(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】回転軸動作状態検知装置及び玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 29/22 20060101AFI20240202BHJP
A63H 17/26 20060101ALI20240202BHJP
A63H 17/00 20060101ALI20240202BHJP
G01P 3/68 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A63H29/22 Z
A63H17/26 F
A63H17/00 A
G01P3/68 Z
(21)【出願番号】P 2023004297
(22)【出願日】2023-01-16
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 陽亮
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-140546(JP,U)
【文献】国際公開第2012/169582(WO,A1)
【文献】特開2021-049795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00 - 37/00
G01P 1/00 - 3/80
G01D 5/26 - 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検マークが外周に付された回転軸と、前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸の外周で反射した光を受光して受光レベルに応じた光検出信号を生成するセンサと、前記光検出信号に基づいて前記
回転軸の動作状態を検知する制御部とを備えた回転軸動作状態検知装置であって、
前記回転軸は、軸本体と、前記軸本体の外側に嵌合されたスリーブと、を備え、
前記スリーブの外周には、前記被検マークとして、軸方向に延在し前記軸本体を露出させるスリットが形成されている、
ことを特徴とする回転軸動作状態検知装置。
【請求項2】
前記スリーブの外周の色は、前記軸本体の少なくとも外周の色とは異なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転軸動作状態検知装置。
【請求項3】
前記軸本体及び前記スリーブのうちの一方の少なくとも外周の色は黒色であり、他方の少なくとも外周の色は白色である、ことを特徴とする請求項1に記載の回転軸動作状態検知装置。
【請求項4】
前記回転軸の回転の状態を前記スリットの検出結果に基づいて検知する、ことを特徴とする請求項2に記載の回転軸動作状態検知装置。
【請求項5】
前記回転軸の軸方向の移動の状態を前記スリットの検出結果に基づいて検知する、ことを特徴とする請求項4に記載の回転軸動作状態検知装置。
【請求項6】
前記回転軸の軸方向の移動の終わりを前記スリットの端部が検出されたときに検知する、ことを特徴とする請求項5に記載の回転軸動作状態検知装置。
【請求項7】
前記スリーブの外周には、互いに幅の異なる第1スリット及び第3スリットが形成され、
前記回転軸は、軸方向の第1位置と第2位置との間で移動可能に構成されるとともに、付勢部材によって前記第1位置に向けて付勢され、
前記回転軸の外周には、前記第2位置で前記回転軸をロックするロック爪が形成され、
前記制御部は、前記第2位置で前記第1スリットの端部が検出されたときに、前記第3スリットが検出されるまで前記回転軸を所定方向に回転させ、前記ロック爪によって前記回転軸を前記第2位置にロックする、ことを特徴とする請求項4に記載の回転軸動作状態検知装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の回転軸動作状態検知装置を備えることを特徴とする玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸動作状態検知装置、及び、当該回転軸動作状態検知装置を備えた玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体に反射シールが貼り付けられ、回転センサによって、回転体の周回面で反射した光を受光して受光レベルに応じた光検出信号を生成し、この光検出信号に基づいて、回転体の回転数などの情報を検出する回転情報検出装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この回転情報検出装置によれば、検出にあたって対象物に触れなくて済むので、対象物とセンサが傷つかない、高速な光を媒体としているので、応答時間が短い、長時間の使用に適している、などの利点がある。
しかし、回転体が回転軸のように細径である場合や、回転軸の素材が難塗装材である場合など、反射シールその他の被検マークを付するのが困難であるという問題がある。
また、回転体が他の部品と摺接するものである場合、付した被検マークが取れてしまうという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、回転軸からの反射光を受光して回転軸の動作状態を検知する回転軸動作状態検知装置において、回転軸に被検マークを簡単に付すことができるとともに、付した被検マークが容易には剥がれない構造を有する回転軸動作状態検知装置、及び、当該回転軸動作状態検知装置を備えた玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
被検マークが外周に付された回転軸と、前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸の外周で反射した光を受光して受光レベルに応じた光検出信号を生成するセンサと、前記光検出信号に基づいて前記回転軸の動作状態を検知する制御部とを備えた回転軸動作状態検知装置であって、
前記回転軸は、軸本体と、前記軸本体の外側に嵌合されたスリーブと、を備え、
前記スリーブの外周には、前記被検マークとして、軸方向に延在し前記軸本体を露出させるスリットが形成されている、
ことを特徴とする。
【0006】
第2の手段は、第1の手段であって、前記スリーブの外周の色は、前記軸本体の少なくとも外周の色とは異なっている、ことを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第1の手段であって、前記軸本体及び前記スリーブのうちの一方の少なくとも外周の色は黒色であり、他方の少なくとも外周の色は白色である、ことを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第2の手段であって、前記回転軸の回転の状態を前記スリットの検出結果に基づいて検知する、ことを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第4の手段であって、前記回転軸の軸方向の移動の状態を前記スリットの検出結果に基づいて検知する、ことを特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第5の手段であって、前記回転軸の軸方向の移動の終わりを前記スリットの端部が検出されたときに検知する、ことを特徴とする。
【0011】
第7の手段は、第4の手段であって、
前記スリーブの外周には、互いに幅の異なる第1スリット及び第3スリットが形成され、
前記回転軸は、軸方向の第1位置と第2位置との間で移動可能に構成されるとともに、付勢部材によって前記第1位置に向けて付勢され、
前記回転軸の外周には、前記第2位置で前記回転軸をロックするロック爪が形成され、
前記制御部は、前記第2位置で前記第1スリットの端部が検出されたときに、前記第3スリットが検出されるまで前記回転軸を所定方向に回転させ、前記ロック爪によって前記回転軸を前記第2位置にロックする、ことを特徴とする。
【0012】
第8の手段は、第1~第7のいずれかの手段を備えた玩具である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転軸に被検マークを簡単に付すことができるとともに、付した被検マークが容易には剥がれない構造が得られる。そして、軸本体にスリーブを付け、スリーブにスリットを形成しているので、スリットを検知することにより、回転軸の動作状態を光学的手段を用いて検知出することができる。
また、軸本体とスリーブとの色が異なるもの、特に一方が黒色で他方が白色の場合にはスリットの検知が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】収縮状態の走行玩具の外観を示す斜視図である。
【
図2】拡開状態の走行玩具の外観を示す斜視図である。
【
図3】拡開状態の走行玩具を後方側から見た斜視図である。
【
図5】本体の内部構造の一部を示した斜視図である。
【
図9】車軸の一部が本体から突出した状態の、光センサの周辺の構造を示す下面側斜視図である。
【
図10】車軸が本体から突出した状態の、光センサの周辺の構造を示す下面側斜視図である。
【
図14】モータ及び動力伝達機構を下方側から見た斜視図である。
【
図15】走行玩具の制御構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
《全体構成の概略説明》
図1は、収縮状態の走行玩具1の外観を示す斜視図、
図2は、拡開状態の走行玩具1の外観を示す図、
図3は、
図2の走行玩具1を後方側から見た斜視図である。以下の説明において、「左」、「右」の語は、走行玩具1からみた「左」、「右」を言うものとする。
走行玩具1は、月面探査機を模して形成され、収縮状態では球体の形となる(
図1)。収縮状態では、走行玩具1は、スタビライザ12及び展望台13が本体10に対して折り畳まれ、左右の車輪11L、11R同士が互いに当接し、車輪11L、11R内に、本体10、スタビライザ12及び展望台13が収容された形となる。
また、走行玩具1は、拡開状態を取る。拡開状態では、走行玩具1は、左右の車輪11L、11R同士が本体10を間にして離間するとともに、本体10の後部からスタビライザ12が飛び出し、本体10の上部から展望台13が飛び出した形となる(
図2及び
図3)。
【0017】
左右の車輪11L、11Rは、車輪11L、11Rの中心から偏心した左右の車軸14L、14R(
図5参照)を中心に可能に構成されている。そして、拡開状態で、走行玩具1は2つの走行モードで走行する。
第1の走行モードでは、左右の車輪11L、11Rの回転によって、左右の車輪11L、11Rの最大径部分が同期して同時に地面を掻くようにして前進する。つまり、走行玩具1がバタフライ泳法類似の態様(以下、「バタフライ走行」と言う。)で前進する。
第2の走行モードでは、左右の車輪11L、11Rの最大径部分が交互に地面を掻いて前進する。つまり、走行玩具1がクロール泳法類似の態様(以下、「クロール走行」と言う。)で前進する。
【0018】
この走行玩具1は、外部コントローラによる遠隔操作によって収縮状態から拡開状態へと変形する。また、拡開状態から収縮状態への変形は、遠隔操作をトリガとし、一部が直接人手によって行われる。
【0019】
《走行玩具1の詳細》
図4は、走行玩具1の分解斜視図である。
走行玩具1は、大別して、本体10と、左右の車輪11L、11Rと、スタビライザ12及び展望台13と、を備える。本体10には、回転軸動作状態検知装置が搭載されている。また、展望台13には前後にカメラ13a、13bが取り付けられている。
この走行玩具1の構造部品(本体10内部の構造部品を含む。)は、左右中央の構造部品を除いて左右対称の配置及び構造となっている、したがって、構造部品の配置及び構造の説明は、左右一方の配置及び構造だけを説明及び図示し、適宜、左右他方の配置及び構造の説明及び図示は省略するものとする。
【0020】
〈スタビライザ12〉
スタビライザ12は、走行玩具1の走行中に本体10を所定位置に安定的に保持させるものである。
スタビライザ12は、本体10に軸12aを介して取り付けられた尾部12bと、尾部12bの先端の左右の軸(以下、「ヒレ軸」と言う。)を介して取り付けられた弧状の左右のヒレ部12cL、12cRと、を備える。
スタビライザ12は、軸12a及びヒレ軸の箇所で、折畳み可能となっていて、折畳み状態では、左右のヒレ部12cL、12cRが尾部12bの左右の縁に対して折り畳まれ、尾部12bが本体10に対して折り畳まれる。
スタビライザ12は、軸12aとヒレ軸とに個別に巻装されたトーションばね(指示せず)によって本体10から飛び出す方向に付勢されている。
【0021】
〈左右の車輪11L、11R〉
左右の車輪11L、11Rは、それぞれ、半球殻状に構成され、開口同士が互いに対向するように設けられている。
左右の車輪11L、11Rは、収縮状態では、車輪11L、11Rの開口縁同士が互いに合わさり、球殻状となって、この中に、本体10、スタビライザ12及び展望台13が収容される(
図1)。
また、車輪11L、11Rは、拡開状態では、本体10を間にして互いに離間する方向に動作する。この拡開状態では、スタビライザ12や展望台13が左右の車輪11L、11Rの間から飛び出る(
図2及び
図3)。
【0022】
車輪11L、11Rには、砂地などの走行面に食い込み易くなるように、凹部や孔が複数形成されている。また、車輪11L、11Rの開口縁全周には、グリップ力を増すためゴムバンド(図示せず)が適宜に取り付けられる。
この車輪11L、11Rは、車輪11L、11Rの中心から前方に偏心した車軸14L、14Rを介して本体10に取り付けられている。
【0023】
〈本体10〉
図5は、本体10の内部構造の一部を示した斜視図である。
【0024】
1.案内ロッド15
本体10には、案内ロッド15が左右方向に延在して設けられている。案内ロッド15は、左右中央部分で、本体10内に配設された中板10aによって支持されている。
すなわち、案内ロッド15の左右中央には、プーリ状の円筒部品15a(
図6)が固定して設けられている。円筒部品15aの外周面には溝15bが全周に亘って形成されている。一方、中板10aには、
図7に示すように、円筒部品15aを支持するロッド支持部10bが設けられている。ロッド支持部10bは、U字状切欠きとなっている。
そして、U字状切欠きには、円筒部品15aが溝15bの部分で嵌まることで、案内ロッド15が中板10aに支持されている。つまり、案内ロッド15は、U字状切欠き内で多少揺動することができる。
【0025】
2.車軸14L、14R
案内ロッド15には、左右の車軸14L、14Rが設けられている。
車軸14L、14Rは、各々が筒状に構成され、中央の孔(図示せず)には、案内ロッド15が挿入されている。そして、車軸14L、14Rの各々は、案内ロッド15に対して回転可能且つ軸方向に移動可能となっており、コイルばね16L、16Rによって本体10の左右外方(本体10から離れる方向)に向けて付勢されている。
なお、
図5には、右の車軸14Rが本体10から突出した状態、左の車軸14Lが本体10に没した状態が示されている。これは説明の便宜上の形態であって、左右の車軸14L、14Rは、人手で直接に左右の車輪11L、11Rを操作しない限り、実際には、同じ状態を取る。
【0026】
図8は、右の車軸14Rの分解斜視図である。左の車軸14Lは車軸14Rと左右対称の構造となっている。したがって、右の車軸14Rの構造だけを説明し、左の車軸14Lの構造の説明を省略する。
【0027】
車軸14Rは、主軸(軸本体)14aと、主軸14aに外嵌される筒状のスリーブ14bと、から構成されている。
主軸14aは、例えば、アルミダイカストで形成され黒染めされている。主軸14aには、案内ロッド15が挿通される孔(図示せず)が形成されるとともに、基端側(本体10の中心に近い側)に従動歯車14cが付設されている。また、主軸14aの先端側の細径部外周には、軸方向に延在してスリーブ14bの孔壁の凹部14dと係合する凸条14eが形成されている。そして、主軸14aとスリーブ14bとが嵌合され、凹部14dと凸条14eとが係合することによって、主軸14aとスリーブ14bとが一体的に構成されている。
なお、主軸14aとスリーブ14bとの嵌合状態では、凸条14eの一部を含む主軸14aの先端部がスリーブ14bの先から突出する。このスリーブ14bの先端部には、後述のブラケット17が取り付けられる。また、
図8において符号14jは、主軸14aの先端に形成された雌ねじを指示している。
【0028】
スリーブ14bは、例えば、POM(ポリオキシメチレン樹脂)製で白色に形成されている。
スリーブ14bの外周には、軸方向に延びスリーブ14bの基端に開口する長尺で広幅の1つの第1スリット14fと、軸方向に延びスリーブ14bの基端に開口する短尺で狭幅の複数の第2スリット14gと、軸方向に延びスリーブ14bの先端に開口する短尺で狭幅の2つの第3スリット14hと、が形成されている。これらスリットからは主軸14aが露出している。
複数の第2スリット14gは、1つの第1スリット14fを含んで、スリーブ14bの円周方向に等間隔で形成されている。また、第2スリット14gの1つは、スリーブ14bの中心軸線を挟んで第1スリット14fの対向位置に形成されている。また、2つの第3スリット14hは、それぞれ、スリーブ14bの円周方向に第1スリット14fと等間隔に形成されている。スリーブ14bに第3スリット14hを2つ設けたのは、左右のスリーブ14bを共通化するためであり、実際に使用されるのは、このうちの1つである。
【0029】
3.光センサ20
図9及び
図10は光センサ20の周辺の構造を示し、
図9は、車軸14Rの一部が本体10から突出した状態を示す下面図、
図10は、車軸14Lが本体10に没した状態を示す下面図である。
左右の車軸14L、14Rの軸方向の移動経路の脇には、それぞれ、光センサ20が1つずつ設けられている。光センサ20の構造及び配置は、左右対称なので、右の光センサ20だけについて説明し、左のセンサ20の説明は省略する。
右の光センサ20は、発光部及び受光部を備え、車軸14Rに当てた光の反射光を受光し、光の強度に応じた光検出信号を後述の制御部50に出力する。
この光センサ20は、車軸14Rの一部が本体10から突出したとき、車軸14Rの第2スリット14gを、また、車軸14Rが本体10に没したとき、車軸14Rの第3スリット14hを検出可能な位置に配置されている。
【0030】
4.車輪11L、11Rの取付け構造
右の車輪11Rの取付け構造と、左の車輪11Lの取付け構造とは左右対称となっている。したがって、右の車輪11Rの取付け構造について説明し、左の車輪11Lの取付け構造についての説明は省略する。
図11は、右のブラケット17の外面側の斜視図、
図12は、右のブラケット17の内面側の斜視図である。なお、これらの図において矢印Fはフォワード方向を示している。
ブラケット17は、主軸14aの先端に取り付けられる中央部分17aと、中央部分17aから半径方向外方に張り出し車輪11Rが取り付けられる2つの張出し部17bとを有している。
【0031】
ブラケット17の中央部分17aの内面側には、主軸14aの先端部が挿入される挿入孔17cが形成されている。この挿入孔17cの壁には、主軸14aの凸条14eを受容する扇状の切欠き17dが形成されている。一方、中央部分17aの外面側には、ねじ挿通孔17eが形成されている。
そして、ブラケット17の挿入孔17cに主軸14aの先端部が挿入された状態で、ねじ挿入孔17cを通した雄ねじ18を主軸14aの先端部の雌ねじ14jに螺合させることによって、ブラケット17が主軸14aに取り付けられている。ブラケット17が主軸14aに取り付けられた状態では、ブラケット17と主軸14aとは、切欠き17d内で凸条14eが動き得る範囲で相対回転することができる。
【0032】
ブラケット17の張出し部17bの内面側には、ナット(図示せず)が嵌合される孔17fが形成されている。一方、ブラケット17の張出し部17bの外面側には、孔17fに対応してねじ挿通孔17gが形成されている。
そして、車輪11Rは、車輪11Rのねじ挿通孔(
図4のねじ挿通孔10dに対応)に挿通された雄ねじ19を、孔17fに嵌合したナットに螺合させることによってブラケット17に取り付けられている。
なお、車輪11Rのねじ挿通孔は、ブラケット17に取り付けられた車輪11Rと、主軸14aの中心とがずれる位置に形成されている。これによって、右の車輪11Rは、車輪11Rの中心から偏心した車軸14Rを中心に回転可能となる。
【0033】
5.車軸14L、14Rのロック構造
右の車軸14Rのロック構造と、左の車軸14Lのロック構造とは左右対称となっている。したがって、右の車軸14Rのロック構造について説明し、左の車軸14Lのロック構造についての説明は省略する。
【0034】
図13は、本体10の右面の拡大図である。
本体10には、走行玩具1が収縮する際に、ブラケット17が着座する凹部10eが形成されている。また、本体10には、車軸14Rが出入される孔10fが形成されている。この孔10fは、車軸14Rの中心軸線に直交する断面でロック爪14iが形成されている部分の断面と相補的形状を有している。
そして、車軸14Rを孔10fに没しさせ、ブラケット17を凹部10eに着座させることで、ブラケット17の回転が阻止される。この状態で、主軸14aをリバース方向に回転させることで、スリーブ14bのロック爪14iが孔10fの縁の内側に潜り込み、車軸14Rが没入状態にロックされる。
【0035】
6.モータ31L,31R及び動力伝達機構32L,32R
図14は、モータ31L、31R及び動力伝達機構32L、32Rを下方側から見た斜視図である。
本体10の内部の底には、バッテリ(図示せず)が設けられている。また、バッテリの上方には、モータ31L、31Rが設けられている。
動力伝達機構32L、32Rは、減速歯車列によって構成され、左右対称となっている。
モータ31L、31Rの各動力は、動力伝達機構32L、32Rを介して左右の広幅歯車33L、33Rに伝達される。左右の広幅歯車33L、33Rは、それぞれ、左右の車軸14L、14Rの従動歯車14cに噛合している。左右の車軸14L、14Rの従動歯車14cは、車軸14L、14Rが案内ロッド15の軸方向移動したときでも、常時、左右の広幅歯車33L、33Rに噛合している。なお、左右の広幅歯車33L、33Rは、クラッチ(図示せず)を介して動力伝達機構32L、32Rに連結されている。
【0036】
7.制御構成
図15は、走行玩具1の制御構成を示すブロック図である。
走行玩具1は、制御部50と、駆動部51と、通信部52と、記憶部53と、検出部54と、撮像部55とを備えている。それらの要素は、走行玩具1に備えられたバッテリ(図示せず)を電源として作動する。
【0037】
駆動部51は、左右のモータ31L、31R及びそれらの駆動回路等を含むものであって、この駆動部51を介して左右のモータ31L、31Rを個別に駆動することにより、バタフライ走行やクロール走行を行わせたり、或いは車軸14L、14Rのロックを行わせたりする。
【0038】
通信部52は、無線送受信機を含んで構成され、例えば外部コントローラの通信部との間で送受信を行う。このとき、受信データとしては、外部コントローラから送られてくる各種の制御コマンドが含まれており、送信データとしては、前後のカメラ13a、13bから得られる映像データや含まれる。
【0039】
制御部50は、走行玩具1全体を統括制御するためのマイクロプロセッサ(MPU)やカメラ13a、13bの映像を処理するための画像プロセッサ(GPU)を主体として構成され、外部コントローラから送られてくる制御コマンドに対応する処理を実行したり、カメラ13a、13bから得られる映像を送信用に加工したりする処理を実行する。
【0040】
記憶部53は、制御部50のMPUやGPUにて実行されるべき各種のシステムプログラムを格納するROMやシステムプロクラムの実行に際してワークエリアとして使用されるRAMやカメラの映像を一時記憶するための画像メモリなどを含んで構成される。
【0041】
検出部54は、光センサ20を含んで構成され、この検出部54を介して左右の光センサ20を個別に作動させ、左右の車軸14L、14Rで反射した光の強弱に対応した光検出信号を制御部50に送信する。なお、色情報を含む光検出信号を制御部50に送信してもよい。
【0042】
撮像部55は、前後のカメラ13a、13bに含まれるイメージセンサやその駆動回路などを含んで構成される。
【0043】
〈動作〉
1.収縮状態から拡開状態へ
走行玩具1は、収縮状態では、
図1に示すように、左右の車輪11L、11Rによって本体10、スタビライザ12及び展望台13が収容された球体の形となっている。この状態では、第3スリット14hの1つが光センサ20に対峙している。
この収縮状態で、走行玩具1が「拡開」の制御コマンドを受信すると、左右の車軸14L、14Rの第1スリットが検知されるまで左右のモータ31L、31Rが一方向に駆動される。これにより、車軸14L、14Rがフォワード方向に回転し、ロック爪14iが本体10の切欠き10fに合致し車軸14L、14Rのロックが外れ、コイルばね16L、16Rの付勢力によって、車軸14L、14Rひいては車輪11L、11Rが本体10から左右に飛び出すとともに、スタビライザ12及び展望台13も本体10から飛び出す。
【0044】
2.走行動作
拡開状態で、走行玩具1が「バタフライ走行」の制御コマンドを受信すると、同時にモータ31L、31Rが一方向に駆動され、車軸14L、14Rがフォワード方向に回転して凸条14eが切欠き17dの一側の壁を押し、車輪11L、11Rの最大径部分が同期して回転する。これにより、走行玩具1がバタフライ走行を行う。
一方、拡開状態で、走行玩具1が「クロール走行」の制御コマンドを受信すると、先ず、モータ31L、31Rの一方だけが、対応する光センサ20が第1スリット14fから180度離れた位置にある第2スリット14gを検知するまで一方向に駆動される。その後、モータ31L、31Rが一方向に駆動され、車軸14L、14Rがフォワード方向に回転して凸条14eが切欠き17dの一側の壁を押し、車輪11L、11Rの最大径部分が180度位相をずらした形で回転する。これにより、走行玩具1がクロール走行を行う。
【0045】
3.拡開状態から収縮状態へ
静止状態で、走行玩具1が「収縮」の制御コマンドを受信すると、モータ31L、31Rは、光センサ20が第1スリット14fを検知するまで駆動され、第1スリット14fを検知した時駆動が停止される。その後、遊戯者が手でスタビライザ12及び展望台13を折り畳むとともに、車輪11L、11Rを本体10側に押し込む。光センサ20は、この間、第1スリット14fを継続的に検出し、第1スリット14fの端を検知すると、モータ31L、31Rは、光センサ20が第3スリット14hを検知するまで、他方向に駆動される。これにより、ロック爪14iが孔縁に係止し、車軸14L、14Rが没入状態を維持するようにロックされる。
【0046】
《実施形態の効果》
実施形態の走行玩具1によれば次のような主たる効果を奏する。
車軸14L,14Rに被検マークを簡単に付すことができるとともに、付した被検マークが容易には剥がれない構造が得られる。そして、主軸14aにスリーブ14bを付け、スリーブ14bにスリット14f、14g、14fを形成しているので、このスリットを検出することにより、車軸14L,14Rの動作状態を光学的手段(光センサ)を用いて検知することができる。
また、案内ロッド15は、車軸14L、14Rが本体10の押し込まれたとき、中央のロッド支持部10bと、車軸14L、14Rが摺接する孔10fの壁によって3点支持されるが、中央のロッド支持部10bではU字状切欠きによって案内ロッド15を支持しているため、案内ロッド15の左右部分が自動調心される。したがって、案内ロッド15に対する負荷が軽減される。また、車軸14L、14Rの回転や軸方向移動を円滑に行うことが可能となる。
【0047】
《変形例》
上記実施形態では、主軸14aを黒色、スリーブ14bを白色としたが、異なる色で光検出信号に基づいてスリット14f、14g、14hを識別可能な色であれば、色を問わない。
【0048】
また、上記実施形態では、主軸14aの色とスリーブ14bの色を違えたが、スリーブ14bの表面状態と主軸14aの表面状態とを違えてもよい。例えば、主軸14aの表面を鏡面とし、スリーブ14bの表面を粗面とする。或いは、その逆にしてもよい。
【0049】
さらに、主軸14a及びスリーブ14bの色や表面状態を考慮しなくてもよい。スリーブ14bにスリット14f、14g、14hのエッジで光が散乱されるので、エッジを検知することができるからである。ただし、主軸14a及びスリーブ14bの色や表面状態を考慮することで、より確実且つ高精度にスリット14f、14g、14hを検出することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 走行玩具
10 本体
10a 中板
10b ロッド支持部
11L、11R 車輪
12 スタビライザ
13 展望台
14L、14R 車軸(回転軸)
14a 主軸
14b スリーブ
14c 従動歯車
14d 凹部
14e 凸条
14f、14g、14h スリット
14i ロック爪
15 案内ロッド
15a 円筒部品
17 ブラケット
17c 挿入孔
17d 切欠き
17e 挿通孔
17f 孔
17g 挿通孔
20 光センサ
31L、31R モータ
32L、32R 動力伝達機構
33L、33R 広幅歯車
50 制御部
51 駆動部
52 通信部
53 記憶部
54 検出部
55 撮像部
【要約】
【課題】回転軸からの反射光を受光して回転軸の動作状態を検知する回転軸動作状態検知装置において、回転軸に被検マークを簡単に付すことができるとともに、付した被検マークが容易には剥がれない構造を有する回転軸動作状態検知装置、及び、当該回転軸動作状態検知装置を備えた玩具を提供すること。
【手段】 被検マークが外周に付された回転軸と、前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸の外周で反射した光を受光して受光レベルに応じた光検出信号を生成するセンサと、前記光検出信号に基づいて前記回転体の動作状態を検知する制御部とを備えた回転軸動作状態検知装置であって、前記回転軸は、軸本体と、前記軸本体の外側に嵌合されたスリーブと、を備え、前記スリーブの外周には、前記被検マークとして、軸方向に延在し前記軸本体を露出させるスリットが形成されている。
【選択図】
図8