(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】連結部材およびそれを用いたミラーキャビネット
(51)【国際特許分類】
A47G 1/02 20060101AFI20240105BHJP
A47B 67/02 20060101ALI20240105BHJP
A47K 1/02 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A47G1/02 L
A47B67/02 502E
A47K1/02 B
(21)【出願番号】P 2020045656
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 颯
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 敦
(72)【発明者】
【氏名】日影 正弘
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-077576(JP,U)
【文献】実開平05-037173(JP,U)
【文献】特開2019-141274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 1/00~ 1/24
A47B 67/00~67/02
A47K 1/00~ 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡の下端を保持して被連結体に連結する連結部材であって,
前記鏡の前面より前に位置する前壁と,
前記鏡の後面より後ろに位置する後壁と,
前記鏡の下面より下に位置する基部とを有し,
前記基部における少なくとも前記鏡の幅方向の中央を含む領域に,前記鏡の下面に接しない穴部が形成されて
おり,
前記基部に,
前記前壁と前記後壁とを接続する連絡部と,
前記鏡の下面に向かって凸状をなしている中間凸部とが形成されており,
前記連絡部の頂部は前記中間凸部の頂部より低く,
前記連絡部および前記中間凸部に対して前記鏡の幅方向の両側に,上下方向に貫通する前記穴部が配置されており,
前記鏡の幅方向に対して,前記中間凸部が存在する位置と,前記連絡部は存在するが前記中間凸部は存在しない位置と,前記中間凸部も前記連絡部も存在しない位置とがある連結部材。
【請求項2】
請求項
1に記載の連結部材であって,
前記中間凸部は,前記前壁と前記後壁との少なくとも一方から前記穴部により隔てられている連結部材。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の連結部材であって,
前記中間凸部は,前記鏡の幅方向の中央に対して一方の端部寄りの位置と他方の端部寄りの位置とに設けられている連結部材。
【請求項4】
請求項
1から請求項
3までのいずれか1つに記載の連結部材であって,
前記基部に,
前記鏡の幅方向の一方の端部にて前記鏡の下面を支持する第1端部と,
前記鏡の幅方向の他方の端部にて前記鏡の下面を支持する第2端部とが形成されており,
前記中間凸部は,前記第1端部と前記第2端部とのいずれからも前記穴部により隔てられており,
前記第1端部,前記第2端部,および前記中間凸部の各頂部が,正面視にて同一高さである連結部材。
【請求項5】
内部に収納空間が形成されたキャビネット本体と,
前記キャビネット本体の前面に配置された鏡と,
前記キャビネット本体と前記鏡とを連結する連結部材とを有し,
前記連結部材は,請求項1から請求項
4までのいずれか1つに記載のものであるミラーキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は,連結部材およびそれを用いたミラーキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,前面が鏡となっており内部に収納空間が形成されているミラーキャビネットが使用されている。特許文献1に「収納棚」として記載されているものもその一例である。同文献の収納棚では,鏡の上端および下端に連結部材を組み付けている。この連結部材を介して鏡を収納棚の本体の前面に開閉扉状に取り付けている。このうち下端の連結部材には,前壁と後壁とが設けられている。これらにより鏡の下端を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には,次のような問題点があった。鏡と連結部材との接触箇所に水分が滞留することがある。水分との接触により鏡に汚染,劣化が生じることがある。例えばシケと称されるような斑点状の変色箇所が生じる。これは鏡の外観に影響する。特に,下端の連結部材付近は,滞留水分の影響を受けやすい。この場所はユーザーの視野にも入りやすく目立ってしまう。
【0005】
本明細書の開示技術は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,鏡との接触箇所に水分が滞留しにくい連結部材およびそれを用いたミラーキャビネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における連結部材は,鏡の下端を保持して被連結体に連結する連結部材であって,鏡の前面より前に位置する前壁と,鏡の後面より後ろに位置する後壁と,鏡の下面より下に位置する基部とを有し,基部における少なくとも鏡の幅方向の中央を含む領域に,鏡の下面に接しない穴部が形成されているものである。
【0007】
本開示技術の別の一態様におけるミラーキャビネットは,内部に収納空間が形成されたキャビネット本体と,キャビネット本体の前面に配置された鏡と,キャビネット本体と鏡とを連結する前述の態様の連結部材とを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るミラーキャビネットの斜視図である。
【
図2】実施の形態における鏡アセンブリの分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る連結部材の斜視図(その1)である。
【
図4】実施の形態に係る連結部材の斜視図(その2)である。
【
図5】実施の形態に係る連結部材の側視断面図(その1)である。
【
図6】実施の形態に係る連結部材の側視断面図(その2)である。
【
図7】実施の形態に係る連結部材の側視断面図(その3)である。
【
図8】実施の形態に係る連結部材の正面視断面図である。
【
図9】実施の形態に係る連結部材の正面視での断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示技術を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,
図1に示すミラーキャビネット16として本開示技術を具体化したものである。
図1のミラーキャビネット16は,キャビネット本体15と鏡アセンブリ1とを有している。キャビネット本体15は,前面が開放されている箱状の部材であり内部は収納空間となっている。
【0010】
鏡アセンブリ1は
図2に示されるように,鏡10の上端および下端に連結部材20を取り付けたものである。鏡アセンブリ1は,鏡10をユーザーが見やすい位置に配置する役割と,キャビネット本体15の前面を閉鎖する役割とを有している。鏡10は,鏡本体板11の裏面に裏板12を貼り合わせたものである。貼り合わせは,両面テープあるいは接着剤による。
【0011】
連結部材20は,鏡10の上端および下端を保持するとともに,鏡10を被連結体であるキャビネット本体15に連結するための部材である。以下,下側の連結部材20に着目して説明する。下側の連結部材20は,鏡10の下端をその幅方向の全体にわたって保持する部材である。
図2中では,キャビネット本体15への取り付けのための蝶番29を省略して示している。
【0012】
単独での連結部材20を
図3,
図4に示す。
図4は,
図3よりも高い角度から連結部材20を見た斜視図である。
図3,
図4に示されるように連結部材20には,基部40と,前壁22と,後壁23とが設けられている。基部40は,鏡10の下端の下に位置する部位である。前壁22は,鏡10における鏡本体板11の前面より前に位置する部位である。後壁23は,鏡10の後面より後ろに位置する部位である。本形態では前述のように裏板12を有する鏡10を使用しているので,後壁23は裏板12よりさらに後ろに位置している。
図3,
図4における連結部材20にはこれらの他に,中間壁24も設けられている。中間壁24は,鏡本体板11と裏板12との間に位置する部位である。
【0013】
図4に現れているように,基部40には,幅方向右端の第1端部41と,左端の第2端部42とが設けられている。第1端部41と第2端部42との間の幅方向中央の領域には,穴部43が形成されている。基部40にはさらに,中間凸部44が形成されている。中間凸部44は,幅方向中央より右寄りの位置と左寄りの位置との2箇所に設けられている。2箇所の中間凸部44のいずれも,その幅方向中央の両隣に穴部43が配置されている。中間凸部44は,第1端部41と第2端部42とのいずれからも穴部43により隔てられている。本形態の連結部材20では,第1端部41,中間凸部44,中間凸部44,第2端部42の4箇所で鏡10の下面を支持する。
【0014】
連結部材20の側視断面図を
図5に示す。
図5に現れている断面は,連結部材20の幅方向における中間凸部44が存在する位置(後出の
図8中のA-A位置)でのものである。中間凸部44は,鏡本体板11の下面13に向かって凸状の形状の部位である。連結部材20に鏡10を装着した状態では,
図5において前壁22と中間壁24との間に鏡本体板11の下端が挿し込まれ,中間壁24と後壁23との間に裏板12が挿し込まれる。
【0015】
図5に示されるように,中間凸部44と前壁22との間は穴部43により隔てられている。中間凸部44と中間壁24との間も穴部43により隔てられている。このため,
図5中における鏡本体板11の下面13は,その前後方向における中央部分でのみ,中間凸部44と接している。下面13のうち前後方向における前端寄りの部分および後端寄りの部分は,空気に面している。
【0016】
図4に戻って,第1端部41と第2端部42との間には,中間凸部44以外に連絡部45が設けられている。連絡部45は,連結部材20における前壁22と中間壁24とを接続する部位である。ただし連絡部45の頂部は,中間凸部44の頂部より低い。このため連絡部45は,鏡10が装着されている状態でも下面13には接しない。この状況を
図6に示す。
図6は,連結部材20の幅方向における連絡部45が存在する位置(
図8中のB-B位置)での側視断面図である。
図6では,鏡本体板11の下面13が,前後方向の全体にわたって空気に面している。
【0017】
図7は,連結部材20の幅方向における中間凸部44も連絡部45も存在しない位置(
図8中のC-C位置)での側視断面図である。この位置では穴部43が上下方向に貫通している。
図7においても,鏡本体板11の下面13が前後方向の全体にわたって空気に面している。
【0018】
図8に,連結部材20の正面視での断面図を示す。
図8に示されている断面の形状は,
図5中における中間凸部44のある位置(D-D位置)でのものである。この図では,第1端部41,2箇所の中間凸部44の頂部,第2端部42の高さが同一の高さとなっている。連絡部45の頂部は,前述のように中間凸部44の頂部より低い。これにより鏡10の下面をガタつきなく支持できるようになっている。以上,
図2中の下側の連結部材20に着目してその形状を説明した。
図2中の上側の連結部材20としては,下側の連結部材20を上下に反転した形状のものを用いることができる。
【0019】
図1に示した本形態のミラーキャビネット16では,上記のように説明した上下の連結部材20により鏡10が保持され,鏡アセンブリ1を構成している。鏡10への連結部材20の取り付けは,連結部材20における前壁22と後壁23との間に鏡10の上端,下端を挿し込むだけである。このとき連結部材20の中間壁24が鏡10における鏡本体板11と裏板12との間に入り込むことになる。鏡アセンブリ1は連結部材20により,キャビネット本体15に対して開閉可能な形で取り付けられている。
【0020】
本形態のミラーキャビネット16では,連結部材20の上記の形状により,鏡10と連結部材20との取り付け箇所の排水性がよい。使用状態において鏡本体板11の前面と前壁22との間を伝って上から水分が降りてきた場合,その水分はそのまま前壁22を伝ってさらに下降していくことになるからである。下面13のうち前後方向における前壁22寄りの部分が空気に面しているからである。鏡本体板11の後面と中間壁24との間においても同様のことが起こる。
【0021】
特に,下側の連結部材20においてはこの排水性の良さは重要である。鏡10の前面に洗浄のために水を掛けたような場合に,その水は鏡10の前面に沿って下側の連結部材20に向かって落下していくからである。結露により鏡10の前面に水が発生した場合も同様である。結露については鏡本体板11の後面上にも起こりうる。
【0022】
もし,鏡本体板11の下面13の全体が連結部材20の基部40に接しているような構成であると,鏡本体板11の下端に達した水分は暫くそのままそこに滞留することとなる。このことにより鏡10の前面の下端付近に,シケと称される変色箇所が生じる等,外観の劣化が生じうる。この場所はユーザーから見て目立つ場所であり,品質感の低下は大きい。
【0023】
しかし本形態では上記の理由により排水性が良好であるため,下側の連結部材20における水分の滞留がほとんどない。このため水分が滞留することによる鏡本体板11の外観の劣化は生じない。特に本形態では,鏡10の幅方向における両端を除いた領域にてこの良好な排水性が実現されている。このため,ユーザーの目線上で特に目立ちやすい幅方向の中央を含む領域にて,外観の劣化が生じにくいようになっている。前壁22の後面あるいは中間壁24の後面に沿って鏡本体板11の下面よりさらに下方に落下した水分は,穴部43における
図7等の貫通箇所を通して下方に排出される。
【0024】
連結部材20は一般的には合成樹脂の成型品である。このため,正面視にてわずかに湾曲した形状のものができてしまう場合がある。しかしその湾曲の程度は,製造条件が同一であればほぼ一定である。このことにより,
図9に示すように,湾曲していたとしても第1端部41,中間凸部44の頂部,第2端部42の高さが同一となるようにすることができる。成型のための金型において中間凸部44の高さを調整すればよい。これにより,成型した連結部材20が湾曲していたとしても,鏡10の下面をガタつきなく支持できる。
図9では肉眼で認識できるように湾曲をやや大げさに描いている。実際には現物を肉眼で見ても分からない程度である。
【0025】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,連結部材20の基部40の少なくとも一部に穴部43を設けている。これにより鏡10の下端に達した水分がそのまま下に落下するようにしている。このようにして,鏡10との接触箇所に水分が滞留しにくい連結部材20およびそれを用いたミラーキャビネット16が実現されている。
【0026】
本実施の形態は単なる例示にすぎず,本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,連結部材20の基部40のうち第1端部41,第2端部42の箇所は,不可欠な訳ではない。つまり鏡本体板11の下面13を中間凸部44のみで支持するものであってもよい。あるいは,第1端部41,第2端部42が存在するものの,
図4等に現れている中間凸部44と同様の形状であってもよい。これらのようにすると,鏡10の幅方向の全体において,水分の滞留による外観の劣化が抑止される効果がある。中間凸部44の形状を,幅方向にある程度の長さを持つ形状としてもよい。
【0027】
中間凸部44については,その個数は問わない。その配置も必ずしも左右対称でなくても良い。ただし2個以上である場合,鏡10の幅方向の中心に対して右端寄りの位置と左端寄りの位置との両方にあった方が,鏡10のガタつき防止という観点では優れている。穴部43については,必ずしも連結部材20を上方から見たときに貫通して下側が見える形状でなくてもよい。穴部43の形状を有底として横向きに水抜き形状を設けてもよい。
【0028】
上側の連結部材20は,必ずしも上記の下側の連結部材20の特徴を備えたものでなくてもよい。鏡10は,裏面に裏板12を有する2枚構成のものでなくてもよい。鏡10が鏡本体板11のみの1枚ものである場合,中間壁24は不要でありその位置に後壁23を設ければよい。鏡アセンブリ1のキャビネット本体15に対する開閉動作の態様については,図示した右ヒンジ型に限らず,左ヒンジ型でもよいし上ヒンジ型でもよい。スライド移動方式でもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 鏡アセンブリ 16 ミラーキャビネット 41 第1端部
10 鏡 20 連結部材 42 第2端部
11 鏡本体板 22 前壁 43 穴部
13 下面 23 後壁 44 中間凸部
15 キャビネット本体 40 基部 45 連絡部