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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】恒温槽型圧電発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
H03B5/32 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022511657
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2021006579
(87)【国際公開番号】W WO2021199790
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2020060353
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 実
(72)【発明者】
【氏名】古城 琢也
(72)【発明者】
【氏名】森本 賢周
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-183227(JP,A)
【文献】特開2015-139053(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068839(WO,A1)
【文献】特開2009-302701(JP,A)
【文献】特開2017-079348(JP,A)
【文献】特開2017-130862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0285460(US,A1)
【文献】特開2019-012879(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2009-0044371(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子、発振器IC、および発熱体を有するコア部を備えた恒温槽型圧電発振器であって、
前記コア部は、コア基板を介してパッケージに支持され、前記パッケージの内部に密閉状態で封入されており、
前記コア部は、前記発振器IC、前記圧電振動子、および前記発熱体が上側から順に積層された積層構造になっており、
前記発熱体の下面が、前記コア基板の上面接着剤によって接合されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記パッケージには、上方が開口された凹部が形成されており、
前記コア部は、前記コア基板によって前記パッケージの内部に宙吊りされた状態で支持されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項3】
請求項2に記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記パッケージの内部には、対向する一対の段差部が形成されており、
前記コア基板は、前記一対の段差部間に架け渡されるように配置されており、
前記コア部は、前記一対の段差部間の空間に収容されるように配置されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項4】
請求項3に記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記コア基板は、ポリイミド系の導電性接着剤を介して前記段差部に固定されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記圧電振動子が、ガラスまたは水晶からなる第1、第2封止部材と、水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とを備え、前記第1封止部材と前記第2封止部材とが、前記圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された前記圧電振動板の前記振動部が気密封止される構成になっていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等の圧電振動子は、固有の周波数温度特性に基づいて、温度に応じて振動周波数が変化する。そこで、圧電振動子の周囲の温度を一定に保つために、恒温槽内に圧電振動子を封入した恒温槽型圧電発振器(Oven-Controlled Xtal(crystal) Oscillator:以下、「OCXO」とも言う。)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6376681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなOCXOでは、発熱体の温度制御および圧電振動子の圧電振動の両方を高精度に行う必要がある。従来では、発熱体の温度制御および圧電振動子の圧電振動の制御の両方を単一のIC(例えばOCXO-IC)によって行っていた。このため、そのような高価なICを搭載する必要があり、OCXOの製造コストが増大することが懸念される。
【0005】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、発熱体の温度制御および圧電振動子の圧電振動の制御のそれぞれを高精度に行いつつ、コストダウンを図ることが可能な恒温槽型圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、圧電振動子、発振器IC、および発熱体を有するコア部を備えた恒温槽型圧電発振器であって、前記コア部は、コア基板を介してパッケージに支持され、前記パッケージの内部に密閉状態で封入されており、前記コア部は、前記発振器IC、前記圧電振動子、および前記発熱体が上側から順に積層された積層構造になっており、前記発熱体の下面が、前記コア基板の上面接着剤によって接合されていることを特徴とする。ここで、発熱体としては、ヒータICまたは/および薄膜ヒータであってもよい。すなわち、コア部にヒータICおよび薄膜ヒータを設けてもよいし、コア部にヒータICのみを設けてもよいし、あるいは、コア部に薄膜ヒータのみを設けてもよい。コア部にヒータICのみを設ける場合、ヒータICとしては、発熱体(熱源)と、発熱体の温度制御用の制御回路(電流制御用の回路)と、発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成のものを用いることが好ましい。一方、コア部に薄膜ヒータのみを設ける場合、薄膜ヒータの温度調整用のICをコア部とは別体で設けることが好ましい。
【0007】
上記構成によれば、パッケージ内にコア部を封入することによって、外部の温度が変化しても、コア部の圧電振動子の温度変化をできるだけ抑制することができる。これにより、OCXOによる温度調整を狭い温度範囲で行えばよくなり、温度調整に必要な部品が簡素なもので済み、コストダウンを図ることができる。また、発熱体の温度制御を主に行うIC(例えばヒータIC)と、圧電振動子の圧電振動の制御を主に行う発振器ICとを併用することによって、発熱体の温度制御および圧電振動子の圧電振動の制御のそれぞれを高精度に行うことができ、発熱体の温度制御および圧電振動子の圧電振動の制御の両方を行うことが可能なIC(例えばOCXO-IC)を用いた場合に比べて、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0008】
上記構成において、前記パッケージには、上方が開口された凹部が形成されており、前記コア部は、前記コア基板によって前記パッケージの内部に宙吊りされた状態で支持されていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、コア基板によってコア部をパッケージに支持することにより、OCXOの低背化を図ることができる。これにより、OCXOの熱容量を小さくすることができ、OCXOによる高精度な温度調整を行うことが可能になる。
【0010】
上記構成において、前記パッケージの内部には、対向する一対の段差部が形成されており、前記コア基板は、前記一対の段差部間に架け渡されるように配置されており、前記コア部は、前記一対の段差部間の空間に収容されるように配置されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、パッケージの段差部を利用することで、パッケージへのコア基板の固定を容易に行うことができる。また、パッケージの内部の一対の段差部間の空間にコア部を収容することによって、OCXOのさらなる低背化を図ることができる。これにより、OCXOの熱容量を小さくすることができ、OCXOによる高精度な温度調整を行うことが可能になる。
【0012】
上記構成において、前記コア基板は、ポリイミド系の導電性接着剤を介して前記段差部に固定されていることが好ましい。
【0013】
ここで、パッケージは、封止や、エージング、経年変化等により、熱ダメージや、経時ダメージを受けることになる。このため、導電性接着剤として、耐熱性の低い樹脂系接着剤を用いた場合、分解、軟化等によりパッケージ内にガスが発生し、OCXOの高精度の温度調整が妨げられる可能性がある。そこで、上記構成では、導電性接着剤として、熱伝導率が低く、耐熱性が高いポリイミド系接着剤を用いることによって、そのような不具合が発生することを抑制するようにしている。
【0014】
上記構成において、前記圧電振動子が、ガラスまたは水晶からなる第1、第2封止部材と、水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とを備え、前記第1封止部材と前記第2封止部材とが、前記圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された前記圧電振動板の前記振動部が気密封止される構成になっていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、圧電振動子として、上述のような低背化が可能なサンドイッチ構造のものを用いることで、コア部の低背化および小型化を図ることができる。これにより、コア部の熱容量を小さくすることができ、OCXOによる高精度な温度調整を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パッケージ内にコア部を封入することによって、外部の温度が変化しても、コア部の圧電振動子の温度変化をできるだけ抑制することができる。これにより、OCXOによる温度調整を狭い温度範囲で行えばよくなり、温度調整に必要な部品が簡素なもので済み、コストダウンを図ることができる。また、発熱体の温度制御を主に行うICと、圧電振動子の圧電振動の制御を主に行う発振器ICとを併用することによって、発熱体の温度制御および圧電振動子の圧電振動の制御のそれぞれを高精度に行うことができ、発熱体の温度制御および圧電振動子の圧電振動の制御の両方を行うことが可能なIC(例えばOCXO-IC)を用いた場合に比べて、大幅なコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施の形態にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図2図2は、図1のOCXOのコア部の概略構成を示す断面図である。
図3図3は、図2のコア部を示す平面図である。
図4図4は、図2のコア部の水晶発振器の各構成を模式的に示した概略構成図である。
図5図5は、図4の水晶発振器の第1封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図6図6は、図4の水晶発振器の第1封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図7図7は、図4の水晶発振器の水晶振動板の第1主面側の概略平面図である。
図8図8は、図4の水晶発振器の水晶振動板の第2主面側の概略平面図である。
図9図9は、図4の水晶発振器の第2封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図10図10は、図4の水晶発振器の第2封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図11図11は、変形例にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図12図12は、図11のOCXOのコア部およびコア基板の概略構成を示す断面図である。
図13図13は、図12のコア部およびコア基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施の形態にかかるOCXO1は、図1に示すように、セラミック製等で略直方体のパッケージ(筐体)2の内部にコア部5が配置され、リッド3によって気密封止された構造とされている。パッケージ2には、上方が開口された凹部2aが形成されており、凹部2aの内部にコア部5が気密状態で封入されている。凹部2aを囲う周壁部2bの上面には、リッド3が封止材8によって固定されており、パッケージ2の内部が密封状態になっている。封止材8としては、例えばAu-Su合金や、はんだ等の金属系封止材が好適に用いられるが、低融点ガラス等の封止材を用いてもよい。パッケージ2の内部空間は、真空、または低圧の窒素やアルゴン等の熱伝導率が低い雰囲気であることが好ましい。
【0020】
パッケージ2の周壁部2bの内壁面には、接続端子(図示省略)の並びに沿った段差部2cが形成されており、段差部2cに形成された接続端子に、板状のインターポーザ(コア基板)4を介してコア部5が接続されている。詳細には、段差部2cの段差面上に形成された接続端子が、導電性接着剤7を介してインターポーザ4の上面(図1では下側の面)4aに形成された接続端子に接続されている。また、コア部5の底面(図1では上側の面)5aに形成された外部端子(図示省略)が、導電性接着剤6を介してインターポーザ4の上面4aに形成された接続端子に接続されている。コア部5の底面5aの外部端子は、コア部5の底面5aのうち、後述する金属配線54aが形成されていない領域に形成されている。導電性接着剤6,7としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。
【0021】
インターポーザ4は、パッケージ2の対向する一対の段差部2c,2c間に架け渡されるように配置されており、コア部5は、一対の段差部2c,2cの間の空間に収容されるように配置されている。コア部5の頂面(図1では下側の面)5bと、パッケージ2の凹部2aの底面2dとの間には、隙間が設けられている。このように、コア部5は、図2に示す状態から上下反転された状態でインターポーザ4に固定されており、さらに、このコア部5が、インターポーザ4によってパッケージ2の内部に宙吊りされた状態で支持されている。
【0022】
次に、コア部5について、図2図3を参照して説明する。図2では、コア部5の底面5aが下側に配置され、コア部5の頂面5bが上側に配置された状態(図1に対し、上下反転された状態)を図示している。
【0023】
コア部5は、水晶振動子50、発振器IC51、ヒータIC52、チップコンデンサ(バイパスコンデンサ)53a~53cなど、OCXO1で使用される各種電子部品をパッケージングしたものであり、水晶基板54上でこれらの部品が封止樹脂57によって封止されている。コア部5は、特に、温度特性の大きい水晶振動子50、発振器IC51、ヒータIC52等の温度調整を行うことで、OCXO1の発振周波数を安定させるように構成されている。なお、コア部5の各種電子部品を封止樹脂57によって封止することが好ましいが、封止雰囲気によっては封止樹脂による封止を行わない構成としてもよい。例えば封止雰囲気が不活性ガスである場合、封止樹脂による封止は行わず、OCXO1で使用される各種電子部品を覆うようにカバーを装着して熱対流の影響を緩和するようにしてもよい。
【0024】
水晶振動子50および発振器IC51によって、水晶発振器100が構成される。発振器IC51は、複数の金属バンプ51aを介して水晶振動子50上に搭載されている。発振器IC51によって水晶振動子50の圧電振動を制御することにより、OCXO1の発振周波数が制御される。ヒータIC52は、コア部5の温度調整を行うICであり、コア部5に使用される薄膜ヒータ(ヒータ基板)56a,56bへの電流を制御する。ヒータIC52は、複数の金属バンプ52aを介して水晶基板54上に搭載されている。
【0025】
コア部5は、対向する上下2枚の水晶基板54,55を有し、水晶基板54,55のそれぞれに金属配線54a,55aを形成して、これらを薄膜ヒータ56a,56bとして用いている。薄膜ヒータ56a,56bは、基材となる水晶基板54,55の表面に抵抗膜である金属配線54a,55aが蒸着された構成になっている。水晶基板54,55のうち、金属配線54a,55aが形成された領域が、温度調整用の薄膜ヒータ(ヒータ基板)56a,56bとして機能する。
【0026】
なお、図3では、上側の水晶基板55および金属配線55aの図示を省略し、上下の薄膜ヒータ56a,56bの発熱領域を破線枠にて示している。また、図2では、水晶基板54を2枚の水晶板54b,54cを用いた積層基板としており、水晶基板54の2枚の水晶板54b,54cの間には、主にヒータIC52に電気的に接続される内部配線54dが挿入されている。内部配線54dは、水晶基板54の底面側に形成された外部端子(図示省略)に電気的に接続され、さらに上述したインターポーザ4、パッケージ2等を介して、外部に電気的に接続される。ただし、これに限定されるものでなく、水晶基板54は1枚の水晶板を用いた単層基板であってもよい。なお、上下の薄膜ヒータ56a,56bの形状および発熱領域が若干異なっているが、上下の薄膜ヒータ56a,56bを同一形状とし、同一の発熱領域が得られるようにしてもよい。
【0027】
コア部5は、上下2枚の水晶基板54,55の間に、温度特性の大きい水晶振動子50、発振器IC51およびヒータIC52が配置された構成になっている。詳細には、コア部5は、温度調整用の上下2枚の薄膜ヒータ(ヒータ基板)56a,56bの間に、水晶振動子50、発振器IC51およびヒータIC52が挟まれた構成になっている。言い換えれば、下側の水晶基板54に形成される薄膜ヒータ56aと上側の水晶基板55に形成される薄膜ヒータ56bとの間に、水晶振動子50、発振器IC51およびヒータIC52が配置されている。下側の薄膜ヒータ56aが、水晶振動子50、発振器IC51およびヒータIC52の下方を覆うように配置され、上側の薄膜ヒータ56bが、水晶振動子50、発振器IC51およびヒータIC52の上方を覆うように配置されている。ここで、「覆う」とは、水晶振動子50、発振器IC51およびヒータIC52の大部分(もしくは全部分)が、平面視で水晶基板54,55と重畳しているという意味であり、一部分(例えば数%~2、30%の部分)のみが水晶基板54,55と重複している場合を含まない。
【0028】
また、チップコンデンサ53a~53cのうち、2つのチップコンデンサ53b,53cが、上下2枚の薄膜ヒータ(ヒータ基板)56a,56bの間に挟まれている。サイズが比較的小さい2つのチップコンデンサ53b,53cは、下側の水晶基板54上に搭載されており、チップコンデンサ53b,53cの上面に、上側の水晶基板55が接触して設けられている。一方、サイズが最も大きいチップコンデンサ53aは、下側の水晶基板54上に搭載されているが、上側の水晶基板55には覆われていない。
【0029】
水晶振動子50の種類は特に限定されるものではないが、デバイスを薄型化しやすい、サンドイッチ構造のデバイスを好適に使用できる。サンドイッチ構造のデバイスは、ガラスや水晶からなる第1、第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが、圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された圧電振動板の振動部が気密封止される構成になっているデバイスである。
【0030】
このようなサンドイッチ構造の水晶振動子50を有する水晶発振器100について、図4図10を参照して説明する。
【0031】
水晶発振器100は、図4に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、第2封止部材30、および発振器IC51を備えて構成されている。この水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。すなわち、水晶発振器100においては、水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に振動部11(図7,8参照)が気密封止される。
【0032】
水晶発振器100は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージでは、キャスタレーションを形成せずに、スルーホールを用いて電極の導通を図っている。第1封止部材20上に搭載される発振器IC51は、水晶振動板10とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子である。また、水晶発振器100は、上述した水晶基板54上に、例えば半田等を介して搭載される。
【0033】
水晶振動板10は、図7,8に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101,第2主面102)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。図7,8に示す水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。
【0034】
水晶振動板10の両主面101,102には、一対の励振電極(第1励振電極111,第2励振電極112)が形成されている。水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、この振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結することで振動部11を保持する保持部13とを有している。すなわち、水晶振動板10は、振動部11、外枠部12および保持部13が一体的に設けられた構成となっている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている(突出している)。振動部11と外枠部12との間には、貫通部(スリット)11aが形成されており、振動部11と外枠部12とが、1つの保持部13のみによって接続されている。
【0035】
第1励振電極111は振動部11の第1主面101側に設けられ、第2励振電極112は振動部11の第2主面102側に設けられている。第1励振電極111,第2励振電極112には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するための引出配線(第1引出配線113,第2引出配線114)が接続されている。第1引出配線113は、第1励振電極111から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン14に繋がっている。第2引出配線114は、第2励振電極112から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン15に繋がっている。
【0036】
水晶振動板10の両主面(第1主面101,第2主面102)には、水晶振動板10を第1封止部材20および第2封止部材30に接合するための振動側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面101の振動側封止部としては振動側第1接合パターン121が形成されており、第2主面102の振動側封止部としては振動側第2接合パターン122が形成されている。振動側第1接合パターン121および振動側第2接合パターン122は、外枠部12に設けられており、平面視で環状に形成されている。
【0037】
また、水晶振動板10には、図7,8に示すように、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第1スルーホール161は、外枠部12の4隅(角部)の領域にそれぞれ設けられている。第2スルーホール162は、外枠部12であって、振動部11のZ´軸方向の一方側(図7,8では、-Z´方向側)に設けられている。第1スルーホール161の周囲には、それぞれ接続用接合パターン123が形成されている。また、第2スルーホール162の周囲には、第1主面101側では接続用接合パターン124が、第2主面102側では接続用接合パターン15が形成されている。
【0038】
第1スルーホール161および第2スルーホール162には、第1主面101と第2主面102とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第1スルーホール161および第2スルーホール162それぞれの中央部分は、第1主面101と第2主面102との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0039】
次に、第1封止部材20は、図5,6に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第1封止部材20の第2主面202(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第1封止部材20は振動部を有するものではないが、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用いることで、水晶振動板10と第1封止部材20の熱膨張率を同じにすることができ、水晶発振器100における熱変形を抑制することができる。また、第1封止部材20におけるX軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとされている。
【0040】
第1封止部材20の第1主面201には、図5に示すように、発振回路素子である発振器IC51を搭載する搭載パッドを含む6つの電極パターン22が形成されている。発振器IC51は、金属バンプ(例えばAuバンプなど)51a(図4参照)を用いて電極パターン22に、FCB(Flip Chip Bonding)法により接合される。
【0041】
第1封止部材20には、図5,6に示すように、6つの電極パターン22のそれぞれと接続され、第1主面201と第2主面202との間を貫通する6つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第3スルーホール211が、第1封止部材20の4隅(角部)の領域に設けられている。第4,第5スルーホール212,213は、図5,6の+Z´方向および-Z´方向にそれぞれ設けられている。
【0042】
第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213には、第1主面201と第2主面202とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213それぞれの中央部分は、第1主面201と第2主面202との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0043】
第1封止部材20の第2主面202には、水晶振動板10に接合するための封止側第1封止部としての封止側第1接合パターン24が形成されている。封止側第1接合パターン24は、平面視で環状に形成されている。
【0044】
また、第1封止部材20の第2主面202では、第3スルーホール211の周囲に接続用接合パターン25がそれぞれ形成されている。第4スルーホール212の周囲には接続用接合パターン261が、第5スルーホール213の周囲には接続用接合パターン262が形成されている。さらに、接続用接合パターン261に対して第1封止部材20の長軸方向の反対側(-Z´方向側)には接続用接合パターン263が形成されており、接続用接合パターン261と接続用接合パターン263とは配線パターン27によって接続されている。
【0045】
次に、第2封止部材30は、図9,10に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第2封止部材30の第1主面301(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第2封止部材30においても、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用い、X軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとすることが望ましい。
【0046】
この第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動板10に接合するための封止側第2封止部としての封止側第2接合パターン31が形成されている。封止側第2接合パターン31は、平面視で環状に形成されている。
【0047】
第2封止部材30の第2主面302には、上述した水晶基板54に、例えば半田等を介して電気的に接続する4つの外部電極端子32が設けられている。外部電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302の4隅(隅部)にそれぞれ位置する。外部電極端子32は、水晶基板54の底面側に形成された外部端子(図示省略)に電気的に接続され、さらに上述したインターポーザ4、パッケージ2等を介して、外部に電気的に接続される。
【0048】
第2封止部材30には、図9,10に示すように、第1主面301と第2主面302との間を貫通する4つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第6スルーホール33は、第2封止部材30の4隅(角部)の領域に設けられている。第6スルーホール33には、第1主面301と第2主面302とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、第6スルーホール33それぞれの内壁面に沿って形成されている。このように第6スルーホール33の内壁面に形成された貫通電極によって、第1主面301に形成された電極と、第2主面302に形成された外部電極端子32とが導通されている。また、第6スルーホール33それぞれの中央部分は、第1主面301と第2主面302との間を貫通した中空状態の貫通部分となっている。また、第2封止部材30の第1主面301では、第6スルーホール33の周囲には、それぞれ接続用接合パターン34が形成されている。
【0049】
上記の水晶振動板10、第1封止部材20、および第2封止部材30を含む水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図4に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これにより、パッケージの内部空間、つまり、振動部11の収容空間が気密封止される。
【0050】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士の接合により、水晶発振器100では、第1励振電極111、第2励振電極112、発振器IC51および外部電極端子32の電気的導通が得られるようになっている。
【0051】
具体的には、第1励振電極111は、第1引出配線113、配線パターン27、第4スルーホール212および電極パターン22を順に経由して、発振器IC51に接続される。第2励振電極112は、第2引出配線114、第2スルーホール162、第5スルーホール213および電極パターン22を順に経由して、発振器IC51に接続される。また、発振器IC51は、電極パターン22、第3スルーホール211、第1スルーホール161および第6スルーホール33を順に経由して、外部電極端子32に接続される。
【0052】
水晶発振器100において、各種接合パターンは、複数の層が水晶板上に積層されてなり、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着形成されているものとすることが好ましい。また、水晶発振器100に形成される他の配線や電極も、接合パターンと同一の構成とすれば、接合パターンや配線および電極を同時にパターニングでき、好ましい。
【0053】
上述のように構成された水晶発振器100では、水晶振動板10の振動部11を気密封止する封止部(シールパス)115,116は、平面視で、環状に形成されている。シールパス115は、上述した振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24の拡散接合によって形成され、シールパス115の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。同様に、シールパス116は、上述した振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31の拡散接合によって形成され、シールパス116の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。
【0054】
上述したように、本実施の形態では、コア部5は、インターポーザ4を介してパッケージ2に支持され、パッケージ2の内部に密閉状態で封入されている構成になっている。そして、ヒータIC52を通じて、薄膜ヒータ56a,56bに供給する電流を制御することによって、上下の薄膜ヒータ56a,56bに挟まれる空間(温調空間)の温度調整することができる。
【0055】
本実施の形態によれば、上下の薄膜ヒータ56a,56bに挟まれる温調空間において、水晶振動子50、発振器IC51およびヒータIC52を高精度に(均一な温度で)温度調整することができる。また、パッケージ2内にコア部5を封入することによって、外部の温度が変化しても、コア部5の水晶振動子50の温度変化をできるだけ抑制することができる。これにより、OCXO1による温度調整を狭い温度範囲で行えばよくなり、温度調整に必要な部品が簡素なもので済み、コストダウンを図ることができる。また、薄膜ヒータ56a,56bの温度制御を主に行うヒータIC52と、水晶振動子50の圧電振動の制御を主に行う発振器IC51とを併用することによって、薄膜ヒータ56a,56bの温度制御および水晶振動子50の圧電振動の制御のそれぞれを高精度に行うことができ、薄膜ヒータ56a,56bの温度制御および水晶振動子50の圧電振動の制御の両方を行うことが可能なIC(例えばOCXO-IC)を用いた場合に比べて、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0056】
本実施の形態では、パッケージ2には、上方が開口された凹部2aが形成されており、コア部5が、インターポーザ4によってパッケージ2の内部に宙吊りされた状態で支持されている。このように、インターポーザ4によってコア部5をパッケージ2に支持することにより、OCXO1の低背化を図ることができる。これにより、OCXO1の熱容量を小さくすることができ、OCXO1による高精度な温度調整を行うことが可能になる。
【0057】
より詳細には、パッケージ2の内部には、対向する一対の段差部2c,2cが形成されており、インターポーザ4が、一対の段差部2c,2c間に架け渡されるように配置されており、コア部5が、一対の段差部2c,2c間の空間に収容されるように配置されている。このように、パッケージ2の段差部2cを利用することで、パッケージ2へのインターポーザ4の固定を容易に行うことができる。また、パッケージ2の内部の一対の段差部2c,2c間の空間にコア部5を収容することによって、OCXO1のさらなる低背化を図ることができる。これにより、OCXO1の熱容量を小さくすることができ、OCXO1による高精度な温度調整を行うことが可能になる。
【0058】
ここで、パッケージ2は、封止や、エージング、経年変化等により、熱ダメージや、経時ダメージを受けることになる。このため、導電性接着剤6,7として、耐熱性の低い樹脂系接着剤を用いた場合、分解、軟化等によりパッケージ2内にガスが発生し、OCXO1の高精度の温度調整が妨げられる可能性がある。そこで、本実施の形態では、導電性接着剤6,7として、熱伝導率が低く、耐熱性が高いポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤を用いることによって、そのような不具合が発生することを抑制するようにしている。
【0059】
さらに、本実施の形態では、圧電振動子として、上述のような振動部11が内部に気密封止された低背化が可能なサンドイッチ構造の水晶振動子50が用いられているので、コア部5の低背化および小型化をよりいっそう図ることができる。これにより、コア部5の熱容量を小さくすることができ、OCXO1による高精度な温度調整を行うことが可能になる。水晶振動子50の厚みは、例えば0.12mmであり、従来の水晶振動子に比べて非常に薄くなっている。これにより、従来のOCXOに比べて、コア部5の熱容量を非常に小さくすることができ、そのようなコア部5を備えたOCXO1のヒータ発熱量を抑えることができ、低消費電力化に寄与することができる。しかも、コア部5の温度追従性を向上させることができ、OCXO1の安定性を向上させることができる。また、サンドイッチ構造の水晶振動子50では、上述したように、接着剤を用いずに振動部11が気密封止されるので、接着剤から発生したアウトガスによる熱対流の悪影響を抑制することができる。つまり、接着剤を用いた場合は、振動部11を気密封止する空間内で、接着剤から発生したアウトガスが循環することによって熱対流が発生し、振動部11の精度良い温度制御が妨げられる可能性がある。しかし、3枚重ね構造の水晶振動子50では、そのようなアウトガスが発生しないため、振動部11の精度良い温度制御が可能になる。
【0060】
また、サンドイッチ構造の水晶振動子50において、上述したシールパス115,116、および接続用接合パターン同士の接合によって形成された接合材は、薄膜金属層によって構成されるので、水晶振動子50における上下方向(積層方向)の熱伝導が良好になり、水晶振動子50の温度を迅速に均一化させることができる。シールパス115,116等の場合、薄膜金属層の厚みが、1.00μm以下(具体的には、本実施の形態のAu-Au接合では、0.15μm~1.00μm)になっており、Snを用いた従来の金属ペースト封止材(例えば、5μm~20μm)よりも非常に薄くなっている。これにより、水晶振動子50における上下方向(積層方向)の熱伝導性を向上させることができる。また、水晶振動板10と第1封止部材20とが複数の接合領域で接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが複数の接合領域で接合されるため、水晶振動子50における上下方向(積層方向)の熱伝導がより良好になる。
【0061】
本実施の形態では、水晶振動板10の振動部11と外枠部12との間には、貫通部11aが形成されており、振動部11と外枠部12とが、1つの保持部13のみによって接続されている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている。このように、振動部11の外周端部のうち、圧電振動の変位が比較的小さい角部に保持部13が設けられているので、保持部13を角部以外の部分(辺の中央部)に設けた場合に比べて、保持部13を介して圧電振動が外枠部12に漏れることを抑制することができ、より効率的に振動部11を圧電振動させることができる。また、保持部13を2つ以上設けた場合に比べて、振動部11に作用する応力を低減することができ、そのような応力に起因する圧電振動の周波数シフトを低減して圧電振動の安定性を向上させることができる。
【0062】
本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0063】
上記実施の形態では、圧電振動子として、サンドイッチ構造の水晶振動子50を用いたが、これに限らず、それ以外の構造を有する圧電振動子を用いてもよい。また、金属バンプを用いたFCB法により発振器IC51およびヒータIC52の搭載を行ったが、これに限らず、ワイヤボンディングにより発振器IC51や、ヒータIC52の搭載を行ってもよい。
【0064】
上記実施の形態では、ヒータ基板として薄膜ヒータ56a,56bを用いたが、これに限らず、それ以外の構造のヒータによってコア部5の温度調整を行ってもよい。ヒータの設置数についても特に限定されない。しかし、コア部5の低背化および小型化を図る観点からは、ヒータ基板として薄膜ヒータ56a,56bを用いることが好ましい。なお、コア部5の内部に配置されるヒータIC52の発熱量も比較的大きいため、ヒータIC52もコア部5の温度調整用の熱源として利用することが可能である。
【0065】
また、上記実施の形態では、コア部5を、上下2枚の薄膜ヒータ56a,56bの間に、水晶振動子50、発振器IC51、ヒータIC52、およびチップコンデンサ53b,53cが挟まれた構成とした。しかし、OCXO1で使用される各種電子部品をパッケージングしたものであればよく、これ以外の構造のコア部5をパッケージの内部に密閉状態で封入してもよい。なお、チップコンデンサ53a~53cの温度特性は、水晶振動子50、発振器IC51、ヒータIC52等よりも小さいため、チップコンデンサ53a~53cを上下の薄膜ヒータ56a,56bの間に全て配置する必要はなく、その配置数についても特に限定されない。
【0066】
以上では、コア部5が、水晶振動子50、発振器IC51、ヒータ基板、ヒータIC52、および複数のコンデンサを有する構成であったが、コア部5を、水晶振動子50、発振器IC51、およびヒータIC52を有する構成としてもよい。例えば、図11図13に示すように、コア部5は、発振器IC51、水晶振動子50、およびヒータIC52が上側から順に積層された3層構造(積層構造)の構成になっており、ヒータIC52の下面がインターポーザ4の上面に接合されている。この構成によれば、ヒータIC52に加えて、発振器IC51も発熱体として機能するため、水晶振動子50の上下にそれぞれ発熱体が存在することになり、水晶振動子50を上下からバランス良く加熱することができる。
【0067】
このように、コア部5の構成部品としては、少なくとも水晶振動子50、発振器IC51、およびヒータIC52を有していればよい。ヒータ基板は、ヒータIC52を熱源として用いることによって省略することが可能である。具体的には、ヒータIC52として、発熱体(熱源)と、発熱体の温度制御用の制御回路(電流制御用の回路)と、発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成のものを用いることが好ましい。また、複数のコンデンサは、コア部5とは別体の部材として設けることが可能である。複数のコンデンサは、パッケージ2の内部のコア部5と同一の空間に収容してもよいし、あるいはコア部5とは異なる空間に収容してもよい。
【0068】
ここで、図11図13に示すOCXO1Aについて説明する。この変形例にかかるOCXO1Aでは、コア部5は、発振器IC51、水晶振動子50、およびヒータIC52が上側から順に積層された3層構造(積層構造)の構成になっている。このようなコア部5が、パッケージ2の内部に配置され、リッド3によって気密封止されている。
【0069】
詳細には、パッケージ2の周壁部2bの内壁面には、接続端子(図示省略)の並びに沿った段差部2cが形成されており、段差部2cに形成された接続端子に、板状のインターポーザ(コア基板)4を介してコア部5が接続されている。インターポーザ4は、パッケージ2の対向する一対の段差部2c,2c間に架け渡されるように配置されており、一対の段差部2c,2cの間であってインターポーザ4の下側の部分には、空間2dが形成されている。そして、段差部2cの段差面上に形成された接続端子が、導電性接着剤7を介してインターポーザ4の下面4bに形成された接続端子(図示省略)に接続されている。また、コア部5の各構成部材に形成された外部端子(図示省略)が、ワイヤ6a,6bを介してインターポーザ4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤボンディングにより接続されている。導電性接着剤7としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。
【0070】
図12図13では、コア部5がインターポーザ4上に搭載された状態を図示している。コア部5の発振器IC51、水晶振動子50、およびヒータIC52は、平面視におけるそれぞれの面積が、上方に向かって漸次小さくなっている。なお、コア部5の各種電子部品は封止樹脂によって封止されていないが、封止雰囲気によっては封止樹脂による封止を行うようにしてもよい。水晶振動子50および発振器IC51によって水晶発振器100が構成されるが、水晶発振器100は上記実施の形態と同様の構成になっている(図4図10参照)。
【0071】
水晶振動子50および発振器IC51の互いの対向面の間には、非導電性接着剤(アンダーフィル)53が介在されており、非導電性接着剤53によって水晶振動子50および発振器IC51の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面201)と、発振器IC51の下面とが、非導電性接着剤53を介して接合される。非導電性接着剤53としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。また、水晶振動子50の上面に形成された外部端子(図5に示す電極パターン22)が、ワイヤ6aを介してインターポーザ4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤボンディングにより接続されている。
【0072】
発振器IC51は、平面視における面積が水晶振動子50よりも小さくなっており、発振器IC51の全体が、平面視で水晶振動子50の範囲内に位置している。発振器IC51の下面の全体が、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面201)に接合されている。
【0073】
ヒータIC52は、例えば発熱体(熱源)と、発熱体の温度制御用の制御回路(電流制御用の回路)と、発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成とされている。ヒータIC52によってコア部5の温度制御を行うことにより、コア部5の温度が略一定の温度に維持され、OCXO1Aの発振周波数の安定化が図られている。
【0074】
水晶振動子50およびヒータIC52の互いの対向面の間には、非導電性接着剤54が介在されており、非導電性接着剤54によって水晶振動子50およびヒータIC52の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面302)と、ヒータIC52の上面とが、非導電性接着剤54を介して接合される。非導電性接着剤54としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。ヒータIC52の上面に形成された外部端子(図示省略)が、ワイヤ6bを介してインターポーザ4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤボンディングにより接続されている。
【0075】
水晶振動子50は、平面視における面積がヒータIC52よりも小さくなっており、水晶振動子50の全体が、平面視でヒータIC52の範囲内に位置している。水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面302)の全体が、ヒータIC52の上面に接合されている。
【0076】
ヒータIC52およびインターポーザ4の互いの対向面の間には、導電性接着剤55が介在されており、導電性接着剤55によってヒータIC52およびインターポーザ4の互いの対向面が固定されている。この場合、ヒータIC52の下面と、インターポーザ4の上面4aとが、導電性接着剤55を介して接合される。これにより、ヒータIC52が導電性接着剤55およびインターポーザ4を介してグランド接続されるようになっている。導電性接着剤55としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。なお、例えばワイヤ等を介してヒータIC52がグランド接続される場合には、導電性接着剤の代わりに、上述した非導電性接着剤53,54と同様の非導電性接着剤を用いてもよい。
【0077】
インターポーザ4の上面4aには、上述したように、多数の接続端子4cが形成されている。また、コア基板4の上面4aには、複数(図13では2つ)のチップコンデンサ(バイパスコンデンサ)4dが配置されている。なお、チップコンデンサ4dのサイズや数については特に限定されない。
【0078】
以上では、コア部5にヒータIC52および薄膜ヒータ56a,56bを設けた場合(図1図3参照)と、コア部5にヒータIC52のみを設けた場合(図11図13参照)について説明したが、コア部5に薄膜ヒータのみを設ける構成としてもよい。すなわち、コア部5に設けられる発熱体は、ヒータICまたは/および薄膜ヒータであってもよい。コア部5に薄膜ヒータのみを設ける場合、薄膜ヒータの温度調整用のICをコア部5とは別体で設けることが好ましい。
【0079】
また、コア部5を搭載したインターポーザ(コア基板)4が、パッケージ2の段差部2cの上面ではなく、凹部2aの内底面に接着剤を介して接合され、ヒータIC52および水晶振動子50の各々から、段差部2cの上面の接続端子に直接、ワイヤボンディングされている構成としてもよい。この構成により、段差部2cの上面にインターポーザ4を介してコア部5を支持する構成よりも低背化を図ることができる。
【0080】
この出願は、2020年3月30日に日本で出願された特願2020-060353号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、圧電振動子、発振器IC、およびヒータICを有するコア部を備えた恒温槽型圧電発振器に利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 恒温槽型圧電発振器
2 パッケージ
4 インターポーザ(コア基板)
5 コア部
50 水晶振動子(圧電振動子)
51 発振器IC
52 ヒータIC
100 水晶発振器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13