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特許7416926自動車のデジタル照明装置の設定値を適合させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】自動車のデジタル照明装置の設定値を適合させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20240110BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20240110BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20240110BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20240110BHJP
   H05B 47/18 20200101ALI20240110BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20240110BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240110BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20240110BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
F21V7/00 590
F21V14/04
H05B45/10
H05B47/18
F21Y105:10
F21Y115:10
F21W102:14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022520625
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020077293
(87)【国際公開番号】W WO2021063982
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】1911049
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】アリ、カンジ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンタン、プラット
(72)【発明者】
【氏名】ヤセール、アルメイオ
(72)【発明者】
【氏名】ハフィド、エリドリッシ
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142474(JP,A)
【文献】特表2017-521298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0264885(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
F21V 7/00
F21V 14/04
H05B 45/10
H05B 47/18
F21Y 105/10
F21Y 115/10
F21W 102/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス光源(110)と光学系(120)とを備えた自動車のデジタル照明ユニット(100)によって投影されることを意図したデジタル照明設定値(10)を適合させるための方法であって、前記方法は、
フィルタリングされたデジタル照明設定値(F(10))を前記デジタル照明ユニット(100)に中継する前に、演算ユニット(130)により、前記デジタル照明設定値(10)にデジタルフィルタリング(F)を適用するステップを備え、前記デジタルフィルタリング(F)は、デジタル照明設定値の投影P(10)の間に前記光学系(120)により引き起こされる幾何収差を予期して対処し、
前記デジタル照明設定値(10)が、前記マトリックス光源(110)の各要素光源(112)に対する要素光強度設定値(12)を含み、前記デジタルフィルタリング(F)は、各列または各行の要素光強度設定値(12)に対して専用のデジタルフィルタを適用することを含み、前記専用のデジタルフィルタは、前記光学系(120)によって、前記要素光強度設定値の列または行に対応する、投影されたピクセルの列または行の空間的近傍の一部を形成する投影されたピクセルの列または行に引き起こされる幾何収差を予期して対処することを特徴とする、方法。
【請求項2】
記デジタルフィルタリングが、予め定められた要素設定値フィルタリング値(F)に従って、要素光強度設定値(12)を選択的に減少させることを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記デジタル照明設定値が、前記デジタル照明ユニット(100)の投影解像度に少なくとも等しい解像度を有するデジタル画像を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マトリックス光源(110)の各要素光源(112)に対して実行される、以下の予備ステップ、すなわち、
i. 要素光源(112)が最大出力で光を放射するように制御されたときに、前記光学系(120)を通して投影されるピクセルの空間光分布P(12)を決定するステップと、
ii. コンピュータによって、最大出力の低減係数または低減値を決定するステップであって、低減された放射出力が、投影されたピクセルP(12)の近傍のピクセルを最大でも所定の程度の輝度で照明する空間光分布を生成するように、決定するステップと、
iii. 前記低減係数又は低減値を、前記マトリックス光源(110)における前記要素光源(112)の位置に関連付けるとともに、これを、対応する要素光強度設定値(12)に対する要素設定値フィルタリング値(F)として記憶素子に記憶させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記予備ステップは、要素光源(112)の各行又は各列に対して1回ずつ行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
複数の要素光源(112)から構成されたマトリックス光源(110)と、光学系(120)とを有するデジタル照明ユニット(100)を備えた自動車用照明装置(20)であって、
前記照明装置(20)は、さらに、デジタル照明設定値(10)を受信するように意図されたデータ受信ユニット(140)を備え、前記照明装置は、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法に従って、受信したデジタル照明設定値(10)を適合させるように構成された演算ユニット(130)を含み、
前記照明装置(20)は、さらに、フィルタリングされたデジタル照明設定値F(10)に従って前記デジタル照明ユニット(100)を制御するように意図された制御ユニット(150)を備えている、照明装置(20)
【請求項7】
プロセッサによって実行されると、前記プロセッサが請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法を実施するようになる一連の命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項8】
非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記記憶媒体は、請求項に記載のコンピュータプログラムを記憶していることを特徴とする非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用照明モジュールに関するものである。特に、本発明は、マトリックス光源を含むこのようなモジュールのための制御方法に関するものである。
【0002】
発光ダイオード(LED)は、少なくとも1つの閾値強度を有する電流を流すと発光する半導体電子部品である。自動車分野では、LED技術は、光を用いた合図の多くのソリューションにおいてますます使用されてきつつある。LEDマトリックスは、自動車用照明の分野で特に注目されている。マトリックス光源は、車両の姿勢や路面形状に応じて照射する光線の高さを調整する「レベリング」タイプの機能に使用されることがある。また、水平面内で道路に沿うように発光方向を調整するDBL(Digital Bending Light(デジタルベンディングライト))、他の道路利用者に迷惑をかけないようにハイビームで発光した光に遮光領域を形成する防眩機能に相当するADB(Adaptive Drive Beam(アダプティブドライビングビーム))、さらに、ピクセル化光ビーム(ピクセル化された光ビーム)を用いて地面に模様を投影する機能など、さまざまな応用が可能である。現行の法規制に対応するため、遮光領域の輪郭を照明装置で再現できるようにする必要がある。
【0003】
前述した照明用途に、異なるタイプの技術を用いた光源を使用することが知られている。これは、例えば、モノリシック技術を含むことができ、これによれば、ピクセル(画素)に相当する多数のLEDタイプの要素光源が、共通の半導体基板にエッチングされる。統合化された電気的接続により、ピクセルは互いに独立して活性化(点灯)させることができる。また、マイクロLEDという技術も知られており、これは、典型的には150μmより小さいサイズの(複数の)LEDからなるマトリックスを生成するものである。また、マイクロミラーまたはDMD(digital micromirror device(デジタルマイクロミラーデバイス))タイプのモジュールもあり、これは均一なビームに光強度変調器を用いる投影技術である。圧電素子によって位置が制御されたマイクロミラーは、入射光を選択的に反射するように配置され、これにより、各マイクロミラーがこのようにして生成されたピクセルマトリックスの1つの要素光源に対応するようになる。光源からの光は、光学系によってマイクロミラーのマトリックス上に導かれる。
【0004】
マトリックス光源から放射された光は、通常は、少なくとも1つの光学レンズを備えた光学系を通過し、自動車の前方に所望の輪郭を投影する。しかしながら、所定のマトリックス光源及びこれに関連付けられた出力光学系に対して、当該光学系を通るマトリックスの要素光源の応答は、均質なものでない。典型的には、中心領域は高い解像度で投影することができるが、解像度は光源の視野の端に向かって漸減する。光源は同様に35°のオーダーの大きな開口を有していてもよい。したがって、解像度の低い領域(すなわち視野の端)における正確な輪郭の投影は、既知の解決策を用いても困難であり、不可能でさえある。このような領域内に正確な輪郭やパターンを投影しても、一般にぼやけた、または著しく歪んだ輪郭やパターンにしかならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの目的は、従来技術によって提起された問題のうちの少なくとも1つを克服することにある。特に、本発明は、マトリックス光源及びこれに関連する光学系により投影されるパターン又は輪郭の精度を、より複雑又は高価な光学系を用いることなく、高めることができる方法を提案することを目的としている。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、提案されるのは、自動車のデジタル照明ユニットによって投影されることを意図したデジタル照明設定値を(修正改変して)適合させるための方法である。照明ユニットは、マトリックス光源および光学系を備える。この方法は、フィルタリングされたデジタル設定値を照明ユニットに中継する前に、演算ユニットによってデジタル設定値にデジタルフィルタリングを適用するステップを含んでいることが注目される。デジタルフィルタリングは、デジタル設定値の投影中に光学系によって引き起こされる幾何収差を予期して対処する。
【0007】
好ましくは、デジタル照明設定値は、マトリックス光源の各要素光源に対する要素光強度設定値を含んでいてもよい。好ましくは、デジタルフィルタリングは、所定の要素光強度設定値のフィルタリング値に従って要素光強度設定値を選択的に減少させることを含んでいてもよい。
【0008】
好ましくは、前記フィルタリングは、前記要素光設定値の各々に対して(1つの)専用のデジタルフィルタを適用することを含み、前記専用のデジタルフィルタは、前記光学系によって、前記要素光設定値に対応する投影されたピクセルの空間的近傍の一部を形成する投影されたピクセルに引き起こされる幾何収差を予測(して対処)する。
【0009】
ピクセルの近傍とは、例えば、当該ピクセルを囲む所定数のピクセルをカバーしていてもよい。これに代えて、所定の半径の円内のすべてのピクセルをカバーしていてもよい。
【0010】
好ましくは、前記フィルタリングは、各列または各行の要素光設定値に対して(1つの)専用のデジタルフィルタを適用することを含み、前記専用のデジタルフィルタは、前記要素光設定値の列または行に対応する、投影されたピクセルの(複数の)列または(複数の)行の空間的近傍の一部を形成する、投影されたピクセルの列または行に引き起こされる幾何収差を予期(して対処)する。
【0011】
照明設定値は、好ましくは、照明装置の投影解像度に少なくとも等しい解像度を有するデジタル画像で構成されてもよい。
【0012】
好ましくは、本方法は、マトリックス光源の各要素光源について、以下の予備ステップを含んでもよい。
【0013】
i) 要素光源が最大出力で光を放射するように制御されたときに、前記光学系を通して投影されるピクセルの空間光分布Pを決定するステップ。
【0014】
ii) コンピュータによって、最大出力の低減係数または低減値を決定するステップであって、低減された放射出力が、投影されたピクセルの近傍のピクセルを最大でも所定の程度の輝度で照明する空間光分布を生成するように、決定するステップ。
【0015】
iii) 前記低減係数又は低減値を、前記マトリックス光源における前記光源の位置に関連付けるとともに、これを、対応する要素設定値に対する要素設定値フィルタリング値として記憶素子に記憶させるステップ。
【0016】
予備ステップi)~iii)を、好ましくは、要素光源の各行又は列に対して1回ずつ実施することができる。
【0017】
本発明の別の態様によれば、自動車用の照明装置が提案される。この照明装置は、デジタル照明ユニットを備え、当該デジタル照明ユニットは、(複数の)要素光源で構成されたマトリックス光源を備えるとともに、光学系も備えている。この装置は、照明設定値を受信するように意図されたデータ受信ユニットをさらに備えている。照明装置は、本発明の一態様による方法に従って、受信した照明設定値を適合させるように構成された演算ユニットを備えていることが注目される。照明装置は、さらに、適合された照明設定値に従って照明ユニットを制御するように意図された制御ユニットを備えている。
【0018】
好ましくは、前記制御ユニット及び/又は前記演算ユニットは、前記方法を実行するために、適切なコンピュータプログラムでプログラムされたマイクロコントローラ要素子又はデータプロセッサを備えていてもよい。
【0019】
光学系の配置は、好ましくは、照明ユニットの要素光源から放射された光がそこを通過するような配置とすることができる。光学系は、好ましくは、少なくとも1つの光学レンズを備えていてもよい。
【0020】
データ受信部は、自動車内部のデータバスを介してデータの受信/送信を行うことができるネットワークインタフェースを備えていることが好ましい。例えば、バスは、CAN(Controller Area Network(コントローラエリアネットワーク))バス、イーサネットバス、
GMSL(gigabit multimedia serial link(ギガビットシリアルメディアリンク))タイプのバス、またはFPD-Link IIIバスなどのLVDS(low voltage differential signaling(低電圧差動伝送))技術を使用するバスであってもよい。
【0021】
マトリックス光源は、好ましくは、共通の基板にエッチングされ、互いに独立して活性化(給電)可能な(複数の)半導体素子を有する(複数の)要素発光光源を備えたモノリシック光源であってよい。
【0022】
マトリックス光源は、好ましくは、小さいサイズ、典型的には150μmより小さいサイズの、発光ダイオード、LEDによって生成される(複数の)要素光源のマトリックスを備えた、マイクロLEDタイプのマトリックスを備えていてもよい。
【0023】
マトリックス光源は、好ましくは、マイクロミラー装置、DMD(digital micromirror device(デジタルマイクロミラー装置))を備えていてよく、このような装置では、要素光源がマトリックス状に設けられたマイクロミラーを備え、当該マイクロミラーが、その位置に応じて入射光を選択的に反射する。
【0024】
本発明のさらに別の態様によれば、提案されるのはコンピュータプログラムであり、当該コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されると、プロセッサが本発明の一態様に従った方法を実施する結果となる一連の命令のシーケンスを含む。
【0025】
本発明の別の態様によれば、提案されるのは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記媒体は、本発明の前記態様によるコンピュータプログラムを記憶する。
【0026】
本発明による態様を用いることにより、光学系によって投影される画像に引き起こされる幾何収差(変形やぼやけなど)を予期(して対処)することが可能となる。これは、好ましくはコンピュータソフトウェアによって実施されるデジタル方法を用いて達成される。したがって、この解決策は、より少ない変形しか生成しないがより高価である光学系を、使用する必要がない。このアプローチにより、提案する照明装置の製造コストを比較的安定させながら、その光学的挙動を明確に改善することが可能となる。この改良は、より低い輝度で正確な輪郭やパターンを投影する必要があるADB(Adaptive Driving Beam(アダプティブドライビングビーム))機能を持つ照明装置において、より有益である。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、実施例の説明、および図面からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の好適な一実施形態に係る方法の図である。
図2】本発明の好適な一実施形態に係る、照明装置によって投影されるピクセルの空間光分布の図である。
図3】本発明の好適な一実施形態に係る照明装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
そうしてはならないと特定されていない限り、ある一つの所定の実施形態について詳細に説明されている技術的特徴は、非限定的な例示として説明されている他の実施形態の文脈で説明されている技術的特徴と組み合わせてもよい。
【0030】
本発明を理解するために必要な自動車用照明モジュールの(複数の)要素に着目して説明する。公知の態様でそのようなモジュールの一部を形成する他の要素については、それらへの言及または詳細な説明を省略する。例えば、それ自体既知の、マトリックス光源への電力供給に関与するコンバータ回路の存在及び動作は、詳細に説明しない。
【0031】
マトリックス光源は、多数の要素光源、例えばLEDタイプのエレクトロルミネッセンス半導体素子系の光源の数千個から生成することができる。このような光源は、35°のオーダーの大きな視野をカバーすることができる。自動車用の照明装置では、少なくとも1つの光学レンズを含む光学系が、典型的には、このようなマトリックス光源に関連付けられる。 一般的に、投影画像の中央部は解像度が高く、画像端の領域は解像度が低い。高解像度の中央部(開口部(アパーチャ)の約-11°~11°に相当)では、要素光源により放射された光が1つの投影ピクセルを生成し、隣接する約2つのピクセルの明るさにも寄与することが確認されている。平均領域(開口部の約±11~14°に相当)では、要素光源により放射された光が1つの投影ピクセルを生成し、隣接する約4つのピクセルの明るさにも寄与する。低解像度のエッジ領域では、1つの光源から放射された光が1つの投影ピクセルを生成すると同時に、その近傍の約8つのピクセルの明るさに寄与する。そのため、マトリックス光源の一つの要素光源が発する光の空間分布は、マトリックス光源を構成するすべての要素光源に関して均一ではなく、それ以外の要素光源の特徴が同じであっても、光学系に対する位置に依存して変わる。また、要素光源が発する光の空間分布は、その動作出力に依存し、100%の出力(常時点灯)では、低い出力に比べて、より多くの数の隣接ピクセルの照度に寄与しやすいことが観察されている。したがって、投影された光ビームのぼやけ効果あるいは光学系によりもたらされた幾何収差の影響は、要素光源の光強度を下げることで、少なくとも部分的に打ち消すことができる。発光ダイオード光源の出力は、既知の方法により、所望の出力を表すデューティサイクルによって特徴付けられるパルス幅変調(PWM)信号によってその電流供給を駆動することによって、影響を与えることができる。本発明は、これらの観察を利用して、照明ユニットによって生成される光学収差を制限する方法を実施するものである。
【0032】
図1の説明図は、デジタル照明ユニット100によって投影されることを意図したデジタル照明設定値10の提供を示している。デジタル設定値は、例えば、各ピクセル12が光強度値を有する画像からなり、この光強度値は、理想的には、デジタル照明ユニット100のマトリックス光源110の対応する要素光源112によって再現されるべきものである。マトリックス光源110は、モノリシック光源、デジタルマイクロミラーデバイス、又は当該技術分野で知られている他のマトリックス光源から構成することができる。また、デジタル照明装置100は、マトリックス光源の下流側に放射光の方向に沿って配置された、少なくとも1つの光学レンズ120を含む光学系を備えている。この目的のためにプログラムされたプロセッサまたはマイクロコントローラ素子などの演算ユニット130は、元のデジタル設定値10にデジタルフィルタリングFを適用し、これによりフィルタリングされたデジタル設定値F(10)を生成する。後者は、照明ユニットに中継され、最終的にマトリックス光源110及び光学系によって投影される。その結果、投影画像P(10)が得られる。
このフィルタリングステップにより、光学系120によって引き起こされる幾何収差を予測(して対応)することが可能になる。投影ピクセルP(12)は、光の空間分布に対応し、中心で最大強度を有し、その近傍で減少するベル型の傾向を有することに留意されたい。フィルタFは、光学系120によって各要素光源112に対して生成される分布に依存する。
【0033】
本発明の好適な一実施形態によれば、元の(オリジナルの)設定値10の各ピクセル12の値は、フィルタFのデータの一部を形成する所定の低減係数又は低減値に従って演算ユニット130によって(修正改変して)適合され、これらの要素設定値フィルタリング値の各々は、所定のピクセルP(12)に対して放射される光の空間分布がその隣接ピクセルに及ぼす影響を制限するように選択される。好適な一実施形態によれば、マトリックス光源の水平方向の挙動は、実質的に均質である。そのような場合、1つの要素設定値フィルタリング値が、要素設定値10の各列に対して選択され、したがって、演算ユニット130の演算に対する要求が限定される。
【0034】
図2は、好ましい一実施形態に従って、要素設定値フィルタリング値がどのようにして得られるかを示す図である(本発明はこの例に限定されるものではない)。縦軸は、要素光源のピクセルまたはこれと等価的な光源/列の参照を示している。横軸は、最大正規化強度に対する輝度のパーセンテージを示す。ここでは、インデックスXのピクセルについて考察する。その光源Xが100%のデューティサイクルで動作する場合、曲線「PWM100%」の下の領域は、放射された光の全てを表しており、曲線の傾向は、この光放射の空間分布を示している。隣接するピクセル/列 X+1(12%),X+2(4%),X+3(0%,最低1%に引き上げ,点線で示す)に対して示された値は、幾何収差が低減された投影を保証するために、ピクセルXの空間光分布が従わなければならない所定の輝度閾値を示している。これらの値は、精密な測定によって実験により決定されるか、あるいは、コンピュータシミュレーション方法によって決定されるかのいずれかである。これらの値は、使用されるマトリックス光源、要素光源の特徴、および使用される光学系に依存する。
【0035】
インデックスXの要素光源を100%の輝度に相当する設定値にすると、隣接するすべてのピクセルの輝度が高くなりすぎることがわかる。すべての課された制約に従うために、元の設定値が100%を示す場合、50%の出力がインデックスXのピクセルに印加されるべきである。インデックスXの各設定値に対する要素設定値フィルタリング値として、対応する重み0.5がメモリ要素に格納される。インデックスXのピクセルの他の(光)強度に対してフィルタリング値を改善してもよい。この方法は、すべての要素光源について、またはすべての要素光源の列について、1回実行される。この方法は、対象としている照明ユニットに対する(複数の)フィルタリング値Fを生成する。要素設定値フィルタリング値が、要素光源のすべてに対して均質ではないことに留意されたい。なぜなら、光学系120に対するそれらの(要素光源の)位置がそれら(要素光源)が生成する光分布に大きな影響を与えるからである。
【0036】
これらの重み、あるいは要素設定値フィルタリング値がすべて特定されると、フィルタを適用するステップは、好ましくは以下のアルゴリズムによって実行される。
【0037】
元の(オリジナルの)設定値のすべてのピクセルi,jに対して以下を行う。
【数1】
【0038】
ここで、Iは元の設定値10、Iはフィルタリングされた設定値F(10)、Wは列「c」のフィルタリング重みのベクトル、iMinはアルゴリズムがすべての光強度を0に設定してしまうのを避けるための下側しきい値である。値minvalueにより、すべての隣接ピクセルの中から最悪のケース、つまりピクセルXによって最も影響を受けた隣接ピクセル、を維持することが可能となる。与えられた例では、或るピクセルに対して、それに隣接する10列がアルゴリズムによって適合される。なぜなら、10列が、前記或るピクセルから放射される光の空間分布によって影響を受けやすいからである。これらのデータは、本発明の範囲から逸脱することなく、考慮対象である光源/光学システムの特徴に沿って、用途に応じて、適合されるべきであることは言うまでもない。
【0039】
図3は、本発明の好適な一実施形態に係る照明装置20を模式的に示している。これは、(複数の)要素光源から構成されたマトリックス光源と、光学系と、を備えたデジタル照明ユニット100を含む。データ受信ユニット140は、自動車のデータバスを介してデジタル画像の形態で、照明設定値10を受信することが可能である。典型的には、前記設定値は、車両の中央制御モジュールから送られて来る。この装置は、受信した各照明設定値10を上述の方法に従って適合させるように構成されたマイクロコントローラ要素130を備えている。装置はさらに、フィルタリングされた照明設定値F(10)に従って照明ユニット100を制御するように意図された制御ユニット150を備えている。これを行うために、パルス幅変調された制御信号のデューティサイクルは、好ましくは、フィルタリングされた設定値F(10)を反映するように適合される。
【0040】
なお、記載された実施形態は、本発明の保護範囲を限定するものではないことは言うまでもない。今までの説明を参照することで、本発明の範囲を逸脱することなく、他の実施形態を予期することができる。
【0041】
保護範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3