(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】収納体
(51)【国際特許分類】
A47B 88/407 20170101AFI20231228BHJP
【FI】
A47B88/407
(21)【出願番号】P 2020038086
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】須賀 大輔
(72)【発明者】
【氏名】前畑 智美
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-167953(JP,A)
【文献】実開平04-089042(JP,U)
【文献】特開2001-190346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0182293(US,A1)
【文献】独国実用新案第202013003374(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 67/04
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納可能な収納部と、
前記収納部の前面側を覆うように取り付けられる前板と、
前記前板を前記収納部に取り付ける取付部材と、を備え、
前記取付部材は、前記前板の背面に取り付けられる前板側取付部材と、前記収納部に取り付けられ、前記前板側取付部材に対してねじ止めされる収納部側取付部材と、を有し、
前記前板側取付部材及び前記収納部側取付部材のいずれか一方は、左右方向を円弧方向とする凸円弧面を有する回転方向調整部を有し、
前記前板側取付部材及び前記収納部側取付部材のいずれか他方は、前記回転方向調整部に対して当接する回転方向調整部受け部と、前記前板側取付部材及び前記収納部側取付部材の上下方向の相対的な移動を規制する上下方向規制部と、を有し、
前記前板側取付部材と前記収納部側取付部材とは、前記上下方向規制部によって上下方向の相対的な移動が規制された状態で、前記回転方向調整部と前記回転方向調整部受け部とが当接することによって、前記回転方向調整部の円弧方向に沿う相対的な回転方向の位置を調整可能にねじ止めされる、収納体。
【請求項2】
前記収納部側取付部材は、前記前板側取付部材にねじ止めするための左右方向に長い長穴からなる回転方向調整用ねじ穴を有する、請求項1に記載の収納体。
【請求項3】
前記上下方向規制部は、前記回転方向調整部を上下に挟み込むように構成される、請求項1又は2に記載の収納体。
【請求項4】
前記前板側取付部材は、前記前板の背面に対してねじ止めするための上下方向に長い長穴からなる上下方向調整用ねじ穴を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の収納体。
【請求項5】
前記回転方向調整部受け部は、前記回転方向調整部の曲率に対応する曲率を有する凹円弧面を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の収納体。
【請求項6】
前記収納部は、前記前板の左右方向に沿って延びる第1の被取付部を有し、
前記収納部側取付部材は、前記収納部に対する相対的な左右方向の位置を調整可能となるように前記第1の被取付部を挟み込むことによって、前記収納部に取り付けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の収納体。
【請求項7】
前記収納部は、前記前板側取付部材を挟んで前記第1の被取付部に対して平行に配置される第2の被取付部を有し、
前記収納部側取付部材は、前記第2の被取付部を前記前板側及び前記前板と反対側の両方から挟持する挟持部を有する、請求項
6に記載の収納体。
【請求項8】
前記挟持部は、前記第2の被取付部に対して引っ掛けることによって挟持するフック形状である、請求項7に記載の収納体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、収納体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、システムキッチン及びキャビネット等に用いられる収納体として、特許文献1に記載の収納体が知られている。この収納体は、ワイヤーラックからなる収納部の前面側に固定される軸部材と、前板の背面に固定される第1の取付用部材と、軸部材を挟んで第1の取付用部材に対向して配置され、第1の取付用部材にねじ止めされることにより第1の取付用部材と共に軸部材を挟み込む第2の取付用部材と、を有する。
【0003】
ワイヤーラックからなる収納体は、形状のばらつきが大きい。そのため、収納体の前板がシステムキッチン及びキャビネット等の前面に対して不陸にならないようにするために、前板の左右方向、上下方向及び回転方向の位置調整が必要である。特許文献1に記載の収納体では、前板の左右方向の位置調整は、第1の取付用部材に設けられた左右方向に長いねじ止め用の長穴によって行われる。前板の上下方向の位置調整は、第2の取付用部材を第1の取付用部材に対して取り付けるねじを弛めることによって行われる。前板の幅方向に沿う回転方向の位置調整は、軸部材を挟み込んでいる第2の取付用部材を第1の取付用部材に対して取り付けるねじを弛め、軸部材中心として前板を回転させることによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の収納体では、前板の上下方向及び回転方向のいずれの位置調整も、第2の取付用部材を第1の取付用部材に対して取り付けているねじを弛めることによって行われる。この場合、前板の回転方向の位置のみを調整することを目的としてねじを弛めると、前板の上下方向の位置もずれてしまう。そのため、作業者は前板の上下方向の位置を再度調整する必要がある。よって、発明者は、収納体における前板の回転方向の位置を調整する際に、前板の上下方向の位置ずれを起こすことがないようにする、という課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る収納体は、物品を収納可能な収納部と、前記収納部の前面側を覆うように取り付けられる前板と、前記前板を前記収納部に取り付ける取付部材と、を備え、前記取付部材は、前記前板の背面に取り付けられる前板側取付部材と、前記収納部に取り付けられ、前記前板側取付部材に対してねじ止めされる収納部側取付部材と、を有し、前記前板側取付部材及び前記収納部側取付部材のいずれか一方は、左右方向を円弧方向とする凸円弧面を有する回転方向調整部を有し、前記前板側取付部材及び前記収納部側取付部材のいずれか他方は、前記回転方向調整部に対して当接する回転方向調整部受け部と、前記前板側取付部材及び前記収納部側取付部材の上下方向の相対的な移動を規制する上下方向規制部と、を有し、前記前板側取付部材と前記収納部側取付部材とは、前記上下方向規制部によって上下方向の相対的な移動が規制された状態で、前記回転方向調整部と前記回転方向調整部受け部とが当接することによって、前記回転方向調整部の円弧方向に沿う相対的な回転方向の位置を調整可能にねじ止めされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係る収納体を示す斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る収納体の前板と収納部との取付部位を拡大して示す斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る収納体の前板と収納部との取付部位を拡大して示す分解斜視図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る収納体における前板側取付部材を前板の背面側から見た斜視図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る収納体における前板側取付部材を前板の正面側から見た斜視図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る収納体における収納部側取付部材を前板の正面側から見た斜視図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る収納体における前板と収納部との取付部位を拡大して示す縦断面図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る収納体における前板の上下方向の位置調整を説明する図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る収納体における前板の左右方向の位置調整を説明する図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る収納体における前板の回転方向の位置調整を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の収納体の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、収納体における鉛直方向に沿う上下を結ぶ方向を上下方向と定義する。収納体を前板側から正面視した場合の前板の幅方向に沿う左右を結ぶ方向を左右方向と定義する。収納体は、前板を収納部と反対側から見たときの面を前面、その反対側の面を背面と定義する。
【0009】
図1は、システムキッチン(図示せず)に用いられる収納体1を示している。収納体1は、物品(図示せず)を収納可能な収納部2と、収納部2の前面側を覆うように収納部2に取り付けられる前板3と、を有する。
【0010】
本実施形態に示す収納体1の収納部2は、樹脂製製の底板21と、底板21上に設けられ、丸棒からなる金属線材によって形成されるかご状部22と、を有するワイヤーラックによって構成される。かご状部22における前板3側は、1本の金属線材の両端をそれぞれ同一方向に略直角に折り曲げることによって、
図1及び
図2に示すように、上下方向に平行に延びる一対の縦線部23,23と、縦線部23,23の上端同士を繋ぐように左右方向に延びる1本の上端横線部24と、を有する。
【0011】
収納部2における前板3側には、縦線部23,23及び上端横線部24とは別体の金属線材を溶接することによって、縦線部23,23同士を左右方向に繋ぐ二対の被取付用横線部25a,25b、26a,26bを有する。二対の被取付用横線部25a,25b、26a,26bは、それぞれ後述の2つの取付部材4,4によって前板3が取り付けられる被取付部である。詳しくは、二対の被取付用横線部25a,25b、26a,26bのそれぞれの下側の被取付用横線部25a、26aは、取付部材4が取り付けられる第1の被取付部であり、それぞれの上側の被取付用横線部25b、26bは、取付部材4が取り付けられる第2の被取付部である。
【0012】
被取付用横線部25a,25b、26a,26bは、上端横線部24に対してそれぞれ平行に配置される。被取付用横線部25a,25bの間隔と被取付用横線部26a,26bの間隔とはほぼ同じである。収納部2の上側に配置される被取付用横線部25a,25bは、上端横線部24に近接して配置され、下側に配置される被取付用横線部26a,26bは、収納部2の底板21に近接して配置される。
図2には、上側に配置される被取付用横線部25a,25bのみが示されている。
【0013】
取付部材4は、
図2及び
図3に示すように、前板3の背面3aに対してねじS1,S1によって取り付けられる前板側取付部材41と、収納部2の被取付用横線部25a,25b、26a,26bに対してねじS2,S2によって取り付けられる収納部側取付部材42と、を有して構成される。収納部側取付部材42は、前板側取付部材41に対して、ねじS3によって取り付けられる。上下の取付部材4,4は同一構成である。そのため、以下では、収納体1の上側に配置される被取付用横線部25a,25bにおいて前板3を収納部2に取り付ける取付部材4について説明する。
【0014】
前板側取付部材41について、
図4及び
図5を用いて説明する。前板側取付部材41は、左右方向に離れて配置される一対の矩形板状の取付基部411,411と、一対の取付基部411,411間を連結する回転方向調整部412と、を有する。
図5に示すように、前板側取付部材41の背面側は、一対の取付基部411,411と回転方向調整部412とに亘って全体的に面一状に形成され、前板3の背面3aに対する取付面41aを構成する。
【0015】
取付基部411,411は、上下方向に長い長穴からなる上下方向調整用ねじ穴413,413をそれぞれ1つずつ有する。上下方向調整用ねじ穴413,413には、
図2及び
図3に示すように、前板側取付部材41を前板3の背面3aに設けられるねじ穴31,31に対してねじ止めするためのねじS1,S1が挿通する。
【0016】
回転方向調整部412は、一対の取付基部411,411間を左右方向に連結する角棒状体からなる。回転方向調整部412の上下方向の幅は、取付基部411,411の上下方向の幅よりも小さい。回転方向調整部412の上面412a及び下面412bは、左右方向に亘って互いに平行に延びる平坦面である。
【0017】
回転方向調整部412は、収納部2側に配置される面に凸円弧面414を有する。凸円弧面414は、左右方向が円弧方向を形成するように湾曲し、前板3側から収納部2側に向けて突出している。凸円弧面414は、上下方向に沿って平坦に形成されている。回転方向調整部412の左右両端部は、一対の取付基部411,411の収納部2側の面と略同一面に配置される。回転方向調整部412の左右方向の中央部は、一対の取付基部411,411よりも収納部2側に向けて突出している。
【0018】
回転方向調整部412の左右方向の中央部には、1つのねじ穴415が設けられる。ねじ穴415は、
図2及び
図3に示すように、収納部側取付部材42を前板側取付部材41に対してねじ止めするためのねじS3を挿入させる丸穴からなる。
図5に示すように、取付面41aには、ねじS3を螺合させるナットN3(
図3参照)を収容する六角柱状のナット収容穴416が、ねじ穴415と同軸状に設けられている。
【0019】
収納部側取付部材42について、
図6を用いて説明する。収納部側取付部材42は、収納部側取付部材本体43と、
図2及び
図3に示すように、収納部側取付部材本体43と別体に形成され、収納部側取付部材本体43に対してねじS2,S2によって取り付けられる取付板44と、を有して構成される。
【0020】
収納部側取付部材本体43は、取付板44が取り付けられる取付板受け板部431と、取付板受け板部431の上端に連結される回転方向調整部受け部432と、回転方向調整部受け部432の上端部に連結される挟持部433と、を有して構成される。
【0021】
取付板受け板部431は、矩形の平板状に形成される。取付板受け板部431の取付板44側の側面431aには、左右方向に横断する横線部収容溝434が設けられる。横線部収容溝434の断面形状は、収納部2の被取付用横線部25aの断面形状に対応する半円弧形状を有する。横線部収容溝434は、
図2及び
図3に示すように、取付板受け板部431と取付板44とが、収納部2の下側の被取付用横線部25aを挟み込むように重ね合わされた際に、被取付用横線部25aにおける前板3側の半分を収容する。
【0022】
取付板受け板部431には、横線部収容溝434を挟んで上下に1つずつ配置されるねじ穴435,435が設けられる。ねじ穴435,435は、それぞれ取付板受け板部431を貫通する丸穴からなる。取付板受け板部431の前板3側の側面431bには、それぞれねじS2,S2を螺合させるナットN2(
図3参照)を収容する六角柱状のナット収容穴436,436が、ねじ穴435,435と同軸状に設けられている。
【0023】
回転方向調整部受け部432は、取付板受け板部431と同じ幅の矩形板状に形成され、
図6に示すように、取付板受け板部431の前板3側の側面431bよりも前板3から離れて配置される。詳しくは、回転方向調整部受け部432は、取付板受け板部431の側面431bに対して、前板3側と反対側に向けて引っ込んで配置されている。これによって、取付板受け板部431と回転方向調整部受け部432との間には、左右方向に亘って平坦な段差部437aが形成される。回転方向調整部受け部432と挟持部433との間には、回転方向調整部受け部432よりも前板3側に突出する突出板部437bが設けられる。突出板部437bは、左右方向に亘って平坦な板状に形成される。突出板部437bは、回転方向調整部受け部432の上端部から、取付板受け板部431の側面431bの位置とほぼ同一の位置まで、前板3側に向けて張り出している。
【0024】
段差部437aと突出板部437bとの間隔、すなわち、段差部437aの上面と突出板部437bの下面との間隔は、前板側取付部材41の回転方向調整部412の上下方向の幅に対応する。詳しくは、段差部437aの上面と突出板部437bの下面との間隔は、前板側取付部材41の回転方向調整部412の上下方向の幅と略同一である。段差部437aと突出板部437bとは、前板側取付部材41と収納部側取付部材42とが互いに取り付けられる際に、前板側取付部材41の回転方向調整部412を上下から挟み込むことによって、前板側取付部材41と収納部側取付部材42との上下方向の相対的な移動を規制する上下方向規制部437を構成する。
【0025】
回転方向調整部受け部432は、前板3側の面に凹円弧面438を有する。凹円弧面438は、左右方向が円弧方向を形成するように湾曲し、前板3側から収納部2側に向けて凹んでいる。凹円弧面438は、上下方向に沿って平坦に形成されている。回転方向調整部受け部432の凹円弧面438は、前板側取付部材41に設けられる回転方向調整部412の凸円弧面414の曲率に対応する曲率を有する。詳しくは、回転方向調整部受け部432の凹円弧面438の曲率は、回転方向調整部412の凸円弧面414の曲率と同一である。したがって、後述するように、回転方向調整部412の凸円弧面414と回転方向調整部受け部432の凹円弧面438とが当接した際、円弧面同士が面接触する。
【0026】
回転方向調整部受け部432には、左右方向に長い長穴からなる1つの回転方向調整用ねじ穴439が設けられる。回転方向調整用ねじ穴439には、
図2及び
図3に示すように、収納部側取付部材42を前板側取付部材41のねじ穴415に対してねじ止めするためのねじS3が挿通する。
【0027】
挟持部433は、回転方向調整部受け部432の上端から上方に立ち上げられる。詳しくは、挟持部433は、回転方向調整部受け部432の上端における前板3側と反対側の縁部から上方に立ち上げられ、先端を前板3側に略U字状に180度折り返すことによって、フック形状に形成される。
【0028】
挟持部433の内側部分は、
図2及び
図3に示すように、収納部2の一対の被取付用横線部25a,25bのうちの上側の被取付用横線部25bの全体を収容可能な大きさを有する。挟持部433は、
図7に示すように、被取付用横線部25bに対して、前板3側から当接する第1挟持部433aと、前板3と反対側から当接する第2挟持部433bと、を有する。第1挟持部433aと第2挟持部433bとは、被取付用横線部25bに対して180度対向する位置に配置される。挟持部433の内面の上端部と、取付板受け板部431の横線部収容溝434との間隔は、一対の被取付用横線部25a,25bの間隔にほぼ等しい。
【0029】
挟持部433は、被取付用横線部25bに対して引っ掛けて、被取付用横線部25bを内側に収容する。被取付用横線部25bを収容した挟持部433は、第1挟持部433aと第2挟持部433bとによって、被取付用横線部25bを前板3側及び前板3と反対側の両方から挟持する。
【0030】
取付板44は、取付板受け板部431と同一の大きさを有する矩形板状に形成される。取付板44の取付板受け板部431側の側面44aには、左右方向に横断する横線部収容溝441が設けられる。横線部収容溝441は、取付板受け板部431の横線部収容溝434の位置に対応して配置される。横線部収容溝441の断面形状は、収納部2の被取付用横線部25aの断面形状に対応する半円弧形状を有する。横線部収容溝441は、
図2及び
図3に示すように、取付板受け板部431と取付板44とが、収納部2の下側の被取付用横線部25aを挟み込むように重ね合わされた際に、被取付用横線部25aにおける前板3と反対側の半分を収容する。
【0031】
取付板44には、横線部収容溝441を挟んで上下に1つずつ配置されるねじ穴442,442が設けられる。ねじ穴442,442は、それぞれ取付板44を貫通する丸穴からなる。取付板44のねじ穴442,442は、取付板受け板部431のねじ穴435,435の位置にそれぞれ対応して配置される。ねじ穴435,435、442,442には、
図2及び
図3に示すように、取付板44を取付板受け板部431に対してねじ止めするためのねじS2,S2が挿通する。
【0032】
取付板受け板部431と取付板44とがねじS2,S2によって固定されることによって、収納部側取付部材42が収納部2に取り付けられる。収納部側取付部材42は、取付板受け板部431と取付板44との間に被取付用横線部25aを挟み込んでいるため、ねじS2,S2を弛めることによって、収納部側取付部材42を被取付用横線部25aに沿って左右方向に移動させることができる。したがって、ねじ穴435,435、442,442によって、取付部材4における左右方向調整用ねじ穴が構成される。
【0033】
被取付用横線部25aは丸棒からなるため、被取付用横線部25aを挟み込む収納部側取付部材42は、被取付用横線部25aを中心にして回転するおそれがある。しかし、収納部側取付部材42は、上側の被取付用横線部25bに対して引っ掛けることによって被取付用横線部25bを挟持する挟持部433を有するため、一対の被取付用横線部25a,25bによって、回転することなく安定して収納部2に取り付けられる。挟持部433は、被取付用横線部25bに対して引っ掛けるだけで簡単に取り付けることができる。挟持部433は、第1挟持部433aと第2挟持部433bとによって、被取付用横線部25bを前板3側及び前板3と反対側からそれぞれ支持するため、収納部側取付部材42は、前板3側から作用する押圧力及び前板3と反対側から作用する引っ張り力による衝撃に対して十分に耐えることができる。
【0034】
次に、作業者が取付部材4によって前板3を収納部2に対して取り付ける際の施工手順と、前板3の上下方向、左右方向及び回転方向のそれぞれの位置調整方法と、について説明する。以下においては、
図1に示す上側の取付部材4の施工手順及び位置調整方法について説明する。しかし、
図1に示す下側の取付部材4についても、同様の施工手順及び位置調整方法が適用される。
【0035】
前板側取付部材41について、作業者は、
図3に示すように、前板側取付部材41の取付基部411,411の上下方向調整用ねじ穴413,413を前板3のねじ穴31,31に位置合わせした後、ねじS1,S1を上下方向調整用ねじ穴413,413に挿入し、締め付けることによって、前板側取付部材41を前板3にねじ止めする。
【0036】
収納部側取付部材42について、作業者は、
図3に示すように、収納部側取付部材42の収納部側取付部材本体43を収納部2の一対の被取付用横線部25a,25bに取り付ける。詳しくは、作業者は、収納部側取付部材本体43のフック形状の挟持部433を、一対の被取付用横線部25a,25bのうちの上側の被取付用横線部25bに引っ掛ける。これによって、
図2、
図3及び
図7に示すように、挟持部433は、被取付用横線部25bを内側に収容し、第1挟持部433aと第2挟持部433bとによって、前板3側及び前板3と反対側の両方から挟持する。
【0037】
その後、作業者は、取付板受け板部431に対して取付板44をねじS2,S2によって固定し、被取付用横線部25aを取付板受け板部431と取付板44とによって挟み込む。これによって、被取付用横線部25bは、取付板受け板部431の横線部収容溝434と、取付板44の横線部収容溝441との間に収容される。これによって、収納部側取付部材42が収納部2に取り付けられる。
【0038】
次に、作業者は、前板3に取り付けられた前板側取付部材41の回転方向調整部412を、収納部側取付部材42の上下方向規制部437に嵌め込む。詳しくは、作業者は、前板側取付部材41の回転方向調整部412を、収納部側取付部材42の段差部437aの上面と突出板部437bの下面との間に挿入する。これによって、前板側取付部材41の回転方向調整部412が、段差部437aと突出板部437bとによって上下方向から挟み込まれる。回転方向調整部412の凸円弧面414は、回転方向調整部受け部432の凹円弧面438に当接して密接する。
【0039】
その後、作業者は、収納部側取付部材42の回転方向調整部受け部432に設けられる回転方向調整用ねじ穴439から前板側取付部材41のねじ穴415に対してねじS3を挿入し、締め付けることによって、前板側取付部材41と収納部側取付部材42とを一体に固定する。これによって、前板3が収納部2に取り付けられる。
【0040】
取付部材4に設けられる3種類のねじS1,S2,S3は、前板3の上下方向、左右方向及び回転方向の位置調整のためのねじにそれぞれ対応する。そのため、前板3の上下方向、左右方向及び回転方向の位置調整は、それぞれ対応するねじS1,S1、ねじS2,S2及びねじS3を個別に弛めることによって、独立して行うことができる。以下、具体的な調整方法について説明する。
【0041】
前板3を上下方向に調整する方法を
図8に示す。前板3の上下方向の調整は、前板側取付部材41の取付基部411,411を前板3に対して取り付けるねじS1,S1を弛めることによって行われる。詳しくは、ねじS1,S1が弛められると、前板3と前板側取付部材41との固定状態が弛められる。このとき、前板側取付部材41は、ねじS3によって収納部側取付部材42に対する固定状態を維持しているため、ねじS1,S1を弛めても、前板3は上下方向にしか移動しない。したがって、作業者は、ねじS1,S1を弛めた後、上下方向調整用ねじ穴413,413の上下方向の長さの範囲内で、前板3を前板側取付部材41に対して上下方向に移動させることによって、前板3について上下方向の位置調整のみを行うことができる。前板3は、上下方向に位置決めされた後、作業者によってねじS1,S1が再度締め付けられることによって固定される。
【0042】
前板3を左右方向に調整する方法を
図9に示す。前板3の左右方向の調整は、収納部側取付部材42のねじS2,S2を弛めることによって行われる。詳しくは、ねじS2,S2が弛められると、収納部側取付部材42の被取付用横線部25aに対する固定状態が弛められる。このとき、前板側取付部材41は、ねじS3によって収納部側取付部材42に対する固定状態を維持しているため、前板3と取付部材4とが一体となって、一対の被取付用横線部25a,25bに沿って左右方向に移動可能である。しかし、ねじS2,S2を弛めても、前板3は左右方向にしか移動しない。したがって、作業者は、ねじS2,S2を弛めた後、前板3を一対の被取付用横線部25a,25bに沿って左右方向に移動させることによって、前板3について左右方向の位置調整のみを行うことができる。前板3は、左右方向に位置決めされた後、作業者によってねじS2,S2が再度締め付けられることによって固定される。
【0043】
前板3を回転方向に調整する方法を
図10に示す。前板3の回転方向の調整は、収納部側取付部材42のねじS3を弛めることによって行われる。詳しくは、ねじS3が弛められると、前板側取付部材41と収納部側取付部材42との固定状態が弛められる。このとき、前板側取付部材41は、ねじS1,S1によって、前板3に対する固定状態を維持し、収納部側取付部材42は、ねじS2,S2によって、被取付用横線部25a,25bに対する固定状態を維持しているため、ねじS3を弛めても、前板3は上下方向及び左右方向には移動しない。したがって、作業者は、ねじS3を弛めた後、回転方向調整用ねじ穴439の左右方向の長さの範囲内で、前板3を回転方向調整部412の凸円弧面414に沿って左右方向のみに移動させることができる。これによって、前板3は、回転方向調整部412の凸円弧面414に沿って前板3の上下方向に沿う軸周りに回転し、収納部2に対して、回転方向調整部412の円弧方向に沿う相対的な回転方向の位置が調整される。前板3は、回転方向に位置決めされた後、作業者によってねじS3が再度締め付けられることによって固定される。
【0044】
前板側取付部材41の回転方向調整部412は、収納部側取付部材42の上下方向規制部437によって上下方向の移動が規制されている。そのため、ねじS3が弛められても、前板3は、回転方向調整部412の凸円弧面414の円弧方向にしか移動せず、上下方向には移動しない。上下方向規制部437は、回転方向調整部412の円弧方向に沿う移動を案内することができる。そのため、前板3は、回転方向調整部412の円弧方向に沿って円滑に移動することができる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る収納体1は、以下の効果を奏する。すなわち、収納体1は、物品を収納可能な収納部2と、収納部2の前面側を覆うように取り付けられる前板3と、前板3を収納部2に取り付ける取付部材4と、を備え、取付部材4は、前板3の背面3aに取り付けられる前板側取付部材41と、収納部2に取り付けられ、前板側取付部材41に対してねじ止めされる収納部側取付部材42と、を有する。前板側取付部材41及び収納部側取付部材42のいずれか一方は、左右方向を円弧方向とする凸円弧面414を有する回転方向調整部412を有し、前板側取付部材41及び収納部側取付部材42のいずれか他方は、回転方向調整部412に対して当接する回転方向調整部受け部432と、前板側取付部材41及び収納部側取付部材42の上下方向の相対的な移動を規制する上下方向規制部437と、を有する。前板側取付部材41と収納部側取付部材42とは、上下方向規制部437によって上下方向の相対的な移動が規制された状態で、回転方向調整部412と回転方向調整部受け部432とが当接し、前記回転方向調整部の円弧方向に沿う相対的な回転方向の位置を調整可能にねじ止めされる。したがって、この収納体1によれば、回転方向調整部の円弧方向に沿って前板3の回転方向の位置を調整する際に、前板側取付部材41と収納部側取付部材42との相対的な上下方向の移動が、上下方向規制部437によって規制される。そのため、収納体1における前板3の回転方向の位置を調整する際に、前板3の上下方向の位置ずれを起こすことがない。
【0046】
本実施形態に係る収納体1において、収納部側取付部材42は、前板側取付部材41にねじ止めするための左右方向に長い長穴からなる回転方向調整用ねじ穴439を有する。そのため、この収納体1によれば、回転方向調整用ねじ穴439のねじS3を弛めるだけで、前板3の回転方向の位置調整のみを独立して簡単に行うことができる。
【0047】
本実施形態に係る収納体1において、上下方向規制部437は、回転方向調整部412を上下に挟み込むように構成される。そのため、この収納体1によれば、上下方向規制部437によって、前板3の上下方向の移動を容易に規制することができるとともに、前板3の回転方向の移動を、上下方向規制部437に沿って円滑に案内することができる。
【0048】
本実施形態に係る収納体1において、前板側取付部材41は、前板3の背面3aに対してねじ止めするための上下方向に長い長穴からなる上下方向調整用ねじ穴413,413を有する。そのため、この収納体1によれば、ねじS1,S1を弛めることによって、前板3の上下方向の位置調整のみを独立して簡単に行うことができる。
【0049】
本実施形態に係る収納体1において、回転方向調整部受け部432は、回転方向調整部412の曲率に対応する曲率を有する凹円弧面438を有する。そのため、この収納体1によれば、回転方向調整部412の凸円弧面414と回転方向調整部受け部432の凹円弧面438との円弧面同士が当接することによって、前板3の回転方向の位置調整を円滑に行うことができるとともに、前板側取付部材41と収納部側取付部材42との当接状態が安定することによって、収納部2に対する前板3の取付け状態も安定する。
【0050】
本実施形態に係る収納体1において、収納部2は、前板3の左右方向に沿って延びる第1の被取付部である被取付用横線部25a、26aを有し、収納部側取付部材42は、収納部2に対する相対的な左右方向の位置を調整可能となるように被取付用横線部25a、26aを挟み込むことによって、収納部2に取り付けられる。そのため、この収納体1によれば、被取付用横線部25a、26aに対する挟持状態を弛めることによって、前板3の左右方向の位置調整のみを独立して簡単に行うことができる。
【0051】
本実施形態に係る収納体1において、収納部2は、前板側取付部材41を挟んで被取付用横線部25a、26aに対して平行に配置される第2の被取付部である被取付用横線部25b、26bを有し、収納部側取付部材42は、被取付用横線部25b、26bを前板3側及び前板3と反対側の両方から挟持する挟持部433を有する。そのため、この収納体1によれば、取付部材4は、一対の被取付用横線部25a,25b、26a,26bによって、回転することなく安定して収納部2に取り付けられる。挟持部433は、被取付用横線部25bを前板3側及び前板3と反対側からそれぞれ支持するため、収納部側取付部材42は、前板3側から作用する押圧力及び前板3と反対側から作用する引っ張り力による衝撃に対して十分に耐えることができる。
【0052】
本実施形態に係る収納体1において、挟持部433は、被取付用横線部25b,26bに対して引っ掛けることによって挟持するフック形状である。そのため、この収納体1によれば、収納部側取付部材42を被取付用横線部25b,26bに対して引っ掛けるだけで簡単に取り付けることができる。
【0053】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、凸円弧面を有する回転方向調整部は、収納部側取付部材42に設けられてもよい。この場合は、回転方向調整部受け部及び上下方向規制部が、前板側取付部材41に設けられる。
【0054】
第1挟持部433aと第2挟持部433bとを有する挟持部433は、先端を下側に向けて折り曲げたフック形状のものに限定されない。挟持部433は、先端を下側に向けて折り曲げた後に再び上側に向けて折り曲げることによって、第1挟持部433aと第2挟持部433bとの間を上方に開放するように形成されてもよい。挟持部433は、収納部側取付部材本体43の上端部に配置されるものに限定されず、取付板受け板部431の下端部に配置されてもよい。
【0055】
前板3を収納部2に取り付ける取付部材4は、図示する2つに限定されない。取付部材4の数は、収納部2及び前板3の大きさ等に応じて適宜増減される。
【符号の説明】
【0056】
1 収納体
2 収納部
25a,26a 被取付用横線部(第1の被取付部)
25b,26b 被取付用横線部(第2の被取付部)
3 前板
3a 背面
4 取付部材
41 前板側取付部材
413 上下方向調整用ねじ穴
412 回転方向調整部
42 収納部側取付部材
433 挟持部
437 上下方向規制部
432 回転方向調整部受け部
439 回転方向調整用ねじ穴