(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】トランスファ
(51)【国際特許分類】
F16H 57/023 20120101AFI20240206BHJP
F16H 57/021 20120101ALI20240206BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240206BHJP
B60K 17/344 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
F16H57/023
F16H57/021
F16H57/04 J
B60K17/344 B
(21)【出願番号】P 2021144285
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】山中 駿平
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-102024(JP,U)
【文献】特開平11-321364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/344
F16H 57/00-57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの動力が入力される入力軸と、
前記入力軸が組み付けられるケースとを備え、
前記入力軸には、前記入力軸の回転に伴って回転する入力ギヤ、及び、前記入力軸を前記ケースに対して相対回転可能に保持するとともに前記入力ギヤに隣接するように配されたベアリングが設けられており、
前記入力ギヤには、前記動力を伝達する動力伝達部材の一方側が装着されており、
前記ケースには、前記入力軸が挿通されるように内周にオイルシールが設けられた開口部、及び、前記開口部における前記入力ギヤ側に設けられ前記ベアリングが取り付けられるベアリング取付部が形成されており、
前記ベアリングの外径が、前記入力ギヤ及び前記動力伝達部材における径方向の大きさよりも大きく設定されており、
前記ベアリングの径方向外側における前記ベアリング取付部に、前記入力軸の軸線方向に沿って前記動力伝達部材とラップする位置まで突出する突出部が設けられていること、を特徴とするトランスファ。
【請求項2】
前記ケースには、前記入力ギヤ側から前記オイルシール側に向けて、前記オイルシールにオイルを供給するための溝部が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載のトランスファ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスファが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、車両用トランスファが開示されている。上記特許文献1に開示されたトランスファは、左ケース及び右ケースからなる左右二分割式のトランスファケースを備えている。トランスファケース内には、入力軸、中間軸、及び出力軸が互いに平行に配置されている。入力軸における略中央部には、入力ギヤが一体形成されている。右ケースにおけるベアリング取付部内にはベアリングが配置されており、このベアリングにより入力軸の右端部が回転自在に軸支されている。右ケースにおけるベアリングに隣接する位置には開口部が形成されており、この開口部には潤滑油を分離するためのオイルシールが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トランスファの組付構造において、ケースを組み付ける際に、入力軸がケースの開口部の中心からずれると、開口部に配設されたオイルシールに干渉し、オイルシールが傷付く恐れがある。そのため、ケースを組み付ける際の位置決めとして、ベアリング取付部(ケース)を入力軸の軸線方向に延長することにより、ベアリング取付部を入力軸がケースの開口部を通過する際のガイドとすること(ケース及びベアリングで中心を位置決めすること)が考えられるが、ケースを軸線方向に延長した分、トランスファにおける入力軸の軸線方向の長さ(軸長)が増加するという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消すべくなされたものであって、軸線方向の長さを短縮することが可能なトランスファを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、次のように構成されている。
【0008】
(1)本発明によるトランスファは、駆動源からの動力が入力される入力軸と、前記入力軸が組み付けられるケースとを備え、前記入力軸には、前記入力軸の回転に伴って回転する入力ギヤ、及び、前記入力軸を前記ケースに対して相対回転可能に保持するとともに前記入力ギヤに隣接するように配されたベアリングが設けられており、前記入力ギヤには、前記動力を伝達する動力伝達部材の一方側が装着されており、前記ケースには、前記入力軸が挿通されるように内周にオイルシールが設けられた開口部、及び、前記開口部における前記入力ギヤ側に設けられ前記ベアリングが取り付けられるベアリング取付部が形成されており、前記ベアリングの外径が、前記入力ギヤ及び前記動力伝達部材における径方向の大きさよりも大きく設定されており、前記ベアリングの径方向外側における前記ベアリング取付部に、前記入力軸の軸線方向に沿って前記動力伝達部材とラップする位置まで突出する突出部が設けられていること、を特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、入力ギヤ及び動力伝達部材と、ベアリング取付部の突出部とが径方向にずれることにより、これらの入力軸の軸線方向におけるラップを解消できる。さらに、入力ギヤ及び動力伝達部材と、ベアリング取付部の突出部とが径方向にずれるため、ベアリング取付部における突出部を動力伝達部材の上方(径方向外側)に設定することができる。その結果、トランスファにおける入力軸の軸線方向の長さを短縮することができる。また、上記構成によれば、入力ギヤ及び動力伝達部材により掻き上げられたケース内のオイルが、動力伝達部材の上方(径方向外側)に位置する突出部にあたり、ベアリングへ向かわせることができる。これにより、ベアリングの潤滑性を向上できる。また、上記構成によれば、入力ギヤ及び動力伝達部材により掻き上げられるケース内のオイルを突出部にあてることができる。これにより、オイルの攪拌抵抗が減り、その結果オイルの泡立ちが低減するため、ブリーザ性能を向上させることができる。また、オイルの攪拌抵抗が減ることによって、燃費向上に貢献することができる。
【0010】
(2)本発明によるトランスファにおいて、好ましくは、前記ケースには、前記入力ギヤ側から前記オイルシール側に向けて、前記オイルシールにオイルを供給するための溝部が設けられていること、を特徴とするとよい。このように構成すれば、入力ギヤにより掻き上げられたオイルが溝部を介してオイルシール側に流れるため、オイルシールの潤滑性を向上することができる。
【0011】
(3)本発明によるトランスファにおいて、好ましくは、前記入力ギヤとの間で動力を伝達可能に前記動力伝達部材の他方側が装着される出力ギヤを備え、前記突出部のうち前記動力伝達部材の通過する部分に、前記動力伝達部材が通過可能なように切欠部が形成されていること、を特徴とするとよい。このように構成すれば、突出部に部分的に設けられた切欠部によって、動力伝達部材の動きを妨げないようにすることができる。
【0012】
(4)本発明によるトランスファにおいて、好ましくは、前記動力伝達部材は、チェーンからなること、を特徴とするとよい。このように構成すれば、動力伝達部材としてチェーンを用いることによって、チェーンにより動力を効果的に伝達することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る態様によれば、軸線方向の長さを短縮することが可能なトランスファを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトランスファの構成を示す図であり、
図3に示すA-A線に沿った断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るトランスファの構成を示す図であり、
図3に示すB-B線に沿った断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るトランスファのケースを軸線方向から見た図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るトランスファの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るトランスファを説明する。これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付して示す。
【0016】
図1~3を参照して、本実施形態におけるトランスファについて説明する。本実施形態におけるトランスファ100は、一般的な車両に搭載される車両用トランスファである。上記の車両は、少なくとも、エンジン(動力源)と、クラッチ機構と、トランスミッションと、トランスファ100と、伝達機構とを備えており、これらの機構が順に接続されていることによって、エンジンの動力を伝達可能に構成されている。
【0017】
トランスファ100の前端には、トランスミッションから出力される動力を伝達するトランスミッション出力軸200が接続されている。トランスファ100の後端には、車両の後輪に動力を伝達するプロペラシャフト等の後輪駆動用出力軸300が接続されている。また、伝達機構の後端には、車両の前輪に動力を伝達する前輪駆動用出力軸(図示せず)が接続されている。
【0018】
図1に示すように、トランスファ100は、第一ケース11と、第二ケース12とを備えている。第一ケース11は、トランスミッション出力軸200側(動力伝達方向の上流側)に配置されている。第二ケース12は、後輪駆動用出力軸300側(動力伝達方向の下流側)に配置されている。第一ケース11及び第二ケース12は、ボルト13等により締結固定されている。
【0019】
第一ケース11及び第二ケース12には、エンジン(駆動源)からの動力が入力されるシャフト20が組み付けられている。なお、シャフト20は、本発明の「入力軸」の一例である。
【0020】
シャフト20の軸線方向の略中央には、周方向に沿って複数のギヤ部を有する第一スプロケットギヤ22が設けられている。なお、第一スプロケットギヤ22は、本発明の「入力ギヤ」の一例である。第一スプロケットギヤ22は、シャフト20の回転に伴って回転するものである。
【0021】
図1及び
図3に示すように、第一スプロケットギヤ22には、チェーン30の一方側が装着されている。チェーン30の他方側は、周方向に沿って複数のギヤ部を有する第二スプロケットギヤ40(
図3参照)に装着されている。これにより、第一スプロケットギヤ22と第二スプロケットギヤ40との間で動力が伝達可能となっている。また、第二スプロケットギヤ40から伝達機構を介して前輪駆動用出力軸に動力が伝達される。なお、第二スプロケットギヤ40は、本発明の「出力ギヤ」の一例である。
【0022】
第一ケース11の内周には、シャフト20の一方端部24が挿通されるように第一オイルシール50及び52が設けられている。第一オイルシール50及び52は、第一ケース11内に形成された第一オイルシール取付部11a(開口部)に取り付けられている。第一オイルシール50は、第一オイルシール52に対して軸線方向におけるトランスミッション出力軸200側に配されている。第一オイルシール52は、第一オイルシール50に対して軸線方向における後輪駆動用出力軸300側に配されている。第一オイルシール50の外径は、第一オイルシール52の外径よりも小さい。
【0023】
シャフト20の一方端部24と、第一スプロケットギヤ22との間には、第一ベアリング61が設けられている。第一ベアリング61は、シャフト20を第一ケース11に対して回転可能に支持するものである。第一ベアリング61は、第一スプロケットギヤ22におけるトランスミッション出力軸200側で、第一スプロケットギヤ22に隣接するように配されている。第一ベアリング61は、第一ケース11の内周に形成された第一ベアリング取付部11b(開口部)に嵌合している。第一ベアリング61の外径は、第一オイルシール52の外径よりも大きく、第一スプロケットギヤ22に装着されたチェーン30の外径よりも小さい。
【0024】
第二ケース12の内周には、シャフト20の他方端部26が挿通されるように第二オイルシール54及び56が設けられている。第二オイルシール54及び56は、第二ケース12に形成された第二オイルシール取付部12a(開口部)に取り付けられている。第二オイルシール54は、第二オイルシール56に対して軸線方向におけるトランスミッション出力軸200側に配されている。第二オイルシール56は、第二オイルシール54に対して軸線方向における後輪駆動用出力軸300側に配されている。第二オイルシール54の外径は、第二オイルシール56の外径よりも大きい。
【0025】
シャフト20の他方端部26と、第一スプロケットギヤ22との間には、第二ベアリング62が設けられている。第二ベアリング62は、シャフト20を第二ケース12に対して回転可能に支持するものである。第二ベアリング62は、第一スプロケットギヤ22における後輪駆動用出力軸300側で、第一スプロケットギヤ22に隣接するように配されている。第二ベアリング62は、第二ケース12の内周に形成された第二ベアリング取付部12b(開口部)に嵌合している。第二ベアリング62の外径は、第二オイルシール54の外径よりも大きい。
【0026】
ここで、本実施形態では、第二ベアリング62の外径が、第一スプロケットギヤ22、及びチェーン30における径方向の大きさよりも大きく設定されている。言い換えると、第二ベアリング62の外径(径方向の大きさ)は、第一スプロケットギヤ22に装着されたチェーン30における外径(径方向の大きさ)よりも大きい。
【0027】
また、本実施形態では、第二ベアリング62の径方向外側における第二ベアリング取付部12bに、突出部12cが設けられている。突出部12cは、シャフト20における軸線方向の第一ケース11側に向かって延び、チェーン30とラップする(重なる)位置まで突出している。この突出部12cは、第二ベアリング取付部12b(第二ケース12)と一体的に形成されている。
【0028】
第一ケース11及び第二ケース12の組付時においては、最初に第二ベアリング62が第二ケース12の第二ベアリング取付部12bと嵌合することにより位置決めされる。次に、位置決めされた状態で、第二オイルシール54及び56にシャフト20が通ることとなる。
【0029】
第一ケース11と、第二ケース12の突出部12cと、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30との間の領域には、所定の空間Sが形成されている。空間Sには、所定の量のオイル(潤滑油)が充填されるようになっている。シャフト20が回転するのに伴って、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30が回転した際に、オイルがシャフト20から径方向外側へ掻き上げられる(飛散する)が、突出部12cの径方向内側の面において受け止めるようになっている。また、突出部12cによって受け止められたオイルは、第二ベアリング62に向かって流入することにより、第二ベアリング62の潤滑性が向上する。
【0030】
また、本実施形態では、突出部12cは、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30と、軸線方向において約1/3ラップする例を示しているが、これらがラップする範囲は適宜設定可能である。ラップする範囲が大きくなるのに伴って、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30が回転した際に掻き上げられるオイルを突出部12cにおいて受け止め易くなる。
【0031】
図3に示すように、本実施形態では、第二ケース12には、溝部12dが設けられている。
図2に示すように、溝部12dは、空間S(第一スプロケットギヤ22側)から第二オイルシール54側に向けて、第二ベアリング62及び第二オイルシール54にオイルを供給し、潤滑するためのものである。
【0032】
なお、第二ケース12における溝部12dの周辺においては、溝部12dにオイルが流入し易いように突出部12cが切り欠かれている(省略されている)が、溝部12dの周辺における突出部12cの切り欠き量は適宜設定可能である。
【0033】
図2及び
図3に示すように、突出部12cのうちチェーン30の通過する部分に、チェーン30が通過可能なように切欠部12e(
図3に示す斜線部)が形成されている。切欠部12eは、軸線方向から見て、第一スプロケットギヤ22の全周に対して約2/3の範囲内において形成されている。なお、切欠部12eが形成される範囲は、チェーン30が通過可能であれば、約2/3の範囲内に限られず適宜設定可能である。
【0034】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果(1)~(4)を得ることができる。
【0035】
(1)上記実施形態によるトランスファ100では、第二ベアリング62の径方向外側における第二ベアリング取付部12bに、シャフト20の軸線方向に沿ってチェーン30とラップする位置まで突出する突出部12cを設けた。
【0036】
上記実施形態によれば、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30と、第二ベアリング取付部12bの突出部12cとが径方向にずれることにより、これらのシャフト20の軸線方向におけるラップを解消できる。さらに、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30と、第二ベアリング取付部12bの突出部12cとが径方向にずれるため、第二ベアリング取付部12bにおける突出部12cをチェーン30の上方(径方向外側)に設定することができる。その結果、トランスファ100におけるシャフト20の軸線方向の長さを短縮することができる。
【0037】
また、上記実施形態によれば、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30により掻き上げられた第一ケース11及び第二ケース12内(空間S内)のオイルが、チェーン30の上方(径方向外側)に位置する突出部12cにあたり、第二ベアリング62へ向かわせることができる。これにより、第二ベアリング62の潤滑性を向上できる。
【0038】
また、上記実施形態によれば、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30により掻き上げられる第一ケース11及び第二ケース12内(空間S内)のオイルを突出部12cにあてることができる。これにより、オイルの攪拌抵抗が減り、その結果オイルの泡立ちが低減するため、ブリーザ性能を向上させることができる。また、オイルの攪拌抵抗が減ることによって、燃費向上に貢献することができる。
【0039】
(2)上記実施形態によるトランスファ100では、第二ケース12に、空間S(第一スプロケットギヤ22側)から第二オイルシール54側に向けて、第二オイルシール54にオイルを供給するための溝部12dを設けた。これにより、第一スプロケットギヤ22により掻き上げられた空間S(第一スプロケットギヤ22側)内のオイルが溝部12dを介して第二オイルシール54側に流れるため、第二ベアリング62及び第二オイルシール54の潤滑性を向上することができる。
【0040】
(3)上記実施形態によるトランスファ100では、突出部12cのうちチェーン30の通過する部分に、チェーン30が通過可能なように切欠部12eを形成した。これにより、突出部12cに部分的に設けられた切欠部12eによって、チェーン30の動きを妨げないようにすることができる。
【0041】
(4)上記実施形態によるトランスファ100では、動力伝達部材の一例としてチェーン30を用いた。これにより、第一スプロケットギヤ22から第二スプロケットギヤ40に向けてチェーン30により動力を効果的に伝達することができる。
【0042】
(変形例)
図4を参照して、本実施形態によるトランスファの変形例について説明する。
図4に示すように、トランスファ101では、第一ベアリング61が配された第一ベアリング取付部11bにおける径方向外側に、突出部11cが設けられている。突出部11cは、シャフト20における軸線方向の第二ケース12側に向かって延び、チェーン30とラップする(重なる)位置まで突出している。この突出部11cは、第一ケース11と一体的に形成されているが、別個に(別体で)形成されていてもよい。
【0043】
シャフト20が回転するのに伴って、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30が回転した際に、オイルがシャフト20から径方向外側へ掻き上げられる(飛散する)が、突出部11cの径方向内側の面において受け止めるようになっている。また、突出部11cによって受け止められたオイルは、第一ベアリング61に向かって流入することにより、第一ベアリング61の潤滑性を向上させることが可能である。
【0044】
なお、突出部11cは、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30と、軸線方向においてラップする例を示しているが、これらがラップする範囲は適宜設定可能である。ラップする範囲が大きくなるのに伴って、第一スプロケットギヤ22及びチェーン30が回転した際に掻き上げられるオイルを突出部11cにおいて受け止め易くなる。
【0045】
(その他の変形例)
上記実施形態は、以下のように変更した構成とすることもできる。
【0046】
上記実施形態では、ケースが二つのケース(第一ケース、第二ケース)から構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、三つ以上のケースから構成されていてもよい。
【0047】
上記実施形態では、突出部が第二ベアリング取付部(第二ケース)と一体的に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、突出部が第二ベアリング取付部(第二ケース)と別体(別部材)で設けられていてもよい。
【0048】
上記実施形態では、動力伝達部材の一例としてチェーンを用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、動力伝達部材の一方側を入力ギヤ(スプロケットギヤ)に装着することが可能であれば、チェーン以外の動力伝達部材も適用可能である。
【0049】
上記実施形態は、いずれも本発明の適応の例示であり、特許請求の範囲に記載の範囲内におけるその他いかなる実施形態も、発明の技術的範囲に含まれることは当然のことである。
【符号の説明】
【0050】
11 :第一ケース
12 :第二ケース
12a :第二オイルシール取付部(開口部)
12b :第二ベアリング取付部
12c :突出部
12d :溝部
12e :切欠部
20 :シャフト(入力軸)
22 :スプロケットギヤ(入力ギヤ)
30 :チェーン(動力伝達部材)
40 :第二スプロケットギヤ(出力ギヤ)
54 :第二オイルシール
56 :第二オイルシール
62 :第二ベアリング
100 :トランスファ