(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20231228BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20231228BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M50/533
H01M4/64 A
(21)【出願番号】P 2020062569
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 明彦
(72)【発明者】
【氏名】尾木 謙太
(72)【発明者】
【氏名】板井 佑平
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-102962(JP,A)
【文献】特開2007-172879(JP,A)
【文献】特開2010-080392(JP,A)
【文献】国際公開第2013/054593(WO,A1)
【文献】特開2015-146232(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047353(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 50/533
H01M 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層を有する正極と、前記正極活物質層と対向する負極活物質層を有する負極とを備え、
前記負極は、シート状の集電基材と、該集電基材の少なくとも一方の面に重なった前記負極活物質層とを有し、
前記集電基材は、本体部と、該本体部から外側へ突出したタブ部とを有し、
前記負極活物質層は、前記本体部と前記タブ部との境界を越えて前記タブ部の一部にも重なり、以下の条件:
(1)前記負極活物質層の単位面積当たりの質量は、前記タブ部では前記本体部よりも大きい;および、
(2)前記負極活物質層の厚さは、前記タブ部では前記本体部よりも厚い;
の少なくとも一方を満たす、蓄電素子。
【請求項2】
前記集電基材の前記タブ部における断面積(A)と、前記正極活物質層の表面積(B)との比(B/A)は、
30,000以上150,000以下 である、請求項1に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正極及び負極が絶縁された層状の構造を成し、前記正極及び前記負極はそれぞれ複数枚の正極タブ及び負極タブが積層状態で電極端子と電気的に接続された電極組立体を備える蓄電装置であって、
前記負極は、第1の活物質と前記第1の活物質より質量当たりの容量が大きな第2の活物質とが塗布されて負極活物質層が形成されており、前記負極活物質層は、少なくとも前記負極タブの突出方向におけるタブ側縁部の領域の前記負極活物質層の面積当たりの容量が、前記負極タブの突出方向における中央部の領域の前記負極活物質層の面積当たりの容量より大きくなるように、前記第1の活物質及び前記第2の活物質の混合割合が調整されて塗布されていることを特徴とする蓄電装置、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ハイレートでの充電時に負極における金属の析出が生じることを抑制できる蓄電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る蓄電素子は、
正極活物質層を有する正極と、前記正極活物質層と対向する負極活物質層を有する負極とを備え、
前記負極は、シート状の集電基材と、該集電基材の少なくとも一方の面に重なった前記負極活物質層とを有し、
前記集電基材は、本体部と、該本体部から外側へ突出したタブ部とを有し、
前記負極活物質層は、前記本体部と前記タブ部との境界を越えて前記タブ部の一部にも重なり、以下の条件:
(1)前記負極活物質層の単位面積当たりの質量は、前記タブ部では前記本体部よりも大きい;および、
(2)前記負極活物質層の厚さは、前記タブ部では前記本体部よりも厚い;
の少なくとも一方を満たす。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電素子は、ハイレートでの充電時に負極における金属の析出が生じることが抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る蓄電素子の巻回型電極体の斜視図である。
【
図3】
図3は、積層された負極(集電基材のタブ部)及び正極を厚さ方向に切断した断面図である。
【
図4】
図4は、負極の一部を厚さ方向の一方から見た模式図である。
【
図5】
図5は、負極の一部を厚さ方向に切断した断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る蓄電素子を複数備えた蓄電装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本明細書によって開示される蓄電素子の概要について説明する。
【0009】
本発明の一側面に係る蓄電素子1は、
正極活物質層42を有する正極40と、前記正極活物質層42と対向する負極活物質層52を有する負極50とを備え、
前記負極50は、シート状の集電基材51と、該集電基材51の少なくとも一方の面に重なった前記負極活物質層52とを有し、
前記集電基材51は、本体部511と、該本体部511から外側へ突出したタブ部512とを有し、
前記負極活物質層52は、前記本体部511と前記タブ部512との境界を越えて前記タブ部512の一部にも重なり、以下の条件:
(1)前記負極活物質層52の単位面積当たりの質量は、前記タブ部512では前記本体部511よりも大きい;および、
(2)前記負極活物質層52の厚さは、前記タブ部512では前記本体部511よりも厚い;
の少なくとも一方を満たす。
【0010】
上記蓄電素子1によれば、ハイレートでの充電時に負極における金属の析出が生じることが抑制されている。このような効果が生じる理由は、例えば以下のように推測される。
すなわち、上記の蓄電素子1において、充電時に負極50のタブ部512において電流が集中しやすい。タブ部512に重なった負極活物質層52では、電流集中の影響を受けて金属の析出が起こりやすい。これに対して(1)の場合、負極50のタブ部512における負極活物質層52の単位面積当たりの質量が本体部511よりも大きいことによって、単位面積当たりの負極活物質量がタブ部512でより大きくなっている。これにより、充電時においてLiイオンなどの金属イオンがより多く負極活物質に取り込まれる。従って、負極活物質に取り込まれなかった金属イオンが負極において金属となって析出することを抑制できる。また、(2)の場合、負極50のタブ部512における負極活物質層52の厚さが本体部511よりも厚いことによって、単位面積当たりの負極活物質量がタブ部512でより大きくなっている。よって、同様に、負極における金属の析出が起こることを抑制できる。この抑制は、特にハイレートでの充電時において有効である。ただし、上記理由に限定的に解釈されるものではない。
なお、ハイレートとは、例えば(電池の定格容量を1時間で完全充電させる電流の大きさを1Cと定義した際に)2C以上の充電速度である。
【0011】
ここで、負極50の集電基材51のタブ部512における断面積(A)と、正極活物質層42の表面積(B)との比(B/A)は、30,000以上150,000以下 であってもよい。
これにより、ハイレートでの充電時に負極における金属の析出が生じることをより抑制できる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る蓄電素子の一例として、非水電解質蓄電素子の構成、非水電解質蓄電装置の構成、及び非水電解質蓄電素子の製造方法、並びにその他の実施形態について詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称は、背景技術に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0013】
<非水電解質蓄電素子の構成>
本発明の実施形態に係る非水電解質蓄電素子(以下、単に「蓄電素子」ともいう。)は、正極40、負極50及びセパレータ60を有する電極体2と、非水電解質と、上記電極体2及び非水電解質を収容する容器と、を備える。電極体2は、通常、複数の正極40及び複数の負極50がセパレータ60を介して積層された積層型、又は、正極40及び負極50がセパレータ60を介して積層された状態で巻回された巻回型(以下、詳細に説明)である。非水電解質は、正極40、負極50及びセパレータ60に含まれた状態で存在する。以下、非水電解質蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池(特にリチウムイオン二次電池、以下、単に「二次電池」ともいう。)について説明するが、本発明の適用対象を限定する意図ではない。
【0014】
本実施形態の蓄電素子1は、
図1及び
図2に示すように、巻回された状態の巻回型の電極体2と、電極体2を収容するケース3と、を備える。また、蓄電素子1は、少なくとも一部を露出させた状態でケース3に取り付けられる又はケース3の少なくとも一部によって構成される2つの外部端子(正極端子4及び負極端子5)を備える。電極体2は、ケース3内において、集電部材などを介して各外部端子4,5と接続されている。
本実施形態の蓄電素子1は、ケース3に収容された電極体2を備える。ケース3は、扁平な直方体状であり、一方に向けて開口したケース本体31と、ケース本体31の開口を覆う長細い矩形状の蓋体32とを有する。2つの外部端子4,5は、蓋体32の長辺方向に離間して配置されている。
【0015】
電極体2は、
図2及び
図3に示すように、長尺シート状の正極40と、長尺シート状の負極50と、シート状の2つのセパレータ60,60とが重ねられ、さらに巻回されて形成されている。2つのセパレータ60,60は、正極40及び負極50を電気的に絶縁するようにそれぞれ配置されている。本実施形態では、電極体2は、扁平な巻回体である。電極体2の巻回軸方向がケース本体31の開口方向と同じ方向となるように、電極体2がケース3内に配置されている。
【0016】
電極体2は、帯状の正極40における幅方向の一方の長辺が突出した複数の正極のタブ部412を有する。斯かる複数の正極のタブ部412は、正極基材41(集電基材41)の一部で構成されている。また、電極体2は、同様に、帯状の負極50における幅方向の一方の長辺が突出した複数のタブ部512(負極のタブ部512)を有する。斯かる複数のタブ部512(負極のタブ部512)は、負極基材51(集電基材51)の一部で構成されている。
正極40の複数の正極のタブ部412は、正極40及び負極50が積層する方向に並んで配置されている。負極50の複数のタブ部512(負極のタブ部512)も同様である。また、正極40の複数の正極のタブ部412と負極50の複数のタブ部512(負極のタブ部512)とは、互いに離間した2つの外部端子4,5と同様に、ケース3の蓋体32の長辺方向に離間して配置されている。
【0017】
(正極)
正極40は、正極基材41(正極の集電基材41)と、当該正極基材41に直接又は中間層(図示せず)を介して配される正極活物質層42とを有する。本実施形態では、
図3に示すように、正極基材41(正極の集電基材41)の両面に正極活物質層42がそれぞれ重ねられている。
正極基材41(正極の集電基材41)は、正極の本体部と、正極の本体部から外側へ突出した正極のタブ部412とを有する。正極活物質層42は、正極の本体部に重なり、正極のタブ部412には重なっていない。正極のタブ部412では、正極基材41(正極の集電基材41)が露出している。
正極活物質層42の端縁は、セパレータ60を介して対向する負極活物質層52の端縁よりも内側に配置されている。
正極活物質層42は、負極活物質層52との間で充放電反応を起こす。
【0018】
正極基材41(集電基材41)は、導電性を有する。「導電性」を有するか否かは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が107Ω・cmを閾値として判定する。正極基材41の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材41としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材41としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)に規定されるA1085、A3003等が例示できる。
【0019】
正極基材41(集電基材41)の平均厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましく、10μm以上25μm以下が特に好ましい。正極基材41の平均厚さを上記の範囲とすることで、正極基材41の強度を高めつつ、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
【0020】
中間層は、正極基材41と正極活物質層42との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電性を有する粒子を含むことで正極基材41と正極活物質層42との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、樹脂バインダ及び導電性を有する粒子を含む。
【0021】
正極活物質層42は、正極活物質を含む。正極活物質層42は、必要に応じて、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0022】
正極活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。α-NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LixNi(1-x)]O2(0≦x<0.5)、Li[LixNiγCo(1-x-γ)]O2(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LixCo(1-x)]O2(0≦x<0.5)、Li[LixNiγMn(1-x-γ)]O2(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LixNiγMnβCo(1-x-γ-β)]O2(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)、Li[LixNiγCoβAl(1-x-γ-β)]O2(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、LixMn2O4、LixNiγMn(2-γ)O4等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCoPO4,Li3V2(PO4)3、Li2MnSiO4、Li2CoPO4F等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらの材料は表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極活物質層42においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
正極活物質は、通常、粒子(粉体)である。正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層42の電子伝導性が向上する。なお、正極活物質と他の材料との複合体を用いる場合、該複合体の平均粒径を正極活物質の平均粒径とする。「平均粒径 」とは、JIS-Z-8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
【0024】
粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0025】
正極活物質層42における正極活物質の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質層42の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
【0026】
(任意成分)
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。炭素質材料としては、黒鉛化炭素、非黒鉛化炭素、グラフェン系炭素等が挙げられる。非黒鉛化炭素としては、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。グラフェン系炭素としては、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。導電剤としては、これらの材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの材料を複合化して用いてもよい。例えば、カーボンブラックとCNTとを複合化した材料を用いてもよい。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりカーボンブラックが好ましく、中でもアセチレンブラックが好ましい。
【0027】
導電剤を使用する場合、正極活物質層42における導電剤の含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。導電剤の含有量を上記の範囲とすることで、二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0028】
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。なかでも、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)等の溶剤系バインダが好ましい。
【0029】
バインダを使用する場合、正極活物質層42におけるバインダの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、活物質を安定して保持することができる。
【0030】
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。増粘剤を使用する場合、正極活物質層42における増粘剤の含有量は、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。ここで開示される技術は、正極活物質層42が上記増粘剤を含まない態様で好ましく実施され得る。
【0031】
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の無機酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。フィラーを使用する場合、正極活物質層42におけるフィラーの含有量は、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。ここで開示される技術は、正極活物質層42が上記フィラーを含まない態様で好ましく実施され得る。
【0032】
正極活物質層42は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0033】
(負極)
負極50は、負極基材51(負極の集電基材51)と、当該負極基材51に直接又は中間層を介して配される負極活物質層52とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば上記正極40で例示した構成から選択することができる。
【0034】
本実施形態では、
図3に示すように、負極基材51(負極の集電基材51)の両面に負極活物質層52がそれぞれ重ねられている。
負極基材51(負極の集電基材51)は、本体部511と、本体部511から外側へ突出したタブ部512(負極のタブ部512)とを有する。負極活物質層52は、例えば
図4に示すように、本体部511の全体に重なり、また、本体部511とタブ部512との境界を越えてタブ部512の一部にも重なっている。タブ部512の大部分では、負極基材51(負極の集電基材51)が露出している。
負極活物質層52の端縁は、セパレータ60を介して対向する正極活物質層42の端縁よりも外側に配置されている。
【0035】
本実施形態では、下記の(1)及び(2)の少なくともいずれか一方が満たされる。
(1)負極活物質層52の単位面積当たりの質量は、タブ部512では本体部511よりも大きい。
(2)負極活物質層52の厚さは、タブ部512では本体部511よりも厚い。
上記の蓄電素子1において、充電時に負極50のタブ部512において電流が集中しやすい。タブ部512に重なった負極活物質層52では、電流集中の影響を受けて金属の析出が起こりやすい。これに対して(1)の場合、負極50のタブ部512における負極活物質層52の単位面積当たりの質量が本体部511よりも大きいことによって、単位面積当たりの負極活物質量がタブ部512でより大きくなっている。これにより、充電時においてLiイオンなどの金属イオンがより多く負極活物質に取り込まれる。従って、負極活物質に取り込まれなかった金属イオンが負極において金属となって析出することを抑制できる。また、(2)の場合、負極50のタブ部512における負極活物質層52の厚さが本体部511よりも厚いことによって、単位面積当たりの負極活物質量がタブ部512でより大きくなっている。よって、同様に、負極における金属の析出が起こることを抑制できる。この抑制は、特にハイレートでの充電時において有効である。
【0036】
上記(1)の条件が満たされる場合、本体部511に重なる負極活物質層52の単位面積当たりの質量(目付量)W2は、タブ部512に重なる負極活物質層52の単位面積当たりの質量W1よりも小さければよく(すなわちW1>W2であればよく)、特に限定されない。W2は、負極基材51の両面に負極活物質層52がそれぞれ形成されている場合、片方の面に重なる負極活物質層52の単位面積当たりの質量(2層分の単位面積当たりの質量の半分の値)である。W2は、例えば、面積100cm2当たり、0.1g/100cm2以上であることが適当であり、通常は0.2g/100cm2以上、典型的には0.3g/100cm2以上である。W2は、好ましくは0.40g/100cm2以上、より好ましくは0.45g/100cm2以上、さらに好ましくは0.48g/100cm2以上である。いくつかの態様において、W2は、0.50g/100cm2以上であってもよく、0.52g/100cm2以上であってもよい。また、W2は、例えば、1.0g/100cm2以下とすることができる。W2は、好ましくは0.8g/100cm2以下、より好ましくは0.7g/100cm2以下、さらに好ましくは0.65g/100cm2以下である。いくつかの態様において、W2は、0.60g/100cm2以下であってもよく、0.55g/100cm2以下であってもよい。なお、上記W2の値は、本体部511全体に重なる負極活物質層52の質量を面積100cm2当たりの質量で表したものである。本体部511全体に重なる負極活物質層52の面積は、所定の大きさを有するが任意であり、「g/100cm2」という単位は、本体部511全体に重なる負極活物質層52の面積と直接的な関係を有しない。
【0037】
上記(1)の条件が満たされる場合、タブ部512に重なる負極活物質層52の単位面積当たりの質量W1は、本体部511に重なる負極活物質層52の単位面積当たりの質量W2よりも大きければよく、特に限定されない。W1は、負極基材51の両面に負極活物質層52が形成されている場合、片方の面に重なる負極活物質層52の単位面積当たりの質量(2層分の単位面積当たりの質量の半分の値)である。
いくつかの態様において、タブ部512に重なる負極活物質層52の単位面積当たりの質量W1と、本体部511に重なる負極活物質層52の単位面積当たりの質量W2とが、下記式(I)を満たす。
1.0<W1/W2≦1.2 式(I)
上記式(I)が満たされることによって、ハイレートでの充電時に負極における金属の析出が生じることをより確実に抑制できる。ここに開示される技術は、例えば、W1とW2との関係が、
1.005≦W1/W2≦1.150 式(II)、
さらには、1.008≦W1/W2≦1.100 式(III)、
特には、1.010≦W1/W2≦1.050 式(IV)である態様で実施され得る。
なお、W1は、タブ部512の一部に負極活物質層52が重なっている部分の面積で、その部分に重なった負極活物質層52の質量を除することで求められる。従って、W1を算出するための面積は、比較的狭いが任意であり、100cm2に限定されない。
【0038】
上記(1)の条件を満たす場合、好ましい一態様では、タブ部512に重なる負極活物質層52の平均厚さは、本体部511に重なる負極活物質層52の平均厚さよりも厚い。すなわち、負極活物質層52の単位面積当たりの質量は、タブ部512では本体部511よりも大きく、かつ、負極活物質層52の平均厚さ(負極基材51の両面に負極活物質層52が形成されている場合は各層の平均厚さの合計値)は、タブ部512では本体部511よりも厚い。斯かる態様において、負極活物質層52の平均厚さを本体部511よりもタブ部512において厚くするためには、例えば、合剤組成物をタブ部512においてより多く塗布する一方で、本体部511においてより少なく塗布するとよい。このようにすれば、同一の合剤組成物を用いて、上記W2<W1の関係を満たす負極活物質層52を簡易に形成することができる。この場合、負極活物質層52の全体において単位体積当たりの負極活物質の質量が同じであってもよい。また、負極活物質層52の全体において単位体積当たりの負極活物質層の質量が同じであってもよい。
【0039】
上記(1)の条件が満たされる場合、他の好ましい一態様では、本体部511に重なる負極活物質層52の厚さと、タブ部512に重なる負極活物質層52の厚さとが略同じである。例えば負極活物質層52の全体において厚さが同じであっても、負極活物質層52の単位体積当たりの質量が本体部511よりもタブ部512において大きいことによって、負極活物質層52の単位面積当たりの質量が本体部511よりもタブ部512において大きくなっていてもよい。かかる態様において、同じ厚さで形成された負極活物質層52の単位面積当たりの質量を本体部511よりもタブ部512において大きくするためには、例えば、負極活物質の含有量がより多い合剤組成物をタブ部512に塗布する一方で、タブ部における厚さと同じ厚さになるように、負極活物質の含有量がより少ない合剤組成物を本体部511に塗布するとよい。
【0040】
これに対して、上記(2)の条件が満たされる場合、例えば
図5に示すように、負極活物質層52の最大厚さは、タブ部512では本体部511よりも厚い。タブ部512においては、負極活物質層52の少なくとも一部の厚さが本体部511よりも厚ければよく、例えば
図5に示すように、タブ部512の先端へ向けて次第に薄くなっていてもよい。一方、負極活物質層52の厚さは、例えば段差を有するように、タブ部512において本体部511よりも厚くなっていてもよい。
【0041】
上記(2)の条件が満たされる場合、本体部511に重なる負極活物質層52の平均厚さT2は、タブ部512に重なる負極活物質層52の平均厚さT1よりも薄ければよく(すなわちT2<T1であればよく)、特に限定されない。T2は、負極基材51の両面に負極活物質層52が形成されている場合、各層の平均厚さの合計値である。T2(平均厚さの合計値)は、例えば、50μm以上であることが適当であり、通常は70μm以上、典型的には80μm以上である。T2は、好ましくは90μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは110μm以上である。いくつかの態様において、T2は、115μm以上であってもよく、120μm以上であってもよい。また、T2は、例えば、250μm以下とすることができる。T2は、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは160μm以下である。いくつかの態様において、T2(平均厚さの合計値)は、150μm以下であってもよく、140μm以下であってもよい。
【0042】
上記(2)の条件が満たされる場合、タブ部512に重なる負極活物質層52の平均厚さT1は、本体部511に重なる負極活物質層52の平均厚さT2よりも厚ければよく、特に限定されない。T1は、負極基材51の両面に負極活物質層52が形成されている場合、各層の平均厚さの合計値である。いくつかの態様において、タブ部512に重なる負極活物質層52の平均厚さT1と、本体部511に重なる負極活物質層52の平均厚さT1との差(すなわち、T1-T2)は、例えば0.05μm以上であり、典型的には0.1μm以上である。また、T1-T2は、例えば20μm以下(典型的には10μm以下)であってもよく、例えば5μm以下)であってもよい。
なお、平均厚さは、ランダムに選んだ少なくとも5ケ所の厚さの測定値を平均することによって算出される。本体部511に重なる負極活物質層52の平均厚さT2は、本体部511の中央部分に重なる負極活物質層52の厚さを測定することによって求められる。一方、タブ部512に重なる負極活物質層52の平均厚さT1は、本体部511とタブ部512との境界Cから、負極活物質層52の端縁Bまでの中間点における厚さを測定し、複数の測定値を平均することで求められる。換言すると、平均厚さT1の測定部位は、負極活物質層52がタブ部512において重なった領域の中央部位である。
【0043】
上記(2)の条件が満たされる場合、負極活物質層52の平均厚さを本体部511よりもタブ部512において厚くするためには、例えば、合剤組成物をタブ部512においてより多く塗布する一方で、本体部511においてより少なく塗布するとよい。この場合、負極活物質層52の全体において単位体積当たりの負極活物質の質量が同じであってもよい。また、負極活物質層52の全体において単位体積当たりの質量が同じであってもよい。
【0044】
本実施形態の蓄電素子1では、負極50の集電基材51のタブ部512における断面積(A)と、正極活物質層42の表面積(B)との比(B/A)が、30,000以上150,000以下であってもよい。
詳しくは、本体部511及びタブ部512に重なった負極活物質層52との間で充放電反応を起こす正極活物質層42の表面積(B)と、上記の充放電反応に伴う電流が通る負極50の集電基材51のタブ部512における断面積(A)との比(B/A)は、30,000以上150,000以下(例えば30,000以上125,000以下)であってもよい。
斯かる構成により、ハイレートでの充電時に負極における金属の析出が生じることをより抑制できる。
【0045】
上記のタブ部512における断面積とは、タブ部512と外部端子5とをつなぐためにタブ部512に取り付けられた集電部材が、タブ部512に接触している部分の断面積である。例えば、集電部材としての集電クリップでタブ部512が挟み込まれている場合、
図5に示すように、タブ部512が集電クリップで挟み込まれた部分(Zで示す)の断面積を採用する。
また、本実施形態の蓄電素子1のように、1つの集電基材51が複数のタブ部512を有する場合、タブ部512における断面積(A)は、各タブ部512の断面積の総面積(合計面積)となる。このときの正極活物質層42の表面積(B)は、対象とした各タブ部512を通る電流を生じさせる正極活物質層42の総面積である。この場合、各タブ部512の平均断面積(すなわち、各タブ部512の断面積の総面積を各タブ部512の個数で割った値)は、特に限定されないが、0.003cm
2以上0.006cm
2以下であってもよく、好ましくは0.004cm
2以上0.005cm
2以下である。また、1つのタブ部512あたりの正極活物質層42の表面積(すなわち、正極活物質層42の総面積をタブ部512の個数で割った値)は、特に限定されないが、100cm
2以上750cm
2以下であってもよく、好ましくは120cm
2以上700cm
2以下である。
なお、電極体が、上述したいわゆる積層型である場合は、セパレータを介して対向する各正極と各負極とにおいて、上記の比(B/A)が算出される。セパレータを介して対向する少なくとも1組の正極及び負極が、上記の比(B/A)の数値範囲を満たしてもよい。好ましくは、すべての正極及び負極について、上記の比(B/A)の数値範囲が満たされる。
【0046】
負極基材51は、導電性を有する。負極基材51の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム 等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材51としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材51としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
【0047】
負極基材51の平均厚さは、2μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、4μm以上25μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。負極基材51の平均厚さを上記の範囲とすることで、負極基材51の強度を高めつつ、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
【0048】
負極活物質層52は、負極活物質を含む。負極活物質層52は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記正極40で例示した材料から選択できる。バインダを使用する場合、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の水系バインダを用いることが好ましい。負極活物質層52におけるバインダの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、活物質を安定して保持することができる。増粘剤を使用する場合、負極活物質層52における増粘剤の含有量は、0.5質量%以上8質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。導電剤を使用する場合、負極活物質層52における導電剤の含有量は、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。ここで開示される技術は、負極活物質層52が上記導電剤を含まない態様で好ましく実施され得る。フィラーを使用する場合、負極活物質層52におけるフィラーの含有量は、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。ここで開示される技術は、負極活物質層52が上記フィラーを含まない態様で好ましく実施され得る。
【0049】
負極活物質層52は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba、等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0050】
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;Li4Ti5O12、LiTiO2、TiNb2O7等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛及び非黒鉛質炭素が好ましい。負極活物質層52においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、X線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
【0052】
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてX線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
【0053】
ここで、「放電状態」とは、負極活物質として炭素材料を含む負極50を作用極として、金属Liを対極として用いた単極電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態をいう。開回路状態での金属Li対極の電位は、Liの酸化還元電位とほぼ等しいため、上記単極電池における開回路電圧は、Liの酸化還元電位に対する炭素材料を含む負極50の電位とほぼ同等である。つまり、上記単極電池における開回路電圧が0.7V以上であることは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されていることを意味する。
【0054】
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
【0055】
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
【0056】
負極活物質は、通常、粒子(粉体)である。負極活物質の平均粒径は、例えば、1nm以上100μm以下とすることができる。負極活物質が炭素材料、チタン含有酸化物又はポリリン酸化合物である場合、その平均粒径は、1μm以上100μm以下であってもよい。負極活物質が、Si、Sn、Si酸化物、又は、Sn酸化物等である場合、その平均粒径は、1nm以上1μm以下であってもよい。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、負極活物質層52の電子伝導性が向上する。粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法及び粉級方法は、例えば、上記正極40で例示した方法から選択できる。負極活物質が金属Li等の金属である場合、負極活物質は、箔状であってもよい。
【0057】
負極活物質層52における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層52の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
【0058】
(セパレータ)
セパレータ60は、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータ60として、例えば、基材層のみからなるセパレータ60、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータ60の基材層の材質としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの材質の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータ60の基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータ60の基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
【0059】
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、1気圧の空気雰囲気下で室温から500℃に加熱したときの質量減少が5%以下であるものが好ましく、1気圧の空気雰囲気下で800℃に加熱したときの質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。質量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、蓄電素子1の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。
【0060】
セパレータ60の空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
【0061】
セパレータ60として、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、漏液を抑制する効果がある。セパレータ60として、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等とポリマーゲルを併用してもよい。
【0062】
(非水電解質)
非水電解質としては、公知の非水電解質の中から適宜選択できる。非水電解質には、非水電解液を用いてもよい。非水電解液は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩とを含む。
【0063】
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。
【0064】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でもECが好ましい。
【0065】
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でもEMCが好ましい。
【0066】
非水溶媒として、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
【0067】
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
【0068】
リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2F)2等の無機リチウム塩、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、LiC(SO2C2F5)3等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPF6がより好ましい。
【0069】
非水電解液における電解質塩の含有量は、20℃1気圧下において、0.1mol/dm3以上2.5mol/dm3以下であると好ましく、0.3mol/dm3以上2.0mol/dm3以下であるとより好ましく、0.5mol/dm3以上1.7mol/dm3以下であるとさらに好ましく、0.7mol/dm3以上1.5mol/dm3以下であると特に好ましい。電解質塩の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解液のイオン伝導度を高めることができる。
【0070】
非水電解液は、非水溶媒と電解質塩以外に、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホスフェート(LiFOP)等のシュウ酸エステル;ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル、モノフルオロリン酸リチウム等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
非水電解液に含まれる添加剤の含有量は、非水電解液全体の質量に対して0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であると特に好ましい。添加剤の含有量を上記の範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又はサイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
【0072】
非水電解質には、固体電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。
【0073】
固体電解質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオン伝導性を有し、常温(例えば15℃~25℃)において固体である任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及び酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質等が挙げられる。
【0074】
硫化物固体電解質としては、リチウムイオン二次電池の場合、例えば、Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2S5、Li10Ge-P2S12、等が挙げられる。
【0075】
本実施形態の蓄電素子1の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、ラミネートフィルム型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。
図1に角型電池の一例としての蓄電素子1(非水電解質蓄電素子)を示す。セパレータ60を挟んで巻回された正極40及び負極50を有する電極体2が角型のケース(容器)3に収納される。正極40は正極リード(図示せず)を介して正極端子4と電気的に接続されている。負極50は負極リード(図示せず)を介して負極端子5と電気的に接続されている。
【0076】
<非水電解質蓄電装置の構成>
本実施形態の蓄電素子1は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の蓄電素子1を集合して構成した蓄電ユニット10(バッテリーモジュール)として搭載することができる。この場合、蓄電装置に含まれる少なくとも一つの蓄電素子1に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
図6に、電気的に接続された二以上の蓄電素子1が集合した蓄電ユニット10をさらに集合した蓄電装置100の一例を示す。蓄電装置100は、二以上の蓄電素子1を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二以上の蓄電ユニット10を電気的に接続するバスバ(図示せず)等を備えていてもよい。蓄電ユニット10又は蓄電装置100は、一以上の蓄電素子1の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0077】
<非水電解質蓄電素子の製造方法>
本実施形態の蓄電素子1の製造方法は、公知の方法から適宜選択できる。当該製造方法は、例えば、電極体2を準備することと、非水電解質を準備することと、電極体2及び非水電解質を容器に収容することと、を備える。電極体2を準備することは、正極40及び負極50を準備することと、正極40及び負極50を、セパレータ60を介して積層又は巻回することにより電極体2を形成することとを備える。
【0078】
非水電解質を容器に収容することは、公知の方法から適宜選択できる。例えば、非水電解質に非水電解液を用いる場合、容器に形成された注入口から非水電解液を注入した後、注入口を封止すればよい。
【0079】
<その他の実施形態>
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
【0080】
上記実施形態では、蓄電素子1が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類、形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、種々の二次電池、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用できる。
【0081】
上記実施形態では、正極40及び負極50がセパレータ60を介して積層された電極体について説明したが、電極体は、セパレータ60を備えなくてもよい。例えば、正極又は負極の活物質層上に導電性を有さない層が形成された状態で、正極及び負極が直接接してもよい。
【0082】
上記実施形態では、いわゆる巻回型の電極体について詳しく説明したが、電極体は、シート状の正極、シート状のセパレータ、及びシート状の負極が繰り返し積み重なって構成された積層型であってもよい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0084】
以下に示すようにして、非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を製造した。
【0085】
(実施例1)
本例に係るリチウムイオン二次電池は、正極活物質層を有する正極と、正極活物質層と対向する負極活物質層を有する負極とを備える。正極及び負極は、それぞれ、シート状の集電基材と、該集電基材の両面に重なった活物質層とを有する。
(1)正極の作製
溶媒:N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
導電剤:カーボンブラック(4.0質量部)
活物質(LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2)の粒子:(94.5質量部)
バインダ:PVDF(1.5質量部)
上記の原料を混合し、混練することで、正極用の合剤組成物を調製した。調製した正極用の合剤組成物を、乾燥後の正極活物質層の単位面積当たりの質量(目付量)が1.7g/100cm2 となるように、アルミニウム箔(厚さ12μmの正極の集電基材)の両面にそれぞれ塗布した。加熱による乾燥後、ロールプレスを行った。その後、真空乾燥して、水分等を除去した。プレス後の活物質層(1層分)の厚さは、51μmであった。単位体積当たりの正極活物質層の質量は、3.3g/cm3であった。
【0086】
(2)負極の作製
溶媒:水
活物質:粒子状の非晶質炭素(難黒鉛化炭素)(97.4質量部)
バインダ:SBR(2.0質量部)
増粘剤:CMC(0.6質量部)
上記の原料を混合し、混練することで、負極用の合剤組成物を調製した。調製した負極用の合剤組成物を、銅箔(厚さ8μmの負極の集電基材)の両面にそれぞれ塗布した。なお、銅箔の本体部に重なる負極活物質層の単位面積当たりの質量(目付量、1層分)が0.539g/100cm2 となるように塗布した。加熱による乾燥後、ロールプレスを行った。その後、真空乾燥して、水分等を除去した。プレス後の活物質層の厚さは、61μm(1層分)、すなわち122μm(2層分)であった。単位体積当たりの負極活物質層の質量は、0.9g/cm3であった。
負極の集電基材は、本体部(中央部)と、該本体部から外側へ突出したタブ部とを有する。負極活物質層は、本体部とタブ部との境界を越えてタブ部の一部にも重なる。この例では、負極活物質層の単位面積当たりの質量が、タブ部において本体部よりも大きくなるように設定した負極を作製した。
なお、負極の作製において、合剤組成物をタブ部においてより多く塗布することによって、タブ部に重なる負極活物質層の単位面積当たりの質量を大きくし、また、タブ部に重なる負極活物質層の平均厚さを厚くした。
【0087】
(3)セパレータ(セパレータ基材)
セパレータ基材として厚さが14μmのポリエチレン製微多孔膜を用いた。このセパレータ基材のみでセパレータを構成した。
【0088】
(4)非水電解液の調製
非水電解液としては、以下の方法で調製したものを用いた。非水溶媒として、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネートを、いずれも1体積部ずつ混合した溶媒を用い、この非水溶媒に、塩濃度が1.2mol/dm3となるようにLiPF6を溶解させ、非水電解液を調製した。
【0089】
(5)ケース内への電極体の配置
上記の正極、上記の負極、上記の非水電解液、セパレータ、及びケースを用いて、一般的な方法によってリチウムイオン二次電池を組み立てた。
まず、セパレータが上記の正極および負極の間に配されて積層されてなるシート状物を巻回した。次に、巻回されてなる電極体を、ケースとしてのアルミニウム製の角形電槽缶のケース本体内に配置した。続いて、正極及び負極を2つの外部端子それぞれに電気的に接続させた。さらに、ケース本体に蓋体を取り付けた。上記の非水電解液を、ケースの蓋体に形成された注液口からケース内に注入した。最後に、ケースの注液口を封止することにより、ケースを密閉した。
【0090】
(実施例2~5)
表1に示す構成に変えた点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
【0091】
(比較例1~4)
表1に示す構成に変えた点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
【0092】
<ハイレート充電時における金属析出の評価>
それぞれの電池の定格容量まで1時間で完全充電できる電流の大きさ(電流値)を1Cと定義した。このように電流値を定義したうえで、3Cの電流値で上限電圧(本例においては4.32V)まで定電流充電し、1/3Cの電流値で下限電圧(本例においては2.4V)まで定電流放電する充放電試験を10サイクル行った。その後、電池を解体して負極表面の金属(Li)析出の有無を確認した。
【0093】
実施例1~5、及び、比較例1~4のリチウムイオン二次電池について上記評価を行った結果を表1に示す。
【0094】
【0095】
表1から把握されるように、実施例の蓄電素子は、ハイレートでの充電時に負極における金属の析出が生じることが抑制されていた。一方、比較例の蓄電素子は、ハイレートでの充電時に負極における金属の析出が生じた。
【符号の説明】
【0096】
1:蓄電素子(非水電解質二次電池)、
2:電極体、
3:ケース、 31:ケース本体、 32:蓋体、
4:正極端子、 5:負極端子、
40:正極、
41:正極の集電基材(正極基材)、 42:正極活物質層、 412:正極のタブ部、
50:負極、
51:負極の集電基材(負極基材)、 511:本体部、 512:タブ部(負極のタブ部)、
52:負極活物質層、
60:セパレータ、
10:蓄電ユニット、 100:蓄電装置。