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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】服薬支援システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20240105BHJP
【FI】
G16H20/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019140708
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021026250
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】500188211
【氏名又は名称】株式会社ユニケソフトウェアリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】230112911
【弁護士】
【氏名又は名称】三和 圭二郎
(72)【発明者】
【氏名】関根 照拡
(72)【発明者】
【氏名】大久保 公寛
(72)【発明者】
【氏名】中西 佐登司
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122253(JP,A)
【文献】特開2017-130022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品の服用者に対し、当該医薬品の服用に関する情報である服薬支援情報を提供する服薬支援装置であって、
医薬品に関する情報である医薬品情報を服用者の属性情報と関連付けて記憶する医薬品情報記憶手段と、
前記医薬品情報のうち、対象となる服用者が服用する医薬品に関するものであって前記服用者が具備する属性情報と関連付けられている医薬品情報に基づき、服用者における服用状況の確認要求を含む前記服薬支援情報を生成する支援情報生成手段と、
前記服薬支援情報の提供後に前記服用者から得られた情報の解析結果を属性情報と関連付けて医薬品情報記憶手段に記憶させることで医薬品情報を更新する情報解析手段と、
服薬支援情報が出力された時刻である提供時刻と、服薬支援情報の内容が服用者にて確認された時刻である閲覧時刻と、確認要求に対応した服用者の回答情報が出力された時刻である応答時刻と、回答情報の内容に関する複数の回答情報間における類似性とを解析して応答率及び回答内容の真実性の評価を行う回答状況解析手段と、
回答状況解析手段による解析結果に基づき、服薬支援情報の表現態様、出力タイミング及び出力頻度を調整する出力態様調整手段と、
を備えたことを特徴とする服薬支援装置。
【請求項2】
前記医薬品情報は、医薬品の服用方法に関する情報、医薬品の副作用に関する情報、医薬品の飲み合わせに関する情報のいずれか1以上の情報を含み、
前記支援情報生成手段は、前記医薬品情報の重要度及び前記医薬品情報と服用者の属性情報との関連度の少なくとも一方に応じて異なる態様にて前記服薬支援情報を生成することを特徴とする請求項1記載の服薬支援装置。
【請求項3】
前記支援情報生成手段は、前記医薬品情報の重要度及び前記医薬品情報と服用者の属性情報との関連度の少なくとも一方の高さに応じて、前記確認要求の内容を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の服薬支援装置。
【請求項4】
医薬品の服用者に対し、当該医薬品の服用に関する情報である服薬支援情報を提供するための服薬支援プログラムであって、
医薬品に関する情報である医薬品情報を服用者の属性情報と関連付けて記憶する医薬品情報記憶ステップと、
前記医薬品情報のうち、対象となる服用者が服用する医薬品に関するものであって前記服用者が具備する属性情報と関連付けられている医薬品情報に基づき、服用者における服用状況の確認要求を含む前記服薬支援情報を生成する支援情報生成ステップと、
前記服薬支援情報の提供後に前記服用者から得られた情報の解析結果を属性情報と関連付けて医薬品情報記憶手段に記憶させることで医薬品情報を更新する情報解析ステップと、
服薬支援情報が出力された時刻である提供時刻と、服薬支援情報の内容が服用者にて確認された時刻である閲覧時刻と、確認要求に対応した服用者の回答情報が出力された時刻である応答時刻と、回答情報の内容に関する複数の回答情報間における類似性とを解析して応答率及び回答内容の真実性の評価を行う回答状況解析ステップと、
回答状況解析ステップによる解析結果に基づき、服薬支援情報の表現態様、出力タイミング及び出力頻度を調整する出力態様調整ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする服薬支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の服用者における服薬を支援する服薬支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者が薬局にて処方された薬に関する情報管理の手法として、いわゆる「お薬手帳」が活用されてきた。お薬手帳とは、過去に処方された薬の履歴や、患者のアレルギー情報、既往歴等を記載した冊子状の文書であり、薬を処方する薬剤師は、お薬手帳に記載されたこれらの情報をもとに副作用や飲み合わせのリスクを低減させるように注意しつつ医薬品の提供や服薬指導を行っている。
【0003】
近年は、このようなお薬手帳を電子化する試みが進められている。例えば特許文献1では、薬局に設置した処方箋データ取得部が、取得した処方箋のデータをサーバーに送信し、サーバーから、薬剤師が携帯する薬剤師用端末に向けて過去の処方内容から変更された薬に関する情報(変更点薬情)を含む薬の情報を送信する技術が開示されている。薬剤師は、薬剤師用端末に送信された情報を閲覧することにより、お薬手帳を参照した時と同じように患者への対応が可能となる。
【0004】
また、特許文献2では、患者が処方された薬剤の名称と、当該患者について医師が診断した傷病名を関連付けて記憶する薬剤情報管理支援装置が開示されている。当該支援装置を利用することで、患者が複数の医療機関や診療科を受診した場合であっても各薬剤がどの疾患について処方されたかを容易に特定することができ、医師及び薬剤師が疾患ごとの多剤処方について把握できるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-67459号公報
【文献】特許第6469913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2にて開示された技術は、情報を電子化した点を除けば従来の冊子状のお薬手帳と機能面において特に差はない。そのため、医師ないし薬剤師は、副作用や飲み合わせの判断、患者への服薬指導等を行う際には、従来と同様に自らの専門的知見による個別具体的な検討・判断が求められ、特許文献1、2が開示する技術によっても医師ないし薬剤師の負担は特に低減はされない。また、患者においても、服薬指導を受けるためには従前と同様に薬局に出向いて薬剤師と対面して説明を聞く必要があり煩雑であるほか、例えば服薬のタイミングについては自ら把握し実行する必要がある。さらに、服薬指導等においては患者の属性に応じた判断も重要であるところ、従前は、例えば初見の患者に対し医師・薬剤師が詳細な属性について認識することは困難であった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、医薬品の服用者の属性に応じた、適切な内容からなる服薬の支援に関する情報を提供する服薬支援装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる服薬支援装置は、医薬品の服用者に対し、当該医薬品の服用に関する情報である服薬支援情報を提供する服薬支援装置であって、医薬品に関する情報である医薬品情報を服用者の属性情報と関連付けて記憶する医薬品情報記憶手段と、前記医薬品情報のうち、対象となる服用者が服用する医薬品に関するものであって前記服用者が具備する属性情報と関連付けられている医薬品情報に基づき、服用者における服用状況の確認要求を含む前記服薬支援情報を生成する支援情報生成手段と、前記服薬支援情報の提供後に前記服用者から得られた情報の解析結果を属性情報と関連付けて医薬品情報記憶手段に記憶させることで医薬品情報を更新する情報解析手段と、 服薬支援情報が出力された時刻である提供時刻と、服薬支援情報の内容が服用者にて確認された時刻である閲覧時刻と、確認要求に対応した服用者の回答情報が出力された時刻である応答時刻と、回答情報の内容に関する複数の回答情報間における類似性とを解析して応答率及び回答内容の真実性の評価を行う回答状況解析手段と、答状況解析手段による解析結果に基づき、服薬支援情報の表現態様、出力タイミング及び出力頻度を調整する出力態様調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、請求項2にかかる服薬支援装置は、上記の発明において、前記医薬品情報は、医薬品の服用方法に関する情報、医薬品の副作用に関する情報、医薬品の飲み合わせに関する情報のいずれか1以上の情報を含み、前記支援情報生成手段は、前記医薬品情報の重要度及び前記医薬品情報と服用者の属性情報との関連度の少なくとも一方に応じて異なる態様にて前記服薬支援情報を生成することを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するため、請求項3にかかる服薬支援装置は、上記の発明において、前記支援情報生成手段は、服用者に対する服用状況の確認要求を含む前記服薬支援情報を生成し、前記医薬品情報の重要度及び前記医薬品情報と服用者の属性情報との関連度の少なくとも一方の高さに応じて、前記確認要求の内容を変化させることを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するため、請求項にかかる服薬支援プログラムは、医薬品の服
用者に対し、当該医薬品の服用に関する情報である服薬支援情報を提供するための服薬支
援プログラムであって、医薬品に関する情報である医薬品情報を服用者の属性情報と関連
付けて記憶する医薬品情報記憶ステップと、前記医薬品情報のうち、対象となる服用者が服用する医薬品に関するものであって前記服用者が具備する属性情報と関連付けられている医薬品情報に基づき、服用者における服用状況の確認要求を含む前記服薬支援情報を生成する支援情報生成ステップと、前記服薬支援情報の提供後に前記服用者から得られた情報の解析結果を属性情報と関連付けて医薬品情報記憶手段に記憶させることで医薬品情報を更新する情報解析ステップと、服薬支援情報が出力された時刻である提供時刻と、服薬支援情報の内容が服用者にて確認された時刻である閲覧時刻と、確認要求に対応した服用者の回答情報が出力された時刻である応答時刻と、回答情報の内容に関する複数の回答情報間における類似性とを解析して応答率及び回答内容の真実性の評価を行う回答状況解析ステップと、回答状況解析ステップによる解析結果に基づき、服薬支援情報の表現態様、出力タイミング及び出力頻度を調整する出力態様調整ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、医薬品の服用者の属性に応じた、適切な内容からなる服薬支援情報を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1にかかる服薬支援システムの構成を示す模式図である。
図2】実施の形態1における支援情報生成部の動作について説明するフローチャートである。
図3】実施の形態1における情報解析部の動作について説明するフローチャートである。
図4】実施の形態2にかかる服薬支援システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態においては、本発明の実施の形態として最も適切と考えられる例について記載するものであり、当然のことながら、本発明の内容を本実施の形態にて示された具体例に限定して解すべきではない。同様の作用・効果を奏する構成であれば、実施の形態にて示す具体的構成以外のものであっても、本発明の技術的範囲に含まれることは勿論である。
【0017】
(実施の形態1)
まず、実施の形態にかかる服薬支援システムについて説明する。本実施の形態にかかる服薬支援システムは、図1に示すとおり、医薬品の服薬者がそれぞれ利用する情報端末1と、情報端末1に対し情報通信網2を介して服薬支援情報を提供し、情報端末1から出力される服薬者の回答情報を取得する服薬支援装置3によって構成される。
【0018】
情報端末1は、医薬品の服用者が利用する端末装置であり、服用者が服薬支援装置3との間で情報のやり取りを行うためのものである。情報端末1は、情報通信網2を通じた服薬支援装置3との情報通信が可能な機能を有し、また、服薬支援装置3から出力される服薬支援情報を表示(音声表示でもよいが、視覚的に表示することが望ましい。)する機能と、表示された服薬支援情報に対する回答情報を入力するための入力機構を備えるものとする。
【0019】
情報端末1の具体的な構成としては、スマートフォン等の携帯電話が望ましいものの、通話機能を具備しない携帯型通信端末や通信機能を備えたタブレット端末等でもよい。また、情報端末1は常に服用者に携帯されることによって服薬支援装置3からの服薬支援情報の逐次閲覧等が可能な態様とすることが好ましいものの、例えば服用者の自宅に設置されたデスクトップ型のパーソナルコンピュータであっても、本実施の形態1における情報端末1を構成することは可能である。
【0020】
情報端末1から出力される回答情報には、服用者が任意に入力した情報と服薬支援情報に含まれる確認要求(質問)に対応して服用者が入力した情報が含まれる。また、必要に応じて回答情報には、服用者の意図とは別に服薬支援情報に含まれた応答指令に応じるため等の理由で情報端末1が自動的に出力する情報も含まれる。例えば、本実施の形態1ではSNSの一種であるLINE(登録商標)サービスを利用して服薬支援情報と回答情報の入出力を行う構成としており、本実施の形態1では、LINE(登録商標)サービスに付属している「既読通知」機能(端末の使用者が情報を閲覧済であることを示す情報)が、回答情報の一つとして出力される。また、情報端末1がカメラ、血圧計等のセンサ機器と接続(あるいは内蔵)している場合には、これらによって取得された画像データ、血圧・脈拍データ等も出力される場合があり(服用者が任意に取得する場合と、情報端末1が自動的に取得・出力する場合の双方があり得る。)、その場合にはこれらも回答情報として扱われる。
【0021】
なお、医薬品の服用者の中には重篤のため又は幼少・高齢であるため、自らが情報端末1を直接的に利用できず、家族や医療関係者が情報端末1に表示される情報を閲覧して服用者に伝達し、また、これらの者が服用者の意を受ける等して回答情報を入力することも珍しくない。本発明においては、文字通りの服用者のみならず、かかる家族や医療関係者についても「服用者」の概念に含めるものとする。例えば、文字通りの服用者が小児喘息を患う幼児である場合には母親ないし父親が情報端末1に表示される服薬支援情報を閲覧し、情報に基づき副作用の確認等を行った上で回答情報を作成・出力するところ、この場合における母親ないし父親も、本発明における「服用者」の概念に含まれる。
また、本実施の形態における「医薬品」とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号)に規定する医薬品を含むもののこれに限定されず、同法における医薬部外品も含み、その他疾病の治療・予防ないし服用者の健康維持・増進に資する服用物全般を含むものとする。
【0022】
情報通信網2は、情報端末1と服薬支援装置3の間で情報をやり取りするためのネットワークである。本実施の形態では情報通信網2としてインターネットを利用するものの、インターネット以外のネットワークシステムを使用してもよく、その場合でも本発明の効果に影響を及ぼすことはない。
【0023】
服薬支援装置3は、処方対象となりうる医薬品に関する情報を記憶した医薬品情報記憶部4と、事前登録された服用者について属性情報を記憶した属性情報記憶部5と、地域ごとの医療情報を記憶した地域医療情報記憶部6とを備える。また、服薬支援装置3は、これらの記憶部から適切な情報を抽出して服薬支援情報を生成する支援情報生成部7と、生成した服薬支援情報を情報端末1に向けて出力する出力部8と、情報端末1から出力された回答情報を入力する入力部9と、入力された回答情報を解析して医薬品情報記憶部4、属性情報記憶部5及び地域医療情報記憶部6に記憶されている情報の更新等を行う情報解析部10とを備える。
【0024】
医薬品情報記憶部4は、服薬対象となる多数の医薬品について、各医薬品に関する情報である医薬品情報を記憶するためのものである。医薬品情報とは、例えば服用方法、副作用、他の医薬品との相互作用(飲み合わせ)、当該医薬品について過去に生じた問題事案等であり、本実施の形態においては、それぞれの情報について服用方法データベース4a、副作用データベース4b、相互作用データベース4c、事案データベース4dにて記憶している。医薬品情報記憶部4の各データベースにて記憶される情報は、服薬対象となる医薬品との関連付けの他、個々の情報について、服用者の属性情報(詳細については後述)との関連付けもされている。属性情報との関連付けがなされていることにより、支援情報生成部7が服薬支援情報を生成する際には、服用者の属性情報をキーワードとして各情報を収集することが可能となる。
【0025】
なお、医薬品情報記憶部4に記憶される情報は、文字情報、音声情報及び画像情報等の形式を問わない。画像情報の場合は静止画、動画のいずれも含み、ホログラム等の3次元画像、バーチャル・リアリティ画像(VR画像)、拡張現実画像(AR画像)の形式としたものも含み、動画が掲載されたウェブページへのリンク情報等も含む。医薬品情報記憶部4は、本実施の形態1にかかる服薬支援システムを作製した際に入力した情報のみならず、その後もインターネット上に掲載された情報を自動的に収集等することにより情報が適宜更新される構成が望ましい。また、後述するように情報解析部10が服用者の回答情報を分析して得た情報に基づき適宜記憶内容が更新される構成となっている。これらの基本的機能については、属性情報記憶部5及び地域医療情報記憶部6についても同様である。
【0026】
また、医薬品情報記憶部の具体的構成としては、一般的な記憶装置、例えば服薬支援装置3を構成するパーソナルコンピュータ又はサーバコンピュータに内蔵されたハードディスクや、外付けハードディスク・USBメモリ等の着脱可能な記憶装置、さらにはオンラインストレージサービス等からなる。各データベースについても、同一の記憶装置内に構成することとしてもよいし、個別の記憶装置にて構成し、それぞれを服薬支援装置3と電気的に接続させた構成としてもよい。具体的構成については、属性情報記憶部5及び地域医療情報記憶部6についても同様である。
【0027】
服用方法データベース4aは、医薬品ごとの服用方法の具体的な内容について、医薬品ごとに、服用者の属性と関連付けて記憶するためのものである。例えば、服用方法データベース4aは、嚥下能力が劣る高齢者に適した服用方法や自発的な服用を期待できない小児に服用させる方法を記憶し、これらの情報について対象年齢等の属性情報との関連付けがなされている。また、小児喘息における吸入剤の使用方法のように、服用時に使用する器具に関する情報も、服用方法に関する情報として記憶している。
【0028】
副作用データベース4bは、副作用に関する情報として、医薬品ごとの副作用の具体的な内容(発生時期、発生する症状等)に加えて性別、年齢等の属性情報との関連付けがなされた情報を記憶するためのものである。属性情報との関連付けの内容としては、属性に応じた副作用の発生確率の違い、程度の違い(重篤な副作用が生じるか、軽微なものにとどまるか、等)等である。
【0029】
相互作用データベース4cは、服用対象となる医薬品と、他の医薬品の相互作用(飲み合わせ)に関する情報を、医薬品ごとに、服用者の属性と関連付けて、記憶するためのものである。相互作用(飲み合わせ)とは、重複成分を有し過剰な薬効が生じるおそれのある場合(痛み止め薬と解熱鎮痛薬は解熱鎮痛成分が重複する等)、相反する成分により薬効が抑制されるおそれのある場合(腸で溶けるよう調整された便秘薬と胃腸薬を同時に服用すると、便秘薬が腸に到達する前に溶けて効果が出ない、等)など、他の薬と同時服用することによる弊害をいう。相互作用データベース4cは、このような他の医薬品との相互作用に関する情報を記憶している。
【0030】
事案データベース4dは、服用方法データベース4a、副作用データベース4b及び相互作用データベース4cには含まれないものの問題となりうる事案に関する情報を、属性情報と関連付けて記憶するためのものである。事案データベース4dは、例えば、医薬品や疾病の種類に応じて服薬が中断されやすい医薬品に関する情報や、服用期間中に服薬を怠った場合に服用者に生じる悪影響や、用量違反(例えば過剰摂取)した場合における服用者への悪影響等、服薬にあたって服用者が注意すべき情報について可能な限り、医薬品ごとに、属性情報と関連付けて記憶している。
【0031】
属性情報記憶部5は、服用者の属性情報を記憶する機能を有する。本実施の形態における属性情報とは、服用者の氏名、生年月日、住所、勤務先住所、性別、血液型、体重等の一般的な属性情報のほか、これまでに明らかになっているアレルギーの履歴、副作用の履歴、既往歴、通院歴、かかりつけの医療機関名および担当医師の氏名、かかりつけの薬局名および担当薬剤師の氏名、現在処方を受けている医薬品の名称、用量及び服用期間、過去に処方を受けた医薬品の名称、用量及び服用期間、服用者がドラッグストアで購入した、医師の処方を要さない一般的な医薬品の名称、用量及び服用期間、処方等された医薬品の服用履歴等の情報を意味し、属性情報記憶部5は、対象となる服用者のそれぞれについて、これらの情報を可能な限り記憶している。
【0032】
地域医療情報記憶部6は、服用者が活動している地域における医療情報について記憶するためのものである。地域医療情報記憶部6が記憶する医療情報とは、当該地域における特定の疾病の流行の有無、近い将来における流行の見込みや、当該地域における季節、天気、気温等の外的要因と関連する疾病に関する情報、当該地域に所在する病院、薬局におけるイベント情報、当該地域の薬局における医薬品の在庫状況等をいう。地域医療情報記憶部6は、地域ごとに、これらの情報について可能な限り記憶している。
【0033】
支援情報生成部7は、医薬品情報記憶部4及び地域医療情報部6に記憶された情報のうち、対象となっている服用者の属性と関連付けがなされた情報を抽出し、当該情報について重要度等により重み付けを行った上で、服薬支援情報を生成するためのものである。支援情報生成部7が生成する服薬支援情報には、医薬品の服用方法、副作用、相互作用、地域医療情報その他について服用者に対し情報提供を行うための情報と、必要に応じてこれらに関連した確認要求(質問)に関する情報が含まれる。服薬支援情報の形式については特に制限はなく、文字又は画像のみからなるもの、両者が混在するもの、確認要求(質問)について情報端末1の画面上で回答内容が選択肢を列挙した形式にて表現されるもの、回答に際し文字入力ではなくラジオボタン、リンク等をクリックする形式となるもの、痛みの程度等を表す顔の表情を複数表示しいずれかを選択させるもの等、どのような形式であってもよい。
【0034】
なお、支援情報生成部7の具体的構成としては、独立した装置からなるものとしてもよいが、例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等の計算装置によって構成することとしてもよく、かつ、汎用的なパーソナルコンピュータ等に、本発明に示す動作を電子計算装置に行わせる内容のプログラムをインストールすることによって実現してもよい。このことは情報解析部10、実施の形態2における回答状況解析部12及び出力態様調整部13についても同様である。
【0035】
出力部8及び入力部9は、情報通信網2に対し情報を入出力するためのものである。具体的構成は情報通信網2の形態や接続プロトコルに応じて異なるものの、有線接続・無線接続のいずれでもよく、無線接続の場合でも無線LAN、Bluetooth(登録商標)等いかなる形式でも採用することが可能である。
【0036】
情報解析部10は、情報端末1から出力された回答情報について解析処理を行い、医薬品情報記憶部4、属性情報記憶部5、地域医療情報記憶部6にて記憶されるべき情報をそれらに対し出力するためのものである。具体的には、情報解析部10は、回答情報に含まれる服用者の属性情報、医薬品の服用方法、副作用、相互作用及び問題事案に関する情報、地域医療情報をそれぞれ抽出し、各記憶部に出力することによって、各記憶部に記憶される情報を適宜更新させる機能を有する。
【0037】
次に、本実施の形態にかかる服薬支援システムの動作のうち服薬支援情報が生成されて情報端末1に向けて出力されることについて、図2を参照しつつ説明する。まず、支援情報生成部7は、対象となる服用者の属性情報を属性情報記憶部5から取得し、医薬品情報記憶部4内の服薬方法データベース4a、副作用データベース4b、相互作用データベース4c及び事案データベース4d及び地域医療情報記憶部6から、服用者の属性情報と関連した服用方法に関する情報、副作用に関する情報、相互作用に関する情報、事案に関する情報及び地域医療に関する情報を抽出する(ステップS101)。以下、本ステップにて抽出された情報を「基礎情報」とする。
【0038】
次に、支援情報生成部7は、ステップS101で抽出した基礎情報について、基礎情報そのものの重要度及び基礎情報と服用者の属性情報の関連度に応じて、ランク付けを行う(ステップS102)。本実施の形態1においては、抽出した基礎情報についてA、B、C、Dの4段階のランク付けを行うものとする。
【0039】
次に、支援情報生成部7は、抽出した基礎情報ごとに、ステップS102にて行ったランク付けに応じて要求応答レベルを決定する(ステップS103)。本実施の形態1においては、最も低いランクであるDの場合は特に応答要求を行わないこととし、ランクCの場合は服用者にて内容の確認がなされた旨の応答のみ要求し、ランクBの場合は基礎情報に関連した質問を生成するとともに質問への回答を要求し、ランクAの場合は質問への回答として客観的なデータの提供まで要求することとする。
【0040】
最後に、支援情報生成部7は、抽出した基礎情報、ランクに応じて生成した質問及び要求応答レベルに基づき、情報端末1にて使用されるソフトウェアの仕様にあわせた形式にあわせた服薬支援情報を生成し、出力部8を通じて出力する(ステップS104)。出力された服薬支援情報は、情報通信網2を経由して服用者が利用する情報端末1に入力され、服薬者は、情報端末1に表示された服薬支援情報を閲覧することで、自身の医薬品の服用に関して有用な情報を提供されることとなる。
【0041】
ステップS101において、支援情報生成部7は、対象となる服用者の属性情報に基づき、例えば現在処方を受けている医薬品があればその医薬品に関する服用方法を抽出し、当該医薬品に副作用に関する情報や他の医薬品との相互作用に関する情報、さらにはこれらに含まれないものの当該医薬品について過去に問題事案が生じた場合にはその情報を基礎情報として抽出する。また、服用者の住所地を含む地域で特定の疾病が流行していればその情報を、かかりつけの病院、薬局にて広報情報があればその情報を基礎情報として抽出する。
【0042】
また、ステップS102において、支援情報生成部7は、抽出した基礎情報の重要度と、基礎情報と属性情報の関連度に応じてランク付けを行う。例えば基礎情報が副作用に関する情報の場合に、副作用が極めて重篤な症状を伴う、後遺症が残る可能性が高い、致死率が一定以上である、等の場合には、支援情報生成部7は、基礎情報の重要度が極めて高いと評価する。他方で、副作用の報告数が僅少である場合や症状が極めて軽症である場合は、支援情報生成部7は、かかる基礎情報の重要度は低いと評価する。また、基礎情報が服用方法に関する情報の場合には、服用方法の難易度、誤った服用方法にて服用した場合の危険度等に応じて、基礎情報の重要度が評価される。さらに、基礎情報が健康保持に関する情報の場合は、例えば重篤な感染症が現に流行している場合は重要度が高いと評価され、かかりつけの病院、薬局にて開催される一般的なイベントの情報であれば重要度が低いと評価される。また、問題事案の情報に関しては、服用期間の途中における断薬の悪影響、過剰摂取の悪影響の度合いが高いものは基礎情報として重要度が高いと判断される。
【0043】
なお、基礎情報の重要度について、本実施の形態1では都度支援情報生成部7が判定する態様としているが、医薬品情報記憶部4及び地域医療情報記憶部6にて、予め判定した重要度も記憶しておく構成としてもよい。
【0044】
基礎情報と属性情報の関連度については、例えば副作用について40代かつ男性に発症確率が顕著に高いという事実が存した場合に、服用者の性別が男性である事実、年齢が45歳である事実は、基礎情報との関連度が高い属性情報と評価される。他方で、例えば服用者の性別が女性である事実、20代である事実は、相対的に、基礎情報との関連度が低い属性情報と評価される。また、副作用の履歴として過去に同一の医薬品について副作用を発症した事実があれば、その事実は当該副作用に関する基礎情報との関連度が高い属性情報と評価される。また、対象となる医薬品が服用者に初めて処方されたものである事実は、服用方法、副作用、相互作用及び問題事案のいずれの基礎情報とも関連度の高い属性情報として扱われる。基礎情報と属性情報の関連度については、各属性情報について重要度に応じた重み付けを行った上で、複数の属性情報が基礎情報と関連を有する場合には、重み付けを行った上で各々の重要度を足し合わせる形式にて評価することも好ましい。
【0045】
基礎情報の重要度及び基礎情報と属性情報の関連度に応じたランク付けは、重要度及び関連度のいずれも高い場合に最も高いランクAとなるように、いずれも低い場合に最も低いランクDとなるように判定される。例えば、基礎情報の重要度、基礎情報と属性情報の関連度のいずれについても高い・低いの2区分で評価することとし、支援情報生成部7は、双方とも「高い」と評価されている場合はランクA、関連度について「高い」、重要度について「低い」と評価された場合はランクB、関連度について「低い」、重要度について「高い」と評価された場合はランクC、双方とも「低い」と評価された場合はランクDとすることが考えられる。また、基礎情報の重要度及び基礎情報と属性情報の関連度のそれぞれを数値化して双方を加算した値、乗算した値その他演算処理して得られた値に基づいてランク付けを行ってもよい。さらに、予め基礎情報の重要度及び基礎情報と属性情報の関連度について組み合わせに応じたランクを設定しておき、当該設定に基づきランク付けを行う態様としてもよい。
【0046】
また、ステップS103において、支援情報生成部7は、ステップS102にて定めたランクに応じて要求応答レベルを決定し、応答要求を行う場合には要求内容(質問内容及び回答内容)についても決定する。例えば、副作用が重篤なものであり、かつ発症確率が高い属性情報を服用者が有している場合はランクAと評価されるところ、ランクAの場合は服薬支援情報として副作用そのものに関する情報の他、応答要求として副作用を発症したか否かの確認要求(質問)を行うとともに、回答として客観的な情報(服用者の現状を写した写真、動画、測定した体温、血圧、脈拍等のバイタルデータ)の提供を求める内容が生成される。他方で、例えば副作用がさほど重篤ではなくランクBと評価された場合には、副作用の情報及び副作用を発症したか否かの確認要求(質問)については同様であるものの、回答態様としては自覚症状の有無を服用者が入力する形式に留める内容の服薬支援情報が生成される。さらに、副作用が重篤であっても、服用者において副作用の発症確率が低い属性情報を有する場合はランクCと評価されて副作用に関する情報の他応答要求として服用者による情報確認の有無のみ応答を求める内容の服薬支援情報が生成される。副作用が重篤でなく、かつ発症確率が低い属性情報の場合は、ランクDと評価されて副作用に関する情報のみからなる服薬支援情報が生成される。
【0047】
また、問題事案において例えば服用期間中の断薬による悪影響の度合いが強く基礎情報の重要度が高いと評価され、服用者の属性情報として過去の服用履歴で断薬の事実が存在し基礎情報との関連度が高いと評価される場合は、ランクAとしてあらかじめ定められた服薬タイミングにあわせて服薬の必要性を説明する情報及び服薬したか否かの確認要求(質問)を行うとともに、回答として服薬時の様子を撮影した動画又は服薬によって処方された錠剤等の数が減った様子を撮影した静止画像の提供を求める内容の服薬支援情報が生成される。断薬による悪影響の度合いが高くなく、他方で上記のように属性情報と基礎情報の関連度が高いと評価される場合は、ランクBとして服薬タイミングにあわせて服薬の必要性を説明する情報及び服薬したか否かの確認要求(質問)を行うとともに、服薬の有無については服用者の入力による回答を求めるに留まる内容の服薬支援情報が生成される。応答要求における要求内容としては、基礎情報に基づき支援情報生成部7が生成することとしてもよいし、各記憶部に記憶される情報について、ランク付けに応じた要求内容をあらかじめ記憶しておく構成としてもよい。
【0048】
次に、服薬支援情報が生成・出力された後に、情報端末1から回答が提供された場合の処理について、図3を参照しつつ説明する。図3に示すとおり、服薬支援装置3に備わる情報解析部10は、入力部9を介して情報端末1から入力された回答情報を解析し、関連する情報を抽出する(ステップS201)具体的には、回答情報のうち複数の選択肢の一を選択する形式のものについては選択肢の内容とあわせて情報として抽出し、はい・いいえで回答する形式のものについては質問内容とあわせて情報として抽出する。また、文章形式で作成された回答情報については、形態素解析を利用した自然言語処理等により情報を抽出し、画像(動画・静止画)にて提供されたものについては画像解析技術を用いて情報を抽出する。近年はAI技術を活用した情報解析技術が著しく発展しており、これを利用して情報抽出することとしてもよい。
【0049】
次に、情報解析部10は、抽出した情報の種別を判別する(ステップS202)。具体的には、情報解析部10は、ステップS201にて抽出した情報が服用方法に関するものか、副作用に関するものか、相互作用に関するものか、問題事案に関するものか、地域医療情報に該当するものか、服用者の新たな属性情報に該当するものかを判別する。
【0050】
次に、情報解析部10は、判別した情報を、医薬品情報記憶部4、属性情報記憶部5及び地域医療情報記憶部6のうち適切な記憶部に対して出力する(ステップS203)。出力形態としては情報と属性情報と関連付けた状態で出力することとし、これにより、いままでと同一形式にて構成される新たな情報が、医薬品情報記憶部4、属性情報記憶部5及び地域医療情報記憶部6に記憶される。
【0051】
最後に、支援情報生成部7にて、新たな服薬支援情報の生成が行われる(ステップS204)。具体的な生成ステップは図2に示したとおりである。情報解析部10による情報処理の結果、服用者から提供された回答情報に基づく最新の情報が、医薬品情報記憶部4(服用方法データベース4a、副作用データベース4b、相互作用データベース4c、事案データベース4d)、属性情報記憶部5及び地域医療情報記憶部6に記憶される。これにより、ステップS204において改めて服薬支援情報を生成する際には、支援情報生成部7が最新の情報に基づく適切な内容の服薬支援情報の生成・出力を行うことが可能である。例えば、前回までは服薬タイミングにあわせて服薬の必要性を説明する情報及び服薬したか否かの確認要求(質問)を行うとともに、回答として服薬時の様子を撮影した動画又は服薬によって処方された錠剤等の数が減った様子を撮影した静止画像の提供を求める内容の服薬支援情報が生成・出力されていたのが、回答情報により順調に服薬が実行されていることが判明し、この服用者の属性情報が更新された結果、以後は同様の服薬支援情報の生成・出力における要求応答レベルを低下させる(例えば服用者の入力による回答のみを求める。)、あるいは服薬支援情報の出力頻度を低減する、出力を停止するといった、実情に即した対応が可能となる。
【0052】
次に、本実施の形態1にかかる服薬支援システムの利点について説明する。まず、従来のお薬手帳(電子化したものを含む)では記録された情報を基に医師ないし薬剤師が自ら検討・判断を行った上で服薬指導等を行う必要があったが、本実施の形態1にかかる服薬支援システムを利用することで、服用方法、副作用等の類型的な情報について服薬者に自動的に提供することが可能となり、医師・薬剤師等の医療関係者の負担を軽減できるという利点が生じる。また、本実施の形態1にかかる服薬支援システムでは、提供される服薬支援情報が服用者の属性情報と相当程度の関連度を有する情報から構成されることから、例えば妊婦のみが注意すべき情報を含む服薬支援情報が、誤って成人男性の服用者に提供されることはなく、服用者の属性に応じた適切な情報提供が行えるという利点も存在する。
【0053】
また、本実施の形態1にかかる服薬支援システムは、医薬品情報記憶部4、地域医療情報記憶部6から服用者の属性情報に応じて抽出された基礎情報をそのまま服用者に提供するのではなく、基礎情報の重要度及び基礎情報と服用者の属性情報の関連度とに応じてランク付けを行い、ランクに応じて異なる態様にて服薬支援情報を生成・出力する構成を採用している。すなわち、極めて重篤な副作用等のようにあらゆる服用者にとって重要とされる情報や、一般的にはさほど重要でなくても服用者の属性によっては重要となる情報について高いランクを付した上で服薬支援情報を出力することで、個々の服用者にとっての重要度に対応したきめ細やかな情報提供が可能となる。すなわち、本実施の形態1にかかる服薬支援システムでは重要な情報が他の大量な情報の中に埋没して服用者が認識できない等の問題発生を抑制でき、効果的な情報提供が可能という利点を有する。なお、本実施の形態では採用していないが、より服用者の便宜を図る観点から、「異なる態様」の一例として、服薬支援情報にランク付けに関する情報を添付して情報端末1に出力する構成としてもよい。例えば、ランクAのものに「最重要」とのタグを付し、ランクBのものに「重要」、ランクCのものに「通常」、ランクDのものに「参考」等と付すことによって、服用者は容易に、服薬支援情報の重要度の相違を把握することが可能となる。
【0054】
また、本実施の形態では、服薬支援情報の中に必要に応じて応答要求を含める扱いとしている。服用者から応答要求に応じた回答情報がもたらされることにより、例えば副作用の発生を早期に把握でき、服薬の中止や他の医薬品への切り替え等の必要な対応を迅速に行うことができる。なお、本実施の形態1では、回答情報は各記憶部の情報更新に使用され、次回以降の服薬支援情報の生成に役立てられる扱いにとどまるものの、特定の回答情報、例えば副作用の発生、服用方法の誤り等を確認した場合に医師又は薬剤師に自動的に通報する構成とすることも望ましい。
【0055】
さらに、本実施の形態では、高いランクが付された服薬支援情報に関しては、確認要求(質問)事項への応答の程度を高く設定することとし、例えばランクBのものについては服用者の認識内容を回答情報として提供すれば足りるのに対し、ランクAのものについては回答として画像等の客観的な情報提供を要求することとしている。服用者は医療について素人であることがほとんどであるため、例えば「副作用である皮膚の湿疹が発生したか?」という確認に対し、実際には湿疹が生じているのに気づかず、「問題ない」と認識するリスクが相応に存在する。副作用等が軽微なものであれば、自覚できない程度の副作用は無視するという考え方もありうるものの、重篤なものの場合、少しでも早く副作用の発生を把握することが服用者の安全確保にとって非常に重要となる。そのため、本実施の形態では高いランクが付された服薬支援情報については服用者本人の主観的な認識ではなく客観的な情報を回答情報として要求することとし、これによって本実施の形態にかかる服薬支援システムは、副作用等の状況をより正確に把握し、適切な対応が可能となるという利点を有する。
【0056】
また、本実施の形態では、服用者から得られた回答情報を解析して得られた情報を各記憶部に出力して記憶させることにより、医薬品情報記憶部4、属性情報記憶部5及び地域医療情報記憶部6の内容を詳細かつ最新なものに維持することができる。すなわち支援情報生成部7は最新の情報に基づき服薬支援情報を生成することとなり、例えば同一の服用者について過去の回答情報を反映して個々の服用者の現状に即した内容からなる服薬支援情報を生成できるという利点を有する。
【0057】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる服薬支援システムについて説明する。以下、特に言及しない限り実施の形態1と同一名称・同一符号のものは実施の形態1と同様の構成・機能を有するものとする。
【0058】
実施の形態1でも述べたとおり、服薬支援システムにおいては服用者からの回答情報を用いて服薬中止等の対応を迅速に行うとともに回答情報を解析して当該服用者に関する副作用等の情報を得て医薬品情報記憶部4等の記憶内容を更新の上、最新情報に基づく服薬支援情報の生成・出力を行えるという利点がある。しかし、服用者によっては回答情報を作成しなかったり、内容を検討せずに回答情報を作成する場合が考えられ、そのような場合には本実施の形態にかかる服薬支援システムの利点を十分に享受できないという問題がある。
【0059】
そのため、実施の形態2にかかる服薬支援システムは、回答情報の応答率及び内容の真実性を向上させる目的で、図4に示すとおり服薬支援装置11において、回答状況について分析する回答状況解析部12と、回答状況解析部12の分析結果を記憶する回答状況記憶部13と、回答状況に応じて服薬支援情報の出力態様を調整する出力態様調整部14とを新たに備えることとしている。なお、本実施の形態2では、実施の形態1と同様に情報端末1において、後述する閲覧時刻を把握する目的で、LiNE(登録商標)サービスにおける「既読通知」サービスのように情報端末側にて服薬支援情報が開かれた時刻が、回答情報として服薬支援装置11に向けて出力される構成を採用している。
【0060】
回答状況解析部12は、服用者が利用する情報端末1から出力される回答情報について、応答率及び回答内容の真実性評価の観点から解析を行う機能を有する。具体的には、回答状況解析部12は、服薬支援情報が出力された時刻である提供時刻と、情報端末1において服薬支援情報の内容が確認された時刻である閲覧時刻と、回答情報が出力された時刻である応答時刻と、回答情報の内容に関する複数の回答情報間における類似性とを判断要素として解析を行い、解析結果を回答状況記憶部13に出力する。
【0061】
回答状況記憶部13は、回答状況解析部12における解析結果を記憶し、記憶した情報について、出力態様調整部14の要求により適宜出力するためのものである。具体的な構成としては医薬品情報記憶部4等と同様とし、これらと別個の記憶装置として構成してもよいし、同一の記憶装置中に構成することとしてもよい。
【0062】
出力態様調整部14は、回答状況記憶部13に記憶された情報に基づいて、服薬支援情報の出力態様を調整するためのものである。本実施の形態2において出力態様とは、服薬支援情報の表現態様、出力タイミング及び出力頻度をいい、出力態様調整部14は、服薬支援情報の内容の重要部分に関する同一性を保持しつつ、これらの出力態様を適宜調整する機能を有する。
【0063】
次に、本実施の形態2にかかる服薬支援システムの動作のうち、服薬支援情報の出力態様の調整動作について説明する。まず、回答状況解析部12は、閲覧時刻と提供時刻の差分値を算出し、所定の閾値以上であった場合に問題ありと判定する。差分値が大きい事実は服用者が服薬支援情報を速やかに閲覧できていない事実を示しており、提供時刻の近傍にて服用者が多忙で情報端末を利用できない、あるいは提供時刻の近傍にて服薬支援情報に対する服用者の関心が低くなっている(他に関心事がある)可能性がある。そのため、回答状況解析部12は、回答を行った服用者の属性情報と関連付けた状態で所定の閾値以上となった場合における提供時刻及び当該提供時刻に問題がある旨の情報を出力し、当該情報は回答状況記憶部13にて記憶される。
【0064】
また、回路状況解析部12は、応答時刻と閲覧時刻の差分値を算出し、第1の閾値未満であった場合と、第1の閾値よりも十分に大きい第2の閾値以上であった場合に、問題ありと判定する。第1の閾値は回答情報の態様との関係で具体的に定められるものであるが、概ね数秒程度である。他方で第2の閾値については、回答情報の態様との関係で具体的に定まるものの、概ね10分以上の値とする。
【0065】
応答時刻と閲覧時刻の差分値が第1の閾値よりも小さい場合は、確認(質問)事項の内容を十分に検討せずに回答情報を作成している可能性が高い。そのため、回答状況解析部12は、回答を行った服用者の属性情報と関連付けた状態で差分値が第1の閾値未満となった場合の閲覧時刻と、回答情報の正確性に問題がある旨の情報を出力し、回答状況記憶部13にて記憶する。
【0066】
他方で、差分値が第2の閾値以上(差分値が無限大、すなわち回答情報が出力されないケースも含む。)場合は、想定以上に回答情報作成に時間を要している可能性が高い。ある程度の時間であれば回答情報を慎重に作成していると評価しうるものの、あまりに長時間を要している場合は、服用者における回答意欲が減少(または消滅)している可能性が考えられる。そのため、回答状況解析部12は、回答を行った服用者の属性情報と関連付けた状態で差分値が第2の閾値以上となった場合の閲覧時刻と、回答意欲が減少等している旨の情報を出力し、回答状況記憶部13にて記憶する。
【0067】
さらに、回路状況解析部12は、同一の服用者から出力された複数の回答情報を比較し、一定以上の類似性が認められる場合に、問題ありと判定する。具体的には、回答情報が文章からなる場合は自然言語処理等により内容、使用されている単語及び表現を比較することにより類似性を判定する。回答情報の態様が複数の選択肢から一つを選択するものである場合は選択した選択肢の位置を基準に、画像(静止画または動画)からなる回答情報の場合は画像の同一性を基準に、それぞれ類似性を判定する。
【0068】
ほぼ同一の表現、同一の位置にある選択肢の選択、画像の同一性が認められる場合、服用者は確認(質問)事項の内容を十分に確認・検討することなく回答情報を生成している、あるいは回答情報の生成を面倒に考え過去の回答情報を流用している可能性がある。いずれの場合も回答情報の正確性に問題が生じている可能性が高いことから、回答を行った服用者の属性情報と関連付けた状態で一連の確認(質問)事項と回答情報の組み合わせと共に回答情報の正確性に問題がある旨の情報を出力し、回答状況記憶部13にて記憶する。
【0069】
次に、出力態様調整部14は、支援情報生成部7にて生成された服薬支援情報について、回答状況記憶部13に記憶された情報に基づき、出力態様の調整を行う。具体的には、同一の服用者に関する情報が記憶されている場合、または属性情報において所定の閾値以上の個数一致する他の服用者に関する情報が記憶されている場合に、出力態様調整部14は、問題ありと記憶されている出力態様と異なる出力態様に設定した上で服薬支援情報を出力する。
【0070】
例えば、閲覧時刻と提供時刻の差分値が閾値以上であった場合は、出力態様のうち出力タイミングについて、閾値以上となった際の提供時刻と異なるタイミングにて服薬支援情報を出力するよう調整する。応答時刻と閲覧時刻の差分値が第1の閾値未満であった、第2の閾値以上であった場合は、表現態様、出力タイミング及び出力頻度のうち1以上の要素について調整を行う。また、複数の回答情報間に一定以上の同一性が認められる場合は、少なくとも表現態様について調整を行い、必要に応じて出力タイミング及び出力頻度についても調整を行う。表現態様の調整としては、例えば、文字情報のみからなる表現態様を画像情報のみ又は文字情報と画像情報を混在させること、列挙した選択肢の中から回答を選択させる形式のものであれば、選択肢の配列順を入れ替えたり、選択するためのラジオボタンの位置を変更したりすることが挙げられる。出力タイミングの調整としては、例えば従来は毎日同一時刻に出力していた場合は、あえてランダムな時間に変更すること等が挙げられる。
【0071】
このように、閲覧時刻、応答時刻及び複数の回答情報間における類似性に基づき応答率及び回答内容の真実性に疑問が生じた場合に表現態様、出力タイミング及び出力頻度を調整することによって、新たな服薬支援情報が服用者に新鮮な印象を与え、定型的な処理を困難とすることが可能となり、よって応答率及び回答内容の真実性が向上することが期待される。
【0072】
以上、実施の形態1、2により本発明の内容を説明したが、本発明の内容は実施の形態に記載された具体例に限定されるものでないことは勿論である。例えば、実施の形態1、2ともに服薬支援装置が具体的な計算機によって実現されていることを前提に説明を行ったが、汎用の電子計算機にインストールしたプログラムによって同様の機能を実現することとしてもよい。また、実施の形態1、2では基礎情報の重要度及び基礎情報と服用者の属性情報の関連度の双方に応じてランク付けを行いランクに応じて異なる態様にて服薬支援情報を生成することとしたが、より簡易な構成としては、基礎情報の重要度と、基礎情報と服用者の属性情報の関連度のいずれか一方のみを用いてランク付けを行い、ランクに応じて異なる態様の服薬支援情報を生成することとしてもよい。さらに、実施の形態2では、提供時刻、閲覧時刻、応答時刻及び複数の回答情報間の共通性(類似度)のすべての要素に基づき出力態様の調整を行うこととしているが、より簡易な構成としては、これらのうち2以上の要素に基づき出力態様の調整を行うこととしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、医薬品の服用者の属性に応じた、適切な内容からなる服薬の支援に関する情報を提供する服薬支援装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 情報端末
2 情報通信網
3 服薬支援装置
4 医薬品情報記憶部
4a 服用方法データベース
4b 副作用データベース
4c 相互作用データベース
4d 事案データベース
5 属性情報記憶部
6 地域医療情報記憶部
7 支援情報生成部
8 出力部
9 入力部
10 情報解析部
11 服薬支援装置
12 回答状況解析部
13 出力態様調整部
図1
図2
図3
図4