(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】コンベヤベルト用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
B65G 15/34 20060101AFI20231226BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231226BHJP
C08K 5/02 20060101ALI20231226BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20231226BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B65G15/34
C08K3/22
C08K5/02
C08L7/00
C08L9/00
(21)【出願番号】P 2021080010
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2017015912の分割
【原出願日】2017-01-31
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2016017476
(32)【優先日】2016-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】尻池 寛之
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-180475(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056219(WO,A1)
【文献】特開2015-129232(JP,A)
【文献】特開2013-067163(JP,A)
【文献】特開2017-200990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
B32B 1/00- 43/00
B65G 15/00- 15/64
C08J 3/00- 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、
塩素化パラフィンと、
三酸化アンチモンと
を含有し、
上記ゴム成分が、
天然ゴムと、
ブタジエンゴムと、
結合スチレン量が50%未満の第1スチレンブタジエンゴムと、
結合スチレン量が50%以上の第2スチレンブタジエンゴムと
を含み、
上記ゴム成分100質量部中で、
上記天然ゴムの含有量が35質量部以上73質量部以下、
上記ブタジエンゴムの含有量が25質量部以上45質量部以下、
上記第1スチレンブタジエンゴムの含有量が1質量部以上15質量部以下、
上記第2スチレンブタジエンゴムの含有量が1質量部以上15質量部以下
であり、
上記ゴム成分100質量部に対する含有量が0質量部以上10質量部以下の金属水酸化物と、
上記ゴム成分100質量部に対する含有量が0.5質量部以上5質量部以下の加硫剤、及び上記ゴム成分100質量部に対する含有量が0.3質量部以上5質量部以下の加硫促進剤と
をさらに含有するコンベヤベルト用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルト用ゴム組成物及びコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤは、様々な産業分野において、土砂、砕石、鉄鉱石、セメント、肥料等の粉状物や塊状物などの搬送に用いられている。このコンベヤは、芯体層とこの芯体層の両面に積層される一対のカバーゴム層とを備えるコンベヤベルトを主要構成部材として備える。このコンベヤベルトは、産業分野によっては火災事故対策のために優れた難燃性が要求される場合がある。
【0003】
コンベヤベルトの難燃性を向上する方法としては、上記カバーゴム層の形成に用いるコンベヤベルト用ゴム組成物に、塩素化パラフィン、三酸化アンチモン、金属水酸化物等の難燃剤を含有させる方法が一般的である。このような難燃剤を含有するコンベヤベルト用ゴム組成物としては、例えばスチレンブタジエンゴムを主成分とするジエン系ゴムと塩素化パラフィンと三酸化アンチモンと石油樹脂及び/又はオイルとを含有するものが提案されている(特開2012-180475号公報参照)。
【0004】
しかし、上記難燃剤は、カバーゴム層の耐摩耗性を低下させる傾向にあるため、上記従来のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたコンベヤは、製品寿命が不十分となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に基づいてなされたものであり、難燃性及び耐摩耗性に優れるカバーゴム層を形成できるコンベヤベルト用ゴム組成物と、難燃性及び耐摩耗性に優れるカバーゴム層を備えるコンベヤベルトとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対し、本発明者は、コンベヤベルトのカバーゴム層にブタジエンゴムを特定量含有させることで耐摩耗性を向上でき、かつこのカバーゴム層に塩素化パラフィン及び三酸化アンチモンを組み合わせて添加した場合には耐摩耗性を維持しつつ難燃性を向上できることを見出した。また、本発明者は、ブタジエンゴムと併用する難燃剤として金属水酸化物を用いた場合、耐摩耗性を大幅に低下させる一方で難燃性の向上効果が限定的であることを見出した。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、ゴム成分と、塩素化パラフィンと、三酸化アンチモンとを含有し、上記ゴム成分がブタジエンゴムを含み、上記ゴム成分100質量部に対する上記ブタジエンゴムの含有量が25質量部以上45質量部以下、金属水酸化物の含有量が10質量部以下であるコンベヤベルト用ゴム組成物である。
【0009】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、ゴム成分としてブタジエンゴムを特定量含有することで、耐摩耗性に優れるカバーゴム層を形成できる。また、当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、ブタジエンゴムと併用する難燃剤として塩素化パラフィン及び三酸化アンチモンを含有し、かつ金属水酸化物の含有量を上記上限以下とすることで、形成されるカバーゴム層の耐摩耗性を維持しつつ難燃性を向上できる。
【0010】
上記ゴム成分が天然ゴムをさらに含むとよく、この場合、上記ゴム成分100質量部に対する上記天然ゴムの含有量としては、35質量部以上73質量部以下が好ましい。このように、上記ゴム成分が特定量の天然ゴムをさらに含有することで、形成されるカバーゴム層の耐チッピング性を向上でき、その結果、製品寿命をより延ばすことができる。
【0011】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、カーボンブラックをさらに含有するとよく、この場合、上記ゴム成分100質量部に対する上記カーボンブラックの含有量としては、42質量部以上55質量部以下が好ましい。このように、当該コンベヤベルト用ゴム組成物が特定量のカーボンブラックをさらに含有することで、形成されるカバーゴム層の耐摩耗性及び耐衝撃性を向上でき、その結果、製品寿命をより延ばすことができる。
【0012】
上記ゴム成分が、結合スチレン量が50%未満の第1スチレンブタジエンゴムと、結合スチレン量が50%以上の第2スチレンブタジエンゴムとをさらに含むとよい。この場合、上記ゴム成分100質量部に対する上記第1スチレンブタジエンゴムの含有量としては、1質量部以上15質量部以下が好ましく、上記第2スチレンブタジエンゴムの含有量としては、1質量部以上15質量部以下が好ましい。このように、上記ゴム成分が、結合スチレン量が50%未満の特定量の第1スチレンブタジエンゴムと、結合スチレン量が50%以上の特定量の第2スチレンブタジエンゴムとをさらに含むことで、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性を向上でき、その結果、製品寿命をより延ばすことができる。ここで「結合スチレン量」とは、JIS-K6236:2001「原料ゴム-乳化重合SBRの結合スチレン量の求め方(定量)-屈折率法」に準拠して測定した値をいう。
【0013】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、芯体層と、この芯体層の両面に積層される一対のカバーゴム層とを備え、上記一対のカバーゴム層のうち少なくとも一方が、マトリックスとしてのゴム成分と、このゴム成分に分散する塩素化パラフィン及び三酸化アンチモンとを含有し、上記ゴム成分がブタジエンゴムを含み、上記ゴム成分100質量部に対する上記ブタジエンゴムの含有量が25質量部以上45質量部以下、金属水酸化物の含有量が10質量部以下であるコンベヤベルトである。
【0014】
当該コンベヤベルトは、一対のカバーゴム層のうち少なくとも一方がマトリックスとしてのゴム成分を含有し、このゴム成分がブタジエンゴムを特定量含むことによって、上記カバーゴム層の耐摩耗性に優れる。また、当該コンベヤベルトは、上記ゴム成分に難燃剤として塩素化パラフィン及び三酸化アンチモンが分散し、かつ金属水酸化物の含有量が上記上限以下であるため、上記カバーゴム層の耐摩耗性が維持されたまま難燃性が向上している。これらの結果、当該コンベヤベルトは、難燃性に優れ、かつ製品寿命が長い。
【発明の効果】
【0015】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、難燃性及び耐摩耗性に優れるカバーゴム層を形成できる。また、当該コンベヤベルトは、難燃性に優れ、かつ製品寿命が長い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態のコンベヤベルトを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参酌しつつ説明する。なお、以下において例示する材料は、特に断りがない限り、単独で使用しても、複数を併用してもよい。
【0018】
[第1実施形態]
<コンベヤベルト用ゴム組成物>
当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、ゴム成分及び難燃剤を含有する。当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、難燃剤以外の添加剤をさらに含有してもよい。当該コンベヤベルト用ゴム組成物の形状としては、特に限定されないが、例えばシート状等とすることができる。当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、必要に応じて成形及び加硫を行うことで、コンベヤベルトのカバーゴム層を形成することができる。
【0019】
[ゴム成分]
当該コンベヤベルト用ゴム組成物のゴム成分は、ブタジエンゴムを含む。上記ゴム成分は、好適な任意成分として天然ゴム及び/又はスチレンブタジエンゴムを含んでもよい。なお、当該コンベヤベルト用ゴム組成物に含まれるゴム成分は、通常未加硫であるが、一部が加硫されていてもよい。
【0020】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物における上記ゴム成分の含有量の下限としては、30質量%が好ましく、45質量%がより好ましい。一方、上記ゴム成分の含有量の上限としては、65質量%が好ましく、60質量%がより好ましい。上記ゴム成分の含有量が上記下限より小さい場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物の成形性が低下するおそれがある。逆に、上記ゴム成分の含有量が上記上限を超える場合、難燃剤の含有量が低下し、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の難燃性が不十分となるおそれがある。
【0021】
(ブタジエンゴム)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いるブタジエンゴムは、形成されるカバーゴム層の耐摩耗性を向上する。ここで「ブタジエンゴム」とは、主にブタジエン単位により構成される重合体をいい、具体的なブタジエン単位の含有割合としては、例えば95質量%以上である。
【0022】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物における上記ブタジエンゴムの含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、25質量部であり、32質量部が好ましい。一方、上記ブタジエンゴムの含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、45質量部であり、42質量部が好ましく、40質量部がより好ましい。上記ブタジエンゴムの含有量が上記下限より小さい場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐摩耗性が低下するおそれがある。逆に、上記ブタジエンゴムの含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の強度が低下するおそれがある。また、上記カバーゴム層の加工性が低下し、コンベヤベルトを製造する際に上記カバーゴム層と芯体層等の他の層との密着性が低下するおそれがある。
【0023】
(天然ゴム)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いる天然ゴムは、形成されるカバーゴム層の耐チッピング性を向上する。当該コンベヤベルト用ゴム組成物が上記天然ゴムを含有する場合、上記天然ゴムの含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、35質量部が好ましく、42質量部がより好ましい。一方、上記天然ゴムの含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、73質量部が好ましく、65質量部がより好ましく、50質量部がさらに好ましい。上記天然ゴムの含有量が上記下限より小さい場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐チッピング性が低下するおそれがある。逆に、上記天然ゴムの含有量が上記上限を超える場合、上記ブタジエンゴムの含有量が低下し、その結果、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0024】
(スチレンブタジエンゴム)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いるスチレンブタジエンゴムは、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性を向上する。当該コンベヤベルト用ゴム組成物が上記スチレンブタジエンゴムを含有する場合、上記スチレンブタジエンゴムの含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、2質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。一方、上記スチレンブタジエンゴムの含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましい。上記スチレンブタジエンゴムの含有量が上記下限より小さい場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐衝撃性が低下するおそれがある。逆に、上記スチレンブタジエンゴムの含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物の成形性が低下するおそれがある。
【0025】
上記スチレンブタジエンゴムとしては、通常のスチレンブタジエンゴムである結合スチレン量が50%未満の第1スチレンブタジエンゴムと、所謂ハイスチレンブタジエンゴムに相当する結合スチレン量が50%以上の第2スチレンブタジエンゴムとが挙げられる。当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、上記スチレンブタジエンゴムとして、第1スチレンブタジエンゴム及び第2スチレンブタジエンゴムを両方含有することが好ましい。当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、第1スチレンブタジエンゴム及び第2スチレンブタジエンゴムを両方含有することで、それぞれ単独で含有する場合と比較し、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性をより効果的に向上できる。当該コンベヤベルト用ゴム組成物が第1スチレンブタジエンゴム及び第2スチレンブタジエンゴムを両方含有することで上述の効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、第2スチレンブタジエンゴムは、第1スチレンブタジエンゴムよりも耐衝撃性に優れる。また、第1スチレンブタジエンゴムは、第2スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムの中間の性質を有するため、第2スチレンブタジエンゴムの上記ゴム成分中での分散を促進する。そのため、第1スチレンブタジエンゴム及び第2スチレンブタジエンゴムを併用することで、耐衝撃性に優れる第2スチレンブタジエンゴムを上記ゴム成分中で高度に分散させることが可能となり、その結果、上記カバーゴム層の耐衝撃性をより効果的に向上できると考えられる。
【0026】
第1スチレンブタジエンゴムは、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性を向上する。第1スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量の下限としては、10%が好ましく、20%がより好ましい。一方、第1スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量の上限としては、40%が好ましく、30%がより好ましい。第1スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量が上記下限より小さい場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐衝撃性が低下するおそれがある。逆に、第1スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物の成形性が低下するおそれがある。
【0027】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物が第1スチレンブタジエンゴムを含有する場合、第1スチレンブタジエンゴムの含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。一方、第1スチレンブタジエンゴムの含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、15質量部が好ましく、12質量部がより好ましい。第1スチレンブタジエンゴムの含有量を上記範囲とすることで、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性をより向上できる。
【0028】
第2スチレンブタジエンゴムは、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性を向上すると共に、耐摩耗性をより向上する。第2スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量の下限としては、60%が好ましい。一方、第2スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量の上限としては、80%が好ましく、70%がより好ましい。第2スチレンブタジエンゴムの結合スチレン量を上記範囲とすることで、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性及び耐摩耗性をよりバランスよく向上できる。
【0029】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物が第2スチレンブタジエンゴムを含有する場合、第2スチレンブタジエンゴムの含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。一方、第2スチレンブタジエンゴムの含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、15質量部が好ましく、12質量部がより好ましい。第2スチレンブタジエンゴムの含有量を上記範囲とすることで、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性及び耐摩耗性をよりバランスよく向上できる。
【0030】
上記ゴム成分は、他のゴムをさらに含んでもよい。上記他のゴムとしては、例えばポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソブチレンイソプレンゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のジエン系ゴムや、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)等の非ジエン系ゴムなどが挙げられる。上記ゴム成分における上記他のゴムの含有量の上限としては、例えば20質量%である。
【0031】
[難燃剤]
当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、難燃剤として塩素化パラフィン及び三酸化アンチモンの組み合わせを含有する。当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、他の難燃剤をさらに含有してもよい。
【0032】
(塩素化パラフィン)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いる塩素化パラフィンは、形成されるカバーゴム層の難燃性を向上する。上記塩素化パラフィンの炭素数の下限としては、14が好ましく、20がより好ましい。一方、上記塩素化パラフィンの炭素数の上限としては、30が好ましく、27がより好ましい。また、上記塩素化パラフィンの塩素化率(塩素原子の含有量)の下限としては、40質量%が好ましく、65質量%がより好ましい。一方、上記塩素化パラフィンの塩素化率の上限としては、74質量%が好ましい。上記塩素化パラフィンの炭素数及び塩素化率を上記範囲とすることで、形成されるカバーゴム層の難燃性をより向上できる。
【0033】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物における上記塩素化パラフィンの含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、10質量部が好ましく、15質量部がより好ましい。一方、上記塩素化パラフィンの含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、35質量部が好ましく、25質量部がより好ましい。上記塩素化パラフィンの含有量が上記下限より小さい場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の難燃性が低下するおそれがある。逆に、上記塩素化パラフィンの含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0034】
(三酸化アンチモン)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いる三酸化アンチモン(Sb2O3)は、単独では難燃性の向上効果が比較的低いが、上記塩素化パラフィンと併用することで、形成されるカバーゴム層の難燃性を大幅に向上する。具体的には、上記三酸化アンチモンは、上記塩素化パラフィンに含まれる塩素原子のラジカル捕捉機能を促進することで難燃性を大幅に向上すると考えられる。また、上記三酸化アンチモンは、上記塩素化パラフィンの熱分解によって生じた塩化水素と反応してオキシ塩化アンチモン(SbOCl)や三塩化アンチモン(SbCl3)に変化し、その際に水蒸気を発生して酸素を遮断することで難燃性を大幅に向上すると考えられる。上記三酸化アンチモンの市販品としては、例えば「PATOX-M」、「PATOX-K」等の日本精鉱社の「PATOX(登録商標)」シリーズや、「ファイアカットAT3」等の鈴裕化学社の「ファイアカット」シリーズなどが挙げられる。
【0035】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物における上記三酸化アンチモンの含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、2質量部が好ましく、3.5質量部がより好ましい。一方、上記三酸化アンチモンの含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、10質量部が好ましく、7質量部がより好ましい。上記三酸化アンチモンの含有量が上記下限より小さい場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の難燃性が低下するおそれがある。逆に、上記三酸化アンチモンの含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0036】
[金属水酸化物]
当該コンベヤベルト用ゴム組成物における金属水酸化物の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対し、10質量部以下である。上記金属水酸化物は、形成されるカバーゴム層の赤熱を抑制するため、従来のコンベヤベルト用ゴム組成物に難燃剤として一般的に添加されている。但し、上記赤熱抑制効果はコンベヤベルトの難燃性向上にあまり寄与せず、JIS等の工業規格でも難燃性コンベヤベルトにおける赤熱の抑制は重視されていない。このように、上記金属水酸化物による難燃性の向上効果は限定的である。そのため、当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、上記金属水酸化物の含有量を上記上限以下としても、形成されるカバーゴム層の難燃性を十分に向上することができる。一方、上記金属水酸化物は、コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐摩耗性を大幅に低下させる。そのため、当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、上記金属水酸化物の含有量を上記上限以下とすることで、耐摩耗性に優れるカバーゴム層を形成できる。
【0037】
上記金属水酸化物としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。当該コンベヤベルト用ゴム組成物における上記金属水酸化物の含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、10質量部であり、5質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。また、当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、上記金属水酸化物を実質的に含有しないことが特に好ましい。上記金属水酸化物の含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐摩耗性が不十分となるおそれがある。また、上記カバーゴム層の引張強さ、破断伸び等を低下させるおそれもある。
【0038】
[難燃剤以外の添加剤]
当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、カーボンブラックをさらに含有することが好ましい。また、当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、未加硫ゴム成分の加硫のため、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等をさらに含有することが好ましい。さらに、当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、老化防止剤、その他の添加剤等をさらに含有してもよい。
【0039】
(カーボンブラック)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いるカーボンブラックは、形成されるカバーゴム層の耐摩耗性をより向上すると共に耐衝撃性を向上する。上記カーボンブラックとしては、超耐摩耗性(Super Abrasion Furnace:SAF)カーボンブラック、準超耐摩耗性(Intermediate SAF:ISAF)カーボンブラック、高耐摩耗性(High Abrasion Furnace:HAF)カーボンブラック等のハードカーボンや、ソフトカーボンなどを用いることができる。上記カーボンブラックとしては、ハードカーボンが好ましく、ISAFカーボンブラックがより好ましい。
【0040】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物が上記カーボンブラックを含有する場合、上記カーボンブラックの含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、42質量部が好ましい。一方、上記カーボンブラックの含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、70質量部が好ましく、60質量部がより好ましく、50質量部がさらに好ましい。上記カーボンブラックの含有量が上記下限より小さい場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の耐摩耗性及び耐衝撃性が低下するおそれがある。逆に、上記カーボンブラックの含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の屈曲疲労性が低下し、その結果、コンベヤベルトの寿命が縮むおそれがある。
【0041】
(加硫剤)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いる加硫剤は、上記未加硫のゴム成分を加硫する。上記加硫剤としては、例えば硫黄系加硫剤、有機過酸化物系加硫剤、金属酸化物系加硫剤、フェノール樹脂、キノンジオキシム等が挙げられる。上記硫黄系加硫剤としては、例えば粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。上記有機過酸化物系加硫剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。上記加硫剤としては、硫黄系加硫剤が好ましく、粉末硫黄がより好ましく、粉末硫黄に少量のオイルを添加したオイル硫黄がさらに好ましい。上記オイル硫黄におけるオイル含有量としては、特に限定されないが、例えば1質量%以上7質量%以下である。
【0042】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物が加硫剤を含有する場合、上記加硫剤の含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、0.5質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましい。一方、上記加硫剤の含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、5質量部が好ましく、3質量部がより好ましい。上記加硫剤の含有量が上記下限より小さい場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層のゴム弾性が低下するおそれがある。逆に、上記加硫剤の含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の柔軟性が低下するおそれがある。
【0043】
(加硫促進剤)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いる加硫促進剤は、上記加硫剤の機能を向上する。上記加硫促進剤としては、例えばアルデヒド-アンモニア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が挙げられる。上記加硫促進剤としては、グアニジン系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤及びこれらの組み合わせが好ましく、グアニジン系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤の組み合わせがより好ましい。
【0044】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物が上記加硫促進剤を含有する場合、上記加硫促進剤の含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、0.3質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。一方、上記加硫促進剤の含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、5質量部が好ましく、3質量部がより好ましい。上記加硫促進剤の含有量が上記下限より小さい場合、上記未加硫のゴム成分の加硫が十分に進行しないおそれがある。逆に、上記加硫促進剤の含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物に加硫処理を行う前に加硫が生じるおそれがある。
【0045】
(加硫促進助剤)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いる加硫促進助剤は、上記加硫促進剤の機能を向上する。上記加硫促進助剤としては、例えばステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸亜鉛塩、オレイン酸亜鉛塩、酸化亜鉛等が挙げられる。上記加硫促進助剤としては、ステアリン酸、酸化亜鉛及びこれらの組み合わせが好ましく、ステアリン酸及び酸化亜鉛の組み合わせがより好ましい。
【0046】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物がステアリン酸を含有する場合、上記ステアリン酸の含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、0.5質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましい。一方、上記ステアリン酸の含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、5質量部が好ましく、3質量部がより好ましい。上記ステアリン酸の含有量が上記下限より小さい場合、上記未加硫のゴム成分の加硫が十分に進行しないおそれがある。逆に、上記ステアリン酸の含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物の成形性が低下するおそれがある。
【0047】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物が酸化亜鉛を含有する場合、上記酸化亜鉛の含有量の下限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、0.5質量部が好ましく、3質量部がより好ましい。一方、上記酸化亜鉛の含有量の上限としては、上記ゴム成分100質量部に対し、15質量部が好ましく、8質量部がより好ましい。上記酸化亜鉛の含有量が上記下限より小さい場合、上記未加硫のゴム成分の加硫が十分に進行しないおそれがある。逆に、上記酸化亜鉛の含有量が上記上限を超える場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるカバーゴム層の柔軟性が低下するおそれがある。
【0048】
(老化防止剤)
当該コンベヤベルト用ゴム組成物に用いる老化防止剤は、形成されるカバーゴム層の老化を防止する。上記老化防止剤としては、特に限定されないが、例えば特殊ワックス系老化防止剤、芳香族第二級アミン系老化防止剤等を用いることができる。当該コンベヤベルト用ゴム組成物が老化防止剤を含有する場合、上記老化防止剤の含有量としては、上記ゴム成分100質量部に対し、例えば1質量部以上8質量部以下である。
【0049】
(その他の添加剤)
上記その他の添加剤としては、例えばシリカ等の補強材、炭酸カルシウム、タルク等の充填剤、マイクロクリスタリンワックス等のワックス類、アロマオイル等のオイル類、ポリマー類、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変成付与剤、紫外線吸収剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、加工助剤、加硫遅延剤などが挙げられる。
【0050】
<コンベヤベルト用ゴム組成物の製造方法>
当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、例えばブタジエンゴムを含むゴム成分と、難燃剤である塩素化パラフィン及び三酸化アンチモンと、必要に応じて添加される任意成分とを混練りすることで製造できる。上記混練りに用いる装置としては、例えばバンバリーミキサー、ニーダーミキサー、オープンロール等を用いることができる。
【0051】
[第2実施形態]
<コンベヤベルト>
図1の当該コンベヤベルトは、芯体層1と、この芯体層1の両面に積層される一対のカバーゴム層2とを備える。一対のカバーゴム層2のうち少なくとも一方は、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成される。すなわち、一対のカバーゴム層2のうち少なくとも一方は、マトリックスとしてのゴム成分と、このゴム成分に分散する塩素化パラフィン及び三酸化アンチモンとを含有し、上記ゴム成分がブタジエンゴムを含み、上記ゴム成分100質量部に対する上記ブタジエンゴムの含有量が25質量部以上45質量部以下、金属水酸化物の含有量が10質量部以下である。なお、当該コンベヤベルトのカバーゴム層2に含まれるゴム成分は、通常加硫されている。
【0052】
[芯体層]
芯体層1としては、特に限定されないが、例えば1枚の帆布で構成される単層構造体や、複数の帆布を積層した多層構造体等を用いることができる。上記帆布としては、特に限定されないが、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、綿繊維等により形成される帆布を用いることができる。なお、上記多層構造体は、複数の帆布が接着ゴム層を介して積層されたものであってもよい。
【0053】
[カバーゴム層]
カバーゴム層2は、芯体層1の両面に積層される一対の層である。一対のカバーゴム層2は、両方が当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成されることが好ましい。カバーゴム層2の平均厚さとしては、特に限定されないが、例えば1mm以上15mm以下とすることができる。
【0054】
一対のカバーゴム層2のうち一方のみを当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成する場合、一対のカバーゴム層2のうち、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成される側の表面を当該コンベヤベルトの載積面として用いることが好ましい。なお、この場合、他方のカバーゴム層2は、従来公知のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成すればよい。
【0055】
<コンベヤベルトの製造方法>
当該コンベヤベルトの製造方法としては、例えば芯体の両面に一対のカバーゴム層を積層する工程(積層工程)を備え、上記一対のカバーゴム層のうち少なくとも一方を当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成する方法等が挙げられる。
【0056】
[積層工程]
本工程では、芯体の両面に一対のカバーゴム層を積層する。芯体の両面に一対のカバーゴム層を積層する方法としては、特に限定されないが、例えば芯体の両面に第1未加硫ゴムシート及び第2未加硫ゴムシートを重畳し、得られた重畳体を加熱する方法等が挙げられる。上記加熱により、第1未加硫ゴムシート、芯体及び第2未加硫ゴムシートが密着する。また、第1未加硫ゴムシート及び第2未加硫ゴムシートは、上記加熱により未加硫のゴム成分が加硫される。この場合、加熱条件としては、例えば温度140℃以上170℃以下、時間10分以上90分以下とすることができる。
【0057】
本工程では、第1未加硫ゴムシート及び第2未加硫ゴムシートのうち少なくとも一方に、当該コンベヤベルト用ゴム組成物により形成される未加硫ゴムシートを用いる。当該コンベヤベルト用ゴム組成物がシート状である場合、当該コンベヤベルト用ゴム組成物を所望の形状にカットしたものを上記未加硫ゴムシートとして用いることができる。また、当該コンベヤベルト用ゴム組成物がシート状でない場合、例えばカレンダーロール等で当該コンベヤベルト用ゴム組成物をシート状に成形したものを上記未加硫ゴムシートとして用いることができる。
【0058】
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0059】
上記カバーゴム層は、多層構造であってもよい。また、上記カバーゴム層は、外面に凸凹が形成されていてもよい。
【0060】
上記芯体層は、複数のスチールコードを等間隔かつ並行に配設した層であってもよい。この場合、上記複数のスチールコードは、その軸方向がコンベヤベルトの長手方向と通常略一致するように配設される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限
定されるものではない。
【0062】
<原料>
本実施例で用いたゴム成分と、難燃剤と、難燃剤以外の添加剤とを以下に示す。
【0063】
[ゴム成分]
天然ゴム:タイ産「RSS♯3」
ポリブタジエンゴム:JSR社の「JSR BR01」
第1スチレンブタジエンゴム(第1SBR):JSR社の「JSR1500」、結合スチレン量23.5%
第2スチレンブタジエンゴム(第2SBR):JSR社の「JSR0061」、結合スチレン量67%
【0064】
[難燃剤]
塩素化パラフィン:味の素ファインテクノ社の「エンパラ(登録商標)70F」、炭素数26、塩素化率68質量%~72質量%
三酸化アンチモン:鈴裕化学社の「ファイアカットAT3」
水酸化アルミニウム:昭和電工社の「ハイジライト(登録商標)H-42M」
【0065】
[難燃剤以外の添加剤]
カーボンブラック:東海カーボン社の「シースト6」、平均粒子径22nm、ISAFカーボンブラック
オイル硫黄(加硫剤):細井化学工業社の「オイル硫黄」、オイル含有量5質量%
加硫促進剤A:大内新興化学工業社の「ノクセラーCZ-G」、スルフェンアミド系加硫促進剤
加硫促進剤B:大内新興化学工業社の「ノクセラーD」、グアニジン系加硫促進剤
ステアリン酸(加硫促進助剤):日本油脂社の「ビーズステアリン酸椿」
酸化亜鉛(加硫促進助剤):ハクスイテック社の「酸化亜鉛2種G」
老化防止剤A:大内新興化学工業社の「ノクラック6C」、芳香族第二級アミン系老化防止剤
老化防止剤B:大内新興化学工業社の「サンノック」、特殊ワックス系老化防止剤
【0066】
<コンベヤベルト用ゴム組成物の製造>
表1に示す種類及び含有量のゴム成分及び添加剤を公知の方法で混練し、平均厚さ3mm及び平均厚さ6mmの2種類のシート状のコンベヤベルト用ゴム組成物を得た。なお、表1の「-」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0067】
【0068】
<コンベヤベルトの製造>
芯体の両面に上記2種類のシート状のコンベヤベルト用ゴム組成物を重畳し、得られた重畳体を145℃程度で20分程度加熱して一体化させることで、コンベヤベルトを製造した。上記芯体としては、両面を接着ゴムで覆われた平均厚さ1.0mmのポリエステル製帆布を3層積層した積層体を用いた。また、上記芯体としては、上記シート状のコンベヤベルト用ゴム組成物よりも平均幅がやや小さいものを用い、これにより、製造されるコンベヤベルトの幅方向両端近傍ではカバーゴム層同士が直接積層されるようにした。なお、得られたコンベヤベルトの平均厚さは11.5mmであった。
【0069】
なお、比較例3で製造したコンベヤベルトは、幅方向両端近傍においてカバーゴム層同士が十分に密着せず、層間剥離していた。また、比較例3で製造したコンベヤベルトは、幅方向両端近傍以外の領域においても、カバーゴム層及び芯体層の層間剥離が生じている箇所が部分的に確認された。そのため、比較例3のコンベヤベルトについての以下の評価は、上述の層間剥離が確認されない箇所に対して行った。
【0070】
<評価>
以下の方法により、実施例1、参考例2及び3並びに比較例1~3のコンベヤベルトの摩耗量、硬度、引張強さ、破断伸び、難燃性、耐衝撃性及び加工性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0071】
[摩耗量]
摩耗量は、JIS-K6264-2:2005「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-耐摩耗性の求め方-第2部:試験方法」に記載のDIN摩耗試験に準拠してカバーゴム層の表面で測定を行った。摩耗量(mm3)は、その値が小さいほど耐摩耗性に優れることを示す。
【0072】
[硬度]
硬度は、JIS-K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に記載のデュロメータ硬さタイプAに準拠してカバーゴム層の表面で測定を行った。硬度(°)は、その値が一定範囲内であればコンベヤベルトに適する硬さであることを示す。
【0073】
[引張強さ]
引張強さは、JIS-K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠して測定した。測定には、コンベヤベルトのカバーゴム層から採取したダンベル状3号形の試験片を用いた。引張強さ(MPa)は、その値が大きいほど強度に優れることを示し、20MPa以上の場合を良好、20MPa未満の場合を良好でないと評価できる。
【0074】
[破断伸び]
破断伸びは、JIS-K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠して測定した。測定には、コンベヤベルトのカバーゴム層から採取したダンベル状3号形の試験片を用いた。破断伸び(%)は、その値が大きいほど強度に優れることを示す。
【0075】
[難燃性]
難燃性は、JIS-K6324:2013「難燃性コンベヤゴムベルト-等級及び試験方法」に記載の布層コンベヤベルトに適用される試験方法に準拠して測定した。難燃性は、上記試験方法で1級、2級又は3級に区分される場合を「良好(A)」、それ以外の場合を「良好でない(B)」と評価した。
【0076】
[耐衝撃性]
耐衝撃性は、以下の衝撃試験によって評価した。すなわち、頑丈な支持台上に鉄板を敷設し、この鉄板上に長さ300mm×幅100mmの短冊状にカットしたコンベヤベルトを載置した。上記コンベヤベルトの上方から重錘を自由落下させ、芯体層を形成する帆布に傷を生じさせるのに必要な最小落下距離を測定した。使用した重錘は、平面形状が長さ250mm×幅50mmの長方形である略板状の部材であり、その一方の面には凸状部が幅方向の一端から他端にかけて形成されている。上記凸状部の先端の厚み(重錘の長手方向長さ)は5mmである。上記重錘の質量は36kgである。重錘を自由落下させる際は、上記凸状部側を下に向け、重錘の長手方向と上記コンベヤベルトの長辺方向とを直交させた。耐衝撃性は、芯体層を形成する帆布に傷を生じさせるのに必要な最小落下距離が50cm超の場合を「特に良好(A)」、40cm超50cm以下の場合を「良好(B)」、30cm超40cm以下の場合を「良好でない(C)」と評価した。
【0077】
[加工性]
加工性は、上述の通り、製造したコンベヤベルトにおいて層間剥離が確認された比較例3については外観性等の観点から「良好でない(B)」と評価し、それ以外の実施例、参考例及び比較例については「良好(A)」と評価した。
【0078】
【0079】
表2に示すように、実施例1並びに参考例2及び3のコンベヤは、耐摩耗性及び難燃性が良好であった。このことから、当該コンベヤベルト用ゴム組成物を用いることで、難燃性及び耐摩耗性に優れるカバーゴム層を形成できると判断される。
【0080】
また、実施例1並びに参考例2及び3のコンベヤベルトは、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が42質量部以上55質量部以下であるコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたため耐衝撃性も良好であった。このことから、当該コンベヤベルト用ゴム組成物にカーボンブラックを特定量含有させることで、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性を向上できると判断される。また、実施例1のコンベヤベルトは、ゴム成分がスチレンブタジエンゴムを含むコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたため、参考例2及び3よりも耐衝撃性に優れていた。このことから、当該コンベヤベルト用ゴム組成物にスチレンブタジエンゴムを含有させることで、形成されるカバーゴム層の耐衝撃性をより向上できると判断される。
【0081】
一方、比較例1のコンベヤベルトは、硬度、引張強さ、破断伸び及び難燃性は良好であったが、耐摩耗性及び耐衝撃性が良好でなかった。比較例1のコンベヤベルトの耐摩耗性が良好でなかった理由は、ゴム成分100質量部に対するブタジエンゴムの含有量が25質量部未満、かつ水酸化アルミニウムの含有量が10質量部超のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたためであると判断される。また、比較例1のコンベヤベルトの耐衝撃性が良好でなかった理由は、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が42質量部未満、かつスチレンブタジエンゴムを含有しないコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたためであると判断される。
【0082】
比較例2のコンベヤベルトは、硬度、引張強さ、破断伸び、難燃性及び耐衝撃性は良好であったが、耐摩耗性が良好でなかった。比較例2のコンベヤベルトの耐摩耗性が良好でなかった理由は、ゴム成分100質量部に対するブタジエンゴムの含有量が25質量部未満のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたためであると判断される。但し、比較例2のコンベヤベルトは、比較例1のコンベヤベルトよりは耐摩耗性がある程度改善されていた。これは、上記コンベヤベルト用ゴム組成物に金属水酸化物を用いていないためであると判断される。
【0083】
比較例3のコンベヤベルトは、耐摩耗性、硬度、破断伸び、難燃性及び耐衝撃性は良好であったが、引張強さが良好でなかった。比較例3のコンベヤベルトの耐摩耗性が良好でなかった理由は、ゴム成分100質量部に対するブタジエンゴムの含有量が45質量部超のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたためであると判断される。
【0084】
各実施例、参考例及び比較例の中で、実施例1、参考例2及び3並びに比較例1及び2は加工性が良好であったが、比較例3は加工性が良好でなかった。これは、比較例3に用いたコンベヤベルト用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対してブタジエンゴムを45質量部超含有していたためであると判断される。
【0085】
また、実施例1並びに参考例2及び3のコンベヤベルトは、比較例1のコンベヤベルトよりも、引張強さ及び破断伸びに優れていた。これは、比較例1に用いた金属水酸化物が、引張強さ及び破断伸びを低下させたためであると判断される。
【産業上の利用可能性】
【0086】
当該コンベヤベルト用ゴム組成物は、難燃性及び耐摩耗性に優れるカバーゴム層を形成できる。また、当該コンベヤベルトは、難燃性に優れ、かつ製品寿命が長い。
【符号の説明】
【0087】
1 芯体層
2 カバーゴム層