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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A47K3/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020005087
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021112266
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 直也
(72)【発明者】
【氏名】森下 正彦
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】吉原 新一朗
(72)【発明者】
【氏名】花井 雄規
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢治
(72)【発明者】
【氏名】松下 圭太
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-198587(JP,A)
【文献】特開2019-198584(JP,A)
【文献】特開平11-318742(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041780(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02896338(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02- 4/00
E03C 1/00- 1/10
B05B 1/00- 3/18
B05B 7/00- 9/08
A61H33/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想の回転軸を中心に回転する2本のアームを有し、
取付壁に取り付けた状態において、各アームの前記回転軸は、交差およびねじれの何れかの位置関係となっており、
前記回転軸は、前記アームが前記取付壁に沿って配置された状態における前記アームの下端部に設けられており、
前記アームを回動して前記取付壁から延出した位置に配置された状態の前記アームの間隔は、前記アームが前記取付壁に沿って配置された状態の前記アームの間隔と比べて広い吐水装置。
【請求項2】
前記取付壁に取り付けた状態において、前記回転軸は水平であり、かつ前記回転軸は左右方向における中央側が前側に位置する請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記アームは棒状である請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記アームが回転する際に、前記アームに対して当該回転方向の仕事をする仕事部を有し、
前記回転軸は、前記仕事部内を通っている請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記アームの吐水口へ通水する通水路を有し、
前記回転軸は、前記通水路内を通っている請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転するアームからシャワーが吐水される吐水装置が知られている。例えば下記特許文献1に記載された吐水装置は、2本のアームを備えている。2本のアームは、吐水装置が取付壁に取り付けられた状態において、取付壁に対して直交な面に沿って回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-52357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成の吐水装置は、取付壁に垂直な面に沿ってアームが変位する。吐水装置の取り付け場所に応じて、取付壁に斜めに交差する面内にアームを変位したいという要望があった。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、取付壁に斜めに交差する面内にアームを変位できる吐水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の吐水装置は、仮想の回転軸を中心に回転するアームを有し、前記回転軸は、取付壁に取り付けた状態において前記取付壁に対して傾斜しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】吐水装置を示す斜視図
図2】吐水装置を示す正面図
図3】鏡面部を取り外した状態の吐水装置の下端部を示す一部拡大正面図
図4】鏡面部を取り外した状態の吐水装置の下端部を示す断面図であって、図3のA-A位置における断面に相当する断面図
図5】筐体とアームとの連結部を示す一部拡大斜視図
図6】筐体とアームとの連結部を示す一部拡大断面図であって、図4のD-D位置における断面に相当する断面図
図7】アームの本体部と可動部との連結部を示す一部拡大断面図
図8】第1ノズルを示す正面図
図9】第1ノズルを示す断面図であって、図8のC-C位置における断面に相当する断面図
図10】本体部に対して可動部が移動する様子を示す断面図であって、図7のB-B位置における断面に相当する断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
吐水装置Mは、浴室の取付壁Wに固定されるシャワー装置である。以下、各構成部材において、吐水装置Mを浴室の取付壁Wに取り付けた状態における上側(図1のZ軸の正方向側)を上側、下側(図1のZ軸の負方向側)を下側、吐水装置Mを正面に見た状態における左側(図1のY軸の負方向側)を左側、右側(図1のY軸の正方向側)を右側、浴室内側(図1のX軸の正方向側)を前側、浴室内側とは反対側(図1のX軸の負方向側)を後側として説明する。
【0009】
吐水装置Mは、筐体10と、一対の第1アーム50Fおよび第2アーム50Sとを備えている。吐水装置Mは、水栓接続部10Aを備えている(図2及び図3参照)。水栓接続部10Aには、図示しない水栓本体から延びた給水ホースが接続される。水栓本体は、流量の調整機能及び温度の調整機能を有する。水栓本体は、図示しない蛇口からの吐水とシャワー(後述するハンドシャワー及びボディシャワー)からの吐水とを切り替える。吐水装置Mは、図示しないハンドシャワーから延びたシャワーホースが接続されるハンドシャワー接続部10Bを備えている。
【0010】
吐水装置Mには、ハンドシャワーと第1および第2アーム50F,50Sからのシャワー(ボディシャワーと称する。)とを切り替える操作部11が設けられている。操作部11は、吐水装置Mの下面から下方に突出している(図2参照)。操作部11を手動で操作することによって、ハンドシャワーとボディシャワーとが切り替えられる。具体的には、操作部11を下方に押すことによって、ハンドシャワーがボディシャワーに切り替えられる。操作部11を上方に引き上げることによって、ボディシャワーがハンドシャワーに切り替えられる。ボディシャワーに切り替えられた状態にて水栓本体を止水したとき、及び水栓本体をシャワーから蛇口の吐水に切り替えたときには、操作部11は元の状態(ハンドシャワーから吐水する状態)に自動復帰する。
【0011】
筐体10は、取付壁Wに固定される。第1アーム50Fは、筐体10の左側に設けられている。第2アーム50Sは、筐体10の右側に設けられている。第1アーム50Fは筐体10に対して仮想の第1回転軸Z1を中心に回転自在である。第2アーム50Sは筐体10に対して仮想の第2回転軸Z2を中心に回転自在である。第1および第2アーム50F,50Sは、回転することによって、図3に示すように、収納状態(図1及び図2において二点鎖線で示す。)及び引出状態(図1及び図2において実線で示す。)になる。
【0012】
収納状態の第1および第2アーム50F,50Sは、筐体10の左側面及び右側面に沿って配置される。筐体10の左右の側面には、収納状態の第1および第2アーム50F,50Sが接触するアーム受け部12が設けられている(図1参照)。第1および第2アーム50F,50Sは、アーム受け部12に接触することによって、取付壁Wとの接触が防止される。第1および第2アーム50F,50Sには、アーム受け部12が嵌合する受け溝部51が形成されている。
【0013】
引出状態の第1および第2アーム50F,50Sは、取付壁Wから延出した任意の位置に配置される。第1および第2アーム50F,50Sは、各々独立して回転することができる。第1および第2アーム50F,50Sの回転角度を調節することによって、使用者は、立位でボディシャワーを使用したり、座位でボディシャワーを使用したりできる。図2に示すように、引出状態の第1および第2アーム50F,50Sの先端と、筐体10の左右方向中央位置における取付壁Wに直交する仮想平面Pとの左右方向の距離は、収納状態の第1および第2アーム50F,50Sの先端と仮想平面Pとの左右方向の距離と比べて大きい。引出状態において第1および第2アーム50F,50Sは、収納状態の第1および第2アーム50F,50Sと比べて左右方向の間隔が広くなる。
【0014】
筐体10の前面には、鏡面部13が備えられている。鏡面部13は、合成樹脂製(例えばABS樹脂)のベース部材に保持されている。
【0015】
第1および第2回転軸Z1,Z2は、図3に示すように、収納状態における第1および第2アーム50F,50Sの下端部に設けられている。第1および第2回転軸Z1,Z2は、吐水装置Mを取付壁Wに取り付けた状態において水平に配置される。第1および第2回転軸Z1,Z2は、吐水装置Mを取付壁Wに取り付けた状態において同じ高さ位置に配置される。
【0016】
第1および第2回転軸Z1,Z2は、図4に示すように、吐水装置Mを取付壁Wに取り付けた状態において取付壁Wに対して傾斜している。第1および第2回転軸Z1,Z2は、筐体10の左右方向における中央側が左右方向における端側よりも前側に位置している。第1および第2回転軸Z1,Z2は、筐体10の左右方向における中央位置で交差する。
【0017】
筐体10の左右の側面には、図4に示すように、第1および第2アーム50F,50Sの回転軌跡に沿うように傾斜した傾斜部10Sが設けられている。傾斜部10Sは、筐体10の側面の前側の領域に形成されている。第1および第2アーム50F,50Sは、傾斜部10S内で筐体10と連結されている。
【0018】
吐水装置Mを取付壁Wに取り付けた状態では、図4に示すように、第1および第2アーム50F,50Sと取付壁Wとの間にクリアランスSが確保される。このクリアランスSによって、第1および第2アーム50F,50Sは取付壁Wと接触することなく約180度回転できる。クリアランスSは、第1および第2アーム50F,50Sの回転に必要な最低限の大きさよりも大きい。クリアランスSの大きさは、第1および第2アーム50F,50Sと取付壁Wとの間に指が挟まれない程度の大きさである。筐体10の厚さ寸法(前後方向の寸法)は、クリアランスSを確保できる寸法である。
【0019】
筐体10の下端部には、図3及び図4に示すように、第1および第2アーム50F,50Sが回転自在に連結されたフレーム15が備えられている。フレーム15は、金属製(例えばSUS304)である。フレーム15は、メインフレーム16、サブフレーム17及びアーム固定フレーム18を有している。
【0020】
メインフレーム16は、筐体10の後側に位置する。メインフレーム16は、筐体10の左右方向における全幅にわたる壁状をなしている。サブフレーム17及びアーム固定フレーム18は、メインフレーム16の左右両端部に備えられている。サブフレーム17は、メインフレーム16の前面に溶接によって固定されている。アーム固定フレーム18は、サブフレーム17の前面にネジによって固定されている。
【0021】
アーム固定フレーム18は、図5に示すように、左右一対の側面部18Aと、上面部18Bと、後面部18Cとを一体に有している。上面部18Bは、左右一対の側面部18Aの上端を連結する。後面部18Cは、左右一対の側面部18Aの後端を連結する。後面部18Cは、サブフレーム17の前面に沿う。
【0022】
アーム固定フレーム18の上面部18Bには、後述する第1および第2トーションばね39F,39Sの端部が係止するフレーム側バネ係止部19が設けられている。フレーム側バネ係止部19は、上面部18Bの一部を切り欠いて形成されている。
【0023】
アーム固定フレーム18の左右の側面部18Aには、図6に示すように、左右方向に貫通する第1貫通部21及び第2貫通部22が形成されている。第1貫通部21は、筐体10の左右方向における中央側(図6では左側)に位置する側面部18Aに形成されている。第2貫通部22は、筐体10の左右方向における端側(図6では右側)に位置する側面部18Aに形成されている。第1貫通部21及び第2貫通部22は、概ね円形状をなしている。第1貫通部21及び第2貫通部22は同軸に形成されている。
【0024】
第1貫通部21の周縁には、図6に示すように、突起23が突出している。突起23は、後述する第1および第2アーム保持部材31F,31Sに形成された切欠溝31Cに嵌合し、第1および第2アーム保持部材31F,31Sを回り止めする。第2貫通部22は、第1貫通部21よりも一回り大きい。第2貫通部22には、後述する第1および第2アーム50F,50Sの端部に設けられたアーム端ハウジング52が嵌合する。
【0025】
フレーム15は、図3に示すように、切替弁24、残水排出弁25、内部配管26及び第1および第2仕事部30F,30Sを保持している。切替弁24は、フレーム15の左右方向における中央部に固定されている。切替弁24は、操作部11の操作によって、ハンドシャワーとボディシャワーとを切り替える。
【0026】
内部配管26は、給水配管26A、ハンドシャワー配管26B、ボディシャワー配管26C及び分岐配管26Dを有している。給水配管26Aの一端には、水栓接続部10Aが設けられている。給水配管26Aの他端は、切替弁24に接続される。ハンドシャワー配管26Bの一端には、ハンドシャワー接続部10Bが設けられている。ハンドシャワー配管26Bの他端は、切替弁24に接続される。給水配管26A及びハンドシャワー配管26Bは、図4に示すように、メインフレーム16とサブフレーム17との間に形成された空間に配置される。ボディシャワー配管26Cの一端は切替弁24に接続され、他端は分岐配管26Dに接続される。分岐配管26Dは、ボディシャワー配管26Cから給水された水を第1および第2アーム50F,50Sの通水路Rへ分岐する。本明細書における水は、冷水に限らず、任意の温度の液体の水のことを意味する。
【0027】
残水排出弁25は、分岐配管26Dに備えられている。残水排出弁25は、第1および第2アーム50F,50Sの通水路R内の残水を排出する。残水排出弁25は、フレーム15の左右方向における中央部に固定されている。
【0028】
第1仕事部30Fは、第1アーム50Fの回転の際に、第1アーム50Fに対して当該回転方向の仕事をする。第2仕事部30Sは、第2アーム50Sの回転の際に、第2アーム50Sに対して当該回転方向の仕事をする。第1および第2仕事部30F,30Sは、図4に示すように、第1および第2アーム50F,50Sに対して1つずつ備えられている。第1および第2仕事部30F,30Sは、第1および第2アーム50F,50Sの間に配置されている。第1仕事部30Fは、第1アーム保持部材31F、第1制動機構32F及び第1弾性部材33Fを備えている。第2仕事部30Sは、第2アーム保持部材31S、第2制動機構32S及び第2弾性部材33Sを備えている。
【0029】
第1および第2アーム保持部材31F,31Sは、図6に示すように、フレーム15に固定されている。図6には、第2アーム保持部材31Sのみを示している。第1アーム保持部材31Fは、第1アーム50Fを回転自在に保持する。第2アーム保持部材31Sは、第2アーム50Sを回転自在に保持する。第1および第2アーム保持部材31F,31Sは、金属製(例えばC3604)である。第1および第2アーム保持部材31F,31Sは、軸部31Aとフランジ部31Bとを有している。軸部31Aは円筒状をなしている。軸部31Aの内部は、軸方向の両端が開口した貫通孔である。軸部31Aは、アーム固定フレーム18の第1貫通部21及び第2貫通部22を貫通している。
【0030】
軸部31Aの外周面には、スプリングガイド34及びブッシュ35が取り付けられている。スプリングガイド34及びブッシュ35は、合成樹脂製(例えばPOM)である。軸部31Aの端部には、切欠溝31Cが形成されている。切欠溝31Cは、軸部31Aの端面から軸部31Aの軸線に沿う方向に延びている。切欠溝31Cには、第1貫通部21に設けられた突起23が係止する。フランジ部31Bは、軸部31Aの端部に設けられている。フランジ部31Bは、円環状をなしている。フランジ部31Bは、第1および第2アーム50F,50Sのそれぞれの端部に備えられたアーム端ハウジング52の部品収容部53に収容され、段部54に係止する。
【0031】
アーム端ハウジング52は、第1および第2アーム50F,50Sのそれぞれの端部に固定されている。アーム端ハウジング52は、第1および第2アーム50F,50Sとともに回転する。アーム端ハウジング52は、金属製(例えばC3604)である。アーム端ハウジング52は、筒状をなしている。アーム端ハウジング52の内部は、第1および第2仕事部30F,30Sの何れかを構成する部品を収容する部品収容部53である。部品収容部53のアーム端ハウジング52の軸線に直交する断面は、円形状をなしている。部品収容部53の軸方向における両端は開口している。第1アーム50Fに固定されたアーム端ハウジング52の軸線は、第1回転軸Z1と一致している。第2アーム50Sに固定されたアーム端ハウジング52の軸線は、第2回転軸Z2と一致している。
【0032】
アーム端ハウジング52は、第1および第2アーム50F,50Sの何れかに嵌合するアーム側嵌合部55と、フレーム15に嵌合するフレーム側嵌合部56とを有している。アーム側嵌合部55の開口部には、ロックナット57が固定されている。ロックナット57は、金属製(例えばC3604)である。ロックナット57の中心部は開口している。
【0033】
フレーム側嵌合部56は、第1および第2アーム50F,50Sの外面から突出している。フレーム側嵌合部56は、アーム固定フレーム18の第2貫通部22に嵌合する。フレーム側嵌合部56は、アーム固定フレーム18に対して回転する。
【0034】
フレーム側嵌合部56には、図5に示すように、後述する第1および第2トーションばね39F,39Sの端部が係止するアーム側バネ係止部58が設けられている。アーム側バネ係止部58は、フレーム側嵌合部56に設けられた突片59を貫通する穴である。突片59は、アーム固定フレーム18の内側に配置される。アーム側バネ係止部58は、アーム端ハウジング52の軸線と平行な方向に貫通している。
【0035】
第1制動機構32Fは、図4~6に示すように、第1アーム50Fの回転に一定の抵抗力を付与する。第2制動機構32Sは、第2アーム50Sの回転に一定の抵抗力を付与する。第2制動機構32Sは、第1制動機構32Fと同様の構成を有するため図示を省略する。第1制動機構32Fは、第1アーム50Fと第1アーム保持部材31Fとの間に備えられている(図6参照)。第2制動機構32Sは、第2アーム50Sと第2アーム保持部材31Sとの間に備えられている。第1および第2制動機構32F,32Sは、力発生部材36、押圧部材37及び摺動部材38を備えている。力発生部材36、押圧部材37及び摺動部材38は、アーム端ハウジング52の部品収容部53に収容されている。
【0036】
力発生部材36は、第1および第2回転軸Z1,Z2の延び方向の弾性力を発生する。力発生部材36は、複数の皿バネである。皿バネは、金属製(例えばSUS304)である。複数の皿バネは、アーム端ハウジング52の軸線に沿って積層されている。皿バネの一端は、ロックナット57の内面に接触する。皿バネの他端は、押圧部材37に接触する。
【0037】
押圧部材37は、力発生部材36によって第1および第2アーム保持部材31F,31S側に押圧される。押圧部材37は、円環状をなす板材である。押圧部材37は、金属製(例えばSUS304)である。
【0038】
摺動部材38は、押圧部材37と第1および第2アーム保持部材31F,31Sとの間に配置される。摺動部材38は、円環状の板材(ワッシャ)である。摺動部材38は、合成樹脂製(例えばPOM)である。摺動部材38は、押圧部材37及びフランジ部31Bと擦れ合う。摺動部材38が押圧部材37及びフランジ部31Bと擦れ合うことによって、摩擦力が発生する。この摩擦力によって、第1および第2制動機構32F,32Sは、第1および第2アーム50F,50Sの回転の際に、当該回転の方向についての負の仕事をする。本願における仕事は、ジュールを単位として表される物理量である。
【0039】
第1弾性部材33Fは、第1トーションばね39Fを備えている。第2弾性部材33Sは、第2トーションばね39Sを備えている。第1および第2トーションばね39F,39Sは、捻り角度に応じたトルクを発生する。第1および第2トーションばね39F,39Sの捻り角度は、第1および第2アーム50F,50Sの回転角度によって決定される。第1および第2トーションばね39F,39Sによって発生するトルクの向きは、第1および第2アーム50F,50Sの位置エネルギーを増大させる向きである。第1および第2アーム50F,50Sを収納状体から引出状態に移行させる場合には、第1および第2トーションばね39F,39Sは、負の仕事をする。第1および第2アーム50F,50Sを引出状体から収納状態に移行させる場合には、第1および第2トーションばね39F,39Sは、正の仕事をする。第1および第2トーションばね39F,39Sは、金属製(例えばSUS304)である。第1および第2トーションばね39F,39Sは、スプリングガイド34の外側に嵌合している。第1および第2トーションばね39F,39Sは、アーム固定フレーム18の内側に配置されている。第1および第2トーションばね39F,39Sの一端は、フレーム側バネ係止部19に係止している。第1および第2トーションばね39F,39Sの他端は、アーム側バネ係止部58に係止している。
【0040】
第1および第2仕事部30F,30S内には、図6に示すように、第1および第2アーム50F,50Sの吐水口60へ通水する通水路Rが形成されている。通水路Rは、可撓性に優れたブレードホース等によって形成されている。通水路Rは、第1および第2仕事部30F,30S内に形成された挿通穴41を通っている。挿通穴41は、ロックナット57の開口、力発生部材36の開口、押圧部材37の開口、摺動部材38の開口、及び第1および第2アーム保持部材31F,31Sの何れかの貫通孔によって構成されている。通水路R内には、第1および第2回転軸Z1,Z2が通っている。第1および第2回転軸Z1,Z2は、挿通穴41の軸線と一致している。
【0041】
第1および第2アーム50F,50Sは、棒状をなしている。各第1および第2アーム50F,50Sの長手方向に直交する断面形状は、図4に示すように、左右方向の寸法よりも前後方向の寸法が大きい形状である。各第1および第2アーム50F,50Sには、図2に示すように、複数の吐水口60が設けられている。吐水口60は、使用者の身体に向けてボディシャワーを吐水する。
【0042】
収納状態において第1および第2アーム50F,50Sの最も上側に位置する吐水口60(上端吐水口60Aと称する。)は、使用者の首肩にシャワー吐水する。収納状態において第1および第2アーム50F,50Sの最も下側に位置する吐水口60(下端吐水口60Bと称する。)は、使用者の脚にシャワー吐水する。収納状態において第1および第2アーム50F,50Sの上下方向の中間部に位置する3つの吐水口60(中間吐水口60Cと称する。)は、使用者の腕、身体にシャワー吐水する。
【0043】
吐水口60は、図2に示すように、収納状態における第1および第2アーム50F,50Sの前面に設けられている。第1および第2アーム50F,50Sの前面のうち吐水口60が配置された部分(吐水面61と称する。)は、図4に示すように、取付壁Wに対して傾斜している。吐水面61は、吐水装置Mの左右方向における中央側に向いている。引出状態では、吐水口60は下向きになる。各第1および第2アーム50F,50Sには、5つの吐水口60が第1および第2アーム50F,50Sの長さ方向にほぼ等間隔で配置されている。これによって、ボディシャワーは、使用者の身体に満遍なく吐水される。
【0044】
各吐水口60は、図7に示すように、ノズル62の先端に形成されている。ノズル62は、ノズルケース63に保持されている。ノズルケース63は筒状をなし、通水路Rの一部を形成する。ノズルケース63に保持されたノズル62は、固定キャップ64によって固定される。
【0045】
ノズル62は、図7に示すように、上端吐水口60A及び下端吐水口60Bを形成する第1ノズル70と、中間吐水口60Cを形成する第2ノズル65とを有している。第1ノズル70は、シャワー吐水(第1シャワー吐水70Cと称する。)の吐水範囲が狭い狭角ノズルである。第1ノズル70は、先端の向きを変えることができるように第1および第2アーム50F,50Sに対して相対的に可動自在に保持されている。第2ノズル65は、シャワー吐水(第2シャワー吐水65Cと称する。)の吐水範囲が広い広角ノズルである。第2ノズル65は、先端の向きが変わらないように第1および第2アーム50F,50Sに対して固定されている。第1シャワー吐水70Cの吐水領域及び第2シャワー吐水65Cの吐水領域は、各ノズル70,65を鉛直方向の下向きにして吐水した場合、各ノズル70,65の軸線と直交する面において円形状をなす。
【0046】
第2ノズル65は、図7に示すように、第2ノズル用管状部65Aと、第2ノズル用ワーラー65Bとを備えている。第2ノズル用管状部65Aは、軸線に沿って水の流路を形成し、先端から水を噴出する。第2ノズル用ワーラー65Bは、第2ノズル用管状部65Aの内部に配置されている。第2ノズル用ワーラー65Bは、旋回流を発生させる。第2ノズル用ワーラー65Bは、第2ノズル用管状部65Aの軸線に対して60°の角度で傾斜している。これによって、第2ノズル65の拡散性は向上している。第2ノズル65によって、使用者の腕、身体は広い範囲にシャワー吐水がなされる。
【0047】
第1ノズル70は、図9に示すように、第1ノズル用管状部71と第1ノズル用ワーラー72とを備えている。第1ノズル用管状部71は、軸線に沿って水の流路を形成し、先端から水を噴出する。第1ノズル用管状部71は、第1ノズル用ワーラー72を収容するワーラー収容部73を有している。ワーラー収容部73の内径寸法は一定である。ワーラー収容部73は、第1ノズル用管状部71において上流側に設けられている。
【0048】
第1ノズル用ワーラー72は、下流側に向かって旋回流を発生させる。第1ノズル用ワーラー72は、第2ノズル用ワーラー65Bの角度と比べて小さい角度で傾斜している。具体的には、第1ノズル用ワーラー72は、第1ノズル用管状部71の軸線に対して40°の角度で傾斜している。これによって、第1ノズル70の直進性は向上している。
【0049】
第1ノズル用管状部71には、流路の断面形状を非円形状に形成する下流管部74が設けられている。下流管部74は、第1ノズル用管状部71のうちワーラー収容部73の下流側に位置している。下流管部74とワーラー収容部73との間には、下流側に向かって内径寸法が小さくなる絞り部75が設けられている。
【0050】
下流管部74の内周面は、凹凸形状である。下流管部74を先端側から見ると、図8に示すように、平歯車のような形状をなしている。下流管部74は、軸線に沿って延びる溝76を6つ備えている。6つの溝76は、軸線を中心にした周方向に並んでいる。6つの溝76は周方向に等間隔で配置されている。6つの溝76は、軸線を中心に回転対称となる位置に配置されている。6つの溝76の深さ寸法(軸線に直交する方向の寸法)は同等である。溝76の底面77は、図9に示すように、第1ノズル70の先端(下流側)に向かって溝76の深さ寸法が大きくなるように傾斜している。
【0051】
下流管部74の内周面において溝76の間に位置する部分は、図8に示すように、円弧形状をなす曲面78である。曲面78は、第1ノズル用管状部71の軸線を中心とした円弧である。曲面78の内径寸法は、ワーラー収容部73の内径寸法と比べて小さい寸法である。曲面78は、第1ノズル70の先端(下流側)に向かって内径寸法が大きくなるように傾斜している。
【0052】
第1ノズル用ワーラー72によって形成された旋回流は、下流管部74の内周面において衝突して乱れを生じる。これによって、第1ノズル70から吐出される第1シャワー吐水70Cの粒径は大きくなる。図7に示すように、第1ノズル70から吐出される第1シャワー吐水70Cの吐水範囲は、第2ノズル65から吐出される第2シャワー吐水65Cの吐水範囲と比べて小さい。第1ノズル70の第1シャワー吐水70Cによって、使用者の首、脚は、刺激感を感じる。
【0053】
第1ノズル70の後端部70Aは、図9に示すように、球形状をなしている。第1ノズル70の後端部70Aは、図7に示すように、ノズルケース63の湾曲面63Aと摺動する。第1ノズル70の先端部70Bは、第1および第2アーム50F,50Sの外面から突出している。第1ノズル70の先端部70Bを手で摘んで第1ノズル70を動かし、第1ノズル70の先端の向きを変えることができる。
【0054】
第1および第2アーム50F,50Sは、図1に示すように、本体部50Aと、本体部50Aに対して相対的に移動する可動部50Bとを有している。可動部50Bは、第1および第2アーム50F,50Sの先端部に設けられている。本体部50Aは、第1および第2回転軸Z1,Z2を中心に、筐体10に対して回転自在に連結されている。本体部50A及び可動部50Bのそれぞれに吐水口60が設けられている。本体部50Aには、中間吐水口60C及び下端吐水口60Bが設けられている。可動部50Bには、上端吐水口60Aが設けられている。
【0055】
可動部50Bは、図7に示すように、仮想の回転軸(第3回転軸Z3と称する。)を中心に本体部50Aに対して回転する。第3回転軸Z3は、第1および第2アーム50F,50Sの長手方向と同方向に延びている。
【0056】
可動部50Bと本体部50Aとの連結部80は、互いに嵌合する移動側筒部81及び本体側筒部82を有している。移動側筒部81は、可動部50Bと一体に設けられている。本体側筒部82は、本体部50Aと一体に設けられている。
【0057】
移動側筒部81及び本体側筒部82の嵌合部は、可動部50Bが移動する際に摺動する円弧面を有している。本体側筒部82の外側に移動側筒部81が嵌合している。嵌合状態において移動側筒部81と本体側筒部82とは同軸である。移動側筒部81の円弧面及び本体側筒部82の円弧面の軸線は、第3回転軸Z3と一致している。
【0058】
可動部50Bと本体部50Aとの連結部80には、図7に示すように、荷重調整部材83が設けられている。荷重調整部材83は、本体側筒部82の外周面と移動側筒部81の内周面との間に配置されたOリングである。荷重調整部材83によって、可動部50Bを移動する際の節度感(抵抗)を得ることができる。
【0059】
可動部50Bと本体部50Aとの連結部80には、図10に示すように、可動部50Bの回転範囲を所定の範囲α内に制限する回転制限部84が設けられている。可動部50Bは、初期位置と移動位置との間を回転する。初期位置は、上端吐水口60A、中間吐水口60C及び下端吐水口60Bが同じ向きに配置される位置である。移動位置は、上端吐水口60Aが中間吐水口60C及び下端吐水口60Bと異なる向きに配置される位置である。
【0060】
回転制限部84は、本体側筒部82の外周面に設けられた凸部84Aと、移動側筒部81の内周面に設けられた凹部84Bとを有している。凸部84Aは、凹部84Bに嵌合している。凹部84Bの周方向における端面が凸部84Aに接触することによって、可動部50Bの回転範囲が制限される。所定の回転範囲αは、第3回転軸Z3を中心とした60度の範囲である。可動部50Bを回転することによって、上端吐水口60Aは、中間吐水口60C及び下端吐水口60Bと比べて最大60度内側に向く。
【0061】
図7に示すように、移動側筒部81の第1および第2アーム50F,50Sの収納状態における下端には、可動部50Bの端面85が設けられている。可動部50Bの端面85は、移動側筒部81の外周面から、第3回転軸Z3に対して直交方向に突出している。可動部50Bの端面85は、可動部50Bの外面を構成する。
【0062】
本体側筒部82の第1および第2アーム50F,50Sの収納状態における上下方向の中間部には、本体部50Aの端面86が設けられている。本体部50Aの端面86は、本体側筒部82の外周面から、第3回転軸Z3に対して直交方向に突出している。本体部50Aの端面86は、本体部50Aの外面を構成する。
【0063】
可動部50Bの端面85と本体部50Aの端面86とは、可動部50Bが移動する際に互いに摺接する。可動部50Bの移動時に本体側筒部82と移動側筒部81とが広い面で接触するから、耐久性を確保できる。
【0064】
可動部50Bと本体部50Aとの連結部80の内側には、上端吐水口60Aに通水する通水路Rを形成する接続管87が配置されている。接続管87は可動部50Bのノズルケース63と、本体部50Aのノズルケース63とに接続されている。接続管87には、第3回転軸Z3が通っている。接続管87は、本体側筒部82及び移動側筒部81と分離した部材である。これによって、可動部50Bの回転に伴う力が接続管87に作用することを防止できる。
【0065】
吐水装置Mの使用方法の一例を説明する。使用開始前の吐水装置Mの第1および第2アーム50F,50Sは、収納状態になっている。まず、使用者は、水栓本体を操作してシャワーからの吐水に切り替える。これによって、ハンドシャワーの吐水が開始される。使用者は、水栓本体を操作し、ハンドシャワーの温度、流量を調節する。
【0066】
次に、使用者は、吐水装置Mに向かって座った状態にて第1および第2アーム50F,50Sを把持し、吐水装置Mの第1および第2アーム50F,50Sを任意の位置まで回転させる。この際、第1および第2制動機構32F,32S及び第1および第2弾性部材33F,33Sによる負の仕事によって、第1および第2アーム50F,50Sの回転に抵抗力が生じる。使用者が引出状態にあわせて第1および第2アーム50F,50Sの位置を調節したところで第1および第2アーム50F,50Sから手を離すと、第1および第2アーム50F,50Sは手を離した位置に止まる。第1制動機構32Fの抵抗力と、第1弾性部材36Fのトルクと、第1アーム50Fの自重とが釣り合い、第2制動機構32Sの抵抗力と、第2弾性部材36Sのトルクと、第2アーム50Sの自重とが釣り合うからである。第1および第2アーム50F,50Sは斜めに回転する。これによって、第1および第2アーム50F,50Sの左右方向の間隔を成人男性の肩幅より広げることができる。第1および第2アーム50F,50Sは、異なる回転角度にできる。
【0067】
次に、使用者は、操作部11を押し操作して、ハンドシャワーをボディシャワーに切り替える。ハンドシャワーの吐水が停止し、ボディシャワーの吐水が開始される。
【0068】
次に、使用者は、可動部50Bの向きを調節する。本体部50Aに対して可動部50Bを回転させ、上端吐水口60Aを使用者の身体に合う向きにする。使用者は、可動部50Bを回転させることによって、上端吐水口60Aの第1シャワー吐水70Cを、当てたい部位(首・肩)に向けることができる。可動部50Bのみを回転することは、第1および第2アーム50F,50Sの全体を回転することと比べて容易である。
【0069】
次に、使用者は、第1ノズル70の先端部70Bを手で摘まんで動かし、上端吐水口60A及び下端吐水口60Bの向きをそれぞれ調節する。第1ノズル70の第1シャワー吐水70Cは直進性があるから、第1ノズル70を動かすことによって、狙ったところに第1シャワー吐水70Cを当てることができる。第1ノズル70の第1シャワー吐水70Cは粒径が大きいから、冷めることなく身体に当たる。下端吐水口60Bからの第1シャワー吐水70Cによって、使用者の脚の温まり感は向上する。第1ノズル70の第1シャワー吐水70Cは粒径が大きいから、当たったところに刺激感を感じることができる。上端吐水口60Aからの第1シャワー吐水70Cによって、使用者の首元は刺激感を感じることができる。
【0070】
使用者は、操作部11を操作してハンドシャワーに切り替えたり、水栓本体を操作して止水したり、水栓本体を操作して蛇口からの吐水に切り替えたりすることによって、ボディシャワーを終了する。
【0071】
その後、使用者は、第1および第2アーム50F,50Sを収納状態に戻す。第1および第2アーム50F,50Sを収納状態まで回転させると、第1および第2アーム50F,50Sの受け溝部51が筐体10のアーム受け部12に嵌合する。この際、第1および第2アーム50F,50Sと取付壁Wとの間のクリアランスSが大きいから、第1および第2アーム50F,50Sと取付壁Wとの間に指を挟むことが防がれる。第1および第2アーム50F,50Sを収納状態に戻す際に、可動部50Bが移動位置にあるときには、可動部50Bは筐体10に接触し、初期位置に戻される。これによって、第1および第2アーム50F,50Sは収納状態に戻される。
【0072】
上記のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。吐水装置Mは、第1および第2アーム50F,50Sと、第1および第2仕事部30F,30Sとを備えている。第1および第2アーム50F,50Sは、吐水口60を有し、仮想の第1および第2回転軸Z1,Z2を中心に回転する。第1および第2仕事部30F,30Sは、第1および第2アーム50F,50Sが回転する際に、第1および第2アーム50F,50Sに対して当該回転方向の仕事をする。第1及び第2仕事部30F,30S内に、吐水口60へ通水する通水路Rが形成されている。この構成によれば、仕事部30と通水路Rとを離れた部位に設ける場合に比べて、吐水装置Mをコンパクトにできる。
【0073】
吐水装置Mは、第1および第2アーム50F,50Sと、第1および第2仕事部30F,30Sとを備えている。第1仕事部30Fは、第1アーム50Fの回転の際に、第1アーム50Fに対して当該回転方向の仕事をする。第2仕事部30Sは、第2アーム50Sの回転の際に、第2アーム50Sに対して当該回転方向の仕事をする。第1および第2仕事部30F,30Sは、第1および第2アーム50F,50Sの間に配置されている。この構成によれば、第1および第2仕事部30F,30Sが第1および第2アーム50F,50Sの両外側に突出している場合と比べてコンパクトにできる。
【0074】
第1および第2回転軸Z1,Z2は、取付壁Wに取り付けた状態において取付壁Wに対して傾斜している。この構成によれば、取付壁Wに斜めに交差する面内に第1および第2アーム50F,50Sを変位できる。
【0075】
第1および第2回転軸Z1,Z2は、交差の位置関係となっている。この構成によれば、第1および第2アーム50F,50Sを非平行な面に沿って変位できる。
【0076】
取付壁Wに取り付けた状態において、第1および第2アーム50F,50Sの先端を水平面に投影した位置は、第1および第2アーム50F,50Sの回転に伴って変化する。この構成によれば、第1および第2アーム50F,50Sを回転することによって、第1および第2アーム50F,50Sの先端の水平方向の位置を変えることができる。
【0077】
取付壁Wに取り付けた状態において、第1および第2回転軸Z1,Z2は、第1および第2アーム50F,50Sが取付壁Wに沿って配置された状態における第1および第2アーム50F,50Sの下端部に設けられている。この構成によれば、第1および第2アーム50F,50Sは下端部を回転軸にして回転する。第1および第2アーム50F,50Sが取付壁Wから斜め上向きに突出した状態になるまで第1および第2アーム50F,50Sを回転して使用する場合、第1および第2アーム50F,50Sの上端部が回転軸である場合と比べて第1および第2アーム50F,50Sの回転量を少なくできる。
【0078】
第1および第2アーム50F,50Sは、本体部50Aと、本体部50Aに対して相対的に移動する可動部50Bと、を有している。本体部50A及び可動部50Bのそれぞれに吐水口60が設けられている。この構成によれば、可動部50Bを移動することによって、本体部50Aの吐水口60B,60Cに対して可動部50Bの吐水口60Aの位置や向きを変えることができる。
【0079】
可動部50Bは、仮想の第3回転軸Z3を中心に本体部50Aに対して回転する。この構成によれば、可動部50Bを回転することによって、本体部50Aの吐水口60B,60Cに対して可動部50Bの吐水口60Aの位置や向きを変えることができる。
【0080】
第3回転軸Z3は、第1および第2アーム50F,50Sの長手方向と同方向に延びている。この構成によれば、第1および第2アーム50F,50Sの長手方向と直交する面に沿って上端吐水口60Aの位置や向きを変えることができる。
【0081】
可動部50Bに設けられた上端吐水口60Aに通水する通水路R内に、可動部50Bの第3回転軸Z3が通っている。この構成によれば、通水路Rと第3回転軸Z3とが離間している場合と比べて第1および第2アーム50F,50Sの構造をコンパクトにできる。
【0082】
可動部50Bの回転範囲αは、所定の範囲内に限定されている。可動部50Bを移動した状態のまま、第1および第2アーム50F,50Sを収納状態にすることができる程度の回転範囲に限定することによって、可動部50Bを本体部50Aに対して規定の位置に戻すことなく第1および第2アーム50F,50Sを収納状態にできる。
【0083】
可動部50Bに設けられた上端吐水口60Aは、第1ノズル70の先端に形成されている。第1ノズル70は、先端の向きを変えることができるように可動部50Bに対して相対的に可動自在に保持されている。この構成によれば、第1ノズル70を動かして上端吐水口60Aの向きを変えることができるから、上端吐水口60Aの向きや位置をより細かく変えることができる。
【0084】
本体部50Aは、仮想の第1および第2回転軸Z1,Z2を中心に、筐体10に対して回転可能に連結されている。この構成によれば、筐体10に対して本体部50Aを回転することによって、本体部50Aの吐水口60B,60Cの位置や向きを変えることができる。
【0085】
第1ノズル70は、第1ノズル用管状部71と、第1ノズル用ワーラー72と、下流管部74とを備えている。第1ノズル用管状部71は、軸線に沿って水の流路を形成し、先端から水を噴出する。第1ノズル用ワーラー72は、第1ノズル用管状部71の内部に配置され、下流側に向かって旋回流を発生させる。下流管部74は、第1ノズル用管状部71のうち第1ノズル用ワーラー72の下流側に設けられている。下流管部74は、流路の軸線に直交する断面形状を非円形状に形成する。この構成によれば、下流管部74において旋回流が乱されることによって、噴出する水の粒径を大きくできる。
【0086】
下流管部74は、軸線に沿って延びる溝76を複数備えている。この構成によれば、溝76によって旋回流を乱すことができる。
【0087】
第1ノズル70は、先端の向きを変えることができるように第1および第2アーム50F,50Sに対して相対的に可動自在に保持されている。この構成によれば、第1ノズル70を動かして上端吐水口60A及び下端吐水口60Bの向きを変えることができるから、吐水の向きや位置をより細かく変えることができる。
【0088】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、第1および第2回転軸Z1,Z2が通水路R内に位置する。これに限らず、第1および第2回転軸は通水路の外側に位置してもよい。
(2)上記実施形態では、第1および第2回転軸Z1,Z2が交差の位置関係となっている。これに限らず、第1および第2回転軸は、ねじれの位置関係となっていてもよい。第1および第2回転軸がねじれの位置関係であることによって、2本のアームを非平行な面に沿って変位できる。
(3)上記実施形態では、取付壁Wに取り付けた状態において、第1および第2回転軸Z1,Z2は、水平面に対して平行である。これに限らず、取付壁に取り付けた状態において、第1および第2回転軸は、水平面に対して傾斜していてもよい。このような構成によれば、水平面に対して斜めに交差する面内にアームを変位できる。
(4)上記実施形態では、第1および第2アーム50F,50Sを備えている。これに限らず、1本のアームのみを備えるものであってもよい。
(5)上記実施形態では、第1および第2アーム50F,50Sの先端の間隔が第1および第2アーム50F,50Sの回転に伴って広くなる。これに限らず、2本のアームの先端の間隔は、アームの回転に伴って広くならなくてもよい。
(6)上記実施形態では、可動部50Bの第3回転軸Z3が第1および第2アーム50F,50Sの長手方向と同方向に延びている。これに限らず、第3回転軸は、アームの長手方向と直交方向に延びていてもよい。このような構成によれば、第3回転軸を中心に本体部に対して可動部を屈曲できる。
(7)上記実施形態では、可動部50Bの回転範囲αが60度の範囲内に限定されている。これに限らず、可動部の回転範囲は適宜変更できる。可動部の回転範囲は必ずしも所定の範囲内に限定しなくてもよい。
(8)上記実施形態では、第1ノズル70の下流管部74が複数の溝76を備えている。これに限らず、第1ノズルの下流管部は少なくとも一つの溝を備えていればよい。
(9)上記実施形態では、第2ノズル65が第1および第2アーム50F,50Sに対して固定され、第1ノズル70が第1および第2アーム50F,50Sに対して可動する。これに限らず、ノズルの固定、可動は適宜変更できる。
(10)上記実施形態では、可動部50Bの第3回転軸Z3が第1および第2アーム50F,50Sの長手方向と同方向に延びている。これに限らず、第3回転軸はアームの長手方向と交差する方向に延びていてもよい。
(11)力発生部材36は、例えば、磁力を用いて力を発生させる構成でもよい。
(12)第1および第2弾性部材33F,33Sは、例えば、ゴムでもよい。円柱形状のゴムをねじれば、トーションばねと同等な機能を発揮する。
【符号の説明】
【0089】
α…可動部の回転範囲、M…吐水装置、R…通水路、W…取付壁、Z1…第1回転軸、Z2…第2回転軸、Z3…第3回転軸、10…筐体、50F,50S…アーム、30F,30S…仕事部、31F,31S…アーム保持部材、32F,32S…制動機構、33F,33S…弾性部材、36…力発生部材、37…押圧部材、38…摺動部材、39F,39S…トーションばね、50A…本体部、50B…可動部、60…吐水口、60A…上端吐水口、70…第1ノズル、71…第1ノズル用管状部、72…第1ノズル用ワーラー、74…下流管部、76…溝
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10