(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20240129BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240129BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240129BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/25
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/49
A61K8/60
A61K8/73
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2020535911
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031598
(87)【国際公開番号】W WO2020032244
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2018151680
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 稜哉
(72)【発明者】
【氏名】長井 宏一
(72)【発明者】
【氏名】氏本 慧
(72)【発明者】
【氏名】永禮 由布子
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-024012(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057676(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/068300(WO,A1)
【文献】特開2012-012351(JP,A)
【文献】国際公開第2016/068299(WO,A1)
【文献】特開2004-83541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
紫外線吸収剤からなる紫外線防御剤、
(B)
水溶性かつIOBが5.0以下である以下の成分(i)
及び(ii)の
両方:
(i)下記式(I):
R
1O-[(AO)
m(EO)
n]-R
2 (I)
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の炭化水素基又は水素原子を示し、AOは炭素原子数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基を示し、m+n≦20を満たす)
で表されるポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテル、
(ii)平均分子量150~3000のポリエチレングリコール、及び
(C)デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、あるいは脂肪酸又はその塩から選択される油相増粘剤を含み、
(B)成分の配合量は化粧料全量に対して1.0~20質量%であり、
(C)成分の配合量は化粧料全量に対して0.1~25質量%であり、
(A)成分
/(B)成分の質量比が20以下であ
り、
(A)紫外線防御剤における4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンの配合量が化粧料全量に対して0.5質量%未満である、
化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日焼け止め効果を有する化粧料に関する。さらに詳しくは、耐水性と耐熱性の双方に優れ、水や汗等の水分との接触及び加熱により、塗布直後よりも紫外線防御効果が向上するという従来にない特性を有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の害から皮膚を守ることはスキンケア、ボディケアにおける重要な課題の一つであり、紫外線が皮膚に与える悪影響を最小限に抑えるために種々のUVケア化粧料が開発されている。UVケア化粧料の1種である日焼け止め化粧料(サンスクリーン化粧料)は、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合することによりUVAおよびUVBの皮膚への到達を遮り、紫外線の害から皮膚を守る(非特許文献1)。最近では夏のプールや海での水浴や冬のスキーなどの野外活動における過酷な紫外線条件に限らず、日常生活においても紫外線から皮膚を守ることが重要であると考えられており、通常のスキンケア化粧品でも紫外線防御効果を有するものが望まれている。
【0003】
日焼け止め製品による紫外線防御効果は、配合されている紫外線防御剤、すなわち紫外線吸収剤や紫外線散乱剤によって発揮されるが、紫外線吸収剤の中には光照射によって紫外線吸収能が低下(光劣化)するものがあり、また、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤は水分と接触した際に皮膚表面から流出してしまうこともある。
【0004】
紫外線防御効果の光劣化を抑制するための工夫は多数提案されており(特許文献1)、また、耐水性に関しては、水分に接触しても紫外線防御効果が低下せず、逆に防御効果が向上するという革新的な性能を有する化粧料が開発されている(特許文献2)。
【0005】
一方、光や水分と同様に、熱による紫外線防御効果の低下も無視できない。一般に、皮膚に塗布された化粧料に熱が加わると、化粧料に含まれる紫外線吸収剤やその他の成分が劣化し、紫外線防御効果が低下してしまう。しかしながら、熱に関しては、例えば、化粧料を含む乳化化粧料の乳化安定性に対する熱の影響を検討した例は存在するが(特許文献3)、熱よる紫外線防御効果の変化については今日まで検討対象とされることはなく、熱による紫外線防御効果の低下抑制を目的とする化粧料はこれまでに提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-150172号公報
【文献】WO2016/068300号公報
【文献】特許第4397286号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「新化粧品学」第2版、光井武夫編、2001年、南山堂発行、第497~504頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、強力な紫外線防御効果を持つ化粧料を開発する研究過程において、水や汗等の水分との接触や使用環境下で加わる熱によって紫外線防御効果が低下せず逆に効果が向上するという、従来にない革新的な特性を有する化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、紫外線防御剤と、特定のアルキレンオキシド誘導体又は多価アルコールと、特定の油相増粘剤とを所定の比率で配合することにより、前記目的とする新規な特性を有する化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
(A)紫外線防御剤、
(B)水溶性かつIOBが5.0以下である(i)アルキレンオキシド誘導体及び(ii)多価アルコールから選択される1種以上、及び
(C)油相増粘剤を含み、
(A)成分/(B)成分の質量比が20以下であり、かつ、
前記(B)(i)アルキレンオキシド誘導体は下記式(I):
R1O-[(AO)m(EO)n]-R2 (I)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の炭化水素基又は水素原子を示し、AOは炭素原子数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基を示し、1≦m≦70、1≦n≦70、かつ、m+n≦40である)
で表されるポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルである、化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化粧料は、化粧料を肌に塗布した直後よりも、水や汗等と接触した後、及び、実際の使用において熱が付加した後に紫外線防御効果が顕著に向上する。即ち、本発明に係る化粧料は、従来の化粧料において効果劣化の原因とされていた水分や熱により紫外線防御効果が却って向上するという、従来の常識とは逆の特性を有する革新的な化粧料である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
本発明の化粧料は、(A)紫外線防御剤、(B)所定のアルキレンオキシド誘導体又は多価アルコール、及び(C)油相増粘剤を必須に含む。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0013】
<(A)紫外線防御剤(紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤)>
本発明に係る化粧料に配合される(A)紫外線防御剤(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を意味し、化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0014】
本発明で使用できる紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等が例示される。以下に具体例および商品名などを列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0015】
安息香酸誘導体としては、パラ-アミノ安息香酸(PABA)エチル、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA(例えば「エスカロール507」;ISP社)、グリセリルPABA、PEG-25-PABA(例えば「ユビナールP25」;BASF社)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(例えば「ユビナールAプラス」)などが例示される。
【0016】
サリチル酸誘導体としては、ホモサレート(「ユーソレックス(Eusolex)HMS」;ロナ/EMインダストリーズ社)、エチルヘキシルサリチレート又はサリチル酸オクチル(例えば「ネオ・ヘリオパン(NeoHeliopan)OS」;ハーマン・アンド・レイマー社)、ジプロピレングリコールサリチレート(例えば「ディピサル(Dipsal)」;スケル社)、TEAサリチラート(例えば「ネオ・ヘリオパンTS」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0017】
ケイヒ酸誘導体としては、オクチルメトキシシンナメートまたはメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(例えば「パルソールMCX」;DSM株式会社)、メトキシケイヒ酸イソプロピル、メトキシケイヒ酸イソアミル(例えば「ネオ・ヘリオパンE1000」;ハーマン・アンド・レイマー社)、シンノキセート、DEAメトキシシンナメート、メチルケイヒ酸ジイソプロピル、グリセリル-エチルヘキサノエート-ジメトキシシンナメート、ジ-(2-エチルヘキシル)-4’-メトキシベンザルマロネートなどが例示される。
【0018】
ジベンゾイルメタン誘導体としては、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(例えば「パルソール1789」;DSM株式会社)などが例示される。
【0019】
β,β-ジフェニルアクリレート誘導体としては、オクトクリレン(例えば「ユビナールN539T」;BASF社)などが例示される。
【0020】
ベンゾフェノン誘導体としては、ベンゾフェノン-1(例えば「ユビナール400」;BASF社)、ベンゾフェノン-2(例えば「ユビナールD50」;BASF社)、ベンゾフェノン-3またはオキシベンゾン(例えば「ユビナールM40」;BASF社)、ベンゾフェノン-4(例えば「ユビナールMS40」;BASF社)、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6(例えば「ヘリソーブ(Helisorb)11」;ノルクアイ社)、ベンゾフェノン-8(例えば「スペクトラ-ソーブ(Spectra-Sorb)UV-24」;アメリカン・シアナミド社)、ベンゾフェノン-9(例えば「ユビナールDS-49」;BASF社)、ベンゾフェノン-12などが例示される。
【0021】
ベンジリデンカンファー誘導体としては、3-ベンジリデンカンファー(例えば「メギゾリル(Mexoryl)SD」;シメックス社)、4-メチルベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファースルホン酸(例えば「メギゾリルSL」;シメックス社)、メト硫酸カンファーベンザルコニウム(例えば「メギゾリルSO」;シメックス社)、テレフタリリデンジカンファースルホン酸(例えば「メギゾリルSX」;シメックス社)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー(例えば「メギゾリルSW」;シメックス社)などが例示される。
【0022】
フェニルベンゾイミダゾール誘導体としては、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(例えば「ユーソレックス232」;メルク社)、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム(例えば「ネオ・ヘリオパンAP」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0023】
トリアジン誘導体としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(例えば「チノソーブ(Tinosorb)S」;チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社)、エチルヘキシルトリアゾン(例えば「ユビナールT150」;BASF社)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(例えば「ユバソーブ(Uvasorb)HEB」;シグマ3 V社)、2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンなどが例示される。
【0024】
フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、ドロメトリゾールトリシロキサン(例えば「シラトリゾール(Silatrizole)」;ローディア・シミー社)、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)(例えば「チノソーブM」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社))などが例示される。
【0025】
アントラニル誘導体としては、アントラニル酸メンチル(例えば「ネオ・ヘリオパンMA」;ハーマン・アンド・レイマー社)などが例示される。
【0026】
イミダゾリン誘導体としては、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナートなどが例示される。
【0027】
ベンザルマロナート誘導体としては、ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン(例えば、ポリシリコーン-15;「パルソールSLX」;DSMニュートリション ジャパン社)などが例示される。
【0028】
4,4-ジアリールブタジエン誘導体としては、1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエンなどが例示される。
【0029】
特に好ましい紫外線吸収剤の例としては、限定されないが、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ポリシリコーン-15、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン)、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、3-(4‘-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン―d,l-カンファー、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシルを挙げることができる。なかでも、(A)成分として少なくともオクトクリレンを含む場合に良好な紫外線防御向上効果を得ることができる。
【0030】
ただし、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンを配合する場合には、その配合量は少ない方が好ましい。例えば、化粧料全量に対して0.5質量%未満とすること、あるいは、(A)成分の全量に対して10質量%以下とすることが好ましい。4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンは、(B)アルキレンオキシド誘導体又は多価アルコール及び(C)油相増粘剤を配合したときの加熱による紫外線防御効果の向上を妨げる傾向があるため、熱による紫外線防御効果の増強を実感しにくいからである。
【0031】
本発明で用いられる紫外線散乱剤は、特に限定されるものではないが、具体例としては、微粒子状の金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0032】
紫外線散乱剤は、表面処理していないものでも各種疎水化表面処理したものでもよいが、疎水化表面処理をしたものが好ましく用いられる。表面処理剤としては、化粧料分野で汎用されているもの、例えば、ジメチコン、アルキル変性シリコーン等のシリコーン、オクチルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、パルミチン酸デキストリンなどのデキストリン脂肪酸エステル、ステアリン酸などの脂肪酸を用いることができる。
【0033】
本発明における(A)紫外線防御剤は、紫外線吸収剤のみからなる態様、紫外線散乱剤のみからなる態様、及び紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の両方を含む態様を包含する。
【0034】
(A)紫外線防御剤の配合量は特に限定されないが、通常は化粧料全量に対して5質量%以上、例えば5~40質量%、好ましくは6~40質量%、より好ましくは7~30質量%である。(A)紫外線防御剤の配合量が5質量%未満では十分な紫外線防御効果が得られにくく、40質量%を超えて配合しても配合量に見合った紫外線防御効果の増加を期待できず、安定性が悪くなるなどの点から好ましくない。
【0035】
<(B)アルキレンオキシド誘導体又は多価アルコール>
本発明の化粧料に配合される(B)(i)アルキレンオキシド誘導体又は(ii)多価アルコール(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、通常の化粧料では保湿剤として配合されることが多い。本発明では、特定のアルキレンオキシド誘導体又は多価アルコールを配合することにより、化粧料を肌に塗布した直後よりも、特に熱が加わった後の紫外線防御効果を顕著に向上させることが可能である。
【0036】
(B)(i)アルキレンオキシド誘導体又は(ii)多価アルコールは、いずれも水溶性であることを必要とする。水溶性でないものを用いると、加熱により紫外線防御力向上効果が低下する傾向がある。なお、本発明において「水溶性」とは、25℃の水に0.1質量%以上溶解することをいう。
【0037】
また、(B)(i)アルキレンオキシド誘導体又は(ii)多価アルコールは、いずれもIOBが5.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下のものである。IOB値が高すぎると、熱による紫外線防御能向上の効果が十分に得られない場合がある。一方、IOB値の下限は特に限定されるものではないが、0.5以上が好ましく、さらに好ましくは0.8以上である。
【0038】
ここでIOBとは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」p11~17、三共出版、1984年発行参照)。
【0039】
さらに、(B)(i)アルキレンオキシド誘導体又は(ii)多価アルコールは、エーテル結合を有するものが好ましい。エーテル結合を有することにより、エーテル結合を有しないものと比べて水に溶解しやすく、油にも溶解し得ると考えられる。
【0040】
本発明に使用できる(i)アルキレンオキシド誘導体としては、下記(I)で表されるポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルを挙げることができる。
R1O-[(AO)m(EO)n]-R2 (I)
上記式中、AOは炭素原子数3~4のオキシアルキレン基を示す。具体的にはオキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。好ましくはオキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。EOはオキシエチレン基を示す。
【0041】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の炭化水素基又は水素原子を示す。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基である。
一分子中のR1及びR2は、それぞれ同一の1種の炭化水素基であってもよく、炭化水素基と水素原子とが混在してもよく、炭素原子数が異なる複数の炭化水素基が混在していてもよい。ただし、R1及びR2の各々について、炭化水素基と水素原子との存在割合は、炭化水素基の数(X)に対する水素原子の数(Y)の割合(Y/X)が0.15以下であるのが好ましく、より好ましくは0.06以下である。
【0042】
mはAOの平均付加モル数であり、1≦m≦70、好ましくは2≦m≦20、さらに好ましくは2≦m≦10である。nはEOの平均付加モル数であり、1≦n≦70、好ましくは2≦n≦20、さらに好ましくは2≦n≦10である。また、m+nは、40以下、好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。特にm+nが20以下の場合に、著しく優れた加熱による紫外線防御力向上効果を得ることができる。
【0043】
AOおよびEOの付加する順序は特に限定されるものではない。AOとEOはブロック状に付加したブロック共重合体でもよく、あるいはランダムに付加したランダム共重合体でもよい。ブロック共重合体は、2段ブロックのみならず、3段以上のブロックを含む共重合体が含まれる。好ましくはランダム共重合体が用いられる。
前記式(I)で表されるポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルの分子量は、100~10000、好ましくは150~5000、さらに好ましくは200~3000、より好ましくは300~2000である。一分子中のAOとEOの合計に対するEOの割合[EO/(AO+EO)]は、20~80質量%であることが好ましい。
【0044】
本発明で好ましく用いられるポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルの具体例としては、以下のポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体ジメチルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。
PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル
PEG/PPG-17/4ジメチルエーテル
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル
PEG/PPG-11/9ジメチルエーテル
PEG/PPG-55/28ジメチルエーテル
PEG/PPG-36/41ジメチルエーテル
PEG/PPG-6/3ジメチルエーテル
PEG/PPG-8/4ジメチルエーテル
PEG/PPG-6/11ジメチルエーテル
PEG/PPG-14/27ジメチルエーテル
【0045】
ポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルは、分子量が比較的小さいものほど熱による紫外線防御能向上効果に優れる傾向がある。したがって、上に列挙したポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体ジメチルエーテルの中でも、PEG/PPG-9/2ジメチルエーテルなどが最も高い効果を示す。
【0046】
一方、本発明に使用できる(ii)多価アルコールとしては、後述する式(II)のポリアルキレングリコール、及び、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、プロパンジオール、エリスリトール、キシリトール、メチルグルセス-10、ソルビトール等を挙げることができる。
【0047】
ここで、ポリアルキレングリコールは、下記式(II):
HO(RO)pH (II)
(式中、ROは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を示し、pは3~500である)
で表されるものである。
具体的には、ポリエチレングリコール(「PEG」とも表記する)、ポリプロピレングリコール(「PPG」とも表記する)およびポリブチレングリコール(「PBG」とも表記する)等、化粧料等の皮膚外用剤に使用可能なものから選択される。
【0048】
なかでも、上記式(II)において、ROがオキシエチレン基であり、pが3~500、より好ましくは3~60の範囲であるポリエチレングリコールが好ましい。好ましいポリエチレングリコールの平均分子量は150~23000、さらに好ましくは150~3000の範囲である。具体的には、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール20000等を挙げることができる。
【0049】
ポリアルキレングリコールは、分子量が比較的小さいものほど熱による紫外線防御能向上効果に優れる傾向がある。したがって、上に列挙したポリエチレングリコールの中ではポリエチレングリコール300又はポリエチレングリコール400を用いると特に高い効果が得られる。
【0050】
本発明において(B)成分は、アルキレンオキシド誘導体のみからなる態様、多価アルコールのみからなる態様、およびアルキレンオキシド誘導体と多価アルコールの両方を含む態様を包含する。
なかでも、紫外線防御能向上効果を最大限に発揮させるためには、アルキレンオキシド誘導体と多価アルコールをそれぞれ一種以上含むことが好ましい。例えば、平均分子量150~3000の低分子量ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン共重合体ジメチルエーテルと、平均分子量150~3000のポリアルキレングリコールとを組み合わせて含む場合に、熱による紫外線防御能向上効果が顕著となる。具体例として、特にポリエチレングリコール300とPEG/PPG-9/2ジメチルエーテルとの組合せ、ポリエチレングリコール400とPEG/PPG-9/2ジメチルエーテルとの組合せを挙げることができる。
【0051】
(B)成分の配合量は、化粧料全量に対して少なくとも1.0質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上であり、20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。配合量が1.0質量%未満であると、熱による紫外線防御能向上の効果が十分に得られない場合がある。特に2.5質量%以上であれば、当該効果をより確実に達成することができる。また、また、20質量%を超えると安定性や使用性に影響を及ぼす場合がある。
【0052】
<(A)成分/(B)成分の質量比>
本発明に係る化粧料において、(A)成分/(B)成分の質量比が20以下となるように配合することが好ましく、13以下となるように配合することがさらに好ましい。(A)成分に対して(B)成分が少なすぎると(前記質量比が大きすぎると)、熱による紫外線防御能向上の効果が十分に得られない場合があり、逆に(A)成分に対して(B)成分が多すぎると(前記質量比が小さすぎると)使用性が損なわれる傾向がある。
【0053】
<(C)油相増粘剤>
本発明における(C)油相増粘剤(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)は、通常の乳化型化粧料等において油分に溶解又は油分で膨潤することにより油相を増粘する効果を発揮する成分として使用されている物質から適宜選択できる。例えば、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、固形又は半固形の炭化水素油、有機変性粘土鉱物、あるいは脂肪酸又はその塩等が好ましく、これらから選択される二種以上を配合するのが特に好ましい。
【0054】
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンまたは還元デキストリンと高級脂肪酸とのエステルであり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。デキストリンまたは還元デキストリンは平均糖重合度が3~100のものを用いるのが好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、炭素数8~22の飽和脂肪酸を用いるのが好ましい。具体的には、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等を挙げることができる。
【0055】
ショ糖脂肪酸エステルは、その脂肪酸が直鎖状あるいは分岐鎖状の、飽和あるいは不飽和の、炭素数12から22のものを好ましく用いることができる。具体的には、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等を挙げることができる。
【0056】
固形又は半固形の炭化水素油は、常温(25℃)で固形又は半固形の炭化水素であり、具体例として、ワセリン、水添パーム油、水添ヒマシ油(カスターワックス)、パーム核硬化油、硬化ヒマシ油、水添ピーナッツ(落花生)油、水添ナタネ種子油、水添ツバキ油、水添大豆油、水添オリーブ油、水添マカダミアナッツ油、水添ヒマワリ油、水添小麦胚芽油、水添米胚芽油、水添米ヌカ油、水添綿実油、水添アボカド油、ロウ類等を挙げることができる。
【0057】
有機変性粘土鉱物は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、下記一般式(III)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものが代表的である。
(X,Y)2―3(Si,Al)4O10(OH)2Z1/3・nH2O (III)
(但し、X=Al、Fe(III)、Mn(III)、Cr(III)、Y=Mg、Fe(II)、Ni、Zn、Li、Z=K、Na、Ca)
【0058】
具体例として、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト(ジステアルジモニウムヘクトライト)、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)が好ましい。
【0059】
脂肪酸としては、化粧料等に使用できるものであれば特に限定されるものではなく、直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する脂肪酸から選択できる。特に、常温で固体であり、かつ、炭素数8~22の高級脂肪酸、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸(ベヘン酸)、オレイン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸等が挙げられる。中でも、ステアリン酸、パルミチン酸およびベヘニン酸から選択される一種または二種以上を用いるのが特に好ましい。脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩を挙げることができる。また、脂肪酸のアミド誘導体やエステル誘導体を用いることもできる。
【0060】
本発明の化粧料における油相増粘剤((C)成分)の配合量は、水分と接触した際の塗膜の水分量が、塗膜内で油相増粘剤が移動するのに十分となるように調節される。具体的には、油相増粘剤の配合量を、化粧料全量に対して、0.1~25質量%、好ましくは0.3~18質量%、より好ましくは0.5~13質量%とすることができる。
【0061】
<任意配合成分>
本発明の化粧料には、上記(A)~(C)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、化粧料に通常用いられる成分を配合することができる。例えば、界面活性剤、油分、粉末成分、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、薬剤、アルコール類、色剤、色素等を必要に応じて適宜配合することができる。薬剤としては例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、トラネキサム酸、コウジ酸、エラグ酸、アルブチン、アルコキシサリチル酸、ニコチン酸アミド、グリチルリチン酸、トコフェロール、レチノール及びこれらの塩又は誘導体(例えば、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸エステルマグネシウム塩、L-アスコルビン酸グルコシド、2-O-エチル-L-アスコルビン酸、3-O-エチル-L-アスコルビン酸、4-メトキシサリチル酸ナトリウム塩、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸ステアリル、酢酸トコフェノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等)を例示することができる。また、グリセリン等のIOB値が5を超える保湿剤も本発明の効果を阻害しない範囲で配合可能である。
【0062】
また、界面活性剤としては、油中水型乳化化粧料の場合は、シリコーン骨格(ポリシロキサン構造)を有し、HLBが8未満の界面活性剤が好ましい。例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、及び/又はポリグリセリン・アルキル共変性シリコーンの使用が好ましく、なかでも、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル変性シリコーンがより好ましい。
【0063】
一方、水中油型乳化化粧料の場合は、従来から水中油型乳化化粧料に使用されている非イオン性界面活性剤から選択される1種又は2種以上であってよく、中でも、HLBが6以上のものが好ましく用いられる。特に、製剤の安定性及び水分との接触による吸光度向上効果という点で、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含むのが特に好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-25水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等が挙げられる。一方、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含めない場合には、HLBが8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上の非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0064】
油分としては、化粧料に通常用いられる揮発性油分や非揮発性油分が挙げられる。特に、乳化化粧料の場合は、その油相にIOB値が0.3以上のエステル油を配合するのが好ましい。
揮発性油分としては、揮発性炭化水素油及び揮発性シリコーン油が含まれる。
揮発性炭化水素油分は、従来から化粧料等に使用されている常温(25℃)で揮発性を有する炭化水素油であれば特に限定されない。具体例としては、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等を挙げることができる。
揮発性シリコーン油は、従来から化粧料等に使用されている常温(25℃)で揮発性を有するシリコーン油であって、ケイ素原子数4~6の環状ジメチルポリシロキサン、ケイ素原子数2~5の鎖状ジメチルポリシロキサンが含まれる。具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルテトラシクロシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)等の環状シリコーン油、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、揮発性ジメチコン(市販品としては、KF-96L-1.5cs、KF-96L-2cs;信越化学工業社製)などを挙げることができる。
【0065】
非揮発性油分としては、例えば、炭化水素油、植物油、エステル油、高分子量のポリオキシアルキレングリコール、シリコーン油が含まれる。
具体例としては、パーム油、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、肝油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等の液状油脂;オクタン酸セチル等のオクタン酸エステル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等のイソオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン油が挙げられる。
【0066】
また、粉末成分として、特に球状樹脂粉末を1~30質量%程度配合すると、使用感を更に改善してさらさらとした良好な感触を得ることができるため好ましい。球状樹脂粉末は、一般の化粧品等に配合されるものであれば特に制限されることなく任意に使用できる。例えば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末、及びトリメチルシルセスキオキサン粉末等、並びにオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末またはこれを母粉末とする複合球状粉末を挙げることができる。配合される球状樹脂粉末の粒径等は特に限定されるものでないが、例えば、粒径1~50μm程度のものが好適に用いられる。また、これらの球状樹脂粉末は疎水化処理されていてもよい。
市販の球状有機樹脂粉末としては、例えば、ガンツパール(アイカ工業社製)が挙げられ、市販の球状シリコーン樹脂粉末としては、例えば、トレフィルE-505C、トレフィルE-506C、トレフィルE-506S、トレフィルHP40T(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、トスパール145A(東芝シリコーン社製)、シリコーンパウダーKSP-100、KSP-300(信越化学工業株式会社)等が挙げられる。
【0067】
本発明の化粧料は、油性化粧料、油中水型乳化化粧料、水中油型乳化化粧料、多相乳化化粧料、あるいは水性化粧料の形態とすることができ、特に限定されない。
製品形態としては、日やけ止め化粧料のみならず、日やけ止め効果を付与したファンデーション等のメーキャップ化粧料や化粧下地、毛髪化粧料(紫外線から毛髪や頭皮を保護するためのヘアスプレーやヘアトリートメント等の各種ヘア製品を含む)、噴霧型化粧料などとして提供できる。
【0068】
本発明の化粧料は、塗膜の紫外線防御効果が水分との接触及び/又は熱により向上するという新規な特性を有する。
「紫外線防御効果が水分との接触及び/又は熱により向上する」とは、概略次のように定義することができる。
化粧料のサンプル所定量を測定プレート上に滴下して所定面積に塗布し乾燥させて塗膜を形成させる。当該塗膜の吸光度を400~280nmにわたって分光光度計等により測定し、無塗布の測定プレートの吸光度を基準として前記塗膜の吸光度積算値を求める。
【0069】
次いで、水分との接触による紫外線防御効果の向上を調べる場合には、当該塗膜を形成した測定プレートを所定条件下で水に浸漬し、乾燥させた後の塗膜の吸光度を測定し、吸光度積算値を同様に求める。一方、熱による紫外線防御効果の向上を調べる場合には、当該塗膜を形成した測定プレートを所定条件下で加熱し、常温に戻った後の塗膜の吸光度を測定し、吸光度積算値を同様に求める。
【0070】
水浴処理又は加熱処理後の吸光度積算値の変化率は以下の式に従って計算する。
吸光度積算値の変化率(%)=
(処理後の吸光度積算値)/(処理前の吸光度積算値)×100
吸光度積算値の変化率が100%を超えた場合に、紫外線防御効果が向上したものと定義する。本発明の化粧料では、その吸光度積算値の変化率が少なくとも100%を超えており、好ましくは103%以上、より好ましくは105%以上、更に好ましくは110%以上、特に好ましくは115%以上を示す。
【0071】
水分との接触による紫外線防御効果の向上を調べる場合には、常温のもと、測定プレートを、硬度50~500の水に20分~1時間程度浸漬するのが好ましい。また、浸漬後は10~30分程度乾燥させてから吸光度を測定するのが好ましい。
【0072】
熱による紫外線防御効果の向上を調べる場合には、加熱温度は30℃~70℃の範囲とするのが好ましく、例えば32℃以上、35℃以上、37℃以上、あるいは40℃以上とすることができ、65℃以下、60℃以下、55℃以下、あるいは50℃以下の温度とすることができる。加熱温度が70℃を超えると樹脂製の測定プレートが溶解する等の問題を生じることがある。
加熱時間は、熱による影響を的確に評価するために、1分以上とするのが好ましく、より好ましくは10分以上である。加熱時間の上限としては、特に限定されないが、通常は60分以下、好ましくは30分以下である。
【実施例】
【0073】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0074】
(1)水浴後の吸光度積算値の変化率
Sプレート(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER-PA01)に各例のサンプルを2mg/cm2の量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥させて塗膜を形成した。未塗布のプレートをコントロールとして、前記塗膜の吸光度(400~280nm)を株式会社日立製作所社製U-3500型自記録分光光度計にて測定し、得られた測定データから水浴前の吸光度積算値を求めた。
次いで、測定したプレートを硬度50~500の水に十分に浸し、30分間そのまま水中で攪拌した(3-1モーターで300rpm)。その後、表面の水滴がなくなるまで15~30分程度乾燥させ、再び吸光度を測定し、得られた測定データから水浴後の吸光度積算値を求めた。
以下の式から水浴後の吸光度積算値の変化率(%)を算出した。
水浴後の吸光度積算値の変化率(%)=
(水浴後の吸光度積算値)/(水浴前の吸光度積算値)×100
【0075】
(2)加熱後の吸光度積算値の変化率
水浴に代えて、プレートに恒温槽で37℃、30分の加熱処理を行ったこと以外は、上記と同様に吸光度積算値を求め、以下の式から加熱後の吸光度積算値の変化率(%)を算出した。
加熱後の吸光度積算値の変化率(%)=
(加熱後の吸光度積算値)/(加熱前の吸光度積算値)×100
【0076】
[実験例1~21]
以下の表1~3に掲げた組成を有する油中水型乳化化粧料を常法に従って調製し、上記評価方法に従って水浴後及び加熱後の吸光度積算値の変化率を測定した。
【0077】
【0078】
表1に示されるように、保湿剤を配合しない場合には、加熱後の吸光度積算値の変化率が100%を超えるものは無かった(実験例1~3)。一方、保湿剤を配合することにより、加熱後の吸光度積算値の変化率が100%を超え、熱により紫外線防御効果が向上することが確認されたが(実験例4~7)、保湿剤の配合量が少なすぎる場合には熱による紫外線防御効果の向上は確認されなかった(実験例8)。また、水分との接触による紫外線防御効果の向上は、油相増粘剤を配合しない場合や、その配合量が少なすぎる場合には得られなかったが(実験例1、2)、十分量の油相増粘剤の配合により達成されることが確認された(実験例3~8)。
【0079】
【0080】
表2に示されるように、保湿剤、特にIOBが3以下のものを配合することにより、熱による紫外線防御効果の向上が確認されたが(実験例9~14)、保湿剤としてIOBが高すぎるグリセリンを用いた場合には当該効果を確認できなかった(実験例15)。また、アルキレンオキシド誘導体及び多価アルコール誘導体のいずれについても、分子量が低いほど熱による紫外線防御効果が大きく向上する傾向が見られた。実際に、保湿剤としてPEG/PPG-9/2ジメチルエーテルとポリエチレングリコール300とを組み合わせて含む場合に、熱による紫外線防御効果が著しく向上した(実験例9)。
【0081】
【0082】
表3に示されるように、十分な量の保湿剤を含む場合には、油相増粘剤の種類を変更しても、水分との接触や加熱により紫外線防御効果が向上することが確認された(実験例16~21)。
【0083】
[実験例22]
以下の表4に掲げた組成を有する水中油型乳化化粧料を常法に従って調製し、上記評価方法に従って水浴後及び加熱後の吸光度積算値の変化率を測定した。
【0084】
【0085】
表4に示されるように、水中油型乳化形態の化粧料においても、所定の保湿剤と油相増粘剤の配合により、水分との接触や加熱により紫外線防御効果が向上することが確認された(実験例22)。
【0086】
以下に、本発明の化粧料の処方を例示する。本発明はこれらの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。なお、配合量は全て化粧料全量に対する質量%で表す。
【0087】
処方例1:2層式の化粧下地
(成分名) 配合量(質量%)
精製水 残余
エタノール 5
PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル 4
グリセリン 1
キシリトール 1
トルメンチラエキス 0.3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
2-O-エチル-L-アスコルビン酸 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
イソドデカン 3
セバシン酸ジイソプロピル 10
PBG/PPG-9/1コポリマー 1
ポリエチレングリコール300 1
ジメチコン 10
カプリリルメチコン 3
トリフルオロアルキルジメチルトリメチルシロキシケイ酸50%ジメチコン溶液
3
パルミチン酸デキストリン 2
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7
オクトクリレン 3
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
0.5
疎水化微粒子酸化チタン 2
疎水化処理微粒子酸化亜鉛 5
疎水化処理顔料級酸化チタン 1
疎水化処理酸化鉄 0.07
メタクリル酸メチルクロスポリマー 2
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー
2
疎水化処理タルク 4
PEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン 1.5
PEG/PPG-19/19ジメチコン 0.3
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.4
イソステアリン酸 0.3
ステアリン酸 0.5
EDTA・3Na 適量
食塩 適量
ピロ亜硫酸ナトリウム 適量
トコフェロール 適量
香料 適量
【0088】
処方例2:クリーム状のファンデーションクリーム
(成分名) 配合量(質量%)
精製水 残余
エタノール 5
フェノキシエタノール 1
PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル 4
ポリエチレングリコール300 1
グリセリン 3
エリスリトール 1
キシリトール 1
トルメンチラエキス 1
グリシルグリシン 0.1
トラネキサム酸 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
ピバリン酸トリプロピレングリコール 2
セバシン酸ジイソプロピル 5
ジメチコン 10
シクロメチコン 3
トリシロキシケイ酸50%のシクロペンタシロキサン溶液
2
パルミチン酸デキストリン 2.5
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7
疎水化微粒子酸化チタン 1
疎水化微粒子酸化亜鉛 7
疎水化処理顔料級酸化チタン 4
疎水化処理酸化鉄 3.2
疎水化処理硫酸バリウム被覆雲母チタン 0.01
疎水化処理雲母チタン 0.01
ジメチコンクロスポリマー13%のシクロペンタシロキサン混合物
2
ポリメチルシルセスキオキサン 2
メタクリル酸メチルクロスポリマー 2
疎水化微粒子シリカ 0.5
ラウリルPEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン
2
(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー
1
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1
イソステアリン酸 0.2
ステアリン酸 0.5
トコフェロール 適量
EDTA・3Na 適量
食塩 適量
ピロ亜硫酸ナトリウム 適量
香料 適量
【0089】
処方例3:エアゾールスプレー状の日焼け止め
(成分名) 配合量(質量%)
精製水 残余
エタノール 5
ポリエチレングリコール300 2
シリカ 0.1
グリセリン 1
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 3
酢酸DL-α-トコフェロール 0.5
D-グルタミン酸 0.1
グリチルリチン酸ステアリル 0.1
イソドデカン 10
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 5
ミルスチン酸イソプロピル 3
セバシン酸ジイソプロピル 5
PBG/PPG-9/1コポリマー 1
ジメチコン 13
トリシロキシケイ酸50%のシクロペンタシロキサン溶液
0.5
トリ酢酸テトラステアリン酸スクロース 0.5
パルミチン酸デキストリン 2
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
1
ポリシリコーン-15 2
オクトクリレン 5
メタクリル酸メチルクロスポリマー 5
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー
3
疎水化処理タルク 1
セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン 1
ラウリルPEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン
1
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
イソステアリン酸 0.3
ステアリン酸 0.5
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.3
EDTA・3Na 適量
トコフェロール 適量
香料 適量
上記成分を混合して原液とし、原液とLPGとを50:50となるようにスプレー缶に充填して、エアゾールスプレータイプの日焼け止めを得た。
【0090】
処方例4:ジェル状の日焼け止め
(成分名) 配合量(質量%)
精製水 残余
エタノール 8
PEG/PPG-9/2ジメチルエーテル 4
イザヨイバラエキス 0.1
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.2
(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
0.2
サクシノグルカン 0.1
グリセリン 3
ポリエチレングリコール300 1
ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン 3
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60モル) 0.2
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10
セバシン酸ジイソプロピル 5
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
3
疎水化微粒子酸化チタン 3
疎水化処理微粒子酸化亜鉛 5
ミルスチン酸イソプロピル 2
パルミチン酸デキストリン 0.5
酢酸ステアリン酸スクロース 1
ポリプロピレングリコール(17) 1
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・フィトステリル)
0.1
(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 0.5
香料 適量
シリカ 0.3