(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ネットワークインターフェースカード、および送信性能監視方法
(51)【国際特許分類】
H04L 43/0823 20220101AFI20240111BHJP
【FI】
H04L43/0823
(21)【出願番号】P 2023012770
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光則
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0006925(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0228627(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0081881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/0823
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ内部のバスインターフェースを介して、サーバと、外部サーバとのデータの送受信を制御するコントローラと、
前記コントローラと接続され、前記コントローラから入力されるデータを電気信号から光信号に変換し、変換したデータを、ネットワークに接続される光分岐回路
を介して前記外部サーバに
第1の送信コネクタから出力
し、前記外部サーバから第1の受信コネクタに入力されるデータを光信号から電気信号に変換する通信用光モジュールと、
前記外部サーバに出力する光信号から前記光分岐回路により分岐され
、第2の受信コネクタに入力された折り返しデータを、光信号から電気信号に変換する監視用光モジュールと、
前記監視用光モジュールから入力された前記折り返しデータの正常性に基づいて、データ送信の性能を監視する監視部と、を備え、
前記監視部は、データ送信の性能が低下した場合、前記サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して通知を行う、
ネットワークインターフェースカード。
【請求項2】
前記監視部は、前記折り返しデータの誤り検出符号から、所定の方法により算出された異常の検出に関する値に基づき、データ送信の性能を監視する
請求項1に記載のネットワークインターフェースカード。
【請求項3】
前記監視部は、前記折り返しデータに異常がある場合、第1エラー数としてカウントし、送信データ数に対する第1エラー数が閾値以上である場合、データ送信の性能が低下したとする
請求項1に記載のネットワークインターフェースカード。
【請求項4】
前記監視部は、前記コントローラに入力された送信データの異常がカウントされた数である第2エラー数と、前記第1エラー数と、の合計エラー数を算出し、送信データ数に対する前記合計エラー数が閾値以上である場合、データ送信の性能が低下したとする
請求項3に記載のネットワークインターフェースカード。
【請求項5】
前記監視部は、データ送受信の性能が低下した場合、ネットワークインターフェースカードによるデータの送受信を停止する
請求項1に記載のネットワークインターフェースカード。
【請求項6】
前記監視部は、データ送信の性能が低下した場合、前記コントローラのデータ送信を停止し、かつ、前記サーバ内部に備えられるネットワークアダプタドライバからの送信要求に対しエラーリターンを返すことにより、ネットワークインターフェースカードによるデータの送受信を停止する
請求項5に記載のネットワークインターフェースカード。
【請求項7】
前記監視部は、データ送信の性能が低下した場合、前記サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して、データ送信の性能が低下したことを示す通知を行う、
請求項1に記載のネットワークインターフェースカード。
【請求項8】
前記監視部は、データ送信の性能が低下した場合、前記サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して、ネットワークインターフェースカードの切り替えが必要であることを示す通知を行う、
請求項1に記載のネットワークインターフェースカード。
【請求項9】
前記光分岐回路をさらに備える、
請求項1から8のいずれかに記載のネットワークインターフェースカード。
【請求項10】
サーバに備えられ、前記サーバと
外部サーバとの間におけるデータの送受信を行うネットワークインターフェースカードにおいて、
前記ネットワークインターフェースカードに備えられる通信用光モジュールが、
コントローラから入力されるデータを電気信号から光信号に変換し、変換したデータを、ネットワークに接続される光分岐回路を介して前記外部サーバに第1の送信コネクタから出力し、前記外部サーバから第1の受信コネクタに入力されるデータを光信号から電気信号に変換し、
前記ネットワークインターフェースカードに備えられる監視用光モジュールが、
前記外部サーバに出力する光信号から前記光分岐回路により分岐され、第2の受信コネクタに入力された折り返しデータを、光信号から電気信号に変換し、
コンピュータが、
前記
監視用光モジュール
から入力された
前記折り返しデータの正常性に基づいて、データ送
信の性能を監視し、
監視の結果、データ送
信の性能が低下した場合、前記サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して通知を行う、
送信性能監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネットワークインターフェースカードおよび送信性能監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバは、その利用において、支障がないことを求められる場合がある。しかし、そのサーバに備えられたネットワークインターフェースカード(以下、NICと記載する)の性能低下が発生したまま利用が継続されてしまい、大きな問題となってしまうことがある。
【0003】
特許文献1には、LANに接続するインターフェースの内部に備えられた折り返し専用の回路を用いて、通信経路の疎通を確認するためのパケットにより送信の異常を検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、NIC内部で発生する異常は検出できるが、実際にサーバ外部との通信に利用する光モジュールにおける、光出力信号が安定しないという異常の有無は検出できない。
【0006】
本開示の目的の一例は、光出力信号の安定性に関する、NICにおけるデータ送信の性能を監視することを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様におけるネットワークインターフェースカードは、サーバ内部のバスインターフェースを介して、サーバの、外部サーバとのデータの送受信を制御するコントローラと、コントローラと接続され、コントローラから入力されるデータを電気信号から光信号に変換し、変換したデータを、ネットワークに接続される光分岐回路に出力する通信用光モジュールと、光分岐回路により分岐された折り返しデータを、光信号から電気信号に変換する監視用光モジュールと、監視用光モジュールから入力された折り返しデータの正常性を監視することにより、データ送信の性能を監視する監視部と、を備え、監視部は、データ送信の性能が低下した場合、サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して通知を行う。
【0008】
本開示の一態様における送信性能監視方法は、サーバに備えられ、サーバとネットワークとの間におけるデータの送受信を行うネットワークインターフェースカードにおいて、コンピュータが、ネットワークインターフェースカードに備えられたコントローラが出力し、通信用光モジュールにより光信号に変換され、さらに、監視用光モジュールにより電気信号に変換されて入力された折り返しデータの正常性を監視することにより、データ送信の性能を監視し、監視の結果、データ送信の性能が低下した場合、サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して通知を行う。
【発明の効果】
【0009】
本開示による効果の一例は、光出力信号の安定性に関する、NICにおけるデータ送信の性能を監視することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】NICおよび光分岐回路を備えるネットワークインターフェース部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】NICを含むサーバおよび接続先の機器を含む通信システムの一例を示すブロック図である。
【
図3】送信性能の監視に係る各構成の動作を示すシーケンス図である。
【
図5】NICの構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】NICおよび光分岐回路を備えるネットワークインターフェース部の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[実施形態]
図1は、実施形態におけるNIC100と光分岐回路200とを備えるネットワークインターフェース部の構成の一例を示すブロック図である。
図1を参照すると、NIC100は、コントローラ101と、通信用光モジュール102と、監視用光モジュール103と、監視部104と、を備える。また、NIC100の通信用光モジュール102および監視用光モジュール103は、光分岐回路200と通信可能に接続される。また、光分岐回路200は、ネットワーク300と通信可能に接続される。
【0013】
NIC100は、ネットワーク関連機器とネットワーク間の通信を実現するための装置である。本開示において、NIC100は、ネットワーク関連機器であるサーバに備えられる。
【0014】
図2は、実施形態におけるNIC100を含むサーバ10および接続先の機器を含む通信システムの一例を示すブロック図である。
図2を参照すると、サーバ10は、メモリ11、メモリ制御部12、プロセッサ13、入出力制御部14、入出力カードスロット15、システムバス18、およびバスインターフェース19を備える。また、入出力カードスロット15には、現用系NIC16および予備系NIC17が挿入される。また、サーバ10は、ネットワークスイッチ30と通信可能に接続される。ここで、サーバ10の現用系NIC16は、光分岐回路200を介してネットワークスイッチ30と接続される。また、サーバ10の予備系NICは、ネットワークスイッチ30と接続される。さらに、ネットワークスイッチ30は、他のサーバ40と通信可能に接続される。ネットワークスイッチ30は、複数のサーバなどの機器を接続する。ネットワーク300は、ネットワークスイッチ30とネットワークスイッチ30に接続されるサーバ10および複数の他のサーバ40が接続され、相互にデータの伝送を行う。
【0015】
図2において、現用系NIC16は、
図1のNIC100である。また、予備系NIC17は、NIC100であってもよいし、周知のNICであってもよい。また、予備系NIC17は、現用系NIC16と同様に、光分岐回路200を介してネットワークスイッチ30と接続されてもよい。
【0016】
図2のサーバ10の他の構成について説明する。サーバ10において、メモリ11は、データを格納する。メモリ11は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)であってよい。メモリ制御部12は、メモリ11を管理する。メモリ制御部12は、例えば、プロセッサ13の要求により、メモリ11の一部の割り当てや、割り当てた一部のメモリ11の解放を行う。プロセッサ13は、プログラムに記述された情報処理を行う。プログラムは、例えば、オペレーティングシステム(以下、OS(Operating System)とも記載する)やアプリケーションなどである。入出力制御部14は、プロセッサから入出力命令を受けると、サーバにデータを入出力する入出力装置との間でデータの入出力を行う。入出力カードスロット15は、様々な入出力装置と接続するための拡張機器の差込口を備える。上述のように、サーバ10における入出力カードスロット15には、現用系NIC16および予備系NIC17が挿入される。システムバス18は、プロセッサ13と他の構成を接続するデータ伝送路である。バスインターフェース19は、入出力制御部14と、現用系NIC16および予備系NIC17とをそれぞれ接続するデータ伝送路である。
【0017】
図2において、サーバ10は、NICとして、現用系NIC16および予備系NIC17を備える。このように、装置を複数用意する構成は、冗長構成と呼ばれる。本開示におけるサーバ10は、NICが冗長構成であることによって、片方のNICが故障しても、もう一方のNICを利用してサーバ10の運用を継続しながら、故障したNICの修理や交換を行うことが可能である。このような構成は、ミッションクリティカルな、すなわち、停止や誤作動があってはならないようなサーバなどにおいて、用いられる。
【0018】
ここまで、
図2のサーバ10について説明したが、NIC100が備えられるサーバの構成はこの限りでない。
【0019】
図1および
図2を参照し、NIC100の一般的な機能について説明する。
図1および
図2において、NIC100は、サーバ10からバスインターフェース19を介して入力されたデータを、ネットワーク300に送信する。例えば、NIC100は、サーバ10からバスインターフェース19を介して入力されたデータを、光分岐回路200およびネットワークスイッチ30を経由して、および他のサーバ40に送信する。また、NIC100は、ネットワーク300から、データを受信する。例えば、NIC100は、ネットワークスイッチ30および光分岐回路200を介して、他のサーバ40が送信したデータを受信し、サーバ10に入力する。
【0020】
次に、本実施形態のNIC100の各構成について詳細に説明する。
【0021】
コントローラ101は、サーバ10内部のバスインターフェース19を介して、サーバ10の、外部のサーバ40とのデータの送受信を制御する。NIC100がLANインターフェースカードである場合、コントローラ101は、LANコントローラとも呼ばれる。
【0022】
図1において、通信用光モジュール102は、電気信号から光信号に、および、光信号から電気信号にデータを変換する装置である。通信用光モジュール102は、コントローラ101と接続され、コントローラ101から入力されるデータを電気信号から光信号に変換する。そして、通信用光モジュール102は、変換したデータを、ネットワークに接続される光分岐回路200に出力する。光分岐回路200については後述する。
【0023】
通信用光モジュール102は、例えば、SFP(Small Form-Factor Pluggable)モジュール、SFP+モジュールなどであるが、これらの例に限られない。通信用光モジュール102には、データを電気信号から光信号に変換する際に、光出力信号が安定しないという、特有の故障が発生する可能性がある。光信号が安定しないことは、光通信を含む伝送において信号波形の遷移を多数重ね合わせて表示したアイパターンが乱れることにより可視化される。
【0024】
ここで、光分岐回路200は、入力された光信号を物理的に分岐し、分岐した光信号をそれぞれ出力する回路である。光分岐回路200は、サーバ10のNIC100、およびネットワーク300に接続される。より具体的には、光分岐回路200は、NIC100の通信用光モジュール102および監視用光モジュール103と、光インターフェース20によりそれぞれ接続される。また、光分岐回路200は、他のサーバ40と接続されるネットワークスイッチ30と接続される。
【0025】
光分岐回路200は、通信用光モジュール102から入力された光信号を分岐する。光分岐回路200は、分岐した光信号の一方を、ネットワーク300に含まれる接続先、例えば、ネットワークスイッチ30に出力する。そして、光分岐回路200は、分岐した光信号のもう一方を、監視用光モジュール103に出力する。以下の説明において、サーバ10からネットワーク300や他のサーバ40に送信されるデータを送信データ、光分岐回路200が分岐して監視用光モジュール103に出力されるデータを折り返しデータと呼ぶ。
【0026】
監視用光モジュール103は、光信号から電気信号にデータを変換する装置である。監視用光モジュール103は、光分岐回路200と接続され、光分岐回路200により分岐された折り返しデータを、光信号から電気信号に変換する。監視用光モジュール103は、電気信号に変換した折り返しデータを、監視部104に出力する。
【0027】
なお、本開示において、通信用光モジュール、光分岐回路、監視用光モジュールなどに含まれるRx、Txは、それぞれ、受信コネクタ、送信コネクタである。
【0028】
監視部104は、データ送信の性能を監視する。例えば、監視部104は、データ送信の性能が低下していることを判定する。より具体的には、監視部104は、NIC100のデータ送信の性能を監視する。監視部104は、データ送信の性能の監視を、監視用光モジュール103から入力された折り返しデータの正常性に基づいて、行う。監視部104による、折り返しデータの正常性の監視、および、データ送信の性能の監視については、後述する。また、監視部104は、データ送信の性能が低下した場合、コントローラ101を介してサーバ10内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して、データ送信の性能が低下したことに関する通知を行う。この通知については、後述する。
【0029】
まず、監視部104による、データ送信の性能の監視について説明する。監視部104は、折り返しデータの誤り検出符号から、所定の方法により算出された異常の検出に関する値に基づき、データ送信の性能を監視する。誤り検出符号とは、データ通信においてデータに誤りが生じていることを検出可能に構成されたである。例えば、データの送信側は、データの送信時に、誤り検出符号として、送信するデータから一定の手順で算出したデータを送信するデータに付加する。そして、データの受信側は、受信したデータに付加された誤り検出符号により誤りを検出する。監視部104は、例えば、折り返しデータのフレームに付加された誤り検出符号と、データ送信時に用いられる誤り検出演算と同じ手法にて折り返しデータのフレームデータから算出された値とを比較することにより、折り返しデータの誤りを検出してもよい。誤り検出符号は、例えば、FCS(Frame Check Sequence)またはCRC(Cyclic Redundancy Code)であるが、これらの例に限られない。
【0030】
監視部104は、誤り検出符号により折り返しデータに異常があることを検出した場合、第1エラー数として、異常が検出された回数をカウントする。監視部104は、送信データ数に対する第1エラー数が閾値以上である場合、データ送信の性能が低下したと判定してよい。
【0031】
また、監視部104は、折り返しデータの異常に加え、コントローラ101に入力された送信データの異常を加味してデータ送信の性能を監視してもよい。ここで、コントローラ101に入力された送信データの異常がカウントされた第2エラー数とする。第2エラー数は、コントローラ101により監視されてもよいし、他に追加された構成によって監視されてもよい。この場合、監視部104は、第1エラー数と、第2エラー数と、の合計エラー数を算出し、送信データ数に対する前記合計エラー数が閾値以上である場合、データ送信の性能が低下したと判定してよい。
【0032】
なお、データ送信の性能が低下したと判定する閾値は、あらかじめ設定されればよい。閾値は、例えば、0.025%である。閾値は、この例に限られず、適宜定められればよい。
【0033】
次に、監視部104による、データ送信の性能が低下した場合における、データ送信の性能が低下したことに関する通知について説明する。上述のように、監視部104は、データ送信の性能が低下した場合、コントローラ101を介して、サーバ10内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して、データ送信の性能が低下したことに関する通知を行う。これにより、サーバ10は、NIC100のデータ送信の性能の低下を検出し、これに応じて必要な対応を行うことができる。ここで、必要な対応とは、冗長構成におけるNICの切り替え、または、管理者等への修理や交換が必要であることの通知などである。また、例えば、監視部104は、データ送信の性能が低下した場合、コントローラ101を介して、サーバ10内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して、NICの切り替えが必要であることを示す通知を行ってもよい。NICの切り替えとは、現在利用しているNIC(例えば現用系NIC16)から、予備であるNIC(例えば予備系NIC17)に利用するNICを切り替えることである。
【0034】
また、監視部104は、データ送信の性能が低下した場合、NIC100によるデータの送受信を停止させてもよい。例えば、監視部104は、コントローラ101のデータ送信を停止し、かつ、サーバ10内部に備えられるネットワークアダプタドライバからの送信要求に対しエラーリターンを返すことにより、ネットワークインターフェースカードによるデータの送信を停止する。
【0035】
以上のように構成されたNIC100と周辺装置による、データ送信性能監視の動作について、
図3のシーケンス図を参照して説明する。
【0036】
図3に示すように、まず、通信用光モジュール102は、コントローラ101から入力された送信データ(電気信号)を、電気信号から光信号に変換する(ステップS101)。そして、通信用光モジュール102は、変換した送信データ(光信号)を光分岐回路200へ出力する(ステップS102)。
【0037】
次に、光分岐回路200は、通信用光モジュール102から入力された送信データ(光信号)を分岐する(ステップS103)。光分岐回路200は、分岐した光信号の一方を送信データ(光信号)としてネットワーク300へ出力する(ステップS104)。そして、光分岐回路200は、分岐した光信号の他方を、折り返しデータ(光信号)として、監視用光モジュール103に出力する(ステップS105)。
【0038】
次に、監視用光モジュール103は、入力された折り返しデータ(光信号)を、光信号から電気信号に変換する(ステップS106)。そして、監視用光モジュール103は、変換した折り返しデータ(電気信号)を監視部104へ出力する(ステップS107)。
【0039】
そして、監視部104は、監視用光モジュール103から入力された折り返しデータ(電気信号)の正常性を監視する(ステップS108)。ステップS108以降の監視部104の動作については、
図4のフローチャートを参照して後述する。
【0040】
以上で、NIC100と周辺装置は、一連の動作を終了する。これらの一連の動作は、サーバ10によるデータ送信に対して逐次行われてよい。
【0041】
次に、
図4のフローチャートを参照して、監視部104の動作について説明する。
【0042】
監視部104は、まず、監視用光モジュール103から折り返しデータ(電気信号)を入力される(ステップS201)。
【0043】
監視部104は、折り返しデータ(電気信号)に異常があるか判定する(ステップS202)。監視部104は、例えば、誤り検出符号であるFCSやCRCを用いて異常があるか判定する。
【0044】
折り返しデータ(電気信号)に異常がある場合(ステップS202:Yes)、監視部104は、エラーカウンタ登録を行うことにより、第1エラー数をカウントする(ステップS203)。折り返しデータ(電気信号)に異常がない場合(ステップS202:No)、監視部104は、ステップS201の動作に戻る。
【0045】
そして、監視部104は、データの異常発生の割合が閾値を超えるか判定する(ステップS204)。データの異常発生の割合は、上述のように、送信データ数に対する第1エラー数、または、送信データ数に対する、第1エラー数と第2エラー数の合計エラー数であってよい。
【0046】
監視部104は、データの異常発生の割合が閾値を超えると判定された場合(ステップS204:Yes)、NIC100のデータ送信の性能が低下したと判断し、サーバ10のオペレーティングシステムやアプリケーションに通知を行う(ステップS205)。また、データの異常発生の割合が閾値を超えると判定された場合、監視部104は、上述のように、NIC100によるデータの送受信を停止してもよい。また、データの異常発生の割合が閾値を超えると判定された場合(ステップS204:No)、監視部104は、ステップS201の動作に戻る。
【0047】
以上で、監視部104は、一連の動作を終了する。
【0048】
上述した本実施形態におけるNICは、コントローラ、通信用光モジュール、監視用光モジュール、および監視部を備える。通信用光モジュールと監視用光モジュールは、それぞれ光分岐回路に接続される。通信用光モジュールがサーバの送信データを電気信号から光信号に変換し、変換した光信号を光分岐回路に入力する。光分岐回路により分岐された折り返しデータである光信号が、監視用光モジュールに入力される。監視用光モジュールは、折り返しデータを光信号から電気信号に変換し、監視部に入力する。そして、監視部は、折り返しデータの正常性を監視することにより、データ送信の性能を監視する。
【0049】
その結果、本実施形態におけるNICは、NICにおいてデータ送信の性能を監視することができる。
【0050】
電気信号を光信号に変換する光モジュールを備えるNICは、光出力信号が安定しないという、光モジュール特有の故障が発生する場合がある。
【0051】
光出力信号が安定しない場合、サーバに備えられたNICから送信されるデータを受信する接続先、例えば、LAN(Local Area Network)スイッチでは、光の受信強度の低下によるリンクダウン(Link-down)検出はされない。サーバに備えられたNICから送信されるデータを受信する接続先では、受信したデータの異常が検出され、受信したデータは廃棄される。接続先で受信したデータの異常とは、例えば、FCS(Frame Check Sequence)エラーなどのbit化けである。そして、ネットワークスイッチの該当受信ポートが持つMIB(Management Information Base)のエラーカウントがカウントアップされることにより、受信したフレームの異常の履歴が残される。さらに、サーバ間の上位TCP(Transmission Control Protocol)層では、TCP/IP(Internet Protocol)ネットワークの仕様により、相手からの受信応答がない場合、フレームの再送によりリカバリされる。
【0052】
しかし、この場合、サーバに備えられたNICでは、送信したデータが、接続先において異常検出および廃棄されていることを認識する手段がない。このため、サーバの上位アプリケーションソフトウエアは、通信性能低下が発生していることを認識できない。
【0053】
これに対し、監視部は、通信用光モジュールで電気信号から光信号に変換され、光分岐回路で分岐された折り返しデータの正常性を監視する。これにより、データの送信元であるサーバ側で検出できていなかった、通信用光モジュールで発生するエラーを検出することができるようになる。これにより、NICを備えるサーバが、通信用光モジュールで発生するエラーを含むNICの性能低下に対する対応を実施することができる。
【0054】
[変形例]
次に、実施形態の変形例について、図面を参照して説明する。
【0055】
図5は、光分岐回路200を含むNIC100Aの機能構成を示す図である。
図5に示されるように、NICは、光分岐回路をNIC内に備える構成としてもよい。
【0056】
また、
図6は、NIC100と光分岐回路200Aとの機能構成を示すブロック図である。
図6に示されるように、光分岐回路200Aは、入力された光信号を分岐して出力する構成であってもよい。すなわち、光分岐回路200Aは、実施形態における光分岐回路200と比較して、ネットワーク300からデータを入力される受信コネクタと、入力されたデータを出力する送信コネクタと、を備えない。この場合、NIC100の通信用光モジュール102は、ネットワーク300から直接、データを入力されてよい。
【0057】
なお、光分岐回路200Aも、光分岐回路200と同様に、NIC内に備えられてよい。
【0058】
以上、各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しえる様々な変更をすることができる。
【0059】
また、複数の動作をフローチャートの形式で順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の動作を実行する順番を限定するものではない。このため、各実施形態を実施するときには、その複数の動作の順番は、内容的に支障しない範囲で変更されてよい。
【0060】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0061】
(付記1)
サーバ内部のバスインターフェースを介して、サーバと、外部サーバとのデータの送受信を制御するコントローラと、
前記コントローラと接続され、前記コントローラから入力されるデータを電気信号から光信号に変換し、変換したデータを、ネットワークに接続される光分岐回路に出力する通信用光モジュールと、
前記光分岐回路により分岐された折り返しデータを、光信号から電気信号に変換する監視用光モジュールと、
前記監視用光モジュールから入力された前記折り返しデータの正常性に基づいて、データ送信の性能を監視する監視部と、を備え、
前記監視部は、データ送信の性能が低下した場合、前記サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して通知を行う、
ネットワークインターフェースカード。
【0062】
(付記2)
前記監視部は、前記折り返しデータの誤り検出符号から、所定の方法により算出された異常の検出に関する値に基づき、データ送信の性能を監視する
付記1に記載のネットワークインターフェースカード。
【0063】
(付記3)
前記監視部は、前記折り返しデータに異常がある場合、第1エラー数としてカウントし、送信データ数に対する第1エラー数が閾値以上である場合、データ送信の性能が低下したとする
付記1または2に記載のネットワークインターフェースカード。
【0064】
(付記4)
前記監視部は、前記コントローラに入力された送信データの異常がカウントされた数である第2エラー数と、前記第1エラー数と、の合計エラー数を算出し、送信データ数に対する前記合計エラー数が閾値以上である場合、データ送信の性能が低下したとする
付記3に記載のネットワークインターフェースカード。
【0065】
(付記5)
前記監視部は、データ送受信の性能が低下した場合、ネットワークインターフェースカードによるデータの送受信を停止する
付記1から4のいずれかに記載のネットワークインターフェースカード。
【0066】
(付記6)
前記監視部は、データ送信の性能が低下した場合、前記コントローラのデータ送信を停止し、かつ、前記サーバ内部に備えられるネットワークアダプタドライバからの送信要求に対しエラーリターンを返すことにより、ネットワークインターフェースカードによるデータの送受信を停止する
付記5に記載のネットワークインターフェースカード。
【0067】
(付記7)
前記監視部は、データ送信の性能が低下した場合、前記サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して、データ送信の性能が低下したことを示す通知を行う、
付記1から6のいずれかに記載のネットワークインターフェースカード。
【0068】
(付記8)
前記監視部は、データ送信の性能が低下した場合、前記サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して、ネットワークインターフェースカードの切り替えが必要であることを示す通知を行う、
付記1から7のいずれかに記載のネットワークインターフェースカード。
【0069】
(付記9)
前記光分岐回路をさらに備える、
付記1から8のいずれかに記載のネットワークインターフェースカード。
【0070】
(付記10)
サーバに備えられ、前記サーバとネットワークとの間におけるデータの送受信を行うネットワークインターフェースカードにおいて、
コンピュータが、
前記ネットワークインターフェースカードに備えられたコントローラが出力し、通信用光モジュールにより光信号に変換され、さらに、監視用光モジュールにより電気信号に変換されて入力された折り返しデータの正常性に基づいて、データ送受信の性能を監視し、
監視の結果、データ送受信の性能が低下した場合、前記サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して通知を行う、
監視方法。
【符号の説明】
【0071】
10 サーバ
11 メモリ
12 メモリ制御部
13 プロセッサ
14 入出力制御部
15 入出力カードスロット
16 現用系ネットワークインターフェースカード
17 予備系ネットワークインターフェースカード
18 システムバス
19 バスインターフェース
20 光インターフェース
30 ネットワークスイッチ
40 サーバ
100 ネットワークインターフェースカード
100A ネットワークインターフェースカード
101 コントローラ
102 通信用光モジュール
103 監視用光モジュール
104 監視部
200 光分岐回路
200A 光分岐回路
300 ネットワーク
【要約】
【課題】 光出力信号の安定性に関する、NICにおけるデータ送信の性能を監視することを可能にする技術を提供する。
【解決手段】 ネットワークインターフェースカードは、サーバ内部のバスインターフェースを介して、サーバの、外部サーバとのデータの送受信を制御するコントローラと、コントローラと接続され、コントローラから入力されるデータを電気信号から光信号に変換し、変換したデータを、ネットワークに接続される光分岐回路に出力する通信用光モジュールと、光分岐回路により分岐された折り返しデータを、光信号から電気信号に変換する監視用光モジュールと、監視用光モジュールから入力された折り返しデータの正常性に基づいて、データ送信の性能を監視する監視部と、を備え、監視部は、データ送信の性能が低下した場合、サーバ内部のオペレーティングシステムまたはアプリケーションに対して通知を行う。
【選択図】
図1