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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び現金取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/14 20190101AFI20240123BHJP
   G07D 11/22 20190101ALI20240123BHJP
【FI】
G07D11/14
G07D11/22
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020098894
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021192203
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】村尾 佳紀
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-222721(JP,A)
【文献】特開平10-069562(JP,A)
【文献】特開2012-088998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が投入される投入部と、前記投入部を開閉するシャッタとを有する入出金部と、
前記入出金部に形成された隙間を挟んで前記投入部の反対側に配置され、前記隙間から入り込んだ異物を貯留する異物貯留部と
を有し、
前記隙間は、前記シャッタと前記投入部との間における空間か、又は、前記投入部の外部と内部とを連通させるよう配された、センサの光を通過させる孔部かの少なくとも何れか一方である
媒体処理装置。
【請求項2】
前記異物貯留部は、
前記異物を貯留する空間を形成する底板部と壁部とを有し、
前記底板部又は前記壁部の少なくとも一部分に前記空間を開閉する開閉部が形成される
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記開閉部は、開閉軸を中心に開閉可能に設けられる
請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記開閉部は、一端側に前記開閉軸が設けられ、他端側に固定部が設けられ、前記固定部が前記底板部に設けられた保持部に対し着脱可能に固定される
請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記異物貯留部は、
前記異物を貯留する空間を形成する貯留部と、
前記貯留部を下側から支持する支持部と
により構成される
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記異物貯留部は、少なくとも一部分が透明部材で構成される
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記貯留部は、少なくとも一部分が透明部材で構成される
請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記支持部は、
前記貯留部が位置する上面から、下面までに亘って、開口部が形成される
請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記支持部は、
前記貯留部に形成され前記空間を開閉する開閉部が係止されることで前記開閉部を閉鎖状態とし、前記開閉部の係止が外されることで前記開閉部を開放状態とする保持部が形成される
請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項10】
媒体が投入される投入部と、前記投入部を開閉するシャッタとを有する入出金部と、
前記入出金部に形成された隙間を挟んで前記投入部の反対側に配置され、前記隙間から入り込んだ異物を貯留する異物貯留部と
を有し、
前記異物貯留部は、
前記異物を貯留する空間を形成する底板部と壁部とを有し、
前記壁部における前記投入部側の端部は、前記隙間における前記異物貯留部側の端部よりも前記投入部側に位置する
媒体処理装置。
【請求項11】
媒体が投入される投入部と、前記投入部を開閉するシャッタとを有する入出金部と、
前記入出金部に形成された隙間を挟んで前記投入部の反対側に配置され、異物を貯留する空間を形成する底板部と壁部とを備え、前記隙間から入り込んだ前記異物を貯留する異物貯留部と、
前記異物貯留部と前記入出金部とを含み、軸を中心に回動する接客部と、
前記接客部の回動動作と、前記壁部が前記底板部に対し軸を中心に回動することにより前記空間を開閉する動作とを連動させるリンク機構
を有し、
前記リンク機構は、前記接客部が開かれる方向への回動に連動して、前記空間を開放させるよう前記壁部を移動させる
媒体処理装置。
【請求項12】
使用者の操作を受け付ける操作部と、
請求項1乃至請求項1の何れかに記載の媒体処理装置と
を具えることを特徴とする現金取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体処理装置及び現金取扱装置に関し、例えば使用者に紙幣や硬貨を投入させて所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、使用者との取引内容に応じて、例えば使用者に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また使用者へ現金を出金するものが広く普及している。この現金自動預払機としては、例えば硬貨に関する処理を行う媒体処理装置を内部に有するものがある。媒体処理装置は、例えば使用者との間で硬貨の授受を行う入出金部、集積された硬貨を1枚ずつに分離する分離部、硬貨を搬送する搬送部、投入された硬貨の金種や真偽等を識別する識別部(認識部とも呼ぶ)、及び金種毎に硬貨を収納する収納部等を有している。
【0003】
このような媒体処理装置においては、入出金部において、該入出金部内の硬貨や異物等を検出する光学式のセンサが設けられているものがある。また入出金部では、センサの光を通過させる、機能上必要不可欠なセンサ用孔部が適宜形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-255104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのようなセンサ用孔部等の隙間を介し、入出金部から媒体処理装置内部に異物が入り込むことがある。その結果、違算の要因となったり、駆動部に負荷を与え停止させる要因になったりしてしまい、信頼性が保てない可能性があった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、信頼性を保ち得る媒体処理装置及び現金取扱装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の媒体処理装置においては、媒体が投入される投入部と、投入部を開閉するシャッタとを有する入出金部と、入出金部に形成された隙間を挟んで投入部の反対側に配置され、隙間から入り込んだ異物を貯留する異物貯留部とを設け、隙間は、シャッタと投入部との間における空間か、又は、投入部の外部と内部とを連通させるよう配された、センサの光を通過させる孔部かの少なくとも何れか一方であるようにした。
【0008】
また本発明の現金取扱装置においては、使用者の操作を受け付ける操作部と、上述した媒体処理装置とを設けるようにした。
【0009】
本発明は、媒体を貯留する空間から隙間に入り込んだ異物を異物貯留部によって貯留することができ、該異物が媒体処理装置内部の各部に入り込んでしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信頼性を保ち得る媒体処理装置及び現金取扱装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】現金自動預払機の構成を示す斜視図である。
図2】接客部閉鎖状態及び収容器閉鎖状態における硬貨処理装置の構成を示す右側面図である。
図3】接客部閉鎖状態及び収容器開放状態における硬貨処理装置の構成を示す右側面図である。
図4】接客部開放状態における硬貨処理装置の構成を示す右側面図である。
図5】接客部が回動する様子を示す右側面図であり、(A)は接客部閉鎖状態、(B)は接客部開放状態である。
図6】収容器及び異物貯留部の構成(1)を示す斜視図である。
図7】収容器及びシャッタの構成を示す正面図である。
図8】収容器及び異物貯留部の構成(2)を示す斜視図である。
図9】収容器及び異物貯留部の構成(3)を示す斜視図である。
図10】収容器及び異物貯留部の構成(4)を示す斜視図である。
図11】収容器及び異物貯留部の構成(5)を示す斜視図である。
図12】貯留部開放状態の収容器及び異物貯留部の構成を示す斜視図である。
図13】異物が異物貯留部に貯留される様子を示し、図10におけるX-X矢視断面図である。
図14】他の実施の形態による接客部が回動する様子を示す右側面図であり、(A)は接客部閉鎖状態、(B)は接客部開放状態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0013】
[1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、現金取扱装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
【0014】
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、通帳入出口4、カード入出口5、硬貨入出金口6、紙幣入出金口7及び操作表示部8等が設けられており、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。
【0015】
通帳入出口4は、通帳が挿入され、また排出する部分である。通帳入出口4の奥側には、通帳の裏表紙等に設けられた磁気記録部から磁気情報を読み取り、また該通帳に取引の内容を記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。カード入出口5は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分である。カード入出口5の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
【0016】
硬貨入出金口6は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。紙幣入出金口7は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。この硬貨入出金口6及び紙幣入出金口7は、それぞれシャッタを駆動することにより開放又は閉塞する。操作部としての操作表示部8は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。
【0017】
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0018】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0019】
硬貨処理装置10は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、図示しないスライドレールを介して筐体2に取り付けられている。また筐体2の前面側又は後面側には、開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。このため現金自動預払機1は、保守作業等が行われる場合、筐体2の前面側又は後面側の扉を開放した上で、硬貨処理装置10を前方又は後方へスライドさせることにより、該硬貨処理装置10を該筐体2の外部に位置させ、また該筐体2の内部に収納させる。
【0020】
[2.硬貨処理装置の構成]
硬貨処理装置10は、図2に模式的な右側面図を示すように、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する非磁性体の材料でなり、薄い板状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径や厚さが異なる複数種類の硬貨を取り扱うことが想定されている。
【0021】
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
【0022】
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0023】
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。該入出金部13は、上側に開口部を有し硬貨を収容する収容器13A、該開口部を開閉するシャッタ13B等、及び収容器13A内における硬貨の有無等を検知するセンサ(図示せず)を有している。
【0024】
入出金部13は、シャッタ13Bを図3に示すように後方へスライド移動させて開放した状態で使用者により硬貨が収容器13Aに投入されると、該シャッタ13Bを前方へ移動させて図2に示すように閉塞し、硬貨を収容器13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、シャッタ13Bを閉塞した状態で、後述するピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を収容器13A内に収容した後、シャッタ13Bを開放して使用者に受け取らせる。
【0025】
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
【0026】
認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0027】
ピンベルト搬送部18は、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uにより取り囲み、硬貨を搬送する経路である搬送経路を形成している。ピンベルト搬送部18は、硬貨の盤面と当接し搬送経路に沿って進行するよう案内する搬送ガイドと、概ね該搬送経路に沿って走行するピンベルトとにより構成されている。このピンベルトには、硬貨の末尾側と当接し、搬送方向へ押動するためのピンが設けられている。ピンベルト搬送部18は、ピンベルトを走行させることにより、受渡部17から受け取った硬貨を搬送経路に沿って搬送し、入出金部13の収容器13A内へ放出する。
【0028】
またピンベルト搬送部18には、スタッカ部21の前側下部及び下側に配置された部分における複数箇所に、硬貨の搬送経路を分岐させる分岐部19がそれぞれ設けられている。各分岐部19の左側には、硬貨を案内する案内部30がそれぞれ設けられている。
【0029】
各分岐部19は、それぞれ回動可能な案内板及びアクチュエータ等(何れも図示せず)を有しており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各案内部30へ分岐させるかを切り替える。各案内部30は、それぞれ補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25又は第2補充リジェクト庫26、一時保留部23、リジェクト庫27及び取忘取込庫28等へ硬貨を進行させる。
【0030】
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20が設けられている。各スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。各スタッカ分岐部20は、各分岐部19と同様に構成されており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各スタッカ部21へ分岐させるかを切り替える。
【0031】
スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられており、上側に設けられた案内部31と、該案内部31の下側において硬貨を上下方向に沿って積み重ねるように集積する集積部32と、該集積部32の下側から硬貨を繰り出す繰出部33とを有している。このスタッカ部21は、ピンベルト搬送部18により搬送された硬貨をスタッカ分岐部20から受け取ると、該硬貨を案内部31により集積部32へ案内して集積させる。またスタッカ部21は、硬貨制御部12の制御に基づき、集積部32に集積している硬貨を繰出部33により1枚ずつ繰り出し、下方の出金搬送部22又は一時保留部23へ落下させる。
【0032】
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側、すなわち図2における紙面の手前側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置若しくは集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
【0033】
一時保留部23は、底部が前斜め上方へ向かって傾斜し、左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。また一時保留部23は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。
【0034】
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、案内部30により案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を前方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
【0035】
下分離部29は、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっているものの、硬貨処理装置筐体11に対する取付方向が、該上分離部15とは相違している。この下分離部29は、集積分離部15A及び分離搬送部15Bとそれぞれ対応する集積分離部29A及び分離搬送部29Bにより構成されている。下分離部29は、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して1枚ずつ上方へ搬送し、一時保留部23内へ放出する。
【0036】
[3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と使用者との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での各処理についてそれぞれ説明する。
【0037】
現金自動預払機1(図1)において使用者との間で入金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、使用者に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。具体的に硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理において、使用者に入出金部13に硬貨を投入させると、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次介して一時保留部23に収容する。
【0038】
このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に入金額を集計して操作表示部8(図1)に表示し、使用者に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。硬貨処理装置10は、使用者により継続が選択されると、後段の入金収納処理を行う一方、中止が選択されると、入金取引を中止し、後述する出金処理の場合と同様に硬貨を入出金部13へ搬送して返却する。
【0039】
硬貨処理装置10は、後段の入金収納処理において、硬貨を一時保留部23から上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18及びスタッカ分岐部20を順次介してスタッカ部21へ搬送して集積させる。このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に、該硬貨の金種に応じたスタッカ部21へ搬送する。
【0040】
また、現金自動預払機1(図1)において使用者との間で出金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、使用者に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。具体的に硬貨処理装置10は、操作表示部8(図1)を介して使用者から出金取引を開始する旨や出金額の操作入力を受け付けると、出金処理を開始し、出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を各スタッカ部21から出金させ、出金搬送部22を介して一時保留部23内に集積させる。続いて硬貨処理装置10は、一時保留部23、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次経由して硬貨を入出金部13へ搬送して収容させ、使用者に受け取らせる。
【0041】
因みに硬貨処理装置10は、入金処理及び出金処理の他、補充回収庫24からスタッカ部21へ硬貨を補充する補充処理や、該スタッカ部21から補充回収庫24へ硬貨を回収する回収処理等も行い得るようになっている。
【0042】
[4.入出金部の構成]
[4-1.収容器の構成]
図6に示すように収容器13Aは、左右の側板が略円形状であり、左右方向に沿って延び硬貨を集積する円柱形状の硬貨集積空間13Cが形成されている。また収容器13Aは、横断面が英大文字の「U」のような形状の硬貨集積板13Dが、硬貨集積空間13Cの前側、下側及び後側と対向しており、該硬貨集積板13Dの上側に硬貨を集積させる。
【0043】
図6図7図8図9図10図11及び図13に示すように、硬貨集積板13Dの後側に位置する、入出金部13の一部分である後側板13dの上端部近傍は、鉛直方向に対し上側が後方へ向かうよう傾斜した傾斜部13diが設けられている。
【0044】
また後側板13dは、傾斜部13diの上端部から、水平方向に沿うように屈曲し後方へ向かって延在するシャッタ対向部13dsが設けられている。シャッタ対向部13dsは、シャッタ13Bのシャッタ突起部13Bp(後述する)と対向する箇所において、左右方向に所定の間隔を空けて前端から後端まで前後方向に沿ったシャッタ対向部溝部34が刻設されている。これによりシャッタ13Bとシャッタ対向部13dsとは、シャッタ対向部溝部34にシャッタ突起部13Bpが入り込むことにより非接触状態で噛み合い、いわゆる入れ子構造が幅方向(左右方向)に亘って形成されている。シャッタ13Bとシャッタ対向部13dsとの間は、現金自動預払機1において取り扱われる硬貨のうち最もサイズが小さい硬貨である最小硬貨よりも狭く形成されている。これによりシャッタ13Bは、シャッタ対向部13dsに接触することなく前後方向に移動すると共に、シャッタ13Bとシャッタ対向部13dsとの間に硬貨が侵入することを防止している。
【0045】
さらに入出金部13には、収容器13A内に使用者の手が挿入されているかを検知する光学式の手検出センサ(図示せず)が設けられている。このため図7図8及び図11に示すように収容器13Aの傾斜部13diには、手検出センサの光を傾斜部13diの後方から硬貨集積空間13C側である前側へ通過させるセンサ用孔部38が形成されている。
【0046】
また図5に示すように、収容器13Aの後側板13dと貯留部42の貯留部前側板42F(後述する)との間には、収容器13Aと貯留部42との隙間である貯留部収容器間隙間SP2が形成されている。以下では、シャッタ収容部間隙間SPとセンサ用孔部38とをまとめて、異物貯留空間42Sの内部と外部とを連通させる空間である、隙間としての収容部内外連通空間48とも呼ぶ。なお図5及び図14においては、異物貯留部40を強調して大きく記載している。
【0047】
[4-2.シャッタの構成]
図7に示すようにシャッタ13Bは、前後左右方向に伸びる平板形状のシャッタ板状部13Bbの下面において、左右方向に所定の間隔を空けて、前端から後端まで前後方向に沿って収容器13Aにおける後側板13dのシャッタ対向部13dsに向かって下方向へシャッタ突起部13Bpが突設されている。
【0048】
このようにシャッタ13Bと収容器13Aのシャッタ対向部13dsとは、入れ子構造を形成しつつ、非接触状態で噛み合っている。このためシャッタ13Bとシャッタ対向部13dsとの間には、前後方向に沿う僅かな空間であり、シャッタ13Bが収容器13Aに当接せず移動するために機能上必要不可欠な隙間であるシャッタ収容部間隙間SPが形成されている。このシャッタ収容部間隙間SPは、最小硬貨よりも狭く形成されている。しかしながら収容器13Aに対し、正規の硬貨の他に、クリップ、ピン、輪ゴム、紙切れ、糸屑、テープや粘着物等の異物FSが一緒に投入されると、該異物FSが、硬貨集積空間13C側(前側)からシャッタ収容部間隙間SPを通過し、シャッタ対向部13dsの後端部よりも後側まで移動する可能性がある。
【0049】
また異物FSは、シャッタ収容部間隙間SP以外にも、センサ用孔部38を介して硬貨集積空間13C側(前側)から後側板13dの後側、すなわち硬貨集積空間13Cの外部まで移動する可能性がある。
【0050】
[5.接客部の構成]
図2及び図4に示すように硬貨処理装置筐体11における前端部の上端には、開閉可能な接客部36が設けられている。接客部36は、硬貨処理装置筐体11に対し、その前端下端部に設けられた接客部回動軸36aを中心として、図2図4及び図5中で時計回り又は反時計回りに回動可能に設けられている。この接客部36には、主に、入出金部13及び異物貯留部40が組み込まれている。
【0051】
このため硬貨処理装置10は、通常の動作時の場合、接客部36が図2及び図5(A)に示すように接客部閉鎖状態になることにより、硬貨処理装置筐体11の内部を外部から保護する。一方硬貨処理装置10は、異物貯留部40に貯留した異物FSが取り除かれる保守作業等が行われる場合、接客部36が図4中反時計回りである開放方向へ回動されて図4及び図5(B)に示す接客部開放状態に移行することにより、異物貯留部40を硬貨処理装置筐体11の外部に露出させる。
【0052】
[6.異物貯留部の構成]
図5図13に示すように、入出金部13の収容器13Aの後方には、シャッタ収容部間隙間SP又はセンサ用孔部38に入り込み硬貨集積空間13C側から後側板13dよりも後側まで移動した異物FSを貯留する異物貯留部40が設けられている。異物貯留部40は、貯留部42及び支持部44により構成されている。
【0053】
[6-1.貯留部の構成]
貯留部42は、例えばマイラー(登録商標)等の、透明で折り曲げ可能な薄板状の樹脂フィルムにより構成されており、全体として上面が開放された略箱型形状であり、貯留部底板42D、貯留部後側板42B、貯留部内側左側板42LR、貯留部外側左側板42LL及び貯留部前側板42Fを有している。また貯留部42は、これら貯留部底板42D、貯留部後側板42B、貯留部内側左側板42LR、貯留部外側左側板42LL及び貯留部前側板42Fと、支持部44の支持部右側板44Rとに囲まれた空間に、異物FSを収容する異物貯留空間42Sが形成されている。以下では、貯留部底板42Dから鉛直方向に沿って立設する貯留部後側板42B、貯留部内側左側板42LR、貯留部外側左側板42LL及び貯留部前側板42Fをまとめて、壁部とも呼ぶ。
【0054】
貯留部底板42Dは、貯留部底板右側部42DR及び貯留部底板左側部42DLにより構成されており、貯留部42の底面を形成している。貯留部底板右側部42DRは、水平方向に沿って延び平面視で左右方向に長い長方形状であり、貯留部42の左右方向の長さの三分の二程度の左右方向の長さを有すると共に、貯留部42における右寄りに配置されている。貯留部底板左側部42DLは、水平方向に沿って延び平面視で左右方向に長い長方形状であり、貯留部42の左右方向の長さの三分の一程度の左右方向の長さを有すると共に、貯留部底板右側部42DRよりも上側における左側、すなわち貯留部42における左寄りに配置されている。
【0055】
貯留部後側板42Bは、貯留部後側板右側部42BR及び貯留部後側板開閉部42BLにより構成されており、貯留部42の後側面を形成している。貯留部後側板右側部42BRは、鉛直方向に沿っており、貯留部底板右側部42DRの後端部から該貯留部底板右側部42DRに対し直角に上方向へ向かって折り曲げられている。この貯留部後側板右側部42BRは、貯留部底板右側部42DRの左右方向の長さの三分の二程度の左右方向の長さを有すると共に、貯留部底板右側部42DRにおける右寄りに配置されている。
【0056】
開閉部としての貯留部後側板開閉部42BLは、鉛直方向に沿っており、後述する貯留部外側左側板42LLの後端部から該貯留部外側左側板42LLに対し直角に右方向へ向かって折り曲げられている。この貯留部後側板開閉部42BLは、背面視で英大文字の「L」が時計回りに90度回転したような形状であり、貯留部外側左側板42LLとの接続部分である鉛直方向に沿う貯留部後側板開閉軸42BLaを軸として、平面視で時計回り及び反時計回りに回動可能になっている。
【0057】
貯留部後側板開閉部42BLにおける右端部の下端部には、貯留部後側板開閉部差込部42BLIが形成されている。固定部としての貯留部後側板開閉部差込部42BLIは、背面視で英大文字の「T」が180度回転したような形状であり、下側へ向かって突出している。この貯留部後側板開閉部差込部42BLIは、硬貨処理装置10の通常の動作時の場合、貯留部後側板開閉部差込部42BLIが支持部44の差込部保持部44DIに係止し貯留部閉鎖状態になることにより、貯留部42に異物FSを貯留させる。一方、貯留部後側板開閉部差込部42BLIは、貯留部42に貯留した異物FSが取り除かれる保守作業等が行われる場合、貯留部後側板開閉部差込部42BLIが保守員により把持されて後方へ引っ張られることにより、該貯留部後側板開閉部差込部42BLIが支持部44の差込部保持部44DIから外され、貯留部後側板開閉部42BLが貯留部後側板開閉軸42BLaを軸として平面視で反時計回りに回動し貯留部開放状態になることにより、異物貯留空間42Sにおける貯留部後側板開閉部42BLの部分を外部に露出させる。このように貯留部後側板開閉部42BLは、異物貯留空間42Sを開閉させる。
【0058】
貯留部内側左側板42LRは、鉛直方向に沿っており、貯留部底板右側部42DRの左端部から該貯留部底板右側部42DRに対し直角に上方向へ向かって折り曲げられており、上端部が貯留部底板左側部42DLの右端部と接続されている。貯留部外側左側板42LLは、鉛直方向に沿っており、貯留部底板左側部42DLの左端部から該貯留部外側左側板42LLに対し直角に上方向へ向かって折り曲げられており、貯留部42の左側面を形成している。
【0059】
貯留部前側板42Fは、貯留部前側板下側部42FD及び貯留部前側板傾斜部42FIにより構成されており、貯留部42の前側面を形成している。貯留部前側板下側部42FDは、鉛直方向に沿っており、貯留部底板右側部42DRの後端部から該貯留部底板右側部42DRに対し直角に上方向へ向かって折り曲げられている。この貯留部前側板下側部42FDは、貯留部底板右側部42DRの左端部から右端部までに亘って形成されている。
【0060】
貯留部前側板傾斜部42FIは、貯留部前側板下側部42FDの上端部及び貯留部底板左側部42DLの後端部から鉛直方向に対しシャッタ対向部13ds側である前方へ向かって傾斜するよう上斜め前方向へ向かって折り曲げられている。この貯留部前側板傾斜部42FIにおける前端部は、貯留部前側板傾斜部前端部42FIeとなっている。図13に示すように、貯留部前側板傾斜部前端部42FIeは、前後方向に関し、シャッタ対向部13dsの後端部における下側よりも硬貨集積空間13C側である前方まで入り込んでいる。このため貯留部前側板傾斜部42FIは、前後方向に関し、シャッタ対向部13dsの後端部とオーバーラップしている。これにより貯留部42は、シャッタ収容部間隙間SPを通過した異物FSが、貯留部42よりも前方における、貯留部42と収容器13Aとの隙間である貯留部収容器間隙間SP2へ落下してしまうことを防止できる。
【0061】
[6-2.支持部の構成]
支持部44は、所定の厚みを有する金属製の板に穴開けや折り曲げ等の板金加工が行われることにより構成されており、支持部底板44D、支持部右側板44R、支持部左側板44L及び支持部前側板44Fを有している。この支持部44は、一部分が収容器13Aに固定されていると共に、全体として貯留部42の下側に位置することにより、貯留部42を下側から支持して貯留部42の強度を保っている。
【0062】
支持部底板44Dは、支持部底板右側部44DR及び支持部底板左側部44DLにより構成されている。支持部底板右側部44DRは、貯留部42の貯留部底板右側部42DRとほぼ同一の外形であり、該貯留部底板右側部42DRの下面側に当接している。支持部底板左側部44DLは、貯留部42の貯留部底板左側部42DLとほぼ同一の外形であり、該貯留部底板左側部42DLの下面側に当接している。
【0063】
支持部底板右側部44DRには、平面視で左右方向に長い長方形状である支持部底面開口部44Daが、支持部底板右側部44DRの上面から下面までに亘って穿設されている。開口部としての支持部底面開口部44Daは、支持部底板右側部44DRのやや右寄りに位置し、支持部底板右側部44DRの左右方向の長さの半分程度の左右方向の長さを有すると共に、支持部底板右側部44DRの前後方向の長さの半分程度の前後方向の長さを有している。このように支持部44は、支持部底板右側部44DRにおいて支持部底板右側部44DRの四分の一程度の面積を有する支持部底面開口部44Daを穿設することにより、支持部底板右側部44DRの強度を保ちつつ、支持部底面開口部44Daを介し、支持部底板右側部44DRの下面側へ、異物FSが貯留される貯留部底板右側部42DRの一部分を露出させている。これにより異物貯留部40は、支持部底板右側部44DRの下面側から、支持部底面開口部44Daを介し、透明な貯留部底板右側部42DRに貯留された異物FSを視認可能にしている。
【0064】
また支持部底板右側部44DRにおける、貯留部42の貯留部後側板開閉部差込部42BLIと対向する箇所には、保持部としての差込部保持部44DIが形成されている。支持部44は、硬貨処理装置10の通常の動作時の場合、貯留部42の貯留部後側板開閉部差込部42BLIを差込部保持部44DIで係止し貯留部閉鎖状態とする。一方支持部44は、保守作業が行われる場合、貯留部42の貯留部後側板開閉部差込部42BLIが差込部保持部44DIから外され貯留部開放状態になる。
【0065】
支持部右側板44Rは、鉛直方向に沿っており、支持部底板右側部44DRの右端部から該支持部底板右側部44DRに対し直角に上方向へ向かって折り曲げられている。支持部左側板44Lは、鉛直方向に沿っており、支持部底板右側部44DRの左端部から該支持部底板右側部44DRに対し直角に上方向へ向かって折り曲げられている。この支持部左側板44Lは、貯留部42の貯留部内側左側板42LRとほぼ同一の外形であり、該貯留部内側左側板42LRの左面側に当接している。
【0066】
支持部前側板44Fは、鉛直方向に沿っており、支持部底板右側部44DRの前端部の右寄りから該支持部底板右側部44DRに対し直角に上方向へ向かって折り曲げられている。この支持部前側板44Fは、貯留部42の貯留部前側板下側部42FDよりも僅かに上下方向の長さが短く、支持部底板右側部44DRの左右方向の長さの半分程度の左右方向の長さを有している。また支持部前側板44Fは、貯留部42の貯留部前側板下側部42FDの前面側に当接している。
【0067】
支持部底板右側部44DRにおける左右両端部と、支持部底板左側部44DLにおける左端部とには、長方形状の両面テープ46の下面が貼り付けられている。この両面テープ46の上面には、貯留部42における貯留部底板右側部42DR及び貯留部底板左側部42DLが貼り付けられている。このため貯留部42は、支持部44の上側に両面テープ46により貼り付けられて固定されている。
【0068】
[7.異物の貯留]
図13に示すように、収容器13Aにおける後側板13dの硬貨集積空間13C側(前側)から例えばシャッタ収容部間隙間SPに異物FSが入り込むと(図13(A))、該異物FSは、シャッタ収容部間隙間SP内を後方へ向かって移動し(図13(B))、シャッタ収容部間隙間SP内の後端部よりも後方まで移動して落下することで、異物貯留部40の貯留部42における異物貯留空間42Sに貯留される(図13(C))。
【0069】
[8.異物除去方法]
異物貯留部40に貯留された異物FSを取り除くとき、保守員は、まず、図5(A)の接客部閉鎖状態から図5(B)の接客部開放状態へ接客部36を回動させることにより、異物貯留部40にアクセス可能な状態とする。この接客部開放状態において保守員は、矢印AR1の方向から、図11に示すように支持部底面開口部44Daを介して貯留部42の異物貯留空間42Sを目視し、異物貯留部40の内部に異物FSが貯留されているか否かを確認する。
【0070】
続いて保守員は、貯留部42における貯留部後側板開閉部42BLの貯留部後側板開閉部差込部42BLIを指で摘んで後方へ移動させることにより、貯留部後側板開閉部差込部42BLIを差込部保持部44DIから外す。さらに保守員は、引き続き貯留部後側板開閉部差込部42BLIを指で摘んで後方へ移動させることにより、開閉軸としての貯留部後側板開閉軸42BLaを軸として貯留部後側板開閉部42BLを回動させ図12に示す貯留部開放状態にすることにより、異物貯留空間42Sにおける貯留部後側板開閉部42BLの部分を外部に露出させ、保守員の指又はピンセットが異物貯留空間42Sに届く状態にする。この状態において保守員は、異物貯留空間42Sの異物FSを指又はピンセットで摘んで除去することにより、該異物FSを回収する。
【0071】
[9.効果等]
以上の構成において硬貨処理装置10は、収容器13Aよりも、該収容器13Aに対しシャッタ開放状態においてシャッタ13Bが位置する側である後方に隣接するように異物貯留部40を設けるようにした。このため硬貨処理装置10は、硬貨集積空間13Cからシャッタ収容部間隙間SPやセンサ用孔部38に入り込んだ異物FSを異物貯留部40によって貯留することができる。これにより硬貨処理装置10は、異物FSが硬貨処理装置10内部の各部に入り込んでしまうことを防止することにより、違算の要因や駆動部に負荷を与えてしまうことを防止し、信頼性を向上させることができる。
【0072】
また硬貨処理装置10は、貯留部42の壁部の一部分である貯留部後側板開閉部42BLの貯留部後側板開閉部差込部42BLIを、差込部保持部44DIに対し着脱可能とした。このため硬貨処理装置10は、貯留部42全体を支持部44から取り外すという煩雑な動作を保守員に強いることなく、貯留部後側板開閉部42BLの貯留部後側板開閉部差込部42BLIを差込部保持部44DIから外して貯留部開放状態にするだけで、貯留部後側板開閉部42BLが退避した空間を介し異物貯留空間42Sに貯留された異物FSを保守員に除去させることができる。これにより硬貨処理装置10は、異物FSを保守員に容易に回収させることができ、異物除去の作業性を向上させることができる。
【0073】
さらに硬貨処理装置10は、異物貯留部40の貯留部42を透明部材で構成するようにした。このため異物貯留部40は、貯留部42の異物貯留空間42Sを貯留部42の外部から可視化でき、貯留部42に貯留された異物FSを貯留部42の外部から視認可能にできる。
【0074】
さらに硬貨処理装置10は、支持部44において、貯留部42の貯留部底板右側部42DRと対向する支持部底板右側部44DRに、支持部底面開口部44Daを穿設するようにした。このため異物貯留部40は、図5(B)に示す接客部開放状態において、矢印AR1の方向から、図11に示すように支持部底面開口部44Daを介し、貯留部42の異物貯留空間42Sを該貯留部42の外部から視認可能にできる。
【0075】
以上の構成によれば硬貨処理装置10は、媒体としての硬貨が投入される投入部としての収容器13Aと、収容器13Aを開閉するシャッタ13Bとを有する入出金部13と、入出金部13に形成された隙間としての収容部内外連通空間48を挟んで収容器13Aの反対側に配置され、収容部内外連通空間48から入り込んだ異物FSを貯留する異物貯留部40とを設けるようにした。これにより硬貨処理装置10は、硬貨集積空間13Cから収容部内外連通空間48に入り込んだ異物FSを異物貯留部40によって貯留することができ、該異物FSが硬貨処理装置10内部の各部に入り込んでしまうことを防止できる。
【0076】
[10.他の実施の形態]
[10-1.他の実施の形態1]
[10-1-1.異物貯留部の構成]
図5と対応する部材に同一符号を付した図14に示すように、他の実施の形態による異物貯留部140は、異物貯留部40と比較して、貯留部42に代わる貯留部142を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0077】
貯留部142は、貯留部42と比較して、貯留部後側板42Bに代わる貯留部後側板142Bと、貯留部底板42Dに代わる貯留部底板142Dとを有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。貯留部後側板142Bは、貯留部後側板開閉部42BLが設けられていないと共に、貯留部後側板142Bに対し、貯留部後側板142Bと貯留部底板142Dとの接続部である貯留部後側板底板接続部42Baxを軸として、貯留部底板142Dに対し、右側面視で時計回り及び反時計回りに回動可能となっている。
【0078】
貯留部142は、貯留部後側板底板接続部42Baxが、接客部閉鎖状態と接客部開放状態との間を遷移する際に接客部36と共に可動しない、接客部36以外の箇所である硬貨処理装置筐体11と、リンク機構(図示せず)で繋がっている。この貯留部142は、接客部閉鎖状態(図14(A))においては貯留部42(図5(A))と同様の形状である。一方、貯留部142は、接客部閉鎖状態(図14(A))から接客部開放状態(図14(B))へ遷移する際、貯留部後側板142Bがリンク機構により後方へ引っ張られることにより、貯留部後側板142Bが、鉛直方向に対し上端部が後方へ向かうように傾斜する。この状態において貯留部後側板142Bは、後方へ退避し、異物貯留空間42Sの後側面を外部に大きく露出させる。
【0079】
上述した貯留部42は、接客部36の回動に伴い、貯留部42全体が変形せずに接客部36と共に回動した。これに対し貯留部142は、接客部36の回動に伴い、貯留部前側板42F及び貯留部底板142Dは接客部36と共に回動するものの、貯留部後側板142Bは接客部36と共に回動せず、異物貯留空間42Sを外部に大きく露出させて開放させる。
【0080】
このため異物貯留部140は、異物貯留部40と比較して、接客部36を回動させるだけで、貯留部後側板142Bが貯留部底板142Dに対し回動し、異物貯留空間42Sの後側面を露出させ、貯留部142に貯留された異物FSを貯留部142の外部から視認可能にできると共に、貯留部後側板開閉部42BLを開閉させるという動作を保守員に行わせることなく、異物FSを回収させることができる。
【0081】
[10-1-2.異物除去方法]
異物貯留部140に貯留された異物FSを取り除くとき、保守員は、まず、図14(A)の接客部閉鎖状態から図14(B)の接客部開放状態へ接客部36を回動させることにより、異物貯留部140にアクセス可能な状態とする。このとき貯留部142は、貯留部後側板142Bがリンク機構により後方へ引っ張られることにより、異物貯留空間42Sの後側面を外部に大きく露出させる。この接客部開放状態において保守員は、矢印AR2の方向から、貯留部142の異物貯留空間42Sを目視し、異物貯留部140の内部に異物FSが貯留されているか否かを確認する。続いて保守員は、貯留部後側板142Bから異物貯留空間42Sの異物FSを指又はピンセットで摘んで除去することにより、該異物FSを回収する。
【0082】
[10-1-3.効果等]
以上の構成において貯留部142は、接客部36の開閉動作に貯留部後側板142Bの開閉を連動させ、接客部36が接客部閉鎖状態から接客部開放状態へ回動した際に、接客部36の回動につられて貯留部後側板142Bが異物貯留空間42Sから離れるように貯留部底板142Dに対し回動するようにした。
【0083】
このため貯留部142は、異物貯留部140にアクセスする際に必ず必要となる動作である、接客部36を接客部閉鎖状態から接客部開放状態へ回動させるという動作を保守員に行わせるだけで、異物貯留空間42Sの後側面を露出させ、貯留部142に貯留された異物FSを貯留部142の外部から視認可能にできると共に異物FSを回収させることができる。
【0084】
これにより貯留部142は、硬貨処理装置10と比較して、外部からの異物貯留部140内部の異物FSの視認性をより一層向上できると共に、異物FSの回収の容易性をより一層向上できる。
【0085】
その他の点においても、異物貯留部140は、異物貯留部40と同様の作用効果を奏し得る。
【0086】
[10-2.他の実施の形態2]
なお上述した実施の形態においては、貯留部42をマイラー(登録商標)により構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、貯留部42を他の種々の素材により構成しても良い。
【0087】
[10-3.他の実施の形態3]
また上述した実施の形態においては、貯留部42全体を透明な樹脂フィルムであるマイラー(登録商標)により構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、貯留部42の少なくとも一部分は透明でなくても良い。その場合、支持部底面開口部44Daを介し異物貯留空間42Sを視認させるために、特に貯留部底板42Dは透明であると好ましい。
【0088】
[10-4.他の実施の形態4]
さらに上述した実施の形態においては、貯留部42で異物FSを貯留し、該貯留部42を支持部44により支持する場合について述べた。本発明はこれに限らず、支持部44を例えば透明なプラスチック等の成形品で形成することにより、該支持部44の強度を保つことができれば、支持部44を省略しても良い。
【0089】
[10-5.他の実施の形態5]
さらに上述した実施の形態においては、一組の貯留部後側板開閉部差込部42BLI及び差込部保持部44DIをそれぞれ貯留部42及び支持部44に形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、二組の貯留部後側板開閉部差込部42BLI及び差込部保持部44DIをそれぞれ貯留部42及び支持部44に形成し、貯留部42における、一方の組の貯留部後側板開閉部差込部42BLIと他方の組の貯留部後側板開閉部差込部42BLIとの間の壁部を、支持部44から着脱可能にしても良い。
【0090】
[10-6.他の実施の形態6]
さらに上述した実施の形態においては、貯留部後側板開閉部42BLを貯留部42における壁部の一部分である貯留部後側板42Bの一部分に形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、異物貯留空間42Sを外部に露出させる開閉部を、貯留部底板42Dに形成しても良い。
【0091】
[10-7.他の実施の形態7]
さらに上述した実施の形態においては、支持部底板右側部44DRに支持部底面開口部44Daを穿設する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば支持部底板右側部44DRの一部を折り曲げる等、他の種々の方法で開口部を形成しても良い。
【0092】
[10-8.他の実施の形態8]
さらに上述した実施の形態においては、支持部底面開口部44Daを平面視で左右方向に長い長方形状とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、支持部底面開口部44Daは、平面視で三角形状、正方形状、円形状や楕円形状等、種々の形状でも良い。
【0093】
[10-9.他の実施の形態9]
さらに上述した実施の形態においては、接客部36は回動することにより接客部閉鎖状態と接客部開放状態とを遷移する場合について述べた。本発明はこれに限らず、接客部36はスライド移動する等、種々の方式で移動することにより、接客部閉鎖状態と接客部開放状態とを遷移しても良い。
【0094】
[10-10.他の実施の形態10]
さらに上述した実施の形態においては、収容器13Aとシャッタ13Bとの隙間であるシャッタ収容部間隙間SPと、収容器13A自身に形成されたセンサ用孔部38とに入り込んだ異物FSを貯留する異物貯留部40に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、センサ用孔部や搬送路を有する、例えば硬貨の種類毎に硬貨を集積させるスタッカ等、必要不可欠な隙間が存在する他の種々の箇所に、本発明を適用しても良い。
【0095】
[10-11.他の実施の形態11]
さらに上述した実施の形態においては、使用者との間で種々の取引を行う現金自動預払機1(図1)の硬貨処理装置10に組み込まれる異物貯留部40に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば金融機関やスーパーマーケットの店舗内等に設置され、該店舗の職員や係員等の操作に従って硬貨の計数や分類等の処理を行う現金管理装置等、硬貨を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。
【0096】
[10-12.他の実施の形態12]
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0097】
[10-13.他の実施の形態13]
さらに上述した実施の形態においては、入出金部としての入出金部13と、異物貯留部としての異物貯留部40とによって、媒体処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる入出金部と、異物貯留部とによって、硬貨処理装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、例えば使用者との間で硬貨に関する取引処理を行う現金自動預払機等で利用できる。
【符号の説明】
【0099】
1……現金自動預払機、2……筐体、3……応対部、4……通帳入出口、5……カード入出口、6……硬貨入出金口、7……紙幣入出金口、8……操作表示部、9……主制御部、10……硬貨処理装置、11……硬貨処理装置筐体、12……硬貨制御部、13……入出金部、13A……収容器、13B……シャッタ、13Bb……シャッタ板状部、13Bp……シャッタ突起部、13C……硬貨集積空間、13D……硬貨集積板、13d……後側板、13di……傾斜部、13ds……シャッタ対向部、14……シュート部、15……上分離部、15A……集積分離部、15B……分離搬送部、16……認識搬送部、17……受渡部、18……ピンベルト搬送部、19……分岐部、20……スタッカ分岐部、21……スタッカ部、22……出金搬送部、23……一時保留部、24……補充回収庫、25……第1補充リジェクト庫、26……第2補充リジェクト庫、27……リジェクト庫、28……取忘取込庫、29……下分離部、29A……集積分離部、29B……分離搬送部、30、31……案内部、32……集積部、33……繰出部、34……シャッタ対向部溝部、36……接客部、36a……接客部回動軸、38……センサ用孔部、40、140……異物貯留部、42、142……貯留部、42S……異物貯留空間、42D、142D……貯留部底板、42DR……貯留部底板右側部、42DL……貯留部底板左側部、42B、142B……貯留部後側板、42BR……貯留部後側板右側部、42BL……貯留部後側板開閉部、42BLI……貯留部後側板開閉部差込部、42BLa……貯留部後側板開閉軸、42LR……貯留部内側左側板、42LL……貯留部外側左側板、42F……貯留部前側板、42FD……貯留部前側板下側部、42FI……貯留部前側板傾斜部、42FIe……貯留部前側板傾斜部前端部、42Bax……貯留部後側板底板接続部、44……支持部、44D……支持部底板、44DR……支持部底板右側部、44Da……支持部底面開口部、44DI……差込部保持部、44DL……支持部底板左側部、44R……支持部右側板、44L……支持部左側板、44F……支持部前側板、46……両面テープ、48……収容部内外連通空間、SP…シャッタ収容部間隙間、SP2……貯留部収容器間隙間、FS……異物、AR1、AR2……矢印。
図1
図2
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