(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】金型セットシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 33/30 20060101AFI20240206BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B29C33/30
B22D17/22 A
(21)【出願番号】P 2020060149
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】若月 富男
(72)【発明者】
【氏名】増山 朗
(72)【発明者】
【氏名】花山 由宇
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-214416(JP,A)
【文献】特開平01-249410(JP,A)
【文献】特開平07-314502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/22
B29C 33/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型をセットするための金型セットシステムであって、
固定プラテン及び可動プラテンから構成され
、前記固定プラテンに対して前記可動プラテンが近接及び離間するように移動することで開閉可能なプラテンと、
前記金型に形成された水路に注水するための注水装置と、
前記プラテンの開閉方向に沿って移動可能な当接部と、
前記当接部の前記開閉方向における移動量を検出可能な検出装置と、を有し、
前記注水装置が、
注水口となる接続部を備え、
前記当接部と前記接続部とが連動して移動可能であり、
前記金型には、前記接続部に対して着脱可能な取付部が設けられており、
前記開閉方向において、前記接続部と前記当接部との離間距離が、前記金型において前記当接部が当接する当接位置と前記取付部との離間距離と略一致しており、
前記金型が基準位置に位置決めされた状態において、前記当接部が
前記基準位置に対して前記開閉方向に離れた所定
の初期位置から前
記当接位置に移動すると、前記接続部が前記取付部に対して接続可能な位置に到達するとともに、
前記初期位置から前記当接位置
までの前記当接部の前記移動量
が、前記金型の型厚に対して適正範囲内であるか否かに基づいて、前記プラテンの開き量が適正であるか否かを判定可能であることを特徴とする金型セットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置などの金型をプラテンにセットするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形装置を用いて部品を成形することが行われている。また、自動車工場などでは、複数種類の部品を製造するため、成形装置のプラテンに対して金型を入れ替えてセットする作業が行われている。
【0003】
プラテン等の設備に対して金型をセットする場合(金型取り付け時)、成形しようとする部品ごとに金型の厚みが異なるため(型厚が異なるため)、設備と金型とが干渉しないようにプラテンを移動させ、プラテンの開き量の調整が行われている。具体的には、従来では可動プラテンの位置(可動プラテンと固定プラテンとの開き量)を調整した後(型厚を合わせた後)、金型を交換台車より移動させ、射出成形装置にセットする作業が行われている。
【0004】
また、金型をセットする際にプラテンと金型との干渉を回避するための技術として、例えば下記特許文献1には、検知光に基づいてプラテンを移動させて金型をセットする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、射出成形装置への型厚データ入力は人の作業により行われている。例えば、射出成形装置に金型をセットする際に、射出成形装置の制御部に記憶(保存)されている型データを、人が型番号などを入力することで呼び出して金型のセットが行われている。そのため、人的ミスによりセットを間違えると(型番の入力間違いや呼び出し間違いがあると)、可動プラテンの位置と金型の厚みが相違して、金型が射出成形装置に進入する際に金型がプラテン等に干渉、あるいは金型が落下する等の問題があった。金型は重量物であるため、プラテンと接触して搬送路から外れると復旧に多大な作業が発生してしまう。
【0007】
また、このような問題に対応するため、金型にIDタグ等を取り付ける等、人による入力作業によらずに金型情報を読み取ることも考えられるが、これらの設備や機器を導入するためのコストが増大するといった問題がある。
【0008】
さらに、金型の型厚データに間違いがあったとしても、リミットスイッチや近接スイッチにより、金型のプラテンへの投入直前で衝突などを防止するといった方策が講じられている。しかしながら、近年では金型セットの高速化が進み、センサの検知では追いつかず、金型とプラテンとの接触を未然に防ぐ対策として十分ではなく、さらなる対策が求められていた。
【0009】
そこで本発明は、簡易な設備で金型とプラテンとの干渉などを抑制して金型をセットすることができる金型セットシステムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため提供される本発明の金型セットシステムは、金型をセットするための金型セットシステムであって、固定プラテン及び可動プラテンから構成されるプラテンと、前記プラテンの開閉方向に沿って移動可能な当接部と、前記当接部の前記開閉方向における移動量を検出可能な検出装置と、を有し、前記当接部を所定位置から前記金型と接触する当接位置まで移動させ、前記当接位置における前記移動量に基づいて、前記プラテンの開き量が適正であるか否かを判定可能であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の金型セットシステムによれば、簡易な設備で金型とプラテンとの干渉などを抑制して金型をセットすることができる。
【0012】
より具体的に説明すると、本発明の金型セットシステムによれば、事前にプラテンの開き量(固定プラテンと可動プラテンとの離間距離)が適正であるか否かを判定可能となる。その結果、金型の搬入時(プラテン間への搬送時)に金型がプラテンと接触することを抑制することができる。
【0013】
ここで、近年では、金型に種々の付帯部品が取り付けられる場合がある。また、金型がプラテンに投入される前の準備段階で、金型に付帯部品を取り付けるための装置が設けられている場合がある。
【0014】
本発明の発明者らが検討したところ、このような付帯部品を金型に取り付けるための装置(セット装置)を活用すれば、付帯部品を移動させるためのシリンダ等の駆動装置を、当接部を駆動(移動)させるための駆動装置と兼用することができるとの知見に至った。すなわち、セット装置を移動させるための機構を、当接部を移動させるための機構として活用すれば、既存の設備を利用して金型をセットする際にプラテンの開き量が適切であるか否かの判定に活用することができるとの知見に至った。
【0015】
上述の知見に基づき提供される本発明の金型セットシステムは、前記金型に付帯部品をセットするためのセット装置を備え、前記金型には、前記付帯部品がセットされる取付部が設けられており、前記セット装置が、前記取付部と接続される接続部を備え、前記当接部が、前記セット装置と連動して移動可能とされており、前記当接部が前記当接位置まで移動することを条件として、前記接続部が前記取付部に対して接続可能な位置に位置決めされることを特徴とするものである。
【0016】
上述の構成によれば、既存の構成を活用して、金型をセットする際にプラテン間の開き量が適切であるか否かの判定を行うことができる。その結果、大がかりな設備追加を要することなく、金型とプラテンとの接触を回避することができる。
【0017】
ここで、上述の付帯部品として、例えば、金型に温水を供給するための温水ホースなどがある。具体的に説明すると、射出成形を冬場に行う場合、金型が外気で冷え切っている場合があり、そのような場合には打ち始めに樹脂が流れにくく、不良が出やすいといった問題があった。また、このような問題に対応するため、金型をプラテンにセットする前に(金型外段取時に)金型内に形成された水路に温水を流して金型を温め、これにより不良品の発生を抑制するといったことが行われている。
【0018】
このように、プラテンへのセット前に金型を温めるために、金型には水路や温水の供給口となる接続カプラ等(取付部)が設けられている場合がある。しかしながら、従来では、温水の供給元となる注水口と取付部とを接続する場合、ホースを取り付ける作業を人の手により行っていたため、作業工数がかかるといった問題があった。また、カプラやホースが重く、接続作業に時間がかかる上に作業者の負担も大きい。このような人の作業を削減して工数を低減させるため、自動で温水の供給元と取付部とを接続したいといった要望があったが、金型によって型厚の違いがあるため、着脱位置が一定ではないという問題があった。
【0019】
すなわち、自動で供給元(設備側)と取付部(金型側)とを接続する場合、型厚に応じて供給元の位置を移動させる必要がある。また、型厚の違いに応じて自動で供給元と取付部との位置を調整しようとすると、設備が高額化するおそれがあった。
【0020】
このような要望について本発明の発明者らが検討したところ、注水装置と当接部とを同じ駆動装置により一体的に移動可能とすれば、金型をセットする前にプラテンの開き量が適切であるか否かを判定するとともに、取付部(金型)に対する供給口の位置を自動で調整可能とすることが出来るとの知見に至った。
【0021】
上述の知見に基づき提供される本発明の金型セットシステムは、金型をセットするための金型セットシステムであって、固定プラテン及び可動プラテンから構成されるプラテンと、前記金型に形成された水路に注水するための注水装置と、前記プラテンの開閉方向に沿って移動可能な当接部と、前記当接部の前記開閉方向における移動量を検出可能な検出装置と、を有し、前記注水装置が、注水口となる接続部を備え、前記当接部と前記接続部とが連動して移動可能であり、前記金型には、前記接続部に対して着脱可能な取付部が設けられており、前記当接部が所定位置から前記金型と接触する当接位置に移動すると、前記接続部が前記取付部に対して接続可能な位置に到達するとともに、前記当接位置における前記移動量に基づいて、前記プラテンの開き量が適正であるか否かを判定可能であることを特徴とするものである。
【0022】
上述の構成によれば、金型をセットする前にプラテンの開き量が適切であるか否かを判定するとともに、取付部(金型)に対する供給口の位置を自動で調整可能とすることが出来る。また、金型を事前に温めることで、不良品の発生を抑制して歩留まりをアップすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡易な設備で金型とプラテンとの干渉などを抑制して金型をセットすることができる金型セットシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の金型セットシステムを示す平面図である。
【
図2】
図1の金型セットシステムにおける金型の搬送方向を示す図である。
【
図3】
図1の金型セットシステムの注水装置及び取付部を示す図である。
【
図4】
図1の金型セットシステムにおける金型がセット領域に配置されるまでの流れを示す図である。
【
図5】
図1の金型セットシステムの注水装置及び当接部の動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の金型セットシステムSについて、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
金型セットシステムSは、成形装置10に金型60をセットするためものである。
図1に示すとおり、金型セットシステムSは、成形装置10、搬送設備20、注水装置40、当接部32、シリンダ50、及び設備側制御部56を備えている。
【0027】
図2に示すとおり、金型セットシステムSでは、搬送設備20により金型60が所定の方向(
図2では、右側から左側、又は左側から右側)に搬送される。
【0028】
なお、以下の説明では、金型60の搬送方向を、単に「搬送方向X」と記載して説明する場合がある。また、搬送方向Xと交差する方向(プラテン11の開閉方向)を、「幅方向W」と記載して説明する場合がある。
【0029】
成形装置10は、樹脂などの材料を射出成形によって成形品を製造する装置である。
図1に示すとおり、成形装置10は、プラテン11、入力部16、及び成形側制御部17を備えている。
【0030】
プラテン11は、固定プラテン12及び可動プラテン14により構成されている。プラテン11は、固定プラテン12に対して可動プラテン14が近接及び離間するように移動可能とされている。なお、以下の説明では、固定プラテン12及び可動プラテン14の離間距離を、単に「開き量M2」又は「プラテン11の開き量M2」と記載して説明する場合がある。
【0031】
なお、図示を省略するが、成形装置10には、可動プラテン14を移動させて型締め動作を行う型締めユニットや、材料である樹脂を金型60内に射出する射出ユニットなどが設けられている。固定プラテン12と可動プラテン14とは、幅方向Wに対向するように配置されている。また、固定プラテン12には射出ユニット(図示を省略)が接続されており、固定プラテン12には型締めユニットが接続されている。
【0032】
固定プラテン12には、射出機構(図示を省略)から射出される樹脂を金型60のキャビティに流し込むための供給孔(図示を省略)が設けられている。
【0033】
可動プラテン14は、型締めユニットにより幅方向Wに移動可能とされている(
図4参照)。なお、可動プラテン14は、固定プラテン12に設けられた複数の固定軸(図示を省略)に対し、可動プラテン14に設けられた孔部を挿通させることにより、移動する際(型締め時及び型開き時)にガイドされる。
【0034】
また、
図1に示すとおり、固定プラテン12および可動プラテン14は、それぞれ金型60を取り付ける金型取付面12a,14aを有する。
【0035】
入力部16では、作業者により金型に関する品番等の金型情報が入力される。また、成形側制御部17は、入力部16に入力された情報等を記憶し、記憶している金型情報に基づいて、可動プラテン14を移動させて、適切な待機位置で停止するように型締め機構を制御する。
【0036】
図3に示すとおり、金型60は、固定型62と可動型64とから構成されている。固定型62は、固定プラテン12に取り付けられる。また、可動型64は、可動プラテン14に取り付けられる。
【0037】
図3に示すとおり、固定型62は、固定型本体62a及び固定型取付板62bにより構成されている。固定型62は、固定型取付板62bの取付面62cが、図示しない金型クランパによって固定プラテン12の金型取付面12aに取り付けられる。
【0038】
図3に示すとおり、可動型64は、可動型本体64a及び可動型取付板64bにより構成されている。可動型64は、可動型取付板64bの取付面64cが、金型クランパによって可動プラテン14の金型取付面14aに取り付けられる。なお、金型60の各プラテンへの取り付けは、金型クランパに替えて、磁気を利用した取り付け機構などを用いてもよい。
【0039】
なお、後で説明するとおり、金型60は、取付面62cが基準板30に接触して、幅方向Wにおいて位置決めされる。そのため、以下の説明では、金型60の基端側の面(固定型取付板62bの基端側の面)を「基端面60a」と記載して説明する場合がある。また、金型60において基端面60aとは反対側の面(可動型取付板64bの他端側の面)を「他端面60b」と記載して説明する場合がある。
【0040】
なお、以下の説明では、金型60の成形装置10にセットされた状態における幅方向Wの厚みを、単に「型厚D」と記載する場合がある。
【0041】
図3に示すとおり、可動型64及び固定型62には、水路72がそれぞれ設けられている。また、可動型64及び固定型62には、水路72に水を供給するための取付部70が取り付けられている。
【0042】
取付部70は、カプラ等、着脱可能なコネクタにより構成されており、後述する注水装置40の接続部43と着脱可能とされている。また、取付部70は、金型60のセット時や搬送時における上下方向Hにおいて、下方に取り付けられている。すなわち、本実施形態の金型セットシステムSでは、金型60の準備時やセット時において、取付部70に対して注水装置40の接続部43が上昇し、取付部70と接続部43の接続が行われる。
【0043】
以下の説明では、取付部70の中心位置を、「着脱位置Pc」と記載して説明する場合がある。
図3に示すとおり、可動型64に設けられた取付部70は、着脱位置Pcが他端面60bから距離L2離間するように設けられている。
【0044】
搬送設備20は、金型60を搬送するために設けられている。
図1に示すとおり、搬送設備20には、交換台車22、基準板30、注水装置40、当接部32、及びシリンダ50が設けられている。なお、
図1に示すとおり、本実施形態の金型セットシステムSでは、成形装置10の両側(
図1では左右両側)に、交換台車22、基準板30、注水装置40、当接部32、及びシリンダ50がそれぞれ設けられている。これにより、金型セットシステムSでは、成形装置10の両側から金型60を搬入可能とするとともに、いずれから金型60を搬送しても、同じ機能(後述する予備温調機能や金型60の型厚検出機能)を発揮することができる。
【0045】
さらに、搬送設備20には、設備側制御部56が設けられている。設備側制御部56は、成形装置10の成形側制御部17と通信することにより、金型60の搬送タイミングや、注水装置40の作動等を制御している。
【0046】
交換台車22は、成形装置10の両側(搬入側と搬出側)にそれぞれ設けられている。交換台車22には、駆動装置(図示を省略)により駆動される複数のローラ24が設けられている。交換台車22上に積置された金型60は、ローラ24の駆動により搬送される。
【0047】
図1に示すとおり、金型セットシステムSにおいて、交換台車22が設けられた領域は、金型60が搬入あるいは搬出される搬入出領域R1,R3を形成している。また、金型セットシステムSにおいて、成形装置10が設けられた領域は、金型60がセットされるセット領域R2を形成している。
【0048】
基準板30は、搬入出領域R1,R3に投入された金型60を幅方向Wにおいて位置決めするために設けられている。
図2に示すとおり、基準板30は、固定プラテン12の金型取付面12aと同一平面上に設けられており、金型60が基準板30と接触する位置となると、金型60は固定プラテン12に対して幅方向Wに位置決めされた状態となる(基準位置Paに位置決めされた状態となる)。
【0049】
当接部32は、基準板30と対向する位置に設けられている。より具体的に説明すると、
図2に示すとおり、当接部32は、基準板30に対して幅方向Wに対向する位置に設けられている。当接部32は、後述する可動注水装置42と一体的に移動可能とされており、基準板30と接近するようにスライドして金型60の可動型64と接触可能とされている。
【0050】
注水装置40は、金型60内部の水路に水を供給して、金型60の予備温調、あるいは金型60の冷却等を行うためのものである。
図3に示すとおり、注水装置40には、接続部43が設けられている。
【0051】
接続部43は、カプラ等、着脱可能なコネクタにより構成されており、後述する金型60の取付部70と着脱可能とされている。また、注水装置40には、図示を省略した温水等の供給源から温水あるいは冷水が供給され、接続部43から注水することができる。
【0052】
本実施形態の金型セットシステムSには、複数の注水装置40が設けられている。
図1に示すとおり、本実施形態の金型セットシステムSでは、搬入出領域R1,R3にそれぞれ二つの注水装置40が設けられている。また、
図3に示すとおり、搬入出領域R1あるいは搬入出領域R3に設けられた二つの注水装置40は、それぞれ固定型62及び可動型64に対応している。
【0053】
搬入出領域R1,R3に設けられた注水装置40は、主に金型60の予備温調を行う。これにより、金型セットシステムSは、冬場など金型60が外気で冷えている場合に、樹脂が流れにくくなり、その結果不良が出やすくなるなどの懸念を抑制することができる。
【0054】
なお、図示を省略するが、セット領域R2にも固定型62及び可動型64に対応する注水装置40が設けられている。
【0055】
図3に示すとおり、注水装置40は、金型60の移動面よりも下方に形成されたピット領域R4に配置されている。注水装置40は、図示を省略した昇降装置により昇降可能とされており、金型60の取付部70が設けられた着脱位置Pcにおいて昇降することで、取付部70に対して装着される。
【0056】
ここで、
図3に示すとおり、搬入出領域R1あるいは搬入出領域R3に設けられた二つの注水装置40のうち、固定型62に対応する注水装置40は、水平方向(例えば幅方向W)に移動しない構成とされている。これに対して、注水装置40のうち、可動型64に対応する注水装置40は、シリンダ50により幅方向Wに移動可能とされている。なお、以下の説明では、可動型64に対応する注水装置40を、「可動注水装置42」と記載して説明する場合がある。
【0057】
図3に示すとおり、可動注水装置42は、ブラケット44に支持されている。ブラケット44は、シリンダ50と連結されている。また、ブラケット44の上方側には、当接部32が取り付けられている。
【0058】
本実施形態のシリンダ50は、ストローク量を測定する測定装置52(検出装置)が設けられている(測長タイプのシリンダとされている)。なお、本実施形態では、可動注水装置42を移動させるものとしてシリンダ50を用いた例を示したが、本発明の金型セットシステムは本実施形態に限定されない。すなわち、可動注水装置を移動させるものとして、他の駆動装置(モータ等)を用いてもよいし、測定装置は駆動装置と別体として設けてもよい。
【0059】
このように、可動注水装置42及び当接部32は、いずれもブラケット44に取り付けられており、シリンダ50の駆動により幅方向Wに一体的に移動する。
【0060】
図5(b)に示すとおり、可動注水装置42及び当接部32が可動型64に接近するように変位すると、やがて当接部32が可動型64の取付面64c(金型60の他端面60b)に接触し、移動が阻止される。また、当接部32と可動型64とが接触する位置(当接位置Pb2)まで可動注水装置42が移動すると、可動注水装置42の接続部43は、着脱位置Pcに到達する。
【0061】
さらに、可動注水装置42及び当接部32の移動距離L1(移動量M1)は、測定装置52により検出され、移動距離L1の情報が設備側制御部56に伝達される。これにより、成形装置10の入力部16に入力された金型情報(型厚Dの情報)に対して、測定装置52により検出された移動距離L1が、適正範囲内であるか否かを判定することが可能となる。
【0062】
具体的に説明すると、例えば、成形装置10の入力部16により入力されたものに対応する金型情報(例えば型厚Dの情報)に対して、測定装置52により検出された移動距離L1(移動量M1)が適正範囲内ではない場合(例えば移動量M1が適正範囲に対して少ない場合)、入力された情報と実際に投入されている金型とが一致しないとの判定を行うことができる。これにより、金型セットシステムSは、金型60がセット領域R2に搬送される前に、入力情報に誤りがあるか否かを判定することができる。その結果、金型60がプラテンと接触する等を回避することができる。
【0063】
<金型のセット動作について>
続いて、金型セットシステムSが行う金型60のセット動作について、
図4を参照しつつ説明する。以下の説明では、搬入出領域R1から成形装置10に向けて金型60を搬入する例を挙げて説明する。なお、本実施形態の金型セットシステムSでは、以下で説明するとおり、搬入出領域R1から金型60を搬入する際に予備温調や金型60の型厚Dを検出可能であるとともに、搬入出領域R3から金型60を搬入する際にも、予備温調や金型60の型厚Dを検出可能とされている。
【0064】
まず、金型60を搬入出領域R1に搬入するに際し、成形装置10の入力部16にセットしようとする金型60の金型情報が作業者により入力される。そして、成形装置10の可動プラテン14が入力された金型60の型厚Dに対応する位置に移動する。
【0065】
また、
図4(a)に示すとおり、搬入出領域R1に金型60が搬入される。このとき、金型60は、基端面60a(固定型62の基端面)が基準板30に接触するように搬入されて幅方向Wにおいて位置決めされる。
【0066】
図4(b)に示すとおり、金型60が基準位置Paに位置決めされた後、可動注水装置42を駆動させる。具体的には、
図5(b)に示すとおり、シリンダ50を駆動させて、金型60に接近するように可動注水装置42を移動させる。なお、シリンダ50が駆動していない状態では、当接部32は初期位置Pb1に配置されている。
【0067】
図4(c)に示すとおり、可動注水装置42及び当接部32は、一体的に金型60に接近するように移動して、やがて当接部32が金型60の他端面60b(可動型64の他端側の面)と接触する。当接部32と金型60とが接触する位置(当接位置Pb2)において、当接部32の移動が阻止されるとともに、可動注水装置42の移動も連動して阻止される。
【0068】
ここで、
図5(b)に示すとおり、可動注水装置42は、当接部32との幅方向Wの離間距離L3が金型60の他端面60bから取付部70までの離間距離L2と略一致するように構成されている。そのため、
図5(b)に示すとおり、可動注水装置42が当接位置Pb2まで移動すると、取付部70の直下に接続部43が到達する(接続部43が着脱位置Pcに配置された状態となる)。そのため、可動注水装置42を昇降装置(図示を省略)により上昇させると、接続部43と取付部70とが接続される。このように、金型セットシステムSでは、金型60に予備温調を行うための注水口(接続部43)を、自動で着脱可能とされている。
【0069】
その後、可動注水装置42から金型60の水路72に温水が供給される。これにより、金型60の水路72に温水が供給されて、射出成形前に金型60を予備温調することができる。その結果、金型60内で樹脂が流れにくくなるといった問題発生を抑制することができる。また、これらの注水動作や注水口の着脱は、人がホースを接続するなど、人的作業によらず行うことができる。
【0070】
図4(c)に示すとおり、シリンダ50は、初期位置Pb1から当接位置Pb2までの距離(移動距離L1、移動量M1)を測定装置52により検出して、移動距離L1の情報を設備側制御部56に伝達する。設備側制御部56では、入力部16に入力された金型情報(型厚Dの情報)に対して、移動距離L1が適正範囲であるか否かを判定する。すなわち、シリンダ50のストローク量(移動量M1)を測定装置52により検出することで、当接部32が他端面60bと接触する位置(当接位置Pb2)で止まる際、実際に投入されている金型60の型厚Dを事前に測定することができる(型厚検出機能)。
【0071】
例えば、設備側制御部56は、金型情報が示す型厚Dと、当該型厚Dに基づき導き出される当接部32の移動量とが誤差の範囲を超えている場合(適正範囲内ではない場合)には、エラー等を報知する。これにより、金型情報を入力する際に作業者のデータ入力にミスがあったとしても、事前にデータ入力が適正であるか否かを判定し、誤ったデータ入力のまま金型60がセット領域R2に搬入されないようすることができる。
【0072】
なお、型厚Dに対して移動距離L1が適正範囲ではない場合、入力された金型情報が正しくないことや、金型情報が複数入力されており、異なる金型情報に対応する金型60が載置されたことなどが考えられる。エラーへの対応としては、作業者が金型情報を確認して、入力データに誤りがある場合には入力データを修正する、あるいは正しい金型60が投入されていない場合には正しい金型60に交換することなどが考えられる。
【0073】
なお、
図5(d)に示すとおり、可動プラテン14が適正な位置にある場合(プラテン11の開き量M2が適切な場合)には、交換台車22の図示しない制御部に信号を送信し、交換台車22の複数のローラ24(
図5では図示を省略)を駆動して金型60を成形装置10内に搬入する。
【0074】
このように、金型セットシステムSでは、当接部32を金型60と接触する当接位置Pb2まで移動させ、当接位置Pb2における移動量M1に基づいて、プラテン11の開き量M2が適正であるか否かを判定することができる。
【0075】
これにより、入力部16に入力された金型情報に間違いがあるか否かを、金型60をセット領域R2に投入する前の段階で判定することができる。その結果、人的ミスを未然に発見し、金型60がプラテン11に接触することを回避することができる。
【0076】
上述のとおり、本発明の金型セットシステムでは、金型60のセットにかかる可動プラテン14の位置において、金型60との干渉の有無を早期に検知し、適正な位置に調整させることができる。そのため、金型60がプラテン11まで搬送されたときに干渉の有無を検知する場合に比べて、可動プラテン14の位置(プラテン11の開き量M2)の適否を早期に検知して対応することができる。金型60を交換している間は製造作業が中断するため、できるだけ短時間で行うことが望ましく、本発明によれば交換にかかる時間を短縮することができるため、生産能力を向上させることができる。特に、成形機を用いて複数の種類の成形品を製造する場合には、金型60の交換時間の短縮がより効果的になる。
【0077】
なお、本発明の金型セットシステムでは、樹脂などの材料を用いて射出成形を行う成形装置を一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の金型セットシステムの成形装置では、材料としてゴムや金属などが用いられるものであってもよい。また、本発明の金型セットシステムは、金型が用いられる装置であればよく、例えば、ブロー成形機、プレス成形機や、鋳造に用いられる各種の金型を使用する装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、金型を成形装置にセットするためのものとして好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 成形装置
11 プラテン
12 固定プラテン
14 可動プラテン
20 搬送設備
32 当接部
40 注水装置(付帯部品)
42 可動注水装置(付帯部品、注水装置)
43 接続部
50 シリンダ
52 測定装置(検出装置)
60 金型
M1 移動量
M2 開き量
Pb2 当接位置
S 金型セットシステム
W 幅方向(開閉方向)