(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20240105BHJP
B41J 2/34 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B41J2/335 101H
B41J2/335 101J
B41J2/335 101C
B41J2/335 101G
B41J2/34
(21)【出願番号】P 2020025263
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】木▲瀬▼ 信和
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-166824(JP,A)
【文献】特開2001-180026(JP,A)
【文献】特開2000-355113(JP,A)
【文献】特開昭60-176779(JP,A)
【文献】特開平04-288244(JP,A)
【文献】特開平04-105952(JP,A)
【文献】特開2008-012707(JP,A)
【文献】特開平09-100183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
B41J 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶半導体からなる基材を準備する工程と、
前記基材に
、主走査方向に沿って延びる凹部を形成する凹部形成工程と、
前記基材の上に、
前記主走査方向に延び、ガラス材料からなるグレーズを形成するグレーズ形成工程と、
前記グレーズをマスクとして前記基材に異方性エッチングを施す異方性エッチング工程と、
前記グレーズの上に、前記主走査方向に配列された複数の発熱部を形成する発熱部形成工程と、を備え、
前記グレーズ形成工程は、前記凹部に第1ガラスペーストを配置するステップと、当該第1ガラスペーストを加熱することで第1グレーズを形成するステップと、を含み、
前記異方性エッチング工程では、前記基材に、厚さ方向の一方を向く主面と、当該主面から突出し、かつ前記グレーズにより覆われた頂面を有する凸部と、を形成する、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記グレーズ形成工程は、前記第1グレーズを形成するステップの後に行われ、前記第1グレーズの上に第2ガラスペーストを配置するステップと、当該第2ガラスペーストを加熱することで、前記第1グレーズよりも厚さが厚い第2グレーズを形成するステップと、を含む、請求項
1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記第1グレーズを形成するステップにおいて前記第1ガラスペーストの加熱温度である第1加熱温度は、前記第2グレーズを形成するステップにおいて前記第2ガラスペーストの加熱温度である第2加熱温度よりも低い、請求項
2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記第1ガラスペーストを配置するステップおよび前記第2ガラスペーストを配置するステップでは、スクリーン印刷により前記第1ガラスペーストおよび前記第2ガラスペーストを配置する、請求項
2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記第1ガラスペーストを配置するステップおよび前記第2ガラスペーストを配置するステップでは、スリットが形成されたメタルマスクを用いて印刷を行う、請求項
4に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項6】
単結晶半導体からなる基材を準備する工程と、
前記基材の上に、主走査方向に延び、ガラス材料からなるグレーズを形成するグレーズ形成工程と、
前記グレーズをマスクとして前記基材に異方性エッチングを施す異方性エッチング工程と、
前記グレーズの上に、前記主走査方向に配列された複数の発熱部を形成する発熱部形成工程と、を備え、
前記グレーズ形成工程は、前記基材の上に開口を有するドライフィルムフォトレジストを形成するステップと、前記基材の上に第1ガラスペーストを配置するステップと、当該第1ガラスペーストを加熱することで第1グレーズを形成するステップと、を含み、
前記第1ガラスペーストを配置するステップでは、前記基材の上に、前記ドライフィルムフォトレジストの前記開口を経由して前記第1ガラスペーストを配置し、
前記異方性エッチング工程では、前記基材に、厚さ方向の一方を向く主面と、当該主面から突出し、かつ前記グレーズにより覆われた頂面を有する凸部と、を形成し、
前記凸部は、副走査方向において前記頂面を挟む一対の傾斜外側面を有し、
前記第1グレーズの前記副走査方向における両端部は、前記基材の厚さ方向視において前記一対の傾斜外側面と重なっており、
前記異方性エッチング工程の後に行われ、前記第1グレーズを再び加熱する工程をさらに備える、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記グレーズ形成工程は、前記第1ガラスペーストを配置するステップと前記第1グレーズを形成するステップとの間に行われ、前記ドライフィルムフォトレジストを剥離するステップを含む、請求項
6に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記凹部は、底面と、当該底面に繋がり、副走査方向において前記底面を挟む一対の傾斜内側面と、を有し、
前記一対の傾斜内側面は、前記基材の厚さ方向において前記底面から遠ざかるにつれて前記副走査方向において互いに離れる、請求項
1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記凹部は、前記基材に異方性エッチングを施すことにより形成される、請求項
8に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記凹部の前記底面は、前記グレーズ形成工程の後に行う前記異方性エッチング工程により、前記凸部の前記頂面になる、請求項
9に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記単結晶半導体は、Siからなり、
前記主面は、(100)面である、請求項1ないし
10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項12】
厚さ方向の一方を向く主面を有し、単結晶半導体からなる基材と、
前記主面の上に形成され、かつ主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記基材と前記抵抗体層との間に形成された絶縁層と、
前記基材と前記複数の発熱部との間に形成され、ガラス材料からなるグレーズと、
を備え、
前記基材は、前記主面から突出し、かつ前記主走査方向に延びる凸部を有し、
前記凸部は、前記主面と平行な頂面
と、前記主面および前記頂面に繋がり、副走査方向において前記頂面を挟む一対の傾斜外側面と、を有し、
前記一対の傾斜外側面は、前記基材の厚さ方向において前記主面から遠ざかるにつれて前記副走査方向において互いに近づくように前記主面に対して傾斜しており、
前記一対の傾斜外側面はそれぞれ、互いに繋がる第1傾斜面および第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、前記主面に繋がり、かつ前記主面と前記第2傾斜面とに挟まれており、
前記第2傾斜面は、前記頂面に繋がり、かつ前記第1傾斜面と前記頂面とに挟まれてお り、
前記主面に対する前記第2傾斜面の傾斜角は、前記主面に対する前記第1傾斜面の傾斜角よりも小さく、
前記グレーズは、前記頂面を覆っている、サーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記グレーズは、前記各第2傾斜面の少なくとも一部を覆っている、請求項
12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記凸部は、前記頂面に繋がり、前記副走査方向において前記頂面を挟む一対の傾斜内側面を有し、
前記一対の傾斜内側面は、前記基材の厚さ方向において前記頂面から遠ざかるにつれて前記副走査方向において互いに離れるように前記頂面に対して傾斜しており、
前記グレーズは、前記頂面および前記一対の傾斜内側面により囲まれた領域に配置されている、請求項
12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記グレーズは、前記頂面の上に形成された第1グレーズと、前記第1グレーズの上に形成された第2グレーズと、を含む、請求項
12ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
前記グレーズは、前記頂面のすべてを覆っている、請求項
12ないし15のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
請求項
12ないし16のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドと、
前記複数の発熱部に対向して配置されたプラテンと、を備える、サーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。サーマルプリントヘッドは一般に、ヘッド基板上に主走査方向に並ぶ多数の発熱部を備えている。各発熱部は、蓄熱層を介してヘッド基板に形成された抵抗体層上に、抵抗体層の一部を露出させるように上流側導電層および下流側導電層を積層することで形成されている。上流側電極層と下流側電極層との間を通電することにより、上記抵抗体層の露出部(発熱部)がジュール熱により発熱する。蓄熱層は、発熱部が発する熱を蓄えるために形成され、高速印字を可能にしている。
【0003】
特許文献1に開示されたサーマルプリントヘッドは、基材としてSi(シリコン)が用いられ、半導体プロセスにより、抵抗体層を含む各構成部が形成されている。この場合、蓄熱層は、SiO2(二酸化ケイ素)を用いたスパッタリングまたはCVD法により形成される。スパッタリングなどの工程は、蓄熱層の必要な厚みに応じて、繰り返し行う必要がある。したがって、さらなる高速印字に必要な厚みの蓄熱層を形成するには相当な時間を要し、サーマルプリントヘッドの製造効率が悪化するという問題がある。
【0004】
また、特許文献2においても、基材としてSiが用いられたサーマルプリントヘッドが開示されている。特許文献2に開示されたサーマルプリントヘッドにおいて、基材は、主面と、主走査方向に延び、かつ主面から突出する凸部と、を有する。同文献の
図6等に示すように、複数の発熱部は、凸部上において主走査方向に配列されている。このような構成によれば、印刷媒体を、複数の発熱部が配置された凸部に的確に接触させることができ、印字品質の向上が期待できる。このように基材の一部をなし、かつ複数の発熱部が配列された凸部においても、蓄熱層を適切に配置することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-7203号公報
【文献】特開2019-166824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、基材に形成された凸部と、発熱部との間に、蓄熱層(グレーズ)を適切に配置することが可能なサーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、単結晶半導体からなる基材を準備する工程と、前記基材の上に、主走査方向に延び、ガラス材料からなるグレーズを形成するグレーズ形成工程と、前記グレーズをマスクとして前記基材に異方性エッチングを施す異方性エッチング工程と、前記グレーズの上に、前記主走査方向に配列された複数の発熱部を形成する発熱部形成工程と、を備え、前記異方性エッチング工程では、前記基材に、厚さ方向の一方を向く主面と、当該主面から突出し、かつ前記グレーズにより覆われた頂面を有する凸部と、を形成する。
【0008】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、厚さ方向の一方を向く主面を有し、単結晶半導体からなる基材と、前記主面の上に形成され、かつ主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、前記基材と前記抵抗体層との間に形成された絶縁層と、前記基材と前記複数の発熱部との間に形成され、ガラス材料からなるグレーズと、を備え、前記基材は、前記主面から突出し、かつ前記主走査方向に延びる凸部を有し、前記凸部は、前記主面と平行な頂面を有し、前記グレーズは、前記頂面を覆っている。
【0009】
本開示の第3の側面によって提供されるサーマルプリンタは、本開示の第2の側面に係るサーマルプリントヘッドと、前記複数の発熱部に対向して配置されたプラテンと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、基材に形成された凸部と、発熱部との間に、グレーズを適切に配置することができる。
【0011】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図2】
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部拡大平面図である。
【
図3】
図1に示すサーマルプリントヘッドの要部拡大平面図である。
【
図7】
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す断面図である。
【
図16】
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の他の例の一工程を示す断面図である。
【
図21】
図1に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の他の例の一工程を示す断面図である。
【
図27】
図1に示すサーマルプリントヘッドの変形例を示す
図6と同様の断面図である。
【
図28】本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す
図6と同様の断面図である。
【
図29】
図28に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図36】本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す
図6と同様の断面図である。
【
図37】
図36に示すサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B上に位置していること」を含む。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。
【0015】
<第1実施形態>
図1~
図6は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、ヘッド基板1、接続基板5、複数のワイヤ61,62、複数のドライバIC7、保護樹脂78および放熱部材8を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、プラテンローラ99(
図4参照)によって搬送される印刷媒体(図示略)に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。印刷媒体としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。なお、プラテンローラ99に代えて、ローラ状ではないプラテンを使用してもよい。このプラテンは平坦な面を有する。平坦な面には、小さい曲率を有する曲面が含まれる。本開示では、プラテンローラと平坦な面を有するプラテンとを併せてプラテンと呼ぶ。本開示のサーマルプリンタは、本開示のサーマルプリントヘッドとプラテンとを備えて構成される。
【0016】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。
図2は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5は、サーマルプリントヘッドA1の要部断面図であり、
図4の一部を拡大した断面図である。
図6は、サーマルプリントヘッドA1の要部拡大断面図であり、
図5の一部を拡大した断面図である。
図1~
図3においては、理解の便宜上、後述する保護層2を省略している。
図1および
図2においては、理解の便宜上、保護樹脂78を省略している。また、
図2においては、理解の便宜上、ワイヤ61を省略している。また、これらの図において、ヘッド基板1の長手方向(主走査方向)をx方向とし、短手方向(副走査方向)をy方向とし、厚さ方向をz方向として説明する。また、y方向については、
図1~
図3の下方(
図4~
図6の右方)を印刷媒体が送られてくる「上流」とし、
図1~
図3の上方(
図4~
図6の左方)を印刷媒体が排出される「下流」とする。また、z方向については、
図4~
図6の上方(方向zを示す矢印が指す方向)を「上方」とし、その反対方向を「下方」とする。以下の図においても同様である。
【0017】
図4に示すように、サーマルプリントヘッドA1において、ヘッド基板1および接続基板5は、放熱部材8上で、y方向に隣接して搭載されている。ヘッド基板1には、後に詳説する構成により、y方向に配列される複数の発熱部41が形成されている。この発熱部41は、接続基板5に搭載されたドライバIC7により選択的に発熱駆動され、コネクタ59を介して外部から送信される印字信号にしたがって、プラテンローラ99によって発熱部41に押圧される印刷媒体に印字を行う。
【0018】
ヘッド基板1は、
図1~
図6に示すように、基材10、グレーズ15、絶縁層19、保護層2、電極層3、および、抵抗体層4を備えている。
【0019】
基材10は、単結晶半導体からなる。単結晶半導体としては、Siが好適である。基材10は、
図1に示すように、z方向視において、x方向を長手方向とし、y方向を短手方向とする細長矩形状である。基材10の大きさは限定されないが、一例を挙げると、x方向の寸法は、たとえば50mm以上150mm以下、y方向の寸法は、たとえば1.0mm以上5.0mm以下、z方向の寸法は、たとえば725μm程度である。基材10において、y方向のドライバIC7に近い側が上流側であり、ドライバIC7から遠い側が下流側である。印刷媒体は、プラテンローラ99によって、y方向の上流側から下流側に搬送される。
【0020】
基材10は、
図1、
図2、
図5および
図6に示すように、主面11および凸部12を有している。主面11は、z方向の上方を向く。本開示では、主面11は、x-y平面(x方向とy方向で規定される平面、他の平面も同様)に沿って広がっており、x-y平面に略平行な平面である。主面11は、(100)面である。凸部12は、主面11からz方向に突出しており、x方向に延びている。凸部12は、主面11の下流側寄りに形成されている。凸部12は、y-z平面に沿う断面の形状が、x方向に一様である。以下では、y-z平面に沿う断面を「y-z断面」という。凸部12は、z方向下方側の端部におけるy方向の寸法W1が、たとえば500μm程度であり、z方向上方側の端部(後述する頂面121)におけるy方向の寸法W2が、たとえば200μm程度である。また、凸部12のz方向の寸法H1は、たとえば150μm程度である。
【0021】
図5および
図6に示すように、凸部12は、頂面121および一対の傾斜外側面122を有する。頂面121は、主面11と平行であり、略平面である。頂面121は、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状である。上記寸法H1は、頂面121と主面11とのz方向における離間距離である。
【0022】
一対の傾斜外側面122は、y方向において頂面121を挟んでいる。また、一対の傾斜外側面122はそれぞれ、主面11と頂面121とに繋がり、y方向においてこれらに挟まれている。各傾斜外側面122は、頂面121からy方向に離れるほど低位となるように主面11および頂面121に対して傾斜している。換言すると、一対の傾斜外側面122は、主面11からz方向に遠ざかるにつれて(図中で上方に移動するにつれて)、y方向において互いに近づく。各傾斜外側面122は、略平面である。主面11に対する各傾斜外側面122の傾斜角α1は、たとえば54.8度である。各傾斜外側面122は、(111)面である。
【0023】
グレーズ15は、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなり、蓄熱層として機能する部位である。当該グレーズ15は、たとえばガラスペーストを焼成することにより形成される。本実施形態では、グレーズ15の熱膨張係数は、基材10の材料であるSiと同程度である。なお、グレーズ15のガラス材料の特性は限定されない。
図5および
図6に示すように、グレーズ15は、凸部12の上に配置されている。グレーズ15は、頂面121に接しており、当該頂面121のすべてを覆っている。本実施形態では、グレーズ15は、傾斜外側面122には接していない。グレーズ15は、x方向に延びており、頂面121のy方向の全幅にわたって形成されている。即ち、グレーズ15は、x方向(主走査方向)に沿って見た断面において頂面121のすべてを覆っている。
【0024】
本実施形態では、後述する製造方法に示すように、グレーズ15は、ガラスペーストを配置して加熱する工程を2回繰り返すことで形成される。具体的には、1回目のガラスペースト(第1ガラスペースト)の配置および加熱(仮焼成)により、基材の上に第1グレーズを形成する。そして、当該第1グレーズの上に、2回目のガラスペースト(第2ガラスペースト)を配置する。ここでは、第1グレーズの上に第2ガラスペーストを配置するので、1回目の第1ガラスペーストの場合よりz方向の寸法が大きくなるように(たとえば3倍程度)、第2ガラスペーストを配置できる。つまり、本実施形態では、グレーズ15は、1回のガラスペーストの配置および焼成(加熱)によって形成される場合より、圧倒的に厚く(たとえば4倍程度)形成される。本実施形態では、2回目に配置される第2ガラスペーストは、1回目に配置される第1ガラスペーストと同じ組成のものである。したがって、グレーズ15は、境界がなく一体となっている。なお、製造方法の詳細については後述する。
【0025】
本実施形態では、グレーズ15の厚さ(z方向の寸法H2)は、たとえば30μm以上200μm以下(好ましくは30μm以上50μm以下)である。また、グレーズ15の幅(y方向の寸法W2)に対するz方向の寸法H2の比率(いわゆるアスペクト比)は、0.05以上0.2以下である。本実施形態では、グレーズ15が頂面121のy方向の全幅にわたって形成されているので、グレーズ15の幅は、頂面121の幅(y方向の寸法)、すなわち、凸部12のz方向上方側の端部におけるy方向の寸法W2と同じになっている。なお、グレーズ15の各寸法は限定されない。グレーズ15は、充分に蓄熱が可能であり、かつ、不必要に蓄熱し過ぎないように、厚さ(寸法H2)および幅(寸法W2)が設計される。グレーズ15は、必要な厚さ(またはアスペクト比)が小さい場合は、1回のガラスペーストの配置および焼成(加熱)により形成されてもよい。
【0026】
図6に示すように、グレーズ15には、その上面において、y方向両端に一対のラウンド部151が形成されている。一対のラウンド部151はそれぞれ、盛り上がるように湾曲した部分である。一対のラウンド部151により、グレーズ15の表面が、凸部12の各傾斜外側面122にかけて滑らかに連続させられている。各ラウンド部151は、グレーズ15を形成する際にガラスペーストを焼成することにより形成される。
図6の例示においては、グレーズ15の上面は、y方向において一対のラウンド部151の間に略平坦な面が介在した形状になっている。なお、グレーズ15の上面は、この略平坦な面がなく、一対のラウンド部151同士が繋がった形状であってもよい。この場合、グレーズ15の上面は、z方向上方に湾曲した凸面になる。
【0027】
絶縁層19は、
図5および
図6に示すように、基材10の主面11上に形成され、基材10およびグレーズ15を覆う。絶縁層19は、主面11、凸部12の一対の傾斜外側面122およびグレーズ15の上面に接する。絶縁層19は、基材10を、抵抗体層4および電極層3に対してより確実に絶縁するためのものである。絶縁層19は、基材10において抵抗体層4または電極層3が形成される領域に形成されていればよい。絶縁層19は、絶縁性材料からなり、たとえばSiO
2またはSiN(窒化ケイ素)からなり、好適にはTEOS-SiO
2(TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を原材料として形成されたSiO
2)が採用される。絶縁層19の厚さは特に限定されず、たとえば1μm以上10μm以下である。
【0028】
抵抗体層4は、
図5および
図6に示すように、絶縁層19上に形成され、絶縁層19を覆う。抵抗体層4は、絶縁層19を挟んで、主面11および凸部12にわたって形成されている。抵抗体層4は、たとえばTaN(窒化タンタル)からなる。抵抗体層4の厚さは特に限定されず、たとえば0.02μm以上0.1μm以下(好ましくは0.08μm程度)である。
【0029】
抵抗体層4は、
図3、
図5および
図6に示すように、複数の発熱部41を含む。複数の発熱部41は、抵抗体層4のうち後述する電極層3に覆われずに露出する部分である。複数の発熱部41は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱する。複数の発熱部41は、x方向に配列されており、x方向において互いに離間している。複数の発熱部41のy方向における形成領域は、凸部12の頂面121のy方向の一部または全部を含んだ領域とされる。したがって、各発熱部41は、z方向視において、グレーズ15に重なっている。なお、プラテン(たとえば
図4に示されたプラテンローラ99)は、x方向に沿って延びる各発熱部41に対向して配置される。
【0030】
電極層3は、複数の発熱部41に通電するための導通経路を構成する。電極層3は、抵抗体層4に積層され、基材10に支持されている。電極層3は、抵抗体層4よりも抵抗値が小さい金属材料からなり、たとえばCu(銅)からなる。電極層3の厚さは特に限定されず、たとえば0.3μm以上2.0μm以下である。なお、電極層3は、Cu層と、Ti(チタン)層とが積層された構成であってもよい。この場合、Ti層は、Cu層と抵抗体層4との間に介在し、たとえば厚さ100nm程度である。
【0031】
電極層3は、
図1~
図3、
図5および
図6に示すように、複数の個別電極31および共通電極32を含んでいる。抵抗体層4のうち、複数の個別電極31と共通電極32との間において電極層3から露出した部分が、複数の発熱部41となっている。z方向視における各個別電極31および共通電極32の各形状、すなわち、各個別電極31および共通電極32の形成領域は、
図1および
図2の例示に限定されない。
【0032】
複数の個別電極31はそれぞれ、概ねy方向に延びる帯状である。各個別電極31は、各発熱部41よりもy方向上流側に配置されている。
図3および
図6に表れているように、本実施形態では、各個別電極31のy方向下流側の先端は、y方向上流側の傾斜外側面122上まで延びている。各個別電極31のy方向上流側の先端には、電極パッド部311が形成されている。電極パッド部311は、接続基板5に搭載されるドライバIC7とワイヤ61により接続される部分である。
【0033】
共通電極32は、
図2および
図3に示すように、共通部323および複数の櫛歯部324を含んでいる。共通部323は、複数の櫛歯部324を共通に繋げる。共通部323は、x方向に延びている。共通部323は、複数の櫛歯部324のy方向下流側に位置する。各櫛歯部324は、共通部323の上流側の端縁からy方向に延びる帯状である。複数の櫛歯部324は、互いに離間し、x方向に並んでいる。各櫛歯部324のy方向上流側の先端は、各個別電極31の先端に対して所定間隔を隔てて対向させられている。よって、各櫛歯部324のy方向上流側の先端と、各個別電極31のy方向下流側の先端との間において、抵抗体層4が電極層3から露出する。
図3および
図6に表れているように、各櫛歯部324のy方向上流側の先端は、y方向下流側の傾斜外側面122上まで延びている。各櫛歯部324のy方向下流側部分と共通部323とは、
図2に示すように、主面11上に形成されている。
【0034】
保護層2は、
図5および
図6に示すように、電極層3および抵抗体層4を覆っている。保護層2は、絶縁性の材料からなり、たとえばSiO
2、SiN、SiC(炭化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)のいずれかあるいはそれら2つ以上の積層体からなる。保護層2の厚さは特に限定されず、たとえば1.0μm以上10μm以下である。サーマルプリンタにおいて、基材10の厚さ方向視において各発熱部41に重なる保護層2は、印刷媒体の一方の面に押し付けられることができる。保護層2が押し付けられた印刷媒体の他方の面は、プラテン(たとえば
図4に示されたプラテンローラ99)に押し付けられることができる。
【0035】
保護層2は、
図5に示すように、z方向に貫通するパッド用開口21を有する。パッド用開口21は、複数の個別電極31に設けた電極パッド部311をそれぞれ露出させている。
【0036】
接続基板5は、
図1および
図4に示すように、ヘッド基板1に対してy方向上流側に隣接して配置されている。接続基板5は、たとえばPCB基板である。接続基板5は、たとえば、
図1に示すように、z方向視において、x方向を長手方向とする細長矩形状である。接続基板5は、
図4に示すように、ドライバIC7およびコネクタ59が搭載されている。
【0037】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッドA1をプリンタ(図示略)に接続するために用いられる。コネクタ59は、
図4に示すように、接続基板5に取り付けられており、接続基板5の配線パターン(図示略)に接続されている。
【0038】
ドライバIC7は、
図1および
図4に示すように、接続基板5上に搭載されており、複数の発熱部41を個別に通電させる。ドライバIC7は、
図4および
図5に示すように、複数のワイヤ61によって、各個別電極31の各電極パッド部311にそれぞれ接続されている。また、ドライバIC7は、複数のワイヤ62によって、接続基板5上に形成された配線パターンに接続されている。ドライバIC7にはコネクタ59を介して外部から送信される印字信号、制御信号および複数の発熱部41に供給される電圧が入力される。複数の発熱部41は、印字信号および制御信号にしたがって個別に通電されることにより、選択的に発熱させられる。
【0039】
ドライバIC7および複数のワイヤ61,62は、
図4および
図5に示すように、ヘッド基板1と接続基板5とに跨るように形成された保護樹脂78で覆われている。保護樹脂78は、エポキシ樹脂などの黒色の絶縁性材料が用いられている。
【0040】
放熱部材8は、
図4に示すように、ヘッド基板1および接続基板5を支持しており、複数の発熱部41により生じた熱の一部を外部へと放熱するために設けられる。放熱部材8はたとえばアルミ等の金属製である。
【0041】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について、
図7~
図15を参照しつつ、以下に説明する。
図7~
図15はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一工程を示す断面図であって、
図6に示す断面に対応する。
【0042】
まず、
図7に示すように、基材10Aを準備する。基材10Aは、単結晶半導体からなり、たとえばSiウエハである。基材10Aは、主面11Aを有する。主面11Aは、略平坦であり、z方向の上方を向く。主面11Aは(100)面である。この工程が、本開示の「基材を準備する工程」に相当する。
【0043】
次いで、
図8~
図10に示すように、グレーズ15を形成する。
【0044】
グレーズ15を形成する工程(グレーズ形成工程)では、まず、
図8に示すように、基材10Aの主面11A上にガラスペースト(第1ガラスペースト15A)を配置し、加熱する。本実施形態において、第1ガラスペースト15Aの配置は、ディスペンサー(図示略)により基材10A上にガラスペーストを塗布することにより行う。第1ガラスペースト15Aは、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状に配置される。第1ガラスペースト15Aの配置領域は、後に形成される凸部12の頂面121に対応する。その後、第1ガラスペースト15Aを加熱(仮焼成)する。第1ガラスペースト15Aの加熱温度(第1加熱温度)は、たとえば300℃程度である。これにより、第1グレーズ15Bが形成される。本実施形態では、第1ガラスペースト15Aは、焼成後の第1グレーズ15Bの熱膨張係数が基材10の材料であるSiと同程度になるように調整されている。なお、第1ガラスペースト15Aの組成は限定されない。
【0045】
次に、
図9に示すように、第1グレーズ15B上にガラスペースト(第2ガラスペースト15C)を配置する。第2ガラスペースト15Cの配置は、ディスペンサー(図示略)によりガラスペーストを塗布する(吐出する)ことにより行う。第2ガラスペースト15Cは、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状に配置される。当該塗布では、第1グレーズ15Bの上に第2ガラスペースト15Cを配置するので、基材10A上に第1ガラスペースト15Aを配置する1回目の塗布の場合より、z方向の寸法が大きくなるように(たとえば3倍程度)、第2ガラスペースト15Cを配置できる。つまり、本実施形態では、1回のガラスペースト塗布および焼成によって形成する場合より、圧倒的に厚く(たとえば4倍程度)、グレーズ15を形成できる。
【0046】
その後、第2ガラスペースト15Cを加熱(焼成)することによって、
図10に示すように、第2グレーズ15Dが形成される。当該焼成により第1グレーズ15Bは軟化し、第2ガラスペースト15Cが焼成されて形成された第2グレーズ15Dと一体となって、グレーズ15が形成される。ここで、第2ガラスペースト15Cを加熱(焼成)する際の温度(第2加熱温度)は、たとえば850℃程度あるいは1200℃程度であり、第1ガラスペースト15Aの加熱温度(第1加熱温度)よりも高温である。当該焼成温度は、第2ガラスペースト15Cの組成に応じて適切な温度が選択される。本実施形態では、2回目の塗布により配置される第2ガラスペースト15Cは、1回目に配置される第1ガラスペースト15Aと同じ組成のものである。したがって、2回目の加熱(焼成)で形成されたグレーズ15は一体となっている。なお、
図10では、便宜上、第1グレーズ15Bと第2グレーズ15Dとの境界を破線で示している。なお、2回目に配置される第2ガラスペースト15Cは、1回目に配置される第1ガラスペースト15Aと異なる組成のものであってもよい。グレーズ15は、その表面のy方向両端部分にラウンド部151が形成されている。
【0047】
以上のように、ガラスペーストを塗布により配置して加熱する工程を2回繰り返すことで、グレーズ15が形成される。なお、ガラスペーストの配置は、スクリーンを用いた印刷により行ってもよい。換言すると、スクリーン印刷を使用してガラスペーストを配置してもよい。スクリーン印刷を使用できることは他の実施形態においても同じである。
【0048】
次いで、
図11に示すように、凸部12を形成する。凸部12の形成は、主面11A上に形成されたグレーズ15をマスクとして基材10Aに異方性エッチングを施すことにより行う。凸部12を形成する工程では、たとえばアルカリ水溶液を用いた異方性エッチングを行う。このアルカリ水溶液としては、たとえばKOH(水酸化カリウム)やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などが挙げられる。これにより、
図11に示すように、主面11および凸部12を有する基材10が形成される。主面11は、主面11Aと同じく(100)面である。凸部12は、頂面121および一対の傾斜外側面122を有する。頂面121は、そのすべてがグレーズ15により覆われている。一対の傾斜外側面122はそれぞれ、(111)面であり、主面11および頂面121に対して傾斜している。各傾斜外側面122の傾斜角α1は、たとえば54.8度である。当該凸部12を形成する工程が、本開示の「異方性エッチング工程」に相当する。
【0049】
次いで、
図12に示すように、絶縁層19を形成する。絶縁層19の形成は、たとえばCVDを用いてTEOS-SiO
2を堆積させることにより行う。絶縁層19は、主面11、凸部12の一対の傾斜外側面122、およびグレーズ15を覆う。
【0050】
次いで、
図13に示すように、抵抗体膜4Aを形成する。抵抗体膜4Aの形成は、たとえばスパッタリングにより絶縁層19上にTaNの薄膜を形成することによって行う。抵抗体膜4Aは、絶縁層19の全面を覆う。
【0051】
次いで、
図14に示すように、導電膜3Aを形成する。導電膜3Aの形成は、たとえばめっきやスパッタリングによりCuからなる層を形成することによって行う。導電膜3Aは、抵抗体膜4Aの全面を覆う。なお、導電膜3Aの形成では、絶縁層19上にTi層を形成した後、Cu層を形成した構成でもよい。
【0052】
次いで、
図15に示すように、導電膜3Aおよび抵抗体膜4Aに選択的なエッチングを施すことにより、導電膜3Aおよび抵抗体膜4Aを部分的に除去する。これにより、x方向に分離された抵抗体層4と、複数の発熱部41を残して抵抗体層4を覆う複数の個別電極31および共通電極32とが形成される。抵抗体膜4Aの形成、導電膜3Aの形成、および、導電膜3Aおよび抵抗体膜4Aの部分除去をあわせた工程が、本開示の「発熱部形成工程」に相当する。
【0053】
次いで、保護層2を形成する。保護層2の形成は、たとえばCVDを用いて、絶縁層19、電極層3および抵抗体層4のそれぞれの上にたとえばSiNを堆積させることにより行われる。その後、パッド用開口21を形成するために、保護層2をエッチング等により部分的に除去する。
【0054】
次いで、基材10をx方向およびy方向に沿って切断し、個片に分割する。以上により、ヘッド基板1が得られる。そして、放熱部材8上へのヘッド基板1および接続基板5の組付け、接続基板5へのドライバIC7の搭載、複数のワイヤ61,62のボンディング、保護樹脂78の形成等を行うことにより、
図1~
図6に示したサーマルプリントヘッドA1が製造される。
【0055】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0056】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA1の製造において、基材10A上に、x方向(主走査方向)に延びるグレーズ15を形成し、その後、グレーズ15をマスクとして、単結晶半導体である基材10Aに異方性エッチングを施す。その後、グレーズ15上に、x方向に配列された複数の発熱部41を形成する。グレーズ15をマスクとして異方性エッチングを施す工程において、基材10には、z方向の上方を向く主面11と、当該主面11からz方向に突出する凸部12と、が形成される。凸部12は主面11と平行な頂面121を有し、この頂面121のすべてがグレーズ15により覆われた状態となる。
【0057】
本実施形態によれば、凸部12と当該凸部12(頂面121)上に配置されるグレーズ15とについて、y方向の相対的な位置ずれを抑制することができる。したがって、凸部12および凸部12上に配置されたグレーズ15(特にx方向に沿って見たその断面形状)は、y方向(基材10,10Aなどの短手方向)の上流側と下流側の均衡がとれており、サーマルプリントヘッドA1の印字品質のバラツキを抑制することが可能である。また、凸部12は、単結晶半導体に対して異方性エッチングを施すことにより形成されるため、そのy-z断面はx方向(基材10,10Aなどの長手方向)について略一様となる。即ち、印刷媒体の発熱部41に対する押圧接触状態は、x方向各所において略一定となる。このことは、ヘッド基板1の製造ロットが異なっても変わらず、印字品質のバラツキを抑制するのに適する。
【0058】
本実施形態によれば、グレーズ15は、ガラスペーストを配置して加熱する工程を2回繰り返すことで形成される。2回目のガラスペースト(第2ガラスペースト15C)は、第1グレーズ15B上に配置するので、1回目のガラスペースト(第1ガラスペースト15A)の場合よりもz方向の寸法が大きくなるように配置できる。したがって、グレーズ15は、1回のガラスペーストの配置および焼成(加熱)によって形成される場合より、圧倒的に厚く形成される。このような構成によれば、グレーズ15は、各発熱部41が発する熱を適切に蓄えることができ、グレーズ15による蓄熱効果の向上を図ることができる。
【0059】
本実施形態によれば、頂面121のすべてがグレーズ15により覆われていることによって、x方向(主走査方向)に沿って見た断面において、グレーズ15とグレーズ15につながる一対の傾斜外側面122とがそれぞれ滑らかに接続される。これにより、グレーズ15と一対の傾斜外側面122との上に順に形成される絶縁層19、抵抗体膜4A、導電膜3Aおよび保護層2が、滑らかに形成される。したがって、サーマルプリントヘッドA1が有する、絶縁層19、抵抗体層4、電極層3、および保護層2が、滑らかに形成されるので、サーマルプリントヘッドA1を製造する際の歩留り(良品率)が向上する。
【0060】
また、本実施形態において、第1ガラスペースト15Aの加熱温度(第1加熱温度)は、第2ガラスペースト15Cの加熱温度(第2加熱温度)よりも低くされる。本実施形態では、第1ガラスペースト15Aの加熱後に形成される第1グレーズ15Bは、定型性を有するものの十分に焼成されてはいないことから、所定の特性を有する状態とはならない。その後の、第1グレーズ15B上への第2ガラスペースト15Cの配置、および加熱(焼成)によって、第1ガラスペースト15Aに由来する第1グレーズ15Bと第2ガラスペースト15Cに由来する第2グレーズ15Dとが一体となって、所定の特性を有するグレーズ15が形成される。したがって、ガラスペーストを配置して加熱する工程を2回繰り返すことでグレーズ15を形成する場合において、加熱時の温度条件を上記のように異ならせることにより、グレーズ15の形成に要する時間を短縮でき、サーマルプリントヘッドA1の製造効率の向上が図られる。
【0061】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の他の例について、
図16~
図20を参照しつつ、以下に説明する。
図16~
図20はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一工程を示す断面図であって、
図6に示す断面に対応する。なお、これらの図において、
図7~
図15を参照して説明した工程と同一または類似の工程については、適宜説明を省略する。
【0062】
図16~
図20に示した製造方法では、主にグレーズ15の形成方法が、上記の
図7~
図15を参照して説明したサーマルプリントヘッドA1の製造方法と比べて異なっている。
【0063】
本製造方法において、グレーズ15を形成する工程(グレーズ形成工程)では、まず、
図16に示すように、準備した基材10Aの主面11A側にスクリーン91を配置する。スクリーン91は、z方向に貫通する開口であるスリット91aが形成された薄い金属板(メタルマスク)である。スリット91aは、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状に形成されている。スリット91aの幅(y方向の寸法)S1は、後に形成される凸部12の頂面121の幅(y方向の寸法)と同程度である。
【0064】
次に、基材10Aに、スクリーン印刷の技法により、ガラスペースト(第1ガラスペースト15A)を印刷する。これにより、基材10A上のスリット91aを通過した位置にだけ、第1ガラスペースト15Aが配置される。その後、スクリーン91を取り除く。次いで、第1ガラスペースト15Aを加熱(仮焼成)することによって、
図17に示すように、第1グレーズ15Bが形成される。本実施形態では、第1ガラスペースト15Aは、焼成後の第1グレーズ15Bの熱膨張係数が基材10の材料であるSiと同程度になるように調整されている。なお、第1ガラスペースト15Aの組成は限定されない。「スクリーン印刷」には、メタルマスクを使用する場合とメッシュスクリーンを使用する場合との双方が含まれる。
【0065】
次いで、
図18に示すように、基材10Aの主面11A側にスクリーン93を配置する。スクリーン93は、z方向に貫通する開口であるスリット93aが形成された金属板(メタルマスク)である。スリット93aは、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状に形成されている。スリット93aの幅(y方向の寸法)S2は、
図16に示したスリット91aの幅(y方向の寸法)S1より少し小さく、本実施形態では、スクリーン91のスリット91aの幅S1の8割以上9割以下である。なお、スリット91aの幅S1とスリット93aの幅S2との関係は、これに限定されない。本実施形態では、スクリーン93は、基材10Aに対向する面に、スペーサ92が取り付けられている。スペーサ92は、たとえば樹脂製であり、スクリーン93が基材10Aに配置されたときに、基材10Aの主面11Aとスクリーン93の下面との間に位置する。なお、スペーサ92は取り付けられなくてもよい。
【0066】
次に、基材10Aに、スクリーン印刷の技法により、ガラスペースト(第2ガラスペースト15C)を印刷する。これにより、
図19に示すように、基材10Aに形成された第1グレーズ15Bの上に、第2ガラスペースト15Cが配置される。当該印刷では、第1グレーズ15Bの上に第2ガラスペースト15Cを配置するので、基材10A上に第1ガラスペースト15Aを配置する1回目の印刷の場合より、z方向の寸法が大きくなるように(たとえば3倍程度)、第2ガラスペースト15Cを配置できる。つまり、本実施形態では、1回のスクリーン印刷および焼成によって形成する場合より、圧倒的に厚く(たとえば4倍程度)、グレーズ15を形成できる。その後、スクリーン93(およびスペーサ92)を取り除く。この時点では、第2ガラスペースト15Cは、x方向視において、厚さが略均等であり、y-z断面が矩形状である。
【0067】
その後、第2ガラスペースト15Cを加熱(焼成)することによって、
図20に示すように、第2グレーズ15Dが形成される。当該焼成により第1グレーズ15Bは軟化し、第2ガラスペースト15Cが焼成されて形成された第2グレーズ15Dと一体となって、グレーズ15が形成される。本実施形態では、2回目のスクリーン印刷で配置される第2ガラスペースト15Cは、1回目のスクリーン印刷で配置される第1ガラスペースト15Aと同じ組成のものである。したがって、2回目の加熱(焼成)で形成されたグレーズ15は一体となっている。なお、
図20では、便宜上、第1グレーズ15Bと第2グレーズ15Dとの境界を破線で示している。なお、2回目のスクリーン印刷で配置される第2ガラスペースト15Cは、1回目のスクリーン印刷で配置される第1ガラスペースト15Aと異なる組成のものであってもよい。グレーズ15は、その表面のy方向両端部分にラウンド部151が形成されている。
【0068】
以上のように、ガラスペーストを印刷により配置して加熱する工程を2回繰り返すことで、グレーズ15が形成される。
【0069】
その後は、
図11~
図15を参照して上述したのと同様にして、凸部12の形成(異方性エッチング工程)、絶縁層19の形成、抵抗体膜4Aの形成、導電膜3Aの形成、導電膜3Aおよび抵抗体膜4Aの部分的除去(発熱部形成工程)、および基材10の個片分割を順次行う。これにより、ヘッド基板1が得られる。そして、放熱部材8上へのヘッド基板1および接続基板5の組付け、接続基板5へのドライバIC7の搭載、複数のワイヤ61,62のボンディング、保護樹脂78の形成等を行うことにより、
図1~
図6に示したサーマルプリントヘッドA1が製造される。
【0070】
本製造方法においても、凸部12と当該凸部12(頂面121)上に配置されるグレーズ15とについて、y方向の相対的な位置ずれを抑制することができる。したがって、凸部12および凸部12上に配置されたグレーズ15(特にx方向に沿って見たその断面形状)は、y方向(基材10,10Aなどの短手方向)の上流側と下流側の均衡がとれており、サーマルプリントヘッドA1の印字品質のバラツキを抑制することが可能である。その他にも、
図7~
図15に示した製造方法の場合と同様の効果を奏することができる。
【0071】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法のさらに他の例について、
図21~
図26を参照しつつ、以下に説明する。
図21~
図26はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一工程を示す断面図であって、
図6に示す断面に対応する。なお、これらの図において、
図7~
図15を参照して説明した工程と同一または類似の工程については、適宜説明を省略する。
【0072】
図21~
図26に示した製造方法では、主にガラスペースト(第1ガラスペースト15A)の配置が、上記の
図7~
図15を参照して説明したサーマルプリントヘッドA1の製造方法と比べて異なっている。
【0073】
本製造方法において、まず、
図21に示すように、準備した基材10Aの主面11A上の一部に、所定のマスク層95を形成する。このマスク層95には、開口95aが形成される。開口95aは、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状である。開口95aの形成領域は、後に形成される凸部12の頂面121に対応する。
【0074】
次に、
図22に示すように、基材10Aの主面11Aに凹部12Aを形成する。凹部12Aの形成は、たとえばドライエッチングにより行う。凹部12Aは、マスク層95の開口95aに対応する形状とされ、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状である。その後、マスク層95を除去する。
【0075】
次いで、
図23~
図25に示すように、グレーズ15を形成する。本製造方法では、まず、
図23に示すように、基材10Aの凹部12Aにガラスペースト(第1ガラスペースト15A)を配置し、加熱する。本実施形態において、第1ガラスペースト15Aの配置は、ディスペンサー(図示略)によりガラスペーストを塗布することにより行う。第1ガラスペースト15Aは、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状に配置される。本製造方法において、第1ガラスペースト15Aの配置領域は、凹部12Aによって規定される。その後、第1ガラスペースト15Aを加熱(仮焼成)する。これにより、第1グレーズ15Bが形成される。本実施形態では、第1ガラスペースト15Aは、焼成後の第1グレーズ15Bの熱膨張係数が基材10の材料であるSiと同程度になるように調整されている。なお、第1ガラスペースト15Aの組成は限定されない。
【0076】
次に、
図24に示すように、第1グレーズ15B上にガラスペースト(第2ガラスペースト15C)を配置する。第2ガラスペースト15Cの配置は、ディスペンサー(図示略)によりガラスペーストを塗布することにより行う。第2ガラスペースト15Cは、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状に配置される。当該塗布では、第1グレーズ15Bの上に第2ガラスペースト15Cを配置するので、基材10A上に第1ガラスペースト15Aを配置する1回目の塗布の場合より、z方向の寸法が大きくなるように(たとえば3倍程度)、第2ガラスペースト15Cを配置できる。つまり、本実施形態では、1回のガラスペースト塗布および焼成によって形成する場合より、圧倒的に厚く(たとえば4倍程度)、グレーズ15を形成できる。
【0077】
その後、第2ガラスペースト15Cを加熱(焼成)することによって、
図25に示すように、第2グレーズ15Dが形成される。当該焼成により第1グレーズ15Bは軟化し、第2ガラスペースト15Cが焼成されて形成された第2グレーズ15Dと一体となって、グレーズ15が形成される。本実施形態では、2回目の塗布により配置される第2ガラスペースト15Cは、1回目に配置される第1ガラスペースト15Aと同じ組成のものである。したがって、2回目の加熱(焼成)で形成されたグレーズ15は一体となっている。なお、
図25では、便宜上、第1グレーズ15Bと第2グレーズ15Dとの境界を破線で示している。なお、2回目に配置される第2ガラスペースト15Cは、1回目に配置される第1ガラスペースト15Aと異なる組成のものであってもよい。グレーズ15は、その表面のy方向両端部分にラウンド部151が形成されている。
【0078】
以上のように、ガラスペーストを塗布により配置して加熱する工程を2回繰り返すことで、グレーズ15が形成される。
【0079】
次いで、
図26に示すように、凸部12を形成する。凸部12の形成は、基材10Aの凹部12Aに形成されたグレーズ15をマスクとして基材10Aに異方性エッチングを施すことにより行う(異方性エッチング工程)。これにより、
図26に示すように、主面11および凸部12を有する基材10が形成される。主面11は、主面11Aと同じく(100)面である。凸部12は、頂面121および一対の傾斜外側面122を有する。頂面121は、そのすべてがグレーズ15により覆われている。
図25においてグレーズ15に覆われていた、凹部12Aの底面部分が、凸部12の頂面121になる。一対の傾斜外側面122はそれぞれ、(111)面であり、主面11および頂面121に対して傾斜している。当該凸部12を形成する工程が、本開示の「異方性エッチング工程」に相当する。
【0080】
その後は、
図12~
図15を参照して上述したのと同様にして、絶縁層19の形成、抵抗体膜4Aの形成、導電膜3Aの形成、導電膜3Aおよび抵抗体膜4Aの部分的除去(発熱部形成工程)、および基材10の個片分割を順次行う。これにより、ヘッド基板1が得られる。そして、放熱部材8上へのヘッド基板1および接続基板5の組付け、接続基板5へのドライバIC7の搭載、複数のワイヤ61,62のボンディング、保護樹脂78の形成等を行うことにより、
図1~
図6に示したサーマルプリントヘッドA1が製造される。
【0081】
本製造方法においても、凸部12と当該凸部12(頂面121)上に配置されるグレーズ15とについて、y方向の相対的な位置ずれを抑制することができる。したがって、凸部12および凸部12上に配置されたグレーズ15(特にx方向に沿って見たその断面形状)は、y方向(基材10,10Aなどの短手方向)の上流側と下流側の均衡がとれており、サーマルプリントヘッドA1の印字品質のバラツキを抑制することが可能である。その他にも、
図7~
図15に示した製造方法の場合と同様の効果を奏することができる。
【0082】
また、本製造方法によれば、
図23に示すように、第1ガラスペースト15Aの配置領域が凹部12Aによって規定されており、第1ガラスペースト15Aのy方向の寸法が凹部12Aのy方向における寸法と同一となる。このため、最終的に形成されるグレーズ15の下面により覆われた、凸部12の頂面121(
図25参照)について、y方向の寸法が凹部12Aのy方向の寸法に由来する。したがって、凸部12の上端部(頂面121)におけるy方向の寸法(
図6における寸法W2)を正確に規定することができる。
【0083】
サーマルプリントヘッドA1の製造方法について種々の例を挙げて説明したが、本開示に係るサーマルプリントヘッドの製造方法は、これらに限定されない。たとえば、グレーズ15の必要な厚さ(またはアスペクト比)が小さい場合は、上記製造方法において、第2ガラスペースト15Cを配置し、その後に加熱(焼成)するステップを省略して、1回のガラスペーストの配置および加熱(焼成)によりグレーズ15を形成してもよい。
図27は、1回のガラスペーストの配置および加熱により形成されたグレーズ15を備えたサーマルプリントヘッドA1’を示しており、上記第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドA1の変形例である。また、グレーズ15の必要な厚さ(またはアスペクト比)が大きい場合は、ガラスペーストの配置および加熱(焼成)を3回以上繰り返すことで、グレーズ15を形成してもよい。
【0084】
図28以降の図面は、本開示の他の実施形態を示している。なお、
図28以降の図面において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0085】
<第2実施形態>
図28は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図であり、
図6に対応する図である。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、凸部12における一対の傾斜外側面122がそれぞれ2段階に傾斜しており、かかる点が上述した実施形態と大きく異なる。
【0086】
本実施形態に係る一対の傾斜外側面122はそれぞれ、
図28に示すように、第1傾斜面123および第2傾斜面124を有する。第1傾斜面123と第2傾斜面124とは、y方向に並んでいる。第1傾斜面123および第2傾斜面124は、互いに主面11に対する傾斜角が異なる。第1傾斜面123は、主面11に対する傾斜角α1がたとえば54.8度である。一方、第2傾斜面124は、主面11に対する傾斜角α2がたとえば30.1度である。第1傾斜面123は、主面11と第2傾斜面124とに繋がり、これらに挟まれている。第2傾斜面124は、第1傾斜面123と頂面121とに繋がり、これらに挟まれている。第1傾斜面123は、(111)面である。
【0087】
本実施形態において、グレーズ15は、凸部12の頂面121のすべておよび一対の第2傾斜面124の少なくとも一部を覆っている。本実施形態では、後述する製造方法に示すように、グレーズ15は、1回のガラスペーストの配置および加熱(焼成)により形成される。
【0088】
次に、サーマルプリントヘッドA2の製造方法の一例について、
図29~
図35を参照しつつ、以下に説明する。
図29~
図35はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA2の製造方法の一工程を示す断面図であって、
図28に示す断面に対応する。
【0089】
まず、
図29に示すように、準備した基材10Aの主面11A上の一部に、所定のマスク層96を形成する。当該マスク層96は、たとえばドライフィルムフォトレジストであり、主面11Aに貼り付けられる。このマスク層96に露光および現像を行うことにより、露光部分が除去されて開口96aが形成される(ドライフィルムフォトレジストを形成するステップ)。開口96aは、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状である。 ドライフィルムフォトレジストからなるマスク層96は、厚さが比較的厚くされている。マスク層96の厚さは、たとえば75μm程度である。
【0090】
次に、基材10に、スクリーン印刷の技法により、ガラスペースト(第1ガラスペースト15A)を印刷する。これにより、基材10上において、マスク層96に覆われていない露出部分(開口96a部分)にだけ、第1ガラスペースト15Aが配置される(第1ガラスペーストを配置するステップ)。
【0091】
次いで、
図31に示すように、マスク層96を剥離除去する(ドライフィルムフォトレジストを剥離するステップ)。ここで、マスク層96の除去は、たとえば有機薬剤を用いた剥離、あるいは粘着テープを用いた剥離により行う。次いで、第1ガラスペースト15Aを加熱(焼成)することによって、
図32に示すように、第1グレーズ15Bが形成される。
【0092】
次いで、
図33、
図34に示すように、凸部12を形成する。凸部12の形成は、主面11A上に形成された第1グレーズ15Bをマスクとして基材10Aに異方性エッチングを施すことにより行う(異方性エッチング工程)。凸部12を形成する工程では、たとえばアルカリ水溶液を用いた異方性エッチングを行う。当該アルカリ水溶液としては、たとえばKOHやTMAHなどが挙げられる。
【0093】
本実施形態では、異方性エッチングを施す工程を2回行う。1回目の異方性エッチングにより、
図33に示すように、頂面121および一対の傾斜外側面122(第1傾斜面123)を有する凸部12が形成される。ここで、基材10への第1グレーズ15Bの密着性などの条件に応じて、第1グレーズ15Bのy方向における両端部の下方において、基材10の一部が除去される。次いで、2回目の異方性エッチングにより、
図34に示すように、第1グレーズ15Bのy方向における両端部の下方において、基材10の一部がさらに除去される。このように2回の異方性エッチングを施す工程により、各々が第1傾斜面123および第2傾斜面124を有する一対の傾斜外側面122が形成される。
図34に示すように、第1グレーズ15Bのy方向における両端部は、z方向視において一対の第2傾斜面124(一対の傾斜外側面122)と重なっている。
【0094】
本実施形態では、その後、第1グレーズ15Bを再び加熱(再焼成)することによって、
図35に示すように、グレーズ15が形成される。当該再焼成により第1グレーズ15Bは軟化し、頂面121および一対の第2傾斜面124を覆う形状のグレーズ15が形成される。グレーズ15は、その表面のy方向両端部分にラウンド部151が形成されている。その後の工程は、サーマルプリントヘッドA1の製造方法と同様である。
【0095】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0096】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA2の製造において、基材10A上に、x方向(主走査方向)に延びる第1グレーズ15Bを形成し、その後、第1グレーズ15Bをマスクとして、単結晶半導体である基材10Aに異方性エッチングを施す。その後の工程において、グレーズ15上に、x方向に配列された複数の発熱部41を形成する。第1グレーズ15Bをマスクとして異方性エッチングを施す工程において、基材10には、z方向の上方を向く主面11と、当該主面11からz方向に突出する凸部12と、が形成される。凸部12は主面11と平行な頂面121を有し、この頂面121のすべてがグレーズ15により覆われた状態となる。
【0097】
本実施形態によれば、凸部12と当該凸部12(頂面121)上に配置されるグレーズ15とについて、y方向の相対的な位置ずれを抑制することができる。したがって、凸部12および凸部12上に配置されたグレーズ15(特にx方向に沿って見たその断面形状)は、y方向(基材10,10Aなどの短手方向)の上流側と下流側の均衡がとれており、サーマルプリントヘッドA2の印字品質のバラツキを抑制することが可能である。また、凸部12は、単結晶半導体に対して異方性エッチングを施すことにより形成されるため、そのy-z断面はx方向(基材10,10Aなどの長手方向)について略一様となる。即ち、印刷媒体の発熱部41に対する押圧接触状態は、x方向各所において略一定となる。このことは、ヘッド基板1の製造ロットが異なっても変わらず、印字品質のバラツキを抑制するのに適する。
【0098】
また、本実施形態において、基材10上に形成されるマスク層96として、ドライフィルムフォトレジストが用いられる。厚さが比較的厚くされたマスク層96を、精度良くかつ簡易に形成することができる。そして、1回のガラスペースト(第1ガラスペースト15A)の配置によって、グレーズ15の厚さを十分に厚くすることができる。
【0099】
本実施形態によれば、第1グレーズ15Bをマスクとして基材10Aに異方性エッチングを施す工程を2回行うことにより、凸部12においては、それぞれ2段階に傾斜する一対の傾斜外側面122が形成される。具体的には、各傾斜外側面122は、主面11に対する傾斜角が異なる第1傾斜面123および第2傾斜面124を有する。主面11に対する第2傾斜面124の傾斜角α2は、主面11に対する第1傾斜面123の傾斜角α1よりも小さい。そして、凸部12を形成した後、第1グレーズ15Bを再び加熱することで、第1グレーズ15Bは軟化し、頂面121のすべておよび一対の第2傾斜面124の少なくとも一部を覆う形状のグレーズ15が形成される。このような構成によれば、凸部12の表面の比較的広い範囲にわたってグレーズ15を形成することができ、グレーズ15による蓄熱効果の向上を図ることができる。
【0100】
なお、本実施形態では、第1グレーズ15Bをマスクとして基材10Aに異方性エッチングを施す工程を2回行う場合について説明したが、当該異方性エッチングを施す工程を1回のみ行うように構成してもよい。前記異方性エッチングを施す工程1回行うことで、頂面121および一対の第1傾斜面123(傾斜外側面122)を有する凸部12が形成される。その後、第1グレーズ15Bを再び加熱することで、第1グレーズ15Bは軟化し、頂面121の全体および一対の第1傾斜面123(傾斜外側面122)の少なくとも一部を覆う形状のグレーズ15が形成される。
【0101】
<第3実施形態>
図36は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図であり、
図6に対応する図である。本実施形態のサーマルプリントヘッドA3は、凸部12の構成が上述した実施形態と大きく異なる。
【0102】
本実施形態において、凸部12は、頂面121、一対の傾斜内側面125、および一対の傾斜外側面122を有する。頂面121は、主面11と平行であり、略平面である。頂面121は、z方向において主面11から離間する位置にある。頂面121は、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状である。
【0103】
一対の傾斜内側面125は、y方向において頂面121を挟んでいる。また、一対の傾斜内側面125は、それぞれ頂面121に繋がり、頂面121からz方向に遠ざかるにつれて(図中で上方に移動するにつれて)、y方向において互いに離れるように頂面121に対して傾斜している。各傾斜内側面125は、略平面である。頂面121に対する各傾斜内側面125の傾斜角α3は、たとえば54.8度である。各傾斜内側面125は、(111)面である。
【0104】
一対の傾斜外側面122は、y方向において頂面121および一対の傾斜内側面125を挟んでいる。また、一対の傾斜外側面122はそれぞれ、主面11と傾斜内側面125とに繋がり、y方向においてこれらに挟まれている。一対の傾斜外側面122は、主面11からz方向に遠ざかるにつれて(図中で上方に移動するにつれて)、y方向において互いに近づくように主面11に対して傾斜している。各傾斜外側面122は、略平面である。主面11に対する各傾斜外側面122の傾斜角α1は、たとえば54.8度である。各傾斜外側面122は、(111)面である。
【0105】
図36に示すように、凸部12において、頂面121およびこれを挟む一対の傾斜内側面125で囲まれた領域はz方向(図中下方)に凹んだ形状となっている。グレーズ15は、頂面121および一対の傾斜内側面125で囲まれた領域に配置されている。グレーズ15は、頂面121のすべておよび一対の傾斜内側面125を覆っている。また、本実施形態では、グレーズ15は、頂面121および一対の傾斜内側面125で囲まれた領域よりもz方向(図中上方)に突出している。グレーズ15は、厚さが比較的厚くされている。グレーズ15の厚さは、たとえば150μm以上200μm以下である。
【0106】
次に、サーマルプリントヘッドA3の製造方法の一例について、
図37~
図44を参照しつつ、以下に説明する。
図37~
図44はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA3の製造方法の一工程を示す断面図であって、
図36に示す断面に対応する。
【0107】
まず、
図37に示すように、準備した基材10Aの主面11A上の一部に、所定のマスク層97を形成する。このマスク層97には、開口97aが形成される。開口97aは、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状である。
【0108】
次に、
図38に示すように、基材10Aの主面11Aに凹部12Aを形成する。凹部12Aの形成は、異方性エッチングを施すことにより行う。凹部12Aを形成する工程では、たとえばアルカリ水溶液を用いた異方性エッチングを行う。当該アルカリ水溶液としては、たとえばKOHやTMAHなどが挙げられる。凹部12Aは、マスク層97の開口97aに対応する形状とされ、x方向に延びている。凹部12Aは、底面121’および一対の傾斜内側面125を有する。一対の傾斜内側面125は、y方向において底面121’を挟んでいる。底面121’は、後の工程を経て、凸部12の頂面121となる部分である。凹部12Aの深さ(z方向の寸法)は、たとえば150μm以上200μm以下である。その後、マスク層97を除去する。
【0109】
次いで、
図39に示すように、グレーズ15を形成する。本実施形態では、凹部12Aにガラスペースト(第1ガラスペースト)を配置し、加熱する。本実施形態において、第1ガラスペーストの配置は、たとえばディスペンサー(図示略)によりガラスペーストを塗布することにより行う。なお、ガラスペーストの配置は、スクリーンを用いたスクリーン印刷により行ってもよい。次いで、第1ガラスペーストを加熱(焼成)することによって、第1グレーズ15B(グレーズ15)が形成される。
【0110】
次いで、
図40に示すように、凸部12を形成する。凸部12の形成は、グレーズ15をマスクとして基材10Aに異方性エッチングを施すことにより行う(異方性エッチング工程)。凸部12を形成する工程では、たとえばアルカリ水溶液を用いた異方性エッチングを行う。当該アルカリ水溶液としては、たとえばKOHやTMAHなどが挙げられる。
これにより、
図40に示すように、主面11および凸部12を有する基材10が形成される。主面11は、主面11Aと同じく(100)面である。凸部12は、頂面121、一対の傾斜内側面125、および一対の傾斜外側面122を有する。ここで、
図38に示した凹部12Aの底面121’部分は、グレーズ15をマスクとして基材10Aに異方性エッチングを施すことにより、凸部12の頂面121になる。基材10の主面11は、頂面121よりも低位(
図40の下方)にある。一対の傾斜外側面122は、y方向において頂面121および一対の傾斜内側面125を挟んでいる。
【0111】
本実施形態では、基材10Aにおいて、グレーズ15に覆われていない露出部分が除去され、一対の傾斜外側面122を有する凸部12が形成される。そして、グレーズ15は、その表面のy方向両端部分に一対のラウンド部151が形成されている。一対のラウンド部151により、グレーズ15の表面が、凸部12の各傾斜外側面122にかけて滑らかに連続させられている。その後の工程は、サーマルプリントヘッドA1の製造方法と同様である。
【0112】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0113】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA3の製造において、基材10A上に、x方向(主走査方向)に延びるグレーズ15を形成し、その後、グレーズ15をマスクとして、単結晶半導体である基材10Aに異方性エッチングを施す。その後の工程において、グレーズ15上に、x方向に配列された複数の発熱部41を形成する。グレーズ15をマスクとして異方性エッチングを施す工程において、基材10には、z方向の上方を向く主面11と、当該主面11からz方向に突出する凸部12と、が形成される。凸部12は主面11と平行な頂面121を有し、この頂面121のすべてがグレーズ15により覆われた状態となる。
【0114】
本実施形態によれば、凸部12と当該凸部12(頂面121)上に配置されるグレーズ15とについて、y方向の相対的な位置ずれを抑制することができる。したがって、凸部12および凸部12上に配置されたグレーズ15(特にx方向に沿って見たその断面形状)は、y方向(基材10,10Aなどの短手方向)の上流側と下流側の均衡がとれており、サーマルプリントヘッドA3の印字品質のバラツキを抑制することが可能である。また、凸部12は、単結晶半導体に対して異方性エッチングを施すことにより形成されるため、そのy-z断面はx方向(基材10,10Aなどの長手方向)について略一様となる。即ち、印刷媒体の発熱部41に対する押圧接触状態は、x方向各所において略一定となる。このことは、ヘッド基板1の製造ロットが異なっても変わらず、印字品質のバラツキを抑制するのに適する。
【0115】
本実施形態において、グレーズ15を形成する前に、基材10Aに、x方向に延びる凹部12Aを形成する。この凹部12Aは、異方性エッチングにより形成されており、底面121’およびy方向においてこれを挟む一対の傾斜内側面125を有する。凹部12Aの深さ(z方向の寸法)は比較的大きくされている。このような構成によれば、凹部12Aへのガラスペーストの配置によって、凹部12Aに対応する所定形状を有し、かつ厚さが十分に厚いグレーズ15を形成することができ、グレーズ15による蓄熱効果の向上を図ることができる。
【0116】
上述した各実施形態で説明したサーマルプリントヘッドをサーマルプリンタに使用することによって、次の利点を有するサーマルプリンタが得られる。第1に、サーマルプリントヘッドにおいて、凸部12および凸部12上に配置されたグレーズ15(特にx方向に沿って見たその断面形状)は、y方向(基材10,10Aなどの短手方向)の上流側と下流側との均衡がとれている。このことから、サーマルプリントヘッドの印字品質のバラツキが抑制される。したがって、印字品質のバラツキが抑制されたサーマルプリンタが得られる。第2に、サーマルプリントヘッドの発熱部41と印刷媒体との押圧接触状態は、x方向各所において略一定となる。このことから、ヘッド基板1の製造ロットが異なってもサーマルプリントヘッドによる印字品質のバラツキが抑制される。したがって、この点からも印字品質のバラツキが抑制されたサーマルプリンタが得られる。第3に、サーマルプリントヘッドにおいて、グレーズ15による蓄熱効果の向上を図ることができる。したがって、小さい消費電力で印字できるサーマルプリンタが得られる。
【0117】
本開示に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成、および、本開示に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の各工程の具体的な処理は、種々に設計変更自在である。
【0118】
上述した実施形態においては、基材10Aにグレーズ15を形成した後に基材10Aをエッチングすることによって、Siからなる凸部12が形成される。これに限らず、基材10AをエッチングすることによってSiからなる凸部12を形成した後に、凸部12の頂面121にガラスペーストを配置することもできる。この場合、たとえばディスペンサーによってガラスペーストを頂面121に吐出して、ガラスペーストを配置する。また、スクリーン印刷によって頂面121にガラスペーストを配置してもよい。その後、ガラスペーストを焼成(加熱)することによって凸部12の頂面121にグレーズ15を形成する。これらの場合には、凸部12の頂面121にグレーズ15から露出する部分が形成されうる。第1に、凸部12の頂面121のうちx方向(主走査方向)に沿う一方の端部または双方の端部にグレーズ15によって覆われていない部分が形成されることがある。第2に、凸部12の頂面121のうちy方向(副走査方向)に沿う一方の端部または双方の端部にグレーズ15によって覆われていない部分が形成されることがある。
【0119】
〔付記1〕
単結晶半導体からなる基材を準備する工程と、
前記基材の上に、主走査方向に延び、ガラス材料からなるグレーズを形成するグレーズ形成工程と、
前記グレーズをマスクとして前記基材に異方性エッチングを施す異方性エッチング工程と、
前記グレーズの上に、前記主走査方向に配列された複数の発熱部を形成する発熱部形成工程と、を備え、
前記異方性エッチング工程では、前記基材に、厚さ方向の一方を向く主面と、当該主面から突出し、かつ前記グレーズにより覆われた頂面を有する凸部と、を形成する、サーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記2〕
前記グレーズ形成工程は、前記基材の上に第1ガラスペーストを配置するステップと、当該第1ガラスペーストを加熱することで第1グレーズを形成するステップと、を含む、付記1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記3〕
前記グレーズ形成工程は、前記第1グレーズを形成するステップの後に行われ、前記第1グレーズの上に第2ガラスペーストを配置するステップと、当該第2ガラスペーストを加熱することで、前記第1グレーズよりも厚さが厚い第2グレーズを形成するステップと、を含む、付記2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記4〕
前記第1グレーズを形成するステップにおいて前記第1ガラスペーストの加熱温度である第1加熱温度は、前記第2グレーズを形成するステップにおいて前記第2ガラスペーストの加熱温度である第2加熱温度よりも低い、付記3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記5〕
前記グレーズ形成工程より前に行われ、前記基材に、前記主走査方向に沿って延びる凹部を形成する凹部形成工程をさらに備え、
前記第1ガラスペーストを配置するステップでは、前記凹部に前記第1ガラスペーストを配置する、付記2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記6〕
前記第1ガラスペーストを配置するステップおよび前記第2ガラスペーストを配置するステップでは、前記基材の上にガラスペーストを塗布する、付記3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記7〕
前記第1ガラスペーストを配置するステップおよび前記第2ガラスペーストを配置するステップでは、スクリーン印刷により前記第1ガラスペーストおよび前記第2ガラスペーストを配置する、付記3に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記8〕
前記第1ガラスペーストを配置するステップおよび前記第2ガラスペーストを配置するステップでは、スリットが形成されたメタルマスクを用いて印刷を行う、付記7に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記9〕
前記グレーズ形成工程は、前記第1ガラスペーストを配置するステップの前に行われ、前記基材の上に開口を有するドライフィルムフォトレジストを形成するステップを含み、
前記第1ガラスペーストを配置するステップでは、前記基材の上に、前記ドライフィルムフォトレジストの前記開口を経由して前記第1ガラスペーストを配置する、付記2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記10〕
前記グレーズ形成工程は、前記第1ガラスペーストを配置するステップと前記第1グレーズを形成するステップとの間に行われ、前記ドライフィルムフォトレジストを剥離するステップを含む、付記9に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記11〕
前記凸部は、副走査方向において前記頂面を挟む一対の傾斜外側面を有し、
前記第1グレーズの前記副走査方向における両端部は、前記基材の厚さ方向視において前記一対の傾斜外側面と重なっており、
前記異方性エッチング工程の後に行われ、前記第1グレーズを再び加熱する工程をさらに備える、付記9または10に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記12〕
前記凹部は、底面と、当該底面に繋がり、副走査方向において前記底面を挟む一対の傾斜内側面と、を有し、
前記一対の傾斜内側面は、前記基材の厚さ方向において前記底面から遠ざかるにつれて前記副走査方向において互いに離れる、付記5に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記13〕
前記凹部は、前記基材に異方性エッチングを施すことにより形成される、付記12に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記14〕
前記凹部の前記底面は、前記グレーズ形成工程の後に行う前記異方性エッチング工程により、前記凸部の前記頂面になる、付記13に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記15〕
前記単結晶半導体は、Siからなり、
前記主面は、(100)面である、付記1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記16〕
厚さ方向の一方を向く主面を有し、単結晶半導体からなる基材と、
前記主面の上に形成され、かつ主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記基材と前記抵抗体層との間に形成された絶縁層と、
前記基材と前記複数の発熱部との間に形成され、ガラス材料からなるグレーズと、
を備え、
前記基材は、前記主面から突出し、かつ前記主走査方向に延びる凸部を有し、
前記凸部は、前記主面と平行な頂面を有し、
前記グレーズは、前記頂面を覆っている、サーマルプリントヘッド。
〔付記17〕
前記凸部は、前記主面に繋がり、副走査方向において前記頂面を挟む一対の傾斜外側面を有し、
前記一対の傾斜外側面は、前記基材の厚さ方向において前記主面から遠ざかるにつれて前記副走査方向において互いに近づくように前記主面に対して傾斜している、付記16に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記18〕
前記一対の傾斜外側面は、前記頂面に繋がっている、付記17に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記19〕
前記一対の傾斜外側面はそれぞれ、互いに繋がる第1傾斜面および第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、前記主面に繋がり、かつ前記主面と前記第2傾斜面とに挟まれており、
前記第2傾斜面は、前記頂面に繋がり、かつ前記第1傾斜面と前記頂面とに挟まれており、
前記主面に対する前記第2傾斜面の傾斜角は、前記主面に対する前記第1傾斜面の傾斜角よりも小さい、付記18に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記20〕
前記グレーズは、前記各第2傾斜面の少なくとも一部を覆っている、付記19に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記21〕
前記凸部は、前記頂面に繋がり、前記副走査方向において前記頂面を挟む一対の傾斜内側面を有し、
前記一対の傾斜内側面は、前記基材の厚さ方向において前記頂面から遠ざかるにつれて前記副走査方向において互いに離れるように前記頂面に対して傾斜しており、
前記グレーズは、前記頂面および前記一対の傾斜内側面により囲まれた領域に配置されている、付記17に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記22〕
前記グレーズは、前記頂面の上に形成された第1グレーズと、前記第1グレーズの上に形成された第2グレーズと、を含む、付記16ないし21のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記23〕
前記グレーズは、前記頂面のすべてを覆っている、付記16ないし22のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記24〕
付記16ないし23のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドと、
前記複数の発熱部に対向して配置されたプラテンと、を備える、サーマルプリンタ。
【符号の説明】
【0120】
A1,A1’,A2,A3:サーマルプリントヘッド
1 :ヘッド基板
10 :基材
10A :基材
11 :主面
11A :主面
12 :凸部
12A :凹部
121 :頂面
121’ :底面
122 :傾斜外側面
123 :第1傾斜面
124 :第2傾斜面
125 :傾斜内側面
15 :グレーズ
15A :第1ガラスペースト
15B :第1グレーズ
15C :第2ガラスペースト
15D :第2グレーズ
151 :ラウンド部
19 :絶縁層
2 :保護層
21 :パッド用開口
3 :電極層
3A :導電膜
31 :個別電極
311 :電極パッド部
32 :共通電極
323 :共通部
324 :櫛歯部
4 :抵抗体層
4A :抵抗体膜
41 :発熱部
5 :接続基板
59 :コネクタ
61,62:ワイヤ
7 :ドライバIC
78 :保護樹脂
8 :放熱部材
91,93:スクリーン
91a,93a:スリット
92 :スペーサ
95,97:マスク層
96 :マスク層(ドライフィルムフォトレジスト)
95a,96a,97a:開口
99 :プラテンローラ