IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】限界電流式ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/41 20060101AFI20231228BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01N27/41 325D
G01N27/41 325H
G01N27/416 323
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020020268
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021124473
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】天本 百合奈
(72)【発明者】
【氏名】湯地 洋行
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212649(JP,A)
【文献】特開2018-132368(JP,A)
【文献】特開2019-086301(JP,A)
【文献】特開2019-082418(JP,A)
【文献】特開昭59-166854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/41
G01N 27/416
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質と、
前記固体電解質上に設けられている第1電極と、
前記固体電解質上に設けられている第2電極と、
ガス入口と前記第1電極のうち前記固体電解質に対向している第1部分との間に延在しているガス導入路とを備え、
前記第1電極は、第1多孔質金属電極であり、
前記ガス導入路は、前記第1電極の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されており、
前記第1多孔質遷移金属酸化物は、Ta25、TiO2またはCr23である、限界電流式ガスセンサ。
【請求項2】
前記ガス導入路の第1充填率は、60%以下である、請求項1に記載の限界電流式ガスセンサ。
【請求項3】
前記第1多孔質金属電極は、白金またはパラジウムで形成されている、請求項1または請求項2に記載の限界電流式ガスセンサ。
【請求項4】
前記第2電極は、第2多孔質金属電極であり、
前記第1多孔質遷移金属酸化物の前記第2融点は、前記第2電極の第3融点より高い、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の限界電流式ガスセンサ。
【請求項5】
前記第2多孔質金属電極は、白金またはパラジウムで形成されている、請求項4に記載の限界電流式ガスセンサ。
【請求項6】
ガス出口と前記第2電極のうち前記固体電解質に対向している第2部分との間に延在しているガス排出路をさらに備え、
前記ガス排出路は、前記第2電極の前記第3融点より高い第4融点を有する第2多孔質遷移金属酸化物で形成されており、
記第2多孔質遷移金属酸化物は、Ta25、TiO2またはCr23である、請求項4または請求項5に記載の限界電流式ガスセンサ。
【請求項7】
前記ガス排出路の第2充填率は、60%以下である、請求項6に記載の限界電流式ガスセンサ。
【請求項8】
絶縁膜をさらに備え、
前記絶縁膜は、前記第1電極の前記第1部分と、前記固体電解質と、前記第2電極のうち前記固体電解質に対向している第2部分とからなる積層体を覆っている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の限界電流式ガスセンサ。
【請求項9】
前記固体電解質を加熱するヒータと、
前記ヒータが設けられている基板をさらに備え、
前記第1電極は、前記基板に対向する前記固体電解質の第1面上に設けられており、
前記第2電極は、前記第1面とは反対側の前記固体電解質の第2面上に設けられている、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の限界電流式ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、限界電流式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特開昭59-166854号公報(特許文献1)の第6図は、限界電流式酸素センサを開示している。この限界電流式ガスセンサは、絶縁基板と、ガス透過性を有する第1電極と、薄膜固体電解質と、ガス透過性を有する第2電極とを備えている。絶縁基板上に、第1電極と、薄膜固体電解質と、第2電極とが順次積層されている。第1電極及び第2電極は、各々、白金またはパラジウムで形成されている。酸素ガスは、第1電極を通って酸素イオンになる。酸素イオンは薄膜固体電解質を伝導して、第2電極に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭59-166854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の限界電流式酸素センサを複数製造し、複数の限界電流式酸素センサの各々を用いて被測定ガスに含まれる酸素の濃度を測定したところ、複数の限界電流式酸素センサの間で限界電流値の温度係数が大きくばらついた。そのため、特許文献1の限界電流式酸素センサの各々を用いて、被測定ガスに含まれる酸素の濃度を正確かつ安定的に得ることが難しい。本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる限界電流式ガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の限界電流式ガスセンサは、固体電解質と、第1電極と、第2電極と、ガス導入路とを備える。第1電極は、固体電解質上に設けられている。第2電極は、固体電解質上に設けられている。ガス導入路は、ガス入口と第1電極のうち固体電解質に対向している第1部分との間に延在している。第1電極は、第1多孔質金属電極である。ガス導入路は、第1電極の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。第1多孔質遷移金属酸化物は、Ta25、TiO2またはCr23である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の限界電流式ガスセンサによれば、限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの概略部分断面図である。
図2】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの回路図である。
図3】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの製造方法の一工程を示す概略平面図である。
図4】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの製造方法における、図3に示す工程の次工程を示す概略平面図である。
図5】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの製造方法における、図4に示す工程の次工程を示す概略平面図である。
図6】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの製造方法における、図5に示す工程の次工程を示す概略平面図である。
図7】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの製造方法における、図6に示す工程の次工程を示す概略平面図である。
図8】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの製造方法における、図7に示す工程の次工程を示す概略平面図である。
図9】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの製造方法における、図8に示す工程の次工程を示す概略平面図である。
図10】実施の形態1の限界電流式ガスセンサの製造方法における、図9に示す工程の次工程を示す概略平面図である。
図11】実施の形態1の実施例の限界電流式ガスセンサ及び比較例の限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度係数のばらつきと、実施の形態1の実施例の限界電流式ガスセンサ及び比較例の限界電流式ガスセンサの応答時間のばらつきとを示す図である。
図12】限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度係数の算出方法を示す図である。
図13】比較例の限界電流式ガスセンサを700℃の温度で1時間アニールする前の、ガス導入路及びガス排出路として機能する比較例の限界電流式ガスセンサの多孔質白金膜の断面SEM写真を示す図である。
図14】比較例の限界電流式ガスセンサを700℃の温度で1時間アニールした後の、ガス導入路及びガス排出路として機能する比較例の限界電流式ガスセンサの多孔質白金膜の断面SEM写真を示す図である。
図15】実施の形態1の限界電流式ガスセンサを700℃の温度で1時間アニールする前の、ガス導入路として機能する実施の形態1の限界電流式ガスセンサの多孔質Ta25膜の断面SEM写真を示す図である。
図16】実施の形態1の限界電流式ガスセンサを700℃の温度で1時間アニールした後の、ガス導入路として機能する実施の形態1の限界電流式ガスセンサの多孔質Ta25膜の断面SEM写真を示す図である。
図17】限界電流式ガスセンサの限界電流値の応答時間の算出方法を示す図である。
図18】実施例1の限界電流式ガスセンサの電圧-電流特性の温度サイクル依存性を示す図である。
図19】1.0Vの電圧が印加された実施例1の限界電流式ガスセンサの過渡応答の温度サイクル依存性を示す図である。
図20】1.0Vの電圧が印加された実施例1の限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度サイクル依存性を示す図である。
図21】実施例2の限界電流式ガスセンサの電圧-電流特性の温度サイクル依存性を示す図である。
図22】1.0Vの電圧が印加された実施例2の限界電流式ガスセンサの過渡応答の温度サイクル依存性を示す図である。
図23】1.0Vの電圧が印加された実施例2の限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度サイクル依存性を示す図である。
図24】実施の形態1の変形例の限界電流式ガスセンサの概略部分断面図である。
図25】実施の形態2の限界電流式ガスセンサの概略部分断面図である。
図26】実施の形態2の変形例の限界電流式ガスセンサの概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0009】
(実施の形態1)
図1及び図2を参照して、実施の形態1の限界電流式ガスセンサ1を説明する。限界電流式ガスセンサ1は、例えば、自動車の排ガスのような被測定ガス4に含まれる、窒素酸化物(NO)の濃度を測定することができる。限界電流式ガスセンサ1は、例えば、被測定ガス4に含まれる酸素(O2)の濃度、または、被測定ガス4に含まれる水蒸気(H2O)濃度を測定することができる。
【0010】
限界電流式ガスセンサ1は、ガス導入路16と、第1電極17と、固体電解質20と、第2電極27とを主に備える。限界電流式ガスセンサ1は、基板10と、ヒータ12と、ガス排出路30と、絶縁膜32とをさらに備えてもよい。限界電流式ガスセンサ1は、絶縁層11,13,15,22,23,25,28をさらに備えてもよい。
【0011】
基板10は、特に限定されないが、シリコン(Si)基板である。基板10の厚さは、例えば、2μm以下である。そのため、基板10の熱容量が小さくなって、ヒータ12の消費電力を低減させることができる。
【0012】
ヒータ12は、固体電解質20におけるイオン伝導を可能にするために、固体電解質20を加熱する。ヒータ12は、基板10上に設けられている。具体的には、ヒータ12は、絶縁層11を介して、基板10の上面上に形成されている。絶縁層11は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)または酸化アルミニウム(Al23)で形成されている。ヒータ12は、絶縁層11上に設けられている。絶縁層11は、ヒータ12と基板10とを電気的に絶縁している。ヒータ12は、例えば、白金(Pt)薄膜ヒータまたはポリシリコン薄膜ヒータである。ヒータ12上に、絶縁層13が設けられている。ヒータ12は、絶縁層11と絶縁層13とによって挟まれている。絶縁層13は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)または酸化アルミニウム(Al23)で形成されている。
【0013】
ヒータ12は、基板10の下面上に形成されてもよい。例えば、絶縁層11、ヒータ12及び絶縁層13で構成される積層体が、基板10の下面上に形成されてもよい。ヒータ12は、基板10に埋め込まれていてもよい。例えば、絶縁層11、ヒータ12及び絶縁層13で構成される積層体が、基板10に埋め込まれていてもよい。
【0014】
絶縁層13上に、絶縁層15が設けられている。絶縁層15は、例えば、五酸化タンタル(Ta25)層である。
【0015】
絶縁層13上に、絶縁層15を介して、ガス導入路16が設けられている。ガス導入路16は、ガス入口35と第1電極17のうち固体電解質20に対向している第1部分17dとの間に延在している。基板10の上面に沿う方向(図1の左右方向)におけるガス導入路16の長さは、例えば、ガス導入路16の厚さの10倍以上である。基板10の上面に沿う方向(図1の左右方向)におけるガス導入路16の長さは、例えば、第1電極17の厚さの10倍以上である。
【0016】
ガス導入路16は、第1電極17の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。ガス導入路16は、第2電極27の第3融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。本明細書では、遷移金属は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の元素の長周期表における3族から11族までの元素を意味する。第1多孔質遷移金属酸化物は、五酸化タンタル(Ta25)、二酸化チタン(TiO2)または酸化クロム(III)(Cr23)である。表1に、五酸化タンタル(Ta25)、二酸化チタン(TiO2)及び酸化クロム(III)(Cr23)の各々の融点と、第1電極17及び第2電極27の材料の例である白金(Pt)及びパラジウム(Pd)の各々の融点とを示す。
【0017】
【表1】
【0018】
後述するように、固体電解質20におけるイオンの伝導を可能にするために、限界電流式ガスセンサ1を高温で動作させると、第1電極17では空孔が凝集するのに対し、ガス導入路16では空孔が均一に分布したままである。そのため、ガス導入路16は、第1電極17よりも被測定ガス4を通しやすい。
【0019】
ガス導入路16の第1充填率は、例えば、60%以下である。ガス導入路16の第1充填率は、例えば、45%以下であってもよい。第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16は、例えば、遷移金属酸化物を斜方蒸着することによって得られる。第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16は、遷移金属酸化物の粉末を焼結させることによって得られてもよく、ガス導入路16は、多孔質の遷移金属酸化物焼結体であってもよい。ガス導入路16は、単位時間当たりの固体電解質20への被測定ガス4の流量を制限する。
【0020】
ガス導入路16の第1充填率が減少して、ガス導入路16の空孔率が増加すると、被測定ガス4がガス導入路16を通りやすくなり、限界電流式ガスセンサ1の応答時間が短縮され得る。ガス導入路16の空孔率が増加すると、限界電流式ガスセンサ1の動作時に固体電解質20に発生する熱歪を、ガス導入路16で緩和することができる。限界電流式ガスセンサ1の限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。
【0021】
本明細書において、ある層の充填率は、以下のようにして算出される。当該層の反射スペクトルを得る。この反射スペクトルから当該層の光学厚さndを算出する。nは当該層の屈折率を表し、dは当該層の物理厚さを表す。それから、当該層のSEM断面像を取得する。当該層のSEM断面像から、当該層の物理厚さdを得る。当該層の光学厚さndと当該層の物理厚さdとから、当該層の屈折率nを得る。予め当該層の充填率が100%である場合の屈折率n100を得ておく。一般に、ローレンツ・ローレンツの式から、当該層の充填率は、(n2-1)/(n2+2)に比例することが分かる。そこで、(n100 2-1)/(n100 2+2)に対する(n2-1)/(n2+2)の比率を算出して、当該層の充填率が算出される。
【0022】
第1電極17は、ガス導入路16上に設けられている。第1電極17は、固体電解質20上に設けられている。特定的には、第1電極17は、基板10に対向する固体電解質20の第1面20a(固体電解質20の下面)上に設けられている。第1電極17の第1部分17dは、固体電解質20の第1面20aに対向している。第1電極17は、固体電解質20とガス導入路16との間に設けられている。第1電極17の第1部分17dは、第1電極17のうち、基板10の上面の法線方向において固体電解質20とガス導入路16との間に挟まれている部分である。第1電極17の第1部分17dは、固体電解質20の第1面20aに接してもよい。
【0023】
第1電極17は、第1多孔質金属電極である。そのため、第1電極17は、被測定ガス4を固体電解質20に向けて通しやすい。第1電極17の第1融点は、ガス導入路16を構成する第1多孔質遷移金属酸化物の第2融点より低い。第1電極17の第1融点は、ガス排出路30を構成する第2多孔質遷移金属酸化物の第4融点より低い。第1電極17は、例えば、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)で形成されている。
【0024】
第1電極17の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。第1電極17は、ガス入口35まで延在してもよい。基板10の上面に沿う方向(図1の左右方向)における第1電極17の長さは、例えば、第1電極17の厚さの10倍以上である。そのため、限界電流式ガスセンサ1の高温での動作時に第1電極17の空孔が凝集すると、基板10の上面に沿う方向(図1の左右方向)では第1電極17の被測定ガス4の透過率は大きく減少するが、第1電極17の厚さ方向(図1の上下方向)では第1電極17の被測定ガス4の透過率は比較的高い。限界電流式ガスセンサ1の高温での動作時にガス導入路16は第1電極17よりも被測定ガス4を通しやすい。第1電極17がガス入口35まで延在していても、被測定ガス4は主にガス導入路16を流れる。
【0025】
固体電解質20は、第1電極17上に設けられている。固体電解質20は、基板10に対向している第1面20a(下面)と、第1面20aとは反対側の第2面20b(上面)とを含む。固体電解質20は、酸素イオン伝導体のようなイオン伝導体である。固体電解質20は、例えば、ZrO2、HfO2、ThO2またはBi23等の母材に、CaO、MgO、Y23またはYb23等が安定剤として添加されている酸素イオン伝導体である。特定的には、固体電解質20は、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)で形成されている。固体電解質20は、例えば、(La,Sr,Ga,Mg,Co)O3で形成されている酸素イオン伝導体であってもよい。固体電解質20は、ヒータ12によって加熱されることによって、イオン伝導性を有する。限界電流式ガスセンサ1の動作時に、固体電解質20は、ヒータ12を用いて、例えば、400℃以上750℃以下の温度で加熱される。
【0026】
固体電解質20は、例えば1μm以上10μm以下の厚さを有する薄膜であり、限界電流式ガスセンサ1は薄膜型限界電流式ガスセンサである。固体電解質20は、例えば100μm以上の厚さを有するバルクであってもよく、限界電流式ガスセンサ1はバルク型限界電流式ガスセンサであってもよい。
【0027】
絶縁層13と、ガス導入路16の側面と、第1電極17の側面と、固体電解質20の側面及び第2面20bの一部とに、絶縁層22が設けられている。絶縁層22は、例えば、五酸化タンタル(Ta25)層である。絶縁層22上に、絶縁層23が設けられている。絶縁層23は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)層である。絶縁層22の側面上と絶縁層23上とに、絶縁層25が設けられている。絶縁層25は、例えば、二酸化チタン(TiO2)層である。絶縁層22、絶縁層23及び絶縁層25には、第1開口と第2開口とが設けられている。第1開口から、固体電解質20の第2面20bの一部が露出している。第2開口から、第1電極17が露出している。第2開口は、ガス入口35として機能する。第1電極17がガス入口35まで延在していない場合、第2開口から、ガス導入路16が露出している。
【0028】
第2電極27は、固体電解質20上に設けられている。特定的には、第2電極27は、固体電解質20の第2面20b(固体電解質20の上面)上に設けられている。第2電極27の第2部分27dは、固体電解質20の第2面20bに対向している。第2電極27の第2部分27dは、第2電極27のうち、基板10の上面の法線方向において固体電解質20の第2面20bに対向している部分である。第2電極27の第2部分27dは、固体電解質20の第2面20bに接してもよい。第2電極27は、固体電解質20とガス排出路30との間に設けられている。
【0029】
第2電極27は、第2多孔質金属電極である。そのため、第2電極27は、ガスをガス排出路30に向けて通しやすい。第2電極27の第3融点は、ガス導入路16を構成する第1多孔質遷移金属酸化物の第2融点より低い。第2電極27の第3融点は、ガス排出路30を構成する第2多孔質遷移金属酸化物の第4融点より低い。第2電極27は、例えば、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)で形成されている。
【0030】
第2電極27は、絶縁層25上に設けられている。第2電極27は、絶縁層22、絶縁層23及び絶縁層25に設けられている第1開口内に設けられている。第2電極27の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。第2電極27は、ガス出口36まで延在してもよい。基板10の上面に沿う方向(図1の左右方向)における第2電極27の長さは、例えば、第2電極27の厚さの10倍以上である。そのため、限界電流式ガスセンサ1の高温での動作時に第2電極27の空孔が凝集すると、基板10の上面に沿う方向(図1の左右方向)では第2電極27のガスの透過率は大きく減少するが、第2電極27の厚さ方向(図1の上下方向)では第2電極27のガスの透過率は比較的高い。
【0031】
第2電極27上に、絶縁層28が設けられている。絶縁層28は、例えば、二酸化チタン(TiO2)層である。
【0032】
絶縁層28上に、ガス排出路30が設けられている。ガス排出路30は、ガス出口36と第2電極27のうち固体電解質20に対向している第2部分27dとの間に延在している。基板10の上面に沿う方向(図1の左右方向)におけるガス排出路30の長さは、例えば、ガス排出路30の厚さの10倍以上である。基板10の上面に沿う方向(図1の左右方向)におけるガス排出路30の長さは、例えば、第2電極27の厚さの10倍以上である。
【0033】
ガス排出路30は、第1電極17の第1融点より高い第4融点を有する第2多孔質遷移金属酸化物で形成されている。ガス排出路30は、第2電極27の第3融点より高い第4融点を有する第2多孔質遷移金属酸化物で形成されている。第2多孔質遷移金属酸化物は、五酸化タンタル(Ta25)、二酸化チタン(TiO2)または酸化クロム(III)(Cr23)である。
【0034】
固体電解質20におけるイオンの伝導を可能にするために限界電流式ガスセンサ1を高温で動作させると、第2電極27では空孔が凝集するのに対し、ガス排出路30では空孔が均一に分布したままである。そのため、ガス排出路30は第2電極27よりもガスを通しやすい。第2電極27がガス出口36まで延在していても、ガスは主にガス排出路30を流れる。
【0035】
ガス排出路30の第2充填率は、例えば、60%以下である。ガス排出路30の第2充填率は、例えば、45%以下であってもよい。第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30は、例えば、遷移金属酸化物を斜方蒸着することによって得られる。第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30は、遷移金属酸化物の粉末を焼結させることによって得られてもよく、ガス排出路30は、多孔質の遷移金属酸化物焼結体であってもよい。
【0036】
ガス排出路30の第2充填率が減少して、ガス排出路30の空孔率が増加すると、ガスがガス排出路30を通りやすくなり、限界電流式ガスセンサ1の応答時間が短縮され得る。ガス排出路30の空孔率が増加すると、限界電流式ガスセンサ1の動作時に固体電解質20に発生する熱歪を、ガス排出路30で緩和することができる。限界電流式ガスセンサ1の限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。
【0037】
絶縁膜32は、第1電極17の第1部分17dと、固体電解質20と、第2電極27の第2部分27dとからなる積層体を覆っている。絶縁膜32は、ガス排出路30のうち第2電極27の第2部分27dに対向する部分をさらに覆っている。絶縁膜32は、第2電極27に対して基板10から遠位している。絶縁膜32は、さらに、絶縁層25上と、第2電極27の側面上と、絶縁層28の側面上とに設けられている。絶縁膜32は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)層である。
【0038】
図2に示されるように、限界電流式ガスセンサ1は、電圧源5と電流検出器6とに接続されている。具体的には、電圧源5の負極は、第1電極17に接続されており、電圧源5の正極は、第2電極27に接続されている。電流検出器6は、限界電流式ガスセンサ1の第1電極17と第2電極27との間に流れる限界電流を検出する。
【0039】
図1及び図3から図10を参照して、本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1の製造方法の一例を説明する。
【0040】
図3を参照して、基板10上に、絶縁層11を形成する。絶縁層11は、例えば、基板10上に二酸化シリコンを蒸着することによって形成されてもよいし、あるいは、基板10の上面を酸化することによって形成されてもよい。
【0041】
図3を参照して、絶縁層11上に、ヒータ12を形成する。ヒータ12は、例えば、白金(Pt)薄膜ヒータまたはポリシリコン薄膜ヒータである。白金(Pt)薄膜ヒータは、例えば、白金ペーストを絶縁層11上に塗布することによって形成される。ポリシリコン薄膜ヒータは、例えば、絶縁層上にポリシリコン層を設け、それからポリシリコン層にボロン(B)を添加することによって形成される。図3を参照して、ヒータ12上に、絶縁層13を形成する。絶縁層13は、例えば、ヒータ12上に二酸化シリコンを蒸着することによって形成される。
【0042】
図4を参照して、絶縁層13上に、絶縁層15を形成する。絶縁層15は、例えば、五酸化タンタル(Ta25)を層である。絶縁層15は、例えば、スパッタ法により形成される。
【0043】
図4を参照して、絶縁層15上に、ガス導入路材料層16pを形成する。ガス導入路材料層16pは、例えば、以下の第一の方法または第二の方法によって形成される。
【0044】
第一の方法では、ガス導入路材料層16pは、遷移金属酸化物を斜方蒸着することによって形成される。遷移金属酸化物を斜方蒸着すると、ガス導入路材料層16pは多孔質層となる。ガス導入路材料層16pは、第1多孔質遷移金属酸化物で形成される。第1多孔質遷移金属酸化物は、五酸化タンタル(Ta25)、二酸化チタン(TiO2)または酸化クロム(III)(Cr23)である。
【0045】
遷移金属酸化物を斜方蒸着する際の蒸着角度は、70°以上である。蒸着角度を70°以上とすることによって、ガス導入路材料層16pは多孔質層となる。蒸着角度は、80°以上であってもよく、84°以上であってもよい。蒸着角度を80°以上とすることによって、ガス導入路材料層16pの第1充填率を60%以下とすることができる。蒸着角度を84°以上とすることによって、ガス導入路材料層16pの第1充填率を45%以下とすることができる。蒸着角度は、90°未満である。そのため、絶縁層15上にガス導入路材料層16pを堆積させることが可能になる。本明細書において、蒸着角度は、基板10の上面の法線方向と材料の蒸着方向との間の角度として定義される。
【0046】
蒸着角度が大きくなるほど、ガス導入路材料層16pの第1充填率が減少し、ガス導入路材料層16pの空孔率が増加する。例えば、五酸化タンタル(Ta25)を80°の蒸着角度で斜方蒸着すると、52%の第1充填率を有する多孔質層が形成される。
【0047】
第二の方法では、ガス導入路材料層16pは、遷移金属酸化物の粉末を焼結することによって、形成されてもよい。
【0048】
図4を参照して、ガス導入路材料層16p上に、第1電極材料層17pを形成する。第1電極材料層17pは、多孔質金属層である。第1電極材料層17pは、例えば、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)で形成されている。第1電極材料層17pは、例えば、スパッタ法により形成される。
【0049】
図4を参照して、第1電極材料層17p上に、固体電解質材料層20pを形成する。固体電解質材料層20pは、基板10に対向する第1面20aと、第1面20aとは反対側の第2面20bとを含む。固体電解質材料層20pは、例えば、ZrO2、HfO2、ThO2またはBi23等の母材に、CaO、MgO、Y23またはYb23等が安定剤として添加されている層である。特定的には、固体電解質材料層20pは、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)で形成されている。固体電解質材料層20pは、例えば、スパッタ法によって形成される。
【0050】
図5を参照して、固体電解質材料層20p上にマスク40を形成する。マスク40を用いて固体電解質材料層20pの一部をエッチングすることによって、第1電極材料層17p上に固体電解質20を形成する。マスク40の材料は、例えば、フォトレジストである。固体電解質材料層20pの一部は、例えば、三塩化ホウ素(BCl3)ガスを用いたプラズマエッチングによって除去される。マスク40をアッシングして除去する。
【0051】
図6を参照して、第1電極材料層17p及び固体電解質材料層20p上にマスク41を形成する。マスク41を用いて第1電極材料層17pの一部とガス導入路材料層16pの一部とをエッチングすることによって、第1電極17と、ガス導入路16とを形成する。マスク41の材料は、例えば、フォトレジストである。第1電極材料層17pの一部は、例えば、アルゴンと酸素との混合ガスを用いたプラズマエッチングによって除去される。ガス導入路材料層16pの一部は、例えば、塩素ガスを用いたプラズマエッチングによって除去される。マスク41をアッシングして除去する。
【0052】
図7を参照して、絶縁層13上と、ガス導入路16の側面上と、第1電極17上と、固体電解質20上とに、絶縁層22を形成する。絶縁層22は、例えば、スパッタ法により形成される。絶縁層22は、例えば、五酸化タンタル(Ta25)層である。絶縁層22上に、絶縁層23を形成する。絶縁層23は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)層である。絶縁層22の一部と絶縁層23の一部とをエッチングして、絶縁層22及び絶縁層23に、第1開口を形成する。第1開口から、固体電解質20の第2面20bの一部が露出している。
【0053】
図7を参照して、スパッタ法により、絶縁層22の側面上と絶縁層23上とに、絶縁層25を形成する。絶縁層25は、例えば、二酸化チタン(TiO2)層である。絶縁層22と絶縁層23と絶縁層25とをエッチングして、絶縁層22と絶縁層23と絶縁層25とに、ガス入口35として機能する第2開口を形成する。第2開口から、第1電極17が露出している。第1電極17がガス入口35まで延在していない場合、第2開口から、ガス導入路16が露出している。
【0054】
図8を参照して、第1開口から露出している固体電解質20の第2面20b上と絶縁層25上とに、第2電極材料層27pを形成する。第2電極材料層27pは、多孔質金属層である。第2電極材料層27pは、例えば、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)で形成されている。第2電極材料層27pは、例えば、スパッタ法により形成される。
【0055】
図8を参照して、第2電極材料層27p上に、絶縁層28を形成する。絶縁層28は、例えば、スパッタ法により形成される。絶縁層28は、例えば、二酸化チタン(TiO2)層である。
【0056】
図9を参照して、絶縁層25及び絶縁層28上に、ガス排出路材料層30pを形成する。ガス排出路材料層30pは、例えば、以下の第一の方法または第二の方法によって形成される。
【0057】
第一の方法では、ガス排出路材料層30pは、遷移金属酸化物を斜方蒸着することによって形成される。遷移金属酸化物を斜方蒸着すると、ガス排出路材料層30pは多孔質層となる。ガス排出路材料層30pは、第2多孔質遷移金属酸化物で形成される。第2多孔質遷移金属酸化物は、五酸化タンタル(Ta25)、二酸化チタン(TiO2)または酸化クロム(III)(Cr23)である。
【0058】
遷移金属酸化物を斜方蒸着する際の蒸着角度は、70°以上である。蒸着角度を70°以上とすることによって、ガス排出路材料層30pは多孔質層となる。蒸着角度は、80°以上であってもよく、84°以上であってもよい。蒸着角度を80°以上とすることによって、ガス排出路材料層30pの第2充填率を60%以下とすることができる。蒸着角度を84°以上とすることによって、ガス排出路材料層30pの第2充填率を45%以下とすることができる。蒸着角度は、90°未満である。そのため、絶縁層28上にガス排出路材料層30pを堆積させることが可能になる。
【0059】
蒸着角度が大きくなるほど、ガス排出路材料層30pの第2充填率が減少し、ガス排出路材料層30pの空孔率が増加する。例えば、五酸化タンタル(Ta25)を80°の蒸着角度で斜方蒸着すると、52%の第2充填率を有する多孔質層が形成される。
【0060】
第二の方法では、ガス排出路材料層30pは、遷移金属酸化物の粉末を焼結することによって、形成されてもよい。
【0061】
図10を参照して、絶縁層25及び絶縁層28上にマスク42を形成する。マスク42を用いて第2電極材料層27pの一部とガス排出路材料層30pの一部と絶縁層28の一部とをエッチングすることによって、第2電極27とガス排出路30とを形成する。マスク42の材料は、例えば、フォトレジストである。ガス排出路材料層30pの一部は、四フッ化炭素(CF4)ガスを用いたプラズマエッチングによって除去される。絶縁層28の一部は、四フッ化炭素(CF4)ガスを用いたプラズマエッチングによって除去される。第2電極材料層27pの一部は、例えば、アルゴンと酸素との混合ガスを用いたプラズマエッチングによって除去される。
【0062】
それから、マスク42をアッシングして除去する。ガス排出路30及び絶縁層25上と、第2電極27の側面上と、絶縁層28の側面上とに、絶縁膜32を形成する。絶縁膜32は、第1電極17の第1部分17dと、固体電解質20と、第2電極27の第2部分27dとからなる積層体を覆っている。絶縁膜32は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)層である。こうして、図1に示される限界電流式ガスセンサ1が得られる。
【0063】
被測定ガス4が自動車の排ガスであり、被測定ガス4に含まれる成分ガスが窒素酸化物(NOx)である場合を例に、限界電流式ガスセンサ1の動作を説明する。
【0064】
被測定ガス4が、ガス入口35から限界電流式ガスセンサ1に流れ込む。ガス導入路16は、第1電極17よりも被測定ガス4を通しやすい。被測定ガス4は、主にガス導入路16を通って、ガス入口35から第1電極17に流れる。ガス導入路16は、単位時間当たりの固体電解質20へのガスの流量を制限する。第1電極17は、被測定ガス4に含まれる窒素酸化物(NOx)の大部分を占める一酸化窒素NOを、窒素(N2)と酸素(O2)とに分解する。
【0065】
図2に示されるように、第1電極17は、電圧源5の負極に接続されている。電圧源5は、第1電極17に電子を供給する。酸素(O2)は、第1電極17と固体電解質20との界面で電子を受け取って、酸素イオン(2O2-)に変換される。固体電解質20は、ヒータ12を用いて、例えば、400℃以上750℃以下の温度で加熱されている。固体電解質20は、酸素イオンを、固体電解質20の第1面20aから固体電解質20の第2面20bに伝導させる。酸素イオンの伝導に起因して、第1電極17と第2電極27との間に電流が流れる。
【0066】
ガス導入路16によって固体電解質20への被測定ガス4の流量が制限されているため、第1電極17と第2電極27との間の電圧を増加させても、第1電極17と第2電極27との間に流れる電流が一定となる。この一定の電流は、限界電流と呼ばれている。限界電流値は、被測定ガス4(例えば、排ガス)に含まれる成分ガス(例えば、窒素酸化物(NOx))の濃度に比例する。限界電流値を図2に示される電流検出器6で測定する。限界電流値から、被測定ガス4に含まれる成分ガスの濃度が得られる。電圧源5は、可変電圧源であってもよい。第1電極17と第2電極27との間に印加される電圧の大きさを変化させることにより、被測定ガス4に含まれる別の成分ガス(例えば、水蒸気(H2O)または酸素(O2))に対応する別の限界電流値を得ることができる。別の限界電流値から、別の成分ガス(例えば、水蒸気(H2O)または酸素(O2))の濃度を得ることができる。
【0067】
図2に示されるように、第2電極27は、電圧源5の正極に接続されている。電圧源5は、第2電極27から電子を奪う。第2電極27に到達した酸素イオン(2O2-)は、第2電極27と固体電解質20との界面で電子を奪われて、酸素(O2)に変換される。酸素(O2)などのガスは、第2多孔質金属電極である第2電極27を通って、ガス排出路30に達する。ガス排出路30は、第2電極27よりもガスを通しやすい。酸素(O2)などのガスは、主にガス排出路30を通って、ガス出口36から放出される。
【0068】
図11から図23を参照して、比較例と対照しながら、本実施の形態の実施例の限界電流式ガスセンサ1の作用を説明する。なお、比較例の限界電流式ガスセンサは、以下の点で、本実施の形態の実施例の限界電流式ガスセンサ1と異なっている。比較例の限界電流式ガスセンサは、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16と、第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30とを備えていない。比較例の限界電流式ガスセンサでは、多孔質白金電極である第1電極17がガス導入路として機能し、多孔質白金電極である第2電極27がガス排出路として機能している。
【0069】
図12に示されるような以下の方法で、限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度係数を算出した。比較例の限界電流式ガスセンサについて、複数のサンプルを製造した。実施例の限界電流式ガスセンサ1について、複数のサンプルを製造した。各サンプルの温度Tを変化させながら、各サンプルの限界電流値ILを測定する。そして、温度Tの対数であるlog Tに対する限界電流値ILの対数であるlog ILの関係を、最小二乗法を用いて線形近似する。この近似線の傾きaを、限界電流式ガスセンサの限界電流値の温度係数として得る。
【0070】
図11に示されるように、実施例の複数のサンプルの間の限界電流値の温度係数のばらつきは、比較例の複数のサンプルの間の限界電流値の温度係数のばらつきよりも小さい。その理由は、以下のように考えられる。
【0071】
固体電解質20におけるイオン伝導を可能にするために比較例のサンプルを高温で動作させると、多孔質白金電極である第1電極17の空孔が凝集する。図13に示されるように、比較例のサンプルをアニールする前は、ガス導入路16である第1電極17に空孔が均一に分布している。しかし、図14に示されるように、比較例のサンプルを700℃の温度でアニールすると、第1電極17の空孔が凝集する。凝集した大きな空孔の間には、空孔が存在しない第1電極17が基板10の上面に沿って長く延在している。そのため、比較例のサンプルを高温で動作させると、ガス導入路16である第1電極17を通るガスの流量が大きく減少する。また、空孔の凝集の態様は、比較例の複数のサンプルの間で大きくばらつく。そのため、比較例の複数のサンプルの間の限界電流値の温度係数のばらつきは大きい。
【0072】
これに対し、固体電解質20におけるイオン伝導を可能にするために実施例のサンプルを高温で動作させても、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の空孔はほとんど凝集しない。図15に示されるように、実施例のサンプルをアニールする前は、ガス導入路16に空孔が均一に分布している。図16に示されるように、実施例のサンプルを700℃の温度でアニールした後も、ガス導入路16には、空孔が均一に分布したままである。そのため、実施例の複数のサンプルの間の限界電流値の温度係数のばらつきは小さい。実施例のサンプルを高温で動作させても、ガス導入路16を通るガスの流量はほとんど変化しない。
【0073】
実施例のサンプルを高温で動作させても、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の空孔がほとんど凝集しない理由は、以下ように考えられる。一般に、金属の温度が金属の融点未満であっても、金属の温度が金属に融点に近づくほど、金属中のより多くの金属原子がより長く移動する。さらに、金属酸化物中の金属原子は、金属中の金属原子よりも移動しにくい。実施例では、第1電極17は、第1多孔質金属電極であるのに対し、ガス導入路16は、第1電極17の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。そのため、実施例では、ガス導入路16の空孔はほとんど凝集しないと考えられる。
【0074】
図17に示されるような以下の方法で、限界電流式ガスセンサの応答時間trを算出した。比較例の限界電流式ガスセンサについて、複数のサンプルを製造した。実施例の限界電流式ガスセンサ1について、複数のサンプルを製造した。各サンプルを被測定ガス4に曝す。時間t=0において、各サンプルを電圧源5を接続する。各サンプルから出力される電流値の時間変化(限界電流式ガスセンサの過渡応答)を測定する。各サンプルから出力される電流値が一定であるとみなすことができる期間の平均電流値が、各サンプルの限界電流値ILである。そして、時間t=0から、各サンプルから出力される電流値が限界電流値ILの1.1倍となるまでの時間を、各サンプルの応答時間trとして得る。
【0075】
図11に示されるように、実施例の複数のサンプルの間の応答時間のばらつきは、比較例の複数のサンプルの間の応答時間のばらつきよりも小さい。その理由は、実施例の複数のサンプルの間の限界電流値の温度係数のばらつきが比較例の複数のサンプルの間の限界電流値の温度係数のばらつきよりも小さい理由と同様である。
【0076】
具体的には、固体電解質20におけるイオン伝導を可能にするために比較例のサンプルを高温で動作させると、多孔質白金電極である第1電極17の空孔が凝集する。そして、空孔の凝集の態様は、比較例の複数のサンプルの間で大きくばらつく。そのため、比較例の複数のサンプルの間の応答時間のばらつきは大きい。これに対し、固体電解質20におけるイオン伝導を可能にするために実施例のサンプルを高温で動作させても、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の空孔はほとんど凝集しない。そのため、実施例の複数のサンプルの間の応答時間のばらつきは小さい。
【0077】
さらに、実施例のサンプルの応答時間は、比較例のサンプルの応答時間よりも短い傾向にある。その理由は以下のとおりである。固体電解質20におけるイオン伝導を可能にするために比較例のサンプルを高温で動作させると、多孔質白金電極である第1電極17の空孔が凝集する。ガス導入路16である第1電極17を通るガスの流量が大きく減少する。そのため、比較例のサンプルの応答時間は長くなる。これに対し、固体電解質20におけるイオン伝導を可能にするために実施例のサンプルを高温で動作させても、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の空孔はほとんど凝集しない。ガス導入路16を通るガスの流量はほとんど変化しない。そのため、比較例のサンプルの応答時間は短くなる。
【0078】
以上では、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の作用を説明したが、第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30も同様の作用を有する。また、ガス導入路16またはガス排出路30のいずれか一方だけが多孔質遷移金属酸化物で形成されていても、限界電流式ガスセンサ1は同様の作用を得ることができる。
【0079】
図18から図20に、実施例1の限界電流式ガスセンサ1の温度サイクル特性を示す。図21から図23に、実施例2の限界電流式ガスセンサ1の温度サイクル特性を示す。図18及び図21の電圧並びに図20及び図23の1.0Vの電圧は、電圧源5(図2)から第1電極17と第2電極27との間に印加される電圧である。図18図19図21及び図22の電流並びに図20及び図23の限界電流は、電流検出器6(図2)を用いて測定される。限界電流式ガスセンサ1に印加される一温度サイクルは、400℃の第1温度で限界電流式ガスセンサ1を保持する第1ステップと、400℃の第1温度から600℃の第2温度に限界電流式ガスセンサ1の温度を上昇させる第2ステップと、600℃の第2温度で限界電流式ガスセンサ1を保持する第3ステップと、600℃の第2温度から400℃の第1温度に限界電流式ガスセンサ1の温度を下降させる第4ステップとで構成されている。
【0080】
実施例1では、ガス導入路16及びガス排出路30が、80°の蒸着角度で五酸化タンタル(Ta25)を斜方蒸着することによって形成されている。実施例2では、ガス導入路16及びガス排出路30が、84°の蒸着角度で五酸化タンタル(Ta25)を斜方蒸着することによって形成されている。図18から図23に示されるように、実施例1及び実施例2の限界電流式ガスセンサ1から出力される電流は、第二温度サイクル以降の温度サイクルにおいて安定している。さらに、図20から図23に示されるように、実施例2の限界電流式ガスセンサ1から出力される電流は、全ての温度サイクルにおいて安定している。
【0081】
より大きな蒸着角度で斜方蒸着を行うと、より大きな空孔率(より小さな充填率)を有する膜が形成される。図18から図23に示される実施例1及び実施例2の限界電流式ガスセンサ1の温度サイクル特性から、ガス導入路16またはガス排出路30がより大きな空孔率(より小さな充填率)を有するほど、限界電流式ガスセンサ1の電流の温度サイクル特性が向上することが分かる。
【0082】
図18から図20に示される実施例1の限界電流式ガスセンサ1では、実施例1の限界電流式ガスセンサ1の使用前に、実施例1の限界電流式ガスセンサ1に1回の温度サイクルを事前に印加する。こうして、実施例1の限界電流式ガスセンサ1の使用中における、実施例1の限界電流式ガスセンサ1の電流の温度サイクル特性を安定化させることができる。
【0083】
図24を参照して、本実施の形態の変形例の限界電流式ガスセンサ1aでは、絶縁層28及びガス排出路30が省略されている。絶縁膜32は、第2電極27の第2部分27dの上面に接している。ガスは、第2多孔質金属電極である第2電極27から排出される。本実施の形態の変形例の限界電流式ガスセンサ1aでは絶縁層28及びガス排出路30が形成されていないため、限界電流式ガスセンサ1aのコストが低減され得る。
【0084】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aの効果を説明する。
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aは、固体電解質20と、第1電極17と、第2電極27と、ガス導入路16とを備える。第1電極17は、固体電解質20上に設けられている。第2電極27は、固体電解質20上に設けられている。ガス導入路16は、ガス入口35と第1電極17のうち固体電解質20に対向している第1部分17dとの間に延在している。第1電極17は、第1多孔質金属電極である。ガス導入路16は、第1電極17の第1融点より高い第2融点を有する第1多孔質遷移金属酸化物で形成されている。第1多孔質遷移金属酸化物は、Ta25、TiO2またはCr23である。
【0085】
そのため、限界電流式ガスセンサ1,1aを高温で動作させても、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の空孔はほとんど凝集しない。本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aによれば、限界電流式ガスセンサ1,1aの限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。さらに、限界電流式ガスセンサ1,1aの応答時間のばらつきを減少させることができる。
【0086】
限界電流式ガスセンサ1,1aを高温で動作させても、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の空孔はほとんど凝集せず、ガス導入路16を通る被測定ガス4の流量はほとんど変化しない。そのため、限界電流式ガスセンサ1,1aの応答時間が短縮され得る。
【0087】
さらに、第1多孔質遷移金属酸化物はTa25、TiO2またはCr23であり、一種類の遷移金属のみを含む。そのため、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の化学組成のばらつきを小さくすることができる。限界電流式ガスセンサ1,1aの限界電流値のばらつきと限界電流式ガスセンサ1,1aの温度係数のばらつきと限界電流式ガスセンサ1,1aの応答時間のばらつきとを減少させることができる。
【0088】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aでは、ガス導入路16の第1充填率は、60%以下である。そのため、被測定ガス4は、ガス導入路16を通りやすい。限界電流式ガスセンサ1,1aの応答時間が短縮され得る。また、限界電流式ガスセンサ1の動作時に固体電解質20に発生する熱歪を、ガス導入路16で緩和することができる。限界電流式ガスセンサ1,1aの限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。
【0089】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aでは、第1多孔質金属電極は、白金またはパラジウムで形成されている。そのため、第1多孔質金属電極である第1電極17と固体電解質20との間の界面で、被測定ガス4から固体電解質20を伝導するイオンが高い効率で生成され得る。被測定ガス4に窒素酸化物(NOx)が含まれる場合には、第1多孔質金属電極は、被測定ガス4に含まれる窒素酸化物(NOx)を窒素と酸素とに分解する触媒として作用する。限界電流式ガスセンサ1,1aは、向上されたガス検出感度を有する。また、第1電極17と固体電解質20との間の界面抵抗が減少するため、限界電流式ガスセンサ1,1aを流れる電流が一定になる電圧の範囲(過電圧支配領域)を拡げることができる。
【0090】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aでは、第2電極27は、第2多孔質金属電極である。第1多孔質遷移金属酸化物の第2融点は、第2電極27の第3融点より高い。
【0091】
そのため、限界電流式ガスセンサ1,1aを高温で動作させても、第1多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス導入路16の空孔はほとんど凝集しない。本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aによれば、限界電流式ガスセンサ1,1aの限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。さらに、限界電流式ガスセンサ1,1aの応答時間のばらつきを減少させることができる。限界電流式ガスセンサ1,1aの応答時間が短縮され得る。
【0092】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aでは、第2多孔質金属電極は、白金またはパラジウムで形成されている。そのため、第2多孔質金属電極である第1電極17と固体電解質20との間の界面で、固体電解質20を伝導するイオンが高い効率でガスに変換され得る。また、第2電極27と固体電解質20との間の界面抵抗が減少するため、限界電流式ガスセンサ1,1aを流れる電流が一定になる電圧の範囲(過電圧支配領域)を拡げることができる。
【0093】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1は、ガス排出路30をさらに備える。ガス排出路30は、ガス出口36と第2電極のうち固体電解質20に対向している第2部分27dとの間に延在している。ガス排出路30は、第2電極27の第3融点より高い第4融点を有する第2多孔質遷移金属酸化物で形成されている。第2多孔質遷移金属酸化物は、Ta25、TiO2またはCr23である。
【0094】
そのため、限界電流式ガスセンサ1を高温で動作させても、第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30の空孔はほとんど凝集しない。本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1によれば、限界電流式ガスセンサ1の限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。さらに、限界電流式ガスセンサ1の応答時間のばらつきを減少させることができる。
【0095】
限界電流式ガスセンサ1を高温で動作させても、第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30の空孔はほとんど凝集せず、ガス排出路30を通るガスの流量はほとんど変化しない。そのため、限界電流式ガスセンサ1の応答時間が短縮され得る。
【0096】
さらに、第2多孔質遷移金属酸化物はTa25、TiO2またはCr23であり、一種類の遷移金属のみを含む。そのため、第2多孔質遷移金属酸化物で形成されているガス排出路30の化学組成のばらつきを小さくすることができる。限界電流式ガスセンサ1の限界電流値のばらつきと限界電流式ガスセンサ1の温度係数のばらつきと限界電流式ガスセンサ1の応答時間のばらつきとを減少させることができる。
【0097】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1では、ガス排出路30の第2充填率は、60%以下である。そのため、ガスは、ガス排出路30を通りやすい。限界電流式ガスセンサ1の応答時間が短縮され得る。ガス排出路30の空孔率が増加すると、限界電流式ガスセンサ1の動作時に固体電解質20に発生する熱歪を、ガス排出路30で緩和することができる。限界電流式ガスセンサ1の限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。
【0098】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aは、絶縁膜32をさらに備える。絶縁膜32は、第1電極17の第1部分17dと、固体電解質20と、第2電極27のうち固体電解質20に対向している第2部分27dとからなる積層体を覆っている。
【0099】
絶縁膜32は積層体を覆っているため、絶縁膜32は、ガス導入路16及びガス排出路30のような多孔質膜を、基板10の上面に沿う方向で固定することができる。そのため、ガス導入路16及びガス排出路30における空孔の凝集がさらに抑制される。本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aによれば、限界電流式ガスセンサ1,1aの限界電流値の温度係数のばらつきを減少させることができる。さらに、限界電流式ガスセンサ1,1aの応答時間のばらつきを減少させることができる。限界電流式ガスセンサ1,1aの応答時間が短縮され得る。
【0100】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1,1aは、固体電解質20を加熱するヒータ12と、ヒータ12が設けられている基板10をさらに備える。第1電極17は、基板10に対向する固体電解質20の第1面20a上に設けられている。第2電極27は、第1面20aとは反対側の固体電解質20の第2面20b上に設けられている。そのため、ヒータ12を加熱し始めてから限界電流式ガスセンサ1,1aを動作させ始めるまでの時間が短縮され得る。さらに、限界電流式ガスセンサ1,1aは小型化され得る。
【0101】
(実施の形態2)
図25を参照して、実施の形態2に係る限界電流式ガスセンサ1bを説明する。本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1bは、実施の形態1の限界電流式ガスセンサ1と同様の構成を備えて、同様の効果を奏するが、以下の点で主に異なっている。
【0102】
本実施の形態の限界電流式ガスセンサ1bでは、絶縁膜32が省略されている。ガス排出路30の上面は、例えば、被測定ガス4を含む、限界電流式ガスセンサ1bの周囲の環境に露出している。ガス排出路30は、被測定ガス4に曝されている。限界電流式ガスセンサ1bでは絶縁膜32が形成されていないため、限界電流式ガスセンサ1bのコストが低減され得る。
【0103】
図26を参照して、本実施の形態の変形例の限界電流式ガスセンサ1cでは、絶縁層28及びガス排出路30がさらに省略されている。第2電極27の第2部分27dの上面は、例えば、被測定ガス4を含む、限界電流式ガスセンサ1cの周囲の環境に露出している。第2電極27は、被測定ガス4に曝されている。ガスは、第2多孔質金属電極である第2電極27から排出される。限界電流式ガスセンサ1cでは絶縁層28及びガス排出路30が形成されていないため、限界電流式ガスセンサ1cのコストが低減され得る。
【0104】
今回開示された実施の形態1及び実施の形態2並びにそれらの変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0105】
1,1a,1b,1c 限界電流式ガスセンサ、4 被測定ガス、5 電圧源、6 電流検出器、10 基板、11,13,15,22,23,25,28 絶縁層、12 ヒータ、16 ガス導入路、16p ガス導入路材料層、17 第1電極、17d 第1部分、17p 第1電極材料層、20 固体電解質、20a 第1面、20b 第2面、20p 固体電解質材料層、27 第2電極、27d 第2部分、27p 第2電極材料層、30 ガス排出路、30p ガス排出路材料層、32 絶縁膜、35 ガス入口、36 ガス出口、40,41,42 マスク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26