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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】吸汗シート
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20240112BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240112BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61F13/49 317
A61F13/15 311Z
A61F13/51
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020054560
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021153707
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】新津 太一
(72)【発明者】
【氏名】露木 智咲
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112167(JP,A)
【文献】特開2020-18388(JP,A)
【文献】特表2016-521218(JP,A)
【文献】特表平9-504471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレム吸水高さが異なるシート間に複数の弾性フィラメントが接合されており、
クレム吸水高さが高い方のシートは、紙であり、延伸処理前のシート原料としての破断伸度(E2)が10%以上40%以下であり、クレム吸水高さが低い方のシートは、延伸処理前のシート原料としての破断伸度(E1)が70%以上であり、前記破断伸度の差(E1-E2)が40ポイント以上であり
前記クレム吸水高さが高い方のシートが前記弾性フィラメントの伸縮方向と交差する方向に延出する断裂部を有しており
前記クレム吸水高さが低い方のシートが親水性を有し、肌面に当たる面側である、吸汗シート。
【請求項2】
前記断裂部の方向が、前記クレム吸水高さが低い方のシートの構成素材流れ方向に対して直交している請求項1記載の吸汗シート。
【請求項3】
前記弾性フィラメントは、接着剤によらず、前記弾性フィラメントを挟持する前記クレム吸水高さが異なるシートに融着されている請求項1又は2記載の吸汗シート。
【請求項4】
前記クレム吸水高さの高い方のシートは、熱融着性繊維を含有している請求項1~のいずれか1項に記載の吸汗シート。
【請求項5】
前記クレム吸水高さが高い方のシートは、前記弾性フィラメントと融着している請求項1~のいずれか1項に記載の吸汗シート。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の吸汗シートを含む吸収性物品。
【請求項7】
紡糸ノズルから紡出された溶融状態の複数の弾性フィラメントを延伸しつつ、該弾性フィラメントの固化前に、該弾性フィラメントをクレム吸水高さの異なる2枚のシート原料で挟持して融着させて複合体を形成し、
前記クレム吸水高さの異なる2枚のシート原料のうち、クレム吸水高さが高い方のシート原料は、紙であり、延伸処理する前の破断伸度(E2)が10%以上40%以下であり、クレム吸水高さが低い方のシート原料は、延伸処理する前の破断伸度(E1)が70%以上であり、前記破断伸度の差(E1-E2)が40ポイント以上であり、
前記複合体に対して前記弾性フィラメントの延びる方向に沿って延伸処理を行って、クレム吸水高さが高い方のシート原料に前記弾性フィラメントの伸縮方向と交差する方向に延出する断裂部を形成しつつ、前記複合体に伸縮性を付与する、吸汗シートの製造方法。
【請求項8】
前記弾性フィラメントを互いに交差させずに一方向に配列する、請求項記載の吸汗シートの製造方法。
【請求項9】
前記延伸処理を、歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール間に、前記複合体を、その流れ方向に沿って通すことによって行う請求項又は記載の吸汗シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸汗シートに関する。
【背景技術】
【0002】
人の肌に当接して用いられる物品には、人の汗を吸収するシートが用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸収性物品の伸縮領域において、弾性部材を含んだ伸縮部材の肌当接面側に、吸汗速乾シートを配することが記載されている。吸汗速乾シートは、弾性部材を含まず、疎水性の繊維で構成された肌当接面側の疎水層と親水性の繊維で構成された非肌当接面側の親水層とを含む。
特許文献2記載の使い捨て着用物品では、外装体の胴回り部の肌対向面に吸汗シートが配置されている。前記吸汗シートは、2枚の繊維シート間に弾性部材を配置した構造を有する。前記吸汗シートにおいては、2枚の繊維シート間の親水度の違いによって汗を物品外部へ効率よく放出しようとしている。
特許文献3には、使い捨て衣類の胴部装着部に、伸縮性複合シートを配することが記載されている。該伸縮性複合シートは、第1の通気シートと第2の通気シートとの間に液拡散性繊維シート及び線状弾性体を配した複合的な積層構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-213360号公報
【文献】特開2016-112167号公報
【文献】特開2017-64447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の吸汗速乾シートは、伸縮部材の内側に貼付等されるものであり、それ自体の伸縮性がない。一方、特許文献2記載の吸汗シート及び特許文献3記載の伸縮性複合シートは2枚の繊維シート間に弾性部材を配置しているものの、積層構造によって厚みが増すため、伸縮性、柔軟性(柔らかさ)又は通気性において更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、吸汗性、伸縮性、柔軟性及び通気性を兼ね備えた吸汗シートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、クレム吸水高さが異なるシート間に複数の弾性フィラメントが接合されており、クレム吸水高さが高い方のシートが前記弾性フィラメントの伸縮方向と交差する方向に延出する断裂部を有しており、クレム吸水高さが低いシートが親水性を有し、前記クレム吸水高さが低いシートが肌面に当たる面側である、吸汗シートを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸汗シートは、吸汗性、伸縮性、柔軟性及び通気性を兼ね備えたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の吸汗シートの一例を示す一部切欠斜視図である。
図2図2は、図1に示す吸汗シートのII-II線断面を示す断面図である。
図3図3は、図1に示す吸汗シートのIII-III線断面を示す断面図である。
図4】断裂存在率の測定方法に用いられる、高クレム吸水性シートを外側にして二つ折りした吸汗シートを模式的に示す平面図である。
図5】(A)は、図4に示す吸汗シートにおいて、最も色の淡い部分に離間領域が存在する状態を模式的に示す部分拡大平面図であり、(B)は、前記離間領域が存在しない状態を模式的に示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吸汗シートの好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1~3に示す本実施形態の吸汗シート10は、クレム吸水高さが異なるシート1、2の間に複数の弾性フィラメント3が接合された構造を有する。本明細書において、クレム吸水高さが異なるシート1、2のうち、クレム吸水高さの低い方のシートを低クレム吸水性シート1といい、これよりもクレム吸水高さの高いシートを高クレム吸水性シート2という。
低クレム吸水性シート1は親水性を有する。該低クレム吸水性シート1は、吸汗シート10の肌面に当たる面側である。本明細書において、肌面側に当たるように用いるシートを肌面側のシートとも言い、その反対面側のシートを非肌面側のシートともいう。
なお、図1~3においては、吸汗シート10を弾性フィラメント3の伸縮方向Xに伸長させた状態として示している。
【0011】
高クレム吸水性シート2は、弾性フィラメント3の伸縮方向Xと交差する方向に延出する断裂部21を有している。断裂部21とは、シートの連続性が途切れる部分を意味し、シートの切れ目である。高クレム吸水性シート2は、この断裂部21の位置において分断された部分同士が、弾性フィラメント3の伸縮力等の外力に伴って離れたり接近したりする動きをし得る。
【0012】
上記の「クレム吸水高さ」は、シート内における液の拡散性の程度を示す。このクレム吸水高さは、JIS P 8141に規定された方法に準じ、以下の変更をして、青色1号0.05質量%で着色した脱イオン水を用いて測定される。すなわち、測定対象の吸汗シートを、高クレム吸水性シート2の有する断裂部の延びる方向が鉛直になるようにして水中に浸漬し、吸汗シートの表裏から吸水高さ(10分間に水が上昇した高さ)を測定する。
なお、測定対象のシートが、吸収性物品などの製品に組み込まれている場合でも、前処理として、製品に対し、測定対象の不織布と他の部材との接合に用いられる接着剤などをコールドスプレー等の冷却手段で弱め、測定対象の部材を丁寧に剥がして取り出す。この手段は、本明細書の他の測定においても共通である。
このクレム吸水性高さは、親水性だけでは決まらず、シートにおける構成素材(例えば繊維)の充填率やシート内の毛管力の影響を受ける。
【0013】
低クレム吸水性シート1が親水性であるとは、0.02mLの脱イオン水の液滴をシート上に滴下し、10秒経過後に、80%以上の確率で液滴がシートに吸収されることを言う。また、高クレム吸水性シート2も親水性である。
高クレム吸水性シート2の50質量%超を占める構成素材の接触角は、シート内に一定の確率で存在する充填率が低い領域での液の拡散性を高めるという観点から、25°以下が好ましく、20°以下がより好ましい。
低クレム吸水性シート1の50質量%超を占める構成素材の接触角は、液を引きこむ起点として機能させるという観点から、90°未満であることが好ましく、80°以下であることが好ましい。
低クレム吸水性シート1と高クレム吸水性シート2との間における、シートの50質量%超を占める構成素材の接触角の差は、シート1からシート2への液の移行し易さの観点から、40°以上が好ましく、50°以上がより好ましい。
この構成素材(例えば繊維)の接触角は下記の方法により測定することができる。
【0014】
(構成素材の接触角の測定方法)
測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA-Jを用いる。接触角測定には、蒸留水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC-25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、構成素材(例えば繊維)の真上に滴下する。構成素材は測定対象のシート中から抜き出したものを用いる。
滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析や画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に、画像が録画される。録画された映像において、測定対象のシート中から取り出した構成素材に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と構成素材のなす角を算出し、接触角とする。
ランダム50本の構成素材に対して各1か所の測定を実施する。接触角の小さい方から15点平均値を算出し、測定対象のシートにおける構成素材の接触角と定める。
【0015】
吸汗シート10において、クレム吸水高さで示される液拡散性の違いから、高クレム吸水性シート2が吸汗シート10における汗の吸収保持部として機能する。すなわち、吸汗シート10において、低クレム吸水性シート1で引き込んだ汗等の液が、より毛管力の高い高クレム吸水性シート2に遅滞なく移行し得て、低クレム吸水性シート1から遠ざけられる。そして、高クレム吸水性シート2がその毛管力で液を吸収保持する。これにより、吸汗シート10が吸水した液の低クレム吸水性シート1への戻りを抑えることができる。また、外部への放出を抑えることができる。
【0016】
また、高クレム吸水性シート2が前述の断裂部21を有することにより、弾性フィラメント3の伸縮に対する抑制力が低減され、吸汗シート10は全体としての伸縮性が高く保持される。また、断裂部21を有することにより、吸汗シート10には、上記の高い伸縮性とともに柔軟性も生まれる。加えて、弾性フィラメント3の伸縮に伴って、高クレム吸水性シート2の断裂部21によって生じた隙間が拡大、縮小しながら吸汗シート10の層の薄い部分となって空気の気道を形成し、同時に空気の流動化を促して、吸汗シート1の通気性を高める。高クレム吸水性シート2は、低クレム吸水性シート1よりもクレム吸水高さが大きく、そのため一般的には低クレム吸水性シート1よりも構成素材の充填率が高められている。この充填率は、一般的にはクレム吸水高さと引き換えに高クレム吸水性シート2のシート面の通気性を低減する方向に働く。しかし、本実施形態において、高クレム吸水性シート2の断裂部21が、吸汗シート10の通気性を高め、かつ前述のような空気の流動化までも発生させることができる。
一方で、高クレム吸水性シート2は、断裂が部分的なものに留まっているため、シートとしての連続性、一体性も保持しており、吸汗した液のシート面全体への拡散性を保持している。そのため、吸汗シート10全体での吸汗性が高く保持される。
更に、弾性フィラメント3の伸縮に伴って、高クレム吸水性シート1が断裂部21において前記伸縮方向Xに離間と接近を繰り返す動きをし、この動きが吸水の促進力となり、吸汗性を高める。加えて、高クレム吸水性シート2の分断された各部分同士は、互いの拘束力が弱く、弾性フィラメント3の伸縮に合わせた可動性を有する。そのため、肌面に当接した吸汗シート10が、低クレム吸水性シート1の側でしっかりと肌面を捉えながら、その裏の高クレム吸水性シート2が肌との対応関係を固定せずに動き、肌面の汗を確実に吸水保持することができる。
【0017】
上記作用を好適に発現させる観点から、高クレム吸水性シート2には断裂部21の存在率(断裂存在率)が、以下の測定方法において、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。
また、断裂部21の存在率(断裂存在率)は、シートとしての連続性、一体性を保持する観点から、99%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、90%以下が更に好ましい。
【0018】
(断裂存在率の測定方法)
(1)高クレム吸水性シート2が外側になるよう吸汗シートの伸縮方向と平行に二つ折りする。
(2)二つ折りした吸汗シートを自然状態から伸縮方向に20%伸長(すなわち、自然状態の長さの1.2倍の長さに伸長)させる。
(3)折りの先端部を観察し、伸長処理に伴い伸長方向に生じる吸汗シートの濃淡の縞模様のピッチを測定する。縞模様の1ピッチの中で最も色の淡い部分を観察し、高クレム吸水性シート2が折りの先端部において縞模様の1ピッチの10%以上の離間領域を持つ場合に、断裂が存在したと判断する。なお、前記色の淡い部分が高クレム吸水性シート2の断裂部21に相当する。
上記の断裂は、例えば図4に示されるようにして判断される。
濃淡の縞模様の1ピッチ51とは、前記(1)及び(2)の状態にした吸汗シート10において、互いに隣接する色の濃い部分61と色の淡い部分62とを合わせた伸長方向Xに沿う長さを意味する(この場合の伸長方向Xは伸縮方向と同義である。)。
この1ピッチ51の領域の中で最も色の淡い部分63(色の淡い部分62の最も色の淡い部分)を観察し、折りの先端部64において、縞模様の1ピッチの10%以上の離間領域65の有無を確認する。
離間領域65とは、前記(2)の20%伸長の状態で、最も色の淡い部分63の折りの先端部64において、高クレム吸水性シート2を構成する繊維29が離間している部分を意味する。最も色の淡い部分63の折りの先端部64において、高クレム吸水性シート2を構成する繊維29が離間しきっておらず、図5(B)に示すように、高クレム吸水性シート2を構成する繊維29同士が重なっている場合は、離間領域64が無いこととなる。
離間領域65の伸長方向Xにおける長さ52が、折り先端部64において、縞模様の1ピッチ51の10%以上である場合、高クレム吸水性シート2に断裂が存在すると判断する。
(4)20箇所以上に対して前記3の作業が行えるよう、必要に応じて吸汗シートの異なる位置で前記(1)~(3)の作業を繰り返し行い、前記3で判断される断裂が存在していた数の割合((観察された断裂の数)/(観察した折りの先端数)×100)を、吸汗シートにおける高クレム吸水性シート2の断裂存在率と定義する。
上記の異なる位置は、同じ二つ折りの折り先端における異なるピッチ51の位置であってもよく、二つ折りの位置をずらした、異なる折り先端におけるピッチ51の位置であってもよい。
なお、ここで言う「自然状態」とは、試験片に伸長や潰れなどの変形を生じる外力を与えずに、水平な面上に静置された状態を意味する。以下、本明細書において「自然状態」を上記のとおり定義する。
【0019】
上記「弾性フィラメント3の伸縮方向Xと交差する方向に延出する断裂部21を有している」とは、高クレム吸水性シート2の断裂する部分の延出する方向が弾性フィラメント3の伸縮方向Xと交差する方向であることを意味する。前述の交差する方向に沿う方向において、断裂部21の長さは適宜設定できる。
この断裂部21の長さは、前述の交差する方向における高クレム吸水性シート2の全体に亘るものでもよく、部分的なものでもよい。部分的である場合、断裂部21は複数形成されて、前述の交差する方向に列をなしていることが好ましい。ただし、部分的な断裂部21同士が完全に同一線上になくてもよく、互いに近傍にあって1つの方向を形成する位置にあることが好ましい。また、部分的な断裂部21の列が、前述の交差する方向における高クレム吸水性シート2の全体に亘っていてもよく、その一部に配されていてもよい。
少なくとも、弾性フィラメント3の存在する位置において、高クレム吸水性シート2の断裂部21があることが好ましい。
また、断裂部21は、高クレム吸水性シート2の、弾性フィラメント3の伸縮方向Xに沿う複数の箇所にあることが好ましい。これにより、弾性フィラメント3の伸縮に伴って、高クレム吸水性シート2には前記伸縮方向Xに沿って複数個所で分離が生じ、吸汗シート10の伸縮性をより高めることがでる。
例えば、図1に示すように、複数の断裂部21が連続部分22を介して連なって列を作っており、この断裂部21の列の方向が弾性フィラメント3の伸縮方向Xと交差する方向を形成している。図1においては、このような断裂部21の列が、弾性フィラメント3の伸縮方向Xに沿う複数の箇所に配されている。
【0020】
弾性フィラメント3の伸縮方向と、高クレム吸水性シート2の断裂部21の延出方向との交差角度は、45°以上90°以下であることが好ましい。これにより、吸汗シート10の伸びしろを大きくとることができ、高い伸縮性を実現できる。
【0021】
弾性フィラメント3の伸縮方向Xは、吸汗シート10の伸縮性を高める観点から、吸汗シート10の長手方向に一致していることが好ましい。
また、弾性フィラメント3は、複数本が互いに交差することなく、一方向に配列されていることが好ましい。前記一方向は、吸汗シート10の長手方向に一致することが好ましい。この場合、複数本の弾性フィラメント3は、吸汗シート10の長手方向に直交する幅方向に互いに離間して配されていることが好ましい。なお、弾性フィラメント3は、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、蛇行しながら延びていてもよい。
図1~3はその典型例を示しており、複数の弾性フィラメント3の延出方向Xは吸汗シート10の長手方向(以下、長手方向Xともいう)に一致している。複数の弾性フィラメント3は互いに、吸汗シート10の長手方向Xに直交する幅方向Yに離間して配されている。このとき、高クレム吸水性シート2の断裂部21の延びる方向は、吸汗シート10の長手方向Xに対して、前述の交差角度で交わる方向であることが好ましく、吸汗シート10の幅方向Yであることがより好ましい。
【0022】
このような吸汗シート10は、弾性フィラメント3によって伸縮可能になっている。低クレム吸水性シート1及び高クレム吸水性シート2は、弾性フィラメント3の伸縮方向Xに伸長可能にされている。高クレム吸水性シート2は、断裂部21によって伸長可能である。低クレム吸水性シート1は、構成素材(例えば繊維)自体が伸長するものであってもよく、構成素材自体は伸長しなくても構造的に伸長性を備えるものであってもよい。伸長性を備えた構造とは、構成素材同士の交点における結合が部分的に剥離し、ちぎれ、たるみなどを生じて、シート全体として伸長する構造を言う。低クレム吸水性シート1は、吸汗シート10の強度を保持する観点から、高クレム吸水性シート2のような断裂を有さないことが好ましい。
【0023】
上記の伸縮性、柔軟性、通気性を兼ね備える吸汗シート10において、低クレム吸水性シート1と高クレム吸水性シート2との前述した吸汗の機能分担及び機能連携の観点から、低クレム吸水性シート1のクレム吸水高さ(K1)と高クレム吸水性シート2のクレム吸水高さ(K2)との差(K2-K1)は、25mm以上が好ましく、40mm以上がより好ましく、60mm以上が更に好ましい。前記差は大きいほど好ましい。
【0024】
低クレム吸水性シート1のクレム吸水高さ(K1)は、汗等の液の移行性を高めて滞留を抑える観点から、19mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、1mm以下が更に好ましい。
【0025】
高クレム吸水性シート2のクレム吸水高さ(K2)は、汗等の液の吸収保持性を高める観点から、20mm以上が好ましく、30mm以上がより好ましく、50mm以上が更に好ましい。
【0026】
高クレム吸水性シート2の坪量は、シートの構造内に保持できる液量を増やす観点から、15g/m以上が好ましく、20g/m以上がより好ましい。
また、高クレム吸水性シート2の坪量は、シートの柔軟性の観点から、25g/m以下が好ましい。
【0027】
(高クレム吸水性シート2の坪量の測定方法)
まず、前述の「クレム吸水高さ」の測定方法において示した方法で、製品から測定対象の吸汗シートを分離する。
分離した吸汗シートから、伸長状態で、エラストマーを含まないよう拡大鏡で、ピンセットやカミソリ等用い注意深く作業して高クレム吸水性シートを単離する。単離した高クレム吸水性シートの質量を未伸長状態の吸汗シートの面積で割ることで、高クレム吸水性シートの坪量を算出することができる。
(高クレム吸水性シート2に含まれるセルロース繊維質量率の測定方法)
単離した高クレムシートを小さく破砕し、破砕した高クレムシートを秤量した後、酸糖化法を用いてセルロース繊維のみ糖化する処理を施す。
取り出した、残渣の質量(セルロース繊維以外に相当)を測定して、糖化処理前後の質量比から、高クレム吸水性シート中のセルロース繊維質量率を算出する。
【0028】
吸汗シート10において、高クレム吸水性シート2の断裂部21の方向は、低クレム吸水性シート1の構成素材流れ方向(例えば繊維流れ方向)に対して直交していることが好ましい。この構成素材流れ方向とは、構成素材が細長い形状をしている場合に、その長さ方向が低クレム吸水性シート2のシート面において揃っている方向を意味する。例えば、構成素材が繊維であれば、繊維配向方向を意味する。この繊維配向とは、シートにおいて繊維が沿う方向であり、TAPPI標準法T481に規定された方法や、シートの引っ張り強度を測定したときにその強度が最も高い方向を測定することで判断できる。
これにより、弾性フィラメント3の伸縮力に対して低クレム吸水性シート1がその強度で耐えてシートの一体性を保持しながら、高クレム吸水性シート2が断裂部21で可動性を発揮し、前記伸縮力を吸収する。これにより、吸汗シート10全体として、伸縮性を高めながらシート強度を保持することができる。
【0029】
また、吸汗シート10において、弾性フィラメント3が、接着剤によらず、前述のクレム吸水高さが異なるシート(低クレム吸水性シート1及び高クレム吸水性シート2)に融着していることが好ましい。この場合、弾性フィラメント3は、低クレム吸水性シート1及び高クレム吸水性シート2の少なくとも一方(特に高クレム吸水性シート2)と融着していることが好ましく、両方と融着していることがより好ましい。この「融着」とは、弾性フィラメント3と、これに当接するクレム吸水高さが異なるシート(低クレム吸水性シート1及び高クレム吸水性シート2)の一部が互いに溶融して接合している状態を言う。
接着剤によらず、融着により接合していることで、吸汗シート10は剛性が抑えられ、柔軟性をより高めたもとなる。また、剛性の低減により、弾性フィラメント3による吸汗シート10の伸縮性がより高められる。更に、融着による接合であるため、接着剤によるよりも、使用に伴う部材間の剥離が生じ難く、吸汗シート10全体の機能がより保持されやすくなる。
【0030】
更に吸汗シート10において、高クレム吸水性シート2が紙であることが好ましい。これにより、前述のクレム吸水高さをより高めやすくすることができる。紙は一般的には不織布ほどの通気性はないものの、前述の断裂部21の存在によって、通気性を良好に保つことができる。また、紙に断裂部21を形成することにより、素材に起因する硬さが低減され、高クレム吸水性シート2が不織布のような又はそれ以上の柔らかさを備えたものとなる。これにより、吸汗シート10は、吸汗性、伸縮性、柔軟性及び通気性を兼ね備え、より優れたものとなる。
なお、ここで言う「紙」とは、セルロース繊維とその他の繊維を絡み合わせ、膠着させたものを意味する。セルロース繊維としては、例えば、天然セルロース繊維(針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ等の木材パルプ、木綿パルプ、藁パルプ等の非木材パルプ、コットン、麻)、再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、リヨセル等)が挙げられる。これらのセルロース繊維が合計で50質量%超含まれていれば、紙力増強剤等の他の成分を含有していてもよい。セルロース繊維の質量比率は、前述の(高クレム吸水性シート2に含まれるセルロース繊維質量率の測定方法)で得られる。
【0031】
高クレム吸水性シート2には、熱融着性繊維を含有していることが好ましい。これにより、前述の断裂部21を好適に有しながら、高クレム吸水性シート2と弾性フィラメント3との高い融着を実現して、剥離防止性を高めることができる。その結果、断裂部21を有する高クレム吸水性シート2は、弾性フィラメント3の伸縮に追従した可動性を保持し続けることができる。
高クレム吸水性シート2が前述の紙である場合、熱融着性繊維の含有質量割合は、上記の融着性を確保する観点から、高クレム吸水性シート2の質量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
また、高クレム吸水性シート2が前述の紙である場合、熱融着性繊維の含有質量割合は、クレム吸水高さを特定の範囲とする観点から、高クレム吸水性シート2の質量に対して、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0032】
一方、低クレム吸水性シート1は、高クレム吸水性シート2よりもクレム吸水高さが低く、親水性を有するシートを適宜採用することができる。
例えば、親水性を有する不織布、織布などが挙げられ、吸汗シート10の伸縮性、柔軟性及び通気性を高める観点から、親水性を有する不織布が好ましい。不織布としては、種々のものを適宜採用できる。熱融着性繊維を含んで形成されたものが好ましく、例えば、エアスルー法により形成した不織布(以下、エアスルー不織布又はAT-NWともいう)やカレンダー法により形成した不織布等のサーマルボンド不織布、スパンボンド不織布(以下、SB-NWともいう)やメルトブローン不織布等の紡糸直結型の不織布、ニードルパンチ法や水流交絡法等の機械的結合により形成した不織布などが挙げられる。これらの不織布を親水化処理して前述した親水性を有するものとすることができる。その中でもAT-NWがより好ましい。AT-NWは肌触りを柔らかくして風合いの良いものとすることができる。
低クレム吸水性シート1が熱融着性繊維を有することで、低クレム吸水性シート1と弾性フィラメント3と高い融着を実現して、剥離防止性を高めることができる。
【0033】
熱融着性繊維としてはこの種の物品に用いられる種々のものを特に制限なく採用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂とその共重合体;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの各種ポリエチレン系樹脂;通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなどの各種ポリプロピレン系樹脂(以下、PPともいう);各種ポリメチルペンテン系樹脂;エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン-プロピレン共重合樹脂などの各種ポリオレフィン系樹脂;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックが使用できる。
熱融着性繊維としては、上記の成分のいずれかを単体で含むものであってもよく、2成分以上を含む複合繊維であってもよい。複合繊維としては、芯鞘型、サイドバイサイド型など種々の形態ものを採用できる。特に、高クレム吸水性シート1については、断裂部21を有しながら弾性フィラメント3との融着を確実にし、使用時の剥離防止性を高める観点から、芯鞘型の複合繊維(例えば、PET又はPPを芯成分とし、ポリエチレン系樹脂(以下、PEともいう)を鞘成分とするもの等)を含有していることが好ましい。
【0034】
弾性フィラメント3としては、弾性樹脂を含んで、吸汗シートに伸縮性を付与できるものを特に制限なく作用できる。特に、熱可塑性エラストマーを含むものであることが、前述の融着を形成する観点から好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどを用いることができる。また、弾性フィラメントは、これらの1種類の熱可塑性エラストマーを単独で、又は、複数種類の熱可塑性エラストマーを組み合わせて形成することができる。
なお、弾性フィラメント3の「弾性」は、弾性フィラメント3を吸汗シート10から取り出した状態において、弾性を有することを意味する。弾性を有するとは、伸ばすことができ、かつ元の長さに対して1.3倍に伸ばした状態から力を解放したときに元の長さの1.1倍以下の長さまで戻る性質をいう。弾性フィラメント3は、断面が円形であってもよく、楕円形であってもよく、扁平形状であってもよい、弾性フィラメント3は、円形である場合、直径が1mm以下であることが好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
【0035】
本実施形態の吸汗シート10は、上記の構造等を備え、通気性、柔軟性、伸縮性及び吸汗性に係る下記物性を有することが好ましい。
吸汗シート10の通気性の指標の1つである通気抵抗は、吸汗シート10に伸度100%付与した状態において、0.2kPa・s/m以下が好ましく、0.02kPa・s/m以下がより好ましく、0.01kPa・s/m以下が更に好ましい。
【0036】
(通気抵抗の測定方法)
カトーテック株式会社製の通気性試験機「KES-F8-AP1 AIR PERMEABILITY TESTER」(商品名)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象の吸汗シートを伸縮方向Xに最大伸度付与した状態にする。その状態で、通気性試験機を用いて常法に従って評価対象の吸汗シートにおける任意の12箇所の通気抵抗を測定し、その平均値を当該シートの通気抵抗度とする。上記最大伸度は、基本的には伸度100%を意味し、伸度100%で吸汗シートが破壊されてしまう場合は、破壊しない範囲での最も大きい伸度を意味する。
なお、ここで言う「伸度」は、次のようにして求められる。まず、引張荷重を加える前、即ち自然状態の試験片の当初の標点距離をLとする。また、引張荷重による破断後の試験片の距離をLとする。このとき、φ={(L-L)/L}×100%の式によって求められる値φが、上記の伸度である。以下、本明細書において、「伸度」はここに定義した意味である。
【0037】
吸汗シート10の柔軟性の指標の1つであるバルクソフトネスは、吸汗シート10の伸縮方向X(吸汗シートの長手方向であり、典型的には製造時における機械流れ(MD。以下、同様。)方向について、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。
【0038】
(MD方向のバルクソフトネスの測定方法)
測定対象の吸汗シートに対し、切り出した後の自然状態において、伸縮方向Xに沿って30mm、これと直交する幅方向に沿って150mmの大きさになるように切り出して、試験片を作製する。以下、本明細書において各種測定方法を実施する際に切り出す試験片はこの自然状態における大きさになるように切り出す。
この試験片から短辺方向(30mmの方向)を高さとする直径45mmの円筒を作る。円筒の円周方向の重なり幅は約10mmとする。重なった部分の上端及び下端をMAX製ステープラHD-10D、針No.10-1Mで固定する。このようにして得られた円筒状の測定サンプルを円筒の高さ方向に圧縮したときの最大荷重を圧縮試験機によって測定し、その値をバルクソフトネスの値とする。圧縮試験機はオリエンテック株式会社製RTA-100型(商品名)を用いる。圧縮速度は10mm/minとする。
【0039】
吸汗シート10の伸縮性の指標の1つである50%引張時応力は、0.04N/mm幅以下が好ましく、0.03N/mm幅以下がより好ましく、0.025N/mm幅以下が更に好ましい。
吸汗シート10の50%引張時応力は、製造工程でのシート搬送安定性を高める観点から、0.01N/mm幅以上が好ましく、0.015N/mm幅以上がより好ましく、0.02N/mm幅以上が更に好ましい。
【0040】
(50%引張時応力の測定方法)
測定対象の吸汗シートに対し、伸縮方向Xに沿って150mm、これと直交する幅方向に沿って25mmの大きさになるように切り出して、試験片を作製する。50%引張時応力は測定サンプルの形状にあまり依存しないと考えられるため、この大きさが切り出せない場合は、なるべく大きく切り出す。その場合、チャック間隔が、幅方向(伸長方向に直交する方向)の4倍になり、測定中にチャックから試験片が抜けださない十分な領域をチャックして測定する。
この試験片の伸縮方向Xの両側を、引張試験機(株式会社島津製作所製「オートグラフ AG-X」、商品名)の一対のチャック間に固定する。チャック部は、引張方向の長さが20mm、引張方向と直交する方向の長さが60mmとする。試験片の固定は、試験片の伸縮方向(長さ方向)Xの両端部それぞれにおける、端縁から幅10mmの部分がチャック部に含まれるよう、少なくとも1MPaの空気圧によりチャックに挟んで留める。チャック間隔は100mmとし、試験片は、自然状態で固定する。尚、チャック間隔は試験片の長さに応じて適宜調整する。
そして、そのサンプルを50mm/minで伸長させ、サンプルの長さ(チャック間距離)が、自然状態での長さの150%となった時点の引張り荷重(N)を、自然状態での伸長させる前の幅で割った、単位長さ(1mm)あたりの伸度50%時応力とする。
【0041】
吸汗シート10の吸汗性の指標の1つである液残り率は、下記測定方法において、85%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましい。
また、吸汗シート10の吸汗性の指標の1つであるウェットバック(液戻り)量は、下記測定方法において、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、45%以下が更に好ましい。
【0042】
(液残り率の測定方法)
温度22±2℃、湿度60±5%RH下において液残り量の評価を行う。厚み2mm、10cm四方で表面が平坦なアクリル製プレート(以下、これを下部プレートともいう。)を台の上に水平に置き、該プレートの中央部における5cm四方の枠内に面内均等に脱イオン水を1mg×49滴滴下する。
その上に、5cm四方に切り出した測定対象の吸汗シートの肌面に当たる側(低クレム吸水性シート側)をプレートと対抗するように、且つ吸汗シートが脱イオン水を滴下した領域とすべて重なるように載置する。その状態で、吸汗シート上に上述の下部プレートと同一の荷重プレートを更に載置し、0.8kPaの荷重を付与する。
1分経過後、荷重プレート及び吸汗シートを下部プレートから取り除き、下部プレート上に残存する脱イオン水の質量(mg)を測定し、当初滴下質量との比を算出する。本質量比が小さいほど、吸液性に優れ、すなわち汗等の液が着用者の肌に残りにくいものである。
なお、評価に用いるシート面積に比例し、滴下する液量は任意に増減させることができる。具体的には、5cm四方のサンプルを切り出せなかった場合に、例えば2.5cm四方のサンプルに対しては1mg×49×((2.5^2)/(5^2))の液量で評価してもよい。
【0043】
(ウェットバック率の測定方法)
前記(液残り量の測定方法)に用いた吸汗シートの肌面に当たる側(低クレム吸水性シート側)にろ紙を重ねて、0.8kPa加圧1分保持後のろ紙(ADVANTEC社製の定量ろ紙No.5C(商品名))の質量増加量を測定する。このろ紙の質量増加量の当初滴下した液量の質量比を、測定対象の吸汗シートのウェットバック率とする。
【0044】
次に、本実施形態の吸汗シート10の製造方法について、好ましい実施形態に基づいて説明する。
本製造方法においては、紡糸ノズルから紡出された溶融状態の複数の弾性フィラメント300を延伸しつつ、該弾性フィラメントの固化前に、該弾性フィラメントをクレム吸水高さの異なる2枚のシート原料(低クレム吸水性シート原料100、高クレム吸水性シート原料200。以下、両方を合わせて両シート原料100、200ともいう。)で挟持して融着させて複合体800を形成する。複合体800は、弾性フィラメントをクレム吸水高さの異なる2枚のシート原料で挟持した状態で一対のニップロールによって挟圧して形成することができる。
次いで、複合体800に対して弾性フィラメント300の延びる方向に沿って延伸処理を行って、クレム吸水高さが高い方のシート(高クレム吸水性シート原料200)に弾性フィラメント300の伸縮方向Xと交差する断裂部21を形成しつつ、複合体800に伸縮性を付与する。
【0045】
上記の溶融状態の弾性フィラメント300の紡出においては、該弾性フィラメント300を互いに交差させずに一方向に配列させるようにすることが好ましい。これにより、製造された吸汗シートの伸縮方向及び伸縮力を所望のものとすることができる。弾性フィラメント300を互いに交差させずに一方向に配列させるため、上記の紡糸ノズルは、等間隔で直線状に一列に配置されていることが好ましい。
前記紡糸ノズルは通常円形であり、その直径は弾性フィラメントの直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。この観点から、紡糸ノズルの直径は0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。同様の観点から、紡糸ノズルの直径は2mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましい。
【0046】
紡出された溶融状態の弾性フィラメント300は、それぞれ原反から互いに同速度で繰り出された低クレム吸水性シート原料100及び高クレム吸水性シート原料200と合流し、両シート原料100、200間に挟持されて所定速度で引き取られる。弾性フィラメント300の引き取り速度は、両シート原料100、200の繰り出し速度と一致している。
弾性フィラメント300の引き取り速度は、該弾性フィラメント300の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。延伸によって弾性フィラメント300に生じる張力は、弾性フィラメント300を両シート原料100、200と貼り合わせるときの風や静電気に起因する弾性フィラメント300の乱れを防止する。それによって弾性フィラメント300同士を交差させずに一方向へ配列させることができる。これらの観点から、弾性フィラメント300の引き取り速度は、紡糸ノズル孔内の樹脂吐出速度に対し、その延伸倍率は、1.1倍以上となるように調整されることが好ましく、4倍以上となるように調整されることがより好ましく、10倍以上となるように調整されることが好ましい。同様の観点から、上記の延伸倍率は、400倍以下となるように調整されることが好ましく、100倍以下となるように調整されることがより好ましく、80倍以下となるように調整されることが更に好ましい。
【0047】
溶融状態の弾性フィラメント300と低クレム吸水性シート原料100及び高クレム吸水性シート原料200との合流において、弾性フィラメント300は融着可能な状態となっている。融着可能になっている弾性フィラメント300に起因する溶融熱によって、該弾性フィラメント13と両シート原料100、200とが融着する。このとき、外部から熱を付与しないようにすることで、両シート原料100、200の構成材料のうち、弾性フィラメント13の周囲に存在する材料のみが弾性フィラメント300と融着し、それよりも離れた位置に存在する材料は融着しない。その結果、両シート原料100、200に加わる熱は最小限にとどまるので、該シート自身が本来的に有する良好な風合いが維持される。それによって、得られる吸汗シート10の風合いが良好になる。
【0048】
上記の融着時における弾性フィラメント300の温度は、融着を確実にするために100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましい。また弾性フィラメント300の形状を保持して伸縮特性の良好な吸汗シート10を得る観点から、融着時における弾性フィラメント300の温度は、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましい。
【0049】
弾性フィラメント300と両シート原料100、200との接合時には、弾性フィラメント300は実質的に非伸長状態(外力を取り除いたときに縮まない状態)である。両者の接合状態においては、両シート原料100、200を構成する材料の少なくとも一部が、弾性フィラメントへ融着することが好ましい。十分な接合強度を得る観点から、弾性フィラメント300と、シート原料100及び200両方のシート面それぞれの少なくとも一部と融着することがより好ましい。得られる吸汗シート10の伸縮特性は、弾性フィラメント3と両シート原料100及び200との接合点の密度に影響を受ける。また、伸縮特性は、接合温度、接合圧力、後述する延伸処理によって調整することができる。
【0050】
以上の方法により、弾性フィラメント300とクレム吸水高さの異なる2枚のシート原料100、200とを接合(融着)させた複合体800を形成する。
【0051】
複合体800に対して、前述のとおり延伸処理を行う。これにより、クレム吸水高さが高い方のシート(高クレム吸水性シート原料200)に弾性フィラメント300の伸縮方向Xと交差する断裂部21を形成しつつ、複合体800に伸縮性を付与する。
この延伸処理としては、通常取り得る種々の方法を用いることができる。例えば、ロール間延伸、歯溝ロールによる噛み込み延伸、テンターによる引張延伸が挙げられる。
その中でも、MD方向にシートの強度分布が存在していても、伸長倍率を面内一様に管理できる観点から、歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール600、700間に、複合体800を、その流れ方向(弾性フィラメント300の延びる方向)に沿って通すことによって前記延伸処理を行うことが好ましい。
【0052】
歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール600、700間においては、一方の歯溝ロールの歯の部分が相手の歯溝ロールの歯底に入り込んで、互いのロールの歯溝が噛み込むようにして回転する。このような噛み込む歯溝ロール600、700間に前述の複合体800を挿入する。
挿入された複合体800は、一方の歯溝ロール600の歯601に保持されて、他方の歯溝ロール700の歯底702に押し込められ、他方の歯溝ロール700の歯701に保持されて、一方の歯溝ロール600の歯底602に押し込められる。
複合体800の、歯601及び歯701それぞれに保持された部分P1、P2は、ロール回転方向に交互に複数形成される。ロール回転に合わせて、複合体800の歯601に保持された部分P1と、複合体800の歯701に保持された部分P2との間の部分(P1-P2)に延伸力が加わる。これにより、複合体800の複数の延伸力がかかる部分において、クレム吸水高さの異なる2枚のシート原料100、200が延伸されて、部分的に構成素材(例えば繊維)の剥離又は素材の疎な部分が形成される。この部分が複合体800(製造される吸汗シート10)の伸縮性を担保する。
【0053】
この延伸処理は、高クレム吸水性シート原料200に断裂部21が生じる強さで行うことが好ましい。これにより、高クレム吸水性シート原料200において、弾性フィラメント300の伸縮方向Xと交差する方向の断裂部21を良好に形成することができる。ただし、吸汗シート10の強度を保持する観点から、前述の延伸処理は、低クレム吸水性シート原料100に上記と同様の破断が生じることがないように延伸強さを制御することが好ましい。
【0054】
また、上記のように、低クレム吸水性シート原料100に断裂を生じさせず、高クレム吸水性シート原料200に断裂部21を生じさせるようにする観点から、各シート原料100、200が下記の性能を有するものであることが好ましい。
【0055】
すなわち、延伸処理する前の低クレム吸水性シート原料100は、延伸処理後のシートの穴あきを抑制し、外観を良好に保つ観点から、破断伸度(E1)が35%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0056】
加えて、延伸処理する前の低クレム吸水性シート原料100は、延伸処理後のシートの穴あきを抑制し、外観を良好に保つための観点から、破断強度(P1)が5N/25mm以上であることが好ましい。
また、延伸処理する前の低クレム吸水性シート原料100は、加工中にシートが設備に絡みつくようなトラブルが生じても、設備を破損させない観点から、破断強度(P1)が20N/25mm以下であることが好ましく、15N/25mm以下であることがより好ましく、10N/25mm以下であることが更に好ましい。なお、破断強度(P1)は、25mm幅当たりに規格化した数値であるため、幅に比例して大小読み替えることができる。
【0057】
一方、延伸処理する前の高クレム吸水性シート原料200は、未延伸部に意図しない断裂を生じさせないの観点から、破断伸度(E2)が10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。
また、延伸処理する前の高クレム吸水性シート原料200は、延伸部に適切に断裂を付与するの観点から、破断伸度(E2)が70%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましい。
【0058】
加えて、延伸処理する前の高クレム吸水性シート原料200は、未延伸部に意図しない断裂を生じさせないの観点から、破断強度(P2)が3N/25mm以上であることが好ましい。
また、延伸処理する前の高クレム吸水性シート原料200は、加工中にシートが設備に絡みつくようなトラブルが生じても、設備を破損させないの観点から、破断強度(P2)が10N/25mm以下であることが好ましく、9N/25mm以下であることがより好ましく、7N/25mm以下であることが更に好ましい。
【0059】
更に、延伸処理する前の低クレム吸水性シート原料100の破断伸度(E1)と高クレム吸水性シート原料200の破断伸度(E2)の差(E1-E2)は、延伸部に適切に断裂を付与する観点から、40ポイント以上であることが好ましく、50ポイント以上であることがより好ましい。
【0060】
(破断伸度及び破断強度の測定方法)
延伸処理する前の低クレム吸水性シート原料100及び高クレム吸水性シート原料200それぞれの破断伸度及び破断強度は、次の方法によって測定することができる。
すなわち、測定対象のシート原料に対し、幅25mm、長さ(複合体800として積層する際の伸縮する方向の長さ。MD方向150mmに切り出した試験片を、チャック間100mmから50mm/minの速度で引っ張り、各伸度における引張荷重を測定する。そして、各試験片の引張荷重における最大点強度を破断強度とする。また、各試験片において最大点強度における伸度を破断伸度とする。なお、破断伸度における「伸度」は、前述の(通気抵抗の測定方法)において定義した「伸度」と同様の意味である。
【0061】
更に、複合体800は、シート構造を延伸加工中及び製品使用場面で維持する観点から、延伸処理する前の状態における剥離強度(弾性フィラメント300に対する低クレム吸水性シート原料100又は高クレム吸水性シート原料200の剥離強度)が、0.02N/25mm以上であることが好ましく、0.1N/25mm以上であることがより好ましい。
【0062】
(剥離強度の測定方法)
JIS K 6854-1 : 1999 第1部90度はく離に準拠して測定することができる。具体的には、測定対象の複合体800に対して、幅25mm、長さ(伸縮方向)150mmに切り出した試験片を、50mm/分の速度で剥離させる。その剥離長さ50mmにおける平均はく離力を、試験片の剥離強度とする。なお、剥離強度は、25mm幅当たりに規格化した数値であるため、幅に比例して大小読み替えることができる。
【0063】
本発明の吸汗シートは、上記の効果を奏する限り、他の部材等を含んでいてもよく、低クレム吸水性シート及び高クレム吸水性シートそれぞれを単層にしてもよく、複数層にしてもよい。
また、本発明の吸汗シートは、上記の効果を奏する限り、弾性フィラメントの配置について図1~3に示した形態に限らいず、種々の形態をとり得る。例えば、弾性フィラメントを複数本束にしたものにして配置してもよい。
【0064】
本発明の吸汗シートは各種用途に用いることができる。例えば、おむつ等の吸収性物品において、外装体を構成するシートとして用いることができる。また、吸収性物品以外にも、包帯、マスク、絆創膏などに用いることができる。
【0065】
上記の吸収性物品としては、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。表面シート、吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば表面シートとしては、親水性で液透過性を有し肌触りのよいものが好ましく、中でもAT-NWなどがより好ましい。吸収体としては、吸収性コアを含み、任意に吸収性コアを包む被覆シートを含む。吸収性コアは、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体若しくは吸収性ポリマーの集合体又はこれらを混合したものを保持させたものが例示される。被覆シートは、ティッシュペーパーや不織布等を用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液難透過性若しくは撥水性又は液透過性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。例えば吸収性物品が使い捨ておむつや生理用ナプキンである場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【実施例
【0066】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限りいずれも質量基準である。また、下記表1中における「←」は、左隣の記載内容と同じであることを意味する。下記表中における、「-」は、項目に該当する値を有さないこと等を意味する。
【0067】
(実施例1)
表1に示すシート原料2(親水性SB-NW)を肌面側のシートとし、シート原料4(紙)を非肌面側のシートとし、紡糸ノズルから紡出した溶融状態の弾性フィラメント(坪量10g/m)を両シート原料間に挟持した状態で一対のニップロールによって挟圧した。これにより複合体を形成した。弾性フィラメントは、互いに交差させずに一方向に配列するようにした。
続けて、上記複合体をその流れ方向(弾性フィラメントの延びる方向)に沿って、一対の歯溝ロール間に挿入して延伸処理を行った。これにより、複合体に伸縮性を付与し、非肌面側のシートを弾性フィラメントの伸縮方向と交差するように断裂部21を形成した。得られたシートを実施例1の試料S1とした。
【0068】
なお、上記弾性フィラメントの原料は下記のものを用いた。
<A-B-A型トリブロック共重合体>
SEPS:スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(株式会社クラレ製:スチレン(A)含有量30質量%、エチレン-プロピレン(B)含有量70質量%、スチレン(A)の重量平均分子量7500、エチレン-プロピレン(B)の重量平均分子量35000、スチレン(A)のTg60℃、エチレン-プロピレン(B)のTg-50℃)
【0069】
(実施例2)
非肌側のシートとして、表1に示すシート原料5(PET/PE10%配合紙(15g/m))を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の試料S2を作製した。
【0070】
(実施例3)
肌面側のシートとして、表1に示すシート原料3(親水性AT-NW)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の試料S3を作製した。
【0071】
(実施例4)
非肌側のシートとして、表1に示すシート原料6(PET/PE10%配合紙(20g/m))を用いた以外は、実施例3と同様にして、実施例4の試料S4を作製した。
【0072】
(実施例5)
非肌側のシートとして、表1に示すシート原料5(PET/PE10%配合紙(15g/m))を用いた以外は、実施例3と同様にして、実施例5の試料S5を作製した。
【0073】
(比較例1)
肌面側のシート及び非肌面側のシートとして、表1に示すシート原料1(SB-NW)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の試料C1を作製した。
【0074】
(比較例2)
肌面側のシート及び非肌面側のシートとして、表1に示すシート原料3(親水性AT-NW)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の試料C2を作製した。
【0075】
(参考例)
肌面側のシートとして、表1に示すシート原料1(SB-NW)を用いた以外は、実施例1と同様にして、参考例の試料Rを作製した。
【0076】
各試料の作製に用いたシート原料について、クレム吸水高さ、繊維接触角、破断伸度(25mm幅,チャック間距離100mm)及び破断強度(25mm幅, チャック間距離100mm)を測定した。これらの値は、各物性に対応する前述の測定方法に基づいて測定した。
その結果は下記表1に示すとおりであった。
【0077】
【表1】
【0078】
また、各試料の作製の工程において、延伸処理前の複合体における剥離強度及び肌面側のシートと非肌面側のシートの破断伸度の差を測定した。この値は、対応する前述の測定方法に基づいて測定した。
その結果は下記表2のとおりであった。
【0079】
加えて、作製した各試料について、下記表2に示す試料評価の各項目の測定を行った。これらの項目はそれぞれ対応する前述の測定方法に基づいて測定した。
その結果は下記表2に示すとおりであった。
【0080】
【表2】
【0081】
表1及び2に示すとおり、実施例1~5の試料の作製においては、肌面側のシートよりも非肌面側のシートの破断伸度又は破断伸度と破断強度の両方が小さいため、非肌面側のシートに断裂部21を形成することができた。
実施例1~5では、親水性の肌面側のシートよりもクレム吸水高さが大きい高クレム吸水性シートを非肌面側のシートとして配置し、断裂部21を良好に形成し、本発明の吸汗シートの具体例を好適に作製することができた。特に、実施例1~5の中で、実施例2、4及び5では、非肌面側のシートである高クレム吸水性シートに熱融着性繊維を混合したことで、弾性フィラメントとの融着性を向上させ、シート形態の保持性がより高いものを作製することができた。
【0082】
また、表2に示すとおり、実施例1~5の試料S1~S5は、吸汗性、伸縮性、柔軟性及び通気性を兼ね備え、優れた性能を示していた。
具体的には下記のとおりであった。
(吸汗性)
実施例1~5の試料S1~S5は、比較例1の試料C1よりも液残り量が約5分の1以下にまで抑えられており、吸液性(吸汗性)が高いものであった。同時に、実施例1~5の試料S1~S5は、比較例2の試料C2よりもウェットバック量が約6割以下に抑えられており、吸液(吸汗)した液の保持性が高かった。なお、比較例1では、吸液がほとんどできていなかったため、ウェットバックの測定が出来なかった(参考例においても同様)。
(伸縮性)
実施例1~5の試料S1~S5は、充填率が不織布よりも高くて硬さのある紙を非肌面側の高クレム吸水性シート2として用いたにも関わらず、断裂部21を有することで、良好な伸縮性を有していた。
(柔軟性)
実施例1~5の試料S1~S5は、比較例1及び2の試料C1及びC2と同等かそれ以下の、MD方向のバルクソフトネスの値が示され、柔軟性の高いものとなっていた。
(通気性)
実施例1~5の試料S1~S5は、断裂部21を有することで、通気抵抗が比較例1の試料C1の約3割以下、比較例2の試料C2の約4分の1以下となっており、通気性が格段に良化していた。
【符号の説明】
【0083】
1 クレム吸水高さが低いシート(低クレム吸水性シート)
2 クレム吸水高さが高いシート(高クレム吸水性シート)
21 断裂部
3 弾性フィラメント
10 吸汗シート
100 低クレム吸水性シート原料
200 高クレム吸水性シート原料
300 弾性フィラメント
800 複合体

図1
図2
図3
図4
図5