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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20240110BHJP
   F02D 13/04 20060101ALI20240110BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20240110BHJP
   F02D 41/38 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F02D41/04
F02D13/04 A
F02D43/00 301H
F02D43/00 301Z
F02D41/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022207920
(22)【出願日】2022-12-26
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】江部 淳
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-112281(JP,A)
【文献】特開2021-025495(JP,A)
【文献】特開2021-025492(JP,A)
【文献】特開2010-112280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/04
F02D 13/04
F02D 43/00
F02D 41/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性温度に達すると排気ガスを浄化する触媒が設けられている排気管に接続された複数の気筒を有するエンジンに対する要求トルクを取得する要求トルク取得部と、
前記要求トルクの大きさに応じて、燃料を噴射させずに圧縮工程中に排気弁を開放する圧縮開放気筒を前記複数の気筒から選択する圧縮開放気筒選択部と、
前記圧縮開放気筒の圧縮工程中に前記圧縮開放気筒の排気弁を開放する排気弁制御部と、
前記排気弁の開放により生じる負荷トルク及び前記要求トルクに応じて、前記複数の気筒のうちの前記圧縮開放気筒以外の燃料を噴射させる稼働気筒に噴射させる燃料噴射量を決定する燃料噴射量決定部と、
各気筒に燃料を噴射する燃料噴射部を制御して、前記燃料噴射量決定部が決定した前記燃料噴射量の燃料を前記稼働気筒に噴射させる噴射制御部と、
を有し、
前記圧縮開放気筒選択部は、前記エンジンに接続された発電機の発電に必要な発電トルクと前記負荷トルクとの和が、前記エンジンが出力可能な最大出力トルクから前記要求トルクを除いた残トルクになるように前記圧縮開放気筒を選択する、
エンジン制御装置。
【請求項2】
前記圧縮開放気筒選択部は、前記要求トルクが小さいほど選択する前記圧縮開放気筒の数を多くする、
請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記圧縮開放気筒選択部は、各気筒の前記圧縮開放気筒としての圧縮開放時間が等しくなるように前記複数の気筒から前記圧縮開放気筒を選択する、
請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記燃料噴射量決定部は、前記燃料噴射量の燃料を前記稼働気筒に噴射させたときの前記エンジンの出力トルクが、前記負荷トルクと前記要求トルクとの和になる前記燃料噴射量を決定する、
請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記圧縮開放気筒選択部は、
前記発電機が最大発電量の電力を発電するのに必要な最大発電トルクが前記残トルク以上であれば前記圧縮開放気筒を選択せず、
前記最大発電トルクが前記残トルク未満であれば、前記圧縮開放気筒を選択する、
請求項に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記圧縮開放気筒選択部は、
前記残トルクから一の前記圧縮開放気筒による前記負荷トルクを除いた値が前記最大発電トルク以下であれば、一の前記圧縮開放気筒を選択し、
前記残トルクから一の前記圧縮開放気筒による前記負荷トルクを除いた値が前記最大発電トルクより大きければ、2以上の前記圧縮開放気筒を選択する、
請求項に記載のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の気筒を有するエンジンに燃料を噴射させるエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンの排気ガスが通る排気管に設けられており活性化温度に達すると排気ガスを浄化する触媒の温度を上げるため、排気ガスの温度を上げる技術が知られている。特許文献1には、エンジンが無負荷減速運転中であるときに、エンジンの気筒の圧縮工程中に排気弁を開放する圧縮開放ブレーキを作動させることにより、排気ガスの温度を上げる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-112280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、無負荷減速状態ではないときに圧縮開放ブレーキを作動させると、エンジンに負荷が生じて車両が減速してしまう。そのため、エンジンが無負荷減速状態のときしか排気ガスの温度を上げることができなかった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、エンジンの運転状態によらず排気ガスの温度を上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、活性温度に達すると排気ガスを浄化する触媒が設けられている排気管に接続された複数の気筒を有するエンジンに対する要求トルクを取得する要求トルク取得部と、前記要求トルクの大きさに応じて、燃料を噴射させずに圧縮工程中に排気弁を開放する圧縮開放気筒を前記複数の気筒から選択する圧縮開放気筒選択部と、前記圧縮開放気筒の圧縮工程中に前記圧縮開放気筒の排気弁を開放する排気弁制御部と、前記排気弁の開放により生じる負荷トルク及び前記要求トルクに応じて、前記複数の気筒のうちの前記圧縮開放気筒以外の燃料を噴射させる稼働気筒に噴射させる燃料噴射量を決定する燃料噴射量決定部と、各気筒に燃料を噴射する燃料噴射部を制御して、前記燃料噴射量決定部が決定した前記燃料噴射量の燃料を前記稼働気筒に噴射させる噴射制御部と、を有するエンジン制御装置を提供する。
【0007】
前記圧縮開放気筒選択部は、前記要求トルクが小さいほど選択する前記圧縮開放気筒の数を多くしてもよい。
【0008】
前記圧縮開放気筒選択部は、各気筒の前記圧縮開放気筒としての圧縮開放時間が等しくなるように前記複数の気筒から前記圧縮開放気筒を選択してもよい。
【0009】
前記燃料噴射量決定部は、前記燃料噴射量の燃料を前記稼働気筒に噴射させたときの前記エンジンの出力トルクが、前記負荷トルクと前記要求トルクとの和になる前記燃料噴射量を決定してもよい。
【0010】
前記圧縮開放気筒選択部は、前記エンジンに接続された発電機の発電に必要な発電トルクと前記負荷トルクとの和が、前記エンジンが出力可能な最大出力トルクから前記要求トルクを除いた残トルクになるように前記圧縮開放気筒を選択してもよい。
【0011】
前記圧縮開放気筒選択部は、前記発電機が最大発電量の電力を発電するのに必要な最大発電トルクが前記残トルク以上であれば前記圧縮開放気筒を選択せず、前記最大発電トルクが前記残トルク未満であれば、前記圧縮開放気筒を選択してもよい。
【0012】
前記圧縮開放気筒選択部は、前記残トルクから一の前記圧縮開放気筒による前記負荷トルクを除いた値が前記最大発電トルク以下であれば、一の前記圧縮開放気筒を選択し、前記残トルクから一の前記圧縮開放気筒による前記負荷トルクを除いた値が前記最大発電トルクより大きければ、2以上の前記圧縮開放気筒を選択してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エンジンの運転状態によらず排気ガスの温度を上げられるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】エンジン制御装置の概要を説明するための図である。
図2】エンジンの気筒の模式図である。
図3】実施の形態に係る燃料噴射量とトルクと排気ガス温度の関係を説明するための図である。
図4】比較例に係る装置の燃料噴射量とトルクと排気ガス温度の関係を説明するための図である。
図5】エンジン制御装置の構成を説明するための図である。
図6】要求トルクに応じて圧縮開放気筒を選択する処理を説明するための図である。
図7】発電機を発電させるときに圧縮開放気筒を選択する処理を説明するための図である。
図8】残トルクに対する発電トルクの割合が大きくなるように圧縮開放気筒を選択する処理を説明ための図である。
図9】圧縮開放気筒の数を少なくして発電量を多くする処理を説明するための図である。
図10】バッテリーの充電量が判定閾値以上であるときに圧縮開放気筒の数を多くして発電量を少なくする処理を説明するための図である。
図11】圧縮開放気筒として選択されていた時間が同じになるように圧縮開放気筒を選ぶことを説明するための図である。
図12】触媒の温度の時間変化を示す図である。
図13】排気ガスに含まれる窒素酸化物の浄化率Pの時間変化を示す図である。
図14】触媒を通過した後の排気ガスに含まれる窒素酸化物量の積算値の時間変化を示す図である。
図15】エンジン制御装置が実行する排気ガス温度を上げる処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[エンジン制御装置1の概要]
図1は、エンジン制御装置1の概要を説明するための図である。エンジン制御装置1は、車両2に搭載されている。車両2には、第1気筒3a、第2気筒3b、第3気筒3c及び第4気筒3dを有しているエンジン4が搭載されている。以下、第1気筒3a、第2気筒3b、第3気筒3c及び第4気筒3dの気筒を区別する必要がない場合は、気筒3という。エンジン4は、燃料と吸気(空気)との混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。エンジン4は、例えばディーゼルエンジンであるが、ガソリンエンジンでもよい。エンジン4の出力軸5には、図示しないギア、シャフト及び変速装置を介して発電機6及び車輪7が接続されている。エンジン4の各気筒3には、吸気管31と排気管32とが接続されている。エンジン制御装置1は、車両2のエンジン4の各気筒3に対する燃料の噴射を制御する。
【0016】
図2は、エンジン4の気筒3の模式図である。エンジン4の動作サイクルの開始時において気筒3の吸気弁33及び排気弁34は閉じている。まず、ピストン35が下がるときに吸気弁33が開放されて、空気が気筒3内に吸い込まれる(吸気工程)。次に、ピストン35が下死点に至るときに吸気弁33が閉じて、ピストン35が上死点まで上昇するときに空気が圧縮される(圧縮工程)。続いて、燃料噴射部37により燃料が噴射され、圧縮加熱された空気と混合した燃料が燃焼し、膨張した燃焼ガスによりピストン35が下死点まで押し下げられる(燃焼行程)。そして、慣性や他の気筒3での膨張に伴い、ピストン35が再度上死点まで上昇するときに排気弁34を開放することにより、燃焼ガスが気筒3外に押し出されて排気ガスとして排気管32に排出される(排気工程)。
【0017】
エンジン4から排出された排気ガスが通過する排気管32には、排気ガスを浄化する触媒36が設けられている。触媒36は、活性温度に達すると排気ガスを浄化する。活性温度は、触媒の種類や性能、車両2の仕様に応じて定められている。活性温度の具体的な値は200度であるが、これに限定するものではない。
【0018】
触媒36は、活性温度に達してから排気ガスを浄化するため、例えばエンジン4の始動直後など触媒36の温度が低いときには排気ガスを浄化できない。そのため、従来の装置は、触媒36が活性温度になるように、複数の気筒3のうちの燃料を噴射させない気筒3の圧縮工程中に排気弁34を開放して圧縮加熱された空気を排気管32に排出して、触媒36を加熱していた。しかし、燃料を噴射させない気筒3の圧縮工程中に排気弁34が開放されるとエンジン4の回転を止める向きに負荷トルクが生じるので、従来の装置は、エンジン4に対してトルクの出力が要求されていない無負荷運転時や、エンジン4に制動力を生じさせる減速運転時でしか、燃料を噴射させない気筒3の圧縮工程中に開放させることができなかった。
【0019】
実施の形態に係るエンジン制御装置1は、エンジン4に対する要求トルクの大きさに応じて、燃料を噴射させずに圧縮工程中に排気弁を開放する圧縮開放気筒を選択する。例えば、エンジン制御装置1は、要求トルクが小さいほど選択する圧縮開放気筒の数を多くする。そして、エンジン制御装置1は、圧縮開放気筒の負荷トルク及び要求トルクに応じて圧縮開放気筒以外の稼動気筒に噴射する燃料噴射量を決定する。
【0020】
図3は、実施の形態に係る燃料噴射量とトルクと排気ガス温度の関係を説明するための図である。エンジン4の要求トルクは[2.0]である。エンジン制御装置1は、圧縮開放気筒の負荷トルク[-0.5]と、燃料を噴射する稼動気筒の出力トルクとの和が要求トルク[2.0]になるように、第1気筒3a及び第2気筒3bを圧縮開放気筒として選択した。第3気筒3c及び第4気筒3dは、燃料が噴射される稼働気筒である。なお、負荷トルクは、エンジン4の回転を止める向きに働くので、負の値である。
【0021】
エンジン制御装置1は、第1気筒3aの負荷トルク[-0.5]及び第2気筒3bの負荷トルク[-0.5]と、稼動気筒の出力トルクとの和が要求トルク[2.0]になるように燃料噴射量を決定する。エンジン制御装置1は、第3気筒3c及び第4気筒3dの各々が[1.5]のトルクを出力するように、第3気筒3c及び第4気筒3dに噴射させる燃料噴射量を[1.5]と決定する。
【0022】
そして、エンジン制御装置1は、圧縮開放気筒として選択した気筒3の圧縮工程中に排気弁34を開放するとともに、決定した燃料噴射量の燃料を圧縮開放気筒以外の気筒3に噴射させる。第1気筒3a及び第2気筒3bから圧縮されて加熱された空気が排出されるので、第1気筒3a及び第2気筒3bの排気ガス温度は[中]である。第3気筒3c及び第4気筒3dにはトルク[1.5]を出力させるために燃料噴射量[1.5]の燃料が噴射されるため排気ガスの温度が高くなるので、第3気筒3c及び第4気筒3dの排気ガス温度は[高]であった。
【0023】
図4は、比較例に係る装置の燃料噴射量とトルクと排気ガス温度の関係を説明するための図である。比較例に係る装置は、実施の形態と異なり、圧縮開放気筒を選択せず、第1気筒3aから第4気筒3dのすべての気筒に燃料を噴射する。4つの気筒3すべてに燃料を噴射した場合、各気筒の出力トルクは[0.5]であり、第1気筒3aから第4気筒3dの排気ガス温度の各々は[低]であった。
【0024】
このように、実施の形態のエンジン制御装置1は、圧縮開放気筒から加熱された空気を排出させ、稼動気筒の出力トルクの総和が要求トルクよりも大きくなる量の燃料を噴射させる。その結果、エンジン制御装置1は、全ての気筒に同じ量の燃料を噴射する場合よりも排気ガス温度を高くすることができる。以下、エンジン制御装置1の構成の詳細を説明する。
【0025】
[エンジン制御装置1の構成]
図5は、エンジン制御装置1の構成を説明するための図である。記憶部11及び制御部12を有する。記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶する。
【0026】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、要求トルク取得部121、圧縮開放気筒選択部122、燃料噴射量決定部123、排気弁制御部124及び噴射制御部125としての機能を実現する。
【0027】
要求トルク取得部121は、エンジン4に対する要求トルクを取得する。例えば、要求トルク取得部121は、車両2のアクセル開度に応じた要求トルクを取得する。具体的には、要求トルク取得部121は、アクセル開度と要求トルクの関係を示すトルクマップを参照して、アクセル開度に対応する要求トルクを取得する。トルクマップは、例えば車両2のエンジン4の性能、車両2の重量などに応じて定められており、予め記憶部11に記憶されている。
【0028】
圧縮開放気筒選択部122は、取得された要求トルクの大きさに応じて、燃料を噴射させない圧縮開放気筒を複数の気筒3から選択する。例えば、圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクが小さいほど選択する圧縮開放気筒の数を多くする。具体例を挙げると、圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクが第1閾値以上であれば一の圧縮開放気筒を選択し、要求トルクが第1閾値よりも小さい第2閾値以下であれば3つの圧縮開放気筒を選択し、要求トルクが第2閾値以上第1閾値未満であれば2つの圧縮開放気筒を選択する。第1閾値及び第2閾値は、例えばエンジン4の最大出力トルクに応じて定められており、第1閾値の具体的な値は最大出力トルクの2分の1であり、第2閾値の具体的な値は最大出力トルクの4分の1である。なお、圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクが最大出力トルクの4分の3以上であれば圧縮開放気筒を選択しない。
【0029】
燃料噴射量決定部123は、負荷トルク及び要求トルクに応じて、複数の気筒3のうちの圧縮開放気筒以外の燃料を噴射させる稼働気筒に噴射させる燃料噴射量を決定する。負荷トルクは、圧縮開放気筒の圧縮工程中に圧縮開放気筒の排気弁34が開放されることにより、1動作サイクルの全体の和としてエンジン4の回転を止める向きに生じる力である。燃料噴射量決定部123は、燃料噴射量の燃料を稼働気筒に噴射させたときのエンジン4の出力トルクが、負荷トルクと要求トルクの和になる燃料噴射量を決定する(図3を参照)。言い換えると、燃料噴射量決定部123は、負荷トルクの絶対値と要求トルクの和を、実際にエンジン4に出力させる出力トルクとして決定し、決定した出力トルクを出力するための燃料噴射量を決定する。具体的には、燃料噴射量決定部123は、エンジン4の出力トルクと燃料噴射量の関係を示す燃料出力マップを参照して、決定した出力トルクに対応する燃料噴射量を決定する。燃料出力マップは、エンジン4の性能及び仕様等により定められており、記憶部11に記憶されている。
【0030】
排気弁制御部124は、排気弁34を開閉するアクチュエータ38を制御することにより、排気弁34を開放したり、閉じたりする。排気弁制御部124は、圧縮開放気筒の圧縮工程中に圧縮開放気筒の排気弁34を開放する。具体的には、排気弁制御部124は、触媒36の温度が活性温度未満のときに圧縮開放気筒選択部122が選択した圧縮開放気筒の圧縮工程中に当該圧縮開放気筒の排気弁34を開放する。排気弁制御部124は、触媒36の温度が活性温度以上であれば、圧縮開放気筒が選択されていても当該圧縮開放気筒の排気弁34を開放せずに、閉じた状態を維持する。
【0031】
噴射制御部125は、各気筒3に燃料を噴射する燃料噴射部37を制御して、燃料噴射量決定部123が決定した燃料噴射量の燃料を稼働気筒に噴射させる。噴射制御部125は、圧縮開放気筒に燃料を噴射させない。このようにすることで、エンジン制御装置1は、エンジン4の運転状態がエンジン4に対してトルクの出力が要求される負荷状態であっても、圧縮開放気筒の圧縮工程中に加熱された空気を排気管32に排出させられるので、排気ガスの温度を上げることができる。また、エンジン制御装置1は、エンジン4に対する要求トルクよりも大きなトルクが出力される量の燃料を噴射させるので、稼動気筒から排出される排気ガスの温度を、要求トルクが出力される量の燃料を噴射させたときよりも高くできる。
【0032】
ところで、稼動気筒の排気ガスの温度は、稼動気筒の出力トルクが大きくなるほど高くなるので、稼動気筒が出力可能な最大出力トルクを出力しているときに最も高くなる。そこで、圧縮開放気筒選択部122は、圧縮開放気筒の排気弁34の開放により生じる負荷トルクの絶対値と要求トルクの和がエンジン4の稼働気筒が出力可能な最大出力トルク以下になるように圧縮開放気筒を選択する。具体的には、圧縮開放気筒選択部122は、最大出力トルクから負荷トルクの絶対値を引いた値(以下「余裕トルク」と言うことがある。)が要求トルク以上であれば圧縮開放気筒を選択し、余裕トルクが要求トルク未満であれば圧縮開放気筒を選択しない。
【0033】
図6は、要求トルクに応じて圧縮開放気筒を選択する処理を説明するための図である。図6の横軸は要求トルクTRの大きさを示し、縦軸はエンジン4の出力トルクTOの大きさを示す。
【0034】
圧縮開放気筒選択部122は、負荷トルクの絶対値TDと要求トルクTRとの和が最大出力トルクTmax以下になるように圧縮開放気筒を選択する。具体的には、圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクが、最大出力トルクTmaxから負荷トルクの絶対値TDを引いた場合の余裕トルクR1以下であり、最大出力トルクTmaxから2倍の負荷トルクの絶対値TDを引いた場合の余裕トルクR2より大きければ、一つの圧縮開放気筒を選択する。圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクが、余裕トルクR2以下であり、最大出力トルクTmaxから3倍の負荷トルクの絶対値TDを引いた場合の余裕トルクR3より大きければ、2つの圧縮開放気筒を選択する。圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクが、余裕トルクR3以下であれば、3つの圧縮開放気筒を選択する。
【0035】
このようにすることで、圧縮開放気筒選択部122は、最大出力トルクTmaxを出力するようにエンジン4を動作させられるようになる。その結果、稼動気筒から排出される排気ガスの温度がより高温になる。
【0036】
ところで、図1に示すとおり、車両2には、発電機6が搭載されている。発電機6の発電量は可変であり、発電量が大きくなるほど発電に必要な発電トルクは大きくなる。
【0037】
圧縮開放気筒選択部122は、発電機6の発電に必要な発電トルクと負荷トルクの絶対値TDとの和が、エンジン4が出力可能な最大出力トルクTmaxから要求トルクTRを除いた残トルクになるように圧縮開放気筒を選択する。具体的には、圧縮開放気筒選択部122は、発電機6が発電可能な最大発電量の電力を発電するのに必要な最大発電トルクが残トルク未満であれば、一以上の圧縮開放気筒を選択する。
【0038】
図7は、発電機6を発電させるときに圧縮開放気筒を選択する処理を説明ための図である。圧縮開放気筒選択部122は、最大出力トルクTmaxから要求トルクTRを除いた残トルクTNを算出する。次に、圧縮開放気筒選択部122は、最大発電トルクTGmaxが残トルクTN以上であるか否かを判定する。圧縮開放気筒選択部122は、最大発電トルクTGmaxが残トルクTN以上であれば圧縮開放気筒を選択しない。圧縮開放気筒選択部122は、最大発電トルクTGmaxが残トルクTN未満であれば、発電機6の発電に必要な発電トルクTGと負荷トルクの絶対値TDの和が残トルクTNになるように、圧縮開放気筒を選択する。具体的には、圧縮開放気筒選択部122は、残トルクTNに対する発電トルクTGの割合が大きくなるように圧縮開放気筒を選択する。
【0039】
図8は、残トルクTNに対する発電トルクTGの割合が大きくなるように圧縮開放気筒を選択する処理を説明ための図である。図8の横軸は要求トルクTRを示し、縦軸は出力トルクTOを示す。圧縮開放気筒選択部122は、最大発電トルクTGmaxが残トルクTN以上であれば圧縮開放気筒を選択しない。言い換えると、圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクTRがトルクR4以上であれば、最大出力トルクTmaxからトルクR4を引いた残トルクTNが最大発電トルクTGmax以下になるので、圧縮開放気筒を選択しない。
【0040】
圧縮開放気筒選択部122は、最大発電トルクTGmaxが残トルクTN未満のときに残トルクTNから一の圧縮開放気筒による負荷トルクの絶対値TDを除いた値が最大発電トルクTGmax以下であれば、一以上の圧縮開放気筒を選択する。具体的には、圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクTRがトルクR5以上トルクR4未満であれば、残トルクTNから一の負荷トルクの絶対値TDを引いた値TN1が最大発電トルクTGmax以下になるので、一の圧縮開放気筒を選択する。
【0041】
圧縮開放気筒選択部122は、残トルクTNから一の圧縮開放気筒による負荷トルクの絶対値TDを除いた値が最大発電トルクTGmaxより大きければ、2以上の圧縮開放気筒を選択する。具体的には、圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクTRがトルクR6以上トルクR5未満であれば、残トルクTNから2倍の負荷トルクの絶対値TDを引いた値TN2が最大発電トルクTGmax以下になるので、2つの圧縮開放気筒を選択する。
【0042】
圧縮開放気筒選択部122は、残トルクTNから2倍の圧縮開放気筒による負荷トルクの絶対値TDを除いた値が最大発電トルクTGmaxより大きければ3つの圧縮開放気筒を選択する。具体的には、圧縮開放気筒選択部122は、要求トルクTRがトルクR6未満であれば、残トルクTNから3倍の負荷トルクの絶対値TDを引いた値TN3が最大発電トルクTGmax以下になるので、3つの圧縮開放気筒を選択する。このようにすることで、圧縮開放気筒選択部122は、エンジン4に最大出力トルクTmaxを出力させながら、より多くの電力を発電機6に発電させることができる。
【0043】
なお、バッテリーの充電状態により、発電可能な電力が変化するため、圧縮開放気筒選択部122は、圧縮開放気筒数と発電のバランスを変化させてもよい。例えば、圧縮開放気筒選択部122は、バッテリーの充電量が判定閾値未満であれば、圧縮開放気筒の数を少なくして発電量を多くし、バッテリーの充電量が判定閾値以上であれば圧縮開放気筒の数を多くして発電量を少なくする。判定閾値は、例えばバッテリーの最大充電量の2分の1であるがこれに限定するものではない。これにより、圧縮開放気筒選択部122は、バッテリーの充電量が判定閾値未満になったらバッテリーに充電する発電量を多くできるので、バッテリーの充電量が判定閾値以下にならないようにすることができる。
【0044】
図9は、圧縮開放気筒の数を少なくして発電量を多くする処理を説明するための図である。圧縮開放気筒選択部122は、バッテリーの充電量が判定閾値未満であれば、発電機6が最大発電量を発電できるように圧縮開放気筒を選択する。一例を挙げると、圧縮開放気筒選択部122は、バッテリーの充電量が判定閾値未満であれば、要求トルクTRがトルクR5以上トルクR4未満であっても、圧縮開放気筒を選択しない。これにより、圧縮開放気筒選択部122は、残容量が判定閾値未満になっているバッテリーに電力を充電させることができる。なお、噴射制御部125は、燃料噴射部37を制御して、要求トルクTRに最大発電トルクTGmaxを加えたトルクをエンジン4が出力する量の燃料を気筒3に噴射させる。
【0045】
圧縮開放気筒選択部122は、バッテリーの充電量が判定閾値以上であれば圧縮開放気筒の数を多くして発電量を少なくする。図10は、バッテリーの充電量が判定閾値以上であるときに圧縮開放気筒の数を多くして発電量を少なくする処理を説明するための図である。圧縮開放気筒選択部122は、バッテリーの充電量が判定閾値よりも大きな過充電抑制閾値以上であれば、最大発電トルクTGmaxが残トルクTN以上であっても、一以上の圧縮開放気筒を選択する。過充電抑制閾値は、例えばバッテリーの過充電を抑制するための閾値であって最大充電量の10分の9であるが、これに限定するものではない。これにより、圧縮開放気筒選択部122は、バッテリーの過充電を抑制しながら、排気ガスの温度を上げることができる。
【0046】
圧縮開放気筒選択部122は、バッテリーの充電量が過充電抑制閾値以上であり、かつ要求トルクが所定値以下であれば、エンジン4のすべての気筒3を圧縮開放気筒として選択してもよい。この場合、エンジン制御装置1は、エンジン4と発電機6の間に設けられた図示しないクラッチを動作させてエンジン4と発電機6の接続を遮断し、発電機6を電動機(モータ)として動作させる。これにより、エンジン制御装置1は、燃料の消費量を低減しながら排気ガスの温度を上げることができる。エンジン制御装置1は、バッテリーの充電量が過充電抑制閾値未満になったらクラッチを動作させてエンジン4と発電機6を接続する。圧縮開放気筒選択部122は、バッテリーの充電量が過充電抑制閾値未満になってエンジン4と発電機6が接続されたら、残トルクTNに対する発電トルクTGの割合が大きくなるように圧縮開放気筒を選択する。
【0047】
圧縮開放気筒選択部122は、車両2の周辺環境の変化により最大出力トルクTmaxが変化した場合、負荷トルクの絶対値TDと要求トルクTRとの和が、変化後の最大出力トルクTmax以下になるように圧縮開放気筒を選択する。例えば、圧縮開放気筒選択部122は、最大出力トルクTmaxが低下したら、低下した最大出力トルクTmaxを、負荷トルクの絶対値TDと要求トルクTRとの和が超えないように圧縮開放気筒を選択する。
【0048】
なお、同一の気筒3に燃料を噴射させ続け、同一の気筒3を圧縮開放気筒として選択し続けると、各気筒3の摩耗や消耗具合に差が生じてしまう。そこで、圧縮開放気筒選択部122は、各気筒3の圧縮開放気筒としての圧縮開放時間が等しくなるように複数の気筒から圧縮開放気筒を選択する。例えば、圧縮開放気筒選択部122は、所定の期間が経過する毎に、異なる気筒3を圧縮開放気筒として選択する。具体的には、圧縮開放気筒選択部122は、第1期間において一の気筒3を圧縮開放気筒として選択し、第1期間が終了して第2期間になったら、第1期間において圧縮開放気筒として選択した気筒3と異なる気筒3を圧縮開放気筒として選択する。図11は、圧縮開放気筒として選択されていた時間が同じになるように圧縮開放気筒を選ぶことを説明するための図である。
【0049】
圧縮開放気筒選択部122は、第1期間T11において第1気筒3aを圧縮開放気筒として選択し、第1期間T11が終了した後の第2期間T12において第2気筒3bを圧縮開放気筒として選択する。このように、圧縮開放気筒選択部122は、所定期間が経過する毎に、第1気筒3aから第4気筒3dまでの各気筒3を順番に圧縮開放気筒として選択する。なお、所定期間は、空気と燃料の混合気を燃焼室へ取り込み燃焼して燃焼ガスを排出するまでの一連の動作(以下「サイクル」と言う。)を行う回数である。例えば、所定期間は、適宜定めればよく、例えば100サイクルであるがこれに限定するものではない。また、圧縮開放気筒を選択する順序は任意であり、圧縮開放気筒として選択されていたときの積算サイクル数が同じになるようにすればよい。つまり、第1気筒3aの後に、圧縮開放気筒として選択する気筒は、第2気筒3b、第3気筒3c及び第4気筒3dのどれでもよい。
【0050】
圧縮開放気筒選択部122は、2以上の気筒3を圧縮開放気筒として選択する場合も、一の気筒3を圧縮開放気筒として選択する場合と同様に、各気筒3の圧縮開放気筒としての圧縮開放時間が等しくなるように複数の気筒3から圧縮開放気筒を選択する。この場合、圧縮開放気筒選択部122は、第1期間において圧縮開放気筒として選択した一の気筒3を、第2期間において選択しても構わない。圧縮開放気筒選択部122は、2以上の気筒3を圧縮開放気筒として選択する場合、所定の期間よりも長い期間が経過した時点において、各気筒3の圧縮開放気筒としての圧縮開放時間が等しくなるように複数の気筒3から圧縮開放気筒を選択する。所定の期間よりも長い期間は、例えば所定の期間の100倍であるが、これに限定するものではない。
【0051】
図12は、触媒36の温度の時間変化を示す図である。図12の横軸は時刻tを示し、縦軸は温度Kを示す。時刻T0は、エンジン4が始動した時点である。実線41は、実施の形態に係る触媒36の温度の時間変化を示すグラフである。点線51は、比較例に係る触媒の温度の時間変化を示すグラフである。比較例においては、実施の形態に係るエンジン制御装置1と異なり、圧縮開放気筒を選択せず、全ての気筒に燃料を噴射している。
【0052】
実線41で示すとおり、実施の形態に係る触媒36の温度は、時刻T1で、触媒36が排気ガスを浄化できる活性化温度KAを超えた。点線51に示すとおり、比較例に係る触媒の温度は、時刻T1よりも後の時刻T2になるまで活性化温度KAを超えなかった。このように、実施の形態に係る触媒36の温度は、比較例に係る触媒の温度よりも早い時期に活性化温度KAを超えるので、より早い時期に排気ガスを浄化できるようになる。
【0053】
図13は、排気ガスに含まれる窒素酸化物の浄化率Pの時間変化を示す図である。図13の横軸は時刻tを示し、縦軸は浄化率Pを示す。なお、浄化率Pが高いほど排気ガスに含まれる窒素酸化物は少ない。実線42は、実施の形態の浄化率Pの時間変化を示すグラフである。点線52は、比較例の浄化率Pの時間変化を示すグラフである。図13に示すとおり、実施の形態の浄化率Pは、比較例の浄化率Pよりも早い時期に飽和する。つまり、実施の形態の触媒36は、比較例に係る触媒よりも多くの窒素酸化物を除去することができる。
【0054】
図14は、触媒を通過した後の排気ガスに含まれる窒素酸化物量の積算値Nの時間変化を示す図である。図14の横軸は時刻tを示し、縦軸は積算値N示す。実線43は、実施の形態の窒素酸化物量の積算値の時間変化を示すグラフである。点線53は、比較例の窒素酸化物量の積算値の時間変化を示すグラフである。実線43に示すとおり、実施の形態の窒素酸化物量の積算値は、規制値NRを超えない。一方、点線53で示すとおり、比較例の窒素酸化物量の積算値は規制値NRを超えてしまう。
【0055】
[エンジン制御装置1が実行する排気ガス温度を上げる処理]
図15は、エンジン制御装置1が実行する排気ガス温度を上げる処理の一例を示すフローチャートである。図15のフローチャートは、エンジン4が始動している間、所定間隔で実行される。例えば制御部12の処理間隔であるが、これに限定するものではない。エンジン制御装置1は、触媒36の温度が活性化温度未満であれば排気ガス温度を上げる処理を実行し、触媒36の温度が活性化温度以上であれば排気ガス温度を上げる処理を実行しない。
【0056】
まず、要求トルク取得部121は、要求トルクTRを取得する(ステップS1)。例えば、要求トルク取得部121は、車両2のアクセル開度に応じた要求トルクTRを取得する。続いて、圧縮開放気筒選択部122は、最大出力トルクTmaxから負荷トルクの絶対値TDを引いた余裕トルクが要求トルクTR以上か否かを判定する(ステップS2)。
【0057】
圧縮開放気筒選択部122は、余裕トルクが要求トルクTR以上であれば(ステップS2でYes)、複数の気筒3から一以上の圧縮開放気筒を選択する(ステップS3)。例えば、圧縮開放気筒選択部122は、圧縮開放気筒の排気弁34の開放により生じる負荷トルクの絶対値TDと要求トルクTRの和がエンジン4の最大出力トルクTmaxを超えないように、圧縮開放気筒を選択する。そして、燃料噴射量決定部123は、負荷トルクの絶対値TDと要求トルクTRの和を出力トルクTOに決定する(ステップS4)。
【0058】
圧縮開放気筒選択部122は余裕トルクが要求トルクTR未満であれば(ステップS2でNo)、圧縮開放気筒を選択しない(ステップS5)。圧縮開放気筒が選択されない場合、燃料噴射量決定部123は、要求トルクTRを出力トルクTOに決定する(ステップS6)。
【0059】
燃料噴射量決定部123は、決定した出力トルクTOに対応する燃料噴射量を決定する(ステップS7)。具体的には、燃料噴射量決定部123は、エンジン4の出力トルクTOと燃料噴射量の関係を示す燃料出力マップを参照して、決定した出力トルクTOに対応する燃料噴射量を決定する。
【0060】
噴射制御部125は、各気筒3に燃料を噴射する燃料噴射部37を制御して、燃料噴射量決定部123が決定した燃料噴射量の燃料を稼働気筒に噴射させる(ステップS8)。排気弁制御部124は、圧縮開放気筒の圧縮工程中に圧縮開放気筒の排気弁34を開放する(ステップS9)。なお、ステップS8とステップS9は、並列に実行される。
【0061】
[エンジン制御装置1の効果]
以上説明したとおり、エンジン制御装置1は、活性温度に達すると排気ガスを浄化する触媒36が設けられている排気管32に接続された複数の気筒3を有するエンジン4に対する要求トルクの大きさに応じて、燃料を噴射させずに圧縮工程中に排気弁を開放する圧縮開放気筒を複数の気筒3から選択する。次に、エンジン制御装置1は、排気弁34の開放により生じる負荷トルク及び要求トルクに応じて、複数の気筒3のうちの圧縮開放気筒以外の稼働気筒に噴射させる燃料噴射量を決定する。そして、エンジン制御装置1は、圧縮開放気筒の圧縮工程中に圧縮開放気筒の排気弁34を開放し、各気筒3に燃料を噴射する燃料噴射部37を制御して、決定した燃料噴射量の燃料を稼働気筒に噴射させる。
【0062】
上記の構成により、エンジン制御装置1は、圧縮開放気筒の圧縮工程で加熱された空気を排気管32に排出させる。また、エンジン制御装置1は、負荷トルク及び要求トルクに応じた量の燃料を稼働気筒に噴射させるので、エンジン4が無負荷状態であるか、負荷状態であるかに関わらず、排気ガス温度を上げることができる。さらに、エンジン制御装置1は、要求トルクのみに応じた量よりも多量の燃料を気筒3に噴射させるため、稼動気筒から排出される排気ガスの温度を、要求トルクのみに応じた量の燃料を稼働気筒に噴射させるときの排気ガスの温度よりも高くできる。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0064】
1 エンジン制御装置
11 記憶部
12 制御部
121 要求トルク取得部
122 圧縮開放気筒選択部
123 燃料噴射量決定部
124 排気弁制御部
125 噴射制御部
2 車両
3 気筒
31 吸気管
32 排気管
33 吸気弁
34 排気弁
35 ピストン
36 触媒
37 燃料噴射部
38 アクチュエータ
4 エンジン
5 出力軸
6 発電機
7 車輪
【要約】      (修正有)
【課題】エンジンの運転状態によらず排気ガスの温度を上げることができるエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン制御装置1は、活性温度に達すると排気ガスを浄化する触媒が設けられている排気管に接続された複数の気筒を有するエンジンに対する要求トルクを取得する要求トルク取得部121と、要求トルクの大きさに応じて、燃料を噴射させない圧縮開放気筒を複数の気筒から選択する圧縮開放気筒選択部122と、圧縮開放気筒の圧縮工程中に圧縮開放気筒の排気弁を開放する排気弁制御部124と、排気弁の開放により生じる負荷トルク及び要求トルクに応じて、複数の気筒のうちの圧縮開放気筒以外の燃料を噴射させる稼働気筒に噴射させる燃料噴射量を決定する燃料噴射量決定部123と、各気筒に燃料を噴射する燃料噴射部を制御して、燃料噴射量決定部123が決定した燃料噴射量の燃料を稼働気筒に噴射させる噴射制御部125と、を有する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15