(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】水中油型乳化日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20240124BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240124BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240124BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240124BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240124BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240124BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240124BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240124BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/49
A61K8/44
A61K8/41
A61K8/46
A61Q17/04
A61Q1/12
(21)【出願番号】P 2021212442
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2017039484の分割
【原出願日】2017-03-02
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】大竹 佐和子
(72)【発明者】
【氏名】薮 桃
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03093004(EP,A1)
【文献】特開2010-254670(JP,A)
【文献】特開2015-182994(JP,A)
【文献】特表2012-524115(JP,A)
【文献】特開2015-189762(JP,A)
【文献】国際公開第2007/122822(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a1)スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤、並びに、
(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、
(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び、
(a4)エチルヘキシルトリアゾンを含有する油性の紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤、
(B)極性油、
(C)高級アルコール、及び、
(D)HLBが8以上の非イオン性界面活性剤を含み、
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを含まず、
前記油性の紫外線吸収剤が油相に配合され、
前記(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン、及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下であることを特徴とする水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記(B)極性油の配合量の、(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び(a4)エチルヘキシルトリアゾンの合計配合量に対する比率[(B)/(a2+a3+a4)]が0.6以上である、請求項1に記載の乳化化粧料。
【請求項3】
(A)紫外線吸収剤が、(a1)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び(a4)エチルヘキシルトリアゾンのみからなる、請求項1に記載の乳化化粧料。
【請求項4】
(B)極性油が、IOB=0.1~0.5のエステル油からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
【請求項5】
(C)高級アルコールが、ステアリルアルコールとベヘニルアルコールとの組み合わせからなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
【請求項6】
日焼け止め化粧料である、請求項1から5のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。より詳細には、従来汎用されていた液状紫外線吸収剤であるメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを含まず、なおかつ油分量が少なくても乳化安定性に優れ、高い紫外線防御効果を示す水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線防御効果を示す水中油型乳化化粧料、例えば日焼け止め化粧料においては、従来から、UVA領域からUVB領域に亘る紫外線を有効に遮蔽するため、油性の紫外線吸収剤及び粉末状の紫外線散乱剤を適宜組み合わせて配合されていた。しかし、油性の紫外線吸収剤を多く配合するとべたついた感触を与え、紫外線散乱剤の配合量が多いと粉っぽい使用感となり皮膚が不自然に白くなる等の問題があった。
【0003】
特許文献1には、特定の4種類の紫外線吸収剤を配合することにより、紫外線散乱剤を配合しない又は配合量を抑制しても高いSPF(Sun Protection Factor)が達成できたことが記載されている。
【0004】
一方、紫外線吸収剤として汎用されているオクチルメトキシシンナメート(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル)やオクトクリレンに刺激性があることが指摘され、それらに代えて特定の紫外線散乱剤(ルチル型結晶酸化チタン等)を配合して紫外線防御効果を確保する日焼け止め化粧料も提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、前記の液状紫外線吸収剤は、それら自身が紫外線吸収能を持つのみならず、共配合される固形又は難溶性の紫外線吸収剤の良溶媒としても作用している(例えば、特許文献3参照)。従って、これらの液状紫外線吸収剤を配合しない場合は、他の紫外線吸収剤の析出や不安定化を防止するために、溶媒となる極性油を増量せざるを得ず、その結果としてべたつきを生じるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2010/110020号公報
【文献】特開2015-124172号公報
【文献】特開2014-240382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明における課題は、液状紫外線吸収剤であるメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを配合せず、なおかつ極性油の配合量を抑制しても、高い紫外線防御能を発揮するのみならず、乳化安定性及び使用感に優れた水中油型乳化化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、紫外線吸収剤として特定の水溶性吸収剤と油性固形吸収剤とを組み合わせて配合し、さらに乳化系にαゲル構造を導入することによって、高い紫外線防御能を示しながら安定性及び使用性に優れた水中油型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)(a1)スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤、
(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、
(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び、
(a4)エチルヘキシルトリアゾンを含む紫外線吸収剤、
(B)極性油、
(C)高級アルコール、及び、
(D)非イオン性界面活性剤を含み、
前記(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン、及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下であることを特徴とする水中油型乳化化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水中油型乳化化粧料は、液状紫外線吸収剤であるメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンを配合せず、なおかつ極性油の配合量を抑制しても、乳化安定性に優れ、高い紫外線防御効果を示すとともに、刺激が無く使用感触が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水中油型乳化化粧料(以下、単に「乳化化粧料」ともいう)は、紫外線吸収剤(A成分)を含有する。本発明における紫外線吸収剤は、スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤(a1成分)、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(a2成分)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(a3成分)、及びエチルヘキシルトリアゾン(a4成分)を必須成分として含む。
【0012】
(a1)スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤は、分子内にスルホン酸基を有する水溶性の紫外線吸収剤である。
(a1)成分としては、限定されないが、スルホン酸基を有するフェニルベンズイミダゾール誘導体又はベンジリデンショウノウ誘導体等が好ましく用いられる。
【0013】
フェニルベンズイミダゾール誘導体の具体例としては、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(表示名称)等が挙げられ、オーソレックス232(Eusolex 232)という商品名でメルク株式会社から市販されてものが好ましく使用できる。
ベンジリデンショウノウ誘導体としては、ベンジリデンショウノウスルホン酸、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸等が挙げられ、いずれも、シメックス(Chimex)社からメギゾリル(Mexoryl)SD及びメギゾリル(Mexoryl)SXという商品名で市販されている。
【0014】
本発明の乳化化粧料におけるスルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤(a1成分)の配合量は、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0015】
(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(表示名称)は、油性の固形紫外線吸収剤であり、チノソーブS(TINOSORB S)という商品名でBASF社から市販されている。
本発明の乳化化粧料におけるビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(a2成分)の配合量は、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0016】
(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(表示名称)は、油性で粘性液状又は固形の紫外線吸収剤であり、ユビナールAプラス(UVINUL A PLUS)という商品名でBASF社から市販されている。
本発明の乳化化粧料におけるジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(a3成分)の配合量は、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0017】
(a4)エチルヘキシルトリアゾン(表示名称)は、油性の固形紫外線吸収剤であり、ユビナールT-150(UVINUL T-150)という商品名でBASF社から市販されている。
本発明の乳化化粧料におけるエチルヘキシルトリアゾン(a4成分)の配合量は、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0018】
成分(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の合計配合量は、1.0~20質量%とするのが好ましく、より好ましくは2.0~18質量%である。合計配合を前記範囲内で調整すれば十分な紫外線防御効果が得られる。
【0019】
本発明の乳化化粧料における紫外線吸収剤は、上記(a1)~(a4)の紫外線吸収剤のみから構成されていてもよいが、それらに加えて、水溶性又は油溶性の他の紫外線吸収剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合してもよい。他の紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等を挙げることができる。ただし、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びオクトクリレンは配合しない。
なお、(a2)、(a3)及び(a4)を含む油溶性紫外線吸収剤の合計配合量は、0.5~19.5質量%とするのが好ましく、より好ましくは1~15質量%である。
【0020】
本発明の乳化化粧料に配合される極性油(成分B)は、化粧料等に通常配合されている極性油であればよく、特に限定されない。具体的には、エステル油、特にIOB値が0.1~0.5程度のエステル油が好ましく使用される。
【0021】
極性油(B成分)の具体例としては、限定されないが、セバシン酸ジイソプロピル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、エチルヘキサン酸セチル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリイソステアリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、パルミチン酸イソプロピル、マカダミアナッツ脂肪酸フィトステリル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、ネオペンタン酸イソデシル等が挙げられる。さらに、液状紫外線吸収剤も極性油(B成分)に包含され得る。従って、本発明において、A成分及びB成分各々の合計配合量を算出する場合等には、油溶性で極性の液状紫外線吸収剤は極性油(B成分)に含めるものとする。
【0022】
本発明の乳化化粧料における極性油(B成分)の配合量は、(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下となるようにすることが必要である。この合計配合量が45質量%を超えると安定した乳化物が得られない。45質量%以下とは、例えば、44質量%、43質量%、42質量%、41質量%、40質量%、39質量%以下、38質量%以下、37質量%以下、36質量%以下、及び35質量%以下等の全て値を含むことは言うまでもない。
【0023】
極性油(B成分)の配合量は、前記の条件を満たす範囲内であれば特に限定されないが、塗布後の肌につやを与えるという観点から、6質量%以上とするのが好ましい。
【0024】
本発明の乳化化粧料においては、極性油(B成分)の配合量の、(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及び(a4)エチルヘキシルトリアゾンの合計配合量に対する比率[(B)/(a2+a3+a4)]を0.6以上とすると安定性が更に向上するので好ましい。この比率[(B)/(a2+a3+a4)]の上限値は特に限定されないが、化粧料の使用性の観点から、約5以下とするのが好ましい。
【0025】
(C)高級アルコール
本発明の日焼け止め化粧料で使用する高級アルコール(C成分)としては、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において使用できる炭素数6以上の高級アルコールであれば特に限定されず、飽和直鎖一価アルコール及び不飽和一価アルコール等を包含する。飽和直鎖一価アルコールとしては、ドデカノール(ラウリルアルコール)、トリドデカノール、テトラドデカノール(ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、ノナデカノール、イコサノール(アラキルアルコール)、ヘンイコサノール、ドコサノール(ベヘニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール(カルナービルアルコール)、ペンタコサノール、ヘキサコサノール(セリルアルコール)等が挙げられる。不飽和一価アルコールとしては、エライジルアルコール等が挙げられる。本発明では経時安定性の点から飽和直鎖一価アルコールが好ましい。
【0026】
(C)高級アルコールは、上記の1種または2種以上を用いることができる。本発明では2種以上の脂肪族アルコールの混合物を用いるのが好ましく、その混合物の融点が50℃以上となるような組み合わせの混合物が安定性の点で特に好ましい。例えば、ステアリルアルコールとベヘニルアルコールとの組み合わせが特に好ましい組み合わせとして挙げられる。
【0027】
(C)高級アルコールの配合量は、化粧料全量に対して、0.1~10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1~7質量%である。(C)高級アルコールの配合量が0.1質量%未満又は10質量%を超えると十分な乳化安定性が得られない場合がある。
【0028】
(D)非イオン性界面活性剤
本発明の水中油型乳化化粧料に使用される非イオン性界面活性剤(D成分)は、特に限定されるものではない。具体例としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、マルチトールヒドロキシ脂肪族アルキルエーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油グリセリル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、テトラポリオキシエチレン・テトラポリオキシプロピレン-エチレンジアミン縮合物、ポリオキシエチレン-ミツロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド、ポリオキシエチレン-プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-アルキルアミン、ポリオキシエチレン-脂肪酸アミド、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸などが挙げられる。本発明の化粧料では、HLBが8以上の親水性の非イオン性界面活性剤、例えば、ベヘネス-20、ポリソルベート60、ステアリン酸PEG-40等が特に好ましい例として挙げられる。非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
(D)非イオン性界面活性剤の配合量は、化粧料全量に対して、0.1~20質量%が好ましく、さらに好ましくは0.3~5質量%である。(D)非イオン性界面活性剤の配合量が0.1質量%未満又は20質量%を超えると十分な乳化安定性が得られない場合がある。
【0030】
(E)水
本発明の日焼け止め化粧料は水中油型乳化物であるので、水(E成分)を含んでいる。本発明では、前記(C)高級アルコールは、前記(D)非イオン性界面活性剤及び(E)水とともにラメラ液晶構造を有する会合体(「αゲル」ともいう)を形成する。(C)高級アルコールと(D)界面活性剤との配合比は、(C):(D)=2:1~25:1(モル比)の範囲内とするのが好ましい。
【0031】
本発明の日焼け止め化粧料は、日焼け止め効果を有する通常の化粧料や医薬部外品に配合可能な他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
他の任意成分としては、限定されないが、例えば、粉末成分、色材、保湿剤、油分((A)油性の紫外線吸収剤及び(B)極性油を除く)、増粘剤、分散剤、防腐剤、香料、各種薬剤等が挙げられる。
【0032】
粉末成分としては、微粒子状又は顔料級の酸化チタン及び酸化亜鉛を代表例として挙げることができる。その他、酸化チタン及び酸化亜鉛以外の金属酸化物粉末、タルク、マイカ、カオリン等の体質顔料、シリカ、シリコーン粉末、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ナイロン粉末等のポリマー粉末等が挙げられる。なお、本発明の日焼け止め化粧料は、前記特定の紫外線吸収剤(a1~a4)の組み合わせによって十分な紫外線防御能を有するので、酸化チタン又は酸化亜鉛等の紫外線散乱剤を必ずしも配合しなくてもよい。即ち、本発明の日焼け止め化粧料は紫外線散乱剤を含まない態様も包含する。
【0033】
色材としては、顔料、パール顔料等の、メーキャップ化粧料に通常配合されるものを使用することができる。具体的には、無機白色系顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛)、無機赤色系顔料(酸化鉄(べンガラ)、チタン酸鉄)、無機褐色系顔料(γ-酸化鉄)、無機黄色系顔料(黄酸化鉄、黄土)、無機黒色系顔料(黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン)、無機紫色系顔料(マンゴバイオレット、コバルトバイオレット)、無機緑色系顔料(酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト)、無機青色系顔料(群青、紺青)、パール顔料(酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔)、金属粉末顔料(アルミニウムパウダー、カッパーパウダー)、有機顔料(赤色202号、赤色205号、赤色220号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号)、ジルコニウム、バリウム、アルミニウムレーキの有機顔料(赤色3号、赤色104号、赤色227号、赤色401号、橙色205号、黄色4号、黄色202号、緑色3号、青色1号)、天然色素(クロロフィル、カルチノイド系(β-カロチン)、カルサミン、コチニール、カルコン、クルクミン、ベタニン、フラボノール、フラボン、アントシアニジン、アントラキノン、ナフトキノン)、機能性顔料(窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体(ハイブリッドファインパウダー))等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、上記の中から選択される1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。本発明の乳化化粧料では、これら色材は、内油相又は外水相のいずれにも分散配合することができる。
【0034】
保湿剤としては、例えば、グリセリン,1,3-ブチレングリコール,ジプロピレングリコール,プロピレングリコール等の多価アルコール、ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0035】
油分((A)油性の紫外線吸収剤及び(B)極性油を除く)としては、揮発性又は不揮発性の液状油分、例えば、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、液体油脂等、及び固形油分が挙げられる。
【0036】
本発明の乳化化粧料は、限定されないが、例えば、(C)高級アルコール、(D)非イオン性界面活性剤、及び油分を高温で溶解して溶解油分パーツを調製し、(E)水と他の水性成分を含む水相パーツを加温したものに前記溶解油分パーツを加えて常法により乳化して冷却することによって製造することができる。
【0037】
本発明の乳化化粧料は、水中油型乳化物に特有のみずみずしい使用感触があり、しかも特定の紫外線吸収剤の組み合わせによって優れた紫外線防御効果を発揮する。従って、本発明の乳化化粧料は、クリーム状、乳液状、液状等の様々な剤型で好適に用いられる。製品形態としては、日焼け止め化粧料を含むスキンケア化粧料として、あるいは日焼け止め効果を有する下地、ファンデーション等のメーキャップ化粧料とすることができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される組成物全量に対する質量%で示す。
【0039】
以下の表1(乳液)及び表2(クリーム)に掲げた処方で水中油型乳化日焼け止め化粧料を調製した。各例の日焼け止め化粧料(試料)について、以下の項目(1)~(4)について、下記の基準に従って評価した。
【0040】
(1)乳化安定性
評価基準:
A:析出や分離がみられず、極めて安定であった
B:乳化は可能だが、低温(0℃)で経時的に析出がみられた
C:乳化は可能だが、高温(37℃)で経時的に乳化粒子の増大がみられた
D:乳化は可能だが、室温で経時的に分離がみられた
【0041】
(2)紫外線防御能(吸光度)
各例の試料を1.75mg/cm2でPMMA製基板に塗布し、波長310nmにおける吸光度を、(吸光度計:HITACHI U-4100 Spectrophotometer)を用いて測定した。
【0042】
(3)使用感
専門パネルによる実使用試験を実施し、みずみずしさ及びべたつきの無さの観点から使用感を以下の基準で評価した。
+:優れている
-:劣っている
【0043】
(4)塗布後のつや
専門パネルによる実使用試験を実施し、塗布後の肌のつやを以下の基準で評価した。
A:優れている
B:普通
C:劣っている
【0044】
【0045】
【0046】
表1及び表2に示した結果から明らかなように、本願特許請求の範囲の請求項1から6に記載した要件を全て満たす実施例1~3及び5~8は、乳液あるいはクリームのいずれであっても安定性に優れ、顕著な紫外線防御能を発揮するとともに、使用感も良好で、塗布後の肌につやを与える効果に優れていた。但し、(B)/(a2+a3+a4)の比率が0.6未満であり、極性油の配合量が6質量%未満である実施例4は、短期間であれば安定な乳化状態を維持して実用上問題無いが低温では経時的に析出を生じることがあり、肌へのつや付与効果も普通レベルで問題は無いが顕著なつや向上はみられなかった。
【0047】
一方、油性成分(a2+a3+a4+B)の配合量が45質量%を超える比較例1は、乳化はできるものの、高温経時で不安定化した。また、αゲルを形成する成分(高級アルコール及び非イオン性界面活性剤)を含まず、水中油型乳化化粧料に汎用されている高分子乳化剤((アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー)で乳化を試みた例(比較例2及び3)では、室温経時で分離し安定な乳化物を得ることができなかった。
【0048】
本発明の乳化化粧料の別の処方例を以下に掲げる。
処方例1:
配合成分 配合量(質量%)
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(a1) 3
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシ
フェニルトリアジン(a2) 0.3
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(a3) 0.3
エチルヘキシルトリアジン(a4) 0.3
セバシン酸ジイソプロピル(B) 5
ステアリルアルコール 2
ベヘニルアルコール 3
ベヘネス-20 1
イオン交換水 残余
EDTA-3Na,2H2O 0.1
グリセリン 5
トリエタノールアミン 2
エタノール 5
二酸化チタン 0.5
酸化鉄(ベンガラ) 0.002
黄酸化鉄 0.003
【0049】
本発明は以下の形態を含む。
[第1項]
(A)(a1)スルホン酸基含有水溶性紫外線吸収剤、
(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、
(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び、
(a4)エチルヘキシルトリアゾンを含む紫外線吸収剤、
(B)極性油、
(C)高級アルコール、及び、
(D)非イオン性界面活性剤を含み、
前記(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(a4)エチルヘキシルトリアゾン、及び(B)極性油の合計配合量が45質量%以下であることを特徴とする水中油型乳化化粧料。
[第2項]
前記(B)極性油の配合量の、(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び(a4)エチルヘキシルトリアゾンの合計配合量に対する比率[(B)/(a2+a3+a4)]が0.6以上である、第1項に記載の乳化化粧料。
[第3項]
(A)紫外線吸収剤が、(a1)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、(a3)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び(a4)エチルヘキシルトリアゾンのみからなる、第1項に記載の乳化化粧料。
[第4項]
(B)極性油が、IOB=0.1~0.5のエステル油からなる、第1項から第3項のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
[第5項]
(C)高級アルコールが、ステアリルアルコールとベヘニルアルコールとの組み合わせからなる、第1項から第4項のいずれか一項に記載の乳化化粧料。
[第6項]
日焼け止め化粧料である、第1項から第5項のいずれか一項に記載の乳化化粧料。