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特許7414296電子機器、電池制御方法及び電池制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電子機器、電池制御方法及び電池制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240109BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240109BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/00 B
H02J7/00 302D
H01M10/48 301
H01M10/44 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021151124
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043467
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-068607(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145616(WO,A1)
【文献】特開2011-061391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記二次電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記二次電池に対して電力を供給する外部電源の接続有無を検知する接続検知部と、
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、前記二次電池を放電させる電力制御部と、
を備えた電子機器。
【請求項2】
前記電力制御部が、前記二次電池の充電を停止するとともに、前記二次電池に貯蓄された電力を電子機器自身が消費するように制御することで前記二次電池を放電させる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記二次電池の放電によって前記二次電池の充電率が所定の許容閾値未満となった場合に、外部電源から供給される電力を電子機器が利用するように前記電力制御部が制御する請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記二次電池の放電によって前記二次電池の充電率が所定の再充電開始閾値未満となった場合に、前記二次電池の充電率が所定の再充電停止閾値に到達するまで、前記二次電池の充電を再開するように、前記電力制御部が制御する請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記外部電源の接続が解除された後に、前記外部電源が再接続された場合に、前記二次電池の充電率が100%に到達するまでの充電を許容するように、前記電力制御部が制御する請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記二次電池の温度に関する第1の温度閾値と前記二次電池の充電率に関する第1の充電率閾値と前記状態の継続時間に関する第1の時間閾値とを用いる第1の判定パターンと、前記第1の温度閾値とは異なる第2の温度閾値と前記第1の充電率閾値とは異なる第2の充電率閾値と前記第1の時間閾値とは異なる第2の時間閾値とを用いる第2の判定パターンとの、いずれか一方又は両方を満足した場合に、前記電力制御部が前記二次電池を放電させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されていない場合には、前記二次電池に貯蓄された電力の電子機器自身による消費を加速させるように、前記電力制御部が制御する請求項1~6のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
電子機器自身による消費によって前記二次電池の充電率が所定の安全閾値未満となった場合に、前記二次電池に貯蓄された電力の電子機器自身による消費を抑えるように、前記電力制御部が制御する請求項1~7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
二次電池と、
前記二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記二次電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記二次電池に対して電力を供給する外部電源の接続有無を検知する接続検知部と、
を備えた電子機器を、
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、前記二次電池を放電させるように制御するステップを含む、
電池制御方法。
【請求項10】
二次電池と、
前記二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記二次電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記二次電池に対して電力を供給する外部電源の接続有無を検知する接続検知部と、
を備えた電子機器に対して、
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、前記二次電池を放電させるように制御する処理を、
コンピュータに実行させる電池制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、電池制御方法及び電池制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやモバイルルータなどの電子機器は、充電/放電が可能なリチウムイオン二次電池を使用していることが多い。このような二次電池の充電/放電を含む電池制御に関して様々な技術が開発されている(特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-061391号公報
【文献】特開2002-231319号公報
【文献】国際公開第2015/056634号
【文献】国際公開第2014/104280号
【文献】特開2015-037011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の分析は、本発明の観点からなされたものである。なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【0005】
上記のリチウムイオン二次電池は、温度が高い環境下やフル充電(充電率が高い)に近い状態で長期間使用されると、内部電極と電解質の副反応によりガスが発生し、電池が膨れてしまうという問題点がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1、3~5の技術は二次電池の性能劣化を抑えることを主目的とした技術である。特許文献2の技術は外力による電池ケースの変形を検知した際の電池制御に関する技術である。仮に、特許文献1~5の技術が電池の膨らみという問題点に寄与できたとしても、電子機器の二次電池という視点では対応不十分である。
【0007】
そこで、本発明では、二次電池の膨らみのリスクを低減させることに寄与する、電子機器、電池制御方法及び電池制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の視点によれば、
二次電池と、
前記二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記二次電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記二次電池に対して電力を供給する外部電源の接続有無を検知する接続検知部と、
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、前記二次電池を放電させる電力制御部と、
を備えた電子機器が提供される。
【0009】
本発明の第2の視点によれば、
二次電池と、
前記二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記二次電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記二次電池に対して電力を供給する外部電源の接続有無を検知する接続検知部と、
を備えた電子機器を、
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、前記二次電池を放電させるように制御するステップを含む、
電池制御方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の視点によれば、
二次電池と、
前記二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記二次電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記二次電池に対して電力を供給する外部電源の接続有無を検知する接続検知部と、
を備えた電子機器に対して、
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、前記二次電池を放電させるように制御する処理を、
コンピュータに実行させる電池制御プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の各視点によれば、二次電池の膨らみのリスクを低減させることに寄与する、電子機器、電池制御方法及び電池制御プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一概要を説明するための図である。
図2】本発明の電子機器10の一構成を示すブロック図である。
図3】充電モードにおける電力の流れを示す図である。
図4】放電モードにおける電力の流れを示す図である。
図5】非接続モードにおける電力の流れを示す図である。
図6】電力制御部15による処理の流れを示すフローチャート図である。
図7】外部電源モードにおける電力の流れを示す図である。
図8】二次電池11の充電率と各モードとの関係を示す図である。
図9】電力制御部15による処理の流れを示すフローチャート図である。
図10】電力制御部15による処理の流れを示すフローチャート図である。
図11】二次電池11の膨れに対するリスクに対する温度又は充電率の影響を示す図である。
図12】電力制御部15による処理の流れを示すフローチャート図である。
図13】温度又は充電率と計算値との関係を示したグラフである。
図14】電力制御部15による処理の流れを示すフローチャート図である。
図15】電力制御部15による処理の流れを示すフローチャート図である。
図16】本発明のプログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のとり得る好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、各図におけるブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)、電流などの流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。さらに、本願開示に示す回路図、ブロック図、内部構成図、接続図などにおいて、明示は省略するが、入力ポート及び出力ポートが各接続線の入力端及び出力端のそれぞれに存在する。入出力インターフェイスも同様である。
【0014】
先ず、本発明の一概要について説明する。なお、本願に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明の限定を意図するものではない。
【0015】
図1に示すように、本発明の一概要に関する電子機器10は、二次電池11と、温度測定部12と、充電率取得部13と、接続検知部14と、電力制御部15とを備える。温度測定部12は、二次電池11の温度を測定する。充電率取得部13は、二次電池11の充電率を取得する。接続検知部14は、二次電池11に対して電力を供給する外部電源(図示しない)の接続有無を検知する。電力制御部15は、二次電池11の温度が所定の閾値以上であり、かつ、二次電池11の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、二次電池11を放電させる。
【0016】
この電子機器10によれば、二次電池11の膨らみのリスク、特に充電を起因とする高温化による二次電池11の膨らみのリスクを低減させることができる。
【0017】
すなわち、二次電池11が膨らむという現象は、二次電池11の温度が高ければ高いほど、また二次電池11内の電圧(充電率)が高ければ高いほど、また高温かつ高充電率の継続時間が長ければ長いほど発生し易い。高温かつ高充電率による二次電池11へのストレスは蓄積されていき、限界を超えると二次電池11が膨れるに至る。特にスマートフォンやモバイルルータに広く使われているリチウムイオンポリマー二次電池は、外装がラミネート材であるため、ストレス限界を超えると、急激に大きな膨れに至ってしまうことがある。
【0018】
近年、電子機器10の通信速度の高速化が進み、内部発熱が高くなる一方で、電子機器10の内部の高密度実装化も進み、二次電池11の温度が高くなり易い傾向にある。更に、モバイルバッテリーなどの外部電源の普及により、充電しながら鞄に入れて使用されるケースが増えている。これら外部電源を接続した状態では、外部電源側からの電源供給が優先されるため、二次電池11からの放電が少ない。つまり、電池の膨れリスクが大きい、高温かつ高充電率が長時間継続してしまうシーンが増えることで、電池へのストレスが蓄積されていき、より短い期間で膨れが発生してしまう懸念がある。二次電池11が膨れると、内蔵電池式の機器では容易に電池交換ができない。また、電子機器10の電池カバーが外れるなど、膨れた状態を見てユーザが安全性面の不安を抱えてしまう懸念もある。
【0019】
ここで、本発明の電子機器10は、上述のように二次電池11の温度が所定の閾値以上であり、かつ、二次電池11の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、二次電池11を放電させている。外部電源が接続されている場合には、電子機器10は、二次電池11を放電させたとしても、外部電源から供給される電流によって電子機器10自身の機能のために使用する電力を賄うことができるため、電子機器10が電力不足に陥ることはない。また、外部電源が接続されていない場合には、二次電池11を放電させずに、二次電池11が貯蓄した電力を電子機器10自身の機能に使用することで、二次電池11が膨らむリスクを低減しつつ、貯蓄した電力の効率的利用を達成することができる。
【0020】
言い換えると、特許文献1~5の技術では、単に二次電池11の温度及び充電率のみに基づいて、二次電池11を放電させるか否かを判定することになる。このような技術を外部電源が接続されていない電子機器10に適用した場合には、放電後に残った電力しか電子機器10自身の機能に使用することができず、電力不足(充電不足)になり易い。
【0021】
[実施形態1]
以下では、上記の一概要において説明した電子機器10をより具体的に説明する。電子機器10は、外部電源と接続又は接続解除され得る。具体的には、電子機器10は、スマートフォン、モバイルルータ、ウェラブル端末機、タブレット機器、音楽プレーヤー、ノートパソコンなどのモバイル電子機器によって例示され、充電の際に外部電源と接続される。なお、外部電源と接続又は接続解除され得る電子機器10であれば、モバイル電子機器に限らず固定電子機器(例えば定期的に充電のために外部電源と接続される固定電子機器)であっても良い。言い換えると、ユーザが意図的に外部電源と接続することによって充電される電子機器10であるとも言える。
【0022】
外部電源は、AC(alternating current)アダプタやモバイルバッテリー、パソコンなどが想定され、接続検知部14とケーブルを介して接続されて電力を供給する。
【0023】
上記の一概要と同様に実施形態1の電子機器10は、二次電池11と、温度測定部12と、充電率取得部13と、接続検知部14と、電力制御部15とを備え、更に、実施形態1の電子機器10は電源回路部16と電子機能部17とを備える(図2参照)。
【0024】
二次電池11は、例えば充放電が可能なリチウムイオン電池であり、電子機器10が外部電源と接続されることで、電力制御部15による制御の下で充電される。また、二次電池11は、電子機器10が外部電源と接続されていない状態では、電子機能部17に対して貯蓄した電力を供給する。
【0025】
温度測定部12は、二次電池11の温度を測定するセンサ等であり、二次電池11と当接するように又は二次電池11の近傍に配置され、例えばサーミスタの出力値を温度に換算する。
【0026】
充電率取得部13は、二次電池11に対して入出力される電荷量を監視して、二次電池11の充電率(残容量)を取得する。一般的にはクーロンカウンタやガスゲージIC(Integrated Circuit)などの名称で知られている。充電率に関する情報は、例えば、スマートフォンのディスプレイ上に%として表示される情報に相当し、フル充電状態を充電率100%、機器の起動が不能となる状態を充電率0%としている。
【0027】
接続検知部14は、電子機器10に対する外部電源の接続有無を検知する。具体的には、接続検知部14は、外部電源との接続インターフェイスとして構成される。例えば、接続検知部14は、外部電源がパソコンである場合にはUSB(Universal Serial Bus)コネクタに相当する。
【0028】
電力制御部15は、電源回路部16を制御して電子機器10の各構成要素に対する電力供給を制御する。具体的には、電力制御部15は、「外部電源が接続されている」が「二次電池11の充電率が所定の閾値未満」であるか「二次電池11の温度が所定の閾値未満」である場合に、二次電池11を充電する制御を行う。なお、以下ではこの状態を「充電モード」と称する。また、電力制御部15は、「外部電源が接続されている」、「二次電池11の充電率が所定の閾値以上」、「二次電池11の温度が所定の閾値以上」、という3つの状態が所定の時間にわたって継続した場合に、二次電池11を放電させる制御を行う。なお以下ではこの状態を「放電モード」と称する。また、電力制御部15は、「外部電源が接続されていない」場合には、二次電池11に貯蓄された電力を使用する制御を行う。なお以下ではこの状態を「非接続モード」と称する。
【0029】
電源回路部16は、外部電源からの入力電圧を所定の電圧に変換するDCDC(direct current to direct current)コンバータ16a、二次電池11への充電制御を行う充電制御部16b、外部電源からの供給電流量を決定する供給電流設定部16cを有する。電源回路部16は、電力制御部15による制御を受けて電力の流れ及び電圧・電流を切り替える。
【0030】
電子機能部17は、電子機器10としての機能を実行して電力を消費する構成要素であり、例えば、スマートフォン自体の機能を実行するCPU(Central Processing Unit)、ディスプレイなどである。なお、電子機能部17による電力の消費は電子機器10自身による消費とも言い換えられる。
【0031】
ここで、電子機器10における電力の流れについて図3~5を用いて説明する。図3は、「充電モード」における電力の流れを示す図である。図4は、「放電モード」における電力の流れを示す図である。図5は、「非接続モード」における電力の流れを示す図である。なお、図3~5では、温度測定部12及び充電率取得部13は省略している。
【0032】
「充電モード」
図3に示すように、「充電モード」では、外部電源から供給される電力は、接続検知部14を介して電源回路部16に入力される。ここで、DCDCコンバータ16aは、入力された電力を充電制御部16bと供給電流設定部16cとに振り分ける。充電制御部16bは入力された電力を二次電池11に対して入力して充電する。供給電流設定部16cは入力された電力を電子機能部17に適した電流(例えば2000mA)に変換して電子機能部17に入力する。なお、供給電流設定部16cから入力される電力が電子機能部17において不足する場合には、二次電池11から電力を補うようにしてもよい(図3破線)。また、二次電池11からの電力も供給電流設定部16cを介して電流を調節しても良い。
【0033】
「放電モード」
図4に示すように、「放電モード」では、外部電源から供給される電力は接続検知部14を介して電源回路部16に入力されるが、DCDCコンバータ16aは入力された電力を供給電流設定部16cに対してのみ入力する。供給電流設定部16cは入力された電力を電子機能部17にとって不十分な電流(例えば100mA)に変換して電子機能部17に入力する。電子機能部17では電力が不足するため、二次電池11は不足分を電子機能部17に対して供給する。ここで、二次電池11にとっては、外部電源からの電力供給を受けずに電子機能部17に対して電力を供給することになるため、結果的に二次電池11が放電される。また、二次電池11に外部電源からの電力が供給されないため、充電に起因する二次電池11の発熱も防止することができ、二次電池11が膨むリスクを低減することができる。なお、二次電池11の放電は、電子機能部17による電力利用に限らず、例えば放電管を利用しても良い。
【0034】
「非接続モード」
図5に示すように、「非接続モード」では、二次電池11からのみ電子機能部17に対して電力が供給される。ここで着目すべきは、二次電池11にとっては「放電モード」よりも電子機能部17に対して供給する電力が多い点である。すなわち、「非接続モード」ではあえて貯蓄した電力を別途放電しなくても、二次電池11は「放電モード」よりも多量に電力が放電されている状態になっている。
【0035】
次に、電力制御部15による処理の流れについて図6を用いて説明する。電力制御部15は、接続検知部14、充電率取得部13及び温度測定部12を監視している。なお、充電率に関する閾値は例えば98%であり、温度に関する閾値は例えば60℃である。電力制御部15は、外部電源の接続が無い場合(ステップS01、No)、二次電池11の充電率が閾値未満の場合(ステップS02、No)、温度が閾値未満の場合(ステップS03、No)は、いずれもステップS01~S03を繰り返す。言い換えると、電力制御部15は、接続検知部14、充電率取得部13及び温度測定部12の監視を継続する。
【0036】
一方で、外部電源が接続されており、かつ充電率が閾値以上であり、かつ温度が閾値以上である場合には(ステップS01~03、全てYes)、電力制御部15はタイマを作動させる(ステップS04)。そして、電力制御部15は、外部電源接続状態、かつ高充電率で高温の状態の継続時間をカウントしつつ、監視を継続する(ステップS01~S03を繰り返す)。
【0037】
予め設定された時間(例えば10分)以内に、外部電源接続状態、かつ高充電率で高温の状態が解消された場合には(ステップS01~03のいずれかがNo)、電力制御部15はタイマをリセットして、監視を継続する(ステップS01~S03を繰り返す)。
【0038】
外部電源接続状態、かつ高充電率で高温の状態が予め設定された時間を超えて継続した場合には(ステップS05、Yes)、電力制御部15は「放電モード」へ移行する(ステップS06)。すなわち、電力制御部15は、入力された電力を供給電流設定部16cに対してのみ入力するようにDCDCコンバータ16aを制御する。また、電力制御部15は、電子機能部17にとって不十分な電流に変換して電子機能部17に電力を入力するように供給電流設定部16cを制御する。
【0039】
なお、「充電モード」は、ステップS02又はステップS03のいずれかがNoの場合に相当する。また、「非接続モード」は、ステップS01がNoの場合に相当する。
【0040】
以上のように、実施形態1の電子機器10では、二次電池11の温度が所定の閾値以上であり、かつ、二次電池11の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、二次電池11を放電させている。言い換えると、従来の電池制御と比較して外部電源が接続されているか否かの判定要素が加えられており、外部電源が接続されていない場合には本発明では放電を行わない。そのため、従来の電池制御では放電後に充電不足になりやすいという対応不十分さが本発明では解消される。
【0041】
また、外部電源が接続されていないにもかかわらず、二次電池11の温度が高いという状態は、二次電池11の充電に起因するものではなく、その他の環境的要素に起因するものである。従って、本発明は二次電池11の充電に起因する電池の膨らみのリスクを低減する技術であるともいえる。なお、外部電源が接続されていない場合には、電子機器10自身の消費によって二次電池11に貯蓄された電力が消費されるため、いわば放電と同様の状態であり、電池の膨らみのリスクが低減される。
【0042】
[実施形態2]
実施形態1では、電子機器10が「放電モード」へ移行するまでを説明した。「放電モード」をそのまま継続するといずれ二次電池11に貯蓄された電力が空になる。そのため、実施形態2では、「放電モード」へ移行した後の制御について説明する。
【0043】
実施形態2の電子機器10の構成は、図2に示す実施形態1の電子機器10と同様である。
【0044】
実施形態2では、電力制御部15は、充電率取得部13を監視し、二次電池11の充電率が所定の許容閾値未満になると、「放電モード」から「外部電源モード」へ移行する。ここで、許容閾値とは二次電池11が膨むリスクが十分に低減されたと考えらえる充電率(例えば80%)である。
【0045】
「外部電源モード」
外部電源モードは、二次電池11の放電によって二次電池11の充電率が所定の許容閾値未満となった場合に、外部電源から供給される電力を電子機器10が利用するように電力制御部15が制御するモードである。具体的には、図7に示すように、「外部電源モード」では、外部電源から供給される電力は接続検知部14を介して電源回路部16に入力されるが、DCDCコンバータ16aは入力された電力を供給電流設定部16cに対してのみ入力する。供給電流設定部16cは入力された電力を電子機能部17に適した電流(例えば2000mA)に変換して電子機能部17に入力する。そのため、二次電池11から電子機能部17に対する電力供給が停止される。二次電池11にとっては外部電源からの電力供給を受けないが、自身からの電力供給も停止されるため、貯蓄している電力を見かけ上維持することになる。なお、厳密には二次電池11から漏れる電流が存在するため、二次電池11に貯蓄された電力は徐々に少なくなり、充電率が低下する。
【0046】
そして、電力制御部15は、充電率取得部13を監視し、二次電池11の充電率が所定の再充電開始閾値未満になると、「外部電源モード」から「再充電モード」へ移行して二次電池11の充電を再開する。その後、二次電池11の充電率が所定の再充電停止閾値以上になると、電力制御部15は、「再充電モード」から再び「外部電源モード」へ移行する。その後は、電力制御部15は、「外部電源モード」と「再充電モード」との間でモード移行を繰り返す。ここで、再充電開始閾値とは、二次電池11に貯蓄された電力が空になるのを防止するための閾値であり、例えば60%である。また、再充電停止閾値とは二次電池11がフル充電になるのを防止するための閾値である。なお、充電率に関する各閾値は、二次電池11の膨らみ易さなどに基づいて各々設定、変更され得るが、基本的には、実施形態1の閾値>許容閾値>再充電停止閾値>再充電開始閾値に設定される。
【0047】
「再充電モード」
再充電モードは、二次電池11の放電によって二次電池11の充電率が所定の再充電開始閾値未満となった場合に、二次電池11の充電率が所定の再充電停止閾値に到達するまで、二次電池11の充電を再開するように、電力制御部15が制御するモードである。具体的には、「再充電モード」では、図3に示す「充電モード」と同様に外部電源から供給される電力が充電制御部16bと供給電流設定部16cとに振り分けられ、二次電池11が充電される。ここで、「充電モード」と異なる点は、電力制御部15が充電率取得部13を監視して、二次電池11の充電率が再充電停止閾値以上になると二次電池11の充電を停止することにある。すなわち、再充電を停止せずに二次電池11をフル充電した場合には、再び充電に起因する二次電池11の発熱が生じて、二次電池11が膨らむリスクが高まる。二次電池11の充電率を再充電停止閾値(60%)以上かつ再充電停止閾値(70%)未満に制御することで、二次電池11の膨らみを防止するとともに、二次電池11に貯蓄される電力を維持することができる。
【0048】
ここで、二次電池11の充電率と各モードとの関係について図8を用いて説明する。図8に示すグラフの縦軸は二次電池11の充電率(%)を表し、横軸は時間経過を表す。なお、「非接続モード」は、電子機器10と外部電源とが接続されていないという前提であり、他のモードとは異なるため以下の説明では割愛する。
【0049】
図8に示すように、外部電源接続状態、かつ高充電率(98%)で高温の状態が予め設定された時間を超えて継続する(条件満足後10分経過)まで、電力制御部15は充電モードを維持する。その後、電力制御部15は放電モードに移行して二次電池11を放電させる(強制放電)。二次電池11の充電率が許容閾値(80%)未満になると、電力制御部15は外部電源モードへ移行する。外部電源モードでは二次電池11に貯蓄された電力が徐々に漏れて充電率が低下する。二次電池11の充電率が再充電開始閾値未満(60%)になると、電力制御部15は再充電モードへ移行する。再充電モードでは、二次電池11が充電されて充電率が増加する。そして、二次電池11の充電率が再充電停止閾値(70%)以上になると、電力制御部15は再び外部電源モードに移行する。その後、電力制御部15は「外部電源モード」と「再充電モード」との間でモード移行を繰り返すため、二次電池11の充電率は60%~70%に維持される。
【0050】
次に、電力制御部15による処理の流れについて図9を用いて説明する。なお図9における処理の流れは、図6に示す処理の流れから継続しているものとする。
【0051】
図9に示すように、電力制御部15は、放電モードへ移行して充電率取得部13を監視する(ステップS06)。そして、二次電池11の充電率が低下して許容閾値未満になると(ステップS07、Yes)、電力制御部15は、外部電源モードへ移行する(ステップS08)。二次電池11の充電率が更に低下して再充電開始閾値未満になると(ステップS09、Yes)、電力制御部15は、再充電モードへ移行する(ステップS10)。二次電池11の充電率が増加して再充電停止閾値以上になると(ステップS11、Yes)、電力制御部15は、再び外部電源モードへ移行する(ステップS12)。以降、電力制御部15は、「外部電源モード」と「再充電モード」との間でモード移行を繰り返す(ステップS09~S12)。
【0052】
上述のように、実施形態2の電子機器10では、二次電池11の充電率を再充電停止閾値(60%)以上かつ再充電停止閾値(70%)未満に制御するので、二次電池11の膨らみを防止するとともに、二次電池11に貯蓄される電力を維持することができる。
【0053】
[実施形態3]
実施形態2では、電子機器10が「外部電源モード」と「再充電モード」との間でモード移行を繰り返すまでを説明した。実施形態3では、その後の制御について図10を用いて説明する。なお、実施形態3の電子機器10の構成は、図2に示す実施形態1の電子機器10と同様である。
【0054】
実施形態3では、電力制御部15は、外部電源の接続が解除された後に、外部電源が再接続された場合に、二次電池の充電率が100%に到達するまでの充電を許容するように制御する。言い換えると、電力制御部15は外部電源の接続が解除された場合に、自身による制御(すなわち、充電率を再充電停止閾値未満に抑える制御)をキャンセルする。具体的には電力制御部15は、「外部電源モード」と「再充電モード」との間でモード移行を繰り返しつつ(図9のステップS09~S12)、接続検知部14を監視する。ここで、電子機器10に対する外部電源の接続が解除されると(ステップS13、Yes)、電力制御部15は「非接続モード」に移行する(ステップS14)。そして、電力制御部15は、接続検知部14、充電率取得部13及び温度測定部12の監視(図6のステップS01~S03)へ戻る。ここで図9のステップS09~S12のループから抜け出すため、二次電池11の充電率を再充電停止閾値(60%)以上かつ再充電停止閾値(70%)未満への制御がキャンセルされる。言い換えると、電子機器10は、外部電源の接続解除をトリガにして、「充電モード」への移行が可能な状態に戻る。なお、「充電モード」への移行のトリガは外部電源の再接続であり、電力制御部15による接続検知部14の監視に基づく。
【0055】
以上のように、実施形態3の電子機器10では、外部電源の接続解除をトリガにして、「充電モード」への移行が可能な状態に戻る。そのため、外部電源が接続されている限り、二次電池11の膨らみを防止するとともに、二次電池11に貯蓄される電力を維持することができる。また、外部電源が再接続された際には実施形態3の電子機器10ではフル充電まで二次電池11を充電可能である。
【0056】
[実施形態4]
実施形態4では、種々の変化形態について説明する。
【0057】
温度に関する閾値及び充電率に関する各閾値、放電モードへ移行するまでの時間などは、二次電池11の性能に基づいて設定、変更が可能である。特に、二次電池11の膨らみ易さに鑑みて設定され得る。また、温度及び充電率の両者とも低い程、膨れ抑制効果が大きいが、どちらか一方だけの低減でも膨れ抑制に効果がある。なお、二次電池11が高温になった場合には、より早いタイミングで放電モードへ移行することが効果的である。
【0058】
また、図11に示すように充電率、温度、継続時間(高充電率かつ高温の状態での)は、互いに関連して二次電池11の膨れに対するリスク(膨れ量)に影響する。すなわち、図11(A)に示すように、二次電池11の温度が高ければ高い程、膨れ易さ(膨れ量)が高くなり、短期間で膨れが発生する。電子機器10を鞄に入れた状態で二次電池11を充電すると、充電による発熱と鞄内の熱の篭りによって60℃程度に達する可能性は十分ある。また、図11(B)に示すように、二次電池11の充電率が高ければ高い程、膨れ易さ(膨れ量)が高くなり、短期間で膨れが発生する。外部電源に接続された状態では二次電池11の電力がほとんど消費されず、むしろ充電によって二次電池11の充電率が高くなる可能性がある。このように、温度、充電率、継続時間は相関関係を有すると言え、一方の値に基づいて他方の値が設定され得る(例えば、温度に関する閾値を低めに設定すれば、充電率に関する各閾値は高めに設定され得る)。
【0059】
また、二次電池11の温度(℃)と充電率(%)の乗算値を閾値に設定することも考えられる。一例を挙げると、図12に示すように、電力制御部15は二次電池11の温度(℃)と充電率(%)の乗算値が閾値以上である場合に(ステップS02&03)、タイマを作動させて、監視を継続する(ステップS01~S04を繰り返す)。なお「ステップS02&03」は1つのステップであり、図6との比較を容易にするためにこのような表現を使用したに過ぎない。ここで、乗算値の閾値は、例えば6000であり、二次電池11の温度:60℃と二次電池11の充電率:100%を基準に設定される。このように乗算値を閾値として設定した場合には、例えば二次電池11の温度:70℃の場合には二次電池11の充電率:86%で放電モードへ移行することになる。また、二次電池11の温度:65℃の場合には二次電池11の充電率:93%で放電モードへ移行することになる。このように、二次電池11の温度及び充電率に対して細やかな制御が可能になる。なお、乗算値に関しても、二次電池11の性能などに鑑みて変更可能である。
【0060】
更に、乗算値に関してもより理論的なものに変更可能である。一例として、乗算値に関する近似計算式として以下の計算式が挙げられる。
乗算値=(0.0156e0.0693×温度℃)×(0.0010e0.0693×充電率%
すなわち、リチウムイオン電池の膨れ易さは、温度に対して10℃2倍則の関係、充電率に対して10%2倍則の関係に近似する場合が多い。この法則に鑑みて、二次電池11の温度℃及び二次電池11の充電率%を、それぞれの法則に則した近似計算式に設定している。なお、図13(A)は、上記計算式に関して温度と計算値との関係を示したグラフであり、図13(B)は、上記計算式に関して充電率と計算値との関係を示したグラフである。この計算式では、例えば、二次電池11の温度:60℃かつ二次電池11の充電率:100%の場合には乗算値が「1」となる。そのため、乗算値に関する閾値も「1」に設定される。なお、二次電池11の温度:70℃かつ二次電池11の充電率:100%の場合には乗算値が「2」となり、二次電池11の温度:50℃かつ二次電池11の充電率:100%の場合には乗算値が「0.5」となる。なお、上記計算式中の値(係数など)に関しても二次電池11の性能などに鑑みて変更可能である。
【0061】
また、いずれかの閾値(継続時間に関する設定を含む)を低めに設定した複数種類以上の判定パターンを用意しておき、いずれか一方又は両方の判定パターンで二次電池11の膨れのリスクが高いと判定された場合に放電モードへ移行することが考えらえる。その際に、他の閾値は高めに設定され得る。この点は、上記の乗算値に関する概念や、図11の概念に鑑みれば容易に理解されるだろう(例えば、温度閾値が低めに設定された場合には、充電率閾値や継続時間が高めに設定され得る)。一例を挙げると、図14に示すように、電力制御部15は第1判定パターン(ステップS01~S03)でいずれかがNoであった場合には第2判定パターン(ステップS01´~S03´)を行う。第1判定パターンのステップS02において充電率に関する閾値は98%であるが、第2判定パターンのステップS02´において充電率に関する閾値は90%である。また、第1判定パターンのステップS03において温度に関する閾値は60℃であるが、第2判定パターンのステップS03´において温度に関する閾値は50℃である。第1判定パターンと同様に第2判定パターンでも外部電源接続状態、かつ高充電率で高温の状態の継続時間をカウントするが、第2判定パターンのステップS05´において設定される時間(30分)は第1判定パターン(10分)よりも長い。このように、2種類以上の判定パターンを交互に行うこともできる。また、図15に示すように、複数種類の判定パターンを並行して行っても良い。なお、第1判定パターンに関する充電率閾値(98%)、温度閾値(60℃)、時間閾値(10分)は、それぞれ第1の充電率閾値、第1の温度閾値、第1の時間閾値とも称され得る。また、第2判定パターンに関する充電率閾値(90%)、温度閾値(50℃)、時間閾値(30分)は、それぞれ第2の充電率閾値、第2の温度閾値、第2の時間閾値とも称され得る。
【0062】
実施形態1のステップS01~S03(図6)の順序、つまり、外部電源の接続有無に関する判定、二次電池11の充電率に関する判定及び二次電池11の温度に関する判定の順序は変更可能である。
【0063】
供給電流設定部16cによる変換後の電流の値に関しても変更可能である。外部電源や電源回路部16の性能、電子機能部17による消費電力などに基づいて設定され得る。なお、供給電流設定部16cによる変換後の電流の値はできるだけ小さい値が好ましい。
【0064】
二次電池の放電が実行された場合には、電力制御部15が放電の実行をユーザに対して報知しても良い。例えば「高温化のためセーフティモードへ移行しました」などのメッセージをユーザに対して報知しても良い。すなわち、本発明では、外部電源が接続される限り二次電池11の充電率が60%~70%に維持され、ユーザが故障と勘違いする可能性がある。上記の報知を行うことでユーザによる勘違いを防止できる。なお、報知形態は、ディスプレイ上でのメッセージの表示、音声出力、セーフティモードであることを知らせるランプの点灯などが考えられる。また、ユーザに対して外部電源の再接続を促しても良い。
【0065】
また、「非接続モード」であっても二次電池11の充電率及び温度に基づいて放電を行うことは禁止されない。本発明と矛盾する事項であるが、二次電池11の膨張を防止するという最終目的のために、必要であれば二次電池11の放電が許容されるという趣旨である。例えば、膨れのリスクに関して閾値を設定しておき、当該閾値を超えた場合に二次電池11を放電するようにしても良い。ただし、「非接続モード」では二次電池11の充電率は徐々に低下する。また、「非接続モード」において二次電池11の温度上昇は充電による発熱に起因するものではなく環境に起因するものであり、温度が徐々に上昇すると考えられる。すなわち、「非接続モード」では、二次電池11の温度上昇と二次電池11の充電率の低下とが相殺される関係にあるため、二次電池11が膨れるリスクが高まる可能性は低いと言える。しかしながら、二次電池11の充電率の低下スピードに比べて、二次電池11の温度上昇スピードがあまりに高い場合には二次電池11の放電が実行される。なお、「非接続モード」で放電を行ったとしても、充電による発熱に起因した二次電池11の膨張に関するリスクを低減するという本発明の効果とは何ら矛盾しない。
【0066】
更に「非接続モード」において、二次電池11が高充電率かつ高温である場合には、二次電池11に貯蓄された電力の電子機能部17による消費を加速させても良い。例えば、電子機器10が電力消費を抑える「セーブモード」であった場合には、この「セーブモード」を解除することが考えられる。この場合であっても、二次電池11に貯蓄された電力が無駄に放電されることにはならない。例えば、電子機器10が空冷ファンを備える場合には、空冷ファンのパフォーマンスを稼働するように制御して、二次電池11の温度を下げつつ、二次電池11の充電率を下げるようにしても良い。例えば、電子機器10としてのノートパソコンに適用して、真夏の車内に放置された場合などにこの処理を行うことが考えられる。
【0067】
また、「非接続モード」において電子機能部17による消費によって二次電池11の充電率が所定の安全閾値未満となった場合に、二次電池11に貯蓄された電力の電子機能部17による消費を抑える(例えば「セーブモード」へ移行する)ようにしても良い。ここで安全閾値とは、実施形態2で説明した許容閾値と同様の趣旨であり、二次電池11が膨むリスクが十分に低減されたと考えらえる充電率(例えば80%)である。許容閾値と安全閾値は同一の値であっても良いし、別の値であっても良い。すなわち、二次電池11の充電率が安全閾値未満になるまでは二次電池11に貯蓄された電力を積極的に消費することで充電率の低下を促すが、充電率が安全閾値未満になった後は二次電池11に貯蓄された電力の消費を抑える。つまり、二次電池11に貯蓄された電力の積極的消費が、二次電池11が膨むリスクが十分に低減された状態においてカバーされる。
【0068】
なお、本発明はハードウェアとしてのコンピュータによって実行されるプログラムとしても実現され得る。すなわち、図16に示すように、電子機器10としてのコンピュータのプロセッサにおいて、電力制御部15としての処理を実行すれば良い。
【0069】
また、上記のコンピュータを電子機器10とは別の構成としても良い。すなわち、二次電池11、温度測定部12、充電率取得部13、接続検知部14、電源回路部16及び電子機能部17は既存の電子機器10において備えられている構成である。そのため、電子機器10の各構成要素から電力制御部15としての処理を実行するための情報を取得して電子機器10に対して指示を送信すれば良い。なお、上述の外部電源としてこのコンピュータを適用することも可能である。
【0070】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0071】
(付記1)
二次電池と、
前記二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記二次電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記二次電池に対して電力を供給する外部電源の接続有無を検知する接続検知部と、
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、前記二次電池を放電させる電力制御部と、
を備えた電子機器。
【0072】
(付記2)
前記電力制御部が、前記二次電池の充電を停止するとともに、前記二次電池に貯蓄された電力を電子機器自身が消費するように制御することで前記二次電池を放電させる、付記1に記載の電子機器。
【0073】
(付記3)
前記二次電池の放電によって前記二次電池の充電率が所定の許容閾値未満となった場合に、外部電源から供給される電力を電子機器が利用するように前記電力制御部が制御する付記1又は2に記載の電子機器。
【0074】
(付記4)
前記二次電池の放電によって前記二次電池の充電率が所定の再充電開始閾値未満となった場合に、前記二次電池の充電率が所定の再充電停止閾値に到達するまで、前記二次電池の充電を再開するように、前記電力制御部が制御する付記1~3のいずれか1つに記載の電子機器。
【0075】
(付記5)
前記外部電源の接続が解除された後に、前記外部電源が再接続された場合に、前記二次電池の充電率が100%に到達するまでの充電を許容するように、前記電力制御部が制御する付記1~4のいずれか1つに記載の電子機器。
【0076】
(付記6)
前記二次電池の温度に関する第1の温度閾値と前記二次電池の充電率に関する第1の充電率閾値と前記状態の継続時間に関する第1の時間閾値とを用いる第1の判定パターンと、前記第1の温度閾値とは異なる第2の温度閾値と前記第1の充電率閾値とは異なる第2の充電率閾値と前記第1の時間閾値とは異なる第2の時間閾値とを用いる第2の判定パターンとの、いずれか一方又は両方を満足した場合に、前記電力制御部が前記二次電池を放電させる、付記1~5のいずれか1つに記載の電子機器。
【0077】
(付記7)
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されていない場合には、前記二次電池に貯蓄された電力の電子機器自身による消費を加速させるように、前記電力制御部が制御する付記1~6のいずれか1つに記載の電子機器。
【0078】
(付記8)
電子機器自身による消費によって前記二次電池の充電率が所定の安全閾値未満となった場合に、前記二次電池に貯蓄された電力の電子機器自身による消費を抑えるように、前記電力制御部が制御する付記1~7のいずれか1つに記載の電子機器。
【0079】
(付記9)
二次電池と、
前記二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記二次電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記二次電池に対して電力を供給する外部電源の接続有無を検知する接続検知部と、
を備えた電子機器を、
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、前記二次電池を放電させるように制御するステップを含む、
電池制御方法。
【0080】
(付記10)
二次電池と、
前記二次電池の温度を測定する温度測定部と、
前記二次電池の充電率を取得する充電率取得部と、
前記二次電池に対して電力を供給する外部電源の接続有無を検知する接続検知部と、
を備えた電子機器に対して、
前記二次電池の温度が所定の閾値以上であり、かつ、前記二次電池の充電率が所定の閾値以上であり、かつ、前記外部電源が接続されている状態が所定の時間にわたって継続した場合に、前記二次電池を放電させるように制御する処理を、
コンピュータに実行させる電池制御プログラム。
【0081】
(付記11)
前記二次電池の放電が実行された場合に、前記電力制御部が当該放電の実行をユーザに対して報知する、付記1~8のいずれか1つに記載の電子機器。
【0082】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本発明の趣旨に則り、本発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0083】
10 :電子機器
11 :二次電池
12 :温度測定部
13 :充電率取得部
14 :接続検知部
15 :電力制御部
16 :電源回路部
16a :DCDCコンバータ
16b :充電制御部
16c :供給電流設定部
17 :電子機能部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16