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特許7415288バッテリ交換ステーション及びバッテリの温度管理方法
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  • 特許-バッテリ交換ステーション及びバッテリの温度管理方法 図1
  • 特許-バッテリ交換ステーション及びバッテリの温度管理方法 図2
  • 特許-バッテリ交換ステーション及びバッテリの温度管理方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】バッテリ交換ステーション及びバッテリの温度管理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6572 20140101AFI20240110BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20240110BHJP
【FI】
H01M10/6572
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/653
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022049353
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2023142436
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】山口 進作
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/059833(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/027196(WO,A1)
【文献】特開2013-120640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6572
H01M 10/625
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/653
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電された使用済みのバッテリを車両から取外して充電済みのバッテリに交換するバッテリ交換ステーションであって、
前記充電済みのバッテリを保管するバッテリ保管領域と、
前記充電済みのバッテリの外面に着脱自在に取付け可能であり、熱媒体が流通する熱媒流通路を有することなく発熱及び吸熱の少なくとも一方が可能な温調部材を保管する温調部材保管領域と、を備える
ことを特徴とするバッテリ交換ステーション。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ交換ステーションであって、
所定の停車位置に停車した前記車両から前記使用済みのバッテリを取外し、前記充電済みのバッテリを前記車両に取付けるバッテリ交換動作部と、前記バッテリ保管領域の前記充電済みのバッテリを前記バッテリ交換動作部へ搬送するバッテリ搬送部と、前記温調部材保管領域から前記温調部材を搬送する温調部材搬送部と、前記バッテリ搬送部によって搬送される前又は搬送途中の前記充電済みのバッテリの外面に、前記温調部材搬送部によって搬送された前記温調部材を取付ける温調部材取付動作部と、を有するバッテリ交換システムを備える
ことを特徴とするバッテリ交換ステーション。
【請求項3】
請求項2に記載のバッテリ交換ステーションであって、
前記温調部材保管領域は、温度管理された領域であり、
前記温調部材搬送部は、前記使用済みのバッテリの交換を要求する前記車両が前記バッテリ交換ステーションに到着する予定時刻に応じて前記温調部材保管領域からの前記温調部材の搬出を開始する
ことを特徴とするバッテリ交換ステーション。
【請求項4】
請求項1に記載のバッテリ交換ステーションにおけるバッテリの温度管理方法であって、
前記バッテリ保管領域から前記充電済みのバッテリを搬出するバッテリ搬出工程と、
前記温調部材保管領域から前記温調部材を搬出して前記充電済みのバッテリの外面に取付ける温調部材取付工程と、を備え、
前記温調部材取付工程では、前記バッテリ保管領域から前記充電済みのバッテリを搬出する前又は搬出した直後に、前記温調部材を前記充電済みバッテリの外面に取付ける
ことを特徴とするバッテリの温度管理方法。
【請求項5】
請求項4に記載のバッテリの温度管理方法であって、
前記温調部材保管領域は、温度管理された領域であり、
前記温調部材取付工程では、前記使用済みのバッテリの交換を要求する前記車両が前記バッテリ交換ステーションに到着する予定時刻に応じて前記温調部材保管領域からの前記温調部材の搬出を開始する
ことを特徴とするバッテリの温度管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気自動車から使用済みのバッテリを取外して充電済みのバッテリに交換するバッテリ交換ステーション及びバッテリ交換ステーションにおけるバッテリの温度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放電された使用済みのバッテリを電気自動車から取外して充電済みのバッテリに交換するバッテリ交換ステーションを整備する構想がある。また、特許文献1には、液体媒体を用いて熱を伝達する温度制御回路をバッテリに設け、液温制御回路を車の温度制御システムから独立させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3236379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリ特性は周囲の温度の影響を受けるため、車両(電気自動車)への取付け時のバッテリの温度を所望の範囲内に管理することが好ましく、特許文献1のように、車両の温度制御システムから独立した液温制御回路をバッテリに設けることにより、車両への取付時のバッテリの温度を管理することが可能となる。
【0005】
しかし、特許文献1のように熱媒体が流通する熱媒流通路を設けたバッテリでは、バッテリの重量化や構造の複雑化を招く。
【0006】
そこで本開示は、バッテリの重量化や構造の複雑化を招くことなく、充電済みのバッテリの車両への取付時の温度を管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本開示の第1の態様は、放電された使用済みのバッテリを車両から取外して充電済みのバッテリに交換するバッテリ交換ステーションであって、充電済みのバッテリを保管するバッテリ保管領域と、充電済みのバッテリの外面に着脱自在に取付け可能であり、熱媒体が流通する熱媒流通路を有することなく発熱及び吸熱の少なくとも一方が可能な温調部材を保管する温調部材保管領域と、を備える。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様のバッテリ交換ステーションであって、バッテリ交換システムを備える。バッテリ交換システムは、所定の停車位置に停車した車両から使用済みのバッテリを取外し、充電済みのバッテリを車両に取付けるバッテリ交換動作部と、バッテリ保管領域の充電済みのバッテリをバッテリ交換動作部へ搬送するバッテリ搬送部と、温調部材保管領域から温調部材を搬送する温調部材搬送部と、バッテリ搬送部によって搬送される前又は搬送途中の充電済みのバッテリの外面に、温調部材搬送部によって搬送された温調部材を取付ける温調部材取付動作部と、を有する。
【0009】
本開示の第3の態様は、第2の態様のバッテリ交換ステーションであって、温調部材保管領域は、温度管理された領域であり、温調部材搬送部は、使用済みのバッテリの交換を要求する車両がバッテリ交換ステーションに到着する予定時刻に応じて温調部材保管領域からの温調部材の搬出を開始する。
【0010】
本開示の第4の態様は、第1の態様のバッテリ交換ステーションにおけるバッテリの温度管理方法であって、バッテリ保管領域から充電済みのバッテリを搬出するバッテリ搬出工程と、温調部材保管領域から温調部材を搬出して充電済みのバッテリの外面に取付ける温調部材取付工程と、を備える。温調部材取付工程では、バッテリ保管領域から充電済みのバッテリを搬出する前又は搬出した直後に、温調部材を充電済みバッテリの外面に取付ける。
【0011】
本開示の第5の態様は、第4の態様のバッテリの温度管理方法であって、温調部材保管領域は、温度管理された領域であり、温調部材取付工程では、使用済みのバッテリの交換を要求する車両がバッテリ交換ステーションに到着する予定時刻に応じて温調部材保管領域からの温調部材の搬出を開始する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、バッテリの重量化や構造の複雑化を招くことなく、充電済みのバッテリの車両への取付時の温度を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の側面図であり、(a)はバッテリ交換前の状態を、(b)はバッテリ交換中の状態を示す。
図2】バッテリ交換ステーションの構成を模式的に示す図である。
図3】バッテリ交換システムのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
車両1は、例えばバッテリ2から供給される電力によって走行する電気自動車であり、図1に示すように、バッテリ2が着脱可能に取付けられるバッテリ装着部3を備える。車両1の走行によって放電された使用済みのバッテリ2Bは、バッテリ装着部3から取外され、充電済みのバッテリ2Aに交換される。なお、図1では、車両1としてトラックを例示しているが、車両1はトラック以外(例えばトレーラや乗用車など)であってもよい。また、以下の説明では、充電済みのバッテリ2Aを単にバッテリ2と称する場合がある。
【0016】
バッテリ交換ステーション4は、使用済みのバッテリ2Bを充電済みのバッテリ2Aに交換する施設であり、図2に示すように、バッテリ充電装置5、使用済みバッテリ保管庫6、充電済みバッテリ保管庫(バッテリ保管領域)7、温調部材保管庫(温調部材保管領域)8、及び交換作業管理装置9等を備える。
【0017】
図1及び図2に示すように、車両1から取外された使用済みのバッテリ2Bは、使用済みバッテリ保管庫6に保管され、バッテリ充電装置5によって順次充電される。バッテリ充電装置5によって充電された充電済みのバッテリ2Aは、充電済みバッテリ保管庫7に保管される。
【0018】
温調部材保管庫8には、温調部材10が保管される。温調部材10は、充電済みのバッテリ2Aの外面に着脱自在に取付け可能であって、熱媒体が流通する熱媒流通路を有することなく発熱及び吸熱の少なくとも一方が可能な部材である。
【0019】
バッテリ特性は周囲の温度の影響を受けるため、車両1への取付け時のバッテリ温度を所望の範囲内(例えば、25℃~35℃)に管理することが好ましい。
【0020】
温調部材10は、車両1への取付け時及び取付け直後のバッテリ温度を所望の範囲内に管理するために、充電済みのバッテリ2Aの外面に取付けられる。例えば、気温が上記範囲の上限温度(35℃)を大きく上回る季節や地域(例えば熱帯地)では、温調部材10の吸熱によって交換時のバッテリ2を冷却し、気温が上記範囲の下限温度(25℃)を大きく下回る季節や地域(例えば寒冷地)では、温調部材10の発熱によって交換時のバッテリ2を加熱する。このように、熱媒体が流通する熱媒流通路を有さない温調部材10を用いるので、バッテリ2の重量化や構造の複雑化を招くことなく、充電済みのバッテリ2Aの車両1への取付時の温度を好適に管理することができる。
【0021】
温調部材10は、例えば潜熱蓄熱材や半導体熱電素子などによって構成することができる。温調部材10を潜熱蓄熱材によって構成する場合は、温調部材保管庫8の温度を管理する。潜熱蓄熱材の凝固温度が気温よりも低く、吸熱によってバッテリ2を冷却する温調部材10では、温調部材保管庫8を凝固温度よりも低温に管理する(庫内を冷房)。反対に、潜熱蓄熱材の凝固温度が気温よりも高く、発熱によってバッテリ2を加熱する温調部材10では、温調部材保管庫8を凝固温度よりも高温に管理する(庫内を暖房)。
【0022】
温調部材10の形状及びバッテリ2への取付方法は特に限定されないが、矩形板状の温調部材10を用いることにより、6枚の温調部材10によって箱型のバッテリ2の6面を覆い、各温調部材10をボルト等でバッテリ2に取付けることができる。
【0023】
交換作業管理装置9は、バッテリ交換を要求する車両1がバッテリ交換ステーション4に到着する予定時刻(車両到着予定時刻)を管理する。
【0024】
バッテリ2の交換を要求する車両1がバッテリ交換ステーション4に到着すると、バッテリ交換ステーション4の作業者は、使用済みのバッテリ2Bを車両1から取外し、充電済みのバッテリ2Aを車両1に取付ける。また、充電済みのバッテリ2Aの取付けに先立ち、充電済みバッテリ保管庫7から充電済みのバッテリ2Aを搬出する(バッテリ搬出工程)。また、温調部材保管庫8から温調部材10を搬出して充電済みのバッテリ2Aの外面に取付ける(温調部材取付工程)。温調部材取付工程では、充電済みバッテリ保管庫7から充電済みのバッテリ2Aを搬出する前又は搬出した直後に、温調部材10を充電済みバッテリ2Aの外面に取付ける。
【0025】
また、温調部材保管庫8が温度管理されている場合、作業者は、車両到着予定時刻を交換作業管理装置9から取得し、車両1の到着予定時刻に応じて温調部材保管庫8からの温調部材10の搬出を開始する。具体的には、温調部材10によるバッテリ2の冷却効果又は加熱効果がバッテリ2の取付時に有効に発揮され得るタイミングで、温調部材10を温調部材保管庫8から搬出する。これにより、温調部材10による温度管理を効率良く行うことができる。
【0026】
(第2実施形態)
第2実施形態のバッテリ交換ステーション4は、バッテリ交換作業を自動化したバッテリ交換システム20を備える。
【0027】
図3に示すように、バッテリ交換システム20は、バッテリ交換制御部21と、バッテリ交換動作部22と、バッテリ搬送部23と、温調部材搬送部24と、温調部材取付動作部25と、を有する。
【0028】
バッテリ交換制御部21は、例えばECU(Electronic Control Unit)によって構成され、バッテリ交換動作部22、バッテリ搬送部23、温調部材搬送部24、及び温調部材取付動作部25の動作を制御する。図1図3に示すように、バッテリ交換動作部22は、バッテリ交換ステーション4に予め設定された所定の停車位置に停車した車両1から使用済みのバッテリ2Bを取外し、充電済みのバッテリ2Aを車両1に取付ける。バッテリ搬送部23は、使用済みのバッテリ2Bをバッテリ交換動作部22から使用済みバッテリ保管庫6へ搬送するとともに、充電済みバッテリ保管庫7の充電済みのバッテリ2Aをバッテリ交換動作部22へ搬送する。温調部材搬送部24は、温調部材保管庫8から外部へ温調部材10を搬送する。温調部材取付動作部24は、バッテリ搬送部23によって搬送される前又は搬送途中の充電済みのバッテリ2Aの外面に、温調部材搬送部24によって搬送された温調部材10を取付ける。
【0029】
温調部材保管庫8が温度管理されている場合、バッテリ交換制御部21は、車両到着予定時刻を交換作業管理装置9から取得する。バッテリ交換制御部21の制御により、温調部材搬送部24は、車両到着予定時刻に応じたタイミング(温調部材10によるバッテリ2の冷却効果又は加熱効果がバッテリ2の取付時に有効に発揮され得るタイミング)で、温調部材保管庫8からの温調部材10の搬出を開始する。
【0030】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1:車両
2:バッテリ
2A:充電済みのバッテリ
2B:使用済みのバッテリ
3:バッテリ装着部
4:バッテリ交換ステーション
5:バッテリ充電装置
6:使用済みバッテリ保管庫
7:充電済みバッテリ保管庫(バッテリ保管領域)
8:温調部材保管庫(温調部材保管領域)
9:交換作業管理装置
10:温調部材
20:バッテリ交換システム
21:バッテリ交換制御部
22:バッテリ交換動作部
23:バッテリ搬送部
24:温調部材搬送部
25:温調部材取付動作部
図1
図2
図3