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特許7420848プロセッサおよびトランケートされた分析または合成窓のオーバーラップ部分を使用したオーディオ信号の処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】プロセッサおよびトランケートされた分析または合成窓のオーバーラップ部分を使用したオーディオ信号の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G10L 19/025 20130101AFI20240116BHJP
【FI】
G10L19/025
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022037055
(22)【出願日】2022-03-10
(62)【分割の表示】P 2019198983の分割
【原出願日】2015-07-24
(65)【公開番号】P2022091803
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】14178774.7
(32)【優先日】2014-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(72)【発明者】
【氏名】フックス ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】マルトラス マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ノイズィンガー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーマイアー アンドレーアス
(72)【発明者】
【氏名】シュネル マルクス
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-118517(JP,A)
【文献】特表2010-501153(JP,A)
【文献】特開2001-127641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 19/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号を処理して処理済オーディオ信号を得るためのオーディオプロセッサであって、
第1のオーバーラップ部分を含む第1の非対称窓から第1のオーバーラップ部分を含む第2の窓への変化を示す窓制御信号を前記オーディオ信号から導出するように構成される分析器であって、前記第2の窓は前記第1の非対称窓よりも短い、分析器と、
前記第1の非対称窓の前記第1のオーバーラップ部分を使用して前記第2の窓を構築するように構成される窓コンストラクタであって、前記窓コンストラクタは、前記第1の非対称窓のトランケートされた第1のオーバーラップ部分を使用して前記第2の窓の前記第1のオーバーラップ部分を決定するように構成される、窓コンストラクタと、
前記第1の非対称窓および前記第2の窓を適用して、前記処理済オーディオ信号を表す窓掛けされたオーディオ信号を得るように構成される窓掛け部と、
を備える、オーディオプロセッサ。
【請求項2】
前記第1の非対称窓および前記第2の窓は分析窓であり、
前記オーディオプロセッサは、前記第1の非対称窓および前記第2の窓によって窓掛けされたサンプルをさらに処理するように構成されたオーディオエンコーダーをさらに備える、請求項1に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項3】
前記窓コンストラクタは、前記第1の非対称窓の前記第1のオーバーラップ部分をトランケートすることによって、且つ、トランケートされた前記部分をフェードインすることによって、前記第2の窓の前記第1のオーバーラップ部分を導出するように構成される、請求項1に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項4】
前記窓コンストラクタは、サインフェードイン機能またはサインフェードアウト機能を用いてフェードインまたはフェードアウトを実行するように構成される、請求項3に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項5】
前記窓コンストラクタは、前記オーディオプロセッサが使用する他の任意の窓のオーバーラップ部分を使用して、フェードインまたはフェードアウトを計算するように構成される、請求項3に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項6】
前記窓コンストラクタは、使用されるすべてのオーバーラップ部分のうち最短のオーバーラップ部分を使用して前記フェードインまたは前記フェードアウトを計算するように構成される、請求項5に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項7】
所定のサンプリングレートについて、前記第1の非対称窓の前記第1のオーバーラップ部分、前記第1の非対称窓の第2のオーバーラップ部分、および前記第1の非対称窓よりも短い別の窓のための第3のオーバーラップ部分を格納しているメモリーをさらに含み、
前記窓コンストラクタは、
前記メモリーから前記第1の非対称窓の前記第1のオーバーラップ部分を取り出し、
前記第1のオーバーラップ部分を前記第1のオーバーラップ部分の長さより短い長さにトランケートしてトランケートされた第1の部分を取得し、
前記第3のオーバーラップ部分を取り出し、
前記トランケートされた第1の部分を前記第3のオーバーラップ部分で乗算して、前記第2の窓の前記第1のオーバーラップ部分を生成するように構成される、請求項1に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項8】
前記メモリーは、さらに別の窓の第4のオーバーラップ部分をさらに格納し、前記さらに別の窓の長さは、前記第1の非対称窓の長さと前記別の窓の長さとの間である、請求項7に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項9】
前記窓コンストラクタは、前記窓制御信号に応じて、前記第1の非対称窓と、前記第2の窓と、前記第3のオーバーラップ部分および前記第4のオーバーラップ部分または前記第3のオーバーラップ部分のみを使用して構築された追加の窓と、さらなる追加の窓(1410)と、を含むシーケンスを前記第3のオーバーラップ部分および前記第1の非対称窓の前記第2のオーバーラップ部分を使用して構築するように構成される、請求項8に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項10】
前記窓コンストラクタは、前記第1の非対称窓の第2のオーバーラップ部分の長さにトランケートされている、前記第1の非対称窓のトランケートされた前記第1のオーバーラップ部分を用いて、前記第2の窓の前記第1のオーバーラップ部分を決定するように構成される、請求項1に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項11】
前記窓コンストラクタは、前記第2の窓の前記第1のオーバーラップ部分および前記第2の窓に続く別の窓の第1のオーバーラップ部分に相当する前記第2の窓の第2のオーバーラップ部分を使用して、前記第2の窓を決定するように構成される、請求項1に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項12】
前記窓コンストラクタ(206)は前記第1の非対称窓の前記第1のオーバーラップ部分を、前記第2の窓のウィンドウ長から前記第2の窓に続く別の窓の第1のオーバーラップ部分の長さを引いた長さよりも短いかまたはこれに等しいトランケーション長さにトランケートするように構成される、請求項1に記載のプロセッサ。
【請求項13】
前記トランケーション長さが、前記ウィンドウ長から前記別の窓の前記第1のオーバーラップ部分または前記窓の第2のオーバーラップ部分の長さを引いた長さよりも小さい場合、前記窓コンストラクタは、前記第2の窓の前記第1および第2のオーバーラップ部分の前または後にゼロを挿入するように構成され、前記窓コンストラクタは、前記第2の窓の前記第1のオーバーラップ部分と前記第2のオーバーラップ部分との間にいくつかの「1」の値を挿入するように構成される、請求項12に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項14】
前記第1の非対称窓は、第1のオーバーラップ部分、第2のオーバーラップ部分、前記第1のオーバーラップ部分と前記第2のオーバーラップ部分との間の第1のハイバリュー部分、および前記第2のオーバーラップ部分に続く第2のローバリュー部分を含み、前記ハイバリュー部分の値は0.9より大きく、前記ローバリュー部分の値は0.1よりも小さく、
前記第2のオーバーラップ部分の長さは前記第1のオーバーラップ部分の長さよりも小さい、請求項1に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項15】
複数の異なるサンプリングレートで動作するように構成された、請求項1に記載のオーディオプロセッサであって、
前記オーディオプロセッサは各サンプリングレートについて、前記第1の非対称窓の前記第1のオーバーラップ部分および第2のオーバーラップ部分と、別の窓の対称オーバーラップ部分と、前記別の窓よりも短いさらなる別の窓の別の対称オーバーラップ部分とを格納するように構成され、且つ
前記対称オーバーラップ部分および前記別の対称オーバーラップ部分は昇順または降順部分としてのみ格納され、前記窓コンストラクタは、算術演算または論理演算によって、格納された前記昇順または降順部分から降順または昇順部分を導出するように構成される、
オーディオプロセッサ。
【請求項16】
前記第1の非対称窓は20msの変換長のために構成され、前記窓コンストラクタは、10msまたは5msの変換長のためには別の窓をさらに使用するように構成され、且つ、
前記第2の窓は、20msの変換長から10msまたは5msの変換長までの遷移窓である、請求項1に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項17】
オーディオ信号を処理して処理済オーディオ信号を得るためのオーディオプロセッサであって、
第2のオーバーラップ部分を含む第3の窓から第2のオーバーラップ部分を含む第4の非対称窓への変化を示す窓制御信号を前記オーディオ信号から導出するように構成される分析器であって、前記第3の窓は前記第4の非対称窓よりも短い、分析器と、
前記第4の非対称窓の前記第2のオーバーラップ部分を使用して前記第3の窓を構築するように構成される窓コンストラクタであって、前記窓コンストラクタは、前記第4の非対称窓のトランケートされた第2のオーバーラップ部分を使用して前記第3の窓の前記第2のオーバーラップ部分を計算するように構成される、窓コンストラクタと、
前記処理済オーディオ信号を表す窓掛けされたオーディオ信号部分を得るために、前記第3の窓および前記第4の非対称窓を適用するように構成された窓掛け部と、
を備える、オーディオプロセッサ。
【請求項18】
前記第3の窓および前記第4の非対称窓は合成窓であり、
前記オーディオプロセッサは、前記第3の窓および前記第4の非対称窓によって窓掛けされたサンプルをさらに重畳加算するように構成された重畳加算器をさらに備える、
請求項17に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項19】
前記窓コンストラクタは、前記第4の非対称窓の前記第2のオーバーラップ部分をトランケートすることによって、且つ、トランケートされた前記部分をフェードアウトすることによって、前記第3の窓の前記第2のオーバーラップ部分を導出するように構成される、請求項17に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項20】
所定のサンプリングレートについて、前記第4の非対称窓の前記第2のオーバーラップ部分、および第1の窓よりも短い別の窓のための第3のオーバーラップ部分を格納しているメモリーをさらに含み、
前記窓コンストラクタは、
前記メモリーから前記第4の非対称窓の前記第2のオーバーラップ部分を取り出し、
取り出された前記第2のオーバーラップ部分を、前記第2のオーバーラップ部分の長さより短い長さにトランケートして、トランケートされた第2のオーバーラップ部分を取得し、
3のオーバーラップ部分を取り出し、
前記トランケートされた第2のオーバーラップ部分を前記第3のオーバーラップ部分で乗算して、前記第3の窓の前記第2のオーバーラップ部分を生成するように構成される、請求項17に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項21】
前記窓コンストラクタは、前記第4の非対称窓の第1のオーバーラップ部分の長さにトランケートされている、前記第4の非対称の第2のオーバーラップ部分を用いて、前記第3の窓の前記第2のオーバーラップ部分を決定するように構成される、請求項17に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項22】
前記窓コンストラクタは、前記第3の窓に先行する別の窓の第2のオーバーラップ部分に相当する前記第3の窓の第1のオーバーラップ部分を使用して、前記第3の窓を構築するように構成される、請求項17に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項23】
複数の異なるサンプリングレートで動作するように構成された、請求項17に記載のオーディオプロセッサであって、
前記プロセッサは各サンプリングレートについて、前記第4の非対称窓の前記第1のオーバーラップ部分および第2のオーバーラップ部分と、別の窓の対称オーバーラップ部分と、前記別の窓よりも短いさらなる別の窓の別の対称オーバーラップ部分とを格納するように構成され、且つ
前記対称オーバーラップ部分および前記別の対称オーバーラップ部分は昇順または降順部分としてのみ格納され、前記窓コンストラクタは、算術演算または論理演算によって、格納された前記昇順または降順部分から降順または昇順部分を導出するように構成される、
オーディオプロセッサ。
【請求項24】
前記第4の非対称窓は20msの変換長のために構成され、前記第3の窓は、5msの変換長から20msの変換長または10msの変換長から20msの変換長までの遷移窓である、請求項17に記載のオーディオプロセッサ。
【請求項25】
処理済みオーディオ信号を取得するためにオーディオ信号を処理する方法であって、
第1のオーバーラップ部分を含む第1の非対称窓から第1のオーバーラップ部分を含む第2の窓への変化を示す窓制御信号を前記オーディオ信号から導出するステップであって、前記第2の窓は前記第1の非対称窓よりも短い、導出するステップと、
前記第1の非対称窓の前記第1のオーバーラップ部分を使用して前記第2の窓を構築するステップであって、前記構築するステップは前記第1の非対称窓のトランケートされた第1のオーバーラップ部分を使用して前記第2の窓の前記第1のオーバーラップ部分を決定するステップを含む、構築するステップと、
前記処理済のオーディオ信号を表す窓掛けされたオーディオ信号部分を得るために、前記第1の非対称窓および前記第2の窓を適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項26】
処理済みオーディオ信号を取得するためにオーディオ信号を処理する方法であって、
第2のオーバーラップ部分を含む第3の窓から第2のオーバーラップ部分を含む第4の非対称窓への変化を示す窓制御信号を前記オーディオ信号から導出するステップであって、前記第3の窓は前記第4の非対称窓よりも短い、導出するステップと、
前記第4の非対称窓の前記第2のオーバーラップ部分を使用して前記第3の窓を構築するステップであって、前記構築するステップは前記第4の非対称窓のトランケートされた第2のオーバーラップ部分を使用して前記第3の窓の前記第2のオーバーラップ部分を決定するステップを含む、構築するステップと、
前記処理済のオーディオ信号を表す窓掛けされたオーディオ信号部分を得るために、前記第3の窓および前記第4の非対称窓を適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項27】
コンピュータ上で動作しているときに、オーディオ信号を処理する方法を実行して処理済のオーディオ信号を得るためのコンピュータプログラムを格納した非一時的デジタル記憶媒体であって、前記方法は、
第1のオーバーラップ部分を含む第1の非対称窓から第1のオーバーラップ部分を含む第2の窓への変化を示す窓制御信号を前記オーディオ信号から導出するステップであって、前記第2の窓は前記第1の非対称窓よりも短い、導出するステップと、
前記第1の非対称窓の前記第1のオーバーラップ部分を使用して前記第2の窓を構築するステップであって、前記構築するステップは前記第1の非対称窓のトランケートされた第1のオーバーラップ部分を使用して前記第2の窓の第1のオーバーラップ部分を決定するステップを含む、構築するステップと、
前記処理済のオーディオ信号を表す窓掛けされたオーディオ信号部分を得るために、前記第1の非対称窓および前記第2の窓を適用するステップと、
を含む、非一時的デジタル記憶媒体。
【請求項28】
コンピュータ上で動作しているときに、オーディオ信号を処理する方法を実行して処理済のオーディオ信号を得るためのコンピュータプログラムを格納した非一時的デジタル記憶媒体であって、前記方法は、
第3の窓から第4の非対称窓への変化を示す窓制御信号を前記オーディオ信号から導出するステップであって、前記第3の窓は前記第4の非対称窓よりも短い、導出するステップと、
前記第4の非対称窓の第2のオーバーラップ部分を使用して前記第3の窓を構築するステップであって、前記構築するステップは前記第4の非対称窓のトランケートされた第2のオーバーラップ部分を使用して前記第3の窓の前記第2のオーバーラップ部分を算出するステップを含む、構築するステップと、
前記処理済のオーディオ信号を表す窓掛けされたオーディオ信号部分を得るために、前記第3の窓および前記第4の非対称窓を適用するステップと、
を含む、非一時的デジタル記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ処理に関し、特に、オーディオ信号処理チェーンの分析側または
合成側のためのオーバーラップ窓を用いたオーディオ処理に関する。
【背景技術】
【0002】
MDCTのようなオーバーラップする変換に基づく大部分の現代の周波数領域オーディ
オコーダは、現在の信号特性に時間および周波数の分解能を適応させるために、ある種の
変換サイズの切り替えを使用する。利用可能な変換サイズとそれらに対応する窓形状との
間の切り替えを処理するための異なるアプローチが開発されている。いくつかの手法では
、異なる変換長、例えばMPEG―4(HE)AAC[1]を用いて、符号化されたフレ
ーム間に遷移窓を挿入する。遷移窓の欠点は、エンコーダーの先読みを増やす必要がある
ため、低い遅延アプリケーションには適していない。他のものは、遷移窓の必要性を回避
するために、すべての変換サイズに対して固定された低い窓オーバーラップ、例えばCE
LT[2]を採用する。しかしながら、低いオーバーラップは、周波数分離を減少させ、
トーナル信号の符号化効率を低下させる。対称オーバーラップのための異なる変換および
オーバーラップ長を用いる改善されたインスタント切り替え手法が、〔3〕においてされ
る。〔6〕は、低いオーバーラップサイン窓を使用して、異なる変換長間の瞬間的な切り
替えの例を示している。
【0003】
他方、低い遅延オーディオコーダは、遅延と周波数分離との間の良好な妥協を示すので
、しばしば非対称MDCT窓を使用する。エンコーダー側では、先行フレームとの長いオ
ーバーラップが周波数分離を改善するために使用される一方で、先読み遅延を低減するた
めに、後続フレームとの短縮オーバーラップが使用される。デコーダー側では、エンコー
ダー窓の反映されたバージョンが用いられる。非対称分析および合成窓掛けは、図8a~
図8cに示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】nternational Organization for Standardization, ISO/IEC 14496-3, "Information Technology - Coding of audio-visual objects - Part 3: Audio," Geneva, Switzerland, Aug. 2009.
【文献】Internet Engineering Task Force (IETF), RFC 6716, "Definition of the Opus Audio Codec," Sep. 2012.
【文献】C. R. Helmrich, G. Markovic and B. Edler, "Improved Low-Delay MDCT-Based Coding of Both Stationary and Transient Audio Signals," in Proceedings of the IEEE 2014 Int. Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), 2014 or PCT/EP2014/053287.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、オーディオ信号を処理するための改良された概念を提供することであ
る。
【0006】
この目的は、請求項1に記載のオーディオ信号を処理するためのプロセッサ、請求項1
7に記載のオーディオ信号を処理する方法、または請求項18に記載のコンピュータプロ
グラムによって達成される。
【0007】
本発明は、非対称変換窓が、低減された遅延で定常信号の良好な符号化効率を達成する
のに有用であるという知見に基づいている。一方、フレキシブルな変換サイズ切り替え戦
略を有するために、1つのブロックサイズから異なるブロックサイズへの遷移のための分
析または合成窓は、非対称窓の切り捨てられたオーバーラップ部分を窓エッジとして使用
することを可能にするか、または完全な再構成特性を乱すことなく窓エッジのための基礎
として使用することを可能にする。
【0008】
したがって、非対称窓の長いオーバーラップ部分のような非対称窓のトランケーション
は、遷移窓内で使用することができる。しかし、遷移窓の必要な長さに適合するために、
このオーバーラップ部分または非対称の窓エッジまたはフランクは、遷移窓の制約内で許
容される長さにトランケートされる。これは、しかしながら、完全な復元特性に違反しな
い。それ故、非対称窓の窓オーバーラップ部分のこの切り捨ては、完璧な再構成側からの
ペナルティなしに、短時間かつ即座の切り替え遷移窓を可能にする。
【0009】
さらなる実施形態では、トランケートされたオーバーラップ部分を直接使用するのでは
なく、考慮中の非対称な窓オーバーラップ部分を切り捨てることによって生じる不連続を
滑らかにするか、フェードインまたはフェードアウトすることが好ましい。
【0010】
さらなる実施形態は、最小限の量の窓エッジまたは窓側面のみがメモリーに格納され、
フェードインまたはフェードアウトの場合でさえも、特定の窓エッジが使用されるため、
メモリーを節約する実施に依存する。これらのメモリー効率のよい実施は、さらに、格納
された昇順窓エッジから降順窓エッジを構成するか、またはその逆を論理演算または算術
演算によって構成し、昇順または降順のいずれかのエッジのみを格納しなければならず、
そして、他のものは自動的にその場で導出することができるようにする。
【0011】
実施形態は、プロセッサまたはオーディオ信号を処理するための方法を含む。プロセッ
サは、オーディオ信号の分析処理において、第1の非対称窓から第2の窓への変化を示す
オーディオ信号から窓制御信号を導出する分析器を有する。代替的にまたは追加的に、窓
制御信号は、例えば合成信号処理の場合に、第3の窓から第4の非対称窓への変化を示す
。特に、分析側にとって、第2の窓は第1の窓よりも短いか、合成側では、第3の窓が第
4の窓よりも短い。
【0012】
プロセッサは、第1の非対称窓の第1のオーバーラップ部分を使用して第2の窓または
第3の窓を構築するための窓コンストラクタをさらに含む。具体的には、窓コンストラク
タは、第1の非対称窓の切り捨てられた第1のオーバーラップ部分を使用して、第2の窓
の第1のオーバーラップ部分を決定するように構成される。代替的に、または追加的に、
窓コンストラクタは、第4の非対称窓の第2のオーバーラップ部分を使用して、第3の窓
の第2のオーバーラップ部分を計算するように構成される。
【0013】
最後に、プロセッサは、第1および第2の窓を適用するための窓を有し、窓化されたオ
ーディオ信号部分を得るための合成処理の場合には、特に、分析処理または第3および第
4の窓を適用する。
【0014】
知られているように、分析窓処理は、オーディオエンコーダーの冒頭で行われ、時間離
散的かつ時間的に後続するオーディオ信号サンプルのストリームが窓シーケンスによって
窓掛けされ、例えば、分析器が実際にオーディオ信号の過渡状態を検出するとき、長い窓
から短い窓への切り替えが実行される。次に、窓処理に続いて、時間領域から周波数領域
への変換が実行され、好ましい実施形態では、この変換は、修正離散コサイン変換(MD
CT)を使用して行われる。MDCTは、2N個の時間領域サンプルの集合からN個の周
波数領域サンプルの集合を生成するために、畳み込み演算と次のDCTIV変換を使用し
、これらの周波数領域値がさらに処理される。
【0015】
合成側では、分析器はオーディオ信号の実際の信号分析を実行しないが、分析器は、エ
ンコーダー側分析器によって決定されたある窓シーケンスを示す符号化オーディオ信号に
サイド情報から窓制御信号を引き出し、デコーダー側プロセッサの実装に送信される。合
成窓処理は、デコーダー側処理の最後、すなわち、一組のN個のスペクトル値の集合から
2N個の時間領域値の集合を生成する周波数-時間変換および非畳み込み演算に続いて実
行され、本発明のトランケートされた窓エッジを使用する合成窓処理に続いて、必要に応
じてオーバーラップ加算が実行される。好ましくは、分析窓の位置決めのために、および
合成窓を用いた合成窓処理の後の実際のオーバーラップ加算のために、50%のオーバー
ラップが適用される。
【発明の効果】
【0016】
したがって、本発明の利点は、本発明が、遅延を低減して、定常信号に対して良好な符
号化効率を有する非対称変換窓に依存することである。一方、本発明は、柔軟な変換サイ
ズが過渡信号の効率的な符号化のための戦略を切替えることができ、そして、それは、完
全なコーダ遅延を増加させない。したがって、本発明は、短い変換のための非対称窓と、
短い窓の対称的な重複範囲のための柔軟な変換/オーバーラップ長の切り替えコンセプト
との組み合わせに依存する。短い窓は、両側で同じ対称オーバーラップを有する完全に対
称であってもよく、または先行する窓と第1の対称オーバーラップと、後続の窓との第2
の異なる対称オーバーラップを有する非対称であってもよい。
【0017】
本発明は、特に、非対称の長い窓からのトランケートされたオーバーラップ部分の使用
によって、異なるブロックサイズを有する窓からのいかなる遷移も付加的な長い遷移窓の
挿入も必要としないという事実のために、任意のコーダ遅延または必要なコーダ先読みは
増加しないという点で、有利である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面に関して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】トランケートされたオーバーラップ部分のコンテキストで符号化する態様を示す。
図1B】トランケートされたオーバーラップ部分を使用する状況で復号化するための装置を示す。
図1C】合成側のより詳細な図を示す。
図1D】エンコーダー、デコーダーおよびメモリーを有するモバイルデバイスの実施例を示す。
図2】分析側(ケースA)または合成側(ケースB)の本発明の好ましい実施例を示す。
図3】窓コンストラクタの好ましい実施例を示す。
図4図3のメモリー内容の概略図である。
図5】分析遷移窓の第1のオーバーラップ部分および第2のオーバーラップ部分を決定するための好ましい手順を示す図である。
図6】合成遷移窓を決定する好ましい手順を示す図である。
図7】最大長さよりも短いトランケーションを有するさらなる手順を示す。
図8A】非対称分析窓を示す図である。
図8B】非対称分析窓を示す図である。
図8C】畳み込み部分を有する非対称分析窓を示す図である。
図9A】対称分析/合成窓を示す。
図9B】対称であるが異なるオーバーラップ部分を有するさらなる分析/合成窓を示す。
図9C】異なる長さを有する対称オーバーラップ部分を有する更なる窓を示す図である。
図10A】トランケートされた第1のオーバーラップ部分を有する第2の窓などの分析遷移窓を示す。
図10B】トランケートされ且つフェードインされた第1のオーバーラップ部分を有する第2の窓を示す。
図10C図10Aの第2の窓を、前後の窓の対応するオーバーラップ部分との関連で示す図である。
図10D図10Cの状況を示すが、フェードインされた第1のオーバーラップ部分を有する。
図11A】分析側のフェードインを伴う異なる遷移窓を示す。
図11B】必要以上のトランケーションおよびそれに対応する更なる修正を伴うさらなる分析遷移窓を示す。
図12A】小ブロックサイズから高ブロックサイズへの遷移のための分析遷移窓を示す。
図12B】小ブロックサイズから高ブロックサイズへの遷移のための分析遷移窓を示す。
図13A】高いブロックサイズから低いブロックサイズへの合成遷移窓を示す。
図13B】高いブロックサイズから低いブロックサイズへの合成遷移窓を示す。
図13C】第3の窓のようなトランケートされた第2のオーバーラップ部分を有する合成遷移窓を示す。
図13D図13Cの窓を示すが、フェードアウトはない。
図14A】特定の分析窓シーケンスを示す。
図14B】対応する合成窓シーケンスを示す。
図15A】特定の分析窓シーケンスを示す。
図15B図15Aと一致する対応する合成窓シーケンスを示す。そして、
図16】対称的なオーバーラップのみを使用して、異なる変換長間を即座に切り替える例を示す。
【0020】
実施形態は、中間フレームを挿入する必要なしに、非対称窓を使用する長いMDCT変
換から、対称的にオーバーラップする窓を有するより短い変換に、即座に切り替えるため
の概念に関する。
【0021】
より短い変換長を使用する第1のフレームのための窓形状を構成する場合、2つの制限
が問題となる。
・窓の左のオーバーフラップ部分は、完全またはほぼ完全な再構成が達成されるように、
前の非対称窓の形状に一致する必要がある。
・オーバーラップしている部分の長さは、変換の長さが短いために制限される。
【0022】
長い非対称窓の左のオーバーラップ部分は、最初の条件を満たしますが、通常、長い変
換のサイズの半分以下の短い変換では長すぎる。従って、より短い窓形状を選択する必要
がある。
【0023】
ここでは、非対称分析および合成窓が互いに対称である、すなわち、合成窓が分析窓の
反映されたバージョンであると仮定する。この場合、窓は、完全な再構成のために、次の
式を満たさなければならない。
ここで、Lは、変換長とnのサンプルインデックスを表す。
【0024】
遅延を低減するために、非対称の長い分析窓の右側のオーバーラップが短縮された。こ
れは、最も右の窓サンプルの全てがゼロの値を持つことを意味する。上記の式から、窓サ
ンプルWnがゼロの値を有する場合、対称サンプルW2L-1-nに対して任意の値が選択され
得ることが分かる。窓の右端mのサンプルがゼロである場合、左端mのサンプルは、完全
な再構成を失うことなくゼロで置き換えることができ、すなわち、左のオーバーラップ部
分を右のオーバーラップ部分の長さにトランケートすることができる。
【0025】
トランケートされたオーバーラップ長が十分に短く、第1の短い変換窓の右側部分に十
分なオーバーラップ長が残るようにすると、これは第1の短い変換窓の形状の解を与え、
上記の条件の両方を満たす。非対称窓のオーバーラップ部分の左端はトランケートされ、
その後の短い窓に使用される対称オーバーラップと組み合わされる。結果として生じる窓
形状の一例が図10Cに示されている。
【0026】
既存の長い窓オーバーラップのトランケートされたバージョンを使用することは、遷移
のための完全に新規な窓形状を設計する必要を回避する。また、遷移に追加の窓テーブル
が必要ないため、アルゴリズムが実施されているハードウエアのROM/RAMの需要/
要求が減少する。
【0027】
デコーダー側の合成窓の窓掛けのために、対称的な手法が用いられる。非対称合成窓は
、右側に長いオーバーラップを有する。したがって、右側のオーバーラップ部分のトラン
ケートされたバージョンは、図13Dにて図示するように、非対称の窓で長い変換へ切り
換わる前に、最後の短い変換の右側の窓の一部のために使われる。
【0028】
上記に示されているように、長い窓のトランケートされたバージョンの使用は、スペク
トルデータが分析変換と合成変換との間で修正されない場合、時間領域信号の完全な再構
成を可能にする。しかしながら、オーディオコーダでは、量子化がスペクトルデータに適
用される。合成変換では、得られた量子化ノイズは、合成窓によって形作られる。長い窓
のトランケーションは、窓形状のステップを導入するので、出力信号の量子化ノイズに不
連続性が生じる可能性がある。これらの不連続性は、クリック状のアーティファクトとし
て聞き取れるようになる。
【0029】
このようなアーティファクトを回避するために、フェードアウトをトランケートされた
窓の端に適用して、ゼロへの遷移を円滑にすることができる。フェードアウトは、いくつ
かの異なる方法で行うことができ、例えば、それは線形、正弦または余弦形状であり得る
。フェードアウトの長さは、可聴アーティファクトが発生しないように十分に大きく選択
する必要がある。完全な再構成を失うことなくフェードアウトに利用できる最大長は、短
い変換長と窓のオーバーラップの長さによって決定される。場合によっては、利用できる
長さはゼロであるか、または、アーティファクトを抑制するにはあまりに少ないかも知れ
ない。このような場合には、フェードアウトの長さを延長し、小さな再構成誤差を受け入
れることが有益であり得る。これは、量子化ノイズの不連続性よりも妨げにならないこと
が多いためである。フェードアウトの長さを慎重に調整することで、最良のオーディオ品
質を達成するために、量子化エラーの不連続性に対して再構成エラーを交換することがで
きる。
【0030】
図10Dは、窓のトランケートされた端部にサイン関数を乗算することによって、短い
フェードアウトを伴うトランケートされたオーバーラップの例を示す。
【0031】
続いて、図2は、本発明の実施形態によるオーディオ信号を処理するためのプロセッサ
を説明するために論じられる。オーディオ信号は、入力200で分析器202に供給され
る。この分析器は、入力200でオーディオ信号から窓制御信号204を導出するように
構成されており、窓制御信号は、例えば、14Aまたは図14Bに示す第1の窓1400
または1500によって示されるように、第1の非対称窓から第2の窓への変化を示し、
この実施形態では、第2の窓が、図14Aの窓1402または図15Aの窓1502であ
る。窓制御信号204は、再び、代替的に、また合成側での動作に関して、例示的に、図
14Bの1450または図15Bの1550などの第3の窓から、図14Bの1452ま
たは 図15Bの1552などの第3の窓への変更を示す。図示のように、1402のよ
うな第2の窓は、第1の窓1400よりも短く、または、1450または1550のよう
な第3の窓は、1452または1552のような第4の窓よりも短い。
【0032】
プロセッサは、第1の非対称窓の第1のオーバーラップ部分を使用して第2の窓を構築
するための窓コンストラクタ206をさらに含み、この窓コンストラクタは、合成側の第
1の非対称窓のトランケートされた第1のオーバーラップ部分、すなわち、図2のケース
Bを使用して、第2の窓の第1のオーバーラップ部分を決定するように構成される。窓コ
ンストラクタは、第1の窓のトランケートされた第2のオーバーラップ部分、すなわち、
非対称窓を使用して、1502または1550などの第3の窓の第2のオーバーラップ部
分を計算するように構成される。
【0033】
分析側の第2の窓または合成側の第3の窓のようなこれらの窓、そして、勿論、先行す
るおよび/または後続の窓は、窓コンストラクタ206から窓掛け部208に送信される
。窓掛け部208は、出力210において信号部分を得るために、第1および第2の窓ま
たは第3および第4の窓をオーディオ信号に適用する。
【0034】
ケースAは、分析側に関連している。ここで、入力はオーディオ信号であり、実際の分
析器202は、実際のオーディオ信号分析、例えば過渡分析などを行う。第1および第2
の窓は、分析窓であり、窓化された信号は、図1Aに関して後述するようにエンコーダー
側で処理される。
【0035】
それ故、図2において例示される復号化処理部214は、ケースAにおいて、バイパス
されるか、または実際には存在しない。
【0036】
ケースBにおいて、すなわち本発明の処理が合成側に適用される場合、入力はオーディ
オ信号情報およびサイド情報を有するビットストリームのような符号化オーディオ信号で
あり、分析器202は、符号化されたオーディオ信号から、ビットストリーム分析または
ビットストリームまたは符号化信号分析を実行して、エンコーダーによって適用される窓
シーケンスを示す窓制御信号を生成し、そこからデコーダーによって適用される窓シーケ
ンスを導出することができる。
【0037】
そして、第3および第4の窓は、合成窓であり、図1Bまたは図1Cに示すように、窓
掛けされた信号は、オーディオ信号の合成のためにオーバーラップ加算処理される。
【0038】
図1Aは、オーディオ信号100を符号化する装置を示す。オーディオ信号を符号化す
る装置は、オーディオ信号100を窓掛けして、103で示す窓掛け済みサンプルのブロ
ックのシーケンスを提供するための制御可能な窓掛け部102を備える。さらに、エンコ
ーダーは、窓掛け済みサンプルのブロックのシーケンス103を、105で示すスペクト
ル値のフレームのシーケンスを含むスペクトル表現に変換するための変換部104を更に
備える。更に、過渡位置検出部106が設けられる。検出部は、フレームの過渡先読み領
域内の過渡の位置を識別するように構成されている。更に、制御可能な窓掛け部を制御す
るための制御部108が、107で示す過渡の識別された位置に応じて、特定のオーバー
ラップ長を有する特定の窓をオーディオ信号100に適用するよう構成されている。更に
、制御部108は、一実施形態において、窓情報112を、制御可能な窓掛け部102に
だけでなく、その出力において符号化済みオーディオ信号115を提供する出力インター
フェース114にも提供するよう構成されている。スペクトル値のフレームのシーケンス
105を含むスペクトル表現は符号化処理部110に入力され、その符号化処理部110
は、予測操作、時間的雑音整形操作、好ましくは聴覚心理音響モデル若しくは少なくとも
聴覚心理音響原理に関連する量子化操作のような、任意の種類の符号化操作を実施するこ
とができ、又は、ハフマン符号化操作若しくは算術符号化操作のような冗長性を低減する
符号化操作を含んでもよい。符号化処理部110の出力は、その後、出力インターフェー
ス114に伝送され、その後、出力インターフェース114は最終的に、特定の窓情報1
12が符号化済み各フレームに関連付けられた、符号化済みオーディオ信号を提供する。
【0039】
制御部108は、少なくとも3つの窓から成るグループから特定の窓を選択するよう構
成されている。グループは、第1オーバーラップ長を有する第1窓、第2オーバーラップ
長を有する第2窓、及び第3オーバーラップ長を有するか又はオーバーラップを有しない
第3窓を含む。第1オーバーラップ長は、第2オーバーラップ長よりも大きく、第2オー
バーラップ長はゼロオーバーラップよりも大きい。特定の窓は、時間的に隣接する2つの
オーバーラップ窓のうちの1つが過渡の位置において第1の窓係数を有し、時間的に隣接
する2つのオーバーラップ窓のうちの他方が過渡の位置において第2の窓係数を有し、第
2の窓係数が第1の係数よりも少なくとも9倍大きくなるように、過渡位置に基づいて制
御可能な窓掛け部102によって選択される。これによって、過渡が第1の(小さい)係
数を有する第1窓によって大幅に抑制され、その過渡が第2の窓係数を有する第2窓によ
っては殆ど影響を受けないことが確実になる。第1の窓係数は、好ましくは0.95~1
.05のように±5%の許容範囲内で1に等しく、第2の窓係数は、好ましくは0に等し
いか又は少なくとも0.05よりも小さい。窓係数は負になる可能性もあり、この場合、
窓係数の関係及び量は絶対値の大きさに関係付けられる。
【0040】
さらに、代替的または追加的に、制御部108は、図2の文脈で説明したように、窓コ
ンストラクタ206の機能を含み、後述する。さらに、過渡位置検出部106は、実施す
ることができ、ケースAのために、すなわち、分析側の窓の適用については、図2の分析
器202の機能を有することができる。
【0041】
さらに、ブロック104および110は、図1Aの窓掛けされたオーディオ信号103
に対応する、窓掛け済みの(窓掛けされた)オーディオ信号210によって実行される処
理を示す。さらに、窓コンストラクタ206は、図2に具体的には示されていないが、図
1Aの窓情報112を出力インターフェース114に提供し、デコーダー側で動作する分
析器202、すなわち、ケースBについて、符号化された信号から回復することができる
【0042】
MDCT処理、概してエイリアシング導入変換を使用した処理の技術分野において公知
であるように、このエイリアシング導入変換は、畳み込みステップ、及び特定の非エイリ
アシング導入変換を使用した後続の変換ステップに分離され得る。一例では、区分が他の
区分に畳み込まれ、畳み込み演算の結果は、その後、DCT変換のような変換を使用して
スペクトルドメインへと変換される。MDCTの場合、DCTIVが適用される。
【0043】
その後、ここではMDCTに言及しながら例示するが、他のエイリアシング導入変換が
同様で類似の方法で処理され得る。重複変換として、MDCTは、入力の半数(同数では
なく)の出力を有するという点において、他のフーリエ関連変換と比較して多少異なって
いる。特に、MDCTは、線形関数F:R2N→RNである(ここで、Rは実数の集合を示
す)。2N個の実数x0,...,x2N-1は、以下の式に従って、N個の実数X0,
...,XN-1に変換される。
【0044】
(この変換の前の正規化係数、ここでは1は任意選択の慣例であり、処理間で異なる。
以下では、MDCT及びIMDCTの正規化の積だけが制約される。)
【0045】
逆MDCTは、IMDCTとして知られている。入力と出力の数が異なるため、一見す
ると、MDCTは可逆的であるはずがないと考えられるかもしれない。しかしながら、時
間的に隣接したオーバーラップしているブロックのオーバーラップされたIMDCTを追
加することによって、完璧な可逆性が達成され、これによってエラーが消去され、元のデ
ータが回復される。この技法は、時間ドメイン・エイリアシング消去(TDAC)として
知られている。
【0046】
IMDCTは、以下の式に従って、N個の実数X0,...,XN-1を2N個の実数
y0,...,y2N-1に変換する。
【0047】
(直交変換であるDCT-IVの場合のように、逆変換は順変換と同じ形式を有する。
【0048】
通常の窓正規化(下記参照)を用いる窓掛けされたMDCTの場合、IMDCTの前の
正規化係数は、2を乗算されるべきである(即ち、2/Nになる)。
【0049】
典型的な信号圧縮アプリケーションにおいて、n=0及び2Nの境界における不連続性
を、これらの点において関数をゼロに円滑に収束させることによって回避するために、上
述したMDCT及びIMDCTの式におけるxn及びynと乗算される窓関数wn(n=
0,...,2N-1)を使用することによって、変換特性は更に改善される(即ち、本
発明ではMDCTの前とIMDCTの後でデータを窓掛けする)。原則として、x及びy
は異なる窓関数を有することができ、窓関数はブロック毎に変化し得る(特に、サイズの
異なるデータブロックが組み合わされている場合)が、簡潔にするために、本発明では等
しいサイズのブロックについて同一の窓関数である一般的な場合を考察する。
【0050】
wが次のプリンセン-ブラッドリー(Princen-Bradley)条件を満たす限り、対称窓w
n=w2N-1-nについて、変換は可逆的なままである(即ち、TDACが機能する)

様々な窓関数が使用される。修正重複変換として知られている形式を生成する窓が以下
の式によって与えられ、

その窓がMP3及びMPEG-2AACに使用され、

がVorbisに使用される。AC-3はカイザー・ベッセル派生(KBD)窓を使用し
、MPEG-4AACもKBD窓を使用することができる。
【0051】
MDCTに適用される窓は、プリンセン-ブラッドリー条件を満たさなければならない
ため、信号分析のいくつかの他のタイプに使用される窓とは異なることに留意されたい。
この違いの理由の1つは、MDCT窓が、MDCT(分析)及びIMDCT(合成)の両
方のために、2回適用されることである。
【0052】
定義を調べれば分かるように、偶数Nについて、MDCTは基本的にDCT-IVと等
価であり、入力はN/2だけシフトされ、2N個のデータブロックが一度に変換される。
この等価性をより慎重に研究することによって、TDACのような重要な特性を容易に導
き出すことができる。
【0053】
DCT-IVに対する正確な関係を定義するためには、DCT-IVは、偶数/奇数の
交互の境界条件に対応することを認識しなければならない。即ち、(DFTの場合のよう
な周期的な境界ではなく)左の境界(n=-1/2周辺)では偶数であり、右の境界(n
=N-1/2周辺)では奇数である、等である。この関係は、以下の恒等式から得られる


そして、
【0054】
従って、その入力が長さNのアレ-xである場合、このアレ-を(x,-xR,-x,
xR,...)等に拡張することを考えることができ、ここで、xRは逆順になったxを
示す。
【0055】
2N個の入力とN個の出力とを有するMDCTを考察する。ここで、この入力をサイズ
が各々N/2である4つのブロック(a,b,c,d)に分割する。もし、これらのブロ
ックを(MDCTの定義における+N/2項から)N/2だけ右にシフトすると、(b,
c,d)は、N個のDCT-IV入力の端部を過ぎて拡張し、そのため、上述した境界条
件に従って、これらのブロックを「畳み」戻さなければならない。
【0056】
従って、2N個の入力(a,b,c,d)のMDCTは、N個の入力(-cR-d,a
-bR)のDCT-IVと正しく等価であり、ここで、Rは上記のような反転を示す。
【0057】
(このように、DCT-IVを計算するための任意のアルゴリズムは、MDCTに自明
に適用することができる。)同様に、上記IMDCT式はDCT-IV(上記IMDCT
式自体の逆変換である)の正確に1/2であり、その出力は(境界条件を介して)長さ2
Nに拡張され、N/2だけ左にシフトし戻される。この逆DCT-IVは単純に、上記か
ら入力(-cR-d,abR)を戻す。このIMDCTが境界条件を介して拡張されシフ
トされると、以下が得られる。
IMDCT(MDCT(a,b,c,d))=(a-bR,b-aR,c+dR,d+
cR)/2
【0058】
b-aR=-(a-bR)Rであり、最後の2項についても同様であるため、IMDC
T出力の半分は冗長である。この入力をサイズNのより大きいブロックA、B、ここでA
=(a,b)及びB=(c,d)、にグループ化すると、この結果は以下のように単純に
書くことができる。
IMDCT(MDCT(A,B))=(A-AR,B+BR)/2
【0059】
ここで、TDACがどのように機能するかを理解することができる。時間的に隣接した
50%オーバーラップしている2N個のブロック(B,C)のMDCTを計算すると仮定
する。このとき、IMDCTは上記と同様に次式をもたらす。
(B-BR,C+CR)/2
このIMDCTが、オーバーラップしている半部における先行するIMDCT結果と加
算されると、反転した項が打ち消し合って単純にBが得られ、元のデータが回復される。
【0060】
ここで、用語「時間ドメイン・エイリアシング消去」の起源が明らかになる。論理的D
CT-IVの境界を超えて拡張する入力データを使用することによって、ナイキスト周波
数を超える周波数がより低い周波数にエイリアシングされるのと同じように、データがエ
イリアシングされるが、このエイリアシングは、周波数ドメインではなく時間ドメインに
おいて行われるという点が異なっている。a及びbRの(a,b,c,d)のMDCTに
対する寄与分、又は同等に、
IMDCT(MDCT(a,b,c,d))=(a-bR,b-aR,c+dR,d+c
R)/2
の結果に対する寄与分を区別することはできない。組合せc-dR等は、それらが加算さ
れるときに、それらの組合せを打ち消すための正確に適切な正負符号を有する。
【0061】
奇数N(実際に使用されるのは稀である)について、N/2は整数ではなく、そのため
MDCTは単純にDCT-IVのシフト置換ではない。この場合、半サンプルだけ更にシ
フトすることは、MDCT/IMDCTがDCT-III/IIと等価になり、分析が上
記と類似していることを意味する。
【0062】
2N個の入力(a,b,c,d)のMDCTがN個の入力(-cR-d,a-bR)の
DCT-IVと正しく等価であることは、上段で見てきた。DCT-IVは、右境界にお
ける関数が奇関数である事例のために設計されており、それ故、右境界に近い値は0に近
い。入力信号が平滑である場合、これが当てはまる。a及びbRの最右端の成分は入力シ
ーケンス(a,b,c,d)内で連続しており、それ故、それらの差は小さい。その間隔
の中央に注目すると、上記式を
(-cR-d,a-bR)=(-d,a)-(b,c)R
と書き直す場合、第2の項(b,c)Rが中央において平滑な遷移を与える。しかしなが
ら、第1の項(-d,a)には、-dの右端がaの左端と交わるような潜在的な不連続性
がある。これが入力シーケンス(a,b,c,d)の境界付近の成分を0に向けて低減す
る窓関数を使用する理由である。
【0063】
上記において、通常のMDCTについてのTDAC特性が証明された。TDAC特性は
、時間的に隣接するブロックのIMDCTをそれらのオーバーラップしている半分におい
て加算することによって、元のデータが復元されることを示している。窓掛けされたMD
CTについてこの反転特性を導出することは、ほんの僅かながら更に複雑である。
【0064】
サイズNのブロックA、B、Cについて、オーバーラップしている連続した2N個の入
力から成る集合(A,B)及び(B,C)を考察する。上述の説明から、(A,B)及び
(B,C)がMDCT変換され、IMDCT変換され、それらのオーバーラップしている
半分において加算された場合、元のデータである
(B+BR)/2+(B-BR)/2=B
が得られることを想起されたい。ここで、MDCT入力及びIMDCT出力の両方に長さ
2Nの窓関数を乗算すると仮定する。上述のように対称窓関数を想定し、それ故、その関
数の形式は(W,WR)であり、Wは長さNのベクトルであり、Rは前出のように反転を
示す。このとき、プリンセン-ブラッドリー条件は
W+WR 2=(1,1,...)
と書くことができ、2乗及び加算が要素毎に実施される。
【0065】
従って、(A,B)をMDCT変換する代わりに、ここでは(WA,WRB)をMDC
T変換し、全ての乗算が要素毎に実施される。この結果はIMDCT変換され、窓関数に
よって再び(要素毎に)乗算されると、最後のNの半部は以下のようになる。
R・(WRB+(WRB)R)=WR・(WRB+WBR)=WR 2B+WWRR
【0066】
(窓掛けされた事例においてIMDCT正規化は2の倍数分だけ異なるため、もはや1
/2を乗算しないことに留意されたい。)
【0067】
同様に、(B,C)の窓掛けされたMDCT及びIMDCTによって、その最初のNの
半部において以下がもたらされる。
W・(WB-WRR)=W2B-WWRR
【0068】
これら2つの半分を共に加算すると、元のデータが復元される。
【0069】
上記のMDCTの説明では、同一の分析/合成窓について説明している。非対称窓の場
合、分析/合成窓は異なるが、好ましくは、互いに対称である。その場合、プリンセン-
ブラッドリー(Princen-Bradley)条件は、より一般的な方程式に変化する。
【0070】
図1Bは、符号化された信号のための入力150を有するデコーダーの実施例を示し、
入力インターフェース152は、一方で、符号化された形態のオーディオ信号154を提
供し、他方で、サイド情報を分析器202に提供する。分析器202は、符号化信号15
0から窓情報160を抽出し、この窓情報を窓コンストラクタ206に供給する。さらに
、符号化されたオーディオ信号154は、図2の復号化処理部214に対応するデコーダ
ーまたは復号化処理部156に入力され、窓コンストラクタ206は、制御可能な変換器
158に窓を提供し、これは、IMDCTまたはIMDSTまたはエイリアシング導入順
方向変換とは、逆の他の変換を実行するように構成されている。
【0071】
図1Cは、制御可能な変換部158のデコーダー側の好適な実施形態を示す。特に制御
可能な変換部158は、周波数-時間変換部170と、続いて接続されている合成窓掛け
部172と、最後のオーバーラップ加算部174とを含む。特に、周波数-時間変換部は
、DCT-IV変換のような変換及び後続の逆畳み込み演算を実施し、それによって、周
波数-時間変換部への入力が例示的にN個のスペクトル値であったのに対して、周波数-
時間変換部170の出力は、第1の又は長い窓について2N個のサンプルを有するように
なる。他方、周波数-時間変換部への入力がN/8個のスペクトル値であるとき、出力は
例示的にMDCT操作についてN/4個の時間ドメイン値となる。
【0072】
その後、周波数-時間変換部170の出力は合成窓掛け部に入力され、合成窓掛け部は
、好ましくはエンコーダー側の窓と正確に同じである合成窓を適用する。従って各サンプ
ルは、オーバーラップ加算が実施される前に、2つの窓によって窓掛けされ、結果として
得られる「合計の窓掛け」は、前述したようなプリンセン-ブラッドリー条件が満たされ
るように、対応する窓係数の2乗である。
【0073】
最後に、オーバーラップ加算部174が、最終的に出力175において復号化された(
復号化済み)オーディオ信号を得るために、対応する正確なオーバーラップ加算を実施す
る。
【0074】
図1Dは、モバイル機器と共に実装されている本発明の更なる実施形態を示す。このモ
バイル機器は、一方ではエンコーダー195を備え、他方ではデコーダー196を備える
。更に、本発明の好適な実施形態によれば、エンコーダー195に使用される窓とデコー
ダー196に使用される窓とは互いに同一であるため、エンコーダー105及びデコーダ
ー106の両方が単一のメモリー197のみから同じ窓情報を取り出す。従って、デコー
ダーは、単一セットの窓シーケンス又は窓のみがエンコーダー及びデコーダーの両方に使
用するために格納されている、読み出し専用メモリー197若しくはランダムアクセスメ
モリー又は一般的に任意のメモリー197を有する。単一セットしか必要としないことは
、種々の窓のための種々の窓係数をエンコーダーのために1セット及びデコーダーのため
に1セットとして2回格納する必要がない、という事実に起因して、有利である。本発明
によれば、同一の窓及び窓シーケンスがエンコーダー及びデコーダーに使用されるという
事実に起因して、単一セットの窓係数のみが格納されればよい。従って、図1Dに示す本
発明のモバイル機器のメモリー使用量は、エンコーダー及びデコーダーが異なる窓を有す
るか、又は窓掛け操作以外の処理による特定の後処理が実施される他の概念と比較して、
大幅に低減されている。
【0075】
その後、好適な窓は、図8Aに関して述べられる。それは、第1のオーバーラップ部分
800、第2のオーバーラップ部分802、高い値を有する更なる部分804および低い
値を有する更なる部分806を備える。部分804の高い値は1.0の値であるか、また
は、少なくとも0.95より大きく、そして、低い部分806の低い値は、0.0に等し
く、そして、好ましくは0.1未満である。この実施形態では、非対称分析窓の長さは4
0msであり、これは好ましくは、50%の重複加算が使用されるという事実のために2
0msのブロックサイズをもたらす。しかし、他のオーバーラップ率なども同様に使用す
ることができる。
【0076】
この特定の実施形態では、第1のオーバーラップ部分800は、低い遅延実施を可能に
する第2のオーバーラップ部分802よりも大きく、さらに、低い部分806が第2のオ
ーバーラップ部分に先行するという事実の文脈において、図8Aに図示された非対称分析
窓は、ゼロ部分と短い第2のオーバーラップ部分802による低い遅延フィルタリングが
可能であり、さらに長い第1のオーバーラップ部分800のためにかなり良好な分離を有
する。しかし、この長いオーバーラップ部分は、非対称分析窓の最初の半分にあるという
事実のために、追加の遅延を引き起こさない。特定の実施形態では、第1のオーバーラッ
プ部分800は、14.375msに等しく、第2の非オーバーラップ部分または高い部
分は、11.25msに等しく、第3のオーバーラップ部分または第2のオーバーラップ
部分802は、8.75msに等しく、最後の第4の部分または低い部分は、5.625
msに等しい。
【0077】
図8Bは、対応する非対称合成窓を示しており、ここでは、第1の部分810としてゼ
ロまたは低い部分があり、それから、第1のオーバーラップ部分812と、第2のオーバ
ーラップ部分814と、一定の部分または第1のオーバーラップ部分812と第2のオー
バーラップ部分814との間に示される高い部分816とを有する。
【0078】
対応する部分の例示的な長さが示されているが、第1のオーバーラップ部分812が、
第2のオーバーラップ部分814よりも短いことが一般に好ましく、また、一定部分また
は高い部分816の長さは、第1のオーバーラップ部分および第2のオーバーラップ部分
の長さの間にあることがさらに好ましく、第1の部分810またはゼロ部分の長さは、第
1のオーバーラップ部分812の長さよりも小さいことがさらに好ましい。
【0079】
図8Aに示すように、第1のオーバーラップ部分800の長さは、第2のオーバーラッ
プ部分802の長さよりも長く、高い部分804の長さは、第2のオーバーラップ部分8
02と第1のオーバーラップ部分800との間の長さであり、第4の部分806の長さは
、第2のオーバーラップ部分802の長さよりも短い。
【0080】
図8Aおよび図8Bは、さらに、長いブロックのみが使用され、いずれの切り替えも図
2の窓御信号204によって示されない場合、先行する非対称分析窓807および後続の
分析窓808とのオーバーラップを示す。
【0081】
同様に、図8Bは、対応する合成シーケンスを先行する合成窓819および後続の合成
窓820で例示する。
【0082】
さらに、図8Cは、図8Aの同じ分析窓を示しているが、エンコーダー側の畳み込み演
算で畳み込まれる畳み込み部分821、822を備えるか、またはデコーダー側で逆畳み
込みされた「逆畳み込み」である。これらの畳み込み821、822は、畳み込みライン
823および824に沿って行われると考えることができ、これらの線も図8A、8Bに
示されており、畳み込みラインは、図8Aおよび8Bの窓の交差点と直接一致しないよう
に見える。これは、図8Aの分析窓または図8Bの合成窓の非対称特性に起因する。
【0083】
図9Aは、10msのブロック長さに対して、3.75msのオーバーラップを有する
対称分析/合成窓を示す。対称分析窓は、第1の低い部分又はゼロ部分900、第1のオ
ーバーラップ部分902、第2のオーバーラップ部分904、高い部分又は一定部分90
6、および、更なる低い部分又はゼロ部分908を含む。また、図9Aは、畳み込みライ
ン910、911を示している。ここで、MDCTまたはMDSTのようなエイリアシン
グ導入変換によって必要とされる畳み込み演算が実行される。具体的には、エンコーダー
側処理については、畳み込み演算を行い、デコーダー側オーディオ処理については、逆畳
み込み演算を実行する。したがって、線912、913は、左側に関して部分900に対
応する減少部分およびその後のゼロ部分を有し、右側に対して908を有する畳み込み部
分を示す。したがって、マーカー915は、左畳み込み部分912と右畳み込み部分91
3との間の境界を示す。したがって、線912、913は、畳み込み部分を示し、それは
、減少する部分と、左側については部分900および右側については部分908に対応す
る後続のゼロ部分と、を含む。したがって、マーカー915は、左畳み込み部分912と
右畳み込み部分913との間の境界を示す。
【0084】
これに関連して、図9Aは、真に対称な分析または合成窓を示していることが概説され
ている。なぜなら、左オーバーラップ部分と右オーバーラップ部分は互いに対称的である
からである。すなわち、本実施形態では、3.75msの同じオーバーラップ長を有する
からである。一般に、ゼロ部分900,908をオーバーラップ部分902,904より
も小さくすることが好ましく、その結果、両方のゼロ部分900、908が同じ長さを有
する場合、高い部分906は、単一のゼロ部分の長さの2倍を有する。
【0085】
図9Bは、左右対称のオーバーラップを有する窓を示しているが、左側と右側が異なる
。特に、この窓は、図9Aと同様に、ゼロ部分920、第1のオーバーラップ部分922
、一定のまたは高い部分924、第2のオーバーラップ部分926および第2のゼロ部分
または低い部分928を有する。再度、畳み込みライン910および911が示され、ま
た、マーカー915は、左畳み込み部分929と右畳み込み部分930との間の境界を示
す。図示されているように、左オーバーラップ部分922は、1.25msなどの短いオ
ーバーラップ用であり、右オーバーラップ部分926は、3.75msなどのより長いオ
ーバーラップ用です。したがって、この窓は、短いオーバーラップ窓を有する窓掛けから
より高いオーバーラップ窓への遷移窓であるが、このような窓は、両方とも、対称のオー
バーラップを有する窓である。
【0086】
図9Cは、更なる窓を示しているが、示されるように10msの時間分に対応する5m
sのブロックサイズを有する。この窓は、図9Bに類似しているが、実質的に異なる時間
長さを有し、従って、図9の窓は、より短い時間分を有するが、再びゼロ部分のシーケン
ス、短いオーバーラップを有する左オーバーラップ部分、高い部分、後続の第2のオーバ
ーラップ部分および最終ゼロ部分を含む。さらに、図9Cに畳み込みラインおよび畳み込
み部分などが再び示されている。
【0087】
一般に、図8Aから図15Bまでの窓の図の大部分は、図9Aの910と911のよう
な畳み込みラインを示し、さらに図9Aの912と913のような畳み込まれた外側窓部
分を有する。
【0088】
さらに、対応する変形長さは、畳み込みポイント間の距離に対応することが概説されて
いる。例えば、図9Aを考慮すると、変換長は、15msと5msとの間の差を有する1
0msに相当することが明らかになる。したがって、変換長は、図9Aおよび他の図の「
ブロック」の表記に対応する。しかしながら、実際に窓掛けされた時間部分は、図9A
実施形態において、20msのような変換またはブロック長さの2倍である。
【0089】
これに対応して、図9Cの窓は、図9Cに示すように10msの窓時間部分の長さに対
応する5msの変換長を有する。
【0090】
図8Aに示す非対称の場合、変換長またはブロックサイズは、やはり、823および8
24のような畳み込みラインの間の距離であり、したがって20msであり、窓時間部分
の長さは40msである。
【0091】
完璧な再構成に必要なことは、(合成側の)800または814のような非対称窓の長
いオーバーラップ部分または窓エッジがトランケートされたときに、畳み込みラインまた
は畳み込みポイントを維持することである。
【0092】
さらに、図4に関して具体的に概説されるように、本実施形態は、6つの異なるサンプ
リングレートを使用し、その長さがサンプリングレートの各々についてのサンプリング値
の整数個に対応するように、窓エッジまたは窓側面の長さが選択される。
【0093】
さらに、10msの変換では、3.75msのオーバーラップまたは1.25msのオ
ーバーラップが使用されることが概説されている。したがって、図8Aから図15Bの窓
の図に示されているものよりも多くの組み合わせが可能であり、有用であり、特定の部分
に過渡部分を有する特定のオーディオ信号に対して最適な窓シーケンスが選択されること
を確認するために、窓制御信号によって通知される。
【0094】
図10Aは、この遷移窓またはより長い第1の窓に続く第2の窓を示す。図10Aにお
いて、左側は、14.375msである非対称分析窓800の長いエッジの元の長さから
8.75msの長さにトランケートされている。したがって、図10Aは、第1の非対称
窓の第1のオーバーラップ部分800からトランケーションによって導出された第1のオ
ーバーラップ部分1000を示す。さらに、図10Aの分析遷移窓は、1.25msの右
オーバーラップ部分、すなわち、短いオーバーラップ部分1002をさらに含む。この窓
は、10msの窓長さに対応する5msのブロックサイズ用です。畳み込みラインは、4
.375msで示されており、すなわち、1006で示されている1004および9.3
75msである。さらに、左畳み込みライン1004のための畳み込み部分1008およ
び右畳み込みライン1006のための畳み込み部分1010が示されている。
【0095】
図10Bは、フェードインが使用される好ましい実施形態の実施を示す。したがって、
第1のオーバーラップ部分は、図10Aの第1のオーバーラップ部分1000に対応する
異なる第1の部分1012および未修正の第2の部分1014を有する。窓は、図10A
に関して異なるものではない。好ましくは、図10Bにおいて、1012で示される第1
のオーバーラップ部分の第1の部分を計算するために、1.25msのサイン・オーバー
ラップ部分、すなわち、例えば図9Bにおいて、922で示される部分が使用される。し
たがって、短い窓の第1のオーバーラップ部分922が、ある意味では「リサイクル」さ
れた非常に良好なフェードイン特性が得られる。したがって、この窓部分は、図9Bの場
合のように、窓掛けのために使用されるだけでなく、トランケートによって生じるアーテ
ィファクトを低減するために、分析遷移窓の実際の計算のためにも使用される。完全な再
構成特性は、図10Aの実際にトランケートされた第1のオーバーラップ部分1000が
使用される場合にのみ得られるが、フェードイン部分を有する図10Bの遷移窓を使用す
ることによって、オーディオ品質を高めることができることが分かった。それにもかかわ
らず、完全な再構成特性に違反するが、このフェードイン部分は、図10Aの左オーバー
ラップ部分1000の左側の不連続性が排除されているため、図10Aの実施形態と比較
してより良いオーディオ品質をもたらす。それにもかかわらず、正弦関数とは異なる他の
フェードインまたは(合成側に関して)フェードアウト特性は、利用可能で有用であれば
使用することができる。
【0096】
図10cは、図10aの窓の表現を例示する、しかし、現在、右側のオーバーラップ部
を示しているオーバーラップする状況で、前の窓および左の内の1020は1022で次
の窓の部分に重なる。
概して、右側のオーバーラップ部分1020は図8aの非対称の分析窓の右側部分80
2である、そして、次であるか次の窓の内の1022は、窓の第1のオーバーラップ部分
であるかまたは場合によっては更なる遷移窓の左のオーバーラップ部分である。
【0097】
図10Dは、図10Bと同様の状況を示しているが、先行する窓の第2のオーバーラッ
プ部分1020と、後続の窓の第1のオーバーラップ部分1022が示されている。
【0098】
図11Aは、さらなる分析遷移窓を示すが、図10Aとは対照的に、ここで、20ms
のブロックから10msのブロックへの遷移について、20msのブロックから5msの
ブロックへの遷移が示されている。一般に、20msのブロックは、ロングブロックとみ
なすことができ、5msのブロックは、ショートブロックとみなすことができ、10ms
のブロックは、ミドルブロックとみなすことができる。第1のオーバーラップ部分110
0は、トランケートされているが、わずかな量であり、トランケーションは、1150で
示されている。しかしながら、オーディオ品質をさらに向上させるために、1.25ms
のサインエッジを乗算することによって得られるフェードインは、既に適用されており、
フェードインは実線で示されている。さらに、窓は、高い部分1101と、この場合、3
.75msの長いオーバーラップ部分である第2のオーバーラップ部分1102とを有す
る。したがって、図11Aは、図2の「第2の窓」に対応する最適分析遷移窓を、20m
sの変換長から10msの変換長まで対応させて示しており、ここで、左オーバーラップ
部分1100は、非対称窓の長いエッジ800の可能な限り小さなトランケーションによ
って得られ、加えて、1.25msのサインエッジによりトランケートされたエッジ10
50を乗算することによってフェードインが実行される。説したように、右オーバーラッ
プは、3.75msである。
【0099】
図11Bは、20msの変換長から10msの変換長、すなわち、一般に長い変換長か
ら短い変換長への遷移のために代替分析遷移窓を示す。しかし、左のオーバーラップは、
非対称窓の左端をトランケートして、さらに1.25msのサインエッジを使用して乗算
することによりフェードインを実行することによって、わずか8.75msになる。した
がって、図10Aの場合と同様に、オーバーラップまたは左オーバーラップ部分1130
は、8.75msとなる。この窓を適用するために、さらなる変更が行われる。これらの
変更は、第1の低い部分又はゼロ部分1131、第2の高い部分又は一定部分1132お
よび第3または低い部分1133であり、第2のオーバーラップ部分1134は、図11
Aの対応する部分1102と同様であるが、第4のゼロまたは低い部分1133のために
左にシフトされる。さらに、畳み込みライン1104、1106が示され、マーカー11
35が左畳み込み部分1136と右畳み込み部分1137との境界を示す畳み込み部分が
示されている。部分1131、1132、1133の長さは、図11Aのように可能な限
り最小限のトランケーションが行われるという事実によって決定される。例示的には、部
分1131をゼロに設定することができ、1132と1133の長さを対応して増加させ
ることができる。一方、1133の長さはゼロに設定することができ、したがって、11
31の長さは、対応して増加させることができ、または全ての部分1131,1132,
1133は、ゼロとは異なるが、対応する長さは、図11Bの実施形態と異なる。すべて
のこれらの異なる窓の実施において、畳み込みライン1104、1106を介した畳み込
みが対応して可能であることが確実にされるべきであり、第1のオーバーラップ部分11
30の計算が、実際的な実施を容易にする図10Bの左部分1104、1012の計算と
同様である図11Aに関して、利点を有する。しかし、これらの問題が顕著でない場合、
図11Aの窓を使用することができる。なぜならば、第1のオーバーラップ部分のより長
いオーバーラップは、より良い再構成特性を実行し、完全な再構成特性の法則にさらに近
くなるからである。
【0100】
図12Aおよび図12Bは、より短い窓の長さからより長い窓の長へのさらなる分析遷
移窓を示す。5msから20msへの遷移について、そのような分析遷移窓の1つが図1
2aに示されている。左オーバーラップ部分1200は、例えば、1.25msの短いオ
ーバーラップ用であり、右オーバーラップ部分は、8.75msなどの長いオーバーラッ
プ用であり、1202で示されている。図12Bは、10msのブロックから20msの
ブロックへのさらなる分析遷移窓を示す。左オーバーラップ部分は1210で示され、右
オーバーラップ部分は1212で示される。左側のオーバーラップ部分は、3.75ms
の媒体オーバーラップ用であり、右側のオーバーラップ部分は、長いまたは8.75ms
の高いオーバーラップ用である。再び、畳み込みラインおよび畳み込み部分が示されてい
る。図12Bは、オーバーラップ部分1210、1212、左側の低いまたはゼロ部分1
214、中間の高いまたは一定部分1216および右側の低いまたはゼロ部分1218に
加えて、10から20msの分析遷移窓があることを明らかにする。
【0101】
図12Aの右側のオーバーラップ部分1212および図12Bの右側のオーバーラップ
部分1202は、図8Aの802に示される非対称の分析窓の短い端に対応する。
【0102】
図13A図13B図13Cおよび図13Dは、合成側の状況、すなわち、図2また
はケースBの観点からの第3の窓の構成を示す。さらに、図13Aの状況は、図12A
状況に類似している。図13Bの状況は、図12Bの状況に類似している。図13Cの状
況は、図10Bに類似しており、図13Dの状況は、図10Cに類似している。
【0103】
特に、図13Aは、左側の長いオーバーラップ部分1300および右側のオーバーラッ
プ部分1302と、対応する畳み込みラインおよび畳み込み部分とを示すロングブロック
からショートブロックへの合成遷移窓を示している。
【0104】
図13Bは、20msのブロックから10msのブロックへの合成遷移窓を示しており
、左側のオーバーラップは、再び1310で示された長いオーバーラップであり、右側の
オーバーラップは、1312であり、さらに第1の低い部分1314、第2の高い部分1
316および必要に応じて第3の低い部分1318が設けられている。
【0105】
図13Cは、第2のオーバーラップ部分1330が示されている図2のケースBの文脈
で例示される第3の合成窓を示す。それは、8.75の長さ、すなわち図8Bの非対称合
成窓の右側または第2のオーバーラップ部分の長さにトランケートされ、すなわち、右側
のオーバーラップ部分814は、合成変移窓の右側のオーバーラップ部分1330を得る
ためにトランケートされ、図13Cの状況では、図10Bに関して分析側で論じたものと
基本的に同様の更なるフェードアウトが実行されている。これは、図2のケースBの第3
の窓の第2のオーバーラップ部分1330の状況を示しているが、フェードアウトではな
く、トランケーションのみで表示される。したがって、図13Cの第1の部分1331は
図13Dの対応する第1の部分と同様であるが、しかし、第2の部分1332は、フェ
ードアウトのために、図13Dのトランケートされた窓により、1.25msのサインエ
ッジの下降を乗算することによって異なる。
【0106】
さらに、図13Dは、図2の文脈における「第4の窓」に対応する次の合成窓の第1の
オーバーラップ部分1340を示し、そして、さらに、図13Dは、前の窓の第2のオー
バーラップ部分1342、すなわち、第2のオーバーラップ部分1330および第1のオ
ーバーラップ部分1331からなる第3の窓の前の窓、例えば1.25msの短いオーバ
ーラップに対応する窓を示す。
【0107】
図示されていないが、図11A、11Bの状況に対応する合成窓、すなわち、図11A
に類似してフェードインを伴う、または伴わない、最小トランケーションを有する合成窓
または図13Dと同じ種類のトランケーションを有する合成窓が有用であるが、しかし、
今や第1および第2のゼロまたは低い部分および中間の定数部分を有する。
【0108】
図14Aは、ブロックサイズが長い、短い、短い、中間の、長い、を有する窓を備えた
分析窓シーケンスを示し、そして、対応する合成窓シーケンスが図14Bに示される。図
2の用語の第2の窓は1402で示され、この窓は、図10Bに示された窓に対応する。
これに対応して、図2の第3の窓関数1450に対応するマッチング合成窓は、特定の図
には示されていない合成関数であるが、図11Bの分析関数である。
【0109】
さらに、図15Aにおいて、1502は、図11Bに具体的に示され、図15Bの第3
の窓関数1550は、図13Cの合成窓関数に対応する。
【0110】
したがって、図14Aは、1406で示された20msの非常に長い第1の非対称窓か
ら、図8Aのゼロ部分806も示されている第1の非対称窓関数1400への遷移を示す
図14Aでは、長い非対称窓1400に続き、その後、トランケートされた第1のオー
バーラップ部分1402を有する第2の窓関数が示されている。次の窓1408は、図9
Bの窓と同様であり、次の窓1410は、図9Cの窓に対応し、最後に窓1412は、再
び、図8Aの非対称分析窓である。
【0111】
図14Bは、図8に対応する長い合成窓1454と、図8Bに再び対応する更に非対称
の合成窓1456とを例示し、それから、図13Aに対応する短い遷移窓1458が例示
される。次の窓1460は、また、図9Cに対応する5msのブロックサイズを有する短
い窓でもある。
【0112】
図15Aおよび図15Bは、同様の窓シーケンスを示すが、長い窓から10msの長さ
で反対の遷移を有する中間の窓への遷移を有する。窓1504および1500は、図8A
に対応する。トランケートされてフェードインされた本発明の窓1502の後に、示され
た順序で、窓1506、1508および1510が続く。窓1506は、図9Bの窓に対
応するが、左側への長いオーバーラップおよび右側への短いオーバーラップを有する。窓
1508は、図12Aの窓に対応し、窓1510は、再び長い非対称窓である。
【0113】
図15Bの合成窓シーケンスに関して、窓1554、1556、1558および156
0がある。1554は、図8Bの合成窓に対応し、窓1556についても同様である。窓
1558は、20から10への遷移であり、図13Bに対応する。窓1560は、10か
ら5への遷移であり、図9Bに対応するが、もう一度、右側にオーバーラップする左側へ
の長いオーバーラップを伴う。トランケートされてフェードアウトする本発明の窓155
0に続いて、再び、長い非対称合成窓が後に続く。
【0114】
続いて、窓コンストラクタ206の好適な実施例が図3の文脈で議論される。特に、窓
コンストラクタは、好ましくは、メモリー300と、窓部分トランケータ302と、フェ
ーダ304とを備える。例えば第1の窓から第2の窓へ又は第3の窓から第4の窓への遷
移を示すアイテム310に示された窓制御情報に応じて、窓部分トランケータ302が起
動される。トランケータは、非対称窓の部分800を取得するため、または第4の窓の第
2のオーバーラップ部分814を取得するために、メモリーにアクセスする。この部分は
、取得ライン308によってメモリー300から窓部分トランケータに取り出される。窓
部分トランケータ302は、説明したような最大のトランケーション長さなどの特定の長
さ、または最大長さよりも短いトランケーションを実施する。トランケートされたオーバ
ーラップ部分または窓エッジ316は、フェーダ304に伝送される。それから、フェー
ダは、フェードインまたはフェードアウト操作、すなわち図10Bの窓に到着する操作、
例えばフェードインなしにトランケートされた窓を示す図10Cの窓からの操作を実行す
る。この目的のために、フェーダは、取得ライン312を介して、短いオーバーラップ部
分のメモリーから、アクセスライン314を介してメモリーにアクセスする。次いで、フ
ェーダ304は、例えばトランケートさられた部分にオーバーラップ部分を乗算すること
によって、ライン316からトランケートされた窓部分でフェードインまたはフェードア
ウト操作を実行する。出力は、出力ライン318において、トランケートされ、フェード
した部分である。
【0115】
図4は、メモリー300の好ましい実施、窓コンストラクタによる窓構成、および窓の
様々な形状および可能性が、最小メモリー使用量を有するように最適化されていることを
示している。本発明の好ましい実施形態は、48kHz、32kHz、25.66kHz
、16kHz、12.8kHzまたは8kHzの6つのサンプリングレートの使用を可能
にする。各サンプリングレートに対して、1組の窓係数または窓部分が格納される。これ
は、20msの非対称窓の第1の部分、20msの非対称窓の第2の部分、3.75ms
のオーバーラップ部分などの10msの対称窓の単一部分および1.25msのオーバー
ラップ部分のような5msの対称窓の単一部分を含む。典型的には、10msの対称窓の
単一の部分は、窓の上向きのエッジであり、ミラーリングなどの直接的な算術演算または
論理演算によって、下降部分を計算することができる。あるいは、降下部分が単一部分と
してメモリー300に格納される場合、ミラーリングによって、または一般的には算術演
算または論理演算によって上昇部分を計算することができる。5msの対称窓の単一部分
についても同様である。当然のことながら、5または190msの長さを有するすべての
窓は、3.75msのような媒体のオーバーラップ部分、または、例えば、1.25ms
の長さを有する短いオーバーラップ部分を有することが可能である。
【0116】
さらに、窓コンストラクタは、対応する所定の規則に従って、図8Aから図15Bのプ
ロットに示されているように、それ自体で、特定の窓の低いまたはゼロ部分および高いま
たは一部分の長さおよび位置を決定するように構成される。
【0117】
このように、メモリー要件の唯一の最小量は、エンコーダーおよびデコーダーを実現す
るために必要である。それゆえ、エンコーダーおよびデコーダーが1つの同じメモリー3
00に依存することを除けば、異なる窓および遷移窓などの浪費量でさえ、各サンプリン
グレートに対して4組の窓係数を格納することによってのみ実現することができる。
【0118】
上で概説した変換窓の切り替えは、長い変換のための非対称窓と短い変換のための低い
オーバーラップ正弦窓を使用するオーディオ符号化システムにおいて実施された。ブロッ
ク長さは、ロングブロックの場合は、20ms、ショートブロックの場合は、10msま
たは5msである。非対称分析窓の左側のオーバーラップは、14.375msの長さを
有し、右側のオーバーラップ長は、8.75msである。短い窓は、3.75msと1.
25msのオーバーラップを使用する。エンコーダー側で20msから10msまたは5
msの変換長に遷移するために、非対称分析窓の左側のオーバーラップ部分は、8.75
msにトランケートさられ、最初の短い変換の左側の窓部分に使用される。1.25ms
の正弦波形状のフェードインは、トランケートされた窓の左端に1.25msの短い窓オ
ーバーラップを乗算することによって適用される。フェードインのために1.25msの
オーバーラップ窓形状を再利用することで、フェードイン形状のオンザフライ計算のため
の複雑さと同様に、追加のROM/RAMテーブルの必要性が回避される。図14Aは、
変換長シーケンス20ms、5ms、5ms、10ms、20msを有する実施例の結果
として生じる窓シーケンスを示す。
【0119】
デコーダー側では、10msまたは5msから20msの変換長に遷移する/移行する
ために、非対称合成窓の右側のオーバーラップ部分が8.75msにトランケートされ、
最後の短い変換の右側の窓部分に使用される。エンコーダー側でのフェードインと同様の
1.25msの正弦波形状のフェードアウトがトランケートされた窓の端に適用される。
上記の実施例に対するデコーダー窓シーケンスは、図14Bに示されている。
【0120】
図5は、第2の窓、すなわち、図2のケースAの分析遷移窓を決定するためのさらなる
実施形態のフローチャートを示す。ステップ500において、非対称窓の第1および第2
の部分が取得される。ステップ502において、非対称な第1の分析窓が構築される。し
たがって、図14の分析窓1400または図15Aの1500が生成される。ステップ5
04において、非対称窓の第1の部分は、例えば図3の308で示される取得ラインによ
って取得される。ステップ506において、遷移長さが決定され、遷移は、図3の窓部分
トランケータ302などによって実行される。ステップ508において、メモリー300
に格納されたアイテム401のような5msの対称窓の単一部分が取得される。ステップ
510では、例えば、図3のフェーダ304の操作によって、トランケートされた部分の
フェードインが計算される。ここで、第1のオーバーラップ部分が完成する。ステップ5
12において、例えば長い窓から短い窓への遷移のために、5msの対称窓の単一部分が
取得されるか、または10msの対称窓の単一の部分が、長い窓から中間の窓への遷移の
ために取得される。最後に、第2の部分は、ステップ512で取得されたデータからの論
理演算または算術演算によって決定され、ステップ514によって示される。しかし、ス
テップ512によって図4のメモリー300から取得された対応する対称窓の単一部分は
、既に、第2の部分として、すなわち、下降している窓のエッジとして使用可能である場
合、ステップ514は不要であることに留意されたい。
【0121】
図5には明示的に示されていないが、図15Aに示す遷移のような他の遷移のためにさ
らなるステップが必要とされる。ここで、第1のゼロ部分、第2のゼロ部分および中間の
高い部分は、窓コンストラクタによって追加的に挿入されなければならず、その一方で、
この挿入は、第2の窓の第1および第2のオーバーラップ部分の決定の前または後に行う
ことができる。
【0122】
図6は、第3の窓のような対応する合成遷移窓を構成するための手順の好ましい実施を
示す。このために、図6Aのステップの手順を実行することができる。ステップ600に
おいて、第3の窓の第1のオーバーラップ部分がメモリーから取得されるか、またはこの
形式で特に利用可能でない場合は、メモリー内のデータから算術演算または論理演算によ
って計算され、合成窓の第1のオーバーラップ部分は、先行する窓のオーバーラップによ
って既に固定されている。非対称窓の第2の部分、すなわち、非対称合成窓の長い部分が
取得され、ステップ604において、トランケーション長さが決定される。ステップ60
6において、この第1の部分は、必要に応じて反映され、その後、決定されたトランケー
ト長さを用いてトランケーションが実行される。ステップ608において、ステップ61
0に示すように、対称窓の5msのオーバーラップ部分の単一部分が取得され、ステップ
608に続いて、トランケートされた部分のフェードアウトが実行される。第3の窓の第
2のオーバーラップ部分が完了し、続いて、非対称の第4の窓関数の第2および第4の部
分が取得され、最後にステップ612に示すように第4の窓を得るために適用される。
【0123】
図7は、遷移長さを決定するための好ましい手順を示す。 図10Bおよび図11B
関して前に概説したように、異なるトランケーション長さを実行することができる。同一
の状況に対して、最大トランケーション長さ、すなわち図11Aの状況、または図11B
に示す最大トランケーション長さよりも短いトランケーションまでのトランケーションが
存在し得る。このために、図7の手順は、ステップ700で示された遷移窓の長さの表示
から開始する。したがって、ステップ700は、遷移窓が10msのブロックサイズ、す
なわち、20msの長さであるか、それよりも短いか、すなわち、5msのブロックサイ
ズに対して10msの長さの窓であるかどうかの情報を提供する。
【0124】
次に、ステップ702において、窓の対称オーバーラップ部分の長さが決定される。分
析側では、これは、第2のオーバーラップ部分の長さが決定されることを意味し、一方、
合成側については、これは、第1のオーバーラップ部分の長さが決定されることを意味す
る。ステップ702は、遷移窓の「固定」状況が確認されたこと、すなわち、遷移窓が対
称的なオーバーラップを有することを確認する。ここで、ステップ704において、窓の
第2のエッジまたは窓の他のオーバーラップ部分が決定される。基本的に、最大トランケ
ーション長さは、遷移窓の長さと対称オーバーラップ部分の長さとの間の差である。この
長さが非対称窓の長いエッジの長さよりも大きい場合、トランケーションは、全く必要あ
りません。しかし、この差が非対称窓の長いエッジよりも小さい場合、トランケーション
が実行される。最小トランケーション長さ、すなわち、最小トランケーションが得られる
長さは、この差に等しい。必要に応じて、図11Aまたは図10Bに示すように、この最
大長さまでのトランケーション、すなわち、最小のトランケーションを実行し、一定のフ
ェードを適用することができる。図11Aに示すように、特定の実施形態では、畳み込み
ラインが変更されるべきでないという事実のために、畳み込みライン1104、1106
に沿った畳み込みが可能であることを確実にするために、一定数のものが必要である。し
たがって、図11Aの1101に示すような一定数のものは、20ms~10msの分析
遷移窓に必要であるが、これらのものは図10Bの20ms~5msの遷移窓には必要な
い。
【0125】
しかしながら、ステップ704は、708に示すように、バイパスすることが可能であ
る。次に、最大長さよりも小さい長さへのトランケーションが、ステップ710において
実行され、図11Bの状況に至る。残りの窓部分は、0と1で満たされなければならず、
特に、ステップ712において部分1131および1133で示される窓の始めと終わり
にゼロを挿入することによって説明されなければならない。さらに、畳み込みポイント1
104および1106の周りの畳み込みが、図11Bに示すように適切に動作することを
確認するために、714に示すように、高い部分1132を得るために対応する数の1の
挿入は、実行されなければならない。
【0126】
したがって、部分1131の0の数は、第1のオーバーラップ部分1130のすぐ近く
にあるゼロの数に等しく、図11Bの部分1133におけるいくつかのゼロは、図11B
の第2のオーバーラップ部分1134に直接隣接するゼロの数に対応する。次に、畳み込
みライン1104および1106のまわりのマーカー1135による畳み込みが適切に機
能する。
【0127】
好ましい実施例が40msの窓長さに関して記載されていて、長い窓としての20ms
の長さ、中間の窓のための10msのブロックサイズおよび短い窓のための5msのブロ
ックサイズの変換長で説明されているにもかかわらず、異なるブロックまたは窓サイズを
適用され得ることが強調されている。さらに、本発明は、2つの異なるブロックサイズに
対しても有用であるが、例えば、議論されるように、過渡に対して短い窓関数を非常に良
好に配置するためには、3つの異なるブロックサイズが好ましいことが強調されるべきで
あるマルチオーバーラップ部分、すなわち、図15Aおよび図15Bまたは図14Aおよ
図14Bのシーケンスで生じる2つ以上の窓間のオーバーラップをさらに論じているP
CT/EP2014/053287に詳細に記載されている。
【0128】
本発明を実際の又は論理的ハードウエア要素を表すブロック図の文脈で説明してきたが
、本発明はコンピュータ実装された方法によって構成することもできる。後者の場合には
、ブロックは対応する方法ステップを表し、そこでは各ステップが対応する論理的又は物
理的ハードウエアブロックによって実行される機能を表している。
【0129】
これまで装置の文脈で幾つかの態様を示してきたが、これらの態様は対応する方法の説
明でもあることは明らかであり、そのブロック又は装置が方法ステップ又は方法ステップ
の特徴に対応することは明らかである。同様に、方法ステップを説明する文脈で示した態
様もまた、対応する装置の対応するブロックもしくは項目又は特徴を表している。方法ス
テップの幾つか又は全てが、例えばマイクロプロセッサ、プログラム可能なコンピュータ
、又は電子回路のようなハードウエア装置によって(又は使用して)実行されてもよい。
幾つかの実施形態では、最も重要なステップの幾つか又はそれ以上がそれら装置によって
実行されてもよい。
【0130】
本発明の伝送又は符号化される信号は、デジタル記憶媒体に格納することができ、又は
インターネットのような無線伝送媒体もしくは有線伝送媒体などの伝送媒体を通じて伝送
することができる。
【0131】
所定の構成要件にも依るが、本発明の実施形態は、ハードウエア又はソフトウエアにお
いて構成可能である。この構成は、その中に格納される電子的に読み取り可能な制御信号
を有し、本発明の各方法が実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと協
働する(又は協働可能な)、デジタル記憶媒体、例えばフレキシブルディスク,DVD,
ブルーレイ,CD,ROM,PROM,EPROM,EEPROM,フラッシュメモリー
などのデジタル記憶媒体を使用して実行することができる。したがって、デジタル記憶媒
体はコンピュータ読み取り可能であってもよい。
【0132】
本発明に従う幾つかの実施形態は、上述した方法の1つを実行するようプログラム可能
なコンピュータシステムと協働可能で、電子的に読み取り可能な制御信号を有するデータ
キャリアを含む。
【0133】
一般的に、本発明の実施例は、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品
として構成することができ、そのプログラムコードは当該コンピュータプログラム製品が
コンピュータ上で作動するときに、本発明の方法の一つを実行するよう作動可能である。
そのプログラムコードは例えば機械読み取り可能なキャリアに記憶されていても良い。
【0134】
本発明の他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するための、機械読み取り可能な
キャリアに記憶されたコンピュータプログラムを含む。
【0135】
換言すれば、本発明の方法のある実施形態は、そのコンピュータプログラムがコンピュ
ータ上で作動するときに、上述した方法の1つを実行するためのプログラムコードを有す
るコンピュータプログラムである。
【0136】
本発明の他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するために記録されたコンピュー
タプログラムを含む、データキャリア(又はデジタル記憶媒体又はコンピュータ読み取り
可能な媒体などの非一時的記憶媒体)である。そのデータキャリア、デジタル記憶媒体、
又は記録された媒体は、典型的に有形及び/又は非一時的である。
【0137】
本発明の他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するためのコンピュータプログラ
ムを表現するデータストリーム又は信号列である。そのデータストリーム又は信号列は、
例えばインターネットを介するデータ通信接続を介して伝送されるよう構成されても良い
【0138】
他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するように構成又は適応された、例えばコ
ンピュータ又はプログラム可能な論理デバイスのような処理手段を含む。
【0139】
他の実施形態は、上述した方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムがイン
ストールされたコンピュータを含む。
【0140】
本発明に従う他の実施形態は、ここで説明した方法の1つを実行するためのコンピュー
タプログラムを、受信器へ(例えば電子的に又は光学的に)伝送するよう構成された装置
又はシステムを含む。受信器は、例えばコンピュータ、携帯機器、メモリーデバイス又は
それらの類似物であってもよい。装置又はシステムは、例えばコンピュータプログラムを
受信器へと転送するファイルサーバを含んでもよい。
【0141】
幾つかの実施形態においては、(例えば書換え可能ゲートアレイのような)プログラム
可能な論理デバイスが、上述した方法の幾つか又は全ての機能を実行するために使用され
ても良い。幾つかの実施形態では、書換え可能ゲートアレイは、上述した方法の1つを実
行するためにマイクロプロセッサと協働しても良い。一般的に、そのような方法は、好適
には任意のハードウエア装置によって実行される。
【0142】
上述の実施形態は、本発明の原理の単なる例示である。本明細書に記載された構成およ
び詳細の変更および変形は、当業者には明らかであることが理解される。したがって、差
し迫った特許請求の範囲によってのみ限定され、本明細書の実施形態の説明および説明に
よって示される特定の詳細によっては限定されないことが意図される。

参照
【0143】
[1]International Organization for Standardization, ISO/IEC 14496-3, "Informat
ion Technology - Coding of audio-visual objects - Part 3: Audio," Geneva, Switze
rland, Aug. 2009.
[2]Internet Engineering Task Force (IETF), RFC 6716, "Definition of the Opus
Audio Codec," Sep. 2012.
[3]C. R. Helmrich, G. Markovic and B. Edler, "Improved Low-Delay MDCT-Based C
oding of Both Stationary and Transient Audio Signals," in Proceedings of the IEE
E 2014 Int. Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing (ICASSP), 2014
or PCT/EP2014/053287.
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15A
図15B
図16