(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】熱動形過負荷継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 61/01 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
H01H61/01 M
(21)【出願番号】P 2023531707
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2022021039
(87)【国際公開番号】W WO2023276487
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2021110646
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】鴨崎 武雄
(72)【発明者】
【氏名】小野木 悠真
(72)【発明者】
【氏名】三浦 颯斗
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-146400(JP,A)
【文献】特開2014-107023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 61/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥行方向を軸方向とするねじ端子が設けられ、前記奥行方向から見て幅方向の側面に係合穴が形成されているケースと、
前記ケースに向かって突出した突出片が形成され、前記突出片の先端部が前記係合穴に内側から嵌り合うことで前記ケースに取付けられるカバーと、
前記奥行方向を軸方向とし、初期位置となる前記奥行方向の手前側から奥側に押されただけの手動リセット位置に変位したときに、トリップ状態から復旧させ、前記初期位置から前記奥行方向の奥側に押され且つ軸周りに回されることで前記奥行方向の位置が保持された自動リセット位置に変位したときに、自動で前記トリップ状態から復旧させるリセット棒と、を備え、
前記リセット棒は、外周面のうち前記奥行方向及び周方向の予め定めた範囲に凹部が形成され、前記初期位置及び前記自動リセット位置の何れかにあるときには、前記外周面が前記突出片に対向することで前記先端部が内側に押されることを阻止し、前記手動リセット位置にあるときには、前記凹部が前記突出片に対向することで前記先端部が内側に押されることを許容することを特徴とする熱動形過負荷継電器。
【請求項2】
前記ケースは、電磁接触器に接続される側が開放され、前記側面は、前記幅方向における一方側及び他方側のうち、前記奥行方向の手前側から見て前記ねじ端子に加えるトルクが、前記ケースの開放側で前記幅方向の内側から外側に向かう側であることを特徴とする請求項1に記載の熱動形過負荷継電器。
【請求項3】
前記ねじ端子に加えるトルクは、締付けトルクであることを特徴とする請求項2に記載の熱動形過負荷継電器。
【請求項4】
前記突出片は、前記先端部が
前記係合穴に嵌まり合う鉤状に形成され
、
前記係合穴及び前記突出片は、スナップフィット
構造であることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の熱動形過負荷継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱動形過負荷継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱動形過負荷継電器(サーマルリレー)は、過電流が流れ続けるときに、熱によってバイメタルが湾曲することでトリップ動作し、電磁接触器を遮断させることで主回路を過負荷から保護する。特許文献1に示される熱動形過負荷継電器では、ケースの係合穴にカバーのフックを引掛けることでカバーをケースに取付ける構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケースの係合穴に近いねじ端子を締付けたり緩めたりする際に、カバーのフックに力がかかり、意図せずフックが外れる可能性がある。そのため、ケースの裏側にフックが撓むことを阻止する障壁を設けることが考えられるが、このような構成にした場合、カバーを外すにはフックを破壊しなければならず、再利用ができなくなる。
本発明の目的は、熱動形過負荷継電器において、カバーの着脱を可能にし、且つねじ端子にトルクを加えるときに意図せずカバーの係合が外れることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る熱動形過負荷継電器は、奥行方向を軸方向とするねじ端子が設けられ、奥行方向から見て幅方向の側面に係合穴が形成されているケースと、ケースに向かって突出した突出片が形成され、突出片の先端部が係合穴に内側から嵌り合うことでケースに取付けられるカバーと、奥行方向を軸方向とし、初期位置となる奥行方向の手前側から奥側に押されただけの手動リセット位置に変位したときに、トリップ状態から復旧させ、初期位置から奥行方向の奥側に押され且つ軸周りに回されることで奥行方向の位置が保持された自動リセット位置に変位したときに、自動でトリップ状態から復旧させるリセット棒と、を備え、リセット棒は、外周面のうち奥行方向及び周方向の予め定めた範囲に凹部が形成され、初期位置及び自動リセット位置の何れかにあるときには、外周面が突出片に対向することで先端部が内側に押されることを阻止し、手動リセット位置にあるときには、凹部が突出片に対向することで先端部が内側に押されることを許容する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リセット棒が手動リセット位置にあるときには、突出片の先端部が内側に押されることで、係合穴から先端部が外れ、カバーを取外すことができる。一方、リセット棒が初期位置か自動リセット位置にあるときには、突出片の先端部を内側に押されることが阻止されるため、カバーを取外すことができない。配線作業によってねじ端子にトルクが加えられるのは、リセット棒が初期位置か自動リセット位置にあるときであり、このときだけはカバーを取外すことができない。したがって、カバーの着脱を可能にし、且つねじ端子にトルクを加えるときに意図せずカバーの係合が外れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】ケースからカバーを取外した状態を示す図である。
【
図6】手動リセット位置、及び自動リセット位置を示す図である。
【
図8】手動リセット位置、及び自動リセット位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《一実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、熱動形過負荷継電器を示す図である。
ここでは、奥行方向の手前側から見た状態を示す。熱動形過負荷継電器11は、サーマルリレーとも呼ばれ、過電流が流れ続けるときにトリップ動作し、図示しない電磁接触器を遮断させることで主回路を過負荷から保護する。熱動形過負荷継電器11は、ケース12と、カバー13と、を備える。
【0010】
ケース12は、主端子14と、補助端子15と、補助端子16と、を備える。何れも奥行方向を軸方向とするねじ端子であり、締付けトルクは、環状のブロック矢印で示すように、奥行方向の手前側から見て時計回りである。
主端子14は、ケース12のうち、縦方向の一方側で、幅方向の一方側に、幅方向に沿って三つ並べて設けられている。
補助端子15は、ケース12のうち、縦方向の一方側で、幅方向の他方側で、奥行方向の手前側に、幅方向に沿って二つ並べて設けられている。補助端子15は、ノーマルオープンのa接点である。
補助端子16は、ケース12のうち、補助端子15よりも縦方向の一方側で、幅方向の他方側で、奥行方向の奥側に、幅方向に沿って二つ並べて設けられている。補助端子15は、ノーマルクローズのb接点である。
【0011】
図2は、ケースからカバーを取外した状態を示す図である。
ケース12は、縦方向の他方側及び奥行方向の奥側が開放されている。カバー13は、幅方向の一方側から見て略L字状であり、縦方向に沿ってケース12に嵌め合わされることで、ケース12における縦方向の他方側、及び奥行方向の奥側を閉塞する。ケース12には、幅方向における他方側の側面のうち、奥行方向の手前側に、幅方向に貫通した係合穴21が形成されおり、カバー13には、奥行方向の手前側に、縦方向の一方側に向かって突出した突出片22が形成されている。
【0012】
突出片22は、縦方向及び奥行方向に沿った略板状であり、先端部23は、幅方向の他方側に向かって凸となり、係合穴21に内側から嵌り合う鉤状に形成されている。係合穴21及び突出片22は、スナップフィット構造になっている。すなわち、ケース12にカバー13を取付ける際には、突出片22の先端部23がケース12の内周面に押され、突出片22に撓みが生じる。そして、先端部23が係合穴21に嵌り込み、突出片22が復元したときに、ケース12に対してカバー13が固定される。一方、ドライバー等の工具により係合穴21に嵌り込んだ先端部23が内側に押されることで、突出片22に撓みが生じ、係合穴21から先端部23が解除されると、ケース12からカバー13の取外しが可能となる。なお、ケース12及びカバー13は、他にも複数のスナップフィット構造を備えるが、実施形態の主要な構成ではなく、また一般的な構造であるため、詳細な説明を省略する。
【0013】
図3は、カバーを取外したケース内を示す図である。
ここでは、ケース12の内部を縦方向の他方側から見た状態を示す。ケース12の内部には、バイメタル31と、シフタ32と、反転機構33と、リセット棒34と、を備えている。
バイメタル31は、奥行方向に延び、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成されており、奥行方向の手前側が固定端となり、奥側が自由端である。バイメタル31は、奥行方向の手前側が主端子14に接続され、奥行方向の奥側がヒータ36の一端に接合されている。ヒータ36は、バイメタル31に巻き付けられ、他端が奥行方向の手前側で接続端子37に接合されている。接続端子37は、図示しない電磁接触器に接続される。バイメタル31は、通常時には直線状であるが、過負荷状態になると自由端側が幅方向の他方側へ湾曲し、シフタ32を押す。
【0014】
シフタ32は、絶縁体であり、幅方向及び縦方向に沿った平板状に形成され、幅方向に進退可能な状態でケース12に支持されている。シフタ32は、バイメタル31の自由端に係合しており、通常時には幅方向の一方側に位置しているが、過負荷状態になると、バイメタル31が湾曲することで幅方向の他方側へと変位する。
反転機構33は、過負荷を検出したときに接点を反転させる、つまりa接点を閉じ、b接点を開く機構であり、補償バイメタル41と、釈放レバー42と、引張りばね43と、可動板44と、板ばね45と、連動板46と、を備える。反転機構33は、実施形態の主要な構成ではないため概略を説明する。
【0015】
補償バイメタル41は、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った平板状に形成され、奥行方向の手前側が釈放レバー42に固定され、奥行方向の奥側が自由端となり、シフタ32に係合している。
釈放レバー42は、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った板状に形成され、縦方向に沿った支軸によって回動可能に支持されており、奥行方向の奥側が引張りばね43に接触している。
引張りばね43は、可動板44を奥行方向の奥側へと引張っている。
【0016】
可動板44は、奥行方向及び縦方向に沿った平板状であり、奥行方向の奥側を支点にして奥行方向の手前側が幅方向に変位可能である。可動板44は、直立している位置が死点となり、幅方向の一方側又は他方側への力が作用するときに、引張りばね43の引張力によって幅方向の一方側又は他方側へ傾く。そして、通常時には、幅方向の一方側に傾いているが、過負荷状態になると、補償バイメタル41を介して釈放レバー42によって押されることで、幅方向の他方側に傾く。可動板44は、奥行方向の奥側が補助端子15の一方に接続されており、奥行方向の手前側に可動接点が形成されている。
【0017】
板ばね45は、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った平板状であり、奥行方向の奥側が補助端子15の他方に接続され、可動板44に対向した奥行方向の手前側には固定接点が形成されている。通常時には、板ばね45の固定接点に対して可動板44の可動接点が離間しているが、過負荷状態になると、可動板44が幅方向の他方側に傾くことで、板ばね45の固定接点に可動板44の可動接点が接触する。これら固定接点及び可動接点がa接点を構成し、a接点が閉じるときにトリップ状態となる。
連動板46は、幅方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、縦方向に沿った支軸によって回動可能に支持されており、奥行方向の奥側が可動板44に係合している。連動板46は、可動板44に連動して回動することで、図には表れない連動板46の裏側で、接点の開閉を行なう。すなわち、通常時には固定接点に可動接点が接触しているが、過負荷状態になると、連動板46が回動することで、固定接点に対して可動接点が離間する。これら固定接点及び可動接点がb接点を構成し、b接点が開くときにトリップ状態となる。
【0018】
リセット棒34は、トリップ状態から復旧させるための操作子であり、奥行方向を軸方向とする略円柱状に形成され、ケース12のうち、縦方向の他方側で、幅方向の他方側、且つ係合穴21の近傍に配置されている。リセット棒34は、奥行方向に変位可能で、且つ軸周りに回動可能な状態で、ケース12に支持され、さらに縦方向に延びる板ばね47によって奥行方向の手前側に付勢されている。リセット棒34には、初期位置と、手動リセット位置と、自動リセット位置と、がある。初期位置は、奥行方向の手前側がケース12よりも突出した
図3に示す位置である。手動リセット位置は、初期位置から奥行方向の奥側に押されただけの位置である。自動リセット位置は、初期位置から奥行方向の奥側に押され、且つ奥行方向の手前側から見て時計回りに約90度だけ回されることで奥行方向の位置が保持される位置である。
【0019】
図4は、リセット棒を示す図である。
図中の(a)は、初期位置にあるリセット棒34を、縦方向の一方側、幅方向の他方側、及び奥行方向の手前側から見た状態である。図中の(b)は、初期位置にあるリセット棒34を縦方向の他方側、幅方向の一方側、及び奥行方向の奥側から見た状態である。
リセット棒34は、奥行方向の手前側から奥側に向かって、頭部51と、首部52と、底部53と、を順に備える。
【0020】
頭部51は、略円柱状であり、奥行方向における手前側の端部には、プラスドライバ等の工具が嵌り合う十字溝54が形成されている。頭部51には、外周面における幅方向の他方側に、幅方向の一方側に向かって凹となる凹部55が形成されている。凹部55は、縦方向に延びる浅い窪みであり、凹部55の底面は、縦方向及び奥行方向に沿った平面によって形成されることで、奥行方向から見て外周面の弦となる。凹部55における奥行方向の寸法は、突出片22における奥行方向の寸法よりも大きい。また、凹部55における幅方向の最大深さは、先端部23における幅方向の最大高さ程度である。凹部55において、幅方向の最大深さとは、頭部51の外周面のうち幅方向の最も他方側に位置する一点からの深さである。先端部23において、幅方向の最大高さとは、突出片22のうち幅方向における他方側の端面からの高さである。凹部55が形成されることで、頭部51の外周面には、凹部55よりも奥行方向の奥側に突出部51aが形成されている。突出部51aは、凹部55の底面に対して幅方向の他方側に突出しているが、頭部51における外周面の一部である。
【0021】
首部52は、頭部51と同軸で頭部51よりも小径の略円柱状であり、外周面のうち奥行方向の奥側には、縦方向の他方側に突出したラッチ部56が形成されている。ラッチ部56は、径方向外側の面が頭部51の外周面に沿って形成されており、縦方向の他方側から見た幅方向の寸法が首部52の外径より僅かに小さい。ラッチ部56は、頭部51のうち奥行方向における奥側の端面に対して奥行方向に離間している。
底部53は、首部52よりも大径の略円板状であり、奥行方向における奥側の端面に板ばね47が接触することで、リセット棒34が奥行方向の手前側に付勢される。底部53には、奥行方向の奥側に向かって凸となる駒片57が形成されている。駒片57は、奥行方向の奥側に向かうほど小径となる略円錐筒状に形成され、底部53における周方向のうち、縦方向の一方側から幅方向の一方側にわたる約90度の範囲に設けられており、外周側の円錐面に板ばね45における奥行方向の手前側が接触する。
【0022】
次に、リセット棒34の位置について説明する。
図5は、初期位置を示す図である。
ケース12には、奥行方向における手前側の外壁のうち、幅方向の他方側に、縦方向の一方側に向かって凹となる奥行方向から見て略U字状の凹溝61が形成されている。凹溝61は、リセット棒34の頭部51の外径より僅かに大きい。ケース12の内部には、凹溝61よりも奥行方向の奥側に、幅方向及び縦方向に沿った隔壁62が形成され、隔壁62には、縦方向の一方側に向かって凹となる奥行方向から見て略U字状の凹溝63が形成されている。隔壁62の厚さは、頭部51とラッチ部56との奥行方向の隙間よりも僅かに小さく、凹溝63は、リセット棒34の首部52の外径より僅かに大きい。凹溝61及び凹溝63に、リセット棒34が嵌め合わされている。リセット棒34は、板ばね47によって奥行方向の手前側に付勢されることで、底部53が隔壁62に接触しており、これが初期位置となる。このとき、首部52と共にラッチ部56も凹溝63に嵌り合うため、リセット棒34が軸周りに回されることが阻止される。
【0023】
図6は、手動リセット位置、及び自動リセット位置を示す図である。
図中の(a)は、リセット棒34の手動リセット位置を示している。トリップしている状態でリセット棒34が奥行方向の奥側に押されると、駒片57によって板ばね45及び可動板44が幅方向の一方側へ押されるので、過負荷状態が解消されていれば、再びa接点を開き、b接点を閉じる。
図中の(b)は、リセット棒34の自動リセット位置を示している。トリップしている状態でリセット棒34が奥行方向の奥側に押され、且つ奥行方向の手前側から見て時計回りに約90度だけ回されると、隔壁62における奥行方向の奥側にラッチ部56が接触することで、リセット棒34は奥行方向の位置が保持される。また、駒片57によって板ばね45及び可動板44が幅方向の一方側へ押されるので、過負荷状態が解消されたとき、自動的に再びa接点を開き、b接点を閉じる。
【0024】
次に、カバー13の取外しについて説明する。
図7は、初期位置を示す図である。
図中の(a)は、カバー13が装着されたケース12を、幅方向の他方側から見た状態を示す。ケース12の係合穴21には、カバー13に形成された突出片22の先端部23が内側から嵌り合っている。
図中の(b)は、(a)において、リセット棒34を通り、幅方向及び奥行方向に沿ったA‐A断面を示している。リセット棒34が初期位置にあるときには、頭部51の外周面のうち、凹部55よりも奥行方向の奥側にある突出部51aが突出片22の裏側に対向している。そのため、先端部23が内側に押されても、突出片22の裏面が頭部51の外周面に干渉し、先端部23が内側に押し込まれることが阻止される。したがって、ケース12に対するカバー13の取外しが不可となる。同様の理由で、ケース12に対するカバー13の取付けも不可となる。
【0025】
図8は、手動リセット位置、及び自動リセット位置を示す図である。
図中の(a)は、手動リセット位置にあるリセット棒34を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を示している。リセット棒34が手動リセット位置にあるときには、頭部51の凹部55が突出片22の裏側に対向している。そのため、先端部23が内側に押されると、突出片22が凹部55に入り込み、先端部23が内側に押し込まれることが許容される。したがって、ケース12に対するカバー13の取外しが可能となる。また、同様の理由で、ケース12に対するカバー13の取付けも可能となる。
図中の(b)は、自動リセット位置にあるリセット棒34を通り、幅方向及び奥行方向に沿った断面を示している。リセット棒34が自動リセット位置にあるときには、頭部51の外周面が突出片22の裏側に対向している。そのため、先端部23が内側に押されても、突出片22の裏面が頭部51の外周面に干渉し、先端部23が内側に押し込まれることが阻止される。したがって、ケース12に対するカバー13の取外しが不可となる。同様の理由で、ケース12に対するカバー13の取付けも不可となる。
【0026】
《作用》
次に、一実施形態の主要な作用について説明する。
熱動形過負荷継電器11は、ケース12と、カバー13と、リセット棒34と、を備える。ケース12は、奥行方向を軸方向とするねじ端子が設けられ、電磁接触器に接続される側が開放され、奥行方向から見て幅方向の側面に係合穴21が形成されている。カバー13は、ケース12側に向かって突出した突出片22が形成され、突出片22の先端部23が係合穴21に内側から嵌り合うことでケース12の開放側に取付けられる。リセット棒34は、奥行方向を軸方向とし、初期位置となる奥行方向の手前側から奥側に押されただけの手動リセット位置に変位したときに、トリップ状態から復旧させる。また、初期位置から奥行方向の奥側に押され且つ軸周りに回されることで奥行方向の位置が保持された自動リセット位置に変位したときに、自動でトリップ状態から復旧させる。リセット棒34は、外周面のうち奥行方向及び周方向の予め定めた範囲に凹部55が形成され、初期位置及び自動リセット位置の何れかにあるときには、外周面が突出片22の裏側に対向することで先端部23が内側に押されることを阻止する。また、手動リセット位置にあるときには、凹部55が突出片22の裏側に対向することで先端部23が内側に押されることを許容する。
【0027】
したがって、リセット棒34が手動リセット位置にあるときには、突出片22の先端部23が内側に押されることで、係合穴21に嵌り合った先端部23が外れ、カバー13を取外すことができる。一方、リセット棒34が初期位置か自動リセット位置にあるときには、突出片22の先端部23を内側に押されることが阻止されるため、カバー13を取外すことができない。配線作業によってねじ端子にトルクが加えられるのは、リセット棒34が初期位置か自動リセット位置にあるときであり、このときだけはカバー13を取外すことができない。したがって、カバー13の着脱を可能にし、且つねじ端子にトルクを加えるときに意図せずカバー13の係合が外れることを防止できる。また、突出片22や先端部23を破壊することがないため、破片がケース12の内部に残ってしまうという事態も避けられる。
【0028】
係合穴21が形成される側面は、幅方向における一方側及び他方側のうち、奥行方向の手前側から見てねじ端子に加えるトルクが、ケース12の開放側で幅方向の内側から外側に向かう側である。例えば締付けトルクの場合、
図1に示すように、幅方向の他方側となる。これにより、配線作業によってねじ端子に締付けトルクが加えられるとしても、意図せずカバー13の係合が外れることを防止できる。
ねじ端子に加えるトルクは、締付けトルクである。一般に、ねじ端子を緩めるトルクより、締付けトルクの方が大きいため、ねじ端子を締付ける際に、意図せずカバー13の係合が外れる可能性が高い。したがって、締付けトルクへの対策を講じることで、意図せずカバー13の係合が外れることを効果的に防止できる。
突出片22は、先端部23が鉤状に形成されたスナップフィットである。これにより、カバー13の着脱が容易になる。
【0029】
次に、比較例について説明する。
図9は、比較例を示す図である。
図中の(a)は、カバー13が装着されたケース12を、幅方向の他方側から見た状態を示す。図中の(b)は、(a)において、リセット棒71を通り、幅方向及び奥行方向に沿ったB‐B断面を示している。リセット棒71は、頭部51と、首部52と、を備えており、一実施形態のリセット棒34とは形状が異なっている。ケース12の裏側には、障壁72を設けている。リセット棒71が初期位置にあるとき、首部52の外周面が突出片22の裏側に対向することで、先端部23が内側に押されることを許容するため、ケース12に対するカバー13の取外しが可能となる。
【0030】
そのため、ケース12の係合穴21に近いねじ端子を締付ける際に、カバー13の突出片22に力がかかり、意図せずカバー13が外れる可能性がある。これは、ケース12における縦方向の他方側が電磁接触器に堅固に固定されていることで、締付けトルクがカバー13の突出片22に歪みを生じさせるためである。そこで、ケース12の裏側に突出片22が撓むことを阻止する障壁72を設けている。このような構成にした場合、カバー13を外すには突出片22を破壊しなければならず、再利用ができなかった。さらに、突出片22を破壊した場合、破片がケース12の内部に残ってしまうという問題もあった。
【0031】
《変形例》
一実施形態では、端子ねじに加えるトルクとして、締付けトルクを例に説明したが、これに限定されるものではなく、緩めるトルクにも適用可能である。
図10は、変形例を示す図である。
ここでは、熱動形過負荷継電器11の構成を幅方向に反転させてあり、係合穴21が形成される側面は、幅方向の一方側となる。この場合、奥行方向の手前側から見てねじ端子を緩めるトルクが、ケース12の開放側で幅方向の内側から外側に向かうトルクになる。したがって、固く締結されたねじ端子を緩める際に、カバー13の突出片22に力がかかり、意図せずカバー13が外れる可能性がある。したがって、緩めるトルクへの対策を講じることで、意図せずカバー13の係合が外れることを効果的に防止できる。
【0032】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0033】
11…熱動形過負荷継電器、12…ケース、13…カバー、14…主端子、15…補助端子、16…補助端子、21…係合穴、22…突出片、23…先端部、31…バイメタル、32…シフタ、33…反転機構、34…リセット棒、36…ヒータ、37…接続端子、41…補償バイメタル、42…釈放レバー、43…引張りばね、44…可動板、45…板ばね、46…連動板、47…板ばね、51…頭部、51a…突出部、52…首部、53…底部、54…十字溝、55…凹部、56…ラッチ部、57…駒片、61…凹溝、62…隔壁、63…凹溝、71…リセット棒、72…障壁