子の除去は、HPPに罹患したヒト被験者の症例報告と一致して、セメント質、象牙質、歯槽骨、およびエナメル質における発育上のミネラル欠乏をもたらす(Foster et al., 2014a; Foster et al., 2014b; McKee et al. 2011; Yadav et al., 2012)。無細胞セメント質の欠如は、HPPの特徴である、歯根表面への歯根膜付着の損失、および未成熟な歯の脱落をもたらす。LVL-RecAP8処置された、およびベヒクル処置されたAlpl
-/-マウスは、大臼歯形成の完了近くに、p25~26のWTと比較された。X線検査、およびμCT画像は、未処置のAlpl
-/-マウスの下顎骨が、コントロールに比べて(
図11A、D)、全体的に石灰化不全の骨、薄い象牙質および広い髄腔の短い大臼歯、ならびに重度に欠損した切歯の特徴を示す(
図11B、F)。組織学的検査によって、Alpl
-/-マウスの歯は、無細胞セメント質が無いことによって特徴付けられ、歯槽骨類骨は、歯根膜(PDL)腔に侵潤し、強直、および機能的な歯根膜の損失をもたらす(
図11G 対
図11E)。8mg/kg/日のLVL-RecAP投与は、p26における、大臼歯の高さ、象牙質の厚さ、および骨石灰化のX線検査の外観を改善するが、切歯は、欠損したままである(
図11C、H)。組織学的に、LVL-RecAPのこの投与量は、無細胞セメント質を回復しないが、大臼歯に付随するPDL腔と、歯槽縁は、良好に維持された(
図11I)。LVL-RecAP16コホートは、p50~53においてWTと比較され、成熟した歯の構造および機能における影響を判断された。X線検査およびμCT画像は、Alpl
-/-マウスの下顎骨における大臼歯周囲の、歯槽骨および隣接面の骨石灰化の低下を示した(
図11J~M)。大臼歯の形状および象牙質は、LVL-RecAP16マウスにおいて大部分標準化されたように見え、このことは、第1大臼歯のμCT分析によって確認された。LVL-RecAP16群におけるエナメル質は、BV/TVまたはTMDにおいて、WTと相違がなかった。大臼歯の歯冠および歯根は、WTに比べて、BV/TVおよびTMDにおいて4~10%の、軽度であるが、有意な減少を示し、このことは、象牙質の石灰化が完全に回復しなかったことを意味し、歯根の厚さは、15%減少した。歯槽骨の石灰化は、WTに比べて、LVL-RecAP16群においてより重度に欠損したままであり、BV/TVは、27%減少し、TMDは13%減少した。処置されたAlpl
-/-マウスにおける切歯も、重度に影響を受けたままであった(
図11K,M)。 組織学的検査によって、LVL-RecAP16マウスは、石灰化された歯槽骨および類骨の混合、ならびに低下したが、維持されたPDL腔の特徴を示した(
図11N,P)。p53までにLVL-RecAP16群において、歯の損失は確認されなかったが、セメント質の欠如、PDL組織崩壊、および歯根表面からの脱離、ならびに付着上皮の成長鈍化によって証明されるように、歯周組織の付着は欠損したままであった。しかし、歯にPDLが付着した小さな領域が、組織化されたPDL繊維と関連して確認され(
図11O,Q)、このことは、大臼歯を保持するように機能し得るいくらかの易感染性付着の存在を示している。
【表16】
【0177】
実施例8についての参考文献
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【0178】
実施例9
アルカリホスファターゼは、腎臓の炎症を防ぐ。
方法
細胞培養
通常、ciPTECは、33℃で培養された(Wilmer, 2010)。細胞は、サルウイルス40T抗原と、ヒトテロメラーゼの必須触媒サブユニットとともに遺伝子導入され、一定に増殖された。細胞は、ITS(5μg/ml インスリン、5μg/ml トランスフェリン、5ng/ml セレニウム;Sigma-Aldrich社, Zwijndrecht, The Netherlands)を追加した、フェノールレッドフリーのDMEM/Ham F-12(Gibco社, Paisly, United Kingdom)において培養された。実験の前に、細胞をウェルプレートに播種した(48400細胞/cm2)、33℃で1日間、続いて37℃で7日目の成熟期まで培養した。実験の日、細胞は、2時間にわたってLVL-RecAPを用いて(1、5、または10U/ml、AM-Pharma社, Bunnik, The Netherlandsから提供された)プレインキュベートされ(Kiffer-Moreira, 2014)、続いて10mM HEPES HBSS、pH7.4(HEPES: Roche Diagnostics社, Mannheim, Germany; HBSS: Gibco社)に溶解された10μg/ml LPSを用いて24時間にわたってインキュベートされた。また、10U/ml LVL-RecAP(~17μg/ml)を、LPS誘導細胞に対して、同時、または2時間後に投与した。コントロール細胞は、培養培地と共に単独でインキュベートされた。DLPS(E. coli 055: B5; Sigma-Aldrich社, 10μg/ml)および不活性のLVL-RecAP(17μg/ml、AM-Pharma社から提供された)は、ネガティブコントロールとして使用された。異なる実験において、LPSは、ヒトTNF-α組換えタンパク質、またはPBMCの上清に置換され、LPSの有無で24時間にわたって前刺激された。全ての実験(n=5)は、最小限で行われ、二度実施された。
【0179】
末梢血単核球細胞の単離
PBMCは、Ficoll-Pague Plus(GE Healthcare社, Diegem, Belgium)を用いる分画遠心分離によって健常な血液ドナー(blood bank Nijmegen, n=5)から得られた軟膜から単離された。PBMCは、0.5mg/mlゲンタマイシン(Sigma-Aldrich社)、1mM ピルビン酸(Gibco社)、および2mM glutamax(Gibco社)で強化されたRPMI-1640培地(Gibco社)において再懸濁された。細胞は、96ウェルプレートに0.5×106細胞/ウェルの密度で播種され、AP(10ユニット/ml)の有無で2時間プレインキュベートされ、続いて24時間にわたってLPSインキュベーション(1ng/ml)された。全ての実験は、二度行われた。
【0180】
ATP測定、および細胞生存アッセイ
上清は、LVL-RecAP前処理の有無に関係なくLPS投与の30分後に集められ、続いて、製造業者のプロトコールに従ってATPバイオルミネッセンスアッセイキットCLS II(Roche Diagnostics社)を用いてATP産生を直接測定した。細胞生存は、MTTアッセイを行うことによってLPS培養の24時間後に評価した。要約すると、培地は、37℃で3時間にわたって予め温められた100μlのMTT溶液(Sigma-Aldrich社; 培養培地において0.5mg/ml)に置き換えられ、続いて200μlのDMSOを、可溶化された細胞内沈殿ホルマザン結晶に添加した。色素の消退は、670nmの波長補正を用いて570nmにおいて測定された。
【0181】
動物モデル
動物実験は、国立衛生研究所のガイドラインに従って行われ、プロトコールは、動物実験審査委員会によって承認された。特定病原菌フリーの雄スプラーグドーリーラット(RjHan:SD; Janvier, France)は、プラセボ(n=6)、LPS(n=6)、またはLPS + LVL-RecAP(n=6)の3つの群に分けられた。基準の血漿試料(リチウム-ヘパリン血液)は、実験の7日前にMultivette(Sarstedt社, Etten-Leur, the Netherlands)を用いる尾静脈穿刺によって集められた。実験の3日前に、基準の腎臓機能をFITC-シニストリン t1/2として評価した(Schock-Kusch, 2011)。t=0において、プラセボ(0.9% NaCl、生理食塩水)、または0.3mg/kg BW LPS(生理食塩水に溶解されたE. coli 0127:B8)を、静脈内ボーラスとして投与し、LPS誘導腎不全を誘導した。t=1.5時間において、上述のように、血漿を得た。t=2時間で、ラットは、プラセボまたはLVL-RecAPの静脈内ボーラス(生理食塩水に希釈された1000U/kg BW)を受け、腎臓機能の第2測定がそれに続いた。t=5時間で、全ての動物は、脱水症状を防ぐために5mlの生理食塩水(皮下注入)を受け、16時間の尿採取期間がそれに続いた。t=21.5時間において、第3の経皮的測定が行われた。t=24時間において、ラットを麻酔し(腹腔内、3mg/kg BW キシラン、および80mg/kg BW ケタミン 10%)、血漿を得るために球後リチウム-ヘパリン血液試料を取り除き、全身灌流を開始した(6分間、生理食塩水+50IU/ml ヘパリン、210mbar;3分間、4%パラホルムアルデヒド(PFA;210mbar))。生理食塩水の灌流後、右腎は、注意深く取り除かれ、迅速に凍結され、処理まで-80℃で保存された。左腎は、PFA灌流後に除去され、組織学的検査および免疫組織化学的検査のための処理まで4%PFA中で4℃において保存された。LPS + LVL-RecAP群に由来する1匹の動物と、プラセボ群に由来する1つの尿試料とは、それぞれ注入および回収の困難性が原因で排除された。
【0182】
腎機能の測定
腎機能は、以前に発表されたように(Schock-Kusch 2011, Schock-Kusch 2009)、新規の測定装置を用いることによって、GFRの市販マーカ、FITC-シニストリンの、経皮的に測定された排泄動態によってフリームービング覚醒ラットにおいて評価された(Fresenius Kabi社, Linz, Austria)。要約すると、ラットをイソフルラン吸入によって麻酔し(5%誘導、1.5~2%維持;Abbott Laboratories社, Illinois, USA)、背中の毛を剃った。装置の光学部は、特に設計された両面接着パッチを用いてこの脱毛領域に固定された(Lohmann社, Neuwied, Germany)が、装置の電子部は、げっ歯類用ジャケットに組み込まれた(Lomir Biomedical社, Malone, USA)。基準シグナルの設定後、FITC-シニストリン(100g BWあたり5mg、緩衝生理食塩水中に希釈した)を尾静脈に注入した。その後、注入後約120分間にわたって測定を継続する間に動物を麻酔から回復させた。T1/2は、経皮的に測定されたFITC-シニストリン排泄動態に適用された一分画モデルによって計算された(Schock-Kusch, 2009)。また、腎機能のパラメータは、Hitachi 704自動分析機(Boehringer Mannheim社, Mannheim, Germany)を用いて、血漿および尿試料において測定された。分画された尿素排出量および内在性クレアチニンクリアランス値は、t=1.5およびt=24の平均血漿値を用いて計算された。
【0183】
組織学的検査、および免疫組織化学的検査
少なくとも24時間の固定後、組織は処理され、paraplast中に包埋され、3μMの厚さで切片にされた。通常の組織学的検査のために、HE染色を腎臓組織に行った。腎障害は、0~4のスケールで点数化して評価された(0=変化無し、4=重度の損傷、たとえば顕著な尿細管細胞変化)。KIM-1は、ヤギ抗ラットKIM-1一次抗体(1:50; AF3689, R&D Systems社, Abingdon, UK)、およびウサギ抗ヤギIgG(1:200; P0449, DAKO社, Heverlee, Belgium)によって検出された。免疫染色は、VECTASTAIN Eline ABCシステム試薬(Vector Labs社, Amsterdam, Netherlands)、および3,3’-ジアミノベンジジン(DAB, Sigma-Aldrich社)、続いてヘマトキシリン対比染色によって可視化された。全ての点数化は、盲検法で行われた。
【0184】
サイトカイン、および腎障害マーカ
ヒトELISAキット(R&D Systems社)は、製造業者の説明書に従って、上清におけるTNF-α、IL-6、およびIL-8を測定するために使用された。血漿サイトカインレベル(IL-1β,IL-6,IL-10,TNF-α,INF-γ)は、製造業者の説明書(Millipore社, Cork, Ireland)に従って、同時ルミネックスアッセイによって測定された。KIM-1およびNGALは、製造業者の説明書に従ってELISA(R&D Systems社)によって測定された。
【0185】
組織均質化
迅速に凍結された腎臓は、製造業者の説明書に従って、コンプリートEDTAフリープロテアーゼインヒビターカクテルタブレット(Roche Applied Science社, Almere, The Netherlands)を添加した組織タンパク質抽出試薬(T-PER; Thermo Scientific社, Rockford, USA)中において、TissueLyser LT(Qiagen社, Venlo, The Netherlands)によって均質化された。総タンパク質含有量は、ビシンコニン酸タンパク質アッセイキット(Thermo Scientific社)を用いて測定され、試料は、-80℃でアッセイまで保存された。
【0186】
リアルタイムPCR分析
RNAは、凍結された細胞ペレット、または微粉砕された腎臓からトリゾール試薬を用いて抽出された(2000,30秒; Mikro-dismembrator U, Sartorius Stedim Biotech社, Aubagne Cedex, France)。RNAは、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MLV)逆転写酵素(Invitrogen社, Breda, The Netherlands)を用いてcDNAに逆転写された。リアルタイム定量PCR(RQ-PCR)は、Taqman(登録商標)(Applied Biosystems社, Carlsbad, USA)を用いて行われた。遺伝子を増幅し、GAPDHの発現について標準化した(ciPTEC:Ct:18.9±0.1;腎臓組織:Ct:24.8±0.2)。PCR反応は、50℃の2分間インキュベーションステップで開始し、続いて10分間95℃の初期変性、および15秒間95℃の40サイクル、および1分間60℃で行った。群の間の相違は、比較ΔΔCt法によって計算された。プライマー/プローブの組み合わせは、表17にまとめた。
【0187】
尿中のプリン含有量
尿中の、アデノシン、AMP、ADP、ATP、およびcAMP含有量は、HPLCによって測定された。要約すると、4体積の尿を1体積のクロロアセトアルデヒド(1M 酢酸緩衝液に6×希釈、pH4.5、Sigma-Aldrich社)に混合し、誘導体化(60分間、70℃、500rpm)、および遠心分離(3分間、室温、13400rpm)し、その後、上清をHPLCバイアルに移し、注入した。プリン体は、溶出液A(0.1M K2HPO4,10mM TBAHS(pH6.5)、および2% MeOH)、および溶出液B(H2O:ACN:THF;50:49:1)を用いるグラジエント溶出によって、Polaris C18-A カラム(150×4.6mm)を用いるHPLCシステム(Thermo Scientific社)によって分離された保持時間は、7.1分間(アデノシン)、8.4分間(AMP)、12.5分間(ADP)、16.2分間(ATP)、および14.8分間(cAMP)であった。定量化は、試料のピーク領域、および蛍光によって測定された標準試料に基づいた(励起:280nm;発光:420nm)。
【0188】
統計分析
データは、平均値±SEM、または中央値として表わされる[第25パーセンタイル、第75パーセンタイル]。データの正規性は、コルモゴロフ-スミルノフ検定によって評価された。群間の統計学的な相違を、ボンフェローニの多重比較試験を用いるポストホック比較によるANOVAによって、またはDunnのポスト試験によるKruskal-Wallis試験によって、評価した。0.05未満の両側p値は、統計学的に有意であるとみなされた。全ての試験は、WindowsのGraphpad Prism 5.00を用いて行われた(Graphpad Software社 San Diego, CA, USA)。
【0189】
LVL-RecAPは、in vitroにおいてLPS誘導炎症反応を弱める。LVL-RecAPによるヒトciPTECの前処置(Wilmer, 2010)は、遺伝子およびタンパク質レベルにおける、TNF-α、IL-6、およびIL-8の、LPS誘導サイトカイン産生を、容量に依存して減弱した(
図12A-B)。解毒されたLPS(dLPS)は、ネガティブコントロールとして使用され、影響を与えなかった。LVL-RecAPが、LPSと同時、またはLPS曝露の2時間後に投与されたとき、タンパク質レベルにおける同様の抑制結果が得られた(
図12C)。コントロール実験は、LVL-RecAPが、培地に排出されたサイトカインを脱リン酸化するか否かを確かめるために行われ、これはそのようなものではなかった(
図17)。サイトカイン産生のLVL-RecAP誘導減少が、酵素の脱リン酸化特性によるものであることを確かめるために、加水分解特性を欠く不活性なLVL-RecAPの効果を調べた。不活性LVL-ResAPは、ciPTECにおけるLPS誘導炎症反応を減弱しない(
図12D)。
【0190】
LVL-RecAPのin vitroにおける効果は、腎臓特異的であり、LPS誘導炎症に限定されない。
LVL-RecAPの腎臓保護機能をさらに調べるために、ciPTECは、仔ウシIAPによって脱リン酸化することができないプロ炎症性サイトカインTNF-αと共にインキュベートされた(Chen, 2010)。IL-6およびIL-8のTNF-α誘導サイトカイン産生も、LVL-RecAP前処理によって減弱したが、不活性LVL-RecAPは効果が無かった(
図13A)。敗血症随伴性AKIの病態形成において、LPSは、PTEC上に発現したTLR4に対する結合を介して局所的な炎症反応を誘導する(ciPTEC Ct: 30.5±3.9;n=5)。疾患の他の特徴は、全身の炎症反応であり、腎臓上皮、および内皮細胞の双方に影響を与え、AKIの発症の原因となる(Peters, 2014)。このエンドトキシン誘導腎臓炎症を模倣するために、ciPTECを、LPS刺激された末梢血単核球細胞の上清とともにインキュベートした(PBMC、1ng/ml LPS)。これは、IL-6およびIL-8の産生を誘導し、ciPTECがLVL-RecAPとともに前処理されたとき減少した(
図13B、TNF-αは検出されなかった)。TNF-αによって媒介される炎症性反応は、LVL-RecAP処置によって減弱するとの知見と共に、このことは、LVL-RecAPによって標的とされる他の介在物質の存在を示唆する。これに対して、LVL-RecAPを用いるPBMCの前処理は、これらの細胞におけるLPS誘導炎症反応に影響を与えなかった(
図13C)。このことは、LVL-RecAPの効果が腎臓特異的であることを示している。
【0191】
LVL-RecAPは、ATP/アデノシン経路を介して、腎臓保護性のin vitro効果を発揮する。
LVL-RecAPの第2の潜在的標的は、たとえば炎症および低酸素症によってもたらされる細胞ストレスの間に放出されたATPである(Eltzschig, 2012)。細胞外ATPは、有害な効果を有するが、エクトヌクレオチダーゼ(たとえば、AP)によって、ADP、AMP、および最終的にアデノシンに変換することができ、アデノシン受容体A1、A2A、A2B、およびA3の1つに対する結合を介して抗炎症および組織保護効果を発揮する(Bauerle, 2011, Di Sole, 2008)。興味深いことに、ciPTECにおけるアデノシン受容体A1、A2B、およびA3の発現は、LPSインキュベーションによって影響を受けない(データは示されていない)が、A2A発現は、LPS刺激下において上方制御された(倍率:4.1±0.4;プラセボに比べてp<0.001)。この効果は、LVL-RecAP同時処理によって減弱し(倍率:2.9±0.2;プラセボに比べてp<0.001;LPSに比べてp<0.05)、LVL-RecAPの保護効果におけるアデノシン経路の役割を示唆する。さらに、我々は、LPSインキュベーションに続いて細胞外ATP濃度増加を観察した。これは、より高いLPS濃度でさらに明確であったが、LVL-RecAPのプレインキュベーションによって反転した(
図14)。LPSは、24時間まで細胞生存率に影響を与えなかった(データは示されていない)。このことは、LVL-RecAPは、ATP/アデノシン経路を介する腎臓保護効果を発揮し得るとの仮説を支持する。
【0192】
ラットにおけるLPS誘導AKIの間にLVL-RecAP処置は、腎機能障害を減弱する。
in vivoにおけるLVL-RecAPの有利な効果を確認するために、AKIは、ラットにおいてLPS(0.3mg/kg BW)によって誘導され、腎臓機能は、以前に報告されたように(Schock-Kusch, 2011)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-標識化シニストリン動態の経皮測定によって評価された。FITC-シニストリンは、濾過のみによって腎臓で除去され、血漿画分からのその消失は、リアルタイムで経皮的に測定することができる。このことは、一般的に使用されるクレアチニンクリアランス値に比べてより正確な方法でAKIの進行を調べることを可能にする。LPS注入前に、ベースライン血液試料は、臨床パラメータ、および血漿サイトカインを測定するために取得され、ベースラインFITC-シニストリン半減期(t
1/2)は、群間の均一性を確認するために、測定された動態から決定された(データは、示されていない)。1.5時間後、LPS処置は、血漿サイトカインレベルの増加、いくつかの血漿パラメータにおける異常(表18)、立毛、下痢、および自発活性の低下をもたらしたので、全身性炎症の存在を裏付けている。LPS投与の2時間後、ラットは、LVL-RecAP(1000U/kg BW)またはプラセボ(生理食塩水)で処置され、次いで経皮的な腎機能測定が行われた。LPSは、FITC-シニストリン t
1/2を有意に遅延し、腎機能の有意な減少を明らかにした。この傾向は、LVL-RecAP処置によって減弱された(
図15A)。全ての群において、腎機能は、24時間以内に完全に回復した(
図15B)。さらに、血漿尿素レベルは、LVL-RecAPなしにLPSを受けた動物に比べて、LVL-RecAP処置された動物において有意に低下した(表19)。また、LVL-RecAP処置は、分画された尿素排出量のLPS誘導性増加(
図15C)と、内在性クレアチニンクリアランスのLPS誘導性減少(
図15D)とを抑制した。LVL-RecAP生理活性は、血漿において確かめられ、注入の22時間後に8倍の増加を示した(プラセボ:293±12U/ml; LPS: 260±13U/ml; LPS+AP:2150±60U/ml;p<0.0001)。
【0193】
LVL-RecAPは、in vivoにおけるLPS誘導性AKIの間に腎障害を抑制する。
LPS誘導性AKIにおけるLVL-RecAPの腎臓保護効果は、腎臓の組織学的検査、および特定の尿細管損傷マーカの評価によって、さらに調べられた。処置された群の間において、組織学的検査における相違は、見出されなかった。損傷無しの範囲内の変化(0)、近位尿細管細胞の、泡沫状の外観、およびわずかな膨張のような変性変化まで(1)、泡沫状の外観および中程度の膨張、ならびに少数のアポトーシス(2)(プラセボ:1[0.75-2];LPS:1.5[0-2];LPS + LVL-RecAP:1[0-1.0])。LPS処置は、腎臓のIL-6発現レベルの有意な増加をもたらすが、
他のサイトカインおよび損傷マーカ(MPO、ミエロペルオキシダーゼ;BAX、Bcl2随伴性Xタンパク質;iNOS、誘導型一酸化窒素合成酵素)は、影響を受けなかった(表20)。LVL-RecAPは、腎臓のIL-6発現レベルを減少させることができなかったが、抗炎症性サイトカインIL-10の腎臓における発現を強く増強した(表20)。さらに、LPS投与は、腎臓遺伝子発現レベルの増加に付随する、腎臓損傷分子(KIM)-1、および好中球ゼラチナーゼ関連リポカイン(NGAL)の尿中排出量における有意な増加をもたらした。この効果は、LVL-RecAPの同時投与によって妨げられる(
図16A-B、表20)。LVL-RecAPの同様の効果は、血漿NGALレベルについて(
図16C)、近位尿細管上皮細胞の頂端膜側に主に局在したKIM-1の腎臓タンパク質レベルについて(
図16D)観察された。
【0194】
in vivo LPS誘導性AKIの間における尿中アデノシン排出量の減少
LVL-RecAPの腎臓保護機能をさらに解明するために、我々は、ATP-アデノシン経路の役割を調べた。LPS処置は、4つ全てのアデノシン受容体について腎臓における遺伝子発現レベルを減少させる傾向があり、そのうちアデノシン受容体A3のみが統計学的に有意に達した(表20)。興味深いことに、LPS処置は、cAMP、ATP、ADP、およびAMPの排出量を変えることなく(データは、示されていない)、アデノシンの尿中排出量を有意に減少させた(プラセボ:68.0±7.8pgアデノシン/10μg クレアチニン;LPS:19.4±6.3pg アデノシン/10μg クレアチニン;p<0.001)。このことは、腎臓がLPS誘導性AKIの間にアデノシンを利用していることを示唆している。LVL-RecAP処置は、LPS単独に比べて、アデノシン受容体遺伝子発現(表20)、または尿中のアデノシン排出量に影響を与えなかった(LPS + LVL-RecAP:16.7±6.8pg アデノシン/10μg クレアチニン: プラセボに比べてp<0.001)。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0195】
実施例9の参考文献
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【0196】
実施例10
異なる温度条件下におけるLVL-RecAPとRecAPとの比較
10.6. 材料
10.6.1 標準試料
LVL-RecAP
バッチ番号 : NB1963p1
PRA ID : 14-049
タンパク質含有量 : 9.9mg/mL(OD280)
活性 : 6537U/mL(660U/mg)
保存条件 : 表示値 -70℃
終了日 : 2015年1月8日
RecAP
バッチ番号 : 2013-052,ロット62
PRA ID : 14-311
タンパク質含有量 : 13.3mg/mL(OD280)
活性 : 9871U/mL(742U/mg)
保存条件 : 2~8℃
終了日 : 2016年6月6日
【0197】
10.6.2 ブランクマトリックス
以下の生物学的マトリックスが試料溶液の作製に使用された。
マトリックス :血漿
種 :ヒト
供給者 :Sera Laboratories International社, Haywards Heath, UK
保存条件 :表示値 保存温度 -20℃
PRA IDs :14-0624,14-0647,および14-0652
終了日 :2016年5月2日(14-0624)
2016年5月6日(14-0647および14-0652)
【0198】
10.7. 方法
10.7.1 溶液の作製
10.7.1.1 2M 水酸化ナトリウム
2モルの水酸化ナトリウム水溶液は、8gの水酸化ナトリウムを約90mlのミリQ水に溶解させ、室温に冷却し、体積を100mLに調整することによって作製された。溶液は、室温で、最大1月まで保存された。
【0199】
10.7.1.2 1M 塩化マグネシウム
1モルの塩化マグネシウム溶液は、4.06gの塩化マグネシウム6水和物を、約16mLのミリQ水に溶解させることによって作製された。 溶解後、体積は、20mLに調整された。溶液は、表示値+4℃で、最大1月まで保存された。
【0200】
10.7.1.3 0.1M 塩化亜鉛
0.1モルの塩化亜鉛溶液は、272.5mgの塩化亜鉛を、約16mLのミリQ水に溶解させることによって作製された。溶解後、体積は、20mLに調整された。溶液は、表示値+4℃で、最大1月まで保存された
【0201】
10.7.1.4 25℃法のためのpH9.6 0.025M グリシン溶液
pH9.6 0.025モルのグリシン溶液は、3.76gのグリシンを、1800mLのミリQ水に溶解させることによって作製された。溶液は、25℃に温められ、2M 水酸化ナトリウムを用いてpH9.6に調整された(セクション10.7.1.1を参照)。体積は、2000mLまで作製され、pHは、再度確認された。pHは、25℃においてpH9.6であるべきである。溶液は、表示値+4℃で、最大1週間まで保存された。
【0202】
10.7.1.5 25℃法のための酵素希釈緩衝液
酵素希釈緩衝液は、0.5mLの1M 塩化マグネシウム(セクション10.7.1.2を参照)を、0.5mLの0.1M 塩化亜鉛(セクション10.7.1.3を参照)、およびpH9.6 0.025M グリシン溶液(セクション10.7.1.4を参照)に混合することによって作製された。この溶液のために、5.00gのマンニトールと、0.25gの仔ウシ血清アルブミンとを添加し、攪拌しながら溶解した。pHは、再度確認され、必要がある場合、2Mの水酸化ナトリウムを用いて、25℃でpH9.6に調整された。酵素希釈緩衝液は、毎日新たに作製された。
【0203】
10.7.1.6 25℃法のためのpH9.6 0.0103M p-ニトロフェニルリン酸塩
pH9.6 0.0103M p-ニトロフェニルリン酸塩は、1528mgのp-ニトロフェニルリン酸塩を、約360mLのpH9.6 0.025M グリシン溶液に溶解させることによって作製された(セクション10.7.1.4を参照)。pHは、再度確認され、必要である場合、2M 水酸化ナトリウムを用いて、25℃でpH9.6に調整された(セクション10.7.1.1を参照)。pHを再度確認した後、体積は、pH9.6 0.025M グリシン溶液を用いて400mLに調整された。溶液は、表示値+4℃で、最大5日まで保存された。
【0204】
10.7.1.7 37℃法のための使用基質
使用基質は、120mLの pH9.6 0.0103M p-ニトロフェニルリン酸塩溶液(セクション10.7.1.6を参照)を、1.25mLの1M 塩化マグネシウム溶液(セクション10.7.1.2を参照)に混合することによって作製された。この溶液に、約15mLの pH9.6 0.025M グリシン溶液(セクション10.7.1.4を参照)が添加され、pHは、再度確認され、必要であれば、2M 水酸化ナトリウムを用いて、25℃でpH9.6に調整された(セクション10.7.1.1を参照)。体積は、pH9.6 0.025M グリシン溶液を用いて145mLに調整された。使用基質は、毎日新たに作製された。
【0205】
10.7.1.8 37℃法のためのpH9.6 0.025M グリシン溶液
pH9.6 0.025モルのグリシン溶液は、3.76gのグリシンを約1800mLのミリQ水に溶解させることによって作製された。溶液は、25℃に温められ、2M 水酸化ナトリウムを用いてpH9.6に調整された(セクション10.7.1.1を参照)。体積は、2000mLまで作製され、pHは、再度確認された。pHは、37℃においてpH9.6であるべきである。溶液は、表示値+4℃で、最大1週間まで保存された。
【0206】
10.7.1.9 37℃法のための酵素希釈緩衝液
酵素希釈緩衝液は、0.5mLの1M 塩化マグネシウム(セクション10.7.1.2を参照)を、0.5mLの0.1M 塩化亜鉛(セクション10.7.1.3を参照)および500mLのpH9.6 0.025M グリシン溶液(セクション10.7.1.8を参照)に混合することによって作製された。この溶液に、5.00gのマンニトールと0.25gの仔ウシ血清アルブミンとを添加し、攪拌しながら溶解させた。pHは、再度確認され、必要である場合、2M 水酸化ナトリウムを用いて、37℃でpH9.6に調整された。酵素希釈緩衝液は、毎日新たに作製された。
【0207】
10.7.1.10 37℃法のためのpH9.6 0.0103M p-ニトロフェニルリン酸塩
pH9.6 0.0103M p-ニトロフェニルリン酸塩は、1528mgのp-ニトロフェニルリン酸塩を、約360mLのpH9.6 0.025M グリシン溶液に溶解させることによって作製された。pHは、再度確認され、必要であれば、2M 水酸化ナトリウムを用いて、37℃でpH9.6に調整された(セクション10.7.1.1を参照)。pHを再確認後、体積は、pH9.6 0.025M グリシン溶液を用いて400mLに調整された。溶液は、表示値+4℃で、最大5日まで保存された。
【0208】
10.7.1.11 37℃法のための使用基質
使用基質は、120mLのpH9.6 0.0103M p-ニトロフェニルリン酸塩溶液(セクション10.7.1.10を参照)を1.25mLの1M 塩化マグネシウム溶液(セクション10.7.1.2を参照)に混合することによって作製された。この溶液に、約15mLのpH9.6 0.025M グリシン溶液(セクション10.7.1.4を参照)を添加し、pHを再確認し、必要であれば、2M 水酸化ナトリウムを用いて、37℃でpH9.6に調整した(セクション10.7.1.1を参照)。体積は、pH9.6 0.025M グリシンを用いて145mLに調整された。使用基質は、毎日新たに作製された。
【0209】
10.7.2 LVL-RecAP スパイク溶液(500μg/mL)
recAPスパイク溶液は、252.5μL LVL-RecAP(セクション10.6.1)を、酵素希釈緩衝液(セクション10.7.1.5)を用いて5.00mLに希釈することによって作製された。スパイク溶液の最終濃度は、500μg/mLであり、この溶液は、recAP添加されたヒト血漿試料の作製に使用された(セクション10.7.4)。
【0210】
10.7.3 RecAPスパイク溶液(500μg/mL)
RecAPスパイク溶液は、188.0μLのRecAP(セクション10.6.1)を、酵素希釈緩衝液(セクション10.7.1.5)を用いて5.00mLに希釈することによって作製された。スパイク溶液の最終濃度は、500μg/mLであり、この溶液は、RecAP添加されたヒト血清試料(セクション10.7.5)の作製に使用された。
【0211】
10.7.4 LVL-recAP添加されたヒト血清試料の作製
【表21】
【0212】
10.7.5 RecAP添加されたヒト血清試料の作製
【表22】
【0213】
10.7.6 LVL-RecAPおよびRecAP酵素活性のための試料溶液の作製
LVL-RecAPおよびRecAP酵素活性のための試料溶液は、酵素希釈緩衝液(25℃法についてのセクション10.7.1.5 または37℃法についてのセクション10.7.1.9)を用いる、LVL-RecAP産物試料、またはRecAP産物試料の希釈によって作製された。
LVL-RecAPおよび/またはRecAP試料に由来する試料1は、125μLのLVL-RecAPおよび/またはRecAP血清試料を取得し、酵素希釈緩衝液を用いて2.50mLに希釈することによって希釈され、LVL-RecAPまたはRecAP酵素活性のための最終試料溶液を作製した。
LVL-RecAPおよび/またはRecAP試料に由来する試料2は、125μLのLVL-RecAPおよび/またはRecAP血清試料を取得し、酵素希釈緩衝液を用いて2.00mLに希釈することによって希釈され、LVL-RecAPまたはRecAP酵素活性のための最終試料溶液を作製した。
LVL-RecAPおよび/またはRecAP試料に由来する試料3は、167μLのLVL-RecAPおよび/またはRecAP血清試料を取得し、酵素希釈緩衝液を用いて2.00mLに希釈することによって希釈され、LVL-RecAPまたはRecAP酵素活性のための最終試料溶液を作製した。
LVL-RecAPおよび/またはRecAP試料に由来する試料4は、250μLのLVL-RecAPおよび/またはRecAP血清試料を取得し、酵素希釈緩衝液を用いて2.00mLに希釈することによって希釈され、LVL-RecAPまたはRecAP酵素活性のための最終試料溶液を作製した。
LVL-RecAPおよび/またはRecAP試料に由来する試料5は、500μLのLVL-RecAPおよび/またはRecAP血清試料を取得し、酵素希釈緩衝液を用いて2.00mLに希釈することによって希釈され、LVL-RecAPまたはRecAP酵素活性のための最終試料溶液を作製した。
LVL-RecAPおよび/またはRecAP試料に由来する試料6は、1000μLのLVL-RecAPおよび/またはRecAP血清試料を取得し、酵素希釈緩衝液を用いて2.00mLに希釈することによって希釈され、LVL-RecAPまたはRecAP酵素活性のための最終試料溶液を作製した。
LVL-RecAPおよび/またはRecAP試料に由来する内在性(試料7)は、1000μLのLVL-RecAPおよび/またはRecAP血清試料を取得し、酵素希釈
緩衝液を用いて2.00mLに希釈することによって希釈され、LVL-RecAPまたはRecAP酵素活性のための最終試料溶液を作製した。
【0214】
10.8 実施、結果、および考察
10.8.1 装置および設定
以下の方法および設定が使用された。
分光光度計 :シングルセルペルチェヒータを備えるThermo Fisher Evolution 300 UV/VISを、マグネチックスターラを用いて、25℃(AN-18-3)、または37℃(AN-18-4)に設定した。
波長 : 405nm
測定 : 3分間、各15秒で測定。最初の1分間は、計算のために考慮なかった。
キュベット型 : ガラス
以下の溶液は、ガラスキュベットに滴下された。溶液の温度は、AN-18-3について25℃±0.5℃、またはAN-18-4について37℃±0.5℃であった。
【表23】
【0215】
最初に、使用基質および酵素希釈液は、試料が添加される前に混合された。溶液は、混合され、キュベットは、分光光度計に直ちに設置され、吸光度の増加は、15秒間の工程において1~3分間測定され、少なくとも9つのデータポイントを得た。3分(最後の)データポイントにおいて、吸光度は、≦1.5であった。さらに、直線性は許容範囲内にあった。各複製物についての相関係数(r)は、≧0.990であるべきである。相関係数(r)≧0.990の試料の結果はすべて、評価のために考慮され、相関係数(r)<0.990の試料の結果は、単に情報として報告された。酵素活性は、各希釈の1試験である、二重モードにおいて実施された。
【0216】
10.8.2 LVL-RecAPおよびRecAP酵素活性
実験計画は、2つの個別の希釈結果を認めるために、2つの個別の結果(酵素活性)についての相違が≦5.0%であるべきであることを記載しているが、各測定についての相関係数(r)≧0.990の全ての結果が評価に使用された。なぜなら、酵素活性法は、25℃±0.5℃においてLVL-RecAP産物について検証され、他のアルカリホスファターゼ起源、および/または他の条件については、検証されなかったからである。
【0217】
図19は、ヒト血清中のRecAPの酵素活性の、25℃および37℃の間の相関関係を示す。
図20は、25℃および37℃における、LVL-RecAPの酵素活性の間の相関関係を示す。
【0218】
図20は、RecAPおよびLVL-RecAPについて、25℃および37℃における活性/μgタンパク質を示す。値は、所定のタンパク質濃度について、25℃および37℃の間の平均Δ活性を表す。
【0219】
本発明は、次の実施の態様(1)~(16)が可能である。
【0220】
(1)ホスファターゼ活性を有する単離タンパク質であって、配列番号5に少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも200個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列と、配列番号6に少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも50個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列と、配列番号7に少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも40個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列とを含み、
前記全長タンパク質は、配列番号1の全長アミノ酸配列に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
位置279のアミノ酸は、ロイシン(L)であり、位置328のアミノ酸は、バリン(V)であり、位置478のアミノ酸は、ロイシン(L)であることを特徴とする単離タンパク質。
【0221】
(2)上記(1)に記載のタンパク質をコードする核酸配列を含むことを特徴とするポリヌクレオチド。
【0222】
(3)上記(2)に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター。
【0223】
(4)医薬としての使用のための、上記(1)に記載のタンパク質、上記(2)に記載のポリヌクレオチド、または上記(3)に記載のベクター。
【0224】
(5)局所的、または全身の亜鉛欠乏に付随する疾患の、予防、または処置のための、上記(4)に記載の、タンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター。
【0225】
(6)炎症性疾患、腎臓病、または低ホスファターゼ症の、予防、または処置のための、上記(4)または(5)に記載の使用のための、タンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター。
【0226】
(7)前記炎症性疾患は、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、消化管の炎症性疾患、感染症、敗血症、神経皮膚炎、炎症性肝疾患、炎症性肺疾患、および炎症性腎臓病から選択されることを特徴とする、上記(6)に記載の使用のためのタンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター。
【0227】
(8)前記腎臓病は、腎障害、急性腎障害、慢性腎臓病、腎不全、急性腎不全、虚血性腎臓病、および虚血/再灌流腎損傷から選択されることを特徴とする上記(6)に記載の使用のためのタンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター。
【0228】
(9)前記低ホスファターゼ症は、周産期型低ホスファターゼ症、幼児型低ホスファターゼ症、小児型低ホスファターゼ症、および成人型低ホスファターゼ症から選択されることを特徴とする上記(6)に記載のタンパク質、ポリヌクレオチド、またはベクター。
【0229】
(10)上記(1)に記載のタンパク質、上記(2)に記載のポリヌクレオチド、または上記(3)に記載のベクターを含むことを特徴とする宿主細胞。
【0230】
(11)CHO細胞であることを特徴とする上記(10)に記載の宿主細胞。
【0231】
(12)上記(10)または(11)の宿主細胞を培養し、当該宿主細胞に前記タンパク質を産生させることを含むことを特徴とする上記(1)に記載のタンパク質を産生する方法。
【0232】
(13)上記(1)に記載の、および/または上記(12)に記載の方法によって得ることができるタンパク質を含むことを特徴とする組成物。
【0233】
(14)医薬としての使用のための、上記(13)に記載の組成物。
【0234】
(15)局所的、もしくは全身の亜鉛欠乏、炎症性疾患、腎臓病、または低ホスファターゼ症に付随する疾患の、予防、または処置における使用のための、上記(13)または(14)に記載の組成物。
【0235】
(16)低ホスファターゼ症の前記予防または処置が、生存期間の延長、体重の増加、改善した骨格表現型、顔面頭蓋欠損の減弱、歯-歯槽表現型の改善、ならびに/または血漿PPiレベルの減少をもたらすことを特徴とする、上記(6)もしくは(9)に記載の使用のためのタンパク質、ポリヌクレオチド、もしくはベクター、または上記(15)に記載の使用のための組成物。
【配列表】