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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】先細りステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/915 20130101AFI20240202BHJP
【FI】
A61F2/915
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020543626
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019017218
(87)【国際公開番号】W WO2019160758
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】15/897,673
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518346029
【氏名又は名称】ヴェスパー メディカル、 インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VESPER MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ロンゴ、マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】シュック、ブルース ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン、ウィリアム ジェームズ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-285548(JP,A)
【文献】特表2012-505004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0305943(US,A1)
【文献】特表2002-500533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0152994(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/915
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中を通る管腔を画定する細長い管状の壁構造体であって、該細長い管状の壁構造体が、近位の剛性領域、移行領域、および遠位の可撓性領域を有し、該移行領域が、該剛性領域と該可撓性領域との間に延在している、壁構造体を備え、
該剛性領域が、一定の第1の厚さを有し、該移行領域が、一定の第2の厚さを有し、該可撓性領域が、一定の第3の厚さを有し、円錐台状の領域が、該剛性領域と該移行領域との間および該移行領域と該可撓性領域との間に形成され、
該第1の厚さは、該第3の厚さよりも大きく、該剛性領域の径方向剛性が該可撓性領域の径方向剛性よりも高くなることに寄与している、装置。
【請求項2】
前記第2の厚さは、前記第1の厚さよりも小さいが、前記第3の厚さよりも大きく、前記移行領域の径方向剛性が、前記剛性領域よりも低いが前記可撓性領域よりも高くなることに寄与している、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記細長い管状の壁構造体が、内径を有し、前記剛性領域が、第1の直径を有し、前記第1の厚さが、第1の直径と該内径との間の厚さであり、前記移行領域が、第2の直径を有し、前記第2の厚さが、第2の直径と該内径との間の厚さであり、前記可撓性領域が、第3の直径を有し、前記第3の厚さが、第3の直径と該内径との間の厚さである、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記可撓性領域が、前記剛性領域の可撓性よりも高い可撓性を有する、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記移行領域が、前記剛性領域の前記可撓性よりも高く、前記可撓性領域の前記可撓性よりも低い可撓性を有する、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記細長い管状の壁構造体が、複数の相互連結されたストラットによって画定される、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記相互連結されたストラットが、前記剛性領域よりも前記可撓性領域において、より高い密度を有する、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記相互連結されたストラットが、前記剛性領域よりも前記可撓性領域において、より多い頻度の相互連結を有する、請求項6記載の装置。
【請求項9】
前記細長い管状の壁構造体が、前記剛性領域に隣接した第1の自由端と、前記可撓性領域に隣接した第2の自由端とを含み、該第1および第2の自由端が、前記剛性領域、前記移行領域、および前記可撓性領域よりも高い径方向剛性を有する、請求項1記載の装置。
【請求項10】
医療装置を作製する方法であって、
中を通る管腔を画定し、一定の内径および外径を有する細長い管状の構造体を選択するステップと、
近位の剛性領域の一定の第1の厚さよりも小さい遠位の可撓性領域の一定の第3の厚さ及び前記第1の厚さよりも小さく前記第3の厚さよりも大きい移行領域の一定の第2の厚さを作り出し、前記剛性領域と前記移行領域との間及び前記移行領域と前記可撓性領域との間の円錐台状の領域を形成するように、細長い管状の構造体の外側を研削するステップと、
該細長い管状の構造体から複数のストラットを切り出すステップと
を含み、
該剛性領域が該可撓性領域の径方向剛性よりも高い径方向剛性を有し、該可撓性領域の可撓性よりも低い可撓性を有することに、研削するステップおよび切り出すステップが寄与している、方法。
【請求項11】
前記研削が、センタレス研削である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記複数のストラットを切り出すステップが、前記剛性領域よりも前記可撓性領域において、より多くの連結部を有するストラットを切り出すステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記複数のストラットを切り出すステップが、前記剛性領域よりも前記移行領域において、より少ない連結部を有し、前記可撓性領域よりも前記移行領域において、より多くの連結部を有するストラットを切り出すステップを含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
第1の自由端および第2の自由端を、これらの間に延在する前記剛性領域、前記移行領域、および前記可撓性領域よりも高い径方向剛性を有するように硬くするステップをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記医療装置を圧縮して送達カテーテルに入れるステップをさらに含む、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、身体内に埋入するためのステント、ならびに送達および/または導入するための方法が開示される。本明細書に開示するある特定の実施形態は、メイ・ターナー症候群、および/または深部静脈性血栓症、ならびにその結果生じる血栓症後症候群を処置するための手順において使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
腸骨静脈圧迫症候群としても知られるメイ・ターナー症候群は、左下肢の総静脈流出路の圧迫により、これらに限定されないが不快感、腫れ、疼痛、および/または深部静脈性血栓症(DVT)(凝血塊としてよく知られている)を含む様々な悪影響が引き起こされることがある状態である。メイ・ターナー症候群は、左総腸骨静脈が、重なっている右総腸骨動脈によって圧迫されて血液の閉塞につながるときに発生し、これにより一部の個人において凝血塊の形成が生じることがある。右総腸骨動脈による右総腸骨静脈の圧迫など、メイ・ターナー症候群のそれほど一般的ではない他の変種が説明されてきている。
【0003】
メイ・ターナー症候群は、下肢静脈障害の2~5%を占めると思われるが、認識されずにいることも多い。しかし、メイ・ターナー症候群は、男性よりも女性に約3倍多く見られ、通常20歳~40歳で顕在化することが、一般に認められている。凝固性亢進と左下肢血栓症の両方を呈する患者は、メイ・ターナー症候群に罹っている恐れがある。その診断を確定するために、たとえばアンチトロンビン、プロテインC、プロテインS、第5因子ライデン、およびプロトロンビンG20210Aのレベルを評価することにより、凝固性亢進状態の他の原因を除外することが必要な場合がある。
【0004】
下大静脈に平行に、ほぼ垂直に上がる右総腸骨静脈とは対照的に、左総腸骨静脈は、より横向きのコースを取る。このコースに沿って、左総腸骨静脈は右総腸骨動脈の下にあり、これが左総腸骨静脈を腰部脊椎に対して圧迫することがある。腸骨静脈の圧迫は、よくある解剖学的変異であり、健康な個人の4分の1において、50%程度の左腸骨静脈の管腔圧迫が生じると考えられる。しかし、左総腸骨静脈の圧迫は、こうした圧迫が静脈流もしくは静脈圧において顕著な血行動態変化を引き起こすことがある場合のみ、または急性もしくは慢性の深部静脈性血栓症につながれば、臨床的に有意なものになり、これについては以下でより詳細に検討する。圧迫に関連する他の問題に加えて、上にある動脈からの慢性的な脈動の圧迫力の影響により、静脈には腔内の線維状突起も発現することがある。
【0005】
メイ・ターナー症候群に関連して狭窄した乱流路により、罹患患者は血栓症に罹りやすくなることがある。また損なわれた血流により、側枝血管が形成されることが多く、最も多くの場合、水平方向に骨盤を横断する側枝が形成されて、両方の内腸骨静脈が連結され、右総腸骨静脈を通る流出がさらに起きる可能性が生じる。場合によっては垂直な側枝が形成され、最も多くの場合、腰椎の側に形成され、これにより刺痛および痺れなどの神経学的症状が生じることがある。
【0006】
メイ・ターナー症候群を処置および/または管理するのに現在最もよいやり方は、臨床所見の重症度に応じて異なる。脚の腫れおよび疼痛が、血管外科医、介入心臓学専門医、および介入放射線専門医などの血管専門医によって最もよく評価され、これらの専門医は、四肢の疼痛の原因が確実に評価されるように、動脈および静脈の疾患を診断するとともにそれを処置する。メイ・ターナー症候群の診断は、一般に、磁気共鳴静脈撮影、および静脈造影を含んでもよい1つまたは複数の画像化手法によって確認され、しぼんだ/平たくなった左総腸骨静脈は、従来の静脈撮影を使用しては見えないまたは気付けないことがあるので、これらは通常、血管内超音波法を用いて確定される。左総腸骨静脈のうっ血の結果、下流で生じる腫れまたは疼痛が長引くのを防ぐため、脚から出る血流を改善する/増加させることが必要である。初期のまたは合併症のない症例は、単に圧迫ストッキングを用いて管理することができる。後期または重度のメイ・ターナー症候群は、最近発症した血栓症がある場合、血栓溶解を必要とすることがあり、それに続いて、静脈造影または血管内超音波法を用いて診断を確定した後に、腸骨静脈の血管形成およびステント留置がおこなわれる。ステントは、血管形成の後にさらなる圧迫が生じないようにその区域を支持するために使用されてもよい。しかし、現在利用可能なステント留置法の選択肢はいくつかの合併症を被り、それらは重度の短縮、(血管を過度に真っ直ぐにさせることがある)柔軟性の欠如、血管の摩耗および最終的な穿孔、早期の疲労破損を生じさせるステントにかかる荷重の増大およびステントの変形、ならびに/または末梢動脈疾患を引き起こす恐れのある重なった左腸骨動脈の血流障害を含む。メイ・ターナー症候群に存在する圧迫され狭窄した流出路は、血行停止を生じさせることがあり、これは深部静脈血栓症の重要な要因である。
【0007】
メイ・ターナー症候群に罹患した患者は、血栓症を呈する場合もあれば、そうでない場合もある。しかし、血栓症状のない患者でも、いつでも血栓症に罹ることがある。患者に広範な血栓症がある場合、薬理学的および/または機械的(すなわち、薬理機械的)な血栓切除が必要になることがある。メイ・ターナー症候群により生じるうっ血は、深部静脈血栓症(「DVT」)の発生率の上昇に明確に関与してきている。
【0008】
深部静脈血栓症または深部静脈性血栓症は、主に脚の深部静脈内における凝血塊(血栓)の形成である。右および左の総腸骨が、深部静脈血栓症のよく生じる場所であるが、他の場所に生じることもよくある。この状態に関連した非特異的症状は、疼痛、腫れ、発赤、熱感、および浅静脈のうっ血を含んでもよい。命に関わることもある深部静脈血栓症の合併症である肺塞栓症は、血栓の一部または全体が分離して肺に移動することによって生じる。深部静脈性血栓症に関連した別の長期合併症である血栓症後症候群は、心臓に戻る静脈血が低下することにより生じる医学的状態であり、慢性的な脚の疼痛、腫れ、発赤、および潰瘍またはただれの症状を含むことがある。
【0009】
深部静脈血栓の形成は、通常、ふくらはぎの静脈弁の内側で始まり、ここで血液は相対的に酸欠状態になり、これによりある特定の生化学的経路が活性化する。がん、外傷、および抗リン脂質症候群を含むいくつかの医学的状態は、深部静脈血栓症のリスクを増大させる。他のリスク要因は、加齢、手術、(たとえば、ベッドでの静養、整形外科用ギプス、および長時間のフライトでの着座によって受ける)運動抑制、複合経口避妊薬、妊娠、出生後期、および遺伝因子を含む。これらの遺伝因子は、アンチトロンビン、プロテインC、およびプロテインSの欠乏、第5因子ライデンの変異、ならびに非O血液型を有するという特性を含む。深部静脈血栓症の新たな症例の割合は、幼児期から高齢期までに劇的に増大し、成人期では毎年1000人に約1人の大人がこの状態を発症する。
【0010】
深部静脈血栓症の一般的な症状は、疼痛または圧痛、腫れ、熱感、発赤または変色、および表面静脈の膨張を含むが、この状態を有するものの約半分は症状がない。兆候や症状だけでは、診断を下すのに充分な感度または特異度はないが、知られているリスク因子と併せて考えると、それらは深部静脈血栓症の可能性を判定するのに役立つ。深部静脈血栓症は、患者を評価した後の診断として除外されることが多い。というのも、疑わしい症状は、蜂巣炎、ベイカー嚢胞、筋骨格系損傷、またはリンパ浮腫など、他の無関係の原因によることの方が多いからである。他の鑑別診断は、血腫、腫瘍、静脈瘤または動脈瘤、および結合組織疾患を含む。
【0011】
さらなる凝固を防ぐが、既存の血塊には直接作用しない抗凝固が、深部静脈血栓症の標準的な処置である。他の、場合によっては補助的な治療/処置は、圧迫ストッキング、選択的な運動および/またはストレッチ、下大静脈フィルタ、血栓溶解、ならびに血栓切除を含んでもよい。
【0012】
いずれの場合でも、上述したものを含む様々な静脈疾患の処置は、ステントを用いて改善することができる。したがって、静脈に使用するためのステントの改良が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明は、関連技術の限界および欠点に起因する問題のうちの1つまたは複数を未然に防ぐ血管内ステントを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態では、ステントは、剛性領域、移行領域、および可撓性領域を含む細長い管状の壁構造体を含む。剛性領域は、移行領域よりも分厚い壁構造体を有する。移行領域は、可撓性領域よりも分厚い壁構造体を有する。このように、剛性領域におけるステントの径方向剛性は、可撓性領域の径方向剛性よりも高く、一方で、ステントの他方の端部における可撓性領域の可撓性は、剛性領域よりも高い。このように、ステントは、近位端部ではメイ・ターナー症候群などの静脈疾患を調整するために径方向剛性が高くなっており、一方で、ステントの遠位端部は、高い曲げ荷重、および蛇行した静脈通路に耐えるのに充分な可撓性がある。さらに有利なことに、ストラットの相互連結の密度および数など、ステントの構造は、遠位方向において(ストラット厚さに対応する)壁厚さを低減したことから生じる径方向強度の損失を低減するように適応させることが可能である。したがって、ステントは、様々な用途に有用な径方向剛性を付随して損失することなく、高い可撓性のある「ゴルディロックス」的な状態を実現することができる。
【0015】
別の実施形態の細長い管状の壁構造体は、中に延在する管腔を画定することができる。細長い管状の壁構造体は、剛性領域、移行領域、および可撓性領域を、この順番で遠位方向に延在するように有する。剛性領域は、第1の厚さを有し、移行領域は第2の厚さを有し、可撓性領域は第3の厚さを有する。第1の厚さは、第3の厚さよりも大きい。これは、剛性領域の径方向剛性が可撓性領域の径方向剛性よりも高くなることに寄与している。
【0016】
別の態様では、第2の厚さは、第1の厚さより小さいが、第3の厚さよりも大きい。これは、移行領域の径方向剛性が、剛性領域よりも低いが可撓性領域よりも高くなることに寄与している。
【0017】
また細長い管状の壁構造体は、内径を有し、ここで第1の厚さは、第1の直径と内径との間であり、第2の厚さは、第2の直径と内径との間であり、第3の厚さは、第3の直径と内径との間である。別の態様では、剛性領域の径方向剛性は、メイ・ターナー症候群を調整するように適合される。内径は、一定の直径であってもよい。
【0018】
別の態様では、可撓性領域は、剛性領域の可撓性よりも高い可撓性を有することができる。また移行領域は、剛性領域の可撓性よりも高く、可撓性領域の可撓性よりも低い可撓性を有してもよい。
【0019】
別の実施形態では、可撓性領域と剛性領域との可撓性の差は、剛性領域の径方向剛性と可撓性領域の径方向剛性の差よりも大きい。細長い管状の壁構造体の可撓性は、剛性領域から可撓性領域に向かって進む径方向剛性の低下よりも早く増大することが可能である。
【0020】
細長い管状の壁構造体は、複数の相互連結されたストラットによって画定されてもよい。相互連結されたストラットは、剛性領域よりも可撓性領域においてより高い密度を有して、壁厚さの低減から生じる径方向剛性の損失を調整してもよい。また、代替的にまたは追加的に、相互連結されたストラットは、剛性領域よりも可撓性領域において、より多い頻度の相互連結を有してもよい。
【0021】
別の実施形態では、医療装置を作製する方法は、中を通る管腔を画定し、一定の内径および外径を有する細長い管状の構造体を選択するステップを含む。また、この方法は、剛性領域の第1の直径よりも小さい可撓性領域の第3の直径を作り出すように、細長い管状の構造体の外側を研削するステップを含む。さらに、細長い管状の構造体から複数のストラットを切り出すステップを含む。剛性領域が可撓性領域の径方向剛性よりも高い径方向剛性を有し、可撓性領域の可撓性よりも低い可撓性を有することに、研削するステップおよび切り出すステップが寄与している。研削は、たとえばセンタレス研削を含んでもよい。
【0022】
別の態様では、細長い管状の構造体を研削するステップは、剛性領域の第1の直径よりも小さく可撓性領域の第3の直径よりも大きくなるように、移行領域の第2の直径を研削するステップを含む。
【0023】
複数のストラットを切り出すステップは、剛性領域よりも可撓性領域において、より多くの連結部を有するストラットを切り出すステップを含むことができる。また、複数のストラットを切り出すステップは、剛性領域よりも移行領域において、より少ない連結部を有し、可撓性領域よりも移行領域において、より多くの連結部を有するストラットを切り出すステップを含むことができる。
【0024】
たとえば、複数のストラットを切り出すステップは、細長い管状の構造体に沿った遠位方向における径方向剛性の比例的損失を調整して、遠位方向における可撓性の比例的増大よりも少なくすることができる。
【0025】
この方法はまた、ステントの第1および第2の自由端を、これらの間に延在する剛性領域、移行領域、および可撓性領域よりも高い径方向剛性を有するように硬くするステップを含むことができる。
【0026】
この方法はさらに、医療装置を圧縮して送達カテーテルに入れるステップを含むことができる。
【0027】
血管内ステントのさらなる実施形態、特徴、および利点、ならびに血管内ステントの様々な実施形態の構造および動作を、添付図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0028】
上述した全般的な説明と、以下の詳細な説明は両方とも、例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0029】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付図面が、血管内ステントを図示する。説明とともに、図はさらに、本明細書に記載の血管内ステントの原理を説明する役割を果たし、それにより血管内ステントを当業者が作製および使用できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】腹部大動脈および下大静脈のL5腰椎および分岐部の下部後方を示す図である。
【0031】
図2】左総腸骨静脈の上に右総腸骨動脈のある標準的な重なりを示す概略図である。
【0032】
図3図2に示す動静脈系の概略断面図である。
【0033】
図4】径方向抵抗力または長期外向き力としての径方向力を示す図である。
【0034】
図5】例示的なステントにかかる耐圧壊力および荷重を示す図である。
【0035】
図6】本開示の原理による例示的なハイブリッド・ステントを示す図である。
【0036】
図7】本開示の原理による例示的な補強リングを示す図である。
【0037】
図8】本開示の原理によるハイブリッド・ステントの例示的な実施形態を示す図である。
【0038】
図9A-9C】図8の実施形態の細部を示す図である。
【0039】
図10】本開示の原理によるハイブリッド・ステントの左総腸骨静脈への例示的な配置を示す図である。
【0040】
図11】本開示の原理による、フレア状端部を有するハイブリッド・ステントの左総腸骨静脈への例示的な配置を示す図である。
【0041】
図12】本開示の原理による例示的な拡張ステントを示す図である。
【0042】
図13】本開示の原理による拡張ステントの実施形態を示す図である。
【0043】
図14】本開示の原理によるハイブリッド・ステントおよび拡張ステントの左総腸骨静脈への例示的な配置を示す図である。
【0044】
図15】壁厚さが先細りになっている例示的なハイブリッド・ステントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
的確な配置は、あらゆる医学的介入において理想的であるが、最初に導入される端部が肝心な区域では、これは不可欠なことである。こうした区域は、血管分岐部および分岐血管を含み、したがって埋入物は、処置を必要としない血管部分に入らないように、またはその血管部分を妨げないようにする。こうした分岐部は下大静脈に存在し、さらに詳しく後述するように、この場所で、下大静脈が右腸骨静脈と左腸骨静脈に分岐する。
【0046】
メイ・ターナー症候群、または腸骨静脈圧迫症候群は、図1に示すように、腸骨動脈が腸骨静脈を脊椎に対して圧迫するとき、末梢静脈系に生じる。図1は、椎骨、腹部大動脈の分岐部に近い左右の総腸骨動脈、および下大静脈の分岐部に近い左右の総腸骨動脈を示す。分岐部は一般に、L5腰椎の近くに生じる。したがって図1は、L5腰椎、および腹部大動脈と下大静脈の分岐部の下部後方図を示していることがわかる。
【0047】
図示してあるように、強力な右総腸骨動脈が腸骨静脈を圧迫してきており、腸骨静脈の狭窄を引き起こしている。これは、典型的とは言わないまでも、1つの考えられるメイ・ターナー症候群の所見である。時間の経過とともに、こうした狭窄部は血管の瘢痕を引き起こし、これが結果的に腔内を変化させ、腸骨大腿静脈の流出障害、および/または深部静脈血栓症を引き起こすことがある。上述したように、静脈不全(すなわち、静脈を通る血流が弱くなる状態)は、最終的に、疼痛、腫れ、浮腫、皮膚の変化、および潰瘍を含むがこれらに限定されない様々な有害な病状につながることがある。静脈不全は、通常、持続的な静脈障害および機能不全の(または機能不十分な)静脈弁の結果として発現する静脈性高血圧によって引き起こされる。静脈流出障害の現在の処置は、抗凝固、血栓溶解、バルーン血管形成、およびステント留置を含む。
【0048】
図2は、左総腸骨静脈の上に右総腸骨動脈のある標準的な重なりを示す。示してある動脈は、腹部大動脈1500を含み、これが左総腸骨動脈1501と右総腸骨動脈1502に分岐している。示してある静脈は、下大静脈1503を含み、これが左総腸骨静脈1504と右総腸骨静脈1505に分岐している。図2に示す大まかな図は、仰臥位の患者を見下ろす図を表している(すなわち、腹部大動脈1500および下大静脈1503の分岐部の位置における患者の前後方向の図である)。相対的に強力で筋肉質である右総腸骨動脈1502が、左総腸骨静脈1504の上に重なっていることにより、静脈1504が押し下げられ、それが脊椎に当たって圧壊し、血流が制限され、最終的には、左総腸骨静脈1504およびその上流のあらゆる部分(すなわち、とりわけ左足の静脈系)の血栓症、ならびに潜在的には部分的もしくは全体的なその凝血を引き起こすことにより、メイ・ターナー症候群が引き起こされることがある。
【0049】
図3は、灰色の点線に沿って切り取られた、図2に示す動静脈系の断面を示す。概略的に示してあるのは、右総腸骨動脈1600、左総腸骨静脈1601、および脊椎の椎骨1602(おそらく腰部脊椎のL5腰椎)である。図からわかるように、右総腸骨動脈1600は、(他の潜在的な要因の中でも)その強力な筋肉質の構造のおかげで、実質的に円筒形である。その強力な筋肉質の動脈は、左総腸骨静脈1601を押し下げてきており、最終的に左総腸骨静脈は、ほぼ完全に開存性を失ってしまっている。すなわち、左総腸骨静脈は、ほとんど完全に挟み付けられている。メイ・ターナー症候群は、実際、下にある左総腸骨静脈1601が、腰部脊椎の椎骨1602に対してこのようにひどく挟まれる/圧壊されることを伴う場合があることが理解されよう。しかし、メイ・ターナー症候群は、下にある左総腸骨静脈1601が椎骨1602に対してはるかに軽く挟まれる/圧壊されることを伴う場合があることも理解されよう。実際、本明細書に開示する実施形態は、右総腸骨動脈1600による左総腸骨静脈160の完全な圧壊/挟み付けを含め、様々な程度のメイ・ターナー症候群を処置するのに適している。本明細書に開示する他の実施形態は、下にある左総腸骨静脈1601の圧壊/挟み付けが、約10~95%、約15~90%、約20~85%、約25~80%、約30~75%、約35~70%、約40~65%、約45~60%、および約50~55%であるもの、または本明細書に開示する装置の1つまたは複数を使用して処置するに値する任意の他の圧壊/挟み付けを含むがこれらに限定されない様々な程度のメイ・ターナー症候群を処置するのに適している。
【0050】
全般的に、本明細書に開示するのは、可撓性コネクタによって連結された、交互に相互連結されたストラットの周囲リングを含むステントである。このステントは、拡張可能な材料によって形成された様々な構成のオープン・セルまたはクローズド・セルを有してもよい。最終的な拡張済み、埋入済みの構成は、機械的拡張/作動(たとえば、バルーン拡張型)によって、または自己拡張(たとえばニチノール)によって実現することができる。本明細書に記載のステントの例示的な実施形態は、超弾性合金材料または形状記憶合金材料を含む自己拡張型の埋入物であるが、ステントはこのように限定されるものではなく、バルーン拡張型の材料で形成されてもよい。本開示の態様によれば、拡張可能ステントは、ステントの長さに沿った異なる位置において様々な大きさの径方向力、耐圧壊性、および可撓性を有し、それと同時に、これらの異なる位置は、ステントの拡張構成において同じまたは同様の直径を有する。
【0051】
図6に示すように、例示的なステント10は、高径方向力セグメント14、高可撓性セグメント18、および高径方向力セグメント14と高可撓性セグメント18の間の移行セグメント22を含む。図6に示す例示的なステント10は、ステント10の端部に補強リング26を含んでもよく、これは、たとえば高可撓性セグメント18に隣接しおり(構成を図示してある)、または高径方向力セグメント14に隣接している(構成を図示せず)。本明細書に記載の原理による実施形態では、高径方向力セグメント14および高可撓性セグメント18を有するステント10は、たとえばニチノールなどの単一の管から切断されてもよいが、長縁部で互いに溶接されて管状の構造に形成される平坦なシートから形成または切断されることも可能である。本明細書には移行セグメントを図示しているが、移行セグメントを含まないハイブリッド・ステントが、本開示の範囲内にあるとみなされることに留意すべきである。
【0052】
全般的に径方向力とは、径方向抵抗力(RRF)と長期外向き力(COF)の両方またはいずれかを指す。図4に示すように、径方向抵抗力は、ステントの周囲周りでステントに(ステントの中心に向かって)作用する外力である。長期外向き力は、ステントがステントの中心方向から外向きに加える力である。ステントの長期外向き力によって、ステントは、それが挿入された血管に力を加えて、つぶれに抵抗し、血管を開いた状態に保つことになる。図5は、本明細書で使用する耐圧壊性を示す。耐圧壊性は、平板荷重/局所性圧壊荷重を受けるときのステントの力である。図6の径方向力のベクトル方向は、長期外向き力を示しているが、本開示の原理による径方向力は、径方向抵抗力であってもよく、これは長期外向き力よりも耐圧壊性により深く関係する。図に示すベクトルは、方向を示すものであり、大きさを示すものではない。径方向力と耐圧壊性は関係することがあるが、それらは必ずしも互いを駆動するものではない。したがって、ステントは、(平板/局所の)高い耐圧壊性を有するが、高い径方向力は有さないように設計されてもよい。こうした属性は、異なる試験構成で独立して試験することができる。
【0053】
補強リングは、ステントの端部部分の剛性/耐圧壊性のより高い区域とすることができる。ここで「剛性がより高い」とは、補強リングに隣接したステントの一部分よりも高い剛性/耐圧壊性を有することを意味する。より高い剛性を有する補強リングは、ステントに入り、かつ埋入物を中に有する血管を通る良好な流入を実現することができる。本明細書には「補強リング」として記載するが、より剛性の高い区域は、ステント端部に重なる追加の構造体(たとえば「リング」)によって提供されてもよく、またはその代わりに、より剛性の高い区域を形成する材料が元々より堅い、より密なセル構造である、より分厚いストラットであるなどの理由で、ストラット構造が実際に強力である区域であってもよい。たとえば補強リングは、異なるステント形状、たとえば異なるストラット幅を有してもよく、または単に完全に連結されたリングである。
【0054】
補強リングの例示的な実施形態を図7に示す。図7からわかるように、補強リングを構成するリング・ストラットは、隣接するリングに可撓性コネクタ/ブリッジによって連結されている数が、隣の高可撓性セグメントにおいてよりも多い。
【0055】
図6に示すステント構造に戻ると、長さL0を有するステント10の長さは、高径方向力セグメント14の長さL1に沿って径方向力および/または耐圧壊性RF1と可撓性F1とを有する高径方向力セグメント14を有する。すなわち、高径方向力セグメント14の径方向抵抗力RF1は、ステント10の残りの部分より相対的に高く、たとえば0.75~1.00N/mmの範囲であってもよい。また、高径方向力セグメント14の可撓性F1は、ステント10の残りの部分より相対的に低くてもよい。可撓性は、たわみ角によって評価/測定される。本明細書に記載の原理によれば、高径方向力セグメントは、0~60度の屈曲範囲で長期耐久性(疲労)試験に耐えるように設計されてもよい。
【0056】
相対的に高い径方向力セグメント14は、図3に示すように、メイ・ターナー症候群により生じる下にある左総腸骨静脈1601の椎骨1602に対する挟み付け/圧壊など、圧迫または圧壊を受けやすい血管の領域において血管内に配置されることが意図される。高径方向力セグメントは、直径D1を有する。
【0057】
ステントの長さL0はまた、高可撓性セグメント18を含み、これは、高可撓性セグメント18の長さに沿って高径方向力セグメント14よりも相対的に高い可撓性を有する。さらに、本開示の原理によれば、高可撓性セグメント18は、長さL2、直径D2、ならびに径方向力、耐圧壊性RF2、および可撓性F2を有し、ここでRF2<RF1であり、F2>F1であり、それにより高可撓性セグメントは、高径方向力セグメント14よりも可撓性が高い。本明細書に記載の原理によれば、高可撓性セグメントは、0~140度の屈曲範囲で長期耐久性(疲労)試験に耐えるように設計されてもよい。高可撓性セグメント18の径方向抵抗力RF2は、たとえば0.50~0.70N/mmの範囲であってもよい。
【0058】
ステント10の長さは、高径方向力セグメント14と高可撓性セグメント18の間の移行セグメント22も含むことがあり、ここで移行セグメント22は、長さL3、直径D3、ならびに径方向力または径方向抵抗力(耐圧壊性)RF3、および可撓性F3を有し、ここでRF1>RF3>RF2であり、F2>F3>F1である。移行セグメント22の径方向力もしくは径方向抵抗力(耐圧壊性)RF3、および可撓性F3は、移行セグメント22の長さL3にわたって変化してもよく、または移行セグメント22の長さL3に沿って一定であってもよい。
【0059】
高径方向力セグメント14、移行セグメント22、および高可撓性セグメント18のそれぞれは、異なる径方向力、耐圧壊性、および可撓性を有し、これらは、ステント10の各セグメントにおける異なるリング構造によって提供されてもよい。図6において確認することができるように、高径方向力セグメント14は、所望の径方向力または耐圧壊性を付与するために、高可撓性セグメントの径方向力または耐圧壊性に比べて、相対的に高い周期性のあるセル構造を有してもよく、より剛性の高いリング・ストラットおよび可撓性コネクタから形成されてもよく、かつ/またはよりクローズドなセル構造もしくは他の構造を有してもよい。たとえば、ストラット形状、より分厚い/幅広いストラットにより、より高い径方向強度が与えられ、ステント/リング形状の周囲周りの頂点の数は、全体で径方向力を上げたり下げたりすることができ、ブリッジ・コネクタ、およびより多くのリング・コネクタを介して、隣接するリングに構成/連結されることにより、径方向力を増大することができる。同様に、高可撓性セグメント18は、相対的に低い周期性を有するセル構造を有してもよく、相対的に可撓性の高いリング・ストラットおよび可撓性コネクタから形成されてもよく、かつ/またはよりオープンなセル構造を有してもよい。移行セグメントは、高径方向力セグメントのリング・ストラットおよび可撓性コネクタの形状を、高可撓性セグメントの形状に移行させるセル構造を有してもよく、または移行セグメントは、高径方向力セグメントおよび高可撓性セグメントとは異なるセル構造を有してもよい。本明細書に記載の原理による実施形態では、高径方向力セグメント、移行セグメント、および高可撓性セグメントを有するステントは、たとえば、ニチノールなどの単一の管から切断されてもよいが、任意の他の好適な手段によって形成されてもよい。
【0060】
示してある図6の実施形態では、ステントの各セグメントは、実質的に同じ直径を有し、それによりD1≒D2≒D3になる。(図15の文脈などにおいて後述するように、ステントは異なる直径を有することもでき、上述および後述の構造的および材料的な特性と組み合わされたときに、径方向剛性の損失が少ない可撓性セグメントを実現することができる。)本明細書に記載するように、1つのステントが、様々な静脈血管の直径を処置することができる。このステント構造は、血管に加えられる力が様々な直径(3~4mm)にわたってかなり一定に保たれるので、単一のステントで複数の血管サイズを処置できるようにしてもよい。ほとんどの従来のステントは、処置する血管に合わせて特別にサイズ設定される必要があるので(すなわち、0.5mm~1.0mmのオーバーサイズ)、これは、従来のステントとは異なっている。したがって、ほとんどの従来のステントは、2mmずつ増えるように提供される(たとえば、10mm、12mm、14mmなど)。本明細書に記載の原理による適応性のある直径は、医師にとってサイズ決定を簡単にし、静脈の直径は一般に、近位方向において直径が小さくなるので、単一のステントで静脈の長いセグメントを処置できるようにする。
【0061】
高可撓性セグメント18の長さL2は、高径方向力セグメントの長さL1よりも長く、高径方向力セグメントは、移行セグメントの長さL3よりも長いことが企図される。
【0062】
本開示の原理によるステント110の例示的な実施形態の構造を図8に示す。図8に示すように、所与のリング112におけるステント110に沿った直径DSは、実質的に同じである(D1≒D2≒D3)。図8に示す実施形態では、高径方向力セグメント(メイ・ターナー症候群「MTS」セクション)114、移行セグメント(移行セクション)122、および高可撓性セグメント(本体セクション)118のそれぞれは、同様のセル・パターンを有する。こうした事例では、ストラットおよび/もしくは可撓性コネクタ132の厚さ、またはストラットと他のストラットおよび/もしくは可撓性コネクタとの角度関係、ならびに/または可撓性コネクタ自体の角度形成を変えることによって、セグメントの径方向力または耐圧壊性RFが変えられてもよい。
【0063】
垂直な、厚さ、同じ、同様などの用語、および他の寸法および形状に関する用語は、それらの適用例において厳密または完璧なものとみなされるべきではないことに留意すべきである。そうではなく、形状および他の寸法に関する指示語は、許容される製造公差、およびそれらの用語が使用されるステント110の機能的な必要性との相関関係に基づき、解釈されるべきである。たとえば、「垂直な」という用語は、製造上の不完全さ、またはステント設計110において切り出しまたは形成される実際の意図的な曲線に起因する妥当な量の角度のばらつきがあるものとして、理解されるべきである。また、任意の厚さ、幅、または他の寸法は、理想的な測定値ではなく、設計の公差および機能的な必要性に基づき、評価されるべきである。
【0064】
一方で、ストラット128の厚さは、その径方向の深さであり、これは、図8に示すように、ストラットの幅の大きさに対して概ね垂直である。ストラットの厚さ128は、通常、管の壁厚さ(外径から内径を引いたもの)に対応し、エッチング、研削、および他の工程の後に、その管から、ステント110がレーザ切断される。図15に関連して、以下に、壁厚さ(したがってストラットの厚さ)が変わることにより、ステントの径方向剛性および可撓性がどのように変わり得るかを説明する。しかし、本明細書に開示するステントの実施形態は、所定の壁厚さを有する円筒形の管からレーザ切断されることに必ずしも限定されない。ステントは、長縁部で互いに溶接されて管状の構造に形成される平坦なシートから形成または切断されることも可能である。
【0065】
リング112のそれぞれは、頂上または頂点120と谷124とを交互に形成するように相互連結された複数のリング・ストラット128から成る。図8に示すように、リング・ストラット128のそれぞれは、概ね直線状である。図8図9に示す一実施形態では、ステント110は、複数の可撓性コネクタ132によって連結された複数のリング112を含む。リング112は、ステント110の長軸116に沿って離間した関係で配置される。コネクタ132は、隣接するリング112の対同士間に延在する。リング112およびコネクタ132のそれぞれは、複数の相互連結ストラットからなる。これらのストラットの寸法および配向は、本開示の原理による可撓性および径方向剛性を提供するように設計される。
【0066】
図8に示す例示的なハイブリッド・ステント110は、ASTM F2063による超弾性のニチノール管から作られてもよい。ステントの仕様はさらに、電解研磨後、以下の通りであってもよい。パーツのAF温度がセ氏19度+/-10度。ハイブリッド・ステントは、サイズが12mm~20mmの範囲の様々な腸骨大腿骨静脈を処置するように設計されてもよい。これらの寸法は例示的であり、本開示の原理によるステントはこのように限定されない。
【0067】
図9A図9B図9Cは、図8に示す位置における、図8の実施形態の高径方向力セグメント114(図9A)および高可撓性セグメント118(図9B)のストラットおよびコネクタの構造の細部を示す。図9Cは、はと目119の形状の詳細な寸法を示しており、ここに放射線不透過性(RO)マーカが挿入されて、蛍光透視下でステントの導入位置について医師を支援することになる。
【0068】
図9Aは、高径方向力セグメント114のリング・ストラット128aを示す。図9Bは、高可撓性セグメント118のリング・ストラット128bを示す。
【0069】
理解できるように、ステントの短縮が、ステントの配置にとって特に問題になることがある。実際、可撓性の高いステントは、より多く短縮する傾向にある。上述したように、的確な配置は、あらゆる医学的介入において理想的であるが、最初に導入される端部が肝心な区域では、これは非常に重要なことである。こうした区域は、血管分岐部および分岐血管を含み、したがって埋入物は、処置を必要としない血管部分に入らないように、またはその血管部分を妨げないようにする。こうした分岐部は下大静脈に存在し、さらに詳しく後述するように、この場所では、下大静脈が右腸骨静脈と左腸骨静脈に分岐する。
【0070】
本明細書に記載するように、本明細書に記載の原理によるステントは、高径方向力セグメントと高可撓性セグメントとを含む。高径方向力セグメントは、より剛性の高い構造なので、高可撓性セグメントよりも短縮が少なく、その結果、それが埋入される血管内でのより的確な配置を可能にすることができる。図10は、本開示の原理によるステントの大まかな配置を示す。図10は、左総腸骨静脈1504と右総腸骨静脈1505に分岐する下大静脈1503を示す。図10に示す大まかな図は、仰臥位の患者を見下ろす図を表している(すなわち、下大静脈1503の分岐部の位置における患者の前後方向の図である)。簡単にするために、腹部大動脈およびその分岐部は、図10には示していないが、上記の図2には示してある。
【0071】
図10に示すように、記載する原理による複数セグメントのステント10は、左総腸骨静脈1504に配置される。ステント10の高径方向力セグメント14は、腸骨静脈1503内に延在することが可能なこともあるが、高径方向力セグメントの端部は、左総腸骨静脈1504と腸骨静脈1503の接合部に配置されることが意図される。高可撓性セグメント18は、高径方向力セグメント14、および高可撓性セグメント18と高径方向力セグメント14の間の移行セグメント22から離れるように延在する。
【0072】
左総腸骨静脈1504と腸骨静脈1503の接合部にステント10を配置しやすくするために、ステント10は、図11に示すように、高径方向力セグメント14に隣接するフレア状端部を有してもよい。遠位のフレア状セクションは、半径「r」によって制御される。例示的なフレアサイズは、2.5mm×5.0mm、および5.0mm×5.0mmを含むが、本開示の原理によるステント・フレアは、このように限定されない。ステントのフレア状遠位端部は、総腸骨静脈1504と腸骨静脈1503など、2つの血管の分岐部にステントを配置するために使用されてもよい。本明細書に記載の送達システムに予め組み込まれるステント構成により、ステントの遠位フレア状セクションが、送達システムから部分的に導入されることが可能になり、オペレータが、ステントのフレア状セクションを、2つの血管の分岐部に位置付けられるようになる。送達カテーテルが、処置すべき血管分岐部、この場合は左総腸骨静脈1504の中央に進められる。放射線不透過性マーカが埋入物に設けられる場合には、オペレータは、放射線不透過性マーカを使用して、部分的に導入されたステントのフレア状セクションを分岐接合部に着座させることができる。部分的に導入されたステントの中央のフレア状端部が、適切な導入位置にきて、分岐接合部に着座すると、ステントの残りの部分を導入することができる。
【0073】
本発明の態様では、ステント10とともに別個の拡張ステント50が含まれてもよい。別個の拡張ステント50の実施形態を図12に示す。図12に示すように、別個の拡張ステント50は管状であり、上述したハイブリッド・ステント10の高可撓性セグメント18と同様の高可撓性セグメントであってもよい。本開示の態様では、別個の拡張ステント50は複数のリング152を含んでもよく、このリングは、頂上または頂点160と谷164とを交互に形成するように相互連結された複数のリング・ストラット158を含む。図12に示すように、リング・ストラット158のそれぞれは、概ね直線状である。リング・ストラット158は、可撓性コネクタ162に連結されてもよい。リング152は、ステント110の長軸116に沿って離間した関係で配置される。コネクタ162は、隣接するリングの対同士間に延在する。また別個の拡張ステント50は、管のいずれかまたは両方の端部に補強リングを含んでもよい。これらのストラットの寸法および配向は、本開示の原理による可撓性および径方向剛性を提供するように設計される。リング152およびコネクタ162のそれぞれは、複数の相互連結ストラットを含む。別個の拡張ステントは、ニチノールなど、拡張可能材料または自己拡張可能材料から作られる。別個の拡張ステント50は、たとえばニチノールなどの単一の管から切断されてもよいが、長縁部で互いに溶接されて管状の構造に形成される平坦なシートから形成または切断されることも可能である。
【0074】
例示的な拡張ステントを図13に示す。図13に示す拡張ステントは、ASTM F2063による超弾性のニチノール管から作られてもよい。ステントの仕様はさらに、電解研磨後、以下の通りであってもよい。パーツのAF温度がセ氏19度+/-10度。拡張ステントは、サイズが8mm~16mmの範囲の様々な腸骨大腿骨静脈を処置するように設計されてもよい。これらの寸法ならびに図に示す寸法は、例示的であり、本開示の原理によるステントはこのように限定されない。
【0075】
別個の拡張ステント50は、図14に示すように、ハイブリッド・ステント10の高可撓性セグメント18に隣接して左腸骨静脈1504に配置され、ハイブリッド・ステント10の端部に重なってもよい。図中の重なっている領域を、参照番号200によって示す。ハイブリッド・ステント10および別個の拡張ステント50の配置は、同じ送達デバイスを使用して同時に実行されてもよい。拡張ステントが予めクリンプされた第2の送達カテーテルが、処置血管に導入され、先に導入されたハイブリッド・ステントの近位端部に近づいてもよい。拡張ステントがクリンプされたカテーテルは、ハイブリッド・ステントの近位端部に挿入され、位置決めされ、両方のステント上の放射線不透過性マーカを利用してステントが導入されて、たとえば1cmの適切な重なりが実現される。別の態様では、拡張ステントを独立したステントして埋入することができる。
【0076】
本明細書に記載の拡張ステントは、ハイブリッド・ステント10のみならず、「主ステント」としての他のステントと組み合わせて使用されてもよい。使用の際、配置のばらつきを許容するために拡張ステントを使用することができる。
【0077】
さらに拡張ステントは、補強リングを含んでもよく、ここで補強リングは、ステントの端部部分の剛性/耐圧壊性のより高い区域とすることができる。ここで「剛性がより高い」とは、補強リングに隣接したステントの一部分よりも高い剛性を有することを意味する。より高い剛性を有する補強リングは、ステントに入り、かつ埋入物を中に有する血管を通る良好な流入を実現することができる。補強リングは、拡張ステントと主ステントを重ならせるときに、端部が圧壊するのを緩和することにより、たとえば、主ステントに対して拡張ステントを配置しやすくすることができる。さらに、配置を容易にするために、拡張ステントの端部、および/または拡張ステントが隣接して配置されることになるステントの端部は、ウレタンまたはPTFEなどのポリマーでコーティングされてもよい。また拡張ステントは、拡張ステントの配置を支援するための固定具、はと目、放射線不透過性マーカ、または他の特徴部を含んでもよい。また拡張ステントは、主ステントとともに送達されてもよく、または別々に血管に送達されてもよい。
【0078】
拡張ステントは、適切なアクセス部位(たとえば、頸部、膝窩など)を介して送達されてもよい。拡張ステントは、「双方向的」になるように作ることができ、それにより、送達の方向(たとえば、頸部、膝窩など)に特に関係することなく送達カテーテルに予め組み込むことができる。たとえば、送達は、処置領域の上から、または処置領域の下からおこなうことができる。こうした双方向性は、拡張ステントの端部が同じ形状を有するように、拡張ステントの形状を対称にすることによって、促進することができる。ステントは、同軸の送達カテーテルによって送達されてもよい。本開示の別の態様では、新規の送達デバイスは、カテーテルに組み込むことができるカートリッジと、同じくカテーテルに組み込まれるハイブリッド・ステントとを含んでもよい。カートリッジを、後退または前進するようにオペレータが反転させることができる。ステントは、送達の方向(たとえば、頸部、膝窩など)に向けて送達カテーテルに予め組み込まれてもよい。
【0079】
理解できるように、ステント10が、ステントの第2のセクションよりも相対的に高い径方向力または耐圧壊性を有する第1のセクションを含み、第2のセクションが、第1のセクションよりも相対的に高い可撓性を有する限り、実際のステントのリング形状は、本明細書に開示したものとは異なってもよい。また、別個の拡張ステント50は、ハイブリッド・ステント10の高可撓性セグメントと同様の可撓性を有することも企図される。ハイブリッド・ステント10および拡張ステント50のセグメントについての例示的なステント形状は、米国特許出願第15/471,980号、および15/684,626号に教示されており、これらは本明細書に完全に記載されているかのように、あらゆる目的について参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
たとえば、静脈用途を考慮するように、拡張または縮小した幅もしくは厚さの区域を含む構造を有するリングおよび可撓性コネクタのストラットが使用されてもよいことに留意すべきである。たとえば、ステントの遠位方向に下るように延在する高い径方向抵抗力と、向上した可撓性とをより良好に組み合わせることは、ステントを作製するのに使用するニチノール管の壁厚さを先細りにすることによって、実現することができる。管の壁厚さは、その長さに沿ってわずかに先細ってもよく、絶えず先細ってもよく、または段階的に先細ってもよい。先細りの壁厚さを、ストラット・パターンの変化と組み合わせて、遠位に移動するときに、壁構造体をわずかにより頑丈にすることができる。これにより、薄い壁に関連して径方向抵抗力が通常低減するのが軽減される。これにより、多くの径方向抵抗力を諦めることなく、遠位の可撓性を改善する「ゴルディロックス」的なシナリオを作り出すことができる。
【0081】
たとえば図15は、ハイブリッド・ステント310の別の実施形態を示しており、ここで様々なセグメントまたは領域は、ステントの軸312に沿って異なる径方向剛性および可撓性を有する。特に図15は、内側表面314によって形成される一定の内径と、異なる直径を有する外側表面316と、第1の自由端318および第2の自由端320とを有する管状ステント310の壁厚さ(ストラットが使用される場合にはストラット厚さ)の概略図である。これらの特徴部間には、ステント本体の材料があり、このステント本体も、本明細書の他の部分に記載したストラットにより形成されるリングおよびコネクタなど、様々な構造を含んでもよい(ただし、図15には示していない)。したがって、先細りの壁構造体を、遠位方向において材料およびストラット・パターンに加えられる修正と組み合わせて、良好な抵抗力を維持しながら、なお可撓性を向上させる「ゴルディロックス」的なシナリオを得ることができる。
【0082】
図15に戻ると、ハイブリッド・ステント310は、剛性領域322、移行領域324、および可撓性領域326を含み、これらはそれぞれ、第1の直径(D1)、第2の直径(D2)、および第3の直径(D3)に対応する。研削、切断、引抜き、または他の作業により、第1の直径は第2の直径より大きくなり、第2の直径は第3の直径より大きくなっている。これらの直径同士間には、より滑らかで、侵襲性の低い表面になるように、直径同士間の移行部により形成される円錐台状の領域がある。他の実施形態では、異なる領域間で急峻な移行のないように、壁厚さの減少は滑らかで連続的であってもよい。こうした事例では、領域同士の機能が用途に応じて異なってもよいように、これらの領域は互いに重なり、かつ/または不明瞭な境界を有してもよい。示してある実施形態では、たとえば、ステントがストック管から形成され、内側が選択的に機械加工されない場合には、内径は相対的に一定である。またこの領域は、減少した内径と外径との組合せによって形成されてもよく、または内径の減少だけによって形成されてもよい。さらに、第1および第2の自由端318、320は、固定でき、開存性を維持できるように、補強され、かつ/またはフレア状になっていて、上述した血流を促進してもよい。
【0083】
少なくとも部分的には直径が変化した結果として、剛性領域は、移行領域よりもより高い剛性(径方向抵抗力および/または圧壊力)を有し、移行領域は、可撓性領域よりもより高い剛性を有する。全般的に、メイ・ターナー症候群を処置するために、剛性領域の径方向剛性は、MTSの症状を低減または消滅させるのに充分な静脈開存性を維持するのに充分でなくてはならない。その一方で、移行領域および可撓性領域324、326は、本明細書の他の部分に記載した高い再現性、高い曲げ荷重に耐えるのに十分な可撓性(MTSを処置する用途向け)を有するべきである。しかし、より可撓性の高い領域324、326において壁厚さが失われることは、ストラット密度を高くすること、クローズド・セルを増やすこと、リング間のコネクタを増やすことなど、本明細書全体にわたって説明した構造によっていくらか調整されて、これらの領域がなお、開存性および静脈血流を維持しやすくすることができる。
【0084】
ハイブリッド・ステント310は、たとえば一定の内径および外径のストック管から開始して、次いでセンタレス研削を使用して領域を形成することにより、形成されることが可能である。他の手法は、焼なまし段階をはさみながら、ダイを通して管を段階的に引き抜くステップを含むことができる。また、修正後または介在するステップ中に、管を事前調節して、使用できるように準備することができる。
【0085】
別の実施形態では、ハイブリッド・ステント310の径方向剛性および可撓性を、センタレス研削を使用して適合させることができる。センタレス研削は、静止ホイールと移動ホイールの使用を含み、加工物(ニチノール管)がこれら2つのホイールの間に配置される。またニチノール管は、ワーク台に支持されて、2つの対向するホイール管で定位置に保たれてもよい。2つのホイールは、異なる速度で回転する。静止ホイール(または研削ホイール)は、固定軸上にあり、ニチノール管に加わる力がワーク台に対して下方に向かうように回転する。他方のホイール(または調整ホイール)は、静止ホイールの方向に並進し、したがってニチノール管に横方向の圧力を加える。静止ホイールは、接触点においてニチノール管よりも高い接線方向速度を有することにより、研削動作を実行する。研削ホイールは、より早く回転することにより、接触点において材料のチップを除去する。2つのホイールの互いに対する速度により、研削作用が提供され、ニチノール管から材料が除去される割合が決定される。
【0086】
センタレス研削は、たとえば静止ホイールまたは移動ホイールを管の内側におき、他方のホイールを管の外側におくことによって、管の内側にも適用されてもよい。静止ホイールがニチノール管の内側にある場合には、ニチノール管の内側がすり減らされて、壁厚さが選択的に低減される。いずれの事例でも、センタレス研削は、ニチノール管の予め選択された軸長さにおいて使用されて、図15に示し説明したものなど、厚さの段階的な変化、(たとえば、ニチノール管をセンタレス研削機械に通すように軸方向に送るエンド・フィードによって実現することができる)先細りの壁、または砂時計のようなさらに複雑な形状でさえも作り出すことができる。全般的に、インフィードのセンタレス研削は、移動ホイールの幅よりも大きい管の軸方向長さの範囲内で、移動ホイールをニチノール管に接触させたり、接触させなかったりするように動かすことができるので、ハイブリッド・ステント310を作り出すのに良好に機能する。
【0087】
センタレス研削によって生成される異なる壁厚さを含む異なる壁厚さは、上述した拡張ステント50にも適用することができる。たとえばセンタレス研削を使用して、拡張ステント50の端部にある補強リングの厚さを低減して、端部の可撓性を向上させるとともに、補強リングに付与された剛性のほとんどを維持することができる。図12を参照すると、ステント50の端部にある補強リングは、端部間の残りの構造よりも剛性の高いクローズド・セル構造を含む。これらの端部において壁厚さを減少させることにより、補強リングの径方向剛性をこれに付随して損失することなく、可撓性を向上させることができる。壁の外径を減少させることによっても、図14に示すように、拡張ステントの端部をハイブリッド・ステント310内により容易に滑らせることができるようになる。またはその反対に、拡張ステント50の内径を減少させて、ハイブリッド・ステント310の端部をより良好に受けるようにすることができる。
【0088】
いずれの事例でも、先細りの壁厚さは、様々なステントのタイプ、およびそれらの位置に適用できることに留意すべきである。全般的に、径方向剛性が比例的に損なわれることなく、向上した可撓性からステントが恩恵を受けることができるあらゆる場所が、壁厚さを変えるための候補となる。
【0089】
(静脈用途の弾性がより高いことに起因して)可撓性を向上させると同時に、(メイ・ターナー症候群などの)選択された区域において静脈構造にかかる圧力に抵抗するのに充分な剛性を維持する構成から、静脈用途は恩恵を受けることに留意すべきである。
【0090】
しかし、とりわけ本明細書のステントは、特許請求の範囲により明示的に必要とされない限り、必ずしも静脈用途に限定されない。開示するステントは、たとえば動脈および胆管の用途において利用することができる。しかし、開示するステントは、全般的な動脈管腔よりもはるかに多くの曲げ、ねじれ、伸長、ならびに他の捻転および荷重を受ける管腔を画定する、相対的に柔らかい構造の需要に、特に適している。
【0091】
埋入物を導入するために、埋入物をより小さい直径に径方向に圧迫/クリンプして、送達カテーテル上に/その中に組み込んでもよい。埋入物は、送達システムの内側コアのバルーンを覆うようにクリンプされてもよく、このバルーンは、その後膨らまされて、クリンプされた埋入物を所望の直径に拡張してもよい。
【0092】
上述したものなどの埋入物は、有利なことに、脚/骨盤の末梢静脈の動的な動きに合うように、適応性のある直径および/または可撓性を提供し、それにより腸骨静脈圧迫症候群と腸骨大腿骨静脈の流出障害との両方の処置を容易にすることができる。
【0093】
ステントにより血管を真っ直ぐにするのではなく、既存の静脈経路に合うステントを有することが望ましい場合がある。圧壊荷重の下でステントのつぶれに抵抗するように、ステントの高い径方向剛性を有すること、およびステント導入の位置において処置された血管の結果的な直径を最大にすることも望ましい場合がある。ほとんどのステント構成では、径方向剛性と軸方向剛性との間に直接的な関係がある。
【0094】
一般的な市販のバルーン拡張型ステントは、バルーンを使用して血管内でステントを拡張するので、長さの劇的な変化を経る。一般的な市販の自己拡張型ステントは、それほど劇的な長さの変化を経ないが、それでもなお実質的な変化はあり、この変化は、ステントの長さが長くなるにつれ大きくなる。送達システム内での構成と、血管に導入されたときとの間で、長さが変わることから、ターゲット位置にステントを正確に配置する/着地させるのに困難が生じる。ステントがそのクリンプ構成で送達され、次いで導入または拡張される場合には、長さが短くなることにより、ステントのターゲット導入位置を、ターゲット留置位置からずらさなくてはならなくなる。この影響の大きさは、ターゲット留置位置の長さに沿った管腔の断面に依存するので、制御可能なものでも、容易に予想できるものでもない(その断面は、残りの狭窄、外部の物体に起因する異常な形状、および/または力などによって頻繁に予期せず影響される)。目的とする病変が、IVCに入る左右の腸骨の接合部につながる場合には、これにより、下大静脈に交差することなく下大静脈への接合部までの全長に沿って腸骨内に完全に留置するようにステントを配置するのが困難になる。高径方向力セグメントを接合部に配置することにより、メイ・ターナー症候群による圧壊に対応しやすくなるだけでなく、ターゲット位置からの短縮を低減しやすくすることもできる。
【0095】
本明細書に開示する実施形態は、バルーン拡張型と、自己拡張型の両方のステント設計に使用することができる。このステント設計は、冠状動脈、末梢血管、頸動脈、神経、胆管、およびとりわけ静脈の用途を含む、あらゆるステント介入治療に使用することができる。さらに、これはステント・グラフト、経皮弁などにも有益な場合がある。
【0096】
現在利用可能な埋入物は、通常、クリンプ構成で送達システムに組み込まれて保持され、次いで所望の解剖学的位置にナビゲートおよび導入され、ここで埋入物は、埋入構成に拡張される。最終的な埋入構成は、機械的な拡張/作動(たとえば、バルーン拡張型)または自己拡張(たとえば、ニチノール)によって実現することができる。自己拡張型埋入物は、超弾性または形状記憶の合金材料から製造される。自己拡張型埋入物の的確で正確な導入は、自己拡張型埋入物に関連した元々ある複数の設計属性が原因で、困難になることがある。埋入物は、蓄積された材料の弾性エネルギーが原因で、導入中に送達システムの遠位端部から飛び出す/前進することがある。さらに埋入物は、埋入物の直径がクリンプ構成から拡張構成に変化することが原因で、導入中に短縮することがある。最後に、身体管腔の分岐部への、またはその近くへの配置など、生理学的および解剖学的な構成が、埋入物の的確な配置に影響することがある。埋入物が身体管腔内に配置されると、拡張が不均等になったり、埋入物が身体管腔に対して周囲方向に並置されなかったりすることが生じる恐れがあり、これは結果的に、移動、遊走、またはある特定の重篤な事例では、埋入物塞栓症を引き起こすことがある。
【0097】
いくつかの実施形態では、身体管腔の常時の圧迫に抵抗するのに充分な径方向力または耐圧壊性を有するとともに、最適な耐疲労性、的確な配置、および移動/遊走を防止するための体内での固定を実現するように設計された自己拡張型埋入物が提供される。さらに、腸骨静脈圧迫症候群および静脈不全疾患を処置するための様々な導入方法および埋入方法が提供される。
【0098】
いくつかの実施形態では、埋入物は、腸骨静脈の圧迫(メイ・ターナー症候群)を局所的に処置することを目的とした、意図的に設計された静脈埋入物を含む。埋入物は、長さが相対的に短くてもよく(~60mm)、固定特徴部が組み込まれた自己拡張型ニチノールから製造されて、的確な配置を支援し、埋入後の遊走を軽減してもよい。埋入物および送達システムは、下大静脈が左右の総腸骨静脈になる分岐部において、正確な導入および配置ができるように設計される。
【0099】
別の特徴として、本明細書に開示するステントは、係属中の米国特許出願第15/471,980号、および15/684,626号に記載されたたとえば、固定部材、放射線不透過性マーカ、またははと目を含むことができ、これらの出願は、本明細書に完全に記載されているかのように、あらゆる目的について参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
本発明は、ある特定の好ましい実施形態および例の文脈で開示されてきたが、本発明は、明示的に開示された実施形態を超えて、本発明の他の代替的な実施形態および/または使用法、ならびにそれらの明確な修正形態および等価物にも及ぶことが、当業者によって理解されよう。さらに、本発明の複数の変形形態が、詳細に示され説明されてきたが、本発明の範囲内にある他の修正形態は、本開示に基づき、当業者には容易に明らかになろう。実施形態の特定の特徴および態様の様々な組合せまたは部分的な組合せが作られてもよく、これらはなお本発明の範囲内に含まれることが企図される。したがって、開示する実施形態の様々な特徴および態様を互いに組み合わせ、または置き換えて、開示する発明の様々なモードを形成できることを理解すべきである。したがって、本明細書における本発明の範囲は、上に述べた開示した特定の実施形態によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきである。
【0101】
同様に、いずれの請求項も、その請求項に明示的に言及された特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を、この開示方法が反映しているとは解釈されないものとする。むしろ、以下の請求項が反映しているように、本発明の態様は、先に開示したいずれか1つの実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴の組合せのなかにある。したがって、発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲は、この発明を実施するための形態に明示的に組み込まれており、各請求項は、別個の実施形態として独立している。
【0102】
本発明の様々な実施形態を上述してきたが、これらは単に例として提示されてきており、限定ではないことを理解すべきである。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形状および細部に様々な変更がなされてもよいことが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の広さおよび範囲は、上述した例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物だけにより定められるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15