(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ペット用おむつ
(51)【国際特許分類】
A01K 23/00 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
A01K23/00 Z
(21)【出願番号】P 2020017330
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000208628
【氏名又は名称】第一衛材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】星川 光宏
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-271212(JP,A)
【文献】特開2014-018387(JP,A)
【文献】特開2007-167007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0249681(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 11/00 - 29/00
A01K 33/00 - 37/00
A01K 41/00 - 59/06
A01K 67/00 - 67/04
A61F 13/15 - 13/84
A61L 15/16 - 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)おむつ本体であって、
装着されるペットの頭側と尾側とにわたる縦の第1方向Xの長さL1が、その第1方向Xに垂直な横の第2方向Yの長さL2よりも大きく、透液性を有する表面シートと、
表面シートに接合される、不透液性を有する裏面シートと、
表面シートと裏面シートとの間に配設される、吸液性を有する吸収体とを有し、
ペットの体幹の背部を覆う背当て部から臀部および左右の後足の間を覆う股当て部を経て腹部を覆う腹当て部を形成し、
股当て部付近に、ペットの尻尾が挿通する尻尾穴が形成されるおむつ本体と、
(b)腹当て部における第2方向Y両側部に、そのおむつ本体の外側方に突出してそれぞれ設けられる係止手段であって、各係止手段は、
(b1)腹当て部における第2方向Y端部に取り付けられ、可撓性を有し、第1方向Xに細長く形成され、第1方向Xおよび第2方向Yに伸縮性を有さない内支持片と、
(b2)第1方向Xに細長く延びて外側方に突出して設けられ、その第1方向Xに伸縮性を有さず、第2方向Yに弾発的に伸縮可能な弾性を有する弾性異方性がある弾性部材であって、
内支持片に取り付けられる第2方向Y内側部と、
おむつ本体の第2方向Y外方の第2方向Y外側部とを有する弾性部材と、
(b3)係止部材であって、
(b3-1)弾性部材の第2方向Y外側部における第1方向Xに切欠きを介して相互にずれた位置にそれぞれ取り付けられ、可撓性を有し、第2方向Yに細長く形成され、第1方向Xおよび第2方向Yに伸縮性を有さない複数本の外支持片と、
(b3-2)各外支持片にそれぞれ設けられ、背当て部に着脱可能に係止する面状ファスナを構成する係止片とを有し、
(b3-3)おむつ本体の背当て部における第1方向Xに相互にずれた位置に、外支持片が第2方向Y外側方になるにつれて第1方向Xに相互に離間して延びて係止可能である係止部材とを備える係止手段とを含むことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項2】
外支持片の切欠きは、第1方向Xの幅がわずかなスリット状であることを特徴とする請求項1に記載のペット用おむつ。
【請求項3】
各係止手段において、
弾性部材の第2方向Yの弾性限界は、係止部材がおむつ本体の背当て部に係止してペット用おむつのペットへの装着状態で達成される値に選ばれ
、
弾性部材に取り付けられる各係止部材のうち、前記装着状態で最も
尾側の係止部材は、おむつ本体の第2方向Y両端部がペットの各後足の付け根付近を密着して囲んで前記装着状態を達成することを特徴とする請求項1または2に記載のペット用おむつ。
【請求項4】
おむつ本体は、一対の漏出防止シートを有し、各漏出防止シートは、
第1方向Xに沿って延び、第2方向Y両端部寄りにそれぞれ取り付けられる基端部と、第2方向Yに互いに近接する遊端部とを有し、第1方向Xに弾発的に伸縮可能に吸収体から立ち上がることができることを特徴とする請求項
3に記載のペット用おむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭で飼育される愛玩動物であるペットは、犬、猫、うさぎ、ハムスター、爬虫類、昆虫、魚などがある。そのなかでも、犬、猫のウエートが高く、日本では犬が900万頭、猫が1000万頭、飼育されている。最近は栄養事情や住環境がよくなり、犬、猫ともに高齢化が進んでいる。その結果、近年は介護を要する犬、猫が顕著に増加する状況にあり、その尿などの排泄物で屋内が汚損される。また、犬、猫は、自らの縄張りを主張するために部屋の壁面や家具などに排尿してマーキングする特性を有し、このことによっても屋内が汚損される。
【0003】
ペットによる汚損を防ぐ従来技術として、ペットの臀部を覆うように装着することができるペット用おむつが実現されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1のペット用おむつは、おむつ本体を有し、このおむつ本体は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シート間に内包され、トップシートを透過した尿を吸収する吸収体とを有し、尻尾穴が形成され、ペットの胴体である体幹の背部を覆う背当て部から左右の後足の間を覆う股当て部を経て腹部を覆う腹当て部を備える。腹当て部には、左右一対の外方に延びる細長い止着テープが取り付けられ、おむつ本体をペットの胴、腰のまわりに巻付けた状態で背当て部に着脱可能に止着される。おむつ本体はさらに、装着時に排泄器官の尿道口の向く方向(排泄方向前方)とほぼ平行となるようにおむつ本体に設けられた立体ギャザーを有する。また、同様の技術は特許文献2にも開示されている。
【0005】
犬は、俊敏ではないが小刻みな頻繁な動きを続けて活動量が多く、猫は、犬に比べ活動量は少ないが俊敏に動く。また、犬や猫は野生の性質から、おむつを付けると、違和感を持ち、おむつを体幹から取り外そうと動く。そのため、従来技術のペット用おむつは、長時間の着用によって装着位置がペットの尾側である後方、すなわち、臀部側へ変位してずれやすい、という問題がある。ペット用おむつがペットの後方へずれると、おむつと、ペットの後足の付け根の近傍および腹部との隙間が生じ、排泄された尿がその隙間から漏れ出す。また、おむつが後方へずれると、尿の排泄方向前方、すなわち、頭部側への漏れ出しが生じ易い。おむつがペットの後方にずれることによって、おむつがペットから脱げてしまうことさえ生じる。従来、おむつが後方へずれないように、おむつを紐でペットの首に繋ぐことも行なわれている。
【0006】
特許文献1および2の従来技術では、排泄器官の尿道口の向く方向とほぼ平行に立体ギャザーが設けられているので、おむつの装着当初には後足の付け根から両側への尿の漏れ出しを防ぐことができる。しかし、長時間の着用によっておむつの装着位置がペットの後方にずれると、前記隙間が大きくなり、腹部の下面と立体ギャザーの上部とが密着しなくなり、排泄された尿が漏れ出す。
【0007】
この問題は特に、肺付近の胴まわりに比べて後足の付け根の近傍の腰まわりの外周の長さが極端に小さい体形をしたペット、たとえば、猟犬のダルメシアンなどでは、生じやすい。したがって、ペット用おむつがペットの動きに拘らず、腰や後足の付け根まわりにぴったりと密着したままに保たれて、後方にずれることなく装着できるおむつが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-159591号公報
【文献】実用新案登録第3031321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、装着したペットの後方に、または頭側の前方に、ずれることなく、これによって、尿などが漏れ出すことを確実に防ぐことのできるペット用おむつを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件明細書中、第1、第2および第3方向X、Y、Zは、
図1~
図12の実施の第1形態のペット用おむつ1、および
図13の実施の第2形態のペット用おむつ1Aを、ペット60に装着せずに、平面状に展開した状態における方向をいう。
対応する記載個所を、丸括弧( )内に示すことがある。
本発明は、
図1~
図12の実施の第1形態、および
図13の実施の第2形態に示されるとおり、
(a)おむつ本体2、2aであって、
装着されるペット60の頭側と尾側とにわたる縦の第1方向Xの長さL1が、その第1方向Xに垂直な横の第2方向Yの長さL2よりも大きく、透液性を有する表面シート11と、
表面シート11に接合される、不透液性を有する裏面シート12と、
表面シート11と裏面シート12との間に配設される、吸液性を有する吸収体13とを有し、
ペット60の体幹61の背部64を覆う背当て部16から臀部63および左右の後足66の間を覆う股当て部17を経て腹部を覆う腹当て部18を形成し、
股当て部17付近に、ペット60の尻尾68が挿通する尻尾穴14が形成されるおむつ本体2、2aと、
(b)腹当て部18における第2方向Y両側部27に、そのおむつ本体2、2aの外側方(図3、図6の左方)に突出してそれぞれ設けられる係止手段3、3aであって、各係止手段3、3aは、
(b1)腹当て部18における第2方向Y端部27に取り付けられ、可撓性を有し、第1方向Xに細長く形成され、第1方向Xおよび第2方向Yに伸縮性を有さない(段落[0036])内支持片41と、
(b2)第1方向Xに細長く(図1、図2、図6、図8、図13の上下方向に)延びて外側方(図6の左方)に突出して設けられ、その第1方向Xに伸縮性を有さず、第2方向Yに弾発的に伸縮可能な弾性を有する弾性異方性がある弾性部材30であって、
内支持片41に取り付けられる第2方向Y内側部31と、
おむつ本体2、2aの第2方向Y外方の第2方向Y外側部32とを有する弾性部材30と、
(b3)係止部材40であって、
(b3-1)弾性部材30の第2方向Y外側部32における第1方向Xに切欠き36、37を介して(したがって、第2方向Y外側部32に切欠き36、37が入り込んで形成され(段落[0037]、図6、図13))相互にずれた位置にそれぞれ取り付けられ、可撓性を有し、第2方向Yに細長く形成され、第1方向Xおよび第2方向Yに伸縮性を有さない複数本の外支持片42、43と、
(b3-2)各外支持片42、43にそれぞれ設けられ、背当て部16に着脱可能に係止する面状ファスナを構成する係止片45、46とを有し、
(b3-3)おむつ本体2、2aの背当て部16における第1方向Xに相互にずれた位置に、外支持片42、43が第2方向Y外側方になるにつれて第1方向Xに相互に離間して延びて係止可能(段落[0022~0025])である係止部材40とを備える係止手段3、3aとを含むことを特徴とするペット用おむつ1、1Aである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、おむつ本体2の腹当て部18における第2方向Y両端部27に、各弾性部材30の第2方向内側部31がそれぞれ取り付けられ、弾性部材30は、第1方向Xに延びて、たとえば、長方形または正方形の矩形板状に形成されてもよく、少なくとも第2方向Yに弾発的に伸縮可能な弾性を有し、各弾性部材30の第2方向外側部32における第1方向Xに相互にずれた位置に、背当て部16に着脱可能に係止する各弾性部材30毎に複数の、たとえば、一対の係止部材40がそれぞれ取り付けられる。第2方向Y内側とは第2方向Yのおむつ本体2、2a寄りの側であり、第2方向Y外側とは第2方向Yのおむつ本体2、2aから遠ざかる側である。
【0012】
したがって、各弾性部材30毎に共通に取り付けられる複数の各係止部材40には、その共通の弾性部材30によって、同一の、またはほぼ同一の弾発的な引張力がそれぞれ作用することが重要である。また、腹当て部18における第2方向Y両端部27における各弾性部材30毎に、各弾性部材30によって複数の係止部材40に作用する引張力の合計値は、等しい。そのため、背当て部16と腹当て部18とは、体幹61を周方向に包んで第1方向Xの位置に拘らず均一な、またはほぼ均一な締付け力で締付けることができる。このことによって、たとえば、胴まわりに比べて腰まわりの外周の長さが小さい体形をしたペット60であっても、締付け力は第1方向Xに均一であり、たとえば、胴まわりに比べて小径の腰まわりの締付け力が小さくはならない。また、ペット用おむつ1、1Aをペット60に装着するとき、第1方向Xに相互にずれた複数の各係止部材40毎に、飼い主などの装着者による引張力が異なっても、ペット用おむつ1、1Aは、装着後に体幹61を第1方向に均一な締付け力で締付けることができる。
【0013】
本発明は、ペットとして後述の犬60(
図10、
図11)、猫90(
図12)だけでなく、他の動物にも関連して実施でき、犬60、猫90の体の対応する部位には同一の参照符を付す。以下に、犬60について主に説明することもあるが、猫90についても同様である。
【0014】
したがって、ペット用おむつ1、1Aがペット60後方にずれることはなく、尿の排泄方向前方への漏れ出しが生じることはなく、また、後足66の付け根67から両側への尿の漏れ出しを防ぐことができ、弾性部材30はペット用おむつ1、1Aを装着したペット60の動きに応じて弾性的に伸縮可能であり、ペット60が装着しているペット用おむつ1、1Aのずれ、隙間の発生を防止し、おむつ1、1Aがペット60から脱げてしまうことはない。仮に、第1方向Xに相互にずれた複数の各係止部材40毎に個別的な弾性部材30をそれぞれ介して腹当て部18における第2方向両端部27に設けるとすれば、装着後に体幹61を第1方向Xに均一な締付け力で締付けることはできず、ペット用おむつ1、1Aはペット60の後方にずれてしまい、尿の漏れ出しを防ぐことはできない。
【0015】
尻尾穴14に尻尾68を通してペット用おむつ1、1Aを装着することによって、ペット用おむつ1、1Aが体幹61を周方向に角変位してずれることを防ぐことができる。
【0016】
本発明の実施の他の形態では、弾性部材30とそれに関連する係止部材40とは、腹当て部18に代えて背当て部16に取り付けられてもよい。本発明の実施のさらに他の形態では、腹当て部18および背当て部16の一方に、弾性部材30と、それに関連する一方の複数の係止片45、46を有する、たとえば細長いテープ状の係止部材40とを取り付け、それらの一方の係止片45、46に個別的に着脱自在にそれぞれ係止する、他方の係止片47を有する、係止の相手方となるもう1つの細長いテープ状の係止部材40を、腹当て部18および背当て部16の他方に取り付けてもよい。他方の係止片47は、1または複数であってもよい。
【0017】
本発明の「背当て部16に着脱可能に係止する面状ファスナを構成する係止片45、46」は、おむつ本体2の背当て部16における裏面シート12に取り付けられる係止片47に着脱可能な構成であってもよく、または、裏面シート12が、たとえば起毛された不織布などから成り、背当て部16において着脱可能な構成などであってもよく、これらの構成を含む(段落[0037])。
【0018】
本発明によれば、各弾性部材30の第1方向Xの引張弾性率(こわさ)は、第2方向Yの引張弾性率よりも大きく選ばれ、すなわち、第1方向Xには第2方向Yよりも弾発的に伸びにくく、または、第1方向Xに伸縮性を有さず、第2方向Yのみに弾発的に伸縮し、各弾性部材30はこのような弾性異方性を有する。したがって、各弾性部材30毎に共通に取り付けられる複数の各係止部材40には、その共通の弾性部材30によって第2方向Yである体幹61の周方向の弾発的な引張力がそれぞれ作用し、第1方向Xの弾発的な力の成分はごく小さいか、または零である。したがって、ペット用おむつ1、1Aがペット60の後方にずれることを確実に防ぎ、尿の漏れ出しを防ぐことが確実になる。
【0019】
本発明は、
外支持片42、43の切欠き37(図13)は、第1方向Xの幅がわずかなスリット状であることを特徴とする。
本発明によれば、弾性部材30に作用する第2方向Yの応力σを小さくして、各外支持片42、43の引張力による弾性限界34(図9)付近の締付け力を大きくできる(段落[0080])。
本発明は、
各係止手段3、3aにおいて、
弾性部材30の第2方向Yの弾性限界34は、係止部材40がおむつ本体2,2aの背当て部16に係止してペット用おむつ1、1Aのペット61への装着状態で達成される値に選ばれ
、
弾性部材30に取り付けられる各係止部材40のうち、前記装着状態で最も
尾側の(
図1、
図2に示される実施の形態における外支持片42を有する)係止部材40は、おむつ本体2、2aの第2方向Y両端部27がペットの各後足66の付け根67付近を密着して囲んで前記装着状態を達成することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、細長い複数の各係止部材40は、その長さ方向に伸縮性を有さないので、弾性部材30によって、背当て部16と腹当て部18とは、体幹61を周方向に包んで第1方向Xに均一な締付け力で締付けることが確実となり、そのため、ペット用おむつ1、1Aがペット60の後方にずれることはなく、尿の漏れ出しを防ぐことが確実である。
【0021】
各弾性部材30の第2方向Yの弾性限界34は、係止部材40がおむつ本体1、1Aの背当て部16に係止してペット用おむつ1、1Aのペット60への装着状態で達成される値に選ばれるので、各弾性部材30のいわば伸び切った状態の一定値である引張力を発揮して、ペット60に適切な締付け力を作用することができる。たとえば、ペット60の大小のサイズ、したがって、体幹61の外周の長さに対応して、弾性部材30の弾性率、弾性部材、長さなどの寸法、形状などを選ぶことによって、ペット用おむつ1、1Aがペット60の後方にずれることなく、各サイズ毎のペット60に快適な無理のない締付け力を与えることができる。
【0022】
係止部材40は、可撓性を有し、細長く、たとえば、テープ状に形成されるので、背当て部17の第1方向Xに相互にずれた位置に、V字状(
図8)に延びて係止可能であり、特に、各弾性部材30にそれぞれ取り付けられる複数の各係止部材40のうち、前記装着状態で最も尾側の(
図1、
図2に示される実施の形態における外支持片42を有する)係止部材40は、おむつ本体2、2aの第2方向両端部27がペット60の各後足66の付け根67付近を密着して囲んで、後足66の付け根67付近がぴったりと挿通するレッグホールと呼ぶことができる挿通孔69(
図11)を形成することができ、ペット用おむつ1、1Aがペット60の後方にずれることなく、尿の漏れ出しを防ぐことが確実である。
【0023】
挿通孔69(
図11)が囲む後足66の付け根67付近では、装着状態で最も尾側の外支持片42(
図1、
図2)を有する係止部材40は、おむつ本体2、2aの端部27、さらには端部28、29とともに、大腿骨の上方で寛骨、股関節を覆い、内腹斜筋よりも犬60の尾側で縫工筋、大腿筋膜張筋などを覆って挿通孔69(
図11)を形成するように構成され、ペット60の腰まわり、胴まわりを弾発的に締め付けるように構成され、隙間の発生を防いで尿の漏れ出しを確実に防ぐ。
【0024】
また、本発明によれば、後足66の付け根67のまわりをおむつ本体2、2aで囲んでレッグホールである挿通孔69(
図11)に隙間ができないように、係止片45、46を含む係止部材40によって、たとえばV字状(
図8)に、係止することができる。したがって、犬60、猫90などのペットに、おむつ1、1Aの後足66のまわりの部分をしっかり固定して装着できる。そのため、おむつ1、1Aの装着後、係止部材40の働きによって、たとえば、尾側の外支持片42、係止片45などの働きによって、犬60、猫90などのペットの体との不所望な変位が防がれ、おむつ1、1Aの背当て部16、股当て部17、腹当て部18が、尾側の後方にずれることがなく、尿の漏れ出しがなくなる。
【0025】
こうして、装着時、レッグホールである挿通孔69(
図11)に隙間ができないように、係止部材40の係止によって、たとえば、尾側の係止片45、さらには46と47などの係止によって、おむつ1、1Aをペット60、90の足まわりに固定するので、おむつ1、1Aの全体が尾側の後方にずれることはない。従来技術では、おむつ1、1Aの後方へのずれを防止できておらず、本発明は、この問題を解決する。
【0026】
本発明は、
おむつ本体2、2aは、一対の漏出防止シート20を有し、各漏出防止シート20は、
第1方向Xに沿って延び、第2方向両端部27寄りにそれぞれ取り付けられる基端部21と、第2方向Yに互いに近接する遊端部22とを有し、第1方向Xに弾発的に伸縮可能に吸収体13から立ち上がることができることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、第1方向Xに沿って延びる一対の各漏出防止シート20の基端部21は、第2方向両端部27寄りで、したがって、吸収体13を第2方向Yに少なくとも部分的に挟んでそれぞれ取り付けられ、各漏出防止シート20の遊端部22は、第2方向Yに互いに近接して吸収体13を第2方向Y内方で露出し、各漏出防止シート20は、第1方向Xに弾発的に伸縮可能であり、吸収体13から立ち上がることによって、後足66の付け67付近および腹部65からの尿の漏れ出しを防ぐことがさらに確実である。漏出防止シート20は、その遊端部22が吸収体133からわずかに離間して立ち上がることができてもよいが、漏出防止シート20は、吸収体13と大きな角度を成して離間して立ち上がるように構成されてもよい。遊端部22に、第1方向Xに弾発的に伸縮可能な弾発材、たとえば、ゴム紐を設けてもよい。
【0028】
本発明は、前述の(1)
図1~
図13のおむつ本体2、2aが、ペット60の体幹61の背部64を覆う背当て部16から臀部613および左右の後足66の間を覆う股当て部17を経て腹部65を覆う腹当て部18を形成し、股当て部17付近に、ペット60の尻尾68が挿通する尻尾穴14が形成されるペット用おむつ1、1A、および(2)ペット用だけでなく人用の各種のおむつ、およびおむつ以外のその他の係止のための用途において実施できる。
【0029】
本発明の係止は、典型的には、面状ファスナによって実現される。面状ファスナはファスニングテープなどとも称される。面状ファスナは、たとえば、マジックテープ(商標)などのように、フック状にまたはマッシュルーム状に密集して起毛された結合のための一方の係止片と、ループ状に密集して起毛された付着のための他方の係止片とを押し付けることによって貼り付くように接合し、接合を離脱したりすることが自在にできる。ループ状の付着のための前記他方の係止片は、たとえば、フロンタルテープまたはターゲットテープなどとも称することができる。面状ファスナは、フイルムの一方面に粘着剤が塗布された結合のための一方の係止片と、その粘着剤が接合、離脱可能なもう1つのフイルムである付着のための他方の係止片とによって実現されてもよい。付着のための他方の係止片は、起毛された不織布などであってもよく、本発明の裏面シートがそのような不織布などによって実現される構成では、結合のための一方の係止片を裏面シートに付着するために他方の係止片を別途設ける必要はなく、本発明はこれらの構成も含む。実施のさらに他の形態では、各外支持片42、43において、一方の係止片45、46が設けられる一方面とは反対側の他方面には、その一方の係止片45、46と接合、離脱自在の他方の係止片が設けられてもよく、または、起毛された不織布などであってもよく、これによって、おむつ本体1、1aの第2方向Yの各端部27の係止部材40が背当て部16上で重なった状態でも、離脱可能に接合できる。係止は、その他の構成によって実現されてもよく、接合などの連結、接続と、その離脱可能な構造を含む。一方の各係止片45、46を外支持片42、43と同じテープ形状にして、外支持片42、43を省略し、部品点数を減らすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の一形態であるペット用おむつ1を平面状に展開した正面図である。
【
図3】
図1における切断面線III-IIIで切断したペット用おむつ1の断面を模式的に示す図である。
【
図4】
図1における切断面線IV-IVで切断したペット用おむつ1の断面を模式的に示す切断部端面図である。
【
図5】ペット用おむつ1の部品構成を示す分解斜視図である。
【
図7】ペット用おむつ1を装着して使用する状態を示す斜視図である。
【
図8】ペット用おむつ1をペットに装着した状態における係止手段3を示す正面図である。
【
図9】弾性部材30に第2方向Yの引張力を作用したときのときの簡略に説明するための応力ひずみ線図である。
【
図10】ペット用おむつ1を犬60に装着した状態を示す図である。
【
図11】ペット用おむつ1を犬60に装着した状態を示すペットの後方から見た斜視図である。
【
図12】ペット用おむつ1を猫90に装着した状態を示す図である。
【
図13】本発明の実施の他の形態であるペット用おむつ1Aの係止手段3aの拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は本発明の実施の一形態であるペット用おむつ1を平面状に展開した正面図であり、
図2はペット用おむつ1の背面図であり、
図3は
図1における切断面線III-IIIで切断したペット用おむつ1の断面を模式的に示す切断部端面図であり、
図4は
図1における切断面線IV-IVで切断したペット用おむつ1の断面を模式的に示す切断部端面図であり、
図5はペット用おむつ1の部品構成を示す分解斜視図である。これらの図面を参照して、ペット用おむつ1は、
図1に示す展開状態で正面視したときの形状が、ほぼI字形状であって、犬60(後述の
図10、
図11を参照)などに代表されるペット、特に雄犬を屋内で飼育する際に好適に用いられる。ペット用おむつ1の展開状態における正面形状は、I字形状に限られず、長方形状であってもよく、またI字状や長方形状の長手方向の両端縁が外方に凸の円弧状に湾曲した形状であってもよい。ペット用おむつ1は、
図1の切断面線IV-IVに関して左右対称に構成され、おむつ本体2と係止手段3とを含む。
【0032】
おむつ本体2は、透液性を有する表面シート11と、不透液性を有する裏面シート12と、表面シート11と裏面シート12との間に配設される吸液性を有する吸収体13とを有する。表面シート11、したがって、おむつ本体2は、装着されるペットである犬60(
図10、
図11)の胴体である体幹61に連なる頭部62の頭側と臀部63の尾側とにわたる縦の第1方向X(
図1、
図2の上下方向)の寸法、長さL1が、その第1方向Xに垂直な横の第2方向Y(
図1、
図2の左右方向)の寸法、長さL2よりも大きい。裏面シート12は、その周縁部が表面シート11の周縁部に吸収体13以外の全ての領域で接合される。ペットの一例として、犬60について説明するが、本発明は、猫、その他の動物にも使用できる。
【0033】
おむつ本体2は、犬60の体幹61の背部64を覆う背当て部16から臀部63および左右の後足66の間を覆う股当て部17を経て腹部65を覆う腹当て部18を形成する。背当て部16は、
図1において上方の一端部25から第1方向Xの長さL12で示される領域である。一端部25は、おむつ本体2の犬60への装着状態で頭側に臨む。股当て部17は、
図1において背当て部16に連なる第1方向Xの長さL13で示される領域である。腹当て部18は、
図1において股当て部17に連なり、他端部26までの第1方向Xの長さL14で簡略化して示される領域である。他端部26は、一端部25と同じように、おむつ本体2の犬60への装着状態で頭側に臨む。股当て部17付近に、犬60の尻尾68が挿通する尻尾穴14がU字状の切り欠きによって形成される。
【0034】
図6は、係止手段3の拡大正面図である。各係止手段3は、弾性部材30と係止部材40とを含み、おむつ本体2の
図1の下方の他端部26付近で腹当て部18における第2方向両端部27に、そのおむつ本体2の外側方(
図3、
図6の左方)に突出する。弾性部材30は、第2方向Yのおむつ本体2側に第2方向内側部31を有し、おむつ本体2の第2方向Y外方に第2方向外側部32を有する。各弾性部材30は、第1方向Xに延びて設けられ、その第2方向内側部31は、内支持片41を介しておむつ本体2の第2方向両端部27に取り付けられる。
【0035】
弾性部材30は、少なくとも第2方向Yに弾発的に伸縮可能な弾性を有し、第1方向Xの引張弾性率は、第2方向Yの引張弾性率よりも大きく選ばれ、または、第1方向Xに伸縮性を有さない。
【0036】
係止部材40は、弾性部材30の第2方向外側部32における第1方向XにU字状切欠き36を介して相互にずれた位置に第2方向内側部がそれぞれ取り付けられる複数(この実施の形態では一対)の外支持片42、43と、各外支持片42、43にそれぞれ取付けられ、おむつ本体2の背当て部16に着脱可能に係止する一方の係止片45、46とを含む。係止部材40の外支持片42、43は、可撓性を有し、
第2方向Yに細長く形成され
(図1、図2、図6、図8、図13)、第1方向Xおよび第2方向Yに伸縮性を有さず、内支持片41も同じように構成される。弾性部材30と、内支持片41、外支持片42、43とは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製であり、たとえば熱融着によって固定される。
【0037】
一方の係止片45、46に着脱自在に係止する他方の係止片47(
図2、
図7)は、
背当て部16において(図1、図2)、おむつ本体2の裏面シート12に取り付けられる。他方の係止片47は、裏面シート12が一方の係止片45、46と着脱可能な、たとえば起毛された不織布などから成るとき、省略され得る。こうして、面状ファスナが構成される。係止片47は、複数の係止片45、46に係止する単一個でもよいが、係止片45、46に個別的に複数個設けられてもよい。
【0038】
図7は、ペット用おむつ1を装着して使用する状態を示す斜視図である。おむつ本体2は、犬60の体幹61の背部64を覆う背当て部16から、臀部63と左右の後足66の間とを覆う股当て部17を経て、腹部65を覆う腹当て部18を形成して、装着される。
【0039】
図8は、ペット用おむつ1を犬60に装着した状態における係止手段3を示す正面図である。係止部材40における複数の外支持片42、43のうち、特に、装着状態で最も尾側(おむつ本体2を展開して示す
図1、
図2、
図6、
図8の上方)の外支持片42は、おむつ本体2の第2方向両端部27、およびその両端部27に連なる腹当て部18および股当て部17の第2方向両端部28、29が、犬60の各後足66の付け根67付近を密着して囲んで、尿が漏れ出さないレッグホールを形成し、その装着状態を達成するように延びて、外支持片42の取り付けてある一方の係止片45が他方の係止片47と接合される。この装着状態では、外支持片42、43は、おむつ本体2の背当て部16における第1方向Xに相互にずれた位置に、第2方向Y外側方(
図8の左方)になるにつれて第1方向Xに相互に離間して、V字状に矢印48,49の方向に延びて、係止片45、46と係止片47とが係止され、弾性部材30は第2方向Yに引張力が作用されることによって弾発力を発揮する。
【0040】
図9は、弾性部材30に第2方向Yの引張力を作用したときの簡略に説明するための応力ひずみ線図である。おむつ本体2の犬60への装着時、飼い主は、外支持片42、43を指で掴んで矢印48,49(
図8)の方向に引張る。これによって、弾性部材30は、ライン33のとおり、外支持片42、43による合力の引張力に対応してひずみεを生じて伸びる。引張力が弾性部材30の第2方向Yの弾性限界34以上では、弾性部材30は、ライン35のとおり、引張力が作用しても、それ以上伸びない。そこで飼い主は、それ以上の引張りを停止し、係止片45、46:47を係止する。こうして、おむつ本体2は、犬60の体幹61および後足66の付け根67などを、弾性限界34付近の締付け力で締付けることができる。
【0041】
弾性部材30の第2方向外側部32に共通に取り付けられる複数の各外支持片42、43には、同一の、またはほぼ同一の弾発的な最適な引張力が、単一の弾性部材30によって与えられる。したがって、おむつ本体2が犬60の体幹61などを締め付ける締付け力は、第1方向Xの位置によらず同じ値である。したがって、犬60に装着されたおむつ本体2が第1方向Xにずれることはなく、尿の漏れ出しが防がれる。
図1、
図2の左右に対を成す各弾性部材30による弾発的な引張力は等しい。
【0042】
弾性限界34に代えて、弾性部材30の比例限界などでもよく、このように飼い主が引張力を増してゆくとき、その引張力に対応した伸び量が得られないことを感じ取ることができる特性の値であればよい。
【0043】
図10は犬60にペット用おむつ1を装着した状態を示し、
図10(1)はその平面図であり、
図10(2)はその側面図である。
図11は、ペット用おむつ1を装着した状態を示す犬60の後方から見た斜視図である。犬60は、たとえば胴まわりに比べて腰まわりの外周の長さが小さい体形をしたダルメシアンなどであっても、弾性部材30によって発揮される、おむつ本体2による締付け力は第1方向Xに均一である。したがって、おむつ本体2が犬60の体幹61に沿って第1方向Xにずれることが防がれる。
【0044】
おむつ本体2を装着状態で最も尾側の外支持片42を有す)係止部材40は、おむつ本体2の第2方向両端部27、さらに端部28、29が犬60の各後足66の付け根67付近を密着して囲んで、後足66の付け根67付近がぴったりと挿通するレッグホールと呼ぶことができる挿通孔69を形成することができる。
【0045】
後足66の付け根67付近では、装着状態で最も尾側の外支持片42(
図1、
図2)を有する係止部材40は、
図8のV字状に拡げられた使用状態で、おむつ本体2の端部27、さらには端部28、29とともに挿通孔69を形成して、大腿骨の上方で寛骨、股関節を覆い、内腹斜筋よりも犬60の尾側で縫工筋、大腿筋膜張筋などを覆い、犬60の腰まわり、胴まわりを弾発的に締め付ける。これによって、挿通孔69を挿通する後足66の付け根67付近における隙間の発生を防いで尿の漏れ出しを確実に防ぐことができる。
挿通孔69(
図11)が囲む後足66の付け根67付近では、装着状態で最も尾側の外支持片42(
図1、
図2)を有する係止部材40は、おむつ本体2、2aの端部27、さらには端部28、29とともに、大腿骨の上方で寛骨、股関節を覆い、内腹斜筋よりも犬60の尾側で縫工筋、大腿筋膜張筋などを覆って挿通孔69(
図11)を形成するように構成され、ペット60の腰まわり、胴まわりを弾発的に締め付けるように構成され、隙間の発生を防いで尿の漏れ出しを確実に防ぐ。
【0046】
また、後足66の付け根67のまわりをおむつ本体2で囲んでレッグホールである挿通孔69(
図11)に隙間ができないように、係止片45、46を含む係止部材40によってV字状(
図8)に係止することができる。したがって、犬60に、おむつ1の後足66のまわりの部分をしっかり固定して装着することができる。そのため、おむつ1の装着後、係止部材40、特に、尾側の外支持片42、係止片45の働きによって、犬60の体との不所望な変位が防がれ、おむつ1の背当て部16、股当て部17、腹当て部18が、尾側の後方にずれることがなく、尿の漏れ出しがなくなる。
【0047】
こうして、装着時、レッグホールである挿通孔69(
図11)に隙間ができないように、係止部材40の尾側の係止片45などの係止によって、おむつ1を犬60の足まわりに固定するので、おむつ1の全体が尾側の後方にずれることはない。従来技術では、おむつ1の後方へのずれを防止できておらず、本件実施の形態は、この問題を解決する。
【0048】
図1~
図5を再び参照して、おむつ本体2は、長手のI字状のシート体である。おむつ本体2は、第1方向X両端部25、26における第2方向Yの長さよりも、第1方向X中央部における第2方向Yの長さが小さく形成され、第1方向Xの長さL1は、一例として述べると、43cm、第1方向X両端部25、26における第2方向Yの長さL2は、29cm、第1方向X中央部における第2方向Yの長さL3は、17.8cmである。
【0049】
おむつ本体2の長さL1~L3は、上記数値に限られることはなく、ペット用おむつ1を装着するペット、すなわち小型犬か中型犬かの違い、小型犬/中型犬であっても犬種の違い、成犬、幼犬、老犬の違い、体形、肥満度による体躯の違いなどによるサイズに合わせて適宜変更されるが、その寸法比はほぼ一定であり、L1,L2,L3の長さの比が、約10:7:4となるように形成される。
【0050】
おむつ本体2の一対の各漏出防止シート20は、第1方向Xに沿って延び、吸収体13の第2方向Y両側部寄りで、表面シート11の
図3における上面に接合される基端部21と、第2方向Yに互いに近接する遊端部22とを有し、遊端部22は第1方向Xに弾発的に伸縮可能に吸収体から立ち上がることができる。
【0051】
おむつ本体2の第1方向X一端部25、他端部26には、第2方向Yに弾発力を有するウエストギャザー51、52がそれぞれ設けられる。ウエストギャザー51、52のための可撓性および伸縮性を有するシート状のまたは細長いひも状の弾発片53、54は、表面シート11と裏面シート12との間に、吸収体13よりも第1方向Xの端部25、26寄りの外方で配設される。
【0052】
表面シート11は、通気性および透液性を有するシートであればよく、たとえば合成繊維および再生繊維から成る繊維シートまたは繊維ウェッブの繊維同士を物理的に交絡させて形成される不織布などを用いることができる。本実施の形態では、不織布を用いて形成される。表面シート11は、通気性および透液性を有するシートであるので、表面シート11側から、尿を吸収体13に導くことができる。
【0053】
表面シート11の内面と裏面シート12の内面とは、吸収体13が設けられる領域では、吸収体13と当接する。吸収体13が設けられていない周囲の領域では、第2方向Y両端部で表面シート11の内面と裏面シート12の内面とは接合される。
【0054】
裏面シート12は、不透液性で可撓性を有するシートなどを用いて形成することができ、たとえばポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製のシートが用いられる。また裏面シート12には、不透液性および可撓性に加えて透湿性を有するシートを用いてもよい。このような透湿性をも有するシートを用いることによって、装着時においてペット用おむつ1と犬60との間の湿度の上昇を防ぐことができ、蒸れることによる犬60の不快感を低減することができる。
【0055】
裏面シート12は、表面シート11よりも寸法、長さが大きく形成されてもよい。裏面シート12は、表面シート11の第3方向Zに積層されて、表面シート11、弾発片53、54、漏出防止シート20および内支持片41とが接合される。
【0056】
表面シート11、裏面シート12、内支持片41、弾発片53、54および漏出防止シート10などの接合には、あらゆる公知の方法を用いることができるが、たとえば、工業用糊材であるホットメルト接着剤を用いて加圧、加熱することによって接合してもよい。工業用糊材としては、モレスコ社製のTN-269(商品名)、TN-255(商品名)、TN-288(商品名)などを用いることができる。
【0057】
吸収体13は、おむつ本体2の第1方向他端部26よりも距離L4だけ退避した位置から、第1方向Xの中央を第1方向X一端部25側に尻尾穴14付近まで、第1方向一端部25側に距離L5だけ退避して延びて設けられる。距離L4は、たとえば2cmであり、距離L5は、たとえば18.2cmである。
【0058】
吸収体13としては、公知のあらゆる吸水性材料を用いることができる。吸収体13は、たとえば、フラッフ状繊維、吸水性ポリマおよび消臭剤を含む。フラッフ状繊維は、たとえばパルプを1mm以上10mm以下の長さに切断した親水性繊維を撹拌して綿状にした綿状パルプを用いることができる。フラッフ状繊維で形成される吸収体13は繊維間に多数の空隙を有するので、尿を面方向および厚み方向に分散させて効率よく吸収することができる。
【0059】
吸水性ポリマは、自重の約10倍以上300倍以下の水分を吸収してゲル状に凝固する高分子吸収体であり、たとえば抗菌性を有する吸水性ポリマや荷重下通液性を有する吸水性ポリマ等を用いることができる。抗菌性を有する吸水性ポリマの例としては、商品名サンフレッシュST-900E(サンダイヤポリマー株式会社製)を挙げることができ、荷重下通液性を有する吸水性ポリマとしては、商品名サンウェットIM-930(サンダイヤポリマー株式会社製)を挙げることができる。吸水性ポリマとして、アクリル酸ナトリウム塩およびアクリル酸カリウム塩などの吸水性ポリマに、抗菌剤を電気的に重合させて付着させた抗菌性を有する高機能吸水性ポリマを用いてもよい。吸水性ポリマが抗菌性をも有することで、吸収体13における菌の繁殖を抑えることができる。
【0060】
吸水性ポリマが、吸収体13内に均等に分散されることによって、犬60からの尿が表面シート11上のいずれの部分から浸透した場合であっても、効率よく尿を吸収し保持することができる。吸収体13内に消臭剤を含ませることで、アンモニア臭などの人にとって不快な臭いが外部に漏れ出すのを防ぐことができる。
【0061】
吸収体13は、第1方向Xの長さL6が22.8cm、第2方向Yの長さL7が9.5cm、第3方向Zの暑さL8(
図4)が8.0mmである。吸収体13の長さL6~L8は、上記数値に限られず、ペット用おむつ1が用いられるペットである犬60のサイズや種類によって適宜決定され、生理現象およびマーキングによる犬60の複数回の排尿を充分に吸収し、保持することができる容量、すなわちサイズおよび吸収能力を有していればよい。吸収体13は、たとえば約300ccを吸収し保持することができる。
【0062】
漏出防止シート20は、
図3に示されるように、表面シート11の外面、および裏面シート12の内面上に、第1方向Xに沿って延びて設けられる帯状のシート体である。漏出防止シート20は、表面シート11、裏面シート12、内支持片41に接合され、吸収体13寄りに基端部21を有する。
【0063】
漏出防止シート10は、第1方向Xに弾発的に伸縮可能な遊端部22を有する。漏出防止シート10は、ペット用おむつ1を一平面上に展開して載置した状態で、長さ方向が第1方向Xと一致し、幅方向が第2方向Yと一致する。漏出防止シート10の遊端部22は、内側に折り返され、内封された弾性索条23を有する。
【0064】
漏出防止シート20は、裏面シート12と同様に不透水性および可撓性を有するシートなどを用いて形成することができ、たとえば、スパンボンド法およびメルトブロー法で製造したポリプロピレン製の複数の糸を、スパンボンド法で製造した不織布、メルトブロー法で製造した不織布、メルトブロー法で製造した不織布、スパンボンド法で製造した不織布の順で積層させ、防水加工を施した積層体によって形成される。
【0065】
漏出防止シート20の遊端部22に内封される索条23は、弾発的に伸縮可能であり、表面シート11および裏面シート12に対して第1方向Xに緊張、すなわち伸長された状態で配設される。したがって、ペット用おむつ1の装着時には、索条23の収縮力によって遊端部22が基端部21よりも収縮し、漏出防止シート20が表面シート11から立体的に立ち上がることができる。このような漏出防止シート20は立体ギャザーと呼ぶことができる。
【0066】
漏出防止シート20の遊端部22は、索条23の弾発力によって、臀部63、腹部65、後足66の付け根67付近などに隙間なく弾発的に線接触して密着して尿が漏れ出ることを防ぐ。したがって、ペット用おむつ1が犬60に装着された状態で、第2方向Yの前方、すなわち頭部62側に尿が放出されても、漏出防止シート20によってせき止められ、漏出防止シート20によって吸収体13が配設されている内側に導かれる。したがって、尿が第2方向Yから漏れ出すのを防ぐとともに、尿を吸収体13に確実に吸収させることができる。
【0067】
索条23は、弾発的に伸縮可能なものであれば、公知のあらゆる素材を用いることができ、たとえば、細いごむ紐が用いられる。
【0068】
ウエストギャザー51、52、したがって弾発片53,54は、第1方向Xに、吸収体13よりも第1方向他端部26から吸収体13が配設される領域の手前までであって、第2方向Yの両側に距離L11だけ離間した位置の間にわたって設けられる。距離L11は、ペット用おむつ1が用いられるペットのサイズや種類などによって適宜決定され、1.25cm~6.5cmの範囲であってもよく、小型犬を想定すれば、たとえば5.25cmである。
【0069】
ウエストギャザー51、52のサイズは、ペット用おむつ1が用いられる犬60のサイズや種類などによって適宜決定されるが、たとえば第2方向Yに延びる長辺が18.5cm~24.0cm、第1方向Xに延びる短辺が1.2cm~2.0cmの長方形状の素材が用いられる。たとえば、長辺が18.5cm、短辺が2.0cmの長方形状の伸縮ウレタンのシート材が用いられる。
【0070】
このように、ウエストギャザー51、52が設けられるので、第1方向Xの両端部25、26が第2方向Yに収縮する方向の弾発力によって立ち上がってギャザーであるひだを有する起立部を形成し、また、犬60の動きに追従して、その起立部を排泄器官の排泄方向前方に維持することができる。したがって、尿が吸収体13が配設される領域に導かれ、確実に吸収することができる。起立とは、吸収体13の表面に対して零に近い角度から垂直までの角度を成すいろんな姿勢を含む。
【0071】
ウエストギャザー51、52は、第1方向X一端部25側のみ、または第1方向X他端部26側のみに設けられてもよい。ウエストギャザー51、52は、前述の伸縮ウレタンのシート材に代えて、漏出防止シート20と同様に、細いごむ紐のような弾発的に伸縮可能な索条を内封して立体ギャザーを形成してもよい。
【0072】
尻尾穴14は、表面シート11および裏面シート12の吸収体13よりも第1方向X一端部25側であって、第2方向Yの略中央に設けられる。本実施形態では、尻尾穴14は、第1方向X一端部25側に凸のU字状に切欠かれることによって形成される。
【0073】
このようにシート11、12のU字状切欠きによって切り離された部分を外側へ折曲げることによって尻尾穴14を形成するので、尻尾68によってペット用おむつ1の位置が体幹61に対して位置決めされる。したがって、ペット用おむつ1が不所望にずれることを防いで、フィットさせた装着状態を維持することができる。これによって、尿の漏れ出しを防止し、吸収体13に確実に吸収させることができる。
【0074】
尻尾穴14を形成する切欠きの形状は、尻尾68を通すことができれば、U字状に限らず、半円状などでもよいが、尻尾68の断面形状に沿ったU字形状や半円状が好ましい。尻尾穴14を形成する切欠きは、一本の直線、複数本の直線が一点でクロスしたもの等のいずれでもよい。尻尾穴14のための切欠きの寸法、長さは、ペット用おむつ1が用いられるペットのサイズや種類などによって適宜決定されるが、その開口面積が装着状態でペット用おむつ1のずれが生じにくく、尻尾68を容易に挿入できる程度、たとえば3cm2~15cm2程度の尻尾穴14が形成される構成であればよい。また、尻尾穴14は、切欠きによって形成する代りに、貫通孔でもよい。
【0075】
係止部材40の係止片45、46は、裏面シート12の外面と接合可能であればよく、たとえば、実施の他の形態では両面に粘着性を有する粘着テープによって実現されてもよい。係止片45、46の形状は、長方形状に限らず、たとえば、正方形状や他の多角形状、円形状であってもよい。
【0076】
おむつ本体2の第2方向Y両端部に、弾性索条56が第1方向Xに沿って、かつ第1方向Xに緊張、すなわち伸長された状態で配置され、自然状態で収縮している。弾性索条56は、吸収体13および表面シート11よりも第2方向Y両端部側の位置に配設され、裏面シート12と漏出防止シート20との間にサンドイッチされて内封される。このように索条56が内封されることによって、おむつ本体2の第2方向Y両端部は、弾発的に伸縮可能である。索条56は、弾発的に伸縮可能なものであれば、公知のあらゆる素材を用いることができ、たとえば細いごむ紐が用いられる。索条56の数は、限られることはないが、たとえば第2方向Y両端部に2本ずつ、それぞれ設けられる。このような索条56が設けられることによって、ペット用おむつ1の装着時には、索条56の収縮力によって第2方向Y両端部が立体的に立ち上げられ、腹部65に弾発的に面接触して尿の漏れ出しがさらに確実に防がれる。
【0077】
図12は、ペット用おむつ1を猫90に装着した状態を示し、
図12(1)はその斜め側方から見た斜視図であり、
図12(2)はその後方から見た斜視図である。
図12におけるペット用おむつ1および猫90における前述の対応する部分には、前述の
図1~
図11と同一の参照符を付す。ペット用おむつ1は、前述の犬60と同じく猫90にも装着され、後方へずれることが防がれるとともに、後足66の付け根67付近では、装着状態で最も尾側の外支持片42(
図1、
図2)を有する係止部材40は、
図8のV字状に拡げられた使用状態で挿通孔69を形成して、猫90の腰まわり、胴まわりを弾発的に締め付けて隙間の発生が防がれ、尿の漏れ出しを確実に防ぐことができる。
【0078】
また、後足66の付け根67のまわりをおむつ本体2、2aで囲んでレッグホールである挿通孔69(
図11)に隙間ができないように、係止片45、46を含む係止部材40によってV字状(
図8)に係止することができる。したがって、猫90に、おむつ1の後足66のまわりの部分をしっかり固定して装着することができる。そのため、おむつ1の装着後、係止部材40、特に、尾側の係止片45の働きによって、猫90の体との不所望な変位が防がれ、おむつ1の背当て部16、股当て部17、腹当て部18が、尾側の後方にずれることがなく、尿の漏れ出しがなくなる。
【0079】
こうして、装着時、レッグホールである挿通孔69(
図11)に隙間ができないように、係止部材40の尾側の係止片45などの係止によって、おむつ1を猫90の足まわりに固定するので、おむつ1の全体が尾側の後方にずれることはない。従来技術では、おむつ1の後方へのずれを防止できておらず、本件実施の形態は、この問題を解決する。
【0080】
図13は、本発明の実施の他の形態であるペット用おむつ1の係止手段3aの拡大正面図である。この実施の形態は、前述の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。注目すべきは、各外支持片42、43の第2方向内側部は、弾性部材30の第2方向外側部32における第1方向Xにスリット状切欠き37を介して相互にずれた位置にそれぞれ取り付けられる。スリット状切欠き37の第1方向Xの幅は、前述の
図12のU字状切欠き36よりもわずかであり、したがって、弾性部材30に作用する第2方向Yの応力σを小さくして、各外支持片42、43の引張力による弾性限界34(
図9)付近の締付け力を大きくできる。
【0081】
図14は弾性部材30の一部を示す斜視図であり、
図15は弾性部材30の一部の断面図である。弾性部材30は、一例として、弾性フイルム71がスパンレース72、73によってサンドイッチされて3層のシートに加工して構成され、巻き取ってロール状にできる。弾性フイルム71は、熱可塑性エラストマであり、合成樹脂から成ってもよく、たとえば、200g/m
2以下であり、第1および第2方向X、Yに等方性の引張弾性率を有し、全方位に伸び縮みする。スパンレース72、73は、綿などの繊維をカード機で一方向Xに並べて重ね合わせた状態でコンベア上を移動されながら、その縦の一方向Xに垂直な第3方向Zから水をノズル噴射して繊維を交絡させて製造し、横の第2方向Yに伸びる不織布である。この不織布は、縦Xの引張強度に比べて、横Yの引張強度が低い。スパンレース72、73を構成する不織布は、合成樹脂繊維、または木綿などの繊維から成ってもよく、それらの混合物から成ってもよい。弾性部材30は、フイルム71を押出成形しながら、その溶融状態で両面にスパンレース72、73を張り付けて接着して製造される。したがって、弾性部材30の第1方向Xの引張弾性率は、第2方向Yの引張弾性率よりも大きく、または、第1方向Xに伸縮性を有さない。その後、切断されて、個別の弾性部材30が得られる。弾性部材30は、その他の構成によって実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、前述の犬60、猫90などのペット用だけでなく人用の各種のおむつ、およびおむつ以外のその他の係止のための用途において実施できる。たとえば、梱包包装シートの2つの分離した端部を第1方向Xに均一な引張力で取り付けて連結するために有利に実施できる。本発明の考え方に従う弾性部材30に複数の係止部材40を共通に取り付けて、おむつなどを着脱可能とする構成は、ペットに腹巻状に巻付けて使用するおむつ、およびおむつ以外の分野において、広範囲に実施できる。
【符号の説明】
【0083】
1、1A ペット用おむつ
2、2a おむつ本体
3,3a 係止手段
11 表面シート
12 裏面シート
13 吸収体
14 尻尾穴
16 背当て部
17 股当て部
16 腹当て部
20 漏出防止シート
21 基端部
22 遊端部
30 弾性部材
31 第2方向内側部
32 第2方向外側部
40 係止部材
42、43 外支持片
45、46 一方の係止片
47 他方の係止片
60 犬
90 猫
X 第1方向
Y 第2方向