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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】硬貨処理装置及び現金取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/26 20190101AFI20240116BHJP
   G07D 11/28 20190101ALI20240116BHJP
【FI】
G07D11/26
G07D11/28
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020098895
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021192204
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】箭野 達也
(72)【発明者】
【氏名】村尾 佳紀
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-255104(JP,A)
【文献】特開2017-138709(JP,A)
【文献】特開平09-035108(JP,A)
【文献】特開平08-167060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 5/00- 9/10,
19/00
G07G 1/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨が投入される投入部と、
前記投入部に投入された前記硬貨を所定の経路に沿って案内するシュート部と、
前記シュート部における前記所定の経路の上流側と下流側とにそれぞれ配置され、該シュート部により案内される物体の通過を検知する通過検知センサと、
前記通過検知センサの検知結果に基づいて前記シュート部の状態を監視する状態監視部と
を有し、
前記状態監視部は、上流側の前記通過検知センサと下流側の前記通過検知センサとにおける前記物体の検知結果が、正常時における検知結果と異なる異常な検知結果であった回数をカウントし、前記異常な検知結果の回数が所定の回数となったときに警告を出力する
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記状態監視部は、
上流側の前記通過検知センサ又は下流側の前記通過検知センサの少なくとも何れか一方における前記物体の検知結果が、前記物体を所定時間以上検知し続けた場合、前記異常な検知結果であると判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記状態監視部は、
上流側の前記通過検知センサよりも上流側の所定箇所から上流側の前記通過検知センサが前記物体を検知するまでにかかった時間が所定時間以上であった場合、前記異常な検知結果であると判断する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記状態監視部は、
上流側の前記通過検知センサから下流側の前記通過検知センサが前記物体を検知するまでにかかった時間が所定時間以上であった場合、前記異常な検知結果であると判断する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記状態監視部は、
上流側の前記通過検知センサ又は下流側の前記通過検知センサの少なくとも何れか一方における前記物体の検知結果が、所定のタイミングで前記物体を検知しなかった場合、前記異常な検知結果であると判断する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記状態監視部は、
上流側の前記通過検知センサ又は下流側の前記通過検知センサの少なくとも何れか一方における前記物体の検知結果が、所定の回数以上前記物体を検知した場合、前記異常な検知結果であると判断する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記状態監視部は、
前記異常な検知結果の回数の増加頻度に応じて異なる前記警告を出力する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記状態監視部は、
検知した前記異常の種類毎に、前記異常な検知結果の回数を加算する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
前記状態監視部は、
前記異常な検知結果の回数が所定の回数となったときに、所定の回数となった前記異常の種類に応じて異なる前記警告を出力する
ことを特徴とする請求項8に記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
前記状態監視部は、
前記異常な検知結果の回数が第1の所定回数となったときと第2の所定回数となったときとで異なる前記警告を出力する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項11】
前記状態監視部は、
前記異常な検知結果であった場合、前記異常な検知結果であった回数を、1回の取引に対して1のみ増加させる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項12】
使用者の操作を受け付ける操作部と、
請求項1乃至請求項11の何れかに記載の硬貨処理装置と
を具えることを特徴とする現金取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置及び現金取扱装置に関し、例えば使用者に紙幣や硬貨を投入させて所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、使用者との取引内容に応じて、例えば使用者に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また使用者へ現金を出金するものが広く普及している。この現金自動預払機としては、例えば硬貨に関する処理を行う硬貨処理装置を内部に有するものがある。硬貨処理装置は、例えば使用者との間で硬貨の授受を行う入出金部、集積された硬貨を1枚ずつに分離する分離部、硬貨を搬送する搬送部、投入された硬貨の金種や真偽等を識別する識別部(認識部とも呼ぶ)、及び金種毎に硬貨を収納する収納部等を有している。
【0003】
このような硬貨処理装置においては、使用者により入出金部へ投入された硬貨を分離部へ案内するためのシュート部に硬貨滞留を検知するセンサを配置し、センサの検知結果に応じて滞留異常を報知するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-134708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような硬貨処理装置においては、シュート部で硬貨滞留等の異常が発生したことに起因して硬貨処理装置自体が停止してしまうことを防止することが望まれている。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、シュート部の異常で装置が停止することを未然に防止し得る硬貨処理装置及び現金取扱装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨処理装置においては、硬貨が投入される投入部と、投入部に投入された硬貨を所定の経路に沿って案内するシュート部と、シュート部における所定の経路の上流側と下流側とにそれぞれ配置され、該シュート部により案内される物体の通過を検知する通過検知センサと、通過検知センサの検知結果に基づいてシュート部の状態を監視する状態監視部とを設け、状態監視部は、上流側の通過検知センサと下流側の通過検知センサとにおける物体の検知結果が、正常時における検知結果と異なる異常な検知結果であった回数をカウントし、異常な検知結果の回数が所定の回数となったときに警告を出力するようにした。
【0008】
また本発明の現金取扱装置においては、使用者の操作を受け付ける操作部と、上述した硬貨処理装置とを設けるようにした。
【0009】
本発明は、シュート部の異常で硬貨処理装置が停止してしまうよりも前に、落下阻害要因を保守員に除去させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シュート部の異常で装置が停止することを未然に防止し得る硬貨処理装置及び現金取扱装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】現金自動預払機の構成を示す斜視図である。
図2】硬貨処理装置の構成を示す右側面図である。
図3】シュート部の構成(1)を示す斜視図である。
図4】シュート部の構成(2)を示す右側面図である。
図5】正常時少数枚硬貨投入時のシュート部の様子を示す右側面図である。
図6】硬貨が通過検知光を遮る状態でもたついた場合のシュート部の様子を示す右側面図である。
図7】正常時少数枚硬貨投入時のタイミングチャートである。
図8】正常時限界枚数硬貨投入時のタイミングチャートである。
図9】硬貨が通過検知光を遮る状態でもたついた場合のタイミングチャートである。
図10】全ての硬貨が通過検知光を遮らない状態でもたついた場合のシュート部の様子を示す右側面図である。
図11】一部の硬貨が通過検知光を遮らない状態でもたついた場合のシュート部の様子を示す右側面図である。
図12】全ての硬貨が通過検知光を遮らない状態でもたついた場合のタイミングチャートである。
図13】一部の硬貨が通過検知光を遮らない状態でもたついた場合のタイミングチャートである。
図14】硬貨が通過検知光を遮る回数が多い場合のタイミングチャートである。
図15】硬貨落下監視処理手順(1)を示すフローチャートである。
図16】硬貨落下監視処理手順(2)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0013】
[1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、現金取扱装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
【0014】
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、通帳入出口4、カード入出口5、硬貨入出金口6、紙幣入出金口7及び操作表示部8等が設けられており、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。
【0015】
通帳入出口4は、通帳が挿入され、また排出する部分である。通帳入出口4の奥側には、通帳の裏表紙等に設けられた磁気記録部から磁気情報を読み取り、また該通帳に取引の内容を記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。カード入出口5は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分である。カード入出口5の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
【0016】
硬貨入出金口6は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。紙幣入出金口7は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。この硬貨入出金口6及び紙幣入出金口7は、それぞれシャッタを駆動することにより開放又は閉塞する。操作部としての操作表示部8は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。
【0017】
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0018】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0019】
硬貨処理装置10は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、図示しないスライドレールを介して筐体2に取り付けられている。また筐体2の前面側又は後面側には、開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。このため現金自動預払機1は、保守作業等が行われる場合、筐体2の前面側又は後面側の扉を開放した上で、硬貨処理装置10を前方又は後方へスライドさせることにより、該硬貨処理装置10を該筐体2の外部に位置させ、また該筐体2の内部に収納させる。
【0020】
[2.硬貨処理装置の構成]
硬貨処理装置10は、図2に模式的な右側面図を示すように、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する非磁性体の材料でなり、薄い板状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径や厚さが異なる複数種類の硬貨を取り扱うことが想定されている。
【0021】
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
【0022】
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0023】
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。該入出金部13は、上側に開口部を有し硬貨を収容する収容器13A、該開口部を開閉するシャッタ13B等、及び収容器13A内における硬貨の有無等を検知するセンサ(図示せず)を有している。収容器13Aは、その底面を形成する受皿部ゲート13Gが、シュート部14との間に設けられている。受皿部ゲート13Gは、収容器13A内に硬貨を集積させる際は閉鎖されており、該収容器13Aからシュート部14に硬貨を引き渡す際に開放され、該収容器13Aからシュート部14に向けて硬貨を落下させる。
【0024】
入出金部13は、受皿部ゲート13Gを閉鎖した状態で且つシャッタ13Bを開放した状態で使用者により硬貨が収容器13Aに投入されると、該シャッタ13Bを閉塞し、受皿部ゲート13Gを開放して、硬貨を収容器13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、シャッタ13Bを閉塞した状態で、後述するピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を収容器13A内に収容した後、シャッタ13Bを開放して使用者に受け取らせる。
【0025】
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
【0026】
認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0027】
ピンベルト搬送部18は、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uにより取り囲み、硬貨を搬送する経路である搬送経路を形成している。ピンベルト搬送部18は、硬貨の盤面と当接し搬送経路に沿って進行するよう案内する搬送ガイドと、概ね該搬送経路に沿って走行するピンベルトとにより構成されている。このピンベルトには、硬貨の末尾側と当接し、搬送方向へ押動するためのピンが設けられている。ピンベルト搬送部18は、ピンベルトを走行させることにより、受渡部17から受け取った硬貨を搬送経路に沿って搬送し、入出金部13の収容器13A内へ放出する。
【0028】
またピンベルト搬送部18には、スタッカ部21の前側下部及び下側に配置された部分における複数箇所に、硬貨の搬送経路を分岐させる分岐部19がそれぞれ設けられている。各分岐部19の左側には、硬貨を案内する案内部30がそれぞれ設けられている。
【0029】
各分岐部19は、それぞれ回動可能な案内板及びアクチュエータ等(何れも図示せず)を有しており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各案内部30へ分岐させるかを切り替える。各案内部30は、それぞれ補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25又は第2補充リジェクト庫26、一時保留部23、リジェクト庫27及び取忘取込庫28等へ硬貨を進行させる。
【0030】
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20が設けられている。各スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。各スタッカ分岐部20は、各分岐部19と同様に構成されており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各スタッカ部21へ分岐させるかを切り替える。
【0031】
スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられており、上側に設けられた案内部31と、該案内部31の下側において硬貨を上下方向に沿って積み重ねるように集積する集積部32と、該集積部32の下側から硬貨を繰り出す繰出部33とを有している。このスタッカ部21は、ピンベルト搬送部18により搬送された硬貨をスタッカ分岐部20から受け取ると、該硬貨を案内部31により集積部32へ案内して集積させる。またスタッカ部21は、硬貨制御部12の制御に基づき、集積部32に集積している硬貨を繰出部33により1枚ずつ繰り出し、下方の出金搬送部22又は一時保留部23へ落下させる。
【0032】
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置若しくは集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
【0033】
一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。また一時保留部23は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。
【0034】
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、案内部30により案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を前方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
【0035】
下分離部29は、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっているものの、硬貨処理装置筐体11に対する取付方向が、該上分離部15とは相違している。この下分離部29は、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して1枚ずつ上方へ搬送し、一時保留部23内へ放出する。
【0036】
[3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と使用者との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での各処理についてそれぞれ説明する。
【0037】
現金自動預払機1(図1)において使用者との間で入金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、使用者に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。具体的に硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理において、使用者に入出金部13に硬貨を投入させると、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次介して一時保留部23に収容する。
【0038】
このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に入金額を集計して操作表示部8(図1)に表示し、使用者に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。硬貨処理装置10は、使用者により継続が選択されると、後段の入金収納処理を行う一方、中止が選択されると、入金取引を中止し、後述する出金処理の場合と同様に硬貨を入出金部13へ搬送して返却する。
【0039】
硬貨処理装置10は、後段の入金収納処理において、硬貨を一時保留部23から上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18及びスタッカ分岐部20を順次介してスタッカ部21へ搬送して集積させる。このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に、該硬貨の金種に応じたスタッカ部21へ搬送する。
【0040】
また、現金自動預払機1(図1)において使用者との間で出金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、使用者に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。具体的に硬貨処理装置10は、操作表示部8(図1)を介して使用者から出金取引を開始する旨や出金額の操作入力を受け付けると、出金処理を開始し、出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を各スタッカ部21から出金させ、出金搬送部22を介して一時保留部23内に集積させる。続いて硬貨処理装置10は、一時保留部23、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次経由して硬貨を入出金部13へ搬送して収容させ、使用者に受け取らせる。
【0041】
因みに硬貨処理装置10は、入金処理及び出金処理の他、補充回収庫24からスタッカ部21へ硬貨を補充する補充処理や、該スタッカ部21から補充回収庫24へ硬貨を回収する回収処理等も行い得るようになっている。
【0042】
[4.シュート部の構成]
次に、シュート部14の構成について説明する。図3及び図4に示すように、シュート部14は、その内部に硬貨を落下させる硬貨通過空間14Aを形成している。またシュート部14の左端部は、下方へ向かうに連れて右側へ傾斜するよう右方向を向く内壁面であるシュート部左側内壁面14Lが形成されている。さらにシュート部14は、シュート部左側内壁面14Lの前端部から右方向へ延びるシュート部前側内壁面14Fが、シュート部左側内壁面14Lの後端部から右方向へ延びるシュート部後側内壁面14Bが、それぞれ形成されている。
【0043】
[5.センサの構成]
シュート部14の上端部には、受皿部ゲート13G(図2)の開閉状態を検知する受皿部ゲート開閉検知センサ(図示せず)が設けられている。この受皿部ゲート開閉検知センサは、光学式のセンサであり、検知光の受光結果を受皿部開閉検知信号Sggとして硬貨制御部12(図2)に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、受皿部ゲート13Gの開閉状態を判断する。具体的に受皿部ゲート開閉検知センサは、受皿部ゲート13Gが受皿部ゲート開閉検知センサの検知光を遮ると、検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を硬貨制御部12に通知する。一方、受皿部ゲート開閉検知センサは、受皿部ゲート13Gが受皿部ゲート開閉検知センサの検知光を遮っていない場合、検知光を受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態)を硬貨制御部12に通知する。
【0044】
図3及び図4に示すように、シュート部14には、硬貨通過空間14Aを落下する硬貨を検知する上側通過検知センサSEPuが設けられている。この上側通過検知センサSEPuは、光学式のセンサであり、発光部SEPue、受光部SEPur及びプリズムSEPupにより構成されている。
【0045】
発光部SEPueは、シュート部前側内壁面14Fよりも前側においてシュート部14に取り付けられており、硬貨通過空間14Aに向けて後方向へ上側通過検知光Luを発光する。プリズムSEPupは、シュート部後側内壁面14Bよりも後側においてシュート部14に取り付けられており、発光部SEPueから照射された上側通過検知光Luの進行方向を左斜め下方向へ90[°]屈曲させて進行させてから、さらに検知光の進行方向を前方向へ90[°]屈曲させ受光部SEPurへ向けて進行させる。受光部SEPurは、シュート部前側内壁面14Fよりも前側における発光部SEPueの左斜め下側において発光部SEPueと一体でシュート部14に取り付けられており、プリズムSEPupにより反射された上側通過検知光Luを受光する。
【0046】
この上側通過検知センサSEPuは、上側通過検知光Luの受光結果を上側通過検知信号Sguとして硬貨制御部12(図2)に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨を検出したか、すなわち、硬貨が硬貨通過空間14Aを落下しているか否かを判断する。具体的に上側通過検知センサSEPuは、落下したり滞留したりしている硬貨が上側通過検知光Luを横切ると、上側通過検知光Luが硬貨によって遮られ上側通過検知光Luを受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を硬貨制御部12に通知する。一方、上側通過検知センサSEPuは、硬貨が上側通過検知光Luを横切っていない場合、上側通過検知光Luを受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態)を硬貨制御部12に通知する。
【0047】
またシュート部14における上側通過検知センサSEPuの下側には、硬貨通過空間14Aを落下する硬貨を検知する下側通過検知センサSEPdが設けられている。この下側通過検知センサSEPdは、上側通過検知センサSEPuと同様の光学式のセンサであり、発光部SEPue、受光部SEPur、プリズムSEPup及び上側通過検知光Luと対応する発光部SEPde、受光部SEPdr、プリズムSEPdp及び下側通過検知光Ldにより構成されている。この下側通過検知センサSEPdは、下側通過検知光Ldの受光結果を下側通過検知信号Sgdとして硬貨制御部12(図2)に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨を検出したか否か、すなわち、硬貨が硬貨通過空間14Aを落下しているか否かを判断する。以下では、上側通過検知光Lu及び下側通過検知光Ldをまとめて通過検知光Lとも呼び、上側通過検知信号Sgu及び下側通過検知信号Sgdをまとめて通過検知信号とも呼び、上側通過検知センサSEPu及び下側通過検知センサSEPdをまとめて通過検知センサSEPとも呼ぶ。
【0048】
このように、上側通過検知センサSEPuは、硬貨通過空間14Aの上部分、すなわち、シュート部14における硬貨の落下経路の上流側に、下側通過検知センサSEPdは、硬貨通過空間14Aの下部分、すなわち、シュート部14における硬貨の落下経路の下流側に、それぞれ配置されている。
【0049】
硬貨制御部12は、受皿部ゲート開閉検知センサ、上側通過検知センサSEPu及び下側通過検知センサSEPdから取得した受光結果を基に、シュート部14内を落下する物体としての硬貨の通過監視を行う。この上側通過検知センサSEPu及び下側通過検知センサSEPdは、異物である紙葉状の媒体やカード等が混入した場合に検知できるような位置関係で配置されている。
【0050】
かかる構成において、硬貨処理装置10は、入出金部13に硬貨及び異物が投入され、該硬貨処理装置10内部に該硬貨及び異物を取り込む際、該硬貨及び異物をシュート部14内を通過させ上分離部15へ到達させる。
【0051】
その際、硬貨制御部12は、受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態になった、すなわち収容器13Aからシュート部14へ硬貨が受け渡された時点を起点として、その後に上側通過検知信号Sgu及び下側通過検知信号Sgdを基に、上側通過検知センサSEPu及び下側通過検知センサSEPdのそれぞれがON状態になっている時間である遮光時間等を監視する。
【0052】
[6.硬貨の落下状態]
以下では、シュート部14を落下する硬貨の枚数や状態に応じた様子について説明する。
【0053】
[6-1.正常な落下状態]
[6-1-1.正常時少数枚硬貨投入時の場合、]
まず、図5に示すように、硬貨の投入枚数が少なく、且つ、投入された硬貨が正常にシュート部14を落下し上分離部15へ到達したときである、正常時少数枚硬貨投入時について説明する。
【0054】
正常時少数枚硬貨投入時においては、図7の受皿部立上時点tgrに示すように受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態に変化してから、図5(A)に示すように硬貨CNが硬貨通過空間14Aを落下し、正常時受皿部上側通過間落下時間tgun経過後に、図5(B)に示すように上側通過検知光Luを遮る。
【0055】
このとき、図7に示す上側通過立上時点turにおいて、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化する。その後、少数枚数時遮光時間tsf経過後に図5(C)に示すように硬貨CNが上側通過検知光Luよりも下側まで落下すると、図7に示す上側通過立下時点tufにおいて、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に戻る。
【0056】
その後、硬貨CNが硬貨通過空間14Aを落下し、正常時上側下側通過間落下時間tudn経過後に、図5(D)に示すように下側通過検知光Ldを遮る。このとき、図7に示す下側通過立上時点tdrにおいて、下側通過検知信号SgdがOFF状態からON状態に変化する。その後、少数枚数時遮光時間tsf経過後に硬貨CNが下側通過検知光Ldよりも下側まで落下すると、図7に示す下側通過立下時点tdfにおいて、下側通過検知信号SgdがON状態からOFF状態に戻る。
【0057】
因みに、上側通過検知信号Sgu及び下側通過検知信号Sgdは、OFF状態からON状態へ変化した後に、落下する硬貨CNの枚数や姿勢に応じて、ON状態からOFF状態へ短時間だけ一時的に戻る可能性がある。
【0058】
このように、正常時少数枚硬貨投入時の場合、受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態に変化してから、正常時受皿部上側通過間落下時間tgun経過後に上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化する。その後、少数枚数時遮光時間tsf経過後に、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に戻る。その後、正常時上側下側通過間落下時間tudn経過後に、下側通過検知信号SgdがOFF状態からON状態に変化する。その後、少数枚数時遮光時間tsf経過後に、下側通過検知信号SgdがON状態からOFF状態に戻る。
【0059】
[6-1-2.正常時限界枚数硬貨投入時の場合]
次に、硬貨の投入枚数が、正常時少数枚硬貨投入時よりも多く、硬貨処理装置10が一度に受け入れ可能な上限枚数に近く、且つ、投入された硬貨が正常にシュート部14を落下し上分離部15へ到達したときである、正常時限界枚数硬貨投入時について説明する。
【0060】
正常時限界枚数硬貨投入時においては、図8の受皿部立上時点tgrに示すように受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態に変化してから、硬貨が硬貨通過空間14Aを落下し、正常時受皿部上側通過間落下時間tgun経過後に、上側通過検知光Luを遮る。
【0061】
このとき、図8に示す上側通過立上時点turにおいて、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化する。その後、少数枚数時遮光時間tsfよりも長い時間である、限界枚数時遮光時間tsm経過後に硬貨が上側通過検知光Luよりも下側まで落下すると、図8に示す上側通過立下時点tufにおいて、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に戻る。
【0062】
ここで、上側通過検知信号SguがON状態の間も、硬貨の塊の一部分は上側通過検知光Luよりも下側まで落下するため、硬貨が硬貨通過空間14Aを落下し、下側通過検知光Ldを遮る。このとき、図8に示す下側通過立上時点tdrにおいて、下側通過検知信号SgdがOFF状態からON状態に変化する。その後、限界枚数時遮光時間tsm経過後に硬貨が下側通過検知光Ldよりも下側まで落下すると、図8に示す下側通過立下時点tdfにおいて、下側通過検知信号SgdがON状態からOFF状態に戻る。
【0063】
このように、正常時限界枚数硬貨投入時の場合、上側通過検知信号Sgu及び下側通過検知信号Sgdは、正常時少数枚数硬貨投入時における少数枚数時遮光時間tsfよりも長い時間である限界枚数時遮光時間tsmの間だけOFF状態からON状態へ変化すると共に、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化している間に、下側通過検知信号SgdがOFF状態からON状態に変化する。
【0064】
以上説明したように、上側通過検知信号Sgu及び下側通過検知信号SgdがON状態になる時間(遮光時間)は、投入された硬貨の枚数が多い程、長くなる傾向にある。
【0065】
ここで、シュート部14内部に、傷やバリが生じていたり、粘着物が付着していたりする等の、何らかの異常がある場合は、それらの異常により硬貨の落下が阻害される。以下では、硬貨の落下を阻害する異常を、落下阻害要因とも呼ぶ。このためシュート部14内部において、上側通過検知光Lu又は下側通過検知光Ldを遮る位置で硬貨の落下が滞るような位置に落下阻害要因がある場合、上側通過検知信号Sgu又は下側通過検知信号SgdのON時間(遮光時間)が、上側通過検知光Lu又は下側通過検知光Ldを遮る位置で硬貨の落下が滞るような位置に落下阻害要因がない場合と比較して長くなる。
【0066】
そして上側通過検知信号Sgu又は下側通過検知信号SgdのON時間が長くなり、図7及び図8に示す装置停止時点teにおいてもON時間であった場合、硬貨制御部12は、硬貨処理装置10においてエラーが発生したとして、該硬貨処理装置10の動作を停止させる。硬貨処理装置10が停止してしまうと、保守員による復旧作業が必要になるが、その復旧に時間を要する。このため、硬貨処理装置10がエラーで動作を停止するよりも前の段階でシュート部14内部の異常を検出して保守員に警告することにより、エラーの発生を未然に回避し、硬貨処理装置10が動作を停止することを避けることが望ましい。
【0067】
またこのために硬貨制御部12は、正常時少数枚硬貨投入時における下側通過立下時点tdfから装置停止時点teまでの間と、正常時限界枚数硬貨投入時における下側通過立下時点tdfから装置停止時点teまでの間とに、ある程度の時間的なマージンをもたせることにより、上側通過検知信号Sgu又は下側通過検知信号SgdのON時間が多少長くなったとしても、すぐには、装置停止時点teには到達しないようにしている。
【0068】
これに対し硬貨制御部12は、上側通過検知信号Sgu及び下側通過検知信号SgdのON時間を監視し、ON時間が例えば限界枚数時遮光時間tsmよりも長い場合、今後取引を繰り返しているうちにシュート部14でエラーが発生し硬貨処理装置10が動作を停止してしまう可能性が高いと判断し、保守員に警告を行う。具体的に硬貨制御部12は、1回の取引において、上側通過検知信号Sgu及び下側通過検知信号SgdのON時間(遮光時間)が正常時よりも長くなった場合、異常検知カウントを1つ増やし、その後の取引においてもこの異常検知カウントの数を常に監視する。続いて硬貨制御部12は、異常検知カウントが例えば3回等に予め設定された異常検知カウント上限に到達した場合、保守員に警告を行う。これにより硬貨制御部12は、硬貨処理装置10が異常により停止するよりも前にシュート部14内部の異常を検出して保守員に警告を行うことができる。警告を受けた保守員は、シュート部14内部の確認を行い、異常が発生していた場合、シュート部14内部の傷やバリを補修したり、粘着物を除去したりすることにより、異常時対応を行う。
【0069】
[6-2.異常な落下状態]
[6-2-1.硬貨が通過検知光を遮る状態でもたついた場合]
次に、図6に示すように、硬貨の投入枚数が少なく、且つ、投入された硬貨が例えば上側通過検知光Luを遮っている際に、落下阻害要因が原因でもたついたという異常な状態について説明する。
【0070】
この状態においては、図9に示す受皿部立上時点tgrに示すように受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態に変化してから、図6(A)に示すように硬貨CNが硬貨通過空間14Aを落下し、正常時受皿部上側通過間落下時間tgun経過後に、図6(B)に示すように上側通過検知光Luを遮る。このとき、図9に示す上側通過立上時点turにおいて、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化する。
【0071】
このとき、硬貨CNがシュート部14の内壁面に形成された落下阻害要因に引っ掛かる等して、落下スピードが遅くなり、もたついてしまったとする。この場合、限界枚数時遮光時間tsm(図8)よりも長い時間である異常時遮光時間tse経過後に図6(D)に示すように硬貨CNが上側通過検知光Luよりも下側まで落下すると、図9に示す上側通過立下時点tufにおいて、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に戻る。
【0072】
以降は、図5(C)及び図5(D)と対応する図6(C)及び図6(D)に示すように、硬貨CNが落下し、上分離部15に到達する。このように硬貨制御部12は、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化してからOFF状態に戻るまでに限界枚数時遮光時間tsmよりも長い時間を要したことを検出した場合(すなわち上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化してから限界枚数時遮光時間tsm以内にOFF状態に戻らなかったことを検出した場合)、上側通過検知光Luを遮る状態で、すなわち、シュート部14の上部分(上流側部分)で、硬貨CNがもたついたと判定する。このとき硬貨制御部12は、異常検知カウントを1つ増やしてから、次の取引に移る。
【0073】
以上は上側通過検知信号Sguについて説明したが、下側通過検知信号Sgdについても同様である。また正常時少数枚硬貨投入時において硬貨がもたついた場合について説明したが、正常時少数枚硬貨投入時よりも投入された硬貨の枚数が多い場合についても同様である。
【0074】
[6-2-2.全ての硬貨が通過検知光を遮らない状態でもたついた場合]
次に、図10に示すように、硬貨の投入枚数が少なく、且つ、投入された複数枚の硬貨の全てが、例えば収容器13Aから落下してから上側通過検知光Luを遮るまでの間に、落下阻害要因が原因でもたついたという異常な状態について説明する。
【0075】
この状態においては、図12に示す受皿部立上時点tgrに示すように受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態に変化してから、図10(A)に示すように硬貨CNが硬貨通過空間14Aを落下する。このとき、硬貨CNがシュート部14の落下阻害要因に引っ掛かる等して、落下スピードが遅くなり、もたついてしまったとする。この場合、受皿部立上時点tgrから正常時受皿部上側通過間落下時間tgun(図7)経過しても、図10(B)に示すように、硬貨CNは上側通過検知光Luまで到達しない。
【0076】
続いて、硬貨CNが硬貨通過空間14Aを落下し、図12に示す受皿部立上時点tgrから、正常時受皿部上側通過間落下時間tgunよりも長い異常時受皿部上側通過間落下時間tgue経過後に、図10(C)及び図10(D)に示すように硬貨CNが上側通過検知光Luを遮る。このとき、図12に示す上側通過立上時点tureにおいて、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化する。
【0077】
以降は、硬貨CNが落下し、上分離部15に到達する。このように硬貨制御部12は、受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態に変化してから上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化するまでに正常時受皿部上側通過間落下時間tgunよりも長い時間を要したことを検出した場合(すなわち受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態に変化してから正常時受皿部上側通過間落下時間tgun以内に上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化しなかったことを検出した場合)、収容器13Aから上側通過検知光Luまでの間で硬貨CNがもたついたと判定する。このとき硬貨制御部12は、異常検知カウントを1つ増やしてから、次の取引に移る。
【0078】
以上は受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態に変化してから上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化するまでの時間について説明したが、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に変化してから下側通過検知信号SgdがOFF状態からON状態に変化するまでの時間についても同様である。すなわち硬貨制御部12は、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に変化してから正常時上側下側通過間落下時間tudn以内に下側通過検知信号SgdがOFF状態からON状態に変化せず異常時上側下側通過間落下時間tude経過したことを検出した場合、上側通過検知光Luから下側通過検知光Ldまでの間で硬貨CNがもたついたと判定する。また正常時少数枚硬貨投入時において硬貨がもたついた場合について説明したが、正常時少数枚硬貨投入時よりも投入された硬貨の枚数が多い場合についても同様である。
【0079】
[6-2-3.一部の硬貨が通過検知光を遮らない状態でもたついた場合]
次に、図11に示すように、硬貨の投入枚数が少なく、且つ、投入された複数枚の硬貨の全枚数のうち一部分の枚数の硬貨が、例えば収容器13Aから落下してから上側通過検知光Luを遮るまでの間に、落下阻害要因が原因でもたついたという異常な状態について説明する。
【0080】
この状態においては、図13に示す受皿部立上時点tgrに示すように受皿部開閉検知信号SggがOFF状態からON状態に変化してから、図11(A)に示すように硬貨CNが硬貨通過空間14Aを落下する。このとき、全ての硬貨CNのうちの一部分の硬貨CNが、シュート部14の落下阻害要因に引っ掛かる等して、落下スピードが遅くなり、もたついてしまったとする。以下では、全ての硬貨CNのうち、落下阻害要因に引っ掛らずにもたつかずに落下した硬貨CNを正常落下硬貨とも呼び、全ての硬貨CNのうち、落下阻害要因に引っ掛かってもたついた硬貨CNをもたつき硬貨とも呼ぶ。
【0081】
この場合、正常落下硬貨は、図13に示す受皿部立上時点tgrから正常時受皿部上側通過間落下時間tgun経過後に、図11(B)に示すように上側通過検知光Luを遮る。このとき、図13に示す上側通過立上時点turにおいて、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化する。その後、少数枚数時遮光時間tsf経過後に、正常落下硬貨が上側通過検知光Luよりも下側まで落下すると、図13に示す上側通過立下時点tuf1において、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に戻る。
【0082】
その後、もたつき硬貨は、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に戻ってから所定時間経過後に、図11(D)に示すように上側通過検知光Luを遮る。このとき、図13に示す上側通過立上時点tur2において、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化する。その後、所定時間経過後に、もたつき硬貨が上側通過検知光Luよりも下側まで落下すると、図13に示す上側通過立下時点tuf2において、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に戻る。
【0083】
以降は、硬貨CNが落下し、上分離部15に到達する。このように、全ての硬貨CNのうち一部分が例えば収容器13Aから落下してから上側通過検知光Luを遮るまでの間に、落下阻害要因が原因でもたついた場合、上側通過検知信号SguがON状態に複数回変化すると共に、それらON状態の間のOFF状態の時間、すなわちON状態の間隔が、比較的長いものとなる。
【0084】
このため、全ての硬貨CNのうち一部分が例えば収容器13Aから落下してから上側通過検知光Luを遮るまでの間にもたついた場合、上側通過検知信号SguがON状態に変化するタイミング、すなわち硬貨CNが上側通過検知光Luを遮光するタイミングと、上側通過検知信号SguがON状態に変化する回数、すなわち硬貨CNが上側通過検知光Luを遮光する回数とが、正常な状態(図7)とは異なるものとなる。
【0085】
これに対し硬貨制御部12は、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化するタイミングと回数とが、正常時と異なっていることを検出した場合、収容器13Aから上側通過検知光Luまでの間で硬貨CNの少なくとも一部分がもたついたと判定する。このとき硬貨制御部12は、異常検知カウントを1つ増やしてから、次の取引に移る。
【0086】
以上は上側通過検知信号Sguについて説明したが、下側通過検知信号Sgdについても同様である。また正常時少数枚硬貨投入時において硬貨がもたついた場合について説明したが、正常時少数枚硬貨投入時よりも投入された硬貨の枚数が多い場合についても同様である。
【0087】
[6-2-4.硬貨が通過検知光を遮る回数が多い場合]
上述した硬貨の様々な異常落下状態以外にも、硬貨が通過検知光Lを遮る回数が多いような異常な状態について説明する。硬貨が上側通過検知光Luを複数回遮った場合、図14に示すように、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に複数回、例えば4回変化する。また硬貨が下側通過検知光Ldを複数回遮った場合、図14に示すように、下側通過検知信号SgdがOFF状態からON状態に複数回、例えば4回変化する。
【0088】
このように、上側通過検知信号SguがON状態に変化する回数、すなわち硬貨が上側通過検知光Luを遮光する回数と、下側通過検知信号SgdがON状態に変化する回数、すなわち硬貨が下側通過検知光Ldを遮光する回数とが、正常な状態(図7)とは異なるものになる場合がある。
【0089】
これに対し硬貨制御部12は、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化する回数が、正常時と異なっていることを検出した場合、シュート部14内で異常が発生したと判定する。このとき硬貨制御部12は、異常検知カウントを1つ増やしてから、次の取引に移る。
【0090】
以上は上側通過検知信号Sguと下側通過検知信号Sgdとの両方が異常な遮光回数であった場合について説明したが、上側通過検知信号Sgu又は下側通過検知信号Sgdの何れか一方が異常な遮光回数であった場合も同様である
【0091】
[7.硬貨落下監視処理]
次に、硬貨処理装置10による硬貨落下監視処理の具体的な処理手順について、図15及び図16に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。硬貨処理装置10は、硬貨落下監視処理プログラムを実行することにより図15に示す硬貨落下監視処理手順RT1を開始し、ステップSP1へ移る。ステップSP1において硬貨制御部12は、受皿部ゲート開閉検知センサの受光結果(受皿部開閉検知信号Sgg)がOFF状態からON状態になるまで待ち受け、ON状態になると、ステップSP2へ移る。
【0092】
ステップSP2において硬貨制御部12は、受皿部開閉検知信号SggがON状態に変化してから異常時受皿部上側通過間落下時間tgueが経過したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このとき硬貨制御部12はステップSP3へ移る。ステップSP3において硬貨制御部12は、上側通過検知センサSEPuの受光結果(上側通過検知信号Sgu)がOFF状態からON状態になったか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このとき硬貨制御部12はステップSP2へ戻る。一方ステップSP3において肯定結果が得られると、このことは、受皿部ゲート13Gから落下した硬貨が正常時受皿部上側通過間落下時間tgun以内に上側通過検知光Luまで到達したことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP4へ移る。一方ステップSP2において肯定結果が得られると、このことは、受皿部ゲート13Gから落下した硬貨が落下阻害要因に引っ掛かり、正常時受皿部上側通過間落下時間tgun以内に上側通過検知光Luまで到達しなかったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14(図16)へ移る。
【0093】
ステップSP4において硬貨制御部12は、上側通過検知信号SguがON状態に変化してから異常時遮光時間tseが経過したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このとき硬貨制御部12はステップSP5へ移る。ステップSP5において硬貨制御部12は、上側通過検知信号SguがON状態からOFF状態に戻ったか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このとき硬貨制御部12はステップSP4へ戻る。一方ステップSP5において肯定結果が得られると、このことは、上側通過検知光Luまで到達した硬貨が限界枚数時遮光時間tsm以内に上側通過検知光Luよりも下側まで落下したことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP6へ移る。一方ステップSP4において肯定結果が得られると、このことは、上側通過検知光Luまで到達した硬貨が落下阻害要因に引っ掛かり、限界枚数時遮光時間tsm以内に上側通過検知光Luよりも下側まで落下しなかったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14(図16)へ移る。
【0094】
ステップSP6において硬貨制御部12は、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化するタイミングが正常であったか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは、例えば、全ての硬貨のうち一部分が例えば収容器13Aから落下してから上側通過検知光Luを遮るまでの間にもたついたことにより、硬貨が上側通過検知光Luを遮光するタイミングが正常ではなくなったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14(図16)へ移る。一方ステップSP6において肯定結果が得られると、このことは、硬貨が上側通過検知光Luを遮光するタイミングが正常であったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP7へ移る。
【0095】
ステップSP7において硬貨制御部12は、上側通過検知信号SguがOFF状態からON状態に変化する回数が正常であったか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは、例えば、全ての硬貨のうち一部分が例えば収容器13Aから落下してから上側通過検知光Luを遮るまでの間にもたついたことにより、硬貨が上側通過検知光Luを遮光する回数が正常ではなくなり異常時遮光回数に到達したことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14(図16)へ移る。一方ステップSP7において肯定結果が得られると、このことは、硬貨が上側通過検知光Luを遮光する回数が正常であったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP8(図16)へ移る。
【0096】
ステップSP8において硬貨制御部12は、上側通過検知信号SguがOFF状態に変化してから異常時上側下側通過間落下時間tudeが経過したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このとき硬貨制御部12はステップSP9へ移る。ステップSP9において硬貨制御部12は、下側通過検知センサSEPdの受光結果(下側通過検知信号Sgd)がOFF状態からON状態に変化したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このとき硬貨制御部12はステップSP8へ戻る。一方ステップSP9において肯定結果が得られると、このことは、上側通過検知光Luよりも下側まで落下した硬貨が正常時上側下側通過間落下時間tudn以内に下側通過検知光Ldまで到達したことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP10へ移る。一方ステップSP8において肯定結果が得られると、このことは、上側通過検知光Luを通過した硬貨が落下阻害要因に引っ掛かり、正常時上側下側通過間落下時間tudn以内に下側通過検知光Ldまで到達しなかったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14へ移る。以下では、異常時受皿部上側通過間落下時間tgue及び異常時上側下側通過間落下時間tudeをまとめて異常時落下時間とも呼ぶ。
【0097】
ステップSP10において硬貨制御部12は、下側通過検知信号SgdがON状態に変化してから異常時遮光時間tseが経過したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このとき硬貨制御部12はステップSP11へ移る。ステップSP11において硬貨制御部12は、下側通過検知信号SgdがON状態からOFF状態に戻ったか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このとき硬貨制御部12はステップSP10へ戻る。一方ステップSP10において肯定結果が得られると、このことは、下側通過検知光Ldまで到達した硬貨が落下阻害要因に引っ掛かり、限界枚数時遮光時間tsm以内に下側通過検知光Ldよりも下側まで落下しなかったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14へ移る。
【0098】
ステップSP12において硬貨制御部12は、下側通過検知信号SgdがOFF状態からON状態に変化するタイミングが正常であったか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは、例えば、全ての硬貨のうち一部分が例えば上側通過検知光Luよりも下側まで落下してから下側通過検知光Ldを遮るまでの間にもたついたことにより、硬貨が下側通過検知光Ldを遮光するタイミングが正常ではなくなったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14へ移る。一方ステップSP12において肯定結果が得られると、このことは、硬貨が下側通過検知光Ldを遮光するタイミングが正常であったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP13へ移る。
【0099】
ステップSP13において硬貨制御部12は、下側通過検知信号SgdがOFF状態からON状態に変化する回数が正常であったか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは、例えば、全ての硬貨のうち一部分が例えば上側通過検知光Luよりも下側まで落下してから下側通過検知光Ldを遮るまでの間にもたついたことにより、硬貨が下側通過検知光Ldを遮光する回数が正常ではなくなり異常時遮光回数に到達したことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14へ移る。一方ステップSP13において肯定結果が得られると、このことは、硬貨が下側通過検知光Ldを遮光する回数が正常であったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP17へ移り硬貨落下監視処理手順RT1を終了し、次の取引を行う。
【0100】
ステップSP14において硬貨制御部12は、異常検知カウントを1だけ加算し、ステップSP15へ移る。ステップSP15において硬貨制御部12は、異常検知カウントが異常検知カウント上限に到達したか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは、複数回の取引において、異常な状態が発生したため、今後もこのまま取引を継続すると、装置停止に陥る可能性が高いことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP16へ移る。一方ステップSP15において肯定結果が得られると、このことは、異常な状態が発生してはいるが、装置停止に陥る可能性はまだ低いため、しばらく取引を継続することを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP17へ移り硬貨落下監視処理手順RT1を終了し、次の取引を行う。
【0101】
ステップSP16において硬貨制御部12は、シュート部14において異常が発生しており、このまま継続すると装置停止に陥る可能性が高いことを示す警告画面を操作表示部8に表示することにより保守員に提示し、ステップSP17へ移り硬貨落下監視処理手順RT1を終了する。
【0102】
[8.効果等]
以上の構成において硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、上流側の上側通過検知センサSEPuと下流側の下側通過検知センサSEPdとにおける硬貨の検知結果が、正常時における検知結果と異なる異常な検知結果であった回数をカウントし、取引を繰り返すうちに異常な検知結果の回数が所定の回数となったときに警告を出力するようにした。
【0103】
具体的に硬貨処理装置10は、シュート部14において、通過検知センサSEPの通過検知光Lが落下阻害要因により滞留した硬貨により遮られた遮光時間を監視し、該遮光時間が、異常時遮光時間tseに到達した場合、異常検知カウントを1だけカウントアップし、異常検知カウントが異常検知カウント上限に到達した場合、警告を出力するようにした。このため硬貨処理装置10は、硬貨が通過検知光Lを遮った状態で滞留する原因となった落下阻害要因を保守員に除去させることができる。
【0104】
また硬貨処理装置10は、シュート部14において、通過検知センサSEPよりも上流側の所定箇所(すなわち、上側通過検知センサSEPuの場合は受皿部ゲート開閉検知センサ、下側通過検知センサSEPdの場合は上側通過検知センサSEPu)を硬貨が通過してから、該通過検知センサSEPの通過検知光Lが硬貨により遮られるまでの落下時間を監視し、該落下時間が、異常時落下時間に到達した場合、異常検知カウントを1だけカウントアップし、異常検知カウントが異常検知カウント上限に到達した場合、警告を出力するようにした。このため硬貨処理装置10は、硬貨が通過検知光Lを遮る位置よりも上流側で滞留する原因となった落下阻害要因を保守員に除去させることができる。
【0105】
さらに硬貨処理装置10は、通過検知センサSEPの通過検知光Lが硬貨により遮られる遮光タイミングを監視し、該遮光タイミングが異常なタイミングであった場合、異常検知カウントを1だけカウントアップし、異常検知カウントが異常検知カウント上限に到達した場合、警告を出力するようにした。
【0106】
さらに硬貨処理装置10は、通過検知センサSEPの通過検知光Lが硬貨により遮られる遮光回数を監視し、該遮光回数が異常時遮光回数に到達した場合、異常検知カウントを1だけカウントアップし、異常検知カウントが異常検知カウント上限に到達した場合、警告を出力するようにした。
【0107】
このため硬貨処理装置10は、硬貨が通常とは異なる状態で滞留する原因となった落下阻害要因を保守員に除去させることができる。
【0108】
このように硬貨処理装置10は、上側通過検知センサSEPuと下側通過検知センサSEPdとの硬貨の検知結果が、正常時でなかった回数を異常検知カウントとしてカウントし、取引を繰り返すうちに該異常検知カウントが初期値である0から異常検知カウント上限に到達した場合、警告を出力するようにした。このため硬貨処理装置10は、シュート部14内部を詳細に監視でき、シュート部14の状態の変化に気づく確率を向上させ、シュート部14の異常で硬貨処理装置10が停止してしまうよりも前に、落下阻害要因を保守員に除去させることができる。これにより硬貨処理装置10は、シュート部14が原因で発生する硬貨処理装置10の停止を未然に検出する精度を高め、シュート部14の異常が原因で硬貨処理装置10が停止してしまうことを未然に防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0109】
このように硬貨処理装置10は、単に、センサの検知結果に応じて硬貨の滞留異常を検知したり、上流と下流とのそれぞれのセンサの遮光回数で硬貨の滞留を検知したりするわけではなく、異常発生時に異常発生回数をカウントし、カウント回数に応じて警告を出すようにした。
【0110】
以上の構成によれば、現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、硬貨が投入される入出金部13と、入出金部13に投入された硬貨を所定の経路に沿って案内するシュート部14と、シュート部14における所定の経路の上流側と下流側とにそれぞれ配置され、該シュート部14により案内される物体としての硬貨の通過を検知する通過検知センサSEPと、通過検知センサSEPの検知結果に基づいてシュート部14の状態を監視する硬貨制御部12とを設け、硬貨制御部12は、上流側の上側通過検知センサSEPuと下流側の下側通過検知センサSEPdとにおける硬貨の検知結果が、正常時における検知結果と異なる異常な検知結果であった回数をカウントし、異常な検知結果の回数が所定の回数となったときに警告を出力するようにした。これにより硬貨処理装置10は、シュート部14の異常で硬貨処理装置10が停止してしまうよりも前に、落下阻害要因を保守員に除去させることができる。
【0111】
[9.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、異常検知カウントが異常検知カウント上限に到達した場合、警告を出力する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、1日に1回ずつ異常検知カウントが加算されて異常検知カウント上限に到達した場合と、1週間に1回ずつ異常検知カウントが加算されて異常検知カウント上限に到達した場合とで、異なる種類の警告を行う等、異常検知カウントの増加頻度(すなわち、時間経過に対する増加傾向又は時間経過に対する増加速度)に応じて、異なる種類の警告を行っても良い。また、異常検知カウントを初期値である0から異常が発生した取引の度に1ずつカウントアップ(加算)し、異常検知カウント上限に到達した場合に警告を出力する場合に限らず、異常検知カウントを初期値である異常検知カウント上限から異常が発生した取引の度に1ずつカウントダウン(減算)し、0に到達した場合に警告を出力しても良い。要は、異常が発生した取引の回数をカウントできれば良い。
【0112】
また上述した実施の形態においては、遮光時間、遮光タイミング及び遮光回数の何れかが異常であった場合、同じ異常検知カウントを1だけ加算する場合について述べた。本発明はこれに限らず、遮光時間が異常であった場合に1だけ加算される遮光時間異常検知カウントと、遮光タイミングが異常であった場合に1だけ加算される遮光タイミング異常検知カウントと、遮光回数が異常であった場合に1だけ加算される遮光回数異常検知カウントとの、検知した異常に応じた3種類の異常検知カウントを設け、検知した異常の種類に応じて、異常検知カウントを適宜加算しても良い。また、異常検知カウントが異常検知カウント上限に到達した場合、到達した異常検知カウントの種類に応じて異なる警告を出力しても良い。
【0113】
さらに上述した実施の形態においては、異常検知カウントが1つの値である異常検知カウント上限に到達した場合、警告を出力する場合について述べた。本発明はこれに限らず、異常検知カウント上限を異なる値で複数設け、低い値に設定された第1の所定回数としての第1の異常検知カウント上限に異常検知カウントが到達した場合は、軽めの警告を出力する一方、さらに異常検知カウントが加算され、高い値に設定された第2の所定回数としての第2の異常検知カウント上限に異常検知カウントが到達した場合は、重めの警告を出力する等、現在の異常検知カウントに応じた複数種類の警告を行っても良い。
【0114】
さらに上述した実施の形態においては、操作表示部8に警告を表示する場合について述べた。本発明はこれに限らず、音声を出力する等、種々の方法で保守員に警告できれば良い。また、現金自動預払機1を管理している管理端末や上位サーバに対して警告(アラーム)を出力(通知)しても良い。
【0115】
さらに上述した実施の形態においては、シュート部14に上側通過検知センサSEPu及び下側通過検知センサSEPdの2つの通過検知センサSEPを設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、3個以上の種々の個数の通過検知センサを設けても良い。
【0116】
さらに上述した実施の形態においては、使用者との間で種々の取引を行う現金自動預払機1(図1)の硬貨処理装置10に組み込まれるシュート部14に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば金融機関やスーパーマーケットの店舗内等に設置され、該店舗の職員や係員等の操作に従って硬貨の計数や分類等の処理を行う現金管理装置等、硬貨を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。
【0117】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0118】
さらに上述した実施の形態においては、投入部としての入出金部13と、シュート部としてのシュート部14と、通過検知センサとしての通過検知センサSEPと、状態監視部としての硬貨制御部12とによって、硬貨処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる投入部と、シュート部と、通過検知センサと、状態監視部とによって、硬貨処理装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、例えば使用者との間で硬貨に関する取引処理を行う現金自動預払機等で利用できる。
【符号の説明】
【0120】
1……現金自動預払機、2……筐体、3……応対部、4……通帳入出口、5……カード入出口、6……硬貨入出金口、7……紙幣入出金口、8……操作表示部、9……主制御部、10……硬貨処理装置、11……硬貨処理装置筐体、12……硬貨制御部、13……入出金部、13A……収容器、13B……シャッタ、13G……受皿部ゲート、14……シュート部、14A……硬貨通過空間、14L……シュート部左側内壁面、14B……シュート部後側内壁面、14F……シュート部前側内壁面、15……上分離部、15A……集積分離部、15B……分離搬送部、16……認識搬送部、17……受渡部、18……ピンベルト搬送部、19……分岐部、20……スタッカ分岐部、21……スタッカ部、22……出金搬送部、23……一時保留部、24……補充回収庫、25……第1補充リジェクト庫、26……第2補充リジェクト庫、27……リジェクト庫、28……取忘取込庫、29……下分離部、29A……集積分離部、29B……分離搬送部、30、31……案内部、32……集積部、33……繰出部、SEP……通過検知センサ、SEPu……上側通過検知センサ、SEPd……下側通過検知センサ、Sgg……受皿部開閉検知信号、Sgu……上側通過検知信号、Sgd……下側通過検知信号、tgr……受皿部立上時点、tgun……正常時受皿部上側通過間落下時間、tur……上側通過立上時点、tsf……少数枚数時遮光時間、tuf……上側通過立下時点、tudn……正常時上側下側通過間落下時間、tdr……下側通過立上時点、tdf……下側通過立下時点、tsm……限界枚数時遮光時間、tgue……異常時受皿部上側通過間落下時間、tude……異常時上側下側通過間落下時間、te……装置停止時点、SEPue、SEPde……発光部、SEPur、SEPdr……受光部、SEPup、SEPdp……プリズム、L……通過検知光、Lu……上側通過検知光、Ld……下側通過検知光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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