(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240130BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240130BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2020066468
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】森中 孝敬
(72)【発明者】
【氏名】河端 渉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹弘
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/179681(JP,A1)
【文献】特開2018-060647(JP,A)
【文献】特開2002-075443(JP,A)
【文献】特開2008-285417(JP,A)
【文献】特開2016-157679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/39
H01M 6/00 - 6/48
H01G 11/00 -11/86
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)下記一般式[1a]で表される化合物
、
(II)溶質、及び
(III)非水有機溶媒
、
を含有する、
非水系電解液二次電池用非水系電解液。
M
+ [X-S(=O)
2-N-C(=O)-R]
- [1a]
(一般式[1a]中、Xは、ハロゲン原子を表し、Rは、-CN基又は-OCN基を表す。M
+は、アルカリ金属イオンを表す。)
【請求項2】
前記一般式[1a]のXが、フッ素原子である、請求項1に記載の
非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項3】
前記(I)の濃度が
、電解液総量に対して0.01~5.00質量%である、請求項1又は2に記載の
非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項4】
前記(II)が、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiCl、及びLiIからなる群から選ばれる少なくとも1つ、又は、NaPF
6、NaBF
4、NaSbF
6、NaAsF
6、NaClO
4、NaCF
3SO
3、NaC
4F
9SO
3、NaAlO
2、NaAlCl
4、NaCl、及びNaIからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか1項に記載の
非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項5】
前記(III)が、環状エステル、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン化合物、スルホキシド化合物、及びイオン液体からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1~4のいずれか1項に記載の
非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項6】
前記(III)が
、環状エステルであり、前記環状エステルが、環状カーボネートである、請求項5に記載の
非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項7】
前記(III)が
、鎖状エステルであり、前記鎖状エステルが、鎖状カーボネートである、請求項5に記載の
非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項8】
更に、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸塩、ビス(オキサラト)ホウ酸塩、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸塩、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸塩、トリス(オキサラト)リン酸塩、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩、ビニレンカーボネート、ビニレンカーボネートのオリゴマー(ポリスチレン換算の数平均分子量が170~5000)、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,6-ジイソシアナトヘキサン、エチニルエチレンカーボネート、trans-ジフルオロエチレンカーボネート、プロパンサルトン、プロペンサルトン、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、4-プロピル-1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、メチレンメタンジスルホネート、1,2-エタンジスルホン酸無水物、メタンスルホニルフルオリド、トリス(トリメチルシリル)ボレート、(エトキシ)ペンタフルオロシクロトリホスファゼン、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェート、テトラフルオロ(ピコリナト)ホスフェート、1,3-ジメチル-1,3-ジビニル-1,3-ジ(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)ジシロキサン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、フルオロベンゼン、及びシクロヘキシルベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1つの添加剤を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の
非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項9】
銅を含む集電体を備えた非水系電解液二次電池に用いられる請求項1~8のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項10】
少なくとも、正極、負極、セパレータ、及び請求項1~9のいずれか1項に記載の非水系電解液とを備える、非水系電解液二次電池。
【請求項11】
前記負極が
、集電体として銅を含む請求項10に記載の非水系電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで非水系電解液二次電池の耐久性を向上するための手段として、正極や負極の活物質をはじめとする様々な電池構成要素の最適化が検討されてきた。非水系電解液もその例外ではなく、種々の添加剤で電極と電解液との界面に固体電解質界面(SEI)を形成して活性な正極や負極の表面で電解液が分解することによる劣化を抑制することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、サイクル特性、電池容量、保存特性、伝導度などの電池特性に優れたリチウム電池を構成することができる非水電解液として、非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液であって、該非水電解液がさらにニトリル化合物とS=O基含有化合物とを含有していることを特徴とするリチウム電池用非水電解液が開示されている。
また、ニトリル化合物として、ジニトリル化合物を用いる場合には、S=O基含有化合物と併用せずに使用することも好ましい旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているようなニトリル化合物を添加した非水電解液を用いると、金属表面に腐食を抑制する保護被膜が形成されたためか、過放電時に、電解液への負極集電体の金属である銅成分の溶出を低減できるものの、初期抵抗が大きくなるという問題があることを、本発明者らは見出した。
そこで、本開示では、初期抵抗の増大を抑制できる、新規な非水系電解液、及び、それを用いた非水系電解液二次電池を提供することを課題とする。
【0006】
本発明者らは、係る問題に鑑み鋭意検討の結果、溶質、及び非水有機溶媒を含む非水系電解液において、特定の構造を有するニトリル化合物を用いることにより、初期抵抗の増大を抑制できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
(I)下記一般式[1a]で表される化合物
(II)溶質、及び
(III)非水有機溶媒
を含有する、非水系電解液。
M+ [X-S(=O)2-N-C(=O)-R]- [1a]
(一般式[1a]中、Xは、ハロゲン原子を表し、Rは、-CN基又は-OCN基を表す。M+は、アルカリ金属イオンを表す。)
[2]
前記一般式[1a]のXが、フッ素原子である、[1]に記載の非水系電解液。
[3]
前記(I)の濃度が電解液総量に対して0.01~5.00質量%である、[1]又は[2]に記載の非水系電解液。
[4]
前記(II)が、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiCl、及びLiIからなる群から選ばれる少なくとも1つ、又は、NaPF6、NaBF4、NaSbF6、NaAsF6、NaClO4、NaCF3SO3、NaC4F9SO3、NaAlO2、NaAlCl4、NaCl、及びNaIからなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の非水系電解液。
[5]
前記(III)が、環状エステル、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン化合物、スルホキシド化合物、及びイオン液体からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1]~[4]のいずれか1項に記載の非水系電解液。
[6]
前記(III)が環状エステルであり、前記環状エステルが、環状カーボネートである、[5]に記載の非水系電解液。
[7]
前記(III)が鎖状エステルであり、前記鎖状エステルが、鎖状カーボネートである、[5]に記載の非水系電解液。
[8]
更に、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸塩、ビス(オキサラト)ホウ酸塩、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸塩、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸塩、トリス(オキサラト)リン酸塩、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩、ビニレンカーボネート、ビニレンカーボネートのオリゴマー(ポリスチレン換算の数平均分子量が170~5000)、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,6-ジイソシアナトヘキサン、エチニルエチレンカーボネート、trans-ジフルオロエチレンカーボネート、プロパンサルトン、プロペンサルトン、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、4-プロピル-1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、メチレンメタンジスルホネート、1,2-エタンジスルホン酸無水物、メタンスルホニルフルオリド、トリス(トリメチルシリル)ボレート、(エトキシ)ペンタフルオロシクロトリホスファゼン、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェート、テトラフルオロ(ピコリナト)ホスフェート、1,3-ジメチル-1,3-ジビニル-1,3-ジ(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)ジシロキサン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、フルオロベンゼン、及びシクロヘキシルベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1つの添加剤を含有する、[1]~[7]のいずれか1項に記載の非水系電解液。
[9]
銅を含む集電体を備えた非水系電解液二次電池に用いられる[1]~[8]のいずれか1項に記載の非水系電解液。
[10]
少なくとも、正極、負極、セパレータ、及び[1]~[9]のいずれか1項に記載の非水系電解液とを備える、非水系電解液二次電池。
[11]
前記負極が集電体として銅を含む[10]に記載の非水系電解液二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、初期抵抗の増大を抑制できる、新規な非水系電解液、及び、それを用いた非水系電解液二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本開示の実施形態の一例であり、これらの具体的内容に限定はされない。その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
1.非水系電解液について
本開示の非水系電解液は、(I)下記一般式[1a]で表される化合物、(II)溶質、及び(III)非水有機溶媒を含む。
M+ [X-S(=O)2-N-C(=O)-R]- [1a]
(一般式[1a]中、Xは、ハロゲン原子を表し、Rは、-CN基又は-OCN基を表す。M+は、アルカリ金属イオンを表す。)
【0011】
(I)一般式[1a]で表される化合物について
上記一般式[1a]で表される化合物は、正極と電解液との界面、及び負極と電解液との界面において一部分解し、被膜を形成すると考えられる。この被膜は、非水有機溶媒や溶質と活物質との間の直接の接触を抑制して非水有機溶媒や溶質の分解を防ぎ、電池性能の劣化を抑制すると推測される。
一般式[1a]で表される化合物を非水系電解液に用いると、これを非水系電解液二次電池に用いた際に初期抵抗の増大を抑制できるメカニズムについては定かではないが、本発明者らは以下のように推定している。
上述した通り、上記一般式[1a]で示される化合物は、正極と電解液との界面、及び負極と電解液との界面において一部分解し、被膜を形成すると考えられる。この被膜は、非水有機溶媒や溶質と活物質との間の直接の接触を抑制して非水有機溶媒や溶質の分解を防ぐ効果だけでなく、リチウムイオンやナトリウムイオン等のカチオン導電性があり、初期抵抗の増大を抑制すると推測される。
【0012】
なお、本開示において、初期抵抗とは、任意の条件でセルのコンディショニングを実施した後のセルの抵抗のことであり、この抵抗値は小さいほど好ましい。
【0013】
上記一般式[1a]中、Xはハロゲン原子を表す。
Xが表すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。中でも、電池抵抗がより低くなるという観点から、フッ素原子が好ましい。
【0014】
上記一般式[1a]中、Rは、-CN基又は-OCN基を表す。
【0015】
上記一般式[1a]中、M+は、アルカリ金属イオンを表す。
M+が表すアルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンが挙げられ、リチウムイオン、又はナトリウムイオンが好ましく、リチウムイオン電池の場合にはリチウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオン電池の場合にはナトリウムイオンがより好ましい。
【0016】
一般式[1a]で表される化合物の具体例としては、例えば下記化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
・LiN(SO2F)(COCN)
・LiN(SO2F)(CO(OCN))
・NaN(SO2F)(COCN)
・NaN(SO2F)(CO(OCN))
・LiN(SO2Cl)(COCN)
・LiN(SO2Cl)(CO(OCN))
・NaN(SO2Cl)(COCN)
・NaN(SO2Cl)(CO(OCN))
【0017】
一般式[1a]で表される化合物は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0018】
非水系電解液中の一般式[1a]で表される化合物の濃度としては、電解液総量に対して0.01~5.00質量%であることが好ましく、0.1~2.0質量%であることがより好ましい。一般式[1a]で表される化合物の濃度を0.01質量%以上とすることによって、非水系電解液二次電池における初期抵抗増大抑制効果が得られやすい。また、5.00質量%以下とすることによって、電極上に形成される被膜が厚くなりすぎず、抵抗増加につながり難い。
一般式[1a]で示される化合物は種々の方法により製造できる。製造法としては、特に限定されることはない。
例えば、対応するハロゲン化スルホニルイソシアネートと対応するシアン化塩もしくはシアン酸塩を、無溶媒もしくはこれらと反応しない溶媒中で反応させる方法が挙げられる。
【0019】
(II)溶質について
本開示の非水系電解液の溶質の具体例としては、リチウム電池及びリチウムイオン電池の場合には、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiCl、LiI、LiC(CF3SO2)3、LiPF3(C3F7)3、LiB(CF3)4、LiBF3(C2F5)などに代表される電解質塩が挙げられ、ナトリウムイオン電池の場合には、NaPF6、NaBF4、NaSbF6、NaAsF6、NaClO4、NaCF3SO3、NaC4F9SO3、NaAlO2、NaAlCl4、NaCl、NaI、NaC(CF3SO2)3、NaPF3(C3F7)3、NaB(CF3)4、NaBF3(C2F5)などに代表される電解質塩が挙げられる。これらの溶質は、一種類を単独で用いても良く、二種類以上を用途に合わせて任意の組み合わせ、比率で混合して用いても良い。
リチウム電池及びリチウムイオン電池の場合には、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiCl、及びLiIからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、ナトリウムイオン電池の場合には、NaPF6、NaBF4、NaSbF6、NaAsF6、NaClO4、NaCF3SO3、NaC4F9SO3、NaAlO2、NaAlCl4、NaCl、及びNaIからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0020】
中でも、電池としてのエネルギー密度、出力特性、寿命等から考えると、リチウム電池及びリチウムイオン電池の場合には、上記(II)として、少なくともLiPF6を含有することが好ましい。また、LiPF6と、それ以外の(II)成分とを併用する場合、当該それ以外の(II)成分としては、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiCl、及びLiIからなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0021】
また、ナトリウムイオン電池の場合には、上記(II)として、少なくともNaPF6を含有することが好ましい。NaPF6と、それ以外の(II)成分とを併用する場合、当該それ以外の(II)成分として、NaBF4、NaSbF6、NaAsF6、NaClO4、NaCF3SO3、NaC4F9SO3、NaAlO2、NaAlCl4、NaCl、及びNaIからなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0022】
(II)溶質の濃度については、特に制限はないが、好適な下限は0.5mol/L以上、好ましくは0.7mol/L以上、更に好ましくは0.9mol/L以上であり、また、好適な上限は2.5mol/L以下、好ましくは2.0mol/L以下、更に好ましくは1.5mol/L以下の範囲である。
【0023】
該溶質を非水有機溶媒に溶解する際の液温は特に限定されないが、-20~80℃が好ましく、0~60℃がより好ましい。
【0024】
(III)非水有機溶媒について
(III)非水有機溶媒の種類は、特に限定されず、任意の非水有機溶媒を用いることができる。具体例としては、例えば以下の非水有機溶媒が挙げられる。
環状エステルとしては、プロピレンカーボネート(以下、「PC」と記載する場合がある)、エチレンカーボネート(以下、「EC」と記載する場合がある)、ブチレンカーボネート等の環状カーボネートの他、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン等が挙げられる。
鎖状エステルとしては、ジエチルカーボネート(以下、「DEC」と記載する場合がある)、ジメチルカーボネート(以下、「DMC」と記載する場合がある)、エチルメチルカーボネート(以下、「EMC」と記載する場合がある)等の鎖状カーボネートの他、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル(以下、「EP」と記載する場合がある)等が挙げられる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン化合物やスルホキシド化合物等が挙げられる。また、イオン液体等も挙げることができる。
上記(III)は、環状エステル、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン化合物、スルホキシド化合物、及びイオン液体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
上記(III)は、環状エステルを含み、環状エステルが環状カーボネートであることが好ましい一つの態様として挙げられる。また、上記(III)が鎖状エステルを含み、鎖状エステルが鎖状カーボネートであることも好ましい態様の一つとして挙げられる。
【0025】
また、本開示に用いる非水有機溶媒は、一種類を単独で用いても良く、二種類以上を用途に合わせて任意の組み合わせ、比率で混合して用いても良い。これらの中ではその酸化還元に対する電気化学的な安定性と熱や上記溶質との反応に関わる化学的安定性の観点から、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルが好ましい。
【0026】
例えば、非水有機溶媒として、誘電率の高い環状カーボネートから1種類以上と、液粘度が低い鎖状カーボネートもしくは鎖状カーボネート以外の鎖状エステルから1種類以上とを含有すると、電解液のイオン伝導度が高まるため好ましい。具体的には、以下の組合せを含むものがより好ましい。
【0027】
(1)ECとEMCの組合せ、
(2)ECとDECの組合せ、
(3)ECとDMCとEMCの組合せ、
(4)ECとDECとEMCの組合せ、
(5)ECとEMCとEPの組合せ、
(6)PCとDECの組合せ、
(7)PCとEMCの組合せ、
(8)PCとEPの組合せ、
(9)PCとDMCとEMCの組合せ、
(10)PCとDECとEMCの組合せ、
(11)PCとDECとEPの組合せ、
(12)PCとECとEMCの組合せ、
(13)PCとECとDMCとEMCの組合せ、
(14)PCとECとDECとEMCの組合せ、
(15)PCとECとEMCとEPの組合せ
【0028】
その他添加剤について
以上が本開示の非水系電解液の基本的な構成についての説明であるが、本開示の要旨を損なわない限りにおいて、本開示の非水系電解液に一般的に用いられる添加剤を任意の比率で添加しても良い。
【0029】
具体例としては、ビニレンカーボネート(以降「VC」と記載する場合がある)、ビニレンカーボネートのオリゴマー(ポリスチレン換算の数平均分子量が170~5000)、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(以降「FEC」と記載する場合がある)、1,6-ジイソシアナトヘキサン、エチニルエチレンカーボネート、trans-ジフルオロエチレンカーボネート、プロパンサルトン、プロペンサルトン、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、4-プロピル-1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、メチレンメタンジスルホネート、1,2-エタンジスルホン酸無水物、メタンスルホニルフルオリド、トリス(トリメチルシリル)ボレート、(エトキシ)ペンタフルオロシクロトリホスファゼン、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェート、テトラフルオロ(ピコリナト)ホスフェート、1,3-ジメチル-1,3-ジビニル-1,3-ジ(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)ジシロキサン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフルオロアニソール、ジメチルビニレンカーボネート等の過充電防止効果、負極皮被膜形成効果や正極保護効果を有する化合物が挙げられる。
【0030】
また、アクリル酸リチウム、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸ナトリウムなどのカルボン酸塩、リチウムメチルサルフェート、ナトリウムメチルサルフェート、リチウムエチルサルフェート、ナトリウムメチルサルフェートなどの硫酸エステル塩などを添加してもよい。
【0031】
また、リチウムポリマー電池と呼ばれる非水系電解液二次電池に使用される場合のように非水系電解液をゲル化剤や架橋ポリマーにより擬固体化して使用することも可能である。
【0032】
本開示の非水系電解液は、下記一般式[1]~[5]のいずれかで表される化合物、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸塩、ビス(オキサラト)ホウ酸塩、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸塩、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸塩、トリス(オキサラト)リン酸塩、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩等を添加しても良い。
【0033】
【0034】
[一般式[1]中、
Ra及びRbは、それぞれ独立に、フッ素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルキニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルケニルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルキニルオキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~10のアリールオキシ基を示し、
Aは、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
【0035】
なお、本開示において、「ハロゲン原子で置換されていてもよい」とは、Ra又はRbとしてのアルキル基等が有する水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子に置換されていてもよいことを意味する。
【0036】
上記一般式[1]のRa及びRbの、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、トリフルオロメチル基、及びトリフルオロエチル基等が挙げられる。中でも、メチル基が好ましい。
【0037】
上記一般式[1]のRa及びRbの、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソブテニル基、及び1,1-ジフルオロ-1-プロペニル基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリル基が好ましい。
【0038】
上記一般式[1]のRa及びRbの、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルキニル基としては、例えば、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、及び3-ブチニル基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子で置換されていてもよい2-プロピニル基が好ましい。
【0039】
上記一般式[1]のRa及びRbの、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トシル基、キシリル基、ナフチル基、トリフルオロフェニル基、及びペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。
【0040】
上記一般式[1]のRa及びRbの、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、及びトリフルオロエトキシ基等が挙げられる。中でも、炭素数が1~3のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
【0041】
上記一般式[1]のRa及びRbの、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基、1-メチル-2-プロペニルオキシ基、2-メチル-2-プロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、及びプロペニルオキシ基等が挙げられる。中でも、炭素数が2~4のアルケニルオキシ基又はアリルオキシ基が好ましい。
【0042】
上記一般式[1]のRa及びRbの、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルキニルオキシ基としては、例えば、2-プロピニルオキシ基、1-メチル-2-プロピニルオキシ基、2-メチル-2-プロピニルオキシ基、2-ブチニルオキシ基、及び3-ブチニルオキシ基等が挙げられる。中でも、炭素数が2~4のアルキニルオキシ基又は2-プロピニルオキシ基が好ましい。
【0043】
上記一般式[1]のRa及びRbの、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~10のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、2-エチルフェノキシ基、3-エチルフェノキシ基、4-エチルフェノキシ基、2-メトキシフェノキシ基、3-メトキシフェノキシ基、及び4-メトキシフェノキシ基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基が好ましい。
【0044】
上記一般式[1]のRa及びRbの、「ハロゲン原子」としては、電池抵抗という観点から、フッ素原子が好ましい。
【0045】
また、上記一般式[1]のAで表される「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。中でも、電池抵抗がより低くなるという観点から、フッ素原子が好ましい。
【0046】
上記一般式[1]で表される化合物としては、例えば、3-(ジフルオロホスフィニルオキシ)テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジメチルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジエチルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-トリフルオロメチルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジフェニルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-アリルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジビニルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジプロパルギルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジメトキシホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジエトキシホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジフェノキシホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-トリフルオロメトキシホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-アリルオキシホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-シクロヘキシルオキシホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジメチルホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジエチルホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-トリフルオロメチルホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジフェニルホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジアリルホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジビニルホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジプロパルギルホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジメトキシホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジエトキシホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジフェノキシホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-トリフルオロメトキシ-4-フルオロホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-アリルオキシ-4-フルオロホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-ビス-シクロヘキシルオキシホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド等が挙げられる。
中でも、より初期抵抗を抑制する観点から、3-(ジフルオロホスフィニルオキシ)テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジメチルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジフェニルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジメトキシホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-アリルオキシホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジフェノキシホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ジメトキシホスフィニルオキシ-4-フルオロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、3-ビス-アリルオキシ-4-フルオロホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、及び3-ジプロパルギルホスフィニルオキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0047】
【0048】
[一般式[2]中、
R1及びR2は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10のアルケニル基、炭素数が2~10のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10のアルキニル基、炭素数が2~10のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子又は不飽和結合が存在することもできる。但し、R1及びR2の少なくとも1つは、フッ素原子である。
Mm+は、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、又はオニウムカチオンであり、
mは、該当するカチオンの価数と同数の整数を表す。]
【0049】
なお、本開示において、「有機基中にフッ素原子が存在する」とは、有機基が有する水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されることを意味する。
「有機基中に酸素原子が存在する」とは、有機基が有する少なくとも1つの炭素-炭素結合間に、酸素原子が含まれることを意味する。
「有機基中に不飽和結合が存在する」とは、有機基が有する少なくとも1つの炭素-炭素結合が、不飽和結合であることを意味する。
【0050】
上記一般式[2]において、R1又はR2で表される、炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基等が挙げられる。中でも、メチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基が好ましい。
【0051】
炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチロキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピロキシ基、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ基等が挙げられる。中でも、メトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピロキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ基が好ましい。
【0052】
炭素数が2~10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、及び1,3-ブタジエニル基等が挙げられる。中でも、ビニル基が好ましい。
【0053】
炭素数が2~10のアルケニルオキシ基としては、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、及び1,3-ブタジエニルオキシ基等が挙げられる。中でも、アリルオキシ基が好ましい。
【0054】
炭素数が2~10のアルキニル基としては、エチニル基、2-プロピニル基、及び1,1ジメチル-2-プロピニル基等が挙げられる。
【0055】
炭素数が2~10のアルキニルオキシ基としては、エチニルオキシ基、2-プロピニルオキシ基、及び1,1ジメチル-2-プロピニルオキシ基等が挙げられる。中でも、2-プロピニルオキシ基が好ましい。
【0056】
炭素数が3~10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0057】
炭素数が3~10のシクロアルコキシ基としては、シクロペンチロキシ基、及びシクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
【0058】
炭素数が3~10のシクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0059】
炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基としては、シクロペンテニルオキシ基、及びシクロヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0060】
炭素数が6~10のアリール基としては、フェニル基、2-フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリル基、及びキシリル基等が挙げられる。中でも、フェニル基、2-フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0061】
炭素数が6~10のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、2-フルオロフェニルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基、トリルオキシ基、及びキシリルオキシ基等が挙げられる。中でも、フェニルオキシ基が好ましい。
【0062】
上記一般式[2]で表される化合物の陰イオンとしては、より具体的には、例えば、以下の化合物No.2-1~No.2-17等が挙げられる。但し、本開示で用いられる一般式[2]で表される化合物は、以下の例示により何ら制限を受けるものではない。
【0063】
【0064】
上記一般式[2]において、例えば、R1がフッ素原子であり、R2がフッ素原子以外の基である場合、当該フッ素原子以外の基が、フッ素原子を含んでいてもよい炭素数6以下の炭化水素基から選ばれる基であることが好ましい。上記炭化水素基の炭素数が6より少ないと、電極上に被膜を形成した際の内部抵抗が比較的小さい傾向があるため好ましく、特にメチル基、エチル基、n-プロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2-プロピニル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、及びこれらの基から誘導されるアルコキシ基やアルケニルオキシ基やアルキニルオキシ基であると、サイクル特性及び内部抵抗特性をバランスよく発揮できる非水系電解液二次電池が得られるため好ましい。
【0065】
上記一般式[2]で表される化合物の陰イオンとして、上記化合物No.2-1~No.2-17の中でも、化合物No.2-1、No.2-2、No.2-3、No.2-6、No.2-10、No.2-11、No.2-14、No.2-16が、内部抵抗の上昇抑制の観点からより好ましく、化合物No.2-1、No.2-2、No.2-6、No.2-10が特に好ましい。
【0066】
【0067】
[一般式[3]中、
R3~R6は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10のアルケニル基、炭素数が2~10のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10のアルキニル基、炭素数が2~10のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子、シアノ基又は不飽和結合が存在することもできる。但し、R3~R6の少なくとも1つは、フッ素原子である。
また、Mm+、mは、一般式[2]と同様である。]
【0068】
なお、本開示において、「有機基中にシアノ基が存在する」とは、有機基が有する水素原子の少なくとも1つがシアノ基に置換されることを意味する。
【0069】
上記一般式[3]において、R3~R6で表される、炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基等が挙げられる。
【0070】
炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチロキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピロキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ基、及び2-シアノエトキシ基等が挙げられる。中でも、メトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ基、2-シアノエトキシ基が好ましい。
【0071】
炭素数が2~10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、及び1,3-ブタジエニル基等が挙げられる。
【0072】
炭素数が2~10のアルケニルオキシ基としては、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、及び1,3-ブタジエニルオキシ基等が挙げられる。中でも、アリルオキシ基が好ましい。
【0073】
炭素数が2~10のアルキニル基としては、エチニル基、2-プロピニル基、及び1,1ジメチル-2-プロピニル基等が挙げられる。
【0074】
炭素数が2~10のアルキニルオキシ基としては、エチニルオキシ基、2-プロピニルオキシ基、及び1,1ジメチル-2-プロピニルオキシ基等が挙げられる。中でも、2-プロピニルオキシ基が好ましい。
【0075】
炭素数が3~10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0076】
炭素数が3~10のシクロアルコキシ基としては、シクロペンチロキシ基、及びシクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
【0077】
炭素数が3~10のシクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0078】
炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基としては、シクロペンテニルオキシ基、及びシクロヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0079】
炭素数が6~10のアリール基としては、フェニル基、2-フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリル基、及びキシリル基等が挙げられる。
【0080】
炭素数が6~10のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、2-フルオロフェニルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基、トリルオキシ基、及びキシリルオキシ基等が挙げられる。中でも、フェニルオキシ基が好ましい。
【0081】
上記一般式[3]で表される化合物の陰イオンとしては、より具体的には、例えば、以下の化合物No.3-1~No.3-13等が挙げられる。但し、本開示で用いられる一般式[3]で表される化合物は、以下の例示により何ら制限を受けるものではない。式中、Meはメチル基を表す。
【0082】
【0083】
上記一般式[3]において、R3~R6の少なくとも1つがフッ素原子であり、R3~R6の少なくとも1つがフッ素原子を含んでいてもよい炭素数6以下の炭化水素基から選ばれる基であることが好ましい。上記炭化水素基の炭素数が6より少ないと、電極上に被膜を形成した際の内部抵抗が比較的小さい傾向があるため好ましく、特にメチル基、エチル基、n-プロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2-プロピニル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、及びこれらの基から誘導されるアルコキシ基やアルケニルオキシ基やアルキニルオキシ基から選ばれる少なくとも1つの基であると、サイクル特性及び内部抵抗特性をバランスよく発揮できる非水系電解液二次電池が得られるため好ましい。
【0084】
上記一般式[3]で表される化合物の陰イオンとして、上記化合物No.3-1~No.3-13の中でも、化合物No.3-1、No.3-2、No.3-3、No.3-4、No.3-6、No.3-7、No.3-9、No.3-13が、内部抵抗の上昇抑制の観点からより好ましく、化合物No.3-1、No.3-2、No.3-4、No.3-9が特に好ましい。
【0085】
【0086】
[一般式[4]中、
R7~R9は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10のアルケニル基、炭素数が2~10のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10のアルキニル基、炭素数が2~10のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子又は不飽和結合が存在することもできる。但し、R7~R9の少なくとも1つは、フッ素原子である。
また、Mm+、mは、一般式[2]と同様である。]
【0087】
上記一般式[4]において、R7~R9で表される、炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基等が挙げられる。中でも、メチル基、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0088】
炭素数が1~10の直鎖あるいは炭素数が3~10の分岐状のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチロキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピロキシ基、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ基等が挙げられる。中でも、メトキシ基、エトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ基が好ましい。
【0089】
炭素数が2~10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、及び1,3-ブタジエニル基等が挙げられる。中でも、ビニル基が好ましい。
【0090】
炭素数が2~10のアルケニルオキシ基としては、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、及び1,3-ブタジエニルオキシ基等が挙げられる。中でも、アリルオキシ基が好ましい。
【0091】
炭素数が2~10のアルキニル基としては、エチニル基、2-プロピニル基、及び1,1ジメチル-2-プロピニル基等が挙げられる。
【0092】
炭素数が2~10のアルキニルオキシ基としては、エチニルオキシ基、2-プロピニルオキシ基、及び1,1ジメチル-2-プロピニルオキシ基等が挙げられる。中でも、2-プロピニルオキシ基が好ましい。
【0093】
炭素数が3~10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0094】
炭素数が3~10のシクロアルコキシ基としては、シクロペンチロキシ基、及びシクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
【0095】
炭素数が3~10のシクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0096】
炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基としては、シクロペンテニルオキシ基、及びシクロヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0097】
炭素数が6~10のアリール基としては、フェニル基、2-フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリル基、及びキシリル基等が挙げられる。
【0098】
炭素数が6~10のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、2-フルオロフェニルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基、トリルオキシ基、及びキシリルオキシ基等が挙げられる。中でも、フェニルオキシ基、トリルオキシ基が好ましい。
【0099】
上記一般式[4]で表される化合物の陰イオンとしては、より具体的には、例えば、以下の化合物No.4-1~No.4-18等が挙げられる。但し、本開示で用いられる一般式[4]で表される化合物は、以下の例示により何ら制限を受けるものではない。式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を表す。
【0100】
【0101】
上記一般式[4]において、R7~R9の少なくとも1つがフッ素原子であり、R7~R9の少なくとも1つがフッ素原子を含んでいてもよい炭素数6以下の炭化水素基から選ばれる基であることが好ましい。上記炭化水素基の炭素数が6より少ないと、電極上に被膜を形成した際の内部抵抗が比較的小さい傾向があるため好ましく、特にメチル基、エチル基、n-プロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2-プロピニル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、及びこれらの基から誘導されるアルコキシ基やアルケニルオキシ基やアルキニルオキシ基から選ばれる少なくとも1つの基であると、サイクル特性及び内部抵抗特性をバランスよく発揮できる非水系電解液二次電池が得られるため好ましい。
【0102】
上記一般式[4]で表される化合物の陰イオンとして、上記化合物No.4-1~No.4-18の中でも、化合物No.4-1、No.4-2、No.4-3、No.4-5、No.4-6、No.4-7、No.4-10、No.4-11、No.4-15、No.4-17、No.4-18が、内部抵抗の上昇抑制の観点からより好ましく、化合物No.4-1、No.4-2、No.4-5、No.4-6、No.4-7、No.4-15、No.4-18が特に好ましい。
【0103】
また、上記一般式[2]~[4]において、Mm+が、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びテトラアルキルアンモニウムイオンからなる群から選ばれることが好ましく、リチウムイオン又はナトリウムイオンがより好ましく、リチウムイオンが特に好ましい。
【0104】
【0105】
[一般式[5]中、
R10は、それぞれ独立に、炭素-炭素不飽和結合を有する基であり、R11は、それぞれ独立に、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数が1~10の直鎖又は炭素数が3~10の分岐状のアルキル基、及びフッ素原子で置換されていてもよい炭素数が1~10の直鎖又は炭素数が3~10の分岐状のアルコキシ基である。
aは、2~4の整数である。]
【0106】
上記一般式[5]において、R10で表される炭素-炭素不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基等の炭素原子数2~8のアルケニル基又はこれらの基から誘導されるアルケニルオキシ基、エチニル基、2-プロピニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル基等の炭素原子数2~8のアルキニル基又はこれらの基から誘導されるアルキニルオキシ基、フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素原子数6~12のアリール基又はこれらの基から誘導されるアリールオキシ基が挙げられる。また、上記の基はフッ素原子及び酸素原子を有していても良い。なお、フッ素原子を有するとは、炭素原子に結合する水素原子がフッ素原子に置き換わったことを意味し、酸素原子を有するとは、炭素-炭素結合間に酸素原子がエーテル結合として存在することを意味する。
それらの中でも、炭素数が6以下の炭素-炭素不飽和結合を含有する基が好ましい。上記炭素数が6より少ないと、電極上に被膜を形成した際の内部抵抗が比較的小さい傾向があるため好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、エチニル基、及び2-プロピニル基からなる群から選択される基が好ましく、ビニル基であることが特に好ましい。
【0107】
また、上記一般式[5]において、R11で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基等が挙げられる。また、上記の基はフッ素原子及び酸素原子を有していても良い。酸素原子を有する基として上記アルキル基から誘導されるアルコキシ基等が挙げられる。アルキル基及びアルコキシ基から選択される基であると電極上に被膜を形成した際の抵抗がより小さい傾向があり、その結果出力特性の観点で好ましい。特にメチル基、エチル基、n-プロピル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,1-トリフルオロイソプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、1,1,1-トリフルオロイソプロポキシ基、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ基からなる群から選択される基であると、電極上に被膜を形成した際の内部抵抗を大きくすることなく高温サイクル特性及び高温貯蔵特性に、より優れた非水電解液電池を得られるため好ましい。
【0108】
上記一般式[5]のaで表される炭素-炭素不飽和結合を有する基の数は、電極上に皮膜を形成させるために、2~4の整数であることが好ましく、3又は4であると高温サイクル特性及び高温貯蔵特性をより向上し易いため好ましく、4であると特に好ましい。詳細は不明だがより強固な皮膜を形成し易いからと考えられる。
【0109】
上記一般式[5]で表される化合物としては、より具体的には、例えば以下の化合物No.5-1~5-20等が挙げられる。但し、本開示で用いられるシラン化合物は、以下の例示により何ら制限を受けるものではない。
【0110】
【0111】
上記一般式[5]で表される化合物として、上記化合物No.5-1~No.5-20の中でも、化合物No.5-1、No.5-2、No.5-3、No.5-4、No.5-5、No.5-6、No.5-8、No.5-9、No.5-12、No.5-17、No.5-18、No.5-20が、高温での耐久性向上の観点からより好ましく、化合物No.5-2、No.5-4、No.5-5、No.5-8、No.5-18が特に好ましい。
【0112】
本開示の非水系電解液は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸塩、ビス(オキサラト)ホウ酸塩、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸塩、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸塩、トリス(オキサラト)リン酸塩、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩、ビニレンカーボネート、ビニレンカーボネートのオリゴマー(ポリスチレン換算の数平均分子量が170~5000)、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,6-ジイソシアナトヘキサン、エチニルエチレンカーボネート、trans-ジフルオロエチレンカーボネート、プロパンサルトン、プロペンサルトン、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、4-プロピル-1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、メチレンメタンジスルホネート、1,2-エタンジスルホン酸無水物、メタンスルホニルフルオリド、トリス(トリメチルシリル)ボレート、(エトキシ)ペンタフルオロシクロトリホスファゼン、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェート、テトラフルオロ(ピコリナト)ホスフェート、1,3-ジメチル-1,3-ジビニル-1,3-ジ(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)ジシロキサン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、フルオロベンゼン、及びシクロヘキシルベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1つの添加剤を含有することが好ましい。
【0113】
本実施形態に係る非水系電解液が上記その他添加剤を含む場合の含有量としては、電解液総量に対して0.01質量%以上、5.00質量%以下であることが好ましい。
【0114】
上述の本開示の非水系電解液は、非水系電解液二次電池に好適に用いられるが、特に、銅を含む集電体を備えた非水系電解液二次電池に用いることが好ましい。
本開示の非水系電解液は、非水系電解液二次電池に用いた際の初期抵抗の増大を抑制できるものであるが、銅を含む集電体を備えた非水系電解液二次電池に用いた場合、さらに、集電体の金属である銅成分の電解液への溶出を低減するという効果も発揮する。
【0115】
2.非水系電解液二次電池について
次に、本開示の非水系電解液二次電池の構成について説明する。本開示の非水系電解液二次電池は、上記の本開示の非水系電解液を用いることが特徴であり、その他の構成部材には一般の非水系電解液二次電池に使用されているものが用いられる。
【0116】
非水系電解液二次電池は、以下に記載するような、(ア)上記の非水系電解液と、(イ)正極と、(ウ)負極と、(エ)セパレータとを備える非水系電解液二次電池であってもよい。
【0117】
〔(イ)正極〕
(イ)正極は、少なくとも1種の酸化物及び/又はポリアニオン化合物を正極活物質として含むことが好ましい。
【0118】
[正極活物質]
非水系電解液中のカチオンがリチウム主体となるリチウムイオン二次電池の場合、(イ)正極を構成する正極活物質は、充放電が可能な種々の材料であれば特に限定されるものでないが、例えば、(A)ニッケル、マンガン、コバルトの少なくとも1種以上の金属を含有し、かつ層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、(B)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、(C)リチウム含有オリビン型リン酸塩、及び(D)層状岩塩型構造を有するリチウム過剰層状遷移金属酸化物から少なくとも1種を含有するものが挙げられる。
【0119】
((A)リチウム遷移金属複合酸化物)
正極活物質(A)ニッケル、マンガン、コバルトの少なくとも1種以上の金属を含有し、かつ層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物、リチウム・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物等が挙げられる。また、これらリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部を、Al、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、B、Ba、Y、Sn等の他の元素で置換したものを用いても良い。
【0120】
リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル複合酸化物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2やMg、Zr、Al、Ti等の異種元素を添加したコバルト酸リチウム(LiCo0.98Mg0.01Zr0.01O2、LiCo0.98Mg0.01Al0.01O2、LiCo0.975Mg0.01Zr0.005Al0.01O2等)、WO2014/034043号公報に記載の表面に希土類の化合物を固着させたコバルト酸リチウム等を用いても良い。また、特開2002-151077号公報等に記載されているように、LiCoO2粒子粉末の粒子表面の一部に酸化アルミニウムが被覆したものを用いても良い。
【0121】
リチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物については、一般式(6)で示される。
LiaNi1-b-cCobM1
cO2 (6)
式(6)中、M1はAl、Fe、Mg、Zr、Ti、Bからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、aは0.9≦a≦1.2であり、b、cは、0.01≦b≦0.3、0≦c≦0.1の条件を満たす。
これらは、例えば、特開2009-137834号公報等に記載される製造方法等に準じて調製することができる。具体的には、LiNi0.8Co0.2O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.87Co0.10Al0.03O2、LiNi0.90Co0.07Al0.03O2、LiNi0.6Co0.3Al0.1O2等が挙げられる。
【0122】
リチウム・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物の具体例としては、LiNi0.5Mn0.5O2、LiCo0.5Mn0.5O2等が挙げられる。
【0123】
リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物としては、一般式(7)で示されるリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
LidNieMnfCogM2
hO2 (7)
式(7)中、M2はAl、Fe、Mg、Zr、Ti、B、Snからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、dは0.9≦d≦1.2であり、e、f、g及びhは、e+f+g+h=1、0≦e≦0.9、0≦f≦0.5、0≦g≦0.5、及びh≧0の条件を満たす。
【0124】
リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物は、構造安定性を高め、リチウム二次電池における高温での安全性を向上させるためにマンガンを一般式(7)に示す範囲で含有するものが好ましく、特にリチウムイオン二次電池の高率特性を高めるためにコバルトを一般式(7)に示す範囲で更に含有するものがより好ましい。
具体的には、例えば、4.3V以上に充放電領域を有する、Li[Ni1/3Mn1/3Co1/3]O2、Li[Ni0.45Mn0.35Co0.2]O2、Li[Ni0.5Mn0.3Co0.2]O2、Li[Ni0.6Mn0.2Co0.2]O2、Li[Ni0.8Mn0.1Co0.1]O2、Li[Ni0.49Mn0.3Co0.2Zr0.01]O2、Li[Ni0.49Mn0.3Co0.2Mg0.01]O2、Li[Ni0.8Mn0.1Co0.1]O2等が挙げられる。
【0125】
((B)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物)
正極活物質(B)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物としては、例えば、一般式(8)で示されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物が挙げられる。
Lij(Mn2-kM3
k)O4 (8)
式(8)中、M3は、Ni、Co、Fe、Mg、Cr、Cu、Al及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属元素であり、jは、1.05≦j≦1.15であり、kは、0≦k≦0.20である。
具体的には、例えば、LiMn2O4、LiMn1.95Al0.05O4、LiMn1.9Al0.1O4、LiMn1.9Ni0.1O4、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
【0126】
((C)リチウム含有オリビン型リン酸塩)
正極活物質(C)リチウム含有オリビン型リン酸塩としては、例えば一般式(9)で示されるものが挙げられる。
LiFe1-nM4
nPO4 (9)
式(9)中、M4は、Co、Ni、Mn、Cu、Zn、Nb、Mg、Al、Ti、W、Zr及びCdから選ばれる少なくとも1つであり、nは、0≦n≦1である。
具体的には、例えば、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4等が挙げられ、中でもLiFePO4及び/又はLiMnPO4が好ましい。
【0127】
((D)リチウム過剰層状遷移金属酸化物)
正極活物質(D)層状岩塩型構造を有するリチウム過剰層状遷移金属酸化物としては、例えば一般式(10)で示されるものが挙げられる。
xLiM5O2・(1-x)Li2M6O3 (10)
式(10)中、xは、0<x<1を満たす数であり、M5は、平均酸化数が3+である少なくとも1種以上の金属元素であり、M6は、平均酸化数が4+である少なくとも1種の金属元素である。式(10)中、M5は、好ましくは3価のMn、Ni、Co、Fe、V、Crから選ばれてなる1種の金属元素であるが、2価と4価の等量の金属で平均酸化数を3価にしてもよい。
また、式(10)中、M6は、好ましくは、Mn、Zr、Tiから選ばれてなる1種以上の金属元素である。具体的には、0.5[LiNi0.5Mn0.5O2]・0.5[Li2MnO3]、0.5[LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2]・0.5[Li2MnO3]、0.5[LiNi0.375Co0.25Mn0.375O2]・0.5[Li2MnO3]、0.5[LiNi0.375Co0.125Fe0.125Mn0.375O2]・0.5[Li2MnO3]、0.45[LiNi0.375Co0.25Mn0.375O2]・0.10[Li2TiO3]・0.45[Li2MnO3]等が挙げられる。
この一般式(10)で表される正極活物質(D)は、4.4V(Li基準)以上の高電圧充電で高容量を発現することが知られている(例えば、米国特許7,135,252号明細書)。
これら正極活物質は、例えば特開2008-270201号公報、WO2013/118661号公報、特開2013-030284号公報等に記載される製造方法等に準じて調製することができる。
正極活物質としては、上記(A)~(D)から選ばれる少なくとも1つを主成分として含有すればよいが、それ以外に含まれるものとしては、例えば、FeS2、TiS2、V2O5、MoO3、MoS2等の遷移元素カルコゲナイド、あるいはポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、及びポリピロール等の導電性高分子、活性炭、ラジカルを発生するポリマー、カーボン材料等が挙げられる。
【0128】
[正極集電体]
(イ)正極は、正極集電体を有する。正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又はこれらの合金等を用いることができる。
【0129】
[正極活物質層]
(イ)正極は、例えば、正極集電体の少なくとも一方の面に正極活物質層が形成される。正極活物質層は、例えば、前述の正極活物質と、結着剤と、必要に応じて導電剤とにより構成される。
【0130】
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、又はスチレンブタジエンゴム(SBR)樹脂等が挙げられる。
【0131】
導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、又は黒鉛(粒状黒鉛や燐片状黒鉛)等の炭素材料を用いることができる。正極においては、結晶性の低いアセチレンブラックやケッチェンブラックを用いることが好ましい。
【0132】
〔(ウ)負極〕
(ウ)負極は、少なくとも1種の負極活物質を含むことが好ましい。
【0133】
[負極活物質]
非水系電解液中のカチオンがリチウム主体となるリチウムイオン二次電池の場合、(ウ)負極を構成する負極活物質としては、リチウムイオンのド-プ・脱ド-プが可能なものであり、例えば(E)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素材料、(F)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nmを超える炭素材料、(G)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属の酸化物、(H)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属若しくはこれら金属を含む合金又はこれら金属若しくは合金とリチウムとの合金、及び(I)リチウムチタン酸化物から選ばれる少なくとも1種を含有するものが挙げられる。これら負極活物質は、1種を単独で用いることができ、2種以上を組合せて用いることもできる。また、リチウム金属、金属窒化物、スズ化合物、導電性高分子等を用いてもよい。
【0134】
((E)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素材料)
負極活物質(E)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素材料としては、例えば、熱分解炭素類、コークス類(例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、有機高分子化合物焼成体(例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等が挙げられ、これらは黒鉛化したものでもよい。当該炭素材料は、X線回折法で測定した(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以下のものであり、中でも、その真密度が1.70g/cm3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料が好ましい。
【0135】
((F)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nmを超える炭素材料)
負極活物質(F)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nmを超える炭素材料としては、非晶質炭素が挙げられ、これは、2000℃以上の高温で熱処理してもほとんど積層秩序が変化しない炭素材料である。例えば、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、1500℃以下で焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソペーズビッチカーボンファイバー(MCF)等が例示される。株式会社クレハ製のカーボトロン(登録商標)P等は、その代表的な事例である。
【0136】
((G)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属の酸化物)
負極活物質(G)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属の酸化物としては、リチウムイオンのド-プ・脱ド-プが可能な、例えば、酸化シリコン、酸化スズ等が挙げられる。
Siの超微粒子がSiO2中に分散した構造を持つSiOx等がある。この材料を負極活物質として用いると、Liと反応するSiが超微粒子であるために充放電がスムーズに行われる一方で、前記構造を有するSiOx粒子自体は表面積が小さいため、負極活物質層を形成するための組成物(ペースト)とした際の塗料性や負極合剤層の集電体に対する接着性も良好である。
なお、SiOxは充放電に伴う体積変化が大きいため、SiOxと上述負極活物質(E)の黒鉛とを特定比率で負極活物質に併用することで高容量化と良好な充放電サイクル特性とを両立することができる。
【0137】
((H)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属若しくはこれら金属を含む合金又はこれら金属若しくは合金とリチウムとの合金)
負極活物質(H)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属若しくはこれら金属を含む合金又はこれら金属若しくは合金とリチウムとの合金としては、例えば、シリコン、スズ、アルミニウム等の金属、シリコン合金、スズ合金、アルミニウム合金等が挙げられ、これらの金属や合金が、充放電に伴いリチウムと合金化した材料も使用できる。
これらの好ましい具体例としては、WO2004/100293号公報や、特開2008-016424号等に記載される、例えば、ケイ素(Si)、スズ(Sn)等の金属単体(例えば、粉末状のもの)、該金属合金、該金属を含有する化合物、該金属にスズ(Sn)とコバルト(Co)とを含む合金等が挙げられる。当該金属を電極に使用した場合、高い充電容量を発現することができ、かつ、充放電に伴う体積の膨張・収縮が比較的少ないことから好ましい。また、これらの金属は、これをリチウムイオン二次電池の負極に用いた場合に、充電時にLiと合金化するため、高い充電容量を発現することが知られており、この点でも好ましい。
更に、例えば、WO2004/042851号、WO2007/083155号等の公報に記載される、サブミクロン直径のシリコンのピラーから形成された負極活物質、シリコンで構成される繊維からなる負極活物質等を用いてもよい。
【0138】
((I)リチウムチタン酸化物)
負極活物質(I)リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム等を挙げることができる。
スピネル構造を有するチタン酸リチウムとしては、例えば、Li4+αTi5O12(αは充放電反応により0≦α≦3の範囲内で変化する)を挙げることができる。また、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウムとしては、例えば、Li2+βTi3O7(βは充放電反応により0≦β≦3の範囲内で変化する)を挙げることができる。これら負極活物質は、例えば特開2007-018883号公報、特開2009-176752号公報等に記載される製造方法等に準じて調製することができる。
【0139】
一方、非水系電解液中のカチオンがナトリウム主体となるナトリウムイオン二次電池の場合、負極活物質として、例えば、ハードカーボンやTiO2、V2O5、MoO3等の酸化物等が用いられる。例えば、非水系電解液中のカチオンがナトリウム主体となるナトリウムイオン二次電池の場合、正極活物質としてNaFeO2、NaCrO2、NaNiO2、NaMnO2、NaCoO2等のナトリウム含有遷移金属複合酸化物、それらのナトリウム含有遷移金属複合酸化物のFe、Cr、Ni、Ti、Mn、Co、等の遷移金属が複数混合したもの(例えば、NaNi0.5Ti0.3Mn0.2O2)、それらのナ
トリウム含有遷移金属複合酸化物の遷移金属の一部が他の遷移金属以外の金属に置換されたもの、Na2FeP2O7、NaCo3(PO4)2P2O7等の遷移金属のリン酸化合物、TiS2、FeS2等の硫化物、あるいはポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、及びポリピロール等の導電性高分子、活性炭、ラジカルを発生するポリマー、カーボン材料等が使用される。
【0140】
[負極集電体]
(ウ)負極は、負極集電体を有する。負極集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又はこれらの合金等を用いることができる。
本開示の非水系電解液二次電池は、負極集電体として銅を含むことが好ましい。負極集電体として銅を含む非水系電解液二次電池に上記本開示の非水系電解液を用いると、初期抵抗の増大抑制効果に加えて、電解液への銅溶出抑制効果が得られる。
【0141】
[負極活物質層]
(ウ)負極は、例えば、負極集電体の少なくとも一方の面に負極活物質層が形成される。負極活物質層は、例えば、前述の負極活物質と、結着剤と、必要に応じて導電剤とにより構成される。
【0142】
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、又はスチレンブタジエンゴム(SBR)樹脂等が挙げられる。
【0143】
導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、又は黒鉛(粒状黒鉛や燐片状黒鉛)等の炭素材料を用いることができる。
【0144】
〔電極((イ)正極及び(ウ)負極)の製造方法〕
電極は、例えば、活物質と、結着剤と、必要に応じて導電剤とを所定の配合量でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)や水等の溶媒中に分散混練し、得られたペーストを集電体に塗布、乾燥して活物質層を形成することで得ることができる。得られた電極は、ロールプレス等の方法により圧縮して、適当な密度の電極に調節することが好ましい。
【0145】
〔(エ)セパレータ〕
上記の非水系電解液二次電池は、(エ)セパレータを備える。(イ)正極と(ウ)負極の接触を防ぐためのセパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、セルロース、紙、又はガラス繊維等で作られた不織布や多孔質シートが使用される。これらのフィルムは、電解液がしみ込んでイオンが透過し易いように、微多孔化されているものが好ましい。
【0146】
ポリオレフィンセパレ-タとしては、例えば、多孔性ポリオレフィンフィルム等の微多孔性高分子フィルムといった正極と負極とを電気的に絶縁し、かつリチウムイオンが透過可能な膜が挙げられる。多孔性ポリオレフィンフィルムの具体例としては、例えば、多孔性ポリエチレンフィルム単独、又は多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンフィルムとを重ね合わせて複層フィルムとして用いてもよい。また、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとを複合化したフィルム等が挙げられる。
【0147】
〔外装体〕
非水系電解液二次電池を構成するにあたり、非水系電解液二次電池の外装体としては、例えば、コイン型、円筒型、角型等の金属缶や、ラミネート外装体を用いることができる。金属缶材料としては、例えば、ニッケルメッキを施した鉄鋼板、ステンレス鋼板、ニッケルメッキを施したステンレス鋼板、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が挙げられる。
【0148】
ラミネート外装体としては、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、SUS製ラミネートフィルム、シリカをコーティングしたポリプロピレン、ポリエチレン等のラミネートフィルム等を用いることができる。
【0149】
本実施形態にかかる非水系電解液二次電池の構成は、特に制限されるものではないが、例えば、正極及び負極が対向配置された電極素子と、非水系電解液とが、外装体に内包されている構成とすることができる。非水系電解液二次電池の形状は、特に限定されるものではないが、以上の各要素からコイン状、円筒状、角形、又はアルミラミネートシート型等の形状の電気化学デバイスが組み立てられる。
【実施例】
【0150】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はかかる実施例により限定されるものではない。
【0151】
<電解液No.1-1~1-8、比較電解液No.1-1~1-3の調製>
非水溶媒として、エチレンカーボネート(以降「EC」)、プロピレンカーボネート(以降「PC」)、ジメチルカーボネート(以降「DMC」)、エチルメチルカーボネート(以降「EMC」)を体積比EC:PC:DMC:EMC=2:1:3:4で混合した混合溶媒を用い、該溶媒中に溶質としてヘキサフルオロリン酸リチウム(以降「LiPF6」)を1.00mol/Lの濃度となるように溶解し、さらに(I)としてLiN(SO2F)(COCN)を0.02質量%の濃度となるように溶解し、電解液No.1-1を調製した。なお、上記の調製は、液温を25℃に維持しながら行った。電解液No.1-1の調製条件を表1に示す。
また、(I)の種類や濃度を表1のように変えて、それ以外は電解液No.1-1の調製と同様の手順で電解液No.1-2~1-8、比較電解液No.1-1~1-3を調製した。なお、比較電解液No.1-2、1-3の調製では、(I)の代わりにスクシノニトリル(以降「SN」)を用いた。
【0152】
【0153】
<NCM811正極の作製>
LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2粉末91.0質量%に、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(以降「PVDF」)を4.5質量%、導電材としてアセチレンブラックを4.5質量%混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(以降「NMP」)をLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2粉末、バインダー、及び導電材の総質量に対して、45質量%添加し、正極合材ペーストを作製した。このペーストをアルミニウム箔(A1085)の両面に塗布して、乾燥、加圧を行った後に、4cm×5cmに打ち抜くことで試験用NCM811正極を得た。
【0154】
<黒鉛負極の作製>
人造黒鉛粉末98.0質量%に、バインダーとして1.0質量%のカルボキシメチルセルロース(以降「CMC」)、1.0質量%のスチレンブタジエンコポリマー(以降「SBR」)を混合し、さらに純水を人造黒鉛粉末、及びバインダーの総質量に対して、50質量%添加し、負極合材ペーストを作製した。このペーストを銅箔の片面に塗布して、乾燥、加圧を行った後に、4.5cm×5.5cmに打ち抜くことで試験用黒鉛負極を得た。
【0155】
[実施例1-1~1-8、比較例1-1~1-3]
<非水系電解液二次電池の作製>
上記の試験用NCM811正極と、試験用黒鉛負極と、セルロース製セパレータとを備えるアルミラミネート外装セル(容量70mAh)に、表1に記載の電解液No.1-1~1-8、及び比較電解液No.1-1~1-3をそれぞれ含浸させ、実施例1-1~1-8、比較例1-1~1-3に係る非水系電解液二次電池を得た。
【0156】
〔評価〕
実施例1-1~1-8、比較例1-1~1-3に係る非水系電解液二次電池のそれぞれについて、以下の評価を実施した。
【0157】
<低温出力特性(初期抵抗の評価)>
上述のように電解液を含浸させたそれぞれのセルを、25℃の環境温度で12時間静置(含浸時間:12時間)した後、25℃の環境温度で、以下の条件でコンディショニングを実施した。すなわち、初回充放電として、充電上限電圧4.3V、0.1Cレート(7mA)で定電流定電圧充電し、放電終止電圧3.0Vまで0.2Cレート定電流で放電を行い、その後、充電上限電圧4.3V、0.2Cレートで定電流定電圧充電し、放電終止電圧3.0Vまで0.2Cレート定電流で放電を行う充放電サイクルを3回繰り返した。
上記コンディショニングを実施後、25℃の環境温度において充電上限電圧4.3Vまで定電流定電圧法で、0.2Cレートで定電流定電圧充電し、-30℃の環境温度で放電終止電圧3.0Vまで5Cレート定電流で放電を行ったときの放電容量(-30℃放電容量)を測定した。なお、表2には、比較例1-1の容量を100とした場合の、各実施例・比較例の容量の相対値を記載した。容量の相対値が大きいほど、初期抵抗が小さいことを意味する。
【0158】
初期抵抗評価の他、負極集電体である銅の電解液への溶出抑制効果の指標として、初回放電容量、過放電特性についての評価も行った。
【0159】
<初回放電容量の比較>
上述のように電解液を含浸させたそれぞれのセルを、25℃の環境温度で3日間静置(含浸時間:3日間)した後、初回充放電として25℃の環境温度で、充電上限電圧4.3V、0.1Cレート(7mA)で定電流定電圧充電し、放電終止電圧3.0Vまで0.2Cレート定電流で放電を行い、その初回放電容量を比較した。表2には、比較例1-1の容量を100とした場合の、各実施例・比較例の初回放電容量の相対値を示す。
【0160】
<過放電特性>
上述のように電解液を含浸させたそれぞれのセルを、25℃の環境温度で12時間静置(含浸時間:12時間)した後、25℃の環境温度で、以下の条件でコンディショニングを実施した。すなわち、初回充放電として、充電上限電圧4.3V、0.1Cレート(7mA)で定電流定電圧充電し、放電終止電圧3.0Vまで0.2Cレート定電流で放電を行い、その後、充電上限電圧4.3V、0.2Cレートで定電流定電圧充電し、放電終止電圧3.0Vまで0.2Cレート定電流で放電を行う充放電サイクルを3回繰り返した。この3回目の放電容量を初期容量とする。
上記コンディショニングを実施後、放電状態のセルに、さらに75Ωの定抵抗で0Vまで放電を行うことで過放電状態とし、3日間放置する。放置後、再びこのセルを25℃の環境温度で、充電上限電圧4.3V、0.2Cレートで定電流定電圧充電し、放電終止電圧3.0Vまで0.2Cレート定電流で放電を行い、そのときの放電容量を測定し、初期容量に対する容量維持率を求めた。なお、表2には、比較例1-1の容量維持率を100とした場合の、各実施例・比較例の容量維持率の相対値である「過放電後放電容量維持率」を記載した。
【0161】
【0162】
以上の結果を比較すると、低温での放電容量を比較した結果、スクシノニトリルを添加した比較例1-2、比較例1-3では、比較例1-1よりも放電容量が低下しているが、(I)を添加した各種電解液では、放電容量が大幅に増大しており、初期抵抗の増大を抑制していることが確認された。
【0163】
さらに、初回放電容量を比較すると、(I)を用いることで、含浸時間が長時間となった場合においても、初回放電容量は、比較例1-2や比較例1-3と同等な容量を有することがわかった。これは、負極集電体である銅の溶出を抑制していることを示唆する結果である。
また、過放電後放電容量維持率を比較すると、(I)を用いることで、過放電状態となった場合でも、過放電後の放電容量維持率は、比較例1-2と同等な容量を有することがわかった。これは、負極集電体である銅の溶出を抑制していることを示唆する結果である。
活物質が炭素材料を含む場合、充電をおこなっていない段階の負極の電位が銅の溶出電位以上であるため、電解液が注液された時点から銅の溶解がはじまる。溶出した銅が正極上に析出することや、充電時に負極上に析出することにより、セルの容量が低下することが一般的に知られている。