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  • 特許-発光装置及びその製造方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02257 20210101AFI20240111BHJP
【FI】
H01S5/02257
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018234017
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020096112
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】橋本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】三浦 創一郎
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-138953(JP,A)
【文献】特開平11-354889(JP,A)
【文献】特開2006-184758(JP,A)
【文献】特開2018-133380(JP,A)
【文献】特開平10-099978(JP,A)
【文献】特開2018-139237(JP,A)
【文献】特開2017-041561(JP,A)
【文献】特開2016-119477(JP,A)
【文献】特開2012-222125(JP,A)
【文献】特表2012-512508(JP,A)
【文献】実開昭58-090635(JP,U)
【文献】実開昭57-002673(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0017741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 31/00 - 33/64
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口した凹部が設けられているパッケージと、
前記凹部を覆うように前記パッケージに固定されているキャップと、
前記キャップと前記パッケージとに囲まれた空間内に配置された、レーザ光を出射する1以上のレーザ素子と、を備え、
前記キャップは、上面及び下面を有する透光性部材と、前記下面において前記レーザ光を外部へ取り出す光取出領域を避けて設けられた遮光膜と、を有し、
前記遮光膜は、上面視において、前記レーザ素子の少なくとも一部を覆う位置に設けられており、
前記遮光膜には、所定の情報を読み取り可能なマークとして二次元コードまたは数字が設けられている発光装置。
【請求項2】
前記レーザ素子からの前記レーザ光を前記透光性部材に向けて反射する光反射部材を備え、
上面視において、前記遮光膜は、前記光反射部材を囲む形状で設けられている請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記レーザ素子は、光出射端面及び光反射端面を有し、
前記遮光膜は、前記光反射端面から出射する光が、直接又は前記凹部の内壁で反射されて到達する位置に設けられている請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記1以上のレーザ素子として、出射するレーザ光の視感度が異なる複数のレーザ素子を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
上面視において、前記マークは、前記1以上のレーザ素子のうち最も視感度が低いレーザ光を出射するレーザ素子に最も近接して配置されている請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記1以上のレーザ素子として、青色レーザ光を出射する青色レーザ素子と、緑色レーザ光を出射する緑色レーザ素子と、赤色レーザ光を出射する赤色レーザ素子と、を有する請求項3~5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記マークは、前記遮光膜が有る部分と無い部分との組み合わせによって構成されている請求項1~6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記遮光膜は、前記透光性部材の外縁まで又は外縁の近傍まで延びており、
前記遮光膜の一部に接合部材を接続することにより、前記キャップと前記パッケージとが接合されている請求項1~7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
第1主面及び第2主面を有する透光性部材と、前記第2主面の一部に設けられた遮光膜と、を有するキャップを準備する工程と、
前記遮光膜の一部を加工することにより、所定の情報を読み取り可能なマークとして二次元コードまたは数字を形成する工程と、
凹部が設けられているパッケージと、前記凹部内に配置された1以上のレーザ素子と、を準備する工程と、
前記マークが形成された側を前記パッケージの側として、前記キャップを前記パッケージに前記凹部を覆うように固定する工程と、を備える発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記マークを形成する工程において、前記透光性部材の前記第1主面の側から加工用レーザ光を照射することにより前記マークを形成する請求項9に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記マークを形成する工程において、前記透光性部材の前記第2主面の側に吸引装置を配置し、前記加工用レーザ光の照射時に、前記吸引装置を用いて、前記加工用レーザ光の照射によって生成された加工塵を吸引する請求項10に記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
パッケージとキャップとが接合することで形成された閉空間に、レーザ光を出射する1以上のレーザ素子が配置されており、
前記キャップは、上面及び下面を有する透光性部材と、前記下面において前記レーザ光を外部へ取り出す光取出領域を避けて設けられた遮光膜と、を有し、
前記遮光膜は、上面視において、前記レーザ素子の少なくとも一部を覆う位置に設けられており、
前記遮光膜には、所定の情報を読み取り可能なマークとして二次元コードまたは数字が設けられており、
前記マークは、上面視において前記レーザ素子の共振器の延長線上を避けて配置されている発光装置。
【請求項13】
パッケージとキャップとが接合することで形成された閉空間に、レーザ光を出射する1以上のレーザ素子が配置されており、
前記キャップは、上面及び下面を有する透光性部材と、前記下面において前記レーザ光を外部へ取り出す光取出領域を避けて設けられた遮光膜と、を有し、
前記遮光膜は、上面視において、前記レーザ素子の少なくとも一部を覆う位置に設けられており、
前記遮光膜には、所定の情報を読み取り可能なマークとして二次元コードまたは数字が設けられており、
前記マークは、上面視において前記レーザ素子の光出射端面及び光反射端面を共振器方向に延長させた領域を避けて配置されている発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子のパッケージの例としては、特許文献1が挙げられる。特許文献2には、パッケージ部材と、パッケージ部材に接合されたカバーガラスと、パッケージ部材とカバーガラスに囲まれた空間領域に配置されたレーザチップと、を有する光デバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-124541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光デバイスのカバーガラスは、その全体が光透過性である。このような構成では、レーザチップからの光の一部が迷光としてカバーガラスから取り出される可能性がある。また、特許文献1に記載の光デバイスは、ロット番号等の情報を印字することは想定されておらず、このような情報を印字する場所が確保されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は以下の発明を含む。
上方が開口した凹部が設けられているパッケージと、
前記凹部を覆うように前記パッケージに固定されているキャップと、
前記キャップと前記パッケージとに囲まれた空間内に配置された、レーザ光を出射する1以上のレーザ素子と、を備え、
前記キャップは、上面及び下面を有する透光性部材と、前記下面において前記レーザ光を外部へ取り出す光取出領域を避けて設けられた遮光膜と、を有し、
前記遮光膜は、上面視において、前記レーザ素子の少なくとも一部を覆う位置に設けられており、
前記遮光膜には、所定の情報を読み取り可能なマークが設けられている発光装置。
【0006】
第1主面及び第2主面を有する透光性部材と、前記第2主面の一部に設けられた遮光膜と、を有するキャップを準備する工程と、
前記遮光膜の一部を加工することにより、所定の情報を読み取り可能なマークを形成する工程と、
凹部が設けられているパッケージと、前記凹部内に配置された1以上のレーザ素子と、を準備する工程と、
前記マークが形成された側を前記パッケージの側として、前記キャップを前記パッケージに前記凹部を覆うように固定する工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
このように、遮光膜が迷光低減とマーク形成領域確保という両方の役割を備えることにより、これらの効果を得ることができる小型化可能な発光装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態に係る発光装置の模式的平面図である。
図1B図1A中のIB-IB線における模式的断面図である。
図2】キャップの模式的下面図である。
図3】発光装置とレンズとの組み合わせの一例を示す模式的断面図である。
図4】実施形態に係る発光装置の製造工程を概略的に示すフローチャートである。
図5】キャップ準備工程を説明するための模式的断面図である。
図6】マーク形成工程を説明するための模式的断面図である。
図7A】パッケージ及びレーザ素子準備工程を説明するための模式的平面図である。
図7B図7A中のVIIB-VIIB線における模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための方法を例示するものであって、本発明を以下の実施形態に特定するものではない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0010】
図1Aは、実施形態に係る発光装置100の模式的平面図である。図1Bは、図1A中のIB-IB線における模式的断面図である。発光装置100は、パッケージ10と、キャップ20と、レーザ素子30(31、32、33)と、を有する。パッケージ10には、上方が開口した凹部11が設けられている。キャップ20は、凹部11を覆うようにパッケージ10に固定されている。レーザ素子30は、キャップ20とパッケージ10とに囲まれた空間内に配置されている。レーザ素子30はレーザ光を出射する。
【0011】
キャップ20は、上面21a及び下面21bを有する透光性部材21と、下面21bに設けられた遮光膜22と、を有する。図1Aにおいて網掛けを施した領域が、遮光膜22が設けられた領域である。遮光膜22は、下面21bにおけるレーザ光を外部へ取り出す部分である光取出領域を避けて設けられている。遮光膜22は、上面視において、レーザ素子30の少なくとも一部を覆う位置に設けられている。遮光膜22には、所定の情報を読み取り可能なマーク23が設けられている。なお、図1Aにおいて、一部の部品は透光性部材21及び遮光膜22を透過した状態で破線で示している。本明細書において、透光性部材21のレーザ光が照射される側の面を下面といい、それとは反対の側の面を上面という。そのほかの部材の上下面や各部材の位置関係についてもこれに倣う。
【0012】
遮光膜22は、レーザ素子からの光を遮ることによる迷光低減の効果を有すると共に、マーク23の形成領域として用いられる。これにより、それらの効果を得ることができる小型化可能な発光装置100を得ることができる。図1Bに示すように透光性部材21の側面に遮光部材がなく側面が露出している場合は、もし遮光膜を下面21bでなく上面21aに設けると、遮光膜の下面で反射された光が透光性部材21の側面から取り出される可能性がある。このため、遮光膜22は下面21bに設けることが好ましく、これにより、透光性部材21の側面からの迷光を低減することができる。また、下面21bの方が上面21aよりも照射されるレーザ光の光路長が短いため、レーザ光のサイズが小さい。すなわち、下面21bの方が上面21aよりも、遮光膜22が避けるべき光取出領域が小さい。このため、遮光膜22を下面21bに設けることで、上面21aに設ける場合と比較して、遮光膜22の面積を大きくすることができる。マーク23を形成するためには遮光膜22の面積が大きい方が有利である。
【0013】
遮光膜22は、迷光が発光装置100の外に取り出される可能性を低減することができる位置に配置する。レーザ素子30は光出射端面及び光反射端面を有するが、迷光とは、例えば、光反射端面から漏れる光である。このため、遮光膜22は、光反射端面から出射する光が、直接又は凹部11の内壁で反射されて到達する位置に設けられていることが好ましい。なお、凹部11の内壁は底面と側壁を含む。レーザ素子30がサブマウント40の上に設けられている場合は、遮光膜22は、さらに、光反射端面から出射する光がサブマウント40で反射されて到達する位置に設けられていることが好ましい。これにより、サブマウント40で反射された光も遮光膜22で遮ることができる。なお、光反射端面から出射する光が直接又は凹部11の内壁で反射されて到達する位置のすべてに遮光膜22を設けると、レーザ素子30の光出射端面から出射されるレーザ光の主要部を遮る場合がある。このため、遮光膜22は、光反射端面からの光が到達する位置のすべてに設けなくてもよい。また、レーザ素子30からの光は、各部材で反射される度にその一部がそれらの部材によって吸収されるため、遮光膜22で反射された光が他の部材で再反射されることによって到達する位置には遮光膜22を設けなくてもよい。
【0014】
発光装置100は、レーザ素子30からのレーザ光を透光性部材21に向けて反射する光反射部材50を有することができる。この場合、光反射部材50の光反射面で反射されたレーザ光の主要部が通過する領域が光取出領域である。レーザ光の主要部とは、ピーク強度値に対して1/e以上の強度を有する光が分布する領域として特定することができる。例えば、光反射部材50の表面のうちレーザ光を反射する面である光反射面の直上が光取出領域である。このため、図1Aにおいて、遮光膜22は、上面視において光反射部材50を囲む形状で設けられる。言い換えれば、光反射部材50の直上には遮光膜22が設けられていない。これにより、光反射部材50の光反射面で反射されたレーザ光を遮光膜22に遮られることなく外部に取り出すことができる。図1Bにおいて、レーザ素子30はその光出射端面が光反射部材50の光反射面と向き合うように配置されている。図1Aに示すように、上面視において、少なくともレーザ素子30の光反射端面と凹部11の縁との間に遮光膜22が設けられていることで、光反射端面からの漏れ光が発光装置100の外部に取り出される可能性を低減することができる。
【0015】
図1Aに示すように、遮光膜22は、開口を有する形状とすることができる。その開口を光取出口とし、それ以外の領域を遮光膜22で被覆することにより、迷光が発光装置100の外部に取り出される可能性を低減することができる。また、後述ように、遮光膜22の一部をパッケージ10と接合するための接合領域とするためには、遮光膜22が開口を有する形状であることが好ましい。遮光膜22の開口のサイズ及び位置は、発光装置100の外部に取り出したいレーザ光の量によって決定してよい。遮光膜22の開口は、レーザ素子30からのレーザ光の主要部の全てが通過するサイズ及び位置に設けてもよい。遮光膜22の開口は、下面21bのレーザ光の主要部の縁と開口の縁との直線距離のうち最も短い距離が0.05mm以下であることが好ましく、また、最も長い距離が0.5mm以下であることが好ましい。遮光膜22の開口は、レーザ素子30からのレーザ光の主要部の全てが通過するサイズ及び位置でなくてもよく、遮光膜22によってレーザ光の主要部の一部を遮ってもよい。図3に、発光装置100とレンズ400との組み合わせの一例を示す。発光装置100から取り出されるレーザ光をレンズに入射させる場合、レンズに入射するレーザ光がレンズ400の有効径よりも小さいことが好ましい。これにより、発光装置100とレンズ400の相対位置が設計値からずれても、レーザ光をレンズの有効径内に収めることができ、これによって迷光が発生する可能性を低減することができるためである。図3に示すように、発光装置100からのレーザ光とレンズ400の有効径がこのような関係になるように、遮光膜22をレーザ素子30からのレーザ光の一部を遮る位置に設けてもよい。
【0016】
レーザ素子30が複数ある場合、遮光膜22の開口は1つでも複数でもよい。図1Aに示すように1つのサブマウント40に複数のレーザ素子30を配置する場合は、レーザ素子30同士の距離が比較的短いため、遮光膜22の開口は1つであることが好ましい。遮光膜22の開口の形状としては、円形、楕円形、多角形などが挙げられる。多角形よりも、多角形の角が丸められた形状の方が形成容易であるため、そのような形状であってもよい。例えば、図1Aに示すように、複数のレーザ素子30が列状に配置される場合は、遮光膜22の開口の形状は、四角形又は四角形の角が丸められた形状とすることができる。
【0017】
図1Aにおいて、光反射部材50は、その中心が凹部11の中心と一致しない。このように、凹部11の中央部をレーザ素子30を配置する領域とし、レーザ素子30と凹部11の縁との間に光反射部材50を配置することが好ましい。これにより、凹部11の中央部に光反射部材50を配置する場合と比較して発光装置100を小型化することができる。また、このような配置により、遮光膜22を幅の狭い部分と広い部分とを有する形状とすることができるため、幅の広い部分にマーク23を形成することができる。
【0018】
1つの凹部11内に複数のレーザ素子30が配置されていてもよい。発光装置100は、例えば、レーザ素子30として、出射するレーザ光の視感度が異なる複数のレーザ素子を有することができる。この場合、上面視において、マーク23は、複数のレーザ素子30のうち最も視感度が低いレーザ光を出射するレーザ素子に最も近接して配置されていることが好ましい。マーク23は遮光膜22の一部に形成されるため、遮光膜22におけるマーク23が形成されている部分は形成されていない部分と比較して遮光性が低下する場合がある。例えば、マーク23が遮光膜22の有る部分と無い部分との組み合わせによって構成されている場合はマーク23を形成領域の遮光性が他の領域よりも低下する。マーク23を、視感度が低いレーザ光の光源に近付け、相対的に、視感度が高いレーザ光の光源から遠ざけることで、マーク23形成領域の遮光性の低下の影響を小さくすることが可能である。したがって、迷光低減のためにはそのような配置が好ましい。なお、ここでは視感度を基準としたが、発光装置100の用途によっては別の基準を用いてもよい。例えば、短波長の光の漏出低減を重視する場合は、短波長の光を放出するレーザ素子から相対的に遠い位置にマーク23を形成するとよい。
【0019】
図1Aでは、レーザ素子30として、青色レーザ光を出射する青色レーザ素子31と、緑色レーザ光を出射する緑色レーザ素子32と、赤色レーザ光を出射する赤色レーザ素子33と、を有する。視感度は、緑色レーザ光が最も高く、赤色レーザ光が次いで高く、青色レーザ光が最も低い。したがって、図1Aでは、マーク23は青色レーザ素子31に最も近接して配置されている。図1Aでは、青色レーザ素子31と赤色レーザ素子33の間に緑色レーザ素子32を配置しているが、迷光低減を重視する場合は、赤色レーザ素子33と緑色レーザ素子32の位置を入れ替えてもよい。
【0020】
図1Aにおいて、共振器方向の長さは、青色レーザ素子31と緑色レーザ素子32が同程度であり、赤色レーザ素子33がそれよりも長い。これは、後述するように赤色レーザ素子33がそれ以外の素子と効率が異なるためである。このため、各レーザ素子から同程度の出力を得るために赤色レーザ素子33をそれ以外の素子よりも長くしている。図1Aにおいて、遮光膜22は、赤色レーザ素子33の一部のみを被覆し、それよりも共振器方向の長さが短い青色レーザ素子31及び緑色レーザ素子32は全く被覆していない。このように、共振器方向の長さが異なる複数のレーザ素子30を配置する場合は、遮光膜22は一部のレーザ素子30を被覆するのみであってもよい。なお、共振器方向とは、例えばリッジが設けられている場合はリッジの延伸方向を指す。共振器方向は、例えば光出射端面と光反射端面とを最短距離で結ぶ方向である。
【0021】
また、マーク23を設けることによる迷光増大の割合を低減するためには、マーク23はレーザ素子30からの光が到達する可能性が比較的低い位置に設けることが好ましい。具体的には、マーク23は、上面視においてレーザ素子30の共振器の延長線上を避けて配置されることが好ましい。例えばレーザ素子30にリッジが設けられている場合は、上面視においてリッジの延長線上を共振器の延長線上とみなすことができる。図1Aでは、マーク23は、各レーザ素子30の光出射端面及び光反射端面を共振器方向に延長させた領域を避けて配置されている。このように、マーク23は、上面視においてレーザ素子30の光出射端面及び光反射端面を共振器方向に延長させた領域を避けて配置されることがより好ましい。これにより、マーク23を設けることによる迷光増大の割合をより低減することができる。図1Aでは、共振器方向の長さが最も長いレーザ素子30(赤色レーザ素子33)の複数の側面のうち1つの側面と凹部11の縁の間に、それよりも共振器方向の長さが短いレーザ素子30(青色レーザ素子31及び緑色レーザ素子32)と、マーク23とが配置されている。このように、共振器方向の長さが異なる複数のレーザ素子30を配置する場合に、上面視において共振器方向の長さが長いレーザ素子30よりも共振器方向の長さが短いレーザ素子30の方に近くなるようにマーク23を配置してもよい。
【0022】
(パッケージ10)
パッケージ10は、凹部11が設けられた本体12と、凹部11の周りの本体12の表面に設けられた金属膜13と、を含む。パッケージ10は、セラミックを主材料として形成することができる。なお、セラミックに限らず金属で形成してもよい。パッケージ10の主材料としては、例えば、セラミックでは窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素を、金属では銅、アルミニウム、鉄、複合物として銅モリブデン、銅-ダイヤモンド複合材料、銅タングステンを挙げることができる。あるいは、底部と枠部を、それぞれ主材料が異なる別個の部材として形成し、底部と枠部を接合してパッケージ10を形成してもよい。
【0023】
迷光を低減するためには、凹部11の内壁はレーザ素子30からの光に対する反射率が低いことが好ましい。凹部11の内壁において光が吸収されるほど迷光が低減するためである。このような材料としては、例えば窒化アルミニウムセラミックが挙げられる。凹部の側壁を窒化アルミニウムセラミックで構成することで、迷光低減の効果が期待できる。
金属膜13は、例えば、Ti、Pt、Auが透光性部材21側からこの順に積層された積層膜とする。金属膜13は、後述する接合部材60を接合するための部材であり、不要であれば省略してもよい。
【0024】
(キャップ20)
キャップ20は、透光性部材21と遮光膜22を有する。透光性部材21は、下面と、上面と、側面とを有する。透光性部材21は、全体として透光性である。透光性部材21は例えば直方体の形状である。透光性部材21は、サファイア、ガラス等を主材料に用いて形成することができる。透光性部材21はサファイアから形成することが好ましい。サファイアはガラスよりも熱伝導率が高いため、後述する加工用レーザ光を用いてマーク23を形成する際に、加工時の熱を拡散する能力が高い。そのため、加工時の熱負荷によるマイクロクラック等のダメージを減らすことができ、これにより発光装置100の長期信頼性を向上させることができる。
【0025】
遮光膜22は、レーザ素子30からの光を遮光する膜である。遮光膜22は、レーザ素子30が出射するレーザ光のピーク波長に対する透過率が5%以下である膜とすることができる。遮光膜22の透過率は、レーザ光のピーク波長の1/e以上の強度を有する波長帯において5%以下であることが好ましい。また、製造時に発生するレーザ素子30の発振波長のばらつきを考慮して、実際のレーザ光の波長よりも広い範囲で透過率5%以下としてもよい。レーザ素子30が複数であり、それぞれ出射するレーザ光の波長が異なる場合は、遮光膜22の透過率はすべてのレーザ光の波長に対して5%以下であることが好ましい。遮光膜22の透過率の最小値は例えば0.1%である。遮光膜22は、レーザ光を反射する膜であってもよく、吸収する膜であってもよい。より迷光を低減するためには、レーザ光の波長に対する吸収率が50%以上であることが好ましい。遮光膜22の吸収率の最大値は100%でもよく、例えば99%以下であってもよい。遮光膜22は、例えば金属膜である。金属膜と酸化膜等の別の材料を組み合わせてもよい。遮光膜22を構成する材料としては、Ti、Pt、Au、Ni、Ru、Rh、Co、Cr等の金属材料が挙げられる。遮光膜22は、例えば、Ti、Pt、Auが透光性部材21側からこの順に積層された構造を有する。
【0026】
遮光膜22は、透光性部材21の外縁まで、又は、外縁の近傍まで延びていることが好ましい。ここで、外縁の近傍とは、外縁からの距離が500μm以下である領域を指す。そして、遮光膜22の一部に接合部材60を接続することにより、キャップ20とパッケージ10とが接合されている。これにより、キャップ20とパッケージ10の接合部分まで遮光膜22を設けることができるため、迷光低減のために有利である。接合部材60としては、金属接着材を用いることが好ましい。樹脂接着材よりもレーザ光による影響を受けにくいためである。また、樹脂接着材であればアウトガスによるレーザ素子30の光出射端面への集塵が懸念されるが、金属接着材であればアウトガスが無いか或いは樹脂接着材より少ないため、集塵する確率を低減することができる。接合部材60として金属接着材を用いる場合、遮光膜22が金属膜であることで、接合部材60との接合性を良好とすることができる。金属接着材としては、Au-Sn、Ni-Sn、Ag粒子、Au粒子、Cu粒子等が挙げられる。図1Bでは、接合部材60の直上に、遮光膜22の一部と透光性部材21の一部が配置されている。このように、接合部材60の直上に、遮光膜22だけでなく透光性部材21も配置されていることで、遮光膜22のみ配置されている場合と比較して発光装置100を小型化することができる。
【0027】
パッケージ10とキャップ20とが接合することで形成された閉空間は気密封止された空間となる。このように気密封止することで、レーザ素子30の光出射端面に有機物等が集塵する確率を低下させることができる。
【0028】
図2は、キャップ20を下面21bの側から見た、キャップ20の模式的下面図である。マーク23は、例えば二次元コードである。マーク23は、遮光膜22が有る部分と無い部分との組み合わせによって構成されていてもよい。このようなマーク23は、後述するようにレーザ加工によって形成することができる。あるいは、さらなる迷光低減のため、マーク23は、遮光膜22の他の部分と同じ色である部分と変色した部分との組み合わせによって構成されていてもよい。また、マーク23が数字や文字である場合は、マーク23は遮光膜22が無い部分のみ又は変色した部分で構成されていてもよい。
【0029】
透光性部材21の上面21a及び/又は下面21bの光取出領域には、反射防止膜が設けられていてもよい。
【0030】
(レーザ素子30)
レーザ素子30は、下面と、上面と、複数の側面とを有し、複数の側面の1つである光出射端面からレーザ光を放射する。レーザ素子30として、青色レーザ光を出射する青色レーザ素子31と、緑色レーザ光を出射する緑色レーザ素子32と、赤色レーザ光を出射する赤色レーザ素子33と、を有することができる。なお、これ以外の色の光を放射するレーザ素子30を用いてもよく、また、同じ色の光を放射するレーザ素子30を複数配置してもよい。また、配置されるレーザ素子30の数は、1つでもよく、複数でもよい。図1Aでは、光反射部材50の一方の側に全てのレーザ素子30を配置したが、光反射部材50の両側にそれぞれレーザ素子30を配置することもできる。
【0031】
ここで、青色の光は、その発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にある光をいうものとする。青色レーザ素子31が放出するレーザ光のピーク波長は440nm~475nmの範囲内にあってもよい。緑色の光は、その発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲内にある光をいうものとする。緑色レーザ素子32が放出するレーザ光のピーク波長は510nm~550nmの範囲内にあってもよい。青色レーザ素子31又は緑色レーザ素子32としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、及びAlGaNを用いることができる。赤色の光は、その発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲内にある光をいうものとする。赤色レーザ素子33が放出するレーザ光のピーク波長は610nm~700nmの範囲内にあってもよい。赤色レーザ素子33としては、例えば、InAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。
【0032】
レーザ素子30は、サブマウント40を介してパッケージ10に固定されていてもよい。サブマウント40は例えば直方体の形状で構成される。サブマウント40は、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、又は炭化ケイ素を用いて形成することができる。また、サブマウント40には一部に金属膜が設けられている。
【0033】
光反射部材50の主材料としては、石英若しくはBK7(硼珪酸ガラス)等のガラス、アルミニウム等の金属、又はSi等を採用することができる。光反射部材50は、主材料の表面の一部に光反射膜を設けることで光反射面を形成することができる。光反射膜としては、Ag、Al等の金属やTa/SiO、TiO/SiO、Nb/SiO等の誘電体多層膜等を採用することができる。光反射部材50は、金属等の光反射率の高い材料を用いてその外形を形成し、光反射膜を省略してもよい。光反射部材50の光反射面は、それぞれ、反射させるレーザ光のピーク波長に対する光反射率を99%以上とすることができる。これらの光反射率は100%以下あるいは100%未満とすることができる。
【0034】
発光装置100は、ツェナーダイオードなどの保護素子を有していてもよい。レーザ素子30や保護素子は、ワイヤ等を介してパッケージ10の導電性部材と電気的に接続される。その導電性部材と電気的に接続されたパッケージ10の外側電極に通電することにより、レーザ素子30や保護素子に通電される。
【0035】
(発光装置の製造方法)
【0036】
図4は、実施形態に係る発光装置の製造工程を概略的に示すフローチャートである。図4に示すとおり、実施形態の発光装置の製造方法は、キャップ準備工程S101と、マーク形成工程S102と、パッケージ及びレーザ素子準備工程S103と、キャップ固定工程S104とを有する。マーク形成工程S102の後にキャップ固定工程S104を行うことにより、マーク23の形成時に発生する加工塵がレーザ素子30等に付着する可能性を低減することができる。
【0037】
(キャップ準備工程S101)
キャップ準備工程S101では、図5に示すように、上面21a(第1主面)及び下面21b(第2主面)を有する透光性部材21と、下面21bの一部に設けられた遮光膜22と、を有するキャップ20を準備する。この状態では、まだ遮光膜22にマークは設けられていない。
【0038】
(マーク形成工程S102)
マーク形成工程S102では、遮光膜22の一部を加工することにより、所定の情報を読み取り可能なマーク23を形成する。マーク23は、所定の情報を読み取り可能な形状に形成されている。例えば、二次元コードや数桁の数字などは、マーク23の一例である。上述の図2に示すマーク23は、二次元コードを模式的に示すものである。二次元コードは、例えば、複数の正方形状のセルが行列状に整列されたパターンである。所定の情報の一例としては、製品型番、ロット番号、日付、シリアル番号、ランク情報、などを挙げることができる。マーク23からは、例えば、光学的に撮影された写真を読取装置(例えば、二次元コードを読み取るリーダ装置)で解読することにより情報が読み取られる。マーク23の大きさは、例えば、縦600μm、横600μmの矩形の範囲内に収まる大きさであってもよい。
【0039】
マーク形成工程S102において、透光性部材21の上面21aの側から加工用レーザ光を照射することによりマーク23を形成することができる。例えば、図6に示すように、透光性部材21の上面21aの側に加工用レーザ光源200を配置する。加工用レーザ光源200から放出される加工用レーザ光をキャップ20に照射し、透光性部材21を透過させて遮光膜22を加工する。マーク23はフォトリソグラフィにより形成することも可能であるが、このように加工用レーザ光を用いて加工する手法であれば、フォトリソグラフィ用のマスクが不要であるので安価に製造することができる。フォトリソグラフィであれば異なる形状のマークを印字するためには異なるマスクを作製する必要があるが、加工用レーザ光による加工であれば印字プログラムの変更で異なる形状のマークを印字することができる。加工用レーザ光源200としては、YAGレーザ等が挙げられる。加工用レーザ光のピーク波長は、透光性部材21を透過可能な波長であり、例えば透光性部材21としてサファイアを用いる場合は300~3000nmの範囲内とすることができる。例えば、YAGレーザの第二高調波である緑色のレーザ光を用いて加工することができる。
【0040】
図6に示すように、マーク形成工程S102において、透光性部材21の下面21bの側に吸引装置300を配置することができる。この吸引装置300を用いて、加工用レーザ光の照射時に、加工用レーザ光の照射によって生成された加工塵を吸引する。加工塵が下面21bや遮光膜22に付着すると、後の工程で組み合わせるレーザ素子30等に付着する可能性がある。マーク23の加工時に吸引を行うことで、その可能性を低減することができる。加工用レーザ光を上面21aの側から照射する構成とすることにより、吸引装置300を下面21bの側に配置することができる。吸引装置300としては、例えば真空ポンプを用いた吸引装置が挙げられる。
【0041】
複数のキャップ20に対して一括でマーク23を形成してもよい。例えば、複数のキャップ20が一繋がりになったウェハーを準備し、マーク23を形成した後、個々のキャップ20に個片化してもよい。
【0042】
(パッケージ及びレーザ素子準備工程S103)
パッケージ及びレーザ素子準備工程S103では、図7A及び図7Bに示すように、凹部11が設けられているパッケージ10と、凹部11内に配置された1以上のレーザ素子30と、を準備する。パッケージ及びレーザ素子準備工程S103は、少なくともキャップ固定工程S104の前に行えばよく、工程S101又は工程S102の前に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0043】
(キャップ固定工程S104)
キャップ固定工程S104では、マーク23が形成された側をパッケージ10の側として、キャップ20をパッケージ10に凹部11を覆うように固定する。これにより、図1A及び図1Bに示す発光装置100を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
実施形態に記載の発光装置は、プロジェクタ、車両用ヘッドライト、照明、ディスプレイのバックライト等の光源として使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 パッケージ
11 凹部
12 本体
13 金属膜
20 キャップ
21 透光性部材
21a 上面、21b 下面
22 遮光膜
23 マーク
30 レーザ素子
31 青色レーザ素子、32 緑色レーザ素子、33 赤色レーザ素子
40 サブマウント
50 光反射部材
60 接合部材
100 発光装置
200 加工用レーザ光源
300 吸引装置
400 レンズ
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B